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第4回実用新案制度ワーキンググループ 議事録

(本記事作成:特許庁総務部総務課制度改正審議室)

  1. 日時:平成15年11月13日(火曜日)10時30分~12時30分
  2. 場所:特許庁 特別会議室
  3. 出席委員:
    大渕座長、石田委員、臼井委員、尾形委員、熊谷委員、志村委員、坪田委員代理(天野)、戸田委員、長岡委員、牧野委員、溝尾委員、吉田委員
  4. 議題:取りまとめの方向性について
議事録

大渕座長

定刻となりましたので、ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会第4回実用新案制度ワーキンググループを開催いたします。
本日は、取りまとめの方向についてご審議いただければと考えております。
それでは、早速議題に入らさせていただきますが、資料を事務局でご用意されてますので、説明をお願いいたします。

木村審議室長

まず配付資料の確認をさせていただきたいと思います。クリップどめの資料、外していただきますと、本日事務局で用意させていただいております資料は1点でございまして、「報告書案」というものでございます。それとともに電子情報技術産業協会様から尾形委員を通じまして、日本知的財産協会様から戸田委員を通じまして、それぞれ意見書のご提出がございましたので、それもあわせて席上に配布させていただいております。
それでは、お手元の資料1を中心に私の方からご説明をさせていただきたいと思います。
本日は、前回のお約束もございましたが、全体論について、いずれにしてもきちんと議論させていただくということでございます。議論の便宜のために、報告書スタイルのものがあった方が議論しやすいのではないかということも考えまして、このようにさせていただいたわけでございます。全体は3章構成でまとめさせていただいておりまして、まず目次をみていただきますと、第1章が「実用新案制度の在り方」ということで、これにつきましては、存続論、廃止論を含めた制度全体の在り方にかかわることについてまとめさせていただいております。
第2章でございますけれども、仮に存続するということになりますと、どのような制度的な改善を行えばよろしいのかという点について、まとめておりまして、大きなポイントで申しますと、権利付与対象の問題、存続期間の問題、特許制度との調整、相互乗り入れの問題、それから権利範囲の訂正の在り方、それから優先権主張、損害賠償責任、登録料の改定、その他ということで、運用による対応についても含めてここに書いてございます。
第3章で、それぞれの項目ごとの事項を改めてまとめさせていただいているということでございます。
それでは、早速中身に入らさせていただきます。
第1章の全体論、まさに制度そのものの存続をどうするかという議論でございますけれども、それについて、まず第1章は「実用新案制度の在り方」ということで、第1節で変遷と現状について触れております。これにつきましては、皆様方、十分ご承知のことでございますので、改めてご説明するまでもないと思いますので、説明は割愛させていただければと思っております。主として平成5年の改正の趣旨、現在の実用新案の具体的な使われ方についてまとめておるわけでございます。
飛びまして10ページでございますけれども、「実用新案制度の現代的意義の再検討」でございます。平成5年に実用新案法の大改正がございまして、無審査登録、それから事後評価型の技術保護制度というものが導入されたということでございます。このときは、開発リードタイム、製品のライフサイクルの短さ、そういうものに対応して早期実施が必要なものに迅速かつ簡便な保護を与えるという趣旨で改正が行われたということでございます。このときの立法事実が今も引き続き存在しているのか、あるいは変化を遂げているのかということをまず確認をしておくことが、制度そのものの存廃の判断にとって有用なのではないかということだと思います。
まず第1点目で「早期の権利設定の実現」ということでございますが、これにつきましては、ライフサイクルの短期化というのは、今もみられる傾向ではないかということと思いますが、現在特許の審査待ち期間、FA期間は、現在24ヵ月ということでございますし、最終的に権利として確定するまでには拒絶理由通知を経て、それに対して応答を行うことが必要でございますので、権利化にはさらに時間がかかる。仮に早期審査というものを利用した場合であっても、通常84%のものには拒絶理由があるということでございますので、最終的に権利として確定するには時間がかかっているという現状がある中で、事業化のタイミングが早い技術について、実用新案を通じた保護が図られるべきではないか、そういうニーズというのはあるのではないかということが書いてございます。
11ページでございますが、実用新案制度そのものにつきましては、実体審査を経ていないということで、出願から現在5ヵ月で登録がなされております。引き続き短縮化には我々としても努力をしてまいりたいと思っておりますけれども、開発のリードタイムが短く、製品のライフサイクルが短い、そういう技術について保護をしていくためには、特許制度では達成困難なメリットというのがあるのではないかという書きぶりをさせていただいております。
「早期権利行使の実現」ということで、要するに早くて、かつ強い権利保護ということだろうと思います。特許制度では、公開によって補償金請求権は発生するわけでございますけれども、これは実施料相当額であるということがございまして、他方、実用新案でございますと、登録を速やかに行えば差止請求権、損害賠償請求権、もちろん評価書の提示が前提になりますけれども、そういう強い保護が得られるというメリットがあるのではないかということでございます。
12ページでございますが、特許ということになりますと、物的な、あるいは人的な、さまざまな面でコストがかかる。それに対して簡便で、かつコストの低い、そういう制度として実用新案をとらえていく、一定の魅力をもつ制度ということがいえるかどうかということだと思います。
4点目で「自己責任による実用新案権の安定性」ということで、これは自己責任型ということで一定の弊害がありえるわけでございますけれども、それを最小化するような制度がビルトインされているので、不適切な権利行使は抑えられているのではないかという見方、もちろんこれの薬が効き過ぎていて使いづらいというご批判があることは当然承知をしておるわけでございますけれども、一定のこういう歯どめがあるということでございます。
5で書いてございますのは、発明・考案の保護の制度全体におきます特許庁の審査を含めました資源配分の最適化という問題です。特許審査の迅速化は今喫緊の課題ということになっておりますが、発明・考案の保護全体の維持に係る資源配分を実用新案制度の利用の拡大、活性化ということを通じて実現することもできるのではないかということでございます。
これらの諸課題につきまして、ワーキンググループでどのような議論があったかということを簡単にまとめさせていただいております。実用新案制度は、国際競争力の観点から余り意味のある制度ではないし、既に歴史的使命を終えたのではないか、特許制度に一本化することが適切ではないかというご意見は確かにあったわけでございます。一部には濫用についての懸念もあわせて表明されたように記憶をしております。
他方、生活に関連した製品をつくり出す産業、あるいは中小企業・個人発明家といった方々が、実用新案権を依然として利用していらっしゃる、そういう実需があるし、例えば模倣品対策などで実用新案制度が有効に機能する面があるのではないかというようなご指摘もございまして、存続すべきとのご意見が多数であったということで、ここでは表現をさせていただいております。
ただ、現行制度そのものは無審査制度を導入したときに、濫用の防止を徹底するような制度設計を行っておりますので、それとの関係で、やはり使いづらくなり過ぎているということがご指摘としてあったということだろうと思います。
したがいまして、こういうものを受けまして、13ページで、とりあえずのまとめ方といたしましては、「実用新案制度の在り方」ということで、早期実施が必要な技術の保護、そういう要請はあるだろう。実用新案制度が有効であって、引き続きこれを利用したいという要望も根強いだろうということを考えますと、これを急に廃止をするということではなくて、実用新案制度そのものは存続すべきであるのではないかということで、ここでは書かさせていただいております。
現行の実用新案制度が使いづらいものとなっているという批判がありますので、魅力を向上させるための改正を行っていくという方向でまとめております。ただ、そのときに、実用新案登録される権利の濫用の防止という指摘、それは引き続き重要だということでございますので、その間にうまくバランスをとっていくことが重要ではないかということで書かさせていただいております。
14ページ以降が「制度改正の具体的方向」ということでございまして、第1節が権利付与対象の問題でございます。現状といたしましては、よくご承知のとおり、現在実用新案法は「物品の形状、構造又は組合わせに係るもの」に限定をされているということでございますので、これに該当しない限り、早期保護を幾ら必要とするものであっても保護は受けられないということになっておるわけでございます。アンケート調査をとらさせていただきましたけれども、14ページから15ページにかけましてまとめてございますが、基本的には特許制度、実用新案制度の併存については、大企業が75%、他方が特許制度だけで十分といっておられまして、中小、個人の方は、71%の方が併存が必要だということで、併存が必要だというように回答された方の中で、改善すべき点があるというご回答の中には、やはり拡大した方がよいというご回答がかなりの程度あったということは事実としてあるということだろうと思います。
「諸外国の権利付与対象」についてもまとめておりますけれども、本日の説明は省略させていただきたいと思います。
16ページ、検討の基本的な方向性でございますが、まず「早期保護に対する具体的要請」があるのかということ、平成5年の改正から特に今日まで技術の進歩があったし、特に情報技術等の進展が目覚ましいものがあるということで、早期保護の要請がある技術の範囲というのは拡大しておって、それは必ずしも現在、実用新案の保護対象には入ってこないものであるということはいえるのかもしれませんけれども、実際どの程度強いニーズとしてそれが存在しているのかというのは、みきわめていく必要があるだろうということでございます。
(2)で書いてございますのは、権利内容の判断の容易性、自己責任型の制度ということで設計をしておりますので、侵害の有無等について当事者間においてまず一義的には判断をされなければならないということでございまして、そのために権利付与対象に権利範囲を容易に判断することができないものが含まれるような場合には、第三者が自分の製品が果たして他者の実用新案権に抵触しているのかどうか判断を容易にすることはできないし、ひょっとして抵触しているのではないかと考えて、そうではないのに例えば実施を差し控えてしまうというようなことがあるのかもしれないといった問題はあり得るわけでございます。したがいまして、現在のような定義になっているわけでございますけれども、例えば権利範囲を広げるといたしますと、広がった部分について、こういう懸念が具体的に顕著なものとして存在するのかどうか、よく考えていく必要があるだろうということでございます。
(3)は、「物」と「方法」による十全な保護ということで、経時的な思想を表現するものとして、「方法」による保護が望ましい場合があるのではないかということでございます。
