ホーム> 資料・統計> 審議会・研究会> 産業構造審議会> 産業構造審議会 知的財産分科会> 通常実施権等登録制度ワーキンググループ> 第3回通常実施権等登録制度ワーキンググループ 議事録
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竹田座長 |
それでは、定刻になりましたので、ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会第3回通常実施権等登録制度ワーキンググループを開催いたします。 |
間庭審議室長 |
確認させていただきます。 |
竹田座長 |
ありがとうございました。 |
竹田座長 |
それでは早速議題に入らせていただきます。初めに、「特許権に係るサブライセンスの保護の在り方」と、「通常実施権に係る任意的登録記載事項」について事務局より説明を行っていただきます。よろしくお願いします。 |
間庭審議室長 |
御説明いたします。資料1と資料2、続けて説明させていただきたいと思います。 |
竹田座長 |
ありがとうございました。 |
浅井委員 |
今の制度を前提とした改正という大前提に立つ限りは、今ご説明頂きました試案なのかなと思うのですけれども、経団連の中でも、いろいろ皆さんから意見を聞いてみますと、特にサブライセンシーの登録について、むしろ授権されているということのみの登録という方が実務的であって、さらにサブライセンシーの名前まで明記するということになってくると、ライセンスの促進を求めようという趣旨から考えたとき、かえって使いにくい制度になってしまうのではないかという意見が圧倒的でございまして、そういう意味から考えますと、今回の審議会の制約の中では難しいことなのかもしれないのですけれども、本質的には、やはり契約の締結そのものをもって対抗力とするといった抜本的な対策を考える、あるいは検討することが必要ではなかろうかという意見が圧倒的多数であったことをお伝えしたいと思います。 |
竹田座長 |
結局は、締結するライセンス契約におけるサブライセンス条項には、さっきの説明にもありましたとおり二通りあって、特定の企業にだけサブライセンスを許諾するという場合と、ライセンシーの資本割合が例えば50%以上の子会社については、企業名を特定せずにライセンスをする場合とがあって、後者の方が結構多いのではないかという感じがしますが、その点はどうですか。 |
浅井委員 |
それは両方あるかと思います。後者の方の子会社の関係は、いろいろなやり方があるかと思うんですけれども、関係会社とか子会社に対するサブライセンス権というもらい方もありますし、むしろ同列に置いてしまって、実施権の範囲を拡張するというようなやり方もしておりまして、それを法的に見てサブライセンスと考えるのか、実施権そのものを得ていると考えるのか、議論はあるかもしれませんけれども、後者の方はそんな形だと思います。 |
竹田座長 |
今の御意見ですと、この改正試案では、サブライセンシーが特定されている場合には対抗力を認めるけれども、特定されていなければそのものに対抗力を認めるのは困難だろうという考えに立脚していて、こういう制度の性質上、それは動かせないところかなと思うのですけれども、経団連の御意見は、その次元をさらに超えて、ライセンシーの名前は一切出さないで、特約の授権があるということのみを登録することにしてもらいたいという意見だと理解してよろしいですか。 |
浅井委員 |
根本的には、登録しなくても、契約の締結の事実そのものが対抗要件を持つというのがあるべき姿だろう。しかし次善の策として、行うとしても、特約条項があるという記載だけでとどめるべきではなかろうか、ということです。 |
竹田座長 |
今の点に、ほかの方、何か御意見ありますか。いかがですか。 |
間庭審議室長 |
その特約が開示される、されないというのも論点としてはあるのだと思います。取引の安全とのバランスをライセンシー保護の方に傾けることになります。産業界として、アメリカ型の当然対抗ですか、それを目指すべきという話があるのは承知しておりますが、現在の我が国の法体系、民法の原則ですとか、そういったところで、一足飛びにいかないという中で、我々も何ができるのかを考えているわけでございます。登録制度ということをベースにすると、サブライセンシーの氏名が特定されず、なおかつ登録しても開示されていなければ、この制度の前提そのものを覆すことになる話ですので、そこは、私どもも検討したのですが、取引の安全の方を考えると難しいのではないかと考えております。 |
