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第10回特許戦略計画関連問題ワーキンググループ 議事録

(本記事作成:特許庁総務部総務課制度改正審議室)

  • 日時:平成16年9月29日(水曜日)10時00分~12時00分
  • 場所:特許庁 特別会議室
  • 出席委員:長岡座長、後藤委員長、相澤委員、秋元委員、安念委員、石田委員、江崎委員、大西委員、菊池委員、竹田委員、牧野委員、丸島委員、渡部委員

開会

長岡座長

まだ1人来ていらっしゃらない方がいますけれども、時間になりましたので始めたいと思います。
第10回の特許戦略計画関連問題ワーキンググループであります。本日は、御多用中のところを御出席いただき、ありがとうございます。
それでは、事務局で資料を用意していただいておりますので、資料の確認をお願いします。

新井技術調査課長

それでは、事務局から資料の確認をさせていただきます。
お手元に資料がございますが、まず、資料1といたしまして「議事次第・配布資料一覧」という一枚紙がございます。資料2といたしまして本ワーキンググループ委員名簿。資料3といたしまして「補正制度及び分割出願制度の見直しの方向について(案)」というものがございます。資料4といたしまして「特許発明の円滑な使用に係る諸問題について(案)」というものがございます。資料5といたしまして、日本製薬工業協会とバイオインダストリー協会の知的財産合同検討委員会によります座長あての「裁定制度の運用要領の改正提案」というものがございます。それから資料6。これは資料6-1から5まで枝番が振ってございますが、本ワーキンググループでの検討状況を踏まえた関連する団体からのコメントあるいは御意見等の資料がございます。
資料、相当程度ございますが、過不足等ございましたら御指摘いただければと思いますが、よろしゅうございますか。

長岡座長

どうもありがとうございました。

補正制度及び分割出願制度の見直しの方向について(報告書案)

長岡座長

二つございまして、一つは「補正制度及び分割出願制度の見直しの方向について」の報告書の案があります。もう一つは「特許発明の円滑な使用に関する諸問題について」で、こちらも案になっておりますが、最初の方は今までかなり議論してきておりまして、可能でしたら本日取りまとめの方向でまとめることができたらと思っております。2番目の方は新しく御提案もいただいておりまして、事務局のレポートもまだ完璧なものになっておりませんで、今回実質的な議論を尽くした上で、できれば次回、案という形で最終的に出させていただけたらと思っております。
そういうことで、最初は「補正制度及び分割出願制度の見直しの方向について」、報告書案がありますので、事務局から報告書(案)の御説明をお願いいたします。

