ホーム> 資料・統計> 審議会・研究会> 産業構造審議会> 産業構造審議会 知的財産分科会> 特許戦略計画関連問題ワーキンググループ> 第7回特許戦略計画関連問題ワーキンググループ 議事録
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(本記事作成:特許庁総務部総務課制度改正審議室)
長岡座長 |
まだ見えていない方もいらっしゃいますけれども、時間となりましたので始めたいと思います。 |
南技術調査課長 |
まず資料確認をさせていただきます。今日の資料、大部でございますが、まず資料1が議事次第、資料2が委員名簿、資料3-1、1枚紙ですけれども3-2、これが、本日、秋元委員からご説明いただく資料でございます。資料4は、クリップ留めしておりますが、資料本体と別紙4-1、4-2が付いております。資料5、これもまとめてクリップ留めしておりますが、本体と別に別紙5-1から5-5まで別紙が5点、以上でございます。過不足等ございましたら事務局の方にお申しつけください。よろしゅうございますか。 |
長岡座長 |
ありがとうございました。今日は、そういうことで、特許発明の円滑な使用に係る諸問題という点と、裁定制度、この2つが主な議題であります。 |
秋元委員 |
おはようございます。前回、私、ちょっと所用がございまして欠席して、代理の方に製薬協のアンケート等を報告させていただいたのですが、若干まだご理解いただけない点、あるいは多少誤解も入っているというようなこともあるかもしれませんので、もう一度補足説明をさせていただきたいと思っております。 |
長岡座長 |
どうもありがとうございました。 |
相澤委員 |
要するに代替性がないかどうかというのは、遺伝子に限らないわけでありまして、例としては、余り適当ではないのではないかと思います。 |
長岡座長 |
遺伝子については、公的機関がかなりお金を出してゲノムプロジェクトをやってきました。それでかなり遺伝子情報を公開してきました。その影響がかなり大きいというふうにも聞いたことがあるのですけれども、公的資金で研究をやって、基礎的な情報をオープンにするという努力は一方でされていて、それが独占力を規律する面もあると思うのですが、それは余り効果が大きくなかったのか、そういうことがあったにもかかわらず非常に遺伝子情報についてのアクセスというのは重大な問題になっているのかどうか、もしコメントがあればと思います。 |
竹田委員 |
リサーチツールについて、普通の特許と別に考えるべきではないかと思うのです。相澤先生は普通の特許と同じようにお考えのようですけれども、リサーチツールは自由に使えるようにしないと、結局、特許制度の本来の目的である技術開発の実現ができなくなってくるのではないか。そのために権利者が非常に酷に取り扱われるというのでは困りますけれども、妥当な線をみつける努力をしないと、日本の医薬品を中心とするバイオインダストリー関係の技術の開発を阻害するのではないかと思うのです。特別に考えてもいいのではないかと思いますね。 |
丸島委員 |
質問ですが、特許がいっぱいあるというお話は聞いておるのですが、これが1つしかないというのと、特許がいっぱいとの関係をもうちょっと詳しく説明していただきたいと思います。 |
長岡座長 |
幾つか質問が出ましたけれども、秋元委員、もしよろしければお願いします。 |
秋元委員 |
いろいろ質問が出ましたので。まず座長の方から出ました公的資金云々という話ですが、実は遺伝子解析にしても、NIHを辞めたベンダーさんがセレラという会社をつくって、まず最初に解析しましたね。これは大変だということで、アメリカはその他含めてやり出したということです。 |
長岡座長 |
ありがとうございました。 |
江崎委員 |
質問ですけれども、ヒトの遺伝子に代替性がないというのはよくわかりましたが、スクリーニング方法というのは、やっぱりないわけですか。 |
秋元委員 |
ヒトの遺伝子を使って産物とか受容体、そういうのもつくります。さっき代替性がないというところで説明しましたけれども、ラットのそういう遺伝子を使ったら、作用としては若干あるかもしれませんが、それはあくまでもラット特有のものでございまして、そのものをヒトに当てはめることができるかというと、実はできない。それは、NIHでも昔、がんのスクリーニングのときにはラットのスクリーニングで見出したがんの薬については、ラットのがんの薬であって、ヒトの薬としては認めなかったということがございます。同じように、ヒトの遺伝子と動物の遺伝子は相同性がございますが、あくまでも異種動物の類似品ということだけであって、そのものではないということです。 |
丸島委員 |
