大渕座長
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詳細で、かつ、わかりやすい説明をありがとうございました。
それでは、議論に入りたいと思います。まず、ただいまの御説明に関しまして御質問、御意見等がございましたらお願いいたします。
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熊谷委員
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非常にわかりやすく御説明いただいたと思いますが、幾つか御指摘というか、自分の意見も含めてお話をしたいと思います。第1に、今の御説明で、旧実用新案法と申し上げた方がいいと思うんですが、特許制度と類似の制度になっていたということですが、より正確には大正10年法までは特許制度と実用新案制度は保護対象も相違しており、釈迦に説法だと思いますが、実用新案の方は新規の型を保護するということになっていたと思います。ただ、実務的には型を保護するのか、考案を保護するのかということについていろいろと議論もあったので、昭和34年法において、特許と同様にしたというのが事実ではないかと思います。
第2に、御説明にもございましたように、平成5年に実用新案制度の大改正をして、従来特許と類似の制度だったものを新たな制度にしたというのは御指摘のとおりだと思います。当時、私も制度改正のお手伝いをさせていただいたのですが、はじめて無審査制度を導入するということで、権利濫用の弊害を非常に危惧する声が高く、個人的な意見かもしれませんが、権利濫用を抑制するための可能な手段をすべて採用したのが現在の実用新案制度ではないかと思います。
したがいまして、権利行使をするという際に、正当な権利行使をする場合でも足かせになっているようなものが現在の実用新案法には存在するのではないかということについて吟味する必要があるのではないかと思っております。
第3に、これからいろいろ御検討いただく中でまた御説明をいただけるかと思いますが、今回の御説明でも出てまいりましたように、ドイツの実用新案制度は非常に参考になるかと思います。過去、日本が実用新案制度を改正する場合も、ドイツの制度を参考にし、ドイツの制度と比較しながら検討をしたと思いますが、日本の場合はより権利行使をしにくくしたというと語弊がありますが、権利の濫用を防止するという観点で制度設計がされたことは事実ではないかと思います。
特に、これからは権利行使のことを考えると、権利行使の際に明らかな無効理由があれば裁判所で無効判断できるという、御承知のとおりキルビー特許の判決もありますので、権利濫用は何も制度設計だけではなくて、裁判所の運用においてもある程度は担保できるということもあるかと思います。
最後に、無効審判や訴訟の件数のお話もございましたが、確かに実用新案制度については、件数は少ないかと思うんですが、存続している権利数の割合で見れば、決して低くない数かもしれないと思います。また、逆にいうと数がある程度限られているということであれば、今後制度のあり方を議論するときに、その中で幾つか事例研究というか、ケーススタディをしてみると、どのように権利行使をしたり、または権利行使をする場合の弊害もある程度見えてくるのではないかと思います。
今回も、検討事項をわかりやすい形でおまとめいただいたと思いますが、特に権利行使という観点で現在の実用新案制度の規定を総合的に検討するということが必要ではないかと思います。
以上でございます。
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大渕座長
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ありがとうございました。
どうぞ。
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長岡委員
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どうも大変わかりやすい説明をありがとうございました。二点あります。
事務局ペーパーで指摘していないことで、私、疑問に思っています点は、プロパテント政策といいますか、知的財産権の強化政策の一貫で、特許に関して言いますと、余り進歩性がないものには特許を認めるべきではないとの方式になっていると思います。今回の特許制度小委員会の中の議論でもやはり審査は厳格にやってほしいと。早くだけではなくて、適正にやってほしいという要望が産業界からも強いと思います。翻って実用新案を見ますと、進歩性が十分でなくても、つまり小発明であっても実用新案は可能だということになっているわけで、これは特許制度との関係を考えたときに、これは実態の調査が必要だと思うんですけれども、場合によっては本来特許権が独占的に行使できるところが、実用新案制度があるために、クロスライセンスをしなくてはいけない、そういったケースが多いとすれば、実用新案制度によって小発明を保護することで特許保護の効果を弱める可能性もあると思います。
