ホーム> 資料・統計> 審議会・研究会> 産業構造審議会> 産業構造審議会 知的財産分科会> 通常実施権等登録制度ワーキンググループ> 第5回通常実施権等登録制度ワーキンググループ 議事録
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竹田座長 |
それでは、定刻を過ぎましたので、ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会の第5回通常実施権等登録制度ワーキンググループを開催いたします。 |
間庭審議室長 |
配布資料の確認をさせていただきます。 |
竹田座長 |
それでは、早速議題に入らせていただきます。 |
亀山審議班長 |
それでは、お手元資料1、報告書案に対する意見募集の結果に沿ってパブリックコメントについて提出されました主な御意見とその考え方について御説明させていただきます。 |
竹田座長 |
ありがとうございました。 |
竹田座長 |
特に御質問等ございませんようですので、後でこれは本日の次第である報告書案の御審議に関連することですので、そこでまとめて御意見を出していただいて結構だと思いますので、次に、本ワーキンググループ報告書案について事務局から御説明をお願いしたいと思います。 |
間庭審議室長 |
御説明いたします。お手元の資料2-1でございます。前回の第4回目の素案を修正しまして、その後パブリックコメントにかけさせていただいて、ただいま御紹介したような意見をちょうだいしまして、なおかつ委員の皆様方の意見も拝聴した上で、今回取りまとめさせていただきました。本日これについて御審議いただきたいと思っております。変更点を中心に御説明させていただきます。 |
竹田座長 |
どうもありがとうございました。 |
梅原委員 |
章順ではなくて場所はどこでもよろしいのでしょうか。 |
竹田座長 |
はい。 |
梅原委員 |
14ページの出願権の5)のところです。放棄、取下げについて、今回、差押権者とライセンシーの同意を必要とするように改められたわけですけれども、これについて、特に差し押さえの場合については理解できなくはないなと思うのですけれども、ライセンス、利用関係においては、特許権にあわせてと書いてあるのですけれども、特許権と出願権についてはここに記載されておりますように性格が異なっているものですので、特にライセンサー、ライセンシーの関係において、ライセンサー側の方が公開前のものについて取下げて出願の内容を変更する、それから、ノウハウとして確保したいと思うような知財戦略そのものにかかわる場合についてまでライセンシーの同意がないといけないということになりますと、ライセンスしたくないということで制度に逆行するのではないかという懸念がございまして、少なくとも特段の事由がない限りとか、特段の定めがない限りというようなことで、契約においてある程度のケアができるような余地を残していただきたいと思っております。 |
竹田座長 |
今の点について何か委員の方から御意見ありますか。 |
間庭審議室長 |
今回、承諾を要件とした方がいいのではないかという意見が強かったので、このように修正したわけですけど、ほかの委員の方々から反対意見がなければ、事務局としては委員の意見を尊重する立場でございます。ただ、我々は最後は法律の条文にしなければいけない立場ですので、特約がない限りといった書き方が可能なのかどうなのか考えなければなりませんが。 |
亀山審議班長 |
法制的な議論は進めながら考えていかなければいけない部分がありますけれども、特許権と特許を受ける権利は確かに性質が違うところはありますけれども、通常実施権と事前の停止条件付きの通常実施権というところで、財産権的な側面も変わらずあると思っております。だから、これはライセンサーの立場を重視するか、ライセンシーの立場を重視するかというバランスの問題だと思います。前回これは別の、中山先生だったと思いますけど、そのライセンシーが全く承諾というか、交渉する機会もなく取下げられてしまうのは、それは制度として不完全ではないかという御意見もございましたので、したがって、こういう案にさせていただいていると。パブコメでも、数の問題ではないですけれども、ここは承諾を入れた方がいいという意見も結構複数出ておりましたので、そういうことを考えれば今の我々の案の方がいいのかなと思ってはいるのですが、そこはぜひ御議論いただきたいところでございます。 |
竹田座長 |
今回の通常実施権の設定登録制度の改正の一つの大きな点は、特許を受ける権利についてのライセンス契約を保護するために、特許を受ける権利についての段階での設定登録を認めようということにあるのだと思います。まさにバランスの問題を考えなければならないと思いますが、その段階でのライセンス契約を保護するということになれば、取下げ、放棄等によって対象たる権利が消滅してしまうことについて、やはりライセンシー保護の立場から、ライセンシーの同意を必要とするという意見がパブコメの結果を見てもかなり多いということは言えると思います。この点は前回と報告書案が変わったところでもありますので、委員の方々からの意見を。 |
