ホーム> 資料・統計> 審議会・研究会> 産業構造審議会> 産業構造審議会 知的財産分科会> 通常実施権等登録制度ワーキンググループ> 第4回通常実施権等登録制度ワーキンググループ 議事録
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竹田座長 |
それでは、定刻になりましたので、ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会の第4回通常実施権等登録制度ワーキンググループを開催いたします。 |
間庭審議室長 |
それでは、配布資料を確認させていただきます。 |
竹田座長 |
ありがとうございました。 |
竹田座長 |
それでは、早速議事に入らせていただきますが、この報告書案は全体で第1章から第4章までありますけれども、議論の都合上、前半と後半に分けて説明をしていただいた上で御議論いただきたいと思います。 |
間庭審議室長 |
御説明いたします。1枚めくっていただきまして目次でございますが、今、座長から御紹介がございましたように、4章の構成としております。 |
竹田座長 |
ありがとうございました。 |
中山委員 |
14ページの特許出願の取下げのところなのですけれども、これはライセンシーの承諾がなくしても取下げることができるというのが原案なわけです。仮にライセンシーの同意が必要であるとした場合、どういう弊害が生ずるのでしょうか。取下げをするのはいろんな事情があると思います。出願している出願の価値がもうなくなったという場合だったら、多分ライセンシーが同意するでしょうし、逆に出願関係の金がもうない、だから取り下げるという場合であれば、場合によってはライセンシーが、自分が金を出するから継続してくれということもあり得るわけですね。 |
竹田座長 |
今の点について、ほかに関連して御意見がありますか、特にありませんか。では事務局の方から。 |
亀山審議班長 |
おっしゃったように、結局承諾を必要としても、出願人が適正に手続を行わなければ、結局取下げたいと思ったら、結局拒絶なりでそれが出来てしまうということ、そういう意味では実効性がないのではないかというのが1つ。 |
竹田座長 |
いかがでしょうか、今の点。 |
浅井委員 |
登録の問題と契約上の義務の履行の問題はちょっと違うのだと思いますが、実際問題として、取下げようとするときには、こういうライセンシーの方に、今、お話がありましたように、存続を希望するかどうか多分確かめてやっていくというのが実態だろうと思います。 |
竹田座長 |
実務上では、契約内容にもよるかもしれませんけれども、確かめることまではやるだろう。しかし、それで話がまとまらなかったときに、この原案でいけば、出願人はみずから取り下げていいことになるわけですが、それはそれでよろしいのではないかという意見ですか。 |
浅井委員 |
はい、そうです。 |
竹田座長 |
ほかにいかがでしょうか。 |
中山委員 |
実務において、まともな企業同士の場合は多分ほとんど問題はないだろう、条文上、同意を必要とするとかいても、書かなくても、どっちにころんでも問題ないだろうと思っているのです。しかしながら、中小企業とか、あるいは個人とか、いろんな場合がございまして、先ほど言いましたように、中には金がないためにやめちゃうという場合にライセンシーを保護しなくていいのか。18ページの処分の制限のところも同じように書いてあるわけですけれども、こちらの方は、ライセンシーではなくの差押えした人ですけれども、こういう人の権利というのは本当に無視していいのかという問題です。 |
竹田座長 |
ただ、もしこの案をとらないとすると、出願人の同意、承諾がなければ取下げられないという案になりますね。その中間的なものというのはちょっと考えられないですね。 |
中山委員 |
ライセンシーの同意です。 |
竹田座長 |
ライセンシーの方の。 |
中山委員 |
私は実務をやってないので、本当にどういう実効性があるかというのは、これは実務の方に聞きたいのですけれども、理屈としてはそういうことも考えられます。こういう話です。 |
竹田座長 |
では今の点は、今の意見を伺って、事務局としても検討してみるということでよろしゅうございますか。 |
間庭審議室長 |
実務の方々の意見も拝聴しながら、この点について検討したいと思います。 |
竹田座長 |
それでは、ほかに何かございませんでしょうか。 |
