第5回審査基準専門委員会議事要旨
平成22年9月17日
調整課審査基準室
平成22年9月10日(金曜日)午前、産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会第5回審査基準専門委員会(座長:中山信弘 明治大学教授・弁護士・東京大学名誉教授)が開催された。
1. 審議内容
事務局から配布資料に沿って説明、及び、守屋委員から資料の説明があり、その後討論を行った。
1.1 記載要件の審査基準改訂の方向性
以下の2点の方向性で審査基準を改訂することで了承が得られた。
- 記載要件の審査基準を抜本的に改訂する必要はなく、厳しすぎる判断や判断のばらつきを是正するため、説明が不十分な箇所の記載の補足、明確化のための改訂を行う。
- 記載要件の審査基準は要件毎に異なる時期に改訂されてきたため、記載要件の各要件間での不整合を生じている部分があれば、整合を図る観点での改訂を行う。
この点に関する議論における、委員からの主な意見・要望は以下のとおり。
- 審査官によるばらつきや、拒絶理由通知が不明確であるとの不満を聞くことがあるが、うまくいっているケースがあるとの意見も聞く。審査官と出願人のコミュニケーションが重要である。
- 大合議判決と他の知財高裁判決との違いを強調する必要はないだろう。判決についてはもう少し様子をみてよいと思う。
- 統計的には日本と他国とで差がでなかったが、審査官によるばらつきは気になる。
- 日本では広い権利をとりにくいという感覚がある。ユーザーの立場を意識した、ユーザーフレンドリーな審査を行って欲しい。
- たくさんの審査官がいれば、ばらつきは必ず生じる。基準を工夫する以外にも、研修などの手段でばらつきを抑制することも必要では。法曹の場合、司法修習で、裁判官、検察官、弁護士という異なる立場を経験する機会がある。審査官も、出願人の立場に立った研修の機会を増やすことや、ユーザーの企業への出向などの機会を増やすことも検討してはどうか。
- 特許制度のインパクトを判断するにあたり、パイオニア特許がどのように審査されているかを調査することも意義があるように思う。
- ばらつきの問題を強く感じるので、改善して欲しい。個人差のみならず、経験の差もあるように感じる。
1.2 サポート要件に関する点検ポイント
以下の3点について了承が得られた。
- 実質的な対応関係の具体的な判断手法は現状どおりとし、(1)「課題が解決できることを当業者が認識できる範囲」の把握、(2)「発明の課題」の把握、(3)類型の解説、における記載を補足、明確化する。
- 発明の詳細な説明に具体例として示されたものから拡張ないし一般化できる範囲として、例えば「化学物質やその用途に関する技術分野」や「機械や電気に関する技術分野」等、具体的な技術分野を記載しつつ、説明を補足する。
- 拒絶理由通知に記載すべき具体的な理由に関して、審査官が具体的な理由を示さないと出願人の反論が困難になる点を明示した上で、どのような根拠を示すべきかについて、記載を補足する。
この点に関する議論における、委員からの主な意見・要望は以下のとおり。
- 技術分野によって特性が異なるとの感覚を持っているので、説明を補足することに賛成である。
- 審査官によっては、簡潔過ぎる拒絶理由や、冗長で何を言いたいのか分からない拒絶理由を受けることもあるので、理由を分かりやすく記載する点について徹底して欲しい。
- 出願人は、権利を取りたいから出願しているのであり、審査官は、どうすれば特許になるかが出願人に伝わるような拒絶理由を書いて欲しい。
- 発明のポイントでないところでサポート要件違反の通知を受けることがある。ぜひ、そのようなことがなくなるように改善して欲しい。
- 事例集において、良い例と悪い例の両方を示して欲しい。
1.3 出願人の対応に関する点検ポイント
サポート要件に出願人の対応についての項目を追加するとともに、記載要件の審査基準全体での整合性を考慮しつつ、実験成績証明書が参酌される条件を整理し、各要件における記載を補足、明確化することについて、了承が得られた。
この点に関する議論における、委員からの主な意見・要望は以下のとおり。
- 実験成績証明書については、特に外国出願人を中心に不満がある。この点について整理することは重要であり、ぜひ進めて欲しい。
- 特に化学分野が関連すると思われるが、実験成績証明書は、日本ではなかなか認められない。もっと緩やかにしてもいいのでは。これについても、認められる場合と認められない場合の両方の事例を出して欲しい。
- 実験成績証明書に関する記載を整理してもらえるのは大変ありがたい。権利行使を受ける立場になることもあるので、不用意に実験成績証明書の後出しを認めることにはならないようにして欲しい。
2. 今後の予定
第6回審査基準専門委員会を、10月14日(木曜日)に開催する予定。
[更新日 2010年9月17日]
お問い合わせ
|
特許庁調整課審査基準室
電話:03-3581-1101 内線3112

|