竹田座長 |
今の論点について、さらに御意見はないでしょうか。 |
松田委員 |
まずは、上記の議論と、若干ずれるかもしれないのですけれども、サブライセンスの法律関係の整理について、質問したい事項と、申し上げたい点がございます。 |
亀山審議班長 |
確かにそのような御指摘もありまして、我々もそこについては民法の先生方にもお話を伺いましたけれども、そこは大丈夫ではないかということでしたので、こういう説明にさせていただいているところでございます。そこら辺は、民法の先生方の方がお詳しいかと思います。 |
竹田座長 |
そこで民法の先生方に、御見解があったら説明していただけたらと思いますけれども。 |
中田委員 |
今事務局からお話がございましたとおり、537条の給付というのは割と広く理解されていると思います。本来は、条文上ですと「給付を請求する権利」ということで債権ということになるんでしょうけれども、債権に限らず物権も含まれている。さらに「給付」自体を考えてみますと、債権の目的と申しますか、内容、債務者に対して求めうる作為又は不為というように考えますと、それ自体も含まれるというように理解できるかと思いますので、ここは大丈夫なのではないかと私は思っております。 |
竹田座長 |
それでは、その前提で次の質問を。 |
松田委員 |
そもそも、サブライセンスについて、不動産の賃貸借と転貸借の関係になぞらえて考えるのがいいのかどうかという点がございますけれども、4番目の類型が前提とするサブライセンスの法律関係の実質について、不動産の賃貸借契約関係があって、それに基づいて転貸借契約関係があるというのとパラレルに考えて、まずはライセンサー・ライセンシー間にライセンス契約関係があり、それに基づいてライセンシー(サブライセンサー)・サブライセンシー間にサブライセンス契約関係があるという見方ができると思われます。しかし、今回、特許庁は、4番目の類型について、そうした転貸借的な関係で整理をされずに、第三者のためにする契約ということで整理されている。そもそも、不動産の転貸について、通常、第三者のためにする契約であると捉えられてはないようにと思うのですが、実務の感覚からすると、サブライセンスについても、不動産でいえば転貸借的に、まず前提としてライセンス契約関係があり、それに基づき、サブライセンス契約が締結され、親ガメの上に小ガメが乗るような形でサブライセンシーの法律関係を考えているように思います。してみると、むしろ、サブライセンシーについては、転貸借的に構成すべきであって、「第三者のための契約」という、今の整理をしてしまいますと、実務の認識及び契約上の枠組みとずれが生じてしまうことを若干懸念しております。 |
竹田座長 |
具体的に懸念するのは、どんな不都合が起きるのではないかということですか。 |
松田委員 |
今の整理ですと、子会社等のサブライセンシーは、自分にサブライセンスを付与したライセンシーと同格の、特許法78条の完全な通常実施権者として位置づけられ、その前提にたって、自らの通常実施権の登録を受ければ保護される仕組みであると理解しております。けれども、実務的には、親会社が子会社等のサブライセンシーに定めるケース等では、あくまで「子ガメ」であって自分と同格の通常実施権者として設定することを、ライセンシーもライセンサーも通常は考えないという実態があります。そこで、こうした当事者の認識に基づく契約上の法律関係と、特許法上格上げされてしまうサブライセンシーの地位とがずれることによる不都合が生じないかという懸念でございます。 |
亀山審議班長 |
賃貸借の譲渡、転貸のケースは詳しくは知らないんですが、そっちのケースでいうと、賃借人が譲渡、転貸する権限を有しているということなんだと思っておりまして、こちらのライセンスの方は、通常実施権者が再実施許諾をする権限を本来的に有しているかどうかというところにちょっと違いがあるのではないか。通常実施権者は独占排他的な権利は何ら有しておりませんので、他人に実施を許諾するという権限は本来は有していないんだろう。そうすると、制度上は特許権者から授権を受けたという整理しか解はないのかな。これは整理学上の問題なのかもしれないのですけれども、そのように考えて今の資料の構成にさせていただいているということでございます。 |
竹田座長 |
よろしいですか。 |
鎌田委員 |
