ホーム> 資料・統計> 審議会・研究会> 産業構造審議会> 産業構造審議会 知的財産分科会> 新しいタイプの商標に関する検討ワーキンググループ> 第5回新しいタイプの商標に関する検討ワーキンググループ議事録
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土肥座長 |
ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会商標制度小委員会第5回新しいタイプの商標に関する検討ワーキンググループを開催いたします。 |
鎌田審議室長 |
本日は、経済産業省記者会に所属する報道関係者からの要請によりまして、会議の冒頭にカメラ撮影を行います。皆様しばらくそのままでお待ちくださいますようお願いいたします。 〔撮影〕 |
土肥座長 |
それでは、本日は報告書(案)について具体的な検討を行いたいと存じます。 まず事務局から本日の委員の出欠の状況と配付資料の確認をお願いいたします。 |
鎌田審議室長 |
本日は、上野委員と堤委員が御欠席されております。 次に、配付資料の確認をさせていただきます。 本日の配付資料は、お手元の座席表、議事次第・配付資料一覧、委員名簿に加えまして、資料「新しいタイプの商標に関する検討ワーキンググループ報告書(案)」をお配りしております。また、参考資料は5点お配りしております。参考資料1は前回の議事録です。 また、前回と同様、参考資料2から5をお配りしております。 皆様のお手元の資料に不足等ございませんでしょうか。 また、本日も前回同様、御発言をなさる際にはお手元のマイクのスイッチをお入れいただき、マイクを近づけて御発言いただくようお願いいたします。 以上です。 |
土肥座長 |
ありがとうございました。 |
土肥座長 |
それでは、早速ですけれども、議題に入らせていただきます。本日は、報告書(案)についてですので、事務局からこの点についての説明を行っていただきます。よろしくお願いいたします。 |
鎌田審議室長 |
それでは、報告書(案)について御説明させていただきます。 これまでに委員の皆様から御議論いただきました内容及び前回の論点整理を踏まえて作成しておりますので、ポイントをかいつまんで御説明させていただきたいと思います。 まず初めに「検討の背景」を書いております。 近年のインターネットの急速な普及等によって、新しいタイプの商標が用いられるようになってきているという点。それから、諸外国においてこうした新しいタイプの商標を保護する動きが広がりつつあるという点。また、WIPOのSCTにおいても新しいタイプの商標の特定方法について各国に共通する考え方が取りまとめられたという点。これに対しまして、我が国の商標法は、動きや音などからなる新しいタイプの商標は保護の対象としていない点。これらを踏まえまして、制度整備に取り組むことが必要となっているとしております。 次に、「新しいタイプの商標の類型」でございまして、「動きの商標」「ホログラムの商標」「輪郭のない色彩の商標」「位置商標」「音の商標」「香り・においの商標」「触感の商標」「味の商標」「トレードドレス」、これらにつきまして簡単に確認しております。 次に、「諸外国等における新しいタイプの商標の保護状況」でございます。初めに欧州及び米国の状況について、非常に広く保護され得る規定になっているという点と、他方、欧州司法裁判所ではその運用にかなり厳格な要件を課しているという点などを整理しております。 さらに、4ページでございますけれども、「諸外国等における出願・登録件数」を確認しております。アメリカ、欧州、英国、フランス、ドイツ、豪州において1994年から2006年の期間で約3700件の新しいタイプの商標の出願と約2200件の登録があることなどを書いております。5ページでは表にまとめております。 さらに、5ページでは、「国際的な枠組みの状況」を整理しております。まずTRIPS協定の規定の確認、次に商標法条約、更に今年3月に発効することになりました「商標法に関するシンガポール条約」の規定ぶりの確認をしております。シンガポール条約では、7ページでございますけれども、ホログラム標章、動きの標章、色彩標章、位置標章、さらに視認することができない標識によって構成される標章についての特定方法などについて条約規則の中で定められていることを確認しております。さらに、SCTについて、2006年11月から新しいタイプの商標の特定方法について、WIPO加盟国の事例の中で共通する考え方を整理する作業が進められてきた結果としまして、昨年の12月に新しいタイプの商標のうち、立体商標、動き、ホログラム、輪郭のない色彩、位置、音、ジェスチャー、ジェスチャーにつきましては、動きの商標又は図形商標として取り扱うこととされておりますけれども、これらの特定方法について各国に共通する考え方が取りまとめられました。他方、それ以外のものにつきましては取りまとめることができなかったということでございます。 