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第1回通常実施権等登録制度ワーキンググループ 議事録

  1. 日時:平成19年7月26日(木曜日)10時00分~12時00分
  2. 場所:特許庁 特別会議室
  3. 出席委員:竹田座長、浅井委員、鎌田委員、島並委員、茶園委員、長濱委員、中山委員、前田委員、松田委員、守屋委員
  4. 議題:
    1. 通常実施権等登録制度ワーキンググループの設置について
    2. 通常実施権等登録制度の現状と課題について
    3. 通常実施権等登録制度の見直しに係る論点について
    4. 今後のスケジュール(案)について

開会

間庭審議室長

定刻になりましたので、ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会の第1回通常実施権等登録制度ワーキンググループを開会いたします。
私は事務局の工業所有権制度改正審議室長の間庭と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
本ワーキンググループにつきましては、本年7月に特許制度小委員会委員各位に、その設置につきまして書面にて御審議いただきまして、設置が決定されております。
座長につきましては、産業構造審議会運営規程により小委員長が指名する者とされておりまして、本ワーキンググループについては、中山信弘特許制度小委員長から、竹田綜合法律事務所弁護士・弁理士の竹田稔委員を御推薦いただいておりまして、竹田委員御本人にも御内諾をちょうだいしておりますので、竹田委員にお願いいたしたく存じます。

座長あいさつ

間庭審議室長

竹田座長から、一言ごあいさつをお願いいたします。

竹田座長

御指名により座長を務めさせていただきます竹田です。よろしくお願いいたします。
御承知のとおり、特許法は、通常実施権はその登録をしたときは、その特許権もしくは専用実施権をその後に取得したものに対して、その効力を生ずると規定しております。
この規定は特許権が所有権等の物権同様の排他的、独占的権利であって、特許権について設定された通常実施権というのは、相当の期間、継続するということを前提として、法律関係の安定のために、この設定登録をすれば許諾者から特許権または通常実施権を取得したものに対して対抗することができるとするものであります。したがって、通常実施権の設定登録を経たものは、特許権者が特許権を譲渡した場合でも、譲受人に対して通常実施権を対抗することができますし、ライセンサーが破産しても改正破産法56条によって破産管財人の解除権は制限されますから、ライセンシーの通常実施権は保護されるわけです。
しかし、実務上は、設定登録される事例は極めて少ないのが実情であります。その理由はさまざまありましょうが、設定された通常実施権の内容が公開されると、企業の知財戦略に支障を来すということや、通常実施権が登録されると特許権等の処分が制約されるということ、さらに、このことに加えまして、多数の特許権を対象とする包括クロスライセンス契約の場合には、契約内容の特定が困難であるだけでなくて、多額の登録費用や登録に伴う事務負担が強いられることなどが挙げられていると思います。
このうち包括クロスライセンス契約については、このたび産業活力再生特別措置法の改正法案が成立して、時限立法としての措置ではありますけれども、登録事項はライセンサー、ライセンシー名、契約内容、存続期間、地域、対象外特許権などで、しかも、そのうち一般にはライセンサーの名前と登録件数のみが開示されて、譲受人も取得後にライセンシー名の開示を受けられるという制度ができることになりました。
このような状況におきまして、今回のワーキンググループの目的は、特許法の定める通常実施権の設定登録制度を、その本来の趣旨を損なうことなく利用者のニーズにこたえて実効性のあるものにしていくために、どのような法改正が必要かについて検討していただくことにあると理解しております。初めに結論ありきでなくて、委員各位から忌憚のない御意見を述べていただいて、適切妥当な改正に寄与することができますよう委員各位の御協力をお願い申し上げます。
簡単ですが、一言ごあいさつさせていただきました。

間庭審議室長

どうもありがとうございました。
以後の議事進行を竹田座長にお願いいたします。

委員紹介

竹田座長

本日は第1回のワーキンググループでございますので、事務局から委員の皆様及び特許庁側の出席者の御紹介をお願いいたします。

間庭審議室長

委員のあいうえお順で御紹介いたします。

 

三菱化学株式会社理事、契約・ライセンス室長の浅井委員。

早稲田大学大学院法務研究科教授の鎌田委員。

神戸大学大学院法学研究科教授の島並委員。

大阪大学大学院高等司法研究科教授の茶園委員。

日本弁理士会執行理事、長濱国際特許事務所弁理士の長濱委員。

東京大学大学院法学政治学研究科教授の中山委員。

東京医科歯科大学知的財産本部技術移転センター長、農工大TLO株式会社シニアアドバイザーの前田委員。

長島・大野・常松法律事務所弁護士の松田委員。

日本知的財産協会常務理事、ソニー株式会社知的財産センター長の守屋委員。

なお、本日、欠席されている委員が4名おられます。IPトレーディングジャパン株式会社代表取締役社長兼CEOの梅原委員。東京大学大学院法学政治学研究科教授の大渕委員。一橋大学大学院法学研究科教授の中田委員。一橋大学大学院法学研究科教授の山本委員。4名の方が御欠席でございます。

 

特許庁側の出席でございます。

 

長官の肥塚、総務部長の長尾、審査業務部長の武濤、特許審査第一部長の芝、特許審査第二部長の南、特許審査第四部長の櫻井、審判部長の高倉、首席審判長の梅田、総務課長の小川、登録室長の高柳、制度改正審議室の亀山と福田でございます。

竹田座長

どうもありがとうございました。
皆様、よろしくお願いいたします。

特許庁長官あいさつ

竹田座長

議事に入る前に、肥塚特許庁長官から一言ごあいさつをお願いいたします。

肥塚特許庁長官

竹田先生、中山先生初めとして、諸先生には暑いところをお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。よろしくお願いいたします。
特許制度、知財制度は、イノベーションを支える、あるいはグローバルにもイノベーションを支えるということで、スピーディにいろんなことに取り組んでいかなければいかんと思っております。グローバルにも、いろんな制度のハーモナイゼーションあるいは、その審査の迅速化ということで、グローバルにも私どもも頑張っていかなければいかんと考えております。
その中で、企業の知財戦略というのも、御存じのとおり、その事業あるいは研究開発するということと密接な関係を持って大きな変化を求められております。それから、私、直前までエレクトロニクス産業も担当していたんですけれども、引き続き事業の再構築というか、選択と集中というか、ダイナミックな産業界の動きというのも、グローバルに続いていると、引き続き行われている。
そういう背景の中で、先ほど竹田先生のお話がございましたけれども、今回、御議論いただく通常実施権の登録制度というのも、そういう特許のライセンス活用あるいは契約についてということで、非常に重要なインフラだと考えております。
そういう時代あるいは企業の戦略の変化という中で、時代に合って、しかも実務的に使いやすい制度にどうしたらいいのかということを用意しなきゃいかんと考えておりますので、御専門の立場から御議論をお願いしたいと考えております。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

竹田座長

ありがとうございました。

配付資料確認

竹田座長

事務局で、資料を用意、配付いたしておりますので、御確認をお願いいたします。

間庭審議室長

配付資料を確認させていただきます。
本日の配付資料は、資料1「通常実施権等登録制度ワーキンググループの審議内容の公開について」、資料2「通常実施権等登録制度ワーキンググループの設置について」、資料3「通常実施権等登録制度の現状と課題について」、資料4「通常実施権等登録制度の見直しに係る論点について」、資料5「今後のスケジュール(案)について」、また参考資料として、1-1として参考データ集、1-2として特許登録原簿のサンプル、1-3として諸外国における特許権に係る通常実施権の登録制度について、参考資料2として参照条文でございます。以上、9点でございます。不足はございませんでしょうか。
あと、お願いがございます。御発言なさる際は、お手元のマイクの緑色のスイッチをお入れいただきまして御発言いただくようにお願いいたします。
以上でございます。

竹田座長

ありがとうございました。

審議内容の公開について

竹田座長

議題に先立ちまして、このワーキンググループの公開について事務局から御説明の上、皆様の御同意を得ておきたいと思います。

間庭審議室長

資料1をごらんください。産業構造審議会は、その運営規程によりまして、部会や小委員会、ワーキンググループを含めまして、原則公開でございます。本ワーキンググループにおきましては、委員各位の率直かつ自由な意見交換を確保するために、会議の傍聴は受けないということとさせていただきたいと思います。ただ、配付資料、議事要旨、また議事録については、発言者名を記載して、会議後に特許庁ホームページに掲載させていただきたいと存じております。

竹田座長

ただいまの事務局からの説明について、御異議はございませんでしょうか。

 

