大渕座長
|
定刻となりましたので、ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会の第3回実用新案制度ワーキンググループを開催いたします。
本日は「特許制度との調整の在り方とその他の検討事項について」ご審議いただければと考えております。
まず事務局の方から配布資料の確認をお願いいたします。
|
木村審議室長
|
それでは、本日の配布資料でございますが、4点ございまして、資料1が「特許制度との調整の在り方とその他の検討事項」、資料2が「実用新案技術評価書の改善について」、資料3が、1枚紙でございますけれども、「実用新案制度見直しによる特許審査迅速化効果」、資料4が「参考資料」でございます。この中には、アンケート調査の結果、過去の審議会の答申ですとか参照条文等がついておりますので、ご確認をいただければと思います。
|
大渕座長
|
本日の議論に入ります前に、事務局からアンケート結果についてのご報告をお願いいたします。
|
木村審議室長
|
それでは、まず議論に先立ちまして、アンケート調査の結果について簡単にご報告をさせていただきたいと思います。前回もアンケート調査の結果を早く示すべきであるというご指摘もございまして、今回、参考資料1というところでございますけれども、まとめておりますのでご説明を申し上げます。
まず、アンケート調査の全体像でございますけれども、3枚ほどめくっていただきますと「調査結果」という紙がございまして、ここに調査対象及び回答数、調査期間等につきましてのデータが出ております。まず、ここに書きましたような知的財産協会さんの正会員の企業(多くは大企業だと思われますけれども)に送らさせていただきました。それから中小企業等のニーズが、実用新案につきましては非常にあるわけでございますので、その中でも研究開発型の中小企業ということで、創造技術研究開発費補助金などの交付を受けている企業に送らさせていただいております。それから個人の方の需要もあるわけでございますので、そのようなところにも配慮して送らしていただいたわけでございます。発送の総数は3,039件でございますが、回答数は777件ということで、回答率は4分の1程度になっております。できるだけバランスよく、大企業、中小企業、あるいは個人、それぞれにつきまして送りましたけれども、回答数等をみますと、中小企業の方、それから個人の方からの回答率は高くないということで、アンケート調査が、短期間でございましたし、ご回答にはご負担もあるわけでございますので、それがこのような結果になってあらわれているということだろうと思います。
いずれにしましても、実用新案制度そのものにつきましては、全体を集計してという数字そのものよりも、むしろそれぞれのパーティごとにみた方が、全体の傾向がよくわかるという面もございますので、その辺、配慮しながらまとめたのがその前の3枚紙でございます。簡単に、これについてご説明申し上げたいと思います。
まず、実用新案制度のメリットとデメリットでございますけれども、早期に登録されること、それから個人の方を中心に小発明でも権利が得られるということが指摘されておりますし、デメリットといたしましては、無審査なので権利が不安定であるということ、それから権利期間が短いということが指摘をされておるわけでございます。
権利行使の状況でございますけれども、全体としては件数的には非常に少ないであろうということでございますが、大企業におかれましては、16%程度の企業の方が権利行使を受けたことがあるとご回答をされているということでございます。権利行使の結果どうなったかということで、和解に至るというのが32%という数字、これは大企業でございますけれども。それから技術評価書の提示がなされていないので、特に対応していないというご回答も23%ということで、かなり多い。訴訟になったというのが20%あるということでございます。基本的には、実用新案権、技術評価書の提示というのが一定程度の歯どめになっている面があるのではないかと思われるわけでございます。今回、法改正によりまして、特許につきまして審査請求料金が改定されるということになりますけれども、それによって実用新案制度の利用が増えたり減ったりするのかということにつきましては、大企業は実用新案につきましては利用をすることはないだろうというご回答が一番多くなっておりますが、他方、中小、個人におきましては、利用を検討していきたいというご回答が半数程度ということになっているわけでございます。
実用新案登録出願を行う場合、どういう場合に行うのか、典型的には特許出願する技術よりも水準が低い場合、それからライフサイクルが短い技術、早期の権利化という典型的な3つのご回答があらわれてきているということでございます。
ページをめくっていただきまして、実用新案の技術評価請求でございますけれども、基本的に獲得されました実用新案権ないしは実用新案登録出願のうち、評価請求が行われますのは30%未満であるというご回答が、大企業でも中小企業でも8割以上となっております。全く評価請求を行わないという回答も、各分ともに過半数を占めているということでございます。特許庁の統計によりますと、実用新案の登録件数に対しまして評価が請求される件数の比率は大体18%ぐらいということでございまして、特許出願の審査請求率が5割であるのに対しまして、かなり低いわけでございますけれども、これは、真に権利行使が必要な場面まで評価請求がなされない、そういうところが一番の要因ではないかと考えております。
平成5年の法改正の影響でございますけれども、これによって、改正後の実用新案制度について現に利用が減っているという実情があるわけでございますけれども、その中で、無審査に起因した権利の安定性への不安、それから権利期間が短いというところが、その大きな理由ではないかということをご回答いただいております。
特許と実用新案の併存でございますけれども、大企業におかれては、昨今の傾向を反映いたしまして、特許制度だけで十分であるというご回答が75%あったということでございます。他方、中小企業、あるいは個人の方では、併存が必要だというご回答が6割、7割といったレベルになっている。ただし、必要だが改善点があるというようなご意見が多いということだろうと思います。
改善すべき点につきましては、登録後の特許出願への変更、本日ご議論いただくテーマになっておりますけれども、それと、存続期間の延長、権利付与対象の拡大といった論点がそれぞれ2割程度あるということでございます。
実用新案制度の改善の在り方ということで、まず権利付与対象でございますけれども、拡大した方がよいという回答とこのままでよいという回答が、大企業、あるいは個人の方ではおおむね拮抗しているということでございますが、中小企業におかれては、拡大を望むような声が比較的多いということだろうと思います。
拡大するとしたらどこまで拡大すべきかという点につきましては、「物」全体まで拡大するというご意見、特許制度と同じ、「方法」まで含むべきであるという回答も5割程度あったということでございます。
存続期間につきましては、比較的明確なトレンドがございまして、出願から10年というのが大勢になっているということだろうと思います。
訂正でございますけれども、これも本日のご議論をいただければと考えておりますけれども、訂正の範囲を広げてほしい、そういうご意見が多いというように理解をしております。
実用新案が今回仮に何らかの措置を施して改正をするということになりましたら、それでも実用新案制度を利用されないというご回答は、大企業におかれては6割程度ある。中小企業、個人の方におかれては、出願件数を増加させるというご回答が一番多いということでございます。
全体像として、この短いご説明でどれだけご理解いただけるかとは思いますけれども、一応ご説明としては以上でございます。
|
大渕座長
|
それでは、議論に入らさせていただきます。
まず、事務局の方から資料のご説明をお願いいたします。
|
木村審議室長
|
続きまして、本日ご議論いただきたい制度的な論点につきまして、幾つかご議論をいただくための素材をご提供申し上げたいと思っております。
まず、特許制度との調整の在り方というのを一つの大きなテーマとしております。申すまでもなく出願後に技術動向が変化いたしましたり、あるいは事業計画が変更されるということで、特許権を取得すべきか、あるいは実用新案権を取得すべきかお迷いになるということは大いにあり得るわけでございます。したがいまして、それぞれ相互に行き来できた方がいいのではないか、そういうご指摘があるわけでございます。現行制度では、基本的に出願が継続している限り、行き来は可能であるということになっておりますが、実用新案登録につきましては、通常、出願が継続している期間が非常に短くて、現在の水準でも5ヵ月で登録になるということでございますので、その間に特許に行くかどうかを決めなければいけないということでございまして、これが、例えば登録後であっても特許に乗りかえられるという制度を導入すべきではないかという伏線になっているのではないかと理解をしております。
実用新案権取得後の特許権設定のご要望ということで、それ自身どういうメリットがあるのか。実用新案権が設定登録された後で、さまざまな動向の変化、事業計画の変更といったことによりまして、審査を経た安定性の高い権利を取得されたい、そういうふうに変わってくる、あるいは権利について長期の存続期間が確保されるようにしたいというご要望もあろうかと思います。それは、先ほど申し上げたアンケート調査におきましても、特許出願への変更をより柔軟に許容すべきだというような傾向がうかがわれるわけでございます。
