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第8回意匠制度小委員会 議事録

  1. 日時:平成17年12月5日(月曜日)14時00分~15時45分
  2. 場所:特許庁 特別会議室
  3. 出席委員:大渕委員長、岡崎委員、勝尾委員、菅井委員、平野委員、水谷委員、光主委員、峯委員、山本(建)委員、山本(為)委員
  4. 議題:意匠制度の在り方(論点整理)について

開会

大渕委員長

それでは、ただいまから、産業構造審議会知的財産政策部会の第8回意匠制度小委員会を開催いたします。
本日は、特許庁の中嶋長官にご出席いただいておりますので、まず、中嶋長官から一言ご挨拶をお願いいたします。

中嶋長官

中嶋でございます。
委員の先生の皆様方には、産業構造審議会知的財産政策部会意匠制度の小委員会、日程がタイトな中、ご出席いただきましてありがとうございます。心から御礼を申し上げます。私も9月に着任してから、何回か出ようとしたのですけれども、いろいろ事情があって、きょう初めてお目にかかるのでご挨拶をさせていただきたいと存じます。
私事で恐縮なのですが、私、役所に入って最初にデザインに出会いましたのが2年生のときでして、当時、貿易局に検査デザイン課という課があったんですね。当時の検査デザイン課というのは非常におもしろくて、規制行政と奨励行政と両方ありまして、今だから、ご存じない方もいらっしゃるかもしれませんけれども、当時はまだ輸出品デザイン法といいましたか、要するにある種の輸出品について、日本側ではあらかじめ相手国の有名なデザインをまねしないというチェックをするという制度になっているんですね。これは輸出検査と同じようにかなり前に廃止されたのです。
一方で、そういう模倣品防止の検査のような行政もあると同時に、Gマークとか、地方産業デザイン振興なんていう振興行政があって、その中で私の記憶ですと、GKというデザイン・オフィスの榮久庵憲司先生という方がいらっしゃって、要するに物の見方で、デザインというのはこういうふうに見るものだと、いす1個にもそこには全てがこもっているのだと。それを入省して2年目に聞いたものですから、それ以降、日本の中、世界どこへ行っても、全て物を見るときに気になるんですね。大変その後の物を見る目を養っていただいたと感謝をしております。
ちなみに、これも私事ですけど、16年前に当時のウルグアイラウンドに知的財産のテーマがあって、当時の通産省に知的財産政策室というのをつくりまして、今でこそ皆さん、「知財、知財」ということになっていますけれども、今から思うと「知的財産」という言葉がこれだけ社会に広く流布するようになったということで感無量であります。
今回の意匠制度小委員会のテーマでございますけれども、端的に言えば、企業の競争力、ブランド力の強化という点からも意匠というのは非常に大事だという点がございます。それから、国際的にはご案内のように、今年の夏のサミットでも小泉総理から、模倣品防止のための国際的な取り決めといいますか、条約のようなものをつくるべきだということを日本が提唱しているわけでございますので、そういう国際的なコンテクストからも意匠の保護が大事だということでございます。
そういう意味で意匠の保護の制度も大変長い歴史があるわけでございますけれども、やはり時代の要請に応じて、その都度、その都度見直していくということだと存じますので、今回、いろいろご議論いただいて、21世紀の日本に、知財立国を標榜している日本にふさわしい意匠制度の方向をお示しいただくということでよろしくご審議のほどお願い申し上げます。
ありがとうございました。

大渕委員長

ありがとうございました。
さて、前回の第7回には、「意匠制度の在り方」というタイトルでそれまでの議論を踏まえて、意匠制度の検討項目全般につきまして論点整理を行うべくご議論いただき、皆様から貴重なご意見を多数頂戴いたしました。
本日は、これまでの検討項目のうち、無審査登録制度の導入によるダブルトラック化などの若干持ち越しとなっております項目について、引き続き論点整理を行うべくご審議いただければと思います。
それでは、まず事務局より配布資料の確認をお願いいたします。

田川審議室長

それでは、本日の配布資料を確認させていただきます。本日の配布資料といたしまして、議事次第・配布資料一覧、委員名簿。
資料1といたしまして、「意匠制度の在り方(論点整理)」、以上の資料でございます。不足等ございましたら、よろしくお願いいたします。

大渕委員長

よろしいでしょうか。
それでは、早速議題に入らせていただきます。初めにお手元にあります資料1の「意匠制度の在り方(論点整理)」という表題のペーパーの前半部分につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。