(4)は、特許出願から実用新案登録への出願に切りかえられるケースが、年間100件を超える程度のオーダーでございますけれども、ございます。そういう場合には、特許は広いけれども、実用は狭いということでございますので、その変更は必ずしも容易ではないのではないかという論点が、ややテクニカルな論点でございますけれども、ございます。
(5)で、権利付与対象に該当するかどうか。例えば物品でございますと、形態的な要件、これは現在ございますけれども、あるいは「物」であるかどうか、「考案」であるかどうか、あるいは産業上の利用可能性といったことも基礎的要件の審査としてみていかなければいけないということが起こってくるので、これがどこまで容易に判断できるのかという議論があるわけでございます。18ページでございますけれども、「採りうる選択肢」といたしまして、18ページから19ページにかけて3つまとめております。
(1)というのは現在と同じ案でございまして、(2)は「物の考案」全体まで拡大する。「物」の中にはプログラム等を含むソフトウェア関連技術も含むという理解をしております。(3)は特許と同じ、「考案」全体まで拡大をするという案でございます。それぞれ、特に権利を取られる側のニーズと第三者の側に回られる場合のデメリットといいますか、そういうものをうまく利益衡量をする必要があるのだろうということでございます。それぞれのオプションの詳細については、説明は省略させていただきますけれども、ワーキンググループでのご意見は、これについては非常に大きく分かれたわけでございます。
プログラムと方法については、外見から権利範囲が判断できないですので、第三者からみて非常にわかりにくい、権利範囲の判断が容易ではないので、監視負担が増大するというご意見、仮に権利を付与する対象としたとしても、権利者の側からみても侵害というのが非常にわかりにくいので、実際模倣品に対応する上で使いづらいということがあるのではないかというご意見もあったと思います。それに、こういうプログラムですとかビジネス方法といった分野の特許率は非常に低い。下に注がございますけれども、ビジネス方法関連の特許率は17%程度であるということでございまして、実用新案になっても無効理由を含む蓋然性というのは非常に高いだろう。そうなると、本来権利として存立し得ないようなものについて、それぞれに監視負担が生じるというのもいかがなものかというご意見もあったと思います。権利濫用の懸念につきましては、評価書によって権利濫用は防止できるという考え方もございますけれども、公知文献等が少ないということもあって、肯定的な評価が、例えば評価書等においてもなされる可能性が高いのではないかというご心配も出されていたということだろうと思います。
他方、こうした権利範囲の判断は、特許制度において日常的に行われていることで、特にことさら実用新案だから困難になるというわけではないのではないかというようにも考えられますし、早期保護に値する技術があれば、その「方法」を含めて多面的な保護を認めていくべきではないかというご意見もございました。小発明の保護という観点からも「方法」を除外すべきではないのではないかというご意見もあったと思います。
関連いたしまして、プログラムですとかビジネス方法、これは特許制度での保護も歴史が浅いわけでございまして、影響についてよくみきわめていくべきではないかというようなご意見もあったと思います。
「権利付与対象の在り方」のところでございますけれども、意見が大きく分かれておりますけれども、ソフトウェア技術の現在の形態的要件を満たしていない技術について、実用新案権による保護がぜひ必要だといういわば実需に基づくご意見というのはさほどなかったのではないかということで、必ずしも早期保護の必要性、あえて定義を変えてまで早期に保護する必要性が本当に切迫しているのかということについては、必ずしも確信がもてない状況ではないかというようにも思いますし、当然さまざまな濫用等についての懸念、あるいは監視負担が増大することについての懸念が非常に強く示されているということもございますので、権利付与対象については、現行の要件を維持することが適切ではないかと、ここではとりあえずまとめさせていただいております。
いずれにいたしましても、技術の今後の発展状況ですとかソフトウェア関連技術の特許保護による影響をみきわめながらさらに検討を続けていけばどうかということで、まとめをさせていただいておるところでございます。
第2点目が「存続期間の在り方」でございます。21ページでございますが、これはご承知のとおり、現在出願から6年ということにしております。これが、幾ら何でも短過ぎるのではないかというご批判があるところでございます。
現存率のデータ、製品のライフサイクル、これは平均8年という、やや古い資料なのでございますけれども、98年の統計ではそういうものがあるということ。それから諸外国のさまざまな例、ドイツ、韓国、中国等では、出願から10年になっているというようなことがございまして、アンケートをとりました結果も、これにつきましては、10年程度が適当なのではないかという比較的明確なトレンドが描けているのかなとも思うわけでございます。
検討の方向といたしましては、実用新案制度の魅力を減少させている一つの大きな要因が権利期間の短さであるということだといたしますと、それについて、出願から10年とするのは一案ではないかということでご議論をさせていただいたわけでございます。議論の際には、15年、20年というような案も出させていただいたわけでございますけれども。
ワーキンググループでのご意見は、不安定な権利であるので、それが存続する期間が延びるというのは監視負担に影響があるというご意見もございました。ございましたが、紛争解決までにかかる期間、あるいは他国制度との比較等をしますと、出願から10年ぐらいがいいのではないかというご意見が多かったように思います。
したがいまして、23ページでは、10年に延長することが適切ではないかということでまとめをさせていただいております。
3点目の論点でございますが、「特許制度との調整の在り方」でございます。これもご承知のとおり、現在、特許出願と実用新案登録の出願、それぞれ乗り入れをすることができる、変更することができるわけでございますけれども、元の出願が継続している場合に限って可能だということで、実用新案登録につきましては、長くても5ヵ月程度で登録をされてしまいますので、それを過ぎますと特許に行くことはできないということでございます。
こういう中で、実用新案権を取得した後でも特許権を設定したいというご要望があるということでございます。技術動向の変化、あるいは事業計画の変更によって、安定性の高い権利を取得したいというニーズはあるし、長期の存続期間、20年の保護を受けたいというご要望も事後的に出てくるということはどうしても避けがたいことであろうということでございます。アンケート調査でも、こういう点について望まれるご意見がある。アンケート調査の結果でもうかがえるのは、特許権を取得するまでには一定期間を要するということで、特許がとれるまでの間は同一技術を実用新案権で保護できるようにすべきではないか、そういうご要望もあるわけでございます。
25ページにまいりますと、ドイツ、韓国等でも同様の制度がございます。
検討の方向といたしましては、これもすべての項目について共通なのですけれども、基本的には、まずユーザーのニーズが基本にあるのだろうと。それに対して考慮しなければいけない事情といたしまして、(1)にございますような「第三者の負担」、典型的にはダブルパテントになるようなことになりますと、それだけでも監視の負担等が増大するということになります。
(2)で「審査負担」の問題もある。今回の実用新案制度が全体としての発明・考案の保護全体の効率化、迅速化というものに資すものであるべきだという前提に立ちますと、同一技術について特許審査、それから評価書の作成が二重に行われるということは避けるべきだろうと思いますし、特に実用新案でまず出しておいて、評価書をとって、それをみて、いいものであれば、やはり特許に出そうかな、そういうビヘービアが起こってまいりますと、評価書を事実上先行技術調査の代用にお使いになるということになりますので、これは特許審査にも非常に大きな影響が出てくるということにならざるを得ないわけでございます。
26ページに「具体的検討」ということでございます。いずれにしても、仮にこういう乗りかえをより柔軟に認めるということになりますと、制度論的に幾つかクリアをしておかなければならないテーマがあるのだろうということでございます。
1つは出願からの期間による時期的制限、これは、特許は当然審査請求期間が3年という制限がございますので、実用新案を経由することによって、これが実質的に脱法されてしまうということになるのは非常に困るだろうということでございます。
評価請求に伴う制限ということで、先行技術調査として評価書をお使いになるということを防止する必要もございますし、他方、そうはいっても「他人による評価請求」が行われたような場合も特許に行けないというのは、権利者にとって酷であるという考え方もあるわけでございます。
無効審判請求も、他人による評価請求と同様、基本的には他人による行為でございます。それに、無効審判の審理がかなり終わりの方にさしかかった段階で特許の方に抜けられるということですと、請求人にとっても非常に酷な結果になるので、その辺のバランスをとる必要があるわけでございます。
27ページでございますけれども、実用新案登録に基づく特許出願後の実用新案権に対する評価請求、そういう特許出願の後で評価請求をするということになります。これも二重審査になってしまいます。そこをどういうふうに調整をするか。
基本的に特許の登録と元の実用新案権の関係があろうかと思います。ダブルパテントを防止しなければなりませんし、審査負担を増大しないということの前提に立ちますと、実用新案登録に基づく特許出願を行ったときに実用新案権を放棄していただく、あるいは特許出願の特許権の登録時に実用新案権を放棄していただく、そういう考え方があるわけでございます。それぞれの利害得失につきましては、下の注27のところでまとめております。出願を行ったときに放棄をするということですと、制度としては簡明ではあるけれども、基礎とした実用新案権は放棄されてしまっていて後戻りができないということでございますし、逆に登録時に放棄ということになりますと、制度としてやや、ややこしいのではないかというご批判があり得るところでございますけれども、特許出願が係属している限り、評価請求ができないとするとどのみち実用新案権が行使できない、そういう事情もあるわけでございます。
「ワーキンググループにおける意見」につきましては、存続期間を延長するのであれば、実用新案登録後に特許出願を行える制度を導入しなくてもいいのではないか、そういうご意見はございましたが、全体としては、初めから特許が望ましいのか、実用が望ましいのかわからないことも多いので、それは柔軟に移行できることが望ましいのではないかというご意見が多かったということでまとめさせていただいております。
ただ、評価書に記載された評価に基づきまして保護がどちらに向いているのかということをみきわめたいというご要望は確かにあるわけでございます。これにつきましては、評価書は本来権利行使のために用いられる書類であって、どちらの保護が望ましいのかを選択するために利用するものではないだろうということと、そういうことになりますと、特許審査の遅延の問題がどうしても出てくるであろう。そして、基本的に評価請求をするというのは、特許権ではなくて実用新案権を行使しようという意思のあらわれということで、ご本人のご意思としてそういう選択権を行使されているということなので、別に評価請求後は特許出願できないようにしても、それそのものは不当ではないのではないか、そういうご意見もあったと思います。
