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第1回実用新案制度ワーキンググループ 議事録

(本記事作成:特許庁総務部総務課制度改正審議室)

  1. 日時:平成15年7月1日(火曜日)13時30分~15時15分
  2. 場所:特許庁 特別会議室
  3. 出席委員:大渕座長、石田委員、臼井委員、尾形委員、熊谷委員、志村委員、坪田委員、戸田委員、長岡委員、溝尾委員、吉田委員
  4. 議題:実用新案制度の現状と課題について

開会

木村審議室長

まだお見えでない方もいらっしゃいますけれども、時間でございますので、ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会第1回実用新案制度ワーキンググループを開催させていただきます。
私は事務局を務めさせていただきます特許庁制度改正審議室の木村でございます。
本ワーキンググループにつきましては、5月9日に開催されました産業構造審議会知的財産政策部会第8回特許制度小委員会におきまして設置が決定されております。
座長につきましては、産業構造審議会運営規程によりまして小委員長が指名する方とされておりますが、本ワーキンググループでは後藤晃特許制度小委員長より、東京大学大学院法学政治学研究科教授、大渕哲也委員を御指名いただいております。大渕委員御本人にも御内諾をいただいておりますので、大渕座長にお願いいたしたく存じます。

座長挨拶

木村審議室長

それでは、大渕座長、一言御挨拶をいただきます。

大渕座長

ただいま御紹介いただきました大渕でございます。私は、1999年の3月末まで裁判官をいたしておりました。なお、最後は東京高裁でありました。それから学界に転じて、東京大学に赴任し、同大学の先端科学技術研究センター(先端研)の知的財産権部門というところに4年ほどおりまして、ことしの5月1日付で、今御紹介があったとおり、大学院法学政治学研究科、名前は長いのですが、要するに本郷の法学部に移りました。
さて、本日は、特許制度小委員会の実用新案ワーキンググループということでございますが、申し上げるまでもございませんけれども、実用新案制度というのは工業所有権4法(産業財産権4法)の中で重要な一角を占めるものであります。特に平成5年の大改正後には無審査主義となり、法的にも非常に興味深く、かつ特徴のある制度となっているわけでございます。
このワーキンググループの趣旨というのは、私なりに理解しているところでは、工業所有権の中で特殊な地位を占めます実用新案制度につきまして、特に現代的な意義がどこにあるかという点を探求しつつ、ユーザーにとってより魅力的な制度にしていくためにはどのような可能性があるかということにつき、皆様に御議論いただいて、お知恵を出していただくということかと思っております。
要するにこの制度につきましては、ユーザーのニーズ――このユーザーには、現実に現時点でこの制度を御利用になっておられるユーザーのほかに、いわば潜在的なユーザー、すなわち、制度が別の形になりましたらこういう制度を使ってみたいという潜在的なユーザーも含みます――につき、そのニーズがどの辺にあるのか、そのニーズにこたえるためにはどのような工夫をしていくのがいいのか、特に、どのような工夫をすれば、そのような潜在的なニーズというものが満足できるようになるかという点につきまして、種々の面から総合的に考察して、お知恵を出していただくということになろうかと思っております。
それで、委員の先生の方々も、ユーザー側からの委員の先生方と研究者の委員の先生方の双方にご参加いただき、ユーザーニーズと理論の両面から総合的な形で御審議いただいて、魅力的な実用新案制度にするにはどのような工夫の可能性があるのかという点を御審議いただければと思っております。
それでは、そのための議論の進行役といたしまして微力ながら努力していく所存でございますので、よろしくお願いいたします。

木村審議室長

ありがとうございました。
では、以降の議事の進行を大渕座長にお願いいたしたいと思います。

委員紹介

大渕座長

はい、承知いたしました。
本日は、第1回のワーキンググループでございますので、事務局からまず委員の皆様の御紹介をお願いいたします。

木村審議室長

はい、それでは御紹介いたします。
日本弁理士会副会長、石田喜樹委員。
社団法人日本経済団体連合会産業技術委員会知的財産部会委員、臼井清文委員。
社団法人電子情報技術産業協会特許委員会委員、尾形偉幸委員。
九州大学大学院法学研究院教授、熊谷健一委員。
松下電器産業株式会社IPRオペレーションカンパニー知財開発センター所長、志村勇委員。
日本商工会議所理事・産業政策部長、坪田秀治委員。
日本知的財産協会特許第二委員会委員長、戸田裕二委員。
一橋大学イノベーション研究センター教授、長岡貞夫委員。
船井電機株式会社事業本部知的財産権部部長代理、溝尾真一委員。
株式会社タカラ企業法務室長、吉田久幸委員。
なお、本日、ユアサハラ法律特許事務所弁護士・弁理士、牧野利秋委員は御欠席でございます。

大渕座長

ありがとうございました。
皆様、よろしくお願いいたします。

特許庁長官挨拶

大渕座長

それでは、議事に入る前に太田特許庁長官から一言御挨拶をお願いいたします。

太田特許庁長官

特許庁の太田でございます。
皆様、本日は大変御多忙の中、このワーキンググループに御参加いただき、まことにありがとうございます。ぜひともよろしくお願いいたしたいと思います。
御案内のように、知財立国ということで国を挙げての取り組みが始まっております。昨年7月に知的財産戦略大綱というのが取りまとめられました。それを受けて、知財基本法が昨年秋の臨時国会で成立して、それに基づいてことしの3月に知的財産推進本部が立ち上がったわけです。来週の火曜日、7月8日には知的財産戦略推進計画が取りまとめられる予定と承知しております。
関係者も大勢いるわけです。我々霞が関の官庁も、それから企業の方も、弁護士、弁理士の方、それから大学の方々、関係者すべてが知恵と力を振り絞らないと、なかなか知財立国といってもそう簡単なことではないと思っております。そういう中で、私ども特許庁、多くの課題、宿題を背負っております。昨年、先ほど触れました7月に取りまとめられた知財戦略大綱でも山のような宿題をいただいておりまして、順次それをこなしているところであります。
例えば、今回の通常国会、まだ終わっていませんが、特許法の改正をいたしまして、迅速的確な審査の実現のために料金体系を変更する。あるいは審査請求を取り下げた場合に、お金を一部戻すとか、そういう改正もいたしました。また、審判制度についても合理化を図ったところでございます。特許についてはまだまだやらなくてはいかんことがいろいろございまして、これも別の委員会等で検討が行われております。商標についても先週でしたか、議論を始めたところでございます。
そういう中で、実用新案、今座長からお話がありました平成5年に大改正が行われたところでございます。それはそのとき、非常にライフサイクルが短くなっている。そういうものに対してどういうふうに対応したらいいかと。いろいろなニーズがあって、改正したわけでございますが、その後、10年たってまたいろいろな課題が出てきております。
そういう課題に対応して、先ほど座長の言われたとおり、いかにユーザーフレンドリーな、使い勝手のいいものができるかどうか。もちろんそもそも論を議論していただくのも全く構わないかと思いますが、我々としては特許も商標も意匠も実用新案もなるべくユーザーの方がみずからの競争力というか、力をつけるために、どういうふうに使い勝手のいいユーザーフレンドリーなものにするか。逆に言えば企業の競争力の強化のためにアドバンテージのあるような制度、もちろん国際的なハーモナイゼーション、整合性というのを常に念頭に置いておかなければいけないことは言うまでもありませんが、そういう中でいろんな工夫があってしかるべきではないかというふうに思っているところでございます。
本日、御参加いただきました委員の皆様方、それぞれの分野で大変な識見のあられる方というふうに我々承知しておりますので、ぜひとも忌憚のない意見をどんどん出していただいて、活発な議論が行われることをお願いしまして、簡単でございますが、冒頭の御挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。

