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第2回特許戦略計画関連問題ワーキンググループ 議事録

(本記事作成:特許庁総務部総務課制度改正審議室)

  • 日時:平成15年9月22日(月曜日)14時00分~16時00分
  • 場所:特許庁庁舎 庁議室
  • 出席委員:
    長岡座長、後藤委員長、相澤委員、秋元委員、浅見委員、石田委員、江崎委員、大西委員、菊池委員、竹田委員、牧野委員、丸島委員、渡部委員
  • 議題:
    1. 特許審査の迅速化に向けた特許戦略計画関連問題WGの検討課題について
    2. 補正制度の見直しについて
    3. 分割出願制度の見直しについて
    4. その他

1.開会

長岡座長

時間になりましたので、ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会第2回特許戦略計画関連問題ワーキンググループを開催いたします。
本日は御多用中のところを御出席いただきまして、ありがとうございました。
今回は後藤特許制度小委員長にも御出席をいただいております。

後藤特許制度小委員長

(一礼)

長岡座長

議題に入ります前に、前回、御欠席されておりました委員の御紹介を事務局からお願いいたします。

高倉調整課長

御紹介いたします。
キャノン株式会社の顧問であり、かつ弁理士の丸島儀一委員が今回から出席でございますので、御紹介させていただきます。

丸島委員

(一礼)

高倉調整課長

それから、相澤委員は本日御出席の予定ですが、所用により少し遅れております。後半から参加していただく予定であります。
以上です。

長岡座長

どうもありがとうございました。
本日の議題ですけれども、まず事務局から資料について順番に説明をしていただきまして、その後、委員の皆様に御議論をいただくという予定にしております。
最初に事務局の方から資料の御確認をお願いします。

高倉調整課長

資料を確認させていただきます。
お手元、束ねてあると思いますが、資料1、これは本日の議事次第であります。それから資料2は委員のメンバー表であります。資料3は「特許審査の迅速化に向けた特許戦略計画関連問題WGの検討課題」、すなわちこのワーキンググループの今後の検討課題ということであります。資料4は「補正制度の見直しについて」と題するものであります。それから資料5は「分割制度の見直しについて」ということであります。資料5には参考資料がついております。
資料は基本的に以上でありますが、資料5の8ページに挿入するものとして、先ほどお手元に1枚紙で配付した資料がありますが、「日米欧の分割出願の時期的制限に関する要件の比較」、不手際で申しわけございませんでしたが、資料5の一番最後に8ページとしてこれを挿入しておいていただけますでしょうか。正確に言うと一番最後から1つ前のページであります。よろしくお願いいたします。
以上、過不足等がありましたら、事務局の方に合図をしていただければと思います。
以上です。

長岡座長

それでは、資料は大丈夫のようですので、早速議題に入らせていただきたいと思います。

2.特許審査の迅速化に向けた特許戦略計画関連問題WGの検討

長岡座長

最初に、まず事務局の方から資料の御説明をお願いします。

高倉調整課長

お手元の資料の3を使わせていただきますが、この資料はこのワーキンググループでの今後の検討課題というものをまとめたものであります。前回、第1回での議論をし、事務局の方にもさまざまな御意見をいただいたところでありますが、その意味では、再確認ということであります。
この資料を用意した目的は実は2つありまして、1つは今日の議論はやや細かい法律的な議論でありまして、補正及び分割、この議論が全体のこの戦略ワーキンググループの大きな検討課題の中でどう位置付けられるのかという、その見取り図を明らかにしておきたいというのが第1の目的、それから第2に、次回以降、一体どういうことを議論し、どういうふうに取りまとめるのかということについてもある程度見通しを示しておきたい、そういう趣旨でこの紙を用意いたしております。
この紙の冒頭の第1のパラグラフに書いておりますことは、前回も第1回で議論しましたように、審査のクオリティと言いますか、品質を高く維持することを当然の前提とした上で、審査のスピードは、それは速ければ速いほどいい。もちろん、国際的に突出することがない程度においてという御意見もありましたが、いずれにしても、請求があったら、それは速く、迅速に、的確にするべきである、そういう議論があったかと思います。
それを実現するために何をするかと言えば、まず特許庁として体制整備に努める、それからユーザーの方においても、出願請求の適正化等、特許管理の充実に努めていただく必要がある。3番目に弁理士の役割というのも決して小さくない、この三者がそれぞれの自分たちの課題を十分認識し、自覚した上で一歩前に進んでいこうではありませんかというところを総論として書いております。
その上で、ではこの戦略ワーキンググループでどういうことを議論し、どの方向に一歩踏み出していくのかというのをここでは5ないし6項目に取りまとめております。
(1)は、すでに特許庁として動き出していて、前回でもそれなりに説明したつもりではありますが、審査官の増員、特に任期付き任用、来年は100人ということで要求しておりますが、こういった点も含めたマンパワーの増大、あるいはサーチ外注の拡充、これについては、当然サーチ外注の合理化というところも視野に入れて一層拡充を図っていかなければいかん、これはすでにやっておりますという話であります。
(2)番目としては、出願人において、出願及び審査請求の適正化に努めていただきたいと思っておりまして、そのためには先行技術調査の充実、これは法制度面の役割も当然あるでしょうし、同時にそういったサーチを行うサーチ機関の充実という仕組みの問題もあろうかと思います。それから、企業における戦略的な特許管理、いわば量から質への転換というところでもいろいろまだまだするべきことはあるのではないか。それから、特許庁の役割なのかもしれませんが、出願人において審査の請求を適正化するに当たって、特許庁が持っている情報のうち、どのようなものを外部に向かって提供すれば、出願人における戦略的特許管理に資するのか、そういったところもこの項目で議論をしていただきたい。
(3)番目、これが今日の本題の項目でありますが、審査手続の適正化に向けて法律面で見直すところはこれ以上ないのかという議論であります。もちろん、ここでは「制度」と書きましたが、必ずしも立法によらなくても、運用の改正等でできることがあれば、ここでも議論をしていきたいと思っております。今日の議論は具体的には補正の制限によるスピードアップの問題、それから分割の緩和による同じくスピードアップ並びに企業における戦略的特許取得の支援というところで議論をしていきたいと思っております。詳細は後ほど資料4及び5に沿って説明をする予定です。
(4)番目の柱は一言で言うと「ITの積極的導入」、特許庁内における審査及び事務処理部門の合理化とも絡んだ問題ですが、インターネット等を初めとするIT技術をもっともっと導入できる余地はないのか、そういったところを今後議論をし、特許庁においてもすでに議論をしているところでありますが、その議論の進捗状況等を御報告していきたいと思っております。
(5)番目、弁理士の役割ということですが、弁理士の役割にはさまざまあると思いますが、特に特許の迅速化に向けて弁理士は何をなし得るのか、するべきなのかという点についても関係各位から御議論、御提言をいただければいいかと思っております。
最後に、これ以外にも諸々あると思いますので、今後、皆様方からの提案をいただいて、どこかに盛り込んで議論を進めていきたいと思っております。
本日は何を議論するかでありますが、今日は今申し上げた(1)~(6)までの項目のうち、特許庁がすでに取り組みを始めております審査官の増員、サーチ外注の拡充については、別途御報告をすることはあろうかと思いますが、議論は実はそれほど多くないと思っておりますので、これを除く議論を今後進めていこうと思っておりまして、差し当たり、今後、法改正に関連するという観点から、なるべく早めに、かつ時間をかけて議論をしておいた方がいいという観点から、(3)の問題を今日は議論をし、御意見をいただきたいと思っております。
なお、1ページの下に「(3)手続の合理化」と資料はなっておりますが、(3)のワーディングと整合性をとるために、ここは本来「審査手続の適正化」と読んでいただきたいと思っております。ホームページに載せる資料では、そこを訂正することがあるかもしれません。
次のページですが、今日の議論、「補正制度の見直し」と「分割出願の見直し」であります。これは2つ、双方裏腹の関係と言いますか、一体の提案となっておりますので、後ほど一括して御説明をしたいと思っております。要すれば、補正制度については、1回目の拒絶理由通知に対して、特許請求の範囲が、例えばAからBにガラリと変わってしまう。そのときに発明の単一性を失うような大きな変更については、いわば1回目の審査の際に審査官がサーチをしていない部分でありまして、これについては原則としてそういった補正は禁止する、そのかわり、分割等の要件を時期的にも、内容的にも緩和することによって、別出願として対応していただくというところがこの補正制度の見直しであります。これは単にサーチの合理化による審査のスピードアップということだけではなくて、出願人の間で初めから戦略的なクレームを書いている人と、とりあえずはAというクレームを書いてみて、だめだったらBというふうに対応する出願人との間で、やはりもう少し公平性があった方がいいのではないかという観点、並びに国際的に見ても審査官のサーチをしていないところを改めてクレームアップすることはも、ヨーロッパにおいても、アメリカにおいても、日本以上に現行で厳しく制限されておりますので、国際調和の観点、こういった観点から一時審査後の補正の範囲、これが発明の単一性を逸脱するようなものについては、これを制限する方向で提案をしていきたい。同時に、先ほど申し上げましたように、この厳しい補正の制限と、それを補完するという観点も多少ありますが、分割については時期的な緩和を考えておりますということであります。
これは後ほど御説明するように、分割の緩和をすれば、分割出願が単純には増えるのではないかと思われるところもあろうかと思いますが、実は必ずしもそうではないと思っております。それ以上に、出願人が戦略的な特許を取得できるという点で、産業競争力の強化にも資する点があろうかと思っております。この点についてはいずれ詳しく御説明いたします。
本文の2ページに戻りまして、次回の会合に向けまして、先ほどの今後の課題の(6)で申し上げましたように、まだまだこれ以外にもいろいろな提言があろうかと思いますので、これについてはぜひ各委員の方から事務局の方にこれを議論したらどうか、これは優先度が高いのではないかという点があれば、具体的にぜひ出していただきたいと思っております。
後ほど御案内があろうかと思いますが、次回の会合は10月21日を考えておりまして、それを前提に、できれば各種の御意見は10月の10日の前までに事務局の方に届けていただければありがたいと思っております。それを踏まえて、また加えて、事務局で検討しているもの等を加えまして、次回のペーパーを用意していきたいと思っております。
以上であります。