それに加えまして、2ページでございますけれども、特許権を取得するまでにはどうしても必然的に一定の期間がかかるということで、特許権を取得するまでの間、同一技術を実用新案権で保護をしたいというご要望があるというようにも考えられるわけでございます。
下はアンケート調査の結果でございますので詳細はここでは省略させていただきますが、3ページに飛びまして、諸外国では、どうなっているのかということでございます。簡単なご紹介ですけれども、まずドイツでございますが、実用新案の登録の出願から1年以内であれば、登録後であっても特許出願ができるという制度になっておるようでございます。
フランスでございますけれども、これは基本的に移行ができないという制度になっております。フランスの場合は、特許も実用新案も、基本的には無審査ということでございますので、乗り換え自身に余り実益がないということなのかもしれません。
韓国でございますけれども、登録から1年以内に実用新案権の技術について特許出願ができるということでございます。
中国におきましては、特許出願することはできないということになっておるようでございます。4.で「検討の方向」を書かせていただいております。基本的な視点といいますか、これを3つ書いてございます。
(1)は、いうまでもなく出願人の利便性ということでございます。実用新案権はとったけれども、その後、やはり特許をとっておけばよかったということがあるわけでございますので、それに対してどのようにおこたえしていくかということがまず第1点でございます。
(2)は、第三者の負担ということでございます。実用新案権、無審査でございまして、特許に比べて不安定な権利であると認識されている、そういう中で、存続期間を除いてほぼ同一の独占的な排他権である権利を付与するということになりますので、第三者の監視負担がどうしても避けて通れない問題になるのではないかということでございます。
4ページでございますが、(3)で「審査負担」について書いております。全体として特許の審査の迅速化という大きな目的もございまして、それに資するものであるということが、今回の実用新案制度の改革にもそういう役割が求められる面があるだろうと思っております。そのため、同一の技術について特許審査及び実用新案の技術評価書の作成がダブルに行われるというのは非常に審査負担を増大させることになるわけでございます。評価書の作成は特許審査よりも優先して行っておりますので、先行技術調査の代用としてこれが用いられる可能性もある。下の注に書いてございますけれども、審査請求料は18万4,600円でございますけれども、評価請求料は4万7,200円ということで、安価にこれをやって、これで確かめて特許をとるかどうか決める、そういうビヘービアが起こってくるという可能性もあるわけでございますので、少なくとも審査負担が全体として増大しないように配慮をする必要があるのではないかということも恐縮ながらあわせて書かせていただいておるわけでございます。
具体的な制度設計の検討でございますが、5.のところでございます。まず(1)に期間でございますが、基本的に実用新案の登録の時点で、実用新案登録に係る出願の出願日をもって新しい特許出願が行われたとみる。下の注の8のところに書いてございますけれども、そういう制度にしてはどうかと考えておりまして、その上で乗りかえを考えるということになるわけでございます。そういたしますと、まず、特許制度の審査請求期間は出願から3年ということでございます。時期的制限なしに何どきでも実用新案登録から特許出願可能だということになりますと、審査請求期間は7年から3年に短縮しておりますので、この趣旨を事実上かいくぐってしまうといいますか、没却させてしまうことになる。したがって変更についての制度も参酌をいたしまして、基本的には、時期的制限としては、実用新案登録の出願がなされてから3年以内とすべきではないかということで考えております。
(2)で、評価請求との関係でございます。まず①に、出願人又は実用新案権者による評価請求が行われる場合は、基本的に特許出願ができないということにしてはどうかと考えております。これは、先ほども申しましたように、評価書を事実上特許審査前の先行技術調査として用いることが可能となってしまうので、評価請求が一たびなされた後は、実用新案登録に基づく特許出願は認めないという制度設計にしてはどうかというご提案でございます。
他方、評価請求そのものは他人によって行われる可能性もございます。そういう場合に、全く特許出願への移行ができなくなるというのは、実用新案権者に酷ではないかというご指摘もあろうかと思いまして、それにつきましては、一定期間を付与して、その間に実用新案登録でそのままいくか、あるいは特許出願を行うか、それについて判断をしていただく。仮に特許出願が行われた場合につきましては、評価書につきましては作成をしない、特許の審査において判断するということになるのではないかという考え方でございます。
同様の考え方で、無効審判請求との関係でも起こってくる。これにつきましても、第三者は無効審判請求を行って、当該実用新案権についての有効、無効の帰趨を明らかにしようとしているということでございます。したがいまして、無効審判請求から一定期間経過後までは、他人の行為でございますので、やはり一定期間は特許へ乗りかえるということを認めるべきだろうとは思っておりますけれども、それが経過した後は、実用新案登録に基づく特許出願はできないようにしてはどうかということを考えておるわけでございます。
(4)で、特許を一たび出願した後、評価請求ができるかどうかということでございます。私どもの考え方といたしましては、特許の出願をいたしましても、もとの実用新案権がそれによって消滅するということは今回考えてございませんが、そういたしますと、実用新案権が残っている以上、それについて評価請求ができるのではないかという考え方もあるのではないかと思います。そういたしますと、二重の審査という問題がどうしても出てきてしまうということで、基本的に評価書を作成すると特許は出せないし、また逆に、特許が出ていれば評価請求ができないということを原則としたいと考えたわけでございます。特許出願の放棄ないしは取り下げといったことがあった場合は、当然評価請求ができるようになるということだろうと思っております。
7ページでございますが、これは、当然の技術的な手当てでございますけれども、実用新案権に係る実用新案登録出願が実用新案登録に基づく特許出願の拒絶理由にならないように手当てをしたいということでございます。
(6)で「実用新案登録に基づく特許出願の補正の制限」ということで書いてございますけれども、特許出願の基本的な要件として、実用新案登録に基づいて行われるということで、出願日も当初の出願日に、実用新案登録の出願日に遡及をするという考え方に立っておりますので、実用新案登録の明細書ないしはそれのもととなった原出願の明細書の範囲内で出願がなされ、なおかつその補正が認められるというべきではないかということを(6)でまとめて書いてございます。
以上のような制度のもとで、実用新案登録後も特許出願ができるような制度を考えてはどうかというのが事務局からのご提案でございます。
8ページ以降でございますが、「その他の検討事項」ということで、まず1.が権利範囲の訂正でございます。訂正につきましても、先ほどアンケート調査のところで申し上げたように、一定のニーズがあるということでございます。現在は、自己責任原則に立脚して、請求項の削除のみが認められているということでございますが、これではやはり実用新案権者として酷ではないかというご意見があるわけでございます。
諸外国ではどうなっているかということでございますが、ドイツでは、基本的に訂正という制度は認められていないということでございます。他方、請求項の放棄は判例で認められているということでございます。フランスでは、基本的に新たな請求の範囲を提出できない旨の規定があるということ、韓国では、請求の範囲の減縮等の訂正が可能になっている。中国におきましても、請求の範囲を拡大しない訂正が可能になっていると考えられております。
9ページが、まずアンケート調査の結果でございます。
「検討の方向」というところでは、2つ視点を書かせていただきました。いうまでもないことでございますけれども、実用新案権者の利便性の問題、これは、出願当初から完全な明細書を書くということが望み得ない場合が少なくないわけでございますので、これについては一定の保護をすべきではないかという議論がございますし、他方、訂正といっても特許のように審査をして、なおかつ訂正審判を経てというような制度ではございませんので、第三者の監視負担、あるいは出願人にとっても非常に茫漠とした権利範囲を当初記載しておいて、あとは訂正すればいい、そういうビヘービアを誘発することになりますと、ますます第三者にとって負担が大きくなるという問題があるわけでございまして、この辺の調整が課題になるのではないかと考えております。
したがいまして、「具体的検討」というところでございますが、「訂正の範囲」といたしましては、請求項の削除のみならず、実用新案登録請求の範囲の減縮等を認めようではないかということが、(1)でまず記載をさせていただいております。
