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第5回審査基準専門委員会議事録

議題:

  1. 知的財産高等裁判所の判決について
  2. 厚生労働省の通知について
  3. 今後のWGの進め方について
  4. 中間取りまとめ案(延長制度の対象分野となる法規制の条件)について

開会

長岡座長

おはようございます。まだお一人お見えになっていらっしゃいませんが、定刻になりましたので、産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会、第5回特許権の存続期間の延長制度検討ワーキング・グループを開催いたします。

今回、初めに、5月29日に言い渡されました知財高裁の判決につきまして、事務局から説明をしていただきます。その後、委員の皆様には今後のワーキング・グループの進め方について御審議いただき、最高裁の判断を待って審議を再開することを御了解いただければと考えております。そして、審議の再開まで時間があくことになりますので、前回までに結論を出しております延長制度の対象分野となる法規制の条件を中間取りまとめ(案)としてパブリックコメントに付すことを御了解いただきたいと思っております。

委員御出欠状況と配付資料について

長岡座長

それでは、本日の委員の御出席等の状況、それから配付資料の確認をお願いいたします。

田村審査基準室長

本日は、佐藤委員、田中委員、辻村委員が御欠席されております。また、政府側の出席者として、厚生労働省医薬食品局審査管理課の猿田専門官にも御出席いただいております。

続きまして、配付資料の確認をさせていただきたいと思います。

本日の配付資料は、お手元のクリップを外していただけますでしょうか。まず、議事次第のほうがございまして、その下に委員名簿がございます。資料1といたしまして、「特許権の存続期間の延長制度に関する審決取消訴訟の判決について」というペーパーがございます。そして、その下に資料2として1枚紙でございますが、「今後のWGの進め方(案)」というペーパーがございます。資料3といたしまして、「中間とりまとめ(案)」というペーパーがございます。

そして、参考資料1といたしまして、平成21年5月29日に判決言い渡しが行われました、平成20年(行ケ)第10458号の判決が添付されてございます。そして、参考資料2、一番下になりますが、こちらのほうは厚生労働省が作成されました「医療用後発医薬品の薬事法上の承認審査及び薬価収載に係る医薬品特許の取扱いについて」というペーパーがございます。

以上、5点でございますが、不足等ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、本日も前回同様、御発言の際にはお手元のマイクのスイッチを入れていただきまして、マイクを近づけて御発言いただきますようお願いいたします。

長岡座長

どうもありがとうございます。

それでは、今日は先ほど御説明しました順番ですすめていきたいと思います。知財高裁の判決について、それから参考資料2になっておりますけれども、厚生労働省の通知についてその後説明をしていただきまして、それから今後のワーキング・グループの進め方、それから中間とりまとめということで、4つの議題をやっていきたいと思っております。

知的財産高等裁判所の判決について

長岡座長

では、最初に知財高裁の判決でございますが、これまでDDS製剤を例にしまして、このワーキング・グループでは医薬品分野の延長制度の対象となる処分につきまして議論をしてきましたが、5月29日にまさにこの点が争点になりました知財高裁の判決が言い渡されております。

最初に、この判決の概要につきまして、事務局から御説明お願いいたします。

田村審査基準室長

それでは、お手元の資料1のほうを出していただけますでしょうか。こちら、「1.事件の概要」として、知財高等裁判所の平成20年(行ケ)第10458~10460まで3件につきまして、先ほど座長のほうから御紹介がございましたように、5月29日に判決が出てございます。これについての判決の概要でございますが、2点ございます。

こちらに書いてございますように、審査官(審判官)が特許法67条の3第1項1号により延長登録出願を拒絶するためには、まる1「政令で定める処分」を受けたことによっては、禁止が解除されたとはいえないこと、又は、まる2「『政令で定める処分』を受けたことによって禁止が解除された行為」が「『その特許発明に実施』に該当する行為」に含まれないことを論証する必要があるという登録要件の指摘です。

2点目といたしまして、特許法68条の2によって、存続期間が延長された場合の特許権の効力の範囲について、「政令で定める処分」が薬事法所定の承認である場合、「政令で定める処分」の対象となった「物」とは、当該承認により与えられた医薬品の「成分」、「分量」及び「構造」によって特定された「物」を意味するというような判示内容でございます。

※のところに書いてございますが、知財高裁のほうの判決が3件ございますが、3件とも同じような趣旨でございまして、知財高裁のほうの要旨が出てございます2.のほうに書いてございますが、平成20年(行ケ)第10458号の事件について、その要旨を御説明させていただきたいと思います。

まず、1ページの下のほうに書かれてございますのは、事件の経緯でございます。こちらのほうは時間の都合で省略させていただきまして、2ページのほうに移らせていただきます。

