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第2回実用新案制度ワーキンググループ 議事録

(本記事作成:特許庁総務部総務課制度改正審議室)

  1. 日時:平成15年9月12日(金曜日)10時00分~12時00分
    場所:特許庁 庁議室
  2. 出席委員:大渕座長、石田委員、臼井委員、尾形委員、熊谷委員、志村委員、坪田委員、戸田委員、牧野委員、溝尾委員、吉田委員
  3. 議題:実用新案制度の権利付与対象と存続期間の在り方について
議事録

大渕座長

それでは、定刻となりましたので、ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会の第2回実用新案ワーキンググループを開催いたします。
本日は「実用新案制度の権利付与対象と存続期間の在り方」についてご審議いただければと考えております。
議事に入ります前に、前回ご欠席されました委員のご紹介を事務局からお願いいたします。

木村審議室長

ユアサハラ法律特許事務所弁護士・弁理士でいらっしゃいます牧野利秋委員でございます。

牧野委員

牧野でございます。先回欠席しまして、どうも失礼しました。よろしくお願いいたします。

大渕座長

ありがとうございました。それでは、早速議事に入らせていただきます。
資料を事務局の方でご用意されていますので、説明をお願いいたします。

木村審議室長

まず、配付資料の確認をさせていただければと思います。資料は2点でございまして、資料1が「実用新案制度の権利付与対象と存続期間の在り方」、資料2が参考資料でございます。推進計画や戦略計画等の抜粋になっております。不足等ございませんでしょうか。
よろしければ、それでは資料1を中心に本日の議題につきましてご説明を申し上げたいと思います。
今回、実用新案制度の具体的な制度設計に向けた第1回目ということで、権利付与対象と存続期間につきましてご議論をいただければと考えております。
まず権利付与対象でございますけれども、ご承知のとおり、現行の実用新案制度につきましては、権利付与の対象が、考案のうち「物品の形状、構造又は組合せに係るもの」ということで限定をされておるわけでございます。他方、技術が進展し、多様化するに伴いまして、特に実用新案制度でカバーすることがふさわしいような、早期実施される、あるいはライフサイクルの短い技術がふえているという傾向があるのではないかということで、現在限定されている範囲外の考案につきましても実用新案制度による早期保護の対象とすることが望まれるのではないかという見解もあるわけでございますので、それについてまず議論をしていただければということでございます。
1のところで現状につきましてご説明をしております。権利付与対象、今申し上げたように限定をされておるわけでございます。他方、典型的によくいわれておりますのは、情報技術の進展に伴いまして、ソフトウエア、すなわちコンピュータープログラムにつきましては、プログラムそのものの形でネットワーク上流通することもございますし、CD-ROMのような形で記録媒体に記録された形で流通することもある。こういうものにつきましては複製も非常に容易でございまして、模倣品が市場に出回るといった問題が一番典型的に起こっているのではないかということがいえるわけでございます。
他方、こういう技術につきましては、もちろん特許対象には現在なっておるわけでございますが、物品の形態的な要件、「形状、構造又は組合せに係るもの」という要件を満たさない技術でございますので、現行の実用新案制度の権利付与の対象にはならない。したがって、早期の権利保護が十分に図れない状況になっているということでございます。
それから、ちょっと視点が違うのですけれども、特許制度と実用新案制度で権利付与の対象が異なっていることによって実用新案制度が使いづらいのではないか。クレームを書く際に方法による記載ができない、あるいは物品の形態的要件の制約にかかってしまう、あるいはそれによって請求項の取捨選択が必要になる、あるいは出願を変更する際に、特に特許から実用新案に移行を考える場合に、例えばこれの要件を満たさないような請求項につきましては、記載を削除するなり、そういう整備が必要になるということになるわけでございます。
諸外国でどういう形で権利付与を行っているかということを2で簡単にまとめてございます。
韓国、中国につきましては日本と同じでございます。
ドイツは、1990年に行われました改正の前までは、権利付与の対象について物品の形態的要件――空間的形状という言い方をしていたようですけれども、それを課していたわけでございますが、90年改正で「方法」を除いた「物の考案」(ソフトウエア関連技術も含む)ということで拡大をしたと承知をしております。
それから、フランスでございますけれども、実用新案制度は特許と全く同一のものになっている。ただ、フランスの場合は特許制度も基本的には無審査主義を採用している。もちろんサーチレポートの取得が必要になるわけでございますが、そういう意味でいうと、特許と実用新案の間の制度的な差異が我が国よりは小さいということで、どこまで参考になるのかはよくわかりませんけれども、とりあえずこういうものになっている。
それから、欧州連合では、現在EU指令案が採択を待つ状態になっていると思いますが、これにつきましては生物の材料関連発明、化学物質、医薬でそれぞれの方法につきましては権利付与の対象とならない、それ以外はすべて権利付与の対象となるということになっておるようでございます。
他方、さらにその後、共同体実用新案制度案というのが欧州委員会で提案をされているようでございますけれども、これは特許と全く同一の権利付与対象となるということでございます。いずれもまだ途中のものでございまして、最終的な効力をもつものにはなっていないということだろうと思います。
他方、プログラム自体に係る発明というのは特許制度の対象になっていないということのようでして、EUでは実用新案の対象にはプログラム自体に係る考案も権利付与の対象となるというところがさらに広がっていると解釈できるようでございます。
「検討の方向」ということでございますが、当然権利付与の対象をこのように限定しておることにつきましては、当然歴史的な経緯とか政策的な背景があるわけでございますので、それについて簡単にご紹介をしつつ、ご検討の材料にしていただければと思っております。
まず第1点目でございますが、「早期保護に対する具体的要請」ということでございます。先ほど技術の進展、ライフサイクルの短縮化、早期実施ということを申し上げたわけでございますが、具体的にどのような要請があるのかということ、その必要性をみきわめる必要があるのではないかと思っております。典型的にはソフトウエアということがいわれるわけですが、それ以外にもあるのかどうか。
平成5年の改正の当時におきましては、物品の形状につきましては模倣が簡単なので、それにつきましてはやはり早期に権利化してそれを保護する要請は強いのではないかということで、このような物品の形状、構造、組み合わせについて要件にすることは妥当であって、かつこうした物品の形態的要件を満たさないものにつきましては、早期保護の要請が強くあるということは必ずしも認識されていなかったということだったと思います。その後の状況変化がどこまであるのかというようなことをご議論いただければありがたいと思っております。
それから、(B)「第三者による権利内容の判断の容易性」ということでございまして、実用新案制度は新規性、進歩性といった行政庁による事前審査をしておりませんので、第三者の製品が登録された権利を侵害しているかどうか、それは原則として当事者間の判断に一義的にはゆだねられるということになっているわけでございます。
そのため、基本的には実用新案公報によりましてどういう権利が存在しているのか、それが容易に把握できるものであるということが必要であろうということがいえるわけでございまして、権利付与対象の中に権利範囲が容易に判断できないようなものが含まれているというようなことですと、実用新案公報をみた第三者が自分の製品が他社の実用新案権に抵触しているのかどうか、その判断が容易ではないということでございます。クレームを読んでもどうもよくわからないということ。特許の場合ですと、特許を受けようとする発明が明確であることというのが明確に特許法36条の第6項第2号によって求められておりますので、そういう懸念は相対的には少ないということだろうと思いますが、実用新案の場合はなかなかそうはいかないということかもしれません。
また、権利が有効か無効かという判断が困難な実用新案ということもあり得るわけでございまして、審査をしておりませんので、どうしても無効理由をはらんでいる可能性は高いということになる。そうだとしますと、これが濫用的に行使をされる、あるいは行使されなくても第三者がみずからの考案を実施するに当たって萎縮的な効果を及ぼすといいますか、かなり慎重になる。無効だとは思うけれども、例えばわざわざ無効審判を起こしてまで無効を主張するほどのこともないなということでそのままあきらめるというようなこともあるような気もしておりまして、これがどの程度無用な紛争を起こすおそれがあるのかということでございます。