長岡座長

とりあえず、これについて何か質問はございますでしょうか。
どうぞ、秋元委員。

秋元委員

第1回目の会議で、先ほど高倉さんが言われたように、非常に質というもの、あるいは的確というもの、これはもうすでに担保されていて、それは前提だということですが、この案を見ておりますと、検討課題のところにいろいろなサーチのことであるとか、情報、あるいはそれから補正の見直し、これはすべてやはり的確性、あるいは質というものが担保されないといけないわけなので、この目的のところに、前文のところにそれを「維持する」、あるいは「さらに向上する」というような文言をぜひ入れてほしいのですが。

長岡座長

そうですね。わかりました。それは入れたいと思います。
重要なポイントでしたけれども、ほかに何かございますか。

丸島委員

ちょっとよろしいでしょうか。

長岡座長

丸島委員、どうぞ。

丸島委員

今のお話ですが、「質」というのはどこに基準を合わせておっしゃっているのでしょうか。私は国際的なレベルの質だと思っているのですが、日本の質だけ高めようというお話だとすると、ちょっと違うのではないかと思っているのです。だから、方向性も、相互利用とか相互承認とか、相当長い話かもしれませんが、世界特許と、それに向かっていく過程でも、日本だけ質が高いというのはちょっと異常なことだと私は思いますね。国際的なレベルに合わせるということは賛成ですけれども。

秋元委員

少し誤解を与えてしまったかもしれないのですが、少なくとも今のレベルを維持してほしいという意味です。

長岡座長

丸島委員がおっしゃったのは、審査の質についての御意見ですか。

丸島委員

そうです。

秋元委員

逆に、迅速化を重視する余り、現状のレベルから下がってもらっては困るということです。

長岡座長

そうですね。特許制度小委員会でもやはり質を下げていいという議論は全くなかったように思いますし、やはり質を維持していくというのは審査の迅速化を進める上でも前提条件ではないかというふうに私は感じております。
ほかにいかがでしょうか……。
いずれにしても、これは今後、委員各位から御意見をいただいて、御提案をいただいた上で再整理をいたしますので、ぜひ10月10日までにいろいろな角度から法律事項になるもの、ならないものを含めて御提案をいただいたらと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

3.補正制度の見直しについて

長岡座長

では、今日の本題は補正と分割ということでございますので、事務局の方からまず用意していただいた資料の御説明をお願いします。

高倉調整課長

資料4であります。「補正制度の見直しについて」ということですが、いきなり本当に細かい話になってしまうのがやや恐縮と言いますか、心苦しいのですが、重要なポイントだと我々は思っておりますので、15分ほどの時間を使って、概略を説明したいと思っております。
まず、そもそも補正制度とは何なのかと、今日ここにいらっしゃる方すべてが実務家というわけではなく、こういった補正制度にお詳しい方でない方もいらっしゃると思っておりまして、一部の方にとってはやや冗長な御説明かもしれませんが、現在の補正制度がどうなっていて、それが実務的にどのような問題を抱えていて、事務局は今後どのような方向で改正をすることを提案しているのか、この3点について御説明をしたいと思います。
補正制度というのは言うまでもなく、先願主義のもとで、完全明細書を当初から書くということがなかなか難しいという状況のもとでも、一たん出した出願の書類を後に補正し、あるいは訂正する、補充するということを許容したものであります。とはいえ、それを余り安易に認めてしまいますと第三者に対する影響もまた大きいために、時期的、内容的な制限が行われている、逆に言えば一定の制限下で補正は認められておりますということであります。
この補正をどこまで許容し、あるいは厳しくするかというのは、出願人の利益と第三者の利益のバランスで考えていかなければいけない問題なのですが、現在は以下のようになっておりますという説明が(1)以降続いております。
※印の1のところにやや細かい字で書いておりますが、平成5年の補正に関する法改正について若干説明をしておきますと、平成5年の特許法の改正で「新規事項を追加する補正は許容しない」という規定を新設しております。従来は「要旨変更」というコンセプトであったのですが、ニューマターの追加、新規事項の追加はこれを禁止する。この際に、あわせて運用指針として新規事項のいわば定義として、出願当初の明細書から直接的、かつ一義的に導き出されるものという運用をしばらく続けておりました。しかし、これはやや厳しきに傾いているのではないかという御批判や、国際的な調和の観点から、今ここを改めつつありまして、近く新しい運用指針が出される方向であります。その方向性としては、出願当初の明細書において自明な事項という方向で、これについては新しい指針が出される方向であります。
いずれにしても、平成5年の改正の際に補正を余りにも柔軟に認め過ぎますと、審査のたびに特許する範囲がコロリ、コロリと変わってしまうというところから、実は平成5年の段階でもかなり厳しくなっております。これは最後の拒絶理由通知の後には原則としてクレームの削除等、極めて制限的な補正しかできないようになっております。これが平成5年の改正であります。後ほど詳しく申し上げますが、今回の提案は、第1回目の拒絶理由通知の後で審査官のサーチしていないようなものをクレームアップすることを禁止する方向で、どちらかと言えば補正がよりさらに厳しくなる方向での提案であります。これはなぜかというところは追って御説明いたします。
まず、これは平成5年以降の現行の内容的制限、それから時期的な制限を説明している文書でありますが、まず補正の内容につきましてはニューマター、新規事項を追加する補正の禁止であります。それから、2番目として、最後の拒絶理由を通知した後においては、以下の3点に限って補正を認めます。1つは請求項の削除、2番目は特許請求の範囲の限定的な減縮、3番目に誤記の訂正や明瞭でない記載の釈明、これらを目的とするものでなければ、第2回目の拒絶理由通知の後はしてはなりませんというふうにすでに限定をされております。
では、そういった補正をいつできるかの時期的制限ですが、2ページの上の方の絵にも描いておりますように、最初の拒絶理由通知の前までは、これはいつでも補正は可能、ただし、最初の拒絶理由通知が行われた後は、次の3つの期間に限定されているということであります。1つは拒絶理由通知に対する意見書を提出することができる期間内、2番目は拒絶査定になった場合、それに対する審判請求を行う場合に、その請求の日から30日以内。3番目として前置審査、それから拒絶査定に対する審判、またはその審判の確定審決に対する再審における拒絶理由に対する意見書提出期間内、このように3つのタイミングに限定されているということであります。
これが現在なのですが、これをさらに厳しくする方向で何ゆえに提案をするのか、その必要性ですが、要約をこの四角の中に書き込んでおりますが、我が国の現行制度は欧米に比べてもやや広範な補正が今なお認められている。すなわち、一次審査の結果と言いますか、最初の拒絶理由通知の後には、出願当初の詳細な説明に書いてある範囲であれば、割と柔軟なクレームアップができるようになっております。このことによって、再三申し上げておりますように、1回目の審査の際に、審査官がサーチをしなかったところがガラリとクレームアップされて、もう一度そこをやらないといけない。これは初めからきちんとクレームを書いた人に比べると、やや過剰なサービスになっていはしないか。最近の法改正でも請求料は実費見合いのコストという考え方にも転換したこともありまして、見直すタイミングかなというのも1つあります。それから、国際調和の観点からも補正の制度の見直しを図るべきではないかというところであります。
やや具体例に則して詳しく説明してみますと、審査負担ですが、この2ページの下のチャートと言いますか、絵を見ていただきたいのですが、これは詳細な説明に発明Aも発明Bも二通り書かれてあるという前提なのですが、出願当初のクレームには発明Aを特許請求の範囲としている。これに対して審査官は一次審査を行って、引用例を探して拒絶理由通知を通知する。これに対して出願人は詳細な説明の中に書いてあった発明Bというのを持ってきた場合、これは発明の単一性等を踏み越えたような場合には、審査官はもう一度ここで審査の見直しをいわば無料でやらなければいけないということになっているのが現状です。このことによって、審査負担が過度にかかっていはしないかということであります。
2番目は今の点と同じような話なのですが、出願人の取扱いの不公平性の問題であります。絵で御説明しますと、丸1、これは先ほどの2ページの一番下の絵と同じなのですが、拒絶理由通知を初めからBと書かずに、とりあえずAで出してみるというやり方をする出願人、それから丸2で書いておりますように、当初よりクレームを適切に記載する出願人、発明Aについては出願2で、発明Bについては出願3、もちろん発明Aと発明Bが単一性を満たす場合には1つの出願の中でAとBを書くことができるのですが、単一性を満たさないものについては出願人はこのように別に出してくる方も必ずいる。そうすると、丸1のような出願人と丸2の出願人のような方で不平等な扱いが行われるのはいかがなものか、そういう観点からも、丸1に相当するような補正というのは、これを禁止する方がむしろ公平ではないかという考え方であります。
それから4ページに入りますが、国際的な調和、これは参考資料として別紙1をつけておりますが、アメリカにおいてもオフィスアクションが行われた後に、元の特許請求の範囲に記載されていなかった発明、逆に言うと、元の請求の範囲の発明と区別され、かつ独立した発明を新たにクレームアップするようなことは許されていない。ヨーロッパにおいても、単一性を満たさずに、かつサーチ部門でサーチされなかったサブジェクトマターに変更する補正は認められていない。こういうことからも、欧米の補正制度と調和するという観点からも、これを見直すことが適切ではないかということであります。
そこで提案なのですが、3つの目的、すなわち審査の負担軽減、出願人の間の公平性、それから国際調和という観点から、一次審査後の補正においては特許請求の範囲の記載の範囲を当初の内容と大きく変えるような発明、具体的には単一性を満たさないような発明に置き換えることは、これを禁止すべきではないかということであります。
禁止するというのは立法的には拒絶の理由か補正の却下なのでしょうが、これについては今後御意見を伺いながら考えていきたいと思っておりますが、いずれにしてもこういった補正はしてはならないこととするというのが提案でありまして、そのことによってサーチの効率、ひいては審査の効率化につながるのではないかというのが得られる効果の第1であります。
(2)は、もう繰り返しては申し上げませんけれども、出願人の公平性の担保、(3)番目が国際調和、この3つの効果であります。
(4)番目の検討事項は無効理由との関係なのですが、こういう逸脱した補正を行ったときに、これを無効理由とするかどうかなのですが、事務局の問題意識としては、発明の単一性に反する場合の取扱いと同様、手続上の瑕疵ではありますが、本来、別々に出せば特許になったようなものが誤って1つの特許でなったとしても、第三者に対する実害は著しくは大きくないという考え方から、あえて無効理由とまではしなくていいのではないかと考えております。
いずれにしても、3ページの最後の行に書いておりますように、無効理由ではないということもありますので、審査の実務においては必要以上に厳格に運用することもあるまいと事務局としては考えております。
やや駆け足でありますが、補正については以上であります。

