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第1回特許戦略計画関連問題ワーキンググループ 議事録

(本記事作成:特許庁総務部総務課制度改正審議室)

  • 日時:平成15年9月2日(火曜日)10時00分~12時00分
  • 場所:特許庁庁舎 特別会議室
  • 出席委員:長岡座長、相澤委員、秋元委員、浅見委員、安念委員、石田委員、江崎委員、大西委員、菊地委員、竹田委員、牧野委員、渡部委員
  • 議題:迅速・的確な特許審査の効果について

開会

高倉調整課長

皆さん、おはようございます。まだ何人か遅れていらっしゃる方がいるかもしれませんが、定刻になりましたので、ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会の第1回特許戦略計画関連問題ワーキンググループを開催いたします。私は、事務局を務めさせていただきます調整課の高倉と申します。よろしくお願いいたします。
このワーキンググループの経緯を簡単に申し上げておきますと、後ほど詳しい資料で御説明いたしますが、このワーキンググループにつきましては、5月9日に開催されました産構審の知的財産政策部会におきましてこの設置が決まっております。今日のワーキンググループの今後の検討課題等については後ほど詳しく御説明いたしますが、まず、この会議の座長について御提案申し上げます。
ワーキンググループの座長につきましては、産構審の運営規程に基づきまして、特許制度小委員会の委員長が指名することになっております。特許制度小委員会の後藤先生に御相談したところ、一橋大学の長岡先生を御指名いただきました。長岡先生にも内諾を得ておりますので、特に御異論がなければ、今日の会議は長岡先生を座長として進めたいと思いますが、よろしいでしょうか。

〔「異議なし」の声あり〕

高倉調整課長

ありがとうございます。

座長あいさつ

高倉調整課長

それでは、長岡先生、一言お願いいたします。

長岡座長

一橋大学イノベーション研究センターの長岡です。非常に重要なイシューで、こういうグループの座長ということで大変僭越に思っておりますけれども、御指名ですので引き受けさせていただきました。かなり短期間に非常に重要な事項、場合によってはかなり確実に、特許法の改正等につながる事項の審議をやる必要がありまして、皆様方の活発な御参加をいただいて効果的な議事ができるようにと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

高倉調整課長

ありがとうございました。
では、以下の議事進行の方は長岡座長の方にお願いしたいと思いますので、引き続きましてよろしくお願いいたします。

委員紹介

長岡座長

本日は第1回のワーキンググループですので、まず、事務局から委員の皆様の御紹介をお願いいたしました。

高倉調整課長

お手元に座席の配置表、メンバー表等ついていると思いますが、委員の先生方をあいうえお順に御紹介させていただきます。
早稲田大学の相澤英孝委員。
武田薬品の秋元浩委員。
日経エレクトロニクス編集長の浅見委員。
成蹊大学の安念委員。
青和特許法律事務所の石田委員。
トヨタ自動車の江崎委員。
日本弁理士会副会長の大西委員。
青山学院女子短期大学の菊池委員。
弁理士であって、元日本化薬(株)相談役の竹田和彦委員。
ユアサハラ法律特許事務所の牧野委員。
東京大学先端研の渡部委員。
それから、本日欠席されておりますが、株式会社シコー技研の白木学社長が委員として就任されることを御承諾いただいております。それから、キャノンの顧問であり、日本経済団体連合会で産業技術委員会の委員をしていらっしゃいます丸島委員がメンバーになっております。このお二方は、今回は欠席でございます。
以上でございます。

長岡座長

どうもありがとうございました。皆様よろしくお願いいたします。

特許技監あいさつ

長岡座長

議事に入る前に、小野特許技監から一言ごあいさつをお願いいたします。よろしくお願いします。

小野特許技監

特許技監の小野でございます。
長岡座長はじめ各委員におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、大変ありがとうございます。
皆様御承知のとおり、我が国経済は、失業率が過去最高水準となり、継続的なデフレ状態にあるなど、依然厳しい状態にあります。一方、アジア諸国からは低廉な労働コストと生産技術の向上を背景に、急激な追い上げを受けています。このような中で、我が国経済、社会を活性化し産業の国際競争力を強化するためには、知的創造活動の結果として生まれた発明を、特許等の知的財産として迅速・的確に保護していくことが必要であります。
このような状況の下、昨年2月、小泉首相が施政方針演説において、「研究活動や創造活動の成果を知的財産として戦略的に保護・活用し、我が国産業の国際競争力を強化することを国家の目標とします」という宣言を行って以来、知的財産戦略会議の立ち上げ、知的財産戦略大綱の策定、知的財産基本法の制定、知的財産基本法に基づく「知的財産の創造・保護及び活用に関する推進計画」の策定と、知的財産戦略を国家戦略として政府を挙げて強力に推進していく動きが、これまでに例を見ないほど加速しております。
特許庁としましても、その一環として、知的財産戦略大綱に基づく特許庁の実行計画である「特許戦略計画」を策定させていただいたところでございます。そして、「世界最高レベルの迅速・的確な審査」の実現は、いまや知的財産に関する国家戦略の柱の一つとして位置づけられているわけであります。特許庁としましては、「世界最高レベルの迅速・的確な審査」の実現に向けた、国を挙げての期待の大きさと、その実現に対する責任の重さを実感しているところでございます。
現在、特許庁ではその責任の重さをしっかりと受けとめて、「世界最高レベルの迅速・的確な審査」の実現に向けて、例えば総務省に対して、任期付審査官を100名増員要求させていただくなど、これまでの常識では考えられないほどの強力な対応をさせていただくべく、関係省庁に対して調整を行っているところでございます。
さて、「推進計画」やさきの国会等からは、任期付審査官の増員等の特許庁が既に取り組んでいる事項以外にも、特許庁として今後検討すべきたくさんの宿題をいただいているところでございます。本ワーキンググループにおいては、このような特許庁に与えられた宿題について御議論いただき、その結果を踏まえて、「世界最高レベルの迅速・的確な審査」の実現、ひいては我が国産業の国際競争力の強化に資する、新たな施策を策定していきたいと考えております。
皆様におかれましては、特許庁に課せられた宿題に関し、ぜひ忌憚ない御議論をしていただきますようよろしくお願いいたしまして、私のあいさつにかえさせていただきます。
ありがとうございました。

長岡座長

どうもありがとうございました。
それでは、早速、議題に入らさせていただきます。資料を事務局で用意しておりますので、説明をお願いいたします。
失礼いたしました。その前に、議事録の公開について御了解をいただきます。産業構造審議会は、その運営規程によって、部会や小委員会、ワーキンググループを含めて、原則公開となっています。本ワーキンググループにおきましては、会議後に、配付資料、議事要旨、さらに議事録を発言者を記載して、特許庁ホームページに掲載したいと思います。また、委員各位の率直かつ自由な意見交換を確保するために、会議自体の傍聴は受け入れないということにさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