こちらは審決の理由の要旨がまとめられてございます。本件処分の対象となった医薬品というのがこちらにございます「パシーフカプセル30mg」という医薬品でございます。その「有効成分」は「塩酸モルヒネ」でございまして、「効能・効果」は「中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛」であるということでございます。

それに対しまして、先行する医薬品というのがございまして、これは5行目に書いてございますが、「オプソ内服液5mg・10mg」という医薬品でございまして、具体的にはこの先行する医薬品のほうは1日に6回5mgとか10mgを投与するというようなものでございましたが、本件のほうのパシーフカプセル30mg錠というのは徐放性製剤でございまして、1日1回投与すればいいような鎮痛剤であるというところでございます。

そして、特許庁のほうの判断といたしましては、こちらに書いてございますように、本件と先行する医薬品との間で「有効成分」は「塩酸モルヒネ」ということで同一でありまして、さらに「効能・効果(用途)」ということで書いてございますが、この点についても同一であるということでございまして、当該医薬品の有効成分、効能・効果以外の剤形などの変更の必要上、新たに処分を受ける必要が生じたとしても、本件発明の実施に特許法67条2項の「政令で定める処分」を受けることが必要であったとは認められないから、本件出願は同法67条の3第1項1号の規定により拒絶すべきであるというような審決をしたというような状況でございます。

これに対しまして、知財高裁のこの判決の中で審決を取り消したということでございます。内容といたしましては、先ほども申し上げました概要にございました2点ございまして、1つ目が特許法67条の3第1項1号該当性の誤り、こちらは登録要件でございます。そして、もう1点が4ページの2段落目からになりますが、先行処分に係る延長登録の効力の及ぶ範囲についての誤りというところで、2点ほど誤りが指摘されているという状況でございます。

2ページ目のほうに戻らせていただきまして、具体的に判示された内容でございますが、特許法67条の3第1項1号の要件ということが書かれてございまして、こちらは条文がそのまま書いてあるわけでございますが、拒絶をすべき旨の査定をしなければならない規定といたしまして、1号というところにおいて、「その特許発明の実施に第六十七条第二項の政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められないとき」というふうに法律のほうには規定されてございます。

そこを具体的な薬事法上の処分に当てはめて考えたときには、次の段落に書いてございますが、「その特許発明の実施に六十七条第二項の政令で定める処分」-これは薬事法14条1項所定の医薬品の承認ということ-「を受けることが必要であったとは認められないとき」である、というところを判示していただいております。

イといたしまして、特許発明の存続期間の延長登録制度の趣旨というところでございまして、こちらのほうはこちらのワーキング・グループでもいろいろ議論させて御理解いただいたところかと思いますので、省略させていただきまして、3ページのほうに移らせていただきまして、2段落目のところでございますが、「そうすると、・・・審査官(審判官)が、当該出願を拒絶するためには、まる1「政令で定める処分」を受けたことによっては、禁止が解除されたとはいえないこと、又は、まる2「『政令で定める処分』を受けたことによって禁止が解除された行為」がその「『その特許発明の実施』に該当する行為」に含まれないことを論証する必要があるということになる」ということでございまして、これをこの具体的案件に当てはめたものが(2)からでございます。「本件においては・・・原告は、まる1平成17年9月30日、本件医薬品について、本件処分を受け、同処分によって、本件医薬品の製造等に関する禁止が解除されたこと、また、まる2本件処分によって禁止が解除された行為が、本件発明の実施に当たる行為を含んでいること」というところが認められると書いてございます。

そして、そこは争いのないところということでございまして、「ところで」ということで次の段落にまいりまして、「平成15年3月14日に先行医薬品を対象とする、本件先行処分がされている」という指摘がありまして、先行処分が拒絶理由となり得るのかどうかというところの判断に関しまして、「しかし」という段落でございますが、「本件先行処分の対象となった先行医薬品は、本件発明の技術的範囲に含まれないこと、本件先行処分を受けた者が、本件特許権の特許権者である原告でもなく、専用実施権者又は登録された通常実施権者でもないことは、当事者間に争いがなく、本件先行処分によって禁止が解除された先行医薬品の製造行為等は、本件発明の実施行為に該当するものではない」というところで、先行処分によって本件の特許発明が実施可能になったわけではないということが確認されております。

最後の段落になりますが、「したがって、本件先行処分の存在は、本件発明に係る特許権者である原告にとって、本件発明の技術的範囲に含まれる医薬品について薬事法所定の承認を受けない限り、本件発明を実施することができなかった法的状態の解消に対し、何らかの影響を及ぼすものとはいえない」ということで、4ページのほうに小括ということで、1点目の論点といたしまして、「上記検討したところによれば、本件先行処分の存在を理由として、本件発明の実施に政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められないから、後記の先行処分に係る延長登録の効力の及ぶ範囲についての審決の説示の当否にかかわらず、特許法67条の3第1項1号により拒絶すべきであると判断した審決には誤りがあり、この誤りが審決の結論に影響することは明らかである」というまとめになってございます。