次に、7ページで「保護のニーズ」について整理しております。 以上を踏まえまして、9ページですが「検討にあたっての基本的な考え方」を整理しております。3点ございまして、1つ目が権利範囲の特定方法、2つ目が識別力、3つ目が類似の範囲に関する基本的な考え方でございます。 まず、「権利範囲の特定方法に関する基本的な考え方」といたしましては、商標権が非常に強い権利であるということを確認した上で、1)としまして「需要者等が商標の構成及び態様を明確かつ正確に認識することができるように特定できるか」という点、さらに2)としまして「特許庁における商標の保存、公開等が技術上可能か」という点に留意する必要があるとしております。 次に、「識別力」に関する基本的な考え方ですが、これは現行同様、識別力を有するものに限って登録を認めるという点。さらに、使用により識別力を獲得したものについても登録を認めることが適切という点を確認しております。 1枚めくっていただきまして、「類似の範囲に関する基本的な考え方」でございます。「現行では、商標の類似の範囲について、商標の外観、観念、称呼等によって需要者等に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察することとされているが、新しいタイプの商標の類否判断については、上記の考え方を踏まえ、タイプ毎の特性を考慮しつつ判断することが適切と考えられる」としております。 「また、現行ではタイプが異なる商標同士の類否判断も行っていることから、新しいタイプの商標についても、現行の商標と併せてタイプ横断的に類否を判断することが適切」としております。 11ページ以降が「具体的な制度設計」でございます。 1つ目が「保護対象に追加する商標のタイプ」でございまして、(1)としまして、特定可能性の検討を個別にしております。次に(2)としまして、SCTの取りまとめの内容でございます。これは先ほど御説明したことの繰り返しになりますけれども、最後に1点、「トレードドレスについては議論がなされなかった」ことを書いております。議論がなされなかった結果として、当然のことながら特定方法は取りまとめられていないということでございます。その結論としまして、(3)の「対応の方向」ですけれども、「タイプ毎の商標の権利範囲の特定の可能性やSCTにより取りまとめられた考え方を踏まえ、我が国においては、新しいタイプの商標のうち、動き、ホログラム、輪郭のない色彩、位置、音を新たに商標法の保護対象に追加することが適切と考えられる」としております。 次に、「定義の見直し」でございます。初めに現行制度の概要を確認した上で、(2)「対応の方向」でございます。「商標の権利範囲を明確に特定できるタイプの商標に限定するため、標章の構成要素を特定する必要がある」とした上で、個別に検討しています。 なお、(2)の2パラでございますけれども、「標章の構成要素を特定せずに包括的に規定するという考え方」もありますけれども、この点につきましては御議論いただきましたように、「包括的に規定することとした場合、香り・におい等のように商標の権利範囲の特定が困難なものが条文上広く含まれてしまう」ということになってしまい、結果的に、「出願人等にとって商標制度への予見性が低下するおそれがある」ということで、こういう方法は採用しないと整理しております。 1)としまして、「動き、ホログラムの商標」でございますけれども、これは標章の形状等が変化するものが標章の定義に含まれることを条文上明確化するとしております。 さらに、2)の「輪郭のない色彩の商標、音の商標」でございますけれども、これらは現行の標章の定義に含まれませんので、これを含めるということでございます。 1枚めくっていただきまして、3)の「位置商標」でございますけれども、位置商標として商品等に付す図形や色彩等は現行の標章の概念に含まれますので、現行の規定がそのまま適用される。但し、位置という概念については、標章とは別の概念として条文上手当てを行うということでございます。 さらに、4)の「一商標一出願」の考え方につきましては、概念が不明確なものにならないよう対応するということでございます。 次に、5)の「商標登録表示、虚偽表示」でございます。商標登録表示につきましては、音の商標の使用態様なども踏まえまして、当該規定の対象とする必要はないとする一方で、虚偽表示につきましては、商標制度への信頼を守る等の観点から、音の商標についての虚偽表示も禁止するように規定を整備するということでございます。 6)の不正競争防止法につきましては、必要があれば不正競争防止法において対応するということでございます。 さらに、7)の「商標の定義に識別性の要件を追加することについて」でございます。15ページの最後のパラグラフでございますけれども、「新しいタイプの商標の導入状況も踏まえつつ、商標法全体の問題として、慎重な検討が必要である」と整理しております。 次に、「商標の使用の定義の見直し」でございます。