〔「異議なし」の声あり〕

長岡座長

ありがとうございました。

迅速・的確な特許審査の効果について

長岡座長

では、早速、議題に入りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

高倉調整課長

お手元に資料があると思います。まず資料の確認ですが、クリップをはずしていただきますと、資料1は本日の議事の次第、配付資料の一覧表でございます。それから資料2、先ほど御紹介させていただきましたが、このワーキンググループの名簿でございます。それから、資料3と4はこれから御説明いたします。資料3については、このワーキンググループの設置の経緯並びに今後の検討の課題、具体的な内容ということであります。資料4は、現在特許庁が進めております迅速かつ的確な審査のための具体的な措置、それから、特許戦略計画、知財推進計画等において今後さらに検討することが要請された事項についてまとめた資料であります。特に不足等はないと思いますが、もしありましたら事務局の方に御連絡、御指示してください。
特に問題がなければ、資料3について御説明し、一部提案をさせていただきます。
先ほどの御説明と多少重複いたしますが、このワーキンググループの設置の経緯でございますが、今年の5月に開かれた、後藤晃委員長を委員長とする特許制度小委員会におきまして、その当時策定中でありました特許戦略計画の検討状況、実際には既に7月にできましたので、検討の結果を今日報告する、そして、いろいろ御議論をいただくということがこの委員会のマンデートの一つになっているわけでございますが、いずれにしても、特許戦略計画に関すること。
それから、その後、5月以降特許制度小委員会で、今後の検討課題として挙げた事項について議論していくことを課題として、この戦略ワーキンググループを設置することが決まりました。
その後の状況ですが、今年の7月に「特許戦略計画」が定まり、その直前には、知的財産推進本部の方で「知的財産推進計画」が定まり、それから、多少前後しますが、5月の特許法の改正の際の国会の中で附帯決議として、さまざまな特許庁に対する要請事項が挙がっております。
こうした国の計画並びに国会の場における要請に基づきまして、さらに迅速かつ的確な審査を進めていくための具体的な措置、法改正も含めまして、具体的な措置を議論していくことを目的として、このワーキンググループは位置づけられております。
3番目は提案なんですが、今日第1回目は、後ほど資料4に基づきまして、特許庁の現在の考え方、進めている施策、今後の具体的な検討課題とされている事項について具体的に御説明し、その上で、迅速かつ的確な審査、その推進が我が国経済並びに産業競争力にどのような影響を与えるのか、さらに、具体的には出願人に対するメリット、第3者から見た場合のメリット、デメリット、それから、国全体としてのプラス面といったことについて、委員各位の御忌憚のない御意見、御批判、アドバイス等をいただきたいと思っております。
それから、第2回目以降については、これも提案でございますが、先ほど申し上げた戦略計画等の中で、今後検討するべきだとされた事項について幾つかピックアップし、特に法改正関連事項については今後の方向性を出していただきたく思っておりますので、この点について議論していただきたいと思っています。
いずれにしても、第2回目以降の議論でございますので、資料等については追って作成し、できれば事前に配付したいと思っております。具体的には、補正制度の見直し、分割の取り扱い、弁理士の役割といった問題についても議論したいと思っております。それから、出願時、あるいは出願請求時における先行技術調査の問題、特許庁が行っておりますアウトソーシングの請負機関であるところの指定調査機関、この指定調査機関については、国会等においても、民間参入を可能とするような基盤整備を取り入れる方向で検討したらどうかという御提案もありまして、この点についても必要な事項については、この場で御紹介したり御意見を伺っていきたいと思っております。
いずれにしても時間が限られておりますので、できれば優先度をつけて、真にこのワーキンググループで議論することが必要なものを中心に取り上げていきたいと事務局では思っております。
以上が資料3でございます。
この点についていろいろ御意見あろうかと思いますが、まず事前に、資料4についてこれまでの経緯、推進計画等における具体的な検討課題を御説明した後で、資料3及び資料4について御意見を伺いたいと思いますが、そういう進め方でよろしいでしょうか。
では、駆け足で申し訳ありませんが、資料4の御説明に入りたいと思います。
申し遅れましたが、今日安念委員の方から資料を1枚いただいておりますので、席上配付いたします。後ほど御意見いただきたく思っております。
資料4でございますが、タイトルとしてはちょっと長いんですが、迅速・的確な審査のための体制・制度の整備、その現状と、それから、今後の検討課題ということの大きく2つに分けて資料を構成しております。既に一部の委員においては、この資料は見たと、十分聞いたという方もいらっしゃるかもしれませんが、初めて参加される方もいますので、なおかつ重要な事項でもありますので、手短に御説明していきますので、しばらくおつき合いいただきたいと思います。15分か20分以内で終わるように努めたいと思います。
まず、特許審査の現状でございますが、この絵でごらんのように、出願も伸びています。それから、請求は西歴2000年でやや頭打ちではありますが、トレンドとしては増加傾向にある。特に出願の伸びを上回る、出願・審査請求の伸びが顕著である。そのことによって後ほど申し上げますように、特許庁の審査能力を上回るインプットといいますか、審査請求があるために、審査を待っているいわゆる滞貨というのが50万件ほどある、ここ早急に片づけなければいけない、というのが現状であります。
それから、特に出願や請求のインプットの抑制に関連して、今回の特許法の改正において料金構造の改革を行っております。平たく言えば、請求料はやや高くしたけれども、特許になった場合の特許登録料金については値下げする。そのことによって、できるだけ事前に出願や審査の請求を厳選する。そういったインセンティブを企業に感じていただく方向で料金の改正を行ったということであります。
それから2ページ目、特許審査の現状の(2)なんですが、今申し上げましたように、出願及び審査請求構造の改革の必要性がある。出願が多いこと、請求が多いこと、それ自体は決して悪いことではないと思いますが、中には、特許性の非常に低い出願や審査請求もあるので、国家的な見地に立って、出願人も事前の段階で吟味することにコストを割いていただきたいということであります。
このグラフにありますように特許率の推移を見ますと、この5年間で、約65%から50%に下がってきているという統計もあります。
それから、一次審査に対する戻し拒絶査定の割合、やや専門用語で恐縮なんですが、特許庁の審査官が拒絶理由を通知した際に、特に応答することなく処理が終わってしまうというのを、拒絶査定の「戻し」というふうに部内用語で言うわけですが、この割合がだんだん高くなってきて、24%、約4分の1に達してきているという状況であります。こういったものについては、できれば出願や審査請求の段階で十分吟味していただければ、特許庁の限られたマンパワーを、真に権利化が必要な出願の審査に割り当てられることができるのではないだろうかというのが我々の問題意識であります。
それから、3ページ目は特許審査する特許庁の側の負担の問題ですが、1つは、1件1件の出願が大変重くなっております。1つの出願に含まれるクレームの数が約8、正確には7.6というふうに増えているというのが1つです。
それから、特許庁の審査官は、通常の国内出願を審査するだけではなくて、国際特許出願、いわゆるPCT出願の調査報告、あるいは予備審査を行ったりするわけですが、その件数が幾何級数的に増加している状況もあって、審査官の負担は、トータルでなかなか大変な状況にあるということであります。
こうした状況は日本だけではないんですよということが4ページでございまして、ヨーロッパやアメリカ特許庁においても出願の増、これを私たちは特許庁の負担という意味で、「ワークロード」と言ったりしておりますが、このワークロードが非常に増えている。各国において合理化、迅速化の措置を進めております。同時に国際的な協力もやっていこうではないかということで話は進んでおります。
この絵で一つ強調したかった点は、若干手前みそかもしれませんが、そして1件1件の重みは国によって違うんでしょうけれども、日本の審査官の一人ひとりは、決してさぼっているということではなくて、国際的に見れば非常に少ない審査官で、なおかつ数の多い処理を淡々とこなしているということであります。
それから5ページでございますが、このまま進みますと審査の長期化がやや懸念されるということであります。一つには、もともと入ってくる請求件数に対してマンパワーがやや足りないということ。インとアウトの差によって滞貨がだんだん増えてきます。これが現在で約50万件ほどあるというのが一つあります。
もう一つは、3年ほど前に審査請求期間を7年から3年に短縮したことによって、7年請求のもとでの出願の請求と、それから3年請求という新しい制度のもとでの請求が重なるために、私たちはこれを「請求のコブ」と言ったりしておりますが、やや、その重畳される部分があります。ピーク値には30万件ほど達し、合計では80万件ほど達する可能性がある。そういうことで審査の遅延がないように、さまざまな対策をとらなければいけないということが5ページの絵であります。
それに向けて具体的にどのような体制をとるかなんですが、来年度に向けての予算、関連措置については後ほど詳しく御説明しますが、6ページにその概略を書いております。
まずは、審査着手可能件数の増加に向けて、マンパワーと言いますか、アウトの対策という意味ですが、これについては基本的には審査官の増員が重要であるということから、審査官の定員増を図っております。
それから、審査官が審査する前に、先行技術調査をするわけですが、これもできる範囲でアウトソーシングを行う。これは既に10年以上前から続けておりますが、さらにこれを拡充していく。あるいは、特許庁内において審査官OBを調査員として採用し、審査の補助を担っていただくということであります。そのほか、基準の見直し等によりまして、合理的かつ効率的な審査の手続の改善も進めていく。
それから、インプットの抑制については、先ほど申し上げました料金構造の改革等新しい制度のもとで、企業においてもしっかりした特許、あるいは知的財産・管理の運用を整えていただきたいと思っております。それにインセンティブを与えるための法制度、並びにそれに関連する措置をとっていきたいと思っております。
それから、中小企業については料金の減免等を進めていくことにしております。
それから、まだこれは申し上げていなかったんですが、審査請求料金の返還制度、これも平成15年の特許法の改正の中で入っておりますが、今年の10月以降、審査請求を取り下げるものについては、審査請求料金の半額を返還するということでありますので、既に請求済みのものについても、特許庁のファーストアクションが行く前に、この機会にもう一度吟味していただきたいと思っております。
それから、滞貨解消に向けた特別の措置として、これも後ほどもう少し詳しくその背景や考え方も御説明いたしますが、任期付任用の審査官、特に専門性の高い外部の人材を期限を切って採用し、滞貨の一斉の解消に向けて取り組んでいきたいと思っております。
それから7ページでございますが、引き続いて体制整備の話なんですが、特に企業において戦略的な特許を取得する、いわゆる集中と選択の考え方に基づきまして、企業にとって死活的で、なおかつ戦略的に重要な特許を速やかに十全にとるという、企業の知財戦略活動を支援する方向に向けての特許庁の取り組みでありますが、ハイテク分野における審査基準の見直し、特に重要な案件についてより一層充実した審査をするように、審査・審判部との連携等を進めていくこと。それから、出願人と特許庁の間のコミュニケーションをより深めることによって、例えば互いに関連する技術については、出願人からのお話を伺った上で、一括して集中的にまとめて効率的に審査する、そういうことも進めていきたいと思っております。
それから2番目なんですが、限られたマンパワーの中で、企業の多様なニーズにこたえるために、例えば実施をしている、例えば外国に出願している、その上に早く権利の帰趨を見てみたい、そういった案件については早期審査を既に導入しているわけでございますが、これについての普及を一層図っていくということにしております。
そのほか、国際的な権利取得の円滑化に向けても、さまざまな努力を続けていくこととしております。
8ページには、こうした努力というのは、一特許庁だけではなかなか一元的・効率的にできないところもありますので、先ほど技監の話にもありましたように、小泉総理の施政方針演説を一つのきっかけにして、政府全体としてさまざまな知的財産戦略の策定に向けた活動が進んでまいりました。今日は詳しくは申し上げませんが、「知的財産戦略大綱」が昨年の7月、それに基づいて昨年11月に「知的財産基本法」ができております。これに基づきまして、今年の3月に、小泉総理を本部長とする知的財産戦略本部ができました。そして、今年の7月に知的財産推進計画、それから、昨年7月の知的財産戦略大綱を受けて、特許庁としても今年の7月に、特許戦略計画というものをつくっております。これは知的財産推進計画とも十分整合性がとれたものだと我々は思っております。特許戦略計画につきましては後ほど言及するかもしれませんので、その写しをお手元に配付していると思います。
今日は、その中で9ページ以降でございますが、「知的財産推進計画」及び「特許戦略計画」の中で、今後検討するべき事項として自ら挙げた、あるいは推進計画において提示された事項について幾つか御紹介しておきます。これが今日の、あるいは次回以降の検討課題の候補となるべき項目だと思っております。
1つは、特許審査迅速化法(仮称)を制定することが、知財推進計画の中に定められております。特許庁及び経産省としても、関係法律の改正をするなどして、特許処理の的確かつ迅速な処理に向けて、必要な措置を包括的に定めた迅速化法案を2004年の通常国会に提出する方向で準備していきたいと思っております。その中身の議論をこの戦略ワーキンググループでお願いしたいと思っております。
2番目の項目は、先行技術調査機関の育成、その活用です。ここは大きく分けて2つあるわけですが、1つは指定調査機関、いわゆる特許庁が進めているサーチ外注、先行技術調査のアウトソーシングの請負機関である指定調査機関に、新規参入を図るべき必要な環境整備を図るべしというのが要請されておりまして、その検討が1つ。
それから、出願人あるいは審査請求する際に、先行技術調査を事前に行うことを義務づける制度の可否、その是非について検討したらどうかという意見が推進計画等で提示されておりますので、この点についても議論し、今年度末までに所要の結論を得るとなっておりますので、この点についても必要な事項について御議論いただきたいと思っております。いずれにしても、これについては大体方向性は出ていますので、特許庁としても淡々と事務的な準備は進めていくことにしております。
それから、3番目の丸として、既に法改正が行われた事項ではありますが、出願・料金の改革等、新しい特許法制度のもとで、出願人においても出願及び請求構造の改革を進めていただきたい。特に中小企業等については一層の料金減免、一層の普及、啓蒙を図れという指示がなされておりますので、これについても必要な議論はいただきつつ、特許庁としても、できることはどんどん進めていこうと思っております。
それから4番目の項目でございますが、弁理士への期待と弁理士の役割についても御議論いただきたいと思っております。
それから10ページでございますが、引き続きまして今後の検討課題ですが、ニーズに応じた審査の着手時期と。原則として、請求なされたものについては、速やかに行政府として決着をつけることが重要な課題であると思いますが、他方、出願人においては、例えば国際標準の文言が確定するのを見きわめて、きちんとした権利をとりたいというニーズもあります。あるいは、実施のタイミングに応じて権利をとりたいというニーズもあるわけでして、こういったニーズを認識した上で、特許庁としては、むしろ適切な時期に権利取得が得られるように、審査の着手時期を一時的に遅らせる制度の導入の可否の検討を行ったらどうか。あるいは特許査定後であったとしても、分割が可能となるようにもう少し分割時期について緩和し、いわゆるフロントランナーが十分なインセンティブを感じるような制度にしたらどうかという御提案や御意見もありまして、この点についても今後御議論いただきたいと思っております。
それから、審査の着手時期のあり方ということで、ここではPCT関連、分割出願の2つが出ておりますが、例えばPCT出願のような国際的なフェーズにある手続と、それからPCT出願のもととなった優先権の基礎の出願、あるいはPCT出願に基づいて日本国内に移行したもの。国際的な出願と国内的な出願が二通りあるわけですが、内容的にはほぼ同じ内容でございますので、これを同時に着手することができれば審査官の効率も上がるし、上がった効率によって他の出願の速やかな審査もすることができるわけでございますので、この辺について、同時もしくは近接した審査の着手ができるように、必要な制度的な手当について検討したらどうかというのが戦略計画等で挙げた提案でございます。
それから、分割出願については、親出願、子出願、孫出願とありましたら、できれば同じ時期にまとめて審査する。そういった柔軟な着手のあり方についても、法が許す範囲で行うべきではないかという観点からの御議論もいただきたいと思っております。
それから、10ページの3番目、実用新案制度の見直しですが、実用新案制度をより使いやすくするためにどのような改善が必要か。これについては、同じ特許制度小委員会の他のワーキンググループである実用新案ワーキンググループの方で現在検討が進んでおりますので、これについては、このワーキンググループでは直接には取り上げる必要はないのではないかと思っております。
それから11ページですが、補正制度の見直しです。これは特許制度小委員会の中間まとめでありましたが、補正については実は二通りの方向の話がありまして、1つは補正に関する運用がやや厳しいのではないか。一義的かつ直接的に導き出される事項はやや厳しいのではないかということで、これを見直したらどうかという話があって、これについては自明ということをキーワードに、既に運用の見直しを図るべき新しい基準をパブリックにしておりますので、これについては着々と検討と実施が進んでいる。
実は補正に関する今後の議論はもう一つありまして、これも今後このワーキンググループで議論していただきたいと思っておりますが、特許庁の審査官の拒絶理由通知に対して、クレームがガラリと変わる場合がある。ガラリと変わるというのはやや抽象的でわかりにくいかもしれませんが、例えば詳細な説明に、AとBという2つの発明が書いてある。最初のときには、特許請求の範囲にAというものがクレームアップされた。これについて審査官がサーチし拒絶理由通知を打ったところ、ガラリと変えてBと書いてきた。また初めからサーチを行うことになるわけですが、AとBの間の関係が、発明の単一性の要件を逸脱するような場合については、場合によっては厳しく制限するものについては、原則そういう補正は認めない。補正する場合には、場合によっては分割していただくという考え方で審査の合理化を進める。同時に欧米との制度の、あるいは手続の調和を図る方向で検討を進めるべきではないかという意見もありまして、これについていろいろ御意見を伺いたいと思っております。
それから、11ページの真ん中、2番目ですが、これは法改正事項ではないと思いますが、企業に戦略的知財管理を求め、そのインセンティブの観点から、必要なデータについてはむしろ公表していく。いいところについては、一層褒めていくという言う方はおこがましいかもしれませんが、他の企業のモデルとなるような方向に持っていきたいと思っております。逆に記載不備の高い場合については、そのデータを場合よっては公開する、公表することも含めて検討していく必要があると思っております。
それから、外国関連の出願については、特にその結果を他国で活用させるという観点から、できる限り早期に発信していきたいと思っております。この関連で外国関連、PCT等国内との同時着手も、こういった観点から議論していきたいと思っております。
それから、12ページは御参考までですが、今申し上げたのは推進計画と戦略計画において、特許庁が今後検討せよと言われた事項ですが、類似のことが国会の附帯決議でもなされております、ということの紹介であります。
12ページは、衆議院における附帯決議でありまして、アウトソーシングの拡充、中小企業に対する料金減面措置の抜本的な見直し、5番目は出願人による選考技術調査の充実に向けての新しい対応策の検討、6番目は請査請求期間短縮による請求件数の増に伴って、審査待ち期間が長期化することがないように十分な措置を講ぜよという趣旨であります。
13ページは、参議院におけ附帯決議でございます。大体同じ点が指摘されておりますが、具体的には、アウトソーシングの拡充、中小企業の支援、先行技術調査の問題、審査請求期間の短縮に伴う審査待ち期間の長期間の防止、それから、6番目以降は衆議院の方には入っていない点でありますが、実用新案制度の改善、e-Japan計画との関連で、インターネット等最新のITを積極的に活用して、出願人の利便性を一層向上せよという附帯決議であります。それから、最後に職務発明規定の問題、これについては特許制度小委員会の方で現在議論が進展しているところでございます。
最後に14ページでございますが、平成16年度の来年度の予算であります。これについては原山総務課長の方から若干の補足の御説明を後ほどいただきたいと思っておりますが、増員の問題、それから、特許迅速化法案の制定に向けた努力を今特許庁が進めているところであります。
とりあえず私の方からの説明は以上でございますので、特に来年度の予算につきまして、総務課長の方にマイクロフォンをお渡しいたしますので、よろしくお願いしたいと思います。