それがどの程度重要かは実証的な問題だと思いますが、先ほど熊谷先生からご指摘があったように、実用新案制度の権利行使は、特許では守られないけれども、実用新案であったからこそ付加価値があるところで本当に権利行使をされているのか、つまり両者は補完的なのか、それともとても特許にはならないような小発明を、しかも特許がたくさん取られているような分野で保護していることになると、むしろ進歩性が弱いというものを保護することで進歩性が強い発明の保護をを弱める結果となる危険性もあると思います。実際どちらが重要かというのは実証的な問題だと思いますが、この検討事項の中の特許制度との調整のあり方の中で、そうした観点の検討というのも重要かと思います。更に敷衍して申し上げますと、もし実用新案制度を改正する場合に、無審査制度にその特徴を見出して、進歩性の基準については特許とハーモナイゼーションするというのも1つの考え方ではないかなというふうに思いました。これが最初の点です。
2点目は質問なのですが、実用新案制度の現代的意義の再検討の中で、これはポジティブなところを書いていらっしゃると思いますが、本当にこういう効果が重要だとしたら、もっと実用新案というのはたくさん出願されるのじゃないかとも思います。しかし、実態は特許へと実用新案から大幅にシフトしてきているわけですので、ここに指摘されている点は、現状の制度的な問題で十分発揮されていなかったのか、あるいは過大評価しているかという疑問がわきます。実用新案制度から特許の方に移ってきたという現状を照らして考えると、こういう現代的な意義というのはどの程度本当に重要なのかがご質問です。
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木村審議室長
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確かに実用新案制度の現代的意義の再検討というところで書いておりますのは、やや先ほど私も申し上げたように、若干観念論的なところがまだあるというふうに思っておりまして、何ゆえこれほど使われていないのかということが必ずしも定量的に分析できているわけではないんです。もちろん無審査、事後審査という体系そのものに我が国の制度ユーザーの方が当時からなれていらっしゃらなかったというようなことがあるのかもしれませんし、それは自己責任型のこういう制度というのが必ずしも日本の、少なくともその当時の風土には定着していなかったというような見方もあるのかもしれないと思います。
あるいは技術評価書のあり方等々、技術的なところの使い勝手の悪さのようなものがあるのかもしれませんし、その辺はむしろ私どもとしても産業界の皆様方にもよくお聞かせいただいて、お知恵を拝借したいところだと思っております。
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大渕座長
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今、長岡委員からも実証的研究の必要性という点が出されておりましたが、先ほど長官からのお話にもありましたとおり、ユーザーフレンドリーというか、ユーザーにとって使い勝手がよいもの、ないしは、どういうものがふさわしいかという観点が本ワーキンググループでの検討においては非常に重要になってくるか思います。きょうは第1回でもございますので、今後いろいろ細かく分けて検討していくことになるかと思いますけれども、最初に、先ほど申し上げましたようなユーザー、ないしは潜在的なユーザーの方から、その観点からどういうふうな制度が望ましいのか、ないしは、現行制度についてはどのような点に使いづらい点があるのか等につきましてお話しいただくと、今後の検討の前提といたしまして大変有意義ではないかと思われます。そこで、そのような観点から潜在的なユーザーの方も含めまして御意見いただければと思っております。
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戸田委員
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日本知的財産協会の戸田です。
どうも御説明ありがとうございました。
先ほどの熊谷先生や長岡先生の御指摘というのは非常によくわかりまして、まず現代的意義の再検討というのは、実用新案制度を改正するとか、見直すというのが前提になっていますが、やめることも1つの選択肢ではないかと思います。知的財産推進計画の中では、審査官の増員等を図り、種々な質の高い審査を担保して審査を迅速化していくことが大きな柱になっています。日本の産業構造を変えて、国際競争力を高め、比較優位な知財立国を目指すというのは、産業界といいますか、知財協の加盟の企業から見ると、特許制度に一本化して、質の高い審査で他国をリードしていくことではないかと思います。そういったときに実用新案制度はどうあるべきかということを考えますと、歴史的な役割を終えているのではないかという気がしております。
ですから、基本的には実用新案制度を廃止して、特許制度に一本化して、かつ、迅速な質の高い審査をしていくというのが1つのあるべき姿ではないのかなと思います。
また、滞貨を少なくするためのダブルトラック化としての実用新案制度の活用というのは、極めて問題があると思いますし、無審査主義の弊害の観点から申しますと、保護対象を広げるとか、不安定な権利を増やすことは逆に色々な企業の経済活動を阻害することもあり得るのではないかという気がしております。