こうした観点から、平成5年の改正では、こういう物品の形態的要件を満たさないものについては、「物」とか「方法」につきましては相対的には権利内容の判断が困難なのではないかという理解で現在の要件が入れられている経緯があるわけでございますけれども、これが引き続きどれほどの深刻な問題なのか、それについて検証していく必要があるのではないかという問題提起でございます。
それから、(C)と(D)は特許との兼ね合いで考えてどうかという制度的な論点でございます。特に出願の段階で「方法」が入っていないということで、技術的思想を請求項に記載する場合、特許ですと「物」「方法」それぞれの記載でかなり柔軟に自由に表現することができるわけでございます。特に近年、技術のソフト化の進展によりまして、経時性を有する技術的思想が増大しているということで、特にソフトウエアの関連技術はプログラムの命令を順次に処理していくということですから、典型的な経時性を有する技術的思想であろうということのようでございます。
下の注で、特許において「方法」が特許請求されている出願は大体3割程度あるということ。それから、プログラムに関していいますと、「方法」が特許請求されている出願は76%となっておりますので、相当程度ニーズがある。「方法」の記載については、全体としてみるとかなりニーズがあるわけでございます。
他方、当然これは現在実用新案の対象にはなっていないということでございまして、こういう技術的思想の保護が十分に図れるかどうかという点についてやはり疑問があるのではないかということで、技術的思想の十全な保護という観点から権利付与対象を考える必要があるのかなということでございます。
(D)は、一たん出願された後に実用新案の方に移行する場合の問題でございます。(C)と同じような話でございますけれども、特許制度ですと出願から3年で審査請求ないしはみなし取り下げの二者択一を行うということになるわけでございますが、実用新案ですと審査を経ずして存続期間中、現在6年でございますけれども、それが権利として維持できるわけでございます。したがいまして、実用新案登録への変更を途中で行うということが現行制度でも当然あり得るわけでございます。
他方、このときに、実用新案制度は特許制度より権利付与の対象が狭いものですから、それについて十分な手当てを行うことができないのではないかという問題でございます。
それから、(E)でございますけれども、これは主として特許庁における審査の問題でございます。権利付与対象に該当するか否かの判断ということは、特許庁は無審査といっても何もしていないわけではございませんで、権利付与の対象に該当するということは基礎的要件ということになります。実用新案法の6条の2という条文によって審査をしておりまして、それに違反する出願につきましては補正命令の対象になるということでございます。
したがいまして、これについての審査が円滑に行い得るかどうかというものも1つの論点ではないか。基本的にそこのところの審査によって、判断することが困難だというような場合には権利は付与せざるを得ないということだろうと思いますので、そうなりますと上記(B)、すなわち第三者の監視の問題にそのまま転換していくということにもなりますので、この点についても一応の検証が必要ということでございます。
(a)のところでございます。これは現在の制度を仮に維持したとした場合に、「物品の形状、構造又は組合せに係るもの」というのを判断しておるわけでございますけれども、プログラムの機能を化体した装置あるいは回路は一応物品ではあろうということなのですが、それが該当するのかしないのかということの判断は意外と難しい面があるといわれております。ただ、これは現行制度でもやっておることでございます。
(b)で、仮に「物」だという判断をするとした場合は、これは「物」か「方法」かということで線を引くわけでございますので、比較的判断は容易になろうということでございます。
(C)について、当然実用新案の対象となるためには「考案」でないといけないということなのですけれども、物品の形態的要件を満たしているということであれば基本的に「考案」であるということはまずほとんどの場合間違いなくいえるだろうということなのですけれども、「物」に係るものが「考案」であるか否かということで、ソフトウエアがこれに入ってくるということですと、それは困難になる場合があるだろうということでございます。
それから、「方法」に係るものが「考案」かどうかというのは、さらに判断としては難しいということだろうと思います。ただ、これにつきましては、当然特許においてこういう審査をしておるわけでございますので、それとの兼ね合いで、全く実用新案に固有の問題というわけではないということかもしれません。
それから、(d)で「産業上利用することができるもの」かどうかということがあります。現在これは基礎的要件に挙げていないということになっております。すなわち「物品の形状、構造又は組合せに係るもの」を満たしていて、かつ産業上利用できないという考案というのはほとんどないだろうと。仮にそういうのがあっても別に実害がないわけですから、それはそれで構わないのではないかという判断だったわけでございます。
ただ、仮に「方法」まで広げていくということになりますと産業上利用することができるかどうかという判断が出てくる場合があるということで、典型的には「人間を手術、治療または診断する方法」、これ自身非常に議論のあるところだろうとは承知をしておるのですけれども、現在の運用を前提にいたします限り、これについては産業上利用することはできないという解釈をとっておりますので、これについて権利の付与対象とすることが望ましくないということであれば、そこは審査をする必要が生じるということでございます。
次に、アンケート調査結果について一部ご紹介をしております。まだ完全な集計ができておりませんで、必要なところを急ぎ集計をさせていただいて使わせていただいております。これにつきましては、全体の制度ユーザーなり、かつてのユーザーの方等々のご意見をきちっと伺って、観念論にならずに具体的なデータに裏づけられた議論をすべきだというご指摘も当然ございましたものですから、知的財産研究所に委託をさせていただきまして、7月、8月にかけて行ったわけでございます。
制度ユーザーの方の絶対数が特許に比べて非常に少ないものですから、調査には実はなかなか難しい面があるわけなのですけれども、大企業、中小企業、個人の方それぞれについて相当程度の数のアンケートを出させていただいてまとめさせていただいているということでございます。
実用新案の場合は総数でみることに意味があるのか、さほどないような気もいたしまして、制度を利用しておられる層、あるいは利用しておられない層のそれぞれのご意見をそれぞれ分けて考察した方が有益なのではないかという考え方もあるものですから、ここではそういう分け方にさせていただいております。
まず、特許と実用新案の併存ということ。これは前回さまざまなご意見をいただいた論点でございますけれども、併存が必要だとご回答いただいたのは中小企業では59%、個人では71%。大企業、中小企業というのは資本金1億円ということで便宜的に分けておりますので、通常の中小企業の定義とはちょっと違っておりますが、ここでいう大企業は75%の方が特許制度だけで十分であるということでございます。
権利の付与対象でございますけれども、先ほどの問いで実用新案併存が必要だけれども改善するべきだという方に問うたところ、権利付与対象につきまして「拡大した方がよい」とお答えになられているのが、中小企業なり個人の方ではそれなりの数になっているということでございます。大企業の方でも制度のユーザーの方はいらっしゃるわけで、それにつきましては「このまま」という方と「拡大した方がよい」、ほぼ拮抗したような数字にそれぞれなっているということでございます。
問いの3で、では権利付与対象をどこまで拡大するのかということで、ここまで来ますと回答数がかなり少なくなってくるのですけれども、大企業、中小企業の方ですと「「物」全体まで拡大をする」、あるいは「特許と同じ(「方法」も含む)」を上回るというような形になっておりまして、個人の方ですとそれが半々というような感じにトレンドとしては分布をしているということでございます。
こういうデータを若干念頭に置いていただきまして、では具体的にどうするかということでございます。ここでは可能性としてとりあえず3つのオプションを考察しておるわけでございまして、(1)が現行制度そのまま、(2)が「物」。「物」でございますと、すなわちプログラムも入ってくるわけでございますけれども、それを念頭に置いて、そこまで拡大する。(3)が「考案」全体、すなわち「方法」まで含める。その3つを考えております。
それらにつきまして、先ほど論点として挙げさせていただきました(A)から(E)までの論点についてどういう結果になるのかということを図式的に整理したのが5のところでございます。