仮に先行技術調査として利用することを避けるためには、評価請求の手数料を引き上げればいいのではないかというご意見もあったわけでございます。
特許出願を行った後、実用新案権が存続し続けるということになると、ダブルパテント禁止の原則に照らしても必ずしも好ましいことではないのではないか、混乱するのではないかというご指摘もあったわけでございます。
28ページでございますが、「実用新案登録に基づく特許出願制度の在り方」全体につきましては、出願人のご要請があるということで、このような制度を導入していくべきではないかということでまとめをさせていただいております。
その際の制度的な(やや詳細にわたりますけれども)設計の問題につきましては、まず年限につきましては、出願から3年ということで、実用新案登録の出願から3年以内に限るべきである。
評価請求に伴う制限でございますけれども、基本的には評価書の先行技術調査として利用されることの防止の観点から、出願人又は権利者による評価請求の前に限る。他方、他人によって評価請求をなされた場合は、この場合の権利を奪うというのは酷でございますので、本人の選択権を奪うのは妥当ではないだろうということで、一定期間に限って特許出願を可能とすべきではないかということでございます。その場合は、特許に移行してしまうということが前提になりますので、評価書の作成というのは、もうしなくてもいいのではないかということでございます。
無効審判請求時を基準とした時期的制限ということでございますが、無効審判請求も他人からの行為であるということで、一定範囲で特許出願を認める必要があるけれども、余り後の時期になって、審理が進んだ段階で特許出願を認めるというのも、立証作業、特許庁の審理、それぞれむだになるということもございますので、そこをあわせた制度設計が必要で、無効審判請求後、一定期間内に限って実用新案登録に基づく特許出願を認めるべきではないかと考えております。
実用新案権に対する評価請求の制限の問題、これも二重の審査による審査負担の増大というものを防止しなければならないということで、実用新案登録に基づく特許出願後は、実用新案権に対する評価請求はできないようにすべきではないかということでまとめさせていただいております。他方、特許の登録までには時間が要するということでございますので、審査の着手の前に特許出願の放棄ないしは取り下げがなされた場合は、元となった実用新案権の権利行使を可能とするため評価請求をできるようにする。評価請求が復活するという制度設計はいかがなのであろうかということで、ここでは書かせていただいております。
29ページでございますが、「実用新案登録に基づく特許出願及びその基礎とされた実用新案権の関係」ということで、基本的に特許審査の着手までは一定期間を要しますし、その間、実用新案権で保護することは可能とすべきだというご要請がある。それは非常に濫用的に使われるのではないかということにつきましては、特許出願を取り下げた上で評価請求をしていただくという手間はかかるわけでございます。そのまますぐ実用新案が行使されるわけではないということでございますので、必ずしも第三者の負担が過大になるというわけでもないだろうということで、とりあえずは実用新案登録に基づく特許出願後においても、基礎とした実用新案権を維持することが適切ではないかと考えております。ただ、ダブルパテントは厳に排除しなければならないということはございますので、特許権の設定登録に当たりましては、基礎とされた実用新案登録に係る実用新案権を放棄された場合に限って認めていくということが適切ではないかと考えております。
(6)は、拒絶理由について除外をつくらなければならないということでございます。
(7)でございますけれども、実用新案登録に基づく特許出願は、当初の明細書等の範囲内とするということを書いておるわけでございます。
次に、30ページ、権利範囲の訂正でございますが、現在は請求項の削除しか認められていないということで、事実上認められていないわけでございまして、これが権利者にとって非常に酷ではないかというご議論があるわけでございます。
先を急ぎまして、31ページで「検討の方向」ということで、権利者の利便性を考えますと、出願当初から完全な明細書とすることは望み得ない場合も少なくないし、補正の機会が非常に限られているということもございますので、実用新案権が非常に不完全な明細書等のまま登録されてしまうということは実態としてある。したがって、登録後、訂正の機会をより柔軟に認めるべきだというご議論はあるのだろうと思います。
他方、第三者にとって、当初、例えば非常に不当に広い権利範囲の請求項が記載されておって、なおかつ、これが評価書ですとか、第三者から提示をされるような先行技術を参考にしながら訂正ができるということになりますと、これは当初からきちんとした整備された権利範囲を書いておこうというインセンティブは低下をいたしまして、かつ不当に広い権利範囲を有する実用新案権がふえてしまうという弊害があり得るということでございます。
具体的な検討課題といたしましては、ここでは4つ書いてございますが、まず訂正を認めるのかどうか、認めるとすると、一体どこまで認めるのか。
先ほど検討の方向のところで申し上げました利便性と第三者の負担のバランスをとるために、訂正の時期と回数にいかなる制限を加えるべきなのか、そのバランスをよくとる必要があるのではないかということ。
訂正の適否の判断、それから訂正に対する基礎的要件の判断というのは、する必要があるのかどうかということ。
仮にその訂正を認めるということにしますと、訂正違反を無効理由にする必要があるのではないかという議論でございます。
「ワーキンググループにおける意見」といたしましては、基本的に減縮まで認める必要はないのではないかというご意見もございましたが、実質的な訂正を全く認めないというのは権利者にとって酷ではないかということで、減縮訂正等について認めてもいいのではないかというご意見が多かったと思います。評価書を受け取った上で範囲を減縮訂正したいというご要望が一番あるということでございます。
第三者とのバランスをとるために、やはり訂正の時期、回数は制限をすべきであって、例えば出願から3年、あるいは6年といった時期を制限して訂正を許容すべきではないかというご意見もあったわけでございます。
訂正の在り方でございますが、訂正の許容範囲については、ニーズにおこたえするということで拡大をする。その場合、一定の制限を設ける必要があるということを基本ラインでここではまとめさせていただいております。
訂正の範囲につきましては、特許と基本的に同様に、減縮訂正については認める。当然のことながら、新規事項の追加、あるいは請求の実質的な拡張・変更については禁止をするということだろうと思います。
訂正の時期と回数でございますが、基本的には、時期につきましては登録の日から、最初の評価請求に対する評価書の謄本の送達から一定期間経過後までということで限定をし、かつ1回のみ認めるということにすべきではないかと考えております。
第三者の監視負担の観点から、他人からの評価請求ないしは無効審判請求の以降は、これについてもいろんなご議論があるところでございますが、もう訂正ができないようにすることがインセンティブの低下を最小限に食いとめるために必要なのではないかということで、ここではまとめさせていただいております。
出願から3年、6年という期限につきましても、検討はしたわけでございますけれども、念のため訂正を行っておこうという行動はどうしてもふえてしまうだろう。訂正には当然評価請求が前置されるということになりますと、評価書の作成負担というのは増大せざるを得ないという問題があるのではないかと考えております。
請求項の削除につきましては、回数制限なしにいつでもできるということでよろしいかと思います。
「訂正の適否の判断と訂正に対する基礎的要件の判断」でございますが、適否の判断は、基本的に当事者でできることは当事者でやっていただくというのが実用新案の本旨であるということであれば、これについては評価書の対象とする必要はないのではないかと考えておりまして、他方基礎的要件につきましては、審査できちんと判断をするということになるのではないかと考えております。
「無効事由の追加」これは、当然訂正違反については無効事由として規定をするということになるわけでございます。
35ページでございますが、国内優先権主張について認めるべきであるというご主張がございました。これについても前回議論をさせていただいたわけでございますけれども、その後も私ども検討をずうっと続けておりまして、「具体的検討」というところで書いてございますが、ややテクニカルな議論になるのかもしれませんけれども、基礎とした実用新案登録に出願されている例えば技術Aと、改良技術のA+αというのがあったとして、その場合、優先権主張の出願がされます前に、基礎とした実用新案登録出願の登録実用新案公報が通常発行されているだろうということでございます。基礎とした実用新案登録出願時に技術Aが新規であったという場合、請求項1にAが書いてあって、特別な技術的特徴は技術Aであったということといたしますと、請求項2の特別な技術的特徴は、技術Aは既に公報が発行されていて公知になっておりますので、αと考えざるを得ないわけでございまして、請求項1にはαの技術というのは含まれておりませんので、請求項1と2というのは単一性の要件を満たさないということになってしまう。どうしても単一性違反が論理的にクリアできないのではないかということを考えておりまして、そうであれば、改良技術を別出願で出願されているということと全く差違がないということで、余り実益がないのではないかという結論に、事務局の検討においては至っているということでございまして、そのようにここでは書かさせていただいております。
37ページの損害賠償責任でございますけれども、これも権利濫用の増大の防止の観点から、やはり現行制度を維持するということでまとめさせていただいております。
38ページ、登録料の改定でございますが、出願時に納付する1年~3年目を軽減し、かつ仮に存続期間を延ばすということになりますと、7年目以降を追加しなければなりませんので、それについて新設をするということになろうかと思っております。
39ページで、「その他の制度改正項目」でございますが、「進歩性」についてもみるべきだということでございます。ここまで議論をいたしますと、特許の定義そのものとのバランスの問題も発生してくるので、引き続きそれともあわせて慎重に検討をしていくべきではないかということでまとめさせていただいております。
「評価書作成機関」につきましては、先行技術文献調査と同等の公平性、信頼性を有する民間の調査機関というのがあるのかどうかということを考えますと、評価書作成機関を民間に直ちに開放するというのはやや現実的ではないのではないか、時期尚早ではないかということでまとめさせていただいておりまして、引き続き状況が整うことを確認しながら検討していけばよろしいのではないかというまとめ方にさせていただいております。
40ページに「運用による対応」でございます。評価書につきましてはさまざまなご批判がございました。
先行技術調査の充実、請求人の方の意見表明機会の付与、審査官の論理(ロジック)の記載につきまして改善を図ってまいりたいと考えております。
出願から登録までの期間を短縮するということで、現在5ヵ月を要しているわけでございますけれども、これを大幅に短縮すべく努力をしていきたいということでございます。実用新案制度というのは無審査なのだということを、よく世の中に周知せよということもございまして、これについてもさまざまな手段を通じて周知を図ってまいりたいということでございます。
第3章は「検討のまとめ」ということでございます。これについては、重複いたしますので説明は割愛させていただきたいと思います。
説明に時間がかかってしまいまして申しわけございませんでした。以上でございます。

