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第2回通常実施権等登録制度ワーキンググループ 議事録

  1. 日時:平成19年9月6日(木曜日)10時00分~12時30分
  2. 場所:特許庁 特別会議室
  3. 出席委員:
    竹田座長、浅井委員代理(渡辺氏)、梅原委員、大渕委員、鎌田委員、島並委員、茶園委員、中田委員、長濱委員、中山委員、前田委員、松田委員、守屋委員、山本委員
  4. 議題:
    1. 通常実施権に係る登録記載事項の在り方について
    2. 通常実施権に係る登録記載事項の開示の在り方について
    3. 出願段階におけるライセンスの保護の在り方について

開会

竹田座長

皆さん、おはようございます。雨の中、御参集いただきましてありがとうございました。定刻になりましたので、ただいまから、産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会の第2回通常実施権等登録制度ワーキンググループを開催いたします。
前回は第1回ということでしたので、さまざまな論点について御議論いただきましたが、本日は、「通常実施権に係る登録記載事項の在り方」、「通常実施権に係る登録記載事項の開示の在り方」、と「出願段階におけるライセンスの保護の在り方」について具体的な検討を行いたいと思います。

配付資料の確認

竹田座長

それでは、事務局より配付資料の御確認をお願いいたします。

間庭審議室長

お手元の資料でございますが、資料1が「通常実施権に係る登録事項の在り方について」、資料2が「通常実施権に係る登録記載事項の開示の在り方について」、資料3が「出願段階におけるライセンスの保護の在り方について」、資料4が「検討スケジュールについて」、資料5が第1回目のワーキンググループの議事録、そして、参考資料として参照条文をお配りしております。
以上、6点でございます。不足等ございませんでしょうか。
なお、資料5の議事録でございますが、既に委員の皆様に御確認いただいておりまして、セット版を配付させていただきました。
以上でございます。

竹田座長

ありがとうございました。

通常実施権に係る登録記載事項の在り方について

竹田座長

それでは、早速、議題に入らせていただきます。
初めに、「通常実施権に係る登録記載事項の在り方」について、事務局より説明を行っていただきます。よろしくお願いします。

間庭審議室長

資料1でございます。登録記載事項の在り方でございます。
初めに、1.論点となっておりますが、論点は、第1回目でお配りした論点に御指摘も踏まえて、(3)に、登録することにより第三者に対抗することができる事項、登録しても第三者に対抗できない事項、登録しなくても第三者に対抗することができる事項に分類して検討することが必要ではないかというような御指摘がございましたので、これを加えたものでございます。
第1回目で御提示いたしました論点につきまして、事務局の方で、皆さんの御意見をちょうだいいたしながら具体的に検討いたしまして、このペーパーを用意させていただきました。2.の具体的検討事項から御説明させていただきます。
まず、1ページ目下の(1)登録記載事項の考え方でございますが、現在の通常実施権の登録記載事項というのは、マル1ライセンシーの住所・氏名・名称、マル2通常実施権の範囲、これは地域と期間と内容でございます、マル3対価の額またはその支払い方法もしくは時期の定めがあるときは、その定め、というようになってございます。
これらの事項のうち、どれが登録記載事項として本当に必要なのか、これについて、通常実施権の設定登録の効果と照らして考え方を整理する必要があろうということでございまして、ここにマル1からマル7まで通常実施権の登録の効果を書いてございます。マル5の第三者対抗要件具備以外にも、マル6の特許無効審判請求の通知ですとか、マル1ですと、延長登録出願の拒絶事由云々といった効果がございます。その中で、マル5の対抗要件具備の効果を除いたもの、それらの効果との関係では、特許庁から通常実施権者への通知・送達等々について、通常実施権の対象となる特許権及び通常実施権者に関する情報が必要になってくるということから、そのような情報については登録記載事項として必要不可欠であると考えられる。
他方、第三者対抗要件、対抗力を具備するという法的効果との関係においては、登録事項のすべてが対抗力を備えるとは限らないということを前提にすれば、対抗力を具備する情報については必須の登録記載事項とすることが必要であろう。他方、対抗力を具備しない参考情報のようなものについては、必須の登録事項とする必要は必ずしもないと考えられるわけでございます。
次に、第三者対抗力を具備する範囲の考え方でございますが、これまで必ずしも明確にされてこなかった。登録事項のうち、どれが第三者対抗力を具備するのかというものが、これまで必ずしも明確にされてこなかったわけでございます。条文上、「通常実施権は、その登録をしたときは対抗力を生じる」と規定しているわけですけれども、「通常実施権」それ自体は第三者対抗力を生じるわけですが、例えばライセンス契約で定められた付随的な契約といったものについては、当然に対抗力は生じるわけではないと考えられるわけでございます。
3ページ目でございますけれども、通常実施権については、特許権者等に対する不作為請求権だというのが通説的な理解でございますが、これを前提にいたしますと、賃借権ですとか地上権の場合とは異なって、対価やその他の特約については、通常実施権自体の内容を構成するものではないのではないか、それに付随するものと解すべきではなかろうかと考えるわけでございます。
不動産の賃貸借契約や地上権設定契約とは異なり、ライセンス契約については、実務上、種々の特約がされているのが一般的であり、また、その定型性は低いと考えられるわけでございまして、そういったことも考えますと、通常実施権の登録により第三者対抗力を具備する範囲については、そういった権利の性質に応じて解することが必要ではないか。必ずしも、不動産登記法と同列には論じられないと考えられるわけでございます。
以上のような考え方を前提にして、現行の登録記載事項について整理いたしましたのが(3)でございますが、現行の登録記載事項、まず、マル1通常実施権の氏名等、あるいはマル2の通常実施権の範囲については権利そのものを構成する情報でございます。これについては、登録により第三者対抗力を具備するもの、必要的記載事項と考えられるわけでございます。
1枚めくっていただきまして、マル3の通常実施権の対価に関する事項でございますが、通常実施権の法的性質は不作為請求権でございまして、有償か無償かということで権利の性質に差異はないといったことを前提にいたしますと、通常実施権の対価に関する事項というものは、ライセンス契約の要素にはなり得るものであっても、通常実施権そのものを構成する事項ではないと考えられるわけでございます。登録によって第三者対抗力を具備するものではなく、登録記載事項とすることが必要不可欠ではないと考えられるわけでございます。
以上の考え方を表にしたものが真ん中の表でございまして、必須の登録事項は第三者対抗力を具備するという整理、なおかつ、それは何かというと特許権そのもの、あるいは通常実施権者の氏名等、また通常実施権の範囲もこちらに含まれる。
他方、任意の記載事項というものは第三者対抗力は具備しない。こちらの方に対価に関する事項、あるいは、ここは今後議論いただくことになろうかと思いますけれども、その他の特約ということで、独占的な通常実施権設定契約であるとか、あるいはサブライセンス等々の話といったものが含まれると考えられるわけでございます。
次に、対価に関する事項の性質でございます。まず、営業秘密に関する事項である場合が多いということで、1枚めくっていただいて上の図1-1でございますけれども、これは第1回目でも出しましたが、ライセンシーの立場において情報開示したくない項目というところで、やはり対価が非常に多いと、70%程度の回答がなされたわけでございます。
戻っていただきまして、4ページ目の(4)の文章でございますが、そういった性質のものであり、なおかつ、その時々の経済状況に応じて柔軟に変動する。また、一つのライセンス契約で多数の特許権を対象としている、あるいはノウハウ等の提供の特約なども含んでいることから、通常実施権1件当たりの対価が明確になっていないなど、実務上、こういったことになってございまして、そういった実態を踏まえますと、その対価に関する事項というものは、そういった性質からしても登録になじまないのではないかと考えられるわけでございます。
5ページ目でございます。任意的登録事項についてということでございます。特許権を買い受けようとする第三者としては、対価についても登録を通じて情報を得たいというような指摘もございます。
ちょっと、また1ページめくっていただいて6ページ目の図1-2というところでございますけれども、特許権等を第三者から取得する際に必要な事前情報というアンケート調査をとったところ、9番目の実施対価というものが66.4%で、そういった意味では、取得する際には必要だと考えられておるところでございます。
戻っていただきまして5ページ目の文章でございますが、そういったことで特許権を買い受けようとする者からは要望が強い。また、特許権者たる通常実施権許諾者としても、例えば安定したライセンス収入が得られる特許権を売却する際に、積極的な情報提供の手段として対価を登録したいという場合もあるのではないかと考えられます。したがいまして、対価というものを任意的な登録事項として法律上残しておくことが考えられます。この場合、登録することによる法的な効果は生じないものとし、あくまで参考情報としての登録にとどまるものとする、そのようなこともできるのではないかと考えてございます。
以上を前提にいたしまして、6ページ目に「制度改正試案」ということで、こちらでの議論のたたき台となるものを事務局としてまとめさせていただきました。枠囲いのところでございますが、まず、特許登録令45条1項を改正し、通常実施権の対価に関する事項については必要的登記記載事項からはずし、任意的登記記載事項とする。登録した対価に関する事項については、第三者対抗力を具備するものではなく、参考情報にとどまる。
2番目の丸として、対価の定めがない場合や無償の場合についても、任意でその旨を登録することができることとする。
3番目として、通常実施権者の氏名等及び通常実施権の範囲については、従前どおり、必要的登録記載事項として残すというようなことができないかと考えてございます。
なお、これらの制度設計に当たりまして、以下のような点に留意しなければならないだろうということで、3つほど丸を用意してございますが、1つ目は、特許法上の通常実施権の範囲とライセンス契約上の制限の切り分けについてどのように考えるべきか。
2番目として、対価の額に関する情報のほかに、任意的な登録記載事項として登録できるようにすべき情報があるのかないのか、それが何なのか。
3番目として、仮に登録申請において――これは第3回目の議論のテーマになってくるものでございますが、仮に登録申請において通常実施権者または通常実施権許諾者だけで登録することができる単独申請というものを導入する場合に、その対価について任意に登録する場合については相手方の承諾を要件とすることが妥当か否かというようなことが、制度設計に当たっても留意しなければならないということでございます。
事務局からは、以上でございます。

竹田座長

ありがとうございました。
それでは、以上の説明を踏まえまして議論に移りたいと思います。
今回は、事務局の方で前回の論点について考え方を整理していただきまして、6ページの3.のところで制度改正の試案を提案いただいておりますので、この制度改正試案や考え方に対する御意見を中心に御発言いただきたいと思います。
事務局の改正試案に対する御質問も含めて御意見がありましたら挙手をお願いいたします。
どうぞ、大渕委員。

大渕委員

東京大学の大渕でございます。私の病気の関係で、大変、皆様には御心配と御迷惑をおかけいたしまして申しわけございませんでした。ご覧のとおり、大変元気になっておりますので、御安心いただければと存じます。
私は、第1回、先ほどの事情で出席できておりませんで、今回が初めてでございますが、ただいま御説明いただきました第1論点についての6ページにあります3.のたたき台で、四角囲みで囲ってある3つほど丸があるものは、基本的に賛成していいのではないかと思っております。理由については、特に申し上げる必要はないかと思いますが、対価の性質にかんがみまして、必要的登録事項からはずして構わないのではないかと思いますし、それから、そうは言いつつ、ニーズがあるのであれば任意的登録事項にするのも、それによって問題がないのであれば、基本的にはよろしいのではないかと思っております。
ただ、ちょっとお伺いしたいのは、任意的登録事項といってもどの程度のもの、額だけ書くのか、それとも、いろいろライセンス契約の場合には、額の決め方なんかも非常に詳細な、売り上げの何パーセントとか何か、それの算出式があったりとか、いろいろなパターンがあり得るかと思うのですが、それは任意的記載事項として考える場合、どの程度のものを――6ページの四角囲みの下の枠にある最初の丸の「ライセンス契約上の制限との切り分け」というものとも関連するかもしれませんが、どの程度のものをお考えかというのをお伺いできれば、もう少しイメージがわきやすいのではないかと思いますので、よろしくお願いいたします。

