長岡座長
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では、時間になりましたので、始めたいと思います。ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会第6回の特許戦略ワーキンググループを開催いたします。
本日は、ご多用中のところご出席いただき、どうもありがとうございました。
議題に入ります前に、前回までご欠席されていました委員のご紹介を事務局からお願いいたします。
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高倉調整課長
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ご紹介いたします。株式会社シコー技研代表取締役社長であられます白木学委員でございます。
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白木委員
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一言。まことに申しわけありません。私は中国に行っていて、その間出席したいと思っていながらその都度その都度ありまして、特に年末非常に忙しかったので来られなくて、これからできる限り出たいと思っております。よろしくお願いします。
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長岡座長
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よろしくお願いいたします。
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長岡座長
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秋元委員がご欠席ですが、かわりに長井さんが来ていらっしゃいます。
本日の議題ですが、議題ごとに事務局から資料について説明をしていただきまして、その後ご議論をいただきたいと思います。
では、最初に事務局から資料のご確認をお願いします。
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高倉調整課長
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資料のご説明をいたします。資料の1は議事次第、資料の2は委員名簿でございます。きょうの議題は2つありまして、「中間取りまとめ(案)について」と、後ほどご説明いたしますが、「特許発明の円滑な使用に係る諸問題について」。
この議題に沿って資料を改めてご紹介しますと、「中間取りまとめ(案)」につきましての資料としましては資料3、これは先月末に皆さんのご了解をいただいた「取りまとめ(案)」そのものでございます。
それから資料の4、これは約3週間ほど中間取りまとめについてパブリックコメントを募集いたしましたが、寄せられたパブリックコメントを取りまとめたものでございます。パブリックコメントそのもののデータも添付資料として資料4の中に入っているはずでございます。
もう1つの議題「特許発明の円滑な使用に係る諸問題について」につきまして資料の5及び資料の6を用意しております。これに関連しまして参考資料の1、参考資料の2を添付しておりますので、ご確認いただきたいと思います。過不足等ありましたらご連絡ください。
それから、お手元にパンフレットで「中小企業、ベンチャー企業の皆様へ」というものを用意しております。これはこのワーキンググループや実用新案のワーキンググループでも出ておりましたが、特許庁はせっかくいいことをやってるんだから、大いにPRし、それを一覧できるような簡便なパンフレットにしたらどうかというご意見をいただきまして、早速対応いたしました。料金減免、先行技術調査にかかわる支援、審査が遅い等の状況に対応するための早期審査、中小企業やベンチャーのための早期審査、こういったものを取りまとめておりますので、ご参考にしていただきたく、配付しました。
以上であります。
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長岡座長
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ありがとうございました。
では、きょうは2つ議題がありますけれども、最初の議題から始めたいと思います。「世界最高レベルの迅速・的確な特許審査の実現に向けて」ということでパブリックコメントを募集しておりましたけれども、これについて事務局から資料の説明をお願いいたします。
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高倉調整課長
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資料3それ自体の説明は省きますが、これに寄せられたパブリックコメントを取りまとめたものが資料の4であります。余り多くコメントはありませんでしたが、寄せられたコメント、おおむね中間取りまとめの案に対して賛成であるというトーンでございました。幾つか提案もいただいております。
資料4に沿って簡単にご説明いたしますが、第4章の指定調査機関の関連につきましては、2つの団体よりコメントがあります。1つは特許の調査会社であります株式会社パトリス、もう1つは技術情報サービス懇談会知的財産支援事業分科会という団体でありまして、これは主として大手の企業の子会社であります特許の調査会社、約25社だったと思いますが、その連合組織であります。性格的には任意団体ではないかと思いますが、その懇談会の知的財産支援に関する分科会がありまして、そこから提案をいただいております。
パトリスから寄せられたコメントは、特に公益法人要件の撤廃は賛成であるということ、それから今後指定調査機関の立ち上げを図るに当たっては、例えば守秘義務についてどういう要件が求められるのか、そういったことを具体的に定め、オープンにし、市場参入をより簡便にするようにしていただきたいということであります。
それから、技術情報サービス懇談会からは、おおむね賛成としつつも、加えて出願前の先行技術調査を実施する調査機関の認定ということも考えてみたらどうかという提案がございます。それから、100%子会社の調査会社が特定あるいは指定調査機関になる道を閉ざすべきではないのではないかというご意見もいただいております。
それから、第4章第1節の弁理士の役割につきましては、これは個人の方からでありますが、価値評価における弁理士の役割ということに対する期待が寄せられております。
それから、中小企業への支援ということで、弁理士とは別にということだと思いますが、中小企業の知財管理をアドバイスするような人材の育成、例えば大手企業の知財管理部門である一定の経験を積んだ方たちを活用するような方策も考えて、中小企業のための知財管理の充実に国としても取り組んだらどうかというような提案をいただいております。
次のページであります。インフラ整備に関しましては、例えばということなのですが、財団法人知的財産研究所の機能を充実し、研修とか関連する書籍の収集、閲覧等についてさらに力を入れたらどうかという提案であります。
それから、情報インフラにつきましては、他の出願の拒絶理由に引用された公報、いわゆる被引用公報、こういったものをよく引用される頻度の度合いで整理するというような形でデータベースを整備したらどうかという提案をいただいております。
そのほか、この戦略ワーキンググループの検討範囲ではなかったのですが、その他の部分に書いております。仮出願の導入についてとか、この仮出願に関連して、審査をする前にマーケットでその特許に関心のあるお客さんが自分の出願に関心をもってもらうような仕組みをすることによって、この方がいう実質上の市場審査といいますか、マーケットによる審査といったようなことについても検討したらどうかという提案。
それから、職務発明についても若干の提案をいただいております。ここで概要として挙げた部分は、会社を退職した後にその特許が経済的な価値を生んだ場合には、退職した職員に通知をし、しかるべき報酬を届ける。通知を怠った場合には罰則規定も設けることも含めて等々幾つかの提案がありましたので、あわせて掲げておきました。
以上のとおりでありますが、ここで議論していただきたいのは、こういったコメントに基づいて改めて中間取りまとめを変更する必要があるかどうかであります。事務局としましては、おおむね特定指定調査機関については賛成を得ていること、それから出願前の先行技術調査については審査に直接寄与する部分ではありませんで、料金の減免とは必ずしもならないのではないかという議論は既に終わったところでありますので、この点については改めてこれを取り込むのはいかがなものかなと思っております。
それから、弁理士の役割、特に価値評価、中小企業対策等々については、それなりに本文の方にも入っているところかなと思っております。
それから、知財権の研修機関として、あるいは図書館としての機能の強化という点については、既にその方向で動いているところであります。
それから、被引用公報につきましては、さまざまなデータベースの会社の方でもそういったサービスができる状況にはなっているところでありますので、これもよろしいかなと。
それから、仮出願におきましては時々こういった話も出ますが、先願主義のもとではきちんとした明細書を一応出してもらう。特に大学、中小における出願作成負担の問題につきましては、大学知財本部の問題、あるいは中小企業に対する支援の問題ということで対応していくのが筋ではないかという議論が今まで大体出されておりますので、そういったところかなと事務局の方では思っております。こういった点を含めてご議論いただければと思っております。
以上です。
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長岡座長
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どうもありがとうございました。それでは、寄せられましたパブリックコメントを踏まえまして、報告書についてご意見、ご質問等ございましたらお願いいたします。
今すぐはあれかもしれませんので、また後でもしお気づきになりましたら、その後もう一度ご発言を求めたいと思います。ただ、特段なければ中間取りまとめ(案)を中間取りまとめとして確定したいと思っておりますが、ご異議はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
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長岡座長
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では、そういうことで本中間取りまとめ(案)を中間取りまとめとして確定したいと思います。ありがとうございました。