ですから、そもそも論になってしまうのかもしれませんが、基本的に実用新案制度を廃止することも含めて議論すべきではないかと考えております。
以上です。
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石田委員
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日本弁理士会でございます。弁理士会としては昨年度この実用新案について一応検討いたしまして、おおむね今御説明されたあたりについては弁理士会として同じような考えを持っております。ただ、若干の特許制度との調整のところですね。出願変更のところとか、それから訂正等については、もう少し詰めた議論をしていかないといけないのではないかというふうに考えております。
また、代理人として現場でどういうような事例があるかと申しますと、小企業や、個人の方が余り大したアイデアではないんですけれども、ということで、遠慮しながら、それでも、出願をしたいと言ってこられます。特許ほど大それたものではないので、いわゆる実用新案程度で何とかなりませんかと、そういう依頼というのは現実にまだたくさんございます。
ただ、そういったときに、従来からの、小発明は実用新案、大発明は特許という、そういう保護形態、またそれを審査を経て権利化するという制度はもう今はありませんよと。そういうことを御説明して、特許出願にするのか、もしくは、そういうことであれば、じゃ、やめますわ、というふうに選択されるか、その辺は現場ではいろいろあるかと思いますけれども、いまだに小発明を保護するものとしてクライアントとしては従来の実用新案制度をまだ引きずっている傾向があると思います。
それから、問題は権利行使のところです。先ほど評価書が1570件あって、実際の提訴が6件だと説明がありましたが、権利行使をする事例がこれだけしかないということについては、やはり何か権利自体に不確定要素があるというふうに権利者が思っているのかなと。この辺が問題かなというふうに思います。
それから、もう1つ、実際に先ほどの御説明の中になかったのは、現場としては、同じ対象物について、実用新案と特許と両方出願をするというケースが実用新案を出願するときには比較的多いのではないかなと思います。そういったことから、同一対象物について特許と実用新案と両方出ているようなケースも1度洗っていただけると参考になるかなというふうに思っております。
以上です。
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臼井委員
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経団連の臼井と申します。
今お話がございましたように、1つ、実用新案の活用が余り多くないというのは事実だと思いますけれど、日本の実用新案制度自身がいろんな課題を持っているのではないかと思います。この辺をこのワーキンググループで検討されればと思います。基本的には制度がある以上、この制度をよりよく活用するということも1つ必要ではないかなというふうに思っています。
例えば中国なども実用新案と特許は同時併願ができるというようなことで非常に活用ができるのではないかと思いますし、ドイツの実用新案制度も非常に活用されているところがあると思いますので、先ほどの委員の方もおっしゃったと思いますけれども、いろんな制度、各国の制度をもう1度もう少し調査していただいて、実用新案制度そのものの議論もあると思いますけれど、できましたら両方検討して、私の立場としてはこの制度をよりよく活用できるような制度ができればいいなと。それには、先ほども座長のお話もありましたように、どんな工夫があるかというようなスタンスで少し検討したらいかがかと思います。
以上です。
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溝尾委員
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船井電機ですけれど、当社は実用新案の出願が多い企業ということでここに招請されたと思っているんですけれども、特許庁の側から出していただきたい資料として、2001年の統計資料という冊子になっているものがあるのです。その中の1つがいい資料で、実用新案の出願に対するマトリックスの表があるんです。それはドイツとか、中国とか、実用新案制度がとられている国と、どこの国から出願されているかというのが一覧表になっているものです。
ただ、このデータが1999年なので、できれば、最新の2002年とかいうあたりのデータをもし特許庁でお持ちでしたら出していただきたいと思っています。
それと、新しい実用新案の出願件数の表も年次ごとのもっとわかりやすい形で出してもらいたい。例えば意匠との比較でいったら、意匠というのは3万9000件ぐらいしかないのです。それに比較したら実用新案というのは8700件ぐらいなので、比較してそれほど実用新案が今廃止の瀬戸際にあるのかどうかというところまで使われていない状態ではないとも考えられます。 それとも国際的な比較で見た場合、ドイツ、中国、韓国とかが多いんですね。ちょっと制度と異なる視点から見て、中国の場合は特許の審査が非常に遅いので、やむなく実用新案で対応している側面はあると思うんですよ。