竹田座長

今の点について、いかがですか。

亀山審議班長

対価の額は、おっしゃるとおり、いろいろ定め方がありますけれども、現行でも、対価の額は売り上げの何パーセントという場合もあれば、定価で幾ら幾らとしている場合もあって、それはすべて、そのとおり登録させておりますので、任意にした場合であっても、それは変わらないものということで考えております。

竹田座長

契約条項に定められているとおりのものを任意的記載事項として登録する場合は記載するという意味ですね。

亀山審議班長

はい。

竹田座長

よろしゅうございますか。
どうぞ、中田委員。

中田委員

今のことに関連してでございますけれども、任意的登録記載事項の効力について御確認したいと思います。
任意的だから対抗力はないというようになっているわけですけれども、これは制度の組み方によっていろいろあり得ることだと思います。先ほど、賃借権の例をお出しになりましたけれども、むしろ比較すべきは地上権でありまして、地上権ですと有償・無償、両方あり得るわけで、その場合に、登記をした場合、しない場合、どういう効力があるかという問題があります。
それから、最近できました電子記録債権法によりますと、やはり任意的記録事項がありまして、それを記録した場合には、むしろ、その内容になるということだと思います。
ところが、今回は、対価については参考情報にとどまる。それで、登録はしてもしなくてもいいし、無償の場合や対価の定めのない場合も、してもしなくてもよいということです。そうしますと、効力をある程度、何らかの形で明確にしておきませんと、かえって混乱が生じるのではないか。有償であるのに登記をしていないとか、あるいは、その後内容が変わってしまっているのにずれているままになっているというような場合に、かえって混乱が生じるかもしれない。この制度自体はいい制度だと思いますので、効果を何らかの形で明確にすることによって混乱を防いだ方がいいのではないかと思います。

竹田座長

中田委員の御発言の趣旨からすると、対価に関する事項を任意的記載事項とした場合に対抗力が及ぶかどうかということについて、何らかの明文の記載が必要であるという御意見でしょうか。

中田委員

それは、実務の慣行がどの程度のものになっているのかわからないのですけれども、明文によるのか、あるいは解釈で済むのか。解釈の場合に、およそ異論が起きないようなものであれば、それでよろしいと思いますし、もし異論、混乱が生じるようであれば、明文とまでは言わなくても、何らかの形ではっきりさせる方法があったらいいなと思います。

間庭審議室長

これについては、政令というか、特許登録令の記載事項ですが、そこのところでどのように書けるのか書けないのか、ちょっと検討したいと思っております。

竹田座長

ほかに、御意見ありますか。
梅原委員から先にどうぞ。

梅原委員

IPトレーディングジャパンの梅原です。私も初回、事情により欠席いたしまして、大変申しわけございませんでした。
今のことに関連するのですが、任意的記載事項について法的効果がないとした場合の参考情報というのは、流通業者の立場からいいますと、どう考えればいいのか。そもそも法的効果がないものを登録するということは、先ほど御指摘がありましたように、取り扱いの仕方によっては、かえって混乱する。それから、登録制度自体の目的・意味が不明確になるのではないかという懸念があります。任意的記載事項の結果としては、効果はどういうことなのかといった点で、やはり明確にすべきではないかというふうに感じております。

竹田座長

今の議論に関連して、大渕委員から。

大渕委員

私は、この点、先ほど賛成だと申し上げた大前提としては、あくまでも参考情報に徹し切るということでありまして、中途半端に効力を認める、認めないというよりは、私が理解しておりましたのは、必要的記載事項からはずしても任意的記載事項にするというのは、効果として参考情報に徹するということとワンセットになっていて、そういう意味では、あくまで参考情報ですという前提で当事者は行動してくださいということで、その趣旨の明確化の手段としてはいろいろな形があり得るかと思いますが、それは、あくまで非常に明確な形で、これは参考情報にとどまるものとして、任意的登録事項として登録する。いわば、わかりやすく言えば備考欄のような感じで、参考情報を提供するというだけで、そのような意味では、必要的登録事項とは性質が全く異なったものだというふうに割り切った、非常に軽い制度として組んで登録するし、受け取る側もそういうふうなものとして受け取るということで、徹底して考えた方が混乱が少ないのではないかと思いますし、かつ、その点を解説書その他で明確にしていただければ、当事者は、最初からそういうことで行動することとなり、そうであれば問題ないのではないかと思っております。

竹田座長

今の点に関連して、何か御意見はございますか。
島並委員、どうぞ。

島並委員

大変、前提的なところで恐縮ですが、もし対価を参考情報にとどめるということにいたしますと、通常実施権そのものは対抗できるけれども、対価については対抗できないという結果になります。そうしますと、その後、新権利者と旧ライセンシーとの間で、対価に関して改めて交渉するということになろうかと思いますが、その合意が形成されなかった場合、どうなるのでしょうか。

竹田座長

ライセンス契約が債権契約ですので、譲渡をされると、対抗力の問題は別として、債権契約の効力としては、当然承継されることにならないから、その点について、前の特許権者と新しい譲受人との間と、今度、ライセンシーとの間で承継についての合意ができれば全く問題はないわけですけれども、それができなかった場合にどうなるかということですが、その点について、何か御意見はございますか。

亀山審議班長

通常実施権が対抗できる場合に、もとの権利者とのライセンス契約が、そのまま新しい権利者に移るかどうかというのは、やや深い疑問があるのですが、ただ、当然には承継されないということを前提にすれば、新しい権利者とライセンシーとの間で、また契約の交渉はしなければならないので、その中で、また改めて対価については交渉して定めていくということになろうかと思っております。

島並委員

しかし、中核の通常実施権そのものは対抗できるという前提に立ちますと、対価その他の付随的条項についてその後合意が一切成立しなくても、とにかく使い続けることはできてしまいます。
そういたしますと、対価その他の付随条項について事後的に一切合意が成立しなかった場合は、例えば無償で使い続けることができるのかという疑問が――およそそうはならないのだろうと思いますが――残ります。

竹田座長

そこは、この後で議論する通常実施権の範囲の問題でも同じような議論が、現行法の解釈でも、多分あるところだと思うのですが、今度、対価を必要的記載事項からはずすと、その点が、もう1つ問題点として加わるということになるとは思うのですけれども、それから先の問題というのは、特許法だけでは処理できない、いわば民法上の契約法上の解釈問題とも絡んできますので、その点について、どこまで特許法の規定で踏み込めるかという問題は出てくるのではないか。
大渕委員、何かございますか。

大渕委員

私も、今、座長が言われたことに全く同感でありまして、先ほど提示のあった問題というのは、いわば今回の改正テーマを超えたような根本的な問題でありまして、従前から存在したと言えば存在するわけで、それはそれとして考えていけばいいのですが、今回の改正項目としては、あくまで必要的記載事項から対価をはずすかどうか云々というところに絞ればいいので、先ほどの問題は、また別途、必要に応じて考慮していくということになろうかと考えております。だから、今回は、むしろ改正事項のところを中心に考えるというのが適切じゃないかと思っております。

竹田座長

茶園委員、どうぞ。

茶園委員

基本的には、今、大渕委員がおっしゃられたことでよいと思うのですけれども、私も島並委員と同じように、疑問に思うことがございます。もっとも、これは、現行法の下でも同様の問題があると思うのですが、特に、今は流通促進のための制度改正を検討しているのですから、特許権の新しい譲受人とライセンシーとの関係で紛争が生じた場合にどうするかということを考える必要があるのではないかと思います。
それとの関係で、その紛争をどう解決するかにおいて、対価だけは参考情報として出すことが、つまり、ライセンス契約に含まれている他の様々な付随的な制限については出さないけれども、対価については参考情報として出すということが、どのような意味を持つことになるかについては、考える必要があるのではないかと思います。
以上です。

竹田座長

最後におっしゃったことは、対価は任意的記載事項なわけで、書かなければ、参考情報としてその点は出ないということになりますね。

茶園委員

ただ、ライセンシーと新しい譲受人との間で契約をどうするかにおいて、対価を出した場合に参考情報になるということが、両者間の紛争を解決する上でどういう意味を持つのか、全く何も持たないのだ、登録されていないことと変わらないのだということなのか、やはり参考情報として出すからには、何らかの、少なくとも事実上の効果があるということなのかは、ちょっと考える必要があるのではないかと思います。

竹田座長

その点は、現在でも通常実施権の範囲のところで問題があるわけなので、こういう通常実施権の登録がある場合に、その後、特許権の譲渡が行われたときに、ライセンス契約の承継関係は、実務上はどうなっているかについて企業の方にお聞きしたいと思うのですが、例えば守屋委員、実情はどうなっていますか。

守屋委員

対価の決め方ですか。

竹田座長

通常実施権について登録がある。その特許権を譲渡した場合に、ライセンス契約の承継について、ライセンシー、ライセンサー、それから、新たな譲受人との間の合意などの関係で、実務上はどんな形で行われているのか。つまり、前のライセンス契約をそのまま承継するという形で、引き継がれるのが通常の事態なのか、何か、その辺で紛争が起きるようなこともあり得るのか、その点について、実情がわかれば……。

守屋委員

産業界の実情から言うと、この間から申し上げておりますように、契約があれば対抗できるというケースがほとんどですので、そういう実務で、特にアメリカの特許の売買なんていうのはよく行っていますから、特に、1件の特許について価格を取り決める――特にエレクトロニクスの場合はそうなんですけれども、包括的に複数の特許を許諾している場合が多いので、1件の特許について、この価格がはっきりしているというケースも余りないので、実情として、1件の特許の対価を登録してあって、あるいはそれを譲渡、譲り受けをしてというケースは余り想定されないですね。現実には複数の特許が登録になっていて、それぞれの許諾に、先ほどおっしゃったように、フィールド・オブ・ユースの限定がいろいろついていて、個々の特許の価値が幾らなのかというと、ものすごくわかりにくい状況ですね。その中で、任意的記載事項として書き込むとしても、なかなか対価を個々に決めるというのも難しい部分があるのだろうと思います。

竹田座長

通常、大企業などで行っているライセンス契約というのは包括クロスライセンス契約のような非常に多数の特許を対象にして行うということが多いものですから、1件だけの通常実施権の設定登録があって、それをめぐってのライセンス契約の承継という問題は、なかなか表面に出てこないと思うのですけれども、何か、大渕委員。

大渕委員

私が、先ほど申し上げた趣旨は、これは2つポイントがあって、必要的登録者事項からはずすという点と、できれば参考情報に書きたいというニーズがあるなら、それを拾っていきましょうという話なので、まさしく、先ほども座長の方が整理されたとおり、実際上、実情として、この参考情報のニーズというのはどの程度あるのかというのは、私としても、ぜひともお伺いしたいので、別に、これはあるからやってくださいというよりは、あるのであれば、やって悪くはないんじゃないですかという話であります。
それから、先ほど座長も言われたとおり、包括クロスの場合と、それから、例えば薬品等のように1件のライセンスの場合と話は全然違いますけれども、ニーズがあるのであれば、それを拾ってあげたいなということで、事務局の方でこういうふうに整理されたかと思います。
それで、先ほどお聞きしていると、何か、対価だけ書いてもしようがないからほかのものとかいう、ちょっと、そこら辺は、それこそニーズがあるのであれば対価以外に――御発言の趣旨は、対価だけじゃなくて、ほかにもニーズがあるものがあるのだったら任意的記載事項をふやせという趣旨なのか、その辺もよくわかりませんが、私は、とにかく必要的記載事項にする必要はなかろう、それをはずすというのが第1点で、そうした場合に、ニーズがあって参考情報として、それは、あくまで参考情報に徹して、その後のライセンス契約か何かの際に、前のそういう対価等を参考にしながら、次に進んでいくための参考情報としてほしい、あるいは出したいというニーズがあるのであれば入れるというのも一つの立法政策かなと思ったのですが、そもそもそんなものは関係なしにライセンス契約をやるのですということであれば、そもそも要らないのかもしれないので、その辺は、ポイントは今申し上げたとおりですので、ニーズ等に大きくかかってくるのではないかと思っています。