(2)で「訂正の時期と回数」でございますけれども、先ほど申し上げましたように、第三者の負担のことも考えますと、これを野放図に認めるというのもいかがなものかということでございます。他方、請求の範囲の減縮というのが必要だということで、そういう要望をできるだけ調和させるという観点から、時期と回数を限定して認めてはどうかという提案をしております。
11ページになりますけれども、具体的には、評価書を取得した後に訂正したい、そういうご要望が当然あるのだろうと思っておりますので、実用新案登録の日から最初の評価請求に対する評価書の謄本の送達から一定期間経過後まで、すなわち、始期を実用新案登録の日といたしまして、まず第1の評価請求をして、その結果をもらってから一定期間までということで終期をとらえて、その期間内に訂正をしていただく。かつ回数につきましても、1回のみということでいかがでしょうかというご提案でございます。ただしこの場合、第三者が評価請求をしたり、あるいは無効審判請求をしたりするということがあり得るわけでございます。この場合は、第三者の立場というものを優先いたしまして、その場合は、範囲の減縮等の訂正はできないということにしてはいかがかと考えております。自分自身は1回だけ訂正ができる。第三者に攻撃をされた場合は一切訂正できないということにいたしまして、適切な権利範囲を設定するインセンティブが低下することをできるだけ防止をしたいと思っておりますし、それによって訂正についての一定のニーズについても満たすこととできないだろうかという考え方でございます。
訂正を認めることになりますと、今度は、それに伴います基礎的要件の判断が必要になるということで(3)に書いておりますし、(4)では訂正違反が無効事由になるということについて書かせていただいております。
13ページでございますけれども、前回、委員の方からご指摘がございましたように、国内優先権主張を伴う出願を認めるべきだということで、現在は、登録後は、国内優先権の基礎とすることができないという制度になっておりますけれども、これを1年間という国内優先権期間を最大限享受できるような制度に改めるということにしてはどうかと考えております。これが13ページでございます。
14ページでございますが、実用新案権を行使する場合に非常に権利行使のハードルが高いという一つの理由として、損害賠償責任というものがあるのではないかといわれております。他方、実際こういう規定があるから権利行使の濫用が抑止されている、そういう指摘もございますので、今回、これの見直しについては見送るといいますか、現行の規定をむしろ維持すべきではないかという結論にしております。
最後でございますけれども、「料金改定」につきまして、「存続期間の延長に伴う登録料の改定」がございます。仮に今回、存続期間を延長するということになりました場合、登録料は当然改定する必要があるわけでございます。第1年~第3年の登録料が重いので、これを軽減すべきであるというご要望もございますので、これにつきましては、平均の維持料全体として大きな変更がないように努めながら、なおかつ今回、特許料につきましても見直しを行っておりますので、それの料金設定の体系なども勘案いたしまして、第1年~第3年の登録料につきましては軽減できるように何らかの配慮ができないだろうかという、これもご提案でございます。
非常に駆け足で、かつ時間も結構かかってしまいまして申しわけございません。説明は以上でございます。
|
大渕座長
|
詳細で、かつわかりやすい説明をありがとうございました。
続きまして、実用新案技術評価書の改善及び実用新案制度見直しによる特許審査迅速化効果について、事務局からご説明をお願いいたします。
|
高倉調整課長
|
資料2及び資料3に基づいて簡単にご説明いたします。
まず資料2ですが「実用新案技術評価書の改善について」、前回のこのワーキンググループでも権利の不安定性を払拭するためには、より一層いい評価書をつくってほしいというご意見が多数寄せられておりまして、今後我々としても、この改善についていろいろ検討しているところであります。現在の検討の方向を2点提案させていただきたいと思っております。
1つは、出願人または第三者が評価書を作成することを要求する際に、意見表明の機会を与えるようにしたらどうだろうか。すなわち審査官が出願人もしくは第三者、すなわち評価請求者の意見を聞いた上で実用新案の内容をきちんと理解し、先行技術調査を行うというようにしたらどうだろうかという仕組みであります。これは、現行のルールのもとでも評価書は、同一人が複数回請求することも可能でありますが、現行のもとでこういったルールを新たに講ずれば、より請求者の納得度の高い評価書ができるのではないだろうかという点が提案の1つであります。
2点目ですが、次のページに書いておりますが、審査官のロジックの記載、特許の場合ですと、引用文献Aと引用文献Bをかくかくしかじかで組み合わせると、本願発明には進歩性がないという論理づけを展開するわけですが、実用新案の評価書においても同様に、単に先行技術の文献を列挙するだけではなくて、あるいは文献の内容にこういうことが書いてあるという現行のやり方にとどまることなく、進歩性、新規性についての理屈づけ、AとBをこのように組み合わせると極めて容易に創作できるので登録性がないのだということを書くということを今考えております。このことによって、評価書に対する信頼性を一層高めて、もって実用新案の登録が本質的にもっている不安定性を払拭するというような考えでおります。
続きまして、資料3でありますが、やや話の違う性質のものでありますけれども、そもそも今回の実用新案の改正の一つの政策的なねらいは、実用新案制度を今よりももう少し使いやすくすることによって、現在大量に特許の方に流れている発明、そのうちの一部を実用新案の方に振りかえていただくことによって、全体としての特許庁のマンパワーの適正配分を図りたいという考え方があります。したがって、今回の改正によってどの程度特許審査への効果があらわれるのかということをご提示することによって、制度改正の趣旨にご理解をいただきたいということで資料3をとりまとめております。これは、実用新案の改正がどのように行われるかによって特許から実用への移しかえが何件ぐらい出てくるかというのは改正の内容が固まればある程度予測できるわけですが、現時点ではまだそこはなかなか難しいので、今回は、仮に特許から実用に100件流れ込みが行われたときに、何%ほどの特許迅速化効果があるのかという割合で説明をしております。
右側の棒グラフの方が特許なのですが、特許出願が仮に100件あったとして、今回の制度改正によって特許ではなくて実用新案の方に振りかえられたと仮定したものであります。特許の場合ですと、請求率が約50%ですから、特許出願100件に対して実際に特許庁の審査官が審査をするのは50件である。仮にこの100件が特許ではなくて実用の方で出願された、あるいは変更されたと仮定しますと、現在、実用の評価書の作成を請求する割合が、先ほど審議室長の話にもありましたように18%でありますので、100件のうち全部評価書をつくるわけではなくて、そのうちの18件をつくる。特許1件の審査に比べまして、実用新案の技術評価書をつくる割合は、絵にはかいておりませんが、約80%であります。したがって、18件の出願について評価書を作成する負担は、特許1件の審査でいえば、その0.8掛けでありますので、14件の処理負担で済む。すなわち結論からいえば、特許出願100件あれば50件審査をしなければならない。これが実用に流れ込めば、評価書18件、特許の出願換算で14件の審査負担で済むのではなかろうかと推測しております。この結果、36件の特許審査をしなくて済む。このことによって、100に対して36、すなわち36%ぐらいの特許負担軽減策が図られるのではないかと我々は見込んでおります。
紙は用意していないのですが、追加的なご説明として3点目ですが、前回、たしか志村委員からだったと思いますが、実用新案の基礎的要件のチェック負担についてご質問がありました。昨年の実績でいいますと、2002年ですが、実用新案の出願件数8,587件で、これを現在4名の特許の審査官がチェックしております。特許の審査官は、通常の特許の審査をすると同時に、週に1回、4名の審査官が1ヵ所に集まってやっておりまして、1週間に約200件、4名で基礎的要件の審査をやっております。1人当たり1日で50件と、かなりの効率的なチェックを行っているということであります。これは前回、志村委員からの指摘に対する回答でありますので、この点についてもあわせて報告をしておきます。
とりあえず事務局からの報告は以上であります。
|
大渕座長
|
ありがとうございました。
それでは、議論に移りたいと思います。先ほど事務局からご説明のありました資料1の検討事項を中心に、先ほどのご説明に関しましてご質問、ご意見等をお願いいたします。
|
長岡委員
|
私は前回欠席させていただきましたので、余り議論についていかないところもあるかもしれませんが、むしろ質問になるかもしれませんけれども、3点だけ申し上げたいと思います。
1つは、特許庁の審議会、いつもきちんとしたアンケートをとられているのは非常にいいと思うのですけれども、17ページにある問3-8ですけれども、なぜ実用新案を使うかというところで、一番多いのが技術の水準が低いというのが非常に多いのですね。技術の水準が低いものを保護することは必ずしも悪くないかもしれませんが、しかし、分野によっては技術の水準が高いところを保護することと正反対になる場合もあるわけで、そういうことでありながら、権利期間を長くするということがどういう意味をもっているかというところが少し検討が必要ではないかというのが第1点です。