では次、「特許発明の円滑な使用に係る諸問題について」に移りたいと思います。最初に事務局からご説明お願いいたします。
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南技術調査課長
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それでは、次の議題につきましては私からご説明をさせていただきます。技術調査課の南です。
お手元の資料5をご参照いただきたいと思います。途中関係する条文が出てきますが、参考資料1に国内の条文、参考資料2に外国の条文が別についておりますので、必要に応じてご参照いただければと思います。
まず、資料5の冒頭の「検討の背景」については、前回簡単に触れさせていただきましたけれども、改めてご説明させていただきたいと思います。特に産業界から、上流技術と呼ばれる汎用性の高い代替性の低い技術、具体的には特にバイオ関係の遺伝子関連技術やリサーチツール、こういった技術についての特許権は非常に強い広範な権利になる可能性が高く、その分野における後続の研究開発、あるいはその技術の下流に位置する研究開発に大きな影響を及ぼす可能性があるという懸念が表明されております。こういった技術について、基本的にはライセンスを受けて実施をすればいいわけですが、場合によっては特許権者がライセンス拒絶をしたり、あるいは非常に高額なロイヤリティを要求することによって、結果としてその権利を使用することができなくて、技術の進歩や産業の発展が阻害されるのではないかという指摘がございます。
それから、最近の産学官連携の動きからしまして、これは特に大学についてですが、企業や大学・公的研究機関での研究活動において、どのような実施が特許権侵害になるか権利関係が明確化されないと安心して研究活動ができない、そういった懸念も表明されております。
こういった背景から、昨年の7月にまとめられました知的財産推進計画において、研究活動における他者の特許発明の使用の円滑化を図るために、特許法69条1項に規定されております特許権の効力が及ばない「試験又は研究」の考え方を整理して、その対応可能性について、2003年度中に検討することが求められております。
2ページがその該当する抜粋部分でございます。1のところは創造分野の推進計画ということで、特に大学を中心に書いております。
3章の活用分野、ここにつきましては先ほどご説明した最初の部分でございますけれども、特に上流技術に関しての円滑な特許権の利用について検討するようにということが書かれております。
それでは、3ページから、まず我が国における「試験・研究」の例外に関する規定の変遷、判例等ご紹介したいと思います。
まず、日本の特許法での「試験・研究」の例外に関する規定の沿革でございますけれども、まず明治42年特許法におきまして、「研究又ハ試驗ノ爲ニスル特許發明ノ應用」、それから、それ「ニ依リ製作シタル物」については特許権の効力は及ばないという規定が導入されております。これが最初でございます。
続きまして、大正10年の法改正によりまして、「研究又ハ試驗ノ爲ニスル特許發明ノ實施」には特許権の効力は及ばないという規定に修正をされております。
昭和34年の法改正によりまして、まず特許権の効力の及ぶ範囲が68条に規定されておりますが、特許権の効力の及ぶ範囲は、「業として」の特許権の実施に限定するというような改正が行われる一方で、続く69条において、この「試験・研究」の規定は大正10年法とほぼ同様の規定で踏襲されたという経緯がございます。
この69条1項の意義でございますけれども、特許法の目的からいたしまして、技術の進歩を目的とする「試験・研究」についてまで特許権の効力を及ぼすとかえって技術の進歩や産業の発展を阻害してしまうということから、特許権の効力が及ばない範囲として「試験又は研究」のためにする実施を規定し、特許権者とその公益との調和を図ったということではないかと考えられております。
先ほどの昭和34年の法改正で68条に特許権の効力の範囲を「業として」の実施に限定するという改正が行われましたが、そういった関係から69条1項は、業として「試験又は研究」のためにする実施について適用されると解するのが妥当ではないかと思っております。
次のページに今ご説明した内容を図1で図示しておりますけれども、まず特許権の実施で左側の斜線が業としての実施、右側がそれ以外です。したがって、右側の白抜きの部分はそもそも特許権の効力が及ばない範囲、ここの部分は実施しても侵害とならないということでございます。この斜線の中で、69条1項で「試験又は研究」は効力が及ばないということで、塗りつぶした部分が権利の範囲から抜かれているということでございます。
そうしますと、まずこの外枠の業としての実施の「業として」というのはどういう意味であるかということでございます。この「業として」の実施について、その具体的内容は、法文上明らかではございません。また、判例の蓄積もないので、専ら学説にゆだねられているところでございますが、多数説では、この「業として」の実施というのは産業とは関係のない実施、すなわち個人的あるいは家庭的な実施以外のものを指す、逆に言いますと、右側の白抜きの部分は個人的あるいは家庭的な実施ということが一般的な通説、多数説でございます。
ここでいう産業とは、営利を目的とするものや事業の目的の範囲内という限定を特に受けることなく、事業に関連あるものすべてが含まれるというのが一般的な解釈でございます。したがいまして、営利事業ではない公共事業とか医療業、弁護士業、こういった事業の中でなされる実施も「業として」の実施に含まれると解されております。
こういった解釈に従えば、大学における「試験・研究」も、この「業として」の実施に当たる可能性が高いということでございます。そのような中でこの黒い部分、「試験又は研究」とされる部分というのは何かというのは次でございます。
すべての「試験・研究」について、特許権の効力の例外となるわけではないというのが一般的でございまして、そこで、69条1項でいう「試験又は研究」の射程が問題となります。最初に69条1項の範囲について述べた判例が1987年の除草剤事件、これは農薬登録を得るために薬効の試験を行った事件でございます。5ページでございますけれども、そのような試験は技術の進歩を目的とするものではなくて、専ら除草剤の販売を目的とするものであるから、69条1項にいう「試験又は研究」には当たらないという判決が出ております。
しかし、この69条1項の「試験又は研究」の一般的な解釈については余り判例がないということで、基本的には学説によるところが非常に大きいということでございます。多数説では、この「試験又は研究」の範囲を「試験・研究」の対象と目的に区分して考えられております。まず、対象につきましては、特許発明それ自体、その発明自体を「試験・研究」の対象とするものに限定し、さらに「試験・研究」の目的についても、「技術の進歩」を目的とするものに限定されると解釈されております。この目的としては3つのカテゴリーがございます。
まずは特許性調査。これは新規性とか進歩性の有無を調査して、無効審判なり異議申し立てに役立てるための「試験・研究」です。
それから機能調査。これは明細書に書いてあるとおり機能を発揮するかどうか、そういったものを調査するための調査です。
それから、改良・発展を目的とする試験。具体的にはその特許発明の対象について、より改良するための研究、場合によってはその対象を研究する過程で出た迂回発明を生み出すような研究、こういったものはここの「試験・研究」の例外に当たるというのが通説でございます。
したがって、こういった解釈に立ちますと、技術の進歩に何ら関係のない市場テストの目的で行う実施は、この例外には当たらないということでございます。
また、スクリーニング方法などのリサーチツール特許の実施についても、その特許発明それ自体を研究対象とする場合を除いて、69条1項の適用は否定されるであろうと解されるということでございます。
また、この69条1項については、営利又は非営利によって他者の特許権の実施に区別を設けているわけではございませんので、この考え方は企業にも大学にも同じように適用されると解することができます。したがって、特許権の効力が及ぶ場合には、基本的にはその権利者から実施許諾、ライセンスを受ける必要があるということがいえます。
次のページですが、そのような中で、後発医薬品の製造承認に必要な臨床試験のために行う「試験・研究」がこの69条1項の「試験又は研究」の例外に当たるかどうかというのが過去かなり争われておりました。
1976年にいわゆる物質特許が導入されまして、権利期間が約20年ございますから、1990年代になりますと、その権利が切れるのを見越して、いわゆるジェネリック医薬品の研究開発が行われ始めておりまして、その製造承認を得るために、元の特許権者の権利期間中に臨床試験を行うという事例が出てきたわけでございます。これが権利侵害になるのか、あるいは69条1項の「試験又は研究」の例外に該当するのかということが争われた事件が多数出ておりました。
そのような中で、まず のところでございますけれども、正直いってその判例が該当するものと該当しないものというのがかなり分かれていたというところでございます。
8ページにそのような事件の主な判決があります。右側に星取表ではないですが、×というのが該当しない、権利侵害だ、○というのが権利侵害に当たらないというような事例でございます。過去は権利侵害に当たらないとされていたものが多かったわけですが、近年は○が非常に増えてきておりました。これは1つに、1988年に医薬特許の存続期間の延長制度が導入されたことが契機になっていると考えられます。
一方、「試験・研究」の例外の該当性については学説も二分されていましたが、例外に当たらないと考える大きな理由としては、そのような臨床試験を権利侵害ではないとしてしまうと実質的に特許権の存続期間を延長してしまうというような問題点、そのような臨床試験というのは技術の進歩に寄与しないというような理由から該当しないという説がとられておりました。
そのような中で、平成11年にこの臨床試験についての争いについて最高裁判決が出たわけでございます。この最高裁判決では、3行目でございますけれども、 として、仮に特許権存続期間に後発医薬品の製造承認に必要な臨床試験が行えないとすると、実質的に特許権の存続期間満了後も第三者が当該発明を自由に利用できなくなる。これは後発医薬品がなかなか出てこないので、第三者がそういった医薬品を利用できなくなるという趣旨でございます。
は、特許権者は特許期間中、経済的利益はもう既に確保されているわけですから、これを例外に当たらないとすると、権利期間満了後についても実質的に経済的な利益を得ることになる。こういった理由から結論的には69条1項の「試験又は研究」に該当するということで特許侵害ではないという判断が出たものでございます。
なお、この最高裁判決ですけれども、基本は薬事法による規制を前提としておりまして、その射程としては、それ以外の厚生労働大臣の指定する化粧品、医療用具や農薬取締法で登録を必要としている農薬についても及ぶと解釈されております。
次のページにわたっては、この判決の一部抜粋と概要が書いてありますが、時間の関係で説明は割愛させていただきます。