大渕座長

ありがとうございました。

ワーキンググループの公開について

大渕座長

さて、具体的な審議に先立ちまして、本ワーキンググループの公開につきまして皆様の御同意を得ておきたいと存じます。
産業構造審議会はその運営規程によりまして、部会や小委員会、ワーキンググループを含め、原則として公開となっております。本ワーキンググループにおきましては、会議後に配付資料、議事要旨、さらに議事録を発言者を記載して特許庁のホームページに掲載したいと思います。
また、委員各位の率直かつ自由な意見交換を確保するために、会議自体の傍聴は受け入れないこととさせていただきたいと存じますが、いかがでしょうか。
それでは、そのようにさせていただきます。

実用新案制度の現状と課題について

大渕座長

それでは、早速議事に入らせていただきます。
資料を事務局で用意されていますので、説明をお願いいたします。

木村審議室長

まず、配付資料の確認をさせていただきます。
クリップどめの資料を外していただきますと、1枚目が議事次第、2枚目が委員の先生方の名簿でございます。その後に、資料1「実用新案制度の現状と課題」、それから資料2「参考資料」、その2点がございます。過不足等ございませんでしょうか。
それでは、資料1に基づきまして簡単に御説明をさせていただきたいと思います。
まず、実用新案制度、今回ワーキンググループを設置いたしまして見直すということになったわけでございますけれども、これは非常に歴史のある制度でございまして、平成5年には大改正をされて、今日の姿に至っているということでございます。
非常に長い歴史の中で変遷を遂げてきたわけでございますけれども、まず20世紀初頭にこの制度が導入されましたその背景から簡単に解きほぐしていきますと、外国技術に比較して非常に技術水準の低い時代にあっては改良技術を保護する。小発明を積極的に奨励するという、そういう手段として明治38年に実用新案法が制定されているということでございます。
実用新案法は特許法と同じく、技術的思想を対象とする知的財産制度ということでございまして、対象となる技術の水準によりまして特許法と役割分担をする制度ということになっております。
したがいまして、御承知のとおり、その対象が物や方法に化体される発明か物品に化体される考案かという区別、それから権利の存続期間が長い、短い、それから進歩性の程度ということを除きますと、制度の基本的構造というのは制度制定当初は大きな差異は必ずしもなかったのではないかということも言えるわけでございます。
他方、長い歴史の中で、実用新案制度、さまざまな変化を遂げたわけでございます。実用新案制度は非常に日本にはよく定着したのではないかという評価だと思います。下のグラフを見ていただきますと、旧実用新案出願は特許をずっと上回って推移をしてきているということで、これが昭和56年まで続いたわけでございます。昭和56年に実用新案法創設以来初めて実用新案の登録出願件数が特許の出願件数を下回るということが起こったわけでございますけれども、やはり高度成長を過ぎまして、技術が成熟化してきたというようなことが背景としてあると思われますし、その後、昭和62年の特許法改正で改善多項制が導入されまして、特許の使い勝手が非常によくなったということもございまして、実用新案登録の出願が急減しておりまして、平成5年、前回の改正の時点では10万件にまで減少しているということがあったわけでございます。
2ページでございますけれども、先ほど特許法と実用新案法の違いにつきまして簡単に触れたわけでございますけれども、特許法は発明を保護するものでございますが、発明というのは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち、高度なものであるというふうに定義をされているわけでございまして、他方、実用新案法では、考案というのは、自然法則を利用した技術的思想の創作であると定義をしているということでございます。考案と発明、言葉が違うわけでございますけれども、内容的には高度なものかどうかということが決め手になっているということでございまして、これを踏まえまして、進歩性の基準につきましても、特許法は容易に発明することができないものということ、他方、実用新案法は極めて容易に考案することができないものということで書き分けているわけでございます。
法制定の当時、明治の昔にまでさかのぼりますと、確かにこういう技術的には一定の水準の差があったのではないかということでございますけれども、ずっと長い歴史の中でやはり高度なものという条文上の差と申しますのは、そもそも定量的に分界線を設けられるような性質のものではない。あるいは実態としても出願され、審査される技術に実態上の差がほとんどなくなりつつあったという状況があったということでございます。
特許制度の利用が拡大するにつれて、ますますこういう実態上の差というのは縮小するということにもなってまいるわけでございまして、他方、開発リードタイム、あるいは製品のライフサイクルが非常に短い、そういう考案、発明を早期に権利を保護しなければいけない。そういう必要性が高まるという時代の変化があったということだと思います。
当時、ただし、実用新案制度も特許と同じように権利付与前の審査主義というものを採用しておりました関係上、出願から権利が付与されるまでに一定期間を要するということで、極めて早期に実施され、あるいはライフサイクルが短い、そういう技術について、必ずしも適切な保護を与えられるという、そういう制度の役割分担にはなっていなかったということが言えるわけでございまして、これにこたえるべく平成5年の全面改正というのが行われたということでございます。
平成5年の改正でございますけれども、繰り返しになりますけれども、早期権利保護のニーズというものをまず第1に掲げて、権利者と第三者の適切なバランスというものを考えながら、早期登録を可能にするような制度設計を行ったということだろうと思います。
その結果、現在の実用新案制度、これは審査主義を採用する特許制度とは根本的に異なる役割、無審査主義と申しますか、あるいは事後審査主義ということが正しいのかもしれませんけれども、そういう制度として位置づけられるということになったわけでございます。
(1)のところに書いてございますが、いずれにしても早期に実施される技術を保護するためには、権利化までの期間が非常に短いことが不可欠であろうということでございます。他方、平成3年のデータでございますけれども、特許出願から最終的に審査結果が確定するまでの期間というのは大体31月、実用新案でも27月かかっているということで、大きな差はなかったわけでございますけれども、これではどうやっても早期に実施する、早期の権利保護が必要なものの、早期登録というのは無理であるということにならざるを得ない。したがいまして、制度の役割分担が明確になるような違いを持たせるという意味も込めまして、改正後の実用新案法では実体的要件については審査をせずに、権利を設定し、登録される。その権利が実体的要件を満たしているか否か、それは原則として、当事者間の自己責任によって判断していただくということに大きく転換をしたわけでございます。
他方、こういう無審査登録・事後評価型という制度を採用するに当たりまして、やはり権利の濫用というのが非常に気になるということがあるわけでございます。
したがいまして、御承知のとおり、権利者が実用新案技術評価書を提示した上で警告しなければ権利行使ができない。それから、行使した権利が無効であった場合には、権利者が無過失を立証しない限り、権利行使によって与えた損害を賠償する責任を負うというような規定を整備いたしまして、あるいは請求項の削除に限った訂正を認めるというような改正を施して、第三者に不測の不利益を与えることを防止するということにしたわけでございます。
それから、権利の存続期間でございますけれども、旧実用は公告の日から10年ということで、ただし、出願日から15年を超えないということで、最長15年ということだったわけでございますけれども、ライフサイクルの短い製品技術でとあるということ、それから、先ほど申し上げたような事後審査型の事後評価型の制度であるということを考えまして、改正によって6年という短い期間に短縮をするということになったわけでございます。
そのほか、所要の規定の整備等を行っておりまして、結果として特許制度とは非常に装いの異なった制度になったということが言えるわけでございます。
後ろに別添1というのをつけてございますけれども、これは今私が口頭で申し上げたようなことが表にしてまとめてございます。さまざまなところが異なっておりまして、補正の可能期間でございますとか、あるいは先ほど申し上げましたように訂正の範囲、権利者の責任といったところも違いますし、侵害者の過失推定の条文が平成5年改正で実用新案法については削除されておりますし、訴訟手続につきましても実用新案の方は事後評価型であるということにかんがみまして、原則中止をするというような規定ぶりになっておりまして、特許法とは対照を見せているということが言えるのではないかと思います。
それから、3ページの(3)に戻らせていただきますが、物品の形態的要件につきましてもこのとき広げるか否かということについて議論があったと承知しております。他方、平成5年の改正のときには、やはり実体審査を行わないで、早期の権利行使を可能とする。そういう制度であるということから、第三者による権利内容の判断が比較的容易な有形物にすべきではないかと。第三者がビジネスを展開するときに、実用新案権を侵害しているかいないかというのが一目瞭然といいますか、判別が容易なものである必要があろうということでした。基礎となる考え方は変わったかもしれません。すなわち、従来は小発明の保護という観点から方法については保護をしていなかったということだろうと思いますけれども、改正後は第三者から見た判断の容易化という観点も加味いたしまして判断した結果、従前どおり、「物品の形状、構造又は組合せに係る考案」という要件は維持されたということでございます。
4ページでございますけれども、では、平成5年改正の後、現在の実用新案制度がどのような使われ方をしているかということを簡単に御紹介したいと思います。
平成5年改正当時は、今後の出願件数の見込みとしては、およそ数万件程度のニーズはあるのではないかという見通しを持っていたわけでございますけれども、新実用新案の出願は大幅に減りまして、平成5年の旧実が7.7万件であったのに対しまして、平成6年には1.6万件ということで大幅に減っている。その後も漸減傾向にございまして、平成14年の数字で8000件強というデータがございます。
それから出願人の構成でございますけれども、下にグラフで対照しておりますが、新実用新案制度におきましては、外国人による出願比率が増加をしているということ。他方、特許法における国内出願人の比率というのはおおむね9割ということで一定をしていることでございます。
それから、国内出願人の内訳を見ますと、特許法の場合は95%が法人、5%が個人であるというのに対しまして、新実用新案では40%が個人であって、残りの6割が法人、ただし、そのうちの45%が中小企業ということでございまして、15%が大企業というようなことでございますけれども、そういう数字になっているということでございます。すなわち、中小企業、ないしは個人の方の御利用が多いということはデータからうかがえるわけでございます。
それから、5ページでございますけれども、出願技術分野の変化ということで、左の丸2つが平成2年の実用新案と特許の出願のグラフでございます。やはり平成2年のデータを見ましても、生活用品等がそれなりの比率はあったわけでございますけれども、平成12年の右側にございます新実用新案の出願のデータを見ていただきますと、生活用品分野というのが全出願の4割を占めるということで、下にございます特許制度とはかなり顕著な対照が見られるということではないかと思っております。
それから、(4)で無効審判・侵害訴訟の件数というのを書いてございます。