基本的に「物品の形状、構造又は組合せに係る考案」に限定をしたという場合ですと、早期保護の具体的要請、これはまさにこういう物品について最も模倣が容易であるということで、早期保護の必要性が高いということは今と同じで当たり前の話なのですけれども、他方、それ以外に早期保護の要請があるものについては当然入らない。それがデメリットといえるかどうかご議論していただければいいかなと思っております。
それから、第三者による権利内容の判断につきましては今までどおりでございますので、基本的に比較的容易なのではないかと思っております。
ただ、物品の構造が複雑な機械装置も含まれておりますので、一概にこれであれば簡単だと言い切ることは当然できないだろうということでございます。
それから、「物」と「方法」の保護の問題でございますけれども、基本的に「方法」でないと記載できないものは比較的少ないということもいわれておりますが、本当は方法なのになというようなものがあえて「物」として記載されているというようなものがあって、そういう意味でいうと十分な保護が図られていないという場合もあり得るということだろうと思います。
それから、特許から実用への円滑な変更という点では、当然権利対象が狭いわけですから難しい場合がある。請求項を削除したり、いろいろなことをしなければいけないということになるわけでございます。
それから、(E)の特許庁におきます「権利付与対象に該当するか否かの判断の容易性」ということでございますが、これは形態的要件の判断は意外と難しい面がございまして、特にプログラムの機能を化体した装置、回路が当該要件に該当しないと判断するのは意外と難しいことは事実でございます。ただし、これは現状と同じといえば全くそのとおりでございます。
それから、(2)で「物の考案」全体にまで拡大をする場合、プログラムも含むということ。当然物質とかそういうものが入ってくるわけでございます。
この場合は、(A)につきまして、早期保護の具体的要請につきましては、プログラム等について具体的な要請があるとすれば、それが保護されるというメリットがあるわけでございます。
他方、第三者による権利内容の判断につきましては、プログラムですと化学物質といった図面等から外形的に判断しにくいものが入ってきますので、その点が困難になる可能性があるということ。
それから、「物」と「方法」の十全な保護の問題につきましては、やはり「物」と「方法」の両者で保護されることが、特にプログラム等につきましては望ましいということがいえるのではないかということでございます。他方、これですと「方法」が入りませんので、その点が抜けているということになる。
それから、円滑な移行につきましては、「方法」が入っていないので、その点が比較的困難になるということでございます。
権利付与対象に該当するかどうかの判断の問題ですけれども、ソフトウエアが入ってまいりますので、「考案」かどうかの判断が難しいということ。ソフトウエアにつきましては自然法則を利用したといえないものがかなり多いということのようですので、そこの判断は難しくなる場合があろうかなということでございます。
ちなみに、オプションとしてさらに、例えば「物の考案(プログラム等を除く)」というもの、「物」まで広げるけれども、あえてプログラムは対象にしないというようなことも考えられるわけでございます。ただ、これにつきましては、プログラム等を除いた場合でありましても、その機能を化体したコンピューター装置そのものは権利付与対象となりますので、そういう意味でいうと実質的な第三者監視負担というのは余り変わらないのではないかということで、あえてここでは実益のある案として挙げさせてはいただいていないということでございます。
それから、化学物質は早期保護の必要性に乏しいというようなことで、これを除くということもあり得る。例えば先ほどご紹介したEUの案などはそうなっておるわけでございます。ただ、これにつきましては、別に明示的に除外する実益があるのかという問題もございまして、この辺についても何かございましたらご議論いただければありがたいと思っております。
(3)で「考案」全体まで拡大するという案、すべて特許と同じ権利付与対象にするという案でございます。これは当然一番広いわけなので、権利の保護ということでいいますと一番完全なものになるわけでございますけれども、早期保護の具体的要請ということで、方法まで含めることにどれほどの意味があるのかという議論はあるのかもしれません。
それから、第三者による権利内容の判断というのは、「方法」というのはかなり難しいことは事実でございまして、そこのところをどうするか。
ただ、(C)(D)といった部分で相互の乗り入れといいますか、乗りかえといいますか、そういうことをやる場合に最もそれがスムーズにいくのは当然このパターンでございます。
それから、(E)でございますけれども、「方法」が入ってまいりますので、「考案」の判断が難しいということはいえるわけでございます。ただ、これは現行、特許でも当然やっておることでございますので、それとの関係でいうと同じことではないかということもいえるわけでございます。
また、産業上利用することができるかどうかということにつきましては、特に手術、治療、診断方法につきましては審査をする必要が生じるということになるわけでございます。
それから、補足でございますけれども、追加的な検討事項といたしまして基礎的な要件の変更、これは産業上利用することができるものというのが挙げられておりませんので、そこを追加する必要があるかどうかという問題がございます。
それから、現在図面の添付が必須とされております。他方、権利付与対象が拡大されまして物品の形態的要件が仮になくなるということになりますと、特許法と同様に図面の添付は必要な場合のみということにすべきではないかということを挙げさせていただいております。
2番目の論点で「存続期間の在り方」に移らせていただきます。現在6年ということでございます。この変遷をたどりますと、皆様よくご承知のとおりでございますが、旧法では設定登録から過去は10年、あるいは出願から15年を超えないということになっていたということでございます。
平成5年の改正で、基本的にライフサイクルの短い製品技術を保護する制度として実用新案を位置づけたということもございまして、無審査・事後評価にするということでございますので、その場合ライフサイクルは今後短くなるだろうと。やはり権利が長い期間不安定といいますか、技術評価書をとらない限り直接的権利行使ができないということでございますけれども、第三者の監視負担を考え、かつ主要国の存続期間も参考にしながら6年ということで、かなり短い年数になってしまったわけでございます。
現存率のデータがございまして、これは6年目に残っている権利。最初に登録されて6年目まで存在している権利というのは大体4分の1、26%ぐらいということでございます。かなり少ないんじゃないか、だから延ばす必要ないじゃないかということになるのかもしれませんけれども、実は旧実用新案権では出願から10年目で75%、15年目で25%、特許権につきましては6年目で97%、20年目に25%ということで、最終年度は大体その4分の1ぐらいの傾向になっているので、これはまさに制度がこうなっているから現存している率がこの程度だということもいえるわけでして、必ずしも6年で十分だということの決め手にはならないかなと思っております。
それから、製品のライフサイクルでございますけれども、すべての事業分野の平均ということで考えますと大体8年という数字がございまして、現行制度の存続期間はそれよりも短いものにとどまっているという批判があるわけでございます。
それから、諸外国の存続期間をみましても、大体10年というところが多い。ドイツが過去6年だったのですけれども、順次延ばしておりまして、現在日本と同じ6年というのは主要国ではフランスぐらいだということでございます。EUの新しい制度でも10年ということでございます。
アンケート結果につきましては、先ほどの問いの中で実用新案制度の併存を認め、かつ実用新案制度の改善が必要だとお答えいただいた中で、それでは存続期間をどうしましょうかと問うたところ、大企業の64%、中小企業の66%、個人の方の83%は「変えた方がよい」ということでございます。これは割とトレンドがはっきりしておりまして、10年というのがどの層においても一番多い。75%程度の数字になっているということでございます。
幾らライフサイクルが短くなってきたとはいえ、平均8年というようなデータもある中で6年というのはいかにも短い。それに特許権が20年であるということも考え合わせますと、ここではオプションとして、10年、15年、20年というようなことを書かせていただいておりますが、いずれにしても不安定な権利の期間が延長されるということのデメリットもございますが、それぞれの選択肢につきまして、延長することも念頭に置いてご検討をいただければありがたいと思っております。
アンケート調査結果なり諸外国のデータをもとにいたしますと10年というのが一番相場感があるということかもしれませんし、15年、20年というのにもそれなりの理由づけはできるかなということでここでは書かせていただいております。
資料につきましては、説明は以上でございます。ちょっと時間がかかってしまいまして申しわけございませんでした。

