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第1回特許権の存続期間の延長制度検討ワーキング・グループ議事録

  1. 日時 平成20年10月30日(木曜日)15時00分~17時00分
  2. 場所 特許庁 特別会議室
  3. 出席委員 熊谷委員、佐藤委員、高橋委員、田中委員、辻村委員、長岡委員、中冨委員、長濱委員、前田委員、本山委員
  4. 議題
    1. 特許権の存続期間の延長制度検討ワーキング・グループの設置について
    2. 特許権の存続期間の延長制度の見直しの論点について
    3. 特許権の存続期間の延長制度の対象分野とする条件について
    4. カルタヘナ法に基づく処分について
    5. 延長制度の対象分野の拡大に関するアンケートの実施について

開会

田村審査基準室長

まだお見えでない方もいらっしゃいますが、定刻になりましたので、ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会特許権の存続期間の延長制度検討ワーキング・グループを開催させていただきます。

本日はお忙しい中お集まりいただき、まことにありがとうございます。私は事務局を務めさせていただきます特許庁調整課審査基準室の田村でございます。よろしくお願いいたします。

本ワーキング・グループにつきましては、特許制度小委員会委員各位にその設置につきまして書面にて御審議いただきまして、本年9月19日付けで設置が決定されております。

座長につきましては、産業構造審議会の運営規程により小委員会の委員長が指名するものとされております。特許制度小委員会の中山信弘委員長に御相談しましたところ、一橋大学のイノベーション研究センター教授の長岡貞男委員を御推薦いただきまして、長岡委員御本人にも御内諾をいただいておりますので、長岡委員に座長をお願いしたいと思います。

それでは、長岡座長から一言ごあいさつをお願いいたします。

長岡座長

ただいま御紹介いただきましたイノベーション研究センターの長岡です。よろしくお願いいたします。

この問題は非常に重要な問題でありまして、イノベーションの促進のためにどういうふうに制度があるべきか、ここで「イノベーション」と言うときには発明の創造と利用と両方入っておりますが、そういう根幹にかかわる問題で、皆さんの御協力を得て、よく実態も理解しながら審議を進めていきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

田村審査基準室長

ありがとうございました。

以降の議事進行を長岡座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

委員紹介

長岡座長

本日は第1回のワーキング・グループですので、事務局から、委員の皆様と、メーンテーブルの出席者の御紹介をお願いいたします。

田村審査基準室長

お手元に座席表と委員名簿をお配りしておりますので、そちらをごらんください。委員の皆様を五十音順で御紹介させていただきます。

明治大学法科大学院教授でいらっしゃいます熊谷健一委員でございます。

次に、日本ジェネリック製薬協会知的財産研究委員会の委員長を務めておられまして、東和薬品株式会社管理本部法務部長を務めていらっしゃいます佐藤有三委員でございます。

次に、日本製薬工業協会知的財産委員会ワーキンググループリーダーをお務めでございまして、武田薬品工業株式会社知的財産部弁理士の高橋秀一委員でございます。

次に、長島・大野・常松法律事務所弁護士・弁理士でいらっしゃいます田中昌利委員でございます。

次に、サントリー株式会社常務取締役R&D推進部長でいらっしゃいます辻村英雄委員でございます。

次に、ナノキャリア株式会社社長でいらっしゃいまして、iPSアカデミアジャパン株式会社取締役でもいらっしゃいます中冨一郎委員でございます。

次に、日本弁理士会執行理事をお務めで、長濱国際特許事務所弁理士でいらっしゃいます長濱範明委員でございます。

次に、東京医科歯科大学知的財産本部技術移転センター長でいらっしゃいます前田裕子委員でございます。

次に、日本知的財産協会特許第1委員会の委員長を務めていらっしゃいまして、日本電信電話株式会社知的財産センター担当部長でいらっしゃいます本山泰委員でございます。

なお、本日御欠席されている委員は、一橋大学国際企業戦略研究科教授でいらっしゃいます相澤英孝委員と、慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授でいらっしゃいます中村洋委員でございます。

続きまして政府側の出席者を、皆様から向かって座長の左隣から御紹介させていただきます。

まず、特許技監の南でございます。

特許審査第一部長の芝でございます。

特許審査第三部長の胡田でございます。

調整課長の木原でございます。

審判企画室長の滝口でございます。

次に、委員の皆様から向かって右側、私の右隣から御紹介させていただきます。

総務課長の広実でございます。

総務課工業所有権制度改正審議室室長補佐の若月でございます。

農林水産省農産安全管理課課長補佐の諏訪部でございます。

審査基準室の室長補佐の本間でございます。

最後に、私、審査基準室長の田村でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

特許技監挨拶

長岡座長

どうもありがとうございました。

では、審議に先立ちまして南特許技監から一言ごあいさつをお願いいたします。

南特許技監

本日は、長岡座長をはじめ委員の皆様方には、お忙しい中を御出席いただきまして、まことにありがとうございます。本日はこのワーキング・グループの初回ということでございますので、一言ごあいさつをさせていただきたいと思います。

皆様御案内のように、我が国が今後とも持続的な経済成長を達成して国際競争力を強化していくためには、イノベーションを促進することが重要であり、知的財産制度はその重要な役割を果たしております。

この知的財産権を取り巻く環境は、経済のグローバル化の進展のほかに、技術の高度化・複雑化などを背景として大きく変化しています。例えば再生医療技術や遺伝子治療に代表されるように、バイオ関連技術の進展が著しく、遺伝子組換え生物やナノテクノロジーを用いたドラッグデリバリーシステムなど、革新的新技術が実用化・事業化され、新分野・新用途、そして新市場が開発されてきております。

このような中で、昨年秋に知的財産推進本部の知的財産による競争力強化専門調査会におきまして、「パテントフロンティアの開拓に向けて」という分野別知的財産戦略がまとめられました。その作成には、本日ここにいらっしゃいます長岡座長、辻村委員、中冨委員、前田委員が参加されましたが、この報告書に基づきまして、「知的財産推進計画2008」におきまして特許権の存続期間の延長制度を総合的に見直すようにということで定められた次第でございます。

特許権の延長制度は込み入った制度であり、総合的に見直すのは簡単ではないと思いますが、委員の皆様におかれましてはぜひ忌憚のない御議論をしていただき、よりよい制度になるように、大きな方向性を示していただきたいと思っております。どうかよろしくお願い申し上げます。ありがとうございます。

配付資料確認

長岡座長

ありがとうございました。

では、次に、資料を事務局で用意しておりますので、確認をお願いいたします。

田村審査基準室長

配付資料の確認をさせていただきます。

本日の配付資料は、資料1、特許権の存続期間の延長制度検討ワーキング・グループの審議内容の公開について。資料2が延長制度検討ワーキング・グループの設置について。資料3が延長制度の見直しの論点について。資料4が延長制度の対象分野とする条件について(案)。資料5がカルタヘナ法に基づく審査の概要。資料6が辻村委員の提出された資料でございます。資料7が延長制度の対象分野の拡大に関するアンケート骨子(案)についてというペーパーになっております。