今のご説明でまだわからないのですが、ツールはいっぱいある、製品は1つだ、ツールがいっぱいあるならなぜ困るのでしょうかという質問です。 |
秋元委員 |
ツールがいっぱいあるというのは、1つのところをやるツールではなくて、各ステップごとにツールがあるという意味でございます。各ステップごとにそれしかない、代替性のないツールがあるという意味です。 |
相澤委員 |
非代替性をいわれるとすると、製薬企業さんの成果物である薬も非代替的である場合があると思いますが、これについても特許の効力を制限するというようなご意見でございましょうか。 |
秋元委員 |
製薬産業の化合物につきましては、例えば同効同種の薬というのがございます。例えば違う会社で同じような糖尿病の薬が出るとか、あるいは胃酸分泌を抑制するような薬が出るとか、これは、最終物の化合物を物質として必ず全部カバーできるような特許というのは基本的に難しいということで、同効同種の薬がどうしても出てくるということで、代替性がないということではないかと思います。 |
相澤委員 |
リサーチツール以外でも非常に基本的な特許というのはたくさん存在します。ですから、基本的な技術についての特許がいけないという議論ならば、それはそれでひとつの考え方としてあり得ると思います。そうであるならば、例えば非常に有効な医薬の特許の効力も制限されるべきであるということになります。代替性があるとおっしゃったのですけれども、代替性があるならば、医薬の特許が有効であるということと、つじつまが合わないと思います。医薬特許というのが一番特許制度の中で機能しているという研究もあるぐらいですから。 |
秋元委員 |
例えば具体的な例を上げますと、抗潰瘍の薬として、従来はガスタータイプのものがございましたけれども、現在ではプロトンポンプ・インヒビターというものがございます。これはご存じのように、オメプラゾールというのをアストラで出しております。これは、年間6,000億円ぐらい売れる薬でございます。弊社はランソプラゾール、これも4,700~4,800億円前後売れております。エーザイさんのラベプラゾール、ビックグルデンのパントプラゾール、こういうふうに現在4つがありまして、そういう意味では特許で保護している。けれども、4社ぐらいの参入はできるけれども、それ以外は参入できないというぐらいの程度で強いということでございます。 |
渡部委員 |
産学連携の影響ということで、私、この分野はよく存じ上げないので、どんな感じになるのか意見を伺いたいのですけれども、大学が今後この分野で研究するときに、極めて頻度高く差しとめ請求を受けるような事態になると予想しないといけないのでしょうか、意見を伺いたいと思います。 |
秋元委員 |
私からいわせていただきますと、企業の場合は、ポジティブな結果が出ない限り表には研究計画というのはなかなか発表しない。ただ、研究者は外部発表したいですから、そういうところでやっているということがわかることもあるし、場合によっては特許等から考えて、どうしてもそれを使っているのではないかということは推定はできます。しかしながら、大学の場合は、発表が主体になる、あるいは一部でも公的研究費が絡んでくるとすれば、研究計画を出すという可能性も非常にあるということで、むしろ研究段階で、大学の研究の方が表に出てくる可能性が高いのではないか。そうしたときに、そこにもし共同研究みたいな場合で公的機関が入っていたとしても、例えばメルクさんも共同研究で名前が入っている。ところが、ファイザーさんが同じような研究をやっている。しかも、そのリサーチツールをファイザーさんがもっているとすれば、その研究をストップさせるということも起こり得ると思います。大学の方が研究の計画というのは表に、より企業より出るということで、しかも発表が主体であるということを考えると、大学の方が影響が多いのではないかというふうにも考えます。 |
長岡座長 |
大学についての試験研究で適用云々については、この後、さらに議論があると思いますので……。 |
菊地委員 |
秋元先生の説明、よくわかったのですけれども、もう少しロジックとして、先ほどちょっといわれたソーシャルコストとかソーシャルアウトカムということを、もう少し――もう少しどころじゃなくもっと強調しないと、リサーチツールは代替性のないという論理に終わってしまうというか、研究というもう少し公的な、公益というものを明確にするというか、当たり前にがんが治れば何とかというのではなくて、そうじゃないと、6,000億だった、ファイザーだ、どこだという単なるインカムの金もうけのマーケットの話になってしまう。むしろ何千億ではなくて、それを超えた金では評価できないようなアウトカムがあるのだ。そういうところに関して、果たして特許の及ぶ範囲はどうなのだという議論をすべきではないかと思います。 |