大渕座長

詳細で、かつわかりやすい説明をありがとうございました。
それでは、議論に移りたいと思います。本日のテーマは権利付与対象と存続期間の2点でありますけれども、議論をスムーズに行うために、この2つの論点について分けて以下ご議論いただければと思います。
まず第1の権利付与対象の関係でございますが、先ほどの事務局からのご説明につきまして、何かご質問がございましたらまずお伺いいたしたいと思います。
それでは、この権利付与対象という論点につきまして、ご質問だけでなく、ご意見もお願いいたします。――熊谷委員どうぞ。

熊谷委員

すみませんが、今日は、所用で中座させて戴くことになると思いますので、口火を切らせて戴きたいと思います。
今、座長がおっしゃっていただいたように、非常にわかりやすく詳細なご説明をして戴いたと思います。前回もいろいろ議論があり、今、室長のご説明にもあったかと思いますが、実用新案制度の利用者のニーズを最大限尊重すべきであることは一般的にいえるのではないかと思います。制度の改正により、第三者の監視負担の増大や権利濫用に対する懸念もあると思いますが、権利濫用については次回以降ご議論があるかと思いますので、今日は省略させて戴きますが、監視負担や権利濫用も踏まえながら最終的には利用している方々のニーズがどこにあるのかをまず最初に考えるべきではないかと思います。
権利保護対象の問題になりますと、多面的な保護と申しますか、保護に値するものがあるのであれば、それがカテゴリーの違いによって保護されたり、されなかったりということではなくて、「方法」であろうと「物」であろうと多面的な保護をはかることが必要かと思います。当然新規性とか進歩性という他の登録要件を満たしているというのは前提ですが、あえて対象を限定する必要はないかと一般論としては思います。
個別の議論の中で少し個人的な意見を申し上げさせて戴きます。ソフトウエアの問題は一番顕著な問題ではないかと思いますが、平成5年当時の状況を申し上げますと、これは釈迦に説法かと思いますが、特許制度でもプログラム自体を保護するという議論はなされておりません。ある意味ではクレームの記載方法(ドラフティング)の問題になるかと思いますが、平成5年当時は、プログラムは特許でも保護対象とはなっていなかったので、その意味において実用新案制度でもプログラムが保護対象になっていなかったのが事実だと思います。権利保護対象について考えますと、権利を設定する場合に実用新案制度は、無審査登録制度を採用していますが、ご説明にありました基礎的要件をチェックする際に、考案のカテゴリーについてもあえて厳しく、一々チェックをするのがいいのか、それとも、保護に値すべきものは保護をするという前提で無審査登録でできるだけ早期保護を図るということに力を入れるべきということになるかと思います。また、これもご説明にあったかと思いますが、物品だからといって、例えば第三者の監視負担が少なくなるかというと、権利内容の判断が比較的容易であるということで、これはケース・バイ・ケースだと思います。ですから、「方法」であるとか「もの」であるからといってすべてのものが判断が難しいかというと必ずしもそうではないと思います。「方法」や「もの」の中には容易なものもあるし、比較的容易なものもあるかと思いますので、それはあくまでケース・バイ・ケースであり、保護に値すべきものを多面的に保護をするという観点から考えれば、「方法」まで保護対象を拡大することも一つの方向性ではないかと思っております。
保護対象を拡大した場合に、監視負担が増大するという懸念があるかと思いますが、これも釈迦に説法かと思いますけれども、特許のもとにおいても登録されてから監視をするというより、出願されたものについても公開公報のチェック等のいろいろな形で監視をし、先行技術の調査等もされているかと思いますし、平成5年当時と比べて先行技術調査のツールも非常に充実して、第三者の方がお使いになる利便性も飛躍的に向上していると思いますので、その意味においては、個人的には、権利保護対象を「方法」まで広げて拡大しても、第三者の監視負担や権利の濫用という問題はあまりないかと思います。
申しわけありませんが、中座させて戴きますので、保護期間についても一言だけ申し上げさせて戴きたいと思います。保護期間の問題も権利付与対象の問題とリンクして考えるべきではないかと思います。これも室長のご説明にあったかと思いますが、現行の6年の存続期間のもとにおいては、10年ぐらいのライフサイクルがあるものは特許の方に流れているというのも1つの傾向としてあるのではないかと思いますし、10年の存続期間にすることによって、物品以外の「物」や「方法」の考案についても実用新案制度のもとで保護のニーズが広がっていくということもあり得るかと思いますので、存続期間の問題も保護対象の問題とある程度リンクをしているのではないかと思います。

大渕座長

ありがとうございました。――どうぞ。

尾形委員

JEITAの尾形ですが、細かいあれに入る前に、JEITAの特許委員会の方で実用新案自体を存続させるべきかどうかという議論を大分突っ込んでやりました。アンケート結果にもあらわれているのですけれども、JEITAは大きな会社がかなり多いということもありまして、特許委員会の中では存続させる積極的な理由はないのではないかというのが意見としては大勢でございまして、知財立国を目指す我が国にとって実用新案が本当に必要なのかというのは甚だ疑問であるという意見が多くありました。
ご存じのように、知財先進国であるアメリカにはこういう実用新案のような制度はないわけで、そこから考えても実用新案が本当に必要なのかという議論はあろうかと思います。知財研のアンケート結果では40%が存続を希望しておるわけですけれども、逆の見方をすれば60%が特許だけで十分だと考えておるわけでありまして、多数決の論理、それと8,000件前後しか利用がないということを考えれば、廃止して特許制度に一本化してもいいのではないかというような強硬な意見もJEITA内にはございます。
一方、JEITA内でも制度をよく利用されている企業もありまして、存続させるべきだという意見も当然ございます。また、アンケート結果もこれを裏づける結果になっているかと思います。この辺を踏まえますと、存続させることに積極的に賛成はできないわけでございますけれども、存続もやむを得ないかと。存続させるに当たっては、このアンケート結果でも出ておりますけれども、改善を望んでおる企業さん、あるいは個人さんが存続の中でも70%ぐらいおるわけでございます。その中でも多分、詳細はよくわかりませんが、権利付与の対象を拡大すべきであるというところが多いのかと思いますけれども、改善することによる利便性の向上とともに、それによる弊害もよく吟味してバランスをとった改正にすべきであると考えております。
権利付与対象の拡大につきましては、慎重に、特に「方法」にかかわる拡大、「物」もそうですけれども、「方法」でいえばビジネスモデル特許等が含まれると思いますが、拡大された場合にはその辺は非常に問題になろうかと思います。ソフトウエアも同じような問題を含んでいると考えております。ビジネスモデル特許に関しましては、多分「方法」に拡大された場合には実用新案制度にかなりの数が流れるのではないかなと考えております。
実用新案制度の方の技術評価書でございますけれども、これは公知文献でしか有効性を判断しないということ、出願人に有効性に関する反論の機会がないということで、有効性に疑わしさがある場合には有効なものと判断するという手続になっておるかと思いますが、その結果としてとても権利に値しないようなビジネスモデル特許の権利が多数生まれる。それが技術評価書つきで権利行使をされるというようなことが起こり得るであろうと思われますので、それに対応する企業としては、これはちょっと想像しただけでも背筋が寒くなるような気がしますので、その辺のバランスはぜひとって検討すべきであろうと考えております。
ソフトウエアも同じような問題が含まれておろうかと思います。特許よりも敷居が低いということで、実用新案に「物」、特にソフトウエアもできるということになりますと、これは特許出願であきらめていたような細かいアイデアもどんどん流れてくるのではないか。それが無審査で登録になったと。先ほどのような技術評価書がついてやはり企業に来るということになりますと、我々の業務も非常に脅かされる。
当社の場合、ちょっと例を出させてもらいますが、年間200件ぐらい、毎日といっていいほど携帯電話とかパーソナルコンピューターにアイデアの売り込みがあるわけですけれども、これはあくまでも権利になっていないものでございますので、まだ処理がしやすい。ところが、これが技術評価書でついてくる、しかもソフトウエア、あるいはビジネスモデル特許、こういったものになりますと調査の負担も非常に大きくなりまして、知財のスタッフ、技術開発、設計をしているエンジニア、この辺の負担ははかり知れないものが出てくるであろうと考えておりまして、この辺への範囲の拡大というのは慎重を期しても全く問題ないではないかと考えております。
以上です。