そして、資料番号がついておりませんが、本日御欠席されておられます相澤委員の提出された資料でございまして、こちらにつきましては後ほど事務局から御説明をさせていただきたいと考えております。

あと、参考資料1が特許権の存続期間の延長制度の概要、参考資料2が資料集になっております。

以上、10点でございますが、過不足はございませんでしょうか。

審議内容の公開について

長岡座長

どうもありがとうございました。

続きまして、議論に先立ち、本ワーキング・グループの公開の方針について事務局から説明をいただきたいと思います。そして皆様方の御同意を得ておきたいと思います。

田村審査基準室長

お手元の資料1をごらんいただけますでしょうか。

御案内のとおり、産業構造審議会では、その運営規程によりまして、部会や小委員会を含めて、会議または会議録を原則公開することになっております。本ワーキング・グループにおきましても、委員各位の率直かつ自由な意見交換を確保するために、会議自体の傍聴は受け入れないことにいたしまして、会議終了後に議事要旨と配付資料を特許庁のホームページを通じて公表させていただきたいと考えております。また、議事録も、発言者に御確認いただいた後に、発言者名を明記して公表したいと考えております。

また、1点お願いがございます。発言の際にはお手元のマイクのスイッチを入れていただいて、マイクを近づけて御発言をいただきますようお願いいたします。

長岡座長

ただいまの事務局からの御説明につきまして、御異議がおありでしょうか。

では、特段の異議がなく、この方針でいくことにさせていただきたいと思います。

特許権の存続期間の延長制度検討ワーキング・グループの設置について
特許権の存続期間の延長制度の見直しの論点について

長岡座長

では早速審議に入らせていただきます。

まず、ワーキング・グループの設置について、それから延長制度の見直しの論点について、事務局から資料の御説明をお願いします。

田村審査基準室長

それでは、お手元の資料2及び資料3について説明をさせていただきたいと思います。

まず、資料2の2.に記載されていますように、特許権の存続期間の延長制度は1987年の特許法の改正により導入された制度でございます。そして制度導入から20年を過ぎたという状況にございます。革新的な技術が開発される中で、2007年10月に取りまとめられました知的財産戦略本部の知的財産による競争力強化専門調査会の報告書において、ここからは引用になりますが、「いたずらに権利期間を長期化することは、技術の自由な利用を阻害する面もある」ものの、医薬品や農薬に限らず「行政処分を受けるために長期間を要し、このため特許権の存続期間が実質的に縮減しているケースについては、権利者の投資コストの回収を十分に行えるようこれを補完することが必要な可能性があり、この点について調査・検討の必要がある」と提言されております。また、従来から外国と日本の制度には相違する点が多いことも指摘されております。

1ページめくっていただきまして、3.に記載されておりますように、こうした状況を踏まえて、本年6月18日に知的財産戦略本部が公表いたしました「知的財産推進計画2008」において、当該延長制度の対象の見直しを初めとする制度全般のあり方につき、国際的な動向も踏まえつつ、総合的な検討を行うこととされ、「これらの検討は、直ちに開始し、2008年度中に結論を得る」こととされました。そこで、産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会のもとに、特許権の存続期間延長制度検討ワーキング・グループを設置させていただきまして、総合的な検討をすることにさせていただきました。

本日、第1回目の会合を開催させていただき、12月24日に第2回の会合を開催させていただきたいと考えております。

次に、お手元の資料3をごらんいただけますでしょうか。資料3の1.には6月18日に知的財産戦略本部が公表した「知的財産推進計画2008」の抜粋が記載されております。

知的財産戦略本部から提起された論点は、2.に記載された3つでございます。現在我が国において期間延長制度の対象となっておりますのは、薬事法上の医薬品と農薬取締法の農薬でございます。最初の論点といたしましては、医薬品や農薬以外にも、安全性の確保等の審査のために、特許発明の実施までに長期間を要する政府の法規制が存在するのか否かでございます。特に、「推進計画2008」においては、生物多様性の確保に関するカルタヘナ法上の承認手続に関して、青いバラ等の遺伝子組換え生物を期間延長の対象にするか否かを検討すべきことが明記されております。

2つ目の論点は、既に期間延長制度の対象になっております医薬品につきましての制度見直しの要否でございます。薬事法上の医薬品の製造販売の承認は、医薬品の有効成分、効能・効果、剤型、用法・用量、製法等、事細かに特定して行われます。しかしながら、特許法68条の2においては、期間延長される特許権の効力は承認された医薬品の有効成分及び効能・効果の観点のみによって特定され、剤型、用法・用量、製法が異なる医薬品であっても有効成分及び効能・効果が一致すれば効力が及ぶことになっております。したがって、その後に有効成分及び効能・効果以外の項目の異なったさらなる医薬品の製造承認があっても、期間延長の対象とはしておりません。

しかしながら、20年前の制度導入時には想定できなかった、有効成分及び効能・効果が同じであって剤型のみが異なる医薬品、すなわちDDS製剤についても、薬事法上の承認には有効成分や効能が新規の医薬品と同様に長期間を要しているということで、医薬品の有効成分、効能・効果のみならず、剤型の変更を考慮した期間延長制度の再構築が可能か否かという点が2つ目の論点になります。

最後の論点といたしましては、その他の制度全般についてでございます。我が国の期間延長制度は欧米と相違する点が多いと従来から指摘される一方、その相違は制度の設立経緯や各国の法規制の相違によるとの指摘もございますので、制度全般を見直す際には、国際的な動向を踏まえつつ、他の法規制の概要等、特許発明が実施される環境・実態を十分考慮する必要がございます。

以上が特許権の存続期間延長制度の見直しの主要な論点でございまして、本日は最初の論点についてこちらのワーキング・グループで御審議いただいて、残り2つの論点は次回の会合で御議論いただく予定でございます。以上でございます。

長岡座長

ありがとうございました。

このワーキング・グループの設置の背景とか論点についで御説明いただきましたが、何か御質問とか御意見ございますでしょうか。

では、きょうは事務局からの御提案で最初の論点、延長の対象となる法規制の拡大についてというところにフォーカスして議論をしていただくことにさせていただきたいと思います。

特許権の存続期間の延長制度の対象分野とする条件について

長岡座長

最初に事務局から資料の御説明をお願いいたします。

田村審査基準室長

それでは、お手元の資料4について説明をさせていただきます。

資料4の1.には、昭和62年に期間延長制度を導入した当時の制度の趣旨をまとめさせていただいております。3点ほどございます。

まず、本制度は特許権の保護を目的といたしますから、特許発明の業としての実施を禁止する法規制が対象となるという点でございます。例えば、特許発明を実用化した製品の製造・販売が禁止される場合が対象になっておりまして、発明を完成するための研究開発段階の法規制は対象ではないという点が1点目でございます。

2点目といたしましては、政府の法規制そのものは、その趣旨からして必要なものであるが、その結果として、当該規制対象分野全体として、かつ、不可避的に、本来享受できるはずの特許期間がその規制により享受し得ない状況になっていること、そして、その規制に係る審査期間を短縮しようと努力しても、安全性の確保等の観点からおのずと限界がある、そういうふうなものでございます。