石田委員 |
私の興味で申し上げると、「INTERPAT」のプログラムを拝見しまして、日本は出てないのですね。 |
秋元委員 |
出ております。日本のメンバー会社は、現在……。 |
石田委員 |
このプログラムの中で、日本についての……。 |
秋元委員 |
これは、一番下のところに「Champions」というのがありますね、日本は1つのグループを形成しているのです。日本の動きにつきましても逐一ここで報告する形にはなります。 |
石田委員 |
わかりました。インド、ブラジル、チャイナ、アメリカと書いてあるのですけれども、ここが非常に特異性があるのですか。 |
秋元委員 |
インドの場合には、特に特許の問題がまだ非常に難しいというか、ブラックボックスの出願についてもなかなかうまくいかないとか、あるいはインターネットで売られているようなものはほとんどインドの後発、ゼネリックメーカーのものであるとか、いろんな問題が起こっております。ブラジルにつきましては、医薬品の保護というのがなかなかうまくいっておりません。特に先発メーカーが承認される以前に現地の製造メーカーの医薬品、同じものが先に出てしまう。中国におきましても、現状まだそういう状況も続いております。そういうようなことで、いろんなところで問題が起こっている。この問題について、私ども、1社120~130万ほど拠出しまして、ロビー活動から各セミナー、そういうリエゾン活動、それとか世界でどういうふうにもっていこうかというようなことについて全部議論して、実際に行動を起こすということになっております。 |
長岡座長 |
どうもありがとうございました。 |
南技術調査課長 |
続きまして、資料4について説明させていただきたいと思います。 |
長岡座長 |
どうもありがとうございました。ご意見をいただきたいと思います。 |
秋元委員 |
4ページ目の「大学等における試験又は研究も『業として』の実施であるとされる可能性が高い。」これは刺激的だというお話ですが、トーンを幾ら下げたとしても、例えばアメリカのDuke大学の判決等もあるとすれば、むしろ侵害であるというぐらい強くいった方がいいのではないかと思います。 |
安念委員 |
秋元先生のおっしゃることに全く賛成でして、まず「業として」という言葉が特許法独自の概念だというのなら別ですが、一般に法令用語として「業として」とか「業務上」というのは、反復継続の意思がある場合いいわけであって、それは、金の目的なのか何かほかの趣味なのか、それは余り関係ないし、たしか私どもの業界でいっても、弁護士法72条というのは非弁活動を制限して――私は反対なのですけれども、だれがやってもいいと思っているのですけれども、それも「業として」とあるのだが、たしか最高裁の判例が、大昔の判例があって、あれも別に「営利を目的とする」と「業として」と関係ないというのがあったと思います。ですから、大学だからどうということはないのであって、要するに反復継続する意思があってやれば、だれがやっても同じだというようにすべきと解釈するのが、まあ普通ではないかなと思うのです。 |
長岡座長 |
私も「業として」というのは賛成なのですけれども、ただ、実際アカデミックディスカウントというのは存在するわけで、それは、それなりの合理性があるといいますか、収益事業をやってないので、片一方で知的財産はマージナルコストゼロですから、収益事業をやってないところでも使ってもらうのは、むしろ研究者にとっても利益がありますので、もちろん公的な性格をもっているから安くしてあげるというのは、これはまた、お願いベースの話だと思いますけれども、みずから事業化するということはないのは確かだと思いますけれども、むしろ趣旨を書くとしたら、みずから利益を上げないというか――ライセンス料をとるという意味では利益が上がるということになるのでしょうかね(笑声)、「業として」というところは私も賛成、大学も業だと思いますので、ここは全くそのとおりで、しかし、大学の支払い能力が限られていることも確かで、ロイヤリティに差をつけていただくというのは非常に合理的な、アカデミックディスカウントはあってもおかしくないし、ライセンスというのはユーザーに応じてライセンス料を設定するというのは合理的な考え方ではないかと思います。 |
相澤委員 |
業の方は、だれが解釈しても、ほかの解釈はないので、ここの記述を変えたところで何の気休めにもならないと思います。むしろ、これは、侵害になる。だから、どういうことをしなければいけないのだということを考えてもらった方が良いと思います。 |
渡部委員 |
