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第3回通常実施権等登録制度ワーキンググループ 議事録

  1. 日時:平成19年10月5日(金曜日)13時30分~16時00分
  2. 場所:特許庁 特別会議室
  3. 出席委員:竹田座長、浅井委員、梅原委員、大渕委員、鎌田委員、島並委員、茶園委員、中田委員、長濱委員、松田委員、守屋委員代理(田中氏)、山本委員
  4. 議題:
    1. 特許権に係るサブライセンスの保護の在り方について
    2. 通常実施権に係る任意的登録記載事項について
    3. 通常実施権等の登録に係る申請方法の在り方について
    4. 特許を受ける権利の移転等に係る登録制度について
    5. 登録の効力発生日について
    6. 専用実施権登録制度の在り方について
    7. 実用新案権に係る通常実施権等の登録制度の在り方について

開会

竹田座長

それでは、定刻になりましたので、ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会第3回通常実施権等登録制度ワーキンググループを開催いたします。
前回の審議では、検討事項のうち、「通常実施権に係る登録記載事項の在り方」、「通常実施権に係る登録記載事項の開示の在り方」、「出願段階におけるライセンスの保護の在り方」につきまして御審議をいただき、皆様からいろいろ御意見をいただきました。本日は、「特許権に係るサブライセンスの保護の在り方」、「通常実施権等の登録に係る申請方法の在り方」、「登録の効力発生日」、「専用実施権登録制度の在り方」、「実用新案件に係る通常実施権等の登録制度の在り方」について具体的な検討を行いたいと思っております。
また、前回の審議における御意見を踏まえまして、「通常実施権に係る任意的登録記載事項」及び「特許を受ける権利の移転等に係る登録制度」について、事務局において整理をしていただきました資料をもとに再度御審議をいただきたいと思います。内容が盛りだくさんでありますが、よろしくお願いします。
それでは、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

間庭審議室長

確認させていただきます。
資料1が特許権に係るサブライセンスの保護の在り方について。資料2が通常実施権に係る任意的登録記載事項について。資料3が通常実施権等の登録に係る申請方法の在り方について。資料4が特許を受ける権利の移転等に係る登録制度について。資料5が登録の効力発生日ついて。資料6が専用実施権登録制度の在り方について。資料7が実用新案件に係る通常実施権等の登録制度の在り方ついて。資料8が検討スケジュールについて。資料9が前回の議事録。それに、参考資料として参照条文をお付けいたしております。
以上、10点でございます。不足等はございませんでしょうか。
なお、資料9の議事録につきましては、既に委員の皆様方に確認していただいたセット版を配付させていただいております。以上でございます。

竹田座長

ありがとうございました。

特許権に係るサブライセンスの保護の在り方について
通常実施権に係る任意的登録記載事項について

竹田座長

それでは早速議題に入らせていただきます。初めに、「特許権に係るサブライセンスの保護の在り方」と、「通常実施権に係る任意的登録記載事項」について事務局より説明を行っていただきます。よろしくお願いします。