そして、3点目といたしまして、規制に係る審査のために、平均的に「相当の期間」を要する必要があり、その期間は農薬や医薬品と同程度に長期間を要することが条件になると考えられます。ちなみに、こちらの資料の脚注3に記載されておりますように、過去5年間の期間延長出願の延長期間は、農薬分野で3年4月、医薬品分野では3年10月でございます。

現在、特許法の期間延長制度には5年間の頭抑えがございますので、実態としては5年を超えた期間もあるということを考えますと、それ以上の期間が農薬とか医薬品の安全性等の審査に費やされて特許期間が失われていると理解できるかと思われます。

また、20年前の制度導入の検討に際しては、過去10年以上に及ぶ医薬品の製造承認の審査実績も提出されておりまして、そこでも長期間かかるところが確認されております。さらに、農薬につきましては国会審議中において適用が追加されたということでございますが、こちらにつきましても医薬品と同等の審査実績が提出されたという経緯がございます。

以上が、既存の期間延長制度の趣旨を踏襲した場合に、新たに期間延長の対象分野とするための前提条件を3つほどまとめさせていただいたということになります。

一方、1ページめくっていただきますと、2.に、これら3つの前提条件に加えまして、さらに政策的な観点から検討が必要と思われる事項を3つほど記載させていただいております。特許権者のみならず、第三者とのバランスも考慮する必要があること、さらには期間延長の対象となる技術分野のイノベーションを促進するような制度となるのかどうかという点、そして最後に、国際調和の観点からも検討が加えられるべきであるというところを述べさせていただいております。

最後に、本日御欠席の相澤委員からもこの辺に関しまして資料を提出していただいておりますので、簡単に御紹介させていただきたいと思います。資料7の下に昨日付の「特許権の存続期間の延長制度の対象分野について」というペーパーが入っているかと思います。

こちらの第3段落あたりから御意見が述べられておりまして、期間延長の制度の目的から見て、3段落の2行目あたりから書いてございますが、「行政庁等の認可等のための審査等により特許発明を実施できない期間が発生することにより、特許権による保護期間が侵食される場合には、期間の延長を認めるべき」であると記載していただいております。

そして、「特許権の存続期間を延長する制度を、特許権の存続期間が満了する間際になって延長を認めるとすれば、第三者の予測可能性を害するおそれ」があること、さらには、「特許権の保護期間の侵食が予測されるとすれば、その時点において特許権の存続期間を延長する制度を定めておかなければ、特許権による期待収益が減少する虞があり、特許制度によるインセンティブを減じることになる」と問題提起されております。特に、iPS細胞に関する発明などの先端的な発明に関連する発明を例として挙げられているということでございます。

そして最後に、「特許発明を実施するための各国の行政庁等の認可等のための審査等の規制の内容や手続が異なることが想定され、必ずしも、国際的な調和が優先されるべき問題ではない」ということも2ページ目の(3)に述べられているということでございまして、相澤先生からの御意見は、先ほど御説明しました資料の2.政策的観点の(2)のイノベーション促進に重点を置いた御意見と理解をさせていただきました。以上でございます。

長岡座長

どうもありがとうございました。

それでは、これから議論に移らせていただきたいと思います。この議題は、現在は医薬品と農薬だけに限られているわけですが、仮に対象を広げるとしたときにどういう条件を満たす必要があるかということで、基本的な問題だと思いますので、ぜひ積極的に御発言をいただけたらと思います。特許庁から、現在の法制度の趣旨を踏まえた条件、さらに追加的に政策的観点からの3つ条件の提案がありましたので、それも含めて議論をしていただけたらと思います。

中冨委員、お願いいたします。

中冨委員

国際的調和というのはなかなか難しいところがあると思います。例えば医薬品の場合ですと、ICHガイドラインなど国際的な調和がある反面、日本は相当の時間をかけて開発していかなければいけないというハンディがございます。これは、制度そのものがあるにもかかわらず、審査期間中にいろいろな、サイエンティフィックでない理由で結果的に延びていくという現状がございますので、国際的調和にとらわれた観点から実行していくのは、日本の特有の問題によってそれが妨げられているケースもございます。その辺は考えていただきたいと思います。

長岡座長

各国で規制が違いますので、各国の規制のあり方に対応した制度ですから、規制が違う以上は当然制度も違っていいということではないかと思います。この点に限らず、他にいかがでしょうか。

高橋委員、お願いいたします。

高橋委員

幾つかの観点で指針を明らかにするという方向は非常に結構だと思います。資料4の1ページの一番下に書いてあるような極端な例、製品化した時点では特許がなくなっているというような例がどれだけあるのかわからないですが、特許の残存期間ですか、こちらの観点で評価をすることも重要かなと思います。

といいますのは、先ほどiPS細胞のお話が出ました。これは医薬品として承認申請はおろか、臨床試験を開始するまでにも相当の時間がかかると思います。つまり、ある技術においてはリードタイムが非常に長いということで、別途医薬の特許が成立すればいいのですが、物として、あるいは基本的な方法として権利を取った場合に、それが実用化されるまでには20年を超えているというような事態もあると思います。その場合には、臨床試験や審査の期間だけを見ても評価できないところがあると思いますので、特許の残存期間もぜひ1つの観点として見ていただければと思います。

長岡座長

特許の残存期間というのはどういうふうに定義されますか。

高橋委員

実用化、事業化が開始できる、つまり承認の日の時点で、それを保護する特許の残存が例えば5年以下だとか4年以下だとか。たしか製薬協も、この制度発足前にはそういう資料を提出させていただいたかと思います。

長岡座長

事業化をしてから特許の保護期間をどのぐらい得ることができるか、そういう期間ですね。

高橋委員

はい。

長岡座長

今おっしゃっている点は、政策的観点からの条件ということでイノベーションの進展に寄与するか否か、大きく言えばそこに入るということでしょうか。

ただ、規制に基づくもの以外まで含めると、今回のアジェンダをかなり超えてしまう。つまり、基礎的な発明の保護期間を長くするとかいうことになると、延長制度の基本的な目的をはみ出します。考慮事項にはなるかもしれませんが。

高橋委員

考慮の1つのポイントとして加えさせていただきたいと思います。

長岡座長

そういうことですね。

ほかに、いかがでしょうか。

前田委員、お願いします。

前田委員

大学等での発明、基盤技術、基本特許をもっと促進して生み出していこうという方針が打ち出されていると思います。特にライフサイエンスの分野は、まだまだ医学系は特許が少ないのですが、今、医大の方も知的財産を守っていこうという機運が高まっております。本学もDDSの特許がございますし、いろいろな手法でDDSができますので、ぜひとも大学等で行われております基本特許になりそうな技術が、後で製品化になったときに企業さんが全然報われないということにならないように、延長の範囲に入れていただけたらと思います。