大渕座長

戸田委員どうぞ。

戸田委員

日本知的財産協会の戸田です。前回、私から、特許庁におかれましては、迅速で、かつ質の高い審査で特許制度に一本化すべきではないかということで、実用新案制度の廃止も1つの選択肢として検討すべきではないかと申し上げました。今回は廃止か改正かという二元論で議論するつもりはございませんけれども、先ほど尾形委員からもありましたように、今回の資料でも3の(B)で指摘しているような第三者による権利内容の判断の容易性、第三者からみたときの監視負担、それに伴う権利濫用、そういったところをきちんと議論した上で保護対象の議論、存続期間の延長の議論をすべきではないかと思います。
恐らく次回以降、事務局からきちんとアンケート結果が出てくると思うのですけれども、60%の人は特許制度一本でいいといっている。実はアンケートはもっといいことをいっぱい聞いているのです。これをきちっと出してほしいと思います。具体的には実用新案のデメリットは何かとか、実用新案権を保有する第三者から権利行使されたことはあるか、などの項目を皆さん答えている。ですから、その内容を我々としては知りたいのです。繰り返しになりますけれども、ユーザーの立場とそれが行使される立場と両面で考えていかないとうまい制度設計にはならないのではないかと思います。
今、尾形委員からもございましたけれども、実用新案が無審査になってから10年ぐらいたつわけですが、年間100件ぐらいの実用新案の売り込みがある企業というのはいっぱいあるのです。そのうち技術評価書がついているものもあるし、ついていないものもあるということで、この対応というのはかなりのマンパワーを割かれているというのは事実だと思います。これはもちろんすべての企業さんというわけではないでしょうけれども、権利になっているものでございますので、幾ら技術評価書がついてない、お話ししないといってもなかなか対応が難しいものもございます。
技術評価書の質の問題なのですけれども、私自身も幾つか内容をみてみました。正直いって、レベルが高いとは思えなかったですね。ですから、それがついてきたものが本当にきちんとした権利範囲で有効なものかというのをもう一回調査しなければいけない。そういった負担がかなりあるのではないかなと思います。
保護対象の検討ですけれども、そういったことを考えますと、現時点で本当にプログラムを含む「物」全体、「方法」まで拡大するというのは極めて慎重に行うべきではないのかなと思います。
以上です。

大渕座長

ほかにどなたかございませんか。――吉田委員どうぞ。

吉田委員

吉田です。そもそも小発明の保護制度の対象者が一体だれであるか、だれを対象にしてこの制度があるのかということをもう一度きちんと押さえる必要があると思います。これも先ほどお話が出ましたように釈迦に説法なのですが、当然のことながら小発明の保護対象は、我が国の場合はほとんど中小企業が主体になっていると思うのです。これは前回のアンケート調査でも実用新案の出願の層をみればわかると思うのですけれども、基本的には中小企業の活性化と保護・育成に軸足を置いた方がよろしいのではないかなと私は思います。
そういう観点からいくと、次に保護対象の目的、何のために保護しなければいけないのかというところに観点を移しますと、やはり一番欲しいのは、1つは早期保護の必要性だと思うのです。中小企業がもっている技術領域、分野の技術商品ということを考えたときの必要性というのは早期保護、これがまず第一だと思うのです。
もう1つは、これは平成5年度の改正法で若干保護措置が薄い嫌いがありますので、そこが欠けたところが対象範囲であり、期間だと思うのですけれども、当初、機械式技術対象商品一辺倒だったところにエレクトロニクスが加わってきた。昨今は明らかに「方法」を含むソフト技術が分離不可分な形で商品及びソフトに蔓延している。そういう中で小発明の対象というのは機械式とエレクトロニクスまではカバーしているのだけれども、現在、社会的にこれからさあ行きましょうといっているその分野での「方法」を含むソフト技術分野、こちらの分野が小発明の対象から欠落している。こういう問題が当然あると思うのです。
今回のアンケート結果でみますと現行制度下での結果として出ているわけで、希望事項が本当に反映しているのかどうかというのはこれからの問題ということを考えてみますと、技術範囲の対象を「考案」全体まで拡大するという思い切ったすそ野を広げないと、この制度そのものが閉塞化してしまうかなという問題が遅かれ早かれ出てくるのではないかなと思います。
期間の問題については、妥当性のところでいけば現行6年というのは、これも保護措置が薄いという代表的な措置だと思いますので、10年は必要であるということだと思うのです。ユーザーの立場と行使される立場のバランスをとるというのはなかなか難しいとは思いますが、私どもも大企業のうちに属するのですけれども、逆に大企業のユーザーの立場ということになると特許制度がありますよ、では中小企業の立場になると何がどうあるのかということをもう一度はっきりみてみると小発明制度の充足しかないということだと思うのです。
そういった意味で権利行使される側の立場としての煩わしい点はこれから多々生じるかとは思いますけれども、まだまだ日本の産業領域でのここのすそ野の広さというのは相当あります。ご存じのとおり、中国の模倣品等についての対応もここが勝負になってきますので、中小企業、個人の発想を切って捨てるというお考えというのは国としてはできないと思います。そういうことを含めて積極的にこの小発明の保護措置をもう少し厚く、平成5年度の小発明の制度から軌道修正する時期に来ていると思います。
以上です。

大渕座長

坪田委員どうぞ。

坪田委員

日本商工会議所の坪田と申します。たまたま今中小企業の話が出たので、それに関連しまして……。
国全体をみると実用新案より特許の件数が圧倒的に多いとなっていますが、東京商工会議所の方で2年前に、製造業、従業員が10人から300人の法人企業3,500社の調査をしたところ500社から回答があって、特許権は500社で1,500件ぐらいもっている。実用新案については900件ぐらい。特許権の方が多いのですけれども、いまだに900件ぐらいは実用新案をとっている。そういうことを考えますと、今おっしゃいましたけれども、小発明とか何かそんなこと、中小企業のことも考えれば、ぜひこの実用新案の制度を所要の改正を行って中小企業にも十分に使えるような制度にしてほしいなと思います。
ここでも検討課題として挙がっておりますけれども、「物」からソフトについても権利を付与すべき対象にするとか、権利の存続期間を延長するとか、できれば実用新案権を特許権へ容易に移行できるような措置がとられれば、これからの中小企業には非常にいいのではないかなと思います。よろしくお願いいたします。

大渕座長

石田委員どうぞ。

石田委員

弁理士会の石田でございます。今お話がありましたように、実用新案制度の制度趣旨にのっとりますと、小発明の保護、低コストで権利取得という観点がどうしても重要だと思います。さらに早期保護ということからいたしますと、今ソフトウエアとかコンピュータープログラム等はライフサイクルが非常に短くなってきている。そういう現状を踏まえて対象を拡大しつつ存続を図るべきではないかと思います。
あとウオッチングといいますか、監視負担というところ、それから先ほど技術評価書の質の問題が出たわけでありますけれども、この点については登録後の情報提供制度の導入を付加することによって担保ができるのではないかと考えております。

大渕座長

臼井委員どうぞ。

臼井委員

臼井と申します。私はいろいろ実用新案の問題点はあるのではないかと思いますけれども、改善を前提に利用したらどうかなという立場でお話をさせていただきます。
まず1つは、今模倣品対策というところでお話があると思いますけれども、これは先ほど中小企業とかいろいろいわれていますが、別に大企業であっても模倣品対策は今非常に苦慮している状況にございますし、推進計画でもその辺をうたわれております。そういう意味では、せっかく実用新案制度がある以上はそれを有効に活用して、今は特にないのですけれども、これからいろいろな製品が水際を含めて日本に入ってくる。そこで実用新案が活用できるのではないか。
1点は早期権利化ということがございます。関税定率法もここで改正されましたけれども、さらにそれが実効あるようにするために、いろいろな点で改善点はございますけれども、そこを直していただいて実用新案を使っていくという立場でどうか。ただ、今いろいろなお話がございまして、そうはいっても無審査で登録になってしまう、評価書の問題、個々ございます。
たまたま韓国を調べてみましたら、特許の件数の半分ぐらいから40%、実用新案が出されております。2002年では特許が10万件で実用新案が3万9,000件ぐらい出ておりまして、ご存じのように中国の出願人は実用新案がほとんどというような状況でございます。韓国の評価制度をみますと、こんなことをいっては失礼ですけれども、日本よりか進んでおりまして、先ほど尾形委員がおっしゃったように評価書の問題が非常に違っております。
これは私の調べた範囲で、もし間違っていたら訂正していただきたいのですけれども、評価書はクレームを含めて実態的な審査をされて拒絶理由通知みたいなものが発せられます。それに対応して出願人の方はクレームの訂正が1回だけできます。そういうことをすれば先ほどのいろいろな監視をする懸念が少なくなるのではないか。ただ特許庁さんの負担が大きくなるということはありますけれども、私としては実用新案をそういう形で活用していく。現時点では模倣品対策というのは非常に大事なものですから、そこにフォーカスを当てた場合、非常に大事ではないか。そういうバランスを考えてこの権利付与対象の範囲と権利期間を考えませんと、ここだけやりますとかなり間違った方向に行くのではないか。
各委員の方がおっしゃるように、権利者側なのか逆の側なのか、これはもう立場が違いますけれども、その辺よくバランスをとって、と同時に権利がもう少し不安定ではない、権利行使するときの評価書をもう少しきちんと対応をとっていただくということにもし改善ができるのであれば、そんな方向で検討していただくことも1つの案ではないかということで提案させていただきます。
以上です。

