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第7回意匠制度小委員会 議事要旨

11月7日(月曜日)13時30分~15時40分に、産業構造審議会 知的財産政策部会 第7回意匠制度小委員会(委員長:大渕哲也 東京大学法学部大学院法学政治学研究科教授)が開催された。

1.審議内容

事務局から資料1に沿って、意匠権の効力範囲の拡大、意匠権の強化、画面デザインへの保護対象の拡大及び意匠登録手続の在り方について説明した後、それぞれ自由討議を行ったところ、委員からの意見は以下のとおり。

意匠権の効力範囲の拡大

(1)権利侵害行為への「譲渡等を目的とした所持」の追加

譲渡等を目的とした所持を権利侵害行為とする案に基本的に賛成である。模倣品の売買がネットオークションで個人を装った者により行われるケースなど、捕捉しにくい取引形態が増加している。譲渡等を目的とした所持を規定することにより、模倣品対策に有効に働くのではないか。

(2)権利侵害行為への「輸出」の追加

  • 輸出を権利侵害行為とする案に賛成である。日本発の侵害は少ないと認識しているが、アジア諸国等から輸出される模倣品による被害が深刻化していることから、輸出の規制はすべての国において法規制をすべきであり、日本も率先して対応すべきではないか。また、輸出貨物を複数の国を経由させることにより模倣品の出所の隠蔽を図る行為も行われており、通過についても何らかの規制が必要でないか。
  • 日本における意匠権の侵害物の輸出を止めることとする場合は、さらに、仕向国においても侵害となるといった要件が必要ではないか。
  • 企業活動がグローバル化している中で、輸出は侵害物品を止められる最後の段階に当たり、これを規定する意義は大きいのではないか。輸出を実施行為と規定することにより、意匠権の効力が増すこととなりこの案に賛成である。
  • 知的財産権法の属地主義の考え方から、我が国国内においての利益を考えるのが筋論である。そこで、一つの理由として模倣品の環流防止が挙げられているが、この趣旨では、環流の蓋然性の程度によってこの場合は止める、あるいは止めないといった利益衡量による判断もあり得るので、全部を一律に押さえてしまうことは合理性に欠けるのではないか。したがって、環流防止の観点以外に、輸出行為自体と規制とのバランスについて合理的根拠を整理していくべきではないか。
  • 欧州の制度において輸出を規定している理由を踏まえて、我が国制度の在り方について検討すべきではないか。
  • 属地主義と輸出規制の関係についてはいろいろな解釈があり得ると思うが、あくまで国内行為であるから、国際的流通を過度に阻害するなどの弊害がない限り、国の裁量にゆだねられるべきではないか。また、規制の対象を環流の蓋然性によって切り分けることは困難と考えられるため、輸出を規制の対象とするかしないかのどちらかではないか。そして、実態として輸出される模倣品が溢れているならば、規制する必要性があると考えられる。

(3)意匠の類似範囲の拡大

  • 一般需要者の視点で類否判断をすると規定しても、既に定着している裁判所の判決や特許庁の審査・審判での判断基準を変えるものとはならないのではないか。
  • ユーザーとしては、これまで経験を積んできた類否判断や範囲が変わることは望まない。審査基準において明確化していくという方向が良いのではないか。
  • 類似の明確化の観点からは、審査基準の整備と共に、個々の事案の判断に関する情報が共有されて議論の対象となることが重要ではないか。現在審決は登録されたもののみ発行されているが、拒絶となったものも含め、全てが公開されて議論ができるようすべきではないか。

(4)意匠権の物品間の転用までの拡張

自分の意思に依らずあらゆる物品にまで拡大されることは望まないが、例えば、出願時に物品名を複数指定することにより、権利者の意図が明確に分かるやり方もあるのではないか。

意匠権の強化

(1)意匠権の存続期間の延長

  • ユーザーとしては長ければ長いほど良いと考えている。権利者が必要に応じて更新できることとするなど、20年よりもさらに長く権利を保持できる制度が望ましい。
  • 同様の意見であるが、20年の経過後さらに5年の延長制度があっても良いのではないか。

(2)刑事罰の強化

提案された方向に特段の異論なし。

画面デザインへの保護対象の拡大

  • 以前の案と比べ大分対象が絞り込まれており、産業界として賛成できる内容ではないか。部分意匠としての考え方を踏襲していることから、従来からの実務の延長で対応することができると思う。
  • デザイナーの立場からは、画面そのものは製品であり流通の対象であるから、保護されることは重要であるので、今回、物品の定義としてはっきりと規定することは良いことだと思う。依然として欧州等外国の方が保護の幅が広いため、外国の権利によって日本の企業が一方的に攻撃される懸念はやはり残る。将来的には、時代性やニーズの変化に応じて再び保護の在り方を検討する機会を設けることが必要ではないか。
  • DVD再生機などの専用機に使われるソフトが、それ以外の汎用機器でも使えるということが起こり得るのではないか。同じソフトがパソコンでは汎用機であるから意匠ではなく侵害にならないのは不自然ではないか。
  • 定義の規定は、数年後またすぐに改正の必要が生じないように、ある程度解釈の余地を持ったものとする方が将来のために望ましい。

意匠登録手続の在り方

(1)関連意匠制度の見直し

出願の時期的制限が公報発行まででは時間が不足している。モデルチェンジ等の改良した実施意匠を登録することによって牽制力、水際での差止めの効果が得られるため、出願は長期間認められるべきである。日本で拒絶された事実が外国で意匠権を行使する際に不利に働くこともある。また、類似意匠制度の混乱が復活するという懸念に対しては、関連意匠の独自効力を廃し、確認説に徹することで解消するのではないか。現在の特許庁の業務において、税関からの意見照会や判定制度ができるならば、類似意匠の登録ができても良いのではないか。

2.今後の予定

第8回小委員会を12月5日(月曜日)、第9回小委員会を12月20日(火曜日)、第10回小委員会を来年1月30日(月曜日)に開催する予定。

[更新日 2005年11月14日]

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