間庭審議室長

御説明いたします。資料1と資料2、続けて説明させていただきたいと思います。
まず資料1のサブライセンスの保護の在り方についてでございます。これにつきましては、2.の具体的検討から説明いたしますが、まずサブライセンスの法的性質ということで、特許法には通常実施権者から更に第三者に実施許諾するサブライセンスに関する規定はございません。他方、実務においてはライセンシーからのサブライセンスというものが広く行われておりまして、特許権者の承諾がある以上は、これを特に否定する理由はございません。
法制的には、通常実施権者は排他的、独占的な権利を有するものではございません。特許権者等に対する不作為請求権を有するにとどまるということでございますので、通常実施権者が第三者に発明の実施を許諾する権利を独自に有するものとは解されません。通常実施権者は、特許権者の授権を得た場合に限り、これらの権利に対する不作為請求権を特許権者にかわって許諾できると考えることができるわけで、この許諾を受けたサブライセンシーは、特許法上の通常実施権者として、特許権者に対する不作為請求権を取得するということになろうかと思います。
サブライセンスについて対抗力を備えるには、現行法制のもとでは、特許権者を許諾者とする通常実施権として、特許権者とサブライセンシーが共同で通常実施権の設定登録を申請していただくことになります。
次に2ページ目ですが、ここにサブライセンスの類型ということで、主な類型として4類型ほどお示ししております。まず基本的な形態ということで、図1-1に、A:特許権者、B:ライセンシー、C:サブライセンシーとございますが、特許権者AとライセンシーBとのライセンス契約がある。そこにおいてBがサブライセンスを許諾することを認める授権条項がありまして、Bがサブライセンサーとして、第三者あるいは子会社であるCをサブライセンシーとして、サブライセンス契約を締結するということでございます。
この場合、BはAの特許権について通常実施権を有しているとともに、AからBへの授権とB・C間の契約によりまして、CもAの特許権について通常実施権を有することになるということでございます。
次に類型2でございますが、パテントプールエージェントがサブライセンサーとなる場合ということで、次のページに図1-2で図示してございますが、これは基本的な形態のところのライセンシーがパテントプールエージェントであるという場合でございます。パテントプールとは、複数の企業が保有する特定の技術に関する特許権を一元管理(プール)しまして、参加企業が、Cに当たる者ですが、ロイヤリティーを払うことによってプールされた権利を実施できるという仕組みでございます。これもサブライセンスの形態でございまして、ライセンサーたる参加企業がA、パテントプールエージェントがB、サブライセンシーたる参加企業がCという格好になるわけでございます。
このような場合に、基本的な形態と同じですけど、例えば個別に特許権者A、これは通常複数いますので、A1、A2、A3といったものと、サブライセンシーであるC、これも複数いるとC1、C2、C3…、こういったものとが個別に通常実施権の設定登録を共同申請することは現実的ではないのではないか、あるいは、3ページ目ですが、パテントプールエージェントのBがサブライセンスを行う権限を有していることを登録により公示できるようになると非常に便利だというような指摘もあるわけでございます。
次に類型3でございます。これは権利譲渡に伴い従前のライセンシーがサブライセンシーとなる場合ということで、図1-3に基づいて説明いたしますが、もともとBが特許権者で、Bの特許についてB・C間にライセンス契約があった。そしたらBが特許権をAに譲渡した。で、AがBにその特許権に係る通常実施権の設定を許諾した場合であります。そうすると、A・B間にサブライセンスの授権があれば、B・C間の従前のライセンス契約と相まって、CもAの特許権について通常実施権を有することになるということでございます。類型1、基本形との違いというのは、AからBへの授権というのが事後になされるということでございます。
この場合に、Cの通常実施権について新たに対抗力を備えるためには、もちろんAと共同で申請を行って通常実施権の登録を備えることが必要であるわけでございます。ただし、もともとのB・C間の旧ライセンス契約に基づいた通常実施権について登録がなされていた場合には、CはAに対して対抗できるというのが現行の制度でございます。
4ページ目に類型4として第三者のためにする契約によるライセンスというのがございます。これも図1-4に基づいて説明いたしますが、ライセンシーである親会社のBが、特許権者Aとのライセンス契約におきまして、Bの子会社Cに対してもAが通常実施権を許諾するという場合がございます。この場合、ライセンス契約において子会社を個別に特定しないで、例えば「直接又は間接に議決権付き株式の過半数を保有する法人」といったように、一括りで定義する場合が多いようでございます。
このとき、B・C間で個別にサブライセンスの契約を締結することはございませんで、A・B間のライセンス契約が民法上の「第三者のためにする契約」として機能しまして、子会社であるCが受益の意思表示をしたときにはCのAに対する通常実施権が発生すると考えることができるわけでございます。
契約関係として、1本のA・B間のライセンス契約によって多数の子会社、C1、C2、C3…に対して通常実施権を許諾することが可能であるわけでございますが、これは現行法制上は、Cの通常実施権について対抗力を備えるためには、C1、C2、C3ごとに個別にAと共同して通常実施権の登録を備えていただくことが必要になります。
ただ、A・C間には直接の契約関係がございませんし、また、Cというものが多数存在する、かつ、子会社みたいな格好ですと変動する。新しい子会社ができたりした場合、変動するということがあります。そういったときに、契約等の実態と対抗要件具備のための現在の手続の乖離があって、不都合との指摘もございます。
5ページ目でございますが、運用方法の見直しによる対応ということでございます。現在、特許登録令では、登録に当たりまして申請人から登録の原因を証明する書面というものを求めておりまして、通常実施権の登録について申し上げますと、実務においてライセンサーがライセンシーに通常実施権を許諾した旨の許諾証書を求めている。しかしながら、サブライセンスについては、先ほど見ましたように、ライセンサーAとサブライセンシーCの間には許諾証書というものは存在しないわけでございまして、現行の登録令の運用では対応できないことになる。この点について、サブライセンスの実態を踏まえまして、特許庁としても以下のような運用改善を図ることが妥当ではないかと考えるわけでございます。
まず、類型1、2、3について申し上げますと、特許権者であるAからライセンシーBにサブライセンスに関する授権がなされていることを証明する書面と、ライセンシーBからサブライセンシーCに対して通常実施権の許諾証書、これら2つがあれば登録を認めることが可能であろうということでございます。
また、類型4、第三者のためにする契約の場合には、A・B間の第三者Cのためにするライセンス契約書と、Cが契約上の許諾対象に該当することを証明する書類、例えばCはBの子会社に該当するといったものを添付すれば、契約の直接の当事者ではないライセンシーCが通常実施権の登録を備えることが可能であろうということでございます。
これらの方法によりましてサブライセンシーの通常実施権の登録も行うことを想定しながら、ライセンス実務を行っていただくことが可能であろうと考えております。
次にサブライセンシーを特定しない登録についてでございます。これは先ほど申し上げました類型4におきますC、「株式を50%超持っている子会社」みたいな格好で、ある意味、特定することなく、設定された通常実施権に対抗力を具備させることができないかという考えもあるわけでございますが、通常実施権者の氏名というものは、第三者対抗力具備という法的効果との関係では、やはり明確にすることが不可欠であろうと考えられますので、サブライセンシーのCの氏名を特定しない格好で登録を認めることは困難であると考えられるところでございます。
6ページ目でございます。通常実施権者に実施許諾権を授権する旨の特約の登録についてでございます。これは、サブライセンスを行うことについて、特許権者であるAがライセンシーのBに授権している場合に、BがA・B間の通常実施権を登録するに際して、そのような授権があるといった特約があることを登録できないかということでございます。これが登録できれば、その授権に基づくサブライセンスも実質的に保護されることになる。これについては、次の資料2の任意的登録事項の中で検討したいと考えております。
以上を踏まえて、制度改正試案でございます。先ほどの繰り返しになりますが、特許権者からサブライセンスの授権を受けた者による通常実施権の設定について登録をする場合の原因証書については、ライセンシーにサブライセンスに関する授権がなされていることを証する書面と、ライセンシーからサブライセンシーに対する許諾証書の両者があれば、登録を認める。第三者のためにするライセンス契約に基づく場合は、その第三者のためにする契約書と、ライセンシーが許諾対象に該当することを証する書面、これらで登録を認めることとする。このような運用改善で対応することが妥当ではないかと考えているところでございます。
次に資料2でございます。任意的記載事項についてでございます。これにつきましては、前回のワーキンググループでも、特に対価のところで御議論いただいたところでございますが、これの続きでございます。対価以外にも任意的記載事項についてどうするのか、ここでまとめて検討させていただいております。
2.の具体的検討から入りますが、ややおさらいにはなりますが、任意的記載事項についてでございます。通常実施権の登録記載事項というものは、通常実施権者の氏名と範囲と、定めがあれば対価というわけでございますが、氏名、範囲については必要的記載事項とすべきということで、これはコンセンサスが得られているかと存じます。これに対して、対価に関する事項でございますが、これは、必要的記載事項とすべきではないということでコンセンサスが得られていると思います。ただし、この対価というものを任意で登録できる事項として残すべきかという論点が残っている。
任意的記載事項については、対価のほかに、通常実施権の独占性(当該通常実施権者のほかには実施権を設定しない旨)の合意というものも候補としては考えられる。それと、先ほど申し上げましたサブライセンスに係る特許権者の授権、この3つが考えられるのではないか。この3つについて検討してみたのがこのペーパーでございます。これらの事項につきましては、ライセンス契約上重要な意味を持つ条項として、登録するかどうかを任意としながら、登録したら対抗できるようにしてもらえないかという意見もあったわけでございます。
次のページですが、上段の表は主な登記・登録制度の比較表ということで、特許と、改正産活法、不動産登記法、動産債権譲渡特例法を並べてございます。この中で任意的登録事項というものがございますのは動産債権譲渡特例法だけでございまして、債権の弁済期その他当該動産又は債権を特定するために有益な事項を任意的に記載できることにしております。
なお、登記・登録の効果のところで書いてございますが、不動産登記法でも、特許登録令でもそうなんですが、対価とか、賃料とか、地代といったものの登記の効果については、対抗力のある、なしについて争いがあるということを申し上げておきます。
次に、対価についてでございますが、対価というのは、いろいろな特約の中でライセンスフィーというものが決まるということで、通常実施権1件のみの対価というものは通常は明確ではないと言われているんですが、これが明確であれば登録することは可能ですので、そういった意味で任意的記載事項とするという考え方はございます。
そのとき、第三者対抗力というものをどう考えるかでございますが、近年のライセンス契約というものはいろいろな特約があることがほとんどなので、1件を切り出してそれ自体の対価の登録ニーズというのが本当にあるのだろうか、限定的ではないかと考えられるところでございます。
対価については経済状況などに応じて見直され、変動することが多いわけでございまして、一たん対価を登録しても、見直されたらちゃんと登録の更新を行っていただかない限り、契約実態と登録内容が乖離してしまう可能性も高い。そういった意味では、一時点における対価を登録することによって譲受人に対抗できるような格好にするのは適切ではないのではないかと考えられるところでございます。
先ほど申し上げましたとおり、不動産賃借権における賃料の登記の効果についても、学説上も必ずしも明確ではないというところでございまして、賃料が変動する性質を踏まえると、対抗力は具備すべきではないとする考え方もございます。
前回、参考情報として登録したらどうだというような案を御提示申し上げました。これについて考えたわけでございますが、先ほど申し上げましたように、変動するといったことで実態と登録事項が乖離する可能性が高いということを考えますと、参考情報として登録したとしても、正確な情報提供機能を果たすことは難しいのではないかと思いまして、そういった意味では、制度利用者に無用な混乱を招くおそれがありまして、参考情報としても妥当ではないのではないかと、前回の説明とは違いますが、そのように思い至ったわけでございます。
なおかつ、特許法上の第三者対抗力がないのであれば、登録当事者にも登録するインセンティブがないのではないかというような意見もございます。
そういったことを考えまして、対応の方向でございますが、対価については、本質的に登録事項になじみにくい側面があり、任意的な登録事項とすることは適切ではないと考えられるところでございます。
次に通常実施権の独占性の合意でございます。この合意そのものを任意的登録記載事項とする考え方はございます。
登録の効果についてでございますが、独占性の合意について登録して、独占的通常実施権と言われているようでございますが、これを対抗したいというような意見がございます。
この点について、独占的な通常実施権者は、専用実施権者とは異なり、特許法上、特許発明の実施をする権利を「専有」するものではないということで、既に特定の者に独占性の合意がなされていても、特許権者はそれ以外の者に対して専用実施権とか通常実施権を設定することについて、制度上の制約があるわけではなくて、こういうことをしたら契約違反として損害賠償義務を負うにとどまるわけでございます。そういったことで、通常実施権の登録において独占性の合意が既に登録されていたとしても、当該登録に加えて別の通常実施権ですとか専用実施権の登録をすることも可能ですので、こういった制度をつくると利用者の混乱を招くことにならないかとの懸念がございます。
独占的通常実施権と専用実施権の実質的な違いが必ずしも現在明確ではないわけでございますが、独占的通常実施権は対抗要件、専用実施権は効力発生要件というように、独占的通常実施権に対抗力を認めると制度のバランスを失する可能性もございます。また、専用実施権制度が形骸化するおそれがあるとの指摘もございます。
参考情報としての登録ですが、そういったニーズはないようでございまして、そういった制度を設ける必要はございません。
対応の方向でございますが、独占的通常実施権の法的性質が必ずしも明確でない中で、そういった合意を登録制度の中に位置づけることは難しい面がございます。また、本来的には専用実施権制度をどうしていくのかといったあり方とあわせて考えるべきものでありますので、今後、独占的通常実施権と専用実施権の実態を十分踏まえた上で検討していきたいと考えております。
最後に、先ほど申し上げた通常実施権許諾に係る特許権者の授権の話でございます。サブライセンスに係る特許権者からの授権の特約については、任意的記載事項の対象に含めることはあり得るわけですけれども、通常実施権のAからBへの授権というのはA・B間の通常実施権の設定とは直接関係ない。通常実施権が存在しなくてもAからBに授権だけすることもできる。そういった意味では通常実施権の登録事項として実施権とともに登録させることは適切ではないというような御意見もございました。
効果について検討いたしました。通常、授権の特約を登録することによって、第三者対抗力の具備という効果を認める場合に、授権に基づく許諾を受けたサブライセンシーは、通常実施権について、個別に登録を備えなくても、実質的に第三者に対抗し得ることになる。複数のサブライセンシーがついている場合、ここは筋論ではあるのですが、通常実施権について対抗力を備えるためには、通常実施権を個別に特定できる場合は、1件ごとに登録することが必要であろうというところで、この場合1本の通常実施権の登録をして、そこに授権の特約で、100個子会社があったら、100社について対抗力を認めるのかというと、それはなかなか難しいのではないか。本来の通常実施権の登録制度が形骸化するおそれもあるということでございます。
また、先ほども申し上げましたが、議決権の過半数を持っている子会社というような一定の範囲でサブライセンスを行っているものについて、授権についてそういった登録の仕方をしたいというようなニーズもあるのですが、さすがに、特許権を譲り受けようとする方の人から見ると、デューデリジェンスによって実際のサブライセンシーですとか、将来どういうサブライセンシー等が出てくるのか、そういったものをデューデリでやろうとするのはおそらく困難であろう。特許権の取引の安全を害するのではないかと思われます。
そう考えると、授権の特約について第三者対抗力を認めるとすれば、過度にライセンシー保護に偏るのではないかと考えられるところで、妥当ではないのではないかと思われるわけでございます。
参考情報としての登録でとございますが、これはライセンシーがサブライセンスを行う権限を有している旨を公示できると、パテントプールエージェントなんかでそのような話があるらしいのですが、個別に承諾書の提示などにより権限を示す必要がなくなることから、参考情報として登録を認めるというような考えもあり得るわけでございますが、こういったことも、登録を備えれば何らかの法的効果が生ずると考えるのが一般的との指摘もある中で、参考情報としての登録を認めると、かえって制度利用者の混乱を招く可能性がある。また、権限を公示したいというようなニーズがあると聞いたのですけれども、ライセンシーの名前とか、サブライセンシーの範囲とかいったものは一般には非開示にしたいというニーズが片やあるわけでございますので、出したいというニーズは限定的ではないかとも考えられるわけでございます。
そういったことで、対応の方向性としては、授権の特約については、任意的登録事項として認めることは適切ではないであろうということでございます。
以上、任意的登録事項について、対価と、独占性の合意と、授権の特約について検討したわけでございますが、結論としては、独占性の合意についてはもう少し時間をかけて専用実施権のあり方の検討の中でも私ども検討したいと思いますが、現時点では、特許制度の中の登録事項に任意的登録事項というものは作らない方がいいのではないかということでございます。
私からは以上でございます。

竹田座長

ありがとうございました。
それでは、以上の説明を踏まえまして議論に移りたいと思います。今回も事務局の方で論点についての考え方を整理していただきまして、制度改正の試案を提案していただいておりますので、この制度改正試案や、試案に至る考え方に対する、御質問も含めてですが、御意見を中心にお願いしたいと思います。どなたからでも、どうぞ。

浅井委員

今の制度を前提とした改正という大前提に立つ限りは、今ご説明頂きました試案なのかなと思うのですけれども、経団連の中でも、いろいろ皆さんから意見を聞いてみますと、特にサブライセンシーの登録について、むしろ授権されているということのみの登録という方が実務的であって、さらにサブライセンシーの名前まで明記するということになってくると、ライセンスの促進を求めようという趣旨から考えたとき、かえって使いにくい制度になってしまうのではないかという意見が圧倒的でございまして、そういう意味から考えますと、今回の審議会の制約の中では難しいことなのかもしれないのですけれども、本質的には、やはり契約の締結そのものをもって対抗力とするといった抜本的な対策を考える、あるいは検討することが必要ではなかろうかという意見が圧倒的多数であったことをお伝えしたいと思います。

竹田座長

結局は、締結するライセンス契約におけるサブライセンス条項には、さっきの説明にもありましたとおり二通りあって、特定の企業にだけサブライセンスを許諾するという場合と、ライセンシーの資本割合が例えば50%以上の子会社については、企業名を特定せずにライセンスをする場合とがあって、後者の方が結構多いのではないかという感じがしますが、その点はどうですか。

浅井委員

それは両方あるかと思います。後者の方の子会社の関係は、いろいろなやり方があるかと思うんですけれども、関係会社とか子会社に対するサブライセンス権というもらい方もありますし、むしろ同列に置いてしまって、実施権の範囲を拡張するというようなやり方もしておりまして、それを法的に見てサブライセンスと考えるのか、実施権そのものを得ていると考えるのか、議論はあるかもしれませんけれども、後者の方はそんな形だと思います。

竹田座長

今の御意見ですと、この改正試案では、サブライセンシーが特定されている場合には対抗力を認めるけれども、特定されていなければそのものに対抗力を認めるのは困難だろうという考えに立脚していて、こういう制度の性質上、それは動かせないところかなと思うのですけれども、経団連の御意見は、その次元をさらに超えて、ライセンシーの名前は一切出さないで、特約の授権があるということのみを登録することにしてもらいたいという意見だと理解してよろしいですか。