田川審議室長

それでは、「意匠制度の在り方(論点整理)」という資料に基づきご説明をいたします。
まず、第1点として、権利侵害行為への「輸出」の追加についてです。この問題につきましては、幾つかの論点あるいは指摘されております。
まず第1に、模倣品の流通が国際的になっていることです。経済のグローバル化の進展により、国境を越えた経済取引が活発化している中において、我が国の意匠権を侵害する物品も国際的に循環をするという事例も増大しております。
こうした事態に対応するために我が国においては、模倣品・海賊版防止条約の実現を目指しているところです。先ほど長官から申し上げましたとおり、本年7月のサミットにおいて、小泉総理が知的財産権侵害の拡散防止に向けた国際的な約束を取りまとめていくべきという提唱をし、我が国のイニシアティブで模倣品・海賊版の国際的な対策を進めていこうということにしております。
現在の意匠制度について見ますと、意匠法第2条第3項においては、意匠権の実施について規定しております。譲渡や貸渡しといった行為については意匠権の実施とされているところですが、「輸出」については規定されていないということで、侵害物品の輸出に対して確実な差し止め等を行うことができないため、意匠権の侵害物品が日本から輸出をされるような場合、こうした行為を看過せざるを得ないという指摘があるところです。したがって、侵害物品の輸出に対する差し止め等を確実に行えるよう、意匠権の実施行為に「輸出」を追加することの必要性が指摘をされております。
また、もう一つの問題として、模倣品が製造国から日本に一旦輸入され、さらに日本において積み替えられて第三国へ輸出をするといった新たな手口というものも発生しておりまして、模倣品について税関において通過を水際で取り締まることが必要ではないかという指摘がなされております。
こうした問題に対し、この委員会においてご審議をいただいたところです。今まで提起をいただいたご意見として、まず、模倣品対策の強化の観点から意匠の実施に「輸出」を追加すべきであるという肯定的なご意見、あるいは属地主義との関係について見ますと、「輸出」の規制はあくまで国内の行為であることから、国際流通に過度な阻害がない場合には各国の裁量に委ねられるべきではないかといったご意見があったところです。また、この規制をする際の留意点として、属地主義との考え方から、輸出を禁止することによる我が国国内における利益を考えるべきであるというご意見、あるいは輸出行為自体と規制とのバランスについてその根拠を整理すべきとのご意見、模倣品の還流の蓋然性の程度について利益衡量を行うべきではないかというご意見があったところです。また、国際的な動向等の関係につきましては、既に意匠権について輸出を侵害行為としている欧州等の制度において、どういった実態になっているのか、そういった理由を踏まえて我が国の制度の在り方について検討すべきではないかというご意見があったところです。
また、「通過」については、模倣品について日本を通過しているという実態把握がなされているわけではないが、出所のわからない模倣品は多数あり、何らかの規制が必要ではないかという肯定的なご意見や実効性についてどのようにやっていくのか、そこについての疑問があり、慎重に考えるべきではないかというご意見があったところでございます。
こういったご意見を踏まえ、対応の方向として、以下、整理をいたしております。
まず、輸出の追加につきましては、これを追加すべきということで議論を整理しております。まず、模倣品を国内から海外に送り出す輸出という行為については、模倣品の製造、譲渡と一連のものとして国内で行われる行為であるということでございまして、意匠権者がその意匠権について譲渡、貸渡し、あるいは譲渡、貸渡の申し出といった経済的な取引を独占的に行う経済的利益を保護する必要があるのではないかということで、輸出もその譲渡等と同様に侵害行為に追加する必要があると考えられるところでございます。このため、意匠法第2条第3項に規定をしております意匠の実施行為に「輸出」を追加する方向でどうだろうかと考えております。
また、この場合に、「侵害とみなす行為」、この侵害行為の予備的行為についても、意匠法あるいは特許法等においては規制をしているところでございます。現在、意匠権の侵害物品を「譲渡の目的のために所持する行為」というものを追加する議論もしておるところでございまして、それとの並びで輸出のために所持する行為も侵害とみなす行為として追加をしてはどうかと考えております。
輸出に関する諸外国の考え方につきましては、まず意匠について、海外調査を行った結果等を以下整理をしております。欧州、イギリス、ドイツ等においては、意匠権の侵害として「輸出」を明文上規定をしております。
欧州共同体意匠規則第19条においては、輸出者が意匠権の侵害物品を輸出する行為は意匠権の侵害とされております。また、製造者が輸出目的で意匠権の侵害物品を輸出者に引き渡す行為、また、輸出者が海外の商社と意匠権の侵害物品との販売契約を締結するという行為については、「提供(offering)」又は「流通(putting on the market)」に当たると考えられております。イギリスについては、例えば商標に関する裁判例におきまして、輸出をイギリス領土から移動することとしており、意匠についても同様に考えることができるとされております。
また、属地主義等の関係については、欧州、ドイツにおいて、輸出後、領域を離れた後はその侵害物品までは保護は及ばないということで、輸出を規定しても属地主義の考え方に違反しないと考えられております。
また、意匠と関連を有する特許の考え方ですが、諸外国において、明文で「輸出」を特許権侵害としているところはございませんが、輸出行為について、国内特許権侵害行為と捉えている例が存在します。
まず、アメリカにおいては、明文上、輸出を侵害行為とは規定をしておりませんが、判例において、米国内から外国への侵害物品の譲渡については、これが米国内で交渉や契約が行われた場合には侵害行為「販売(sells)」に該当するとされております。他方で、そういった交渉、契約が国外で行われた場合には、これは該当しないとなっております。
また、ドイツ特許法においても、輸出自体は侵害行為とは規定されておりませんが、輸出行為はドイツ特許法の「流通(putting into circulation)」として考えられるとされており、侵害行為を含むとされております。
同様に、イギリス特許法においても、輸出を直接侵害行為として規定はしておりませんが、輸出という行為は「処分(disposes of the product)」又は「処分の申出(offers to dispose of the product)」、「処分のためであるか否かを問わない保管(keeps the product whether for disposal or otherwise)」、こういったもののいずれかに該当するということで、輸出というものが特許法上保護されるべきものと考えられております。続きまして、通過についてです。
「通過」については、これはまず3つの類型が考えられるところです。
まず、領域を通過するもの、外国から到着した貨物が、単に我が国の領域を通過する場合、2番目として、我が国を仕向地としない貨物が荷繰りの都合上一旦我が国で陸揚げをされた後、当初の仕向地に向けて運送される場合、これは仮陸揚げと類型化されております。3番目として、我が国を仕向地として、一旦保税地域に置かれた貨物が必要に応じて改装であるとか、仕分け等が行われた後で通関をされることなく、我が国を積み出し国として再度外国に向けて送り出される場合、これを積み戻しのケースと言っておりますが、これら3つのケースが考えられるところでございます。
意匠法において、通過を検討する場合には、まず輸入というものがどこで既遂になるか、すなわち、日本の意匠権におきます「輸入」がどの時点で完結をするのかというのが1つ論点になるところです。現在の意匠法における輸入の既遂時点については、通関説、陸揚げ説等いろいろあります。しかしながら、国内の意匠権は我が国の領域内に及ぶことからいたしますと、通関前に保税地域に置かれている場合でも、既に我が国の領域内に輸入されたものであり、したがって、陸揚げ説によって国内の意匠権を侵害すると考えることが適切ではないかと考えられるところです。
このような考え方によると、通過として考えられる行為のうち、我が国を仕向地として保税地域に置かれた貨物を通関することなく外国に向けて送り出す行為は、今回追加をいたします意匠の実施行為として「輸出」に該当するのではないかということです。
また、この場合にパリ条約第5条の3との関係が1つ論点としてございます。今、議論をしております意匠権侵害物品の通過については、船舶等に積載された貨物を問題にしておりますが、パリ条約を受けて規定されている特許法第69条、それを準用しております意匠法第36条においては、「船舶若しくは飛行機又はこられに使用する機械、器具、装置その他の物」ということになっています。これらは国際交通の便宜を考慮して、こうした輸送手段については特許権の効力、意匠権の効力は及ばないということになっておりますので、貨物には該当しないと解されるところでございまして、パリ条約上の問題もないものと考えられているところです。
また、通過に関する諸外国の考え方ですが、諸外国について、産業財産権侵害を構成する行為として法令上明文規定している国はございませんけれども、例えば特許については、英国で侵害品の単なる通過についても、侵害行為に該当するという判決がございます。この判決では輸出目的で侵害品の輸入をして、その侵害品を航空会社の倉庫に保管する行為が特許権の侵害とされている事例です。また、ドイツでは、「船から陸揚げをされ、通関手続を経ずに、再度船で輸出される場合」が侵害と解釈されております。
そのほか、輸出について、我が国の他の知的財産法における取扱いについては、不正競争防止法2条で、不正な競争行為として「輸出」を規定しております。これは昭和25年の不正競争防止法の改正時にGHQ指令に基づき、日本製品に関する国際的な信用を強化する目的で輸出を不正競争行為として規定をしたものです。
種苗法にも「輸出」が規定されておりまして、これは育成権者の「利用」の一形態として規定をされているものです。
1991年UPOV条約の改正に伴い追加をされておりますが、これは,UPOV非加盟国等品種保護制度が適切に行われていない国への輸出を差し止め、それによって海外において不正に生産された登録品種の逆輸入を防ぐために規定をされたものとされておるところです。
続いて2つ目の論点の「無審査登録制度の導入によるダブルトラック化」の論点でございます。
まず、問題の所在として、現在、意匠登録出願は出願後平均で大体7カ月で審査が行われておりますが、販売開始の後、早い段階で模倣品が発生するような製品であるとか、あるいは売上のピークが販売開始後に早期に来るような商品、又はライフサイクルの短い季節的な商品などの分野においては、意匠権の取得の機会を拡大し、模倣品対策を効果的に行うために現在の審査登録制度よりも早い期間で意匠権の権利化ができる仕組みが必要ではないかという問題です。
また、多品種少量の生産を行って、非常に多くの種類の商品を販売するような分野について、非常に多くの種類の商品を登録することになりますと、非常にコストも大きくなるという点もございます。こうした多数の販売商品について、意匠権の権利化ができるよう、権利取得のためのコストを抑えた制度も必要ではないかということです。
検討の内容ですが、出願された意匠について意匠登録の要件を審査せずに登録をし、具体的な争いは事後的に確認をする無審査登録制度を導入して、現在の審査登録制度とのダブルトラックを検討したところでございます。
具体的な対応として、実用新案法型あるいは審査請求型、半導体集積回路法型、著作権法型というこの4つの類型について検討をいただいたところです。
具体的には、実用新案法型については、4つの要件、特徴を挙げております。新規性や創作非容易性、つまりありふれたものでないこと、これを要件として登録によって絶対的独占権が発生するような制度にし、権利効力については、登録意匠と同一又は類似する意匠に及ぶものとする。また、乗り換えとして、一定期間に限り無審査トラックの登録意匠を基礎として審査登録トラックへの出願(乗り換え)ができるようにする。具体的な侵害の場面においては、出願人あるいは登録権者の請求によって意匠評価書を提示して警告した場合に、侵害行為についての過失を推定する。そういった内容で提案しております。
また、審査請求型については、新規性、創作非容易性を要件とし、登録によって相対的独占権が発生し、意匠権の効力は、登録意匠と同一又は類似する意匠に及ぶものとする。また、一定期間について、審査請求ができるようにする、侵害行為について過失を推定しない。こういった提案をしております。
第3の類型、半導体集積回路法型については、新規性を要件とせずに、創作非容易性、ありふれたデザインでないということのみを要件として、登録によって相対的独占権が発生し、その効力は、登録意匠と同一又はこれに実質的に同一の意匠に及ぶものとする。一定期間に限り審査トラックに出願することを認める。侵害行為についての過失を推定しないといった提案でございます。
第4の類型として著作権法型でございますが、新規性を要件とせず、創作非容易性のみを要件とし、登録によらず、相対的独占権が発生する。意匠権の効力は登録意匠と同一又は実質的に同一の意匠に及び、一定期間に限り、審査トラックに出願することを認める。侵害行為について過失を推定しない。こういった提案でございます。
対応の方向ですが、まず、以下では大きく3つの点について評価をしております。
ダブルトラック化の評価、無審査登録制度自体の評価、審査登録制度の評価の3点です。
まず、ダブルトラック化についての評価ですが、デザインというものの性質として模倣が容易であるという特徴を踏まえて、一般的には早期の権利保護の要請があると考えられるところです。迅速かつ簡便な権利取得が可能である無審査登録制度、これは欧州等で採用されておりますが、権利の有効性等については、事後的に個別に紛争によって争うことが必要になるということです。他方で、審査登録制度においては、権利取得までには事前審査等に伴う一定の期間やコストが必要になりますが、あらかじめ審査を通じて権利の有効性を確認するということで安定性を高めることが可能であるということです。
したがって、こうした迅速性、簡便性と権利の安定性、本来ならばトレードオフの関係にあるもの、双方のメリット、これを同時に満たすことは困難なわけですが、それぞれのメリットとなる制度を出願人がそのニーズに合わせて出願できるという制度自体については評価に値する枠組みではないかと考えられるところでございます。
続きまして、無審査登録制度に対する評価ですが、3点について議論をまとめております。
まずデザインの早期保護の観点、安定的な権利関係の観点、無審査制度登録における権利の濫用の観点です。
まず、デザインの早期保護という観点からいたしますと、迅速かつ簡便なデザインの保護を求めるニーズは、先ほどご指摘をいたしましたライフサイクルの短い業種、多種類の商品を扱うという業種においては存在するということが考えられるのではないかということで、そのほかにも一般的にデザインの模倣が容易であることから、第三者による模倣を経験した業種においては潜在的にそういったニーズが存在するのではないかと考えられるところでございます。
一方で、現在の審査制度のもとで、平均で7カ月で審査が終わっており、また模倣品が発生した場合には平均1カ月程度での早期審査が行われていることから、必ずしも迅速かつ簡便な保護ニーズをすべて満たすということではありませんけれども、現在の枠組みでも一定の対応が可能になっているのではないかと考えられるところです。
また、安定的な権利関係の観点につきましては、現行の意匠制度においては、他人からの権利行使のリスクがない安定的な権利関係を望む場合は、自らが実施を予定している意匠と抵触する他人の登録意匠を事前に調査をするというのが一般的であると考えられますが、一方、無審査登録制度になりますと、無効になる蓋然性の高い意匠であっても、一旦は登録されるということでございまして、抵触する登録意匠が存在するかどうかという調査だけでなく、その有効性についても第三者、あるいは抵触する可能性のある第三者が調査をしなければならないということです。こうした場合には抵触する意匠の有効性を争うコストが過重になるということで、無効な権利を放置して自らの製品開発を変更するといったような事態も懸念されるところです。
また、こうした事前の調査を行わない場合については、無審査登録された権利者からの権利行使を受けた場合に、その意匠を迅速に評価し、有効性を争うことが必要になるわけでございますが、こうしたコストが過重になると企業活動に悪影響を与えることも懸念をされるところでございます。
無審査制度においては、他人の意匠権の有効性を争う者のコスト負担が重くなる懸念があるわけですが、この背景として、意匠の登録要件を判断する際に、公知意匠について、例えば特許分野のような商用データベースが存在していないということもあり、権利の有効性に関する判断を企業等において行う環境が必ずしも整備がされていないということが考えられるのではないかと思っております。
無審査登録制度における権利の濫用の問題については、無審査登録制度のもとでは、無効審判等で争われた場合には有効性が否定されることが明白な意匠であっても、無効審判等の係争期間に模倣品を売り切ることを前提として登録を行ったり、または商品開発の予定はないが、その権利の警告の乱発を行うといった濫用的な利用も懸念されております。この点については、欧州等の無審査登録制度において、必ずしもこうした弊害は指摘されておりませんし、模倣品を製造する者が自らを登録によって特定することも想定しづらい点もございます。こうしたことを踏まえ、無審査登録に変更された実用新案法の改正時の議論であるとか、あるいは無審査登録制度を運用している諸外国の実情も考慮して、さらに詳細な検討が必要ではないかと考えられるところです。
3点目、審査登録制度に関する評価ですが、審査登録制度については、権利取得までには事前審査を伴う一定のコスト負担、時間が必要になるわけでございまして、あらかじめ行政庁によって権利の有効性が確認されることによって非常に安定した権利が生まれるわけです。現行の意匠制度においても、安定的な権利取得を望むといった出願人の方は、意匠登録を行うことによって、他人の権利との抵触関係について確認をすることが可能になっているということです。
一方で、こうした制度上のメリットについては、社会的なコスト負担によって実現されている面がございますので、適正なコスト配分の在り方について引き続き検討する必要があると考えられます。
最後に、まとめですが、現在の意匠制度を取り巻く状況を考慮した場合、迅速かつ簡便な保護制度の導入よりも、安定した権利関係の構築が重視される環境にあるということで、無審査登録制度の導入によるダブルトラック化については、直ちに導入する環境にはないのではないかと考えられるところです。
このため、現在の審査登録制度を維持しつつ、今後、意匠データベースの整備といった意匠制度の活用、意匠の類似評価の環境が整備され、審査の運用での対応を超える早期保護への強い要請が生じた場合、改めて無審査登録制度導入の是非を検討することが適切ではないかと考えられるところでございます。