中山委員 |
もう1点、要望なのですけれども、特許を受ける権利の方については、移転の問題と処分の制限、それから、担保権、この3つが重要であると考えておりまして、今回は処分の制限までやるということなのですけれども、担保権も重要ですので、この次の通常国会には多分難しいと思いますけれども、ぜひこれは早急に手を挙げてほしいと思います。 |
竹田座長 |
ほかにはどうでしょうか |
松田委員 |
二点質問いたします。今、特許を受ける権利の移転についてのお話があったかと思うのですが、特許を受ける権利についてのライセンスについて、特許権として成立する前にも、停止条件付き通常実施権として登録できることになると理解しておりますが、その特許登録前の段階のライセンシーの権利について譲渡があった場合に、その移転の登録はできるように制度整備がなされるのでしょうか。 |
竹田座長 |
幾つか問題点があったと思うのですが、特許を受ける権利についての通常実施権の設定登録後、当該通常実施権の移転登録ができるかという点が第1点ですね。その点はいかがですか。 |
亀山審議班長 |
そこは当然今の現行制度と並びでできるということで制度設計をしようとは思っております。 |
竹田座長 |
2番目は、特許を受ける権利の登録制度の性質について、前に停止条件付きなどか幾つかの案が出ていましたが、それとの関連と思いますが、いかがですか。 |
亀山審議班長 |
それは松田委員がおっしゃったとおりで、停止条件付きの通常実施権というのはあるのですが、それに加えて補償金請求を受けずに発明を実施できるですとか、不正競争防止法上の請求を受けずに実施できるというところまで効果としては持たせる。したがって、特許権が成立している前であっても、それは第三者対抗力というものを備えなければいけないのではないかという、そういうものを概念としては考えておりますので、そこで今、申し上げた効果が今の特許法との関係でどこまで法律に書かなければいけないかというのはこれから詰めていきたいとは思っております。 |
竹田座長 |
よろしいでしょうか。 |
竹田座長 |
それでは、第3章及び第4章につきまして、第3章は、通常実施権等の設定登録制度の活用に向けた見直し、第4章はその他になっています。 |
間庭審議室長 |
では第3章の通常実施権等登録制度の活用に向けた見直し、現行の登録制度の見直しの部分でございます。 |
竹田座長 |
ありがとうございました。 |
鎌田委員 |
ええ、なお書きの趣旨、それと35ページの本文に書いてあることとの関係なのですけれども。 |
竹田座長 |
この前の企業側の委員の説明によると2種類あります。今、おっしゃったような、サブライセンシーの名前が特定されている契約と、一定の範囲、例えば資本金が50%以上の子会社についてはサブライセンスを与えるものがある。そのうちの前者については、サブライセンスの登録を検討する余地があるけれども、後者については、サブライセンシーが実際上、契約上も先ほど言ったようなことだけでは特定が不十分であって、取引の安全上もさらに配慮すべきことがあるから、後者は今の段階では対象外である。そこで、前者については検討する必要があるというのがこの意味だろうと、私はそう理解して読んでいるのですけれども、事務局の方で、それでよろしければ、違っていたら説明してください。 |
亀山審議班長 |
まさにおっしゃったとおりでございます。 |
鎌田委員 |
実務界がそれでいいとおっしゃるなら全然問題ないのですけれども、私が非常に不思議に思うのは、A特許権者がBライセンシーにライセンスをするときに、Cにサブライセンスしてもいいよと言った。例えばこれはCにサブライセンスしてもいいという特約を登録しなくても、Cの通常実施権の登録をするか、それがまだ未発生だったら仮登録すればすむだけの話で、私は、このサブライセンスできる権限の特約をわざわざ登記するというのは、例えば将来、子会社を設立して、そこでこの特許を実施するというふうにライセンシーが考えているときに、子会社にライセンスする権限というのをとりあえずCに与えておく。いずれCは子会社を幾つも設立するだろうけど、そのうちのどれがサブライセンシーになるかはまだわからない。この段階で登録するのがこの特約の登録。実際にサブライセンスして、それがC社だと特定したときに登録するのが35ページに書いてあるサブライセンシーの通常実施権の登録で、こちらの方では、契約上は第三者は単に子会社と書いてあっていい、だけど権利者を単に子会社としか書いていない登録は許さない。