今の点に関連してなんですけれども、ライセンシーには設定権限がないという御説明は、いま一つ説得的じゃないというか、固有の通常実施権設定権限がなくても授権という考え方があるわけだし、賃貸借の場合も賃借人に転貸権限を与えるということがあるわけで、私自身はどちらかというと松田委員のおっしゃられた考え方に近い、有償の通常実施権は賃貸借類似の関係であり、無償の通常実施権は使用賃貸借類似の関係であるというふうに考えています。それでいけば転貸借の関係になる。そうなると、例えばもとのライセンス契約が債務不履行解除されると、サブライセンス契約は一緒に消えてなくなるんですね。事務局案は、我が国における通常実施権の通説である、通常実施権は単発で成立して、ライセンス契約関係とは無関係だという考え方を前提にしていますので、そうなると、むしろ物権的な考え方になると思うんですけれども、特許権の上に直接通常実施権が成立する。特許権者が自ら関与しなくても、ライセンサーが自由に通常実施権を設定できる権限を与えた。そういう意味で授権の考え方をとることになります。 |
竹田座長 |
鎌田委員のお考えですと、基本的にサブライセンスに関する改正試案については法律的な問題はないという御理解でよろしい。 |
鎌田委員 |
個人的には、賃貸借契約なり、契約対抗型でやった方がいいと思いますけれども、知財法の通説に一人で歯向かう勇気はございませんので(笑声)、知財法の通説を前提にするとこんな説明の仕方になるんだろうと思います。 |
竹田座長 |
ほかに、この点。中田委員。 |
中田委員 |
今、鎌田委員が一人で歯向かう勇気はないとおっしゃいましたが、私も、二人になってもやっぱりないとは思いますが、似たような印象を持っています。ライセンス契約について、当初は使用・収益させる権利というように何となくイメージしていたものですから、通常実施権もそれでうまくいかないのかなと思っていたのですが、そうではないんだ、不作為請求権であって、打たないという内容だということが動かないようですので、それを前提に考えると授権というやり方になるんだろうと思います。 |
竹田座長 |
ほかに、どなたか手を挙げていらっしゃいませんでしたか。 |
大渕委員 |
幾つかの問題が混ざり合っているような気がします。大もとの問題と、その先のサブライセンスのライセンスに対する従属性といった話と、そもそも賃貸借とここでの法律関係が一緒なのかというあたり、いろいろな問題が入り混じっていたのですが、おおむね御整理いただいたので、特に私が申し上げるまでもないかと思います。 |
間庭審議室長 |
特許庁なもので、知財の通説の方からどうしても入ってしまうわけでございますが、私どもとしても、ライセンスと通常実施権が、法制的に言うと切り離さざるを得ないところがあるのですが、実務上はそういうものではないところで、実務的なニーズも拾いながら、今の制度との整合性に確保しようとしているというところもぜひ御理解いただきたいと思います。 |
竹田座長 |
それでは、次の通常実施権に係る任意的登録記載事項についての議論に移らせていただきます。 |
島並委員 |
済みません。もしお時間がよろしければ、1点だけお伺いしたいんですが、よろしいでしょうか。 |
竹田座長 |
どうぞ。 |
島並委員 |
類型1について、民法の先生方にお伺いします。「授権」の意味ですが、これは代理権の授与とは違うのでしょうか。 |
鎌田委員 |
代理とよく似た関係ですし、代理権の授与行為も「授権行為」と一般に言うんですけれども、狭い意味での「授権」と「代理」の違いは、代理の場合には、Bが「A代理人B」というふうに顕名をして、自分が行為をするけれども、効果はAに帰属させるというのが典型的な代理ですね。授権というのは、Bが自分の名前で行った行為の効果がAに帰属します。そういう権限をAからBに与えるのが授権で、余りないのかもしれませんけど、最近の判例などに見られる事例では、集合動産譲渡担保みたいなもので、例えばBスーパーマーケットが店舗内の在庫商品全部をA金融会社に譲渡担保に入れました。所有権は観念的に全部Aに帰属する。だけど通常の営業の範囲内でBが商品を売ったときには、所有権をCが取得できるような権限が与えられている。つまり、B・C間で売買契約をすると、所有権はAからCに直接移転する。こういう効果を出すのが「授権」という概念で、効果は代理と同じで、行為の仕方が、代理人として行為するんじゃなくて、自己の名において行為すれば効果がAに帰属するというのが授権という概念というふうに御理解いただければよろしいと思います。 |
竹田座長 |
よろしゅうございますか。 |
梅原委員 |