長岡座長

ありがとうございます。

ほかに、御意見いかがでしょうか。

どうぞ。

熊谷委員

先ほど長岡先生がおっしゃったとおりだと思いますが、そもそも存続期間の延長制度がなぜ設けられたのかという趣旨を明確にしておかなければいけないと思います。リードタイムが長い発明その他いろいろあると思いますが、20年という存続期間を決めていることを前提として、例外として存続期間の延長をいかなる要件で認めるのかは、昭和62年の制度が創設された段階と現在と存続期間延長制度の趣旨において違いはないと思います。実態として農薬と医薬品以外の分野で同じような状況が生じていることが実証されるのかどうかが、対象を考えるかというとき重要ではないかと思います。

いろいろな要因をここで検討するとしたら、制度の設計自体を変えることになってくると思いますので、制度の基本的な構造は維持しながら、同じような状況がほかにもあるのか、ないのか検証していくことが重要ではないかと思います。以上です。

長岡座長

ありがとうございます。

ほかの委員の方、いかがでしょうか。

どうぞ。

長濱委員

日本弁理士会といたしましては、会員、あるいは会員のクライアント企業等から特許権の存続期間の延長制度の見直しに関する要望が顕在化しているとは、現状では認識しておりませんが、この法律ができてから時間もたっておりますし、他の法律や規制によって薬、農薬以外に実際に特許権の存続期間が侵食されている分野が出てきているのであれば、それを含めるか否かを含めて、発明の適切な保護という観点から、あるいはイノベーションの促進という観点から、この制度の見直しについて検討することに関しては非常に意義があると認識しております。したがいまして、日本弁理士会といたしましても、見直しを検討するに当たって積極的に協力する所存でございますし、仮に見直されましたら、制度の適切な運用に資するために全面的に協力する予定でございます。

ただ、仮に要件を軽減し過ぎるような状況になりますと、逆に制度本来の趣旨を超えて特許権の存続期間が延長することにもなりますし、また、延長の認否の厳格化を失することにもなりかねません。そうなりますとかえって制度が混乱することにもなりかねませんので、あくまでも現状の制度の枠の範囲内において、他の法律や規制によって特許権の存続期間が長期にわたって侵食されているような分野に限定し、なおかつ延長の認否のための要件が客観的に認識できるということも重視した上で、権利者側、さらに第三者の立場も勘案して、広い視野から慎重に検討することが非常に重要であると認識しております。以上でございます。

長岡座長

辻村委員お願いします。

辻村委員

私は企業人の立場として、高橋委員のおっしゃったことは心情的にはよくわかるところでありまして、基本的には日本の企業においても基礎研究のイノベーションをやっていかなければいかんと言われているわけでありまして、現状は開発の期間が非常に長くかかるという基本特許の創出に障害があるというのであれば、何らかの手を打たないといけないとは思いますが、今回の議論とは少し離れたところで、どうやれば一番イノベーションを発揮できるかという論点から論議をした方がいいのかなと思っております。

そのためには、1つはどの程度そういう事例が、事例というのは難しいでしょうけれども、あるのかという客観的な事実をデータとしてそろえていく中で、それをベースに検討していった中で、特許の存続期間の延長に焦点を絞るのか、また別な方法で解決策がないのかという論議をすればいいのかなという気がいたします。

長岡座長

田中委員、お願いいたします。

田中委員

基本的な考え方という点で私の考えを述べさせていただきますと、特許権の存続期間の延長制度というものを考えるにつきましては、一方では、「特許権」というものが持つ積極的な意義、また発明に対するインセンティブの付与の必要性というものと、他方では、一定期間権利を独占することによる新しい発明の創出に対する負の面もあるということをも考えて、やはり特許権については一定の存続期間を定めざるを得ないという前提に立つことが必要なのだろうと思います。

その関係でいいますと、特許権の存続期間を延長するという規定につきましては、位置づけとしては、基本的には例外的な規定だと理解せざるを得ないだろうと思います。例外的規定に当てはまるのはどのようなものかといいますと、一般的に見て、実施までに定型的に一定期間を要するようなものであって、これについては救済する必要性があるというコンセンサスが成り立つようなものであるということにならざるを得ないだろうと思います。そのような観点からバランスのとれた検討がされるべきであると考えます。そうだとして、どのようなものに救済の必要性があるのかという判断になりますと、その前提として、実証的な検討というものは欠かせないだろうと考えております。

長岡座長

本山委員、どうぞ。

本山委員

日本知的財産協会も多種多様な企業の集まりということで、統一的な意見はなかなか出しにくいところではあるのですが、一方で、多様であればあるほどいろいろな要求が上がってくることが予想されますので、例えば、今回いろいろな延長の分野を議論したときに、化学の分野で認められるのだったら機械もという話で、いろいろな要求が出てくるだろうという悪影響が予想されます。ですから、今回の委員会でそういう要求を抑えるような形で条件をしっかり決めていく必要があるのではないかと思っています。

そういう意味では、先ほど田中先生がおっしゃったように、事例とか実績データを十分とることと、第三者の意見をしっかり聞くということで、今後アンケートをとられると思いますが、その辺の意見を十分酌み上げていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

長岡座長

ありがとうございました。

ほかに、いかがでしょうか。

そうしますと、事務局で出された案の基本的な考え方では、国際的動向も踏まえるということで、別に調和させるということではありませんので、国際的規制は各国で違いますし、もちろん各国の経験に学ぶということは非常に重要だと思いますので、そういう意味で「踏まえる」ということでいいのではないかと思います。また基礎的な研究はかなり時間がかかって、そういうところでさらに規制があればイノベーションが阻害されるという意味で、前田委員等がおっしゃった点も1番目の政策的要件に入っていると思いますし、最後におっしゃいましたように、実証的なデータがないと、しかもはっきりした基準がないと混乱を招くということもありますので、そういう観点も含めて、事務局の案をとりあえずのベースとしながら審議を進めていくということでよろしいでしょうか。

特段の意見がございませんようですので、この案をとりあえず御了解いただいたということで、これをベースにして今後議論を進めさせていただきたいと思います。

カルタヘナ法に基づく処分について

長岡座長

それでは、もう少し具体的にどういうものがあるかということで、次の審議事項に移りたいと思います。カルタヘナ法に基づく処分ということで、辻村委員から御提案をいただいておりますが、まず最初に事務局から資料の説明をお願いいたします。

田村審査基準室長

それでは、お手元の資料5を用いて説明をさせていただきたいと思います。

資料5に通称「カルタヘナ法」に基づく審査の概要をまとめさせていただいております。カルタヘナ法は、生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関する議定書の的確かつ円滑な実施を確保することを目的として、平成16年2月に施行されました。具体的には、遺伝子組換え生物が自然界の生物に悪い影響を及ぼすことがないことを審査するための法律でございます。

同法には第一種使用の審査と第二種使用の審査とが規定されております。第一種使用とは、こちらに書かれてございますように、環境中への拡散を防止しない開放系における遺伝子組換え生物の使用のことでございまして、遺伝子組換え生物の使用による生物多様性への影響についての評価を行って、その結果を記載した評価書を提出して主務大臣の使用承認を受けなければならないというものでございます。