平成12年~14年におきます旧実用新案権に関する無効審判請求は年間平均43件、侵害訴訟が45件程度あるということでございますが、新実用新案権の方が少なくて、無効審判請求が年間平均22件。それから、侵害訴訟の提起は約6件ということでございまして、非常に少ない。技術評価書は年間平均大体1570件ほど書いておるわけでございますけれども、それに対しまして現実に侵害訴訟にまで至ったケースというのは6件程度ということですので、訴訟になるケースというのは非常に低いということがデータからはうかがえるわけでございます。
それから、6ページでございますが、実用新案の新規性・進歩性の水準ということでございまして、実用新案法のもとで作成されました技術評価書における評価がすべての請求項について6、6といいますのは、特に関連する先行技術文献を発見できないということで、合格ということだろうと思いますけれども、そういうものにつきましては約3割ということで、かなり好成績なのかなと。さらに、評価が6である請求項は、全部の請求項の中の約4割ということになっているということでございます。
他方、特許の審査請求案件につきましては、補正等を経ずに、即、一発特許というものは大体14%であるというデータからしても、技術評価書が請求されるようなものにつきましては、かなり十分な先行技術文献調査がされているということではないかという考え方もあり得ると思います。
それでは、7ページに移らせていただきまして、では、現代的意義の再検討。このように実際使われ方が変化し、かつ、相当程度件数も減ってきている。こういう実用新案制度について、それでは今日的にどのような意義があるのかということをあわせて考えていく必要があろうことでございます。
当然特許制度というのがありながら、かつ、実用新案制度というものを並存させることの意義・効果というのは認められるのかどうかということをまず検討してみる必要があるのではないかと思っております。
まず1点目でございますけれども、これは時宜を得た保護の実現ということで、早く保護するということでございます。企業の研究開発のリードタイムは非常に短縮化しておりまして、下のグラフ、若干古いんですけれども、1988年と98年という数字を比較したものでございまして、ほとんどすべての分野で短縮化の傾向にあるということ。それから、ライフサイクルの短縮化という傾向もやはり引き続きあり得るのではないかということでございますが、他方、特許につきましては、審査待ち期間が現在22カ月ということで、最終的に権利として確定するまではさらに時間を要することになります。出願と同時に早期審査制度を利用するという場合でございましても、FAまでは大体4.7月かかっておりまして、当然拒絶理由がある場合が多いわけでございますので、最終的に権利として確定するまではおおむね10カ月からおよそ1年近くの月日がかかるということで、かなりの時間がどうしてもかかってしまうわけでございます。特許法のみでは事業化のタイミングが早い技術について適切な時期に保護を受けられないのではないかと。そういう状況は依然として存在するのではないかという考えでおります。
他方、実用新案法では実体審査を経ておりませんので、出願から大体5カ月程度で権利が登録されるということでございます。先ほど申し上げたような開発リードタイムの短縮化、製品のライフサイクル全般の短期化という中で、無審査登録・事後評価型の実用新案制度というのは特許制度では代替できないメリットがあるのではないかという考えでおります。
他方、製品のライフサイクルだけ見ますと、平均は8.1年というデータがございまして、現行の実用新案権の存続期間は6年でございますので、必ずしも保護がこれでは十分ではないという指摘もあるようでございます。
8ページでございますが、時宜に応じた権利行使の実現ということで、早く、かつ、かなりの程度強い権利行使というのができる必要があろうということでございます。特許法では出願公開、その後、権利登録前の第三者の模倣による損害に対しまして、権利の設定登録後に補償金請求ができるわけでございます。他方、補償金の額と申しますのは、実施料相当額であるということで、損害賠償請求権や差止請求権ほど強い保護が与えられているわけではございません。したがいまして、模倣品が出回る、あるいは製品化やモデルチェンジの時期が早い技術といいますのは、十分な保護を特許法のもとでは受けることができないのではないかということでございます。
他方、実用新案法では、登録後、技術評価書の提示を行いまして、警告をいたしますと、特許権同様の損害賠償請求権、あるいは差止請求権という保護が与えられるということで、大体これが3カ月から4カ月ぐらい実用新案の技術評価書の作成期間がかかっておりますので、登録が5カ月、さらに3、4カ月ということで、これを足していただきますと、それだけの強い保護が与えられるということになるわけでございます。
下に図がございますけれども、一番右上のところの四角が実体審査、評価を経ていて、直ちに権利行使ができる。かつ、短期間で登録ができるという一種の理想でございます。それに対して、実用新案権は実体審査を経ていないというところから技術評価書というものを手段として用いることによりまして理想に近づいていく。そういう道を提供している。早期審査の制度によるよりも、むしろそういう理想に近づく1つの道というのが安定的に与えられるのではないかという理解もあり得るところだろうと思っております。
それから、3で、低コスト・簡便な保護ということで書かせていただいております。
後ろの別添2というのを御参照いただきますでしょうか。通しページで13ページになっておりますけれども、特許制度につきましては平成15年に今回出願料、審査請求料、特許料につきまして大幅な見直しをいたしておりまして、その計算によりますと、実用新案の権利の保護期間は6年で計算いたしますと、おおよそ26万5340円程度コストがかかるということになるわけでございます。
他方、実用新案につきましては、評価書請求なしでございますと12万9980円、評価書請求があった場合でも17万9580円ということで、特許制度よりはコストが低いものになっているということでございます。
8ページにお戻りいただきますと、したがいまして、権利侵害が問題になった場合に初めて権利の有効性について争えばよいと考えられる。そういう技術でございますとか、登録によって模倣を抑止できる。そういう技術につきましては、簡便な制度であります実用新案制度というのが出願人にとって一定の魅力を持っていると考えられのではないかということでございます。
それから、4で、自己責任による実用新案権の安定性ということで書かせていただいておりますが、やはり非常に不明確、先行技術の有無が必ずしも明確でない、事前の審査を経ておりませんので、そういう制度があって、そういう権利が市場に多数存在するということが非常に不安定性、市場の混乱を招くのではないかという懸念があり得るところでございます。
他方、新実用新案権に関する訴訟、あるいは無効審判の場合、割合は、旧実用新案権の割合とさして差がないということも言えるわけでございまして、これは登録後の訂正が請求項の削除しか認められていないということで、原則として、1回技術評価書で判断してしまえば、それで技術としては評価が終わってしまうということと、権利の有効性が当事者間で十分容易に判断できるということで、それの可能なことのあらわれとは言えないかということでございます。
それから、自己責任型の制度ということで設計されておりますので、やはり不適切な権利行使が抑えられるということで、弊害がともすると言われるわけでございますけれども、さほどそれについては大きなものとして評価をする必要は必ずしもないのではないかということが4でございます。
それから、5で、発明・考案保護制度の資源配分の最適化ということを書いてございます。実用新案法の利用が拡大いたしまして、その影響によりまして特許法の特許の審査対象になる件数が減少するということになって、現在、滞貨が蓄積しているわけでございますけれども、特許審査の迅速化に資するということになりますと、発明・考案の保護の制度全体、特許制度、実用新案制度を通して見た場合の全体の制度で見て、それの維持にかかる資源配分がより適正化・最適化されるということが言えるのではないか。少なくともいろいろな選択肢があるというのがよいのではないかというふうに考えております。
幾分観念論になるようなところもございますけれども、以上のようなポイントにつきましては引き続き実用新案制度の今日的な意義として言えるのではないかということでまとめさせていただきました。
10ページでございますが、仮に実用新案制度の意義が今日的にも存在しているということでありますならば、実用新案制度、いかんせん、今1万件未満の利用しかございませんので、その利用の拡大を目指しまして、より魅力的な制度に改定をしていく。そういうために、例えば以下のような事項について検討してはどうかということでございます。
1つは、権利を付与すべき対象でございます。これは平成5年の改正で有形物を拡大するというのを見送った経緯があるわけでございます。
他方、技術革新の進展が引き続いておりまして、いわゆる技術のソフト化が進展している今日におきまして、物品の形態的要件を充足していないといけないというのはやはり狭いのではないかという考え方もあり得るところでございましょうし、開発リードタイム、製品のライフサイクルが短いために早期実施が必要なものというのは必ずしも有形物の考案だけではないということも言えるのではないかということで御議論いただければありがたいと思っております。
それから、2でございますが、実用新案制度における権利の存続期間でございます。これは平成5年改正で6年ということで、かなり短くなったわけでございますけれども、平成4年以降にちなみに実用新案制度を改正した国、韓国、中国、台湾、アジアの近隣諸国、どこもみんな10年ということになっておりますし、たしかドイツも現在は10年になっているのではないかと思いますが、日本と同様の6年という保護期間の先進国はフランスだけであるということで、幾らライフサイクルが短いということはあっても、6年という権利の存続期間ではいかんせん短過ぎるのではないかということをどう考えるか、御議論いただければと思っております。
それから、3で特許制度との調整の在り方ということでございます。現在の実用新案制度、実用新案権として登録されるまで、ただし、出願日から3年以内でございますけれども、実用新案登録出願を特許出願に変更することが特許法46条に基づきまして可能でございます。他方、実際には変更が可能な登録までの期間というのは、先ほど申し上げましたように、通常5カ月程度でございますので、それを過ぎますと特許へのくらがえというのはできないわけでございまして、実質的には出願時点で特許か実用新案か、どちらをとるのか、二者択一が求められているということでございます。
他方、出願後の状況によりましては、特許による保護が必要となる場合もやっぱりあり得る。20年の保護を受けたいということ、あるいは訂正がございませんので、そういうところの制度の違いを利用したいというような場合、特許への変更をより柔軟に許容する。そういう制度を導入すること。あるいはその場合の補正のあり方につきまして検討をしてはいかがでしょうかという御提案でございます。
それから、その他の検討事項ということで、例えば実用新案権取得後、権利範囲の訂正ができないわけでございまして、制度が使いづらい。他方、訂正を認めるということになりますと、実際問題、第三者の監視負担を増加させるということにとどまらず、やはり自己責任に基づく無審査主義であるということの基本的な構造にかなりの大きな変換が来されてしまうのではないかという考え方もございますが、この辺をどう考えるかということ。訂正の許容範囲につきまして、例えば検討していただくというのもあるかもしれません。
12ページに進みますと、特許・実用新案制度比較ということで、先ほども見ていただきましたけれども、かなり制度が違っているところがございます。もちろん特許と同じにすると実用新案のメリットというのは何もなくなってしまうわけですけれども、この中で例えば見ていただいて、これ以外にも何か検討して、それによって実用新案制度の意義、今日的意義、あるいは魅力というものを高める方策のようなものがございましたら、それも含めて御提案いただければありがたいと考えております。
私からの説明は以上でございます。