今の点とちょっと違うのですけれども、その前提となっておりますところで、任意的記載事項についての効果についてですが、今回整理していただいた点では大変わかりやすくなったと思っております。特に、情報の取り扱いについてどのようにすべきかは極めてセンシティブな問題になってまいりますので、前回わかりづらかった参考情報についての効果がわかりやすくなったと理解しておりまして、よい方向かなと思っております。 |
竹田座長 |
ほかに、御意見いかがですか。 |
鎌田委員 |
座長が提起された問題に関しましては、知財法の専門の方がお答えになった方がよろしいと思うんですが、素人ではありますけれども、登録しておけば、そのような権利として対抗力類似の効果が仮に出るとすると、それは専用実施権、通常実施権のほかに第三の実施権類型をつくったということになってしまう。登録制度を通じてそういう実体法上の効果を持ち込むのは好ましいことではないと思いますので、原案でよろしいのではないかと考えております。 |
竹田座長 |
その点まで認めるということになると、多分、100条の差止請求権に登録のある独占的通常実施権者を加えないと意味がないということになるし、そうなってくると専用実施権者と独占的通常実施権の区別もつかなくなってくるので、これを認めるのは難しいのかなと思いますが、そんな理解でよろしゅうございましょうか。 |
大渕委員 |
私も全く同感でありまして、この問題は独占性の合意の登録それ自体だけにとどまらない大きな広がりがある問題であって、場合によっては今言われたような、登録事項の点だけにとどまらず、独占的通常実施権というような新たな類型の権利を作り出すに等しい結果ともなってきますので、そうであれば、本格的に、それがいいのかどうかについて、実は専用実施権とほぼ一緒なのか、若干違うのかという点を含めて、検討することが必要になってくるのであって、登録それ自体だけにとどまらない大きな広がりがある点ですので、そこまでも十分踏まえた上で検討すべきやるべき問題であることは、鎌田委員と全く同感です。そこまでやるつもりがないのに、登録それ自体だけですませてしまえるという性格のものではないことだけは間違いないと思います。 |
竹田座長 |
ありがとうございました。 |
鎌田委員 |
すみません。一言だけ。 |
松田委員 |
サブライセンシーの保護の要請というのは、先ほど浅井委員からもあったとおり、産業界および法律実務家の要請として非常に強いものがあると思います。譲受人が出てきた後は、サブライセンスという、実務的にはライセンス契約において非常に一般的に使われている法律関係が保護されなくなるというのは、耐えがたいものがあると思いますので、何とか実務的に受け入れることが可能な保護の方法を考えていただきたいというのが、恐らく実務の産業界の一致した考え方であると思います。 |
浅井委員 |
今の点につきまして、松田先生のおっしゃっていただいたとおりでして、これだけ事業再編が繰り返されているグローバル競争の中においては、そういうことがしょっちゅう起こりますので、そういう点の保護がはっきりしないままですと、かえって取引の安全性を阻害するかと思います。 |
竹田座長 |
今おっしゃった取引の安全とか、全体的に考慮して、サブライセンスに登録を認めるのであれば特定したサブライセンシーの登録という資料1の改正の方向ぐらいが妥当なところになるという事務局の提案だろうと思うのですがね。 |
大渕委員 |
特にありません。 |
竹田座長 |
よろしゅうございますか。 |
竹田座長 |
それでは、次の登録の申請方法と、特許を受ける権利の移転に関する登録に入りたいと思います。御説明をお願いします。 |
間庭審議室長 |
資料3と4を御説明させていただきます。 |
竹田座長 |
ありがとうございました。 |
松田委員 |
事務局にたたき台として枠囲みで書いて頂いた中身自体は、条約対応の観点からこれはこれで結構だと思うのですが、ライセンシー保護という観点で考えたときに、ライセンス契約を公正証書にすれば単独申請ができるということで使い勝手が増すかといえば、現行の特許登録令19条でもライセンサーから承諾書をもらっていればライセンシーだけで申請できますので、実務的にいうと、承諾書をもらう手間と公正証書にする手間との比較ということになります。実務的には、承諾書をもらう方が容易ですので、ライセンシー保護という観点からは、使い勝手がよくなるという状況にはならないのではと懸念しています。 |
竹田座長 |