大渕委員長

丁寧なご説明をありがとうございました。
それでは、今、ご説明いただきました資料1、「意匠制度の在り方(論点整理)」のペーパーの前半部分につきましては、1ページ以下のI.権利侵害行為への「輸出」の追加と、6ページ以下のII.無審査登録制度の導入によるダブルトラック化という、かなり異なった2点のテーマを含んでおり、スムーズな議論のためには分けて議論した方がよろしいかと思いますので、それぞれ分けた形で議論を行わせていただきます。
それでは、まず、I.権利侵害行為への「輸出」の追加についてですが、これも非常にご議論いただいているところであります。これにつきましては、本小委員会、あるいは特許制度小委員会で、事務局には、諸外国の法制についての実情ないしはその理由等という点と、関連する不正競争防止法ないし種苗法の点についても調査の上、資料につけ加えていただくことをお願いしてあったのですが、今回お忙しい中、これらの点につき整理していただきましてありがとうございます。
それで、議論に入る前に確認させていただければと思うのですが、「輸出」というものにつきましては、いろいろなものが輸出に入り得るのですが、私の理解しているところでは、広い意味で輸出と言いますと、その中には、在外者へ、国内にいる者から譲渡、貸渡し等を行うという意味のものと、国内者から国外者に向けて、当該物品を搬出するという引き渡しに対応するようなものとの2つのものがあって、広義でいうと、その両者を含むし、狭義で括弧付きで書いておられる場合にはむしろ後者のような、搬出というところに絞って書いておられるということでありまして、今回のご提案としては、前者の在外者向け譲渡等というものに関しては、むしろ現行法で必ずしも明確でないので明確化するという色彩が強いし、狭義については創設すべきということであると理解しておりますが、これはこのような理解でよろしいのでしょうか。