浅井委員

根本的には、登録しなくても、契約の締結の事実そのものが対抗要件を持つというのがあるべき姿だろう。しかし次善の策として、行うとしても、特約条項があるという記載だけでとどめるべきではなかろうか、ということです。

竹田座長

今の点に、ほかの方、何か御意見ありますか。いかがですか。
では、事務局からお答えいただけますか。

間庭審議室長

その特約が開示される、されないというのも論点としてはあるのだと思います。取引の安全とのバランスをライセンシー保護の方に傾けることになります。産業界として、アメリカ型の当然対抗ですか、それを目指すべきという話があるのは承知しておりますが、現在の我が国の法体系、民法の原則ですとか、そういったところで、一足飛びにいかないという中で、我々も何ができるのかを考えているわけでございます。登録制度ということをベースにすると、サブライセンシーの氏名が特定されず、なおかつ登録しても開示されていなければ、この制度の前提そのものを覆すことになる話ですので、そこは、私どもも検討したのですが、取引の安全の方を考えると難しいのではないかと考えております。

竹田座長

今の論点について、さらに御意見はないでしょうか。
松田委員、どうぞ。

松田委員

まずは、上記の議論と、若干ずれるかもしれないのですけれども、サブライセンスの法律関係の整理について、質問したい事項と、申し上げたい点がございます。
まず質問ですが、本日の資料では、サブライセンスの法的関係をどう整理するのかということで、4つの類型を挙げていただいていると思います。この類型の4番目で、サブライセンスを第三者のためにする契約として構成する考え方ですけれども、本日参考資料として第三者のためにする契約に関する民法の条文が引かれておりますが、条文上は、「契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は債務者に対して直接給付を請求する権利を有する」と書かれておりましてして、「給付を請求する権利」を有するという民法上の条文の書きぶりと、サブライセンシーの持っている特許権者に対して知的財産法に基づく禁止権を行使させない不作為請求権という法的性質が、うまく整合して説明できるのかという点について、まず御見解をお聞きしたいと思います。

亀山審議班長

確かにそのような御指摘もありまして、我々もそこについては民法の先生方にもお話を伺いましたけれども、そこは大丈夫ではないかということでしたので、こういう説明にさせていただいているところでございます。そこら辺は、民法の先生方の方がお詳しいかと思います。

竹田座長

そこで民法の先生方に、御見解があったら説明していただけたらと思いますけれども。

中田委員

今事務局からお話がございましたとおり、537条の給付というのは割と広く理解されていると思います。本来は、条文上ですと「給付を請求する権利」ということで債権ということになるんでしょうけれども、債権に限らず物権も含まれている。さらに「給付」自体を考えてみますと、債権の目的と申しますか、内容、債務者に対して求めうる作為又は不為というように考えますと、それ自体も含まれるというように理解できるかと思いますので、ここは大丈夫なのではないかと私は思っております。

竹田座長

それでは、その前提で次の質問を。

松田委員

そもそも、サブライセンスについて、不動産の賃貸借と転貸借の関係になぞらえて考えるのがいいのかどうかという点がございますけれども、4番目の類型が前提とするサブライセンスの法律関係の実質について、不動産の賃貸借契約関係があって、それに基づいて転貸借契約関係があるというのとパラレルに考えて、まずはライセンサー・ライセンシー間にライセンス契約関係があり、それに基づいてライセンシー(サブライセンサー)・サブライセンシー間にサブライセンス契約関係があるという見方ができると思われます。しかし、今回、特許庁は、4番目の類型について、そうした転貸借的な関係で整理をされずに、第三者のためにする契約ということで整理されている。そもそも、不動産の転貸について、通常、第三者のためにする契約であると捉えられてはないようにと思うのですが、実務の感覚からすると、サブライセンスについても、不動産でいえば転貸借的に、まず前提としてライセンス契約関係があり、それに基づき、サブライセンス契約が締結され、親ガメの上に小ガメが乗るような形でサブライセンシーの法律関係を考えているように思います。してみると、むしろ、サブライセンシーについては、転貸借的に構成すべきであって、「第三者のための契約」という、今の整理をしてしまいますと、実務の認識及び契約上の枠組みとずれが生じてしまうことを若干懸念しております。
具体的に申し上げますと、例えば、サブライセンスの法律関係では、前提となっているライセンス契約関係がなくなったときにはサブライセンス関係も終わるというふうに位置づけていると思いますし、サブライセンシーとなる「子会社」を定義して、子会社については契約期間中も変動がありうるから、サブライセンシーが入れかわるということも考えられていると思います。また、対価としてのライセンス料の流れも、類型4のみならず、例えば類型1でも、サブライセンス料を直接に特許権者であるライセンサーに払うということはなくて、サブライセンシーは、間にいる、サブライセンサーであり同時にライセンシーである企業を通じて払うのが実態です。こうした産業界の実務におけるサブライセンスの実態と今回示されたサブライセンスを巡る法律関係の整理とが、きれいに整合しているのかを、懸念している次第です。

竹田座長

具体的に懸念するのは、どんな不都合が起きるのではないかということですか。

松田委員

今の整理ですと、子会社等のサブライセンシーは、自分にサブライセンスを付与したライセンシーと同格の、特許法78条の完全な通常実施権者として位置づけられ、その前提にたって、自らの通常実施権の登録を受ければ保護される仕組みであると理解しております。けれども、実務的には、親会社が子会社等のサブライセンシーに定めるケース等では、あくまで「子ガメ」であって自分と同格の通常実施権者として設定することを、ライセンシーもライセンサーも通常は考えないという実態があります。そこで、こうした当事者の認識に基づく契約上の法律関係と、特許法上格上げされてしまうサブライセンシーの地位とがずれることによる不都合が生じないかという懸念でございます。

亀山審議班長

賃貸借の譲渡、転貸のケースは詳しくは知らないんですが、そっちのケースでいうと、賃借人が譲渡、転貸する権限を有しているということなんだと思っておりまして、こちらのライセンスの方は、通常実施権者が再実施許諾をする権限を本来的に有しているかどうかというところにちょっと違いがあるのではないか。通常実施権者は独占排他的な権利は何ら有しておりませんので、他人に実施を許諾するという権限は本来は有していないんだろう。そうすると、制度上は特許権者から授権を受けたという整理しか解はないのかな。これは整理学上の問題なのかもしれないのですけれども、そのように考えて今の資料の構成にさせていただいているということでございます。

竹田座長

よろしいですか。
どうぞ。

鎌田委員

今の点に関連してなんですけれども、ライセンシーには設定権限がないという御説明は、いま一つ説得的じゃないというか、固有の通常実施権設定権限がなくても授権という考え方があるわけだし、賃貸借の場合も賃借人に転貸権限を与えるということがあるわけで、私自身はどちらかというと松田委員のおっしゃられた考え方に近い、有償の通常実施権は賃貸借類似の関係であり、無償の通常実施権は使用賃貸借類似の関係であるというふうに考えています。それでいけば転貸借の関係になる。そうなると、例えばもとのライセンス契約が債務不履行解除されると、サブライセンス契約は一緒に消えてなくなるんですね。事務局案は、我が国における通常実施権の通説である、通常実施権は単発で成立して、ライセンス契約関係とは無関係だという考え方を前提にしていますので、そうなると、むしろ物権的な考え方になると思うんですけれども、特許権の上に直接通常実施権が成立する。特許権者が自ら関与しなくても、ライセンサーが自由に通常実施権を設定できる権限を与えた。そういう意味で授権の考え方をとることになります。
ケース4については、事案によっては代理だったり、一方当事者が多数であるけど、名前で特定しないで、ほかの特定の仕方をしただけだという形で説明することも可能なケースであると思いますけれども、現在は存在しないサブライセンシーのことを考えると、第三者のためにする契約というのも、1つの説明の仕方だと思います。松田委員のご質問との関係では、先ほど述べたような基本的な通常実施権をめぐる考え方の違いに由来して、この考え方でいくときには、条件がついている。現ライセンス契約が終了したときには、当然サブライセンス契約は終了する、そういう条件のついたサブライセンスの権限が授権されている。黙示の特約みたいなことで、かなり擬制的になりますけれども、そういうもので考えていくことになると思います。
ただし、実務の世界では、親ガメの上の小ガメ型と、そうじゃなくて、下になるライセンス契約の影響を受けない単発型もあるんじゃないか。その辺のところは、むしろ実務の側のニーズとか実態に合わせるにはどんな制度にしたらいいかというお話を伺いたいと思います。
ついでに言えば、サブライセンスの特約を任意的記載事項にするかどうかも、事務局案の考え方は、ライセンス契約は全部通常実施権とは別の話だというものだから、特約も全部対抗の範囲から落ちるということになりますけれども、ライセンス契約は賃貸借契約類似の契約で、契約上の権利の対抗の問題だと考えると、さまざまな特約が任意的記載事項であったり必要的記載事項として入っていっていい。この点も、出発点の考え方の違いが反映しているんじゃないかと思います。

竹田座長

鎌田委員のお考えですと、基本的にサブライセンスに関する改正試案については法律的な問題はないという御理解でよろしい。

鎌田委員

個人的には、賃貸借契約なり、契約対抗型でやった方がいいと思いますけれども、知財法の通説に一人で歯向かう勇気はございませんので(笑声)、知財法の通説を前提にするとこんな説明の仕方になるんだろうと思います。

竹田座長

ほかに、この点。中田委員。

中田委員

今、鎌田委員が一人で歯向かう勇気はないとおっしゃいましたが、私も、二人になってもやっぱりないとは思いますが、似たような印象を持っています。ライセンス契約について、当初は使用・収益させる権利というように何となくイメージしていたものですから、通常実施権もそれでうまくいかないのかなと思っていたのですが、そうではないんだ、不作為請求権であって、打たないという内容だということが動かないようですので、それを前提に考えると授権というやり方になるんだろうと思います。
したがいまして、やはり賃貸借と授権とは違っている面もあるわけです。具体的に言うと、図のBとCの関係ですが、転貸借の場合ですとA・B間に賃貸借があり、B・C間に転貸借という賃貸借がある。しかしながら、ライセンス契約の場合にはB・C間にはそれがないわけですね。なぜならば、Bは打たないという地位にはないから、打たないのはあくまでAだから、ということだと思うんです。したがってA・B、A・Cという関係になる。しかしながら、A・Cの関係がA・Bの関係に依拠しているという意味では転貸借との共通性がある、そういう整理になるのだろうと思っております。
それから、鎌田委員がおっしゃいました契約の対抗と申しますか、ライセンス契約と通常実施権が離れていることについての懸念というのは私も同感であります。特に破産法との関係で考えますと、ライセンス契約と通常実施権契約がどんどん離れていくと説明に工夫を要するということになると思いますので、両者の間を完全には切り離さない方がいいんだろうなと思います。切り離さない方法としては、例えばライセンス契約の主要な部分を通常実施権が占めているというような形の結びつきが担保できれば説明がしやすいかなと思います。以上です。