今、2点おっしゃいましたけど、最初の方の特許登録令との関係で、特にこういう制度を設けることの実質的な意義がどの程度あるのかというお話がありましたが、その点についてはいかがですか。 |
亀山審議班長 |
確かに、おっしゃるとおり公証制度自体いろいろ問題点もございますので、どこまで使い勝手が上がるかというのは、公証制度の見直しなんかもあわせて、どこまでできるかということだと思いますが、とりあえずここの時点で、1つユーザーの選択肢をふやすという意味では、一歩前進できるのではないかと思っております。 |
竹田座長 |
協力義務に関する点は、御意見いかがでしょうか。 |
鎌田委員 |
関係はするんですけど、直接のお答えになるかどうかわからないですが、私も5ページ目のたたき台として出ている改正試案に書かれている限りでは賛成できるんですけれども、しかも、これは単に通常実施権だけじゃなくて、幅広く単独申請を可能にするという意味では非常に画期的で、大変結構だと思っているんです。ただし、例えば特許権譲渡の公正証書ですが、公正証書の文言を見ると、代金を支払った時に特許権を移転させるものとするという契約書が公正証書で出てきたら、移転登録するんですか。 |
竹田座長 |
その点はいかがですか。 |
間庭審議室長 |
登録事務というのは、ある意味、機械的に処理しないといけない話ですので、すみませんが、今この場で確たるお答えができません。 |
鎌田委員 |
ちょっと意地悪に聞こえたかもしれないのですけど、例えば不動産の売買の場合に、不動産売買契約書で代金支払時に所有権を移転するという契約書を出すと、所有権移転登記ができないんですよ。共同申請をしてもできない。公正証書があれば単独申請できるという制度にしても登記できない。つまり、公正証書に基づく単独申請を認めるかどうかという問題は、登記・登録されるべき事項があるかないかをどういう手段で確認するかの方法の1つでしかないわけですね。現在は共同申請ということで、当事者双方が言っているなら真実性が高い。それを公正証書なら真実性が高いというふうに置きかえるかどうかだけですから、公正証書にすればそれでいいということ自体には賛成です。だけど、資料3の2.の書き出しで「真実性」と「真意性」と、2つキーワードを出していますよね。真実性の方は共同申請で真実性を担保するか、公正証書でやるか。現行の不動産登記法でも判決があれば単独申請できるとしているように、これは真実性を確実に履行するためのさまざまな方法ですから、並列的に存在していても一向に構わないのですが、これを説明するために借地借家法を持ってくるのは余り適切ではない。むしろ不適切だと思っているのですけど、それは説明に時間がかかるので省略します。 |
竹田座長 |
つまり、登録について承諾するという無条件の公正証書なら問題はないわけですね。条件成就にかかわる承諾証書である場合の、条件が成就したかどうかということについての証明をどうするのか。多分、一番条件になりやすいのは売買代金の問題だろうと思いますが、売買代金の支払いの証明を、例えば領収書でやるとか、そういう方向は考えられないかというような点もあるだろうと思います。その点を含めて検討していただきますが。 |
鎌田委員 |
それと同時に、通常実施権の場合には登録をさせてやる、させてやらないという選択権を設定者に認めるのか認めないのか、ここのポリシーを決めた方がいい。設定者の自由を認めるんだったら、登録させてやろうという意思が表明されている文書でない限りは原因証書にならないというふうにしないと具合が悪い。 |
竹田座長 |
そこのところは、今までの考え方から見れば鎌田委員の言われるようなことを否定するわけにはいかないかなと私は思いますけど、大渕委員、何か。 |
大渕委員 |
お聞きしていて幾つかの問題が混ざっているような気がします。今言われたように、もともと代金確保のために云々ということであれば、多分、事務局で書かれた御趣旨も、そういうものは含まずに、まさしくそういう条件がついていないような公正証書を前提にされているので、このようなものに限定すれば今の問題は回避できるように思います。座長が言われたとおり、代金確保といったものが一切ないようなものが前提になっているように思います。 |
竹田座長 |
その点は、大渕委員の言われるように、いわば無条件の承諾があったときには、その承諾公正証書で単独登録ができる。条件がつくようなものはここに含めていませんということなら、報告書なりにそういう文章が入った方がいいですね。 |
大渕委員 |