2点目の論点でございますが、先行処分に係る延長登録の効力の及ぶ範囲についての誤りというところでございます。こちらの効力の規定は、御案内のように特許法68条の2のほうにございまして、まず(1)のところでございますが、68条2の規定が6行ほど書かれてございます。こういう規定がございまして、「上記規定は、特許権利の存続期間が延長された場合の当該特許権の効力は、その特許発明の全範囲に及ぶのではなく、『政令で定める処分の対象となった物(その処分においてその物に使用される特定の用途が定められている場合にあっては、当該用途に使用される物)』についてのみ及ぶ旨を定めている。これは、特許請求の範囲の記載によって特定される特許発明の技術的範囲が『政令で定める処分』を受けることによって禁止が解除された範囲よりも広い場合に、『政令で定める処分』を受けることが必要なために特許権者がその特許発明を実施することができなかった範囲(「物」又は「物及び用途」の範囲)を超えて、延長された特許権の効力が及ぶとすることは、特許権者と第三者の公平を欠くことになるからである」というふうに判示されてございます。

そして、(2)といたしまして、「政令で定める処分」が薬事法所定の承認である場合における「政令で定める処分」の対象となった「物」についてというところでございまして、薬事法において14条の1項には、「医薬品・・・の製造販売をしようとする者は、品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の承認を受ければならない」と規定しており、同項に係る承認に必要な審査の対象となる事項は、「名称、成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能、副作用その他の品質、有効性及び安全性に関する事項」というところが薬事法の14条2項3号のほうに書かれているということでございます。

そして、5ページのほうに移らせていただきまして、こちらの2段落目の「次に」以降で、特許法にこれを当てはめて考えたときの判示でございますが、「特許法68条の2によって、存続期間が延長された場合の特許権の効力の範囲を特定する要素について、実質的な観点から詳細に検討する。まず、品目を構成する要素のうち、『名称』は医薬品として客観的な同一性を左右するものではない、また、『副作用その他の品質』、『有効性』及び『安全性』は医薬品として客観的な同一性があれば、これらの要素もまた同一となる性質ものであるから、特定のための独立の要素とする必要性はない。・・・さらに、『用法』、『用量』、『使用方法』、『効能』、『効果』、『性能』は『用途発明』における『用途』に該当することがあり得るとしても・・・、客観的な『物』それ自体の構成を特定するものではない」。

「したがって」というところで、「『政令に定める処分』の対象となった『物』とは、当該承認により得られた医薬品の『成分』、『分量』、及び『構造』によって特定された『物』を意味するというべきである。以上のとおり、特許発明が医薬品に係るものである場合には、その技術的範囲に含まれる実施態様のうち、薬事法所定の承認が得られた医薬品の『成分』、『分量』及び『構造』によって特定された『物』についての当該特許発明の実施、及び当該医薬品の『用途』によって特定された『物』についての当該特許発明の実施についてのみ、延長された特許権の効力が及ぶものと解するのが相当である」。

「もとより」ということで、「その均等物や実質的に同一と評価される物が含まれることは、技術的範囲の通常の理解に照らして、当然であるといえる」ということで、最後(4)の小括ということで、「以上のとおり、特許法68条の2にいう『政令で定める処分の対象』となった『物』を『有効成分』であるとした審決の判断には、誤りがある」というような判示内容でございます。

したがいまして、この知財高裁判決の内容は、従来特許庁が運用してまいりました「物」は「有効成分」であり、「用途」は「効能・効果」であるという運用が否定されておりまして、これはこれまでの10件以上に及ぶ高裁での判決とも相違するというところもございまして、特許庁のほうでは現在この3件の知財高裁判決について上告受理申立てをさせていただいているというような次第でございます。

以上でございます。

長岡座長

ありがとうございました。

先ほども説明にありましたように、現在この判決につきましては最高裁に上告手続中ということですので、判決自体の当否についてここで議論するということはできないと思いますけれども、御質問等がございましたらいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

中冨委員、お願いします。

中冨委員

今回の判決は、DDS学会等においては非常に歓迎されております。それだけ1つ加えておきます。また、もう決まったものだと思っている人がいるものですから間違って情報を得ている人もいます。他方、よく知っている方はもう少し精査されて決められることだろうというふうには考えておられます。