松田委員 |
今、本件は「バランス」の問題という御指摘があったと思いますので、これに関連して2点ほど確認させていただきたいと思います。1つは、承諾を得ることが必要なライセンシーの範囲ですけれども、報告書案15ページの記載を見ますと、「登録されたライセンシー」と書いてございますので、これは登録されていないライセンシーについての承諾は要求しない一方、登録されたライセンシーが存在する場合だけ承諾が必要という整理を行っているのでしょうか。そうだとすると、そのような区分けをした理由についてお聞かせいただければと思います。 |
竹田座長 |
どうぞ。 |
亀山審議班長 |
まず1点目ですけれども、ここに書いてありますとおり、今の我々の案では、登録されたライセンシーのみの承諾ということで考えております。ここもちょっと悩んでいる部分ではあるんですけれども、特許権の放棄については条文上、97条だと思いますが、登録されていない通常実施権者も含めてこれは同意が必要とされていて、そことの並びをどう考えるかということだと思います。ただ、我々の今の理解では、放棄についてはあくまで当事者間の問題でありますけれども、出願の取下げなりというものは、対特許庁との関係も出てきます。対特許庁は、登録されていないような通常実施権者まで把握することは難しい。特許権の放棄の場合も、結局登録令で、登録の抹消の申請の場合には、登録された利害関係を有する第三者の承諾が必要です。実際に特許庁との関係では、登録された者の承諾ということにされていますので、そういった意味では、ここの部分については登録されたライセンシーに限るということで今は考えています。ここもただ、法制的な議論を今後していく中で検討していきたいということで考えております。 |
竹田座長 |
よろしいですか。 |
鎌田委員 |
今のことに関連するのですが、バランスの議論で問題を決めるというと、そのバランスは状況、状況によってどっちを保護するかはさまざまであるわけで、余り決め手にならないんだろうと思います。けれども、法の一般原則として、自分である権利を設定しておいて、そのもとになるものを一方的に消滅させるのは基本的に許されないという原則があると思うんです。特許法の97条はそれを宣言していると思います。そちらの方を原則にした上で、しかし個別の事情はいろいろあるわけですから、それは特約あるいは事後的な承諾で対処していくということで良い。今の御議論にありましたように承諾は別に事後的にやる必要はなくて、あらかじめ、どういうときには取下げ、放棄ができるということを定めておきさえすれば良いわけです。 |
竹田座長 |
ありがとうございます。 |
大渕委員 |
特許処分という行政処分によって特許権となる前の段階の特許を受ける権利というものは、普通の私権と比べると非常に手続性の強いものであり、その意味で非常に手続的にペンディングな性格が強いものなので、法の一般原則というものはいわば何にでもかかってくるのではありますが、それだけで済む問題といいきれるかについては慎重な検討が必要かと思われます。そして、そのような意味では、最後はバランス的なものが入らざるを得ないのではないかという気がします。ここでは、特許を受ける権利ということであり、特許権という私権になる前の非常にペンディングな状態が問題となっております。先ほどの法の一般原則を言っても、補正により元々の権利を勝手に縮小してもいいのかという後に出てくる問題にもかかってくる点でもあります。このような状況についても、法の一般原則はもちろんかかってくると思いますが、これだけで済ませられる問題かという疑問が残ります。やはりこのような手続的に非常にペンディングな状況における当事者間の利益の調整については、バランス的なところを考えざるを得ないように思われます。 |
竹田座長 |
今の大渕委員の御意見によれば、そのバランス的なものを考えた場合に、ライセンシーの承諾を要するとして、かつ特約等によるそれと異なる合意等を認めていくことで解決することでよろしいのではないかという趣旨で理解してよろしいですか。 |
大渕委員 |
そういうことも解決策の一つとはなり得る余地があろうかと思います。結局はどうバランスを図っていくかということになります。このようなバランスを考えるに当たっては、当事者の実際のニーズというものが重要なファクターとなってくるものと思っています。 |
竹田座長 |
ありがとうございました。 |
前田委員 |
実際に大学における場合、非常にアーリーフェーズのうちに出願しますので、放棄や取り下げることがあります。そうしたときに、この登録制度は、そもそもライセンシーの保護のために使いやすくしようというものだと思うのですけれども、余りにもライセンシーの保護を強くすると今度はライセンサーの人が、じゃあ登録自体したくないというふうになってしまうのではないかという心配はあります。できれば、ライセンサーの人に頻度高くあるような場合には、契約で逃れられることができるようになっていた方が良いと思いますし、いないと、登録したくなくなってしまわないようにしないといけないかなと思いました。 |