それは応用問題としてまた考えてもいいのかもしれませんが、とりあえず議論を整理しないと、いろいろな別の問題が混じってしまって議論が難しいかと思います。 |
鎌田委員 |
いろいろなものを混ぜるような説明の仕方をして申しわけなかったですが、私が言いたいのは、具体的には運用の仕方でどうにでもなる問題なんですけれども、そこに至る全体の説明が、真実性を担保するためのさまざまな手段という問題と、なぜ設定者の真意(登録申請意思)を確認することが必要なのか、そこの意思を確認することには法的にどういう意味があるのかという問題がきれいに整理されていないということです。そこをきちんと整理しないと、いろいろな問題が起きたときに、これはどっちの問題だからどういうふうに対処すればいいかというところが混乱してくるんじゃないかということを懸念しているのです。具体的な結論自体は、詰めていくと事務局と私の言っていることは同じになるかもしれません。 |
間庭審議室長 |
その点については、ぜひ先生のお知恵をお借りしながら整理させていただきたいと思います。 |
竹田座長 |
それでは、特許を受ける権利の移転の問題に入りたいと思います。 |
長濱委員 |
今回の特許を受ける権利の移転に係る登録制度の導入案における制度利用者に与える影響を見ますと、登録制度に移行することに伴い当然に共同申請が前提になると杓子定規に考えられてしまっているように思え、制度利用者の手続的負担と金銭的負担が現状より相当に高くなることを危惧しております。 |
間庭審議室長 |
いずれも手続的又は金銭的負担の話であったわけでございますが、料金については登録免許税ということで、財務省の管轄になるわけでございまして、私どもとしては、そのような負担は必要最小限にする方向で協議してまいりたいと思っております。 |
竹田座長 |
ほかに、ございませんか。 |
浅井委員 |
まだぴんときていないところでして、もう少し考えてみたいと思います。 |
竹田座長 |
研究者の委員の方々は、その辺はどうでしょうか。 |
山本委員 |
分割の制度がよくわからないので、わからないんですが、ここで書かれているように、分割の前後で特許を受ける権利として実質的な同一性が失われるものではないということがそのとおりであれば、例えば差し押さえの効力がもとの特許を受ける権利についてされているとすれば、実質的な同一性が失われない権利に対してその効力が及ぶということは十分首肯できることであろうと思っております。 |
竹田座長 |
結局、分割の場合には、原の明細書の特許請求の範囲が特許権の効力の範囲を決めている、その部分には全く入っていないけれども、発明の詳細が説明としては技術的理想が開示されている限り、それを取り出して分割してもいいわけですよね。その意味では、補正だって新規事項は許されないのだから、分割も補正も同じだよという考え方でもいいのかなと思いますけれども、分割の要件というのはかなり緩やかなものですから、その辺のところに及ぶということは、むしろこの制度にとって必要だという皆さんの御意見だとしたら、この原案はまさに必要性にかなっていると思いますが、そう言ってもよろしいのか、御意見を聞きたいなと思ったわけです。 |
大渕委員 |
そのあたりは、ニーズをきちんとお聞きする必要があるのであって、理論だけで直ちに決められるという性格の問題ではないように思います。 |
竹田座長 |
では、本日の段階では、その点については特に異論があるという考え方はないように思いますので、この制度について、ほかに特に御意見がなければ次へ進みますが、よろしゅうございますか。 |
竹田座長 |
それでは、次は登録の効力発生日、専用実施権登録制度の在り方、実用新案件に係る通常実施権等の登録制度の在り方の議論に移りたいと思います。 |
間庭審議室長 |
資料5、6、7につきまして説明させていただきます。 |
竹田座長 |
ありがとうございました。 |
山本委員 |
資料6の専用実施権の点ですが、破産法の関係が触れられています。3ページのあたりに書かれていることです。この問題については、破産法56条の適用で解除されないとされているわけですが、私は、ちょっとこれは危ういのではないかという印象を持っておりますので、一言申し上げたいと思います |
竹田座長 |
私も、その点は事務局に確認したいと思っていたんですが、56条の解釈論として、このように解釈できるというお考えでいるのか、それとも、56条を準用するというような法律的な手当てを特許法でするというお考えなのかも含めて、山本委員の疑問の点にお答えいただけたら。 |