ここも現行制度の概要を確認した上で、「対応の方向」として、「動き、ホログラムの商標」につきましては、標章の形状等の変化が視覚的に認識できますので、現行の2条3項の規定が適用されると整理しております。また、「輪郭のない色彩の商標、位置商標」につきましても、視覚的に認識できますので、同様に第2条第3項の規定が適用されるとしております。他方、「音の商標」につきましては、現行の規定では対応できませんので、例示でございますけれども、「標章を付することには、…音声その他の音響を含む標章を表現することが含まれるものとする」といった規定の整備をすることが適切としております。 次に「商標の登録要件の見直し」でございます。現行制度の確認をした上で、17ページの「対応の方向」を整理しております。 まず「識別性に係る要件」につきましては、「動き、ホログラムの商標」について、現行の第3条第1項各号の規定が適用されることとなる一方で、「輪郭のない色彩の商標」について、「本来、色彩は商品等の美観を高めるためなどに使用されるものであり、輪郭のない色彩の商標を指定商品・役務において普通に用いられる方法で使用する場合には識別力がないと考えられることから、3条の規定を整備することが適切である」としております。さらに、「位置商標」について、「当該標章を商品等の特定の位置に付すことで識別力を獲得する場合」がございますので、そういった観点から3条の規定を整備する。さらに、使用の結果として識別力が認められるものについても登録を認められるよう併せて規定を整備するとしております。また、「音の商標」について、これも3条の規定を整備するとしております。 次に、「公益的な音」につきましては、例えば緊急のサイレンや国歌については登録を認めないよう規定を整備するとしております。 さらに、機能性につきましても、新しいタイプの商標のうち、商品等の機能を確保するために不可欠なもののみからなる商標については、登録を認めないよう規定を整備するとしております。 次に「特定方法等の見直し」でございます。 19ページの「対応の方向」の1)ですけれども、権利範囲を明確に特定する観点から、20ページの表の方法で特定をし、そのタイプの出願である旨を明記する。複数のタイプの商標の結合の場合にはその旨を明記するとしております。さらに、表の下の2パラでございますけれども、商標を記録した電子ファイルによって商標を特定する場合には、第三者による商標の確認、先行商標調査等の負担軽減、審査の迅速化、こういった観点から電子ファイルの内容の要約を提出することが適切であるとしております。ただし、最後のパラグラフでございますけれども、要約は権利範囲を特定するものには含まれないものとするとしております。 21ページの2)の「電子ファイルに関する時間的制限等」でございますけれども、動き、ホログラム、音の商標のうち、電子ファイルが長時間にわたるもの、さらに紙の場合であっても極めて多数の図により特定されるものは、先行商標調査等の負担を著しく増やすことになり、また、特許庁における審査も非常に時間がかかることになってしまいますので、電子ファイルの場合は時間的制限、紙の場合は枚数制限、こういったものを設けることが適切としております。 さらに、3)の「登録商標の権利範囲」でございます。今回商標の特定方法として電子ファイルを追加するため、これまで「願書」に基づいて定めるとしていたものを「願書等」と定義をするということでございます。 22ページの「出願日の認定」、「補正の却下」、「記載欄の地色との関係」「商標公報」、さらに23ページの「商標登録証、証明等の交付」でございますけれども、これは説明を省略させていただきます。 次に、「商標の類似の範囲、著作権等の他の権利との調整」でございます。現行の制度の確認をした上で、24ページの「文字商標の音声的使用」について、「既に使用されている音声的使用に限り、継続的使用権を認めるよう法律上の手当をすることが適切と考えられる」としております。 さらに1枚めくっていただきまして、「位置商標の類似」でございますが、「商標の類否判断を行う際、位置の要素も含めて類否判断を行うよう規定を整備する」としております。 さらに、「侵害とみなす行為」については、「位置の要素も含めて類否判断を行うよう」にするとともに、「色彩のみが異なる商標」については、「新しいタイプの商標についてもおよそ色彩に関するものについて」は、第70条の規定がそのまま適用されることが適切としております。さらに、「商標権の効力の制限」について、規定の整備をするとしております。 最後に「特許権、実用新案権、意匠権、著作権との調整」でございますけれども、これまでと同様の扱いをすると整理をしております。 最後に、「その他」でございます。制度の利便性の向上ですとか円滑な導入等を図るために、マドリッド協定の議定書に基づく特例等ですとか、経過措置について整理しております。 「マドリッド協定の議定書に基づく特定等」につきましては、最後から3行目でございますが、「新しいタイプの商標に関する国際的な制度の見直しに向けて、今後その動向を注視しつつ積極的に働きかけることが適切と考えられる」としております。 