一方、第二種使用とは閉鎖された施設内での使用のことでございまして、通常、拡散防止措置は省令により定められているわけでございますが、拡散防止措置が定められていない場合には、あらかじめ主務大臣の確認を受ける必要がございます。

この拡散防止措置の確認審査は、通常3カ月程度で終了することになっております。第一種使用の承認審査も、事務手続は大体6カ月程度で終了するということでございますが、青いバラ等の遺伝子組換え植物に関しては隔離圃場試験を経て商業栽培や輸入等の使用承認がおりるということでございまして、現在の状況では全体として2年を超えるような手続になっているということでございます。

第二種使用の確認は、研究開発段階の法規制と区別が非常に困難でございまして、かつ、確認審査自体は3カ月ということで短期間であるということで、資料5の2ページ目の3.の整理では、医薬品の前臨床試験と同じような位置づけということで整理をさせていただいております。遺伝子組換え植物に関しては、隔離圃場試験のための第一種使用の申請承認と、隔離圃場試験の結果を受けた商業栽培・輸入のための第一種使用の申請承認の2段階の審査が通常行われることになりまして、その所要期間が別添のエクセルの横紙にまとめさせていただいておりまして、現状では、2段階の両方の審査が行われた実績が植物については8件しかないという状況でございます。

申請者としては、辻村委員のサントリー株式会社のほかに、日本モンサント株式会社、シンジェンタシード株式会社等がございまして、これら外資系の企業の農作物は現時点では輸入して飼料や加工用に使われるのみで、我が国での栽培実施ということは聞いていない状況でございまして、輸入という意味での発明の実施ということになろうかと思われます。これら8件の平均の審査期間は、まだ数が稀少ではございますが、2年5月という状況でございます。

なお、2段階の一方のみの申請承認をしたものは幾つかございます。そういう意味では、カルタヘナ法が平成16年に施行された新しい法律ということで、まだまだ実績がそろっていないという状況でございます。

さらに、「遺伝子組換え生物」ということでございますので、植物に限らず動物も対象になるわけでございますが、遺伝子組換え動物に関しては審査実績がございませんで、現在のところ、どの程度の審査期間が必要であるのかは不明ということでございます。ただ、植物における隔離圃場試験に相当する手続というものが現在確認されておりませんので、もし事務手続だけで済むようであれば、通常6カ月程度で承認審査が行われますし、植物のように実際に動物細胞を培養するということでありましても、数週間オーダーの実験で済むのかもしれないというところでございます。

なお、相澤委員からいただいた御意見の中に「iPS細胞」への言及がございましたが、お手元に「カルタヘナ法ガイドブック」というのがございます。こちらにカルタヘナ法の概要とか手続が載っておりますが、そちらの20ページにその関係の法律が書かれておりまして、施行規則の第1条というところを見ていただきますと、「ヒトの細胞等」はカルタヘナ法の適用外であると書かれておりますので、山中教授が発明されたヒトiPS細胞、すなわちヒト由来の細胞ということでありますとカルタヘナ法上の直接的な規制対象にはならないという状況にございます。以上でございます。

長岡座長

どうもありがとうございました。

ただいまの御説明につきまして御質問等がございますでしょうか。

では、続きまして、辻村委員にプレゼンテーションをお願いしておりますので、辻村委員、よろしくお願いいたします。

辻村委員

サントリーの辻村でございます。最初に、我々が開発した青いバラを例として、最近のカルタヘナ法に関しての存続期間延長に関する具体的な事例という形で説明をさせていただきたいと思います。

お手元の資料の下の段を見ていただきますと、バラにおける色素の合成の経路を示しております。通常のバラは、赤色色素でありますシアニジンと、オレンジ色の色素であるペラルゴニジンという2つの色素の合成経路を持っていますが、青色色素でありますデルフィニジンというものを合成する酵素は持っておりません。したがって、今まで世の中には青いバラは存在しなかったわけです。私たちは、通常のバラに青色の色素を合成する酵素、右の上に書いてありますが、フラボノイド3’、5’水酸化酵素というものの遺伝子を導入することによってデルフィニジンという青い色素を含むバラの創出に取り組んだわけです。

次のページをお願いいたします。最終的にフラボノイド3’、5’水酸化酵素をコードする遺伝子配列、一般的に「ブルージーン」とよんでいますが、を決定いたしまして、青い花を咲かすパンジーとかペチュニアからブルージーンを取ってきましてバラに導入するということで、95%以上の青色色素を含む青いバラを作出することに成功いたしました。いわゆる遺伝子組換え植物の創出ということでございます。

特許に関しましては、植物体へ青色遺伝子を導入して、発現を確認した段階で、1992年でございますが、特許を出願しております。具体的には「フラボノイド経路の酵素をコードする遺伝子配列及びその使用」という形で、16年前に特許出願を行っております。

下に行きますと、青い花をつくって意味があるのかという意見もあるのですが、これを見ていただきますと、この技術はバラにだけ限定されるものではございません。ブルージーン、青色遺伝子を導入すれば青とか紫の品種のないほかの花でも色を青、紫に変えることができる。市場的にいうと、日本の現在の切り花市場が約3,000億円強でございますが、その中でもキクとかバラ、ユリというのは大きなウエート、メジャーな商品でございますが、キク、カーネーション、ユリもこの技術で、ブルージーンを使うことで青くすることが可能になってまいります。

次のページをお願いします。先ほどの条件の論議の中のイノベーションの進展に寄与するか否かという観点からいいますと、この植物遺伝子育種技術は花の色を変えるだけではなくて、他の分野にも積極的に活用できるという事例を少し時間をいただいて説明させていただきます。

例えば環境問題への応用があります。その下を見ていただきますと、ちょっと見にくいですが、これは植物を用いた水質浄化ということで、ファイトレメディエーションと申しますが、を実施した例であります。もちろんまだ世の中に出ていない植物でございますが、遺伝子組換えの技術を使って我々がトライしているところの説明をさせていただきたいと思います。

近年、池や沼ではリン酸とか窒素が非常に濃度が高くて、富栄養価の問題が深刻になって、環境汚染の1つの現象になっておりますが、例えばこの技術を活用すれば、リン酸をたくさん、速く吸収する植物ができるわけでございます。我々は、リン酸飢餓遺伝子ということで、植物がリン酸をたくさん吸いたいと思わせるような形で、スイッチをオンにする遺伝子を組み込んで、実際にリン酸の多い水槽に入れて実験をいたしました。

次のページを見ていただきますと、これは一例でございますが、遺伝子組換えを行ったトレニアという花を水槽に置きまして、左のグラフは横軸に日にちをとっておりまして、縦軸がリン酸の濃度をとっております。一番上のControlと書いてあるひし形の、遺伝子組換えをしていない通常のトレニアも、リン酸を吸いますが、あるところでとまってしまうし、吸収速度が遅い。我々がつくった飢餓遺伝子のスイッチをオンにした植物は極めて速いスピードでリン酸を吸収しますし、最後までリン酸を吸ってしまうということでございます。