〔「異議なし」の声あり〕

竹田座長

ありがとうございました。

資料説明

竹田座長

早速、議題に入らせていただきます。まず配付資料について事務局から御説明を行っていただきます。

間庭審議室長

お手元の資料2、資料3、資料4について、続けて御説明させていただきたいと思います。
まず資料2でございますが、本ワーキンググループの設置についての趣旨ペーパーでございます。本ワーキンググループの設置の目的でございます。
先ほど座長のごあいさつからもございましたように、問題意識の1点目として、知財の創造・保護・活用という知的創造サイクルのうち、知財の活用という面でライセンスが企業実務上、広く行われており、企業経営においてもその重要性が高まっているということ。
また、近年、企業の合併・買収など大規模な企業再編の進展などもある中で、事業譲渡等によりまして特許権の移転が増加してございます。そのような中、特許権の移転があっても、従前ライセンスを受けていたものが継続的にその事業を行い得るという事業の安定性の確保が重要になっているところでございます。
現行の特許法では、通常実施権等の登録制度によりまして、特許権が移転した場合でも登録した通常実施権については新権利者に主張できる第三者対抗力を認めており、通常実施権者の保護を図っておりますが、現在、必ずしも十分にこれが活用されていない。
そこで、本ワーキンググループにおきましては、ライセンスの重要性ですとか、企業を取り巻く環境の変化に対応し、ライセンス契約に基づく事業活動の安定性を確保することによりまして、その企業の戦略的な研究開発ですとか、知財の有効活用を一層促進し、産業競争力の強化にも資していくために今回、登録制度の見直しについて審議を行っていただくということになった次第でございます。
検討事項とスケジュールについては、後ほど御説明させていただきます。
資料2の2ページ目に、本年5月に政府の知財戦略本部が決定しました知財推進計画2007におきましても、知財の活用という章におきまして、ライセンスについても言及がございます。その中で、抜粋でございますが、下線を引いてあるところ、「2007年度において現行の特許法等における通常実施権の登録制度の見直しなど、知財権のライセンス保護の更なる充実に向けた検討を行い、必要に応じて制度整備等を行う」ということとされてございます。
次に、資料3でございます。登録制度の現状と課題についてでございます。
まず登録制度の現状でございます。基本的考え方として、我が国の特許法では、特許権者の許諾による通常実施権については当事者の意思のみで効力が発生するわけですが、これを第三者に対抗するためには特許原簿に登録することが必要でございます。すなわち、通常実施権者、ライセンシーというものですけれども、通常実施権者は上記登録をしておけば、当該通常実施権の許諾者、ライセンサーが対象権利を譲渡した場合でも新権利者の第三者に通常実施権を対抗することができます。
また、平成16年の破産法の改正によりまして、「使用及び収益を目的とする権利を設定する契約」について、当該権利につき登記・登録その他の対抗要件を備えている場合には、破産管財人の契約解除権が制限されることになりましたので、ライセンサーが破産した場合であっても、通常実施権について特許庁に登録されていれば、破産管財人によってライセンス契約が解除されることはございません。登録制度の現行制度の概要でございすが、通常実施権の設定、保存、移転、変更、消滅または処分の制限については、特許庁に備える特許原簿に特許番号ごとに登録され、特許原簿の証明や謄本等の交付や閲覧等を通じて、登録事項は一般に開示されることになります。
2ページ目でございます。登録申請書の必要的記載事項として、通常実施権者及び許諾者の名前ですとか、通常実施権の範囲――範囲というのは地域ですとか期間ですとか、その内容――、また対価の額や支払い方法、支払い時期の定め――そういったものが定められていれば書けということになってございます――、そういったものが定められている。これらの記載事項は一般に開示されることになります。
また、登録の手続として、原則として、通常実施権者と通常実施権許諾者の共同申請によることが必要となってございます。登録の効果として、先ほど申し上げました第三者対抗力ですとか、無効審判の通知が通常実施権者にもなされるとか、そういった特許法上の効力が生じるわけでございます。その利用状況でございますけれども、特許庁の調べでございますが、我が国に存在する特許権に係る通常実施権の総数が約10万件と現在、推されております。そこのところで、特許権に係る通常実施権の現存の登録件数はどの程度かというところで、1315件でございまして、存在する通常実施権のうち登録がなされたものは1%程度ではないかということでございます。
我々も従前から問題意識を持ってございまして、昨年度、知財研を通じてアンケート調査を行ったわけでございますが、通常実施権の登録割合が高くない理由として、企業へのアンケートによると、以下のような点が指摘されております。
まず、登録していなくてもライセンス契約が打ち切られて、権利行使、その差し止めですとか、損害賠償請求を受けるおそれがないため、登録する必要がない。ライセンサーとライセンシーの信頼関係が強いようです。
2番目として、通常のライセンス契約では、ノウハウの提供なども含めて、ライセンスフィーを決定している。通常実施権のみの対価の額は算定していない。対価が明らかではなく、登録申請書に記載することができないという話もございました。また、ライセンスを受けているという事実から、自社の商品開発動向が他社に知られてしまう可能性があり、ライセンス契約の内容や存在自体までも秘密にしておきたいというニーズがある。
3ページ目でございます。出願中の権利やノウハウについては登録できない。ノウハウはなかなか難しいと思います。その次、出願中の権利のライセンス契約については、権利化後、改めて現行制度へ登録していただく必要があるわけですが、そういった権利になった後、登録するような手続が煩雑だと。また、通常実施権者からの再実施権、サブライセンスについて登録できない。その次として、通常実施権許諾者に登録協力義務がないため、その協力が得られない場合はライセンシーの方が登録することを希望しても、それだけでは登録できない。また、包括ライセンス契約では特許番号を特定していないので、特許番号ごとの登録が前提である特許法の登録制度をそもそも利用することができない。あと登録免許税が高額という意見もございました。
登録制度の見直しの必要性でございますが、先ほど本ワーキングの目的のところでも述べましたとおり、知財活用の重要性ということでのライセンスの重要性の高まりということで、企業が特許権を取得した技術をみずからすべて事業化する必要は全くなくて、技術によっては、自社で実施せず他社にライセンス供与するという格好で事業化リスクを分散しつつ直接収益を上げて、特許権を有効活用していくという経営戦略がある。あるいは自社の研究開発のみで事業に必要なすべての技術を賄うのではなくて、むしろ自社が得意とする研究開発分野に経営資源を集中的に投資して、それ以外の技術については第三者からライセンスを受けるという選択と集中も重要になっている。このようにライセンスというものが、その企業の経営戦略上、重要性が高まっているという実態がございます。
2番目として、我が国企業を取り巻く経営環境の変化ということで、先ほど長官のごあいさつでもございましたとおり、大規模な企業の合併ですとか買収ですとか、企業再編が進展してございます。そのような中で、事業譲渡に伴う特許権の移転というものも増加してございます。下にグラフを用意してございます。参考1として、特許権の移転件数の推移ということで、これを見ますと、1997年、10年前は4244件だったものが、2006年では1万1174件というように、3倍近く特許権の移転が増えている実態がございます。
参考2で、我が国におけるM&Aと事業譲渡の件数の推移のグラフも載せましたが、折れ線グラフの方ですね、線の方がM&Aの件数で、メモリは右側でございます。1997年ですと、例えば1108件だったものが、2006年で3755件というように、これも3倍以上増えているような実態がございます。
こういった企業再編、組織再編の中で特許権の移転も増えているのだろうと推測されるわけでございます。このような特許権移転の増加に伴いまして、ライセンスを受けて事業を行っているものの事業継続リスクも潜在的に高まっているのではないかと考えたところでございます。
1枚めくっていただいて、5ページ目でございます。以上のような現代社会におけるライセンスの重要性ですとか、企業を取り巻く経営環境の変化を踏まえれば、ライセンス契約に基づく事業を継続できるという経営の安定性を確保するための制度的なインフラとして、通常実施権等の登録制度の果たす役割はますます重要になっていると考えられるわけでございます。今後、我が国の産業競争力の強化に資するべく、制度的なインフラとして通常実施権の登録制度をより一層活用していただく方向で、見直しを行うことが必要と考えてございます。
こちら参考で特定通常実施権登録制度とございますが、先ほど申し上げました個々の特許番号を特定しない包括ライセンスについて、今年の通常国会で成立しました産業活力再生特別措置法等の一部を改正する法律におきまして、現行の特許法における特許番号を特定するような登録制度と併存する格好で、包括ライセンスにおける通常実施権の特許番号を特定しない登録制度が創設されたわけでございます。そういったことで、包括ライセンスについては一定の手当てがなされたことを申し上げておきます。
次に、資料4でございます。登録制度の見直しに係る論点についてでございます。本ワーキンググループ、今回、第1回を開催させていただくに当たって、事前に委員各位あるいは委員以外の有識者の方々にも話をお伺いしていく中で、事務局として今回、こういったことを検討していただくことが必要ではないかという論点をまとめた次第でございます。これについて御説明させていただきます。
一つに、特許権に係る通常実施権の登録制度についての話でございます。その登録事項について、その限定化を図ることが必要ないし図ることができないかということでございます。通常実施権の設定登録については、通常実施権者であるライセンシーの氏名ですとか、通常実施権許諾者であるライセンサーの氏名ですとか、通常実施権の範囲、それと対価の額や支払い方法等々の定めがあるときはその定め、これらの事項を特許原簿に登録するものとされているところでございます。
問題の所在として、対価の額についてでございますが、これは企業の営業秘密に関する事項である場合もあり、ときどきの経済状況に応じて柔軟に変動する性質のものである。また、先ほどアンケート調査でも述べられた一つのライセンス契約において多数の特許権を対象としている、あるいは、特許権のみならず出願中の権利やノウハウ提供なども対象にしているといった場合に、通常実施権1件当たりの対価は明確にしていないということで、こういったことから対価は登録になじまないのではないかという指摘がなされているところでございます。
