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第12回意匠制度小委員会 議事要旨

平成23年1月

経済産業省

12月14日(火曜日)10時00分~12時00分に開催された、産業構造審議会 知的財産政策部会 第12回意匠制度小委員会(委員長:大渕 哲也 東京大学大学院 法学政治学研究科教授)について、概要は以下のとおり。

1.検討の背景について

資料1「検討の背景について」に沿って事務局から説明を行った。委員から出された意見の概要は、以下のとおり。

  • 国際的な課題について、我が国の特許庁がイニシアティブを取って、特に新興国等の法整備が不十分あるいは意匠制度の運用がまだ不明確な国に、我が国の意匠制度に近しい形で調和あるいは統一化を進めるよう働きかけていただきたい。
  • 今後の我が国の競争力を考えたときに、技術とデザインが重要。意匠権を含めた知財マネジメントができる人材育成が重要であり、従来の概念に捕らわれない積極的な知財活用が可能となるよう、本審議会での議論に非常に期待している。
  • 昨今、情報機器に限らず、画面を備え、ユーザーインターフェースを使う機器がかなり増えている。デジタル化社会への対応について、画面デザインの保護の拡充を引き続き検討していただきたい。
  • 今次改正で、検討の対象となっている意匠登録料の見直しについては、新たな権利化の原資となるものであり、新たな創作の保護のために、是非活用したい。
  • 意匠制度の有用性について積極的な広報をすべき。
  • 意匠登録料は年を経るにしたがって増額になるが、後年度の負担が中小企業にとって厳しいので、その点を改善してもらいたい。
  • デジタル化社会の対応、画面デザインの保護の拡充のために、我が国の意匠法の根本である物品の考え方を緩やかにし、必ずしも物品に縛られない意匠の保護を考えていただきたい。物品に縛られて権利範囲が非常に狭いという面は、創作者にとって不本意なことであろうと考えられる。
  • 近年出願数が増えている国は無審査制度をとっている国が多く、我が国の意匠制度も、無審査とすべきか、従来どおりの実体審査制度を維持した方がいいのか、十分に検討すべき課題であろうと考えられる。
  • 無審査登録制度や一部の物品分野での無審査登録制度の検討等、意匠独自の性質に基づく、より効果的に保護活用し産業の発達に寄与できる制度を検討していただきたい。
  • 今後、個人のデザイン事務所等にとっても出願しやすいよう意匠制度を見直していただきたい。

2.特許法改正検討項目の意匠法への波及等について

資料2「特許法改正検討項目の意匠法への波及等について(案)」及び参考資料1「特許法改正検討項目の意匠法への波及等について【一覧表】」に沿って事務局から説明を行ったところ、資料2及び参考資料1に示された方向性で了承された。事務局からの説明に対し、委員から出された意見の概要は、以下のとおり。

登録対抗制度の見直し

意匠権を積極的にライセンスすることは多くないものの、事業譲渡やM&A、技術標準のライセンスの際に関連する特許権と意匠権とを組み合わせてライセンスをするということもある。意匠を特許と足並みをそろえて当然対抗にすることに特に問題はなく、賛成である。

無効審判の確定審決の第三者効の在り方

  • 同一事実・同一証拠で何度も争われると、権利者の立場からすると極めて負担になるおそれがあり、同一事実、同一証拠に基づく無効審判は、請求者を利害関係人に限定する案も考え得るのではないか。
  • 意匠は物品の外観であることから、同一証拠に基づき複数回争っても判断結果が変化する可能性は低いと考えるが、第三者の利益等を考慮した今回の改正には基本的に賛成。
  • 本規定は、憲法上の裁判を受ける権利を制限している面もあり、第三者に不再理効を認める制度は廃止すべき。
  • 本規定はオーストリア特許法の規定に倣い導入したものであるが、オーストリアでは、当該規定は憲法裁判所において違憲との判決を受けて、既に廃止されている。

冒認出願等に関する救済措置の整備

  • 特許について記載されている重複特許の防止に関して(資料2の16ページ)、意匠制度には関連意匠制度があるので、冒認された意匠と多少異なる意匠を真の権利者が出願してきた場合には、先の意匠を移転請求した後、真の権利者の出願を関連意匠として認めると整理することも、不可能ではないかもしれない。このように、意匠法の場合には、特許法とは異なり、重複的な登録が不適切ではない場面もありえるのではないか。
  • 資料2の17ページ1番最後の段落にあるような冒認者が創作した意匠は、直ちに共同出願違反となるわけではなく、事実上、共同出願違反になる場合がほとんどであると考えられる。
  • 関連意匠の一部が共同出願違反でない場合に真の権利者による移転が認められないことになるが、その場合でも、真の権利者が当該意匠の実施をした場合に侵害にあたらないとの解釈は可能であると考えられ、そうだとすれば、今回の関連意匠に係る整理は全体として説得的なものとなる。
  • 真の権利者に権利を戻すという趣旨に賛成である。
  • 冒認や共同出願違反の問題は、フリーランスデザイナーと企業の間でよく出る話である。何十もの案を作成しても、採用されるものは1つという契約を予め結んでいたにもかかわらず、その他のデザインまで公表されることもある。したがって、資料にあるように明快に整理されれば、仕事がやりやすくなるのは明白である。
  • 冒認出願を事前に防ぐ観点からは、例えば、出願にあたり弁護士が権利関係に関するチェックリストを作成すれば、トラブルが少なくなるのではないか。

権利の回復規定の見直し

  • 善意の立場で権利の満了を待っている者もおり、権利の回復できる期間を特許法に合わせる必要はないのではないか。
  • 時期的要件についても緩和されることを歓迎し、権利の回復できる期間を特許と同様にすることに異論はない。

意匠登録料の見直し

  • 登録料の後年度負担の引下げを歓迎する。
  • 意匠は必ずしも積極的にライセンスをしたり、クロスライセンスするという性質のものではないので、意匠の登録料は累進制となじまない面がある。
  • 今後、出願時や初期の登録料負担も軽減されれば、更に活用の機会が高まると考える。
  • 今後、関連意匠を追加する場合や、維持する上での管理負担等を減らす考え方から意匠の登録料の見直しを検討することも考え得る。
  • 登録料の後年度負担の引下げが、金銭的に余裕がある大企業による網目状の権利維持につながると、個人事務所等は不利になるのではと若干の懸念がある。

[更新日 2011年1月13日]