3.分割出願制度の見直しについて

高倉調整課長

続けて、事務局の説明が続いて申しわけないのですが、もう少し時間をいただいて、資料5に入ります。
「分割出願制度の見直し」であります。分割というのはその名のとおり、一の出願から発明の内容を取り出して、他の出願とすることであります。
紙には書いておりませんが、そもそも何ゆえに分割出願をするかということについて一言補足説明をしておけば、1つは37条、発明の単一性要件に違反して、このままでは特許を取ることができない、クレームにAとBという互いに単一性に反する発明が書いてあると、37条に違反して特許を取ることができないので、特許を取るためにと言いますか、37条の違反を避けるためにクレームAとBを分割して出すというケースが1つ。もう一つは、別に37条に違反はしない。分割しなくても特許を取ることはできるのだけれども、企業の戦略的な観点から、一たんAということで特許を取りつつある。しかし、よく見るとその中にAのダッシュという発明が別途あって、これは取った方がいいということで、自発的と言いますか、特許戦略の観点から分割をし、別に特許を取るという二通りあるわけでして、統計では分割出願の数は毎年1万件ほどありますが、割と多くは後者の企業の戦略的特許の取得のためになされる分割が多いのではなかろうかと思っています。いずれにしても、現行の制度のもとで分割出願はそれなりによく使われているということであります。
まず現行の制度の説明ですが、どの範囲の発明を抜き出して、分割して新たな出願とすることができるかですが、分割の対象とすることができる発明は、当初の出願の明細書、特許請求の範囲または図面、この中に記載された範囲内のものです。逆に言うと、ニューマターの追加をしたら、これは適法な分割ではありませんということであります。それから、運用上、全く同一の発明となってしまうようなものについては、これは適法の発明とはみなされませんので、特許法39条によってダブルパテント防止ということで、こういった分割については拒絶をされるということに実務上、なっております。
それから、では分割をできるタイミングはいつかということですが、分割と補正はよく似た機能を持つということもありまして、特許法44条の中で、分割は補正ができる期間に限られますということが書かれております。これについては先ほど申し上げましたので、資料5の1ページでは御説明はいたしませんが、繰り返して申し上げますと、現状では補正ができる期間に限って分割をすることができる、このようになっておりますということであります。
分割の効果ですが、2ページですけれども、分割が適法であれば新たな出願はもとの出願のときにしたものとみなされる、いわゆる出願日が遡及するということになっております。これも先ほど申し上げましたが、ニューマターの分割は適法ではない。それから、同一発明については適法ではない。したがって、遡及はしないということになります。後者の場合には39条で拒絶をされる。
分割出願がどのぐらい行われているかですが、最近ですと約1万件に増えております。では、この分割のタイミングはどこで行われているかというのを統計的に調べてみますと、最初の拒絶理由通知を受けたときに、これはいかんということで分割をして頑張るというのが3割ぐらい、それから審査における拒絶理由の応答期間における分割が約5割、それから審判請求時に意外と多くなされていまして、22%、拒絶査定の不服の審判請求をすると同時に、それはそれでがんばりつつ、もう一回分割をして他の特許を取ろうとするというケースがかなりあります。
今回は分割の制限を緩和しようではないかという提案であります。これは先ほどの補正の制限との見合いでもありますが、分割の時期的制限を緩和する方向で考えております。
まずは2ページの(1)からの説明なのですが、現状の問題点をここでは説明しておりますが、拒絶理由通知を受けたら、60日以内に分割をすることができると、こうなっておりますが、この期間内に直ちに分割をするべきか、しないでおくべきかを出願人において判断をするのもなかなか難しいということもありまして、もう少しここの時期的な点については柔軟性があった方がいいのではないかというのが1つであります。
それから、現行では特許査定後については分割ができない。分割は、当然のことながら係属中でありまして、拒絶査定、特許査定が行われるということは、もはや特許庁に係属をしないということになっておりますので、特許査定後は分割ができない。
分割ができないことにより、どのような問題があるのかというのが3ページの絵でございますが、出願1の絵で描いておりますように、一たん特許査定が確定してしまいますと、その段階でああしまった、このようにしておけばよかったとか、あるいは標準化の文章が変わったことによってクレームのワーディングをこうしておけばよかったというところが対応できないという問題がある。
そこで現実に、出願人においてはどのようにしているかというと、これはいわば特許庁の推測でありますので、出願人、弁理士さんにおきまして、これは違うというのであればぜひ教えてほしいのですが、出願2のように、あらかじめ広く、表現はやや語弊があるかもしれませんが、あいまいなクレームを書いておいて、拒絶理由通知をもらって意見補正をしたりして、そこはそこで特許査定をする。そこで再び分割をしていく。このことによって出願2については、いわばむだな審査、出願人から見ればむだなクレーミングを行っているのではないか。逆に言うと、特許査定後の分割を可能とすることによって、広くあいまいなクレームをあえて書かせる負担を負わせることなく、審査官においても、そうした審査をすることがないように変えることができるのではないかというのが(2)の問題意識であります。
(3)番目は拒絶査定後の話なのですが、審判請求後の分割出願は現在でも2,000件近くあるのですが、このうちすべてとは決して思っておりませんが、このうち多くは、とりあえず審判請求をしておいて、そのことによって分割して命をつなぐという使われ方もしているのではなかろうか。そのことの結果として、本来、むだであった審判請求、これについて我々は前置審査をし、3人の合議、審判官による審判の判定にも入っていくわけなのですが、真に必要なものならば当然行いますが、あえて分割機会の確保のために行う審判請求については、これを見直していった方が双方のためになるのではないかという問題意識を持っております。
そこで結論として提案なのですが、今の御説明と順番が逆になっているかもしれませんが、丸1として、特許査定後も一定の限られた短い期間内に出願の分割を可能とする。これは査定後、いわば係属終了後ということなので、今までの法理念をやや踏み越えた問題になるのかもしれませんが、一定のごく限られた期間内に、例えば謄本送達の日から30日以内にとか、特許の設定の登録が行われる前、特許公報の発行が行われる前ぐらいにこれを認めるということは十分あり得るのではないか。
丸2番目として、拒絶査定後も、審判請求をせずとも一定の期間内であれば出願の分割を可能とするという提案はどうかということであります。
それから丸3番目として、拒絶理由に対する意見書提出期間の満了から、特許査定/拒絶査定までの間も出願の分割を可能とする。かなりの期間にわたって分割をする。従来、補正が行われる期間内に限ってというところとやや異なります。異なりますが、あえて今申し上げましたような政策的な理由から、補正の時期と分割の時期については、これを変えるという提案であります。
提案による具体的な効果なのですが、迅速化効果については正直なところ、余り過度に評価し過ぎてはいけないのではないかと思っていまして、多分、補正の制限との一体化のもとでの迅速化効果なのかもしれません。ただ、分割をいつでもできるとしたことによって、分割がかえって増加して審査が大変になるのではないかという御懸念に対しては、これはいわば分割を審査の段階とかで早めにやっていたものを後に持ってくる、後ろ倒しに終わることなので、余り多くは増えないのではないでしょうかというのが事務局の推定でありますが、違うのかもしれません。
仮にこれが違うとしても、丸2番目の産業競争力の強化の観点から、これは導入した方がいいのではないかと思っております。というのは……。

長岡座長

江崎部長、首をかしげておられますけれども。(笑声)

高倉調整課長

いろいろ出願人から伺うところによりますと、クレームが余り速く固まってしまうことによって、特に技術革新の早さに追いつかない、標準化動向に追いつかないがゆえに、パイオニア発明、フロント発明においてはかえって狭い権利を取ってしまって、問題がある場合もある。こういった場合については、一連の戦略的な特許取得を可能とするように、分割については許容してもらった方がいいのではないかという議論は、現実に戦略計画に至る議論や、推進計画に至る議論の中で、弁理士会、ユーザーからも出ていたと思っております。
それから、丸3番目は留意事項なのですが、第三者の監視負担が増えるのではないかという御疑念は当然あろうかと思いますが、しかしここは政策論として特許権者にある程度インセンティブを与える方向でシフトしたらどうかということであります。ただ、余り過度に第三者に負担を与えてはいけないので、査定後の分割については、時期的には相当制限をするというような方向で考えたいと思っております。
6ページですが、これは効果の問題ではなくて、拒絶査定後の分割ですね。説明したことと大分重複しますので簡単に申し上げますが、拒絶査定後の分割については、拒絶査定の公報が出願人に送られますと、30日以内に審判請求が行われ、現行ではこの間に分割ができるということになっておりますが、この縛りを外すということであります。これによって、じゃあ拒絶査定については審判請求をしないでどんどん分割にみんな行ってしまうのではないかという議論は当然あり得ます。あり得ますが、ここでも書いておりますように、1つは出願の分割が行われるのは、これまで審判請求をした上で分割していたケースが中心ですので、新たに増えるということは余りないのではないか。新たに増えるものがあるにしても、申しわけないのですが、出願料金をもう一回、相当な金額、請求料金をいただくということの料金の縛りもありますので、当然出願人においては、コスト見合いで厳選をしてくるのではないかということで、査定後について要件を外したからといって、急激に増えるということはないのではないかと思っております。
それから(3)ですが、拒絶理由通知後、特許査定/拒絶査定までの間の分割ですが、これも時期は広がりますが、今よりは増えることはないのではないか。かえって時期的に緩やかになったことによって、あわてたと言いますか、戦略的にとりあえず広くしておこうというようなクレームはむしろ減るのではないかと思っております。
それから(4)の補正ができる期間との関係については、現行では、これも先ほど申し上げましたが、「補正ができる時期」というふうに限定があるのですが、これについてはこの縛りを外すというのが適当ではないかと思っております。
7ページの最後の(5)に書いておりますものは少し違う話ですが、分割出願につきまして、これはたくさん出る、あるいはたくさん出なくても、現行のような分量においても実は審査官の負担と言いますか、親出願と子出願、またその孫の出願との関係がどのようになっているのか、出願当初の明細書のどこにどのようなワーディングで書かれているかというのは実は非常に大変なところでありまして、これについては審査の負担軽減及び第三者監視負担の軽減の観点から分割を行う出願人において、いわば分割系統図と言いますか、家系図のようなものをぜひ出していただいて、それなりの説明責任を果たしていただけるといいのではないかと思っております。
以上であります。