2ページ目でございます。検討の方向性と論点ということで、対価については、これを登録事項から外す、または任意的な登録事項とするということが考えられるわけでございますが、この検討に際しての論点として四つほど挙げさせていただいております。
まず、どのような事項を登録事項として定めるかについては、登録対象の特定に必要な事項は登録事項とすることが必要ですが、それに加えて何を登録事項とするかは立法政策の問題であろう。そのときに、通常実施権の対価というものは、通常実施権自体の内容ではなくて、通常実施権を設定するライセンス契約における特約にすぎないとの考え方もございますが、それをどのように考えるか。
2番目として、登録された対価の持つ意味、効果について、どのように考えるか。すなわち、登録された対価の額は特許権を譲り受けた第三者に対抗できるのかという論点がございます。これについては、不動産登記法ですとか、民法における議論も踏まえながら、登録の効果についての考え方を整理する必要があるのではないかということでございます。
3番目として、特許権を買い受けようとする第三者としては、その対価についても登録を通じて情報を得たいという指摘がございます。そこのところで対価を登録事項から外すと、そのようなニーズにはこたえられないことになるけれども、これをどう考えるのか。
4番目として、通常実施権者としては、仮に登録した対価の額を第三者に対抗することができないとしても、参考情報として登録することで、特許権の譲受人である第三者との間における紛争リスクをあらかじめ回避したい場合もあるのではないかと考えられるわけでございますが、そういったことを踏まえると、対価を任意で登録すべきだということでございます。
(b)で、対価以外の登録事項については、登録対象である通常実施権特定のために必要な情報と考えられるわけでございます。特に通常実施権の範囲については、その範囲で登録の効果である対抗力が生ずる。3ページ目ですけれども、したがいまして、これらの項目を必要的登録事項から外すということは適切ではないと考えられるわけでございます。
2番目として、これらの登録事項をすべて開示するのではなく、一部非開示にすることができないかという問題意識でございます。現行制度でございますけれども、こういった登録事項については、登録されれば一般に開示されます。特許法に限らず、一般的に登記・登録制度については従来、公示制度として登記・登録された情報はすべて一般に開示されることとされてきたわけですけれども、近年、例えば動産・債権譲渡特例法等におきして、登記情報の開示について、情報内容によっては異なる開示方法を設けまして、一部の情報については、一般の人には開示しないで、特定の利害関係人にのみ開示するという段階的な開示制度が導入されているわけでございます。
先般成立した改正産活法における包括ライセンス契約の通常実施権の登録制度においても、情報内容によって異なる開示方法が設けられたわけでございます。この制度では、一般に開示されるのはライセンサーの名前と、そのライセンサーが何件登録しているか、その件数のみでございまして、ライセンシーの名前ですとか、通常実施権の内容といったものは一般には開示されないで、一部の利害関係人に限って開示するような方法が設けられたところでございます。
問題の所在といたしまして、通常実施権については、どのような特許権について、どの企業からライセンスを受けているのか、またはどのような企業にライセンスしているのかという事実自体、企業の研究開発や商品開発動向を推測させるものであり、企業の営業秘密や経営戦略に密接にかかわる情報として一般には秘密にしておきたいというニーズが実際にございます。
参考資料の5ページ目に、図2-3がございます。ライセンシーの立場において、実施権登録によって一般に情報を開示したくない項目について、アンケートの結果でございます。マル9の通常実施権の対価がトップです。これが7割程度を占めている。これは複数回答可ですけれども、9番目の対価が7割。あと3割程度のところにマル2の通常実施権者ですとか、マル5対象製品、マル6対象技術的範囲、マル11附随する特約、このような格好でございます。実際に、対価ですとか、通常実施権者を情報開示したくないというニーズが高うございます。
4ページ目でございます。通常実施権に関して秘密化のニーズが強いため、登録された情報がすべて一般に開示されてしまうような現行の登録制度が活用されていないとの指摘がございます。そこで検討の方向性と論点でございます。
まず通常実施権者の氏名についてどう考えるのかというところでございます。通常実施権者の氏名については秘密化のニーズが強く、その公示がそういったニーズには合致していないという意見もあり、そういった事実もあるわけでございますが、その反面、登録制度が確保している公示による取引の安全との関係では、通常実施権者がどういう者であるのか、その氏名が公示されることは望ましいと、これもまた事実である。
そういったことを考えると、通常実施権者の氏名の非開示化につきましては、ライセンシーの保護というものと、特許権取引の安全の確保という二つの要請をうまく調和させることが必要であろうと考えてございます。そこのところで、論点を六つほど挙げてございますので、御説明申し上げます。
まず、一般的な公示と対抗の考え方として、通常実施権を第三者に対抗させるためには、そもそもどのような情報を一般に開示しなければならないのかということ。
2番目に、通常実施権に関する情報は特許権の価値を客観的に左右する事項であり、一般に開示されるべきとの指摘がある一方で、通常実施権は実施権者に排他的独占権を与えるものではなくて、特許権者に対する不作為請求権という性質にとどまるものであるから、特許権に対する制約は軽度であって、通常実施権者の情報の非開示化も許容されるという見方もございます。これについて、どのように考えるのか。
また、特許権取引の実務でございますけれども、取引の際には、事前に詳細な調査、デューデリジェンスが行われることが少なくないし、万が一、契約内容と実際のものが、通常実施権がついている、ついていないについて話が異なったとしても、譲受人が譲渡人に瑕疵担保請求責任を追及するということで救済を受けられるので問題はないのではないかといった考え方もございますけれども、それについてどう考えるのか。
4番目として、動産・債権譲渡特例法において、登録された情報がすべて一般に開示されていなくても、その端緒が一般に開示されていて、最終的には登録された情報がわかる仕組みとなっていることをもって対抗の効果を与えているわけでございますが、通常実施権者の氏名の一般への非開示についても同様の考え方を導入することができるのか。
5ページ目でございますが、仮に段階的な開示方法を導入する場合に、登録された情報のすべてについて開示を受ける利害関係人の範囲をどう考えるのか。
6番目として、包括ライセンス契約について、改正産活法で通常実施権者の氏名については一般には開示されないような制度が特許権及び実用新案権に設定する通常実施権の登録制度において導入されたわけでございますけれども、それと、この特許法ないし実用新案法本則との関係をどのように考え、整合性を図るべきか否かという論点が挙げられると考えております。
(b)で、その他の登録事項でございます。通常実施権の範囲、地域ですとか、内容ですとか、そういったものについては、第三者にとって、特許権のうち既にどの範囲まで他社に通常実施権の許諾がなされているかという情報は、登録簿を通じて知ることができるとの意味合いは非常に大きいのではないかと考えられるところで、これは一般に開示する必要があるのではないかと考えられるところでございます。ただ、包括ライセンス契約の方では、これについても非開示とされているので、それについての考え方の整理をすることが必要と考えてございます。
3番目として、出願中の権利に係るライセンスの登録制度ということで、まず現行制度の概要でございます。現行の特許法では特許を受ける権利を有する者が特許権の発生前に当該出願中の発明について通常実施権を設定することは予定されていない。他方で、産業界の実務では出願中の発明もライセンス契約の対象に含まれることが少なくないわけでございます。
問題の所在として、現在、出願中の発明に係るライセンスについて、法制度上、これは予定してございませんし、もちろんそういったものの登録制度も存在していないということのため、要するに、特許権の発生前に特許を受ける権利が第三者に移転してしまった場合には、当該発明に附随するライセンスを新権利者に対抗する手段はないということでございます。
6ページ目でございます。破産法上も特許権の発生前に特許を受ける権利者が破産した場合には、ライセンシーにはもちろん対抗要件を具備するすべがないため、破産管財人により、そのライセンス契約は解除されることを妨げることはできない。
このような状況は、出願中の発明を対象とするライセンス契約が締結されていることが少なくない中において、ライセンシーにとって潜在的なリスクとなっているとの指摘がございます。特にベンチャー企業ですとか、大学のTLOなどにおいてなされた発明について、本来であれば、出願中の権利についてライセンスをしたい場合であっても、ライセンシーが大企業である場合などには、大企業の方がライセンスによる場合の事業継続リスクを取ることを嫌うため、特許を受ける権利自体を譲渡せざるを得ないという実態があるとの指摘もございます。
これらの指摘を踏まえまして、検討の方向性と論点でございます。出願中の権利に係るライセンスについて、登録制度の枠組みを活用した保護の在り方を検討することが必要ではないか。具体的には、出願後、特許権発生前の段階から将来発生する通常実施権の登録を可能とするような仕組みが考えられないかということでございます。なお、出願前の特許を受ける権利については特定が困難でございますので、保護を図ることが困難ではないかと考えられる次第でございます。
論点の方でございますが、6ページ目の下の方でございます。
1番目として、特許を受ける権利は、将来的に特許権になるもの、ならないものも存在するわけでございまして、不安定である。そういった不安定な権利に対して、通常実施権の事前登録制度のようなものを導入することがそもそも妥当なのかという点。
2番目として、将来発生する権利を対象とした登録制度を設ける場合に、これを本登録とするのか、あるいは仮登録ですとか予告登録みたいな、いわゆる予備登録の一種として構成するのか。
3番目として、通常実施権の事前登録を備えたライセンシーは、特許を受ける権利の譲受人に対して、特許権の設定登録前においても既に行った登録を主張するものとすることが必要となるわけでございますが、そのような効果を認めることについて問題がないのだろうか。