それと、ドイツの場合は、特許法を変えることをこのWGで検討していいのかどうかわからないんですけれども、特許出願とか、あるいはEPOの出願から、その出願をそのまま残しておいて実用新案の出願ができるというような形をとっているのです。ドイツの制度はそういう点では非常にすぐれている制度なので、利用件数も日本より多い。2万2000件。これはドイツの特許出願との比較でいったらもっと大きな比率になると思うのです。そういう利点で利用されているのですが、ドイツに対する日本の出願は非常に少ない。それは日本の実用新案の制度設計が悪くて、使い勝手が悪いので、ドイツも恐らくそういう使い勝手が悪い制度だろうというふうなことで引っ張られているのではないかと思うのですね。
だから、実用新案制度がある国からはドイツに対する出願も多い。実用新案制度があって、使い勝手がいい国からはドイツに対する出願も多いというふうなことがあります。それともう1つは、実用新案制度の今日的な意義を考えるとき、当社はもう既に生産の8割ぐらいは海外で、中国の生産が非常に多いのです。今後中国から模倣品が大量に日本に輸入されるような事態があると思うのです。そのとき、企業としたら、いろいろな制度、特許制度、実用新案制度、意匠制度、商標制度、場合によったら著作権とかを活用して、模倣対策に当たらないといけないと思うんですけれども、実用新案制度がドイツのようにインターチェンジビリティーがものすごくいい制度であれば、これも1つ、そういう面で使える制度としての活用の側面はあるのではないかと思うのです。
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吉田委員
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タカラの吉田です。
きょうはユーザーの立場として多分何かを言えということだと思いますので、ざっくばらんにお話しさせていただきたいと思うんですけれども、先ほどの資料にありますように、実用新案の40%が生活用品であると。私どもおもちゃ屋なんですけれども、俗に言う川下産業ですよね。ですから、基本的な技術の発明そのものを私どもの産業界から生み出すということはまずないと思うんですよ。世の中に出てきた基本的な技術をいかに生活に関連した形で落とし込んでいくかというのが私どもの産業分野の仕事になるかと思うんですね。そういう意味で中小企業も非常に多い訳です。ですから、先ほどの実用新案の出願人の構成の中で45%が中小企業だということもうなずけます。
そういう意味で、先ほど実用新案制度を特許制度に組み入れたらどうかという御意見もありましたけれども、はっきり申し上げて本当に日本が知財立国を目指すのであるならば、まだ川下産業分野での技術をどう保護していくのか。その保護制度をどう使い勝手をよくしていくかということは非常に大事だと思うんですね。そういう意味からは、現行の実用新案制度は、財産価値を失っていると申しても過言ではありません。私どもユーザーの立場からすると、使い勝手が非常に悪い。結果として知的財産の財産価値を失ってしまっているのが現状です。
具体的にどういうことかといいますと、先ほど熊谷先生からお話がありましたように、権利の濫用の弊害を防ぐためにいろいろ仕組まれたんですけれども、どうもかえってそれが不活性化につながっているのではないかと思うんですね。最大のポイントはやはり技術評価書の扱いだと思うんですよ。御案内のとおり、評価(6)をとれば、先行技術がないという形にはなっているんですけれども、ただ、クレームの書き方いかんで、ありふれた考案であってもがちがちのクレームをつくれば、現状では(6)になりますよね、大体。そこが一番問題になってきてます。評価(6)をとれる考案というのは、本来的には、特許にも転用できるレベルのものが基本的には多くて良いはずですが、本来の趣旨からずれたかたちで運用されていることです。更に制度上、使い勝手をよくするためには評価1、2に属する考案の扱いと評価の仕方を検討する必要があります。極めて容易に考案できる。先行技術はまたがっている。しかし、有用な商品になりうる考案について無審査であるがためにここを切り抜けて、結果的に訴訟にたえられるような強い権利をつくることができない。逆説的に言えば、出願段階で無効審判請求に匹敵するほどの調査を行って、絶対にいけるよというクレーム構成をとっていければいいんですけれども、これは申しわけないんですが、出願人の負担が余りにも大き過ぎて、1件1件そういうことはやっていられない。ある程度ならした先行技術調査で出願していくしかない。あとは、申しわけないですけれど、国の費用と労力で絞り込んで強い権利にしていきたいということになると思うんですけれど、ここの評価書の扱い、水準をどう高めるか、また登録後の訂正や分割の機会が得られないのかという実態論で私はぜひここも論議していただきたいと思います。現行どういう形でなさっているかわかりませんけれども、技術評価書については、今相当質的には下がっているかなと。先行技術の漏れが相当出ているなと。そうすると、ユーザーサイドとしてはうかつに権利行使に踏み切れない。評価(6)をもらったんだけれども、使う前にもう1回自分の権利を再精査しないといけない。当然のことながら自己責任ですから、それはやらなければいけないんですけれども、この負担というのはかなり大きいですね。