さらに、「経過措置」でございますけれども、「制度改正前から同一又は類似の商標を使用している第三者が、制度改正後も使用を継続することで他人の商標権を侵害してしまうおそれがある。このような第三者の既存の評価、信用を保護し、取引秩序を維持するため、継続的使用権を認めるよう法律上の手当をすることが適切」としております。さらに、新しいタイプの商標を追加する場合、出願が制度改正当初に集中すると事務処理の混乱を扱くおそれがあること、既使用のものと未使用のもののバランスの問題、審査において既存のタイプの商標との類否判断をする必要があること、さらに重複登録状態の解消が進みにくくなるおそれもあるということ、こういったいろいろなことを踏まえまして、「制度の円滑な導入及び取引秩序の混乱の回避等を踏まえた対応をとることが適切」であると整理しております。 簡単でございますけれども、以上でございます。 |
土肥座長 |
ありがとうございました。 それでは、ただいまの説明を踏まえまして議論に移りたいと存じます。どなたからでも結構でございますので、御質問、御意見をお願いいたします。 阿部委員、どうぞ。 |
阿部委員 |
私のほうからまず報告書(案)について2点ほど質問させていただきたいと思います。 報告書(案)の14ページの3)「位置商標」のところの表現についての質問でございますが、「なお、位置については、標章とは別の概念であって、標章の識別力に影響を与え商標の権利範囲を限定するものとして扱うことが適切と考えられる」という表現でございますけれども、ここで「標章の識別力に影響を与え」ということと、「商標の権利範囲を限定する」ということの両者の関係が文章的にわかりにくいのかなと思っていまして、標章の識別力に影響を与えるというのは、位置を加えることによって識別力を獲得する場合があるということで理解できるのでございますけれども、それと商標の権利範囲を限定するということの関係というのは一体どういうことになっているのか、そのあたりについて、この記載の意味を確認させていただきたいというのが1点目でございます。 それから、もう1つ確認させていただきますが、25ページでございますけれども、(c)の「色彩のみが異なる商標」ということでございますけれども、この色彩のみが異なる商標についての70条の規定というのは輪郭のない色彩の商標については適用がないという理解でよろしいのか、ここにも適用があるのかということについて御説明いただければと思います。 質問事項は以上の2点でございます。 |
鎌田審議室長 |
まず14ページの「標章の識別力に影響を与え商標の権利範囲を限定するものとして扱うことが適切と考えられる」という表現でございますが、それだけでは識別力を持たない標章につきまして、位置の要素が加わることによって識別力を持ち、その識別力を持った範囲において商標権の権利範囲が設定されるという趣旨でございます。 次に、25ページでございますけれども、これは「およそ色彩に関する商標に当てはまるものであると考えられるため、新しいタイプの商標についてもおよそ色彩に関するものについて」と書いております。これは輪郭のない色彩のみの商標についても第70条の規定が適用されるという趣旨で、このように記載しております。 以上でございます。 |
阿部委員 |
前半の位置商標については同じ意味だという理解だということで了解いたしましたけれども、表現的にもし工夫ができれば御検討いただければと思います。 それから、色彩のみが異なる商標についてというのは、色彩にも適用があるとなると、70条適用の前提として類似する商標であるとの判断というのが前提になると思うんですけれども、色彩については類似する商標の判断はどうなるのかというのが疑問になったのですけれど、その辺はいかがでしょうか。 |
鎌田審議室長 |
25ページの点でございますけれども、ここはまさに御指摘のとおり、「類似する商標であることを前提に」というところがポイントになると考えております。この基準につきましては今後検討していきたいと考えております。 |
阿部委員 |
結構です。 |
土肥座長 |
ほかに御質問ございましたら……。御意見でも結構でございますが……。 鈴木委員、どうぞ。 |
鈴木委員 |
1点は確認的なことで、2点は意見なのですけれど、1点目は25ページのdの効力の制限のところの書き方なのですが、「新しいタイプの商標のうち、色彩又は音を普通に用いられる方法で表示する商標」ということで、色彩と音というのに特に制限を加えていないのですけれど、これはこれでよろしいのでしょうか。私も必ずしも頭が明確に整理されてないのですけれども……。 |
土肥座長 |
今の御質問は、「色彩又は音を普通に用いられる方法で表示する商標」という文言に関する26条の規定についての御意見ですね。 |
鈴木委員 |
ええ。 |
土肥座長 |
そのような文言を入れましょうと……。 |
鈴木委員 |