4番目として、登録の効果ないし通常実施権の第三者対抗力が生じる時点についてどう考えるのか。
5番目として、通常実施権の事前登録がなされた場合に、破産法の56条1項の効果として、特許権の設定登録前に特許を受ける権利者が破産した場合であっても、ライセンス契約は破産管財人により解除されないとすることが可能か。そうする必要があるわけでございますが、これが可能であるのかどうなのか。
その次に、特許法の65条1項との関係で、登録を備えた通常実施権者は特許権者から出願公開にかかる補償金の請求を受けない権利を取得すると考えてよいか。
その次でございます。出願後、通常実施権の事前登録がされた後に、特許になる前に、特許庁とのやり取りにおいて、補正等によりライセンスの対象となる発明が変容する場合がある。そういった場合であっても、出願番号を基準として設定登録後の特許権に係る通常実施権について対抗力を認めてよいか。
次でございますが、特許出願の内容が一般に未公開の段階から登録して対抗力を備えることができるとすべきではないとの考え方も聞いております。いつから登録できるのか、登録時期についてどのように考えるのか。出願後、すぐに登録できるのか、あるいは出願公開後という考え方もございます。
その次でございますが、開示方法について、先ほど2段階開示みたいな説明をさせていただきましたが、特許を受ける権利についても段階的な開示方法が妥当するのかどうかということでございます。
8ページ目でございます。最後の論点でございますが、特許を受ける権利に係る通常実施権について、出願後、特許権の発生前に登録できることとするのであれば、例えば特許を受ける権利について、移転ですとか、質権の設定、あるいは差し押さえ、その処分制限についても同様に特許権の発生前から登録できるようにすべきかどうかという論点もございます。ちなみに、特許法上、出願後の特許を受ける権利の承継は特許庁長官への届出が効力発生要件となってございます。
また、特許を受ける権利は質権の目的とすることができないと現行法では規定されているわけですけれども、仮に質権設定を認めることになると、例えば権利者のファイナンスにとってもいいのではないかという意見もございます。これは通常実施権登録制度から派生する問題としての論点でございますが、私どもとしてはこの点も御検討いただければと思っております。
次に、通常実施権者からのサブライセンスの保護についてでございます。現行特許法にはサブライセンスについての規定はないけれども、実務においては広く行われているというところです。問題の所在でございますが、サブライセンスについて、現行法のもとで対抗力を備えるにはサブライセンシーが特許権者から直接実施許諾を受けたものとして、特許権者と共同で登録申請しなければならない。現行制度上は、そうせざるを得ないわけですが、サブライセンシーというのは、別に特許権者と直接の契約関係にはないため、そういった共同申請は難しいであろう。
また、通常実施権者の子会社をサブライセンシーとしている場合において、子会社の範囲が登録を変動するような場合もあるわけです。例えば新たに子会社ができるですとか、そういったこと。そういった場合にも子会社に対する登録の効果を認めてほしいという意見もございます。
通常実施権を登録する際に、通常実施権者から第三者に対するサブライセンスの付与を許す旨の特約がある場合は、その定めの登録を可能として当該特約につき第三者対抗力を認めてほしいという意見もございます。
そこで、検討の方向性と論点でございます。サブライセンスの保護のあり方ということで、三つの論点を提示させていただいてございます。
まず、通常実施権というのは特許権者に対する不作為請求権という性質のものである以上、再実施許諾権を特許法上、明確に位置づけることは難しいと考えられるわけでございますが、通常実施権の性質を考えた場合に、現行制度の範囲内で何らかの対応が可能なのかどうなのか。
2番目として、サブライセンス契約において、再実施権者を通常実施権者の資本比率50%以上の会社などとするように、具体的な特定がなされていない場合にも登録を認める余地があるのかどうか。
3番目として、ライセンス契約に第三者に対する再実施許諾を許す旨の特約がある場合は、通常実施権の登録事項として、その定めを登録することができるようにすることが可能か、その場合の効果はどう考えるのかという論点を提示させていただいてございます。
次に、登録方法でございます。現行制度では、共同申請が原則でございます。特許登録令によりまして、登録権利者たるライセンシーと登録義務者たるライセンサーの共同申請になってございます。不動産登記法でも共同申請の原則が採られてございます。登録義務者も申請人に名を連ねることによって、登記の真実性の担保を求めるという考え方に基づいております。
ただ、現在、これは商標の話ですけれども、商標登録令において、商標権の移転の登録については、認証のある契約書の謄本ないし抄本を添付した場合は登録権利者ないし登録義務者の単独申請を認めている。これは平成8年の商標法条約(TLT)を批准するに際して、その条約の実施ということで単独申請を認める政令改正を行ったものでございます。
また、登録請求権、実施許諾者の登録義務についてでございます。要するに、ライセンサーに登録義務みたいなものを法律上、課せるかどうかという論点がございます。現在の判例ないし主流の考え方は、通常実施権者から通常実施権許諾者に対して登録請求権というのを当然には認められない。共同申請原則のもとでは登録協力義務に係る特約がない場合は、ライセンシーは特許権者等の許諾者の任意の協力が得られない限り、登録して対要件、対抗力を具備することはできないとされております。問題の所在としては、共同申請ですので、ライセンサーとの力関係によって、ライセンサーの協力が得られない場合は、ライセンシーは登録したくても登録できないということでございます。
また、ライセンサーの立場としても、ライセンス契約の内容が開示されることを避けたいがために、登録に協力しにくいという場合も少なくないと見られます。
なおのところで書いてございますが、特許法についても現在、特許法条約(PLT)という条約がございまして、我が国はまだ批准していないのですけれども、PLTでは通常実施権の設定登録に限らず、特許権の移転登録など登録全般について、登録権利者または登録義務者の単独申請を認めるものとしてございまして、我が国もPLTに批准するためには単独申請を認めることが必要となってくるわけでございます。
検討の方向性と論点でございます。要は、このような単独申請ないし特許登録義務者の登録協力義務ですね、そういったものについての論点でございます。四つほど論点、枠囲いにございます。
共同申請というのは、先ほど申し上げましたような真実性の担保と、登録して第三者に対抗力を具備させるという当事者の意思を確認するための方法とも考えられるというわけでございますが、ライセンス契約を公正証書とした単独申請というものを認めた場合、真実性は担保できても、登録申請の意思までは確認できないこととなりますが、単独申請が妥当かということ。
2番目として、不動産賃借権については、賃借権の登記具備のほかに、賃借人を保護すべきとの社会的な要請から、借地借家法によって別途の対抗要件、例えば建物ですと建物賃貸借については、その建物の引き渡しがあった場合には対抗できるというような対抗要件、修正された対抗要件が認められており、賃借人が単独で対抗要件を備えることが可能となっているわけでございますが、特許法でも政策的な必要性があれば単独申請を認めることが可能ではないかと考えられるということをどのように考えるのか。
3番目として、仮に単独申請という導入をとらないという場合に、特許権者等の登録への協力義務を法定することは可能であるか。
4番目として、これは派生する問題ですけれども、通常実施権の登録のほか、例えば専用実施権の設定ですとか、特許権の移転等々の登録方法について単独申請を認めることが可能か。これはPLTの対応と関連する論点でございます。
6番目、その他の論点でございますが、一つに、実務上、行われている独占的な通常実施権の独占性の特約を登録して第三者に対抗できることとすべきとの指摘がございました。2番目として、これは登記の申請と登録のタイムラグの話ですけれども、不動産登記においては登記申請の受付年月日に登記の効果が生ずるものというふうに擬制しているわけですけれども、特許法における登録については登録の年月日に登録の効果が生ずるものとされている。
したがいまして、例えば通常実施権の設定登録の申請の後、登録の日までの間に、例えば特許権者が破産するなどして、要するに、他の権利関係が変動してしまった場合に、登録事務の手続に要する期間のタイムラグによって、登録と他の権利変動との先後関係が逆転してしまって困る事態が生ずるのではないかといった指摘がございました。
次に、大きな2番目でございますが、特許権に係る専用実施権の登録制度についてでございます。問題の所在として、専用実施権についても秘密化のニーズですとか、出願中の発明に対する排他的なライセンス、将来の専用実施権につき、特許権の発生前から対抗要件を備えたいといった意見もございます。
検討の方向性と論点ですが、しかし、専用実施権というのは排他的な独占権で、非排他的な権利である通常実施権とは本質的に異なる強い権利である。専用実施権の登録については、必ずしも通常実施権並びではなくて、専用実施権の法的性質に見合うような格好で見直しすることが必要と考えられるところでございます。ここに四つほど論点を挙げていますけれども、まず、専用実施権の対価について登録事項を外すことの検討について。これについては、通常実施権、専用実施権で大きな差異はないと考えられるけれども、通常実施権並びで考えてよいかどうか。
2番目として、専用実施権の設定登録については、特許権の移転に準ずる性質を有する事項の登録であることから、登録情報はすべて一般に開示すべきであるとの指摘がございます。他方で、インフォメーションセンターとして、特許権者を通じて開示がなされるのであれば、政策的必要に応じては一部の情報を非開示にすることも可能ではないかとの指摘もございます。これについて、どのように考えるのか。
3番目として、出願中の特許を受ける権利について、専用実施権というような強力な権利の事前登録制度を導入することが妥当かどうか。
4番目として、出願中の権利に係る将来の専用実施権の登録を仮に可能とした場合に、先ほどの破産法上の破産管財人の解除権が制約されるという効果を与えることができるかどうかでございます。
最後に、大きな3番目として、実用新案権に係る通常実施権と専用実施権の登録制度についてということです。実用新案権については、特許権に準じた検討を行う、ある意味、特許権並びでいいのだと思いますけれども、権利付与について無審査主義がとられておりまして、権利化までにかかる時間が短いなど、そういった違いに応じて制度も組むことが必要であろうと考えている次第でございます。
長くなりましたが、以上でございます。