ただ、先ほど申し上げましたように、私ども川下産業としては、やはり中国の模倣品との対応で勝たなければいけませんので、日本国内市場で中国製品をはんらんさせないという手だてがどうしても必要になってきます。そのためにはやはり5カ月で権利がおりる。これは非常に魅力的です。そこに6評価というものが得られれば、私どもが今、実際に運用していますのは、特・実同時に出願し、まず実用新案権を取得して、発売直後に出てくる中国製の模倣品の排除に当ります。大体これは効果が出ています。1年経過後に特許がおりてきますので、特許がおりるまでのつなぎとしての実用新案による、模倣品排除のパトリオットですかね。迎撃ミサイルに使うというのが現状のやり方なんですね。
不幸にも評価(6)をとれないケースは、非常につらくなってくるので、不正競争防止法を使わざるを得ないのですけれども、彼らも利口ですから実際の排除は難しいものがあります。御案内のとおり、市場ではんらんしている模倣品は、中国のメーカーが単独で日本へ入れてくるのではなく、日本の悪質な流通業者や地下組織が彼らと結託して、日本で売れている品物情報を中国に持っていき、そこでつくらせて、彼らがそれを引いてくるという構図をとっていますので逃げ足も巧妙ですから、早急に効く権利形態をどうしても欲しいというのが私ども川下産業の実態です。
そういう意味でまだまだ現在の実用新案制度をもう少し実態に即した形で使い勝手のいい、権利制度に変えていただければと思います。そういう視点からポイントは技術評価書の上がりを、例えばですけれども、どの程度精度を上げていただけるのか、いけばいいのかというところも検討の余地があるのでは、と思います。
以上です。
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尾形委員
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JEITAの尾形ですけれども、平成5年に改正されて、その当時は7万7000件、この資料にもございますけれども、現在2002年で8000件というように非常にドラスチックに減ってきたわけですけれども、それはJEITAに加盟されている――船井さんもそうですけれども――メーカーの目から見ると、私自身が大企業というか、大きい会社にいる関係かもしれませんけれども、うちでもやっていないわけです。実用新案の出願を非常に減らしているわけです。減らしているというよりほとんどないわけですけれども、なぜ減らしたのかというのを分析していくと、やはり使い勝手が悪いというのが一番の原因だと思うんですけれども、使い勝手が悪いからといって、それしかなければ使わざるを得ないわけですけれども、かわりに特許制度がある。そちら側ですべてカバーできるということであれば、制度自体なくてもやっていけるぞということがございまして、その辺の大きいところの会社が考える行動パターンと中小企業の方が考える行動パターン、あるいは個人が考える行動パターン、いろいろあろうかと思いますけれども、それが制度的なものでそういうふうになっているのか、あるいは制度自体不要になったからそうなのかというのは実態調査等をやらないとわからないのではないかと。
私自身もJEITAの方でやっていますけれども、皆さんそれぞれのコメント、あるいは意見等あるわけで、それを1つにまとめるというのは難しいんでしょうけれども、実態がこうなっているというのをまず分析することがやはり必要なのかなと。そういった実態に即して制度自体が不要なら不要で、そちらの話をする必要があるでしょうし、そうではなくて、やはり必要だということであれば、制度設計をもう少し変えて使い勝手をよくしていくというような検討が必要であろうというふうに思います。
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志村委員
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松下電器の志村と申します。
当社の場合もまさに資料1の1ページ目ですか、表1にあるとおりの実用新案の傾向を多分示してしまいまして、平成5年に法律が変わったとき、いろいろ議論しまして、それで費用に対する、実用新案というのは費用が安いんですけれども、それに対するデメリットといいますか、それが多分表の後ろにまとめていただいた権利期間、あるいは評価書という、要するに登録になると本来特許庁のお墨つきを与えていただけるわけですね。それがどうも評価書というニュアンスからお墨つきではなくなって、出願人側の責任が非常に出てきた。
ちょっと蛇足になってしまいますけれど、私はこの評価書というのは、あんまり私どもは出願していないので、内容をよく見ていないんですけれども、何かすごく評価自体がアナログ的になってしまっているんですかね。よくわかりませんけれど、例えば登録になっているか、だめだったかというと、非常に2値的、デジタル的にオンかオフ的、進歩性なし、新規性なし、あるいは先行技術が見つからなかった。その間の4、5とか、そういう数字が間にあるんですかね。その辺がアナログ的なのかなと。そうすると、出願人側としてはそういう評価をされるとちょっと困ってしまうのではないのかなということがあるんだろうと思うんですね。