大渕座長

数多くの論点につきまして、詳細で、かつ、わかりやすい説明をありがとうございました。それでは、議論に移りたいと思います。ただいまのご説明に関しまして、ご意見、ご質問をお願いいたします。

熊谷委員

申しわけございません。飛行機のトラブルで遅くなりましたことをおわびをしたいと思います。ご説明は途中から伺わせていただきましたが、すべての論点について非常にわかりやすくおまとめいただいたと思います。ご説明のなかには、個人的な意見とは異なるものもございますが、今ご説明があったように、このワーキンググループのミニマムなコンセンサスであるということをわかりやすく、きちんと整理していただいていると思いますので、報告書として質の高いものになっていると思います。それを前提に、二、三、気づいたことをお話しさせていただきます。
お話はあったのかと思うのですが、17頁の(4)として「特許出願から実用新案登録出願への円滑な変更」がまとめられておりますが、後のご説明は、ほとんど実用新案登録出願を特許出願に変更することに関するご説明になっておりますし、今回、実用新案権が設定登録された後でも特許に変更する制度が導入されるということであれば、検討の方向のところで、実用新案登録出願から特許出願への変更について、余り触れられていないというのがひとつです。あと、(5)の「権利付与対象に該当するか否かの判断の容易性」についても、おおむねこのとおりだと思うのですが、個人的には、以前もお話をしたかと思うのですが、物品だからすべて容易であるとか、方法だからすべて容易でないというのではなく、物品の中にも難しいものがあるかもしれませんし、方法でも、例えば図面がなくてもAとBをまぜてCにする方法とかというものであれば、比較的判断が容易なものがあるかと思いますので、あくまで相対的なものではないかなという気がしております。
さらに、19~20ページにプログラムとかビジネス方法のところのことが書かれておりますが、これも結論においては、この結論でよろしいかと思うのですが、ただ、ビジネス方法は、ある意味では短ライフサイクルであり、早期実施される技術であることは疑いのないものではないかと思いますので、実用新案登録による保護のニーズがまったくないということはないと思いますし、また、特許率が17%であって、それが実用新案で権利濫用の懸念につながるということも事実かもしれませんが、逆にいうと特許の審査が非常に機能しているということは、実用新案登録で保護しても、評価書制度が充実すれば、権利行使することができないような評価書が作成されれば、権利行使の濫用という面も、100%濫用が防止できるということではないと思いますが、ある程度は防げるのかなという気がいたします。
なお、33ページの訂正ですが、今のお話だと、特許でいう訂正請求という形になるのかと思うのですけれども、その際には、その訂正が、訂正の要件を満たしているかどうかを判断しないで、無効理由にするということですが、33ページの一番下だと思いますが、今回は訂正の要件に独立独歩要件、つまり新規性なり進歩性を判断するという要件を課していないことから、その他の要件は、当事者間で比較的容易に判断できるということであれば、特許庁においても比較的容易に判断できるということになれば、訂正請求があった場合に、訂正の要件を判断するか否かという点についても検討は必要なのかなという気がいたします。
最後ですが、今回、制度改正を見送ったというか、まだコンセンサスが得られてないところについては今後も検討を続けていくという形でモーメンタムを失わない形で検討を継続することが書かれていますが、今回の改正とは関係ありませんし、余りここで神学論争してもしようがないと思うのですが、個人的には進歩性の議論は、発明の定義の議論とは分けて考えられるのではないかと思います。あくまで発明の定義を満たしたものについて、他の技術なり先行技術と比べて進歩性を満たすか否かということになりますので、実務上はどちらで考えても余り影響はないと思いますし、その意味では、今の審議室長のご整理も一つのご整理かと思うのですが、定義を変えないと進歩性の要件を合わせられないということは余りアプリオリに決まることではないのではないかと思います。
全般的には非常によく整理していただいているかと思いますし、個人的には、このワーキンググループのミニマムなコンセンサスというものがここにすべてあらわされているのではないかと思います。以上でございます。

坪田委員代理(天野)

私の方からは、実用新案制度を実際に利用している中小企業者の立場から利用者としての意見を申し上げたいと思います。2002年の特許庁の統計によると、実用新案件の現存件数は、特許権の件数の16.2%しか全体で使われてないという意見から、実用新案制度を廃止してもよいというような意見も以前はあったかと思うのですが、中小企業に限って言えば、2001年の東京商工会議所の調査からもわかるように60%も利用していまして、特許制度だけではなくて、特許制度と実用新案制度という選択肢として非常に重要なものですので、ぜひ存続させていただきたいと思っておりまして、存続するのであれば、今回のような形で改正がぜひ望まれると思っております。具体的に存続期間の延長ですとか、あとは実用新案権を特許法に容易に変更できるような改正というのがあれば、実際に知的財産の種か芽かもしれないですけれども、それが実際に広がっていく可能性はありますので、ぜひそういった改正について、利用者の立場から強く望みます。以上です。

尾形委員

JEITAの尾形でございますけれども、JEITAの方からは見解と、JEITAの法務・知的財産権総合委員会の見解ということで意見を出させていただいております。お手元に資料がございますけれども、ページが打ってなくて申しわけないですけれども、1ページ目、2ページ目、3ページ目にわたりましては、権利付与対象の拡大ということで、JEITAの中での権利付与対象を拡大することについての懸念ということで、この拡大については反対であるという旨の見解を表明させていただいております。
これは、今回の事務局でまとめていただいた案の中には、拡大をしないという方向で入っておりますので、JEITAとしては非常にハッピーであるというふうに考えております。
3ページ目の真ん中辺、存続期間の延長につきましては、6年でいいのではないかという意見もかなりあるわけですけれども、今回の事務局の出されておられる10年というのにJEITAとしては賛成をいたします。
3ページの下の方から、実用新案登録に基づく特許出願につきまして、特に最後のページの一番頭の方にあります「特許出願時に元の実用新案登録は『みなし放棄』したものとすべきである。」という見解をまとめさせていただいています。これは、ちょっとその下に書いてありますけれども、事務局原案のように、特許出願後も元の実用新案権が存続するという形にしますと、特許出願したものを別の実用新案登録出願に変更することができるであろう。そうすると、特許出願自体はみなし取り下げになる。その結果として、元の実用新案権は生きている。かつ評価請求も可能になる。そうすると、別に出願した、変更した実用新案権と元の実用新案権が重複して存在することになり得る。これはぜひ避けるべきであろうということで、実用新案登録に基づいて特許出願をしたときに、元の実用新案はみなし放棄とすべきであろうということでございます。
そもそも出願から3年くらいたてば、権利者が長い権利、あるいは使い勝手のいい権利で保護するのか、あるいは早期の保護を希望するのか、実用新案で保護するのかというのは、選択が十分可能であろうと思われますので、その時点で出願人の責任において、特許による長期の保護を選ぶのか、あるいは実用新案による早期保護を選ぶのか、その選択をさせるべきであろうと思います。
訂正についてでございますけれども、訂正の回数は事務局案どおり、やはり1回のみにすべきであろうということでございます。
権利の安定性等、あるいは第三者の監視負担等からいえば、時期は出願から6年までぐらいでよろしいのではないかというふうにJEITAとしては考えております。
もう一つ、利便性の方面からいいますと、他人からの評価請求、あるいは無効審判請求を受けた場合に、訂正請求が全く認められないというのは、逆に実用新案権者に余りにも酷であって、バランスを欠いているのであろうと思います。それを考えると、これは訂正を認めてもいいのではないかと考えております。
JEITAとしては以上の意見を述べさせていただきます。

木村審議室長

今のポイントにつきまして幾つか、ご回答というのも変なのですけれども、させていただければと思います。
まず、みなし放棄とするかどうかというところでございますけれども、基本的に私どもとして、純粋な意味でのダブルパテントというのは排除すべきだと思っておりまして、権利が複数存続していて、なおかつ両方とも使える状況になっているというのは絶対に避けるべきだろうと思っております。しかしながら、特許に出願してしまうと、事実上評価書請求はできないわけでございまして、他方で特許権は当然成立していないわけでございますので、そういう意味でいうと、ダブルパテントというような、それに伴う弊害というのは避けられているのではないかと事務局としては考えておるのです。他方、特許出願と同時に実用新案登録を放棄させるということになりますと、もちろんそれは当然請求人の意向として、長期の保護を望むということであえて賭に出たのだから、元に戻る必要はないだろうという考え方も当然成り立つとは思うのですけれども、特許の場合ですと、早期審査請求をすれば別ですけれども、そうでなければ、24ヵ月程度のFA期間を要するということにもなりますので、いずれにしてもその期間内の侵害に対して急遽対応しなければいけないというようなことがあるかもしれない、こうしたプロテクションのニーズがどの程度あるのかということとの比較もする必要があるのかなとは思っております。
変更の件なのですけれども、まだ実務的に100%詰め切ったわけではないのですけれども、変更というのは、仮にこういう制度設計をするのであれば認めるべきではないだろうと考えております。変更といいますが、ある意味では再変更のような形になるのだろうと思います。実用新案から特許に行って、さらに実用に戻るというのは、それは本人のご選択によって特許を一たん選んだ以上、再度実質上の変更のような形では認めるべきではないというようにも思いますし、仮に特許で拒絶査定になってから、やはり実用に変更ということですと、審査にただ乗りをするようなことにもなってしまう。無効審判が仮に起こっていれば、そのときにどう調整するのかとか、あるいは訂正との関係、例えば明細書の事項の範囲内であれば、一種拡張を認めるようなこともできてしまうということになると、基本的に特許出願して、その後、実用新案に戻ってくることによって、――現実にどの程度そういうことが起こるのかという問題はあるのかもしれませんけれども――本来できない筈の訂正が特許を通じることによって脱法的にできてしまうのではないかというようなこともあって、変更については、むしろ慎重に対応した方がいいのではないかと考えております。

尾形委員

今のような形で特許出願したものに対して変更出願をさらには認めないということにすれば問題解決するのでしょうけれども、そうしますと逆に、実用新案に基づいて特許に出願した利便性というかメリットというか、何なのだろうなと。特許出願に変えることによってもう少し権利範囲の広いものとか、実用新案への変更等、さらに分割等、そういったことがいろいろできるというので特許出願に変えるのであろう。それができないということになると、もともとの実用新案をそのままにしておいた方がいいであろうというロジックが成り立つのかなと思うのですけれども、いかがでしょうか。

木村審議室長

確かにそういう面もあるとは思いますけれども、特許になりますと、権利の存続期間も、それ自身長いわけでございますし、権利としても、実用新案よりも強い権利として与えられる。例えば権利の侵害に対する相手の過失の推定でございますとか、いろんな権利行使する上での攻撃手段といいますか、そういうものが充実しているような面もあるので、実用新案に再度変更を認めないと特許に行く意味が余りないのではないかというのは、必ずしもそうとは私どもとしては考えていないということだと思うのですけれども。