自由討議

大渕座長

詳細で、かつ、わかりやすい説明をありがとうございました。
それでは、議論に入りたいと思います。まず、ただいまの御説明に関しまして御質問、御意見等がございましたらお願いいたします。

熊谷委員

非常にわかりやすく御説明いただいたと思いますが、幾つか御指摘というか、自分の意見も含めてお話をしたいと思います。第1に、今の御説明で、旧実用新案法と申し上げた方がいいと思うんですが、特許制度と類似の制度になっていたということですが、より正確には大正10年法までは特許制度と実用新案制度は保護対象も相違しており、釈迦に説法だと思いますが、実用新案の方は新規の型を保護するということになっていたと思います。ただ、実務的には型を保護するのか、考案を保護するのかということについていろいろと議論もあったので、昭和34年法において、特許と同様にしたというのが事実ではないかと思います。
第2に、御説明にもございましたように、平成5年に実用新案制度の大改正をして、従来特許と類似の制度だったものを新たな制度にしたというのは御指摘のとおりだと思います。当時、私も制度改正のお手伝いをさせていただいたのですが、はじめて無審査制度を導入するということで、権利濫用の弊害を非常に危惧する声が高く、個人的な意見かもしれませんが、権利濫用を抑制するための可能な手段をすべて採用したのが現在の実用新案制度ではないかと思います。
したがいまして、権利行使をするという際に、正当な権利行使をする場合でも足かせになっているようなものが現在の実用新案法には存在するのではないかということについて吟味する必要があるのではないかと思っております。
第3に、これからいろいろ御検討いただく中でまた御説明をいただけるかと思いますが、今回の御説明でも出てまいりましたように、ドイツの実用新案制度は非常に参考になるかと思います。過去、日本が実用新案制度を改正する場合も、ドイツの制度を参考にし、ドイツの制度と比較しながら検討をしたと思いますが、日本の場合はより権利行使をしにくくしたというと語弊がありますが、権利の濫用を防止するという観点で制度設計がされたことは事実ではないかと思います。
特に、これからは権利行使のことを考えると、権利行使の際に明らかな無効理由があれば裁判所で無効判断できるという、御承知のとおりキルビー特許の判決もありますので、権利濫用は何も制度設計だけではなくて、裁判所の運用においてもある程度は担保できるということもあるかと思います。
最後に、無効審判や訴訟の件数のお話もございましたが、確かに実用新案制度については、件数は少ないかと思うんですが、存続している権利数の割合で見れば、決して低くない数かもしれないと思います。また、逆にいうと数がある程度限られているということであれば、今後制度のあり方を議論するときに、その中で幾つか事例研究というか、ケーススタディをしてみると、どのように権利行使をしたり、または権利行使をする場合の弊害もある程度見えてくるのではないかと思います。
今回も、検討事項をわかりやすい形でおまとめいただいたと思いますが、特に権利行使という観点で現在の実用新案制度の規定を総合的に検討するということが必要ではないかと思います。
以上でございます。