だから、それがC社と特定されたのちに、C社のための通常実施権が成立しましたという通常実施権の登録をしなさい。こっちは特定しなければいけないというのはよくわかるのですけれども、将来、ライセンスをしてもいいという権限が、サブライセンシーがだれさんにと決まってないと登録できないというのは、それは実務界のニーズなのですか。それさえ登録できれば、別に子会社その他にライセンスすることのできる抽象的な権限なんていう登録は不要だ、そういう趣旨なのですか。それが実務界ニーズで、それ以上のものは要らないというのだったら別にいいのですけれども、なにかそれだと特約の意味がない。賃貸借でいえば、譲渡、転貸自由の特約の登記というのは、第三者を特定しない段階で登記できるから意味があるのです。 |
竹田座長 |
企業界のニーズはどういうことなのか。 |
浅井委員 |
企業側から見ますと、前回も申し上げましたとおり、この制度自身というのは多分非常に使いにくかろうという感じがしないでもなくて、本質的には、前も申し上げましたような、契約の締結自身が対抗要件であるべきであるというところが出発点なんですね。 |
竹田座長 |
そうしておる趣旨は、サブライセンス付きですよということが元のライセンサーとライセンシーの契約の条項に含まれていれば、それを必要的登録事項としてサブライセンシーに契約が認められた範囲で登録が対抗力が及ぶようにしたいというのが企業のニーズである。そういう趣旨ですか。 |
浅井委員 |
はい。 |
竹田座長 |
そういう趣旨だとすると、鎌田委員の懸念されている意味では、これだけでは極めて不十分だということにはなると思いますね。 |
鎌田委員 |
そそこまで限定されると、それは通常実施権の登録で特約の登録は許さないというに等しい感じがしてしまうので、その辺が非常に疑問だったということです。 |
間庭審議室長 |
事務局として申し上げますが、これは特約の登録そのもののも極めて法制的にチャレンジングな話でございまして、これも必ずしもすぐさまこういう制度が本当にできるのかというところがあるわけでございます。この部分についてはサブライセンスの特約の登録そのものについても議論しなければならないところで、その範囲の部分については、おそらく実務的なニーズとしては、いちいち特定しない方がいいのではないかとは思っているのですけれども、いかんせん、特約の登録そのものについての法制的な部分の検討の方に手間取っておりますので、このなお書きについては必ずしもまだ詰めきれていないところでございます。 |
竹田座長 |
座長から余り意見を言わない方がいいのかもしれませんけれども、産業界のニーズからいえば、それはサブライセンス付きということであれば、通常実施権の登録ができればサブライセンスに全部対抗力が及ぶということは、大変結構ですねということなのかもしれませんけれども、果たして通常実施権の登録でサブライセンシーを極めて不特定なまま全部について対抗力が及ぶことが法律制度として本当に可能なのかどうかということと、可能としても、それが取引の安全その他の面からして、それがふさわしい制度なのかどうかということは極めて私は問題があると思うのです。 |
鎌田委員 |
わかりました。 |
竹田座長 |
よくわかりました。 |
守屋委員 |
先ほど浅井さんがおっしゃったように、契約をもって対抗するというのが我々は一番いいわけです。今回、対抗の部分があるので、この24ページのところですけれども、サブライセンスする権利については、特記事項としても、まだ引き続き御検討いただけるということで、その部分は大変感謝しております。単独申請のところで、これはAとBの間のサブライセンスの授権に関する契約の証書をもって、これでこの契約書を見せればサブライセンスの登録を認めるケースがあるというところまで踏み込むのであれば、ひょっとしてサブライセンスのできる権利というのも登録していただくということができるのではないかなと思います。 |
守屋委員 |
はい。 |
竹田座長 |
ほかにございませんでしょうか。 |
前田委員 |
かなり前のところに戻ってもよろしいですか。 |
竹田座長 |
ありがとうございました。 |
中山委員 |