竹田座長

どうもありがとうございました。

自由討議

竹田座長

議論に移りたいと思います。
ただいま事務局から、通常実施権等に係る登録制度の現状と課題については資料3に基づきまして、制度の見直しに係る論点については資料4に基づいて詳細な説明がございました。
本日は初回ですので、ただいまの事務局の説明を踏まえて、個別の内容のコメントでも結構ですし、具体的な検討範囲とか項目、論点等の過不足についてでも結構です、自由に御意見を賜りたいと思います。御意見のある方から挙手をお願いいたします。
特に、この制度を利用する側にとって、この改正は重要な問題であると思いますので、できれば企業側の委員から、今の問題点等につきまして御意見があったら述べていただきたいと思います。こちらから指名して恐縮ですけれども、浅井委員、いかがでしょうか。

浅井委員

この制度を見直すことによって、今までよりも使いやすい制度にするということはいいかと思いますが、しからば、この制度が使いやすい形になったとしても、すべてのライセンス契約をこういう形で登録することになっていくのだろうかということについては、実務の中では、必ずそうなるだろうという見通しは得にくいなという感じをします。制度の内容の見直しとはちょっと違うかもしれませんけれども。
もう一つ、ここにも書いてありましたけれども、登録の対価ですね。この費用は1万5000円になっていまして、この費用がすごく安くなっていったら、そのことによって各企業がたくさん登録するような方向に動いていくのだろうかということを考えたときも、大きな流れとして、そちらの方へドッといってしまうかということについても若干疑問があります。
そういうふうに考えていきますと、なるべく簡便な制度にしていくことは重要だろうと思います。

竹田座長

今おっしゃった点で、今度の制度改正の議論を通じて、特許のライセンス契約を使いやすいものにするという点を見直していこうということであろうと思いますけれども、ライセンス契約はそれぞれの特許権者とライセンシーとの間で、さまざまな事情があると思いますので、それですべてが登録制度にのっけようということまでは考えてここで議論するのではないだろうと思いますけど、その点について事務局から何か御意見ありますか。

間庭審議室長

そこは実際に登録するのかしないのか、これもまた企業の経営判断だと思うわけですね。先ほどの登録しない理由のところで一番多かったのが、相手がつぶれたりするようなことはないので、事業は継続できるだろうというようなことで登録しないという結果も出ております。そういった事業継続リスクをどのようにライセンシーたる企業が評価しているのかということで、登録しないということであれば、これはしないで結構だと思っております。
行政としては、M&Aが増えたり、外資の我が国への進出が活発化してきたりするような環境の中で、不測の事態もあるのではないか。そういった場合に、今ある登録制度をより使われやすい格好に、制度インフラとしては整備しておく必要があります。
そういう問題意識で今回、見直しを検討していこうということにした次第でございます。

竹田座長

ほかに御意見いかがでしょうか。
一番問題なのは、今の制度を使いたいと思っていても、企業にとっては使いにくいところがあるとすれば、そこはどういう点で、それをどう改正することができるかということが一番の問題点だと思うんですけども、守屋委員から……。

守屋委員

包括登録制度のパブリックコメントでも業界団体からいろいろ申し上げましたが、業界団体としては、基本的には登録制度なしに通常実施権、ライセンスについては対抗を認めていただきたいということが基本的な考です。今回は土俵に乗っているのが通常実施権の登録制度の改正ということなので、この意味では、ある制度を使いやすくしていただくというには大変感謝しております。
対価の部分が確かにイシューであります。現在、我々は、いろんな会社の技術を、現実に商品をつくるときには使わざるを得ない状況になっています。ベンチャー企業や中小企業との契約も非常にふえていまして、これらの企業からライセンスをもらうケースも非常にふえています。そういった場合、我々の実施権の確保のために登録制度がうまく活用できればいいのではないかと思っています。
ただし、使い勝手からいいますと、対価を公表が強制されている難しさに加えて、契約が多様化していまして、(実務上は)フィールド・オブ・ユースの制限がいろんな形で行われて、(例えば)have madeとか、グランドバックをどういうふうにやるのかとか、いろんな契約上の制限等々がございますので、これらについて全部登録しないと対抗できないということになると、使い勝手ということについてはちょっと難しい部分が出てくるのかなというふうに思います。

竹田座長

その意味で、登録しなければならない事項と、開示される事項とは、区別はある程度可能かと思います。その辺の議論もこれからいろいろ出てくるであろうと思いますけれども、特に企業と産学連携の関係で、大学の研究機関との間の問題特許を受ける権利に関連しても出ておりましたけれども、その辺の問題はどうですか。

守屋委員

確かに、出願中の権利についても、ある程度登録……。
我々、共同開発等をいろんな大学あるいはベンチャー企業として、そこで出願された特許についてのライセンス権を確保しておくというニーズも割と高い場合がありますので、そういった場合に将来の実施権を確保するという意味での登録制度があるとしたら、活用できる余地はあると思います。

竹田座長

今、大学研究機関のことをお話し頂きました。前田委員からいかがでしょうか。

前田委員

TLOや知的財産本部の側から言いますと、ほとんどの場合がライセンサーになります。私どもが使っていただくという形になります。
そうしたときに、資料4の1ページ目に書いてありますとおりで、特許権のみならず、出願中の権利やノウハウ提供の特約なども対象に含むことが少なくない。少なくないどころか、登録になる前の特許を売り買いすることがほとんどです。
将来、どういうふうに大化けするのかわからないものの売り買いをしますので、対価まで明記することはなかなか難しいのかと思っております。特定通常実施権登録制度は、2段階にわたって、登録と公開のレベルが違うという形で決められたと思いますが、今回の通常実施権の場合も、登録する部分と公開する部分を分けて、二段階でなるべく企業の方が使いやすいような形で登録されていけば、いいのかなという気がします。これまでは売る側の場合を話しました。
次に、大学発ベンチャー等を支援する側の立場から申しますと、基本特許を大企業から実施許諾を受け、それを用いて、さらに派生した特許を自分たちで使って物をつくらなければいけない場合があります。
外資系の場合、最近、特に製薬会社の場合は合併がとても多いです。合併後、突然許諾を受けられなくなった場合、死活問題となりますから、登録制度が上手に使えると、特に、力の弱い大学発ベンチャーなどは、救われる部分が出てくると思います。ですから、なるべく使いやすい制度にして、どんどん活用できるようになれば、非常に嬉しいです。
また、サブライセンスのところの設定ですが、私たちも契約をかわすときに、特に、大企業と行う場合、「どこまで使われてしまうんだろう。こんなに大きな会社だと、ほぼ全部のところに使われて、私たちはほかに売るところがないんじゃないのかしら」と思うようなことがあります。
サブライセンスの設定の仕方がある程度、こちらの方で議論されてきますと、それをもとにして、契約の交渉のときに、「通常実施権等登録制度で、サブライセンスはこの範囲と決められていますので、同じような形で私たちもやりたいと思います」と、条文を使わせていただくこともできるようになりますので、サブライセンスのところの議論もしていただけるとありがたいと思っています。

竹田座長

ありがとうございました。
前田委員の意見に出ている中でも、特にライセンス契約の実態から見て、保護の必要性が高いのは特許を受ける権利であり、サブライセンスの問題も重要な検討点だと思いますが、同時に、両方とも、法律的には、それを制度化するのには難しい論点が多いところでないかなと思うんですが、ほかの委員の方、御意見どうでしょうか。