大渕座長

ありがとうございました。
どうぞ。

長岡委員

どうも大変わかりやすい説明をありがとうございました。二点あります。
事務局ペーパーで指摘していないことで、私、疑問に思っています点は、プロパテント政策といいますか、知的財産権の強化政策の一貫で、特許に関して言いますと、余り進歩性がないものには特許を認めるべきではないとの方式になっていると思います。今回の特許制度小委員会の中の議論でもやはり審査は厳格にやってほしいと。早くだけではなくて、適正にやってほしいという要望が産業界からも強いと思います。翻って実用新案を見ますと、進歩性が十分でなくても、つまり小発明であっても実用新案は可能だということになっているわけで、これは特許制度との関係を考えたときに、これは実態の調査が必要だと思うんですけれども、場合によっては本来特許権が独占的に行使できるところが、実用新案制度があるために、クロスライセンスをしなくてはいけない、そういったケースが多いとすれば、実用新案制度によって小発明を保護することで特許保護の効果を弱める可能性もあると思います。
それがどの程度重要かは実証的な問題だと思いますが、先ほど熊谷先生からご指摘があったように、実用新案制度の権利行使は、特許では守られないけれども、実用新案であったからこそ付加価値があるところで本当に権利行使をされているのか、つまり両者は補完的なのか、それともとても特許にはならないような小発明を、しかも特許がたくさん取られているような分野で保護していることになると、むしろ進歩性が弱いというものを保護することで進歩性が強い発明の保護をを弱める結果となる危険性もあると思います。実際どちらが重要かというのは実証的な問題だと思いますが、この検討事項の中の特許制度との調整のあり方の中で、そうした観点の検討というのも重要かと思います。更に敷衍して申し上げますと、もし実用新案制度を改正する場合に、無審査制度にその特徴を見出して、進歩性の基準については特許とハーモナイゼーションするというのも1つの考え方ではないかなというふうに思いました。これが最初の点です。
2点目は質問なのですが、実用新案制度の現代的意義の再検討の中で、これはポジティブなところを書いていらっしゃると思いますが、本当にこういう効果が重要だとしたら、もっと実用新案というのはたくさん出願されるのじゃないかとも思います。しかし、実態は特許へと実用新案から大幅にシフトしてきているわけですので、ここに指摘されている点は、現状の制度的な問題で十分発揮されていなかったのか、あるいは過大評価しているかという疑問がわきます。実用新案制度から特許の方に移ってきたという現状を照らして考えると、こういう現代的な意義というのはどの程度本当に重要なのかがご質問です。

木村審議室長

確かに実用新案制度の現代的意義の再検討というところで書いておりますのは、やや先ほど私も申し上げたように、若干観念論的なところがまだあるというふうに思っておりまして、何ゆえこれほど使われていないのかということが必ずしも定量的に分析できているわけではないんです。もちろん無審査、事後審査という体系そのものに我が国の制度ユーザーの方が当時からなれていらっしゃらなかったというようなことがあるのかもしれませんし、それは自己責任型のこういう制度というのが必ずしも日本の、少なくともその当時の風土には定着していなかったというような見方もあるのかもしれないと思います。
あるいは技術評価書のあり方等々、技術的なところの使い勝手の悪さのようなものがあるのかもしれませんし、その辺はむしろ私どもとしても産業界の皆様方にもよくお聞かせいただいて、お知恵を拝借したいところだと思っております。

大渕座長

今、長岡委員からも実証的研究の必要性という点が出されておりましたが、先ほど長官からのお話にもありましたとおり、ユーザーフレンドリーというか、ユーザーにとって使い勝手がよいもの、ないしは、どういうものがふさわしいかという観点が本ワーキンググループでの検討においては非常に重要になってくるか思います。きょうは第1回でもございますので、今後いろいろ細かく分けて検討していくことになるかと思いますけれども、最初に、先ほど申し上げましたようなユーザー、ないしは潜在的なユーザーの方から、その観点からどういうふうな制度が望ましいのか、ないしは、現行制度についてはどのような点に使いづらい点があるのか等につきましてお話しいただくと、今後の検討の前提といたしまして大変有意義ではないかと思われます。そこで、そのような観点から潜在的なユーザーの方も含めまして御意見いただければと思っております。

戸田委員

日本知的財産協会の戸田です。
どうも御説明ありがとうございました。
先ほどの熊谷先生や長岡先生の御指摘というのは非常によくわかりまして、まず現代的意義の再検討というのは、実用新案制度を改正するとか、見直すというのが前提になっていますが、やめることも1つの選択肢ではないかと思います。知的財産推進計画の中では、審査官の増員等を図り、種々な質の高い審査を担保して審査を迅速化していくことが大きな柱になっています。日本の産業構造を変えて、国際競争力を高め、比較優位な知財立国を目指すというのは、産業界といいますか、知財協の加盟の企業から見ると、特許制度に一本化して、質の高い審査で他国をリードしていくことではないかと思います。そういったときに実用新案制度はどうあるべきかということを考えますと、歴史的な役割を終えているのではないかという気がしております。
ですから、基本的には実用新案制度を廃止して、特許制度に一本化して、かつ、迅速な質の高い審査をしていくというのが1つのあるべき姿ではないのかなと思います。
また、滞貨を少なくするためのダブルトラック化としての実用新案制度の活用というのは、極めて問題があると思いますし、無審査主義の弊害の観点から申しますと、保護対象を広げるとか、不安定な権利を増やすことは逆に色々な企業の経済活動を阻害することもあり得るのではないかという気がしております。
ですから、そもそも論になってしまうのかもしれませんが、基本的に実用新案制度を廃止することも含めて議論すべきではないかと考えております。
以上です。

石田委員

日本弁理士会でございます。弁理士会としては昨年度この実用新案について一応検討いたしまして、おおむね今御説明されたあたりについては弁理士会として同じような考えを持っております。ただ、若干の特許制度との調整のところですね。出願変更のところとか、それから訂正等については、もう少し詰めた議論をしていかないといけないのではないかというふうに考えております。
また、代理人として現場でどういうような事例があるかと申しますと、小企業や、個人の方が余り大したアイデアではないんですけれども、ということで、遠慮しながら、それでも、出願をしたいと言ってこられます。特許ほど大それたものではないので、いわゆる実用新案程度で何とかなりませんかと、そういう依頼というのは現実にまだたくさんございます。
ただ、そういったときに、従来からの、小発明は実用新案、大発明は特許という、そういう保護形態、またそれを審査を経て権利化するという制度はもう今はありませんよと。そういうことを御説明して、特許出願にするのか、もしくは、そういうことであれば、じゃ、やめますわ、というふうに選択されるか、その辺は現場ではいろいろあるかと思いますけれども、いまだに小発明を保護するものとしてクライアントとしては従来の実用新案制度をまだ引きずっている傾向があると思います。
それから、問題は権利行使のところです。先ほど評価書が1570件あって、実際の提訴が6件だと説明がありましたが、権利行使をする事例がこれだけしかないということについては、やはり何か権利自体に不確定要素があるというふうに権利者が思っているのかなと。この辺が問題かなというふうに思います。
それから、もう1つ、実際に先ほどの御説明の中になかったのは、現場としては、同じ対象物について、実用新案と特許と両方出願をするというケースが実用新案を出願するときには比較的多いのではないかなと思います。そういったことから、同一対象物について特許と実用新案と両方出ているようなケースも1度洗っていただけると参考になるかなというふうに思っております。
以上です。