原山総務課長

少しお時間をいただいて予算関連の説明を補足したいと思います。
本日御説明させていただきました資料には記載してございませんが、私ども今回の概算要求提出に当たり、特許庁が「滞貨一掃」、あるいは「即時審査だ」という言葉をホームページ等でも打ち出しており、一部委員の皆さんの中には新聞等で御承知の方もおられるかもしれません。これは先ほどの説明にもありましたとおり、前国会において、料金体系の変更等出願人の方々にいろいろお願い申し上げてきまして、もちろんそれを効果あらしめるための各般の施策を行っていくことも大事なわけでございますが、今度は、特許庁自体もこういった方向にこたえていく努力をしなければいけないということで、ここにございますような形で、100名の任期付審査官の要求を出させていただきました。
特許庁が1,000名強の審査官を抱えているわけでございますけれども、従来の常識からいくと非常に異例な要求でございました。これは10年ということを想定しておりますが、任期付きといえども国の総定員法の内数だということで、要求を受け付ける方の諸官庁とは、要求するまでの間も、正直言って厳しい議論がございました。そういった中で、いろんな形での各方面からの強い御支援をいただいて、とにかく要求だけは聞いてくれということで要求を出させていただいたわけでございますが、我々単年度で1回だけ仮にこれが実現したとして、それをもって長期的な審査の短縮、あるいは滞貨の一掃が実現できるわけではないわけでございまして、少なくとも今後、我々は今後5年間にわたってこういった100名に及ぶ任期付審査官の採用を続けさせてほしい。そうすると一時期、500名の増員が実現することになるわけでございますが、こういったことをしつこく行っていく、一定期間継続してやっていくことがない限り、結局もとのもくあみに戻ってしまう恐れがあるというふうに今は考えているところでございます。
したがいまして、各方面に、早ければいいのかという議論等があることも承知しておりますが、かなり強力なモーメンタム、しかも長続きするモーメンタムを皆さんによっておつくりいただいて、風を送り続けることがない限り、結局これまで行ってきたことも含めて、果たして効果を生ずるのかどうかという問題意識から、今回我々思い切った要求をさせていただくことになったわけでございます。
今回の定員のみならず、例えばきょうは詳細は省かせていただきますが、私ども年間、二百数十億かけた情報化投資を行ってきておりますが、これなども抜本的に改革を目指して取り組もうということで、これも相当思い切った要求を出させていただくことにしております。こういったことを継続していく覚悟を固めたということでございまして、皆様方から強力な御支援をいただきたいということでございます。
以上でございます。

自由討議

長岡座長

どうもありがとうございました。
まず、本日の討議に入る前に、ただいま御説明いただきました点について御質問、御意見がありましたらお願いします。もう中身、内容を御存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、この機会ですので御遠慮なく、不明な点等ございましたら御質問、御質問をいただきたいと思います。

安念委員

プリミティブなことを伺いますが、任期付審査官の給料も特許特会から出るんですか。

原山総務課長

さようでございます。

安念委員

それなら、文句を言われる筋合いはなさそうなものですね。早く審査を済ませて、特許査定するものは早く特許査定を出して、年金をがんがん稼ぎます、そこから出すんですから文句を言わないでください、と言えばよさそうなものじゃないかなと。素人の考えですけれども。

原山総務課長

ありがとうございます。全くそれに類似の、しかも1日増えても、また将来は減るわけですから、長期的に見れば問題は極めて小さいではないかということを私どもは主張してきているわけであります。それに対して、総定員法を守るという立場からは、一旦少しでも緩めると同じような手法で公務員がどんどん増えてしまうんじゃないか、任期付きなら、例えば今は治安の問題等ありますけれども、警官その他も含めて任期付きの警官でやったらいいじゃないか、それならば総定員法の外だということでできるのか、というところの議論がおそらく政府でもまだついていないと思うんです。
我々こういった取り組みはそういう意味では全く、これだけ本格的に任期付定員をやるのは初めてなものですから、とにかく我々が、この段階ではいわゆる法定員の内数だと。したがって、こういうのも含めて、昨年よりも国家国務員全体として減っているということでなければ認められないという話でございましたので、要求段階でも、我々がこれだけ出した分だけ、どこかでは政府部内で間違いなく減らされているという状況でございました。

長岡座長

ほかにいかがでしょうか。
それでは、私の方から特許審査の現状の最初の1ページから2ページに、現状が書いてあるんですが、2000年度から審査請求件数がかなり大幅に伸びている。それが今の50万件の滞貨の原因になっているように見えるんです。その原因はどういうふうに考えていらっしゃるか。あと特許率が2000年度からかなり落ちてきているわけですが、その両者は関係があるのかどうか、そういった実態の分析がもし済んでいれば教えていただきたいと思います。いかがでしょうか。