長岡座長

どうも大変ありがとうございました。
では、これから議論ということで、補正の問題と分割の問題は非常に重なっておりますけれども、しかし議論を整理するために、まず最初に説明のあった順番、つまり補正制度の見直しというところから御意見、あるいは御質問がございましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

丸島委員

よろしいでしょうか。

長岡座長

丸島委員。

丸島委員

前回欠席しましたので、どういう議論が出たのかちょっとよくわかりませんけれども、私は、このワーキンググループの1つの大きな役割としては、今、知財立国に向けて、日本としてどういう発明に特許を与えるのかという基本的なことをやはり相当しっかりしてから議論すべきではないかなと思うのですね。今までどちらかと言うと、事件の効率化というのでしょうか、細切れにして1件処理を速くしようというようなところに主眼を置いた法改正がなされてきたと思うのですね。ところが、改良発明主体の時代はそれでよかったのかもしれませんけれども、これから基本特許が出なければいけない、創造性の高い発明が知財立国のもとであると言われているわけですね。そうすると、創造性の高い基本発明を取れるような環境にあるのだろうか。今までのような仕組みでやっていくと、恐らく発明そのものがすごく質がよくても、手続上、基本特許にしにくい。そういうことがあるのではないかと私は思っているのですね。ですから、今日の補正の制限と、それから分割、それには関連するのですが、それ以外のことも含めて、まず基本特許を取りやすい環境をつくるべきではないかと私は思うのです。
そういう視点から今日の補正のことを少し意見を言わせていただきたいのですが、今まで企業から基本特許が出たという時代はまだしも、これからは大学から、あるいは研究機関から基本特許を期待しているという時代になったときに、最初の基本的な発明を手続的に完璧に出願ができるのだろうか、これに非常に疑問を持つわけです。アメリカのように先発明であり、出願するまでタイミングがとれる国なら別として、日本の場合は先願主義ですから、恐らく論文を書く関係上、出願も速くしなければいかん。そうしたら、出願は、そう完璧な出願を最初はできないだろうと。そういうものに対して補正の制限を厳しくするというのは、まあ、基本特許が取れないということにつながるのではないかと思うのですね。
今回、補正の制限のうち、ちょっと御説明がありましたけれども、内容的な問題については相当厳しく今まで運用されていると思いますので、改正の方向でというか、運用の改善の方向で検討されているという御説明はあったのですけれども、今回はさらに単一性の問題で制限しようと、効率のために制限の方ばかり強調されているのですが、私はむしろ基本的な発明に対しては補正を緩やかにしてあげるというような内容で検討すべきではないのかなと基本的には思っているのですね。
分割の方は後で議論と言いますけれども、分割の方はタイミングを広げてくれたのですけれども、方向性は非常にいいと思っているのですね。ただ、セットで関係しているものですから、本当は議論もセットでさせていただけるとありがたいと思うのですが、補正については、まずそのように基本的には思っております。

長岡座長

わかりました。
ほかにいかがでしょうか。

竹田委員

ちょっと質問でもよろしいですか。

長岡座長

どうぞ、竹田委員、お願いします。

竹田委員

補正に制限を加えて、今までAと書いてあったものに全然違うBが入ってきたら、それを認めないことにしようということだと思うのですけれども、そうすると、出願人としては、どうしても今度は分割がやりやすくなりますし、当然Bを分割をする。そうすると、結局もとの出願と分割出願に変わっただけではないかと思うのですね。同一の審査官が見る場合はまだしも、もし違う審査官が見るということになると、かえって審査の負担が増えるのではないか。まあ、特許庁としては料金が入ってくるというメリットはあるかもしれませんけれども、実質的には余り変わりがないように思うのですが、その辺はどうでしょうか。先ほどの説明では分割出願はそんなに多くないだろうという予想をされていましたけれども、重要な出願なら、出願人としてはやはり分割ということになれば、実質、余り変わらないのではないかと思うのですけれども、いかがですか。

高倉調整課長

実質変わらないとしても、同一出願については同一の審査官が、なおかつ親出願と子出願、同一タイミングで審査をするようにしておりますので、逆に増えもしない、減りもしない、審査負担から言えば。ただ、今回の補正の制限の提案は審査の迅速化だけではなくて、出願人の不公平感の是正、それから国際的な調和、それから迅速化との関連で言えば、出願当初から比較的書きやすい明細書を書いてもらうということをすれば、トータルとして数は増えもしない、減りもしないとしても審査負担の軽減は多分図れるのではないか。それ以上にやはり出願人間の……。

竹田委員

公平感の方が大事だということですか。

高倉調整課長

それも大事かなと。その3つのうちのどれが一番大事かと言われますとなかなかその評価は難しいのかもしれませんけれども、竹田先生がおっしゃるように、確かに1つの出願の中でAを審査してBを審査するのであれば、別々の出願にしても変わらないのではないかという御指摘はそのとおりかもしれませんけれども、そういう制度、補正の制限をすることによって、多分出願人は今後のビヘイビアとして、初めからいいクレームをきちんとように書くように変わってくるのではないかという期待感もありますので、それはそれなりに迅速化に寄与するのかなと。

竹田委員

そうでしょうかね。何かその辺が私は余りすっきりしないのですけれどもね。

長岡座長

ただ、いずれにしても、特許庁が2回サーチをしないといけないというのはコストがかかっているわけで、今までそのコストを負担していないという問題が明らかにあるように思います。したがって、クレームを大幅に変えれた場合に、それに伴って特許庁に発生するコストをユーザーに負担させることは的確な行動を促す観点からすれば非常に合理的だと思います。

竹田委員

そういうケースもあるかもしれませんけれども、明細書に書いてあることからはみ出すわけにはいかないわけですから。

長岡座長

そうですね。

竹田委員

新規事項の追加にならない範囲ですからね。まあ突飛な、AからBというものすごく変わったという場合もあるかもしれないけれども、普通は大幅な変更というのはそんなに多いのでしょうかね。我々の経験では、余りそういうのはないような気がするのですが。

高倉調整課長

統計的に見ますと……。

竹田委員

相当多いのですか。

高倉調整課長

正直言って正確な数字はわかりませんけれども、大ざっぱな数字として毎年特許庁、ファーストアクションは19万件なのですね。そのうち最初の拒絶理由通知が16万件、一発特許査定が3万件、16万件に対しては応答がほとんど返ってきますが、75%応答が返ってきまして、12万件は意見補正が返ってくる。4万件はよく言われるように、全然応答しないで拒絶査定になってしまう、これが4万件あるのですが、この12万件のうちのかなりの部分が当然意見補正と言いますか、クレームを場合によっては変えてやってくるわけでして、2回目の拒絶理由が毎年、毎年3万件ですので、その3万件の全部ではないにしても、かなりのパーセンテージでクレームがガラリと変わってくるものがあるとすれば、それなりの審査負担はかかっている。それが先ほど言った1件の審査請求料金のもとで、審査官が一連の中でそれ処理しなければならないがゆえに、1件、1件の時間が非常にかかっているという点はやはり問題としてあるかと思いますけれども。

丸島委員

ちょっとよろしいでしょうか。

長岡座長

丸島委員、どうぞ。

丸島委員

私もこれは単一性がバリアになって、バリアというか、基準になって、それで補正を認めるか認めないかということになると、単一性がそんなに明確に判断されるのだろうかという疑問を持つのですね。御説明では、AとBというのは全く別の発明のようにされていますけれども、AとAダッシュだって単一性があるかどうかという議論は当然出てくるわけですね。もう一つは、サーチを2回しなければいけないとおっしゃっていますけれども、AをAダッシュに変えても、単一性がある範囲で補正したとしても、果たして1回目のサーチでそこまでカバーしているのでしょうか。そうすると、サーチのカバーの範囲と単一性の問題で、いつも補正を認めるか認めないかという議論になってくる、これは出願人にとっては非常に不便だなという感じはいたしますけれども。御説明のように、はっきりとAとBが全く別の発明で、だれが見ても議論がないというのならまた別ですけれども、単一性というところで区別がそんなに明確につくのだろうかという、これが実際に実務をやるときには非常に煩雑というか、判断に困る要素になってくるのではないかなという気もいたしますけれども。

高倉調整課長

最後の点ですけれども、単一性違反だけを条件とするのではなくて、丸島委員がおっしゃったように、単一性に違反し、加えて審査官が新たなサーチをしなければならないような場合にはというときに限って補正の制限をするというやり方はあろうと思いますけれども。

長岡座長

それはヨーロッパのやり方ですね。

高倉調整課長

ええ。

丸島委員

そのときに分割というのも1つの考えですが、新たにサーチするのに不公平だとおっしゃるけれども、そうしたら、サーチ料を別に払えば問題はないのではないですか、分割という手段をとらなくても。

長岡座長

それはそうですね。

丸島委員

何か細切れにして物を運んでいくという考えよりも、1つのものでまとめて処理していくという考えをとられた方が、内容は先ほど竹田委員がおっしゃったように、審査官だって同じ審査官がみんな見ているわけですから、効率はよくなると思うのですね。細切れにするということは別の方が見る、そのチャンスも多いと思いますし、新たな方はまた初期から読み始めなければならない、これは効率を悪くすると思うのですね。ですから、一見効率がいいように思えるようなことも、かえって効率を悪くすることもあると思いますので。

高倉調整課長

考え方としては、追加サーチ料を払っていただくというのと、再出願してもらうというのは、実質的には似ているような気がしますけれども、逆に追加サーチ料を払わせることによって1の出願の審査が満了しない、手続がかえって、例えば審査官の方から単一性に反しているとか、加えてサーチ範囲が変わるので追加料金を払えとかという期間を、その手続が必要で、なおかつそれを受けてまた料金を払うとか、かえって煩雑になりはしませんか。

丸島委員

そういう点は同じだと思うのですが、ただ、同一審査官が見るという点では、効率は上がるのではないでしょうか。

長岡座長

石田委員、お願いします。

石田委員

全く丸島先生の御意見に賛成でございまして、例えばアメリカは、ちょっとタイミングは違いますけれども、ファイナルの後で、RCEという制度が最近できましたね。これが全く同じようなアイデアで、今、もしクレームをガラッと変えてサーチをしなければいけないという場合には、出願人の公平性を担保する意味もあって、そこで今おっしゃったようにサーチ料を取るのもいいですし、それから出願料を取るのもいいと思うのですよ。ただし、手続はそのまま続きますので、だから今丸島先生の御心配な点は、その辺で解決できるので、何かそんな方法をお考えいただいた方が、私もいいと思いますけれどもね。

