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第3回新しいタイプの商標に関する検討ワーキンググループ議事要旨

平成20年11月6日

経済産業省特許庁

10月29日(水曜日)午前、産業構造審議会知的財産政策部会商標制度小委員会第3回新しいタイプの商標に関する検討ワーキンググループ(座長:土肥 一史 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授)が開催された。

1.審議内容

事務局から配付資料に沿って説明した後、討議を行ったところ、委員からの意見の概要は以下のとおり。

(1)商標の定義の見直し

  • 香り・におい、触感、味、トレードドレスを商標の定義の対象外とすることには、賛成。
  • 輪郭のない色彩を商標の定義に含めることについて、多角的かつ慎重な議論が必要ではないか。
  • 位置商標等について、定義上明記せず、一定の使用方法(付し方)の下で識別力が認められることを条件に当該使用方法に権利範囲を限定する商標として法律上位置付ける案が提示されている。しかし、これでは位置商標の権利範囲を具体的にイメージすることが困難となり、第三者にとっても予測可能性が低下するおそれがあるのではないか。
  • 位置商標の使用範囲を広く認めるようになると、結局、米国でトレードドレスとされているようなものまで実質的に保護されてしまうのではないか。位置商標が認められる範囲について、更に議論が必要ではないか。
  • ホログラムは本当に出所表示なのか、もう一度原点に戻って議論すべきではないか。
  • 仮に、商標の定義を包括的に規定することとした場合、権利範囲を特定することができないタイプが含まれてしまうなどの弊害が大きいことから、保護するニーズが強いタイプを優先して検討することが望ましい。
  • 出願人としても、商標の定義が包括的に規定されるより、出願できる商標のタイプが法律上明確に定義されている方が出願しやすいのではないか。
  • 今般の検討では、輪郭のない色彩や音が出所表示機能を発揮することを前提に議論していることから、商標の定義においてあえて「標章等」と規定せずに、輪郭のない色彩や音を「標章」の概念に含めてしまってもよいのではないか。
  • 不正競争防止法の定義にも商標法の「標章」が含まれているが、商品等表示の概念の範囲内であることから、商標法において輪郭のない色彩や音を「標章」の概念に含めても、特段の問題はないのではないか。
  • 一商標一出願の原則について、例えば、動画商標として標章に連続性のないものが出願された場合(例:カボチャが突然馬車に変化する等)について、「一商標」とみなされる範囲を明確に示すべきではないか。
  • 定義に識別性を加えるかどうかという論点は新しいタイプの商標に限ったものではなく、商標法の根本的な問題であるため、慎重に検討する必要があるのではないか。

(2)商標の使用の定義の見直し

  • 音の商標の使用について「再生」と規定することとした場合、録音された音の再生のみに限られ、生演奏が使用に該当しないように読めてしまうが、問題ではないか。
  • 動画や音の商標について、これらを商品等や広告に用いるのではなく、単に自社のイメージアップのためだけに用いる場合には、商標の使用と言えるのか。

(3)商標の登録要件等の見直し

  • 誰もがパブリックドメインだと思っているメロディー(クラシック音楽の一部など)が権利化されてしまうことは不適切ではないか。新しいタイプの商標は、地域団体商標のように使用及び周知性を登録要件としてはどうか。
  • 新しいタイプの商標の大半は、基本的に3条2項(使用による識別力の獲得)が適用されることで商標登録が認められる運用となると考えられるため、地域団体商標のように使用及び周知性を登録要件としてあえて明文化する必要はないのではないか。
  • 機能性の要件について、新しいタイプの商標に関する特段の規定を設けずとも、現行の識別力に関する登録要件によって対応できるのではないか。

(4)商標権の権利範囲の特定方法の見直し

  • 諸外国では、音の商標の特定方法として、電子ファイルによる特定、楽譜による特定、音の説明による特定という3パターンがある。マドリッド協定議定書に基づく出願やパリ条約による優先権主張を伴う出願の観点からも、音の商標について楽譜による出願も認めるよう検討すべきではないか。
  • 欧州では商標を写実的に表現することが求められているため、音の商標は楽譜と説明によって特定されていると考えられるが、商標の権利範囲を特定するという観点からは、我が国では電子ファイルによる特定が適切なのではないか。楽譜や音の説明については、審査官や出願人の便宜のため、権利範囲の特定には直接影響しない補足的なものとして位置付けるべきではないか。

(5)商標の類似の範囲、著作権等の他の権利との調整

  • 位置商標等の類否判断に際し、使用方法(付し方)の類否も判断するため、25条(商標権の効力)に明示的な規定を置く必要があるのではないか。
  • 輪郭のない色彩について、欧州のように使用方法を限定しない制度と、米国のように輪郭のない色彩を付す対象となる商品等を具体的に特定させる制度とがあるが、我が国ではどちらの制度とするのか。
  • 輪郭のない色彩について、位置商標等のように使用方法を特定することもできると考えると、米国のような特定方法も可能であると考えることができるのではないか。
  • 標章自体に識別力があるものを、あえて使用方法(付し方)を特定して位置商標として登録することも考えられる。これにより、商標の権利者は、商標権の侵害の局面において、他者が当該標章をその位置に付している場合には「商標的使用ではない」との抗弁が認められにくくなることを期待するのではないか。
  • 文字商標の音声的使用について、文字商標と新しい音の商標について類否を判断することになれば、審判・裁判例も変わるのではないか。
  • 音声的使用に係る継続的使用権について、単に過去から使用しているものにすべて認めるべきではなく、使用の実態に即して限定的に認めるべきではないか。

(6)その他

新しいタイプの商標を出願するには準備に時間を要することが予想されることから、経過措置として制度導入後の3か月間程度の期間に出願されたものは、すべて同日の出願とみなすこととしてはどうか。

2.今後の審議スケジュール

第4回ワーキンググループを、11月28日午前中に開催する予定。来年1月頃の取りまとめに向けて月1回のペースで残り3回程度の開催を予定。

[更新日 2008年11月13日]

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