亀山審議班長 |
まず、我々も同じように、専用実施権自体は物権ですので明確なんですが、事前の登録をしたときに、これが物権的なものなのか、債権的なものなのか、完全に整理できていないところがありますので、両方の可能性を考えなければいけないかな。53条に含まれないのであれば何の手当ても要らないということでいいと思いますけれども、53条の対象になってくるのであれば、56条の対象にすべきではないか。 |
竹田座長 |
今の点についていかがですか。ほかの委員の方。 |
中田委員 |
ちょっと違う角度からの質問ですが、53条に含まれないのは物権だからというのが山本委員のお考えだと思うのですが、実態として、専用実施権の事前登録の場合には一括して対価を払ってしまうということなのかどうか、お聞きしたいんです。その意味でも双方未履行にならないのではないかと思ったのですが。 |
竹田座長 |
それは実務の問題ですね。 |
中田委員 |
はい。 |
竹田座長 |
専用実施権の実施は設定例が非常に少ないので、委員の方で経験された方があるかどうかわかりませんけど、浅井委員か、梅原委員か、その辺のところの実務を御存じでしたら。 |
浅井委員 |
今竹田座長がおっしゃるとおり、私自身も実務的に経験した例はごくわずかで、一括して支払ってしまったケースと、一時金に、出来高払をくっつけるケースと、両方ありますね。ですから、専用実施権であるがゆえに対価の支払いがLumpSumで決まってしまってということに、自動的にはならないかと思います。 |
竹田座長 |
梅原委員、どうぞ。 |
梅原委員 |
私どもでは独占的通常実施権しか事例がございませんで、経験がありません。 |
竹田座長 |
それでは、鎌田委員。 |
鎌田委員 |
これは通常実施権に先行登録を認めるのと似たような関係になって、特許権成立前には専用実施権はないんですね。将来建つか建たないかわからない建物の売買契約なり賃貸借契約みたいなものがあって、その段階で仮登記的な登記がされているようなもので、後にちゃんと特許権が成立したときだけ問題になると思うんですが、さかのぼって対抗力のある物権が破産手続開始決定前に存在していたのと同じ扱いという方向で処理していくのか、破産手続開始決定のときには、将来通常実施権を設定しましょうという予約的な契約があるだけの段階だから、双務契約的処理の方がなじむんじゃないかみたいな議論が起きかねないので、それをどう処理するか。いずれにしろ破産手続の中で解除されて終わりにしてもらっては困りますよということがねらいなのだろうと思うので、この辺は倒産法の御専門の先生のお知恵をかりながら、余りいろいろな解釈の幅が出てこないで、ねらいがきちっと達成できるにはどんな制度をつくるのがいいかという形で御議論を進められてはいかがでしょうか。 |
間庭審議室長 |
まさにおっしゃるとおりでございまして、本件は、前回御議論いただいた特許を受ける権利についての通常実施権をどういうものと法律上位置づけるのか、中山先生から御意見があったわけですが、その位置づけと破産法上の効果について、私ども、先般の御議論を受けて宿題を持ち帰っておりますので、併せて専用実施権についても考え方をまとめるということで、山本先生にもお知恵を拝借してまとめてまいりたいと思っていますし、この点については法務省の方にも相談に行くことにしてございます。 |
竹田座長 |
時間も残り少なくなってまいりました。今の資料5以下に限らず、本日議論の対象になった問題全体について、何か言っておきたいことがありましたらどうぞ。どなたかございますでしょうか。 |
間庭審議室長 |
次回でございますが、10月29日の13時30分から15時30分まで、2時間ということで予定してございます。よろしくお願いします。 |
竹田座長 |
第5回の日程は。 |
間庭審議室長 |
第5回については、資料8ですが、報告書案について第4回でお諮りした後、1カ月程度パブリックコメントを求めた上、12月の上旬に開催したいと思っています。具体的な日程については追って調整させていただきます。以上でございます。 |
竹田座長 |
それでは、以上をもちまして産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会の第3回通常実施権等登録制度ワーキンググループを閉会させていただきます。本日はどうもありがとうございました。 |
[更新日 2007年10月26日]
お問い合わせ |
特許庁総務部総務課制度改正審議室 |