竹田座長

ほかに、どなたか手を挙げていらっしゃいませんでしたか。
大渕委員、どうぞ。

大渕委員

幾つかの問題が混ざり合っているような気がします。大もとの問題と、その先のサブライセンスのライセンスに対する従属性といった話と、そもそも賃貸借とここでの法律関係が一緒なのかというあたり、いろいろな問題が入り混じっていたのですが、おおむね御整理いただいたので、特に私が申し上げるまでもないかと思います。
今の従属性といった点についてはそれぞれの実態に合わせて考える必要性があるようにも思われますが、特許権のライセンスの性格については、そもそも積極的な使用・収益をさせるというような話なのか、それとも、先ほど出ていましたように、俗に言う、差止・損害賠償請求を打たないというものかの点が問題となりますし、また、賃貸借と特許権のライセンスとでは、そもそも対象についての有体物、無体物という違いの点はいうまでなく、いろいろと違いがありますが、その辺についてはある程度前提にせざるを得ないのでないかと思われます。その上で議論を整理していけば、大体今御整理いただいたようなところに落ちつくのではないかと思われます。

間庭審議室長

特許庁なもので、知財の通説の方からどうしても入ってしまうわけでございますが、私どもとしても、ライセンスと通常実施権が、法制的に言うと切り離さざるを得ないところがあるのですが、実務上はそういうものではないところで、実務的なニーズも拾いながら、今の制度との整合性に確保しようとしているというところもぜひ御理解いただきたいと思います。

竹田座長

それでは、次の通常実施権に係る任意的登録記載事項についての議論に移らせていただきます。

島並委員

済みません。もしお時間がよろしければ、1点だけお伺いしたいんですが、よろしいでしょうか。

竹田座長

どうぞ。

島並委員

類型1について、民法の先生方にお伺いします。「授権」の意味ですが、これは代理権の授与とは違うのでしょうか。
つまり、サブライセンス契約の当事者というのはだれなのか、これがもし代理という構成ですと、あくまでも契約の本人はAとCである。だからこそ不作為請求権もA・C間に効力が及ぶということで理解できるのですけれども、そうではなくて、サブライセンス契約はあくまでも実務に即してB・C間の契約であるとするなら、これは代理ではない。代理権授与とは別の授権ということなのだろうと思います。そうすると、逆に通常実施権の効力というのがA・C間に及ぶのはどのように説明ができるか、お伺いできますでしょうか。

鎌田委員

代理とよく似た関係ですし、代理権の授与行為も「授権行為」と一般に言うんですけれども、狭い意味での「授権」と「代理」の違いは、代理の場合には、Bが「A代理人B」というふうに顕名をして、自分が行為をするけれども、効果はAに帰属させるというのが典型的な代理ですね。授権というのは、Bが自分の名前で行った行為の効果がAに帰属します。そういう権限をAからBに与えるのが授権で、余りないのかもしれませんけど、最近の判例などに見られる事例では、集合動産譲渡担保みたいなもので、例えばBスーパーマーケットが店舗内の在庫商品全部をA金融会社に譲渡担保に入れました。所有権は観念的に全部Aに帰属する。だけど通常の営業の範囲内でBが商品を売ったときには、所有権をCが取得できるような権限が与えられている。つまり、B・C間で売買契約をすると、所有権はAからCに直接移転する。こういう効果を出すのが「授権」という概念で、効果は代理と同じで、行為の仕方が、代理人として行為するんじゃなくて、自己の名において行為すれば効果がAに帰属するというのが授権という概念というふうに御理解いただければよろしいと思います。

竹田座長

よろしゅうございますか。
それでは、時間の関係もありますので、資料2の任意的登録記載事項の議論に移らせていただきます。
先ほどの事務局の説明にもありましたように、参考情報としての任意的登録事項に対する考え方は、前回の議論を踏まえて事務局案も修正されていると思いますが、その辺も含めて、御意見がありましたらどうぞ。
1つの問題としては、通常実施権のうちの独占的通常実施権に関する登録事項という問題がありますが、その辺のところの議論はいかがでしょうか。
どうぞ。

梅原委員

今の点とちょっと違うのですけれども、その前提となっておりますところで、任意的記載事項についての効果についてですが、今回整理していただいた点では大変わかりやすくなったと思っております。特に、情報の取り扱いについてどのようにすべきかは極めてセンシティブな問題になってまいりますので、前回わかりづらかった参考情報についての効果がわかりやすくなったと理解しておりまして、よい方向かなと思っております。

竹田座長

ほかに、御意見いかがですか。

鎌田委員

座長が提起された問題に関しましては、知財法の専門の方がお答えになった方がよろしいと思うんですが、素人ではありますけれども、登録しておけば、そのような権利として対抗力類似の効果が仮に出るとすると、それは専用実施権、通常実施権のほかに第三の実施権類型をつくったということになってしまう。登録制度を通じてそういう実体法上の効果を持ち込むのは好ましいことではないと思いますので、原案でよろしいのではないかと考えております。

竹田座長

その点まで認めるということになると、多分、100条の差止請求権に登録のある独占的通常実施権者を加えないと意味がないということになるし、そうなってくると専用実施権者と独占的通常実施権の区別もつかなくなってくるので、これを認めるのは難しいのかなと思いますが、そんな理解でよろしゅうございましょうか。
そうであれば、ほかに資料2について御意見がございますか。
大淵委員。

大渕委員

私も全く同感でありまして、この問題は独占性の合意の登録それ自体だけにとどまらない大きな広がりがある問題であって、場合によっては今言われたような、登録事項の点だけにとどまらず、独占的通常実施権というような新たな類型の権利を作り出すに等しい結果ともなってきますので、そうであれば、本格的に、それがいいのかどうかについて、実は専用実施権とほぼ一緒なのか、若干違うのかという点を含めて、検討することが必要になってくるのであって、登録それ自体だけにとどまらない大きな広がりがある点ですので、そこまでも十分踏まえた上で検討すべきやるべき問題であることは、鎌田委員と全く同感です。そこまでやるつもりがないのに、登録それ自体だけですませてしまえるという性格のものではないことだけは間違いないと思います。

竹田座長

ありがとうございました。
それでは次の問題に移りたいと思います。

鎌田委員

すみません。一言だけ。
先ほどのサブライセンスにかかわることなのですけれども、(5)の授権の登録を認めるか認めないかという問題で、6ページの上の方の記述は民法的には余り納得できない説明になっている。これは実務に関係ないから詳しくは申し上げません。松田委員初め実務の方にお伺いしておきたいと思ったのですけれども、サブライセンス権限が与えられているときに、賃貸借型で考えますと、譲渡、転貸自由の特約がついていると、もとの賃借権が第三者に対抗できれば、譲受人が出てきた後でもサブライセンスできるという結論になるんですね。ところが、原案の考え方では、譲受人が出てきたらもうサブライセンスはできないという方向で整理をされているのかなという感じがするんです。それが、ライセンス契約と通常実施権とを切り離したことの必然的な結果としてこんなふうなことになるという趣旨での御提案なのか、また、実務界はそれでオーケーということなのかについて、実務界の側、あるいは事務局の御見解を確かめておきたいと思います。

松田委員

サブライセンシーの保護の要請というのは、先ほど浅井委員からもあったとおり、産業界および法律実務家の要請として非常に強いものがあると思います。譲受人が出てきた後は、サブライセンスという、実務的にはライセンス契約において非常に一般的に使われている法律関係が保護されなくなるというのは、耐えがたいものがあると思いますので、何とか実務的に受け入れることが可能な保護の方法を考えていただきたいというのが、恐らく実務の産業界の一致した考え方であると思います。

浅井委員

今の点につきまして、松田先生のおっしゃっていただいたとおりでして、これだけ事業再編が繰り返されているグローバル競争の中においては、そういうことがしょっちゅう起こりますので、そういう点の保護がはっきりしないままですと、かえって取引の安全性を阻害するかと思います。

竹田座長

今おっしゃった取引の安全とか、全体的に考慮して、サブライセンスに登録を認めるのであれば特定したサブライセンシーの登録という資料1の改正の方向ぐらいが妥当なところになるという事務局の提案だろうと思うのですがね。
大渕委員、何かございますか。

大渕委員

特にありません。

竹田座長

よろしゅうございますか。

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通常実施権等の登録に係る申請方法の在り方について
特許を受ける権利の移転等に係る登録制度について