田川審議室長

委員長御指摘のとおりでございまして、まず、譲渡について概念上は国際的な販売行為、すなわち譲渡の1類型として読み得る部分があると思いますが、ただし、譲渡だけで実際に国際的な取引が含まれるかどうかというのは必ずしも明確でないところがございます。かつ輸出という事実行為についてもこれは入っておりません。この2つセットで、まず第1点目の在外者への譲渡というものが、輸出という事実行為が入ることによって、より明確になるという観点がございますし、事実行為として国内から搬出する行為というものも、これが明確になると、創設的な部分がございますけれども、明確になるということでございます。

大渕委員長

ありがとうございました。それから、もう一点確認させていただきたいのですが、これは前回も法律関係の委員を中心に属地主義と申しますか、日本国の主権が我が国領域内に限定されるという観点からのご意見があったところですが、その関係でこの輸出というものを実施行為に追加――これについては先ほどのご説明のとおり、明確化の部分もあり、また、創設的な部分もあろうかと思うのですが――されますと、法的な帰結としては差止めと損害賠償が大きいものとしてあるわけですが、差止めの方は、要するに我が国の領域からの輸出を差し止めるということに尽きるわけですが、損害賠償の方は、基本的には海外のマーケット分の損害云々というのではなく、基本的には国内マーケット分に係るものだという理解でよろしいのでしょうか。

田川審議室長

まず差し止め等につきましては、現在規定をされております譲渡等と同じ効力を持つものというふうに考えております。それから、損害賠償については、まず、原則としては属地主義の観点から我が国国内での利益に対するものという整理だというふうに考えております。

大渕委員長

ありがとうございました。それから、もう一点、今申し上げました属地主義の関係で、前回は還流というような点も出されていたのですが、今回の根拠づけとして今言われた属地主義の観点から言いますと、むしろ国内での侵害を有効に止めるための必要性という非常に国内というところに着目したような形で、いわば、先ほどおっしゃっていた一連の流れの中の国内の一番最後の部分が輸出に当たる、つまり、最初は生産から始まるものもあれば、輸入から始まるものもあるのでしょうけど、そういうものが譲渡で流れてきて、最後に我が国の領域から出る輸出というのが一連の流れの中で一番最後なので、そこの部分で止めるという意味では国内に非常に着目した形で根拠づけておられるということで、これはこのような理解でよろしいのでしょうか。

田川審議室長

委員長、御指摘のとおりでございまして、まず、輸出を規定することについて、当初は模倣品の還流というところを現状で、漏れのあるケースということで強調しておりましたけれども、そもそもの考え方として、譲渡等を独占的に行う権利というものが意匠権で意匠権者に保護を与えるべきとされているところからいたしますと、その譲渡等との一連のものとして輸出を位置づけてはどうかということで整理をいたしております。

大渕委員長

もう一点、付け加えますと、輸出のところで止めないと、我が国の領域外に行ってしまうので、そうすると、先ほどのような譲渡等への権利行使が実際上困難になるというところはかなり力点が置かれるということになるわけでしょうか。

田川審議室長

そういうことでございます。

大渕委員長

以上で議論が若干なりとも整理されたのではないかと思われるのですが、以上を前提として、「I.権利侵害行為への『輸出』の追加」についてご議論いただければと思います。この点に関して、どの点でも結構ですので、ご質問、ご意見お願いいたします。どなたかございませんでしょうか。

峯委員

質問なんですけれども、今、委員長のご指摘によって今回輸出を加える。その趣旨として、日本における譲渡等独占権を最終的に保護する手段だというような位置づけをお話されたのですけれども、それとの関係で、通過について、いわゆる陸揚げ説に基づいて通過も含むというふうにする解釈、これが成り立ち得るのでしょうか。

田川審議室長

お答えします。独占権を保護するという観点、通過はまた実態として、例えば日本に一旦輸入をされて、それが日本発ということでまた輸出をされているという実態があって、そういうところで水際措置として押さえていくかという1つ政策論ございますけれども、輸入について通関説をとるか、あるいは陸揚げ説をとるかということと、独占的に利益を保護しなければならないというのは別の議論ではないかと考えておりますが、いずれにしても、通過につきましても、我が国の権利者の権利の万全を期すという観点からは必要なことではないかと考えております。

大渕委員長

これは今のお考えでは、要するに、税関の関係の法規の点は別として、特許法としては陸揚げ説を採って、保税地域に入ってくるものも基本的に輸入だということになるわけですか。

田川審議室長

一旦日本に陸揚げされたものは日本の意匠権を侵害するものという整理になると思います。

大渕委員長

海外から保税地域に入ることが輸入に当たるのであれば、その保税地域から再度海外に出ることは輸出に当たることとなるのでしょうが、輸入で侵害するものについては、基本的には輸入で侵害となるので止めるべきものとなり、それを止めるための最後の手段が今度は輸出だと、そういうことになるわけですか。

田川審議室長

そうでございます。

光主委員

差し止めるときは、これはどこで止めるかといったら税関で一応止めるということになりますね。ということは、類似判断はどういうふうにして、どうやって税関で差し止めて、どういうふうなルーチンというか、どういった手続、実体法でいくと、最終的には税関で止めることになると思うんですが、それはどういうふうな手続、その点、議論されているのかどうか、ご確認いただければと思います。

田川審議室長

ご指摘のとおり、実際にこうした輸出あるいは通過といったものを規制するためには、水際でどういう制度設計をするかということが重要なところでございまして、財務省ともいろいろ議論をしているところでございます。財務省もご承知のとおり、現在、知的財産権法の侵害行為になるということを前提にして、知的財産侵害物品の輸出、積み戻し、通過の1形態でございますが、こうしたことについて規制をするという制度について検討していると聞いているところでございます。
具体的には類似判断、それはまさしく水際での措置をどういうふうにとっていくかということでさらに具体的な制度設計の問題かというふうに思っております。

大渕委員長

今まで出た点に関連してでも、その他の点でも結構ですので、ご質問、ご意見をお願いいたします。水谷委員、どうぞ。

水谷委員

ちょっと細かいことを伺いますけれども、今の輸出につきましては、その内容として、国外者への譲渡、貸渡しというような法律行為といってよい行為、国外者への搬出という事実行為そのものといってよい行為の両方含めて考えていらっしゃるということで伺ったのですけれども、細かい質問というのは、例えば意匠法に39条という損害額の推定規定があります。これは特許法で言えば102条に相当するものですけれども、39条の適用にあたっては、この事実行為としての輸出、あるいは輸出概念を含んでいる通過ですか、このあたりはどのようにお考えになっているのか、ちょっと伺いたいと思います。