長濱委員

日本弁理士会執行理事の長濱でございます。
我々弁理士の立場からすると、現状までは、通常実施権は登録件数が少ないということも当然ございますし、ライセンス部もしくは法務部が充実しているある程度大きな企業でしたらライセンス契約は企業同士で交渉される場合も多く、我々が関与する機会が必ずしも多くなかったところでございます。
ただ、特に最近、中小ベンチャー企業を中心にライセンス契約に関する相談も含めて包括的に弁理士がいろいろ相談を受けるケースが増えてきたとも聞いております。このような状況の下、通常実施権制度がより使いやすくなって、より登録率が高まるというのは、我々の顧客並びに我々にとっても非常に歓迎すべきことだと前向きに考えております。
反面、例えば特許権の設定登録前の特許を受ける権利に対する通常実施権の登録等を考えるにあたっては、登録をしやすくする側の視点が強くなりすぎますと、転得者等が不測の不利益をこうむる可能性も出てくると思いますので、その辺はあわせて慎重に考えていかないといけないと考えております。

竹田座長

ほかにいかがでしょうか。
法律制度の問題として検討すべき点が先ほどの論点の中にもかなりありますが、鎌田委員、いかがですか。

鎌田委員

詳しいことは、これからの審議の中で御議論の対象になると思うんですけれども、二、三申し上げたいと思います。
最初に、特許を受ける権利の登録制度にかかわる問題の整理ですが、6ページから7ページに問題点が幾つか並んでいるんですけれども、第1に、非常に不安定な性質の権利について通常実施権の事前登録制度を設けることが妥当かどうかというふうな問題設定があります。
対象となる権利が非常に不安定であって、将来、権利として成立しないかもしれないけど、それについて通常使用権その他の権利を取得するというのは、本人が権利不成立のリスクを負担すればいいだけで、全く構わない。将来発生する予定の債権の譲渡に関する最高裁判決(最判平11・1・29民集53巻1号151頁)も、譲渡目的となっている債権の発生可能性が低くても、譲渡契約の有効性を左右するものではないとしています。
ただし、あえて問題があるとすると、特許を受ける権利を登録してしまうと、公のお墨付きがあって、これは確実な権利だというふうな幻想が生まれてしまうという危険性はあるのかもしれません。その辺は、制度の理解を十分にしていただいた上で利用していくというか、登録の趣旨・内容についての理解を促進する策とあわせてやらないと、ある程度のリスクがあるかもしれないと思います。
法律制度論としては、その次の本登録なのか、予備登録なのかという問題が指摘されているのですが、この問題を検討する際には、実体法上の問題と登記手続上の問題を分けて考えた方がいいように思います。
というのは、登記制度の仕組み方として3通りぐらい考えられて、その一つとして、特許を受ける権利自体の登録制度というのはあり得るのですが、その場合は特許を受ける権利の本登録制度をつくればいいことになります。しかし、特許を受ける権利についての通常実施権というのが第三者に対抗できるのかどうかということについては、実体規定をつくらないと、その後ろの方に出てくる破産法56条との関係での問題の解決にはならないのかもしれません。
第2の仕組み方として、将来成立する特許権自体の登録制度を前倒しにするということが考えられます。登録手続上は、特許成立後に改めて登録し直さなくて良いので、簡便になるわけですけれども、この場合には、特許権自体が成立するまでは、まだ存在しない特許権の登録ということになりますから、その時点で本登録したのと同じ実体法上の効力は認められないということで、実体法上は本登録としての効力はないけれども、登録簿の上には特許権の本登録があるということになります。こういうかたちで実体法上の効力と登録手続とに違いがでてくる場合に、どっちの議論をしているのかということを整理しながら議論を進めないと混乱する危険性があるだろうと思いました。
それから、サブライセンスに関連しては、実務を十分存じ上げませんけれども、観念的にはサブライセンスをする権限を与えるというのは、民法的にいえば、授権ということになると思います。本来、特許権者だけが持っているライセンスする権限をライセンシーに与えて、ライセンシーが自己の名でサブライセンス契約を結べば、その効果が特許権者に及んで、特許権者とサブライセンシーとの間に一定の権利関係が生まれる。
このときに、全面的に、完全に自由な通常実施権の設定ができるという形の授権と、ライセンシーの持っている権限の範囲内で、いわば親ガメの上に乗った子ガメのような権利だけは設定できるというふうなのと二通り、観念することができると思います。
実務的には、後者の趣旨のものが多いような気がするのですけれども、そういう内容を持ったライセンスをする権限を与えるというのがサブライセンスの権限の付与だと仮定して、これを登録することに何かメリットがあるかというと、先程来議論になっていて、9ページの問題点にも出ていたと思うのですけれども、共同申請主義をとるかどうかとも関連するんですが、サブライセンス契約をして、それを登録しようとするときに、本来ならば特許権者とサブライセンシーとの共同申請によるべきところを、こういうサブライセンスの特約があるという登録がある場合に限っては、ライセンシーとサブライセンシーとの申請で新しく出てきた通常実施権の登録をすることが許容されるという可能性もあるのかなという気がします。
それから、長くなって恐縮ですけれども、共同申請に関連して、単独申請にするという条約に乗っかっていくという提案もあったのですが、それは十分考えられる方向性だと思います。しかし、単独申請の基礎ないし手続要件として何を求めるのか。商標のように認証された契約書というふうなものを求めるというのがオーソドックスであると思うんですけれども、ただ、ここで問題になるのが通常実施権というのは本来的に第三者に対抗できる権利だから、ライセンサーの意向のいかんにかかわらず、登録して第三者対抗力を持つのが当然であるという、そういう権利なのか。そうではなくて、ライセンサーの側で対抗力のある通常実施権にするのか、対抗力のない通常実施権にするのかということの選択の権能があるということですと、公正証書などで通常実施権の存在が証明されさえすれば単独申請を認めるという制度にすることはできなくて、当該証書に第三者登録をして、第三者対抗力を付与することを認める文言が入っているときに限ってライセンシー側の一方的な申請でも登録ができるというふうにしなければならない。こういう風に、通常実施権自体の実体法上の効力、とりわけ対抗力をどう考えるかによって、ここの仕組み方は少し変わってくるのだろうと考えています。

竹田座長

いろいろな論点について、貴重な御意見を承りました。
特に、鎌田委員がおっしゃった中で、特許を受ける権利というのは排他的、独占的権利ではないわけですよね。本登録を認めると、実体法上の手当てが必要かなという点は、私もそういう問題点があるなと思うんですけれども、仮登録とか、予告登録という形にして、特許権の設定登録がなされた時点で本登録手続をするというような制度は考えられないんですか。

鎌田委員

あり得ると思います。先ほど三つの仕組み方があると言って、ちゃんと言わなかったかもしれませんけれども、特許を受ける権利の登録制度をつくるのと、将来の特許権についての予備登録制度をつくるのと、将来成立するであろう特許権について出願または出願公開の段階から本登録をさせてしまうというのと、3通りあるというふうに思います。
手続上、一番簡単なのは、最初から本登録をさせておいて、例えば、特許原簿の中で権利の登録日が空欄になっているものは、実質的に特許を受ける権利の登録なんだというふうに読み解いていくという、そんなのが簡単は簡単だろうと思います。
出願はされたけど将来において特許権が成立しない可能性の高いものがたくさんあるときに、そういう登録制度を設けて取引上の混乱を生じさせないだろうかという実務的な考慮がそれを許すか許さないかの決め手になるのかもしれません。

竹田座長

ありがとうございました。
今の論点に関連してでも、ほかの論点でも……。中山委員。

中山委員

事務局の出されました論点整理は、私はこれでよろしいのではないかと思っております。
今回のワーキンググループの議論の中心は、通常実施権をどうするかということだろうと思いますけれども、それは大きく考えますと、特許の利用流通をどうするかという問題だろうと思います。これは戦略本部の意向でもあるのですけれども、今まで特許を取ることに中心的な課題が置かれていたわけですけれども、これからは利用流通が大事であるということだろうと思います。
そういうことを考えますと、通常実施権はその一部でして、先ほど鎌田教授からも話がございました特許を受ける権利についても幅広く議論することが必要だろうと思います。ですから、ライセンスだけではなくて、ここにも書いてあります担保化等々の問題も絡めて議論してもらいたいと思います。利用流通という広い観点から議論してもらいたいと思います。
方向が決まれば、いろいろ法テクニックの問題はありますけれども、そう難しくなく決まるのではないかと思います。ただ、唯一問題なのは、ここにも書いてございます補正ですね、これをどう処置するかという問題が厄介です。
特許権というのは、受ける権利も、あるいは特許になった後もそうですけれども、権利の幅が変わるという極めて特殊な財ですので、多くの場合に補正あるいは訂正が問題になりますが、そこをうまくクリアしていけば、あとは決めの問題で何とかなるのではないかと思っております。

竹田座長

今、中山委員がおっしゃった点で、活用、流通性をよくするということは知財制度にとって重要なことだと思いますが、その一方に、取引の安全にどれだけ配慮するかという点が、どこまで登録事項にするか、どこまで開示するかに関連して非常に問題になるところだと思います。