高倉調整課長

今御提案のものは、アメリカのRCEの継続審査請求のお話ですね。

石田委員

そうです。ファイナルの後にする方法ですけれど、この方法は。そうすると、手続は続きますので。

江崎委員

ちょっとよろしいですか。

長岡座長

江崎委員、お願いします。

江崎委員

私は基本的に国際的な制度調和というか、これは非常に重要だと思っていまして、それと逸脱した手続を日本だけでつくるというのは、余り賛成ではないわけです。外国で特許を取らなければ国際的には余り役に立たないわけでして、日本だけ取れて海外では取れないという話ではなく、国内外ともきちっと取れるという前提で会社の仕事はしていかなければいけないと思っていますし、そういう手続になることが、将来の世界特許に向けてもいろいろな意味でもメリットが大きいのだろうと思います。
それで、平成5年の改正で非常に補正が厳しくなったという部分があって、その中でこんなAからBにポロッと切り替えられるようなものが実質あるのかなというと、これは初めからクレームアップはしないけれども、別々の発明を取られて、2つのものを合わせて1つで出したというぐらいしか考えられないのではないかというふうに思います。
それで、逆に言うと今までの補正が厳し過ぎるが故に、分割とかいろいろな悪さにというか、そういう形になって逃げている部分もあるのではないかなという気もするのですけれども、それが今、緩和の方向で運用されているというお話でした。それがやはり私は国際的な意味での制度調和で同じような運用がなされればいいのだろうと思うのですが、今、正直申し上げて日本だけは非常に厳しくて、補正はしたくてもできないというような部分が結構出てきていますので、同じ発明の範囲であっても。そういうふうに感じます。
それからもう一つは、1つの発明を広いクレームと同時に幾つかのクレームを今出してきている出願人、いわゆる多項の数がどんどん増えている傾向にあると思うので、クレームはそれなりにしていっているのではないかなと。それに対して、正直申し上げると、アメリカの審査官よりも日本の審査官の方が従属しているクレームに対する調査というのは非常に粗雑でして、それが故にもう一度やらなければいけないということになっていやしないのかなという気もいたしますけれども。

長岡座長

秋元委員、お願いします。

秋元委員

今、いわゆる基本的な特許を取るとか、あるいは強い特許を取る、これは全く賛成でございまして、皆さんの御意見に賛成なのですが、実はライフサイエンスの業界からちょっと言いますと、例えば意見書を提出するときに、実験成績証明書等を添付することがございますが、アメリカの場合は御存じのように、今、制度調和ということを考えれば、一応3ヶ月、それから延長すれば6ヶ月あるのですね。日本の場合は非常に短い2ヶ月というか、意見書提出期限内ということで、本当にいい権利を取ろうと思って実験証明書を出そうと思っても物理的に無理だ、期間的に無理だということがあります。それともう一つは、やはりこれは国内の出願との比較ですが、海外に対してはさらに、当時、翻訳とか、伝達するための目的で期限が非常に延ばされていますね。こういうことで、ある意味では内外差というものがかなり出ておりますので、この意見書の提出期限、あるいはそういう実験証明書でもいいのですが、そういうものを出す期限というものについて、やはり御一考願いたいなと思います。そういうことをした上で海外からの出願と対等な立場でのかなり強い権利、基本的な権利が取れるというふうにも思っております。

長岡座長

最後の点は料金を取ってでもいいのですか。

秋元委員

はい。(笑声)

長岡座長

ほかに補正の点ではいかがでしょうか。

菊池委員

1つよろしいでしょうか。

長岡座長

どうぞ、菊池委員。

菊池委員

最近多くなってきた傾向として、先発明主義的な特許出願への対応、さらに、それに応じた研究開発戦略を重視する。米国動向、国際動向を明確に意識して、国内の特許出願を位置づけるようになった。そういうふうに変わってきたのではないか。だとすると、いわゆる複数の「基準日」に対して、どの程度の情報サーチコストをだれが持つのかという点が明確になりつつあると考えられる。国内出願後、審査請求後、その後の情報サーチコストを発明者が自己負担することは無理難題ではない。そういう追加的な制度を付加するのがいいのではないかという感じがしております。

丸島委員

よろしいでしょうか。

長岡座長

丸島委員。

丸島委員

これは表面的な問題ですけれども、「国際調和」という言葉をよく使われるのですが、今日の資料をいただいても、補正の要件というところだけは日本が一番甘いではないかという表現が出ているのですね。これはここだけ取るとそうなのですが、通して見たときに、出願人がどっちが使いやすいかという、そこをぜひ含めて調和ということをしていただきたいと思うのですが、表面的な1条項だけ見ますと、確かに日本の方が単一性を越えても補正できるということで甘いとおっしゃるかもしれませんけれども、ほかの、特にアメリカはもっと実際に運用面では救済措置がいっぱいありますので、出願人にとっては遙かに使いやすい。

高倉調整課長

例えばどういう点ですか。

丸島委員

後で申し上げようと思ったのですが、やはり先発明の国で出願人にとって一番大事なのは、ニューマターの補正だと思うのです。ニューマターの補正と言うとすごくびっくりされるかもしれませんが、やはり最先端の発明ほど出願時にすべて網羅的に書けるわけがない。これが先発明だったらじっくり完成するまで置いておいてもいいわけですね、最先端の発明であればあるほど。ところが、日本の場合は先願主義ですから、まだ未完成状態で出願せざるを得ない、特に大学の先生は論文の関係もあって、多分速く出願するでしょう。そうすると、未完成、まあ「未完成」という表現も少し語弊がありますけれども、完全に固まる前に出願せざるを得ない。そのときに、後で技術開発が進行して、研究が進行して、明らかになったことを追加しようとしても、これはニューマターで、恐らく補正できないと思うのですね。そういう補正を本当は認めていかないと、これは基本特許になり得ないと思うのです。
私は補正の一部の内容とも関係するかもしれないですが、国内優先をもっと伸ばして、国内優先的なチャンスをできるだけ長くする、公開ギリギリまで適用すべきではないかと、これも1つの補正だと思うのですね、原発明に対する改良発明ですけれども。その後も要旨変更になっても構わないから補正を認めるというぐらいの手当をしないと、基本特許は取れないように思うのですね。これは全出願に対してそういうことを適用するとなると混乱も起こるかもしれませんが、少なくとも最先端の基本特許を取ろうという、知財立国の基本になる特許の存在をもし求めているなら、そういう仕組みも考える必要があるのではないかと私は思いますが。

竹田委員

ちょっといいですか。

長岡座長

どうぞ。

竹田委員

今、丸島さんがおっしゃったのはCIPのことを念頭に置いておられるのだと思うのですけれどもね。

丸島委員

そうです。

竹田委員

特許庁の方で検討されて、CIPを導入できないというふうにお考えになった理由はあるのですか。こんな細かいことをやっているよりは、私はCIPの導入がいいかどうかという議論をした方が、今、件数主義に陥っているのは、結局こういうことだと思うのですね。むしろ中身を充実した大きな特許をバチンと押さえるような出願をやらせるためには、やはりCIP制度の導入を検討することが必要だと思うのですが、一向にそういうことが出てこないところを見ると、いろいろ否定論があったのではないかと思うのですが。

高倉調整課長

いえ……。

竹田委員

そうでもないのですか。

高倉調整課長

ええ、丸島さんが特許庁主催のいろいろな場で御提案していただいたりしておりまして、(笑声)その都度事務局の方で答えていまして、それは絶対にしないというよりは、CIPというのは本来、昔のアメリカのように、公開制度がないもとで極めて有効な制度ですから、アメリカでも最近は部分的な公開制度が導入されたことによって、CIPのかつての役割は低下しているし、日本においては完全な公開制度でありますので、果たしてどの程度CIPが機能するかどうか。もしあるとすれば、国内優先を使ってもらった方がむしろいいのではないか。
ただ、丸島委員は、現行の1年は短いので、これをもっと拡充したらどうかという御提案ではないかと思いますが、これは竹田委員も御案内のとおり、パリ条約優先が1年であることの関係で、国内優先を著しく長くはできないというのと、公報編纂作業との関係で1年6月を超えてやっていくことも事務的に難しい。だから、1つやはりパリ優先の期間が国際条約において変わるのかどうかとか、あとはITを積極的に使うことによって、どこまでギリギリ延ばせるかの議論はあろうかと思いますが、いずれにしても、あるとすれば国内優先の積極的活用ということはあり得ても、CIPというのが果たしてどれだけ機能するのか、もし日本が先発明主義に戻って、戻ってと言うとあれですが、公開制度を撤回することになればCIPは非常に有効に機能すると思うのですが、そこまで行うのが正しい政策論かどうかというのはやや疑問ではないかと、こういうふうに特許庁は答えたことがかつてはあると思いますけれども。

丸島委員

よろしいでしょうか。

長岡座長

どうぞ、丸島委員。

丸島委員

CIPの特許性の問題は公開の問題で制限されるのは理解しておるのですけれども、補正の制限というところではCIPによって補正ができるという点は効果があると思っているのですね。ですから、公開前は特許性の補てんというのでしょうか、完成度を高める、しかも特許性を得られる。公開後は補正の制限の緩和ということに効果があると私は思っているのです。ですから、公開後であってもCIP、まあ正式なCIPではないかもしれませんけれども、ある意味の補正の制限を撤廃するという意味では、非常に効果があるのではないのかと思っています。

長岡座長

どうぞ、相澤委員。

相澤委員


1つ、補正制度の見直しに関して、昨年、補正の見直しをやりました。手続問題について、朝令暮改のように制度をいじるということは、いかがなものかなと思います。つまり、毎年のように制度が変わると、混乱が生じるおそれがあるので、慎重に考えるべきものと思います。