竹田座長

それは、任意的登録事項ということになれば、ニーズがあれば登録されるだろうし、なければしないだろうということに行くだろうとは思うのですけれども、前田委員、何かありますか。

前田委員

現制度のときにも、対価を書いていない人がいるというお話を、以前、伺ったような気がしますが、必要的記載事項にしておいても、双方出してほしくなければ書かない。邪道ではありますが、必要的記載事項にしておいて、どうしても効力を発生してほしい場合は書くというような運用というのはできないのかなという気がしました。
本来、必要的記載事項であれば書かなければいけないのでしょうけれども、書かなくても現在は、効力は発生していたわけですね、今までの段階で。必要である人が書けばいいということであれば効力が発生しない任意事項になるより必要記載事項の方がいいのかなという気がしてしまったものですから、ちょっと教えていただければと思います。

竹田座長

それは必要的記載事項であれば、まさに必要的だから書かなければならないので、その対価を書かないでも、登録を受け付けていた実務の方に問題があったのでないかと思うんですね。(笑声)
だから、この際、そういう問題があるような事項は任意的記載事項にしてしまえば、むしろ問題の解決にはなるという意味では、今、提案している方向の方がよろしいのではないかということになるかなと思うのですけど。

前田委員

ただ、任意的にしてしまうと、そこにどうしても効力を発生させてもらいたいと思っている人にとっては参考情報みたいな形になってしまうのかなと思ったものですから、書いてほしくない人は書かずに登録されていたのであれば、それでいいのかなというような気が、ちょっとしてしまいましたが、それじゃいけないわけですね、本来は。

竹田座長

そうだと思います。

前田委員

わかりました。

竹田座長

よろしいですか。
ちょっと大分時間をとりましたが必要的記載事項から対価に関する事項をはずすという点では、皆さん、御異論がないようですけれども、ほかに、事務局の提案に関するペーパー全体の趣旨からいうと、参考情報にとどまるかもしれないけれども、任意的登録事項として任意的登録記載事項とすべきでないかというようなことを、何か、お考えの点があったら御発言いただきたいと思います。
梅原委員、どうぞ。

梅原委員

また、同じようなことになると思うんですけれども、そもそも参考情報として出したいというのは何のためか。目的が何か、効果が何かがわからない。目的、効果によって何を追加すべきかというのが出てくると思います。したがって、何が追加したいのかといっても、出す以上はその意味がどこにあるのかといった点について、先ほど御指摘がありましたように、任意的記載事項の効果はどうなのか、全くないのかということになりますと、出す意味が全くないのではないですかというふうに思います。

竹田座長

このペーパーのふるい分け方だと、任意的記載事項は参考情報であって、第三者に対抗力という点では具備しないということになりますけれども、任意的記載事項として記載があるということは、あとの契約の承継関係等では、取引の流通上の問題では参考資料情報としての価値はあるかなと思います。その程度で、そこのところはしっかりと切り分けるというのが、この趣旨だと思いますけれども、よろしゅうございますか。

間庭審議室長

今回、対価について、任意的登録事項として残すという提案について御議論いただいているわけですが、これは、今は必要的記載事項なわけですけれども、これについて対抗力を有する、有さないの議論もあったところで、少なくとも特許権を買い受けようとする者が、やはり対価情報があった方がいいというような現状があったので、だったら、まるきり記載欄からはずすのではなくて、書きたい人だけ書けばいいじゃないかと。ただ、それは参考情報にとどまって、当然、対抗力を有するものではないということで整理するわけですけれども、そういった趣旨で、ある意味、取引する側にとって参考になればというふうな形でこれを残しているわけです。
ただ、実際問題として、任意で登録してくれる人が本当にいるのか、いないのかというのは、これはまた別問題になるわけですね。
いずれにいたしましても、先ほどの島並先生、茶園先生からあった、後で紛争になったときにどんな意味があるのという観点は、必要的記載事項でも同じ話ですので、この制度改正のところでは、事務局として頭に入れていなかったのですけれども、そういったことで、任意的記載事項として、あくまで参考ということで残す意味があるのではないか。
あと、ほかに任意的記載事項として記載すべき情報があるのかないのかというのも、考えなければいけないと思っているのですが、本日の御指摘を含めまして、もう一度、任意的記載事項の扱いについて、事務局なりに検討して、また御相談させていただきたいと思っております。

竹田座長

特に、きょうの議論からは、参考情報として持つ意味というものを、何か、報告書なりに書き込めればいいのではないかと思います。
ほかに、そういう参考情報として、こういうものがということが……。
どうぞ。

鎌田委員

今の座長の御質問に直接答えることにはならなくて、むしろ、先ほどの梅原委員のお話に関連するのですが、前回も出てきましたように、本当に通常実施権というのは、ライセンス契約関係と全く切り離された権利なのか、やはり、ある程度契約関係の対抗という考え方に結びつくのかということと基本的には関連していて、それは同時に、後に出てきます破産法56条の適用対象になるのかどうかという問題とも関連するので、どこかで考え方を示さなければいけないのだろうなと思っております。
私自身は、やはり契約関係の承継ということに傾いた方向で物を考えているので、知財法の通説とは、少し違うのかもしれないのですけれども、そういう観点からいいますと、ここでは参考情報、まさに参考情報として任意的記載事項で結構だと思います。ただ、参考情報だから、一切何も効力がないのかというと、それは、やはりちょっと難しいところがありそうだと思います。最初の中田委員の御発言にも関連するのですが、例えば、医薬品その他の単純な物質特許でライセンス料が8%と登録されていたとします。それで、これだけ収益の上がる特許権だというので買い受けたら、「いや、実は無償なんですよ」と言われて、それでOKということになるのかというと、多分、民法的にはそれだけでは済まないと思うんです。
ただし、それを対抗という法理で処理するのかというと、違う法理を使うことになるだろうと思うのですが、登録した以上は、やはりそれに伴う一定の責任が生じうると私は考えます。ただ、純粋に通常実施権の問題とライセンス契約の問題を切り離すと、ライセンス料として何を書いてあっても通常実施権の対抗には全く関係ないという方向になっていくのだろうと思います。
ついでですけれども、先ほどの設例のような単発の特許に何のアフターケアもなしのライセンス契約というものは、むしろ例外で、ライセンス料自体にはいろいろな要素が入ってくるので、当該特許の使用の対価というのは、そのライセンス料の中のどの部分かということは、決めることができないケースの方が多い。そういう意味で、やはり性質上、ライセンス料は、参考資料としての記載にしかならないというふうな本質的な要素も持っているのだろうと思うんです。そういう意味での参考資料、あるいは特記事項といいますか、そういうものとして処理せざるを得ないだろうとは思います。

竹田座長

今、鎌田委員がおっしゃったうちの参考情報の持つ意味については、先ほど私が申し上げたように、もう少し事務局の方にも、きょうの議論を踏まえて練っていただきたいと思いますが、何か、大渕委員ございますか。

大渕委員

参考情報にとどまるというのは、文字どおりあくまで参考情報にすぎないのですが、ただ参考情報だからといって、いいかげんな実態に合わないものを書いていいか、それは別途、責任がないかと言われると、不法行為責任その他の一般法的なものは生じ得るので、それは一般法のところにとどめておけばいいだけの話で、これ自体として、先ほど御指摘のあったように、対抗と結びついていったような、そういう特殊な効力はなくて、あくまで参考情報にするというのが趣旨です。つまり、先ほどのような制約がおのずからあるということで、一般的に考えていけばいいのではないかと思います。
それから、あと、先ほど鎌田委員の方から御指摘のあった契約関係の承継というのは、多分、実は破産法56条の関係等で、後でかかわるかもしれませんので、必要な範囲では検討する必要はあろうかと思いますが、今のところは、この程度でいいのかなというふうに思っております――ただ、この点に入り出したら、また非常に大変な話であると思います。

竹田座長

参考情報の点については、先ほどのようなことで検討をいただくことにして、特許法の通常実施権の第三者対抗力の問題と、民法上、債権契約であるライセンス契約の承継がどこまで及ぶのかとかの問題をリンクさせてここで議論するということは、到底できないことですので、この趣旨としては、今、皆さんで御議論いただいたような趣旨で先に進めていきたいと思いますが、島並委員、何かございますか。

島並委員

それでは、ちょっと視点を変えて、第三者対抗力を具備できるとされている通常実施権の「範囲」、つまり地域・期間・内容の制限についてお伺いしたいのですけれども、これらの事項を登録すると新権利者に「対抗ができる」という事務局の整理についてお伺いします。つまり、通常実施権のデフォルトの内容は不作為請求権であるという通説的な理解に立ちますと、地域・期間・内容といった通常実施権の「範囲」は、ライセンサーにとって有利な実施制限事項だということになります。つまり、原則は日本全国で、あるいはずっと、どんな内容の実施も許す(特許権を行使しない)という内容の基本契約に対して、付随的に、さまざまな制限を加える旨の特約が、通常実施権の「範囲」に他ならないと思います。そうだとしますと、ライセンシー側が、ライセンサーに有利な事項を新権利者に「対抗する」ということの意味はどこにあるのか。むしろ、ライセンシーの第三者対抗力という話ではなくて、新ライセンサーの側が従前からのライセンシーに主張できる事項として整理すべきだろうと思われますが、その点はいかがでしょうか。

竹田座長

それは、現行法の解釈でも同じ問題はあるわけですけれども、そこの議論をここで詰めるということは、なかなか困難なことだろうと思います。島並委員がおっしゃったような問題点があることは、もちろん当然なことでありますけれども、さらにそこを詰めた上でということになりますと、これは、また大議論をしなければならないことになると思いますので、今回、ここで提案している対価に関する事項を任意的記載事項とする点については、今のような議論で先へ進めたいと思いますが、よろしいでしょうか。

〔「異議なし」の声あり〕

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通常実施権に係る登録記載事項の開示の在り方について

竹田座長

それでは、ちょっと時間も超過してきておりますので、次の問題に移りたいと思います。
次は、「通常実施権に係る登録記載事項の開示の在り方」に関する議論です。では、事務局からどうぞ。