中山委員

まさに、それが一番のイシューで、これまでの産活法の改正で非常に議論になったわけですけれども、理論的な問題も大きいのですけれども、実務の要請も大きいと思います。例えば不動産の賃貸借について対抗要件の問題になったのは、地震売買といって、非常にけしからん売買が沢山あり、困った人が大勢出たと、だから、ああいう制度をとったわけです。
特許の場合はどうかというと、実態から来るのだろうと思います。統計をとってみましても、信頼関係があるから要らないと、余り出したことはないという意見もあります。実態側面から、どういう制度が必要かということを検討してみる必要があるのではないかと思っております。

竹田座長

ほかにいかがでしょうか。

茶園委員

2点、質問があります。また、こういう問題もあるかなということを1点お話させていただきます。
まず1点目の質問ですけれども、対価についての登録は、ノウハウも含めて対価決定をしているために、通常実施権自体の対価がわからない場合があるということですが、実態上は、このような場合はどういうようにされているのでしょうか。実は何らかの対価はあるのだけども、空欄にしておくということにされているのでしょうか。現実にはどうされているのかについてお教えいただきたいと思います。
もう一点の質問は、登録の方法については、先ほど鎌田委員の方で触れられましたけど、将来的にはPLTを日本がどうするかということが大きく影響すると思いますので、PLTについてどのように考えられているのかを伺いたいと思います。
3点目は、こういう問題もあるかなと思うことなのですけれども、特許を受ける権利のライセンスの意味は、まず、ここにも書いてある補償金請求権の不行使であると思うのです。補償金請求権の行使を特許付与後に受けないために、通常実施権を得るということでしょうし、また、特許が付与される前にライセンスを持っていることによって、特許付与後にそれを継続的に通用させるということもあると思います。恐らくこの二つの性格があって、実態上はこの二つの性格を両方兼ね備えているのだと思うのです。
後者の性格に関連して、特許を受ける権利のライセンスに関する登録制度を設けるとすると、このようなライセンスと特許権の通常実施権との関係について詰める必要があるのではないかと思います。例えば特許権の通常実施権者でしたら、127条で特許権者が訂正をする場合にはその者の承諾を受けなければならないとなっていますけれども、特許を受ける権利の場合、出願人が補正をする場合に特許を受ける権利のライセンシーの承諾を受けなければならないということになるのか、おそらくそうはならないように思うのですが、この両者の関係はどう整理するのかというように思いました。
今いった問題については、127条を改正するといった方向もあるとは思うのですけれども、それはともかくとして、特許を受ける権利のライセンスの登録制度を設けるとした場合には、特許を受ける権利のライセンシーと特許権の通常実施権者との比較ということも考えなければならないのではないかと思います。
以上です。

竹田座長

今の御質問の点について、事務局からお答えいただきますか。

亀山審議班長

第1点目は対価の額について、現実にどういうふうに登録しているかと。我々が把握している限りでは、対価は決めていないので登録できないという人もいるのか、それは一定程度いるだろうと。あとは、対価の決めがある場合は登録するというふうにされていますので、その決めがないということで、あえて空欄で出してくるというケースも見受けられると認識はしております。
2番目、PLTとの関係では、我々、PLTの批准に向けて検討はしているところですので、単独申請というところも、特に大きな問題がなければ、できれば、そうしたいということで考えておりますが、まさにそこはこのワーキングで議論していただきたいと思っております。
3点目は、特許を受ける権利について補正した場合に、ライセンシーに承諾を得るかどうかというのは、まさにおっしゃるとおり、そういう論点があろうかと思いますので、今後、事務局でも整理をして、この場でも議論させていただきたいと考えております。

竹田座長

特許を受ける権利に関して、特にいろいろ御意見が出ております。島並委員、いかがですか。

島並委員

特許を受ける権利からとは、違う点でもよろしいでしょうか。

竹田座長

どうぞ御自由に御発言ください。

島並委員

事務局には非常に丹念に論点を挙げていただいて勉強になったのですけれども、今後、これをどういう順序で検討していくかについて少し考えていることを申し上げたいと思います。
登録事項の限定化とか、開示や非開示の問題、あるいは共同申請の問題といった各論を、個々の事項について確定する前に、登録すること、あるいは登録しないことの「効果」を確定しないと、それぞれの論点の結論は出てこないのではないかという気がしております。
先ほど守屋委員からも御発言がありましたけれども、ライセンス契約の本体である不作為請求権については、通常実施権を登録して初めて対抗できるという現行制度の基本線は、この委員会ではいじらないのだろうと思います。その上で、本体以外の特約事項それぞれについては、登録があって初めて対抗できる事項や、登録しなくても対抗できる事項が、論理的にはいずれもあり得ると思います。そしてさらには、たとえ登録しても対抗できない事項というのもオプションとしてはあり得て、それは事務局の整理ですと、単なる情報提供ということなのだろうと思いますが、これら3つの種類に各特約事項をふるい分けする作業をして初めて、それを登録できるようにするかとか、それをどの程度の人に開示できるかという問題について、演繹的に結論が出てくるのではないかと思います。
そもそも登録がどういう効力を持つのかということについて、各特約事項ごとに、まずは御議論いただければ効率的ではないかなという気がいたしました。
以上です。

間庭審議室長

まさにそのとおりだと思っております。私どもも、そこのところははっきりしないと、何が対抗できるのか、対抗できないのか、わからなくなってきてしまいますので、御指摘を踏まえ整理させていただきます。また御相談に乗っていただきたいと思っております。

中山委員

現状についてお伺いしたいのですけれども、対価の額を書かなくてもよろしいわけですね。そうすると、書かなくてもいいということになると、問題ないと思うんですけれども、仮に対価の決めがあって、かつ書かない場合というのは何らかのサンクションがあるんですか。それとも、書いてなければ、それでおしまいなのでしょうか。

亀山審議班長

今は対価の額が空欄で出てきた場合に、本当に決めがないのかどうかというところまでは、行政的には、そこまで確認はできておりません。そういった意味で、サンクションを特には設けておりませんというのが実態でございます。

中山委員

アンケートをとると、対価の記載が問題だというのが圧倒的に多いわけですね。それはブランクでいいということを知らないということなのでしょうか。違いますか。

守屋委員

対価の定めがある場合は書かないといけないんですね。

亀山審議班長

そうです。

守屋委員

定めがない場合はブランクでもいいと?

中山委員

私が聞いているのは、そうだけれども、仮にブランクだった場合に、何かサンクションがあるのかということです。何もなければ書かなくてもいいというのと結論は同じことになるのではないですか、こういう質問なのです。

亀山審議班長

そこは、実態はおっしゃるとおりで、賢い人は対価の額は空欄で出してくるということだと思いますが、法律上は、定めがある場合は登録しなければいけないとなっていますので、それを前提に我々も動いております。そこで使いにくいという声も実際にあるのも事実ですので、そこは見直しをしていきたいと考えております。

中山委員

先ほどの島並教授の発言とも関係するのですけれども、そこで対価の記載があれば対抗できるとか、そういう効果があるかどうかという問題です。これは学説も分かれていまして、判例もないのではっきりしないんですけれども、多分そこら辺のことではないかなと思います。

亀山審議班長

対価の額、登録の効果もぜひ御議論していただきたいと思っていますけれども、特許法上の条文だけを見ると、通常実施権は、取得した人に対しても、登録したら、その効力が発生するというふうにしか書いておりませんので、素直に法制的に整理をするのであれば、対価の額は登録しても、それは参考情報に過ぎないということなのではないかと思っています。そこは不動産登記の方でも、まさに学説分かれておりますので、そのあたりとの整理もうまくやりながらやっていきたいと思っています。

鎌田委員

今回はまだ余りテクニカルな話に立ち入るべき回ではないと思うのですけれども、対価の登録の効果というのは結構難しい問題で、不動産賃貸借における賃料の登記効果をめぐって学説上も議論されているというのは御指摘のとおりです。私自身は単なる情報提供のためだけの登記事項というのは、どんな登記・登録であっても、幅広く認めていいと考えているんですが、不動産登記法における伝統的な考え方は、登記をすることによって何らの効果も生じないものは登記をする必要がないし、させるべきでないというのが基本的な考え方ですから、登記してあることは基本的に全部意味があることになります。賃料を登記すれば、登記した賃料額で対抗していくというのが原則です。
ただし、仮にこうした考え方をとったとして、実際にはライセンス料の定めがあるのに、ライセンス料を登録しなかったときに、どういう効果が出てくるかというと、特許権を譲り受けた人が無償の通常実施権の対抗を主張していくということはあり得なくて、実際にはライセンス契約でライセンス料を取ることになっているんだから、ライセンサーとしての地位の承継を主張して、それを請求することになるだろうと思います。「対抗できない」というのは、こちらから第三者に主張していくことができないだけであって、権利自体は有効に存在しているのですから、それを第三者の側から認めていくことは全く自由ですから、たとえライセンス契約自体が登録されていなくても、特許権の譲受人が通常実施権の存在を認めて、ライセンス料を取ることも可能だということになる。
問題になるのは、実際には有償だけど、登録簿からは無償だと読める通常実施権を譲り受けた人が、特許権者に対して無償の通常実施権を譲り受けたという主張をする場合ですが、ライセンサーの承諾がないと通常実施権は移転しないから、実際にはこうした問題は起きないということができます。しかし、先ほども御指摘ありましたように、営業譲渡がふえていて、特許法94条1項によると実施の事業とともにする通常実施権の移転や一般承継の場合にはライセンサーの承諾が必要ないので、対価の額が登録されていない通常実施権を営業譲渡や吸収合併で承継した者が無償の通常実施権のはずだと言ってきたら、無償の対抗を受けてしまうということになるのではないかと思います。
対価の額が必要的記載事項ですと、一般的には、書いてあれば有償、書いてないのは無償だなという推定が働くのですけれども、任意的記載事項になると、対価の額が登録されていない通常実施権には、無償のものと、有償のものと、両方あるということになって、判断が少し微妙になってくるので、対価の額の記載されていない登録の効力をどう考えるかという新しい解釈論上の課題が出てくるのかもしれません。