竹田座長 |
あと産業界の方でほかに御意見ある方いらっしゃいませんか。 |
守屋委員 |
登録の対象とするような権利というのは、重要な権利としてライセンスを受けるケースが多いのだろうと思います。ライセンシーの立場になると、お金を払った権利について当然権利化されて、排他的なほかのライセンスを受けていない人と比べると、排他的に権利を使えるというメリットも受けられることがあるわけなので、それを権利者が勝手に放棄して、保護するということは当然考えられないことだし、やはり前提とされている議論のところが少しおかしいのかなという気がします。これはパブリックコメントの方でも出しましたけれども、あるレベルでライセンシーを保護するところが必要ではないかと考えております。 |
竹田座長 |
梅原委員どうぞ。 |
梅原委員 |
前提について話がありましたけれども、その場合は基本的には登録するのが前提になっているものですので、契約を結ぶわけですね。契約の段階で取り下げ等について事前に同意してもらうということができなければ、やはりライセンスしないという余地がないとならないと思います。大企業もライセンシーという立場しかないわけではないので、ライセンサーになる場合もあるわけです。そういった場合を考えますと、もともとの権利が、これは18ページにもありますように、特許権の付与を国家に要求する性質の権利というふうに位置付けられておりますので、今後登録を前提にライセンスする場合これが著しく制約を受けることは避けるべきではないかと思います。 |
竹田座長 |
今梅原委員のおっしゃったことからすれば、ライセンシーにとっても、先ほどの意見にも出ておりましたように、ライセンス契約において契約書で取下げや放棄については承諾を要しないというような特約条項を入れるかどうかということがライセンス契約の締結に際して議論されれば、ライセンシーとしてはそれでもライセンスを受けるか、ライセンサーとしてはそうしない限りはライセンスしたくないことになるのか、その辺は契約自由の原則の範囲内で処理できることだから、原則的にこの報告書案のように承諾を要するとして、そういう特約あるいは承諾書の提出ということで、そこは十分補えるのではないかと思いますが、いかがですか、その辺でまとめることはできませんか。 |
梅原委員 |
それはぜひそうしていただきたいと思うのですが、19ページの方の差し押さえについても、出願段階のライセンスに係る登録と同様にと書いてある点が引っかかりまして。こちらの場合は契約でどう書いてあろうが、差し押さえした後、勝手に放棄されたりすると困るというのは、それはそうだと思うんです。ですから、そういう意味でライセンス段階、利用関係のところと差し押さえている状況はシチュエーションが違いますので、ライセンス段階では契約で十分カバーできるということが読み取れれば結構だと思います。 |
竹田座長 |
今の点につきましては、最終的な案について、ここでの議論も踏まえて座長に御一任いただけませんでしょうか。よろしゅうございますか。 |
大渕委員 |
かなり前の回でも申し上げましたが、特許を受ける権利というものの法的性格については、よく掘り下げて考えると非常に難しい問題であります。何となく特許を受ける権利というと、特許権と似たようなものとして受け取っておられる方も多いかと思いますが、さきほども事務局から御説明があったとおり、やはり法的趣旨を考えていくと、行政処分が終わった後で特許権という私権になっているものと、その前の段階の、国家に対して特許権付与を請求するというような権利というのは手続法的にも大きく性格を異にしております。今のお尋ねは、要するに特許を受ける権利の範囲というのはクレームの範囲に画されるのかというお尋ねではないかと思いますが、基本的には、特許権になれば排他性があって、これに基づく差止・損害賠償請求権の範囲を画するためにクレーム制度というのがあって、そクレームの範囲を基本として権利範囲が確定されることになりますが、付与前はどうかと言われると、基本的には付与前はむしろ、これも前の事務局の御説明にもあったとおり、排他性がないと一般に解されています。付与後は排他性があってその範囲を画するのものとしてクレーム制度があるのですが、付与前は、その時点としてはそもそも排他性自体がないわけですから、そういう意味で特許を受ける権利の範囲がクレームの範囲で画されるということは考えにくいと思います。 |
竹田座長 |
その点を前提に考えると、この19ページで言っている、特許を受ける権利に対する処分の制限の登録があった後に、分割された。その分割後の新たな特許出願についても、処分の制限の効力は及ぶという考え方でいいということになりますか。 |
大渕委員 |
さきほど申し上げたように、特許を受ける権利の範囲がクレームの範囲で画されるないしは分断されるということは考えにくいいうことになると、特許を受ける権利の範囲がクレームの範囲で画されるということを前提とする議論は難しいということになると思います。この問題を考えるにあたっても、以前申し上げたとおり、最後は当事者の実際上のニーズもよく聞いてみなければならないと思いますが、特許を受ける権利の範囲がクレームの範囲で画されるということを前提とする考え方は、やはりしっくりこないのではないかと思います。 |