大渕座長

志村委員どうぞ。

志村委員

私も大企業の方なので、実態面からちょっとお話しすると、先ほど尾形委員からお話があったように、日々いろいろな実用新案の権利をもっている方からいろいろな提案をいただきまして、中には評価書をつけてこられる方もあるのですけれども、その辺が特許の場合とは違って、評価書をつけていただいても権利という概念からするとかなりあいまいなものがありまして、特許権と比較すると2倍、3倍、企業側からみるとどうしても手がかかってしまう。
もう1つは、個人の方からもいろいろご提案を受けるのですけれども、実用新案に対して無審査、要するに実体審査していないのが「私は権利者なんですが」という。お手紙でお話ししても全然わからない。あとはお電話をおかけして、本来特許庁がやられる仕事を実用新案制度とは何かからその個人の方にいろいろご説明しないと理解していただけないというようなことも生じています。
今回、知財研の方でいろいろアンケートをとられて、私も書きましたが、先ほど戸田委員からもあったと思いますけれども、大企業側も中小さんのいろいろな意見を聞いて納得するためには、その辺のデータを事前に全部出していただいて、大企業も別に中小をけ飛ばすわけではありませんから、同じ日本企業としてこれから国際競争力をどうつけていくかという観点からいろいろ考える上ではその辺のデータはぜひみせていただいて、1度検討の時間を与えていただきたいなと思います。
あと、これの進め方なのですけれども、個別に権利範囲はどうしましょう、期間はどうしましょう、そういうことを続けられているよりも、私からすると、この実用新案制度というのは特許制度とのバランスがいろいろあると思うのです。全体の大枠がみえないとどこまで検討されるのかもちょっとわかりづらいところもありますので、大枠をみて特許制度とどうなのかということだろうと思うのです。いろいろな項目をみんな決めてしまって、でも総体的にみて何かこれおかしいねといったとき、その辺の修正がきくのかどうかというのもあると思うのです。先ほどからいっているように、特許制度とのバランスが大企業からみればあくまでも重要であって、個別検討も重要かと思いますけれども、何となく実用新案の改正案全体イメージも、ちょっとイメージしながらでないと、個別検討していっても何かちょっとおかしいかなというような感じがしております。
以上です。

木村審議室長

進め方の問題なのですけれども、できましたら今回と次回はそれぞれの項目に沿った課題で、それについて私どもとしてどのように考えたらいいのか、そういう検討の指針のようなものがいただければありがたいなと思っているのです。確かにおっしゃられたとおり、特許制度全体の中でのバランスの問題が非常に大きな課題です。それはユーザーと、権利行使される側のバランスもあるし、特許制度と実用新案制度のバランスもあるし、当然特許庁として現在審査期間の短縮という非常に重要な課題を抱える中で実用新案制度が全体の中でどういう役割を担い得るのか、どういう効用を発揮し得るのかというようなことも考えていかなければいけないし、私どもとしてどのようなことができ、あるいはこれは難しいのかというようなことも判断としてもあり得るところです。しかし、その前提をつくる上でも、今回と次回はできましたら個別項目ごとの検討をさせていただきたいのです。最終的に何らかの形でまとめていくときに、そこのバランスについても改めて全体を鳥瞰してご議論していただく機会は当然つくりたいと思っております。
アンケート調査の結果なのですけれども、まだ完全に集計が終わってないのですが、どのような形でご提供できるかも含めて検討させていただきます。

志村委員

アンケートの結果も、余りいろいろ統計をとられてしまうとまた細かいところもわからないので、かなりの数になっていると思うのですけれども、なるべく現状が崩れないような形で1回みせていただきたいなという気がいたします。

木村審議室長

検討します。

大渕座長

とり進め方に関しましては、今もありましたけれども、最終的には全体のバランスということで考えることとなりますが、まず、その前提として各論点について順次検討を行っていくというように考えております。
それでは溝尾委員、よろしくお願いします。

溝尾委員

この実用新案制度ができた時点から、制度に対して余りにも大きな期待をかけて、制度で何かをやらせまいとするとか、そのような考え方に立っている部分をものすごく感じるのです。さっきいっていたような個人の発明家とか中小企業からの売り込みは、決して我々の企業にとってマイナスファクターだけではなくてプラスのファクターもあるわけです。それはやった作業のほとんどがむだになりますけれども、1,000件の中に1件ぐらいでも有効な発明があれば、それを吸い上げるパイプにもなるわけです。実用新案制度があるからそういうものが出てくるのではなくて、以前だったら、例えば著作権登録しましたというような形で売り込みに来たケースが幾らでもあったわけです。それは実用新案制度の問題ではないと思うのです。
保護対象をどうするかということに対しては、当社としては拡大した方がいいと思っています。というのは、いろいろなバランスを考えても、プロテクトというのはある程度できる状況が整ってきていると思います。一番大きな要素は、裁判所が無効をちゃんとみるようになってきた。権利行使があった場合は、その権利が有効か無効かというのを、裁判所だけでなくて日常の業務の中でもそれをまず第一に考えるようになってきたということであって、それは特許であっても同じなのです。
我々は東京地裁で、新しい実用新案と特許と古い実用新案と幾つかの権利を並べて権利行使したことがありますけれども、同じように無効は調べるわけです。そのときに出てくる無効資料というのは、必ずしも特許庁の審査過程で出てきた無効資料ではないわけです。新しい無効資料が必ず出てきて、それに基づいて権利が有効かどうかというのはみていくわけですから、具体的に権利について有効か無効かを考える上においては、権利行使する時点では当然見直しがされるというのが前提だと思いますから、特に実用新案だからといっておりの中に入れないといけないという必然性はないのではないかと考えています。
存続期間も、国際的な調和を考えたら10年ぐらいが適当ではないかと思っています。
一番問題があるのは評価書だと思います。何が問題があるかといったら、評価書は行政処分ではないわけですね。東京地裁の判決とか高裁の判決だったですか、評価書が1とか2であっても権利行使して一向に差し支えないのだという判断が出てくるのであって、行政庁が判断しながら、それが行政処分でなくて、ただ単なる参考資料にすぎない。
それと、審査の過程において出願人の意見を聞かないのは何に一番問題があるかといったら、当業者擬制という問題があるのです。審査官というのは当業者のレベルでないといけないということになっているのですけれども、これは発明者というか、その技術レベルの意見を聞かなかったら、当業者擬制というのは絶対完成しないのです。だから、例えばサーチレポートがあった段階で、1回は出願人の意見を聞く機会を設けなかったら正しい進歩性の判断というのはできないと思うのですけれども、評価書制度というのはそこを全く無視しているというか、法律的なもので実態を左右するというか、そういう考え方に立っていると思うのです。
もう1つ、この制度を一番使いにくくしていて非常におかしいと思っているのは、実用新案のもとでの優先権主張が登録になったらできないようになっています。例えばアメリカに出願するのは1年間以内に自由にできるのです。なぜ日本国内に対しては、登録になったらその道が閉ざされてしまうのか。優先権主張するということは補正機会を奪ったかわりとして認められてきた経緯があるのですけれども、実用新案制度に関してはそこの部分は完全に奪い取っている。それは極めて納得できない形で奪い取ってしまっていると感じます。