そのような場合は、特許出願人が、もうこれから手続を事実上放棄してしまえば金もかからないし、手間もかからなくて、特許も取れないというだけであり、問題はないでしょう。契約の金を払わなければ債務不履行ですから、幾らでも処置の方法はあるので、金を払わないけれども契約は続行したい、そして特許の出願も、金も出してほしい、それはちょっと難しいのではないかという気がします。 |
前田委員 |
ということは、これは同意を得なければいけないという文言になっても、取下げができなくならないというふうな判断でよろしいでしょうか。ありがとうございました。 |
松田委員 |
私の質問は違う論点に戻ってしまいまして、サブライセンスの保護の関係なのですけれども、35ページで、サブライセンスの実体に鑑みて、登録の原因書面としては、今後、運用を変えて、サブライセンスの契約書と子会社等に該当することを証明する書面で良いとなっていると思います。しかしこれは、登録の申請自体は原則どおりだとおもいますので、共同申請で出さなければならない。したがって、サブライセンスについても、登録義務者であるライセンサーと登録権利者であるサブライセンシー、すなわち、直接契約関係がないライセンサーとサブライセンシーとで共同申請をやらなければいけないということになる、そういう理解でよろしいでしょうか。 |
亀山審議班長 |
そこは登録義務者は特許権者であり、登録権利者は通常実施権を登録する者という意味では、このA、B、Cでいえば、特許権者のAとサブライセンシーのCが共同申請をするということで考えております。 |
松田委員 |
そういう前提ですと、きょうも他の委員の方々から、既に御指摘があったとおりだと思いますが、やはり実務的にはサブライセンスの保護のためにはなかなか使おうとしたときに、ハードルが高過ぎる部分が相当に残る制度であると思います。今後、引き続き検討いただくということで、先ほど竹田座長の方からまとめていただきましたけれども、ぜひともサブライセンスの保護について、引き続き前向きに御検討いただきたいと思っております。 |
竹田座長 |
ほかにもありましたらどうぞ。最初の第1章、第2章も含めていただいて結構です。 |
島並委員 |
前半で1点、後半で1点、教えていただきたいのですが、前半部分で、特許を受ける権利の「移転」については、登録が譲渡人と譲受人の共同申請であるということですけれども、特許を受ける権利の「ライセンス」は、ライセンサーとライセンシーの共同申請なのか単独申請なのかという点をお伺いできればと思います。 |
亀山審議班長 |
そこは同じということです。 |
島並委員 |
どちらも原則は共同申請だけれども、公正証書を使えば単独でもよい、と。 |
亀山審議班長 |
はい。 |
島並委員 |
はい。登録が必要的であるというルールは、維持するということなのですが、そのことの法的な意味ですけれども。 |
亀山審議班長 |
そこは余り固まった説は多分ないのではないかというのが正直なところなんですが。 |
島並委員 |
これは事務局の方には既にお伝えをしていることですが、私は通常実施権の「範囲」(特許法78条2項)、つまり実施期間等の制限は、任意的登録事項でいいのではないかという気がしております。つまり登録をしなくても特に制裁はない、その意味で登録は任意的だけれども、もしライセンシーも了解して登録をした場合には、新ライセンサー(特許権者)の側が、自己に有利な実施権制限条項を引き続きライセンシーに対して主張できる、という制度にするのが望ましいのではないかと思います。つまりライセンシーの側が自己に有利なことを新ライセンサーに対して主張する、という形での「対抗力」の具備という建て付けは、そもそも実施権の「範囲」については適当ではないと考えます。しかし、この点は現行法と変わらないということですので、引き続き御検討いただければと思います。 |
竹田座長 |
よろしいですか。 |
山本委員 |
2点コメントです。 |
竹田座長 |
ありがとうございました。 |
間庭審議室長 |
おっしゃるとおりです。 |
中田委員 |
ただいまの参考2というところでございます。 |
竹田座長 |
中田委員に、今の御意見の趣旨について御質問したいのですけれども、包括的ライセンス契約ないしクロスライセンス契約の場合のサブライセンスがついているという場合には、特許の対象は多数あるわけですね、包括ライセンスだと。それについて1つ1つの通常実施権を設定するというのは、もうこの特許法で対応できる範囲をいわば超えているので、いわゆる産活法等での保護にやっているわけですね。 |
