産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会
第3回 審査基準専門委員会ワーキンググループ
議事要旨
1. 日時・場所
日時:平成27年1月23日(金曜日) 15時00分から16時30分
場所:特許庁庁舎16階 特別会議室
2. 出席者
田中座長、青木委員、淺見委員、伊藤委員、鈴木委員、濱田委員、二瀬委員、本田委員、八島委員
3. 議題
- (1)進歩性の審査基準について
- (2)特許法改正に伴う「優先権」等の審査基準の改訂について
4. 議事内容
進歩性の審査基準について
事務局から、資料1に基づき、審議事項の説明を行い、議論がなされ、事務局案のとおり審査基準の改訂を行うことが了承された。主な論点は、次のとおり。
- 動機づけの諸観点の考慮の仕方について
主引用発明に副引用発明等を適用する動機づけは、①技術分野の関連性、②課題の共通性、③作用、機能の共通性及び④引用発明の内容中の示唆といった観点を総合考慮してなされること、及び審査官は、いずれか一つの観点のみに着目すれば、動機づけが肯定されるか否かを常に判断できるわけではないことに留意すべき旨を、審査基準に記載すること。また、この点に関して、事例集あるいは判例集において、具体例を示すこと。
- 「技術分野の関連性」のみにより動機づけの有無を判断することの可否
審査官は、総合考慮すべき動機づけの4つの観点のうち、「技術分野の関連性」については、「課題の共通性」等の他の動機づけとなり得る観点も併せて考慮しなければならない旨、審査基準に記載すること。
- 本願発明と技術分野や課題が異なる主引用発明の選択について
主引用発明は、通常、請求項に係る発明と、技術分野あるいは解決すべき課題が同一又は近い関係にあるものを選択することを審査基準に記載すること。
本願発明とは技術分野又は解決すべき課題が大きく異なる主引用発明を選択した場合、(ア) 論理づけが困難になりやすいこと、及び (イ) そのような場合には、主引用発明から出発して、当業者が本願発明に至ることが容易であったことについて、より慎重な論理づけ(例えば、主引用発明に副引用発明を適用するにあたり十分に動機づけとなり得るものが存在するのか否かの検討)が要求されることを留意事項として記載すること。
また、本願発明の課題が新規であり、当業者が通常は着想しないようなものであることは、進歩性が否定されない方向の一事情になり得る旨、審査基準に記載すること。
- 周知技術の適用の際に論理づけを省略してはならないことについて
周知技術であるからという理由だけで、論理づけができるか否かの検討(当該周知技術の適用に阻害要因がないか等の検討)を省略してはならない旨を、審査基準に記載すること。
- 後知恵防止について
本願発明の知識を得た上で、進歩性の判断を行うために、(ア)当業者が容易に想到できたように見えてしまう、あるいは(イ)引用発明の認定の際に、本願発明に引きずられてしまう、といった後知恵に陥ることがないように、審査官は留意しなければならないことを、審査基準に記載すること。
また、(イ)について、審査官は、本願発明の知識を得た上で引用発明を理解すると、本願発明の文脈に沿って引用発明を曲解するという、後知恵に陥ることがある点に留意しなければならず、引用発明は、引用発明が示されている証拠に依拠して(文献であれば、その文献の文脈に沿って)理解すべきであることを、新規性・進歩性の審査基準に明記すること。
- 「最適材料の選択・設計変更など」として進歩性が否定される場合について
「最適材料の選択・設計変更など」として進歩性が否定される場面について、副引用発明を主引用発明に適用する際に、当業者の通常の創作能力の範囲内での設計変更等を行いつつ、当該適用を行うことについても記載すること。
具体的には、「当業者の通常の創作能力の発揮である設計変更等は、相違点に関し、副引用発明を主引用発明に適用する際にも考慮される」旨を、審査基準に記載すること。
- 阻害要因の例示
他国の審査基準の記載や裁判例の傾向を踏まえ、審査基準において、副引用発明が以下のような場合について、阻害要因の例として記載すること。
- 主引用発明に適用すると、主引用発明の目的に反するものとなるような副引用発明
- 主引用発明に適用すると、主引用発明が機能しなくなる副引用発明
- 主引用発明がその適用を排斥しており、採用することがあり得ないと考えられる副引用発明
- 主引用発明に適用して達成しようとする課題に関して、作用効果を発揮しない例として記載されており、当業者として、通常は適用を考えない副引用発明
- 二次的指標の例示
他国の基準の記載も考慮すると、欧州・米国・中国・韓国の基準及びPCTガイドラインにおいて二次的指標として触れられている「長い間その実現が望まれていたこと等」について、審査基準において追記し、我が国においても、他国と同様に、二次的指標が考慮され得ることを明示すること。
特許法改正に伴う「優先権」等の審査基準の改訂について
事務局から、資料2に基づき、審議事項の説明を行い、議論がなされ、改正法の内容に適合するよう、次の事項について審査基準の形式的な改訂を行うことが了承された。
- 優先権の主張ができる期間(審査基準第Ⅳ部第1章及び第2章)
- 審査基準の中で引用している条文・条項名
- 改訂審査基準の適用時期
[更新日 2015年1月26日]
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