高倉調整課長

1ページの審査請求件数のグラフを見ますと、確かに座長御指摘のとおり、西暦2000年がピークで25万件、なぜここはこれだけ増えたのかというのが第1点の御質問というか御意見だったと思いますが、企業の方もいらっしゃるので企業の方の御意見も伺いたいんですが、我々の一つの見方としては、3年請求を導入することがこの当時決まりまして、もちろんこの段階では7年請求の時代なんですが、企業の方のお話によれば、3年請求の制度が始まれば、3年以内にそれなりの吟味をし、請求もしていかなければならない。したがって、7年請求のものについてもできれば、前倒しという表現はこの場合は適切でないのかもしれませんが、きちんと7年請求のものについて前倒しして、早い段階で吟味し、知財部においてもマンパワー、資金面で限りがあると思いますので、少し早目に請求しておこうかと。そして3年請求に立てば、もう少し1年当たりの請求件数が増えてくるという前提で、少し前倒しをしたというのが1つの理由ではないかというふうに、その当時企業の関係者から伺ったことがあります。そうでないという見方があれば、ぜひ委員の方から御指摘ください。
それから、2点目については、特許率の推移は確かにこのように下がってきております。これも企業における請求件数が増えたことによって、この表現も正しいのかどうかわかりませんが、たくさん出せばそれだけ事前の調査も、やや不十分になってくることもあるのかなと。請求件数の増大ということ自身が、一つは特許率をだんだん下げてきたのではないかという見方もあるのかと思っています。
同時に、特許庁としても、迅速性とともに的確性が重要である。なかんずく、プロパテント政策ということで、特許権を一たんとった場合に、権利行使する際の手続が従来に比べてだんだん強くなってきているといいますか、特許権の権利者にとって権利行使が容易になってきている時代の中で、審査はより一層適切に厳密にするべきだという考え方に特許庁も傾いてきておりまして、審査の的確性、厳格性を一層進めてきた結果ということが特許率の低減に反映されているのではないかと思っております。

長岡座長

どうぞ。

江崎委員

企業の立場でちょっと質問なのですが、ページ数2の登録率、これは審査部段階なのか、審判も入れた値なのか、どちらですか。

高倉調整課長

審査部です。ちなみに計算としては、特許査定件数プラス拒絶査定件数を分母に置いて、分子に特許査定件数です。

江崎委員

わかりました。実際私どもの会社で申し上げますと、審判の比率が随分高くなってきておりまして、全体を見た登録率はそれほど変わってないんですが、その中で審査段階での拒絶査定の比率は極めて高くなり、登録率は落ちてきています。ただ、最終的に登録まで見ますと、余り変わっていない状況にございます。そういう意味では、審査部の方は的確な審査ということでかなり厳しくなってきていて、それから、審判の方は若干やさしいというところが少しあるのではないかと思います。全体の効率を考え、庁として審査・審判も含めてどうであるかということも考えなければいけないだろうと思っております。
それから、おっしゃるとおり企業の中での知的財産、特許の重要性は増しておることは事実でございまして、どのように権利をとるかということが非常に重要になっております。現在では出願の形態は1件1件ばらばら出願しているというよりは、1つの研究開発のテーマについてまとめてきちっと押さえていく、あるいは管理していく方向にきております。そういう意味で3年の審査請求に変わった段階で、審査請求の順序がひっくり返ってしまうと、1つの研究開発のポートフォリオとして見たときにやりにくい部分がありますので、7年に対して、徐々に3年請求に移行する段階において少しずつ前出しをして順序がひっくり返らないように何年計画かで進めてきております。その部分で審査請求件数が、一時的にふえてきている傾向はあろうかと思います。

長岡座長

秋元さん。

秋元委員

今の件ともう一つ別な質問がございますけれども、私どもの業界は非常に出願件数は少ないんですが、それでも出願件数の増加という意味で考えると、遺伝子関連の出願、あるいは遺伝子の構造が解析されてから、弊社の場合もほぼ出願件数は倍増しております。ただ、審査請求そのものについては、まだ審査請求するしない段階のものもありますけれども、とにかく出願することを一刻も早くしないといけない、それから、件数もふえていますから調査等もおろそかになりまして、とにかく出願はふえている。ただ、全体の数から比べて見れば微々たる問題かと思います。
これに関連して、今調査の話を出しましたけれども、的確な審査ということを私どもは非常に強く要望しておりますが、先行技術調査について、いわゆる指定団体というか、アウトソーシングを使うという話と、もう一つ衆参の附帯事項で、十分な先行技術調査があった場合には減額するというのがあります。実は社内でやる場合でも、医薬品、ライフサイエンス業界は非常に綿密な調査を1件1件やっているのが実情でございまして、そうした場合に、指定団体でやらないとだめなのか、社内でやった場合についても減額措置を講じてもらえるのか、そういう問題についてこのグループで議論していただけるのかいただけないのか。指定団体を使うというところはよくわかるんですが、衆参の附帯事項の減額の件についてどういう扱いをされるのか、最後の方は質問でございます。

長岡座長

浅見委員。

浅見委員

この中の資料、最初の御説明にもありましたが、特許制度小委員会で議論した話も大分たくさんあるかなと思っておりまして、質問ということだったんですけれども、私としては、このワーキンググループではどこから議論すればいいのかなと。つまり、さっきの図を拝見していても、もう1年前ぐらいから何回も見た図がたくさん出てきていて、要はここでは何を議論するのかという焦点がちょっとわかりにくくて、何か時計の針を戻されたという感じが強いんですけれども、どこから議論していけばよろしいんでしょうか。

長岡座長

では、お願いします。

高倉調整課長

幾つかコメントしたいんですが、1点、江崎委員の御発言の中に、審査・審判で基準が違うという話が多少あったんですが、その点については我々としても十分かみしめないといけないところがあります。ただ、1つ指摘しておきたかったのは、審判請求の際に、当然特許請求の範囲の補正等が行われておりますので、そのことが特許率を高めているという点も多分にあると思いますので、その点はひとつテイクノートを議事録の方でしていただきたいと思います。
それから、まだ御発言があるようですけれども……。

江崎委員

発言の仕方が、説明が不十分でしたので、庁に対して誤解を与えるようなことがあってはいけません。追加させていただきます。おっしゃるとおりで、現実には補正をかけて、さらに減縮した形で審判に持って行っているということで、審査の機会を1回ふやしているというのが比較的高いということでもございます。

高倉調整課長

それから、秋元委員の御質問というか問題提起なんですが、出願人が事前に先行技術調査機関等を使って、あるいは自らやった場合も含めてかもしれませんが、その場合の減額措置についてこの委員会で議論する課題かどうかという点ですが、その点についてはむしろ各委員からの提案を待ちたいと思っておりまして、我々としては必要があればぜひ議論していきたいと思っております。ただ、それがすぐにできるかどうか、実行できるかどうかという点については、そういった調査を行う調査機関が世の中にどのくらいあるのかどうか。例えば出願が今40万件あり、請求が20数万件あるわけですが、仮に全部にそれを義務づけた場合に、それを受け入れる調査機関が我が国にあるのかどうか。ないとすれば、どのようにして育成していくかというアクションプランをつくり、実行していくことを並行してか、あるいは段階的に進めないといけないので、直ちにはなかなかできない問題と。ただ、その方向性としては、当然ここでも議論していただくことは可能だと思いますので、他の委員の意見も伺いたいと思っております。
それから、浅見委員からの点でございますけれども、我々としては今まで、議論せよと言われた事項について、この戦略ワーキンググループで重要なものを取り上げて法改正する場合においては、その方向性について、もっと一歩踏み出す方向で結論を得たいと思っておりまして、従来の議論を繰り返す必要はないと思いますが、従来の議論の上に、例えば補正については基準の見直しは既に終わっていますので、今後は先ほど申し上げたような補正のいわば制限かもしれませんが、そういった方向を是とするのか非とするのか。
審査の効率アップという点からは是だと思うんですが、出願人から見れば、多様なクレームを柔軟にとりたいというところにおいては、ある意味で制限するわけなんですが、そのプラスとマイナスを考えたときに、我が国としてとるべき施策かどうかについて御意見を伺いたい。あるいは特許査定後の分割については、第3者のことを考えると問題があるのかもしれませんが、分割を許容してほしいという声もありますので、その方向で前に進むのかどうか等々、議論していきたいと思っております。
いずれにしても、先ほど申し上げましたようにこの回数も時間も限られておりますので、これを優先して取り上げてほしいという意見もあわせてお伺いしたいと思っております。

浅見委員

ということは、例えば小委員会の方でも、アウトソーシング機関みたいなものの検討をしてはどうかみたいなアイデアも出たんですが、それを今回は、具体的にいろいろなものを形にしていくという一歩踏み込んだ議論をするということで、前の議論を戻すということでは決してないということですね。

高倉調整課長

ありません。

浅見委員

それを確認したかっただけなんです。

長岡座長

相澤委員、お願いします。

相澤委員

浅見委員の御質問と若干関連するんですが、昨年、迅速化に対して制度的に対応するということで、料金改定を行いました。そのときに、審査請求期間の実質的な延長のようなより効果のある対策を見送ったわけで、そのような対策はとらないという前提になるだろうと思います。そうすると迅速化の抜本的な対策としてとれるのは、審査官をふやして、アウトソーシングを増やすという審査能力の拡充と、実用新案制度の活用ということになると思います。実用新案法の改正については実用新案のWGでやるということで、検討に値する問題でここで扱えるのはどれだけあるのかという感じがします。
去年、審査請求料を値上げして、今年もまた審査請求料をいじるとか、あるいは審査請求制度をいじるということが難しいところで、先ほど御提案の部分が抜本的なところにどれだけ影響があるとお考えになっているか、お伺いしたいと思います。

高倉調整課長

補正の制限、分割の緩和については、まだ十分な定量的な評価はやってないんですが、直観的には、補正の方は審査の効率に多少寄与するかもしれませんが、分割の方はどれだけ寄与するかというのか、たしかクエスチョンマークがつくと思います。ただ、いずれにしても分割の方は、スピードアップの問題よりは、出願人の戦略的な特許取得をサポートする。そのことによって戦略的な創造的な発明を促して競争力の強化につながるという視点で、分割については考えたいと思っております。
ただ、総じて増員とかアウトソーシングの拡充に比べれば、マグニチュードが全然違うという認識は我々も持っております。いずれにしても、よりきめ細かな制度を改善することによって、全体として的確性、迅速性の方向で動いていけば、当然必要な措置についてはとっていった方がいいかなということと、既に戦略計画、推進計画、あるいはこれまでの特許制度小委員会で大体方向性が出たものもありますので、さらにそれを具体化していくことは、我々として取り組まなければいけないのかなと思っています。いずれにしても、こうした事項の法改正の結果がスピードに与えるマグニチュードというのは、それほど大きくないと認識しております。