臼井委員

経団連の臼井と申します。
今お話がございましたように、1つ、実用新案の活用が余り多くないというのは事実だと思いますけれど、日本の実用新案制度自身がいろんな課題を持っているのではないかと思います。この辺をこのワーキンググループで検討されればと思います。基本的には制度がある以上、この制度をよりよく活用するということも1つ必要ではないかなというふうに思っています。
例えば中国なども実用新案と特許は同時併願ができるというようなことで非常に活用ができるのではないかと思いますし、ドイツの実用新案制度も非常に活用されているところがあると思いますので、先ほどの委員の方もおっしゃったと思いますけれども、いろんな制度、各国の制度をもう1度もう少し調査していただいて、実用新案制度そのものの議論もあると思いますけれど、できましたら両方検討して、私の立場としてはこの制度をよりよく活用できるような制度ができればいいなと。それには、先ほども座長のお話もありましたように、どんな工夫があるかというようなスタンスで少し検討したらいかがかと思います。
以上です。

溝尾委員

船井電機ですけれど、当社は実用新案の出願が多い企業ということでここに招請されたと思っているんですけれども、特許庁の側から出していただきたい資料として、2001年の統計資料という冊子になっているものがあるのです。その中の1つがいい資料で、実用新案の出願に対するマトリックスの表があるんです。それはドイツとか、中国とか、実用新案制度がとられている国と、どこの国から出願されているかというのが一覧表になっているものです。
ただ、このデータが1999年なので、できれば、最新の2002年とかいうあたりのデータをもし特許庁でお持ちでしたら出していただきたいと思っています。
それと、新しい実用新案の出願件数の表も年次ごとのもっとわかりやすい形で出してもらいたい。例えば意匠との比較でいったら、意匠というのは3万9000件ぐらいしかないのです。それに比較したら実用新案というのは8700件ぐらいなので、比較してそれほど実用新案が今廃止の瀬戸際にあるのかどうかというところまで使われていない状態ではないとも考えられます。 それとも国際的な比較で見た場合、ドイツ、中国、韓国とかが多いんですね。ちょっと制度と異なる視点から見て、中国の場合は特許の審査が非常に遅いので、やむなく実用新案で対応している側面はあると思うんですよ。
それと、ドイツの場合は、特許法を変えることをこのWGで検討していいのかどうかわからないんですけれども、特許出願とか、あるいはEPOの出願から、その出願をそのまま残しておいて実用新案の出願ができるというような形をとっているのです。ドイツの制度はそういう点では非常にすぐれている制度なので、利用件数も日本より多い。2万2000件。これはドイツの特許出願との比較でいったらもっと大きな比率になると思うのです。そういう利点で利用されているのですが、ドイツに対する日本の出願は非常に少ない。それは日本の実用新案の制度設計が悪くて、使い勝手が悪いので、ドイツも恐らくそういう使い勝手が悪い制度だろうというふうなことで引っ張られているのではないかと思うのですね。
だから、実用新案制度がある国からはドイツに対する出願も多い。実用新案制度があって、使い勝手がいい国からはドイツに対する出願も多いというふうなことがあります。それともう1つは、実用新案制度の今日的な意義を考えるとき、当社はもう既に生産の8割ぐらいは海外で、中国の生産が非常に多いのです。今後中国から模倣品が大量に日本に輸入されるような事態があると思うのです。そのとき、企業としたら、いろいろな制度、特許制度、実用新案制度、意匠制度、商標制度、場合によったら著作権とかを活用して、模倣対策に当たらないといけないと思うんですけれども、実用新案制度がドイツのようにインターチェンジビリティーがものすごくいい制度であれば、これも1つ、そういう面で使える制度としての活用の側面はあるのではないかと思うのです。

吉田委員

タカラの吉田です。
きょうはユーザーの立場として多分何かを言えということだと思いますので、ざっくばらんにお話しさせていただきたいと思うんですけれども、先ほどの資料にありますように、実用新案の40%が生活用品であると。私どもおもちゃ屋なんですけれども、俗に言う川下産業ですよね。ですから、基本的な技術の発明そのものを私どもの産業界から生み出すということはまずないと思うんですよ。世の中に出てきた基本的な技術をいかに生活に関連した形で落とし込んでいくかというのが私どもの産業分野の仕事になるかと思うんですね。そういう意味で中小企業も非常に多い訳です。ですから、先ほどの実用新案の出願人の構成の中で45%が中小企業だということもうなずけます。
そういう意味で、先ほど実用新案制度を特許制度に組み入れたらどうかという御意見もありましたけれども、はっきり申し上げて本当に日本が知財立国を目指すのであるならば、まだ川下産業分野での技術をどう保護していくのか。その保護制度をどう使い勝手をよくしていくかということは非常に大事だと思うんですね。そういう意味からは、現行の実用新案制度は、財産価値を失っていると申しても過言ではありません。私どもユーザーの立場からすると、使い勝手が非常に悪い。結果として知的財産の財産価値を失ってしまっているのが現状です。
具体的にどういうことかといいますと、先ほど熊谷先生からお話がありましたように、権利の濫用の弊害を防ぐためにいろいろ仕組まれたんですけれども、どうもかえってそれが不活性化につながっているのではないかと思うんですね。最大のポイントはやはり技術評価書の扱いだと思うんですよ。御案内のとおり、評価(6)をとれば、先行技術がないという形にはなっているんですけれども、ただ、クレームの書き方いかんで、ありふれた考案であってもがちがちのクレームをつくれば、現状では(6)になりますよね、大体。そこが一番問題になってきてます。評価(6)をとれる考案というのは、本来的には、特許にも転用できるレベルのものが基本的には多くて良いはずですが、本来の趣旨からずれたかたちで運用されていることです。更に制度上、使い勝手をよくするためには評価1、2に属する考案の扱いと評価の仕方を検討する必要があります。極めて容易に考案できる。先行技術はまたがっている。しかし、有用な商品になりうる考案について無審査であるがためにここを切り抜けて、結果的に訴訟にたえられるような強い権利をつくることができない。逆説的に言えば、出願段階で無効審判請求に匹敵するほどの調査を行って、絶対にいけるよというクレーム構成をとっていければいいんですけれども、これは申しわけないんですが、出願人の負担が余りにも大き過ぎて、1件1件そういうことはやっていられない。ある程度ならした先行技術調査で出願していくしかない。あとは、申しわけないですけれど、国の費用と労力で絞り込んで強い権利にしていきたいということになると思うんですけれど、ここの評価書の扱い、水準をどう高めるか、また登録後の訂正や分割の機会が得られないのかという実態論で私はぜひここも論議していただきたいと思います。現行どういう形でなさっているかわかりませんけれども、技術評価書については、今相当質的には下がっているかなと。先行技術の漏れが相当出ているなと。そうすると、ユーザーサイドとしてはうかつに権利行使に踏み切れない。評価(6)をもらったんだけれども、使う前にもう1回自分の権利を再精査しないといけない。当然のことながら自己責任ですから、それはやらなければいけないんですけれども、この負担というのはかなり大きいですね。
ただ、先ほど申し上げましたように、私ども川下産業としては、やはり中国の模倣品との対応で勝たなければいけませんので、日本国内市場で中国製品をはんらんさせないという手だてがどうしても必要になってきます。そのためにはやはり5カ月で権利がおりる。これは非常に魅力的です。そこに6評価というものが得られれば、私どもが今、実際に運用していますのは、特・実同時に出願し、まず実用新案権を取得して、発売直後に出てくる中国製の模倣品の排除に当ります。大体これは効果が出ています。1年経過後に特許がおりてきますので、特許がおりるまでのつなぎとしての実用新案による、模倣品排除のパトリオットですかね。迎撃ミサイルに使うというのが現状のやり方なんですね。
不幸にも評価(6)をとれないケースは、非常につらくなってくるので、不正競争防止法を使わざるを得ないのですけれども、彼らも利口ですから実際の排除は難しいものがあります。御案内のとおり、市場ではんらんしている模倣品は、中国のメーカーが単独で日本へ入れてくるのではなく、日本の悪質な流通業者や地下組織が彼らと結託して、日本で売れている品物情報を中国に持っていき、そこでつくらせて、彼らがそれを引いてくるという構図をとっていますので逃げ足も巧妙ですから、早急に効く権利形態をどうしても欲しいというのが私ども川下産業の実態です。
そういう意味でまだまだ現在の実用新案制度をもう少し実態に即した形で使い勝手のいい、権利制度に変えていただければと思います。そういう視点からポイントは技術評価書の上がりを、例えばですけれども、どの程度精度を上げていただけるのか、いけばいいのかというところも検討の余地があるのでは、と思います。
以上です。