貴田審議企画班長

まず、今回追加します輸出というのは事実行為として国外に搬出する行為ということですので、それによる相当因果関係にある損害を算定する場合には、当該事実行為に基づいて何らかの損害があったか、なかったかということを決める必要がございまして、単純にここでいうところの算定ルールが類推適用されるということにはならないのではないかと思います。それから、通過についても同様の問題があるのではないかと思います。

水谷委員

輸出の場合に、先ほどのご説明で、法律行為としての譲渡、貸渡しの場合もあるだろうというふうにおっしゃったのですけれども、この場合の譲渡につきましては、例えばクロスボーダーのタイプの譲渡で、国境をまたがった取引の場合もあるでしょう。あまり細かい議論をしてもしようがないんですが、国境をまたがる譲渡の場合はどんなふうにお考えになるでしょうか。

貴田審議企画班長

譲渡としては既に現行法上実施行為の中に含まれていまして、そういう前提で39条の規定も成り立っているわけです。制定当時の考え方それ以降の裁判所の判断等々が尊重されるべきなのだろうと思いますけれども、今回、明確化をするに当たって、海外に向けた譲渡が入ることを明確化するに当たって、通常の譲渡と同じように39条を解釈すると可能性は当然残っていると思います。ただ、通常の譲渡とはやや前提が違っているというような解釈も可能だと思いますので、そこは裁判所において適切に判断されるべきだというふうに思います。

大渕委員長

今、水谷委員からご質問のあった点は、細かい点ではあるのですが、多分、法的にいいますと、損害賠償を考える際には、実際に運用した場合避けて通れない重要な問題点となるものですので、ご指摘いただきましてありがとうございました。
今の事務局からご説明があった点を私なりに理解したところでは、要するに法39条を使わずに民法709条だけで損害賠償を請求することもできるわけですが、その際には相当因果関係の範囲というような一般的な枠組みの中で考えていくこととなり、それはそれで最終的には司法判断云々ということになると思うのですが、ここでより検討する必要があるのが法39条の規定を使った場合にどうなるかという点であり、これについては2つに分かれて、譲渡、貸渡しという法律行為と、搬出という事実行為とがあるのですが、さらに譲渡、貸渡しの中にも譲渡と貸渡しの両方があり、立案者の方でご説明があったのは、条文には譲渡だけが書いてあるのですが、貸渡しその他については、その実態に応じて類推適用できるものはしてくださいという説明だったので、そういう意味で譲渡以外のものは類推適用に当たるかというところの判断になるし、それから、譲渡自体についても、立法した際の譲渡として念頭に置かれていたのは在内者同士の譲渡であるので、そこに限定されるのか、されないかというのは、またもう1つの解釈問題になるというように、かなり複雑にはなりますけれども、整理すると、そういうことになるのではないかと。それをどちらに決めるかというのは最終的には司法判断において、規定の趣旨その他に基づいて決めることになるのでしょうが、理解の枠組みとしては今のような理解でよろしいのでしょうか。

貴田審議企画班長

はい。

大渕委員長

ということですが、その点も含めまして、最低限度は検討した上でここの議論をせざるを得ませんので、そういう意味では水谷委員には貴重なご指摘をいただいたかと思っております。
それでは、今まで出た点に関連するのでも、それ以外のでも結構ですが、ご質問、ご意見お願いいたします。
それでは時間の関係もございますので、また後に、適宜この点にも戻っていただくことにいたしまして、その次の6ページ以下、「II.無審査登録制度の導入によるダブルトラック化について」、この部分についてご議論いただければと思います。この点、どなたからでも結構ですので、ご意見いかがでしょうか。

山本(為)委員

きょうの結論が一応ダブルトラック化を見送るという形に書いていらっしゃると思うんですけれども、それは非常に結構だと思うんです。審査されることによって意義があるというふうに感じておりますので、無審査でということになりますと、意匠それ自体の意味が希薄になってくるということで非常にいい結論ではないかと私は思っております。
そのスピードアップという部分についてはいろいろ知恵を出せばできるのではないかと考えてきましたので、このご意見で結構でございます。

大渕委員長

ほかにいかがでしょうか。岡崎委員、どうぞ。

岡崎委員

知財協としましても、権利の安定性を最重要視したい考え方でおりますので、この方向性でお願いしたいと思います。

菅井委員

私も最後のまとめのところで、結果的に審査制度の維持という形で今回提案されているということで賛成の立場でございます。官民合同のIIPPFにおいても中国に様々な要請を行っているわけですけれども、あの中でも運用する知財制度が相当成熟してこないと無審査は権利の濫用を招く為、審査制度を導入して欲しいと要請しております。ヨーロッパの無審査は、まねすることが恥という環境の中で成立しているのではないかと思っております。そういう意味ではまだ少し時期が早いのではないかということと、そういった産業界の要請であるという認識もございますので、そういった面でも審査を経た安定的な意匠権を重視する今回ご提案は良い方向と考えます。
以上です。

峯委員

弁理士会としても無審査反対ということで意見書を出させていただきましたのですが、各理由づけについて、かなり混乱が見えるように思います。混乱が見えるといいますのは、実用新案法型から著作権法型までそれぞれメリット・デメリットいろいろあって、そこのところ、各無審査制度に対する評価の中では、一番デメリット的なところ、そこを挙げてよくないねというような判断が示されているような気がいたします。ですから、今度いつこういう議論が出てくるかわかりませんけれども、せっかくの機会ですので、どのような議論がなされて、どこがどう評価されて、どこがいけないのかということをもう少し詳細にお書きになっていただいた方が将来につながるかなという気がしております。
それから、もう一点、無審査導入、時期尚早という理由の中で、データベースが整備されてないということがあります。これはここにもお書きになっていただいているのですけれども、単に商用データベースがないということだけではなくて、意匠の新規性等の判断においては、いわゆる公報以外のデータ、これが極めて重要だと。それがいまだ整備されてない現状、これをぜひとも記述していただきたいと思います。

大渕委員長

ほかにいかがでしょうか。これは基本的にはまとめのところにありますとおり、直ちに導入する環境にはないということで、賛成のご意見を多数いただきまして、加えて、今、峯委員からは、将来のことも考えた記載にしてほしいということ等がありまして、必ずしも結論だけの話でもないのですが、この点について、今まで出た点に関連してでも、その他の点でも結構でございますので、ご質問、ご意見いかがでしょうか。ほかにいかがでしょうか。
それでは、峯委員の方から、もう少し将来に向けて、デメリットだけでなくて、メリットも、もう少しきめ細かく評価をした上での結論としてはどうかというご指摘をいただきましたので、どのような書きぶりとするかについては、ご検討いただければと思います。
それでは、この点につきましても、適宜また戻っていただくことにいたしまして、資料1というペーパーの後半部分の議論に移ってまいりたいと思います。これにつきましては、10ページ以下IIIの「関連意匠制度の見直し」、14ページ以下IVの「秘密意匠制度の見直しについて」、16ページ以下Vの「意匠権の存続期間の延長に伴う登録料の見直し」という3項目がございますが、まず前提といたしまして、このペーパーについて事務局からご説明をお願いいたします。