竹田座長

通常登録事項として法律が規定していれば、それに何の意味がない、単なる情報開示だというだけのことだということは、通常はあり得ないと思います。
今の対価の額が登録事項になっていることと、実態との間にはかなりな乖離があるという印象が強いんですけれども、そうなってくるのも、特許権者である企業がライセンス契約をする場合に幾つかの通常実施権を競業他社との間で設定する場合に、必ずしもライセンス料は同額ではありませんので、その辺の実態が見えてしまうことが、困るという意見がこれだけ出ているのかなという印象を受けるんですけど、その点は守屋委員、いかがですか。

守屋委員

標準化に関係した特許なんかは、RAND(Reasonable and non-dicriminarory)でライセンスすることを条件とされていますので、そういった場合は、ある程度開示せざるを得ないのかもしれないんですけど、先ほど申しましたように、契約の内容が多様化していまして、特許だけの場合や著作権、ノウハウやトレードマークが含まれたような契約の形態もありますし、相手方から対価をもらう、グランドバックでいい特許を(許諾して)もらっているので、料率が下がっているようなケース、あるいはグランドバックがないので金額は高いようなケースのように、いろいろあります。
しかも、許諾の範囲が、場合によっては違うようなケースもありますので、そういった細かな制約、フィールド・オブ・ユースの限定等を抜きにして、対価だけがポコンと出ると、特許の価値について誤った理解をされる可能性もありますので、確かに、人によって条件を変えるということもあり得るわけですけれども、それよりも、むしろ契約内容が多様なので、条件についての誤った認識がされる可能性については非常に危惧することが多いです。

竹田座長

時間が残り少なくなってまいりましたが、どういう論点でも結構ですが、いかがでしょうか。

浅井委員

今の守屋さんの件で補完ですけれども、守屋さんが御指摘されましたように、対価というのは対価単独だけで決められるものではなくて、すべての取引の内容、対応を重ねまして、その結果としてあらわれている一つの現象なものですから、そこの面だけがひとり歩きしてしまうのは本末転倒かなと思います。

竹田座長

松田委員、いかがですか。

松田委員

2点だけ申し上げます。
一点目は、この問題を解決する必要性が非常に高まっているということに関連します。従前は、登録を備えていなくても余り問題になることがなかったということで、先ほど、実際にライセンシーが登録している率は1%程度に過ぎないんじゃないかというお話があったとおりです。すなわち、法制度と実務との間に乖離があって、対抗要件を備えないままライセンシーが利用しているということですが、現在は、従前と状況が変わっており、この法制度と実務との間の乖離の問題が顕在化すると非常に危ない状況にあると思っています。Mbr>従前と状況が変わっているというのは、一つは既にお話があったとおり、M&Aが大変に増え、かつ、その手法も複雑化していることです。合併等の包括承継型のM&Aでライセンス契約ごと移転されるという場合であればいいんですけれども、ライセンサーが保有する資産をばらばらに切り分けていくような特定承継型の場合ですと、ライセンシーが対抗要件を備えていないと、これが非常にリスクになり、大変な問題だと思っています。
もう一つは、パテントトロールとの関係も私は個人的に気になっております。米国のみならず、日本でもパテントトロールの問題が指摘され始めています。パテントトロールというのは、自らが技術を実施することは考えていないんですけれども、例えば破綻しそうな企業等から特許等を安く買ってきまして、その技術を使っている人に対してライセンス料を請求していくような者のことを言うわけです。この点、どのような者が上記のような意味でのパテントトロールに該当して、どのような者が正当なライセンサーなのかなというのは難しいところですけれども、悪意あるパテントトロールからすると、特許を買い集めた場合に、法制度と実務とが乖離し、多くのライセンシーが権利を対抗できない日本の現状は非常に攻撃しやすい形になっていると思います。そういう意味でも、このリスクをもたらしうる法制度と実務との乖離の問題を解決すべきです。
そこで、現在1%程度しか登録率がないのであれば、これを高めるために少しでも使い勝手のいい登録制度にしていく必要性は非常に高いと思っております。
もう一点は、抽象的な話なんですけれども、ライセンスの仕事をしていて、よくわからないなと思っていることがございます。ライセンス取引では、特許法上の通常実施権という権利の中身の話とライセンス契約に基づく権利義務という契約法の問題とが交錯していることから、どちらに起因してある問題が生じているのだろうかということで、よく頭を悩ますことがございます。
本日、話で出てきた中でも、通常実施権の範囲としてどこまで登録すればいいのかというあたりも、特許法上「通常実施権」と言われている権利の外延を画するものとして何を定めるべきかという話と、当事者の権利義務を定めるライセンス契約の中で契約上の制約事項として契約に何が書いてあるのかというあたりで、ライセンス「契約」の話なのか、通常実施権という「権利の外延」の話なのかという議論が交錯していると思っています。
この点、著作権の利用許諾との関係では、ライセンス契約の違反があった場合に、著作権侵害を構成するのか、ただの契約違反の問題にとどまるのかという議論があり、文化審議会で議論がなされておりましたけれども、権利の外延か、契約法の議論かは、これと関係した問題と思っております。
今後の課題である、特許を受ける権利のライセンスの問題、サブライセンスの問題についても、ライセンス契約という「契約法」の世界では当たり前のこととして扱われていますけれども、これもライセンス契約という契約上の権利義務の問題にとどめておくのか、通常実施権という特許法上の「権利の中身」の議論に取り込んでいくべき問題なのかという見方もできます。もちろん今回の検討範囲は登録制度の使い勝手をよくするものだということと思いますけれども、今申し上げたような契約法の話と、特許法・知的財産法における通常実施権の性質・範囲の話との役割分担のような問題が背景にあるという問題意識を持っておりまして、一言申し上げました。

竹田座長

ありがとうございます。
この際、ほかに御発言をという方いらっしゃいますでしょうか。――それでは、残り時間が少なくなってきましたので、本日の議論はこの辺で終わりにしたいと思います。
今回は第1回ということで自由にいろんな論点について御議論いただいたわけですが、第2回以降は本日の議論を踏まえて事務局でさらに論点を整理していただいた上で、項目ごとに、より詳細な検討を行って制度改正の方向性を定めていきたいと思っております。

今後のスケジュール(案)について

竹田座長

今後のスケジュール案について、事務局から御説明をいただきます。

間庭審議室長

資料5に今後のスケジュール(案)という1枚紙を用意してございます。本日の御議論を受けまして、次回、第2回目は9月の上旬あたりを予定してございまして、各論点の具体的検討についてということで、登録事項の限定化ですとか、一部非開示化、また出願中の権利に係る登録制度について御議論いただきたく存じております。
今日は、いろんな御議論が出ました。登録事項の効果の話ですとか、出願中の権利についても実体法上の整理と登録と分けて議論すべきとか。今日いただいた御意見を踏まえまして、第2回目も効率的に議論できるように事務局としても中身の整理をさせていただきたいと思っております。
また、第3回目を9月の下旬ごろ、第2回目で扱う以外の論点について、第3回目で検討したいと思ってございます。それらを受けて4回目を10月中旬ぐらいで、できれば、ここで報告書案の骨子をまとめて1か月間のパブリックコメントをかけて、第5回目を12月、年内に報告書案を取りまとめたいと考えてございます。
非常に駆け足の検討になりますが、この委員会の場に限らず、委員の皆様方にはいろいろとお話を伺いに行きたいと考えておりますので、その際はよろしくお願いいたします。
私からは以上でございます。

竹田座長

今後のスケジュールについて御説明いただきましたが、具体的な日程については、皆様、委員の御予定を伺って、審議室長から、また御連絡があると思います。

間庭審議室長

また御予定を伺って、2回目、3回目の日程を決めたいと思っております。

竹田座長

ただいまの御説明についての御意見、御質問がありましたら、何かございますでしょうか。――よろしいですか。

閉会

竹田座長

時間となりましたので、以上をもちまして、産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会の第1回通常実施権等登録制度ワーキンググループを閉会させていただきます。
本日はありがとうございました。

[更新日 2007年9月3日]

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