2番目は、本文の方の9ページで、問4-8ですけれども、先ほどの補正の件です。請求の範囲の減縮というのが確かに32%で一番多いのですけれども、ただ、減縮は必要でないと思っている人、つまり誤記の補正まででいいと思っている人が、大企業で62%、中小企業でも65%いるとも考えられるわけで、本当に縮減、つまり無審査制度というのは、権利の不安定性が非常に問題になっているわけで、この報告書にも書いてありますように、紛争されるまでは広くとっておいて、紛争が起きたら縮減するというようなことをされるのは制度として非常に困るわけで、本当に縮減まで認めるのはいいのかどうか。特に、かなり周到な検討がしてあって、他人から請求があったときは縮減ができないようにするということなのですけれども、しかし、実際にそれでうまく見分けることができるかどうか。つまりウォーニングを出して、相手が呼応しなかったときには自分から請求を出せばいいわけですから、他社による技術評価書の提出と自社による技術評価書の提出で、本当にそれを分けることだけで濫用が防げるかどうかというのがちょっと疑問だなというのが2番目のコメントです。
3番目は、テクニカルな点なのですけれども、技術評価書が審査請求の代理として使われる。なぜならば値段が安いからだという説明があったのですけれども、これは、値段の方が間違っているわけで、審査請求料は改定されたわけですから、やはりそれに合わせて技術評価書の請求料も改定すべきではないかと私は思います。以上、3点です。
|
戸田委員
|
日本知的財産協会の戸田です。知財協は何回もそもそも論として、実用新案制度を廃止して特許制度に一本化すべきだと申し上げてまいりました。しかし、今、臼井委員からありましたように、早期保護には一定のニーズもあるということで、もし改正するとしたらどんな点に注意すべきかという観点で一言申し上げます。
まず、先ほど高倉さんからもあったのですが、今回の改正の目的というのは一体何なのだろうと。基本的に実用新案制度というのは、特許制度を補完する、小発明を保護するというのが第1点でしょう。第2点は、平成5年改正で、無審査、技術評価書制度を導入し、早期権利保護を図ったということでしょう。つまり、実用新案制度は、小発明を保護するということと、きちんと早期の保護を図るという二本柱で考えていくべきだろうと思います。
今回、特許制度との調整ということでいろいろ検討されています。まず、その点について申し上げますと、実用新案の登録後に特許出願への変更は本当にやるべきなのでしょうか。早期保護を考えたときに、そういうニーズが本当にあるのかというのが私の疑問です。早期保護を考えるのであれば、実用新案としてきちんと早期保護の制度をつくるべきであって、またそこから特許へ乗りかえを認めるということは、企業、出願人の出願行動にも影響してくると思います。後で特許への乗りかえができるのだから、とにかく何か出しておけばいいのだという方向にも走りかねないので、ここはきちんと議論しておくべき問題ではないかなと思います。
登録後に出願変更を認めるということは、今まで特許庁さんはこういう制度を採ったことはないと思います。我々、例えば弁理士試験の勉強をやっているころから、法制度の立法趣旨をきちんと理解しようと努めてきました。出願継続中は変更など認めるのだけれども、登録後はきちんとした権利になっているので、法的安定性を欠くために変更を認めない、そういう説明をされてきたし、われわれも理解してきたと思うのです。これを、今度は、独占排他権を一応付与していながら、ひょいと簡単に変更を認めてしまう、本当にこれでいいのでしょうか、という疑問があります。
それと、最大の問題だと思われるのは、今回のご提案の中で、特許制度で審査されて登録になっても、実用新案登録は残ってしまう点です。そうすると、ダブルパテント禁止の原則と相反するのではないかと思います。もちろん権利行使の際にいろんな加重要件をかけられているので、実用新案はそのまま登録しておいて問題ないじゃないかというご意見も確かにあるのかもしれないのですけれども、登録が併存していて、もし片方の権利が第三者に移転されたときに、利用抵触関係をどう調整するのかという問題とか、特許で補正が加えられたときに範囲が変わってしまうときにどう調整するのかとか、いろんな問題を含んでいると思われます。ですから例えば特許へ出願変更したときには、実用新案登録はその場でみなし放棄としてしまう方が、制度設計としては理屈が通るのかなと思います。実用新案から特許への乗り入れに関しては以上です。
|
木村審議室長
|
今のご指摘でございますけれども、評価書の作成は基本的に特許と実用新案の乗りかえのところの一番のポイントと思います。評価書をどのような場合に作成する、しないというところについては、考え方がやや便宜的といわれれば、確かにおっしゃるとおりだと思うのですけれども、一応整合的な仕組みを考えた。実用新案権を基礎として、そのまま特許出願をして、確かにそういう状況ですとダブルパテントの状態が将来発生するのかもしれませんけれども、それをクリアする必要があるのであれば例えば特許が登録された段階で実用新案権というのは消滅するというような制度を設計することは、それは可能かもしれないと思います。他方、出願の段階で実用新案権をみなし放棄ということになりますと、実際特許審査を待っている期間で、例えば何がしかの侵害ということが起こって、早急に対応しなければいけないというときに、実用新案についての評価請求をすぐ行って、それで対応するということもあるいはできるかなということで、出願人の便宜ということも考えて特許出願時点では実用新案権が消滅しないような制度設計をしているということでございます。実際問題として、仮に実用新案権がずうっとそのまま存続をしておっても、評価請求ができないということでありますと、権利そのものというのは、ほとんど意味のない権利ではないかなというふうにも考えて、あえて、権利を消滅させるところまで措置する必要がないのではないかということです。確かにダブルパテントの原則というのも、それは意味があるからそういう原則があるのでしょうが、全く実害がなければ、それはそれでもいいのかなというふうに、とりあえずここでは割り切らせていただいたということでございます。
長岡委員のご指摘もございましたけれども、技術の水準の低いものについて、果たして保護していく必要があるのかどうかということにつきましては、特許制度全体でみていくということで、確かに実用新案権そのもので、これが国際競争力云々というようなことは、確かに申しにくい面があるのかなと思うのですけれども、実用と特許制度を一つの大きな意味での特許制度と認識して、その中で技術の水準が低いといっても、一定の創作性があるものについて保護をする。そして、特許とのデマケの中で、全体として効率的な制度設計になっていればいいのではないかと、とりあえず私どもは、そこは割り切らせていただいているということでございます。
|
石田委員
|
弁理士会の石田でございます。まず、今回のこの案につきまして、評価書の作成と特許出願における審査とが同じようであり、また違うようでもありという、その辺の考え方にずれがあるような気がいたします。といいますのは、評価書自身は行政処分ではないというようにいわれているわけでありますけれども、審査は行政処分である。ここでは違いがあるわけなのです。ただ、審査の負担の増大、そういうところでは、これは審査と同様の評価をしているわけであって、評価書の作成と審査とが一体どのような位置づけになるかということがちょっと不明確のような気がしておりまして、その点について一度ご説明いただきたいと思います。
今回新しく評価書の改善についてというこのペーパーが、本日出てきたわけですけれども、評価書を改善してできるだけ審査と同じように中身を充実させたいということかと思います。もしそのように審査と同等の評価といいますか、中身が充実しているとするならば、むしろ評価書と特許出願とをリンクさせるのではなくて、評価が一たん出ていれば、むしろ特許出願の方の審査に関しては、無審査とはいかないにしても簡単に通す、無条件とはいいませんけれども、簡単な審査で通すというようにすれば、審査迅速という観点からすれば、その方が迅速化につながるのではないか、そのように考えるわけであります。
さらに、料金につきましても、一たん評価書が出ているものについては、特許出願の審査請求料を値下げするとか、軽減する、そのようにした方が全体的なバランスがとれ、また迅速化につながるのではないか、かように考えるのですけれども、いかがでしょうか。
|
木村審議室長
|
まず第1点目ですけれども、確かにおっしゃるとおり評価書の作成そのものは行政処分ではない。審査といいますか、特許査定なり拒絶査定が行政処分だということだと思うのですけれども、ただ、実際問題として、一方が行政処分であり、一方が行政処分でないから、それによって当然性格といいますか、そういうものが違ってしかるべきだということについては、必ずしも今回の検討の中では、私どもは必ずしも重視はしていないということで整理はさせていただいたということでございます。