戸田委員

日本知的財産協会の戸田です。今回ペーパーを出させていただきました。この内容については説明を省略しますけれども、誤記がございまして、申しわけございません。3枚目の下から3行目、「第三者からの訂正請求」とありますけれども、これは「第三者からの評価請求」の誤記でございますので、訂正をお願いいたします。
内容でございますけれども、我々の主張してきた点、報告書にかなり反映していただいて、どうもありがとうございます。保護対象に関しては、いろんな拡大に関する懸念がございますので、やはり現状のままが良いと思います。
権利期間も、我々は基本的には延ばすのは反対だと申してきましたけれども、これは、後で申し上げます、訂正の範囲、時期との関係で、場合によっては10年というのは許容できるのかなと思っております。
今ご議論されていた実用新案登録に基づく特許出願ですけれども、私どももこれは出願時に放棄させるべきではないのかなと思います。そのまま残しておくということになりますと、制度がかなり複雑になると思うのです。例えば実用新案登録が第三者に移転されたらどうなるのかとか、制限をまた設けなければいけないのかとか、再変更の問題もございました。もう一つは、特許出願が拒絶査定になってしまっても実用新案登録はそのまま残っているわけですね。でも、実質的に評価書もとれないし、この権利、登録は一体何なのだろうという気がいたします。あと、早期権利行使を望む人は、特許出願に変えた時点で、特許の早期審査制度を使うべきではないのかなと思います。実用新案登録で行くのか、特許出願で行くのかを選んで、決めたら、そのまま自己責任を負うという制度設計の方が、むしろ利用が促進されるような気がしております。
もう一つ、先ほど木村さんからご説明があったのかもしれませんけれども、実用新案登録に基づく特許出願の範囲、条件に関して、登録時の願書に添付された明細書、図面のすべてから特許出願を認めるのか、ある程度の制限を加えるのか、ここはちょっと議論をされた方がいいように思います。少なくとも特許出願を最初から出したものより広い範囲の、それから時期的にも有利な保護を与えるのはおかしいと思うのです。ちょっと勉強不足で私はよくわかってないのですけれども、ある韓国の資料を見ると、韓国は実用新案登録出願と特許出願の二重出願ができるのですが、請求範囲に記載された範囲内で特許出願ができる。私が入手したものにはそういうふうに書いてありまして、韓国はそういう形で制限をつけているのかもしれない。登録時に記載されたクレームから、ある意味で広げるようなものというのは排除しているのかもしれないですね。私がいいたいのは、特許出願として最初から出したものと、実用新案登録に基づく特許出願との間で、実用新案登録に基づく特許出願の方が有利な条件になってしまうというのは、ちょっとおかしいのではないかなということです。
減縮訂正に関しては、私どものペーパーに書かせていただきましたけれども、基本的には時期で制限すべきではないのかなと思います。我々は出願から3年と書きましたけれども、3年に固執しているわけではございません。6年程度でも良いかと思います。自分の評価請求と他人からの評価請求又は無効審判請求で訂正の可否が変わるというのは、バランスがとれてないと思います。以上です。

長岡委員

非常に立派な報告書を読ませていただいて、ありがとうございました。余り大きなポイントはないのですけれども、報告書を読ませていただいて気がついた点を四つ申し上げます。8ページの下から9ページに「実用新案の新規性・進歩性の水準」というデータが紹介してあって、実用新案と特許で余り実際上は進歩性の差がないという意見の傍証として、技術評価書の評価結果と、特許審査における特許査定の結果が比較されていると思うのですけれども、これは本当に妥当な、比較できるような水準かどうか疑問です。権利行使に使う場合のサンプルに限ったのが実用新案技術評価書ですから、これで一体何がわかるのかなというのが疑問です。そもそも前回ご紹介があったアンケート調査で、実用新案を使う動機に対する答えのかなりの多くは、特許にならないからというのがあったように思いますので、実際上はかなり実用新案と特許では違うのではないかというのが私の認識です。
10ページ目で、早期権利設定の実現の必要性の中に納得できない理由が示されています。特許は、もちろん実体審査が必要なので時間がかかる、これは理由としてわかるのですけれども、拒絶理由が多いからなかなか権利にならないことが、何故実用新案の利用を進めなくてはいけない理由になるのか、よくわかりません。拒絶理由があるということは、権利として認めるべきでないものが出願されているケースがかなりあるということで、ということは、同じことが実用新案にも当てはまるわけです。特許では拒絶理由が多くて最終的に権利にならないから実用新案が重要だというロジックはちょっとおかしいのではないかなというのが、2番目の点です。
第三に、先ほど熊谷先生からのコメントがあったのですが、39ページで進歩性との関係で、発明の定義の「高度」をとらなければバランスしないと書いてあるのですが、これは本当にそうなのかどうか、今回、軽々に決めるべきことではないということには賛成いたしますが、将来のオプションとして、発明の定義の「高度」を削除しないといけないということまで書かれているのですけれども、本当にそれが確定的なことなのかどうか疑問に思ったのが3点目です。
最後は、技術評価書の値段の件ですけれども、4万円強と訂正水準です。特許の審査料については、実費をカバーするというのが基本的な方針だと思っているのですが、技術評価書のコストが4万2,000円というのが実費をカバーするのかどうか、もし実費をカバーしないと、何らかの意味で実用新案に対して特許の利用者からの補助を与えるということになるわけですけれども、そういうことが妥当かどうか。実費を少なくともカバーする水準に上げれば、実用新案が濫用される危険も減りますし、実費を少なくとも負担させるというのは、特許の審査料の議論だけではなくて、実用新案制度にも当然当てはまるべき議論ではないかと思います。以上4点です。

木村審議室長

今いただきました幾つかのポイントについて簡単に、僭越ですけれどもコメントさせていただくと、1つは、拒絶理由があるということは、実用新案にも当てはまるということは、確かにそれはそのとおりだと思います。ただ、実際問題、特許の場合は、審査を通じていいものに仕上げていくというか、ちょっと言い方が非常に雑でございますけれども、そういうものがそもそもの制度的前提としてはあるのだろう。したがって、実際、拒絶理由をある意味では含んでいても、それ自体全然おかしなことではなくて、それは補正等を通じていいものに仕上げていって、最後は特許査定を得るというビヘービアがある意味では当たり前なのに対して、実用新案の場合は、権利が登録される期間が短いものですから、事実上補正とかはなされないことがほとんどだし、今は訂正機会もないということで、事実上一発勝負になってしまう。評価書請求をして仮に「1」とかがついたら、その範囲ではもう使えないということに事実上なってしまうので、そういう意味でいうと、実用新案について、より慎重にというとおかしいのですけれども、無効理由を含むようなものをあらかじめ書いてしまうと、それは最終的に全く使いものにならない権利になってしまうわけであって、そういう一定の歯どめというのはあるのかなと。それがペーパーにうまく表現できてないということはあるいはおっしゃるとおりだと思いますけれども、とりあえずそういう面もあるのではないかということが1点でございます。
定義のところの話で、確かにおっしゃるとおり、一応定義の部分と「高度」という言葉、進歩性の定義と発明の定義については、もちろんインディペンデントな問題だろうとは思いますが、ただ現実的には、これについて議論するということになりますと、小発明を保護するという趣旨は全く放棄したのですねというようなことに、議論としてはなるだろう。したがって、それは発明の定義そのものについて、議論として波及してしまうことは必然的なことではないかなというようには思っているということです。ちょっとここは、表現ぶりは、ややこなれてないところがあるとは思いますので、工夫はしたいと思います。
評価書の実費の問題ですけれども、基本的に実費をカバーしているとはいえないだろうというふうには思います。ただ、実用新案が、主としてどなたのための制度というのも変ですけれども、やはり中小、あるいは個人の方により多く利用されている制度だということにもかんがみますと、特に審査請求料の引き上げということを行った直後に、これについても大幅な引き上げというようなことを考えるというのは、やや現実的ではないのではないかと考えております。

志村委員

非常によくまとめていただきまして、ありがとうございました。2点ほど発言したいのですけれども、まず1点目が、実用新案に基づく特許出願の際、元の実用新案はみなし取り下げにすべきかなという感じがします。それは、先ほど知財協の方もお話ししていましたけれども、私も、拒査になったときに実用新案が残っていると、今回、「きわめて容易」については議論しないということになると、残ってしまったときに、法律上は「きわめて容易」なところで残った権利をみていかないといけないというのですか、そういう意味では第三者の監視負担というのは非常に大きいかなという感じがします。特許で拒査、でも実用新案が残っている。これは「きわめて容易」の判断に当たるのか当たらないのかということは、第三者としては非常に判断しづらいかなという感じがいたします。
2点目としては、今おっしゃっていただいた評価書の金額ですけれども、最初の3年間、これは低くするべきだろうと思います。というのは、特許に変更するかもしれませんので、それはぜひ低くするべきかなと思いますけれども、7年目から10年目、あと評価書については、先ほどおっしゃっていただいたように特許制度の関係からすると、ちょっと負担がおかしいかなという感じをもっています。できれば使っている方のいろんな状況を考えるのであれば、減免措置がございますので、出願人の方の状況に応じて減免措置の対応をとっていただければいいのかなと。減免措置の対応も、私は細かいところをよく知らないのですけれども、比較的使いづらいような話もちらっと聞いたことがあるので、その辺、もうちょっと窓口を広げて、なるべく認定をしやすくしてあげていただければなという感想をもっております。以上です。