大体同じなのですけれども、安心させてほしいから安心させようというのは余り意味がないと思うので、むしろ真剣に考えて――多分知財本部の方かなんかにヒアリングされたのかもしれませんが、ほとんどまだ真剣に考えているという状態ではありませんので、ここは、むしろ、きちっとした問題提起をしないといけないと思うということで、「業として」のところは強く書いていただく。 |
長岡座長 |
あとは、安心させるという意味では、日本の特許法ですと、主題についての研究は侵害にならないというところは明らかに確定されてますので、ここだけしか読まない人がいると思いますので、それはつけ加えておいてもいいのではないか。主題についての研究ですね、これは前段にあることをそのまま書くだけだと思いますけれども、それは書いておくと安心をする面もあるのではないかと思います。 |
江崎委員 |
これは、このような内容をまとめて、こういう現状ですというのを出して、終わりなのでしょうか。それとも、だから何かをしなければいけないという前段となるのでしょうか。 |
長岡座長 |
それは別の問題です。 |
南技術調査課長 |
この取扱いですけれども、とりあえず現行の69条はこういう考えであると、まず周知を図ることが一番大事だと思っておりますので、今回こういう形でまとめさせたものを、文科省等の関係府省にお示しし、周知を図っていただいた上で、さらに何か手当が必要ということになれば、それはまた、その時点で検討させていただきますが、とりあえず周知を図るための素材を確定させていただきたいということでございます。 |
江崎委員 |
ただ周知のためだけだったらいいのですけれども、この後どうするかという話になると、海外で、例えば中国とかシンガポールとか、そういうところでどうなっているかというのも大事で、そういうところが及ばないというのならそのような国に研究拠点をもっていけば何の問題もなくなるわけです。ですから、国際的な競争を企業が維持するためにどんな行動をとっていくのかということもあわせて考えておかないと、日本だけの問題ではないのではないかと感じてました。 |
南技術調査課長 |
現在、米国やヨーロッパの主要国についてはまとめさせていただいておりますが、このワーキンググループとしての最終的な報告書はもうしばらくしてといいますか、いろいろな議題を検討した後で最終的にまとめたいと思っております。よって、それまでにもう少し調査して、分かる範囲のものは付け加えてワーキンググループの報告書としてまとめさせていただくことでよろしいでしょうか。―― |
長岡座長 |
そういうことで、とりあえず現状整理したものを出させていただいて、その後、少し時間をたって、もし改正すべきところとか、そういう問題がありましたら、そういう点も含めた検討は別途して、そこは報告書の段階で審議をさせていただくということ……。 |
秋元委員 |
ちょっとこれに付随してなのですが、これをずうっと読ませていただいて、確かに「試験又は研究」というのは日本の69条でございますが、欧米その他等を比較しているところ、あるいはTRIPSのところで、リサーチという言葉はないですね。だから、ほかのところは、どちらかというと試験という意味であって、試験・研究を比較しているのではなくて、研究という言葉は、むしろ日本にかなり特異的な言葉だろう。そうであれば、「試験・研究」を、たしかお聞きした話だと、日本としてはイクスペリメントという考え方で世界的に出しているということなので、むしろそれを明確にしないと、「試験・研究」について世界はこうだよというのではなくて、むしろ「試験」についてで、「研究」というものは日本独自の問題じゃないかなという気がしないでもないと思います。 |
南技術調査課長 |
そこは、条文上、日本は「試験又は研究」という独自の言葉を使っておりますが、ここでいわんとしていることは、69条は「試験又は研究」という言葉を使い、CPCやヨーロッパ各国は「試験」という言葉しか使っていませんが、条文の解釈上は、基本的には差違がない。アメリカは非常に狭いですけれども。 |
秋元委員 |
先ほど申しましたように、ヨーロッパ、アメリカ等ではリサーチという問題については、こういう議論は基本的に今までなかったわけですね。だから今度、サンタバーバラで初めてリサーチという言葉が出てきているので、欧米での議論はすべてイクスペリメントなのです。それがどうも、ここを読んでいると、日本の「試験・研究」は、どうしても「研究」という言葉が入っているもので混同してしまうような気がしないでもないですね。 |
南技術調査課長 |