以上です。

長岡座長

ありがとうございます。

前田委員、お願いします。

前田委員

法曹界の方には、前例と違う今回の判決は大変ショッキングなのかも知れませんが、私には、時代の流れにあわせたもののように思えます。変わる必要がある時にはどこかで変わらないといけませんし、今後の判決の動向に注目したいと思います。

長岡座長

ありがとうございます。

それでは、後程、この判決を踏まえて、今後のワーキング・グループにつきまして議論させていただきたいと思います。

厚生労働省の通知について

長岡座長

次になりますが、厚生労働省の後発医薬品の認可についての承認につきまして新しい動きがありましたので、先月医療用後発医薬品の薬事法上の承認審査及び薬価収載に係る医薬品特許の取り扱いについての通知が出されました。今日は御欠席ですが、第3回のワーキング・グループにおきまして、佐藤委員よりすべての効能・効果について特許権が切れるまでは後発医薬品の申請ができないという問題が指摘されたわけですが、この通知によりまして、そういう問題は大分解消されるということになるのではないかというふうに理解しております。

今日は厚生労働省のほうから猿田専門官に御出席いただいておりますので、参考資料2となりますけれども、この通知を御紹介いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

猿田専門官

それでは参考資料2をごらんください。こちらは、医政経発第0605001号、薬食審査発第0605014号、平成21年6月5日付の通達、「医療用後発医薬品の薬事法上の承認審査及び薬価収載に係る医薬品特許の取扱いについて」でございます。

医療用後発医薬品の承認審査に係る特許情報につきましては、平成6年10月4日付薬審第762号審査課長通知にお示しをしてございますとおり、医薬品の安定供給を図る観点から、承認審査の中で、先発医薬品と後発医薬品の特許抵触の有無について確認をしておりまして、医薬品特許情報報告票を薬務局審査課長あてにご提出いただいていたところでございます。今般、後発医薬品の承認審査及び薬価収載に係る医薬品特許の取扱いについて定めてご指導方お願いをしているところでございます。

あわせて、平成6年10月4日付薬食第762号審査課長通知の一部改正を行ってございまして、記の下をごらんください。「後発医薬品の薬事法上の承認審査に当たっては次のとおり取り扱うこと。なお、以下について、特許の存否は承認予定日で判断するものであること」としてございまして、(1)として「先発医薬品の有効成分に特許が存在することによって、当該有効成分の製造そのものができない場合には、後発医薬品を承認しないこと」となってございます。

(2)として、「先発医薬品の一部の効能・効果、用法・用量、(以下、「効能・効果等」という。)に特許が存在し、その他の効能・効果と標榜する医薬品の製造が可能である場合については、後発医薬品を承認できることとすること。この場合、特許が存在する効能・効果等については承認しない方針であるので、後発医薬品の申請者は事前に十分確認を行うこと」。

(3)といたしまして、「なお、効能・効果等の開発に伴い、既に製造販売の承認を与えられている医薬品と明らかに異なる効能・効果等が認められた医薬品等については、原則として、4年間の再審査期間を付すことと等とされているので、申し添える」。

2.といたしまして、「後発医薬品の薬価収載に当たり、特許に関する懸念がある品目については、従来、事前に当事者間で調整を行い、安定供給が可能と思われる品目についてのみ収載手続をとるよう求めているところ」としてございまして、「上記1.にかかわらず、本件について引き続き遺漏ないよう対応すること」といたしてございます。

こちらの6月5日付の通知に先立ちまして、平成21年4月9日から21年5月11日の期間に意見募集を行いまして、27団体の企業、個人から御意見をちょうだいしてございます。厚生労働省のホームページからパブリックコメントの欄、どういった意見募集がされたのか、それとどういった御意見を賜ったのか、私どもの回答につきましてもごらんいただけますので、そちらもご参照いただければと思います。

簡単でございますが、以上でございます。

長岡座長

大変ありがとうございました。

ただいまの御説明につきまして、格段の御質問等ございますか。

相澤委員、お願いします。

相澤委員

若干、コメントさせていただきます。この措置によりまして用途等が制限された後発医薬品が出回ることになります。これによりまして、医療現場において混乱が生じるおそれがあるのでないかという懸念を申し上げておきたいと思います。

長岡座長

一応、「3.その他」のところに「効削」というのを明記させるということになっているようですね。

相澤委員

多数の患者さんを治療している医療現場の負担を心配しただけです。

長岡座長

ほかにいかがでしょうか。

では、こういう措置が厚生労働省でとられたということで、本件は延長制度全体に非常に大きな影響を与えると思いますので、今日御出席して御説明いただいた次第です。ありがとうございました。

今後のWGの進め方(案)について

長岡座長

では、今後の審議の進め方につきまして御相談申し上げたいと思います。
先ほど事務局のほうから判決の御紹介がありましたが、上告をされるということでありまして、それを踏まえまして今後の審議の進め方につきまして、事務局から案文の説明をお願い申し上げます。