もとに戻りまして、もう1つ、その辺が実用新案のデメリットがあるのかなと。最近私どもも物の形状というか、ソフト的なものの出願が非常に多くなってきておりますので、それから考えますと、実用新案が出そうと思っても、保護範囲が非常に狭いというんですかね。ソフトなり、方法的なものがある程度認められないと、クレームをつくっていく上でも、あるいは考案なり、発明をまとめていく上でも非常にやりづらい実態があると思うんですね。
ここでずっと書かれていた、特に7ページなんですけれども、そこの下に図が出ていまして、ライフサイクルの短縮化ということで、多分私どもの業界だと家電機器に入るんですかね。1年ぐらいなんですね。1年ぐらい……、ここまで短いかなという感じもするんですけれど、まあ言われてみればそういうところもあるのかなという雰囲気もするんですけれど、ここに書いてある製品のライフサイクルが非常に短くなったから、これで保護したらどうですかという話が趣旨であると思うんですけれどね。この文書の中にあると思うんですけれども、例えば1年ぐらいのライフサイクルしかないものに対して、権利を取得して、5カ月ぐらいである意味で実用新案で権利付与されると思うんですけれども、それに対して相手にぶつけて、警告なり、催告して、実際は警告、催告して相手が、すぐ、うん、そうですね、申しわけありませんでしたなんていうことはなくて、相手と話し合いの中で1年以上は簡単にたってしまうんですね。
実際はそういう意味では、その辺のライフサイクルが短い権利を取得しても、要は相手が警告したら、設計変更、いろんなものをやってしまうということがあって、企業としてはライフサイクルの、例えば電器業界で1年しか使わないものを決して権利で取得したいなんていう発想が実はないだろうと思うんですね。多くの場合はそれなりの権利期間、要するに権利行使できる技術のものを権利化して、それで使っていきたいということだろうと思うんです。
ほかの業界さんは多分平均でいくと8年とか11年とかうらやましい数字が出ているんですけれども、こういうところは実用新案の意味があるのかなという感じもしますけれども、私ども電器業界でライフサイクルの非常に少ない技術についてどんどん出願してくれと言われても、多分ないのではないのかなと。そういう出願は多分しないのではないのかなという気がいたします。
以上です。
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大渕座長
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ほかにどなたかからございませんか。
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吉田委員
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今の話を受けてという話でもないんですけれども、私どもの商品のライフサイクルは大体半年から1年です。1年続くものはあんまりありません。大体年末のクリスマス商戦を目がけて商品を出していく。クリスマス商戦が終われば大体終わっていくというケースが多いんですね。
その中で、私ども定番商品と言っているんですけれども、例えばリカちゃん人形とか、最近テレビに出ている人生ゲームとか、この種のものは20年、30年と続けているわけなんですけれども、やはり5カ月、6カ月で権利を取得して、高々半年ぐらいの商品、どうするんだという話については、日本国内の模倣品の場合、1つは、水道のコックをとめれば一番よろしいんですが、まずは流れる水をとめないといけませんのでね。流通業界そのものはやはり評価書(6)の実用新案権であれば、大体大手の流通業者さんは取り扱わない。当然そこに付随する問屋、その他の流通業者についてもそれに倣ってくる。ですから、通常の流通形態ではまず流通が扱いませんのでね。模倣商品が流れませんから。あと、模倣品業者がやるとすれば、露天商とか、縁日とか、その辺で売るしかなくなるというのが現状なのですね。
それが1つと、それから20年、30年続く商品も私どものこういう娯楽商品にはあるんですけれども、何年かごとにサイクルすると思うんですね。大体私ども3年から4年ぐらいなんですけれども、繰り返していくんですよ。そこに高々6カ月ぐらいのライフサイクルの商品であっても、15年の特許を取っていく意味が1つありますし、それから何よりも商品の導入段階で模倣品でつぶされてしまいますと、20年、30年の商品寿命の可能性の芽を摘みとられてしまう。ですから、導入段階で新製品をプロテクトするという意味は、将来の20年、30年先の商品寿命の根をそこで保護するというんですかね。そういう意味での有用性があるということと、この実用新案制度と特許制度の使い分け、すみ分けというのは現実として効果的に併存しているのではないのかなという具合に思います。
以上です。
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戸田委員