吉田委員

タカラの吉田です。今回ご説明いただいた内容で、大体改正趣旨の全体像が姿をあらわしてきたわけですけれども、総体的にみますと、平成5年度改正の基本コンセプトを変えないで、そのフレームにのっとってユーザーの利便性を向上させるという点に関していえば、まだ若干の問題は残ってますけれども、相当ぎりぎりの改善策が策定されたのかなというぐあいに認識しています。ただ、私どもユーザーの立場という観点からいわせていただきますと、現在の実用新案制度の一番の根本の問題は、平成5年度の改正の基本コンセプトにあるわけで、無審査、自己責任の基本コンセプトが根っこにある以上、ここに将来的に何らかのメスを入れていただかない限り、私どもはお墨つきのない権利の使用を余儀なくされている。これに対する権利行使段階でのリスク、労力、コストの負担、こういったものが相当残っていますので、今回は、運用面の利便性を改善するという視点に立ってかなり改善されているのですけれども、根っこが同じですから、実用新案制度の衰退というのは、どうみても時間が短くなるのか長くなるのかという問題だけであって、いずれは基本的な論議をせざるを得なくなるというぐあいにとらえております。ユーザーの立場としてこの点を一度申し上げておかなければいけないということです。
ただ、今回の制度改正で若干の問題点といいますと、「発明・考案保護制度の資源配分の最適化」ということの視点からみてみますと、本来実用新案で出願すべきものが特許出願に流出している。今回の改正案でこういう現象に歯どめがかけられるのかどうか。まさにその点が一番問題になってくるとみています。いかに魅力のある制度改正になっているのかということを考えますと、この視点からだけみますと、例えば権利付与の対象からいきますと、これは20ページにも書いてあるのですけれども、逆にすそ野を広げて、分母を大きくしないと、まず出願件数の増大には結びつかない。これは極めて単純明瞭な理屈がそこにあるわけです。20ページのところでは、「実用新案権による保護を是非とも実現すべきとの実需に根ざした意見は殆どなく、早期保護の必要性が必ずしも切迫しているとはいえない~」という記載があるのですが、私は、ここはぜひ訂正していただきたい。これは実態を反映していない。
私ども玩具業界とか生活用品の産業分野での現在のソフトウェア技術の占める率というのは売り上げの率からいくと、これも業種さんによると思うのですが、大体8割から9割がソフトウェア技術を用いている商品による売り上げであって、今回特定されている付与対象の領域の売り上げは大体10%から15%ぐらいですね。これにもしゲームソフト関係の業界を入れてとらえたとしたら、1%ぐらいにまで落ちてしまうのではないでしょうか。私どもとしては、ここの分野に最近進出してきている中国の模倣品、海賊版の排除を現在は特許でやらざるを得ないわけですけれども、早期保護を求めるニーズが非常に高いものがあります。そういった点で簡単にばさっと切ってしまうというのはいかがなものかと。確かに大企業の倫理からいくと、ここはウォッチング等相当面倒くさいところなのですけれども、少なくとも「物」は加えるべきではないか。「方法」は若干問題が確かに残ります。例えば、ビジネス特許関係も含まれるということになると問題は残るので、少なくとも今回の改正では、「物」にまですそ野は絶対に広げないと分母はふえないと思います。まずこの点からして、私ども川下の産業からすると魅力のない改正になってしまっているというのが1つございます。
2番目は、「特許制度との調整の在り方」というところですけれども、ここがせっかくいい仕組みを出していただきながら、評価前に限定するという制約がつけられています。ここは、実際にこれを実行してしまうと、実際に特許へ移行したい実用新案権というのは基本的な発想を伴った、いわゆるヒット商品につながる権利が対象になってくるわけです。そうすると、当然早期保護を求めるわけですから、その前提となる評価書を請求し、即権利行使に入ります。いったん実用新案権を行使したものについては、以降特許出願に変更できないということになると、何のための特許制度の調整になるのか。あまり有用価値がないのではないかということになります。そこは、権利期間を10年に延ばしたのだから、最初の段階で特許出願もしくは実用新案出願のいずれかをはっきりさせて、実用新案で出願したらそこは10年間という付与期間があるのだから、実用新案で頑張ってください。こういうことになるわけですけれども、でき得れば、ここは、もう一度評価後、例えば無制限に権利期間10年にわたって出願変更できるということになると、第三者保護との関係がうまくいかないので、少なくとも最低でも1年間、出願から1年以内は、例えば評価後であっても特許出願変更は認めるというような柔軟性をぜひご検討いただきたい。
これは、一つ確認しておきたいのですが、例えば特許出願に変更した場合に、当然単一の発明、特許出願として扱われますから、分割変更、これは十分容易ですね。となると、当然のことながら権利者としては、そこで必要に応じて分割を検討します。そのときに、先ほどお話が出ていましたが、特許出願にスライドしたときの制約をどうするかということは一つございます。それとあわせて、当然模倣品、その他類似品を排除するに当たっては、結果論として一つの権利でカバーし切れないということが多々ありますから、分割によって相当網をもっと広げられるチャンスが新たに生じることになりかねないので、第三者負担の増大といった点から、一つ問題提起したいと思います。また、先ほど出てますけれども、特許出願と同時に、元の実用新案はみなし放棄されるべきでしょう。
3番目に、やはり大きな問題として訂正の在り方についてですが、この点について、まず時期の制限はあるべきだと思うのです。権利期間内全部にわたって訂正を認めるというのは非常に第三者保護に好ましくない。ただ、一番問題になるのは、第三者からの評価書の請求と、無効審判請求に対する訂正機会が与えられていないという、この点です。同じ第三者からのアクションなのですけれども、評価書の請求と無効審判の請求とでは、相当質的に、内容的に違うとみているのです。これを第三者ということで同一に論じて切って捨てるということについてはいかがなものかなと。無効審判の場合は、当事者間で訴訟発展までいくケースでの争いが前提になりますので、権利確定していかないという点を含めるのならば、無効審判請求された時点で、例えばこれも1回だけ訂正機会を与えるとか、ここはぜひ、必要ではないでしょうか。
評価書の扱いについて、訂正との絡みなのですが、評価書をいただいた後、一定期間経過内で訂正をかける。実質これが権利行使をする範囲になるわけですけれども、それに対する再評価をすべきではないか。実際に権利行使するのは、訂正クレームで権利行使するわけですから、訂正前の評価書を添付することの意味がどのくらい第三者に対してあるのか、あるいは権利者に対してもあるのかということになりかねないので、むしろここは逆にバランスをとるならば、庁の負担がここで増大するというのははっきりしているのですけれども、ただ、これは処分ではありませんので、行政サービスの一環ということととらえるのであるならば、ここまでサービスしていただくのであれば、やはり訂正後の再評価というものをぜひサービスしていただきたい。以上まとめて申し上げました。

木村審議室長

幾つか論点いただきまして、非常に大きな、現在のフレームワークそのものに対するご批判というところまでいただいたわけですけれども、基本的に今回の改正については、平成5年の改正の趣旨そのものを没却させるようなことはできないし、特許制度と実用新案制度というのは、審査と、それから事後的審査といいますか、無審査といいますか、そういうある意味ではすみ分けがなされている中で、全体として最大の効率ある制度というものになるべきであるということを前提に考えざるを得ないと、考えております。したがって、実用新案について、例えば端的にいうと審査主義に回帰するとかいうようなことというのは、やはりとり得ない選択肢なのだろうというふうにも思わざるを得ない面がございます。
その中で、制度を設計していくとなりますと、どうしても権利をお使いになる側と第三者、それを行使される側のバランスの問題というのはどうしてもあるので、どちらかに極度に傾斜するということも妥当でないだろうということで、そういう意味でいうと、恐らくここにお座りいただいている委員の皆様方は、どちらかの側だけに立たれることが多い皆様だろうと思いますので、どちらの方の目からご覧になっても中途半端というか、あるいは批判のある、不満のある制度にならざるを得ないということだと思うのですけれども、そこは、足して2で割るというわけではございませんけれども、双方のバランスというものを考えて、あとは特許制度の審査全体の迅速化というものにも取り組んでいかなければいけない、そういう特許庁の今置かれている状況というものも踏まえつつ、その中で何とかいいものにしていきたいということで、考えたバランスということで、何とぞそこはご理解をいただきたいと思います。
論点としては幾つかあると思うのですけれども、出願時のみなし取り下げの話は、今まで基本的には出願時のみなしの放棄ということで、それぞれの委員の方からはご意見をいただいておるのですけれども、基本的にそういう方向で、むしろこのワーキンググループのコンセンサスとしてよろしいのでしょうかということで、逆にいうと、一たん特許出願をしたら、特許を取り下げてももう実用新案には戻れないという制度設計にするということでご異存がないというふうに私どもとして理解させていただいてよろしいでしょうかというのが1点。
時期の制限の問題は、評価書作成の負担というものがどうしても特許庁の側にも押し寄せてくる可能性があるので、そこについては、私どもとしては、第三者からの攻撃を受けたら、基本的にそれ以降は訂正をできないという制度で時期の制限ということに代えるべきではないかという考え方をとってきたわけでございまして、基本的には権利が存続している限り、権利行使は実際いつ行うことになるかわかりませんので、権利期間の限り訂正機会というのはあるべきなのではないかというのが発想の前提になっているということでご理解をいただきたいと思います。
第三者からの攻撃の問題で、それがあれば訂正機会が失われるという点については、どこまで柔軟に考えるべきなのかわかりませんけれども、やはり訂正を認めるとさらにインセンティブが低下するということはあるのだろうとは思うのです。そのこととのバーターで、第三者からの攻撃、評価書請求なり無効審判請求――この2つも分けて考えるべきなのかもしれませんけれども――があった場合に、果たして訂正という逃げ道を残すことが、本当に当初の明細書なりクレームをきちんとしたものに整備するというインセンティブを維持することとの間で利益衡量があった上で、そういうご意見であるということであれば、私どもとしても前向きに検討はしなければいけないのかなというふうには考えたところです。

石田委員

日本弁理士会の石田でございます。先ほどの吉田委員のご意見とほとんど同じようなことになるかと思いますけれども、まず対象のところですが、この取りまとめの12ページの下の方に「実用新案制度を存続すべきとの意見が多数であった。」「実用新案権の存続期間が短いことや、権利付与対象の範囲が狭いこと等、現行の実用新案制度は権利者の立場から見て使いづらい点があり、より使いやすい制度に改善すべきとの意見があった。」と、ワーキンググループの意見として述べてあるわけでありますが、今回の実用新案改正の大きな目玉というのは、存続期間の問題と対象の問題の2点じゃないかと思われます。また、早期実施が必要な技術の保護という観点からいたしましても、必ずしもソフトウェア等の物品以外のものに関して早期実施が必要ではないということはないのでありまして、そういったものも含めるべきであるということから、何らかの形で保護を拡大しないと、今回の実用新案法の改正の大きな柱を失うことになるのではないかと思います。したがって、特許と全く同じというところまではいかないにしても、先ほどご意見がありましたように、物の考案全体まで拡大すべきではないかという意見を私はもっております。
2点目、これも今まで述べられていたかと思いますけれども、28ページの「評価請求に伴う制限」というところで、第三者から評価請求が行われたときに、実用新案が特許に出願変更された場合には、「評価書の先行技術調査利用防止のため、評価書を作成しないようにすることが妥当である。」と言い切っているわけでありますけれども、第三者が評価請求する対象物はあくまでも実用新案権でありまして、第三者はこの実用新案権の中身についての評価を求めているわけで、これが特許出願に移行したからもう必要ないということではないのではないか。要するにこの場合、第三者の評価請求をした意図というのは2つありまして、その一つは実用新案権そのものの評価を期待しているわけであって、これが特許にかわったから、形が変わったから必要ないのではないかというようなこととはちょっと違うのではないかということです。第三者の意思の確認、つまり特許出願にかわったからもう必要ないのかどうかということを確認すべきではないか。実用新案から特許出願にかわったからもう必要ないという第三者もいるかと思いますけれども、それがすべてではないような気がいたします。
これも先ほど来問題になっております33ページの訂正の機会の問題でありますけれども、第三者から評価請求があった場合、無効審判請求があった場合には訂正ができないようにする、この点については、私も何らかの格好で訂正の機会を設けるべきではないかと思います。最後に、審査と評価書の作成を、どうも作業が同じだからこれを同じようにみていこうという考え方があるようですが、確かに作業は同じなのですからそうかもしれませんけれども、やはりその意図は、審査と評価書の作成とは意味が違うわけであって、一方をやれば他方は一切やらないという考え方を余り前面に出すべきではないのではないかというように思います。以上です。