大西委員

1つだけよろしいですか。

長岡座長

どうぞ、大西委員。

大西委員

外国出願の明細書を書く上での観点から見ますと、国際調和というところで、アメリカに出す場合とヨーロッパに出す場合とで調和する方向が全然違うのですね。我々、例えば日本で出した出願を、2件を1件に併合して出すとかあるのですけれども、その場合、ヨーロッパの場合は単一性が厳しく要求されますので、従来技術そのもののような広いクレームを1つ書くということもやります。ただ、その場合にUSで同じことをやるかと言うと、USの場合は単一性はもう少し緩いですから別のことをするとか、だからこの国際調和と言っても、どっちを向いているかで大分違うと思いますし、アメリカの場合はもともと先発明、それから継続出願、今言ったCIPとかRCEとかいろいろ制度があるので、そこのところを見た上で補正制限を考えないと、国際調和、調和と言ってもちょっと違うのではないかと思うのですが。

渡部委員

いいですか。

長岡座長

渡部委員、お願いします。

渡部委員

これは迅速化という観点で出てくる話題なので違う方法のことはなかなか言いにくいということはあるのですけれども、先ほども丸島委員が大学のことを随分配慮していただいてありがたいと思うのですが、国際調和的な観点でどうかということは、これも先発明とか違いますので、そこのところは一応置いておけば、補正という手段にオプションを持つのと、分割という手段にオプションを持つということを比べれば、基本発明をパイオニア発明にしていくときに、やはり補正の方はもうガチガチにしてまって、分割にオプションを持てばと言っても、やはりそれは論理的には分割ですから、やはり補正の方の要件に非常に、あそこで補正ができなかったからということが多くなるということはあり得るのではないかと。現実に、大きな案件で扱っているときに随分行ったり来たりやっていますが、分割だけでいい発明になったかどうかというのはちょっと自信がないということは少し……。まあ、迅速化という概念で行きますとやはり絞らないといけないし、サーチを繰り返すということもあると思うのですが、お金は幾ら取ってもいいと思うのです。むしろサーチ料金に関して複数回必要だったら、もう幾ら取ってもらっても、本当に重要なものというのはそんなに多くはないと思いますので、そういう考え方もあるのではないかなと思いました。

長岡座長

江崎委員。

江崎委員

私は日本だけで基本特許が取れて、アメリカでもヨーロッパでも取れないということになると、日本で物をつくらずに海外でつくって売ればいいわけで、日本の企業にとっては余り得なことではないと思うのです。そういう意味で、世界中で取れるのに日本だけ取れないというような手続が硬直的だとすれば、それはやはり同じようにしていく必要があるのだろうと思います。逆に、日本だけが緩くて、日本でしか取れない特許が存在してくるようですと、日本のマーケットそのものが小さいわけですし、日本の企業の輸出力の方が高いわけですので、その全体のバランスを考えると、これは明らかに損になるのではないかという気がします。だから、これは大きな制度改正の一環として考えると、やはり国際産業力強化という視点があるだろうと思いますので、その範囲の中で考えておかなければいけない。そういう意味での制度調和が要るのだろうと思います。

丸島委員

よろしいでしょうか。

長岡座長

どうぞ。

丸島委員

迅速化ということについて、これは審査請求されたら、審査を速くするという意味なのですね。出願したら速く特許にしましょうという意味ではないのですね。「迅速化」というのはどういう意味なのですか。

長岡座長

審査請求ですね。

高倉調整課長

そうです。審査請求があれば……。

丸島委員

審査請求があれば、そこから速くしましょうと。

高倉調整課長

ええ、権利を取りたいという意思表示があった以上、なるべく速やかに結論を出しましょうと。

丸島委員

そのとき、こういうこともお考えいただきたいと思うのですが、今、制度改正全般にやられているので結果がどうなるかわかりませんが、出願としたらグローバルで、対応出願で、一番価値のある権利をちゃんと取りたいと思うのですね。価値のない権利を速く取るために価値のある権利に損害を与えるようなやり方は出願人は絶対にしないと思うのです、グローバルに見ましてね。現在は、アメリカの特許が一番価値があると見ているわけです。アメリカの特許の出願を阻害するような出願をほかの国でやらないはずなのです。なぜかと言ったら、御承知のようにアメリカの場合は先行技術提示の義務がありますね。ほかの国で、しかも審査が厳しい国で拒絶理由がいっぱい出ると、そのたびにアメリカに持っていかなければならないのです。そうすると、アメリカの審査そのものが停滞してしまうのですね。こういう阻害するようなことを出願人は多分選ばないと思うのですね。ですから、まずアメリカの権利を確定させましょう。その後、その他の国で取って、そこから出てきた先行技術は、あとまとめて提出すればいい、それでエグザミネーションをやってもらえば1回で済んでしまう。この方がはるかに手続的には、経済効果の高い特許を取る意味で効率的なのですね。ですから、効率という意味は、個々の案件を処分する時間ではなくて、出願人から見て一番いい権利を取る、それを見て効率と言っていただかないと、ちょっと方向を間違うのではないかと私は思いますけれども。

長岡座長

いろいろ補正の議論を超える議論をたくさんいただきましたけれども、時間も来ましたので、次に分割の方で議論をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

江崎委員

ちょっと質問ですけれども、よろしいですか。

長岡座長

はい。

江崎委員

分割出願がデータ的に見ますと件数が非常に増えてきておりまして、ここ何年かで倍ぐらいになっているということですが、これは、平成5年の法改正の補正の制限が余り厳しくなったのが何か影響があるのでしょうか。あるいは、もう少し言いますと、補正ではできないけれども、分割になったらできるということがあるのでしょうか。(笑声)

高倉調整課長

むしろ出願人側に、どのような戦略で活用をし始めているのかお伺いしたいところなのですけれども、確かに増えていますね。

石田委員

よろしいですか。

長岡座長

どうぞ。

石田委員

知財立国ということですが、私は外国のお客様の話を主にしてしまって申しわけございませんけれども、分割についてはまさにそのとおりでございまして、今、この4ページに「提案」とございますね。この提案の1番と2番が非常に助かるのでございます。これがないために分割の数が増えているのだろうと思うのです。私などもお客様に対していろいろな意見をリコメンドするときに、例えば審査要求をしたら、場合によったらもう分割できないかもしれないですね。それで、今、丸島先生がおっしゃったように、審査請求の期間が速くなりますと、各国の審査結果が出る前に日本で審査請求をしなればいけない。こういう事態が起こるわけですね。そうすると、もうこれで分割できませんよ、このまま特許になったらおしまいですよ。念のために、闘う材料をつくるために分割する必要があるかもしれませんと、ちょっと特許庁さんには申し訳ないのですが、そんなリコメンドも実はするわけですね。それがまず1つは増えるだろうと思います。
それから2番目も実はそうでございまして、いつでも分割できると、本当は非常に楽なのですね。さっきおっしゃったように、拒絶査定されたときに、その後、何しろもう一つ、審判請求で闘って勝ちたいわけです、特許を取りたいわけです。けれども、広い権利を取ろうとすればそれだけ危険性があるわけです。そうすると、また、大変変な話ですけれども、予備として分割出願を出しておくということが必要になってくるわけですね。先ほどのように拒絶査定、あるいは特許査定から、一定期間分割ができるようになりますと、法律とは反しますけれども、そういう意味の分割は非常に減るだろうと思います。私も若干、そんなリコメンドをしなくて済むかなと思っております。それがどんな数かわかりませんけれども、外国からの出願から言えばそういう事態があると思うのですね。

高倉調整課長

我々事務局の提案の背景もそういう理解だったのですけれども。

石田委員

そういう意味で、この1番、2番は非常にいい案だなと思って今、私は拝見していたのです。

高倉調整課長

それとRCEの提案が石田先生からありましたけれども、あの場合も多分、アメリカは最後の拒絶査定の直前ですからね。

石田委員

最後です、そうですね。

高倉調整課長

そうすると、特許査定後のRCEというのはなかなか難しいので……。

石田委員

そうですね。先ほど私が申し上げたのは、丸島先生がおっしゃったように、審査にせっかく審査官の方がかかっていただいていて、それをそのまま続けたいという意味で申し上げたのですね。分割しますと、どうしても分かれてしまいますからね。そういう意味で先ほど実は申し上げたので。

高倉調整課長

これは竹田先生に対する質問で答えたと思うのですが、分割出願については親と子、なるべく同一審査官が……。

石田委員

ええ、まあ、ただどうしてもタイミングがずれますね。

高倉調整課長

同じタイミングにするようになるべく努めていますが、審査の効率化のためにも。

石田委員

わかりました。それは運用上、そうしていただければ非常によろしいですけれども。

丸島委員

よろしいでしょうか。

長岡座長

丸島委員。

丸島委員

分割についてはタイミングを自由にしていただくのは大賛成ですけれども、(笑声)ただこれを本当に活用しようとしたら、分割の要件は別発明というのが条件になっていますね。同一発明が分割で許されるのか、許されないのかということは、建前上は許されないわけですね。ところが、現実に欲しいのは同一発明の分割が欲しいのですね。表現を極端に申し上げているので何だとおっしゃるかもしれませんが、要するに同一かどうかわからない判断をされるのが実際に多いのですね。ですから、私はダブルパテントでも分割要件を認めるべきだと、これが企業にとっては非常にありがたいことであるし、活用する、いい権利を取る方法だと思うのですね。アメリカの場合でもダブルパテントはちゃんと認めているわけですね、ターミナルディスクレーマーをつけて、ダブルパテントは幾らでも認めている。日本の場合はもうあらかじめ存続期間が決まっているわけですから、自動的にターミナルディスクレーマーがかかっているわけですね。同じ出願人がダブルパテントを取って、権利者ではない方に迷惑をかけるかと言ったら、余りかからないのですよ。
なぜこれがあった方がいいかと言うと、先ほど標準化の問題もありましたけれども、1つは企業の自分の実施に対して速く権利を取りたい、そういうクレームを取りますね。一方、同じ発明でも、標準化で少し技術が変わりましたと。それに合わせたクレームを取れませんと、本当の意味の標準化を保護することはできない。それを厳密に考えると、前に取ったクレームと、標準化のあれしたものと別発明なのかという疑問が絶えず出てくると思うのです。それが別発明ではないと言われたら、分割できないのですね。これだけのタイミングを許していただけるというのなら、これを活用するためには、明確な分割要件が別発明などというものはやめていただいて、同じ発明でもいいではないかと、そういう気持ちでやっていただいた方が本当に活用できると思うのですね。これはぜひお願いしたいと思うのです。産業競争力を高めるという戦略的な権利取得というのは、まさにここにかかっていると思うのです。