まだまだ先が長い話ですが、リンというのは枯渇が危ぶまれている資源でございまして、こういう植物を使って、さらにはリンをここから回収して再利用することにも使えるということで、ある意味、夢のある技術かなと思います。

その下ですが、これは夢があり過ぎるかもしれませんが、ダイオキシン等の汚染を検知する環境モニタリング植物というのもこういう技術でできますよ、可能性がありますよという例でございます。通常の花に遺伝子を組み込むことで、例えばダイオキシンなどで汚染がある土壌で栽培しますと花の色が変化するということが可能になってきます。

土壌の汚染のレベルを花を見ながらモニタリングすることができるということです。ビジネス的な可能性はわかりませんが、次のページを見ていただきますと、まだまだ不完全ではございますが、栽培試験の一例でございます。上が通常の土壌で、下が汚染した土壌で、ダイオキシンの環境基準の3分の1の汚染土壌で実施した例でございますが、赤い花が、この場合は色が変わらない遺伝子を入れているわけですが、ダイオキシンで、スイッチが入ることによりまして白く変化していることがおわかりになるかと思います。

あくまでこれは可能性があるという話でございますが、このように植物遺伝子育種技術を使うことによって、ある意味、イノベーションの進展に寄与できる可能性があるということの御説明でございます。

前置きが長くなりましたが、その下でございます。実際に生物多様性影響評価ということをやってきたわけでありますが、どのようなことを青いバラではやってきたか、時系列的にお話ししたいと思います。

このような遺伝子改変の植物を世に出そうとすれば、生物多様性影響評価ということをやらないといけません。いわゆるカルタヘナ法に基づく試験、手続が必要でございます。競合における優位性、既存の植物を侵食しないか。有害物質の産生はないか。交雑性というものはどうなんだということを徹底的に調査しなければなりません。

図にありますように、通常は、左から2番目にありますが、特定網室試験という試験をやります。これで約1年かかります。そして第一種の申請をかけまして、検討会、パブリックコメントを経て承認を得るまでに約半年。その後、先ほどありましたように、実際に周辺の植物に影響を与えないかということで、隔離圃場試験を行います。これは花を咲かせて検討するわけですから、約1年かかります。それを受けて再度検討会、パブコメを経て、問題がなければ半年後に承認がおりるということで、特定網室試験から承認まで、大体3年ぐらいかかるという状況であります。例が少ないので何とも言えませんが、我々のときはそのぐらい。

次のページをお願いします。実際に青いバラの認可の状況はどうだったかということですが、2005年に隔離圃場試験のための申請を行って、青いバラは2007年の年末に認可を取得しております。したがって2年半から3年弱という形でございます。一番大変だったのが隔離圃場試験での野生バラとの交雑性の調査で、極めて大変な調査でございました。交雑性がないということの確認をしなければいけない。

下が実際の期間ですが、見ていただきますと、2005年の隔離圃場試験のための第一種申請というので8カ月。承認を得まして、隔離圃場試験で約13カ月。1年と1月かかった。最終的にその結果をもって商業生産のための第一種申請ということで8カ月でございます。

次のページ、最後でございますが、これをまとめてみますと、1992年の特許出願から、実際に商業価値のある植物体の創出というところまで、約13年2カ月かかっています。企業努力が足りないのかもしれませんが、開発に極めて長時間を要しています。ブルージーンを見つけて、導入して、発現を確認しても、本当に商業的に価値のある「青い」と言われるバラというものをつくり出すためには、いろいろな試験、努力が必要でございまして、品種をさまざま変える、プロモーター、ターミネーターをどう入れるかというところで、かなりの時間を要しております。これがいわゆる開発期間で、商業価値があると判断されたものができて、商業生産に関する認可まで取るのに2年5カ月かかっております。申請をしてから、隔離圃場試験をやって最後の承認を得るのに2年5カ月。

実は、植物体というのは認可を得ても、すぐに、あしたから売れるものではなくて、これから大規模に数をつくっていかなければいけません。これに約1年ぐらいかかるということで、まだ青いバラを皆様の前に出すことはできません。あと1年ぐらいかかるという状況でございます。したがって、これを差し引きますと20年という特許期間はありますが、来年から事業化をするとなったときには残り特許期間は3年5カ月ということになっているというのが現状でございます。

カルタヘナ法による認可というのは、当該組換え生物種の環境安全性について認めるものでありまして、申請者に何ら権利を与えるものではありません。しかし必要なものであることは確実でございます。開発者は、知的財産によって市場に投下した資本を回収する必要があるわけであります。御説明させていただきましたように、余りにも長い開発期間、投入資本の多さに比べて、特許権に守られた期間が少ないというところに1つの課題があるような気がいたします。

このような状況が、当社以外に余り参入していない原因の1つなのかなと考えているわけでございまして、長くなりましたが、青いバラというものを題材にして現状の御説明をさせていただきました。ありがとうございました。

長岡座長

大変参考になる御説明をいただきまして、ありがとうございました。

せっかくの機会ですので、委員各位から御質問等がございましたらお願いします。

私から1つ、92年に特許出願されたのが基本特許だと思いますが、多分追加的な特許もあって、基本特許が切れてしまうと簡単に参入できるものなのでしょうか。

辻村委員

幾つか、周辺特許といいますか、関連特許は取っておりますが、基本的にこの場合はブルージーンの配列と使用ということの特許ですから、かなり基本的な特許で、したがって、それをもって第三者がやることは可能であろうと思います。

長岡座長

いかがでしょうか。

存続期間が短いから参入者が少ないのではないかという指摘もなさいましたが、仮に延びたとすれば多数の企業が参入してくると考えられますか。

辻村委員

その辺は何とも言えないところがあると思います。ただ、これからライフサイエンスのジャンルにおいて遺伝子組換えという、生物多様性、カルタヘナ法にかかわるようなものの開発はふえてくるだろうと思います。例えばバイオエタノールの件においても、リグナンの可溶性を高めるような木材をつくろうとか、こういうことはアメリカでは行われていると聞いておりますが、どんどん植物を活用するような技術が出てくるだろと思います。

しかし、木材を育てるとなると、もし隔離補場をやるとすると、すごい年月がかかるでありましょうし、花の中でも、ユリは3年かかります。したがって、青いユリをやろうとすれば、隔離補場の試験は、球根から育てるとすれば3年かかるだろうと思いますし、そういうところが課題になってくるかなと思います。

企業が参入するかどうかはこれだけで判断できるものではないので、何とも言えません。

長岡座長

非常に理解が深まりました。ありがとうございました。

先ほど資料4でどういう分野を対象にすべきか議論をさせていただいたわけですが、それに照らしまして御質問とか御意見とかございますでしょうか。1つのケーススタディになると思います。

熊谷委員

1つ教えていただきたいのは、13年2カ月の期間は、御努力はなさったと思うんですが、今後、やはり10年ぐらいかかるのは当然なんでしょうか。ケース・バイ・ケースということになるのでしょうか。