木村審議室長

幾つかコメントをいただきまして、審査と評価書の作成というのは同じではないというのはそれ自体は全くおっしゃるとおりだと思います。ただ、実際問題として、特許庁という行政機関の中で、実務の負担を伴う行為でございますので、同一の発明について審査なり評価というのは、できれば1回にしたいというのは、切実なものとしては存在しているということでございます。たしかに、先ほど別の委員の方からもおっしゃられたように、例えば評価書をみてから特許に移行するかどうかも考えたいというようなこともあると思いますし、今まさにご指摘がございましたような、28ページのところ、特許出願がなされてしまえば、評価書の先行技術調査利用防止のため、評価書を作成しないというようなことは、必ずしも妥当でないのではないかということも、論理的に考えていきますと、そういう意見も確かにあるのだろうと思いますけれども、ただ、それは、評価書の作成負担というものも、全体の比較衡量の中には入れさせていただかざるを得ないということと、特に今の点に関しましては、実際問題、実益がどこまであるのかということも、やはりあるのだろうと思うのです。可能性としては確かに実用新案についての評価を得たいのだということを意図されておる場合もあるのだろうとは思いますけれども、ほとんどの場合においては、実際問題、それが特許になってしまいますと、実用新案そのものとして権利行使される可能性というのは事実上はゼロに近いようなものになるわけで、それについてあえて評価書を受け取ることの実益というのはどこにあるのだろうかという気もいたしますので、そういう二重の手間をかけるよりも、評価書は作成しないということにして、請求の料金はご本人にお返しするという方が、むしろ制度の在り方としては素直なのではないかと考えておるわけでございます。
先ほど来いろいろとご指摘いただいている点で、私、御回答を失念したりしたところもございますので、一つは、たしか戸田委員からだったと思いますけれども、当初からの特許出願で出された場合との有利、不利の問題というのは、特に実用に当初出した場合にことさらに有利になるというようなことは不当だということで、それは全くおっしゃるとおりだと思います。基本的に当初から特許出願とした場合に許されていた範囲内で実用についても当然考慮すべきだろうと思っております。
訂正後の再評価の問題なのですけれども、基本的に評価請求をして、その後、訂正をされる。その後、再度評価書請求をしていただければ、それについて評価書を作成するということは当然、行政サービスとしては行うということだろうと思います。

臼井委員

経団連の臼井です。今回の報告書が、改善がかなり盛り込まれて非常によくまとまっているということで、ありがとうございました。ただ基本的に、先ほども委員の方がございましたように、基本フレームは変えないということで考えていきませんと、そこを変えてしまうと根本から崩れるということで、基本フレームを変えないということでお話しさせていただきます。
1点は、保護対象の件ですけれども、私は現状のままでよろしいと。他の委員の方から説明があった内容と同じで、拡大をしないという方向でぜひお願いしたいと思います。
2点目、特許への出願変更のときですけれども、これはみなし放棄すべきではないかということで、先ほどの委員の方と同じ意見です。こうしませんと、実用新案から特許に変更して審査を待つ間に、また評価書に実用新案が戻るというようなことも今考えられていますけれども、非常に複雑になるということで、私どもは3年間、実用新案で出して、実用新案から特許にみきわめる期間がございますので、ここは、特許に変更したらすっきり実用新案はあきらめるという方向の方がよろしいかと思います。
訂正の件でございますけれども、先ほど来意見がございますように、他人からの評価請求又は無効審判、これは、権利者が訂正できないというのは非常に苦しいと思いますので、1回で結構でございますけれども、訂正できるように改正をしていただきたいと思います。
訂正後の評価書のことでございますけれども、権利行使する場合には、訂正後の評価書を必ずつけるというようにしていただかないと、条文だかどこかへ入れていただくか運用でしていただくということで、これは特許庁さんがサービスするのか、ご本人がするのか、これは別問題として、必ずつけていただくというのが大事だと思います。
もう一つお願いがあるのは、今回実用新案は非常に複雑になっているので、できるだけまとめていただいて、シンプルにしていただくと同時に、この改正になった時点で、権利者又は利用者にわかりやすくPRしていただく、これが一番大事かなと思います。今まで十分理解されてなかった方がいらっしゃると思いますので、ぜひそういう形でやっていただきたい。以上です。

尾形委員

先ほどタカラの吉田さんの方から保護対象につきまして、すそ野を拡大するには少なくとも「物」まで拡大すべきというご発言があったと理解しておりますけれども、タカラさん等含めて、玩具メーカーさんがソフトウェアの売り上げが8割、9割まで占めてきたという、その内容が、多分ソフトウェアプログラムによって制御される玩具、おもちゃなのではないかなと思います。仮にそうだとしますと、現行の保護対象でも十分出願もできますし、保護もされると理解しますので、ここには保護対象を拡大する理由づけ、合理性がないのではないかなと思います。今問題になっているのは、いわゆる記録媒体で流通するソフトウェアとか、インターネット等で流通するソフトウェア、こういったところまで範囲を広げるのがどうなのかということだと思います。だとしますと、社団法人の情報サービス産業協会、いわゆるJISA、ここ等の意見をいいますと、そういったところの保護対象拡大のニーズは必ずしもなくて、むしろ慎重論が出されているというふうに理解しております。そういった意味でいうと、事務局案の20ページにございます「実現すべきとの実需に根ざした意見は殆どなく、」というこの表現は、やはりこの表現でいいのかなと思います。以上です。

吉田委員

確認なのですが、今のお話の中で、権利付与対象として現状の物品の形状、構造又は組み合わせに係る物、この中にICを使ったゲームソフトのプログラムがここへ入ってくるのかということなのですけれども、現状、私どもの扱いは入ってないというぐあいに認識していますが、入るのであれば、今おっしゃったとおりで私は結構です。ただ、入らないということになると、これはやはり広げざるを得ないので、そういう趣旨で私は申し上げたのです。それと緊急性の問題については、これとイコールということでお答えさせていただきたいということで、要検討ということでお願いします。

尾形委員

今のが入るか入らないかということですけれども、「物品の形状、構造又はその組合わせ」で、判例等からみると、電気回路は物品の構造でカバーされるであろうということで、実務においてもプログラムステップ等で書かれた、そういう回路を含む物品あるいは装置という形で、実用新案で十分権利がとれているというふうに理解しています。

吉田委員

詳しくいうならば、回路を前提にしていくことになるのですけれども、要するにソフトの部分、まさにプログラムの部分ですね、私が申し上げているのはそこを申し上げているので、その部分については、当然のことながら入らないという認識をもっています。それは、そういうふうにした方が早いんじゃないですか(笑声)。

高倉調整課長

プログラムに関する発明の取り扱いについては、コンピューターソフトウェア関連発明の審査基準というのがあります。プログラムその他ソフトウェア技術を利用した装置の発明は、物品の考案として保護の対象になります。プログラムそのものは、先般の特許法の改正、基準の明確化によって「物」として扱うことにいたしました。プログラムそのものが実用新案の定義でいう「考案」に当たるかどうかは、多分ケース・バイ・ケースでしょう。ソフトウェアとしての手順の発明であれば、「方法」というカテゴリーになって、実用の対象ではありませんが、かくかくしかじかするプログラムと書かれたときに、それが物品の形状等であるかどうかということになりますと、かなり微妙だと思います。いずれにしてもプログラムを利用した玩具ということであれば、先ほど尾形委員がご指摘したように、現行法の下でも保護の対象になり得るということではないかと思います。

吉田委員

確かにここ、グレーゾーンなのですね。

牧野委員

今回の法制度改正の眼目は、「発明・考案保護制度の資源配分の最適化」というところにポイントがあるのだろうと思います。そのために実用新案制度の利用をもう少し従来よりも高めるということだろうと思いますが、権利付与対象、これについていろいろ問題はありますが、現行制度の延長として考える限り、ご提案の現状のとおりというのでやむを得ないのかなと思います。次に、保護期間の存続期間を10年にするという改正点、この点は利用拡大のために非常にいいだろうと思います。あとは実用新案からの特許出願ですけれども、これにつきまして、実用新案登録に基づく特許出願がされたときに、その基礎とされた実用新案権をどうするかという問題につき、29ページの(5)のところでは、存続させるということになっておりますけれども、先ほど来のご議論では、特許出願をしたときに放棄したという方が制度的にすっきりいくのではないかというご意見が多かったように思うのですが、この点はいかがされるのかということをお聞きして、あとは、この報告書でいいだろうと思っています。以上です。

溝尾委員

一番の大きな問題は、前回も申し上げたのですけれども、私は関西人なので、本音と建前を使い分けるやり方というのは嫌いなんです。今の制度はまさにそうなっていると思うのです。建前は無審査主義でありながら、本音の部分というか実体は明らかに審査主義が貫徹されていると思うのです。それなのに今回も、そこはごまかして、無審査主義である、そういう建前を貫かれるのかどうかということは、きちっと審議されないといけない項目だと思うのです。結局、平成5年の改定のときも、そういう形になったと思うのです。今もそこは、そういう形で、その問題を避けて通っているように感じるのです。
もう一つは、審査主義を貫徹するのだったら、今回権利期間を10年に延長していると思うのですけれども、すべてを10年に延長する必要性はないと思っているのです。評価書請求をしてない権利というのは、特許と同じように3年で権利はなくしてしまうというか、特許であろうと実用新案であろうと、ちゃんと権利として成り立つものか成り立たないものかということは、出願人がきちっと責任をもってやる。常に無審査主義で、無審査のものが幽霊みたいにあるからということで、どうも実用新案を出願した出願人というのは、何か犯罪者か何かのような扱いを受けているような感じがしてならないのです。そうでなくて、正当なやり方をしているのですから、先ほどの評価書の費用が受益者負担になってないのだったら、受益者負担にすべきなのです。それなりの権利をきちっと認める。出願人も払うべきものはきちっと払う、そういう形でないと非常にすっきりしないと思うのです。
付与対象を拡大するかどうかというところは、別の議論をすべきではないかと思っているのですけれども、付与対象を決める物品の形状、構造が本当にきちっと線引きできるのかどうかという議論の方がものすごく重要ではないかと思っているのです。線引きできないあいまいなものに唯一の行政処分が、実用新案は方式審査なのです。それで権利者はすべてのものを失ってしまうわけです。そこの境界線というのは本当にきちっとしているのですか。きちっとしてないのだったら、もしそこを続けるのだったら、救済措置を講じないと極めて不公平だと思うのです。そこで無効にされたものは、特許への出願は無条件に認められるとか、それと特許の出願変更についても、余りにも特許庁の二重審査ということが前面に出過ぎていて、それは経済的な原則だと思うのです。だから評価書の費用が少ないのだったら高くするとか、あるいはどうしてもそういうものを認めたいのだったら、そのときは制裁的な課徴金をとるとかいうふうなことで調整すべき事項であって、一切そういうものは認めないというのは余りにも行き過ぎた、特許庁だけの都合をみているようにしか思えないのです。今の実用新案制度の根幹が、余りにも特許庁の都合に対しては法律で守って、我々民間の者は法律では守られないというふうな形になっているように思うのです。一番の根幹はどこにあるかといったら、審査主義と無審査主義を建前と本音で使い分けて、都合のいい運用をしているようにしか思えないのです。