続きまして、11ページの(4)でございます。これは「大学等における試験・研究をめぐる紛争事例」でございます。これは後ほどご説明いたしますが、最近米国でDuke大学事件というのがございまして、それのCAFC判決が出まして、その判決の内容に対しての懸念が表明されているところでございます。
日本の大学における「試験・研究」の例外に係る争いは1件だけ、平成13年の浜松医大のケースがございます。これは実験対象のマウスを作ることが権利侵害に当たるとして、米国のベンチャー企業から国立大学及び製薬企業が訴えられたわけですが、結果的にはそのマウス自体が特許権の技術的範囲に属さないということで、最終的な判決の中で「試験又は研究」の例外に当たるかどうかの判断は行われませんでした。したがって、この事件は、大学の研究活動が「試験又は研究」に該当するかどうかが争点となった最初の事件でありますが、その点については判示されなかったわけでございます。
それでは諸外国、各国似たような条文をもっていたり考え方をとっている国がございますけれども、どうなっているかというのを引き続きご紹介させていただきます。
まず米国でございますけれども、日本と異なり、「試験的使用の例外」に関する一般的な明文規定はございません。基本的には判例法の社会でございまして、その「試験的使用の例外」に関する考え方というのは、1813年のWhittemore対Cutter事件判決が契機であると考えられております。この判決の中で、この判事が「哲学的な試験や特許発明の効果を確認するための特許発明品を製造する行為を罰することは立法者の意図ではない。こういったものは権利範囲から除外される」というようなことを述べられております。
引き続き、その次のSawin対Guuild事件についても、同じ判事でございますけれども、同様の内容が述べられております。こういった考え方は踏襲をされているわけですけれども、非常に限定的に運用されてきているというところでございます。
例えば、近年の事例であるRocheとBolarの事件及びEmbrex対Service Eng'g事件等においても、CAFCが「試験的使用の例外」の範囲というのは極めて狭いのだということを述べております。
まず、RocheとBolarの事件については、後発医薬品の臨床試験についての事件でございますが、この事件では権利侵害に当たるとされたものでございます。その後、この事件を契機に、米国の特許法ではこういった後発医薬品の製造承認申請のための「試験・研究」については対象から除外するという、通称Bolar条項と呼ばれる条項が導入されております。
13ページの判例がEmbrexとService Eng'gの事件でございますけれども、これについても「試験的使用の例外」の法理を「娯楽のため、単なる好奇心を満たすため又は厳密に哲学的真理追求のため」に限ってこの例外を適用するのだと判示されております。この事件につきましては、商業目的で行われた行為なので権利侵害になるという判例が出ております。
が後発医薬品の臨床試験のケースですが、先ほど述べましたように1984年に先ほどの事件が契機になりまして、薬価競争及び特許期間回復法が制定をされております。通称Bolar条項というのがこの特許法に追加をされておりまして、1990年のEli Lilly
―対Medtronic事件においてこのBolar条項の射程が争われたわけでございますけれども、Bolar条項の射程は医薬品だけではなくて医療機器にも適用されるという最高裁判決が出ております。
2003年にIntegraとMerckの事件がございまして、このCAFC判決の中でも、FDAに対する開発及び情報の提供と合理的に関連した使用のみということで、非常に限定的に解釈されるのだという判示がなされております。今申しましたBolar条項というのは、その下の特許法の271条というところでございます。
そのページの下になりますが、 の大学における紛争ということで、これは2002年に起こりましたMadey対Duke大学の事件でございます。これは15ページに概要をまとめさせていただいておりますが、枠の下に「事件概要」というのがあります。Madey教授がDuke大学において自らの有する特許発明を用いた装置を、Madey教授が大学を移籍した後もDuke大学が引き続きその特許発明を使っていたということで、Madey教授がDuke大学を権利侵害で訴えたというケースでございます。
結果的にMadey教授が勝ったわけでございますが、その判決の中で、この「試験的使用の例外」の法理については、当該行為に商業的目的があるかは関係なく、その行為が組織の正当な業務の遂行のためであって、先ほどの「娯楽のため、単なる好奇心を満たすため、又は厳密に哲学的な探究のため」とはいえない場合には、この「試験的使用の例外」は適用されないと判断されました。
欧州に移りまして、まずイギリスでございます。イギリスは1977年に特許法を改正しまして、60条に私的にかつ非商業的目的でなされる場合、あるいはその特許発明の主題に関し試験目的でなされる場合には特許権は及ばないというような規定を導入しております。
これは参考資料の2をちょっとみていただくと、最後の一枚紙の一番下に「共同体特許条約」、通称CPC、これは未発行ですが、この条文に各国――イギリス、ドイツ、フランスは倣って、この「試験的使用の例外」に関する条文を導入しており、各国ほぼ同様の条文となっています。これに基づいてイギリスは1977年に特許法改正をしたということでございます。
この条文に基づいて、1985年にMonsanto対Staufferの事件が起きまして裁判所で判断がされたわけです。枠の中にありますが、未知の何ものかを発見若しくは仮説を検証する目的で行われる試験、特定の条件で作用することが知られているものが異なる条件下で作用するかどうかを見出す目的で行われる試験は、「試験的使用の例外」に該当するということです。
規制当局の第三者に対して、製造者が主張するように製品が機能するかどうかを実証するために行われる試験は、試験目的のためになされる行為には該当しないという判断がなされております。そういう意味で、この後段の部分は日本の考え方よりもかなり厳しい考え方ではないかと思います。いわゆる承認申請のようなものは、ここではだめだと解釈されております。
一方、 の後発医薬品の臨床試験の例外に係る事件が17ページにございます。AuchinclossとVeterinary Suppliesという企業の争いでございますけれども、これは単に規制当局からの承認を得ることを目的とした試験は、その60条に規定された「試験的使用の例外」には該当しないで特許侵害になるという判断がなされた。
なお、イギリスにおいて大学の「試験・研究」に関する事例というのは、我々が調査したところみつかりませんでした。
続きましてドイツでございます。ドイツにつきましても、中段にございますが、1981年にやはりこのCPCに対応するような特許法の改正が行われております。第11条(a)と(b)という条項でございますが、私的にかつ非商業的目的でなされる行為、特許発明の主題に関し試験目的でなされる行為については、特許権の効力の対象外という規定でございます。
この1981年の特許法改正前におきましては、非常に厳しい判断がなされております。これは の前段でございます。Ethofumesate事件最高裁判決というのがございますが、この判決の中で特許存続期間終了後に競合品を市場に投入するために行う試験は許容されないというような判断が出ておりました。この1981年法に基づく事件におきましては、後ほどのClinical TestsI、IIという事件がございまして、いずれの事件も後発医薬品の製造承認に係る臨床試験についての争いですが、それらについて特許権の効力が及ばないという判断がなされております。
その2つの事件は19ページに挙げさせていただいておりますが、いずれも「試験的使用の例外」に当たらないという例示でございます。
内容の説明は割愛させていただきまして20ページでございますけれども、ドイツにおきましても大学における事例はみつかりませんでした。
フランスも1978年に同様の改正が行われておりまして、これはBabolatとRedeyeの事件ですが、この判決の中で発明の技術的特性の確認や発明の範囲の評価、技術的進歩を目的とするものではなくて、製品に対する消費者の関心を把握することによる商業的影響を決定するものであれば、この試験は「試験的使用の例外」には当たらないという判決が出ております。その逆であれば「試験的使用の例外」に当たるというような内容の判示でございます。
後発医薬品につきましては、それまでフランスでは後発医薬品の承認申請のための「試験・研究」についての判断が必ずしも明確ではなくて、2000年にそういったものを「試験的使用の例外」に当たるとするような法案が国会に出されたわけでございますが、これは手続的な問題で、最終的に法案からその条項が削除されて法律はできなかったというところでございます。
そういった中で2002年にScience UnionとExpanpharmの事件がありまして、ここで地裁判決が出たわけでございます。その地裁判決の中で、下にもありますように、既に上市されている医薬品の代替品を発明することを目的とした「試験・研究」は「試験的使用の例外」に当たる。したがって、権利侵害にならないという地裁判決が出た関係で、一応フランスではこれで落ちついているというところでございます。
フランスにおきましても、大学については具体的な事例はみつかりませんでした。
最後に23ページ、欧州の関係でございます。欧州特許条約EPCでは、基本的に「試験的使用の例外」に関する規定はございませんが、先ほど触れましたように、まだ発効しておりませんCPCの27条(b)に「試験的使用の例外」に関する規定がございまして、各国これに倣って法改正をしているところでございます。しかし、似たような条文であるにもかかわらず、後発医薬品の承認申請のための「試験・研究」については、例えばイギリスは認めないというようなことで、国によって運用に若干ばらつきがあるというところではないかと思います。
以上、ざっとご説明をしたところでございますけれども、今ご説明した各国と日本を比較しますと、基本的には米国の「試験的使用の例外」についての考え方が諸外国の中で一番厳しいのではないかと考えられます。なお、日本と欧州は、基本的には日本の通説といわれる説と比較してほぼ同じような考え方ではないかと考えられます。1点だけいえば、イギリスにおいては後発医薬品の臨床試験は「試験的使用の例外」として認められないという判断が出ているという点では、日本というのは諸外国からみてもこの「試験・研究」の例外というのは比較的広くとらえているのではないかといえるのではないかと思います。
以上、事務局からのご説明でございます。
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長岡座長
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大変わかりやすい説明ありがとうございました。