間庭審議室長

資料2でございまして、これについても、資料1と同じような構成で資料を用意してございます。論点は、第1回目で申し上げたとおりでございます。
2番目の具体的検討をかいつまんで説明させていただきますが、まず公示と対抗の関係についてというところで、現行の日本の登記・登録制度といったものは、従来、公示制度として登記・登録された情報は、すべて一般に開示されていた。不動産登記法ですとか商業登記法。
しかし、近年、政策的な必要性から、登記により対抗力を生ずる権利等につき、利害関係を有する者が登記事項の開示を受けるのであれば、広く一般に登記されたすべての事項、情報が開示されていなくても、一部の情報が一般に開示され、最終的には取引過程を通じて登録された情報がわかるという仕組みになっていることをもって、対抗力具備という効果を認めるということも可能というような制度が導入されておって、具体的には動産・債権譲渡特例法、これは譲渡人の営業秘密ですとか事業戦略、債務者のプライバシーを保護するという見地から、譲渡に係る債権を特定するための情報、例えば債務者の氏名等々、こういったものは一般には開示されていない。
また、先般成立いたしました産業活力再生特別措置法の一部を改正する法律に基づきます「特定通常実施権登録制度」、包括ライセンスの登録制度ですね。これについて、企業の営業秘密や事業戦略を一般に開示させることなく保護するという見地から、一般に開示されるのはライセンサーの名称と登録件数のみ、その他の登録情報、例えばライセンシーの名前ですとか、通常実施権を特定するための必要な情報、そういったものの開示を受けるのは一部の利害関係人に限定しているというような状況でございます。
特許法上の通常実施権登録制度においても、一部の登録情報を一般には非開示とすることは可能ではないかと考えられます。
次に、(2)秘密化のニーズというものでございますけれども、これは、第1回目のそもそものこの会の立ち上げの趣旨とも関連してくるわけでございますが、どの特許権について、どの企業が、どのようなライセンスを受けているのかということ自体、企業にとっては研究動向ですとか、開発動向を推測させるもので、営業秘密あるいは企業戦略と密接にかかわる情報ということで秘密化のニーズが高い。
とりわけ、近年の産業活動におけるライセンスの重要性、企業組織再編等に伴う特許権の移転が増えている中で、通常実施権者の事業継続リスク軽減の観点から、登録事項をすべて一般に開示するのではなく、その一部は非開示にしていく。企業実務にあわせて非開示にしていく、そういった方向で見直すことが時代の要請ではないか。
具体的には、現在、登録し、また開示されている通常実施権者の氏名等と範囲について非開示にすべきであるという指摘がございます。
1枚めくっていただいて、図2-1は、ライセンシーの立場において、登録によって情報開示したくない項目ということで、まず、これは先ほどと同じ図ですけれども、対価がボーンと70%あるんですが、それ以外にも通常実施権の設定それ自体、通常実施権者、対象製品、対象技術範囲等々ございます。
あと、その理由は何かというと、これが図2-2でございまして、マル2のところが多いですが、ライセンス契約の相手方を知られると、ビジネスパートナーの競合会社とライセンスしている場合などのように、他のビジネスパートナーとの関係上、問題があるですとか、あるいはマル3マル4の今後の商品動向・開発動向を推測されてしまうというようなアンケート調査がございます。
次に、(3)通常実施権の性質でございますけれども、これは何度も申し上げているとおり、特許権者の権利行使に対する不作為請求権であって、独占性・排他性はないというところで、特許権等の譲受人が、またみずから実施することも妨げられない。そういった意味で、通常実施権というものの特許権に対する制約は比較的軽度ではないかと考えられます。
次に、(4)通常実施権者の氏名に関する情報の有用性について考察してございますが、特許権を第三者から取得しようとする理由として多いのが、図2-3にございますように、これは、マル1が、特許権または実用新案権に独占的な実施を行いたい、自分で独占的に実施したい。マル2が、独占か否かは問わないけれども、とにかく自分で実施したいという理由が非常に多いようでございます。
自分が独占的に実施したいという人にしてみれば、譲り受けようとする特許権に通常実施権者が存在するか否か、この情報は重要です。存在するのだったら買わないという話です。どのような人が通常実施権者でついているのか、この情報というのは重要ではないのではないかと考えられます。
次に、独占的かどうかは別にして、自分でとにかく実施したいんだという人について見ると、通常実施権者は、ほかにだれがいても自分自身が実施することは妨げられませんので、通常実施権者の氏名に関する情報というのは、さほど重要ではないのではないかと考えられます。
ただ、自分の競合企業が通常実施権者に含まれていないのだったら、独占的に実施することができなくても特許を譲り受けたいという人ですとか、あるいは、単にライセンス料が欲しいから特許権を取得したい。そういった人にとってみると、通常実施権者がだれなのか、その氏名に関する情報というのは有用である場合もあると考えられます。
次に、(5)通常実施権の範囲に関する情報というものはどんなものなのかというところでございますが、独占的に実施するために特許権を取得しようとする人にしてみると、現在、設定されている通常実施権がどの範囲かにかかわらず、通常実施権者がいたら独占的に実施しないわけですので、通常実施権の範囲というものは、さほど重要ではないのではないか。ただ、特許権の一部について独占的に実施できればよいと。要は、今いる通常実施権者は東日本で独占的にやっているけれども、自分は西日本で独占的にやりたいんだという人にしてみると、通常実施権の範囲に関する情報が重要ではないかということでございます。
独占的か否かにかかわらず自ら実施したいという人にしてみると、先ほどと同じでございますが、自分の実施というものは妨げられませんので、通常実施権の範囲に関する情報というのは、さほど重要ではないのではないかと思われます。
独占的な通常実施権の許諾を受けようとする者にとっては、特許権のうち、既にどの範囲まで他者に通常実施権許諾がなされているのかという情報は重要との指摘も他方あるわけでございます。
5ページ目でございますけれども、特許権の取引の実態と安全性について、まとめてございます。今回、仮に通常実施権の氏名ですとか範囲といった情報を一般に非開示にすることによって、登録制度そのものが利用されやすくなり、これまで登録されていなかった通常実施権が登録されるようになった場合には、取引しようとする特許権について、通常実施権の有無については、公示を通じて得られる情報量が増えるといういい面はあると思っているんですけれども、ただし、特許権を譲り受けようとする者にしてみると、対抗力を具備した通常実施権者の氏名ですとか、対抗を受ける通常実施権の範囲といった情報というものが、ある意味、公示という格好では見られなくなるといった状況で取引しなければならなくなるわけで、そういった意味では不利益となるわけでございます。
ここは、産活法のときにもいろいろ議論があったわけでございますけれども、産活法のときでも言われていたのが、やはり特許権の取引というのは専門家同士の取引である場合がほとんどだということで、デューデリジェンスがきっちり実施されている実態があるわけでございます。通常実施権の登録がある場合は、その情報を手がかりとして、特許権者に対して情報の提供を求め、どういう実施権者がいるのか、どんな範囲で実施権が設定されているのか、そういった情報を入手することが期待できるわけでございます。
そういったことで、通常実施権者の氏名ですとか通常実施権の範囲の非開示化によって、譲り受けようとする者が不利益を受けるのは、ライセンス契約において秘密保持条項が含まれるために、特許権者が譲渡前には通常実施権者の氏名を開示しない場合など、デューデリジェンスが有効に機能しない場合に限定されるのではないか。
仮に、通常の譲渡契約においては、表明保証条項や解除条項等を設けることが通常でございますので、仮に特許権の譲受人が取引によって、こんなものだとは思わなかったというような不測の損害を被った場合には、事後的に金銭で補われるという手段はあるわけでございます。
次に(7)利害関係人の範囲でございますけれども、仮に通常実施権者の氏名なり、通常実施権の範囲なりを一般には非開示にし、一部の利害関係人のみ開示するというような2段階の開示の手法を導入した場合について、利害関係の範囲をどう考えるかということでございますが、これは動産・債権譲渡特例法ですとか産活法を参考にすることができるわけで、動産・債権譲渡特例法では、対象動産なり債権の譲渡人、譲受人、あと利害関係者として、取得者ですとか差押債権者等々、また破産管財人等が挙げられているわけでございます。
産活法は、非常に複雑で3段階開示になっているわけでございますが、これについても特許権を取得した者ですとか、差押債権者、破産管財人、もちろん、通常実施権のライセンサー、ライセンシーといった人たちが2段階目の開示を受けられるというような格好になってございます。
8番目として、特定通常実施権登録制度、産活法上の制度との関係について考察したものでございます。産活法というのは包括ライセンス契約に基づく通常実施権の登録でございますが、それについても、通常実施権者の氏名と範囲については一般に非開示とされております。そこのところの議論をちょっと引きますと、「ライセンシー名は、事業戦略や営業秘密にかかわる重要な情報であって、非開示とすることのニーズがある」、あるいは「いまだ対抗関係にない第三者は、取引の際にライセンサーに確認して、通常実施権の内容を調査する機会が設けられていれば足りると考えられること」、そういったことで、非開示を導入したわけでございますが、これは包括ライセンスであるか、あるいは個別のライセンスであるかによって変わるものではないのではないかと考えられるわけでございます。
また、改正産活法に基づく登録制度は、包括ですので特許番号は特定できない、特定されていないといったことで、特許番号以外の方法で通常実施権を特定していることから、例えば一つの特許権を譲り受けようとする者にとっては、それが登録されている包括ライセンスの塊の通常実施権の中に入っているのか、いないのかについて、必ずしも明確ではないわけです。他方、特許法上の方は個々の特許権にかかわる通常実施権の登録制度ですので、登録された通常実施権の対象となる特許権は、登録簿を通じて第三者に対して明確であるということで、自分が買おうとしているものが何なのか明確である。それで、通常実施権がついているのか、ついていないのか、そこまで明確でございますので、特許権を譲り受けようとする者がデューデリジェンスを行う手がかりとなる情報を、むしろ容易に得ることが可能と考えられます。
そういったことも考えまして、特許法における登録制度についても、通常実施権者の氏名等及び通常実施権の範囲に関する情報を一般に非開示とすることが可能ではないかと考えているところでございます。
そこで、3.の制度改正試案でございます。また枠囲いのところでございますが、事務局として検討いたしまして御意見をちょうだいしたいのは、特許法186条を改正し、通常実施権者の氏名等及び通常実施権の範囲については一般に非開示とし、一定の利害関係人のみに開示する。利害関係人の範囲としては、通常実施権許諾者及び通常実施権者、対象特許権または専用実施権の取得者、質権者、差押債権者、仮差押債権者、上記の者の管理処分権者(破産管財人等)。
また、登録された情報の全部の開示を受ける手続については、請求人が上述の利害関係人に該当することを確認する必要があるため、これはオンラインではなく、特許庁の窓口で閲覧または交付を請求する場合に限定したいと考えている次第でございます。
以上でございます。

竹田座長

ありがとうございました。
それでは、以上の説明を踏まえて議論に移りますが、前の登録記載事項のあり方と同様、最後のところで制度改正試案のたたき台が提示されておりますので、その考え方に対する御意見を中心にして、これからの議論をお願いしたいと思います。
ただいまの報告に対する質問事項を含めて御意見等がございましたら、どうぞ挙手をお願いします。いかがでしょうか。
どうぞ。

梅原委員

これは、確認なんですが、登録のうち開示するものについてということですけれども、必要的記載事項の幾つかの点については非開示にするについては、ニーズは理解できるのですが、逆に任意的記載事項については開示する、参考情報などでというふうになりますと、それは、余りここで記載されてございませんが、結果として、開示される内容としては任意的記載事項が中心になる可能性もあると、それは、そういうものであるという理解でよろしいのでしょうか。

亀山審議班長

そのとおりで考えております。

竹田座長

今おっしゃったのは、任意的記載事項については、当然に開示されるということですか。

亀山審議班長

開示したい、参考情報として提供したいということで任意で登録しておりますので、そこは当然、開示をしなければ意味がございません。

竹田座長

そうすると、今のところ、先ほどほかに議論が出なかったので、任意的記載事項になるのは対価に関する事項だけですか。そうとは限らない。

亀山審議班長

それは、また議論があると思うのですけれども、次回、サブライセンスですとか、通常実施権の独占性という議論をする中で、そういったものも任意記載事項として入れてほしいという声もあろうかと思いますので、そのあたりは次回に検討したいと思っております。

竹田座長

梅原委員、よろしゅうございますか。

梅原委員

はい。

竹田座長

ほかに何か、御意見ございますか。
これは、産活法の改正問題でも大変議論になったところですけれども、いわゆる取引の安全と流通保護の面と開示範囲を限定することとの関係でどうかという議論が一番中心になってくるのではないかと思いますが、この点については、特に御意見はございませんか。
前田委員、どうぞ。

前田委員

基本的には試案に賛成ですけれども、次回議論の単独で申請ができるかどうかにもかかわってくるのかなと思います。出ない側の人が単独で申請できるということになりますと、自分の名前は出ないけれども、特許権者の方だけが出るということになりますね。
もともと単独で申請ができるということになると、名前が出ない方の側が申請をすることもできるということになってきますのでこちらとのバランスが必要かと思います。

間庭審議室長

ライセンシーが単独でというのはあり得ます。

前田委員

この案に関しては、やはり営業上のいろいろな戦略がありますので、非開示でもいいのかなと思っています。

竹田座長

ほかに、御意見どうですか。
非開示にした場合に、一定の利害関係人は開示を求めることができるわけですが、その範囲についても7ページのところで記載があるわけですけれども、この範囲についても、何か御意見があったら承りたいのですが。
どうぞ、中田委員。

中田委員

実態がわからないんですけれども、仮差押債権者も見られるということについては、ちょっと広い場合もあるのかどうか、御検討いただければと思います。私自身は、定見があるわけではございませんけど。

亀山審議班長

ほかの法律の例を見ると、大体、そこまで入ってはおるんですけれども、確かに、実態として広過ぎるという御指摘もありますので、そこは白地で再度考えたいと思っております。