田村審査基準室長

資料2のほうを取り出していただけますでしょうか。「今後のWGの進め方(案)」というペーパーがございます。

平成21年5月29日に言い渡された平成20年(行ケ)第10458~10460号事件判決は、過去の東京高等裁判所あるいは知的財産高等裁判所の判断、例えば平成17年(行ケ)第10345号事件判決や、平成18年(行ケ)第10311号事件判決と異なるものであり、現在最高裁判所に上告受理申立てが行われている。

最高裁判所の判断によっては、これまで延長制度の対象とされていなかったドラッグデリバリーシステムのように革新的な製剤技術を用いた剤形のみが異なる革新的医薬の処分が対象とされる可能性がある。そのため、現時点では本ワーキング・グループで検討すべき課題が定まらず、議論を進める状況にない。そこで、本ワーキング・グループでは、最高裁判所の判断を待って、その内容を踏まえて論点整理をした後、医薬品分野の延長制度についての審議を再開することとする。

以上でございます。

長岡座長

ありがとうございます。

こういうことでありまして、最高裁が上告を受理されるかどうか、それから受理された後、どういう判断をいつごろ出すか、その判断を待って検討しようということでございます。御質問ないし御意見はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

では、今事務局からご説明がありましたように、これまでの議論の出発点は現行の特許庁の運用を法的な解釈として正しいということだったわけですけれども、それ自体が不安定な状態にあるということでありますので、最高裁の判断を待ちまして議論を再開するということにしたいと思いますが、いかがでしょうか、よろしいでしょうか。

では、そういうことで、本件につきましてはワーキング・グループの審議は中断するということにさせていただきたいと思います。

中間取りまとめ(案)について

長岡座長

では、本日最後の議題になりますけれども、中間取りまとめ(案)につきまして御了解いただきたいと思います。

最高裁の判断を待ちますと、本ワーキング・グループの審議の再開まで時間があくことになります。前回までに結論を出しました延長制度の対象分野となる法規制の条件につきましては、中間取りまとめ(案)としましてパブリックコメントに付すことを御了解いただきたいと思っております。

中間取りまとめ(案)の説明を事務局からお願いいたします。

田村審査基準室長

それでは、資料3に基づきまして、中間取りまとめ(案)のほうを御説明させていただきたいと思います。

まず、こちらの資料のI.ということで「検討の背景」という項目がございます。そして(1)といたしまして「制度導入の経緯」という項目がございます。こちらのほうには第1回のワーキング・グループの参考資料1に記載させていただいた制度導入の経緯を整理して掲載させていただいております。

同じように、2ページのほうでございますが、「現行制度の概要」というところでございますが、こちらも第1回のワーキング・グループの参考資料1として整理させていただいた文面をそのままこちらのほうに掲載させていただいております。内容といたしましては、現行制度では医薬品と農薬についての延長制度が存在するというところが記載されているということでございます。

次に「(3)本WGで検討すべき論点」というところでございます。こちらは第1回のワーキング・グループの資料3のほうで御説明させていただきました論点整理に加えて、資料3では推進計画2008から始まった説明でございましたが、それよりも以前に知財戦略本部の知的財産による競争力強化専門調査会の報告書でこの問題が取り上げられたというところを1段落目のほうに記載させていただいております。

そして、2段落目の「そして」以降でございますが、こちらのほうは第1回目のワーキング・グループの資料3のところで整理させていただいたところでございますが、推進計画2008には、特許権の存続期間の延長制度に関して、以下3つの検討すべき論点があるというふうに御説明させていただきました。まず第1の論点といたしましては、カルタヘナ法上の遺伝子組換え生物の使用承認に係る手続や、iPS細胞由来の生物材料の承認手続を延長制度の対象とするか否かが1点目の論点でございます。

2点目の論点といたしまして、DDSのような革新的な製剤技術を用いた剤形のみが異なる革新的医薬も対象に追加するなど、制度の対象の見直しを検討することです。

あわせて、3つ目の論点でございますが、延長の要件、延長する特許権の数及び回数、延長された特許権の効力範囲などを含めた制度全般のあり方につき、国際的な動向等も踏まえつつ総合的な検討を行うというところでございまして、以上3つの論点が当ワーキング・グループの課題として推進計画2008の中で提示されたということでございます。

それにつきまして、最後の段落でございますが、「本中間取りまとめでは、上記推進計画2008に掲げられた論点のうち、結論を得た延長制度の対象分野とする法規制の条件について取りまとめるということで、先ほどご説明しました3つの論点のうち1つ目の論点について結論を得たので、取りまとめるという整理にさせていただいております。