中田委員 |
包括クロスライセンスというのはまた別の問題があるかと思いますけれども、私が先ほど全体と部分と申し上げたのは、これは1個のライセンス契約で1個の通常実施権があるという場合の問題です。1個のライセンス契約でも様々な特約がついているはずで、それと通常実施権との関係がどうだろうか。これが全体と部分。 |
竹田座長 |
特許が、1個の特許についてのサブライセンスについて、登録による対抗力が認められることになった場合に、残りの199件のサブライセンスにも及ぶかということですか。 |
中田委員 |
2つありまして、全体として1つのライセンス契約がある。そのライセンス契約の対抗力の問題と、それから、それに含まれる残りの199個の各通常実施権の問題と2種類あるのだろうと思います。 |
竹田座長 |
そこのところはどうお考えですか。 |
間庭審議室長 |
まず最初の問題ですけれども、この通常実施権制度というのは、やはりライセンス契約の中の通常実施権というものに対抗力を与えているという意味では、やはりライセンス契約というのがあって、その中に通常実施権が含まれるというようなものだと私どもは理解しております。 |
竹田座長 |
ほかに何かございますか。 |
前田委員 |
この制度を改革して、たくさんの方に登録していただけるようになるのは良いことですが、それでは解除の仕方はどこに述べられているのかと疑問になりました。共同申請でないと解除できないのかとか、どういう形で解除していったらいいかというのがちょっと私はわからなかったものですから。たくさん登録されるようになっていくと、解除の仕方というのも議論した方が良いと思いました。 |
竹田座長 |
ライセンス契約の解除ですか。 |
前田委員 |
解除されたときの登録の抹消の仕方ということです。 |
竹田座長 |
抹消の仕方ですか。それはどういうことですか。 |
亀山審議班長 |
現行は抹消は共同でやるということになっていると思いますけれども、今回、確かに登録を単独でできるようにするということは、もちろん公正証書を前提としていますけれども、そこは解除も同じような考え方でやらなければいけないのではないか。 |
前田委員 |
件数がどんどんふえていくと、そちらの側も可能性が出てくると思いますので、よろしくお願いします。 |
竹田座長 |
ほかにございますか。 |
松田委員 |
今のご指摘と、もしかしたら関係するのかもしれないのですけれども、32ページで、昭和48年の最高裁の判例との関係について述べていらっしゃいます。そして、今回、単独申請に道を開くということで、48年判例と整合しない部分については、ライセンスビジネスを取り巻く状況が異なっている点ですとか、ライセンシー保護の要請が高まっているという点をあげていらっしゃいます。これは単独申請を導入するという限りにおいては、48年判例の射程が及ばないという狭い範囲で整理していらっしゃるのか。それとも、今読み上げた2点の状況の変化やニーズという観点からすると、単独申請を行う場面にかかわらず、広く、通常実施権を設定したのであれば、ライセンサーは、むしろ登録に協力する義務があると考える方が現在のニーズに合致しているという考え方を採用して今回、法改正に踏み込むということなのでしょうか。最終的には、昭和48年の最高裁判例が今回の改正後のライセンス実務に対しても及ぶかどうかは裁判所が決めることなのかもしれないのですけれども、今回、単独申請の導入に踏み切るということで、今申し上げた点について、事務局の整理としてどういうお考えだったのかという点だけ、もし何か検討しているようであれば教えていただけますでしょうか。 |
竹田座長 |
今の点どうぞ。 |
亀山審議班長 |
確かに登録協力義務というのは、単独申請とは離れて共同申請の場合の多分話だと思いますので、今回は原因の真正性を共同申請というところではなくて、公正証書というところで確認するという、そこをイコールに出すということですので、全体としても全く登録協力義務が発生するとかいうところまで踏み込んでいるつもりはあまりないのですが、ただ、確かにそこは判例なり、学説なりでどう整理されるかということだと思います。 |
松田委員 |
前田委員からご指摘があった解除の際の登録抹消の場面等も含めて、どうも共同申請が原則であることから使い勝手が悪いという部分が未だ多いのかなと思ったものですから、そのあたりも含めて、登録協力義務に関する最高裁判例についても、御検討の余地があればと思って申し上げた次第です。 |
