第3回審査基準専門委員会議事要旨
平成21年7月13日
調整課審査基準室
6月30日(火曜日)午後、産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会第3回審査基準専門委員会(座長:中山信弘 明治大学教授・弁護士・東京大学名誉教授)が開催された。
1. 審議内容
事務局から配布資料に沿って説明、及び、討論を行った。
議題1. 進歩性
(1) 進歩性のレベルについて
- 進歩性のレベルが安定している現在、審査基準の改訂によって進歩性のレベルを変更すべきではないという結論を得た。
- 現行の審査基準を適切に運用することを目的とするのであれば、審査基準の関連資料を作成し、ハイパーテキスト化することなどでも対処可能である。
(2) 後知恵防止の記載について
「後知恵防止」の規定を入れるべき、当該規定をいれることは慎重にすべきという両意見があり、むしろ慎重にすべきという意見の方が多かったので、今回は当該記載の追加は見送ることとする。
(3) 進歩性の判断における具体的な論点
いずれも審査基準の文章による明確化は結果的に進歩性のレベルが変わってしまうことが懸念されるため、関連資料において裁判例を示すことで、審査基準の具体的な適用における明確化を図ることという結論を得た。また、各論点における委員からの意見の概要は以下のとおり。
ア.最適材料の選択・設計変更について
- 審査基準の文章だけで割り切っていくのは難しい。
- 設計変更という言葉は、最適材料の選択などに比べ広い表現のように感じる。出願人側と特許庁とで認識が一致しているのか。
- どのような違いがあれば「単なる設計事項」と言えないかの裁判例を示すことで具体的にしていくのでよいのではないか。
- 進歩性の判断は総合的なものであり、審査基準は、そのいろいろな要素を明示しているもので、特定の要素で決定づけられるものではない。単なる設計変更だと言われた場合の出願人の反論としてはオーソドックスに反論する以外無く、そう言う意味では審査基準そのものの問題ではない。設計変更も、オーソドックスな容易推考の判断がなされたかが問題である。
イ. 具体的な動機づけ間の関係について
- 裁判例によれば、1つの動機づけでもよい例、組み合わせる例などいろいろあり、一概に審査基準で記載することは非常に難しいので、ケーススタディでの整理はよい。一方で、総合的に判断すべきという記載は審査基準にいれてもよいのではないか。
- アメリカでは、技術分野の関連性か課題の共通性がなければ引用例とならない。まず、技術分野、または、課題の共通性が要件として必要なのではないか。
- 審査基準の記載を修正して誤解がある方向に行く恐れがあるのであれば避けるべき。
- 技術分野の関連性、課題の共通性の認定は非常に難しく、これを第1要件とするのは困難ではないか。幅広にその認定を認めるとすれば第1要件とすることの問題はなくなるが、それが一つの大きな反省ではなかったか。
ウ. 周知技術について
- 審査の納得性が得られるよう負担にならなければ文献を「可能な限り」示すべき。
- 「他の引用文献」とする場合には例示すべきであり、技術常識を示すためにまで、「可能な限り文献を示す」必要はないのではないか。
- 「他の引用文献」とする場合を除くなら「例示するまでもないときを除いて」というような言葉は残っていても構わない。
- 設計的事項の認定の根拠とする場合にも示して欲しいこともある。
- 審査基準の記載のままでよいが、関連資料でどのような場合に示すべきかを説明することでよい。
エ. 意見書等で主張された効果の参酌について
- アメリカでは化学の分野では顕著な効果、予測不可能な効果を主張することによって進歩性を主張することが出来るものが多いため、意見書における効果の主張が注目される。EPOの実務と比べても日本の方が効果を主張できる場合が限られていると聞く。今後も日米欧でこの制度について研究して欲しい。
- 日本においても実験成績証明書の提出が、進歩性の判断の時に割と受け入れられていると聞いている。実験証明書によって発明が完成しているのではなく、実験証明書は裏付け的に提出されているものと思う。
議題2. 先端医療分野の審査基準の改訂
知的財産戦略本部会合に報告された提言に沿った方向で審査基準の改訂を行うことが了承された。
2. 今後の予定
今回の議論をふまえ、進歩性の判断に関して整理し、審査基準専門委員会に報告する。次回は、その進捗状況に応じて開催する予定。
[更新日 2009年7月13日]
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