次に、日本製薬工業協会、財団法人バイオインダストリー協会及び知的財産合同検討委員会から要望書をいただいておりますので、秋元委員の代理としてご出席いただいております長井様より発表していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
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長井(秋元委員代理)
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本日は秋元のかわりに代理として出させていただいております山之内の長井でございます。よろしくお願いいたします。
日本製薬工業協会とバイオの団体であるバイオインダストリー協会、両団体で合同でこの問題について検討しており、きょうご紹介がありましたように、昨年の7月の推進計画の中にも取り上げられている。その後、この問題は公式の場で議論されないで本日まで経過しており、どこかに消えちゃったのかなと実は心配していたのです。しかし、昨年の暮れのワーキンググループで次回の議題として取り上げられるということになり、大変喜ばしいと思います。
今からその内容についてご紹介させていただきます。この問題は何が起きて発生したのかと云うと、基になったのは研究開発の動向が変わってきたことです。それはゲノム創薬という時代になり、ヒト全遺伝子の病気にかかわる部分を使って新しい薬をつくり出す新しいスクリーニングがこの数年急激に発達した。それによらないと新しい薬を効率的に出すことが難しくなってきている。もちろん古典的な試験法はあるのですが、この新スクリーニング法でやらないと新しい薬はなかなか出にくい。これは世界的潮流になっており、日本もやっている。ただ、日本も一生懸命やっているが米国の方が発達している。
今までスクーリーニングというのは古典的なものは既存の技術を大体使っている。あるいはスクリーニングの技術も特許化をするという意図が、大学の先生にはありませんで、公表されていた。そういう既知の権利のない情報を活用して新しい薬をつくり出すということで今までやってきた。その中で、我々製薬とかバイオ業界は、先ほど述べられました、物質特許導入以来、新薬を出すという研究にターゲットを変えまして30年近くなりました。現在は、日本発の世界新薬も出るようになってきた。これからも続けていきたいのですが、研究開発に特許が非常に影響してきた。これは今お話ししたとおりなのです。
本問題につき、特許庁等に要望していたのですが、研究のターゲットというのは各社秘密でやっておりますので、各社がどのようにやっているかということがなかなか具体的に表に出せず、具体的なニーズがどこにあるかとか、どの程度困っているかということがなかなか具体的に示すことができなかった。昨年、本委員会で審議されるということになりまして、ではニーズを業界としても証明したいということで、昨年の暮れに急に全業界にアンケートをとり、現実にどういうニーズがあってどういう対応をしているということについてのアンケート結果を急遽まとめて本日ご報告いたしたいということでございます。これについて細かく言及しませんが、今後の検討材料としていただきたいと思います。
それから、先ほどからもありますが、ゲノム創薬というのは日本だけの流れではなくて世界各国も同じ流れの中にあります。確かに法律解釈とか判例とか学説、過去のものに従えばなかなか厳しい。ただ、業界のニーズとしては見直してほしいということが世界中で起きている。その辺のことも要望書の中に入れました。この問題は、ゲノム創薬という様な新しい技術開発により世界各国で研究の仕方が変わったことに伴って、従来の法律解釈だけでいいのか、その辺を見直していただきたい、これが我々の要望です。本問題は、大学の方にも影響がありますので、その辺を含めて慎重な審議をお願いしたいということです。
ただ、出口をどうしたいとかということは、実は内部でもいろいろ検討しているのですが、どうしていいかよくわからないのが実情です。その辺については、我々としては本委員会等で慎重に審議していただいていい出口をみつけていただきたいというのが本当の正直なところです。以上で前置きは終わりまして、要望書に書きましたことについて順次説明させていただきたいと思います。
「試験又は研究」に係る問題の本質は、研究開発の自由度が確保されないということなのです。自由度というのは何かというと安心して研究開発ができることです。特許権をもっている人の差し止め請求権の行使により、研究が中止されるというリスクがあります。ゲノム創薬というのは非常に大量の資金と人を投入してやるものですから、そういうリスクの高いものに対する投資というのは非常にしがたい。そのリスクをなるべく回避するために色々なことをやっておりますが、基本的に研究開発の自由度が確保されないために、よりよい発明を生むためについての弊害になっているということがあります。
その結果、新薬とか診断のツール等の提供する機会が失われているということです。特に、創薬の初期研究段階で使用するスクリーニングに関連する技術については、特許が多数存在しています。この特許は、日本発のものよりも米国発のものが半分以上を占めております。これが問題解決を難しくしている点です。日本発のものであれば日本のやっている者同士の話し合いで解決しやすいのですが、米国発、しかも大学だけでなくベンチャー等があります。大手企業間であれば企業間同士で話し合いということも可能ですが、ベンチャーだとベンチャーはベンチャーなりの存在理由とか要求がありますので、問題解決を難しくしているということでございます。
かかる特許が多数存在しておりまして、こういう特許を使用しないと研究できないことが多いのです。ただ、ライセンスをもらえればできるわけですが、ライセンスをもらえるかどうかはよくわからない。私どものアンケート結果でもありましたが、こういうリスクを回避するために企業は何をやりますかというと、研究をやろうという目標を定めると、まず先行の技術を調べる。その中にパテントが出ている。世界に出ている。そのパテントが実際に成立するかどうかを調べ、成立する見込みがあったらライセンスを受けるというのが基本でございます。
ただ、そのときに非常に難しいのは、バイオの分野についての特許性の判断あるいは範囲が非常に揺れ動いているわけです。いろいろ変化していっている。そういう中で非常に難しいのですが、企業は企業なりにその判断をしてリスク回避をしております。その程度は非常に多くて、それも実際のアンケートでかなりの件数やっている。私どもの会社では何十件、1年間で五、六十件そういう評価をしているわけです。そのために多大の人と労力を使ってやっている。これはあくまでも全部リスク回避のためです。やるのは当たり前のことなので、やることをとやかくいっているわけではございません。ただ、そういうことが実情ですということです。
そういう中でライセンスを申し入れても、なかなか受けていただけない。受けていただく場合もありますが……。これは、1つはお金をもらわないとベンチャーは成り立ちませんので、もらうからには高く欲しい。特に研究の上流の単に「試験・研究」に使うだけで、薬とかの製品に特許権が及ぶようなものではない特許でも、最終製品についてのロイヤリティーを要求する。この辺については、例えばアメリカではそういうのをリーチ・スルーといって、最終製品に対する権利を主張できないという判例はあるようなのですが、あるからといって相手が要求してこないわけではありません。要求されたときに、では現実に裁判を争いますかというと、それの解決に大変長期を要するので、今までのケースでは泣く泣く払っているというケースもあります。
そういうこともあるし、もう1つ難しいのは、自分のところでスクリーニングの関連の技術をもっている、その中に結構有望なものがみつかっていた、そういうケースの場合には、企業というのは基本的に独占したいですから、相手の会社にライセンスを与えるということはし難い。かかる場合ライセンスを与えないとはいいませんが、実際上与えない条件を示してくることがある。ということで、現実になかなか得られ難いことがあるというのが実情です。特許権が成立した場合には差し止め請求権を行使されるわけですから、資金を投下して研究開発をしていても途中で中止しなくてはいけない。そういうリスクがあるということで企業としてはなかなか難しい問題が起きているということです。それが日本の実状です。
先ほど南さんから各国の法律状況とか運用の問題について説明がありましたが、私からは、企業側からの要請ということがいろいろ各国での動きがあって、それが政府機関とかに一部動きが出てきているということのご紹介です。これが2ページ目のところでありますが、OECDではドイツをリード国として、リサーチツール使用に関するライセンスガイドラインが作成されつつある。米国でもNIHが検討を開始したり、議会下のGAOがアンケート等の調査を開始しているということです。また、スイスでも公的機関から「バイオテクノロジーにおける研究と知的財産」という報告書が既に出ております。これについては、きょうの参考資料として添付しております。こういうことで、米国とか欧州でも本問題についての検討を業界からしてほしいという要請に基づいて一部動き出してきているという現状でございます。
これは、先ほどいいましたように、一番大きな直接的な原因はゲノムの解明によるゲノム創薬が始まった、それに伴う研究開発の仕方が変わった、それが世界各国共通しているということでこういうニーズが起きてきているということで、産業界の技術の変換に伴う法律の対応という面が各国で求められていて、我が国でもそのことをやっていただきたいということです。
今度は産業界だけではなくて大学等の公的研究機関の問題ですが、大学等でも例えば知財推進計画というのが昨年7月に出まして、知的創造サイクルの創造の部分の新たなターゲットとして大学等にねらいをつけているというのが知的推進計画の1つの大きな柱だと思います。その大学での創造活動、発明を生むという部分にこの問題が関連するのではないかということでお話をいたしたいと思います。
先ほどもご紹介がありましたアメリカのduke大学事件で、大学がやっている行為にも権利が及ぶという米国の判例もあります。それから、浜松医大のがんマウスの話でも、判断はされていませんが、係争が起きているということです。こういうことが起きるということと、もう1つはこの春に大学の法人化が控えている。法人化した場合にこういう問題が顕在化してくるのではないかということです。
というのは、大学で実際に研究している人たちは、先ほど南課長がご紹介した「試験・研究」の範囲の特許の分野における解釈ということは全く知らないと私は思うのです。自分たちがやっている研究開発が特許に触れるなんていうことは夢にも考えていない。だから、ましてや研究開発するときに特許を調査してやるというようなことはないと私は思います。それが今度独立法人化して、法律解釈では、先ほどの特許庁の説明にありましたように、営利、非営利を問わず侵害ですので、大学でやる行為も侵害と云うこととなります。