技術評価書というのはある意味では非常に多面的性質をもっておりまして、ご承知のとおり29条の2をみますと、評価書を提示して警告をした後でなければ侵害者に対しての権利を行使することはできないと明記されている。したがって、評価書というのは権利行使において重要な役割が与えられている、そういう意味でいうと重要な文書であるということは明らかでありますし、実用新案というのはあくまでも無審査で登録をするという建前になっているので、こういう技術評価書によって事後の権利行使が濫用にならないように配慮した、ある意味では制度上の知恵になっているのかなと思います。他方、特許の場合は、審査の結果、拒絶だということになりますと、特許そのものが登録されないということで、確かにそこの効果のあらわれ方は全く同じではございませんけれども、実質的に特許庁として行います審査の内容においては、さほど大きな差があるわけでもございませんし、現実に権利を使うときに必要になるということで、技術評価書というのが行政処分性はないけれども法律上の意味をもつ文書であるということもありますので、そこは、あながちそう不自然な仕切りではないのではないかということで、私どもとしては割り切らせていただいているということでございます。
|
高倉調整課長
|
石田委員の後半の方の、すなわち改善についての紙に対するコメントの中には、多分2つのご提案があったと思っていまして、1つは、技術評価書が既に作成されているのであれば、それを特許審査のときに使ったらどうかというご提案と、もう一つは、加えて料金減免すればいいのではないか。なぜならば特許の審査の負担がその分だけ軽減されているのだろうからというお考えだと思いますが、確かに政策論としてそういうものもあるのかもしれませんし、一件一件みていけば、実用の評価書をつくっておれば、それに基づいて特許出願、特許の審査請求がなされれば、その分だけ審査が楽になるだろうというのは、確かに算数的にはそのとおりではないかと思うのですけれども、他方で、そうした使いやすい制度というのは、逆に制度の趣旨をやや逸脱した評価の請求がなされるのではないだろうか。すなわち、まずは実用で5万円プラスアルファで評価書をつくってもらって、それも特許審査と同様ということであれば、その結果をみることによって特許への乗りかえ、こうなりますと、相当多数の実用新案出願がなされ、なおかつその大多数が評価請求をなされるのではなかろうか。したがって、マクロでみますと、本来の実用新案制度並びに評価書がもっている制度の趣旨を逸脱した使われ方がなされ、結果において特許審査にかなりの弊害が出てくるのではなかろうかというところを懸念しております。本来評価書というのは、決して特許を取得するための下調べの仕組みではなくて、権利を行使する際に登録の蓋然性をみずからの自己責任で確かめる、その際の行政サービスを受けるというのが本来の趣旨でありますので、その趣旨から逸脱した使われ方がなされる、結果において特許審査にかなりの影響が出てくるというところから、今回の特許実用新案の改正の趣旨に照らしますと、取り入れるにはなかなか難しい案ではなかろうかと事務局としては思っております。
|
熊谷委員
|
先ほど座長もおっしゃったように非常にわかりやすくご説明いただいたと思います。私も前回は、所用で中座させていただいたので、その後の議論は議事録を拝見した限りにおいて理解していると言う前提で、発言させていただきたいと思います。
今回ご説明にあったことにつきましては、実用新案制度全体をどう考えるのかという中で議論すべきではないかと個人的には思います。ですから、実用新案権の存続期間をどう考えるのか、また、実用新案法の保護の範囲をどのように考えるのか等と併せて考えていくべきではないかと思います。また、技術評価書につきましても、技術評価書を導入した制度の趣旨を変更するというのではなく、より充実したものとすることは、立法趣旨をより明確にすることにもなるかと思いますし、また評価書を利用しやすいものにし、また信頼性も高いものにしていくということは十分評価に値するのではないかと思います。その意味で、先ほど高倉調整課長からお話があったように、技術評価書の制度は改正しなくとも内容を充実することにより、権利者として権利行使をする側からも権利行使を受ける側からも、より信頼性が高くなり、また権利行使がスムーズにできるようなものになるのであれば、望ましいのではないかと思います。
今日、各論でいろいろご説明があったところも、おおむね個人的にはご説明の内容に同意するというか、私の個人的な考えも御説明内容に概ね合致しております。御説明においてご懸念がいろいろ表明されているという非常に慎重な言い回しをされているところについて個人的な意見を申し上げたいと思います。
例えば3ページの「第三者の負担」については、何らかの形で特許と実用新案との関係を現行制度よりも緩やかにした場合の第三者の監視負担のことですが、そのことは、4ページ以降で、出願変更を行うときの制限や条件を付すことにより、変更の可能性がある程度明確になれば、第三者の負担はある程度は軽減されるというか、相当軽減されるのではないかと思います。ですから出願変更に制限や要件を付していることは評価に値すると思うのですが、技術評価書を請求した後に変更させないということが本当にいいのかどうかということになりますと、短ライフサイクルで早期実施していれば、出願から3年以内というか、権利設定されてから1,2年の間に権利行使をすることも可能性としてあるわけでございまして、その場合は実用新案制度で10年間の存続期間を全うすればいいのだという理解であれば、権利行使をした場合には、その後、特許への乗りかえは認めないということも一つの考え方かとは思いますが、より慎重な検討は必要ではないかと思います。
また、7ページの(6)に、「特許出願の補正の制限」がございますが、補正についても要件を付すというご提言がなされたかと思うのですが、これにつきましても、例えばすでに権利として設定されているということになりますと、ご案内のとおり特許の場合は、権利後の場合は、訂正の要件が規定されているということになりますので、特許の訂正と同じにする場合のメリット、デメリットという観点からも、補正の制限についての検討を行う必要があるように思います。
訂正については、自分が権利者として訂正する場合と、第三者というか他人に訂正される場合との間のバランスを考えることが必要かと思いますので,ただ範囲を考えるのではなく、要件と時期的な制限をパッケージで考えていくべきではないかと思います。
さらに、11ページの(3)の「単一性の要件」ですが、その前提として、独立特許要件を判断した上で、さらに基礎的な要件についてもチェックを行うと理解すればいいと思うのですが、確かに単一性を満たさないものもあるかと思うのですが、その場合も、新しい考え方かもしれませんが、権利分割を認めるのか、またはどちらか一つのものに訂正で削除なりさせるのかという、単一性を満たさなかったときの取り扱いも必要になってくるのではないかと思います。
最後に、29条の3の「権利者の責任」ですが、結論的には今ご説明があったように、制度改正はなかなか難しいし、権利の濫用の防止の面からは非常に効果的な規定かと思うのですが、一方において、本来の立法趣旨が正確に理解されているのか否か、また、条文の解釈がまだまだ世の中に浸透していないということもあるかと思いますので、制度改正はしないとしましても、権利者の責任についての立法趣旨をより具体的に明確にしていくことが必要かと思います。この規定によって、本来権利行使すべきものなのに慎重になってしまったり、躊躇してしまうというようなマイナスなことが、余り出てこないようにすることも必要かとおもいます。権利濫用の防止は重要ですが、権利行使する側としては、一定の注意義務を果たしたのだから、権利行使をすることができる、もしその後に無効となっても免責されるということがより一層明確になれば、規定としては改正する必要はないかと思います。以上でございます。
|
尾形委員
|
このワーキンググループの審議日程を教えていただきたいと思うのですけれども、今回、9日の日にこの書類をいただきまして、JEITA内にも回付いたしまして、意見、コメント等を求めているのですけれども、実用新案の利便性を高めるということと、第三者負担の軽減というバランスの上で改善されるべきであろうと。JEITAの中では、前もお話ししましたけれども、ソフトウエア等のプログラム、あるいはビジネスモデル等の方法特許、そういったものに対する権利付与の拡大というのは非常に強い抵抗がございます。一方、登録後の実用新案を特許に変更するというようなことに関しては、それほど強い抵抗感がないということで、片や利便性を上げる、片や第三者負担も考えるということからいうと、実用新案から特許への変更はいいとしても、ここに挙がっている各論のところは、それぞれ重要なことを含んでおるわけでございまして、それについて、影響がどういうふうにあるのかということもJEITA各委員からコメント等も細かく求めて、この席でご紹介させていただきたいと思っていたのですけれども、それが今回の場合は、実質1日あったかないかぐらいで、できませんでしたので、その辺が、これからはできるのかできないのかということも含めて、日程等をちょっと教えていただければと思います。
|
木村審議室長
|