高倉調整課長

その点についてはむしろ皆さんの御意見を伺いたいところですが。

長岡座長

どうぞ。

大西委員

私もちょうど同じことを言おうとしたのですが、内容的な条件はやはり緩和すべきだと思っています。まるきり同一発明というところが問題かはわからないのですけれども、今、クレームを書く上で内容的に同一でも別クレームに書いてもいいということになっていますし、1つの出願の中で同一発明を別の方向から見た観点でクレームをアップするというのは許されているというのが1つ。
それからもう一つ、アメリカなどで単一性の要件違反で、デビジョナルのリクワイアメントが出されたときとか、選択要求を出されたというときは、残りに関しては、エレクションの場合は違うのですけれども、もしそれが出されたということは、反対側の、残りの方は自動的に分割できるということになっていますね。それが日本の特許庁の場合、単一性違反だと言われて、本当に残りを分割したら、今度は逆にダブルパテントだと言われる可能性もあるわけなのですね。そういうところは明確にして、絶対にできるのだとかいうことも認めていいのではないかと思うのです。
もう一つちょっとよろしいですか。ちょっと話は違うのですけれども、補正の時期的な要件と、分割の時期的な要件を一致させていないのですけれども、これは何か理由があるのですか。というのは、分割したときに、もとの出願を補正したいというのは、どうしてもできるような気がするのですけれども。

高倉調整課長

今回、分割の時期を緩和したら、それに伴って補正の時期も緩和ですか。

大西委員

ええ、もとの出願をまるきり補正しないで、分割出願だけ出願できるというのは、ちょっと矛盾があるような気がするのですけれども。

高倉調整課長

そこはやはり補正の制限についての先般の法改正の考え方のとおり、やはり審査の効率化、迅速化に重点を置いて、補正についてはやや厳しくしていますので、これを再び緩める、つまり分割と同じようにいつでもできるという選択肢はなかなか難しいと思っていまして。

大西委員

ただ、元の出願から分割するわけですから、元の出願からはその分割の分を取るという作業的なところが、まあケース・バイ・ケースなのですけれども、どうしても元の出願も補正したいというようなケースもあるのではないかと思うのですけれども。

長岡座長

具体的にはどんな場合でしょうか。

大西委員

ちょっと具体的にと言われると困るのですけれども。

秋元委員

今の問題に関連して、まさに私、賛成なのですが、実際上、私どもはどうやっているかと言うと、先ほどどなたかが言われましたが、権利を速く確定したいという意見と、やはり後々広く強くとりたいという両方がありまして、特に権利を速く確定したいというのは、開発品目に関わりますと、私どもの場合には、5年間の期間延長があるのですね。そうしますと、最近では開発が非常に速くなりますので、どうしても5年間享受しようと思いますと、開発品を分割してピンポイントで出して、それを速く権利化しないと5年間取れないということが出てきます。そうすると、残りの部分については、やはり他者抑制ということも含めて、権利をどうしても持っておきたいということで両方出す形になるわけですね。だから、そういう意味では実質上はダブルパテントかどうかわかりませんが、そういう手段を取っているということで、こういう趣旨には私は賛成です。特に、そういう期間延長ということが入ってきますと、どうしてもそういう問題が出てくるということでございます。

長岡座長

どうぞ、浅見委員。

浅見委員

さっきからの分割の件なのですけれども、皆さんおっしゃっていることは非常によくわかるのですが、一方でやはり怖いなと思う面もあります。実際に特許管理会社のような方は、「とりあえず分割してしまって寝かせておけばいい。それで世の中の動向と、特許のクレームの書き方を変えることによって、いかにも前の特許だったように見せることができればそれでいい」と堂々とおっしゃる方も相当ふえていています。ですから、こういう制度をよくして、本当の発明家のモチベーションを高めるということと、それにつけ込む人たちを助長するということは結構裏腹のところがあるわけです。もちろんそれは最終的に特許として認めるかどうかというときの審査官の目が肥えていれば大丈夫なのかもしれませんけれども、現実にはなかなかそうではない特許が成立したなどという例も見たり聞いたりしています。ですから結構慎重に議論する必要があるかと。私、基本的な話としては非常に理解できるし、理想論としてはそうだという気もするのですけれども、危ない面があるというところは皆さん、どんなふうにお考えなのかなというのもちょっと感じてしまいます。

長岡座長

今の点はいかがでしょうか。

江崎委員

おっしゃるとおりだと思います。それで、やはり元に書いてある明細書に本来意図もしていない、あるいは気づきもしない部分を後で補正が可能、あるいは分割が可能になっているというのは、これはリスクが非常に大きいわけです。ですから、それは何とか除外していく方向がいいのだろうと思うのです。ただ、合法的だということで、積極的に使われている方がおられますけれども、(笑声)あれは大きな問題だと思いますので、やはりそこまでやれない制度であってほしいなと思います。

浅見委員

おっしゃるとおりですね。

丸島委員

よろしいでしょうか。

長岡座長

どうぞ。

丸島委員

私は基本的に、そういう人が出るからと、本来の人の便利性をなくすというのは反対なのです。むしろそういう人の権利を活用するときの段階で何か別にすればいいのではないかと思っているのですね、手法の問題として。悪人がいるから制度全体をそれに合わせてギクシャクするようにするというのは、だれも利用できなくなってしまうと思うのですね。ですから、別の視点で手を打っていただく方にしていただきたいなと私は思いますけれども。

浅見委員

私も基本的には丸島委員のおっしゃっていることはわかりますし、それには賛成なのですけれども、逆の側面とあわせて考えておかなければいけないということです。実際に事件が起こると、編集部などにたくさん投書も寄せられてきます。これを助長されるようだと、特許を書く方もやる気を失うみたいな話はやはり多いです。だからといって、こういう制度をなくせばいいということではなく、どう併存させていくかということだとは思うのですが。

長岡座長

明細書がどの程度きちんと書いてあるかどうかとか、そういった問題とも関連すると思うのですけれども。
どうぞ、牧野委員。

牧野委員

当初明細書に記載された範囲内で一番いい権利を戦略的に取るというための改正だろうと思うのですね。そういう意味だと、先ほど丸島委員がおっしゃったように、実質的に同一発明かどうかわからないようなものも分割で取らせる道があるというのは非常にいいだろうと思います。ただ、悪用する人が出たときにそれにどう対処するかという点ですけれども、今は分割要件違反の案件についても、侵害裁判所で判断するわけで、それが無効理由に仮に直結するものであれば、これはまずその段階でも是正できる。だから、悪用した結果、おかしな特許を取って、それを振り回すようなことは防止できるだろうとは思います。ただ、やはり制度の構築ですから、そういう悪用するような人が出ないような最低限の手当というのは必要だろうと思います。今ここで御提案になっている範囲では、私は分割も訂正の方もいいだろうと思っております。
以上です。

高倉調整課長

最後の点を確認したいのですけれども、むしろ無効理由としておいた方が濫用防止になっていいのではないかという御意見でしょうか。

牧野委員

補正の方は無効理由としないという点は、これでやむを得ないのかなと思っております。

長岡座長

菊池委員。

菊池委員

最後の系統図の使い方をもう少し何か工夫してというのは不可能なのでしょうか。

高倉調整課長

系統図は出願人に出していただきたいと。

菊池委員

自主的に提出いただく程度の範囲なのですけれども、もう少し積極的に今のようなことを踏まえていくと、この系統図の使われ方というものを逆に特許庁側が何らかの形で、積極的に別途考えていく必要があるのでは。

高倉調整課長

審査に使うだけではなくて。

菊池委員

ええ、使うだけではなくて。その不正防止も含めた上で。

高倉調整課長

なるほど、むしろ説明責任を強化する。

菊池委員

説明責任を強化するという意味です。

石田委員

済みません。

長岡座長

どうぞ。

石田委員

ちょっと質問で申しわけないのですけれども、先ほどの分割の4ページの御提案の中の丸3ですね。これはどういうことを意図しておられるのですか。

高倉調整課長

これはいつでも……。

石田委員

1番と2番ができれば、3番は余り必要ないような気がしないでもないのですが。意見書提出から次のアクションまで、そんなに時間がかかるものではないのですね。何か具体的なことがおありになれば、いつでも、非常に自由とおっしゃるのであればそれでも結構でございますけれども、実務上は余り必要ないような気もしますけれどもね。

高倉調整課長

期間が短いとかという御不満とかというのはなかったのですか、拒絶理由、提出期間が、あるいは満了の日を超えて査定まで……。

石田委員

最近はもう3ヶ月とかそのぐらいで次のアクションが出てまいりますね、半年とかで。余り待つようなこともないような気がしますけれどもね。済みません、何か理由があればと思って、ちょっとお聞きしたかったのですが。

高倉調整課長

これも時間的になるべく多くのタイミングにしていただくのがいいのかなということでございますが。

石田委員

ありがとうございます。

高倉調整課長

事務局の方から2点質問してもよろしいですか。

長岡座長

どうぞ。

高倉調整課長

次回までに用意する紙の関係で2点ほど確認しておきたいのですけれども、ダブルパテント、本人であればいいじゃないかというのは、それは立法的に手当するのか、すなわち、39条に穴をあけるようなことまで想定しているのか、それとも同一であってはならないというのはそのとおりであるとしても、運用で余り厳しく見ないようにしたらいいのではないか、特に丸島委員はどちらを念頭に置いて……。

丸島委員

それは裁判で争われるようだったら意味はないのですから、審査官の効率性と、審査官が判断するのは、効率性をやはり落とすわけですね。ですから、どっちでもいいやというのだったら速いと思うのですね。それが運用となりますと、じゃあ司法に行ったら違うよと言われたらこれもまたおかしい。それを両方満足するようなことが私はいいのではないかと思ったのです。要は、法律改正が必要ならした方がいいのではないかということなのですけれども、それがお互いの効率を高めるのではないか。つまらないところで判断は余りしない方がいいと思うのですね。判断するのは大事なところで頭を使う、そういうのが一番効率的ではないかと思うのですが。

長岡座長

ダブルパテントは基本的にプライオリティの問題というふうに考えると、余り分割でダブルパテントはだめだというのは、何かわからないような気もするわけですけれども、どうなのでしょうか。