では、特許権者が今まで大学の人に権利行使しなかったのはなぜかというと、目をつぶっていた。してもしようがないというか、国立大学の先生に権利行使して、何がもらえるか。研究中止してもロイヤリティーをもらえるわけではないでしょう。では今度独立法人化したらそこにお金があるわけですから、いえばロイヤリティーをもらえるというようなことも起こり得るのではないか。そのようなことも危惧されるようになっているので、その辺のことも含めて大学の法人化に対する影響もあるのではないかと推察されます。この問題点も含めて議論を尽くしていただきたいということでございます。我々としては、この問題について正面切った議論をやっていただきたいなということでございます。
具体的なアンケート結果については、添付資料にございまして、これについては日本製薬工業協会の知的財産委員会というのが三十数社あり、バイオインダストリー協会の委員というのは230社あって、実は300社近くある。ただ、バイオインダストリー協会は必ずしも研究だけではなくて、バイオのものを商売にしている商社とか、そういう人たちも入っています。
これ等の中でその会社全社に昨年の暮れアンケートをとりまして、回答は68社ありました。実際にリサーチツールを使用していると回答があったのが36社です。この36社についてのアンケート結果を急遽まとめたものがこの添付されたものです。これについては急にとったアンケートでしたので精査が十分ではないという面が多々あるかもしれませんが、考察に書いてありますように「リサーチツールを使用している会社の多くが、特許を尊重し、事前に出願・公開段階のものまで情報収集していることが確認された」ということです。
後はその実例ですが、下の方に「本調査から、リサーチツールはまだ権利の範囲が確定せず、企業側が困惑しながら対処している実態が明らかとなった」。最後で「早い段階でのライセンス申し込みを行うことによって双方が納得して速やかに契約を行い、安心して研究ができるような土壌を作るライセンス慣行があれば、企業側としては例え逆の立場であっても積極的にライセンスすることが分かり、何らかの方策が強く望まれている」ということです。
個々の細かいデータについては言及しませんが、次のページのところだけちょっとみていただきたいのです。次のページの下のところで「過去1年間、リサーチツールの使用にあたって、関連する他社特許を調査したことはありますか」という問いに対して36社全社があると。では1年間でどのくらいの件数やっていましたかというので、30件以上が6社、20から30が1社、10から20が5社、1から10が12社ということで、この数の多いところがゲノム創薬を研究の柱としている企業であるというのが実態です。
あとの細かなデータは、今後の検討のご参考にしていただければ幸いです。
もう1つの添付資料は、先ほどいいましたが、スイスの公的な連邦知財研究所によるアンケート調査の結果でございます。この訳文もきょうに合わせて急遽昨日できたもので、訳文を十分チェックしたりしておりません。特に要約のところの1番の最後になりますが、「遺伝子検査・診断等、特許へのアクセスが重大な問題となる分野では、ライセンスに関するガイドラインが、独占的地位の濫用を防止する点で、助けになる。それでも不十分であれば、強制的ライセンス条件を考慮する必要がある」等々、1つの結果が報告されております。
以上のようなことでございまして、我々としては慎重な議論をお願いしたいのですが、その出口のものとして、余り具体的なところはよくわからないところがあるのですが、例えば我が国の国際競争力が増すような国家主導のシステムを検討していただけないかなというようなことで、そういうのを含めて「試験又は研究」の範囲の明確化に対して早急かつ慎重な検討をお願いしたいというのが要望でございます。
以上でございます。
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長岡座長
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どうも貴重なデータの紹介も含めてありがとうございました。2つご報告をいただきましたので、ここでご意見とかご質問がありましたら自由にお願いいたします。
――相澤委員。
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相澤委員
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最初に最高裁の平成11年4月16日の判例の解釈でありますけれども、これはあくまでも医薬品に関する先例です。医薬品の場合には期間延長が行われているという前提のある事案でありまして、この裁判例をもって「試験・研究」に関する一般的な理論を提示していると解釈することについては、疑問があります。医薬品は期間延長を認められてるから、さらに特許の効力を事実上延長するような解釈はいかがかということではないかと思います。
この69条1項と同じような流れで、裁定実施の問題があると思います。WTO-TRIPS協定との整合性ということをこの問題を考える場合には念頭に置いておかなければいけないと思います。それから、裁定実施についての、日米合意の問題もございます。
この問題について、国際競争力のある企業は、アメリカで売るためにはアメリカ法に従ったことをしなければいけないということになります。したがいまして、日本だけで措置をしても、それは国際競争力のない企業を保護してくれと。パイオニアへのインセンティブということが全体の中で強調されてきたわけでございますが、それとの関連をどう考えるかということです。今までの全体の流れの中で特許の効力を制限していくということがいいのかということについては十分ご配慮いただきたいと思います。
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相澤委員
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基準を満たせば認めるというのが今の仕組みではないかと思います。ですから、一定の基準を満たせばいいので、数の議論をするのはいささか不適当ではなかろうかと思います。
それからもう一つは、もちろん特許庁における調査を請け負うということではありますが、今度の制度では、そこで調査を受けたものについては減免を認めるわけですから、二重の性格をもつものと考えられます。特許庁の調査を受け持つとともに、民間からの調査を請け負って、それによって減免を受けることによって、特許庁の調査負担を減少するということも目的なのですから、二重の目的をもってくるのではないかと思います。
さらに、基準を満たしている以上、例えば企業の子会社であったとしても、その子会社がきちっと基準を満たすものであれば認めてよいと思います。ただし、特許庁が調査を出すときには、競争企業のものをそこへ出すかどうかということは、出願人の不安もあるでしょうから、そこは考慮すべきではあると思いますが。
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長岡座長
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ありがとうございました。――丸島委員、お願いします。
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丸島委員
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質問です。4ページの(2)の 「大学等における試験又は研究も『業として』の実施であるとされる可能性が高い」という点ですが、ここでいう大学等における「試験・研究」というのは、大学の組織における「試験・研究」をいうのでしょうか、それとも先生個人でやるものすべて含めてという理解なのでしょうか。これが第1点。
そうすると、上の「個人的あるいは家庭的」の「個人的」というと、大学の先生個人との関係がどうなのだろうかということ。
「産業とは関係のない実施」とここに書かれているのですが、医療は産業ではないといわれていますよね。そうすると医療関係はいいということなのでしょうか。その点についてまずご質問したいのですが。
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南技術調査課長
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今のご質問なのですけれども、まず大学における先生の研究というのは大学における「試験・研究」と解釈されると思います。大学の先生が大学と関係なく行う研究、場合によっては利益相反を起こすような研究はまた別かもしれませんが、基本的には大学の先生が行われている研究も「業として」の実施と考えることができるかと思います。
それから、医療につきましては、その上の行にありますが、通常我々が使っている産業という言葉ではなくて、本来その業務なり事業を行うことを業としての実施ととらえていますので、ここでありますような公共事業であっても医療業であっても、これはこの68条の「業として」に含まれるというのが一般的な解釈でございます。
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長岡座長
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どうぞ、竹田委員、お願いします。
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竹田委員
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資料5は非常によくまとまっていると思います。そしてその結果、日本のライフサイエンス関係の企業が非常に今困っている実情にあるということがよくご指摘いただいていると思うのです。ただ、リサーチツールの特許をもっている所有者がどういう状況にあるかということについての考察もやっておくべきではないか。
具体的にいえば、例のカリクレンの最高裁の判決によってスクリーニング特許の効力というのは非常に限られているし、ご承知のように、その後出た大阪地裁の判決では、あれは不当利得だったと思いますけれども、不当利得を請求してもわずか5万円というふうに、要するに権利者の方にとってみても現状は権利行使が非常に不確実なものであるということも押さえておく必要があるのではないかと思うのです。
ですから、私が聞いている例では、アメリカのベンチャーなんかは自分の特許を侵害されていることを監視するために研究発表に全部目を通して、そこに自分の特許に関係したものがあると一々警告しているとか、そういうこともあるわけです。学説でも侵害がみつかった場合に、その損害賠償について特許法の102条の1項や2項が適用になるかどうかについてはいろいろ説がございますけれども、非常に難しいのではないかと思うのです。そういう意味で、この問題を考えるときには、リサーチツール特許をもっている所有者の立場も考慮しながら検討の必要があるのではないかと思います。
以上です。
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長岡座長