長岡座長

いかがでしょうか。
それでは、実質的な内容について討議を始めておりますけれども、質問については、あればまたしていただくということで、あと残りの時間で、今の御議論とも関係しますが、今後、特許審査迅速化法も考えていらっしゃるようなんですが、迅速・的確な特許審査が特にどういう意義を持っているのか。その意義を高めるために、どういうプライオリティをつけて何をやっていけばいいかということについて、過去の経過で今後すぐはできないことがあるかもしれませんが、とりあえずもう一度戻って、現状何が問題で、今後どういう点について議論していったらいいかについて、各委員の忌憚のない御意見を、できましたらそれぞれ一言ずつとは言いませんが、第1回目ですので、自由に御議論いただきたいと思います。
安念委員の方から意見をいただいておりますので、まず最初に、安念委員の方から口火を切っていただくと皆さんを活発化させていただくんじゃないかと思いますので、よろしくお願いします。

安念委員

調整課長が大分前に、何か刷り物をつくれという御注文をいただいたようなんですが、済みません、ちょっと外に行っておりまして、メールをきのうの夜遅くに拝見したものですから、こんなになってしまって。と言っても、時間かけてもこれ以上になりはしないんですが。私の考え方はものすごく単純なんですが、先ほどどなたかから御紹介があった、早ければいいのかいという御批判もあると思うんですが、早ければいいんだよというのが私の考えでございます。要するに、基本的には審査期間それ自体は単なるコストに過ぎない。それはだれにとってもそうです。出願人にとっても、ライバルにとっても、社会全体、つまり第3者にとっても、みんなそうだというだけのことでございます。
例えば裁判を考えていただければいいと思うんですが、裁判の期間自体は意味がないんです。勝ちか、負けるか、引き分けか、とにかく結論を早く出してくれればいいんでして、他の条件が同じであれば、考えている期間自体は、だれにとってもコストでしかありません。裁判の場合は、それでも特許に比べれば、発明に比べれば、ある意味ではいろんな人間の人生を、さまざまな諸相がごった煮になるところがありますので、ある程度裁判をやっていると、みんなが納得するというのはあるんです。私も一応弁護士なものですから、やっているとそれはわかるんです。それは離婚のような問題だけではなくて、個人の問題ではなくて、企業がかかわっていてもそういうことはあるんです。いや、私は弁護士と言っても牧野先生みたいな偉い弁護士ではないんですが、牧野先生と比べると鯨とボウフラぐらい格が違うんですが、それでもそういう感覚はある。
ところが、特許のような非常にドライなものは、そこで何か人生のさまざま諸相が浮かぶようなものじゃないんですから、要するに他の条件が同じであれば、早ければいいわけです。問題は、さはさりながら業界によっては、企業によっては、適切な時期に実施したいので、早ければよいというものはではないという御要望がある。これはある意味では当然だろうと思います。というのは、まず第一に企業は戦略的な行動をとるわけで、自分の利潤を最大化するために行動するのは当然のことであります。それは何も悪いことではないわけですから、それはそれでよろしいわけです。
この場合、その種の、早ければよいのではないという要望がデジテメートな、正当なものであるのかどうかというのは見きわめなければいけない。つまり、企業の戦略的な行動が戦略的な行動でしかない。例えばこの2のところに書いたんですが、他の条件が同じであれば、ライバルとのかかわり合いの中で特許を考えていくわけですから、他の条件が同じであれば、ライバルにとって一番打撃になる時期に権利化したいのは当然のことなんです。それは何も悪いことではありませんが、問題は、一般性を持った法制度は、だれかがそれを小利口に利用して、戦略的に利用することを防ぐことはできないんです。防ぐことはできないんだが、制度の仕組みそのものが個別企業の戦略的行動に加担するようにできていてはいけないと思うんです。つまり、一番ライバルに打撃を与えたいから、このときに権利化してくれ、この時期に審査請求してくれという仕組みそのものができていてよいかどうか、これはよほど考えなければいけないと思います。
私は、基本的には戦略的行動に対してニュートラルでなければいけないので、審査期間は、理想を言えば一律であることが望ましい。長くても短くても一律であることが望ましい。戦略的な行動を防ぐには、一律であればいいんですが、必ず短くなければいけないというわけではありません。長くたっていいんです、一律であればいいんだから。しかし、長ければ今度は特許の場合は、当然補正とか分割とか、それはそれでマヌバリングは可能になりますので、この場合も、一律に短いのと一律に長いのとどっちがいいかと言えば、それは一律に短い方がこの点でもベターだろうと思われます。
ただ、審査期間が短縮されることによって、ある種の弊害が生ずることは理論的には言える可能性がある。というのは特許の存続期間は、こんなものは先生方に申し上げるのは釈迦に説法ですが、出願日から起算されますから、審査期間が短くなると、特許査定がなされた場合の話ですが、特許権が成立してから執行するまでの期間は総体的に長くなるわけです。そうしますと、これも他の条件が同じであれば、執行までの期間が長くなれば特許権から得られる独占利潤の額は多いはずですから、他の条件が同じであれば。とするとそれは何を意味するかというと、ライセンス交渉において特許権者が、要するに立場が強くなる、高飛車に出る、そういうことを意味するわけです。
それは何を意味するかというと、ロイヤリティーの提示額が高くなるということですから、それだけ高いんだとやめようというふうになって、当該技術を利用する企業の数が減るということになります。これは特許にとっては望ましくないわけです。ロイヤリティーの額は当然、特許権者の競争上の地位を侵さないような額に設定するのは当たり前ですが、それでも、たくさんの人間が使った方がそこにある種の、最小限であれ競争が生ずるわけですから、たくさんの人が利用する方が望ましいんですが、利用者の数が少なくなることが考えられないではありません。
しかしこの弊害は、審査期間が短いこと自体に起因するものではなくて、権利の起算点が出願日から始まるといういわば外部的な、審査期間それ自体にとっては外生的な要因によって決まっていることでして、審査期間を長くした方がいいという結論を導くものではないし、しかもほとんどの技術はかなり急速に陳腐化するわけですから、最後の数年間、あるいは1年とか2年の段階で続続期間が延びたからといって、それによって追加的に得られる利得は実はマージナルなものでしかないだろうと思うんです。
しかも、一律に審査が短くなれば、すべての人が長い存続期間を亨受できるわけですから、例えばクロスライセンスすれば相殺できるわけです。したがって、これによる影響は私はほとんどないのではないかというふうに考えます。というわけで、審査期間自体はすべての人にとってはコストなんだから、それは短い方がいいに決まっているんじゃないですかという非常にわかり切ったことを自分で納得するために書いたという、それだけものでございます。失礼いたしました。

長岡座長

どうもありがとうございました。
どうぞ、秋元委員お願いします。

秋元委員

全然反対するものではなくて、むしろ原則的には賛成なんです。ただ、私がいつも言っているのは、早いという意味と的確という意味と両方ありまして、例えば医薬品業界の場合、よそは別としても例えば弊社の例を出しますと、グローバルに年間4,700億円売れているような製品に対しても、特許は10件ないんです。物質特件は1件です。そうすると、的確じゃないと、一たん権利が付与されてしまってそれが間違った形であったとしたら、ものすごい影響が出てくる。そういうことで早いことは非常にありがたいんですが、ぜひ的確に審査してほしい。これについて例えば審査官をふやすどうのこうのとは別にして、非常に専門性の高いところについては、何らかの方法で裁判と同じように的確な審査ができるような形を提言したいと思っております。
それから、当然そういう意味で安念委員が言われるように、審査自体は単なるコストであるという考え、これ自体についても基本的には賛成でございます。ましてや、医薬品、農薬の場合には特許期間の延長制度がございまして、今グローバルに非常に開発が早く進んでおります。そういうことで早く特許が付与されないと、場合によっては5年間の特許期間が亨受できないということも起こり得るので、私どもは製品が決まりますと、ピンポイントに分割して早期審査をお願いするということもございますので、早く審査されて特許が付与されることについては、的確であれば、あるいは安念先生が言われるように他の条件が同一であれば、これは大歓迎でございます。そういう事情がございます。
それからもう一つは、さっき1つの特許が非常に重いと言いましたけれども、基本的に安念先生とちょっと違うところは、私どもの場合にはクロスライセンスが基本的にはないということです。そういう意味ではロイヤリティーが上がる下がるという問題よりも、的確に審査して権利を付与していただきたい。そういうことによって安念先生が言われる、この1.で書いてあるようなことも原則的に大賛成でございます。そういうことでちょっと業界の特殊性というか、そういう業界もあるということで説明させていただきまして、早期審査自体については、他の条件が同一であり的確であれば、大賛成でございます。