大渕座長

吉田委員どうぞ。

吉田委員

今回、次回は個別の項目についてつぶす検討会議ということでしたので、事務局の方であとどのような検討項目をご用意されているのかまだちょっとわかりませんけれども、今のお話にもありましたように、次回以降ぜひ加えていただきたいのは、今回は対象範囲と存続期間という議題でしたが、ずっと出ています技術評価書の信頼性の問題、この点をぜひ取り上げていただきたい。これは先行技術の精度がまだまだ粗いのではないか。実態から大分遊離しているのかなと思います。恐らく昭和44年度ぐらいからのデータしかないのではないかなと思うのですけれども、間違っていたらごめんなさい。できれば少なくとも昭和30年代の公知文献、USパテント、その辺が少なくとも対象に入ってこないとどうしても制約が出てくる。要するに信頼性が出てこないということなのですけれども、この辺の検討課題をぜひお願いしたいという点が1つあります。
それから、今お話も出ましたように、登録前後の補正と訂正の機会と中身の見直し、これをぜひ加えていただきたいということです。特に登録前の補正については、むしろ出願から2カ月という制約の中でほとんど使われていないのではないかと思うのです。これは早期保護との関連性で相矛盾するところでもあるのですけれども、実態として行われているのは模倣品が出た場合の追跡、補正、分割、変更等の機会が6カ月の中でどの程度できるのか。現状では2カ月で切られてしまうので、まず使えないということになります。
もう1つは訂正の機会ですね。現行法では、無効審判は自由に起こされる。しかし、それに対する訂正対抗要件としては請求項の削減のみですよね。これはとても対応できないので、少なくとも特許法で定めている部分での訂正機会、中身をここで認めるべきではないかと考えています。
もう1つはコストの問題ですね。現行高過ぎると申し上げていいのかわかりませんが……。これは後々の問題になると思いますが、現行、私は高いと思います。これは後日の問題になると思いますが、例えば現在では初年度から3年度分を出願段階で納めるということになっています。そうするとかなりの金額になるので、その仕組みでもし現行のコストで据え置くのであれば、当初の初年度分のみ登録料を支払うということで、あとは選択制にする。もし改定が加えられるのであれば、当初相当の低料金で出していけるというのがあろうかと思います。何だかんだいっても、ここのコストの部分にメスを入れていただかないと、最後は背に腹はかえられないということでなかなか普及しないかなという点もぜひご検討いただきたいということです。
以上です。

大渕座長

どうぞ。

小野特許技監

1点、今ご議論の中で技術評価書の観点でございますけれども、これは多分、次回以降、権利行使のところでやはり当然大きな課題だと思っております。
技術評価書に関しましては、各委員からご指摘がありますように、現行の評価書の形式、フォーマット、中身に関してはご指摘されるような問題があるということは、実は審査部の方におきましても認識しておりますので、その辺、今回いろいろご提出いただきましたご意見を参考にしながら、より安定性のある評価書にならないかということは今検討しております。
ただ、臼井委員からございましたように、審査部での負担のバランス、ワークロードの問題でございますけれども、これは全体の話がありますように、今特許制度に入っているものの一部がこちらに流れ込むということになれば、実質上は特許で審査をするのか、こちらで評価書を十分丁寧にするのかという負担のバランスの問題ではないかと思っております。これは全体をどうみるかというところで、当然我々としても検討していきたいと思っています。
ただ、今申し上げられます点は、ご指摘の評価書の改善の余地があるのではないかということに関しては、審査部においても今検討しているということでございます。これは背景といたしましては、PCTのサーチレポート等に関しましても来年1月以降、単なる文献の評価だけではなく、オピニオンという形で、よりユーザーが特許性に関して判断できるようにという改善が進んでおりますので、バランスの点を考えまして、その辺を含めて検討していきたいと思っております。

大渕座長

ほかにどなたかございませんか。――尾形委員どうぞ。

尾形委員

先ほど事務局から、全体のバランスの中で迅速化の観点も後で入れて考えるというようなことがあったかと思いますけれども、実用新案、平成5年改正以前は当社も含めて大企業は相当使っていたはずであろうと思います。今仮に我々大企業が使うとしたら1つこういうのがあるのかなと思って、もし検討できるのであればと思うのですけれども、中にも出ていましたが、今特許から実用新案への変更というのは5年半できるようになっているわけです。もちろん実用新案から特許へも変更はできますけれども、登録前までで登録後はできないような形になっております。それが仮に登録から一定期間とか、特許の審査請求期間満了前までは実用新案から特許に切りかえることができれば、我々企業の方からみても、何かよくわからないけれども役に立ちそうだ、とりあえず実用新案で出しておいて、2年半とか3年以内に、登録にはなっているけれども使えそうだ、それだったら特許に切りかえてやろう、でも使えなかったらそのまま実用新案で流してしまおう、そういうことであればかなりの数が実用新案に流れるのかなと。そうすると、今3年以内で特許の方で審査をされているようなものが、よくわからないと特許に出願しておいたものはとりあえず審査請求をしておこうということになろうかと思いますけれども、実用新案であればそこはもう流して権利化しないというようなことで、審査の件数自体は減るのではないかなと思います。検討できるようであればぜひしていただきたいと思います。

大渕座長

溝尾委員どうぞ。

溝尾委員

ちょっと今の点で正しいご理解をしていただきたいと思っているのですけれども、特許から実用新案の変更というのは形式的にはできるようになっていますが、結局、優先権主張ができなかったら実体的には非常に難しいのです。形式的な要件も違いますし、実用新案そのものを特許にもっていくというのはかなり難しいので、変更する上ではある程度内容をいじらないと実質はできないので、優先権がとめられているということは実質できなくなっていると考えてほしいのです。

大渕座長

ほかにどなたかございませんか。――どうぞ。

臼井委員

今お話がありました実用新案から特許の変更ということと同時に、各国制度、実用新案をみますと、併願とか二重出願というのがございます。実質的にドイツなんかは併願を認めた形になっておりますし、韓国は二重出願、中国は併願そのものを認めています。そこがいいのか、今お話があった実用新案から特許出願変更がいいのかを含めて、全体として使いやすい実用新案にしていただくというところを全体としてみていただくという議論をしていただければなと思っております。
もう一点、今日の付与対象のところなのですけれども、その辺のところがはっきりしませんと、広げてしまっていいのか、ざっくばらんにいいますとそこのバランスの問題だと思いますので、ここは今日どうするというのではなくて、継続でその辺のところを加味して決めさせていただいた方がいいのではないかなと思っています。
また、期間の問題もそうだと思いますので、あえて今日どうこうというのではないのですけれども、そういういろいろなファクターをうまく、先ほども委員の方からありましたように、また特許そのものも含めてバランスをどうとるかということがあると思いますので、ぜひそんな議論の進め方にしていただければと思います。
以上です。

大渕座長

先ほどもありましたように、本日この2点についてご議論いただいていますけれども、またさらに他の論点も含めた上で最終的には総合的に検討されることになるかと思っております。
そういう関係で、他との関係で必ずしも具体的にお答えになりにくいというところはあるかもしれませんが、この権利付与対象の関係でほかにどなたかございませんか。――牧野委員どうぞ。

牧野委員

紛争のことを考えますと、的確な審査をしていただいて権利を与えるというのが一番理想的な姿だろうと思います。実用新案が無審査になってから出願件数がどんどん減っていったというのは、やはりその辺の権利の不安定性に対する国民の方のある意味の拒否反応みたいなところがあったのだろうと思います。そういう意味では審査を前提にした特許制度のみという考え、それがある意味では理想的ですけれども、現実の問題としては特許庁の審査の負担、あるいは審査をするための期間を短縮するという目的からすると、ある程度実用新案の方の活用を考えざるを得ない現状にあるのだという認識を前提にすれば、いかに使いやすい実用新案制度を構築するかということになると思います。
それからすれば、ここの具体的検討の対象拡大は思い切って特許と同じように「考案」全体まで拡大するというところを目指して、それにふさわしい細部の詰めをしていくという方が、中途半端に「方法」だけは除くとか、そういうことでない方が制度全体の構築ということを考えた場合にはベターではないかなと思っております。
期間の点もついでに申し上げますと、やはり各国の10年というのはある程度常識的なところかなと思います。
以上です。