田川審議室長

それでは、後半部分、「関連意匠制度の見直し」、「秘密意匠制度の見直しについて」、「意匠権の存続期間の延長に伴う登録料の見直し」についてご説明をいたします。
まず、「関連意匠制度の見直し」につきまして、問題の所在ですが、現行の関連意匠制度では、デザインの開発段階において、1つのデザイン・コンセプトから多くの意匠が同時期に創作をされるという実態に即し、同日に同一出願人により出願された場合に複数の出願のうち一つを本意匠として、それに類似します出願を関連意匠として、例えば分離移転の禁止、存続期間の同時終了等の制限を設けて、かつそれぞれが独自の意匠権としての効力を有するものとして登録を認めるという制度でございます。これによって、一群のデザイン・バリエーションを幅広く保護するものになっているわけでございます。
したがいまして、現在同日の出願について認めるということですので、後日同一出願人より出願をされた場合には関連意匠とは認められないということです。先に出願された本人の意匠がその場合には、その先の本人の意匠が引例となって後日の出願は拒絶されるということでございます。ただし、確認でございますが、後日の改良意匠であっても、もともとの本意匠又は関連意匠の類似範囲に入っている改良意匠であれば、それは保護されるということになります。
しかしながら、昨今の商品開発戦略においては、開発の当初から全てのデザインのバリエーションを創作する場合に限らずに、市場に投入した後に追加的にデザインのバリエーションを開発するといった事例もあるわけでございます。また、同日の出願の場合のみ認めるという現行の制度下においては、最初の段階で図面や資料を準備しなければならないということで、とりあえず当初の実施品に係る本意匠から先行して出願をするといった柔軟な出願方法に対応できないという指摘があるところでございます。
これまでの検討の内容につきましては、後日に出願された改良意匠についても、本意匠の審査係属中であれば、関連意匠として登録できるようにすることについて検討を行ったところでございます。小委員会でのご議論ですけれども、2年又は4年程度のタイミングでデザインの変更を加える場合があるため、後日の改良意匠を関連意匠として登録することを可能とする期間を例えば4年程度又は本意匠の存続期間中にすべきというご意見があったところでございます。また、関連意匠登録によってデザインを模倣する者への牽制効果、税関における差し止めを容易にする効果があるということで、既に廃止をしております類似意匠制度も参考に本意匠の効力範囲の明確化に資する制度を検討すべきというご指摘でございます。
一方で、類似意匠制度を廃止したときの経緯としては、これは後日の権利の存続中、いつでも出願できるということで、その間に入るいろいろな公知意匠、あるいは他人の出願との関係で非常に錯綜して複雑になることから廃止したものですが、新規性の例外を認めてまで後日の改良意匠登録を認めることは以前の混乱を復活させることになるのではないか、また、模倣品の差し止めという観点からは判定等を利用することも可能ではないかというご指摘があったところでございます。
対応の方向として、まず出願の時期的制限についてですが、現行制度で同日出願のみに認められている関連意匠について、これを本意匠の公報発行までの後日出願について、関連意匠による出願登録を認めるよう時期的な制限を緩和する方向が適当であると考えるところです。
この点については、本意匠が公報発行によって公知になった後であっても、新規性の例外として数年間又は権利存続期間中であれば認めるという考え方もあるわけですが、仮に関連意匠を長期にわたり許容する場合には、本意匠の出願と関連意匠の出願の間に時期的に、その間に介在する他人の意匠出願、あるいは公知意匠との存在によりまして、本意匠・関連意匠・公知意匠又は他人の意匠等が非常に錯綜し、かつ、これらが類似関係でいろいろ判断しなければならないということで非常に複雑な抵触関係になる可能性が高まるという問題がございます。
また、後日の関連意匠によって結果的に本意匠の権利範囲を拡張するという効果があることから、意匠公報の発行により登録意匠に係る効力範囲を確定・周知し、それにより権利侵害の予測可能性を確保するという観点からいたしましても、第三者の監視負担が増加することも懸念されるところです。
したがいまして、関連意匠に係る出願については、現行制度と同様に先願の例外として位置づけるということで、公知になった段階以降については例外としないとすることが適当ではないかと考えられるところです。
また、もう一つ、本意匠の審査係属中に限って認めるという考え方もあるわけですが、これにつきましては、本意匠の登録査定の謄本送達という出願人に予期できない事実によって期間が満了してしまうという問題もありますので、こうしたことから、本意匠の公報発行までの期間とした場合には、本意匠の登録査定の謄本の送達から時間的余裕もあると。具体的には謄本の送達から登録まで30日。かつ登録から公報発行までが大体現状で約45日と、大体2月半くらいの時間的余裕があるということで、手続の明確性をより確保する観点から、この公報発行までということでいいのではないかと考えるところでございます。
それから、2点目の本意匠の単一性としておりますが、現行の制度では出願される一群の出願のうち、その1つを本意匠としておりまして、後日の出願に係る関連意匠においても、例えば互いに非類似の複数の本意匠のいずれにも類似する関連意匠の存在が考えられるところでございます。
これにつきましては、12ページの図の方でございますが、例えば本意匠A、本意匠Bというのがございます。これ自体は類似をしてないという関係に立つわけでございますが、この間に例えば意匠Cというものがあると、本意匠A、本意匠Bと類似すると。もともとの本意匠AとBはこれは類似をしないと、こうした場合にどういった扱いをするかということでございます。これを仮に複数の本意匠が類似意匠によって結ばれるというふうにいたしますと、非常に複雑な権利関係になるということもございまして、現在の考え方と同様に、本意匠は関連意匠出願前に出願された1つの意匠を指定すると、1つだけに限って関連意匠制度とするという考え方が適当ではないかと考えられるところでございます。
秘密意匠の取扱いについては、関連意匠の出願期間を本意匠の公報発行までとした場合に、当初の公報発行時点では公知とならない秘密意匠について、これをさらに関連意匠の出願時期を引き延ばすべきかどうかという点が問題になるわけでございます。この点については、秘密意匠というのが現在の意匠制度の例外として慎重に運用しなければならないということもございます。したがいまして、秘密意匠と関連意匠とは趣旨・目的も違うということがございますし、秘密意匠の制度というのが例外的に認められていることもございますので、これについては通常意匠と同様に公報発行時までとしてはどうかと考えております。
続きまして権利範囲の確認ですが、意匠権の効力は類似範囲にまで及ぶということになっておりまして、本意匠と類似関係に立つ限りは改良意匠についても本意匠に係る意匠権の効力が及ぶというのが原則でございます。しかしながら、意匠権の類似範囲については、いちがいに類似を判断するというのが困難な場合もございますし、本意匠からマイナー・チェンジを行った意匠が本意匠の類似範囲に含まれるか否か明らかでない場合も存在するわけでございます。
また、本意匠の類似範囲の確認と、意匠公報への掲載による模倣の牽制というために本意匠の公報発行後においても関連意匠の登録を可能にできないかという要望があるところでございます。こうした問題につきましては、模倣品対策として、水際については登録意匠の類似範囲について、特許庁長官に対する意見照会を可能にする制度がございますし、国内の流通においては、判定制度の活用という考え方もできるのではないかと考えているところでございます。今後こうした判定制度等の現行制度を模倣品対策において活用する上での利便性、あるいは実効性を高めるための検討を行っていく必要があると考えられるところです。
続きまして、「秘密意匠制度の見直し」でございます。
問題の所在として、秘密意匠制度は、意匠登録出願人が意匠権の設定の登録の日から3年以内の期間を指定して、その期間、その意匠を秘密にすることができるという制度でございます。これは先願により意匠権を確保しておく必要があるものの、直ちにその実施を行わないという場合に、意匠公報が発行されることによって第三者が模倣しやすくなると、それを防止するという趣旨によるものです。
一方、近年の審査の迅速化により、出願人が意図するよりも早く意匠権の設定登録が行われるということで、実施前に意匠公報が発行されるという場合もあるわけでございまして、こうした場合に秘密意匠が現在、出願と同日となっているところが、商品の広告・販売戦略等に支障が出るというご指摘があるところです。
対応の方向として、審査の状況に応じた秘密意匠の請求へのニーズということでございます。特許庁の審査が年々短くなっているということで、場合によっては数カ月で終了すると。この場合にそのまま意匠公報の発行に至ると商品の広告・販売戦略に支障が出るという場合があるわけでございます。このような場合に対処するために秘密意匠の請求について意匠登録出願時だけでなく、自己の公報の発行時期が適切か否かを判断することができる登録査定の謄本の送達時を経過して、意匠公報発行前のある時期まで行えるようにしたいという大きなニーズがあるわけです。
一方で、特許庁の秘密意匠の請求の管理ですが、登録査定の謄本の送達後、特許庁への登録料の納付があったときは、これを受けて意匠権の設定の登録が行われ、意匠公報が発行されるということでございまして、この場合には秘密意匠については、図面の内容等を除く事項が意匠公報に掲載をされます。
特許庁において、秘密意匠の請求がなされているにもかかわらず、ミスで通常の意匠公報が誤って発行されることがないように、意匠登録の際に秘密意匠の請求を確実に認定する必要があるということでございます。
下の15ページの図がございますけれども、現在出願人の方と特許庁との間で設定登録までの手続として、まず出願人の方が出願しそれから、それに対して拒絶理由通知、登録査定というのが特許庁から来るわけでございます。さらに出願人の方が登録料を納付して、設定登録で意匠公報の発行という流れでございまして、この時期を定めないということになりますと、例えば紙で秘密意匠の請求等がなされた場合に少しずれが出てくる可能性があるということで、確実にその秘密請求の管理を行うことから、出願人の方の次のアクションでございます登録料の納付の時期、この2時点、出願のときと登録料の納付のとき、この2つの時点に限って秘密意匠の請求ができるようにしてはどうかと考えているところでございます。
16ページ、最後ですが、「意匠権の存続期間の延長に伴う登録料の見直し」でございます。現在の登録料は、第1年から3年、4年から10年、11年から15年と3期に分けた料金体系になっております。各期に納めるべき登録料は差異があるということで、権利期間が長くなるほど増額をされるということでございまして、現在ご議論いただいておりますように、現在の権利期間15年を20年にした場合に延長された期間についてどのような登録料が適切かという問題がございます。
この点につきまして、意匠権の存続期間の延長の際に現行の料金体系を維持することにいたしますと、16年から20年目の登録料が高くなるのではないかというご意見があったところでございます。また、企業サイドでは実施が終わった後でも保護したいけれども、費用の要因で権利を捨てざるを得ない状況があるということで、料金をもう少し安くするということになれば模倣品対策の観点からも有効に働くのではないかというご指摘があるところです。
対応の方向でございますが、具体的な方針は現在検討しているところですけれども、考え方として、ユーザーの方のニーズを勘案しつつ、権利期間の延長による費用負担が過剰にならないような合理的なものにしていきたいというふうに考えているところでございます。
以上でございます。