丸島委員

結局、理屈上ではおかしいことを申し上げているのかもしれないのですが、世の中は運用上で、大体特許性だって議論は分かれているところですね。進歩性があるかないかと、これで議論しているわけですから、単一性があるかないか、同一発明かどうかというのはみんな議論の対象になるわけです。それを一々議論して、それで分割できるかできないかということを議論すること自体が、すごく私はロスだと思っているのですね。認めたって何の弊害もないではないですかと。

高倉調整課長

第三者からの弊害……。

丸島委員

同一人が持っているのですから、それでターミナルディスクレーマーもかかっているわけですから、それから戦略上から行ったら、狭いクレームを先に取って、広いクレームは後から取るということだってあるのですね。そういうものを今の制度で認めてくれるのでしょうか。アメリカはそれが可能なのですね。それでこそ戦略性の高い権利が取れているので、やはり競争力を高めるということであれば、日本の仕組みがそういうものを取れるというのを考えていただいた方がいいのではないかと思うのですが。無茶なことを申し上げているようですけれども、決してそうではないと私は思っているのです。本当に企業側というか、権利者側が望む内容だろうと思っているのです。
いつも出るのは第三者が困るではないかというお話なのですが、特許の話をしたら第三者は必ず反対のことを言うのですが、どっちにウェートを持って全体の仕組みを舵取りしていただくかというのは、私は問題だと思うのです。ですから、第三者が困るからと言って制度をいじくるのは、むしろ今はプロパテントで、知財立国で行きましょうという前提から考えれば、やはり権利者の立場に重点を置いて考えるのがしかるべきではないかなと私は思います。

竹田委員

今の制度では無理でしょう。原出願に2つ発明があることを前提に分割があるのだから、法律改正をしなければだめでしょう。あなたの議論で行ったら、キルビー特許はつぶれないはずですものね。無理ですよ、今の制度を変えなければ。

丸島委員

キルビー特許はつぶれない……。

竹田委員

分割出願が原出願と同一なのはだめだと言われたわけでしょうから。

丸島委員

そういう意味ですか。

長岡座長

もう一つあるとおっしゃいましたか。

高倉調整課長

はい。これは本当によくわからないのですが、何人かの方から日本では基本特許が取りにくいとか、基本特許についてはむしろ補正を緩やかにというのがあったのですけれども、審査する段階、あるいは出願人の側から見てもそうだと思うのですが、どれが基本特許かというのは事前にはなかなかわからないと思うのですが、そういったものについて補正を特に緩やかにというのは、それは選択肢としてなかなか難しいし、そもそも日本で基本特許が取りにくくてアメリカで取りやすいというのは、素朴にどういうことなのかというのをお伺いしたいのですが、特に江崎委員。(笑声)

江崎委員

日本でだけが困ったということではなく、日本は国内優先が非常に緩やかにできておりますので、非常に広く取れております。かえってヨーロッパの方が厳しくて、これは大変な思いをしました。アメリカも素直に通りました。そういう意味では、私は日本が難しいとは全然思っていなくて、かえってヨーロッパの方が難しかったのかなという感じはいたしました。

長岡座長

さっき最初に日本で補正が著しく厳し過ぎるとおっしゃいましたね。

江崎委員

はい。

長岡座長

その点とはどういう関係になるのでしょうか。

江崎委員

非常に広いクレームで取れたわけですけれども、それに対していい先行資料がなかったので行ったのです。もしそれがだめな場合に、次の段階に補正をかけようと思ったときに、その中間段階がなかなか取れずに、明細書の記載で制限を受けて、非常に小さいものになってしまうという、そういうそこの次のランクが取れにくいというのが確かに日本ではあるかなと思います。私は決して日本が取りにくいとは思っていません。

石田委員

江崎さんのところはそうなのですよね。(笑声)

江崎委員

逆に、そういうものは初めからきちんと書きますし、それだけの特許ではなくて、それ以外の、次々に改良したものも、多くの特許でカバーしていくのだろうと、思いますが。

丸島委員

ちょっとよろしいでしょうか。

長岡座長

お願いします。

丸島委員

技術分野によって基本発明というのも大分違うと思うのです。私が一番はっきりしない分野というのは、やはり物理の分野だと思うのですね。ITの分野もそうかもしれませんが、化学とか、失礼ですけれども、間違っていたらごめんなさい、医薬の分野ですと基本特許、基本発明というのも結構最初からはっきり書ける分野だと思っているのです。これは私も社内で化学分野というのは結構はっきり書きましたから、それはわかるのですね。ところが、物理的な問題、原理原則からまだはっきりわからないような発明ですね。これは書こうにも書けない。多分、先生はよく御存じだと思うのですけれども、こういうのはやはり補正がなかったら救われないと思うのですね。ですから、同じ基本発明でも、技術分野によって多少違うのではないかと思いますけれども、そういう意味では本当に基本発明を基本特許として守るためには、相当苦労するということはあると思うのですね。

長岡座長

わかりました。
いろいろ御意見をいただきましたけれども、全体、補正の話も含めて、何か特段のコメントはございますか。
相澤委員。

相澤委員

「発明」という概念そのものがあいまいです。例えば2条1項の「発明」と3項の「発明」とは意味が違います。発明の単一性とか、分割要件としての発明の個数とか、あいまいです。ですから、そういうところをどのように整理するかという手続上の整理の問題だと思います。実質的には同じ発明の広狭のクレームを分割するというようなことがあります。例えばガイドラインが変わって、遡及すると、分割して残した広いクレームが生きることが想定されます。同じ対象を書くとダブルパテントになりますけれども、例えば「化」分野で行くと、蛋白質のクレームと中間生成物のクレームは、効力が重なり合うとしても物が違うので、タブルパテントにはなりません。発明と個数というのがあいまいなのではないかなと思います。

長岡座長

どうもありがとうございました。
江崎委員、どうぞ。

江崎委員

一番最初に高倉課長から、資料3で(1)から(6)の全体の俯瞰図の中における今回の議論だということで御説明があったと思うのですが、その視点がぜひないと、個別の最適政策を求めると、全体の最適がなくなってしまうような気がするのです。それで、必ずしもだから厳しくしろという意味ではないのですけれども、出願、あるいは審査請求の適正化というところについては、特許料金体系の見直しも含めて大きく変えられたわけですね。そうすると、その前提になるのはやはり調査をきちっと充実して、それに対するインセンティブを与えましょう、あるいは調査をきちっとやった結果として、きっとクレームはきちっとするでしょうし、明細書もきちっとなるでしょう。それを推奨しようというスタンスがありますね。

高倉調整課長

はい。

江崎委員

その中で、補正、あるいは分割について、そういうこととはまた全く別の切り口でそれを許容するような仕組みが大きくできてしまうと、どっちへ向かっているのですかという話にもなるような気もするのです。ですから、確かにプロパテント、あるいは権利者有利にするためには、余りにも制限的な項目は緩和していく必要があるし、国際的な制度調和という面で日本だけ異常なものは、やはりこれは緩和していく必要があるというふうに思います。
ただ、前提を飛ばしてしまって、その部分だけが何でもできるという形は、何か全体としての方向性をあいまいにするような気がするので、そこをぜひ御検討いただければと思います。

長岡座長

ほかにいかがでしょうか。

竹田委員

ちょっとよろしいですか。

長岡座長

どうぞ。

竹田委員

補正が問題になるケースは2つあると思うのですが、1つがいわゆる新規事項の問題ですが、これは検討されて、今度審査基準を改正されるということなので結構だと思うのですけれども、もう一つは最後の拒絶理由をもらってからの限定的減縮の問題があると思うのですね。これを実務をやっている人に聞くと非常に厳し過ぎる。具体的に化学の例で言うと、例えばAとBとを反応させてCをつくるというクレームがあった場合に、明細書の中に80度以上が好ましいと書いてあるときに、80度以上というのをクレームに入れると、これは限定的縮減の要件を満たさないということになっているのですね、今の事例では。これが今度の審査基準の改定でも、こちらの方の点については触れられていないので、ですからそういう訂正をやって拒絶査定をもらった場合には、審判請求するよりしょうがないわけですね。審判請求して、分割をして補正をする。ですから分割は補正が厳しすぎるために使われているわけで、この辺も見直していただければと思うのですが。

長岡座長

ほかにいかがでしょうか……。
では、本日は非常に活発な御議論をありがとうございました。
まだ少し時間はありますけれども、特にこの時点で何か御発言がございませんようでしたら、10日までに御意見をいただきまして、今日の御議論とともに次回の審議に反映させていただきたいと思います。

4.その他

長岡座長

最後に事務局の方から、今後のスケジュールについてお願いいたします。

高倉調整課長

今日御議論いただきまして、ありがとうございました。これをベースにもう一度事務局の紙をつくり直してみたいと思います。
特に、最後に相澤先生から御指摘のあった「発明」のとらえ方というのは本当に難しい、しかし重要な問題でありますので、もう一度我々も理論武装して議論ができるようにしたいと思っております。
それから、江崎委員から御指摘もありましたように、全体の中での本提案の位置付けというところをもう一回再整理をしておこうと思っております。あくまで的確性の維持を前提として迅速、的確な処理、促進というところで考えておりますが、先行技術調査の義務づけ等とも整合性が取れるような理念にしていきたいと思っております。
最後に竹田委員から御指摘があったニューマターの問題とか補正の問題については、今後単一性も含めてさまざまなガイドラインが準備され、またパブコメ等に付されておりますので、進捗状況について可能な範囲で御報告をしていきたいと思っております。
ただ、限られた時間でありますので、それ自身でどこまで議論ができるのか正直言って自信がないところもありますが、重要な点については進捗状況、関連部署と協力をして御報告できるようにしておきたいと思っております。
冒頭申し上げましたように、ぜひさまざまなインプットをいただきたいと思っておりますので、事務局の方にメールで10月10日ぐらいまでにさらなるコメントをいただければと思っております。
その先の予定について、まだ決定ではないのですが、考えておる日程がありますので御紹介しておきますと、10月21日火曜日午前中、これは次回、第3回であります。その先の4回については、なるべく皆さんの出席が多いところということで選んでおりますが、11月18日火曜日の午前10時、これが第4回、次が12月16日午前10時、これが第5回と考えております。

長岡座長

よろしいでしょうか……。
では、以上をもちまして、第2回特許戦略計画関連問題ワーキンググループを閉会させていただきます。
活発な御意見、どうもありがとうございました。

5.閉会

[更新日 2003年11月7日]

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