大渕座長

志村委員どうぞ。

志村委員

余り議事録に載せていただきたくないのですが、4ページの(E)の内容です。庁の方で具体的にその辺の内容をみていただいているということで、大変失礼なのですけれども、私はそこまで考えてなかったものですから、この辺、実態面からいくと、アベレージでしかいえないと思うのですが、どのくらい時間がかかってしまうのかというのは今わかるのでしょうか。
これは結構大きな問題で、権利範囲を全体いろいろなものに及ぼしたとき、ここが非常に時間がかかるということになると、またいろいろな観点からいくと行政の方で問題も出てくると思うのです。この辺、実際どのようにやられていて、どのくらい時間がかかっているのかをちょっとお教えいただければありがたいのですけれども。

木村審議室長

基本的に件数だけでみますと、補正命令をかけている件数は全体の17%ぐらいと聞いております。その中で基礎的要件、6条の2違反に対する補正命令の内訳としては、保護対象違反になるものが全体の17%の中の3割ぐらいということだそうです。それにどの程度の時間を要するのかということは、次回までにわかる範囲で……。

志村委員

特許制度小委員会の方も、1件当たりの特許に対してどのくらい審査で時間がかかって件数がこうだったと、たしか審査請求の料金を決定するときにそのお話があったと思うのです。先ほど委員の方から実用新案の方が高過ぎるという発想もあったと思うのですけれども、庁として(E)のような仕事をやられているとかいろいろな判断があれば今の価格は妥当なのかどうかですね。ある意味で技術評価書ですか、この辺も変えられていくということであれば、またそれに対してレベルの高い、ある意味では時間のかかる評価をやられるのだろうと思うのです。その辺も全体的に明示していただけると、価格の面とか、ある意味でいろいろな仕事がふえてくる中に、先ほどからいっている特許制度とのバランスの件とか、その辺が委員側としてもみえてくるような気がするのです。

木村審議室長

できるだけ次回までに準備させていただきます。

大渕座長

ほかに権利付与対象の関係でどなたかございませんか。――石田委員どうぞ。

石田委員

付与対象という限定的な話ではないのですけれども、実用新案制度の趣旨が小発明の保護というところは、どうしてもぬぐい去ることができないわけで、当然進歩性の判断においてもそれが相違しているわけですので、例えば対象を特許と同じようにすると、審査制度は特許制度、無審査制度は実用新案制度というようになってしまい、小発明の保護という観点が全くどこかへ行ってしまい、そのような形での制度改革はまずいのではないかと思います。どうしても小発明の保護ということを忘れないような形での改正をしていかなくてはと思います。

大渕座長

ほかにどなたかございませんか。
それでは、また必要に応じてご意見をいただくことにいたしまして、次に本日の第2の論点であります存続期間の点に移りたいと思います。今までの存続期間の点もあわせてご意見をお聞きしていることもかなりありましたが、改めてこの存続期間というところに絞って、以下ご意見を伺いたいと思います。――尾形委員どうぞ。

尾形委員

これは権利範囲の問題と絡んでくるかと思うのですけれども、物品の形状等についての今までどおりの範囲であれば6年でも十分であろうと。それを変える合理的な理由はないのではないか。そうではなくて権利付与の対象ももう少し広げるということであればもう少し長くする、常識的な出ている10年ということもあり得るのかなと思いますけれども、あくまでもこれは対象によるのだろうと思います。

大渕座長

戸田委員どうぞ。

戸田委員

何回も繰り返して申し上げていますけれども、無審査による不安定な権利というのは長く存続させるべきではないというのが基本的なスタンスではないかと思います。
一方、実用新案の制度の趣旨といいますか、目的を考えると、早期保護というのは図らなければいけないと思います。それでは特許と同じように20年とか15年という形で不安定な権利を存続させていいのかといわれれば多分ノーなんですね。これは実用新案制度ワーキンググループの議論ではないのかもしれないのですが、特許制度との関係もあるのです。要するに早期保護ということで実用新案を使う場合には、実用新案を使うのか特許を使うのか、これをある程度選択的に選べるような仕組みができれば、模倣品対策も含めてもっと使い勝手が広がるのかなと。
具体的にいえば特許制度の中の早期審査の運用を変えるとか、もっと早期審査を使いやすくするとか、考えるべきだと思います。早期保護を求めるのであっても、実用新案でいくのではなくて、最初から特許でいけるようにする。早く特許で権利を付与して長い期間、20年きちんと権利をもつというような制度設計もあり得るのではないのかという気がいたします。
ですから、実用新案イコール早期保護だから早く権利になる、そして長い間不安定な権利を保つというのは第三者とのバランスでよろしくないと思います。実用新案の存続期間を何年にするのかというのは具体的に提示はできないのですけれども、私個人的には余り長くすべきではない。仮に実用新案制度を存続させるとしても現行と同じ6年ぐらいでいいのではないか。長い期間を権利として求める方は特許を使ってきちんと早く権利にするというのが妥当ではないのかなという気がいたしております。

大渕座長

ほかにどなたかございませんか。――石田委員どうぞ。

石田委員

保護期間だけのことに限っていうのであれば、今まで実用新案制度の利用率が低かったというのは保護期間の短さにあるといっても過言ではないと思います。他の国の制度等を比較してみると10年が望ましいのではないかと思います。

大渕座長

臼井委員どうぞ。

臼井委員

これもいろいろな絡みがありますのであれですけれども、権利行使をする立場、特に模倣品なんか我々は関係しているのですが、そうした場合、やはり10年ぐらいないと、訴訟をやっている間に権利が切れてしまう。出願して2~3年後に出てきて、それから訴訟して、東京地裁に2年ぐらい、高裁ということで、高裁で終わればいいのですけれども、上に上がってしまったということであれば、その間に権利が終了してしまうということがございます。これはいろいろなメリット、デメリットがございますけれども、権利行使の立場で今回改正ということであれば、私は10年がよろしいです。ただ、これは反対の立場、デメリットの立場がありますので、そこはバランスで考えていただきたいと思っております。

大渕座長

尾形委員どうぞ。

尾形委員

先ほど石田委員から話がありましたように、使い勝手の点でみると6年というのは短いのだろうなと思います。ただ、不安定なものがそんなに長くあっていいのかというバランスの問題だと思うのです。先ほど私がいった実用新案から特許に切りかえることができるような制度であれば、3年くらいで訴訟を起こして、起こすときには特許にしてちゃんとした権利にする。15年なり20年なりになった権利でちゃんと権利行使をしていく。訴訟を10年やっても十分耐え得るということで、使い勝手からいえばそのようなところまで検討すべきであろうと思います。

大渕座長

ほかにどなたかございませんか。
先ほど来、対象の範囲と存続期間についてお聞きしてきましたが、それ以外の点も含めまして何か本日ございましたら。
それでは、先ほど出ておりましたとおり、このような形での個別的な論点に沿っての議論をまた次回以降続けて、これを踏まえてさらに全体についても検討していくということでございますので、本日のワーキンググループはこれくらいにしたいと思います。
本日もご活発な議論ありがとうございました。
最後に、次回以降のワーキンググループについて事務局から事務連絡をお願いいたします。

木村審議室長

本日いただきましたいろいろなご指摘、2つの論点だけではなくて、ほかの論点につきましても私どもの方でそしゃくをいたしまして、次回以降の具体的な内容の設定を進めたいと思っております。
日程でございますけれども、次回の第3回ワーキンググループは10月14日火曜日の午後2時、第4回のワーキンググループは11月13日木曜日午前10時からということで予定をさせていただいております。
会場でございますけれども、ここではございませんで、前回と同じ16階の特別会議室を予定しております。議題等につきましては、追ってご連絡をさせていただきたいと思います。

大渕座長

どうもありがとうございました。
以上をもちまして産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会の第2回実用新案制度ワーキンググループを閉会させていただきます。
本日もお忙しい中、どうもありがとうございました。

――了――

[更新日 2003年10月7日]

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