竹田座長

それでは、次の登録の申請方法と、特許を受ける権利の移転に関する登録に入りたいと思います。御説明をお願いします。

間庭審議室長

資料3と4を御説明させていただきます。
資料3でございますが、申請方法の在り方についてということで、これは通常実施権の登録について単独申請というものが考えられるかという検討でございます。2.具体的検討、から説明させていただきますが、現在は登録権利者(ライセンシー)と登録義務者(ライセンサー)の双方による共同申請が原則とされている。特許の権利の登録については、不動産登記法等々と同様の考え方でございます。登録権利者と登録義務者、双方が申請することによって、内容の真実性と真意性(登録申請意思)を確認しているということでございます。ただ、現状、ライセンサーの協力が得られずに登録できないというような指摘もございます。
図3-1にライセンサーの立場において登録に協力しているかというアンケート結果で、44%ぐらいの方々が協力しない、協力していないと回答されている。図3-2ですけれども、その理由として一番多いのが、60%近くがライセンシーからの依頼がない。次に多いのが、ライセンスの契約の内容が一般に開示されることを避けたい。36%程度ということで、今回はライセンシー名ですとかライセンスの範囲といったものは非開示にする制度改正を行う方向でございますので、その改正が行われたら2番目の理由は解消するわけで、新たな開示制度の下で登録が増えるのかもしれません。
次に登録請求権についてということでございます。現在、通常実施権者から特許権者等に対する登録請求権というものは、判例上、当然には認められていない。協力に係る特約がない以上、特許権者等の任意の協力が得られない限り登録はできないという格好になっております。
次に登録申請の真実性及び真意性の担保についてということで、現在、登録申請の原因となる権利関係の真実性を確保するためには共同申請手続を法定しているわけでございますが、必ずしも共同申請に限られるものではないのではないか。具体的には、申請の原因書面たる契約書を公正証書として添付させることによって、単独申請であっても、その真実性の確保が可能と考えられる。
また、当事者双方の登録申請意思の確認という観点については、単独申請を認めた場合は登録義務者の意思確認というものが制度上は不要となるということでございます。しかし、先ほども申し上げましたような公証制度というものを利用した単独申請をした場合には、登録義務者は、登録する意思がない場合には、証書の作成を認めないという対応が可能であろうということで、あえて登録義務者の意思に反して単独申請により実施権登録がなされることはないのではないかと思われる次第でございます。
そういった意味では、公証制度を利用した単独申請制度というものを導入することによって、一定程度真実性及び真意性を確保できるような制度が構築できるのではないかと考えられます。
ちなみに、商標権の移転登録というものがございまして、商標登録令で、平成8年の商標法条約の批准に際して、認証のある契約書の謄本又は抄本を添付した場合には、登録権利者又は登録義務者の一方だけで登録できるという制度改正を行っておりまして、これは、共同申請がもちろん原則なのですが、一定の場合には単独申請を認めるということを、既に商標権の移転登録では導入されているわけでございます。
次に不動産賃借権の考え方についてでございますが、一定の政策的な必要性がある場合に単独申請が認められている例として、これは説明するまでもございませんが、不動産賃借権において、賃貸人に比して弱者である賃借人を保護すべきとの要請から、借地借家法による対抗要件が認められているわけでございます。借地権は、登記がなくても、土地の上に借地権者が登記された建物を所有するときは、第三者に対抗できる。建物の賃貸借については、その登記がなくても、建物の引き渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対して、その効力を生ずるということで、登録義務者の意思にかかわらず対抗要件を備えることを可能としている例があるわけでございます。
特許法におきましても、ライセンサーとライセンシーの力関係によって、ライセンサーの協力が得られず登録できないというような場合もございます。ライセンシー保護という要請の中で、政策的な対応として、共同申請の原則は維持するわけですけれども、一定の場合には単独申請という道を開くことも可能と考えられる次第でございます。
次に特許権者に対する協力義務ということで、特許権者(ライセンサー)に対して登録協力義務というものを課すというやり方も考えられないではないわけですが、協力義務というものを課すとなると、ライセンサーの登録の拒否権というものを直接的に奪うことにほかならないということで、これはライセンシー保護の側面に偏った制度になるおそれがありまして、なかなか難しいのかなと考えております。
次に登録制度全般についての検討でございます。これは、通常実施権の登録だけではなくて、特許法においては、例えば効力発生要件としての専用実施権の設定ですとか、特許権の移転、質権の設定、そういった登録制度も存在しております。
これらについては、登録は効力発生要件であるということで、これらの権利変動に係る合意をした場合には、登録義務者というものは当然登録に協力する義務が生じている。登録の拒否権はないと考えられるわけでございます。
したがって、先ほど申し上げましたような専用実施権の設定等、あるいは特許権の移転、質権の設定、こういったものについては、債権的な権利である通常実施権よりも単独申請になじみやすいものだと考えられるわけでございまして、こういったものの登録制度についても、先ほど申し上げましたような公正証書による単独申請を認めることには大きな問題はないであろうと考えられるわけでございます。
なお、参考ということで、特許法条約についてとございますが、現在、特許法条約というものがございまして、我が国はまだこれに加入しておりませんが、この条約では特許権の移転ですとか実施権、担保権の設定等について単独申請による登録が認められているということでございます。我が国が特許法条約に今後加入する場合には、通常実施権のみならず、先ほど申し上げましたような専用実施権の設定等ですとか、特許権の移転、質権の設定についても単独申請という選択肢を認めることが必要となってくるわけでございます。
制度改正試案といたしましては、通常実施権の設定等を初めとした特許に係る登録制度において、現行の共同申請の仕組みを維持しつつ、申請書にその内容を証明する公正証書を添付した場合には、権利者又は登録義務者の一方だけで申請することができる旨、特許登録令の方に規定するというやり方があるのではないかと考えております。
続きまして資料4でございます。資料4は、特許を受ける権利の移転等に係る登録制度ということで、前回、特許を受ける権利に係る通常実施権について、新たに登録制度を設けるということを御審議いただいたわけでございます。これについては、基本的には設ける方向で御異論はなかったかと存じますが、権利の性質づけについては、今整理しているところでございます。資料4は、特許を受ける権利そのものの移転等について、新たに登録制度を設けるべきではないかという話についての資料でございます。
まず、現行制度の概要から説明させていただきます。特許を受ける権利の移転でございますが、出願後の特許を受ける権利の承継については、現在、特許法におきまして、相続等々の一般承継の場合を除いて、特許庁長官への届出が効力発生要件とされている。その届出は、承継人が単独で行う。また、その際は、承継を証明する書面を提出しなければならないというように運用されております。届出制でございます。
次に、特許を受ける権利の処分の制限でございます。これについては、処分云々について特許法で規定しているわけではないんですが、特許を受ける権利は譲渡可能な財産権で、民事執行法上禁止されていない以上、強制執行ができると解することができるわけで、実際、特許を受ける権利の差し押さえも行われているようでございます。裁判所から債権者へは、譲渡命令ですとか、適切な方法による換価命令によって強制執行が行われることになるわけでございます。
問題の所在でございますが、まず特許を受ける権利の移転について、これは届出制になっているわけでございますが、特許権の発生後の移転については当然登録でございますが、それとは異なり、特許を受ける権利の移転の届出といった場合、共同申請の原則は採用されていない。あと、承継を証明するための書面についても、公正証書を要求するといった内容の真実性担保のための手当てというのは、現在なされていない。手続は簡便ですが、例えば承継人を詐称するような者が原因証書を偽造して単独で承継の届出を行うことも、ある意味、容易であるということでございます。
特に近年、特許を受ける権利の財産的価値が高まっているという経済実態を背景として、譲り受けたと詐称する人が出てきているようで、実際に紛争も生じている。本年6月27日、東京地裁の判決もあるようでございます。
そういったところで、出願段階におけるライセンスについて、今回登録制度を導入しようとしているわけでございますが、その登録により対抗力具備の効果が生ずるとした場合に、出願段階におけるライセンスと、出願段階の特許を受ける権利の移転との優劣を決する必要も生じてきます。前者については登録、後者については届出というのは、制度として一貫性を欠くことになるきらいがございます。
特許を受ける権利の処分の制限ですが、現行制度では特許を受ける権利について、もちろん処分の制限について登録することはできない。公示する手段もない。したがって、債務者が違反して処分を行った場合、善意の第三者には対抗することができない。
先ほども申し上げましたように、財産的価値が特許を受ける権利についても高まってきている。強制執行も可能である以上、これについて登録制度を設けることが必要ではないかと考えられるわけでございます。
具体的検討として、法的性質と位置づけの変化ということですが、特許を受ける権利の性質というのは、発明について使用、収益、譲渡を行い得るという財産権としての側面が、近年、大きな意義を有するようになってきているわけでございます。
また、出願段階におけるライセンスが産業界において広く行われている。なおかつ、図4-1に見られますとおり、特許を受ける権利自体の移転の件数というものが年々増加しているということでございます。特に、近年はTLOですとか中小ベンチャーなどの資金調達手段の対象として、特許を受ける権利が重要な役割を果たしているわけでございます。
そういった意味で、特許権のみならず、その前の出願段階での特許を受ける権利の活用、流通も重要になってきていると考えられるわけでございまして、これを法的に保護していくニーズが高まっているのではないかと思われる次第でございます。
登録制度導入の必要性ですが、特許を受ける権利自体には独占排他性はない。出願公開後の第三者の実施について設定登録後に補償金請求権を行使し得るというわけでございます。財産権としての重要性が高まっておりまして、移転件数も増加している。そもそも権利の変動を明確にすることで取引の安全を図るという知財権の登録制度の趣旨が、特許を受ける権利の移転についても当てはまるのではないかと思われるわけでございます。
そういったことに加えまして、私が承継人だと詐称する者を排除する必要もございますし、それによる紛争を未然に防ぐ必要もございますし、出願段階におけるライセンスについての対抗要件として登録制度を今回新たに導入する方向でございますので、それとの一貫性を確保することも必要だと考えられる次第でございます。
次に登録制度導入の妥当性ですが、現行制度では、特許を受ける権利の承継について届出が効力発生要件となっているわけでございますが、何で届出なのかというのは、権利の設定登録時から登録原簿を設けるというような考え方が基本であったのだろう。そういったことで、権利発生前に登録原簿を設けるという必要性が乏しかったというか、そういった考えもなかったのではないか。そういうことでやっていなかったのだと思われるわけですけれども、現在必要性が生じているのであればやるべきではないかと考えられるわけでございます。
むしろ、特許を受ける権利の財産権としての価値の高まりといったものにかんがみますと、新たに登録制度を導入して登録を効力発生要件とし、制度の安定確保を図ることが妥当ではないかと考えられるわけでございます。
特許を受ける権利の移転の登録制度の導入とともに、処分の制限についても登録制度を導入すべきではないかと考えるわけでございます。
登録制度導入が制度利用者に与える影響についてでございます。これは、移転について届出制を登録制に変えるわけでございますが、そうなると原則共同申請で、先ほどの資料3で申し上げましたが、一定の場合には公証制度を利用した単独申請も認めることになろうかと考えております。
金銭的負担について、今、届出は1件当たり4,200円の手数料でございますが、登録になると登録免許税、税金になるわけですが、負担がふえる可能性はございます。ちなみに、特許権の移転登録というのは、現在1件1万5,000円でございます。そういった意味で、手続的な、又は金銭的な負担が増える可能性もあるわけでございますが、財産的価値の高まっている権利について、安定的な権利関係を確保するために、ある意味、やむを得ない面もある。とはいえ、それは必要最小限の負担とすることが必要であろうと考える次第でございます。
登録を認める時期でございますが、これは、出願時以降から登録できることとするのがよいであろう。ただし、出願公開前は、発明の名称を含む出願内容は開示されないこととすべきであろうと考えます。
次に特許を受ける権利と特許権の関係ということで、特許を受ける権利を目的とする処分の制限がなされた後、当該出願について特許権の設定登録がなされるに至った場合に、処分の制限の効力が当該特許権にも及ぶのかという問題でございます。
これについては、特許を受ける権利を目的として差し押さえ等を行う債権者としては、当然特許権の設定登録後にも特許権を目的として差し押さえが存続することを前提としているのが通常であると考えられますので、これについては、特許権の設定登録に至った場合には、当該特許権に対しても処分の制限の効力が及ぶべきであって、特許庁としては、職権によって特許権の設定登録のときに処分の制限も登録するというふうにすべきだと考えられるわけでございます。
次に出願の補正と分割との関係。これは、特許を受ける権利に対する処分の制限がなされた後に、当該出願について、出願人による補正とか分割がなされる場合がございます。このときに、まず、処分の制限の効力というものが補正後や分割出願後の特許を受ける権利に及ぶのかという問題が1つ、2つ目として、補正や分割について差押債権者等の承諾を要件とすべきかという問題があります。
1つ目の補正・分割されたときの効力が及ぶのかという話ですが、補正や分割というものは、例えば補正によって新規の事項を追加することが禁止されているとか、分割はその原出願の一部について行うものだとか、そういったことで、補正とか分割の前後において特許を受ける権利としての実質的な同一性が失われるようなものではないということから、補正後ないし分割された出願についても、引き続き処分の制限が及ぶべきと考えられるわけでございます。また、差押債権者等の保護の見地から、差押債権者の承諾を補正の要件とするかどうかですが、これは、出願人が適切な補正・分割を行って、なるべく価値の高い特許権を成立させることの妨げともなるわけでございますので、望ましくないのではないかということでございます。
次に出願の取り下げとの関係ということで、処分の制限が登録された特許を受ける権利に係る出願の取り下げに当たって、差押債権者等の承諾を要件とすべきかという問題がございます。
特許権になった場合は、処分の制限が登録されていた場合、放棄については差押債権者等の承諾が必要とされております。しかしながら、出願段階の場合は、その取り下げについて差押債権者等の承諾を要件としたとしても、出願人が取り下げたいのですけどと言って、承諾が得られなかったということで仮に取り下げなかったとしても、出願人が適正な手続を行わなければ結局は拒絶査定となってしまうわけでございまして、必ずしも差押債権者等の保護につながるものではない。ということを考えますと、出願の取り下げに差押債権者等の承諾を要件とすることは適切ではないのではないかと考えられます。
制度改正試案をまとめますと以下のとおりでございまして、まず、特許法を改正して、特許出願後における特許を受ける権利の承継(特定承継)について、登録しなければ効力が発生しないこととする。
次に、特許を受ける権利の処分の制限について、登録しなければ効力が発生しないこととする。
次に、特許を受ける権利の移転登録申請又は処分の制限の登録の嘱託を受けまして、当該出願番号を単位とする登録原簿を作成する。ライセンスの方で登録があれば、同一の原簿にする。
次に、特許を受ける権利に係る処分の制限の登録がなされた後、その分割出願がなされたときは、特許庁が職権によって、分割出願についても処分の制限の登録を行う。
次に、特許を受ける権利の処分の制限の登録がなされた後、対象出願について設定登録がなされたときは、特許庁は職権によって、成立した特許権について処分の制限の登録を行う。
次に、特許を受ける権利に係る移転又は処分の制限の登録がなされた後、その出願の拒絶査定が確定したときは、特許庁が職権によってその登録を抹消する。
次に、特許を受ける権利の移転登録申請のためには、申請書のほか、原因を証する書面を要求する。
次に、特許を受ける権利の移転の登録記載事項については、特許権の移転登録申請の場合を参考に、出願番号のほか、譲受人、譲渡人を必要的記載事項とする。登録された情報はすべて一般に開示する。ということでございます。
なお、この制度改正に対応するためには、特許庁側の業務処理システムの大幅な改造が必要となるようでございまして、施行の時期については別途、事務的に検討を要することとなることを申し上げておきたいと思います。以上でございます。