いや、効力を制限する制限対象の書き方なのですけれども、これだと要するに方法が普通であればすべて効力が制限されると。要するに商標権が及ばないということになるかのような表現ですけれど、それでいいんでしょうか。 |
土肥座長 |
音が例えば普通に用いられる方法で表示されるという、そういう具体的なイメージになるんですか。 |
鈴木委員 |
例えば、商品に色をつけるとか、広告で音を使うという場合であっても、これは普通に用いられる方法と認められるのかなという気がするのですが……。 |
土肥座長 |
商標として使われているけれども、商品に普通に用いられている場合、こういうことですね。 |
鈴木委員 |
ええ。 |
土肥座長 |
それで26条の適用があるかないかということになるわけですけれども、それは26条の規定の適用はあるのではないかと思いますが、何かこの点についてありますか。他の委員の御意見でも結構なのですけれども……。 お願いします。 |
土肥座長 |
それで26条の適用があるかないかということになるわけですけれども、それは26条の規定の適用はあるのではないかと思いますが、何かこの点についてありますか。他の委員の御意見でも結構なのですけれども……。 お願いします。 |
阿部委員 |
今のところと直接関係するかどうかわかりません。17ページのところで、新しいタイプの商標については対応の方向として、「公益上の理由等から独占が適当でないものは登録を認めないようにする必要がある」、その総論はそのとおりだと思いますけれど、その方法として登録要件等の見直しとして識別性に関する要件ということで書いてありますけれども、これらの規定だけで対処し得るのかどうかということについては疑問があります。今の点で、音については、例えば公益的な音については登録を認めないとか、普通に生ずる音響については識別力がないというような手当てはされているのですけれども、例えばパブリックドメインとの関係で、著作権期限の切れたクラシック音楽を使ったというような場合に、それは例えば指定商品とか役務との関係で用いられる場合には、特に普通に生じる音響といえなければ識別力はあるので、登録は認めるということになるのか、いや、それはやはりパブリックドメインなので、登録しないというようなことになるのか、そのあたりの関係で登録を認めないというような規定があり得るのかというようなことが疑問となりまして、パブリックドメインが普通に生じる音といえるのかと言われると、なかなかそこで対処し切れないのではないかということになりますと、そのあたりもう少し規定を考える必要が出てきやしないかという点が疑問としてございます。 |
土肥座長 |
今、2つ質問が出ているところなのですけれども、阿部委員がおっしゃっているところについて、この書き方は、例えばパブリックドメインに落ちていない著作権を侵害するようなものであっても登録を認めて、後で調整をするという、そういう考え方ですね、この報告書の考え方は。つまり、商標法一般と同じ考え方をするということなので、パブリックドメインに落ちていても、それは商標登録されるということだと思うんですけれども、そういう認識でよろしいんですよね。 皆さん、どうですか。 |
青木委員 |
私もそういう認識でおりまして、また海外の事例でも著作権の切れたものは他者によって商標登録されている。携帯電話の着信音の登録例とかあったかと思います。 |
土肥座長 |
鈴木委員の御質問になるのですが、普通に用いられている場合、26条のところで仮に音が入ったとしますね。そうすると、音を普通に用いられる方法で使用しているという場合に、たとえそれが商標として使っているような場合であっても適用があるのかないのかということなんだと思うんですけれども、私はそれはあると思っていたのですけれども、何か御意見はございますか。 江幡委員、そこのところ、ありますか。 |
江幡委員 |
私も26条の適用はあるであろうなというふうに考えております。 識別性に関しては、3条1項3号の「普通に用いられる」というところだけではなくて、6号の「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」という、こちらのカテゴリーに入るものも新しい商標の場合には相当程度出てくるのではないかというふうに個人的には考えておりまして、すなわち、例えばどんな音であっても、普通に用いられる方法でなければ全部登録されるかというと、そういうわけではないのではないかという理解です。 |
土肥座長 |
それはいわば出願された商標が3条に当たるかどうかということになるわけですね。鈴木委員がおっしゃっているのは、被告商標が26条の適用があるかないかということで、ちょっと場面が違うんですけれども、被告商標が普通に用いられているのだけれども、それは商標として用いられているという主張が可能な場合の話なんですね。だから、それはいわば26条に関する限り、たとえ商標として使われているような場合であっても、必ずそれは独占不適該当性から排除するという趣旨だと思うんですけれども……。 |