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ありがとうございました。――では浅見委員お願いします。
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浅見委員
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すみません。素朴な質問なのですが、今問題になっている「試験又は研究」の範囲に関する議論というのは医療に限った問題としてではないですよね。その辺の問題の切り分けがはっきりしていない気がしてます。少し整理していただければありがたいのですが。
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南技術調査課長
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確かに契機はバイオ関連技術の特許権、あと大学でございますけれども、まずそのもとになっている条文の69条自体は技術分野を限定するものではありませんから、単純に69条でそういったものが「試験・研究」に含まれると解釈を拡大すれば、それは他の分野においても広く適用される可能性があるということです。
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浅見委員
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逆にいうと、ほかの産業界からはこの辺の解釈に関して何らかのガイドラインを出してほしいという要求は来ていないのですか。
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南技術調査課長
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全くございません。
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長岡座長
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丸島委員。
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丸島委員
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スクリーニングの方法というのは私はよくわからないので、比較してご説明いただきたいのですけれども、5ページの下の方には「通説の解釈に従い、69条1項の適用は否定される」といっていますね。例えば一般の産業に対比してみますと、電子顕微鏡のすごく性能のいいのができました、その電子顕微鏡を使わないと研究の競争に負けますということで、その顕微鏡を使って何か物質の組成を調べたいというときの電子顕微鏡に相当するのでしょうか。
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南技術調査課長
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そうですね。私もわかりやすい例としてはまさに顕微鏡の例をご説明に使うときがあるのですけれども、物の特許だとまたちょっと複雑なのですが、そこに何らかの方法の特許が含まれていたとして、その顕微鏡を使って何かを開発する、そういった実施については、これは使用するたびに基本的には権利侵害といいますか、特許権の効力が及ぶと考えられます。ただ、その顕微鏡自身の改良、もっといい顕微鏡を作ろう、もっといい技術を開発しようというその特許権自体を対象とする研究については、この「試験・研究」の例外が適用されて特許権の効力の範囲からは除外されるという考え方でございます。
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丸島委員
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それに関連して、そうすると、今要望されている内容は顕微鏡をつくって企業に売ることも含めてほしいということでしょうか。顕微鏡そのものはだれがつくるという前提でおっしゃっているのか、そこはどうなのでしょうか。
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長井(秋元委員代理)
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顕微鏡の例は余り適切ではないんですよ(笑声)。顕微鏡というのは他に色々な使用目的がありますね。今問題にしている部分だけではなくて、用途はいっぱいある。今ここでいっているスクリーニングに使うツールというのは、その目的のみしか用途が普通ないのです。タンパクならタンパク、それはある病気の原因になるタンパクの場合ですと、それを抑えればいい薬になる。そのターゲットは非常に狭くて、ある特定のいい薬の用途しかない、実際にツールとしての存在価値しかないものなのです。顕微鏡の場合は他にも存在価値があって、その中でこちらの研究開発に使うのがどうとかいう話と、その目的だけのためにもっているわけですから、例えばそれをもっている所有者は、「試験・研究」に使うところが権利が及ばないとなったら権利行使ゼロになってしまうわけで、価値がゼロになってしまう。だから違うケースなのではないでしょうか。
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相澤委員
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でも、それはリサーチツールだって一緒ではないですか。
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長岡座長
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そうなんですね。
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長井(秋元委員代理)
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もちろんそうですけれども。
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相澤委員
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だからリサーチツールもそこを実施にしないとそれは価値がゼロになってしまうという点は一緒ですね。
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長岡座長
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同じですね。
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長井(秋元委員代理)
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同じです。
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長岡座長
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リサーチツール自体の研究のことをおっしゃっているのではなくて、リサーチツールを使った創薬の研究に権利をどう及ばせるかというお話という意味では電子顕微鏡と同じではないかと思うのですが。
ほかにいかがでしょうか。――どうぞ、江崎委員お願いします。
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江崎委員
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例えばリサーチツール、ほかのものでもいいのですが、方法の特許を前提にした場合に、もし日本でその方法を使った上で後に製品化され輸出されると各国で侵害になるのでしょうか。というのは、例えば「試験・研究」の方法だと、何かの実験をしてある強度分析をする方法があったとしますと、そういうものを使ってある製品をつくった。それを海外にもっていったときに方法の特許の使用になるのか。リサーチツールと似ているのかどうかよくわかりませんけれども。
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南技術調査課長
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リサーチツールの場合、ちょっと性格が違うかもしれないですね。例えば、ゲノム創薬である薬を作るために最初にいろいろな遺伝子なりをふるい分けする際に使うツール、それである特定するものがだんだん選別されて、最終的にそれが製品になるわけですが、製品の製造過程で使う方法ではなくて――広く言うと製造過程なのですけれども、必ずしも製造過程ではないのではないかと思うのです。
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相澤委員
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ある生物を考えますと、生物をつくるときには例えば遺伝子組みかえをしてつくるけれども、できた生物をふやそうと思ったら培養液の中に入れればよいということがあります。それをふやすときには要らないけれども、最初の1個をつくるときにはそれがないとできないという意味では製造過程で必須のものということですね。
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浅見委員
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設計ツールとかシミュレーションツールと似ているわけですよね。
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相澤委員
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似ているかもしれませんね。
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浅見委員
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あるものの設計データをつくり上げるところまでのツールということですよね。普通の産業界では汎用品として売られているものが、医薬品の世界では自分の研究のためだけにつくったツールは外販しないのが一般的だということですね。
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相澤委員