竹田座長 |
私はこの報告書を読んでいる限りでは、最高裁判決を全面変更するのでなくて、公正証書によって双方当事者が通常実施権の設定登録をするという合意をしていることが明らかに証明できる場合には、その限度で協力義務が出てくるので、別に協力を得なくても登録が認められる。そういうことなのかなとは思っているのですけれども、それ以上に踏み込んであの判決全体の趣旨を変えるとなると、これはかなり大事かと思いますけれども。 |
中山委員 |
今の座長のお話との関係ですけれども、これは公正証書にする内容は、両当事者が登録をするということがわかる公正証書なのか、それとも通常実施権の契約がわかればいいのでしょうか、座長のお立場は前者ですか。 |
竹田座長 |
私は前者の趣旨に理解していたのですが、違いますでしょうか、その点は。 |
亀山審議班長 |
なるべく契約自体を確かに公正証書にするというのは、お金もコストもかかりますので、できればおっしゃったような趣旨で制度をつくっていきたいと思っています。ただ、そのときに許諾が確認できれば、それでいいという。 |
竹田座長 |
だからライセンス契約1本で、その1本のライセンス契約の中に設定登録をしますという条項が必要だ。それが公正証書になっている。 |
中山委員 |
それでいくと、48年判決よりも厳しくなりますね。48年判決は、契約があればいいわけですね。契約が公正証書にならなければいけないということになると、48年判決よりもっと厳しくなる。 |
竹田座長 |
そうですか。そういう契約をしてない限りは、共同申請ならばいつでもそれはできるわけですね。だけども、契約証書にこれは設定登録しますと書いてあれば、それだけで相手が履行しないでいる場合には、共同申請をするための手続が必要で、任意にいかなければ、裁判所に設定登録手続をせよという訴訟を起こして、判決をもらうわけですね。しかし、今度の改正でいけば、公正証書に設定登録をするということが書いてあれば、ライセンシーが単独でできるのだから、それはその方がかなり簡便だというふうに私は理解していたのですけれども。 |
中山委員 |
私の理解したのは、最高裁判決よりも、もっと登録義務を認めるような方向ではないか。つまり通常実施権の契約をしたということが公正証書て証明されればいいというふうに、そういうふうに聞いておりましたが、それは間違いでしょうか。 |
大渕委員 |
前回、そこは必ずしもはっきりしなかった面もあったかと思いますが、その意味では、今はっきりしはじめているのは大変よろしいことかと思います。たしか前回は引換給付のことがかなり気にされて、引換給付の機会を失うことになるのはおかしいのでないかということもいわれましたが、ある意味では同床異夢みたいことでもあったかもしれないので、そこはむしろしかるべき機会に明確化しておくことが重要ではないかと思います。あいまいなまま進んでしまうと大変なことになりかねませんので。 |
竹田座長 |
その点は明確でなかったこともわかりましたので、その点についても事務局に詰めていただくということにいたします。ありがとうございました。 |
鎌田委員 |
前回の議論、あるいはここに書いてあることは、座長の整理と違うのではないかという……。 |
亀山審議班長 |
我々の意識としては、登録する申請意思が公正証書になっていなくても、その原因というか、通常実施権でいえば、設定という事実が公正証書でわかれば、それで登録を単独で認めようという整理で議論をさせていただいているつもりでございます。 |
竹田座長 |
それでは私の理解が違っているということですね、今のお話ですと。 |
鎌田委員 |
ここの32ページの文章の中で一番気になっているのが下から4行目の末尾の「他方の登録申請意思に関わらず」、これはかなりはっきりいっているわけですね。だから極端に言えば、登録しませんという公正証書だって登録を認めてやるみたいな話になっちゃう。そういうことで前回、対価の引換給付の事例を出したので、対価の引換給付のこと自体を問題にしているわけではなくて、登録の対象となるべき権利変動があっても、当事者が登録をしたくないという意思を持っているときに、それでもなお登録をしていいときとそうでないときがあるのではないかということを問題にすべきだという趣旨です。