会議の最後でまた改めて申し上げますけれども、次回の会合は、ちなみに11月13日に予定をしております。基本的にそこで全体論についてご検討いただく。前回にも御指摘がございましたけれども、今の熊谷委員のご発言も、そういうご趣旨も含まれていると思いますけれども、全体の中でパッケージとしてあるべき姿というのは模索していく必要があるのだろうというふうにも考えておりますので、全体論をやっていただくことは、私どもとしても考えております。最終的にこの報告書をまとめなければいけませんし、もし改正が必要だということであれば、平成16年の通常国会に上程するということも考えておりますので、私どもとしても報告書の原案、あるいは素案のようなものでも作成しながら、それを素材に全体論についてご議論いただくというようなことがよろしいかなと思っております。その状況も踏まえまして、さらに回を重ねる必要があるかどうか判断をしていきたいと思っております。何が何でも次回絶対とりまとめで後はないということではございません。少なくとも全体についてバランスよくご議論いただく機会を設けたいと思っております。
|
吉田委員
|
タカラの吉田です。先ほどから今回の改正の目的は何かとか、制度全体をどう考えるのかというご発言が重なっているのですけれども、この点について、ちょうど今回のワーキンググループの内容が改正の分岐点にあるのではないかということを、多分委員の皆さんもご認識なさってこういうご発言になっているのではないかと私も思います。と申しますのは、平成5年の改正後、昨年度出願件数が実用新案で8,000件強ですか、これだけ激減しているわけですけれども、これに対して、あくまでも特許制度の補完制度として、いずれは消滅せざるを得ないなという視点で改正に取り組むのか、それとも、いや、まだ時期尚早である。独立した小発明の保護制度をもう一度ここできちんと再構築しておくべきだという恒久的な視点で改正に取り組むのか、そういう点で、ちょうど今、分岐点にあるのではないかというぐあいに私は認識しています。
そういった意味で、8,000件に減ったいろんな理由はあるのですけれども、眼目は、私共ユーザーの立場からいわせていただきますと、1点だけなのです。御墨付のない権利を使わざるを得なくなっているということです。やはり権利というのは、国家主体の御墨付をもって初めて、水戸黄門の葵の御紋じゃないんですが、相当の効果をもってくる。ですから、実体審査を経ないで、まだ日本社会には定着してない自己責任という名のもとに、みずからの権利を行使していくという制度は、まだまだなじんでないという意味で、御墨付がない権利をユーザーとしては使いづらいというのが、8,000件の件数激減に至っている大きな理由であると認識しています。
そういった観点で、今回の技術評価書の改善策を拝見させていただきました。そういう意味では相当一歩踏み込んでいらっしゃるなと。新規性、進歩性の判断をいたしますよ、ということですね。それから技術評価書送達後、一定期間にわたっては訂正を認めますということですので、その点については、今の点からすると相当進歩はするわけですけれども、ただ、惜しむらくは、恒久的なある程度の政策、制度をつくるという視点からいけば、ここまで踏み込んだのであるならば、もう一度実体審査へ戻してはいかがですかと。ただ、無制限に実体審査に戻すということではなくて、例えば1回に限って技術評価書の請求に基づいて実体審査をし、審査の上、新規性・進歩性のないものについては登録できませんよ、という通知を発する。それに対して意見のある出願人は、1回に限って訂正と意見書を提出することができる。これだけでも、私共ユーザーからすると、立派な御墨付になるわけです。ほんのわずかな差なので、この点をもう一度お考えいただければと思います。
また、特許制度とのリンクの件ですけれども、現象面からお話しさせていただいて恐縮なのですが、私ども川下産業の立場からすると有用性が高い。といいますのは、どういう現象があるかといいますと、ヒット商品というのは、事前に計算どおりヒット商品が出るわけでもなくて、結果論的に成功しているケースの多々あり、あたかも最初に緻密に考えてヒット商品が生まれたというぐあいに世に喧伝されてますけれども、かなり偶然の為せる技が多いわけです。そういった意味で、発売当初実用新案でよかろう、この程度でいいだろう、ということで出願してあったものが、意外と大ブレークしてしまいヒット商品になる。それがロングランの商品ラインに成長していくということも多々ありますその場合には、保護期間も含めて十分にカバーし切れず、後続商品の出現を余儀なくされライフサイクルを終えざるを得なくなる。こういったケースでの軌道修正をさせていただく意味では、実用新案登録後でも特許に変更できるということについては非常に効果的に実用新案の出願件数促進につながるのではないかと思います。ただ、各論の中では、先ほどお話がありましたように、技術評価後、特許に変更できないということになると、実際には実用新案権で権利行使するということを前提に考えれば、そのような有用性の高い実用新案について、事後の特許変更への道を閉ざすことになり、ここはかなり不都合が生じると思います。
あれもこれも飛んで恐縮なのですが、訂正機会の中で、確かに第三者保護を図るのも当然なのですが、少なくとも無効審判を請求されて権利の存亡にかかわる事態のときに、そういう状態に置かれた段階で訂正が許されない。単なる請求項の削除だけということでは権利者としての対抗措置が全くとれませんので、ここは特許法とのバランスをぜひとっていただきたいと考えます。以上です。
|
志村委員
|
まずアンケート結果で、個人的感想をちょっと述べさせて――あくまでも個人的感想なのですけれども、回答率が非常に低いなというのをちょっと感じまして、一番実用新案を使ってない大企業が最も回答率が高くて、関心があるというのですか、あとのところは20%前後ぐらいということで、これに対しては随分興味が低いのかなと。これはあくまでも感想ですので。その辺の観点からして、22ページぐらいに数字が出たのでわかったのですけれども、特許制度だけで十分だという数がかなり多かったのかなという感じが、この数字をみていたしました。ただ、いろんな事情があるのはわかりますので、あくまでもそれは感想としてちょっといわさせていただきます。
実用新案のもともとの、先ほどからお話しされている目的として、早期に権利を付与していただいて、短いライフサイクルの技術なり製品を守っていくという話なのですけれども、早期に権利を付与していただけるという発想からすると、特許の方が迅速法案というのですか、今2年以上審査がかかってますけれども、それがうまくいって短くなったときに、また実用新案を見直す機会がまたいただけるのかなという気持ちですね。次の観点として、短いライフサイクルの技術という観点からすると、例えば実用新案から特許に変更できるという発想が今回ご提案いただいているのですけれども、そういうことであれば、先般議論した実用新案を、期間を6年から10年に変更するという必要性がないかなと、この辺は、6年から10年に変更するのか、あるいは特許に変更できるようにするのか、どっちか片一方だけでもいいのかなという感じがいたします。
補正・訂正について一言いわさせていただくと、評価請求して一回だけ補正・訂正ができる。出願人なり権利者がそれをやった場合には一回だけできる、それは、私は非常にいいことだなと思うのです。その後、これはできるかどうかわからないですけれども、その補正した内容、訂正した内容について、再度特許庁の方で、セーフかアウトか、その辺の判断を仰げれば実体審査に近いものになって、先ほどタカラさんの方の委員からおっしゃっていただいた内容にちょっと近いのかなという感じがいたしております。
高倉課長の方からお話しいただいた、前回の私の質問に対するお答えをいただきましてありがとうございました。先ほどほかの委員からもあったように、本文の4ページの下をみていて、7、特許の審査請求料が18万4,000何がし、実用新案の方が4万7,200円ということ、先ほど資料3でご説明いただいた実用新案と特許の迅速効果というところで、実際の負担が18分の14だというお話にちょっと近かったような気がするのですけれども、特許と審査請求をやって、審査する能力と評価書作成、この辺のお話が18分の14、ところが、4ページの先ほど私がいいました7の金額は3分の1以下なのですね、この辺をみると、特許出願人の方とのバランスを考えると、余りにも実用新案の方がよくし過ぎなのかなという感じがします。評価請求書を請求するというのは、将来的には、そういう意味では催告その他に使っていくというレベルの高さから考えると、この金額は、4万7,200円というのはもっと高いものでもいいのかなという感じがいたします。以上です。
|
木村審議室長
|
今の志村委員のご指摘で、補正なり訂正した内容について、最終的に特許庁で、それがセーフなのかアウトなのかということを判断を仰げればいいのではないかということですけれども、技術評価書の作成そのものにつきましては、現在回数制限があるわけではございませんので、改めて技術評価書をおとりいただくということは可能であるというような理解をしております。