長岡座長

どうぞ。

菊池委員

二年前になるのですが、特許がどのように社会経済、とくに、マクロ的な国民経済に影響を及ぼすのか。GDPはどのように変化するのか。物価は、金融は、雇用は、さらに、輸出入、技術貿易はどうなるのか。特に、特許経済の中で、特許出願は増えるのか、保有件数は減るのか、未利用特許は、ライセンス契約はなどと色々な問題を分析するためのモデルを作ったのです(特技懇No.217に掲載済)。今回、事務局の方から、少し資料をということだったんですけれども時間がなくて、昨夜久しぶりに動かしてみて、3つの論点を見つけ出しました。安念先生と今秋元さんが言ったことに、ちょっと疑義を差しはさむ可能性もあります。
1つ、以前で実施なされた、審査料金をああいうふうな形で下げたらどうなるか。GDPというものは上がるようです。景気対策に良い改正である。しかし、それほどインパクトは大きくない。ところが審査期間、この時間の変数を動かすとかなり大きな問題が発生する。「単なるコスト」と一言でいうには、危険であるという感じがしております。個々の企業、または個々の発明者からすれば単なるコストです。しかし、マクロ経済全体で合成の誤謬が発生する。最初は良い影響が出る。ところが、十数年間仮説的にシミュレーションをしてみますと、コンピューターの中で2~3秒では終わるんですけれども、経済活動に「ずれ」が生じてきます。そして、景気変動の幅が大きくなります。差し当たり、最初は景気が回復しますが、数年たちますと景気が悪化してしまう。また、景気が上がってくるが振幅が大きくなっていく。こういうのを「パルスフェーズシフト」と呼んでいるのですが、そういうのが起きてしまう。
これは明らかに政策変数、財務政策や金融政策を考えるときの税率と似ているわけです。審査期間の制度を変更することは、特許庁が景気対策の政策変数を自らが持ってしまったということになる。ということは、経済に対するインパクト、マクロ的及び各産業ごとに、または企業ごとに影響があるとすれば、何らかの調整的な判断を考える部局が必要になる。そういう意味で今回、小委員会ワーキンググループが開催されたのかなと思っているんです
したがって、「時間」を政策当局が変更するということは単なるコストではないと私は思っております。それが第1点です。
第2点は、登録件数が急激に上がるとどうなるか。貿易ライセンス収入やライセンス輸出の変化が大きくなる。ところが中立的なのです。政策的に、中立(黒字でも赤字でもない)ということは非常にいいわけで、技術収支に関しては中立です。しかし、貿易収支は改善します。つまり、非常に良い政策である。さらに、GDPが上がってきます。ところが、いやなことに、将来に向けて特許を使っていきましょうというポテンシャルが上がりますので、平たく言えば、潜在的に成長力が上がってくるので、期待値との間にギャップが発生してしまいます。こうなりますと、先ほど言いましたように3年から5年ぐらいの間に特許が原因となる景気変動が生じる。それと同じように審査期間の3年と7年でずらしてみました。ずらしてみると確かに2~3年の間、審査請求またはそういうものが結構増える。でも、また減ってしまう。特許出願の波のようなものが現れてくる。国際競争力が上がることは短期的に実現するらしい。しかし、平均してみると、12年間程度の特許有効期間で平均してみるとプラス傾向ではあるが、その間の中で景気の乱高下が発生する可能性がある。登録されて特許になるのが急激にふえるというのは非常に危険なものなのではと心配になる。したがって、滞貨解消もある程度マイルドにやっていった方が良いのではないかと考えるわけです。不確実なモデルに基づいて、このような話を続けるのはまずいんでしょうけど、一応頭の中で整理してみるとそのようになります。
もう一つ気になっていることは、研究開発費が御存じのように16兆、24兆という形で急激に増えました。パテントファーストポリシーをとる大学、公設機関、当然企業も多くなりました。特許、特許という話、または何らかの形で知財、知財と騒いでいるわけです。そういう中で、研究開発活動を刺激すると、当然のこと1990年代後半から今にかけてそのような傾向になっているわけで、粗製乱造の発明が出願されてくるという感じがするんです。そのようなものを審査請求の段階で防ぐ必要がある。質的なレベルを保つ必要がある。ただ、私が持っているモデルは質的な側面を評価できませんので、ここら辺のマクロ的影響はよくわからない。ただ、未利用の特許が世の中に増えるよりも、ある程度行列ができてもしっかりと審査すべきだろうとかんがえている。むろん、数量的な急増があり、滞貨がたまり続けるということは、マクロ的コスト要因である。しかし、マクロ的な政策変数として機能がある。特許庁のスタンスを変えて、ぜひ、交通整理の意味合いを超えて、景気政策の変数を動かしているという意識を強めてほしいと思っております。
以上です。

長岡座長

どうぞ、江崎委員。

江崎委員

安念先生のおっしゃった意見、全く同感でございます。そのとおりだと思います。ただし、菊池先生もちょっとおっしゃったんですけれども、国際産業力という視点でこの制度を見ていくべきではないかと思います。そういう意味では、これを上げるために、逆に言うと日本の中だけで特許が異常にふえると、日本をベースにしている企業にとっては、決して有利ばかりではないと思います。そういう意味では、海外を含めてどう考えるかということだと思います。
それから、ライセンスの視点を考えますと、グローバルな視点で考えざるを得ないものですから、海外で特許はなってなくて日本だけでなったというのはまだ使えない状況でございまして、グローバルに均一であるというのが非常に望ましい姿だろうと思います。そういう意味では日本だけが突出して早いという必要は余りございませんで、グローバルでどれだけ短くなっていくかという視点が非常に重要だろうと思っております。そのように考えなければいけないだろうと思います。
それからもう一つは、アジア各国は非常に大きなマーケットになりつつあるわけですが、ここの特許の審査、運用が、制度はともかく、運用は全く惨たんたる状況でございます。そういう意味では、ここら辺に対して日本の審査の結果をうまく流用される国際影響力と申しますか、そういうものを高めておく視点は非常に重要だろうと思うので、そのためには、欧米よりも少し早いというのが理想的ではないかと感じております。
以上です。

長岡座長

どうもありがとうございます。
どうぞ、竹田委員お願いします。

竹田委員

私は化学、医薬品業界に属しておるものですから、そちらの立場からお話させていただきたいと思うんですが、今大体審査請求して、特許になるのは平均30カ月ぐらいだと思います。そういうことで言うと化学品業界、医薬品業界が、審査を早くしてくれという意向はないと思うんです。今の審査の実情に大体満足しているということだと思います。
それから、化学品、医薬で問題なのは、さっき秋元さんもおっしゃったけど、早く審査してくれることも重要でございますが、的確に審査してもらいたい。特に今度、異議申し立て制度がなくなりますから、有効性を争うときは無効審判か侵害訴訟かということになるわけです。訴訟とか審判になる前に、企業は各々の独自判断で、あるいは企業間の話し合いで問題解決しているものが沢山あるわけで、そうすると異議申し立て制度の廃止に伴って、特許審査の的確性のニーズはますます高まるのではないかと私は思っております。
したがって、的確性の方が今の段階ではむしろ重要ではないかと思うわけです。にもかかわらず新聞紙上を見ると、早く審査しろ、早く審査しろと。それから、迅速化法案は、ちょっと私どもから見るとピンとこないわけです。問題になったのはなぜかというと、結局、電機と機械の人たちが非常にたくさん出願して、その結果こういうふうになっているわけです。ざっくばらんなことを言うと、電機、機械の人たちに特許審査を撹乱されているんじゃないか。ですから、電機、機械の人に、この際自分たちの特許ポリシーというか特許戦略を、量だけではなくて、数だけではなくて、質に転換することについて、企業がもうちょっと考えるべき段階にきているんじゃないかということを私は言いたいのです。きょうは丸島さんがいらっしゃらないので、後で欠席裁判だなんて怒られるかなと思いますけど、率直なところそうですね。
これは余り議事録にしてもらうのはどうかと思いますけど、数年前のことですが、化学会社の研究開発をやっていた常務の人と話をしていたら、息子が某電機会社へ行っているんだと。セミナーに出て来て、帰ってきて何やっているんだと言ったら、特許を出さなければいけないと。セミナーに1回行ったら、特許を1つ出せとこう言われていると言って。おやじさんは、「電機会社というのは我々とは違いますな」と言っていましたけど、今はそうやっているかどうか知りませんけど、そういう雰囲気が電機会社にあるわけです。
特許出願を従業員の想像力を刺激するために使うことに意義があるのなら、いうのは特許などというものは使わないで、実用新案か何かで処理して、もう少し特許の審査負担を減らすことを考えないと、電機、機械のために、本来真っ当に審査していただけるところがラフに審査されるようなことがあっては非常に困るというのが私の感想でございます。実用新案は、ほかのワーキンググループでやっていらっしゃると思いますけど、実用新案を活用して、小発明はそっちの方で処理していただくことが望ましいのではないかと思います。
終わりです。

長岡座長

どうぞ。

牧野委員

私は訴訟に長く携わって、今も携わっておりますので、特許の審査の迅速性はもちろん必要であるし、それについては先ほど安念委員がおっしゃったとおりだと思います。ただ、訴訟の場から見ておりますと、的確な審査がなされて、だれからも問題が出ないような権利をつくっていただく。そうすると紛争も少なくなります。これはどうしてもつぶせない権利だと、こういう発明が権利になるのならこれは納得します、ということで訴訟になる前の事前の交渉等で紛争は片づく。
ところが、一番むだだと思われるのは、本来特許に値しないものが権利になった。これは業界でも、あんなものが権利になるのは耐えられないという意識があるのです。これは絶対につぶさないといけないということで、無効審判の請求をする。猛烈な争いをするわけです。現在は侵害訴訟でも無効の判断ができるようになりましたので、侵害訴訟でも無効の主張はは当然する。その結果、特許庁において、あるいは裁判所において、この特許は無効だという判断がされる。これは、訴えられた方にとってはよい結果なのですけれども、何かむなしいんですね。何でこんなことに多大な労力を使わなければならなかったのか。最初の審査のところで的確な審査していただいておれば、こんなむだな労力をお互いにする必要はなかったんじゃないかというむなしさが残るわけです。ですから、ぜひとも的確な審査をしていただく、それに必要な審査期間なら、何人も納得するだろうと思います。的確な審査との関係で審査期間の短縮化、あるいは迅速化を考えていただきたいと思います。
以上です。

長岡座長

どうぞ。

秋元委員

今の御意見等に絡んで、先ほど私が言いましたのは、的確、他の条件が同じならという前提ですから、決して早期審査だけに賛成という意味ではないのと、もう一つは、的確な審査を特許庁さんの方にお願いしますけれども、最初の私の発言と絡みますが、企業の側として先行技術の調査をきちっとやっておれば、審査も十分それと連動してうまくいくと思うんです。先ほど言いましたように1品目で数千億円売れるというものについては、例えばそういう研究テーマをやるテーマ設定の段階、中間の段階、製品の直前の段階について、アウトソーシングの会社を使い、内部の調査グループを使い、膨大な調査、権利判断を実はやっているんです。そういうことであれば、そういう資料を踏まえて出願すれば的確な審査も十分やっていただけるのではないかと思いまして、出願人の側についても、それだけの先行技術調査にコストをかけてやっているところもあるし、そうではなくて出願だけしているところもあるので、この辺については、料金その他等も先ほど言いましたようにお考えいただきたいというのが私の意見でございます。