尾形委員

JEITAの尾形ですけれども、平成5年に改正されて、その当時は7万7000件、この資料にもございますけれども、現在2002年で8000件というように非常にドラスチックに減ってきたわけですけれども、それはJEITAに加盟されている――船井さんもそうですけれども――メーカーの目から見ると、私自身が大企業というか、大きい会社にいる関係かもしれませんけれども、うちでもやっていないわけです。実用新案の出願を非常に減らしているわけです。減らしているというよりほとんどないわけですけれども、なぜ減らしたのかというのを分析していくと、やはり使い勝手が悪いというのが一番の原因だと思うんですけれども、使い勝手が悪いからといって、それしかなければ使わざるを得ないわけですけれども、かわりに特許制度がある。そちら側ですべてカバーできるということであれば、制度自体なくてもやっていけるぞということがございまして、その辺の大きいところの会社が考える行動パターンと中小企業の方が考える行動パターン、あるいは個人が考える行動パターン、いろいろあろうかと思いますけれども、それが制度的なものでそういうふうになっているのか、あるいは制度自体不要になったからそうなのかというのは実態調査等をやらないとわからないのではないかと。
私自身もJEITAの方でやっていますけれども、皆さんそれぞれのコメント、あるいは意見等あるわけで、それを1つにまとめるというのは難しいんでしょうけれども、実態がこうなっているというのをまず分析することがやはり必要なのかなと。そういった実態に即して制度自体が不要なら不要で、そちらの話をする必要があるでしょうし、そうではなくて、やはり必要だということであれば、制度設計をもう少し変えて使い勝手をよくしていくというような検討が必要であろうというふうに思います。

志村委員

松下電器の志村と申します。
当社の場合もまさに資料1の1ページ目ですか、表1にあるとおりの実用新案の傾向を多分示してしまいまして、平成5年に法律が変わったとき、いろいろ議論しまして、それで費用に対する、実用新案というのは費用が安いんですけれども、それに対するデメリットといいますか、それが多分表の後ろにまとめていただいた権利期間、あるいは評価書という、要するに登録になると本来特許庁のお墨つきを与えていただけるわけですね。それがどうも評価書というニュアンスからお墨つきではなくなって、出願人側の責任が非常に出てきた。
ちょっと蛇足になってしまいますけれど、私はこの評価書というのは、あんまり私どもは出願していないので、内容をよく見ていないんですけれども、何かすごく評価自体がアナログ的になってしまっているんですかね。よくわかりませんけれど、例えば登録になっているか、だめだったかというと、非常に2値的、デジタル的にオンかオフ的、進歩性なし、新規性なし、あるいは先行技術が見つからなかった。その間の4、5とか、そういう数字が間にあるんですかね。その辺がアナログ的なのかなと。そうすると、出願人側としてはそういう評価をされるとちょっと困ってしまうのではないのかなということがあるんだろうと思うんですね。
もとに戻りまして、もう1つ、その辺が実用新案のデメリットがあるのかなと。最近私どもも物の形状というか、ソフト的なものの出願が非常に多くなってきておりますので、それから考えますと、実用新案が出そうと思っても、保護範囲が非常に狭いというんですかね。ソフトなり、方法的なものがある程度認められないと、クレームをつくっていく上でも、あるいは考案なり、発明をまとめていく上でも非常にやりづらい実態があると思うんですね。
ここでずっと書かれていた、特に7ページなんですけれども、そこの下に図が出ていまして、ライフサイクルの短縮化ということで、多分私どもの業界だと家電機器に入るんですかね。1年ぐらいなんですね。1年ぐらい……、ここまで短いかなという感じもするんですけれど、まあ言われてみればそういうところもあるのかなという雰囲気もするんですけれど、ここに書いてある製品のライフサイクルが非常に短くなったから、これで保護したらどうですかという話が趣旨であると思うんですけれどね。この文書の中にあると思うんですけれども、例えば1年ぐらいのライフサイクルしかないものに対して、権利を取得して、5カ月ぐらいである意味で実用新案で権利付与されると思うんですけれども、それに対して相手にぶつけて、警告なり、催告して、実際は警告、催告して相手が、すぐ、うん、そうですね、申しわけありませんでしたなんていうことはなくて、相手と話し合いの中で1年以上は簡単にたってしまうんですね。
実際はそういう意味では、その辺のライフサイクルが短い権利を取得しても、要は相手が警告したら、設計変更、いろんなものをやってしまうということがあって、企業としてはライフサイクルの、例えば電器業界で1年しか使わないものを決して権利で取得したいなんていう発想が実はないだろうと思うんですね。多くの場合はそれなりの権利期間、要するに権利行使できる技術のものを権利化して、それで使っていきたいということだろうと思うんです。
ほかの業界さんは多分平均でいくと8年とか11年とかうらやましい数字が出ているんですけれども、こういうところは実用新案の意味があるのかなという感じもしますけれども、私ども電器業界でライフサイクルの非常に少ない技術についてどんどん出願してくれと言われても、多分ないのではないのかなと。そういう出願は多分しないのではないのかなという気がいたします。
以上です。

大渕座長

ほかにどなたかからございませんか。

吉田委員

今の話を受けてという話でもないんですけれども、私どもの商品のライフサイクルは大体半年から1年です。1年続くものはあんまりありません。大体年末のクリスマス商戦を目がけて商品を出していく。クリスマス商戦が終われば大体終わっていくというケースが多いんですね。
その中で、私ども定番商品と言っているんですけれども、例えばリカちゃん人形とか、最近テレビに出ている人生ゲームとか、この種のものは20年、30年と続けているわけなんですけれども、やはり5カ月、6カ月で権利を取得して、高々半年ぐらいの商品、どうするんだという話については、日本国内の模倣品の場合、1つは、水道のコックをとめれば一番よろしいんですが、まずは流れる水をとめないといけませんのでね。流通業界そのものはやはり評価書(6)の実用新案権であれば、大体大手の流通業者さんは取り扱わない。当然そこに付随する問屋、その他の流通業者についてもそれに倣ってくる。ですから、通常の流通形態ではまず流通が扱いませんのでね。模倣商品が流れませんから。あと、模倣品業者がやるとすれば、露天商とか、縁日とか、その辺で売るしかなくなるというのが現状なのですね。
それが1つと、それから20年、30年続く商品も私どものこういう娯楽商品にはあるんですけれども、何年かごとにサイクルすると思うんですね。大体私ども3年から4年ぐらいなんですけれども、繰り返していくんですよ。そこに高々6カ月ぐらいのライフサイクルの商品であっても、15年の特許を取っていく意味が1つありますし、それから何よりも商品の導入段階で模倣品でつぶされてしまいますと、20年、30年の商品寿命の可能性の芽を摘みとられてしまう。ですから、導入段階で新製品をプロテクトするという意味は、将来の20年、30年先の商品寿命の根をそこで保護するというんですかね。そういう意味での有用性があるということと、この実用新案制度と特許制度の使い分け、すみ分けというのは現実として効果的に併存しているのではないのかなという具合に思います。
以上です。