大渕委員長

丁寧なご説明をありがとうございました。
今、ご説明いただきました資料1のペーパーの後半部分の10ページ以下のIIIの「関連意匠制度の見直し」という部分と、14ページ以下のIVの「秘密意匠の見直しについて」という部分と、16ページのVの「意匠権の存続期間の延長に伴う登録料の見直について」という部分の3点ございますが、それぞれ異なるテーマでございまして、分けてご議論いただいた方がスムーズな議論に資すると思いますので、そのようにさせていただければと思います。
それでは、まず10ページ以下の「関連意匠制度の見直し」という点につきまして、どなたからでも結構ですので、ご質問、ご意見をお願いいたします。

峯委員

細かいところなんですけれども、12ページの絵に沿っていきますと、意匠Cを出願した場合、1つの本意匠を指定しろというお話ですが、この場合、最先の本意匠Aを指定するというようなことでお考えでしょうか。あるいはA、Bどちらでもいいというようなお考えか。

瓜本意匠課長

お答えします。この例は前回の改正において関連意匠制度を導入した際に同日出願の扱いをご説明するときにも、同日という同じ平面上で三連の形でご説明したものと同じ関係にあるものです。それが時期的に前後するとこのようにばらついた状態となり、そのような場合にはどうなるかということをご説明するために用意したわけです。実際上こういったケースがどの程度あるのかという点にいろいろ問題があると思いますが、この場合ですと、AまたはBのどちらを本意匠としても意匠Cは登録にならないということになるかと思います。

菅井委員

今回の関連意匠につきましては独自効力を持つということで、私どもの自動車業界では、何とかこの制度の改善でもって、さらに権利行使を模倣品対策に使いたいとご要望してきたわけです。しかしながら、今回、ご提案の関連意匠の中では、実際に権利行使の側面と権利の設定行為というのはなかなか同時に実現できないのかなと感じております。そういった中で、こちらの権利の範囲の確認というところに意見照会、判定制度という活用によって模倣品対策はできるのではないかというご提案がございます。
しかしながら、現在のこの判定制度、意見照会、私ども実際に侵害品を特定した制度として運用しております。しかし自らの登録意匠に対する類似性の判定を請求した経験はございません。これは前回も申しましたけれども、もし、こういった形での実際の権利の活用場面での利便性を上げるために、ぜひ、さらに深い検討をお願いしたいと思っております。
これは特にどういったところかと申しますと、今の判定制度、意見照会というのはどれだけ法的な効力があるのか。当然権利は1つでございます。そういった意味で全く同じものであればだれも迷わないのですけれども、同一では無く類似するものという観点で、模倣者もだんだんと利口になってきて少しずつ変えてきているものにどう対抗できるかが非常に大きな課題であるわけです。そういった意味で、従来のイ号デザインと登録意匠の判定・意見照会では無く、同一出願人の意匠間における類比判定結果が権利行使の際にどの様な法的実効性を担保できるのかという考え方をぜひご検討いただければと思っています。
それから、もう一つ、申し上げましたのは、まねされてしまっては実はもう遅いという話も申し上げました。そういった意味では何らかの牽制力が働く、事前の公示機能、公示と申しますのは、前は公報が発行されれば、それが一番ありがたいというお話をしたわけですけれども、そういったものをもっとだれでもたやすく、あるいは見ざるを得ない、公示機能を何とか併せて検討できないものかなと思っております。そういう意味で牽制できるということと、法的な効力が判定等に持たせていくような形、あるいは判定を求めたときに類似しないと判断されたときは、独自の意匠の登録に移行できるとか、あるいは同時出願しろというような運用面で設権行為とのリンクなんかも考えていただきますと、我々としては非常に使いやすい制度として関連意匠制度の改正ではなく、別の手法としての機能として持っていれば使えるのではないかという判断をしております。
当然、類似したときには類似する関連意匠公報として発行して頂く点、あるいは類似しない場合には出願行為とのリンクを図って頂きたい点等、いろいろと要望がございますので、今回あまり詳しくは言いませんけれども、可能性としてはそういったものの中で模倣品対策の具体的な手法を模索していくようなのかという感想でございます。
以上でございます。

岡崎委員

我々、知財協も関連意匠制度はデザイン・ブランディングの観点から非常に重要な制度と考えております。今回、審議室からご提案のありました公報発行までという案に加えまして、その後の対応ということで、例えば類否の判断を簡便にできるような仕組み、そしてその結果を公示するような仕組み、この様な仕組みを考えていただければ、デザイン・ブランディングの観点からも、フルに活用できるのではないかと思います。そのような観点から類否の簡便な確認方法及び公示方法をご検討いただければと思っております。

菅井委員

もう一つ、この関連意匠制度にかかわりまして、秘密意匠の取扱いのところで理解しづらい部分があるのですけれども、これは秘密意匠制度の図面がない公報発行日も最終日限ということでのご提案でしょうか。