鈴木委員 |
すみません。私のコメントの趣旨がいまいち不明確で申しわけないのですけれど、今の26条はあくまで商品の普通名称、産地等々、商品と結びつく何らかの属性的なものを普通に用いられる方法で使うということなわけですね。それに対して、報告書案の先ほど指摘した書き方だと「音」とだけ書かれていて、それで果たしていいのだろうかと。端的に言うとそういうことなんです。条文上、「音を普通に用いられる方法」と書いていいのだろうかと。音ということに何か限定が要らないのかなと。 |
土肥座長 |
26条との規定ぶりは、ニュータイプの商標の場合具体的にどうなるかという、そこですね。「音を普通に用いられる方法で表示する商標」というような書きぶりになってもいいのかどうかということは内部で何か既に御検討がありますか。 具体的にはまだ条文としてそこまで詰めていないみたいなのですけれども……。 この問題は非常に難しい問題と思うんですけれども、非常に微妙なところもありましょう。恐らくそこは普通に用いられる場合であっても必ずここは自由にするということで、たとえ商標として使用されているような場合であっても、この26条に該当する場合は独占不適合性に該当すると考えるべきではないか、と思います――ただ、商標課の中では例えば審査基準室でこの点を前に議論したことがあるのですけれども、商標として使用されていない場合が26条で規定されていると考えることも可能だとも思われます。この点、意見を異にすると思うんですが、林さんの方から今のところで何かおっしゃっておいていただけますか。 26条と商標として普通に用いられる方法で表示する商標の関係なのですが……。 |
林審査基準室長 |
今の鈴木委員の御質問の答えとしては的はずれになってしまうかもしれませんが、「普通に用いられる方法で表示する」という意味についてならば、登録要件の審査としての3条1項3号等と26条とでは位置づけが全く違うところがあるように思います。特に、実際の使用態様によって判断されるのか、されないのかというところになると、3条の要件というのはあくまで願書に記載された商標と指定商品の関係で判断するということになるので、実際の使用様態によって判断できる26条との関係ではちょっと違うのかなという意識はあります。 それとも、鈴木委員の御指摘というのは、単なる音の表し方が普通に用いられる方法かどうかというのではなくて、商品の内容等を音などで普通に用いられる方法で表すとか、何を表すのかとういう限定が必要ではないかという御趣旨でしょうか。 |
鈴木委員 |
すみません。私自身、今、これを読んで思いついた疑問点だったものですから、話も整理できていなくて申しわけありません。一応御検討いただいて、私も考えてみます。 よろしいですか、ほかの点も。 |
土肥座長 |
はい、続けてどうぞ。 |
鈴木委員 |
あとは余り法的な話ではないのですけれども、報告書の説得力を増すという観点から、外国の動向について4ページで書かれている中で、特にアジア諸国で対象を拡大することを検討していることに触れたらどうか。少なくとも韓国はFTA交渉でコミットしており、まだFTA自体は発効に至っていないようですけれども、そこまで公に姿勢なり、方針が示されているので、書いてもいいのではないかというのが1点です。 それから、12ページのタイプの選択といいますか、対応の方向のところなのですけれども、専ら権利範囲の特定の可能性の観点からどのタイプにするかという結論を導いているように読めるのですけれども、この理由づけのところで、前のほうに出ているニーズと国際動向も入れたほうが説明としてはより説得力を増すのかなと思いました。 以上です。 |
土肥座長 |
質問してよろしいですか。 最初の点なのですけれど、4ページのところのアジアの動向なのですが、3)のところの話ですよね。 |
鈴木委員 |
はい。 |
土肥座長 |
もう少し書くとしたらどういう形になりますか。 |
鈴木委員 |
注でもいいと思うのですけれども、例えば韓国は、現行法ではあくまで視認できるタイプの商標だけというふうになっていますけれども、もっとこれを広げるということを、少なくとも政府はかなり明確に方針として示しておりますので、そのようなさらに拡大する方向を示しているということは、特に身近な国でもありますので、情報として記載したほうがよろしいのではないかということです。 |
土肥座長 |
わかりました。ありがとうございました。 ほかにいかがでございましょうか。 清水委員、どうぞ。 |
清水委員 |