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資料の4ページに実用新案制度の出願比率ということで外国人と内国の出願人の比が出ています。これをもうすこし分析する必要があるのではないかなと思います。これだけ外国人の比率がふえているということは、逆に外国人が日本で無審査の新実用新案登録を取っているわけです。それは権利行使も想定しているかもしれない。ですから、先ほど権利濫用や無審査登録の弊害のお話がありましたけれど、これはやはり国内産業活動をやっている者にとって、1つの脅威ではないかなと思います。
制度的に、国内と国外で差別するわけにはいきませんので、当然日本の出願人が登録しやすい制度は外国の人も登録しやすいわけです。外国の人が不安定な権利をいっぱい取ってしまって権利行使が増え、逆に国内産業が何らかの影響を受けるのであれば、それは考えなければいけないファクターではないのかなと思います。
それで、急ぎ、中国の状況を中国の現地に調べてもらいましたけれど、中国は今9万3000件実用新案で出願があると聞いています。そのうちの9万2000件が中国の国内の出願人だということです。ですから、外国からの利用はほとんどない。これは多分コストと時間の観点で中国の方は使っているんだろうということです。ですから、中国の場合と日本の場合では、同じ無審査の実用新案制度ではありますが、使われ方が異なるということです。
やはり制度設計をする場合に、どういった形で権利を付与して、どういう形で行使されるのか、内国人と外国人の比率がどのくらいになっていくのかということもある程度想定しておく必要があるのかなという気がしています。
以上です。
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熊谷委員
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今のお話を否定するつもりは毛頭ありませんし、私がどうこう言うことではないと思うのですが、あくまで日本の現在の特許制度が正常に機能しているのかというような言い方をすると失礼かと思いますが、内国人出願比率がきわめて高いのは日本だけであると思います。米国でも半数近くは外国から特許出願されているわけでして、特許と比べ外国人比率が高いから、制度が機能していないということにはならないと思いますし。また、中国の実用新案制度は、言葉は悪いですが、日本の明治38年当時の実用新案制度と同じ趣旨のものであり、特許制度との間には相当な違いがあるため、中国人の方が実用新案を選択しているといえるのではないかと思いますので、それを現在の我が国の実用新案制度と単純に比較することには余り意味がないのではないかと思います。
各委員のお話を聞いていて、中国からの模倣品対策等々で、どうしても特許制度では対応し切れない問題があったり、半年、1年のライフサイクルのものであっても、やはり権利を取得していることによって相当な抑止効果があるようなものは特許制度ではうまく対応できないと思いますし、特許制度がいかにうまく機能したとしても、実用新案の存在意義も私はあるのではないかと思いますが、ユーザーの方々の御意見を伺っていて特に思いました。
以上です。
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大渕座長
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ほかにどなたかございませんか。
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尾形委員
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存在意義はちょっとおくとして、10ページ目で検討事項ということで、最初に権利を付与すべき対象ということで、ソフトウエアのことを多分これは触れているのだと思いますけれども、ソフトウエア自体はアプリケーション等でやれば著作権等当然発生しているわけで、それは保護できるということもありますし、仮にソフトウエアに含まれるアイデアをカバーしようということであれば、当然特許法でカバーできるわけでございまして、何も実用新案でカバーする必要はないであろうという考え方もございますので、権利を付与すべき対象をどこまでにするのかというのは慎重に検討する必要があるのかなと思います。
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大渕座長
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きょうは第1回でございますので、どの点からでも結構ですので、どなたかございませんか。
事務局で御準備された資料において、検討事項案として、配付資料の10ページ、11ページでその他というのも含めまして4点ほど挙げておられるのですが、この検討事項につきまして、ほかにこの点を加えるべきではないか、ないしはこの点はもう少し別の面も加味すべきではないかといった点から御意見をいただけますと、今後の検討事項等を設定していく上で大変参考になりますので、この観点から御意見をお願いいたします。
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石田委員