高倉調整課長

ただいまの溝尾委員からのご指摘には幾つかの論点があったと思うのですが、今回の改正の趣旨は、特許庁の都合のためだけということでは決してありません。実用新案の保護の対象となっている物品等の早期かつ簡便な保護ということを図るという観点から、もう少し使いやすく改善していくべきではないか。特には模倣品対策等を勘案して、そういった一層の魅力向上はどう実現していくのがよいのかというのが主な趣旨です。
たしかに、特許制度、実用新案制度全体をひっくるめた資源(審査能力)の最適配分という考え方も趣旨としてあります。しかし、それは決して特許の審査だけをどうこうする、特許庁をどうこうするということではなくて、出願人がみずからの選択に応じて実用、特許を使っている現状を踏まえて、トータルとしての出願人の早期的確な権利の保護のニーズにどう応えるか、資源配分をどのようにするかということでして、このことは出願人のためでもあり、ひいては我が国の産業競争力のためであるというふうに考えております。
評価書作成コストの受益者負担につきましては、たしか志村委員の方からもご指摘があったかと思います。実費をとったらどうなのだということではないかと思いますが、これについては、特許の審査請求料は実費勘案ということで先般法改正したわけですが、実用については、主としてそのユーザーが中小、個人であるということ等を勘案して、政策的な料金にしているということであります。先般の特許法の改正直後に再び中小、個人に影響のある料金の改正をするのは、なかなか政治的に難しいということも本音であります。
そうであるならば、いっそのこと実費をとった上で、中小、個人に料金の減免をしたらどうかという点も、先ほど志村委員からあったかと思いますが、これについては、少なくとも特許については既に減免を導入しており、また、それが使いづらい、あるいは周知されていないのではないかという点については、より使いやすく、なおかつ周知を図るようにしております。いずれにしても実用新案の評価書作成について、直ちに実費をとるということは、もろもろ考えると難しいのかなというのが率直なところであります。
ついでなのですが、タカラの吉田委員や臼井委員からご指摘があり、既に木村室長から回答があったと思いますが、評価書作成後の訂正、そして訂正後の権利行使に当たっては、当然もう一回評価書作成ができること、これは当然であります。なおかつ訂正後の権利の行使に当たっては、評価書をきちんと提示した上で権利行使をする、これまた当然でありまして、この点については、報告書の40ページの下の方にその旨記載されていたかとは思います。これもたしか臼井委員からご指摘がありましたが、PRが十分なされていない、そのために、権利を行使される側のクレーム対応負担というのが相当増大しているということも、我々承知しております。実用新案の効果とその限界について、権利者が当然心得るべき点については一層周知を図っていきたい、そのためのアクションプラン等々についても検討していきたいと思っております。

溝尾委員

今、評価書請求してない権利について、権利を実用新案だけ認めるということについてはご回答なかったと思うのですけれども、それはどうなんですか。

高倉調整課長

評価書作成要求をしてない実用新案について……。

溝尾委員

不安定な権利が長いこと延命されるということについて、特許は今回、3年ということで審査請求してないものはみなし取り下げになるというふうになったわけですね。実用新案の方は、権利期間を延長したけれども、評価書してない権利については、評価書請求しなくてもずっと延命するということになっているわけですか。

高倉調整課長

そうです。

溝尾委員

そこはおかしいのと違うんですか。おかしいという意見は、少なくとも書き出してほしいのです。

高倉調整課長

それは現行の法律(平成5年の法改正)と同じです。権利者の側は常に評価書作成を前提として、それを提示した上で権利行使をするわけですから、逆にいうと、第三者は評価書の提示をしない権利行使に対しては、特に過大な懸念をもつ必要はないのではないかと思っていまして、その点については、今の検討の方向性と、現在の法の運用状況に特に差はないように思うのですが……。

溝尾委員

そうじゃないと思います、根底が。第三者の監視負担がふえるとかいうふうな問題が常に出てくる背景は、そういう不安定な権利が延命されるということにあるわけです。評価書請求してない権利は、むしろ3年で打ち切るべきだと思うのです。それはみなし取り下げとすべきだと思うのです。実用新案といえども、そういう不安定なものをいつまでも残しておく必要性というのは何もないと思います。そのために本来の実用新案権者が受けるべき利益まで、そういうことがあるために制約されているように思えてならないのです。だからちゃんと制約すべきものは制約して、本来保護されるべきものは保護されるという形にした方がずうっといいと思うのです。なぜそういうふうにされないのですか。

木村審議室長

仮に10年に延長したとしても、10年以内に権利行使する可能性があれば、その権利期間内は評価書請求をして権利行使する可能性は残すべきだと思いますし……。

溝尾委員

思いますというより、特許庁のだれかがいっている話と違うのですか。特許だったら、今は3年たったら審査請求をしなかったらみなし取り下げになるのです。なぜ実用新案だけ延命さす必要性があるのですか。だから不安定な権利が残るといって、不必要な制約をいろいろ設けているのじゃないんですか。むしろそんなことは、ちゃんとそこできちっと整理して、不安定な権利は残らない、少なくとも特許のように3年間しか不安定な権利は残らない形にして不必要な制約はすべきではないと思う。それから実用新案から特許に変更したときは実用新案は取り下げにするということは、ここの委員は皆一致しているのですから、特許庁がつくっている論理の中でも、優先権のところで、実用新案制度が残るということで制約を設けていると思うのです。外国に対しては、実用新案から外国出願への1年間はきちっと保証されているわけですから、優先権の出願も実用新案権を取り下げるという条件のもとに優先権も1年間認めるべきだと思うのです。

高倉調整課長

溝尾委員のご指摘を正しく理解していないで先ほど答えたようなのですが、多分溝尾委員のおっしゃるのは、特許の場合には3年たてば、つまり審査請求期間が満了すれば取り下げになってしまう。実用新案の方は無審査登録のまま宙ぶらりんでずうっと残っているじゃないかという点ですね、わかりました。その点については、なぜ宙ぶらりんに残しているのだといえば、もしそれを3年で一種のみなし放棄みたいにしてしまいますと、多分3年目までの間に評価書作成請求が急増する、集中する、殺到する。本来、評価書というのは、権利行使をする前に権利の妥当性を自ら確かめるために特許庁が提供するものです。決して事前のサーチレポートではありません。すなわち別に権利行使をするわけではないのに3年で切れてしまうので、3年目に評価書作成というのが集中してくる、そういったことは、むしろ避けるべきであって、権利を行使する際に評価書を作成してもらうのが平成5年の改正の趣旨に一番合うのではないか。結論として、特許と同様に3年目でみなし放棄としてしまうようなものにすると、評価書作成請求というのが集中するのではないかという懸念から、やや難しいのかなと思っております。

溝尾委員

それは全く特許庁の都合だけであって、出願人も、第三者も望んでないことと違うのですか。むしろ権利というのは、3年間といったら3年間の時点でそういう不安定な権利はなくしてしまうという方がよほどいいのと違うのですか。出願人の方だって、そういうことを別に何も望んでないわけです。むしろ不安定な権利が残るということで、実用新案に対していろんな足かせがかけられるということの根幹が、そういうところで犯罪者扱いみたいにやられているから、出願人としたらそういうものはむしろなくしてほしいわけです。そんな不安定な権利として、3年目以降残す必要性は何もないと思うのです。早期の権利しか必要ないものを実用新案として出願しているのに、評価書請求もしてないようなものを3年から10年まで残しておく必要性というのは全くないと思うのです。社会正義の方が優先されるべきであって、特許庁の手間が優先されるのは絶対おかしいと思うのです。

高倉調整課長

溝尾委員のおっしゃるのは、私の理解では、実用新案をもう一回実体審査に戻して、審査請求期間を3年としたらどうかということでしょうか。もしそうであるならば、本来、現在の法律を変えた平成5年のときに……。

溝尾委員

法律を変えなくても、そこはできるのと違いますか。実質そのものが全部実体審査として動いているわけです。そこだけを何で法律を変えなくてはと、建前論を持ち出すのですか。全然おかしいですよ。実体としたら全部審査主義で貫徹しているわけですよ。審査主義のもとで出願人というのは全部監視されているわけですよ。評価書なかったら権利行使できないのですから、全く一緒なのだから、今の実情の中で考えるべきことと違うのですか。たとえフレームは変えないとしても、実体としたら審査主義が貫徹されているのですから、審査主義の中で考えるべきであって、3年間審査請求しないで放置しているような権利を、それ以上存続させる必要性というのは何もないと思うのです。

臼井委員

今のお話なのですけれども、実用新案は自己責任による制度ということを前提にしていますので、評価書というのは審査に近い形になるかもしれませんけれども、決して評価書は審査じゃないと。これはいろいろおっしゃっているように建前と本音はあるかもしれませんけれども、私はそういう理解をして、早期権利というのは、今登録が5ヵ月ということで、これで一たん登録になっています。先ほどおっしゃるように3年で評価書を出さなかったら、その権利はなくなってしまうとなりますと、非常に権利を使う立場からいいますと、例えば3年半ぐらいで模倣品が出てきて、権利を使おうと思ったら使えなくなってしまうということで、そういう意味では、別に私、特許庁さんの擁護をしているわけではないのですけれども、使う立場からいったら、やはり3年で切られるというのはちょっと困るなということで、溝尾委員のおっしゃることはわかるのですけれども、基本的に特許と実用新案は違うということを、今その前提で話しておりますので、それを変えるとなると、この審議会の問題じゃなくなってしまうのではないかと私は理解しています。以上です。

大渕座長

それでは、予定時間も大幅に経過いたしまして、コンセンサス的なものが得られている部分もありますが、なお若干の論点につきましては、さらに議論が必要と考えられますので、したがいまして、審議の場をもう一度設けまして、さらにこの報告書案について議論をいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。――
そういうことで、時間もなくなってまいりましたので、本日のワーキンググループはこれくらいにしたいと思います。
最後に事務局から今後のスケジュールを含めて事務連絡をお願いいたします。

木村審議室長

次回でございますけれども、12月2日、火曜日の午前10時半からの開催ということでよろしくお願いしたいと思います。会場は、今回同様、この部屋、16階の特別会議室を予定しておりますので、よろしくお願いします。報告書案につきましては、本日いただきました論点を含めまして修正をして、またご送付させていただければと思います。以上です。

大渕座長

それでは、以上をもちまして、産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会第4回実用新案制度ワーキンググループを閉会させていただきます。本日もお忙しいところ、どうもありがとうございました。

――了――

[更新日 2003年12月5日]

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