前回は、お休みさせていただいて申しわけありませんでした。 今ありました説得力を増すという観点からは、ちょっと逆の方向になってしまって非常に恐縮ではあるのですけれども、7ページの4の保護ニーズというところで、アンケート結果が記載されているわけなのですけれども、これは私が第1回目のときにちょっと申し上げさせていただいたのですが、回答のあった500社からは60%が導入を希望ということなのですけれども、極めて回答率が低かったということを示すために、例えば何社か、当初の資料に載っていたかと思うんですけれども、何社にアンケート依頼をして、そのうち回答のあった500社からは60%希望しているというような形でぜひ記載をちょっと変えていただきたいと思っております。 回答率が低いというのは、いろいろな意味、いろんな趣旨があって回答していないというところがありまして、回答したのは主に新しいタイプの商標を積極的に保護を希望している企業さんということで、導入に積極的でない企業さんは、結構アンケートの内容、設問形式から見て回答していなかったという事実もあります。 もう1つ、これは前回申し上げるのが良かったのですが今まで、比較的登録の場面での話は出てきているのですけれども、やはり使用面ですとか権利行使面、こちらの議論が余り進んでいなくて、企業としても非常に不透明な部分、見えない部分が多いということで、現時点で積極的にウェルカムという形で手を挙げづらいところがあります。特に企業としましては、使用、それから出願のときに、当然のことながら他社権利の侵害回避という面と自社の権利を保護する、エンフォースメントの面も含めてその両面、両方を検討して使用、出願の是非を判断しております。 特に現時点では類似なり、出所の混同といったものが具体的にどうなるかというのが非常に不明確で、企業としては非常に不安感を持っているというところが多いということもありますので、ぜひここの部分は、ちょっと後ろ向きになってしまうのですけれども、少し記載を変えていただければというふうに考えております。 先ほど登録要件のところで御発言があったのですけれども、やはり音とですとか色彩ですね。こちらについて、特に特定の者に独占させるのは適当かどうか、公益上の観点から判断する旨を、特に「色彩の組み合わせ、音」についてもぜひ積極的に記載していただきたいと思っています。Aという色とBという色があって、この組み合わせはその商品、役務については今まで普通には使用されていませんねということで登録になってしまうと、企業としては非常に困るといいますか、企業活動を束縛するというところに非常に大きくつながってきます。そういった意味では、今回3条関係のところ、十把一絡げではなくそれぞれのタイプごとに規定を新たに設けようということで、そこは感謝してはいるのですけれども、もう一歩踏み込んで限りなく、使用されてセカンダリーミーニングが得られたもの以外は登録できないという形にぜひしていただければと思います。 26条での権利行使を制限しているということを必ず言われるのですが、26条というのは裁判所マターになりまして、企業としましては裁判所マターには可能な限り持っていきたくないというのが本音でありまして、ここで回避できるというよりは、可能な限り入り口のところで絞っていただきたいというところを希望しております。 以上です。 |
土肥座長 |
最初のほうの御意見ですけれども、アンケートに関しては事実の範囲でということになると思います。今おっしゃったいろいろアンケートにあらわれてこないような背景については、これはいかんともしがたいものですから、事実の範囲で考えるということですね。 |
清水委員 |
回答のあった500社からということと、プラスどれだけのところにアンケートを配布したかという……。 |
土肥座長 |
表現を考えさせていただきます。 後者、特に輪郭のない色彩の商標、3条2項との関係、17ページのところで書いていることなのですけれども、3条2項に限定されるというように、限ってはいないのですが、確かに識別力がない場合が理屈の上で観念的にないかと言われると、ないとも断定できないところがあって、現実には3条2項の適用となるのではないかと思うんです。ほかにございますか。 琴寄委員。 |
琴寄委員 |
今、清水委員のほうからお話があったように、ニーズについてアンケート調査ということでここで載せていただいておりまして、一方で、本委員会の第1回目だったかと思いますけれども、私どものグループ会社を含めたニーズという話、あるいは制度の国際調和という観点にかんがみますと、方向性としては、制度として導入はしていただいて、ニーズがある企業なり個人なりが活用するという土壌を整備していただくということは私どもとしては非常によいことだと思っております。 ただ、これもまた清水委員がおっしゃったように、制度の細かい話の中で、やはりいろいろ明確にしていかないといけないという部分があるかと思うんですけれども、例えば14ページの4番で「一商標一出願」という中で、この概念が不明確にならないように対応することが適切だと考えるということが書かれております。この点は全く異論ございませんけれども、具体的に実務上、一商標とみなされる範囲というのはどういうようなものなのかということをある程度明確を図るようにしていただきたいと思っております。 具体的に頭にあるわけではないのですけれども、例えば動きのあるような商標で、連続性のない幾つかの動きが組み合わさったような商標があって、それが一体というふうに認識されるような場合というのもあるかと思うんですけれども、そういうような場合はどうなのかという部分について、ある程度考え方の明確化を図っていただきたいと思っております。 |