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外販しているところもあるのです。だから、先ほどご紹介があったように、ベンチャーなんかでそのツールをつくって売っている人にとってみると、「試験・研究」が広くてゼロになってしまうと、その研究開発をしても、特許による保護が受けられないことになります。
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浅見委員
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でも、普通は産業的には高くてもそのツールは買うものです。実際、電子産業のツールはすごく高いですが、みんなお金を払って買っています。
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長岡座長
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ただ、私の理解だと、かなり新規性だけで引っかかっているのもあると理解してますけれども、そうでないのですか。
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長井(秋元委員代理)
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いや、だから買っているわけでございます。ただ、買えるものと買えないものがある。その対象が非常に多くて、製品化がすぐわかって、商品化が短い、例えば利益がこのくらいあるからこのくらいまで払っていいと計算が立つものはいいのですが、薬は10年ぐらいかかります。テーマが何十とある。その全部について全部やれますかというと、それほどの体力はありませんのでやはりターゲットを絞るということで、リーズナブルな額であればやる。ただ、アンケート結果でもありましたが、過去私ども薬の業界でも億の金を払った例もあるわけです。それは研究のかなり上流で、どの製品ということではなくて、あるスクリーニングに共通する技術のときにあったという事例もありますので、基本的に第三者の特許を尊重して使うときはライセンスを払う、これは当たり前でして、それについて一切払わなくていいということをいっているわけではなくて、リーズナブル額であれば払いたいという趣旨です。
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南技術調査課長
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少し整理させていただくと、冒頭相澤委員の発言の中でも裁定実施権ということが出てきましたけれども、まず69条の場合には「試験・研究」の例外で特許権の効力が及ばない範囲ということですから、先ほどの例ではないですが、特許権者は何らその特許権に基づく収入が得られない、全くフリーの状態になってしまうというのが69条の拡大のケースです。そうではなくて、当然何らかのライセンスの関係にはなる、ただそれが、例えば、高額であったりライセンス拒否されているようなケースは国が介入をしてリーズナブルなロイヤリティでライセンスをさせましょうというのが裁定実施権です。これについては、前回にもご報告していますが、次回その点を含めて整理をさせていただきたいと思っております。
1点だけ、先ほどの資料6の2ページにOECDとかNIHとか、いろいろ検討を始めているというところがございましたけれども、基本的にはそれぞれ裁定実施権とか「試験・研究」の例外の範囲についても確かに議論はその過程でされてはいますが、いかにライセンスをうまくやるか、そういう意味でライセンスガイドラインを作る動きがOECDにもありますし、NIHでは、NIHが行った委託研究についてはライセンスに際し合理的なロイヤリティでなるべく流通するようにしましょうというガイドラインを作ったとか、そういう意味でどちらかというとライセンスの仕方で解決しましょうというような方向ではないかなと思っています。そういう意味で69条と裁定という両にらみで検討しないといけないのですけれども、それぞれどちらを選択するかということによって権利者側からすると大分様相が変わるということはちょっと整理をさせていただいたところでございます。
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長岡座長
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きょうご紹介があったアンケートで12ページにライセンスのことが書いてあって、それをみますと13件ですけれども、「交渉が決裂し、使用を断念した」というのが2件。しかし、ライセンスが成立したというケースが14件ですか。それから裁判、つまり無効の裁判だと思うのですけれども、それは4件ということで、これだけみるとかなりライセンスはされているというふうにもみえるのですが、その点はいかがなのでしょうか。
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長井(秋元委員代理)
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これは結果としてライセンスされているもので、これ以外の先ほどいいました何十件というものが……。これは実際に交渉に至ったものです。交渉の結果至った、その前のものは幾らもありますという意味です。
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長岡座長
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どうぞ、丸島委員。
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丸島委員
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製薬業の考え方をちょっとお聞きしたいのですけれども、よく特許管理で情報産業と違って1件の特許の価値観を盛んに強調されて、絶対ライセンスは出さん、独占して事業をやるのが業界の特徴であるというのをよく聞いて立派だなと感心しているのですが(笑声)、今みたいな話で逆にライセンスをよこせというのとどの辺で変わってくるのでしょうか。自分が弱いとそういう気持ちになって(笑声)、強いと逆という、単純なそれだけなのでしょうか。
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長井(秋元委員代理)
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いわれるご指摘、正しいところもあるのですが(笑声)、ここで問題にしているパテントというのは製品に直接権利が及ばない特許なのです。我々が特許の1件の価値が高くてライセンスを1社で独占していくと。薬というのは後発者があるように、一旦つくってしまうと後でつくるのは簡単なのです。薬というのは、例えば工業高校の生徒でもつくろうと思ったらできてしまうので、特許による独占がないとだめということです。最終製品についてはなかなかライセンスしないで自分一人で独占してやろうというのは変わりませんが、ここでいっている特許は製品に直接及ばない、研究開発のツールとして使用するときのもの、そういうものについて従来は特許がむしろほとんどなかった。それが数年、ゲノム創薬の出現で特許が出現してきた。そういうところの研究開発にすごく影響しているので、ライセンスをもらえるような仕組みをいただきたい。ただ、そのときに特許権者の特許を尊重しないということは全く考えておりませんで、適正なライセンスというようなところで落ちつけばいいのかなと思うのですが、政府介入という形をとっていただかないとなかなか問題は解決していかないかなということでございます。ご指摘は合っているところもあります。
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長岡座長
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竹田委員、お願いします。
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竹田委員
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わかりやすくいえば、こう考えたらどうなのでしょうか。医薬品なら医薬品を開発するときに、そのリサーチツール特許を使って医薬品をみつけるというのがリサーチ特許だと思うのです。ですから、いってみればこれは情報を使っているだけで、そこでできた医薬品を商業的に製造するときは、その情報の使用はもう終わっているわけですね。ですから、外国でリサーチツール特許を使った医薬品をアメリカにもっていっても、物自体はスクリーニング特許で製造されたプロダクトではないから侵害ではないという判決がアメリカでたしかあったと思います。そのように考えていただければわかるのではないですか。
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丸島委員
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性質はわかるのですが、そういう強力なものが出るとライセンスが欲しいというのと、逆に自分がもったら出したくないと普通は思われるのではないのかなと思ってお聞きしたのです。
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竹田委員
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ですから、私が先にいったように、もっている人がこの際どんどん使ってもらおう、合理的な条件で大勢の人に使ってもらいたい、そうしたくなる環境をつくることも考えながらこの問題を解決しないとだめなのではないか。
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長井(秋元委員代理)
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アンケート結果でも、逆に自分がもっているという立場の場合にはライセンスに応じますという形が出ております。
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丸島委員
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これは一般の問題ではないですね。
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竹田委員
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一般の問題?