辻村委員

恐らくケース・バイ・ケースになると思いますし、全く新しいトライでございましたので時間がかかっているということはあると思います。したがって、これから先、13年が全部開発期間ではないんですが、常にかかるかと言われると、そうではないだろうと思います。どんどん技術が進歩してまいりますので、期間の短縮ということはもちろんあり得るだろうと思います。

ただ、行政的にカルタヘナ法をクリアするためにやらなければいけない期間は、それほど短くなることはないだろうということでございます。

長岡座長

いかがでしょうか。

中冨委員、どうぞ。

中冨委員

私も素人なのでわからないのですが、この基本特許は3’フラボノイドの水酸化酵素の遺伝子ということで、例えば他の方が別のパテントを出願するようなことは容易にできるんですか。それとも、かなり絶対的な排他的なものか。申しわけないですが教えてください。

辻村委員

かなり絶対的なものといいますか、強いものだと思っています。青い色の発現のための酵素の遺伝子配列ですので、ほかにもあるとは思いますが、植物の中においてはかなり強いものだと思います。

長岡座長

前田委員、お願いします。

前田委員

基本特許というのは、最初、出願した際には基本特許だとわからないで、試行錯誤でいろいろ実験をして追加の特許が出て、あとになってから、やはりこれが基本特許だったねとわかってくることが多いものですから、基本特許は、結構時間が経ってやっと製品化されると思います。ですから、例えば、「何で13年もかかったの」と言われると、実際、最初に出した特許からそれぐらい簡単にかかってしまうものだと私は思います。

企業の方が実用化しようとしたときに、残存期間が少ないと、さっきも申し上げましたように、大学で育てたせっかく素晴らしい技術をライセンスしようとか特許を譲渡させていただこうと思っても、特許の残存期間が障壁になって参入してもらえないということになってはおもしろくないと思います。、繰り返しますが、最初に発明したときにすぐこれが基本特許だとわからないのが普通なものですから、保護していく方向になると良いなと思います。

長岡座長

ほかに、いかがでしょうか。

本山委員、どうぞ。

本山委員

ちょっとお聞きしたいのですが、この植物体の創出まで13年2カ月ということで、恐らく特許以外にもいろいろノウハウとか、御社独自の技術的な優位性があるがゆえに他社が入ってこないのではないかという気も若干するのですが、その点はいかがでしょうか。

辻村委員

もちろん、それもないとは言えません。いろいろな種類のバラに遺伝子を入れてトライするわけですね。ところが、物によっては青くならない。ほとんどの場合そうでございました。「ブルージーン」と一言で言っても、何らかのアローワンスがありますから、どの部分、どれから取ったものを入れるかということでも全然変わってきますし、これはノウハウというより、ある意味、手当たり次第といいますか、実験計画を組んでやっていく。そのときに、花が咲くまでに半年から9カ月ぐらいかかる。

もう1つは、カルスというものをつくってそこへ入れていくわけですが、カルスをつくるのに1年ぐらいかかったということで、とにかく時間がかかるのが開発年数が13年もかかっているという理由でございまして、これはある意味で植物独特のものかもしれません。花が咲いてみないと青いかどうかわからないというのが一番のネックでございまして、酵素反応とかそういうものでわかるのであれば非常に速いのですが、ノウハウというのもありますが、圧倒的にそういうことで時間がかかっているというのが1つの原因かなと思います。

長岡座長

高橋委員、お願いします。

高橋委員

漠然とした印象になってしまいますが、夢のある新しい技術、こういう分野に特許制度が魅力を与えるような役割を果たせたら非常にいいのではないかと思います。もちろん、先ほどから出ています他分野とのバランス、ここが私には、どういったバランスを見たらいいのかよくわからないところがあるのですが、その技術分野で競争が激しくなるとしても、魅力が高まれば、ほかの分野に迷惑をかけずにいろいろな夢を実現していけるのではないかと思います。

先ほど本山委員がおっしゃっていました、混乱というのは人間の知恵で解決していけるものですから、確かに圃場試験は短くなるでしょうし、短縮可能要因は今後出てくるかもしれませんが、延長制度がこういうところにも適用されるんだということ自体がイノベーション促進には必要なのかなと思います。

長岡座長

熊谷委員、どうぞ。

熊谷委員

大昔のことを言っても仕方ないと思いますが、大正10年法の下でも存続期間の延長制度があって、そのときは政府規制ではなく、重要な発明については延長する制度だったと思います。そのような制度を創設するということになれば、今おっしゃったような夢のあるというか、イノベーションをどう考えていくのかという観点から制度を構築することも考えられると思うので、それを特許制度が一切排除しているということはないと思いますが、大正10年法の制度は、一定の判断のもとで廃止された制度なので、その議論と、延長制度の対象をどう拡大するかというのは分けて議論していかないと、議論が混乱してしまうのではないかと思います。以上です。

長岡座長

規制のインパクトが相当あるということは前提条件だと考えられるのですが、その中で、イノベーションについてのご発言が多いわけですが、もちろん第三者とのバランスということもあるでしょうし、行政処分との関係になりますので、行政処分が安定的にできるかどうかという問題も最終的には当然検討しないといけないと思います。

今回これについて結論を出すということではありませんので、今御紹介があったケースですと、先ほどの資料4に当たる条件を満たしているような感じもしますが、医薬品とか農薬と同じように常に規制負担がかかるのかというところは、もう少しエビデンスをきちんと取って検討しなければいけないと思います。

また、第三者へのインパクトといいますか、発明の利用を制限するということが当然ございますから、そういう観点の検討も当然必要だと思います。

以上、カルタヘナ法について、全体の法律の説明とケースの御紹介がありましたが、さらに追加的なコメントとかございますでしょうか。

長濱委員、どうぞ。

長濱委員

1点、どなたか御存じでしたら教えていただきたいのですが、カルタヘナ法関連ですが、カルタヘナ法ではヒトの細胞等は適用対象から除外されています。そうしますと、例えばですが、iPS関連の技術、に関して特許権の存続期間が他の法律等により侵食される見込みについてどのように予想されているのでしょうか。すなわち、特許権の存続期間の延長制度は、事業化までの期間を保護するという制度ではなく、特許発明を業として実施できる期間の侵食を保護する規定だと思いますので、その観点から、iPS関連の技術に関して特許発明の実施期間が侵食される可能性が具体的に認識されているのかどうか、その辺に関して知見をお持ちの方がいらっしゃいましたら教えていただきたいのですが。

長岡座長

ありがとうございます。非常にいい御質問をいただきました。

いかがでしょうか。御専門の方もいらっしゃると思いますが。

田村審査基準室長

事務局でいろいろ調べさせていただきましたが、iPS細胞自体が実用化されるのは大分先で、早くても5年、多分10年近くはかかると言われておりますので、まだどういうものが政府の規制になってくるのかというところはわからないというのが実状かなと思われます。

そういう意味でも、次に御説明をさせていただきますアンケートを幅広くやらせていただきたいと考えておりまして、発明のシード的なところでも規制があれば、大学のTLOにもアンケートを送らせていただきますので、お答えいただけるかもしれません。