竹田座長

ありがとうございました。
それでは、以上の説明を踏まえまして議論に移りたいと思いますが、資料3、4についても末尾に制度改正試案が提示されていますので、その考え方に対する御意見を中心にお願いしたいと思います。
内容から見ますと、資料4の特許を受ける権利の移転等の登録制度の方にいろいろ重要な問題点があるように思いますが、まず資料3の申請方法の在り方について、先に皆さんの御意見を伺いたいと思いますので、何か御意見がありましたら。
どうぞ。

松田委員

事務局にたたき台として枠囲みで書いて頂いた中身自体は、条約対応の観点からこれはこれで結構だと思うのですが、ライセンシー保護という観点で考えたときに、ライセンス契約を公正証書にすれば単独申請ができるということで使い勝手が増すかといえば、現行の特許登録令19条でもライセンサーから承諾書をもらっていればライセンシーだけで申請できますので、実務的にいうと、承諾書をもらう手間と公正証書にする手間との比較ということになります。実務的には、承諾書をもらう方が容易ですので、ライセンシー保護という観点からは、使い勝手がよくなるという状況にはならないのではと懸念しています。
そういう意味で、ライセンシー保護という観点から踏み込んで、ライセンサーの登録協力義務についてまで書くかどうかも検討の価値があるように思います。この点、ライセンサーが登録に協力しない理由として、現状、幾つか挙がっておりまして、1つはライセンス契約の内容を開示されたくないということが出ていますので、今回の改正で開示事項が制限されればこの点は改善されるのかなと思います。もう1つは、登録の手間と時間と費用だと思いますので、費用まで今回変わるのかどうかは分かりませんが、今後の改正によって、ライセンサーが登録に協力しないことを正当化する理由がなくなっていくのであれば、ライセンシー保護という観点から、ライセンサーに登録協力義務を課す方向で考えていって良いのではないかなと思います。
特に、本日のご提案ですと、ライセンサーの選択肢が全くなくなるのはどうかということから登録協力義務について規定しない方針だと理解しています。この点、現在、最高裁の判例がある関係で、ライセンサーには協力義務がないというのが原則としてあって、別途契約で定めれば協力義務があるという形になっているんですけれども、例えば原則と例外を入れかえて、特段の定めがない場合、ライセンサーは登録に協力すべきというような形で制度をつくれば、当事者の選択の余地を奪わないまま、ライセンシーの保護をより図ることができるのではないかと思いまして、この点を申し上げた次第です。

竹田座長

今、2点おっしゃいましたけど、最初の方の特許登録令との関係で、特にこういう制度を設けることの実質的な意義がどの程度あるのかというお話がありましたが、その点についてはいかがですか。

亀山審議班長

確かに、おっしゃるとおり公証制度自体いろいろ問題点もございますので、どこまで使い勝手が上がるかというのは、公証制度の見直しなんかもあわせて、どこまでできるかということだと思いますが、とりあえずここの時点で、1つユーザーの選択肢をふやすという意味では、一歩前進できるのではないかと思っております。

竹田座長

協力義務に関する点は、御意見いかがでしょうか。
鎌田委員、どうぞ。

鎌田委員

関係はするんですけど、直接のお答えになるかどうかわからないですが、私も5ページ目のたたき台として出ている改正試案に書かれている限りでは賛成できるんですけれども、しかも、これは単に通常実施権だけじゃなくて、幅広く単独申請を可能にするという意味では非常に画期的で、大変結構だと思っているんです。ただし、例えば特許権譲渡の公正証書ですが、公正証書の文言を見ると、代金を支払った時に特許権を移転させるものとするという契約書が公正証書で出てきたら、移転登録するんですか。

竹田座長

その点はいかがですか。

間庭審議室長

登録事務というのは、ある意味、機械的に処理しないといけない話ですので、すみませんが、今この場で確たるお答えができません。

鎌田委員

ちょっと意地悪に聞こえたかもしれないのですけど、例えば不動産の売買の場合に、不動産売買契約書で代金支払時に所有権を移転するという契約書を出すと、所有権移転登記ができないんですよ。共同申請をしてもできない。公正証書があれば単独申請できるという制度にしても登記できない。つまり、公正証書に基づく単独申請を認めるかどうかという問題は、登記・登録されるべき事項があるかないかをどういう手段で確認するかの方法の1つでしかないわけですね。現在は共同申請ということで、当事者双方が言っているなら真実性が高い。それを公正証書なら真実性が高いというふうに置きかえるかどうかだけですから、公正証書にすればそれでいいということ自体には賛成です。だけど、資料3の2.の書き出しで「真実性」と「真意性」と、2つキーワードを出していますよね。真実性の方は共同申請で真実性を担保するか、公正証書でやるか。現行の不動産登記法でも判決があれば単独申請できるとしているように、これは真実性を確実に履行するためのさまざまな方法ですから、並列的に存在していても一向に構わないのですが、これを説明するために借地借家法を持ってくるのは余り適切ではない。むしろ不適切だと思っているのですけど、それは説明に時間がかかるので省略します。
問題は真意性です。真実性のほかに真意性の確保なんていうことが何で必要なのかということが実は問題で、その理由は二通りあると思うんですね。1つは、今すぐ登記・登録をする意思を持っているのか、持っていないのかというのが、ドイツなどでは別ですけど、日本では、不動産所有権などの権利の移転には直接関係しない。しかし、所有権は移転するけれども、代金確保の手段として登記・登録を留保することはできる。登記・登録と代金支払の同時履行を確保するというような意思を持っていることがあるわけです。そうすると、取引があったことは公正証書で真実だと確認できても、登記申請意思がないと登記はできない、特許権が移転していても登録するかどうかが最終的に当事者の意思にかかっているときには、これは真実性の問題ではなくて、今登録をしてもいいと思っているかどうかという真意の確認が必要になる。これが1つです。
もう1つは、借地借家法を援用するのはぐあいが悪いと言った点に関係するのですが、不動産賃貸借については登記義務がないと解されていますね。だけど、借地借家法が特例を設けている。これはまさに特例で、現実的には借地権だけの問題なんですね。借家は合意がないと引き渡しができませんから、賃貸人の関与なしに対抗要件を備えることができるのは借地権の場合だけです。一般的には登記義務がないけど、借地権の場合だけ、特に社会的保護の必要性が強いから、一方的に対抗力を備えることができるようにしてある。通常実施権は、全体として登録義務がないと言っておきながら、全体がライセンシーだけの申請で登録できてしまうという制度にするのですから、借地借家法10条による特例の場合とはちょっと違う。
そこで、もともと通常実施権というのが、設定者の意思のいかんにかかわらず、第三者に対抗させても構わない権利だというふうにしてしまえば、設定者の登録意思を確認する必要は全くなくなる。ところが、4頁(5)の説明を見ると、設定者は、この通常実施権は第三者対抗力のある通常実施権にするのか、第三者が対抗できない通常実施権にするのかの選択権は持っている。こういうお立場であるとすると、提出された公正証書の中で、これは第三者に対抗力を与える通常実施権として設定したという意思が確認できないと、やっぱり登録するのはまずい。そう言う意味で、3頁(3)で、単純に公正証書でありさえすればいいという説明ではなく、公正証書を作成したこと自体に対抗力を与える意思を認めることができるとしているのですが、ちょっと擬制の度合いが強過ぎる。
ほかのところはいいんですけど、通常実施権は専用実施権などと違って、物権的な権利ではなくて、なお対抗力を与えるか与えないかが設定者の意思に任されているという前提をとると、提出された公正証書の中に登録してもいいという設定者の意思が入っていないとぐあいが悪い。公正証書作成の目的は、証拠力を高めるとか、執行力を確保するとか、いろいろあるわけで、公正証書を作成していれば直ちに対抗力を与えてもいいという意思を表明したと認定するのは、ちょっと無理がありはしないでしょうか。

竹田座長

つまり、登録について承諾するという無条件の公正証書なら問題はないわけですね。条件成就にかかわる承諾証書である場合の、条件が成就したかどうかということについての証明をどうするのか。多分、一番条件になりやすいのは売買代金の問題だろうと思いますが、売買代金の支払いの証明を、例えば領収書でやるとか、そういう方向は考えられないかというような点もあるだろうと思います。その点を含めて検討していただきますが。

鎌田委員

それと同時に、通常実施権の場合には登録をさせてやる、させてやらないという選択権を設定者に認めるのか認めないのか、ここのポリシーを決めた方がいい。設定者の自由を認めるんだったら、登録させてやろうという意思が表明されている文書でない限りは原因証書にならないというふうにしないと具合が悪い。