恐らくおっしゃるとおりで、誤解の発端は「試験又は研究」に「研究」という言葉が入っているがゆえに、大学等を含めて誤解を与えているのではないかと思っています。したがって、今回、こういったものを出して、「試験又は研究」といっても、69条の例外としている範囲はこういうものですよ、というのを明確にさせていただきたいということで、「研究」という言葉が入っているから、特に日本が広い範囲を認めているわけではないことを明確にするという意味でございます。 |
長岡座長 |
よろしいでしょうか。――必要な修文を加えまして、これで一応セットさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 |
南技術調査課長 |
続きまして、資料5を説明させていただきます。当初説明させていただいた際に、69条で完全に特許権に穴を開けるという方法とは別に、裁定によってある程度ライセンス料を抑えた実施権の設定を強制的に行うという道もあるのではないかというご指摘を受け、とりあえず本日は、日本の裁定制度についておさらいをさせていただきたいということでございます。 |
長岡座長 |
非常にわかりやすい説明、どうもありがとうございました。 |
相澤委員 |
1つ細かい点なのですが、外資委員会の専門委員会の報告書は、内外差別の議論をしていたときのものなので、いまどきこれを載せるというのは、そういうことを意図しているのではないかととられるおそれがあるので、載せない方がいいと思います。 |
長岡座長 |
外資審議会委員会の報告ですけれども、特許庁の審議会等との関係はどうなるのでしょうか。 |
南技術調査課長 |
外資委員会に特許庁が出席して、特許庁の見解を述べ、それが報告書の中に記載されているということでございます。 |
長岡座長 |
輸入が不実施にみられるというのも、ちょっとTRIPSとも合わない感じがするので、確かに相澤委員のおっしゃるように、少し古い運営要領等がそのまま残っているという感じはします。 |
相澤委員 |
運用の要領の問題は現在の問題ですけれども、外資委員会のものは、古く、なおかつ、内外差別が色濃く出ている議論ですから、いまどきこれを報告書に載せて、一体今は何をしているのかという誤解を受けるおそれがあるので、載せない方がいいのではないかと思います。 |
南技術調査課長 |
相澤委員のご趣旨は了解いたしました。趣旨としては、決してそういうことではないことはご了解いただいていると思いますけれども、93条の運用要領の記載自体も、これだけ読んでもあいまいだということで、過去、93条の解釈について言及した事例があるかどうかを探したところ、これしかなくて、ご紹介させていただいたわけでございます。 |
相澤委員 |
それはよくわかります。 |
南技術調査課長 |
もう一つ補足をさせていただくと、少なくとも現行特許法におきましては、裁定制度はこの3つのパターンしかないわけでございます。先ほど秋元委員から提起された問題は、基本的には利用関係の特許であれば、当然92条の対象になり得ると思いますけれども、1のケースで不実施というのは余りないと思いますし、公共の利益のためというところも、これだけでは読み取れませんけれども、先ほどのケースもなかなか93条でも読み取れないのではないかなと思っておりまして、現行の特許法における裁定制度ではなかなかカバーできないのではないかということを補足させていただきます。 |
菊地委員 |
8ページの事例はないということなのですけれども、不実施9件、利用関係14件というのは、例えばどんなもの……。 |
南技術調査課長 |
技術でいくとかなり多種多様でございますけれども、織機であったりとか、これは不実施です。あとは、よく評判になりますのは、医薬品なんかもございます。医薬品はほとんどが利用関係です。それ以外には、技術的にはかなり多種多様ですね。機械類のものもございますし、どちらかというと、化学系のものは利用関係の裁定請求が多いと言えるかと思います。 |
秋元委員 |
ちょっと確認なのですが、日米包括合意というのは、日米間のバイラテラルでございますけれども、内外差なしということになれば、日米合意であってもすべて国際的に同じように扱わなければいけないという前提になるわけですね。そうしますと、議論の蒸し返しではございませんけれども、94年当時はTRIPSの議論が進んで、ほぼ合意に達している時期に、先ほどいった利用関係について、TRIPSよりも非常に厳しい枠がはまっている。現状考えますと、特許庁さんのデータからもみまして、昨年度も中国は世界第2位のバイオ関係の出願国になってしまった。中国は利用関係の裁定実施権はTRIPS上、特許法にはきちっと入れている。日本は、これは日米合意があり、中国に対しても同じように適用しなければいけないとなったときに、日本の先端技術分野ということで4分野選んでおりまして、ライフサイエンスも入っておりますけれども、そこで中国と日本の間に非常に大きな差が出てしまうのではないかということが十分危惧されるのですが、これについて何かコメントございますでしょうか。 |