この国際条約の読み方も2とおりあって、申請の方式として公正証書があるときは単独申請という申請の方式を認めるべきだということだけをいっているのだとすると、その場合には各国法の実体規定には手をつけないという趣旨だと理解できる。こういう前提でいくと座長のようなお考えになって、48年判決を前提にする限りは、48年判決は、設定者が登録してやろうというふうに思ってない限りは通常実施権の登録はできないのだというのですから、公正証書によって共同申請を単独申請に振り替えることができるとしたって、その公正証書の中に、登録をしてやろうという意思が表示されていないと登録をしてやらないというのが48年判決と整合的ですから、48年判決を維持するのだったら、ここは「他方の登録申請意思に関わらず」ではなくて、「公正証書が作成されているときには、登録申請意思があるものと推定して」とか、もっと極端にいえば、無理やり「登録申請意思があるものとみなして」というふうにしないと、48年判決の考え方と整合性がとれないではないですかということを申し上げたいのです。それに対して、どんなときでも公正証書を出しさえすれば、ともかく登録しなければいけないというのがこの条約の趣旨だというふうに考えているときには、各国法、内国法で通常実施権の設定登録について設定者の意思なんか問題にしちゃいけないという、それが条約の内容ということになりますから、それに従うためには48年の判例の原則は否定しなければいけないということになります。 |
竹田座長 |
その点で、おっしゃることは、確かにかなり大きなそこが問題になりますね。 |
大渕委員 |
今、鎌田委員が言われたところについては、私もそれに近い理解をしていました。たしか前回は、真実性及び真意性ということで登録の意思というのも担保しなければならないという趣旨ともなっていたのですが、今回は真実性ということで、むしろ中身自体の真実性が公正証書により担保されていればよいということが前面に出ているかと思いますので、むしろこの方向で、前回もおおむねそういう感じでしたし、今回もそういう形でまとめておられるのかなと思っております。真実性の担保が問題であって真意性というのは特に問題にしていないということであって、だから、要するに、引換給付を受ける機会を実際上失わせるといったことは避けるという点が図れれば、別に登録意思がはっきりと公正証書に出ているという必要性はないということで、今回、それに沿って事務局が紙をまとめられたのかなというふうに読んでいたのですが。 |
竹田座長 |
最後に確認しておきたいのですけれども、今の議論からすれば、結局公正証書に、通常実施権の設定登録をするという公正証書が存在すれば、単独申請を認めてよいという考えが大方の考えだ。その意味で最高裁判決は完全に変更される。それがこの委員会の大方の議論だというふうにまとめてよろしいのですか。 |
大渕委員 |
最高裁判決の事案は、別に、公正証書等を前提にしてないわけですから、その意味では、局面を異にしているのではないかと思いますが。 |
中山委員 |
形式には座長がおっしゃるとおりだと思うのですけれども、実質的には公正証書をつくらなければ単独登録できないわけですから、特許権者が公正証書をつくらないといえば、それは従来と同じように登録できない。そこで事実上はかなり特許権者の方の意思が担保されるということだろうと思うのです。 |
竹田座長 |
わかりました。 |
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〔「異議なし」の声あり〕 |
竹田座長 |
ありがとうございました。 |
間庭審議室長 |
次回の日程につきましては、既に御連絡させていただいてございますが、12月13日の木曜日の10時からということを予定してございます。2時間の予定でございます。 |
竹田座長 |
それでは、時間となりましたので、以上をもちまして産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会の第4回通常実施権等登録制度ワーキンググループを閉会させていただきます。 |
竹田座長 |
それでは、以上をもちまして産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会の第4回通常実施権等登録制度ワーキンググループを閉会させていただきます。本日はどうもありがとうございました。 |
[更新日 2007年12月6日]
お問い合わせ |
特許庁総務部総務課制度改正審議室 |