土肥座長 |
それは必ず必要になってくることだと思います。これは審査基準にもかかわるような話になるのですけれど、何か今の時点で御説明いただくようなことがありますか。方向性なり、考え方なりご紹介ください。 |
林審査基準室長 |
ご指摘のようなケースの考え方は、特に審査に直結する話になりますので、明確にしなくてはいけないという御指摘や御心配を踏まえた上で、今後、基準の作成の中で検討させていただくということだと思います。前回も、いろいろなお話もありましたので、そういうことを含めて検討してまいりたいと思います。 |
土肥座長 |
よろしくお願いします。 ほかにいかがでございましょうか。 江幡委員、お願いします。 |
江幡委員 |
今まで他の委員がおっしゃっていたところと趣旨としては似たところになるとは思いますけれども、新しいタイプの商標の場合は、「新しい商標」と一口に言ってもそれぞれのタイプごとに色々な種類があります。例えば音に関しても言葉のある音であるとか、純粋に音響だけの音とか、「音の商標」の中でのケースというのはさまざまであろうと思います。それとともに本来的な識別力といいますか、その商標が持っている識別力を発揮しやすいタイプのものであるかという点もタイプによってさまざまであろうし、また同じタイプということでカテゴライズされるものの中にもその識別力の程度というのは変わってくるだろうと思います。例えば「動きの商標」といった場合に、その物自体の動きの場合もあれば、画面上の図が動くというような場合もあるので、識別力は、場合ごとに、また個々の商標ごとにきちんと検討していくことが必要だろうと思います。 少し懸念しておりますのは、こういった新しいタイプの商標を登録する制度が、認められたから、当然新しいタイプの商標には識別力があるのだというような短絡的な発想に結びついたり、誤解を招いたりして、それが将来の実務に影響するということがあってはならないと思います。この資料では、識別力に係る要件で、輪郭のない色彩、かつ、単一の場合に関しては3条2項に該当する場合が多いだろうとの言及があるわけですけれども、もう少し包括的な意味でも、識別力が認められるか否かはケース・バイ・ケースであるとの記載があるといいのではないかと思います。3条2項によって登録されるケースが多そうな新しい商標はほかにもあるということを少し含みを持たせるような表現にしていただけたらなおよろしいのではないかと思います。 以上です。 |
土肥座長 |
そういうことになると、個別のところというよりも、全体的に識別性のところはそういう配慮が必要だという、そういう御意見ですね。また事務局と相談させていただいて、考えさせていただきます。 ほかにございますか。 特にございませんか。 特に御意見、あるいは御質問がございませんのであれば、これまでいただいた委員の御意見を十分考えさせていただくということになります。特に現在の報告書(案)について、幾つか表現ぶりについて御要望が出ておりますので、それについては基本的にどういう形に修正をするのか、そういうことも含めて御一任をいただいておかなければならないのではないかと思います。この後、この案はパブコメにかけるという、そういう段取りになっておりますので、その前にきょうの御意見を踏まえましてどういう形に修正するかは座長に御一任いただきたいと思うんですけれども、この点、皆さんの御意見をちょうだいしたいのですが、いかがでございますしょうか。 御発言いただくと一番いいんですけれど……。 |
江幡委員 |
座長に一任させていただきます。 |
土肥座長 |
皆さん、御一任いただくということに異議ないということですね。 それでは、そのように手続を進めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。 事務局はそれでよろしいですか。 |
土肥座長 |
それでは、今後のスケジュールにつきまして事務局から説明をお願いいたします。 |
鎌田審議室長 |
それでは、今後のスケジュールについて御説明させていただきます。 今後のワーキンググループにつきましては、先ほど座長からもお話がありましたように、パブリックコメントにかけさせていただきます。その手続を終えた段階で土肥座長とまた相談させていただき、2月末から3月ぐらいを目途に事務局のほうから皆様に御連絡させていただきたいと考えております。 |
土肥座長 |
それでは、以上をもちまして、産業構造審議会知的財産政策部会商標制度小委員会第5回の新しいタイプの商標に関する検討ワーキンググループを閉会させていただきます。 本日は、どうもありがとうございました。 |
[更新日 2009年2月5日]
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