竹田座長

この問題では、特許を買い受けたいという人、特に自分で実施したいという人がライセンシー名を知らないと、競合他社がライセンスを受けているという場合に意味がないというようなことが起こる問題があると思うんですね。その辺のところがどうかというのが、一番、私も前から関心事であったわけですが、そういう場合には、恐らく現在の特許権者に対して開示を求めるだろう。そうすると、特許権者が開示をするということ自体は、売買の交渉に当たって、特に制限はない。
ただし、秘密保持条項がライセンス契約にあった場合はどうなのかということの問題があると思いますね。今までは、設定登録をする場合は、当然に対価から通常実施権の範囲まで、ライセンシー名も全部登録しなくてはなりませんので、それは秘密保持条項に入るわけがないのですけれども、今度は、そういうものは全部開示しない条項となった場合には、その点については、秘密保持特約的なものが入ってくる場合が起きてくるから、そういう場合が、果たしてどうか。
これは、ペーパーの中でも、一部書かれているところはあると思いますが、その辺のところについては、事務局の方ではどういう御理解でしょうか。

亀山審議班長

今でも、秘密保持条項が、結構、契約の中では盛り込まれている例は多いと思いますので、そういう場合は、もちろん登録ができないということで今は進んでいるのだと思います。
そこを非開示にすることで、なるべく、そういった場合であっても登録できるようなケースをふやしていければいいのではないかと思っております。
ただ、本当にそこら辺の実態は、むしろ我々も産業界の方々に伺いたいところではございますので、むしろ、そこら辺は御議論いただきたいなとは思っております。

竹田座長

浅井委員の代理の渡辺さん、今の問題についていかがでございましょうか。

浅井委員
(代理・渡辺)

今日は代理でございますので、この場でお答えできるようなものがございません。

竹田座長

守屋委員はいかがですか、今の点は。

守屋委員

もう一度繰り返していただけますか。

竹田座長

ライセンス契約が設定されていて、登録されているけれども、ライセンシーの名前も通常実施権の範囲も非開示ですから、特許権を買い受けようとする人は、その登録事項を見てもわからないわけですね。その場合に、ライセンス契約に特約として秘密保持条項の対象になっているような場合には、取引上、非常に困る事態が起きないか、そういう問題というのは、余り考える必要はないことかということです。

守屋委員

通常、ここでおっしゃっているように大きな取引案件ですと、デューデリジェンスで、かなり厳しい秘密保持の条件をつけて、ライセンシー等についても開示していただいているケースがほとんどだと思います。
ただ、登録されていることによって、秘密であったとしても、先ほどからおっしゃっているように、特許権者に対して開示を求めるということが容易になると思いますので、そういう意味では、この部分が秘密であっても、活用という面からは、さほど影響がないのかなというふうに考えます。
それで、ちょっと1点だけよろしいですか。

竹田座長

どうぞ。

守屋委員

図2-1、3ページのところですけれども、先ほどの議論を蒸し返すようで申しわけないんですが、今、必要的記載事項だけを隠せるということをお考えということなんですが、2-1の9のところで、通常実施権の対価を隠したいという要求が実際にも多いわけでして、むしろ今の制度ですと、必要的記載事項として対価は書きなさい。だから、我々の立場からすると、契約環境を対抗できるというような考え方にどうしても近づいてしまうんですけれども、対価を対抗できるような形で必要的記載事項として残しておいていただく。なおかつ、それについて隠せるようにするといったような制度も形としてはあり得るのかなというふうに考えるんですが、どうお考えでしょうか。

竹田座長

つまり、任意的記載事項として対価に関する事項を書いた上で、それは開示されないと。

守屋委員

必要的記載事項としたままとしてという考え方もあるのではないかと思いますけれども、その点はいかがでしょうか。

亀山審議班長

対価の性質に照らして、そもそも通常実施権1件当たりの対価を決められないとか、開示・非開示とは別のところで、そもそも登録しようとしてもできないという事情がありますので、そこは必要的な記載事項に残すというのは、ちょっと難しいのではないかと思っております。したがって、任意ということにして、任意であれば、そこはもちろん、開示したくない人は、それで登録しなければいいということになりますので、したがって、今の案になっているということでございます。

間庭審議室長

逆に、対価を必要的記載事項として開示しないというやり方だと、対価を書いていただけるようになるのかということですが。

守屋委員

もともと契約関係を対抗できる、登録もなく契約関係を対抗できるというのが、一番すぐれていると思っていますので、登録した場合は、もちろんのこと、契約関係が対抗できる方向に近い方向で検討していただけるというのが、一番使いやすい制度かなというふうに思います。

竹田座長

前田委員、どうぞ。

前田委員

私も、守屋委員と同意見です。効力を発生してほしいので登録するわけですから、対価を――まず対価の書き方ですけれども、パーセンテージで書くのか、金額で書くのか、ノウハウとかを入れるのかなど、いろいろな難しい問題はあるにしても、そういう書き方の幅を広げることで、非開示であったら書きたいという人はいると思います。むしろ、そういう人のニーズが一番多いのではないのかなと思っていて、特許の実施権を受ける側の人を隠せるのであれば、対価のところも隠すことができないものなのかなというように、登録したいと思う人の気持ちというのは、まさしく守屋委員がおっしゃられたような運用の仕方を一番望んでいるのかなと思っています。

竹田座長

対価に関する事項を任意的記載事項にしてしまいますと、先ほどの整理だと対抗力が生じないということになるので、必要的記載事項にしておいて、そして、その点は非開示にする。

前田委員

はい。前述のようなことができれば、登録したい人の本来の目的に叶うと思いますが。

竹田座長

そうすると、対価を必ず書かなければならない。今まで、先ほど前田委員が言ったような運用は法の趣旨からすると適切な運用でないので、必ず書かなくてはならないことになりますよ、それでも非開示にしてもらえるのならそれでいいのですかという問題がありますね。それで、一定の範囲の利害関係人には、開示請求があれば開示するということが問題になるので、それは、対価は書きたくないという趣旨と、何か、ちょっと矛盾するように思うのですが。

前田委員

書きたくないというのは、第三者に見られたくないからだと思います。しかし、何かあったときの効力は発生してほしいからこそ登録しているのだと思います。そうでなければ、皆さん、ライセンス契約を必ず結びますので、その中でかなり詳細に決めますから、それ以外に登録をするという意味合いは、何かあったときの効力を発生してほしくて登録をするのではないのかなと思ったのです。

竹田座長

どうぞ。

鎌田委員

2つに分けて考えることができると思うんですけれども、ここでは、必要的記載事項は非開示、それ以外は開示というんですが、任意的記載事項も非開示にしたって、一向に構わない。つまり、任意的記載事項は開示したいから書くんだというけれども、それは、だれにでも見せたいからじゃなくて、必要なときにだけ見られてもいいという意味で開示したいということはあり得るわけですから、ちょっとそこは考えていただいた方がいい。
現実にも、必要的記載事項しか書いていない登録の場合は、通常実施権があるということしかわからないわけですね。通常実施権があるということしかわからないのに、たまたま特記事項があると、特記事項という変なものだけ開示されるというのも、ちょっと不思議ですから、そこはそれでいい。
それからもう1つは、また議論が戻ってしまいますけれども、対価を必要的記載事項にして対抗力を持たせる、これは、非常にすっきりしているんですが、ただ、対抗の議論自体でいくと、ライセンス料を書かないときには、全部無償として承継されるという話になっちゃう。それで本当にいいのか。
逆に、対抗できる事項からライセンス料をはずすというときには、これは考え方によって違うのですが、契約関係は一切承継しないという考え方の場合は、ライセンス料の支払い関係は、全部、特許権譲渡後も譲渡人にライセンス料を払い続けるという考え方ですから、譲受人との関係では、常に無償だということになるので、ライセンス料を書いても通常実施権の対抗を受ける者との関係では全く意味がないということになるのですが、契約関係の承継という考え方でいったときに、対抗の議論でいくのが本当にいいのかどうか。対抗の法理独特の解釈技術的な問題が起きるので、ちょっと違う法理で契約関係を承継させる。あるいは、場合によっては登録原簿に書いていなくてもライセンス料関係は対抗できるんだというふうな解釈の可能性も残すという意味で、対抗とは違う考え方でこの問題は処理した方がいいかなというふうにも思いますが、そこはまた、もうちょっと検討が必要かと思います。

竹田座長

そこは、まさに先ほどから言っている債権法における契約の解釈の問題としてということになると思います。
いずれにしても、あとは鎌田委員がおっしゃった点で、対価に関する事項を任意的記載事項として記載した場合に、それは開示してもらいたいから記載したのだろうということと、必ずしもイコールではないかもしれません。だから、そこのところは、検討する必要があるのではないかと思いますので、その点は、また皆さんから御意見をお聞きして検討させていただくことにしたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。
ほかに、何かありましたら……。
梅原委員、どうぞ。

梅原委員

先ほど、産業界の話ということで守屋委員の方からお話がございましたが、直接当事者でデューデリに携わることができない流通業者の立場から言いますと、従来よりも事前の調査項目がふえるということで、つまり、わからなかった点についての取っかかりができるという意味ではプラスであるというふうに考えております。
ただ、情報開示の解釈いかんによって注意義務違反が生ずるということは困るなという点がありますので、先ほどの開示の効果について、顧客の方に、これはどういう意味なのかと説明するに当たっての一つのガイドが欲しいなということがございます。
基本的には、流通業者からしてみても、従来、全く登録していなかったものが、登録がふえるということは、取引の情報がふえると認識しておりますのでプラスと考えております。

竹田座長

ありがとうございました。
ほかに、何かございますか。
特になければ……。
どうぞ。

松田委員

松田でございます。
先ほど指摘があった、任意的記載事項についても非開示の可能性を検討した方がいいのではないかという点は、私もそのとおりだと思いますので、その点を一言申し上げます。
任意的記載事項の使い方ですけれども、常に開示だということにしてしまうと、だれからも見られてしまうわけですから、制度を使いづらくしてしまうと思います。けれども、例えば、一般に開示されないが、登録はできるという制度にしておくと、恐らく、特許権者(実施権許諾者)自身は原簿の写しを全部とれるのだと思うのですが、特許権の移転に先立つデューデリの場面等で、買受の候補者から登録原簿の写しを特許権者(実施権許諾者)が取得して、買受けの候補者に提出してくださいと要求することが考えられます。その場合、特許権者(実施権許諾者)は、こういう条件なら(例えば、秘密保持契約の締結)、あなたには出しますという形で、当該情報を出す、出さないを取捨選択できることになると思います。したがって、登録された任意的記載事項については、開示が必要と特許権者が判断した相手方にだけ、登録原簿の写しを交付するという形で、任意的記載事項の開示がなされるといった使い方があり得ると思います。こうした使い方がありうることも考えますと、任意的記載事項について、一般には非開示とする方が、使い勝手が増すのではないかと思っております。

竹田座長

ありがとうございました。

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出願段階におけるライセンスの保護の在り方について

竹田座長

それでは、この問題についての議論は、以上にいたしまして、次に、第3の議論に入りたいと思います。これは、「出願段階におけるライセンスの保護の在り方」の問題ですが、この点についての御説明をお願いいたします。