南技術調査課長 |
92条の運用に当たって、国による差別は基本的にはありませんので、この合意に基づき、日本国においては、請求人がどの国の方であっても同じように適用するということで、TRIPS上は問題ないと考えております。 |
相澤委員 |
それに関して、最恵国待遇のスタンド・スティルの適用の可能性についても一応検討しておいていただけますか。最恵国についてはスタンド・スティル条項があったはずなので、それについても一応検討してください。 |
竹田委員 |
一言申したいのですけれども、TRIPS協定ができたわけですから、これから日本としても再交渉して日米合意による制約はとるべきじゃないですかね。TRIPS協定後も制約を受けるのはいかにもおかしいですね。交渉はなかなか難しいのでしょうけれども。 |
長岡座長 |
特に問題だとおっしゃっている面はどの面でしょうか、もしよろしければ。日米合意とTRIPS協定の違いでですね。 |
竹田委員 |
要するに日米合意により92条の利用関係の裁定実施権が実質的には動かせないわけでしょう。ところが、TRIPS協定の方の規定では、ちゃんと条件は決まってますけれども、利用関係のある発明が技術的な意義があるというような場合には、裁定請求してよいという考え方になっているわけです。それだったら、アメリカにもよく話をして、事情が変わったのだから、もうあの取り決めはやめようじゃないかというような話はできないのですかね。 |
南技術調査課長 |
その点については、この合意自体はパッケージでの合意になっておりまして、依然として6ページにありますように、アメリカは未だ2つについて完全履行をされていないので、その交渉過程の中で、強制実施権についてどのように取り扱うか、これは単独で議論するわけにはいきませんので、全体戦略の中でどう取り扱うかについては、我々も検討したいと思っております。 |
竹田委員 |
アメリカだってTRIPS協定に同意しているわけですからね。 |
相澤委員 |
TRIPS協定はミニマムスタンダードを決めているわけなので、特許権の効力をより強くするということは、TRIPS協定に反するわけではありません。したがって日米合意は、もちろんTRIPS協定に反するものではありません。これは、パッケージディールでありまして、アメリカ合衆国においても、早期公開制度及び審査制度につきまして、こちらが完全に満足するとまではいかないものの、これに従った措置をしています。これについては、日米間で別に、差別的取扱いをするということになっているわけではないので、これをひっくり返すというのは、これまでに日米間で積み上げられた特許に関する信頼関係に重要な影響を及ぼすおそれがあるので、できない話ではないかなと思います。この問題について、反競争的行為の是正を目的とする場合というのは、明文で合意から除外をされているわけでありますから、競争上必要であるというような場合、あるいは公共の目的がある場合、例えば公衆の衛生に対して必要である場合には別に制限をしないのでありますから、この合意というものは尊重すべきではないかなと思います。 |
長岡座長 |
ほかにいかがでしょうか。――今回初回ということで、理解を深めるということで整理をしていただいて、非常にいろんなコメントをいただいて、理解も深まったと思います。ただ、結論がすぐ出るような問題ではありませんので、次回も引き続き裁定制度についてご議論をいただきたいと思います。事務局の方も各国の裁定制度の実施状況等も踏まえて、調査結果もご報告していただきたいと思っています。 |
南技術調査課長 |
それでは、次回のスケジュールでございますけれども、冒頭秋元委員の方から5月のINTERPATの会合のお話もございました。そこでの国際的なリサーチツールについての議論を踏まえまして、次回、この中で議論したいと思いますので、そのINTERPATの会合の後、できましたら5月下旬頃を目途に次回を開催させていただきたいと思っております。次回は、先ほど触れました裁定制度、諸外国の状況、運用状況などの調査結果を報告させていただくとともに、先ほどの国際的なリサーチツールの取組についてご報告いただいてご議論いただきたいと思っております。 |
長岡座長 |
では、以上をもちまして、第7回特許戦略計画関連問題ワーキンググループを閉会させていただきます。活発な議論、どうもありがとうございました。 |
-了-
[更新日 2004年3月24日]
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