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丸島委員
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特殊分野も含めて。
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竹田委員
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特殊分野だというわけですか。確かにそれは医薬の方に多いです。
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長岡座長
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まだあまり議論を頂いていない大学における研究といいますか、これについてはいかがでしょうか。例えばDuke大学のケースがもし日本で起きた場合には、主題についての研究だったのか電子顕微鏡の改良研究なのか電子顕微鏡の利用なのかよくわからないところがあるのですけれども、もし利用であれば日本では侵害になるということだと思うのですが、そのあたりはいかがでしょうか。
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丸島委員
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私もきょうの主題ではなくて大学の研究に対しての問題の方が大きいと思っていたものですから……。産学連携で今までは大学でそういう問題は起きなかったと思うのです。今度は産学連携で大学の成果を企業に移すとき、明らかに特許権侵害という問題が表ざたになるだろうと思うのです。これは非常に大きな問題を起こすのではないかなという気がしまして、そういう視点から何か大学の研究開発の自由度を設けたらどうだろうかと個人的には思っていたのです。これを産業界でやるのと区別する必要が――弊害が出るのかどうかわかりませんけれども、大学にどんどん頼めば特許権自由だというのはおかしな話になるし……。ただ、大変だろうな、産学連携ができなくなるだろうな、そんな感じをもっているのですが、具体的にはわかりません。
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長岡座長
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渡部委員、お願いします。
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渡部委員
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私も大学一般の問題で考えるべきかなと思っていたのですけれども、今ちょっと伺っているとリサーチツール固有の問題とほとんど米国のベンチャーの問題のような気がするので、それを理由にして大学一般の制度をいじって権利者の主権の制約をするというのもちょっとどうかなという感じもするのです。
今丸島委員がご指摘になられたように、多分、「試験・研究」の学説とかいろいろな考え方からみて、産学連携を行う大学の性格は少なくともそこの範囲に入らないものが出てくるというのは認識をするべきだと考えています。ただ、そのときに大学法人が今後みずからかかわった大学の資源を使った研究についてどのようなライセンシングポリシーをとっていくかということが非常に重要で、現在のところ、一昨年に文部科学省が出された知的財産ワーキンググループのレポートに基づいて、これは大学法人個々の判断にすべて任せると今なっていますので、逆にいうと、このままいきますと大学法人の中では自分の権利を独占的に使わせて、さらにリサーチツールだからといって差しとめ請求するというライセンシーが出てきてもおかしくないという状況にあると思うのです。
ただ、これは大学としては非常に重要なところで、考えるべきだと思います。大学法人間でどのような形で合意をするとか、そこから出てくる権利についての約束事を決めていくというようなことをして、大学の研究の成果の取り扱いについては、少なくともリサーチツールについての差しとめ請求を行うというようなことがない、あるいは標準の問題も多分同じところがありまして、今回出てきていませんが、デジュール標準なんかの場合はランドで供与を必ず約束するようなことにできるようにするとか、いずれにしても今後産学連携をやる大学のライセンスポリシーがある規範に沿ったところに至る必要があるのだろうと。ここでする議論ではないかもしれません。そういうことを前提とすれば、この問題は恐らくある水準の中におさめていくことができるのではないかという感じがいたします。
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長岡座長
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ありがとうございました。いろいろ活発なご議論をいただきましたけれども、ほかにこの点につきましてご意見ございますでしょうか。――どうぞ、相澤委員、お願いします。
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相澤委員
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特区の中で、株式会社の大学が設置認可申請中というのをどこかでみたことがあります。したがって、大学であるからということで例外にするということは、難しいのではないかと思います。
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長岡座長
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どうぞ、渡部委員。
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渡部委員
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大学であるから例外にするというのは難しいと思います。ただ、その大学がどういうライセンスポリシーをとるか、株式会社であってもそういうところに対してどういう扱いをするか、これは制度的なところまで落とし込めるのかどうかわかりませんが、考えていくしかないのではないかと思います。
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長岡座長
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どうぞ、丸島委員。
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丸島委員
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きょうの主題だけではないのですが、先生から標準のランド条件とか大学のライセンスポリシーとかというお話も出ました。これは全部関連してみた方が考えやすいと思うのですが、どういうテーマでいつごろやれるようになっているのでしょうか。スケジュールをちょっと教えていただけませんか。
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南技術調査課長
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とりあえず今この69条の議論については、まさにリサーチツールと大学というのが問題提起の原点なのでこれに限りましたけれども、裁定については、リサーチツールも当然ですが、あと標準技術、特に電機・電子関係の業界団体からも要望が出ておりますので、そういう意味で裁定のところでは広く議論したいと思っています。今日いろいろご議論が出ましたけれども、最終的にライセンスの問題になるのかなと思いますので、次回は特に産業を特定することなく、69条や裁定も含めて広くご議論いただきたいなと思っております。
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長岡座長
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どうもありがとうございました。
では、全体をもう一度振り返りまして、中間取りまとめは一応ご承認いただいたのですが、特に何か言い忘れたとか、そういう点についてございましたらご発言いただきたいと思います。よろしいでしょうか。――どうぞ、江崎委員。
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江崎委員
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リサーチツールの問題はアメリカに特許がたくさんあるとご説明があったように思いますが、1つ、同じ産業界の中で有利なのか不利なのかという視点が要るのだろうと思うのです。ですから、今の状態が同じように起きていると、アメリカの製薬業界が一番大きなダメージを受けているはずだろうと思うのですが、それが受けていなくて日本だけが受けているということでしたら、これは考えていかなければいけない問題だろうと思うのです。大学の方もそうなのですけれども。その辺の国際的な競争力を阻害するような項目だったら直していくべきだと思いますし、そうでなければこれはどうしたらいいのかというのを考えなければいけないのだろうなと感じています。
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長岡座長
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どうもありがとうございました。
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渡部委員
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ちょっと確認なのですけれども、大学の話は総合科学技術会議でこの議論をするような話をちょっと聞いたのですが、それは並行してあると考えてよろしいですか。
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南技術調査課長
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総合科学技術会議の中に知的財産専門調査会というのがあります。実は明日第16回が開催されますけれども、その中ではどういう位置づけになっているかというと、この戦略ワーキンググループで検討している内容をあちらに報告をして、ライセンスに関する何らかのガイドラインが作れるかどうかを総合科学技術会議の方でご検討いただくというような段取りになっています。
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白木委員
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薬のことなので私とは全然分野が違うので余りよくわからないのですが、ただ絶対に感じることは、今の研究開発にしても日本だけの問題ではなくて、極端にいうと、私どもは中国で仕事をしているのですが、上海は広島へ行ったり九州へ行ったりと同じくらいの感覚、それ以上に近いです。大学もどんどんいろいろな研究も受け入れてくれるわけです。だから、とにかく国際共通性というのが一番重要だと私は思っているのです。
どこかでいわせてもらいたいと思っていたので、ついでにいわせてもらいますが、日本の特許なんて、私からすればこのごろ何の意味もなくなってきたのです。私は以前はロイヤリティーをもらっていました。でも、皆さんが全部海外へ行かれて、私は2,000件特許があったのをほとんど捨てました。何の意味もないのです。堂々と「白木さん、お世話になりました」と、自分で書いたものを今度まねしてつくるようになりましたと、はい、さようならです。きのうまで特許料をもらっていたのがどんどんなくなってしまうのです。それで私はいや応なしに中国でつくるようになったのです。
中国は、特許はどっちみち無視されると?10年後に切れました。でも、今はかなり優遇されてきて、ついでにお話ししますが、特許を出したら特許の半分以上の金が奨励金として戻ってくるのです。日本の場合はすごく高いわけです。今のこの研究にしても、恐らく薬のこととかそんなことは、もし中国との共通性がなければ、ああ中国だったらいいんだとなれば、どんどん中国の人に頼むだけになってしまうのではないでしょうか。
ついでに特許の迅速化という話をさせてもらいたいのですが、非常にすばらしいと思うのです。一番簡単なことを私は思っているのは、アメリカが特許を認めたら、日本はすべてアメリカに服従しているのだったら、アメリカでオーケーならば日本は自動でオーケーしますよ、そうしたらいいのです。そうしたら迅速にいってしまう。何が得するかといったら、特許庁は寝ていればいいのです。中国で求めてくれれば日本はオーケーですよといったら楽でしょう。日本の特許庁が楽をするばかりになったら、では日本が認めればおれも認めるよとなると思うのです。逆に自分のことは、私が想像すると、日本で認めた、あなた認めなさいといったら絶対アメリカなんかは反対します。中国でもみんなそうなのです。それは本当は早くやってもらいたいと思います。
ほかのこういう細かいことにおいても共通化がなければ意味がないということです。日本だけで幾ら議論して細かくやっても、その差があれば何の意味もなくなってきた。そのことを本当に十分に審議してもらいたいと思います。とにかくあっこちっちに金を出すのは大変ですし、1カ所に出せば半分で済む。特許庁同士が競争してもらって、向こうが審査してオーケーしたらこっちが半分払ってあげるぐらいのことをするとかね。ぜひともそういう共通性をやってもらわないと、私たちは電気的なものだから薬とちょっと違うかもしれませんが、使う分は日本人は1億人だけれども、中国は16億人いますし、世界じゅうをみたらずっと多くなる。もう日本なんか無視しちゃえばいいやということなる。私からみれば今そういう特許の情勢にあるということです。その中であくまで共通性、これに重点を置いてもらいたい。つい10年前までの意識と全然違ってしまうという感じです。すみません。
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長岡座長
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どうもありがとうございました。
では、最後に今後のスケジュールについて事務局からお願いします。
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南技術調査課長
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それでは、次回の日程でございますけれども、現在3月3日の午前の方向で調整しております。ただ、国会が今週始まりまして、国会の日程との関係がございますので、そのあたりの日程調整を行った上で一両日中に皆様にご連絡をいたします。
次回の議題でございます。先ほど述べましたように、引き続きこの特許発明の円滑な使用に関する諸問題についてご議論いただきたいと思います。裁定についても触れる予定でございます。
それから、今日ご了承いただきました中間取りまとめの中で今後の検討課題となっております分割出願制度と補正の制度の見直しについてもあわせて議論する予定でございます。
以上でございます。
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長岡座長
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きょうは非常に活発なご議論ありがとうございました。議論を踏まえて再度事務局からペーパーを出させていただきたいと思います。
第6回の戦略ワーキンググループをこれで閉会にさせていただきます。どうもありがとうございました。
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