ただ、業としての実施に関して規制がかかるかどうかという点になると、そういう時代になってみないとわからないというのが本当のところかなとも思われます。以上でございます。

長濱委員

どうもありがとうございます。

延長制度の対象分野の拡大に関するアンケートの実施について

長岡座長

では、本日最後の議題に移らせていただきます。

今御紹介がありましたアンケートの実施につきまして、事務局から御説明をお願いします。

田村審査基準室長

それでは、お手元の資料7を用いて御説明をさせていただきたいと思います。

この資料は、今年度、特許庁から比較法研究センターに期間延長制度についての調査研究を委託しておりまして、その一環として行うアンケートの骨子(案)でございます。本日御承認いただきました資料4の1.の制度の趣旨を踏まえた前提条件の部分の3つの条件、すなわち従来の期間延長制度の趣旨を踏まえた整理というところでございまして、2.の政策的な観点は入っておりませんが、3つの前提条件を満たすような法規制が存在する技術分野がほかにないかというところを、アンケート調査を行って確認したいと考えております。

あわせて、資料5にまとめさせていただきましたカルタヘナ法に基づく審査の概要を添付して、同法により使用承認された遺伝子組換え生物を期間延長制度の対象とすることの是非について調査ができればと考えております。

アンケートの配布先については、こちらに書いてございますが、基本的には日本知的財産協会に加盟されております企業900社余りと、期間延長制度の既存のユーザーでいらっしゃいます医薬品分野の主要企業を加えまして、あと、カルタヘナ法の審査実績のある主要企業、さらには、先ほど申し上げましたが、革新的な技術のシードを取り扱っている可能性の高い主要な大学TLOにも送らせていただきまして、大体1000カ所ぐらいにサンプル調査という形でアンケートを送らせていただきたいと考えております。

アンケート結果の概要につきましては、次回の会合で御報告をさせていただいて、さらなる審議の参考資料とさせていただきたいと考えております。以上でございます。

長岡座長

ありがとうございました。

では、このアンケートにつきまして御質問とか御提案がございましたらよろしくお願いいたします。

中冨委員

アンケートの調査票のようなものは事前に見せていただくことはできるんですか。

田村審査基準室長

こちらは、骨子に沿いまして、特許庁と、外注先でございます比較法センターの方でアンケートをつくらせていただいて、集計等を考えますと期限も差し迫っておりますので、この会合が終わりましたら速やかに送付させていただきたいと考えております。そういう意味では、中冨委員の御質問に対しては、この骨子で御了承をいただくことしか考えていないという状況でございます。

長岡座長

今読んでいただきまして、骨子で欠けているところがございましたら御指摘いただけたらと思います。

1番が全業種を対象とする調査で、2番がカルタヘナ法にターゲットを当てた調査ということでございます。

高橋委員、どうぞ。

高橋委員

確認させていただきたいのですが、弊社は医薬品ですが、なかなか新しい技術が見つけられないでいて、むしろ、小さなと言うと非常に失礼かもしれませんが、自由度のきく、小回りのきくところがいろいろチャレンジをする、新しい技術を提供する機会が多くて、そういうところと医薬品企業は手を組んで実用化に進めるというパターンもふえてきております。アンケート配布先がそういう新しい技術を生み出すような方々、企業も含まれているのかどうかを確認させていただきたいのですが、どのような状況でしょうか。

長岡座長

いわゆるバイオベンチャーとかいったところですね。それはいかがでしょう。

田村審査基準室長

明示的にバイオベンチャーの団体を指定して配布を考えているわけではございません。と申しますのは、こちらのアンケート自体、そういう規制があるかどうか、どちらかといいますとサンプル調査に近いものと位置づけておりますので、確かにそういう規制があるというところがあれば、技術分野を絞ってさらにヒアリングをしないといけないかもしれませんが、どちらかと申しますとサンプルチェックでございますので、そもそもベンチャー企業さんに「特許」という話でアンケートが行ったときに、何の質問なのか御理解いただけるかどうかというところも考えまして、できれば知財部のしっかりしたようなところで、しかしながら全ての業種をカバーしたいと考えました。

新技術分野という点でいけば、もしかしたら大企業でやっていない黎明期にあるような技術もあろうかと思いますので、大学TLOを入れさせていただいたということです。

長岡座長

これで多数決をとるということではないということですね。むしろケースを探すということ。

中冨委員

今の質問は非常に重要かもしれないので、集計によってはかなり偏るケースも出てくるので、その辺はそれなりに分析しないといけないですね。

それに関連して、全業種というのはどういう業種。

田村審査基準室長

そういう意味では、知的財産協会に御加盟の企業900社余りというところで全業種が基本的に入っていると理解させていただいております。大学TLOの方は、技術に関係なく扱われているというところで、全般の技術をカバーしていると考えさせていただいた次第でございます。

中冨委員

ちなみに、私どもはベンチャーですが、うちは協会に入っていると思いますが、私もその辺は知財関連の協会に入会を促進するように日ごろから言っているんですが、協会に入っていないところも結構ありますし、その中で一生懸命イノベーションを考えてやっているところもございますから、ひょっとするとイノベーションを非常に考えている会社が漏れるケースもあるかもしれませんね。

長岡座長

何か御提案ございますか。

中冨委員

バイオに関しては、結構僕はベンチャーの会社を知っていますので、御紹介することは可能ですが。大学発ベンチャーでも70社ぐらい入っている。違う会でも30社ほどございますが、バイオに関連しては700社あると言われています。。しかし、それは1人、2人、3人ぐらいの会社も含めていますので。

「カルタヘナ法」ガイドブックを出版していますバイオインダストリー協会がありますが、ここが協会としてはリストを持っていますので、聞いていただければ、ある程度の分を追加していただけるように、御検討いただければありがたいと思います。

長岡座長

ではそういう方向で検討させていただきたいと思います。

ほかに、いかがでしょうか。

質問項目自体も、本日頂きました意見を踏まえて財団法人比較法研究センターの方にお願いするということで、時間が余りありませんので、今回フィックスさせていただきたいと思います。

では、よろしいでしょうか。アンケートの配布先は少し工夫をさせていただくということで、アンケートの項目はこういう形で実施させていただいて、次回の会合で報告させていただきたいと思います。

では、ちょっと時間が早いですが、今後のスケジュールにつきまして事務局からよろしくお願いいたします。

田村審査基準室長

本日はどうもありがとうございました。アンケートの配布先は御相談をさせていただきまして、その後、速やかにアンケートを配布させていただいて、アンケートの結果を踏まえた形で、第2回の会合を12月24日に開催させていただきたいと思っておりますので、次回もよろしく御参加をお願いいたします。

閉会

長岡座長

では、きょうは大変活発な御議論をいただきましてありがとうございました。以上をもちまして第1回特許権の存続期間の延長制度検討ワーキング・グループを閉会いたします。本日は大変ありがとうございました。

[更新日 2008年11月19日]

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