Ⅱ.のほうで「延長制度の対象分野とする法規制の条件について」というところでございます。

まず(1)といたしまして、「延長制度の対象分野の現状」というところで、繰り返しになりますが、現行制度では薬事法上の医薬品及び農薬取締法上の農薬が政令で指定され、期間延長の対象となる技術分野となってございます。

これに対しまして、主要各国のほうはこちらにございますように、アメリカ、欧州、韓国、オーストラリアのほうの対象分野が書かれているというところでございまして、1―3のところで、本ワーキング・グループで検討すべき論点を詳しくブレークダウンしたような形で書かせていただいておりまして、制度導入から20年を過ぎ、遺伝子組換え生物などの革新的新技術の開発が進む中で、現行制度において対象となっている医薬品と農薬以外にも、安全の確保等のための審査に長期間を要する可能性のある政府の法規制、例えば青いバラ等の遺伝子組換え生物に係る生物の多様性の確保の観点によるカルタヘナ法上の処分があることが、例えば2007年10月に取りまとめられた知財戦略本部の競争力強化専門調査会の報告書、「知財フロンティアの開拓に向けて」において指摘されているということです。また、アンケート調査によれば、1-4に示すとおり、上記カルタヘナ法のほかにも上記のごとき法規制があり、それらを延長制度の対象とする要望が認められるということで、こちらの1-4のニーズ調査結果の概要、こちらは第3回のワーキング・グループの資料1で詳しくご説明をさせていただいたところでございまして、実際のアンケート調査では薬事法上の医療機器、薬事法上の医薬部外品、食品安全法の食品添加物、そして健康増進法の特定保健用食品というところが挙がっておりました。

(2)といたしまして、延長制度の対象分野とする条件についてがあります。ここは※のところに書いてございますが、第1回のワーキング・グループの資料4、あるいは第4回のワーキング・グループの資料1からの変更箇所を説明のために下線を付させていただいておりまして、パブコメをとる際にはこの下線は外させていただきたいと思います。

多くの変更はこの報告書に当てはめるために、項目番号の修正とか、あと末尾とかが不統一だったところを統一させていただいたような、全く形式的な修正というところが多うございます。それらの中で実質的な修正とも考えられるところを少し御説明をさせていただきたいと思います。

「制度の趣旨を踏まえた前提条件」というところでございますが、これは第1回のワーキング・グループの資料4でございまして、基本的にはこちらにございます制度の趣旨を踏まえた前提条件が3つございまして、こちらのほうには手を加えてございませんで、1点目が「法規制による処分が業としての特許発明の実施を禁止している」。2点目といたしまして、5ページの上にございますが、「当該規制対象分野全体として、かつ、不可避的に規制審査期間があり、しかも当該期間の短縮にも安全の確保等の観点からおのずから限界がある」。そして、3点目といたしまして、「安全等の審査に農薬や医薬品と同程度の期間がかかる。」という3つの要件が述べられてございます。

この3つ目の安全性等の審査に農薬や医薬品と同程度の期間がかかるという点につきましては、第3回のワーキング・グループでもう少しそこは説明したほうがいいのではないかということで、第4回のワーキング・グループの資料1のほうでより詳しいところを述べさせていただきまして、そちらのほうを注1、注2という形でつけ加えさせていただいている次第です。

注1といたしまして、表題が「安全等の審査に係る期間の『平均』を検討することについて」ということで下線を引かせていただいておりますが、これは上にあります3番目の要件に合うようにちょっと表題を工夫させていただいたというところで、中身自体は第4回で御了承いただいた内容とは変わってございません。

次に、6ページのほうにまいりまして、注2というところで、「『平均的に相当の時間がかかり、特許された発明が実施できないため、他の技術分野よりも発明の保護が著しく欠けている場合』の考え方について」というところで、こちらも第4回のワーキング・グループで御了承いただいた点でございます。

1点、修正点がございまして、(ロ)の下から3行目のところでございますが、実際に具体的に事例が十分に存在しないような場合には、科学的知見や規制法の審査手続とか、そういうものを勘案した上で、今後も常態的に相当な期間、相当の長期間がかかるというようなところが具体的に見通せるということを書かせていただいたわけでございますが、それに加えて、「なお」ということで、「この場合、イノベーションの進展の観点も考慮しつつ、」というところを加えてほしいというような御要望がございましたので、実際具体的事例が十分に存在しないような場合でも、イノベーションの進展の観点も考慮するというところを修正で入れさせていただいております。