間庭審議室長

資料3でございます。「出願段階におけるライセンスの保護の在り方について」ということで、これは、論点については第1回目に提示したところに加えて、(3)に鎌田委員のおっしゃったような論点も加えてございます。
1枚めくっていただいて、2.具体的検討でございます。
まず、出願段階におけるライセンスに係る登録制度についてでございますが、現行の特許法では、特許を受ける権利を有する者が、特許権の発生前に、当該出願中の発明について通常実施権を設定することは予定しておりません。他方で、産業界の実務上は出願中の発明もライセンス契約の対象に含まれていることが少なくないということで、図3-1にございますとおり、特許権以外でライセンス契約の対象としている知財権ということで、出願中の発明または考案という御回答が6割ほどございました。
そういった中で、特許権の発生前に、特許を受ける権利が第三者に仮に移転した場合には、そのライセンシーは当該ライセンスを新権利者に対抗する手段は、現在はございません。
1枚めくっていただいて図3-2でございますけれども、これもアンケート調査ですが、出願中の権利の仮登録を認める制度についてどう考えるのかというところで、登録制度が利用しやすくなることが期待できるというような回答が半数近くございました。
次に、特許を受ける権利の性質というものをまとめたわけでございますけれども、特許を受ける権利は発明の完成と同時に発生し、その権利は発明者に原始的に帰属する。それで、移転が可能な財産権として法定されているところでございます。もちろん、独占排他性を有するものではない。
そういったことですので、通常実施権が権利行使に対する不作為請求権であることを前提としますと、特許を受ける権利そのものを対象とした通常実施権というものは観念し得ません。すなわち、観念し得るとしたら、出願段階におけるライセンスというものは、対象特許権の設定登録を停止条件とする特許権者等に対する不作為請求権を中核とするものであって、その登録というものが、特許権を対象とする通常実施権を事前に登録するものと考えることができるというわけでございます。
また、これは1回目でも申し上げましたが、出願中、特許出願というものは特許査定に至らないものも多い不安定なものだ。これに対しては、もちろん出願段階におけるライセンシーというものは、その特許というものが、当然、補正や拒絶査定なされる可能性があることを前提にして、ライセンス契約を結んでいるから不当に利益を被るものではないし、あるいはライセンスの事前登録を信じて取引関係に入った第三者についても、結果として特許とならないというようなリスクがあることを理解した上で取引を行っているものですので、これは問題ないのではないか。
ただ、これも第1回目で御指摘がございましたように、行政が事前登録ということで、あたかも当該ライセンスに係る出願について特許がなされるというようなお墨付きを与えることにならないような仕組みが必要ということで、そこのところは、もし事前登録制度をつくるのであれば、ちゃんとそれは、当事者間の自己責任によって利用し得る登録制度とすることが重要だということでございます。
次は、登録の対象とその効果でございますけれども、これについては、特許を受ける権利の譲渡の場面と特許を受ける権利者の破産の場面と区別して、望まれる効果と照らして制度設計を行うことが重要ということで、まず譲渡の場面について申し上げますと、これは事前登録した後に、当該出願が特許登録に至った後において事前登録を備えた者が権利行使を受けない、そういったことを確保することが必要である。そういったことで、出願段階における通常実施権の事前登録に基づいて、特許権の発生後は特許を受ける権利の譲受人である特許権者に対抗することができるというようにすることが必要だと。
次に破産の場合でございますけれども、破産の場合については、特許権の成立前であっても、破産管財人によりライセンス契約が解除されないという効果を得ることが必要だと思われます。現行の破産法56条1項の適用を受けることが必要ということでございまして、出願段階におけるライセンスにつき、登録を備えていることで、これがまだ特許が権利化に至っていなかったとしても、これは、破産法56条1項の文言ですけれども、「賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利」について、「登録その他の第三者の対抗することができる要件」を備えていることが必要ということになります。
こういったことで、出願段階におけるライセンスの登録対象の考え方を3つの類型に、次のページに分けてございまして、やや細かい話ではあるんですけれども、まず第1番目に、将来発生し得る通常実施権の予備登録とする考え方、2番目として、将来発生し得る通常実施権を前倒しで本登録するものとする考え方、3番目として、停止条件付の通常実施権の本登録とする考え方でございます。
まず、1番目の将来発生するものの予備登録とする考え方ですけれども、それについて考察しましたが、予備登録の効果として、特許権成立前において、登録の効果として対抗力を認めるのは難しいのではないか。そういった意味では、ライセンシーに、当然に破産法の先ほどの条項が適用されるものではない。むしろ、そういった効果を得るために、出願段階のライセンシーが予備登録を備えることで、破産法の規定が適用されるためのみなし規定を設けることが必要になるのではないかと思われます。
2番目として、将来発生し得る通常実施権を前倒しで本登録ということでございます。これについては、不動産工事の先取特権ですとか製造中の船舶というものについての抵当権設定の登記等々の例があるわけでございまして、特許を受ける権利の譲渡ですとか破産の時点で、通常実施権自体が発生していないと整理した場合であっても、本登録ということ自体は可能だと思われます。ただし、その効果としては権利が未発生ですので、結局、仮登録に類似したような順位保全効ぐらいしか生じないのではないかと考えられます。
また、その場合、(ⅰ)と同様に、破産法の条項が適用されるためのみなし規定を設けなければ効果が出てこないのではないかと思われます。
3番目の停止条件付通常実施権の本登録とする場合でございますけれども、これは、停止条件付通常実施権を中核とした実体的な権利が存在していて、それを登録することで対抗力を具備させ、破産法の条項を適用させるという考え方でございます。対象となる特許権の発生前であっても、当該、未発生の権利について、特許権の成立を停止条件とする通常実施権が確定的に設定されまして、その登録をしたときから、これは対抗力を生ずるという考え方でございます。
この点は、停止条件付の通常実施権だけでは実体的な権利とは言いがたいのではないかというような考え方もございますけれども、これは、極めて法律論でございますが、出願段階におけるライセンスというものは、出願公開前は不競法の差止請求権等の不行使請求権及び出願公開後は補償金の不行使請求権といったものが付随するような性質を有しているというような整理もできるのではないかと考えられる次第でございます。
次に、出願公開に係る補償金請求との関係についてでございますけれども、この補償金請求というのは特許法の65条1項の話でございます。要は、特許出願人が、出願公開後に特許出願の発明の内容を記載した書面を示して警告したときは、特許権設定登録前に発明を実施した者に対して補償金の支払いを請求できる。もちろん、請求できるのは特許権の設定登録後になります。
この補償金請求というのは、当該出願が権利付与に至った場合に、それに対抗し得る地位を取得しているような人、先使用権者ですとか、職務発明の場合の使用者、これに対しては行使できないと解されておりまして、今回、通常実施権の事前登録をした通常実施権者についても特段の規定を設けることなく、事前登録後の実施行為について、特許権者から補償金請求を受けない地位というものは、当然取得するだろうと解されるわけでございます。
次に、登録・公示の手法について考察いたしまして、新たな原簿を作成して、これを登録することが必要だと考えております。それで、必要的な登録記載事項としては、もちろん出願人、出願番号、通常実施権者の氏名と通常実施権の範囲、先ほど申し上げましたような事項が想定されるわけでございます。
あと、登録可能となる時期でございますが、これは、まず出願前は特定されないのでだめ、出願後でございますけれども、具体的に申し上げますと、出願公開前か、あるいは出願公開後だけにするか。この点は、出願公開の有無によって、通常実施権の事前登録の可否に差異を設ける必要性も特段ないのではないか。また、出願の前後を問わず事前登録のニーズがあるということですので、出願後であれば、出願公開の前後を問わず事前登録ができることにしてよいのではないかというふうに考えてございます。
登録情報の開示の在り方につきましては、先ほど申し上げました特許権に係る通常実施権の開示と合わせることが適切であろうと考えてございます。
次に、特許出願等の補正・分割の話でございます。特許出願をした後、補正や、分割が行われた後に特許になるのが通常だと思われますが、通常実施権の事前登録がなされた後に、その対象特許出願について、出願人が補正・分割をするために、事前登録を備えたライセンシーの承諾を得ることが必要かどうかというような論点がございます。
出願の内容というものは、そもそも、これは先ほど申し上げましたように、補正等により変容していくのが、むしろ当たり前。それを前提にして、ライセンサー、ライセンシーの間で通常実施権の設定がされているということが、むしろ実態であろうと思われるところでございまして、また、出願中における補正ですとか分割ですとか、その回数というのは、極めて多いというところで、補正・分割についてライセンシーの承諾を要件とするとこれは、出願人にとって過度に重い手続になるのかなと。かえって、制度利用を妨げることになるのではないかと考えられる次第でございます。
したがいまして、出願人はライセンシーの承諾を要せず、補正・分割を行うことができることとすることが適切ではないか。ライセンシーは、事前登録を備えた出願番号に係る出願(特許)の内容と、ライセンス契約上の権利とが合致する範囲においてのみ登録の効果を主張し得ることとなる。また、分割がなされた場合は、分割後の新たな出願番号については、分割前における事前登録の対象には含まれないというふうな制度設計になるのかなと考えてございます。
最後、(7)に、これは前回、論点で挙げたのですが、特許を受ける権利の移転、質権設定、差押えに係る登録についてでございます。今回、特許を受ける権利の通常実施権についての登録制度を考えているのですけれども、そこから派生する問題ですね。特許を受ける権利そのものの移転ですとか、そういったものについて登録制度みたいなものを設けるのか、設けないのかという論点を前回、付随して挙げたわけです。例えば質権設定というのは、ファイナンスにつながり得る前向きな検討課題なわけですけれども、いかにしても、まだニーズ調査もできておりませんし、この通常実施権のワーキングで扱うには、座敷が違うのではないかということで、今後、私どもなりにニーズ調査をした上で、これの検討について、制度化の要否について考えていきたいと思っております。
3番目、制度改正試案でございますが、この枠囲いの中でございますけれども、まず1番目の丸として、特許権の発生前において、出願番号により対象を特定して、ライセンスに係る登録ができることとする。これは、特許を受ける権利を対象とした通常実施権ではなく、特許権を対象とする通常実施権の事前登録制度という構成とする。特許権の発生により自動的に、これは通常実施権の登録となります。
2番目として、当該出願について拒絶査定がなされた場合は、行われた登録というものは、職権により抹消される。
3番目として、登録の効果として、特許権の発生前に特許を受ける権利が第三者に移転した場合には、その後、特許権が発生した後において、特許を受ける権利の譲受人である特許権者に対して、ライセンシーは通常実施権を対抗することができる。また、この登録を備えていれば、破産法56条1項の効果も持てるように、特許権発生前であっても、破産管財人はライセンス契約を解除することができないような法制とすることが必要でございます。
登録の申請があった場合に初めて、当該出願番号を単位として登録原簿を作成する。対象特許の出願後であれば、出願公開前であっても登録し得ることとする。
登録申請のためには、登録申請書のほか、登録の原因を証する書面を要求する。これは、現行の登録実務と同様、契約書そのものではなくても、通常実施権を許諾する旨が明示されている許諾証書によることを認める。
次に、登録記載事項については、特許権に係る通常実施権と同様の考えで、ライセンシーの氏名、通常実施権の範囲を必要的記載事項、対価については任意的記載事項とする。
情報の開示についても、特許権発生後における通常実施権と同様、ライセンシーの氏名等及び通常実施権の範囲については、一般には非開示、一部の利害関係人のみ開示。
出願の内容については、登録情報を利用する者が、出願番号により公開公報と照合して確認する。
また、2点ほど、これらの制度設計に当たって留意しなければいけないものを挙げてございまして、出願公開前に事前登録されたライセンスに係る登録簿を公示した場合、通常は公開されない出願番号と出願人の氏名というものが、先んじて公開されてしまうことになるわけで、ここについてどう考えるのか、我々もまだ詰め切っていないというのが1点目。
2点目として、出願段階においてライセンスの登録がなされた後、当該出願について補正・分割がされた場合に、ライセンシーが不測の不利益を受けるような可能性を最小限にし得るような方策があるのかどうか、その辺についても、留意しなければいけないなと考えてございます。
以上でございます。

竹田座長

ありがとうございました。
それでは、以上の説明を踏まえて議論に移りたいと思いますが、8ページ以下の制度改正試案のたたき台によると、特許を受ける権利を対象とした通常実施権でなくて、あくまで特許権を対象とする通常実施権の事前登録制度であるとありますけれども、それにしても、従来から見れば、特許を受ける権利についても通常実施権の対象になるという点においては、非常に大きな問題であろうと思います。
論点についても、いろいろあろうかと思いますが、改正試案に対する御質問も含めて御意見がありましたら、よろしくお願いします。
どうぞ、中山委員。