田川審議室長

秘密意匠の場合の、図面がない段階でも、公報発行までとして扱うということですので、秘密意匠にして、図面が出るまでではなくて、あくまでも公報が図面の有る、なしにかかわらず、出た段階までという理解でございます。

菅井委員

基本的に秘密意匠の公報の発行日を図面のついた公報の発行、あるいは当然その前に商品が出てしまっているという公知が当然でございますけれども、少なくともそれ以前に商品が出ていないのであれば、どうして図面のついた公報ではまずいのかと思うのですけれども、そういった形での期限というのは設定が難しいのでしょうか。

貴田審議企画班長

まず、秘密請求したものとしなかったものとの公平性の問題というのがまず1点あろうかと思います。そういう秘密請求したものについて、後から関連意匠が追加できるということですと、出願人間の公平ということ以外にも第三者との関係、権利者以外の方々との関係において、事後的な追加というのがいつまで来るかわからないと、そういう不安定性があるのだろうと思います。
それから、公報発行という時点においては、図面のある、なしにかかわらず、そういう権利設定がされたということ自身は公表されることは共通ですので、その3点において、秘密の場合についてまで認めるのは難しいのではないかと思います。
少しここでご説明させていただいておりますけれども、そもそも秘密意匠制度の趣旨・目的というところからしても、リンクをかけることが本来の趣旨ではないのではないかということであります。

大渕委員長

よろしいでしょうか。今、秘密意匠にも一部関連した点で両方にまたがる点でのご質問がありましたが、ほかにIIIの「関連意匠制度の見直し」の部分について、ご質問、ご意見ございませんでしょうか。山本委員、どうぞ。

山本(為)委員

関連意匠を見直されて、そして本意匠の公開発行までの期間ということでここでご提案いただいておるわけですけれども、これは非常にわかりやすくいいスタイルではないかと思います。これをベースに、一度には出さないけれども、ある時間をもって、また、仕事を見直してもう一度意匠を出そうと、こういうことが決定できるということで非常にいいお考えで結構だと思います。

大渕委員長

ほかにございませんでしょうか。それでは、また、適宜戻っていただくことにして、一部先ほど関連して取り扱われておりましたが、IV「秘密意匠制度の見直しについて」という部分について、ご質問、ご意見をお願いいたします。どなたかございませんでしょうか。菅井委員。

菅井委員

先ほどと重複します、すいません。こちらに秘密意匠の目的ということで明確になっておりますけれども、今の早期審査の中でいきますと、図面が出てしまうのが早過ぎるケースを何とかとして防ぎたいというのが企業なり意匠権者の意思でございます。目的としては明確に秘密意匠を使う場合と使わない場合の不公平というのは、私は権利者が選んでいるというふうに思います。そういう意味で、先ほどの不公平という観点での関連意匠との絡みでいきますとちょっと理解に苦しむ。特許法の29条の2の先願という意味は出願技術が公開されていない事であり、秘密意匠では図面の公報が発行されるまでということと解釈してもよろしいのではないかと思います。ここはぜひご検討いただきたいと思います。意見として申し述べました。

大渕委員長

ほかにいかがでしょうか。ほかにございませんか。
それでは、また、適宜戻っていただくことにして、最後の16ページでありますが、Vの「意匠権の存続期間の延長に伴う登録料の見直しについて」、この点について、ご質問、ご意見をお願いいたします。

山本(為)委員

よろしいでしょうか。

大渕委員長

お願いいたします。

山本(為)委員

私、この意匠権の存続期間の問題は一度お話させていただいたのですけれども、著作権とかそういうことに絡むことで、著作権でいいものは保護すべきだとか、意見もあるようですけれども、この意匠権というものも20年にこだわらず、もっと長く保護するシステムを創設されたらいいと思うんです。そして意匠年金が高くても、お支払いになりたいという言われる方に払ってもらったらいいと思うんです。本当に笑われるけれども、実際にレプリカとか、そういうものが今値打ちの出る時代なんですよ。それが1つの、日本なら日本で、いくら払っても残したいという人に対しての道をつくっておくということの意味が非常にこれから出てくる時代だと思うんですよ。これは日本だけでなくて、韓国でもまた中国でも、アメリカでも同じようなことが当然あると思うので、そういう意味で、お支払いにもなれるし、また、意味が生ずるものをもう一遍システムとしてつくって、そして残すということを、日本から言い出してもいいのではないかと思うんです。

菅井委員

私も三度目くらいになります。更新という手続が商標にはございます。そういったものも含めて、意匠の場合も商標の場合もブランドのイメージという観点で非常に類似した機能がございます。技術と違いまして、意匠の場合、それをまねなければいけない必然性は技術とは比較にならないと思っておりまして、むしろ商標と同様にデザインブランドイメージを確立し、それを長期に維持したいという思いは企業にとっては非常に大事になっております。その観点で、私も極力可能な長い期間、25年という実績がヨーロッパにございますけれども、そういったもので更新という手続を踏んで長く維持したい。料金のお話は、それはできるだけ安い方がいいのですけれども、権利期間と料金体系を今後とも継続してご検討いただければと思います。
以上です。

大渕委員長

ほかにいかがでしょうか、今の議論に関連してでも結構ですが。岡崎委員、どうぞ。

岡崎委員

企業の中で、今出ましたように、デザインをブランド化していこうという傾向にありますので、ブランドになるデザインの意匠権というのは、我々としても長ければ長いほどいいと思います。その様な意匠権を蓄積していきましたら、企業の中では何百件という意匠権を持っている会社もありますし、更には1,000件以上の意匠権を持っている会社もあると思います。そういう意味で、料金も管理上重要なファクターになってきますので、できれば安い方がいいなと思います。
特許制度の場合、あるところまで行きましたら横ばいになります。例えばこのような制度とか、あるいは全体の総額をご考慮いただいて、15年から20年の間は安くするとか、そういう方策を検討していただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

峯委員

今、ブランド化という、あるいはブランド保護という観点からの意匠保護というお話が出ましたけれども、そこはやはり意匠保護と商標保護、標識保護とは全く違うのだという前提での意匠制度の制度設計、これが必要だと思います。だからといって、保護期間を延ばすか延ばさないか、これはまた別の話というふうに位置づけて議論していただけたらと思います。

大渕委員長

ほかにいかがでしょうか、今まで出た点でもその他の点でも結構です。ほかにございませんでしょうか。
それでは、本日のこの資料1について、IからVまでご議論いただいたわけですが、時間的に後の方で検討した論点に触発されて前の論点について、また何かご質問、ご意見等の出る点もあり得ようかと思います。本日の資料1全体につきまして、何かご質問、ご意見等ございましたらお願いいたします。ほかに関連して、どなたかございませんでしょうか。
ほかにございませんか。今回までは時間を超えてしまっていたことが多かったのですが、本日は逆に、こちらの方でせかしすぎてしまったのかもしれませんが、若干時間に余裕がございます。ご質問、ご意見等何かございましたら。
それでは、特にないようでありましたら、本日の小委員会の議論はこれぐらいにしたいと思います。
最後になりましたが、今後のスケジュールについて、事務局からご説明をお願いいたします。

田川審議室長

今後のスケジュールでございますが、次回(第9回)は12月20日(火曜日)13時30分から、次々回(第10回)は来年年明けの1月30日(月曜日)13時30分から、それぞれ開催を予定しております。
以上でございます。

大渕委員長

それでは、特に何もないようでありましたら、予定時間より早めではありますが、以上をもちまして、産業構造審議会知的財産政策部会の第8回意匠制度小委員会を閉会させていただきます。本日も熱心なご議論をありがとうございました。

閉会

[更新日 2006年1月23日]

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