次に、2-2のところからは「政策的観点の条件」でございまして、こちらのほうも基本的には第1回ワーキング・グループの資料4と変わったところはございませんが、1点だけ変えたところがございます。2-2-1で、「処分と関係する特許権者と第三者とのバランスを考慮する。」というところの一番下の記載でございますが、「可能性のある技術分野の第三者まで含む社会全体として」というふうに書かせていただいておりますが、もともとは「社会全体が」という書き方で、すべての人がこういう必要性を認めないといけないというような読まれ方をする表現になってございましたので、むしろそこは「社会全体として」必要性を認めるということであれば、全員一致でなくてもというところを少し修正させていただいております。

あとは、イノベーションの観点の3点目の「国際的動向を踏まえる。」というところも変更させていただいておりません。

「(3)具体的検討結果」でございますが、まず(イ)といたしまして遺伝子組換え生物、カルタヘナ法についてがございます。こちらは第4回のワーキング・グループの資料1に基づいて、そのままこちらのほうに張りつけさせていただいたというような状況でございまして、変更点は、ずっとございませんで、9ページの上の方に結論というところがございますが、結論が2段落にわたっておりますが、上のほうが植物以外の遺伝子組換え生物、下のほうが遺伝子組換え植物について言及しておりますが、その末尾が「延長の政策的な必要性が認められた段階で、再度検討することとする。」というふうになってございますが、両者の表現ぶりが一致していないという御指摘を受けましたので、そこを一致させるための修正を行わせていただいております。

次に(ロ)のほうで医療機器でございます。こちらのほうにつきましても、基本的には修正をさせていただいておりませんで、10ページの条件2-2というところになりますが、こちらの「日本医療機器産業連合会における、ステント、人工血管等の臨床試験が必要な分野を含めた検討によれば、医療機器分野は一般的に製品のライフサイクルが短いこと等の指摘もあり、特許権を延長させる政策的な必要性が不明である。」という文章において、「あり、」というところに下線が引いてございますが、ここに「業界の意見がまとまらなかった」というような表現が入っておりましたが、こちらのほうは特に必要性がないのではないかという御指摘もございましたので、むしろ客観的な事実として「ライフサイクルが短い」というところを残させていただいて、「業界の意見がまとまらなかった」というところまでは言及しないような形に修正をさせていただいております。

あと、医薬部外品とか食品添加物、さらには11ページのほうにまいりまして、特定保健用食品についての記載ぶりは変えておりません。

以上でございます。

長岡座長

どうもありがとうございました。

本取りまとめ(案)につきましては、一度議論はしておりますけれども、今度パブリックコメントに付すということでありますので、御質問あるいは御意見も含めてございましたら、よろしくお願いいたします。

高橋委員

これは確認させていただきたいことであって、修正を希望するという程でもないのですが、7ページの(2-2-3)、国際的動向も踏まえるとあります。これは2008年の課題の中にもこのような記載がありました。第1回会合の議事要旨を拝見しますと、この踏まえた結果、延長制度が対象となる法規制に対応した制度であり、必ずしも国際的な調和が優先されるべき問題ではないと記載されています。これがこの会合で出された結論であると理解していますが、それで理解は間違っていないでしょうか、確認いたします。

長岡座長

私は今おっしゃったとおりではないかと思います。つまり、規制の制度も各国違い、それに対応して延長制度は設計しないといけませんので、国際調和を第一ということではありません。ただし、特許制度としては国際的動向も当然踏まえてやっていかなくてはいけないということだと思います。

どうぞ、相澤委員。

相澤委員

本日は辻村委員は御欠席ですけれども、辻村委員はこの結論について御異論がなかったのかどうかを確認したいと思います。

長岡座長

事前に御説明していると思いますので、事務局のほうからお願いします。

田村審査基準室長

辻村委員のほうには事前説明に参らせていただきまして、この結論自体には了承いただいてございます。産業界の今後の課題ということかもしれませんが、現在どちらかというと遺伝子組換えに対して、パブリックアクセプタンスが得られていないというような状況に危機感をお持ちでございまして、特許制度で保護する以前の段階でのそういう雰囲気づくりというところから始めていかないといけないのかな、というところを我々のほうにお伝えいただいたというところだけ御報告させていただきたいと思います。

長岡座長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。表現ぶり等も含めまして、何かございましたら。

熊谷委員、お願いします。

熊谷委員

今読んでいて気がついたことですが、2ページから3ページにかけてですが、推進計画2008においては、DDSも対象分野に位置づけられていますので、中間取りまとめは、対象分野とする法規制の条件についてまとめるということであれば、対象分野の中でDDSについては今後検討するというということを中間まとめの脚注等で明確にしておいたほうがよろしいのではないでしょうか。内容的な問題ではありませんが。