竹田座長

そこのところは、今までの考え方から見れば鎌田委員の言われるようなことを否定するわけにはいかないかなと私は思いますけど、大渕委員、何か。

大渕委員

お聞きしていて幾つかの問題が混ざっているような気がします。今言われたように、もともと代金確保のために云々ということであれば、多分、事務局で書かれた御趣旨も、そういうものは含まずに、まさしくそういう条件がついていないような公正証書を前提にされているので、このようなものに限定すれば今の問題は回避できるように思います。座長が言われたとおり、代金確保といったものが一切ないようなものが前提になっているように思います。
それを前提として、そのような公正証書を作成してもだめであるとするか、それとも、さきほどのような条件のついていないような公正証書を作成すること自体で一定の意思が確認できると思うか、そのように考えていった方が議論が整理できるのではないかという感じがいたします。
ここでは通常実施権だけではなくて、いろいろ入っているために話がややこしくなっているように思います。売買ではむしろ代金と引きかえとかいうのが一般的かもしれませんが、そういうものはとりあえず置いておいて、ここではライセンスが前提になっていますが、ライセンスの場合でもお金を払ってくれれば登録するというケースについては、そもそもこのペーパーでは想定していないのではないかと思いますので、それは明確に外すことにして、その場合にもどう考えるか、公正証書を作成する以上、このような効果が発生するという法律スキームのもとで公正証書を作成するのだから、登録の意思まで確認できると考えるか、それとも、もう1回それとは別途登録の意思を確認しなければいけないと考えるのか、という形で議論を整理した方が議論がスムーズに進むかと思います。

竹田座長

その点は、大渕委員の言われるように、いわば無条件の承諾があったときには、その承諾公正証書で単独登録ができる。条件がつくようなものはここに含めていませんということなら、報告書なりにそういう文章が入った方がいいですね。
ただ、もう一歩進めて、私がさっき言ったようなことが可能かどうか、つまり代金の支払いを受けましたという領収書のようなものでその点を補うことができるかというような問題はあるかと思うのですが、そういうややこしい問題は除いてしまいましょうというなら、一挙に解決できると思います。

大渕委員

それは応用問題としてまた考えてもいいのかもしれませんが、とりあえず議論を整理しないと、いろいろな別の問題が混じってしまって議論が難しいかと思います。

鎌田委員

いろいろなものを混ぜるような説明の仕方をして申しわけなかったですが、私が言いたいのは、具体的には運用の仕方でどうにでもなる問題なんですけれども、そこに至る全体の説明が、真実性を担保するためのさまざまな手段という問題と、なぜ設定者の真意(登録申請意思)を確認することが必要なのか、そこの意思を確認することには法的にどういう意味があるのかという問題がきれいに整理されていないということです。そこをきちんと整理しないと、いろいろな問題が起きたときに、これはどっちの問題だからどういうふうに対処すればいいかというところが混乱してくるんじゃないかということを懸念しているのです。具体的な結論自体は、詰めていくと事務局と私の言っていることは同じになるかもしれません。

間庭審議室長

その点については、ぜひ先生のお知恵をお借りしながら整理させていただきたいと思います。

竹田座長

それでは、特許を受ける権利の移転の問題に入りたいと思います。
前回の議論で、特許を受ける権利の現代における意義等を考えていくと、登録制度は設ける必要があるという方向の議論が大勢であったと私は理解しておりますが、それを具体的に考えて、どういう方向で導入し、どのような限度で登録の効力を認めるか等については、十分詰めた議論がなされていないので今回の整理になったと思いますので、どうぞ、その点について御自由に御発言ください。
どうぞ、長濱委員。

長濱委員

今回の特許を受ける権利の移転に係る登録制度の導入案における制度利用者に与える影響を見ますと、登録制度に移行することに伴い当然に共同申請が前提になると杓子定規に考えられてしまっているように思え、制度利用者の手続的負担と金銭的負担が現状より相当に高くなることを危惧しております。
現実に今、特許を受ける権利の譲渡等による承継に係る届出である出願人名義変更届は、先ほど御説明がありましたとおり、基本的にはいわゆる譲渡証書を添付して承継人又は譲渡人が単独で届出をするというケースがほとんどでございまして、登録制度に移行することによって登録義務者及び登録権利者による共同申請か、或いは公証制度を利用した単独申請をせよということになりますと、手続的に非常に負担が増えることになります。特許を受ける権利の移転に係る登録の申請には現状と同様に譲渡証書等も添付することになりますので、もう少し柔軟に考えていただいて、共同申請を原則としつつも譲渡証書を添付した場合は登録権利者又は登録義務者による手続で済むような制度を柔軟に考えていただきたいと存じます。
また、登録制度に移行するのだから料金が上がっても致し方ないと考えられているように思いますが、制度を利用するユーザー側からしますと、特許を受ける権利の承継の届出も移転の登録申請も実態は大きく変わらないわけです。登録制度に移行することにより通常の登録免許税を適用して料金が何倍にもなるということではなく、制度利用者の金銭的な負担が上がらない方向でぜひ柔軟に考えていただきたいと存じます。

間庭審議室長

いずれも手続的又は金銭的負担の話であったわけでございますが、料金については登録免許税ということで、財務省の管轄になるわけでございまして、私どもとしては、そのような負担は必要最小限にする方向で協議してまいりたいと思っております。
共同申請の話でございますが、これについては、この登録だけ原則単独申請でいいということにはならないのではないかと思いますが、いずれにいたしましても、前のパートで御議論いただいた、共同申請の中にいかに単独申請を導入するのかという中で、同じ扱いになるのではないかと考えている次第でございます。
この登録制度に限らず、先ほどの通常実施権や専用実施権、質権の設定等々の登録制度全般について、今、知財は国際的にユーザーフレンドリーの流れの中にございまして、なるべくユーザーに負担をかけないような格好で手続をする。先ほど申し上げました特許法条約の精神でもございますし、このような中で私どもとしても国内の制度を組むようにしたいと思っております。

竹田座長

ほかに、ございませんか。
とりわけ、出願の補正と分割、補正の方は同じ特許を受ける権利の問題ですから、原案で問題はないのかなと思いますが、原出願から分割出願がなされた場合についても、結局職権で分割出願について処分の制限の登録を行うという御提案ですが、その点については特に御異議ございませんか。
産業界の方も、その点については特に異論はないところでしょうか。浅井委員、いかがですか。

浅井委員

まだぴんときていないところでして、もう少し考えてみたいと思います。

竹田座長

研究者の委員の方々は、その辺はどうでしょうか。
山本委員、いかがですか。

山本委員

分割の制度がよくわからないので、わからないんですが、ここで書かれているように、分割の前後で特許を受ける権利として実質的な同一性が失われるものではないということがそのとおりであれば、例えば差し押さえの効力がもとの特許を受ける権利についてされているとすれば、実質的な同一性が失われない権利に対してその効力が及ぶということは十分首肯できることであろうと思っております。

竹田座長

結局、分割の場合には、原の明細書の特許請求の範囲が特許権の効力の範囲を決めている、その部分には全く入っていないけれども、発明の詳細が説明としては技術的理想が開示されている限り、それを取り出して分割してもいいわけですよね。その意味では、補正だって新規事項は許されないのだから、分割も補正も同じだよという考え方でもいいのかなと思いますけれども、分割の要件というのはかなり緩やかなものですから、その辺のところに及ぶということは、むしろこの制度にとって必要だという皆さんの御意見だとしたら、この原案はまさに必要性にかなっていると思いますが、そう言ってもよろしいのか、御意見を聞きたいなと思ったわけです。
大渕委員はいかがですか、その点は。

大渕委員

そのあたりは、ニーズをきちんとお聞きする必要があるのであって、理論だけで直ちに決められるという性格の問題ではないように思います。

竹田座長

では、本日の段階では、その点については特に異論があるという考え方はないように思いますので、この制度について、ほかに特に御意見がなければ次へ進みますが、よろしゅうございますか。

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登録の効力発生日について
専用実施権登録制度の在り方について
実用新案件に係る通常実施権等の登録制度の在り方について