戸田委員

資料の4ページに実用新案制度の出願比率ということで外国人と内国の出願人の比が出ています。これをもうすこし分析する必要があるのではないかなと思います。これだけ外国人の比率がふえているということは、逆に外国人が日本で無審査の新実用新案登録を取っているわけです。それは権利行使も想定しているかもしれない。ですから、先ほど権利濫用や無審査登録の弊害のお話がありましたけれど、これはやはり国内産業活動をやっている者にとって、1つの脅威ではないかなと思います。
制度的に、国内と国外で差別するわけにはいきませんので、当然日本の出願人が登録しやすい制度は外国の人も登録しやすいわけです。外国の人が不安定な権利をいっぱい取ってしまって権利行使が増え、逆に国内産業が何らかの影響を受けるのであれば、それは考えなければいけないファクターではないのかなと思います。
それで、急ぎ、中国の状況を中国の現地に調べてもらいましたけれど、中国は今9万3000件実用新案で出願があると聞いています。そのうちの9万2000件が中国の国内の出願人だということです。ですから、外国からの利用はほとんどない。これは多分コストと時間の観点で中国の方は使っているんだろうということです。ですから、中国の場合と日本の場合では、同じ無審査の実用新案制度ではありますが、使われ方が異なるということです。
やはり制度設計をする場合に、どういった形で権利を付与して、どういう形で行使されるのか、内国人と外国人の比率がどのくらいになっていくのかということもある程度想定しておく必要があるのかなという気がしています。
以上です。

熊谷委員

今のお話を否定するつもりは毛頭ありませんし、私がどうこう言うことではないと思うのですが、あくまで日本の現在の特許制度が正常に機能しているのかというような言い方をすると失礼かと思いますが、内国人出願比率がきわめて高いのは日本だけであると思います。米国でも半数近くは外国から特許出願されているわけでして、特許と比べ外国人比率が高いから、制度が機能していないということにはならないと思いますし。また、中国の実用新案制度は、言葉は悪いですが、日本の明治38年当時の実用新案制度と同じ趣旨のものであり、特許制度との間には相当な違いがあるため、中国人の方が実用新案を選択しているといえるのではないかと思いますので、それを現在の我が国の実用新案制度と単純に比較することには余り意味がないのではないかと思います。
各委員のお話を聞いていて、中国からの模倣品対策等々で、どうしても特許制度では対応し切れない問題があったり、半年、1年のライフサイクルのものであっても、やはり権利を取得していることによって相当な抑止効果があるようなものは特許制度ではうまく対応できないと思いますし、特許制度がいかにうまく機能したとしても、実用新案の存在意義も私はあるのではないかと思いますが、ユーザーの方々の御意見を伺っていて特に思いました。
以上です。

大渕座長

ほかにどなたかございませんか。

尾形委員

存在意義はちょっとおくとして、10ページ目で検討事項ということで、最初に権利を付与すべき対象ということで、ソフトウエアのことを多分これは触れているのだと思いますけれども、ソフトウエア自体はアプリケーション等でやれば著作権等当然発生しているわけで、それは保護できるということもありますし、仮にソフトウエアに含まれるアイデアをカバーしようということであれば、当然特許法でカバーできるわけでございまして、何も実用新案でカバーする必要はないであろうという考え方もございますので、権利を付与すべき対象をどこまでにするのかというのは慎重に検討する必要があるのかなと思います。

大渕座長

きょうは第1回でございますので、どの点からでも結構ですので、どなたかございませんか。
事務局で御準備された資料において、検討事項案として、配付資料の10ページ、11ページでその他というのも含めまして4点ほど挙げておられるのですが、この検討事項につきまして、ほかにこの点を加えるべきではないか、ないしはこの点はもう少し別の面も加味すべきではないかといった点から御意見をいただけますと、今後の検討事項等を設定していく上で大変参考になりますので、この観点から御意見をお願いいたします。

石田委員

先ほども若干申し上げましたけれども、同一対象について同一名義人の特許と実用新案が並存するようなケースに関して、細かい話になるかもしれませんけれども、その辺については39条の適用等を緩和するというか、そういったことも御検討いただければと思います。

大渕座長

今の点に関連してでもその他の点でも結構でございますので、ほかにどなたかございませんか。
では、事務局の方から御説明がありますので。

木村審議室長

いろいろと貴重な御意見をいただきまして改めて事務局でまた整理をさせていただきまして、いただいたポイントでケーススタディでございますとか、あるいは諸外国との制度比較、特にドイツとかその辺につきましても、今後でき得る範囲で詳細に調べて出していきたいと思います。
それから、先ほど御説明をいたしませんでしたけれども、参考資料の資料2でございますけれども、参考資料3というのがございまして、これで実用新案制度に関するアンケートをとらせていただくということで、知的財産研究所さんに委託をさせていただいて、大企業、中小企業、個人を含む幅広い対象、必ずしも実用新案を現在は御活用されていないようなところにつきましても、なぜ活用されていないのかというような点につきまして、やはり私ども当然手元にまだ十分なデータがそろっておりませんので、それについても調べさせていただいて、日程的には9月に開催させていただく予定のワーキンググループにおきまして、その結果が報告できればいいかなというふうに考えているところでございます。
制度、廃止論も含めて検討するべきだというような御議論もございましたし、必ずしも結果について現段階ですべて予断を持つということではないんですけれども、やはり特許制度全体の中で特許、実用新案を全体で見て、そこで本当に我が国の競争力をトータルとして高まるような制度を目指すということで、実用新案制度そのものが国際競争力に直結するということはやや考えにくいのかもしれませんけれども、トータルで見て、やはりそこのところのとらえ方といいますか、全体で把握をする必要があるような気もしておりますし、今の審査が非常に滞貨が蓄積しているというような状況もございますので、そういうことも私どもとしてはどうしても考慮しなければいけない。そういう要素もあるとは思うんですけれども、今後引き続きそれについても個別に議論させていただく過程におきまして、できるだけ詳細なケースですとか、データですとか、諸外国との制度比較も含めまして出していきたいというふうに思っております。

大渕座長

今、次回以降について事務局の方で御準備等される点等につきまして御説明がありましたが、その点も含めて、ほかの点でも結構ですが、第1回ということで、最初に御意見をお聞きしたいと思いますが、何かございましたら。

臼井委員

先ほどちょっとお話しさせていただいたんですけれど、確かに現在の実用新案の制度、やっぱり使いにくい点がいろいろございます。その辺をもう少し工夫されたら、逆にもっと使えるのではないかと。
これは私の個人的な見解でございますけれど、必ずしも特許出願しなくて、実用新案の出願をしておくということも今後あり得るのではないか。ただ、現時点の実用新案はちょっと使いにくいというのは皆さん一致していることではないかと思いますので、その辺も含めて、もちろん制度そのものも特許、実用新案、本当に2つ必要なのかということもありますけれど、現状の使いにくさ、それを踏まえて先ほどのいろんな国の調査をしていただいて、現時点で使いづらいんですけれど、もう少し使いよくたらもっと使えるのではないかということも1つ観点に入れて進めていただければと思います。議論の中でどちらの方向にいくかは、これは皆さんの議論だと思いますけれど、ひとつそういう観点で検討していただいたらというふうに思います。
以上です。

大渕座長

ほかにどなたかございませんか。

閉会

大渕座長

それでは、活発な御意見ありがとうございました。
先ほどありましたように、ケーススタディや諸外国との比較等につきましては事務局の方ででき得る限り資料等を御準備されるということでありますし、また、本日委員の方々からいただきました御意見につきましては事務局の方で整理して、次回以降の審議に反映していくようにしていただきます。
それでは、最後になりましたけれども、次回のワーキンググループについての事務連絡をお願いいたします。

木村審議室長

次回のワーキンググループでございますけれども、委員の皆様の御予定を伺いながら、候補日についてまた改めて御連絡をさせていただく所存でございますので、よろしくお願い申し上げます。

大渕座長

次回以降の日程につきましては、御予定を伺って確定した上で、御連絡いたします。
では、皆様、本日はお忙しい中、活発なご議論をどうもありがとうございました。

――了――

[更新日 2003年8月14日]

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