長岡座長

ありがとうございます。それはおっしゃるとおりだと思います。延長制度の対象分野となる法規制の条件というレポートですと、DDSも入っているかなというふうに思われる方もいらっしゃるかと思いますので、今御提案のあったとおりにしたいと思います。ほかにいかがでしょうか。

中村委員、お願いします。

中村委員

私も今読んで気付きましたが、6ページの注2(ロ)の下の下線部で「イノベーションの進展の観点も考慮しつつ」というのは、イノベーションの進展を「促す」観点と理解していますが、それでよいかという確認が第1点目でございます、イノベーションの進展によって開発期間が非常に短くなったときには特許延長は要らないという、これまでの議論とは違った理解をされるかもしれませんので、その確認をさせていただきたいと思います。

第2点目は、すぐ下のところに「(例えば処分された「物」の定義等)が検討できるかどうかに留意すべきである」とありましたが、定義はこれから最高裁で議論することになりますから、この文章に入れるべきかを確認したいと思いましたが、いかがでしょうか。

長岡座長

わかりました。ここは、延長制度の具体的な運用云々につきましては前にも少し書いてありますので、1番目の点については、イノベーションの進展を促すということを入れということで、そういう趣旨だったと思いますので、要するに不確定性があることをある程度前提にしながら制度も運用するという趣旨だと思いますので、今中村委員がおっしゃいましたように、イノベーションの進展を促すという観点も考慮しつつというふうにさせていただいたらどうかと思います。

2番目につきましては、どうでしょうか。これは残す必要がありますか。削除してしまうというのも1案だと思いますが。

田村審査基準室長

事務局のほうから御説明させていただきますと、この部分は対象分野に新たに追加していくかどうかというところの前提条件の部分でございまして、先ほど中村委員のほうから御指摘のございましたDDSを保護していくかというところは、もう既に医薬品の技術分野は期間延長の対象分野になってございます。したがって、対象分野となっている中でどんな制度を組み立てていくかという議論になるかと思いますので、直接はここの文章とは関係ないかなと思われます。むしろここはカルタヘナ法で規制されている遺伝子組換え生物とか、あるいは薬事法の医療機器を新たに対象分野に加えていくというときに、どういう制度をつくっていくかというときの留意点であるというつもりで記載させていただいた次第でございます。

中村委員

趣旨は恐らく皆さん問題なく理解していると思いますが、「処分された物の定義」という言葉だけ見ると、どういうことかと思われる方もいると思いました。

長岡座長

確かに、両方が実際は関係している可能性も大いにあるかと思いますので、具体的運用で「例えば」というのがなくてもいいのではないかというふうに思いますが。

田村審査基準室長

そういうことであれば削除しても構いません。

長岡座長

具体的運用が検討できるかどうかということにするということでいかがでしょうか。では、もしそういうことでよければ、そういうふうにさせていただきたいと思います。

ほかにいかがでしょうか。相澤委員、お願いいたします。

相澤委員

対象分野を拡大する場合に、現行制度のままでいいかどうかということについての検討が必要であるということは、このWGでも議論が出ていたことですし、それを明確にするということには異論ありません。その表現振りについては、座長に御一任します。

長岡座長

ほかにいかがでしょうか。では、幾つかの表現ぶりにつきましても御指摘がございましたので、パブリックコメントに付す前に少し修正をさせていただきまして、パブリックコメントにさせていただきたいと思います。どういう形にするかは、今いただきました議論を踏まえまして、事務局と座長のほうで相談させていただくということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。

その他

長岡座長

では、今日予定していたのはこの4つの議題ということでございまして、次回会合まで少し時間はあくかと思いますが、今後のスケジュール等につきまして、事務局からお願いいたします。

田村審査基準室長

本日は暑い中どうもありがとうございました。今後のワーキング・グループにつきましては、先ほど座長のほうからもお話がありましたように、延長制度の対象分野の拡大については、パブリックコメントにかけさせていただきたいと思っております。その結果を踏まえて、長岡座長と相談させていただき、大幅な修正が必要な場合は、再度皆様にその御趣旨と具体的な案文等について御相談を個別にさせていただくことになろうかと思います。仮に修正が必要ない場合には、本日御説明した案をそのまま最終的な中間取りまとめとさせていただければというふうに考えてございます。

また、医薬品分野の延長制度につきましては、御了解いただきましたように、本日紹介いたしました判決について最高裁の判断が出た後で委員の皆様方の御日程を個別に伺って、事務局で調整させていただいて、日程を決めさせていただきたいというふうに考えてございますので、よろしくお願いいたします。

以上でございます。

長岡座長

ありがとうございました。

閉会

長岡座長

それでは、以上をもちまして、第5回特許権の存続期間の延長制度検討ワーキング・グループを閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。

[更新日 2009年8月19日]

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