竹田座長 |
ほかの委員の方で今の点について何か御意見ございませんか。 |
鎌田委員 |
36ページのサブライセンスの話なんですけれども、引き続き検討を行うということ、それはそれで結構だと思うんですが、それはどれぐらい長いスパンで引き続き検討を行うつもりなのかをお聞きしたいです。 |
間庭審議室長 |
これについては先ほど申し上げましたとおり、通常実施権の対抗制度を踏み出して契約の対抗制度に近づいていく。あとパブコメでもございましたように、当然対抗をどうするのかというような議論もございます。これについては、去年もそういう議論があったのですけれども、まずどういうフォーメーションで議論するのか。我々としては今回の登録制度の改正をぜひ次の国会にかけようかと思っているんですが、それが終わって、役人的に言えば、この施行状況を見ながらということになると、これは時間がかかり過ぎると怒られると思いますので、勉強は内々に開始しながら、あとはどういう場で検討するのか。最終的には登録制度の改正の施行状況を見なければいけないと思いますので、そう近々に検討が開始することになるとは考えられませんけれども、これについてはきちんと課題として検討したいと思っておりますので、どうかその際にはまたよろしくお願いいたします。 |
鎌田委員 |
一言だけ。今通常実施権の権利の対抗か契約の対抗かということが問題になると説明されましたが、そういうことだと、非常に大きく考え方を変えなければいけないだろうと思います。しかし、契約の対抗というのは1つのアプローチの方法であって、そこを根本的に変えない限りこういうものはできないかというと、必ずしもそれはそうでないだろうと思いますので、柔軟にぜひ考えていただければと思います。 |
間庭審議室長 |
おっしゃるとおりでございまして、今の通常実施権の中で読み込んでしまうようなやり方もなきにしもあらずですので、今の鎌田委員の御意見もしっかり拝聴いたしまして、柔軟に考えてまいりたいと思っております。 |
竹田座長 |
松田委員どうぞ。 |
松田委員 |
今の点に関連して私も一言申し上げます。今回、長い間懸案となっていたライセンシーの保護の問題について、踏み込んだ内容の特許法改正案をご検討いただいて実務的には非常にありがたいことだと深く感謝しております。ただ、他方で、今、鎌田委員から御指摘いただいたサブライセンシー保護のように積み残しになっている問題がございます。そして、専用実施権について、今回の改正がなされれば、登録後の開示の関係などで、今まで以上に使い勝手の観点から、専用実施権、通常実施権との間で差が広がると思いますので、このあたりの見直しの問題が重要になるであろうですとか、逆に、今後の課題がいろいろと見えてきた部分もあると思います。ライセンス取引の法律関係については、ライセンス契約という契約法の側面の問題と、特許法が規定する通常実施権及び専用実施権並びにその対抗問題という知的財産法上の制度の問題と、法律関係が二重になっている部分もあって、短期間では問題解決がなかなか難しいところだと思います。しかしながら、ライセンス関係の法律問題については、実務的にいろいろ苦労しているところでありますので、問題解決に向けて、ぜひ今後とも検討を続けていただければと思います。 |
竹田座長 |
それでは、本報告書案については、本ワーキンググループの報告書にすることについて御異議ございませんでしょうか。よろしゅうございますか。 |
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〔「異議なし」の声あり〕 |
竹田座長 |
それでは、御異議なしということで、本報告書案をワーキンググループの報告書とさせていただきます。ただ、先ほどの梅原委員から主として御指摘になった点を踏まえて、必要な修文をどの程度する必要があるかについては座長である私に御一任ということにしていただきたいんですが、よろしゅうございますか。 |
間庭審議室長 |
必要な修文をした上で、これについてワーキングの報告書といたしまして、今月の19日に開催予定の特許制度小委員会で御報告させていただきまして、その審議をしていただいた上で、これについて1月下旬に開催予定の産業構造審議会知的財産政策部会の方にも御報告させていただきたいと思っております。 |
竹田座長 |
それでは、どうもありがとうございました。 |
竹田座長 |
では、最後に長尾総務部長から一言ごあいさつをいただきたいと思います。 |
長尾総務部長 |
それでは、最後に皆様方に御礼を申し上げたいと思います。 |
竹田座長 |
それでは、閉会に当たりまして一言ごあいさつさせていただきます。 |
[更新日 2008年1月15日]
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特許庁総務部総務課制度改正審議室 |