中山委員

特許を受ける権利を対象とした通常実施権ではいけないという理由はどこにあるのでしょうか。

亀山審議班長

これは、通常実施権の性質からすると、特許権の権利行使を受けないという不作為請求権であるというのが通説だと理解しておりますので、特許を受ける権利には、そういった権利行使の概念がないことから、通常実施権の概念を変えないのだとすれば、それは特許を受ける権利の通常実施権という考え方はあり得ないのではないかということでございます。

中山委員

その「通常実施権の概念を変えないとすれば」という点ですが、それは、なぜ変えてはいけないかと、そこを伺いたかったんですけど。

亀山審議班長

そこから議論をすると、もちろん、そういう考え方もあり得るとは思いますけれども、通常実施権の性質は通説として固まっていると理解をしておりまして、裁判例もありますので、そこから変えるということは、ちょっと現実的ではないのではないかと、それは、勝手にこちらで考えていることですけど。

中山委員

現在の通常実施権はおっしゃるとおりで問題ないというか、そのとおりなんですけれども、ここで新しい制度をつくるときに、新しい通常実施権、この特許を受ける権利の通常実施権というものをつくってはいけないのかという、なぜいけないかというのは、それは今の制度がそうなっているからいけないというのは理由にならない。出願から公開までの間は、実質はノウハウのライセンスに近いし、それから、出願公開から特許になるまでの間は補償請求権は受けないという契約、全体を通じては、特許になった後も、差止請求、損害賠償請求を受けませんよという契約ですね。その契約自体に、特別にここでライセンスについて登録を認めて対抗力を認めるという、その方が素直で、停止条件付とか何とかいうと、法律家にはなじみやすいかもしれませんけれども、かなり技術的な説明だという気がするんです。

竹田座長

大渕委員、どうぞ。

大渕委員

細かい点に入るつもりはないのですが、多分、私が推察するに、3ページの(2)の「特許を受ける権利の性質について」というところの3行目ぐらいにありますが、特許を受ける権利は独占排他性がないとされており、これを前提とすると、独占排他性の行使を受けないという意味でのライセンスというものが観念し得ないということかなとこのペーパーの趣旨については理解しておりました。
今の点は、ちょっと付け足し的なことでありまして、この関係で、私が、ちょっとコメントというか、意見を述べたかったのは今の点ではありませんで、主たる議論の対象になっております8ページの改正試案たたき台というのが、メインにコメントを求められているところじゃないかと思うのですが、私が申し上げたかったのは、その上の(7)の点でありまして、特許を受ける権利の移転、質権設定、差押えに係る登録についてというところで、これは、大変重要な大きな意義を有する大きなテーマであることは、ほとんど皆さん、多くの人がそう思っているかと思いますが、私が申し上げたいのは、これは非常に大きなテーマだし、それから、今回の、今ここのワーキングでやっているテーマと関連しつつも、やはり特許を受ける権利自体の本質に遡ったり、いろいろ大変な作業が残っておりますので、多分、それを考えて、この場でやるというよりは、もっとより本格的にというのも言葉はよくないかもしれませんが、これを正面に据えてやるべきじゃないかということで、問題の重要性をかんがみつつも、ここではやらずに本格的にやろうという趣旨だというふうに理解いたしまして、それは、私は大変結構なことだと思っております。
今回の改正は、大変重要な改正でありますけれども、また、それとは別の意味で、大変重要な点ですので、もっと基礎研究等を重ねた上で、しっかりやっていただければと思っております。
以上です。

竹田座長

今、大渕委員のおっしゃったのは、その点を切り離しても、ここで提案されているような特許を受ける権利に関しての通常実施権の設定登録制度を設けること自体は、いわば先行させてもいいとお考えになるわけですか。

大渕委員

かえって特許を受ける権利自体のライセンス云々と言い出すと、何か、(7)の点と一緒にやらなければいけないような形になってきますけれども、そうではなくて、将来発生する特許権についての停止条件付ということで、いわば特許を受ける権利というのをかませないでいっているがために、この(7)というのは別の論点ということで引き離せるのではないかと、そういうふうな理解であります。

中山委員

質権設定等については、私も前々から、特にベンチャーのファイナンスについて非常に重要であると考えておりますので、何とかしてほしいと思っているのですけれども、今やるべきかどうかは別として、何とかしてほしいと思っています。
しかし、これをにらんでライセンスも考えなければいけないと思うんですね。質権を設定する場合に、何に質権を設定するかということになりますと、やはり特許を受ける権利についての質権設定じゃないかと思います。そうすると、やはりこちらの方にも影響してくるので、やはり7をにらみながら、ライセンスの方も法律構成をしていく必要があるのではないか。
7を今すぐやるかどうかは別として、7をにらみながらやる必要があるのではないかという感じがいたします。

竹田座長

中山委員のおっしゃる、そこをにらんで、ここでの制度改正を考えるとしたら、直截に特許を受ける権利についての通常実施権の設定登録だと考えた方がいいんだというふうなお考えに解してよろしいでしょうか。

中山委員

そうなのですけれども、ただ、その場合に何か弊害があるのでしょうかということを事務局に伺ったわけです。

間庭審議室長

今の制度との連続性で立論しておりまして、特許を受ける権利そのもの――通常実施権の考え方を変えないということで検討してきたもので、このような立論になってございます。
確かに、そこを変えてはいけないという話ではないわけでありまして、特許を受ける権利というものをどういうふうに構成するのか、通常実施権の通説的な考え方を前提にしないでもできるのかどうなのか、もう一度、考えさせてください。
(7)については、この場では、私どもが取り上げるには大きい話だと思っておりますが、中山委員がおっしゃるとおり、特許を受ける権利に質権を設定してはいけないという――現行法はできないわけですけれども、何でそうなのかということも、やや世の中の流れから置いていかれておりますので、そういったことを将来的に改善するようなことをにらみながら、こちらの制度設計もしたいと思います。
ただ、将来的に改善するための場というのは、きっちり我々もニーズ調査をして、別途の場を設けたいと思ってございます。
よろしゅうございますか。

竹田座長

茶園委員、どうぞ。

茶園委員

特許を受ける権利の通常実施権か、あるいは将来発生する特許権の通常実施権になるのかということとの関係で、これは、大したことではないのですけれども、6ページの補償金請求権との関係で、第2段落で先使用権とか職務発明のことが指摘されて、将来、権利付与がされた場合には、それに対抗し得る地位を取得している者には行使できないという考え方をスライドさせようとされているように思うのですが、先使用権とか職務発明により通常実施権については、最初からそういう地位があり、特許権について対抗できるから、その前の補償金請求権についても対抗できるとするものであるのに対して、今、問題にされているライセンスを将来発生する特許権の通常実施権であると解することは、恐らく問題の性格が違って、同様のものと説明することは難しいのではないかと思います。やはり、特許付与前の段階で許諾を受けているというか、将来、特許を付与された場合の補償金請求権の行使を受けないということを、別の点から説明する必要があるのではないかと思います。
それともう1点、9ページの一番最後の丸に書いてあるところで、むしろ、これは実際に現在、実務でどうやられているのか、あるいは余りやられていないのかということについて、実務に携わられている方にお聞きしたいのです。特許を受ける権利についてライセンスを受けた後に、出願分割などがされて、原出願の内容が、分割出願の方に移ってしまって、原出願の対象が全く変わってしまったというようなこともあり得ますが、現実にそういうことが起こっているのか、あるいは、起こらないように何らかの方策がとられているのかということについて、もしあればお聞きしたいと思います。
以上です。

竹田座長

それでは、今の点について何か、企業側の委員の方からございますか。
守屋委員、どうぞ。

守屋委員

通常、出願中の権利の許諾を受ける場合は、「分割も含みます」という一言が入っているケースが多いです。それで、今回の場合は、そういった特約がある場合でも、登録申請の場合は分割を含めるとしてあっても、分割がされると対抗できないというふうに、多分お考えなのだと思いますけれども、先ほどおっしゃったように、実質分割することによって、本丸が分割された方に移ってしまって何も対抗できないという結果も起こり得るのかなということで、制度として、大変よく考えていただいているわけですけれども、ここまで割り切っていただけるのでしたら、むしろ契約を、例えば交渉すれば対抗できるところまで踏み込んでいただければと思います。

竹田座長

分割について、当然、原出願のときからの分割も含めた通常実施権の効力、設定登録の効力を及ぼすというのは、法技術的にも困難だと思うんですけれども、今おっしゃられた趣旨で言えば、最初の契約のときに分割も含むので、将来、分割をしたときには、「分割出願された特許を受ける権利については通常実施権の設定登録をする」という条項を1項入れておけば、何か、目的を達するのではないかなと思うのですが、いかがですか。

守屋委員

譲受人に対して対抗できるのでしたら結構だと思うんですけれども、実務上は、特約を入れることが通常は多いです。

竹田座長

譲受人に対して、その契約だけで分割前に譲渡されたときに対抗効力が及ぶかといったら、それは債権契約としては無理だと言わざるを得ないんですけれども、かなりの部分でカバーはできるかなと。
それ以上に、何か分割が、まだどんな分割が出るかもわからない状態で、その分割についてまで効力を及ぼすというのは、ちょっと、これは法律論としては難しいのではないかなと、私が答えてしまったのですが……。
それから、先ほど茶園委員が言われた点については、何かございますか。

亀山審議班長

5ページ目に、ⅰ、ⅱ、ⅲと類型を出させていただいておりますが、茶園先生がおっしゃったことを踏まえれば、ⅰ、ⅱだと不十分で、ⅲとして、特許を受ける権利の段階から、何らか実体的なものがあればいいということだと理解しておりますので、そういう意味では、ⅰ、ⅱでは適切ではないのではないかという意見ということで理解をさせていただきましたので、それも踏まえて、今後検討したいと思っています。

竹田座長

長濱委員、何か御発言はありますか。

長濱委員

今、御回答いただいた点のⅰ、ⅱ、ⅲの類型のうち、こういった出願段階におけるライセンスの保護を認めるのであれば、ぜひ対象となる特許権の発生前であっても特許を受ける権利の転得者に対して対抗できるという方向で考えていただきたいので、3番目の停止条件付通常実施権の本登録とする考え方を中心に検討して欲しいという趣旨の発言をしようとしておりました。先にご回答をいただきましたので結構でございます。

竹田座長

あと、3つの登録方法が提示されていまして、そのいずれにしても、破産法56条1項との関係を考慮しなければならないということになっているわけですけれども、中田委員にちょっとお伺いしたいのですが、これは特許法でみなし規定を設けるという趣旨だろうと思うのですが、そういうことで、一種の特許法が、破産法56条1項の特別法的な地位に立つのかなと思いますけれども、そういう立法的な措置をすることについては、何か御意見ございますでしょうか。

中田委員

なぜ、私が指名されたのか、よくわかりませんが、破産法56条で登記・登録を求めているというのは、必ずしも対抗要件というわけではなくて、そういう範囲のものを保護するのにふさわしい権利保護要件としての登記・登録だというふうに言われていると思います。
ただ、ここで気持ち悪いのは、幾つか破産法56条と違う点があることです。1つは、破産法56条は、ここにも引用していただいておりますように、賃貸借契約その他の使用収益を目的とする権利について登記・登録が云々となっておりますが、ところが、今までのお話ですと、通常実施権あるいは特許を受ける権利にしても、いずれも不作為請求権ということで整理しておられる。そこの間の齟齬をどう考えるのかということが1点です。
それから2点目は、通常実施権の登録あるいは特許を受ける権利の登録によって、なぜライセンス契約が解除されないという効果になるのか。これは産活法のときにも同じ問題は出てきたわけですけれども、産活法の方は包括的な契約で、それぞれの特許も包括的なものに入っているという複数対複数の関係だったのですが、今回は、通常実施権一つを登録すれば、それを含んでいるライセンス契約もというと、包括ライセンス契約まで破産法56条の対象外になるのかどうかという点が、やや難しいなというふうに思うわけです。
そういたしますと、5ページの(ⅰ)、(ⅱ)、(ⅲ)のいずれをとったにしても、やはり破産法56条との関係では、何らかをみなすというか、つなぐ立法的な手当が必要ではないのかなというふうに感じますが、ただ、この点は、むしろ私よりも、専門家でいらっしゃる山本委員の方が、より適切ではないかと思います。