長岡座長

どうぞ、大西委員お願いします。

大西委員

先ほど牧野先生が言われた、こんなものが特許になるかという関連なんですけれども、私弁理士として仕事を受けるときに、確かにそういうのがあるんです。逆に言いますと、クライアント側から、こういうものが通っているからこれでも通るんじゃないかという相談を結構受けることがあります。そういう場合、自分の感じとしては、こんなものが通るわけがないと思うんですが、それが特許になっている。それに類したもの、類したものとは言わないんですけど、これが通るからこれは通らないんじゃないかという断言はできないわけなんです。これはちょっと難しいからという話はするんですけれども、それでもいいから出してくれと言われた場合、我々代理人としては出願せざるを得ないという状況もあります。だから、出願件数がふえる、審査請求件数がふえるという実情はあるかと思います。
それで、やはり的確な審査はぜひともお願いしたいと思うんですが、ちょっと本論に戻るんですが、審査期間の短縮ということと、本当に特許が早く欲しいということと、審査を早くやってほしいということとは別だと思うんです。特許が本当に欲しい時期が出願してから3年なのか、5年なのか、7年なのか、その辺によってお客さんの要望が違うと思うんです。当然、出願の内容が基本特許といいますか、すごくアイデア段階の出願であれば、出願してから実施時期は遅いでしょうし、もう実用段階になって本当の改良の発明であれば、すぐに特許が欲しい。そういう場合は審査請求して、なるべく早い時期に特許が欲しい。だけど、本当のアイデア段階、将来的にそのアイデアが発展するであろうというものは、審査請求を3年でやって、すぐ欲しいかというと実はそうではない。
そういう事情はいろいろあると思いますので、そこを考えた上で取捨選択する手段、手法があれば、審査請求件数も平滑化できるとかいろいろ手法はあると思うんです。現実の審査請求3年が悪いとかそういうことではないんですけれども、ある程度考える余地はあるんじゃないかと思います。

長岡座長

どうぞ、相澤委員。

相澤委員

どうも今までの日本の制度の議論であると、正確さの議論はよくされるんだけれども、迅速化の重要性についての議論はあまりなされていない気がします。時間がかかっても正しければいいという議論が強い感じがします。時間がかかることもコストを生むということも着目する必要があるだろうと思います。
それから、特許出願の場合に、出願が存在するだけでビジネスの障害になることがあります。出願があるというだけでそれはファイナンスの障害要因になるわけです。そういうことを考えれば、早く権利になるものかならないものか整理してしまうという趣旨で審査請求期間を7年から3年にしたこと自体は間違った政策ではないと思います。ただ、今こういう状況で滞貨が積もっているときに、審査をしてほしいものが審査できないときにどうするかという、緊急対策を考えているところではないかと思います。

長岡座長

ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。どうぞ、安念委員。

安念委員

的確か時間かということなんですが、これも他の条件が同じであれば、多分トレードオフでしょうな。しかし考えてみると、一昔前は裁判も、牧野先生もいらっしゃるところで何だけれども、かかりましたよね。今1年でやっているが、昔は3年ぐらいかかっているのが普通だったと思うんです。じゃあ、3年間やっていると3倍精密にやっているかというとそうじゃなくて、みんなたくさん事件を抱えているから、結局、ああ、あしたこれの期日だったかとか言って、その記録を前の日に読むわけですわ。弁護士も裁判官も。つまり、3年だろうが1年だろうが1月だろうが、かけている時間そのものは、まあ半日なわけですよ。私は審査と裁判と同じだと申し上げる気はないけれども、人間のやることだからそんなに違わないんじゃないかという気がするわけです。つまり、かけている実時間は結局変わらないということだろうと思うんです。短くするということは、かけている時間は同じなら、おしりは切られた方がいいなという、それだけのことでございます。
それから、何度も申しますように、他の条件が同じであればトレードオフだということですから、これは既に特許庁の方から御提案があったように、その条件を変えてしまえばいいわけですから。要するに投入する人的リソースを多くすれば、正確さと迅速が両方もたらされるわけです。ですから、それでいいんじゃないか。
あと的確というのは、これもいろいろあって、裁判と同じで勝ち負けのある世界では、負けた方は必ず審判の文句を言うということがありますので、定量化できないから的確性ということを言うのはおかしいとは私は全然思わないんですが、どう言ったらいいんでしょうか、今申しましたように、時間を短くすると的確性の方は当然に犠牲になるんだぞという意味でおっしゃるならば、それはやはり違う話じゃないかと思います。

長岡座長

それに先行技術調査をちゃんと出願人がするかどうか、これはトレードオフがなくて先行技術調査をちゃんとやれば、早く審査もできるし、的確な権利になるという、必ずしもトレードオフでない施策もあるのではないかと思います。
どうぞ、渡部委員。

渡部委員

いろんな立場があって、私はもともと企業におりましたので、多くの皆さんが、早ければいいってもんじゃないという感覚はその当時はそのとおりだと思っていたわけですが、その後、ベンチャーとか、シコー技研さんというのはベンチャーのあれになるんでしょうか、きょうは欠席されているので、国際競争力とかいろんな観点に加えて、ベンチャーとか資本力、特に特許のマネジメント力が必ずしもないところと大企業との関係において、この迅速化がどういうふうに影響するかということが一つの大きな論点ではないかと思います。
多くの場合、二通りあって、中小企業でも自社実施するケースと、これからふえてくるのはライセンスをするような新しいビジネスの形態と2つあると思うんですが、少なくとも大きな企業の立場で言えば、オプションがたくさんあった方がいろんな手が打てるという意味では、審査期間も含めて、余り早くない方が本当はいいというのがよくわかるところもあります。
それから、先ほどの国際標準にかかわる問題も含めて、いろんなオプションを持っていたい。それに対して特許のマネジメントに関する経営資源をたくさん持っていれば、そこは有利なんですね。そこの部分は必ずしもそんなに制度として反映させることが適切なのかどうかと思います。したがって、先ほど来出ている議論で言えば、コストであるというのが概ね正しければ、そこは適切なというところは非常に重要だと思いますけれども、迅速化という方向で全然間違いない。
ただ問題は、先ほどの先行技術調査は、あるレベルで、どこから出す出願でも質をそろえる方向に何とか持って行かないといけないんです。中小企業の出願は、そういう意味では雑な形で出てくる。それを迅速化していろんな形で同じように扱ってということではちょっと持たないかなということだと思います。そこら辺の施策の内容がどれだけ適切なものになるか。中小企業の話は一方で書いてあるんですけれども、特許料減免とか何とかということでいいかどうかというのは、もともとアブソロビリティーが余りないわけです。そこに対する施策として、料金などだけで誘導できることでもない。ここの場で議論する内容からはずれてしまうのかもしれませんが、少しそこは総合的な形で処理した上で、先行技術調査がきちっと行われるような状態で、早くということがセットで考えられるべきではないかと思います。

長岡座長

江崎委員、お願いします。

江崎委員

今まで権利者の立場で御議論されている場合が多いわけですけれども、私どもの業界で言うと、特許と商品の形がそれほど直接的ではないといいますか、非常に多くの特許がかかわっている。それがすべてにわたって有利であるという状況では決してないわけです。全体で見て有利な場合であったとしても、何らかの特許の問題が出てくるということです。そういう意味では権利になるかならないか非常に不安定な状態で、長くそのままあるというのは、投資するかどうかという判断をするに当たっても大きなリスクを背負うことになります。そういう意味でこのリスクをどれだけ回避できるかという意味では、基本的には迅速である必要があるのではないかと思っております。
日本だけが突出して早くなれと言っているように申し上げているわけではございません。そういう状況があると思います。そういう意味では分割も含めて、逆の側の視点も少し考えておかないと非常に不安定な状態で、サブマリンではありませんけれども、あらぬ特許が急に生まれたということのないような制度にしておかなければ、投資リスクも含めて極めて不安定な状態をもたらすのではないかと考えております。

長岡座長

どうぞ、石田委員。

石田委員

皆さんも発言されていますので、私も。実はこういう会議に出るのは初めてで、余りよく勉強しておりません。私は30年間、特許明細書をつくって、特許にするまでの仕事を主として生業としておりまして、余りこういうことはいたしてないんですけれども、先ほどのお話で「迅速かつ的確」という表現がございまして、ここへお伺いするまでは、迅速が非常に大事なのかなというつもりで参りました。今聞きますと、的確がどうしても大事なんだよという御意見は当然のことでございますが、あるわけです。
これから私は、弁理士という肩書きをはずしてお話させていただきたいと思いますが、マクロに見て、やはり迅速は必要であるということであったら、多分議論されていらっしゃるんでしょうけれども、もし、迅速を優先されるのであれば、特許庁さん、審査官さん、皆さん非常にパーフェクトを目指してやっていらっしゃるんです。もし迅速が必要なら、国の権威を捨てて、もう少し手抜きをされたらどうか。私どもは年間5,000~6,000件ぐらい出願を扱わせていただいておりまして、江崎部長も大事なお客様の一人なんですけれども、ほぼ外国のお客様と日本のお客様が半々でございます。それで70~80名ぐらい明細書を書く人間がおりまして、内部で「スタッフ」と称しております。弁理士も40~50名おります。
その中で、1つの評価の基準として、特許法36条の拒絶理由通知の全部データを全部集計しているんです。それだけではもちろん評価はできません。というのは外国からの出願は既に明細書ができていますので、我々が勝手にいじれません。日本の出願の場合は、発明者の方にインタビューしてそれ相応に直していけるわけですが、外国の出願は勝手に内容をいじるわけにいかないのです。内容を変更するためには予めお話もしなければいけません。それから、既にできていますから勝手に変えられない部分もありますので、そういう苦労もございます。
そういう経験からみて、特許法36条の拒絶理由が少し完璧過ぎるんじゃないかと思うんです。先ほど江崎部長がおっしゃったように、そうすると審査官の方は拒絶査定をなさるわけです。どちらかというと審査官の方は審査基準志向で、一方、審判官の方は発明者志向で処理していただけるわけです。そこで審判のケースもふえてくる。それから、私から言わせていただきますと、明細書の記載はある程度出願人あるいは代理人の責任で、軽度の明細書36条の違反があっても、特許にしてもいいんじゃないかと思うんです。しかも、訴訟になるとか、ライセンスするとか、そんなに数が多いわけではないんです。その辺はそれなりに企業さんも、出願人の方も、代理人も非常に神経を使って書けばいいので。そういう意味で軽度の36条拒絶についてはもう少し審査官の方が、手抜きをしていただいたらいいんじゃないか。御検討されているのかもしれませんが、審査官の方の36条拒絶に要するワークロードはどのぐらいあるのか、36条の拒絶は勿論、非常に大事なのはもちろんございますが、私の目から見たら、これはいいんじゃないかというのが結構あるんです。そういう意味では、後で分割とか補正とか、特許になった後である程度の救いの道をつくっていただくことはいいことだと思うんです。暴論かもしれませんけれども、迅速を最優先にするのであれば、こういうことも言えるのではないかと思います。失礼いたしました。