他方、先ほど吉田委員の方からもご指摘いただいたように、特に無効審判請求があったようなときに、訂正が許されないというのは非常に酷ではないかというご議論がございまして、10ページの(2)のところで書いているようなものなのですけれども、これにつきましては、第三者の負担というものとのバランスを、かなりぎりぎりに考えて、無効審判請求なり、あるいは第三者からの評価書の請求が起こったときに、それに対して訂正で逃げて、その結果、例えば評価書を作成しないで終わる、あるいは無効審判に対して応答しないで終わるというのは、それは、権利を最終的に確定したいという第三者側のご要請に対して、ご回答をしないでそのまま終わってしまうということにもなるので、それについては、何らかの形できちんとセトルをする必要があるのではないか。それに加えて、当初から、ある程度はしっかりした権利範囲というものを記載していただくというインセンティブを失わせないということも考えて、第三者から攻撃を受けた場合は、訂正機会がないということで制度的には考えさせていただいたわけであります。確かにおっしゃることはそのとおりだろうと思うのですけれども、これも、第三者との間に深刻な利益の対立が起こる局面だと思いますので、ここは第三者側を優先させていただいている、そういう判断を事務局としてはさせていただいたということでございます。
|
高倉調整課長
|
志村委員の質問に対して若干回答しておきますと、順番は逆になるかもしれませんが、まず最後の点、評価請求料と審査請求料との違い、それから負担の問題ですが、まず負担は1対0.8なのですが、まずその前に説明しておかないといけないのは、特許審査請求料18万4,600円、この特許審査請求料は、何に対する金額かといいますと、いわゆるファーストアクション、すなわち先行技術文献を調査して最初の通知を行う、そこだけではなくて、その応答に基づいて意見書をみて、補正書をみて、いわゆる再着手といいますか、二回目の着手、それから登録査定を行う負担、場合によっては拒絶査定を行う負担、請求から最後の査定までのすべてのコストに見合った料金でありまして、決して評価書作成に対応するような拒絶理由通知だけのコストではないというのが第1点。
それでも評価書の作成請求は安いのではないかという点があるのかもしれませんが、ここを高くすればいいのかというと、なかなかここは難しい問題がありまして、というのは、実用新案制度を使っている多くの方は、中小企業、個人、ベンチャーということもありますので、ここを直ちにコスト見合いで上げるというのは政治的に難しいのかもしれない。いずれにしても、18万4,600円に対応する金額が4万7,200円ではないということだけはご指摘しておきたいと思っております。
すなわちもう一回繰り返しますけれども、特許審査請求料というのは、先行技術の調査だけではなくて、その後の最終処分まで含めた国のコストに見合った料金の設定になっております。いずれにしても審査官が特許について最初の拒絶理由通知を行うときの負担を1(注:この発言は「特許について最終処分を行うまでの負担を1」と後に訂正)とした場合に実用新案の方は0.8で済んでいるのは事実であります。なお、今回2点の改善提案を行っておりますが、この改善を仮に組み込んだとしても0.8の比率は余り変わらないのではないかという予測をしております。
今後、特許の迅速化が進んでスピードアップし、例えば請求から速やかに特許が付与されるのであれば、実用はどうなるのかというご質問もあったかと思いますが、今後の特許迅速化の一つの措置として出願請求の適正化を組み込んでおります。すなわち必ずしも特許ではなくて、実用で済むようなものについては実用の制度を使っていただくことを前提に、将来特許審査の請求が減っていくであろうというのをある程度見込んだ上で、今後の増員とかサーチ外注の拡充等を見込んでおりますので、特許迅速化の具体的な措置の中には、実用新案の一定の改正による特許迅速化効果も含まれているということでありますので、その点ちょっとコメントしておきたいと思っております。
|
尾形委員
|
今の特許迅速化の件ですけれども、資料3で迅速化効果ということでちょっとコメントさせていただきたいのですけれども、100件の特許が仮に実用新案に流れたとして、その評価書請求の率を18件、これは現行の制度をもとに18%ということだと思うのですけれども、今話し合っているのはまさしくそこのところで、18%ではなくて、もっともっと高くなるような制度を検討されているのだろうと思うので、そうすると、これが18ではなく特許と同じように50だとか60になったとすれば、仮に六十数%になったとすれば、迅速化効果は全くないのではないか、80%の労力がかかるとすれば。この話が本当なのかなという信憑性の問題が出てくるのかなと、きょう初めて拝見させていただいたので、素朴な疑問でございます。
|
高倉調整課長
|
その点は、多分理論的にはご指摘のとおりかもしれませんが、実用の評価書というのは、先ほども私、石田委員に対する答えの中で申し上げたのですが、特許審査に移るための下調べでは決してないのであって、自分が登録した実用新案の権利を行使する前に特許の登録の蓋然性を確かめるためのものであるということからいけば、その18%が著しく上がることはないのではないか。もしそれが上がるとすれば、まず実用で評価書をつくってもらって、サーチレポートをつくってもらって、それから特許にいこう、そう思う方たちは、恐らく特許審査請求並みの50%に近づくのではないかと思っておりますが、我々事務局としては、そういう使われ方をする制度の創設は想定していない。あくまで評価書というのは、実用新案登録法に定められたように、権利行使する前にまず特許庁の評価をみた上で自分でその判断をし、それから行使するということからいけば、今とそれほど変わらないのではないかという予測をしております。
|
溝尾委員
|
根底の議論として、評価書請求が行政処分なのか、行政サービスなのかというところが、平成5年の時点から今日に至っても解決してないと思うのです。行政サービスであるのであれば、民間開放の道筋をきちっと示されてないと、行政サービスとはなり得ない。今現在は、特許庁のほぼ専権事項というか、法律的には完全な専権事項になってますから、実体としたら明らかに行政処分なのですね。ただ、裁判所等ではそれが行政サービスであるというような位置づけになっている、そういう矛盾をはらんだまま現在に至っていると思います。そこをうまく使い分けられているような感じをするのですけれども、一番不利益に思っているのは、実用新案で評価書の請求を受けたら特許への変更ができなくなる。一方において、評価書を早く受けないと不利益になりますよ、というようなものも、今回の場合、盛り込まれているわけですね。例えば無効審判請求とか他人から評価書請求を受けた場合は、明らかに不利益な取り扱いをいたしますよと。それは裏返していえば、権利者としたら、当然早期に評価書請求をしなさい。大事な権利であったら、当然出願と同時に評価書請求をしなさいということを、裏返しにしたらいっていると思うのです。そうでありがら、一たん評価書請求したものについたら、特許への変更出願は一切認めないのだ。そこに今回の提案の中での一番の矛盾点というのが端的に出てきていると思います。
|
熊谷委員
|
先ほども申し上げましたが、評価書に対する立法趣旨がまだ充分に理解されていないのではないかと思います。立法趣旨についての解説や平成5年法の答申等ををご覧いただければ明らかだと思います。評価書制度が世の中のニーズに合致しているかどうかはまた別の問題だと思うのですが、評価書を、権利行使する側と権利行使される側とに分けて趣旨なり性格というものを整理しておく必要はあると思うのです。平成5年当時も、当初から評価書が想定されていたわけではなくて、権利濫用を防止するという観点で、第三者からみた評価書の性格、趣旨が当時活発に議論がされていたのではないかと思います。権利行使を行う側にとってみれば、自己責任がまだ我が国においてはなかなか浸透しないということはあるのかもしれませんが、無審査登録である以上、自分の権利行使に対してはすべて自己責任のもとに行うべきであるということになるわけですが、先行技術調査等の負担が非常に高いので、それをサポートする意味で評価書を制度化したのが当時の制度趣旨だったと思いますので、それをもう一回よく認識した上で評価書についての議論を行わないと、その議論が発散してしまうと思います。
ですから、評価書があれば、ほかは何もしなくていいというわけではなくて、29条の3にも書いてありますように、評価書以外にも一定の注意義務を果たさなければいけないということは、10年前であっても、今回の制度改正においても、ベースには当然あることだと思いますので、その中で評価書の役割なり趣旨をもう一回明確にしておく必要があるのではないかと思います。
|
戸田委員
|
今のお話にも関係するのですけれども、技術評価書作成の後、自分から請求の場合は訂正を認める。そうすると、先ほど志村委員からもありましたけれども、権利行使する場合には、もう一回評価書をとらないといけないということですね。それが、今の29条の2とか29条の3の無過失賠償責任とか相当な注意義務というところに運用としてきちんと反映させるべきだと思います。最終的には特許庁が訂正後の内容で評価書を作成したものをつけなければ権利行使できないのだということをはっきりさせて欲しいと思います。極端な話、自分で訂正しておいて、前の評価書をつけて来る人だっているかもしれない。だから、ある程度きちんとルールというかガイドラインをつくっておくべきではないかなと思います。
2点ほど言い忘れたことがあるのでつけ加えますと、国内優先の問題というのは全然議論されてないのですが、特許または実用新案への国内優先が実用新案登録された後にできるようになると、両方残るのですね。残った後の、最終的に二重登録された場合の調整はどうするのかなというのが論点としてはあるように思います。