竹田座長

それでは、山本委員、いかがでしょうか。

山本委員

中田委員の今の御疑問ですが、第1の点で言われた御疑問は、確かに、そのとおりのところがあると思うんですけれども、ただ、中田委員もよく御存じのとおり、破産法の立法時の立案段階での議論、ずっと行われていた議論では、特許のライセンスの保護というのが正面から検討課題とされており、そして通常実施権というのは、この使用収益を目的とする権利であるということが、ほとんど疑われずに議論されていたのではないか。それで56条の趣旨についても、これは立案担当者も説明していると思いますし、ほかの人も、ほぼ争いなく認めていると思いますが、通常実施権が登録されている場合には56条の適用対象になるというふうに考えているのではないだろうかと思います。
そういう意味では、今の段階では、それは一応の前提として議論してもいいのかなと。そういう意味では、破産法56条の言うところの使用及び収益を目的とする権利というのが、あるいは民法等で前提とされているものとやや違う趣旨のものまで含んでいる、やや広い範囲のものなのかもしれないと思うわけですけれども、それは、しかし56条はそういうものとして解釈すればいいのかなという印象を持っています。
中田委員が言われた第2点は、私は、必ずしも、その趣旨が十分理解できておりません。なぜ包括の場合と個別の場合が違うのかというのは、十分理解できていませんので、私自身の立場では、必ずしもお答えできませんが、このⅰ~ⅲまでのものについて言えば、基本的には、私は事務局でここにまとめられたものは適切なまとめではないかと思います。
(ⅰ)の予備登録で足りるかどうかというのは、結局、56条における登記・登録その他の第三者に対抗することができる要件というのに、ここで言うところの予備登録が含まれるかどうかということだと思いますが、破産法は、しばしば対抗要件で、仮登記ないし仮登録を含む場合には、それを括弧書きにして、「仮登記または仮登録を含む」というような書きぶりをしていることが多いことにかんがみると、56条に仮登録まで、あるいは予備登録まで含むというのは、何らかの規定がないと難しいかなという印象を持ちました。
(ⅱ)につきましては、これは結局、まだその時点では発生していない、5ページの図で言えば、まさに点々になっている部分で破産手続を開始した場合を想定しているとすれば、まだその時点では存在していない権利について対抗要件だけがある場合を想定するということになりますが、それが、果たして56条の言うところの権利についての対抗要件を備えている場合というふうに言っていいのかどうか。56条は、その権利がまだ発生していない段階のものまで含んでいるのかどうかということは、やはり、かなり疑義があるように思われます。
(ⅲ)の構成は、私自身は、これはあるいは破産法の何か、特別規定というか、みなし規定みたいなものを書かなくても、この考えはあり得るのではないかというふうにも思っておりまして、停止条件付通常実施権というものを対抗する。その停止条件付通常実施権というものが、先ほどの使用及び収益を目的とする権利に該当する。それで、通常実施権がそれに該当するということを前提とすれば、それに停止条件がついていても、なお使用及び収益を目的とする権利であることに変わりはないということが言えるのであれば、それについて対抗要件を備えているわけでありますから、56条の趣旨に妥当するということで考えられるのかなという印象を持っています。
最後に、中山委員が言われた特許を受ける権利の対抗要件という考え方ですが、破産法的な観点からのコメントとすれば、まさに、今の特許を受ける権利というのが、使用及び収益を目的とする権利という特許を受ける権利についての通常実施権というのが、特許を受ける権利についての使用及び収益を目的とする権利と言えるかどうかという問題だと思います。
それで、私の印象では、やや希薄な感じが、特許を受ける権利という、必ずしも――私は、そこは素人なのでよくわからないのですが、実態が薄いものについて、それを使用及び収益をする権利という、それを目的とした使用収益権というものが観念できるのだろうかというのかなと。そこは観念できるということであれば、中山委員が言われた構成も破産法的な観点からは、特に問題はないということになりますが、そこは、やや私自身はわからないところであります。

竹田座長

ありがとうございました。
今、山本委員がおっしゃった中で、まず前段の方の5ページに書かれております3つの方法の第1、第2の方法についても、特許法の中で、この登録がなされた特許を受ける権利に関する通常実施権の設定登録がなされたものについては、破産法56条1項の権利とみなすとか、そういう規定を設ければ、それはクリアできると考えてよろしいですか。

山本委員

この規定の事柄の実質というか、規定の趣旨は、先ほど、中田委員がまさにおっしゃられたところに尽きているわけでありまして、したがって、その意味で、やや広い意味で使用収益を目的とする権利であって、その本体である権利が第三者に譲渡されたような場合にも、そのものに対抗できるような、そういう意味で、実体法上、強く保護されているような権利であれば、それは破産手続上も保護しよう。管財人が、その既得権を奪うような解除権は行使できないということを定めたのが、この56条の趣旨であるとすれば、その実質的な趣旨については、いずれの構成であっても、それにかなっていることは、多分間違いないのだろうと。
ですから、破産法の側から、そういう実態的な価値判断に対してどうこうつける筋合いのことはありません。ただ、文言からして素直に読めるかどうかという観点から、何らかのみなし規定を設けていただいた方がいいのではないか、そういう問題ではないかと思います。

竹田座長

そこでみなし規定を設けてしまえば、後段の、先ほど中山委員が言われた、むしろ特許を受ける権利についての通常実施権の設定とずばり考えても、破産法56条1項の目的とする権利に当たるという解釈に、当然組み込んでいいということにはなりませんでしょうか。

山本委員

ここに掲げられているⅰ~ⅲまでの考え方というのは、停止条件がついているかどうかはともかく、いずれにしても、最終的には特許権についての通常実施権の対抗を認めるということだというふうに理解しておりまして、特許権に対する通常実施権というのは、56条に定めるところの使用収益を目的とする権利であると、先ほど申し上げたような、広い意味では、そういうものに含まれるというふうに考えてよろしいのだろうと思うのですが、その前段階の特許を受ける権利についての通常実施権、目的が特許を受ける権利という、特許権に比べると、そういうやや内容の薄いものである。それについての使用収益権ということになりますので、それが56条の言うところの使用収益権の広い射程の中に含まれるのだろうか、どうだろうかということです。それは、特許法の御専門の方々がそれに含まれる、広い意味で使用収益なんだというふうに言われれば、あとは疑義を解消するために、何らかのみなし規定を設けていただければ結構だという話になろうかと思います。

竹田座長

ありがとうございました。
時間が残り少なくなってきましたが、大渕委員、どうぞ。

大渕委員

私は、かねがねこのあたりの点につき破産法の専門家から御意見を伺いたいと思っておりましたが、まさしく、きょうお伺いできて、大変ありがとうございました。
私が今お聞きした感じだと、私の特許法の感覚にも非常にフィットしているご説明だというふうに理解いたしました。

竹田座長

中田委員、どうぞ。

中田委員

1点補足させてください。
立法の経緯で、破産法56条についてライセンスのことが念頭に置かれて議論されていたというのは、山本委員がおっしゃるとおりでございます。
ただ、そこではライセンス契約についての議論でありまして、そうすると、使用収益ということが、比較的結びつきやすかったわけです。
ところが、ここでやっているのは通常実施権についての検討であり、さらに、その先の特許を受ける権利ということになって、どんどんどんどん不作為請求権の面が強調されていくということになると、ますます離れていってしまう。そこの離れぐあいをどうしたらいいのかということが懸念されているということです。

竹田座長

ありがとうございました。
鎌田委員、どうぞ。

鎌田委員

細かい点も含めて、短く3点ばかり、申し上げます。
1つは、今の御議論に関連して、中山先生の御提案で、むしろライセンス契約中心の議論の再編の可能性が提示されて大変心強く思っていますが、非常にいろいろな意味で広がりを持つことなので、将来的に、ぜひ御検討いただきたいと思っております。
それから、2つ目は8ページの下から9ページにかけてですけれども、特許発生前に特許を受ける権利が第三者に移転した場合にも対抗できるという効果を導くのが、破産と並んでもう1つの重大な効果になるわけで、そうだとすると、やはり特許を受ける権利の移転についての登録をさせてやらないというのは、どうも余り一貫性のないような気がして、そういう意味で、質権は先送りでもいいけれども、特許を受ける権利の譲渡は登録させてやらないと、よくないような気がしております。
それから3つ目は、むしろ便乗で、先ほどの発言の中で言うべきことの補充が、また対価に話を戻して申しわけないのですが、ライセンス料の登録について対抗の法理を持ち込むことには少し抵抗感がある。その一方で、登録すればそれなりの効果を認めて欲しいという実務界の要望もある。それらを考慮して、ある意味で思いつき的な発言なのですけれども、対価の登録について、「対価のある・なしの登録は必ずやりなさい。だけど、どういう対価の定めかの記載は任意でいいです」とか、何か、そんなふうなやり方というのはあり得ないかということも、少し検討していただければと思います。

竹田座長

ありがとうございました。
ほかに、何かございませんか。

間庭審議室長

資料3につきまして、通常実施権の性質から始まって特許を受ける権利の性質、あと、鎌田委員におっしゃっていただいたこと等々、いろいろな御指摘をいただきました。本件については、いただいた御指摘を事務局としても検討いたしまして、また個別にお話をお伺いさせていただきたいと思います。次回は違うテーマを扱いますが、そこに間に合うようなものでございましたら、そこでまた、当方の考え方もまとめたいと思っております。
いずれにいたしましても、貴重な御意見をどうもありがとうございました。

竹田座長

ただいま審議室長からも発言がありましたけれども、座長が余り私見を言うのは差し控えるべきだということのようですが、ちょっとだけ申し上げておきますと、やはり特許を受ける権利というのは、社会的ニーズとしては、非常に大きな意味を今は持っていると思うんですね。もう特許を受ける権利、出願段階からライセンスということは、当然、社会的事実としてもたくさんあるわけですし、しかも、特許出願から、審査請求から、審査請求待ち期間から、そういう期間を置くと、非常に長い期間があるということから見ると、特許を受ける権利の保護というのは、やはり非常に重大な重要性を持っているというふうに思いますね。
法理論的に、それをどう構成するかということの問題はあろうかと思いますが、確かに、特許を受ける権利は排他的独占性を有しないと言われていますけれども、職務発明対価請求訴訟なんかでは、出願段階から出願公開まではノウハウ的なものとして、出願公開後は独占の利益の対象になるという判決で、すべて通されておりますから、そういう意味では、かなり特許を受ける権利というものに対する考え方というのは、社会的な使われ方としては変わってきているかなと。この際に改正を考えるならば、やはりそこを踏まえた点も議論していただいた方がよろしいのではないかという感じがしておりますので、ちょっと一言だけ、申しわけないんですが、つけ加えさせていただきます。
それでは、時間も残り少なくなってまいりましたので、本日の議論はこの辺にしたいと思います。
それで、各項目の大体の方向性については基本的な了解は得られたと考えられますが、本日の議論で、いろいろの御指摘の点があろうかと思います。事務局でその点を整理していただいた上で、今後の取りまとめに際しての参考にぜひしていただきたいと思います。
なお、次回につきましては、各論点の具体的な検討として、サブライセンスの保護について、登録方法について、専用実施権の登録制度について、実用新案権に係る実施権の登録制度について等の論点の検討を予定しておりますので、皆様にも、よろしくお願いいたします。

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次回日程について

竹田座長

それでは、最後に次回の日程について、事務局から御説明をいただきたいと思います。

間庭審議室長

次回は、既に御案内が行っているかと思いますが、10月5日の金曜日、13時30分から16時、今回同様、2時間半の長丁場になりますが、先ほど座長がおっしゃったように、検討項目が多ございますので、ぜひ、よろしくお願いいたします。
第4回目以降の日程につきましては、また日程調整させていただきます。
以上でございます。

閉会

竹田座長

それでは、以上をもちまして、産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会第2回の通常実施権登録制度ワーキンググループを閉会させていただきます。
本日は、ありがとうございました。

-了-

[更新日 2007年10月9日]

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