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先ほども若干申し上げましたけれども、同一対象について同一名義人の特許と実用新案が並存するようなケースに関して、細かい話になるかもしれませんけれども、その辺については39条の適用等を緩和するというか、そういったことも御検討いただければと思います。
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大渕座長
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今の点に関連してでもその他の点でも結構でございますので、ほかにどなたかございませんか。
では、事務局の方から御説明がありますので。
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木村審議室長
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いろいろと貴重な御意見をいただきまして改めて事務局でまた整理をさせていただきまして、いただいたポイントでケーススタディでございますとか、あるいは諸外国との制度比較、特にドイツとかその辺につきましても、今後でき得る範囲で詳細に調べて出していきたいと思います。
それから、先ほど御説明をいたしませんでしたけれども、参考資料の資料2でございますけれども、参考資料3というのがございまして、これで実用新案制度に関するアンケートをとらせていただくということで、知的財産研究所さんに委託をさせていただいて、大企業、中小企業、個人を含む幅広い対象、必ずしも実用新案を現在は御活用されていないようなところにつきましても、なぜ活用されていないのかというような点につきまして、やはり私ども当然手元にまだ十分なデータがそろっておりませんので、それについても調べさせていただいて、日程的には9月に開催させていただく予定のワーキンググループにおきまして、その結果が報告できればいいかなというふうに考えているところでございます。
制度、廃止論も含めて検討するべきだというような御議論もございましたし、必ずしも結果について現段階ですべて予断を持つということではないんですけれども、やはり特許制度全体の中で特許、実用新案を全体で見て、そこで本当に我が国の競争力をトータルとして高まるような制度を目指すということで、実用新案制度そのものが国際競争力に直結するということはやや考えにくいのかもしれませんけれども、トータルで見て、やはりそこのところのとらえ方といいますか、全体で把握をする必要があるような気もしておりますし、今の審査が非常に滞貨が蓄積しているというような状況もございますので、そういうことも私どもとしてはどうしても考慮しなければいけない。そういう要素もあるとは思うんですけれども、今後引き続きそれについても個別に議論させていただく過程におきまして、できるだけ詳細なケースですとか、データですとか、諸外国との制度比較も含めまして出していきたいというふうに思っております。
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大渕座長
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今、次回以降について事務局の方で御準備等される点等につきまして御説明がありましたが、その点も含めて、ほかの点でも結構ですが、第1回ということで、最初に御意見をお聞きしたいと思いますが、何かございましたら。
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臼井委員
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先ほどちょっとお話しさせていただいたんですけれど、確かに現在の実用新案の制度、やっぱり使いにくい点がいろいろございます。その辺をもう少し工夫されたら、逆にもっと使えるのではないかと。
これは私の個人的な見解でございますけれど、必ずしも特許出願しなくて、実用新案の出願をしておくということも今後あり得るのではないか。ただ、現時点の実用新案はちょっと使いにくいというのは皆さん一致していることではないかと思いますので、その辺も含めて、もちろん制度そのものも特許、実用新案、本当に2つ必要なのかということもありますけれど、現状の使いにくさ、それを踏まえて先ほどのいろんな国の調査をしていただいて、現時点で使いづらいんですけれど、もう少し使いよくたらもっと使えるのではないかということも1つ観点に入れて進めていただければと思います。議論の中でどちらの方向にいくかは、これは皆さんの議論だと思いますけれど、ひとつそういう観点で検討していただいたらというふうに思います。
以上です。
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大渕座長
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ほかにどなたかございませんか。
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