もう1つは、先ほどの訂正の問題なのですけれども、これは立法論として、私個人的には、本人からの請求と他人からの請求とで区別するべきではないのではないかと思います。もしやるとしたら時期で制限してしまう。早期保護を目的としているわけではありませんので、例えば3年以内だったら自らの評価請求でも、他人からの評価請求でも訂正できるようにする。他人からの評価請求の場合は、攻撃防御の方法として必要ではないのかなと思います。ある時期を区切って両方できなくするというような立法論もあるのではないかと思います。以上です。
|
臼井委員
|
先ほどちょっと説明させていただいて、皆さんのご意見をお聞きして、実用新案のあるべき姿、どうなのかということで、私としては、小発明と早期権利化という前提でぜひ残していただきたいと思いますけれども、先ほど議論がございました評価書手続きと、その手続きで訂正を認めるということなのですけれども、まだ十分皆さんに理解されてないし、審議会のメンバーで理解されても、一般の方が理解されないと思いますし、今ほど熊谷先生が、平成5年の時の改正にも、なかなか理解されていない。――私も実は理解してなかったのですけれども、その辺をもう少し理解できるような文書の書き回しにしていただいて、わかりやすくしていただくというのが大事ではないかと思うのです。私としては、今回出された趣旨は、基本的には技術評価書についてはそういう方向でよろしいのではないかと思いますけれども、今お話があった訂正を認めた後、もう一回何らかのアクションを出していただきたい。これをやっていただかないと、それがその後どうなったかわかりませんし、その文書をつけていただいて権利行使するというのが一番わかりやすいのではないかと思います。そういう意味で、ぜひその辺のところ、わかりやすく説明できるようにしていただければと思います。
もう1つ、保護範囲のところは、きょう議論ではないのですか。
|
大渕座長
|
基本的には次回のところでございますけれども、短ければ……。
|
臼井委員
|
保護範囲については、全体でバランスをとって――では、次回にお話しさせていただくようにします。
|
溝尾委員
|
先ほど戸田委員がいわれた実用新案から優先権主張してやった場合の位置づけというのは、特許から優先権主張をした出願と同じなので、当然もとの実用新案出願へのみなし取り下げにならないとおかしいと思いますので、それは、そういう運用でいいのではないかと思うのですけれども。それはまだ決まってないでしょう、どういう形にするかというのは。
|
木村審議室長
|
そこの制度設計は、もちろんいろんなやり方はあると思うのですけれども、基本的に登録後、既に発生している権利そのものをなくしてしまうというのは結構乱暴な制度設計にはなるような気もします。そこは出願として継続しているものを取り下げてもらうというものとはちょっと違う面もありますから、どのような制度設計というのは最終的に据わりがいいのかというのは、考えさせていただきたいと思っております。
|
牧野委員
|
初歩的な質問で申しわけないのですけれども、よろしいでしょうか。実用新案登録に基づく特許出願後には評価請求はできないようにするということですね。そうしますと、特許出願、実用新案権はそのまま存続するのだけれども、実用新案権に基づく権利行使は29条の2がかぶってできないことになります。それでは、実用新案登録後の権利侵害には、どう対処できるということになるのでしょうか。特許が成立した後に請求するということになるわけですか。
|
木村審議室長
|
基本的に私どもも幾つかオプションを考えたのですけれども、特許に出願された段階でもとの実用新案というのが権利としてなくなるという考え方をとりますと、特許は出願中で実用新案権はもう存在しておりませんので、何の権利行使もできないということになって、現在は何だかんだいってもふつう審査請求してから2年ぐらいかかるわけなので、その間に侵害ということが起こったときに即座に対応が難しいので、その場合は実用新案で評価請求できるようにしたらいいのではないか。そのかわり、その場合は特許審査を取り下げていただく。要するにどちらで生きていくかは、そのときに決めてくださいという趣旨で、そういう制度設計にはしているということなのです。
ただ、特許が登録されてしまいますと、同一の発明についての特許庁の審査というのは一回だけだということであれば――そこをそういうふうに割り切った制度設計、今回ご提案しているのはそれに近いのですけれども――、そういうものだといたしますと、もととなった実用新案権というのは、原簿には載っていても、事実上評価請求はできませんので行使ができない権利にはなっているという状況だということでございます。それで実害はないと判断しておりますが、最終的にそれでいいかどうかというのは、更に考慮を要する問題かと思っております。
|
高倉調整課長
|
議論の流れを折ってちょっと恐縮なのですが、先ほど志村委員の質問に対する答え、若干訂正しておわびしておかなければいけない点がありますので発言させてもらいますと、先ほど私、審査請求料と評価請求料との関係で、実際の審査負担は、特許についての最初の拒絶理由通知を1として実用新案の評価書0.8と申し上げましたけれども、今事務局の私の同僚の方から詳しい説明があったのですが、特許の最終処分を1とした場合に、評価書の策定負担が0.8である。したがって、評価請求の料金は極めて相対的には安いというのは、志村委員ご指摘のとおりということであります。おわびして訂正しておきます。済みませんでした。
|
石田委員
|
評価書のことを再度お話をしたいと思うのですけれども、評価書の意味ということについては十分理解をしているつもりなのですけれども、評価書の意味というものが権利行使をする前提のものだということだとするならば、それと登録後の出願とをリンクさせるところにどうしても無理があるのではないかというところを感じます。
|
大渕座長
|
ほかにどなたかございませんか。――ほかにどなたかご発言、ご質問がなければ、ちょっと時間が早めではございますけれども、次回、今まで行ってきました各論点ごとの意見を踏まえて全体にわたるご議論をしていただきますので、本日のワーキンググループはこれくらいにしておきたいと思います。この際、何か、それに関係しまして特にご発言等はございませんか。
|
戸田委員
|
先ほど尾形委員からあったので確認なのですけれども、次回のワーキンググループで方向性を決めるというように理解してよろしいでしょうか。特に保護対象の議論、それから実用新案登録から特許への出願変更の議論というのは、必ずしも集約されておりません。また、技術評価書に関しても相当議論があるかと思います。是非討論、議論の機会を継続して我々に与えていただきたいと思います。
もう1つ、今まで全く議論されていないのが、発明と考案との違いとか、進歩性の議論だと思います。全く議論されていないのですけれども、議論しなくていいかどうかも含めて、検討いただければと思います。これは、保護対象の議論とも若干関係があるのかもしれません。あと小発明を保護するという意味での「考案」の定義、「容易」とか「きわめて容易」という進歩性の議論というのは、現場では確かにございます。実用新案の制度を見直しているわけですので、この点についてどう考えるのかというのも検討したら良いのではないかと思いまして申し添えます。以上です。
|
木村審議室長
|
今、ご指摘いただきましたように、次回のワーキンググループで全体の方向性を、全体論の中で判断していただければと思っております。そういう意味におきまして、今おっしゃられたとおり、次回のワーキンググループはそういう議論に当てたいと思っております。
小発明か大発明かという論点なのですけれども、実用新案と特許には、保護すべき技術のレベルにおいて、若干なりとも差があって、あるいはあってしかるべきだというような考え方もあると思うのです。その上で、なおかつ実用新案制度は無審査特許制度である、第二特許制度であるというところまであえて今回踏み込むことが本当に必要なのかどうかということについては、事務局としては、必ずしもそこまでは踏み込んでは考えていない。仮に特許とのすり合わせを完全にするのであれば、特許の定義にも「高度なもの」というような概念がございまして、これも見直すというようなことにもなりかねないので、そこまでいきますと、本当に特許法の定義から全部見直していかなければいけないという話にもなるかもしれないということで、今回議論としては、事務局のご提案の中からは省かせていただいている、そういう次第でございます。
|
大渕座長
|
よろしいですか。――活発なご議論、ありがとうございました。それでは、先ほど一部出ておりましたが、最後に次回のワーキンググループについて、事務局から事務連絡をお願いいたします。
|
木村審議室長
|
次回、第4回ワーキンググループでございますが、11月13日、木曜日、午前10時からの開催を予定しております。会場は今回同様16階のこの場所、特別会議室を予定しております。議題等につきましては、また改めてご連絡いたしますけれども、基本的には今までご説明申し上げたとおりでございます。
|
溝尾委員
|
前回も申し上げたのですけれども、10時ちょうどスタートというのを20分ぐらいおくらせてもらえないのですか。
|
木村審議室長
|
その件についても検討して、改めてご連絡いたします。
|
大渕座長
|
以上をもちまして、産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会第3回実用新案制度ワーキンググループを閉会させていただきます。本日もお忙しいところ、どうもありがとうございました。
|