竹田座長

それでは、次は登録の効力発生日、専用実施権登録制度の在り方、実用新案件に係る通常実施権等の登録制度の在り方の議論に移りたいと思います。

間庭審議室長

資料5、6、7につきまして説明させていただきます。
まず資料5でございます。登録の効力発生日ということで、論点。おさらいでございますが、特許法における登録については、登録申請の受付の年月日のほか、登録年月日が特許原簿に記録され、登録年月日に登録の効果が生ずることとされている。そういったときに、登録の申請後、登録の日までの間に当該登録に係る権利に関連する他の権利関係が変動した場合、第三者に二重譲渡してしまったとか、そういった場合に、登録事務手続に要する期間、申請を受け付けてから実際の登録まで、我々は今10営業日以内を目指しているわけですが、その間のタイムラグにより他の権利関係との先後関係が逆転してしまうというような指摘がございます。
これについてどう考えるのかを検討しているわけでございますが、時間の関係で1ページ目の現行制度の考え方と問題点は説明を割愛させていただきまして、2ページ目の(3)でございますが、不動産登記法では、登記事項として、登記が実行された日ではなくて、登記申請の受付日が登記簿に記録される。これは、登記事務の建前上、登記というものは即日に処理されることとなっているということで、登記申請の受付日イコール登記の処理日であり、なおかつ、そのときに効力が発生する。すべて一致しているわけでございます。
特許法においても、受け付けの日を登録の日として特許原簿に記録し、登録申請の受け付けの日から効力発生とすることで、現行制度の問題を解消することは可能ではないかと考えられるわけでございます。
(4)取引の安全性確保についてでございますが、申請受付日を登録の日とする制度を導入した場合に、登録に係る情報が一般に開示される、実際に登録されて見れる状態になる前に、受け付けの日から登録の効果が発生してしまうという意味では、実際に特許原簿記録によって公示される、現在10営業日ですが、その間に登録簿を見て、それを信じて取引を行った人が不利益を生じる可能性も否定できないわけですので、そんな事態が生じないように、登録申請の受付時に、申請があったことだけを先行して原簿に記載するとか、あるいは登録申請の受け付けから実際の登録までの事務処理期間中は、登録に係る特許原簿を閲覧禁止というような措置をとるといったことが必要と考えられるわけで、実際に、不動産登記法においても、登記を手続している最中は登記情報を外部に提供しないという措置がとられているわけでございます。
そこで今回、そういったタイムラグの間に権利変動があって先後関係が逆転するようなことが起こらないように、法律あるいは政令ですが、登録の申請日に登録があったものとみなすような調整規定を整備する。それで、先ほど申し上げたとおり、登録の申請があった場合、登録原簿上、直ちに申請があった旨の注意書きを行う、あるいは受付から実際に登録されるまでの間は原簿の閲覧を禁止する、このような措置が考えられるのではないかと思います。
次に資料6でございます。これまで特許権の通常実施権の登録制度について検討してきたわけでございますが、同じようなことが特許権の専用実施権の登録制度についても妥当するのかどうかを検討した紙でございます。
具体的検討ですが、(1)専用実施権と通常実施権の違い。これは説明は割愛させていただきまして、2ページ目の専用実施権の登録記載事項をどうするのか、(2)から説明させていただきますが、これについては、通常実施権では通常実施権者の氏名等と通常実施権の範囲を必要的登録事項として、対価は今回は登録事項としないという方向でございますが、専用実施権と通常実施権で対価の登録が難しいという状況に違いはございませんので、専用実施権の登録記載事項についても通常実施権と同様に整理することが可能であろうと考えております。
次に専用実施権における登録記載事項の開示の範囲でございますが、開示の範囲については、専用実施権というものは、特許権の移転に準ずる準物権的な効果がある。登録が効力発生要件とされている点で通常実施権と大きく違うわけでございます。専用実施権が設定された範囲においては専用実施権者以外の特許権者も第三者も実施できなくなるという点で、第三者にとって非常に影響が大きいということで、公示の必要性は極めて高いであろうということでございます。
したがいまして、専用実施権の登録事項については、現状どおりすべて開示をするという制度を維持すべきであろうと考えております。
次に出願段階における専用実施権についての事前登録ということでございます。実務では、専用実施権の設定契約についても通常実施権の設定契約と同様に特許権の登録前から契約を行われている実態があると伺っております。そういった意味で通常実施権と同様に、出願中の段階で専用実施権を事前に登録できるようにするニーズはあろうかと思います。そういったことで、出願段階における専用実施権についても、今回登録制をつくる必要があるであろう。
この事前登録を備えた場合は、特許権が成立した時点で自動的に専用実施権の登録に切りかわるということでございます。出願段階における専用実施権の登録申請を複数出してきたような場合は、2番目以降の登録申請については受け付けないこととするのが適切ではないかと考えております。
また、出願段階に特許を受ける権利が第三者に移転した場合に、事前登録を備えた内容が当該第三者に対抗できることが効果として必要であろう。また、専用実施権は登録が効力発生要件でありますが、特許権の成立前の段階では独占的排他性を有するものではないわけでございますので、事前登録の効果としては第三者対抗要件にとどめることが適切であろう。
さらに、特許権者が破産した場合でございますが、この場合、専用実施権の事前登録を備えた者が破産法56条の適用を受け、その契約が解除されないという効果を得ることが必要である。この部分は通常実施権の場合と事情は異ならないので、そのような手当てをすることが必要であろうと考えております。
そういった意味で、制度改正試案として、専用実施権の対価に関する事項について、必要的登録事項から削除する。これは特許登録令の改正でございます。
また、専用実施権の登録事項については、現行どおり一般に開示する。ここは通常実施権と違うところでございます。
出願段階における専用実施権の設定については、通常実施権と同様の事前登録制度を設ける。事前登録がなされれば、特許権が発生した場合に自動的に専用実施権の登録となる。複数なされた2番目以降の登録申請は受け付けない。登録の効果として、特許を受ける権利が第三者に移転した場合に、その譲受人に対して対抗できることとする。また、破産法56条により、特許権発生前において、破産管財人による契約解除がなされないようにすることが必要。そういった手当てが必要だと思っております。なお、登録事項については、専用実施権登録に準じてすべて開示するということでございます。
最後に資料7でございます。これまで特許権について通常実施権あるいは専用実施権の登録制度について検討してきたわけでございますが、この紙は特許権ではなくて実用新案権の実施権の登録制度についてどうなのかということを検討したわけでございます。
2.の(1)の実用新案制度について。これは時間の関係で説明は割愛させていただきまして、(2)実用新案件に係るライセンスの登録制度についてでございます。このあたりはかいつまんで説明させていただきますが、2ページ目、実用新案件に係る通常実施権、専用実施権とも、必要的な登録事項とかその開示の範囲、あるいは登録申請の方法等々については、特許権の実施権の登録制度と同様の改正を行うべきであろうと考えております。
他方、出願中の実用新案権に係るライセンスの登録制度を設けるかどうかというのが(3)でございますが、これについては、実用新案権というのは出願から登録までの期間が非常に短い、また、特許のような出願公開に係る補償金請求権も存在しないわけで、ライセンス保護についてのニーズは限定的だと考えられるわけでございまして、出願段階の実用新案権に係る実施権の登録制度を設ける必要性は低いと考えられるわけでございます。
そこで、制度改正試案ですが、まず、実用新案権に係る通常実施権の登録制度については、特許権に係る場合と同様に、登録記載事項から対価に関する事項を除外し、通常実施権者の氏名等及び通常実施権の範囲については一般に非開示とする。
次に、実用新案権に係る専用実施権の登録制度については、これも特許権の場合と同様に、対価は記載事項から除外するとともに、登録された情報はすべて一般に開示する。
3番目として、出願中の権利に係る通常実施権ないし専用実施権の登録制度は設けない。というような結論が妥当であろうと考えている次第でございます。
私からは以上でございます。

竹田座長

ありがとうございました。
それでは、以上の説明を踏まえて議論に移りたいと思いますが、資料5、6、7については一括して、そこに示された制度改正試案やその考え方について、どの点からでも結構ですから、御意見を承りたいと思います。お願いいたします。
どうぞ。

山本委員

資料6の専用実施権の点ですが、破産法の関係が触れられています。3ページのあたりに書かれていることです。この問題については、破産法56条の適用で解除されないとされているわけですが、私は、ちょっとこれは危ういのではないかという印象を持っておりますので、一言申し上げたいと思います
破産法56条が定める「賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利」ということの意味ですが、これは、ここに書かれてありますとおり、専用実施権については、立法当時、地上権と同視して、物権的なものである。それはそもそも破産法53条の対象に含まれていないので、56条に来る前に問題が終わってしまう。したがって、56条が規定している使用・収益を目的とする権利には専用実施権は含まれないものとして整理されたのではないかと思います。立案担当者もそう書いているんじゃないかと思うのですが、そうだとすると、ここで専用実施権の事前登録を備えた場合、56条の適用を受けるという命題は、かなり危うい感じがするということで、解釈案として、使用・収益を目的とする権利に専用実施権は含まれないのだとすれば、56条の問題として処理することは難しいのかなと思います。
ですから、頑張るとすれば、この場合でも53条の対象に含まれない、つまり、そもそも専用実施権の設定に係る契約については、双方未履行、双務契約ではないと言って頑張るということは考えられそう。この部分に書かれている「補償金請求権の行使を受けないという債権的関係を定める契約」とかいう部分が十分理解できていないので、断定はできないんですが、53条に含まれないという解釈論でやるのか、そうでなければ56条的な特則を書くということをしないと、56条に乗せて説明するのは、私の印象では難しいのかなと思っています。

竹田座長

私も、その点は事務局に確認したいと思っていたんですが、56条の解釈論として、このように解釈できるというお考えでいるのか、それとも、56条を準用するというような法律的な手当てを特許法でするというお考えなのかも含めて、山本委員の疑問の点にお答えいただけたら。

亀山審議班長

まず、我々も同じように、専用実施権自体は物権ですので明確なんですが、事前の登録をしたときに、これが物権的なものなのか、債権的なものなのか、完全に整理できていないところがありますので、両方の可能性を考えなければいけないかな。53条に含まれないのであれば何の手当ても要らないということでいいと思いますけれども、53条の対象になってくるのであれば、56条の対象にすべきではないか。
今委員がおっしゃたように、過去の経緯からすると、これは法務省とのお話次第だと思いますけれども、何のみなし規定もなく、当然に含まれるということにはならない可能性が高いということだったので、そこは明示的に、56条の適用を受けさせようとするのであれば、みなし規定なのか、明示的な規定を置く必要があるのではないかと考えております。

竹田座長

今の点についていかがですか。ほかの委員の方。
中田委員どうぞ。

中田委員

ちょっと違う角度からの質問ですが、53条に含まれないのは物権だからというのが山本委員のお考えだと思うのですが、実態として、専用実施権の事前登録の場合には一括して対価を払ってしまうということなのかどうか、お聞きしたいんです。その意味でも双方未履行にならないのではないかと思ったのですが。

竹田座長

それは実務の問題ですね。

中田委員

はい。

竹田座長

専用実施権の実施は設定例が非常に少ないので、委員の方で経験された方があるかどうかわかりませんけど、浅井委員か、梅原委員か、その辺のところの実務を御存じでしたら。

浅井委員

今竹田座長がおっしゃるとおり、私自身も実務的に経験した例はごくわずかで、一括して支払ってしまったケースと、一時金に、出来高払をくっつけるケースと、両方ありますね。ですから、専用実施権であるがゆえに対価の支払いがLumpSumで決まってしまってということに、自動的にはならないかと思います。

竹田座長

梅原委員、どうぞ。

梅原委員

私どもでは独占的通常実施権しか事例がございませんで、経験がありません。

竹田座長

それでは、鎌田委員。

鎌田委員

これは通常実施権に先行登録を認めるのと似たような関係になって、特許権成立前には専用実施権はないんですね。将来建つか建たないかわからない建物の売買契約なり賃貸借契約みたいなものがあって、その段階で仮登記的な登記がされているようなもので、後にちゃんと特許権が成立したときだけ問題になると思うんですが、さかのぼって対抗力のある物権が破産手続開始決定前に存在していたのと同じ扱いという方向で処理していくのか、破産手続開始決定のときには、将来通常実施権を設定しましょうという予約的な契約があるだけの段階だから、双務契約的処理の方がなじむんじゃないかみたいな議論が起きかねないので、それをどう処理するか。いずれにしろ破産手続の中で解除されて終わりにしてもらっては困りますよということがねらいなのだろうと思うので、この辺は倒産法の御専門の先生のお知恵をかりながら、余りいろいろな解釈の幅が出てこないで、ねらいがきちっと達成できるにはどんな制度をつくるのがいいかという形で御議論を進められてはいかがでしょうか。

間庭審議室長

まさにおっしゃるとおりでございまして、本件は、前回御議論いただいた特許を受ける権利についての通常実施権をどういうものと法律上位置づけるのか、中山先生から御意見があったわけですが、その位置づけと破産法上の効果について、私ども、先般の御議論を受けて宿題を持ち帰っておりますので、併せて専用実施権についても考え方をまとめるということで、山本先生にもお知恵を拝借してまとめてまいりたいと思っていますし、この点については法務省の方にも相談に行くことにしてございます。
そういったことで、我々もまだ悩んでいるということで、この部分の表現は「効果を得ることが必要である」ということで、具体的な手当ての仕方については言及していない紙になったことはお許しください。

竹田座長

時間も残り少なくなってまいりました。今の資料5以下に限らず、本日議論の対象になった問題全体について、何か言っておきたいことがありましたらどうぞ。どなたかございますでしょうか。
特にございませんようでしたら、本日の議論はこの辺にしたいと思います。各項目の大体の方向性については、基本的に了解を得られたものと考えますが、本日幾つかの点について御指摘をいただきまして、その点は事務局で整理の上、今後の取りまとめに際して参考にしていただきたいと思います。
また、次回については、事務局で作成する報告書の骨子案についての検討を予定していますので、その点について、委員の皆さんにおかれてはよろしくお願いします。
では、最後に次回の日程について事務局から御説明をお願いします。

間庭審議室長

次回でございますが、10月29日の13時30分から15時30分まで、2時間ということで予定してございます。よろしくお願いします。
座長からお話がございましたように、今までの御議論を踏まえまして報告書案のようなものを御提示させていただきたいと思っております。その作成の過程で委員各位の御意見を拝聴いたしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

竹田座長

第5回の日程は。

間庭審議室長

第5回については、資料8ですが、報告書案について第4回でお諮りした後、1カ月程度パブリックコメントを求めた上、12月の上旬に開催したいと思っています。具体的な日程については追って調整させていただきます。以上でございます。

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閉会

竹田座長

それでは、以上をもちまして産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会の第3回通常実施権等登録制度ワーキンググループを閉会させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

[更新日 2007年10月26日]

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