長岡座長

どうぞ、浅見さん。

浅見委員

私は、先ほどから皆さん「的確な」という言葉を何回も使われるんですけれども、本当にその議論はどこまで突き詰めていいのかなというのは、昔も不適切な審査もあったでしょうし、今でもあるでしょうし、昔から適切に審査しようとしたでしょうし、今でもしようとしているんだと思うんです。多分それほど審査官のマインドとかスキルが急に変わることはないんじゃないかと個人的には思っています。というのは、早く審査しろということを言われて随分時間がたっているわけですが、最近の審査率を見ていれば、実際には拒絶されているものがたくさんふえているわけです。
さっき御批判いただきましたけど、私は電機業界を代表して来ていますけれども、実際はねられている会社は、大手半導体を含めた電機メーカーの合格率の方が低いというのはみんな知っている話でして、それがいろいろ数字を操作しているし、数も束ねているというのもわかっている話なんじゃないか。今回の全体の議論の中で、「迅速に」とおっしゃっているのは、質を下げてでも迅速にということはないというふうにだれもが思っていて、今のものをキープしながら何をやればいいのかというのが大原則になっているんじゃないかと思うので、それ以上の議論は不必要かなと思っております。今御提案いただいたように、質を下げてもいいんじゃないという新しい提案であれば、議論の余地はあるのかなと私は思います。

長岡座長

どうもありがとうございました。
大西さんお願いします。

大西委員

審査の質の問題なんですが、審査官の拒絶理由は、特許を否定するものがなければ特許するという形、拒絶する理由がなければ特許するというスタンスだと思うんですが、その場合に我々は先行技術調査をやるんですが、これに該当するものがないというのを探すのは非常に難しいんです。あるというものが当たれば、それであるということで簡単なんですけれども、そうすると調査する範囲、対象をどこまで広げるか、そこによって審査の迅速化、時間がどれだけかかるかというところが影響されると思います。
例えばヨーロッパ出願すると、調査機関を出してサーチレポート。サーチレポートの中の引例を拒絶理由にどう適用するか、そういう判断を審査官がするというスタンスかなと思うんです。独自でもっと広げた調査をすることもあるかもわかりませんが。日本の特許庁の審査官が今やられているのは、先行技術調査をやった結果だけで絞って、それをその発明に対してどう拒絶理由、進歩性、新規性を適用するかという判断をされているんであれば、その範囲で審査、迅速化がかなり進むんじゃないかと思うんです。
先ほど座長がおっしゃられたように、トレードオフしない状況といいますか、先行技術調査を生かして審査を迅速化するという観点からすると、その調査期間の調査結果をどれだけ信用するか、もしくは信用できるような調査をどこまでやれるようにするか、そこが一つ大きな迅速化のテーマかなと思うんです。

長岡座長

いかがでしょうか。まだ少し時間はありますけれども、特にこの時点で今まで言い残したこととか、あるいは今まで議論されてないことでこういう問題も今後議論すべきだとか、そういった点も含めて何か特段の御発言がありますでしょうか。

竹田委員

先行技術のことが問題になっていますが、我々企業が研究開発のテーマを選ぶときには、当然、先行技術、その分野にどんな特許が出ているかは、調べてから研究開発に入っていくというのが普通なわけです。したがって、審査の途中で拒絶理由に引かれるというのは大体わかっているか、あるいは全然わからないものに引かれたとしたら、調査が悪かったわけで、研究開発をやっている人のミスになるわけです。
そういうふうなやり方をしていれば、そんなに特許庁の方に御迷惑をかけるようなことはないと思うんですが、電機とか機械の方で余り先行技術を調べないで研究開発を進めるということなんですか。どうもその辺が私はよくわからないのです。そんなむだなことをやっていたのでは企業の研究としてもおかしいんじゃないかと思うのです。特許にもならないような、あるいは他社の特許に引っかかるような研究開発を進めて、そういう企業が安泰というのはおかしい。最近は安泰でないところもあるようですけれど、その辺がよくわらないのですが、どうなのですか。(笑声)

竹田委員

当たり前のことをやってないから問題になっているんじゃないですか。

江崎委員

もちろん調査はやっております。これは前提として全件きちっと個別の案件もやっておりますし、それから、研究開発の中で本格的にやるかどうかという前提に立ったときに、他社とどういう状況にあるかということも特許的にも踏まえてちゃんと分析し、その上でやります。ただし、よそがやっているからやらないということではないものもございます。それは薬品と違いまして1対1の関係にあるわけではございませんので、ある部品に使うといったら、それはクロスライセンスもできれば、いろいろな状況があります。
出願全体を見ますとどういうことかというと、出願コストに対してリターンがどれだけ得られるかということだろうと思うんです。知財の部分の投資に対するリターンがどれだけ確保できるか。ですから、すごくむだなことをやればコストの方がずっと高くなるということだろうと思います。

竹田委員

特許にならなくてもいいとして、闇雲に研究開発するということではないのでしょう。

江崎委員

それは全然違います。したがって、我が社の場合はそれなりに利益を得ていると判断しております。

竹田委員

たくさん出願件数を出しているところが、一番合格率が悪いというのはおかしいと思うんです。

菊池委員

一つだけよろしいですか。この1月に700社ぐらいの回答を得られました、調査を実施しました。特許の使い方と研究開発費の関係を調べてみました。700社のデータを並べてみますと、意外と大きな1,000億円を超えるようなR&G規模を持っている企業は、多分先行調査もきちんとやって上手に使われている。しかし、全く何の道もなく使ってませんという特許が大体23%ぐらいある。むろん、企業戦略のリスク管理から見て、稼働率が100%ということはあり得ないんです。
ところが、中堅の企業さんの中に、どうも半分以上使ってない。不思議なのですが、何の意味も持ってないという、不良債権と言った方がいいんでしょうけど、そういうふうなものもあるようなのです。ところが、中小企業さん的な、研究開発業務を主にしているベンチャーさんは、逆に、極めて効率よく運用している。そういうふうな規模間格差みたいなものがある。滞貨解消という議論においても、企業の規模格差を考慮する必要があるのかもしれません。無駄にならない特許を見極めるのは、特許庁の仕事ではありませんが、そのような非効率な企業群の存在を考えることも大切なのかもしれません。

長岡座長

ありがとうございました。
どうぞ。

渡部委員

企業の方の話で言えば、この中に書いてあるんですが、戦略性を評価するための指標の公表、いろんな指標を公表するというのは、反対するとかしないとかではなくて、もう全部やったらいいんじゃないかと思うんです。現実にいろいろなケースがあって、それこそさっきの電機メーカーの中には、ノルマ制をしいていたために、先行技術調査や何かに対するコストを余りかけずに出願を多くやっていて、その結果として米国の特許登録率が落ちて、そういう指標を見ながら改善してきています。そういう意味では特許庁でお持ちのデータがあれば、全部出しちゃいけないということは多分ないと思うので、どんどん出していただければ皆さんのためにもなるんじゃないかと思います。

長岡座長

では、活発な御意見、どうもありがとうございました。本日、各委員からいただきました意見につきましては、事務局で整理し、次回以降の審議に反映していただきたいと思います。

その他

長岡座長

最後になりましたが、今後の日程について事務局の方からお願いします。

高倉調整課長

御議論いただきまして、ありがとうございました。スケジュールの説明に入る前に今後のまとめの方向について一言コメントしておきますと、今日の議事録をもう一度振り返りながら皆さん方の御意見をまとめたいと思っておりますが、そのポイントとしては第1に、いろんな御意見はありましたけど、大多数の方は的確性第一に、それは審査は早い方がいいと。少なくとも待っている時間は短かければ短いほどいいという点の確認はなされたと思います。
2点目として、待っている時間を短くするに一番効率的な対応策は、増員でありサーチ外注の拡充であるという点ではなかったかと思いますので、その辺は具体的にもう少し書いておきます。
それから第3点目として、出願する側、請求する側も、研究開発の段階も含めて先行技術調査を十分にやっていくことが大事であって、そのことが真に必要な権利の早期化にも寄与するという御発言もあったかと思います。秋元委員の方から御示唆がありましたように、そういった企業の先行技術調査にインセンティブを感じるような減免についても検討してほしいということでありましたので、場合によっては今後の検討課題に上げていきたいと思っております。
それから、今の先行技術調査にも関連して、最後に渡部委員の方からデータの公表ということもありましたので、その点についても今後考えていきたいと思っております。
それから、4点目として江崎委員からのコメントだったと思いますが、審査のタイミングについては、もちろん早ければ早い方がいいにしても、ぜひ国際的な平仄を合わせてと。グローバルに同じようなタイミングで権利がとれるのがいいという点もあったと思いますので、この点についても事務局としてテイクノートしておきたいと思っております。
それから、5番目として中小企業対策、これは法改正事項ではないと思うんですが、これもたしか渡部委員からだったと思いますが、中小企業の先行技術調査を支援するために、実は特許庁の方でも来年度予算として1つ組んでいるものがありまして、金額はそれほど大きくはないんですが、例えば中小企業があらかじめ選定された、特許庁の要件に基づいて選定された調査機関に出願段階、請求段階で調査したときには、その費用をサポートするという考え方で中小企業支援ということも考えております。これは副次的な効果として、そういった調査機関が民間にふえていくことも政策効果としてあろうかと思っておりまして、その辺についても検討しておりますので、まとめの中にそういった点も入れるかもしれません。
いずれにしても、まとめの案は、いずれ御意見を伺うために委員に見てもらいたいと思いますので、その際によろしくお願いいたします。
次回の差し当たっての議題なんですが、とりあえず我々としては推進計画、その他の国の計画等の中で指摘された事項のうち、補正の問題をさらに一歩進める、分割の問題、あるいは先行技術調査の問題、弁理士の役割について、もう少し具体的な議論を深めていきたいと思っておりますので、そういった資料を次回の会合までに用意したいと思っております。それ以外にぜひ取り上げるべきだという点があれば、また電話やメールやファックス等で御意見いただければと思っております。
最後に、次回のスケジュールを決めて終わりたいのですが、事前に各委員会から今後の予定を伺っておりまして、委員長の出席が可能であることを大前提に、なるべく大多数の方が出席できる日として選んだところ、9月22日の午後が一番集まりがいいわけでございます。他方、何人かの方は都合が悪いというのは我々としても承知しておりますが、まことに申しわけありませんが、諸般の事情でそういうことを提案させていただきたいと思いますので、よろしゅうございますでしょうか。9月22日、月曜日の午後、2時~4時でございます。

長岡座長

それでは、次回はそういう日程で開催させていただくということで特に御異議ございませんでしょうか。
では、今日は大変活発な議論をいただきましてありがとうございました。これで閉会といたします。

閉会

[更新日 2003年11月7日]

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