南調整課長

それでは、補正制度と分割制度の見直しについて、資料3報告書案に基づいて御説明させていただきます。これまで何度か御審議をいただきまして、その御意見を踏まえて今回報告書案の形で取りまとめさせていただきました。
まず、表紙をめくっていただき、目次のところですが、これでこの報告書案のつくりを簡単に御説明したいと思います。
まず、「はじめに」という題で、これまでのワーキンググループの検討経緯を書かせていただいています。
それから、補正制度と分割出願制度とで章立てを分けて、第1章として補正制度について記述をさせていただいています。それぞれの冒頭に現行の我が国の制度の説明の箇所を入れております。補正制度につきましては1.で現行の補正制度の説明を入れております。第2章が分割出願制度でございまして、これも1.で「分割出願制度の現状」として現行法の説明をさせていただいております。
目次の2ページ目でございますが、第3章として、このワーキンググループの「まとめ」を1枚でまとめております。
それから、参考資料2として「米国の継続的出願について」として、アメリカの制度を1枚で簡単に説明した資料を今回追加しております。
それでは、まず、1ページ、「はじめに」でございますけれども、ここはこれまでの経緯でございます。詳細な説明は割愛させていただきますが、中ほどに特許戦略計画関連問題ワーキンググループの設立の目的として、特許戦略計画、推進計画、それから第156回通常国会における附帯決議等で検討すべき事項とされたものについて検討するために産構審の特許制度小委員会のもとに設置されたものですという説明を入れております。
昨年の9月から12月にかけまして、まず、「世界最高レベルの迅速・的確な特許審査の実現に向けて」ということで御審議をいただきまして、今年の1月に中間取りまとめを行いました。それに基づきまして、去る159回国会で特許審査迅速化法が可決・成立いたしましたということを述べております。
1ページの終わりの方ですが、当ワーキンググループで今年の1月から、積み残された課題であります分割出願制度、それに密接に関連する補正制度のあり方について検討をしてきました。今回この点について報告書を取りまとめたものですということを述べさせていただいております。
本体の3ページ、第1章として補正制度の説明がございます。1.「現行の補正制度」で、内容的制限、時期的制限、それから国際調和として5ページに日米欧の補正制度について簡単に比較表にしたものをまとめております。ここにつきましては現行法の説明ですので、今日の説明は割愛させていただきます。
本題でございますけれども、6ページ以降、まず2.で「最初の拒絶理由通知後の補正の制限」、いわゆるシフト補正の取り扱いでございます。これにつきましては、特許請求の範囲に記載された発明を大きく異なる発明、具体的には単一性要件を満たさないような発明については、今後のシフト補正の動向を見きわめながら制限を行うべきであるということで取りまとめさせていただいております。
7ページの(3)の「見直しの方向」でございますけれども、前回の御審議の中で指摘がありました、今年4月から実施されております料金体系の見直しによりまして、出願人でコスト削減のために一つの出願に複数の発明をとりあえず入れて、拒絶理由があればシフト補正を行って対応する、という傾向が高まるのではないかという懸念を書かせていただいております。で、今後シフト補正の動向を考慮しながら、最初の拒絶理由通知後のシフト補正は禁止すべきという方向性を出させていただいております。
それから、禁止といっても手続が非常に厳しくなるという印象を与えますので、なお書きで、出願人がシフト補正制限に違反した場合でも、欧米と同様に分割出願によって引き続き権利取得を図ることが可能という記述を入れさせていただいております。
前回と異なる点でいきますと、8ページ目の2でございます。「無効理由との関係」ということで、シフト補正を禁止したとしても、これはあくまで手続上の瑕疵であって、発明自体に実質的な瑕疵があるわけではないので、無効理由とまではすべきではないということを書かせていただいております。
9ページ3.でございますが、これは追加手数料を払えばシフト補正ができるようにしてはどうかという御提案に対する対応ということでございますけれども、結論的には、このような制度の導入については慎重に検討を行うべきではないかという方向でまとめております。これは、欧米においても追加手数料を納付すればシフト補正が認められるという制度はないということ。それから、追加手数料を支払いさえすればシフト補正がいつでもできるということで、かえってそういったケースが増加してしまうのではないかという懸念から、もう一つは、料金が絡みますので料金に係る手続がふえて手続が煩雑になってしまうのではないかということから、この検討については慎重に検討すべきという方向性とさせていただいております。
続きまして、11ページからが「分割出願制度」でございます。ここにつきましては11ページ、12ページで分割出願制度の説明を述べさせていただいております。
12ページの(d)でございますけれども、「分割出願の実績」。経年変化を掲載させていただいております。1998年から2003年の5年間で約2倍にふえているところでございます。ただ、それにつきましてはほとんどが審査請求をされ、特許率も通常のものよりも若干高い6割という値を示しておりますので、基本的に分割出願というのは出願にとって重要なものではないかということを予想しております。
これの制度改正の方向性の検討で、まず、13ページでございますけれども、米国にございます一部継続出願制度、いわゆるCIP制度を我が国に導入してはどうかということでございます。この点につきましては、我が国で強いて似たような制度といえば国内優先権制度というものがあるわけでございますけれども、これの利用可能期間の延長等については慎重に検討を行うべきではないかという方向でまとめさせていただいております。
特に米国におけるCIP制度は、14ページの図にございますように、自己の出願公開によって拒絶されない、アメリカのグレースピリオドの制度によって、さらにその効果が高まっているわけでございますけれども、グレースピリオドの議論というのは、まさに今、国際制度調和のパッケージの重要な一つになっているということもありまして、単に出願公開制度の期間を延長するだけではアメリカのような効果を期待できないということから、グレースピリオドの議論とのパッケージで慎重に検討すべきではないかということをここの結論といたしております。
それから17ページ、分割の時期的要件の緩和でございます。現在は、拒絶査定通知後、審判請求時に分割ができるような制度になっています。あと、拒絶理由通知後一定期間できるようになっておりますが、これを戦略的な権利取得の観点から特許査定後の一定期間に限って分割ができるようにしてはどうか。それから拒絶査定後については拒絶査定不服審判の請求という要件を不要にして、より分割をしやすくしてはどうかということでまとめさせていただいております。
特に(1)の2の「多面的な保護」というところにございますけれども、フロントランナーが基本的な発明について早期に特許を仮に取得できたとしても、技術開発やマーケットの動向、あるいは技術標準の策定の状況によって、必ずしもその特許をフルに戦略的に活用することができない状況というのもあり得ることから、分割の時期的要件を緩和する方向で検討すべきという方向でまとめております。
ただし、いつでも分割できるということでは、18ページの4にありますように、第三者にとって、いつ分割されるかわからないという監視負担が増えるということがございますので、分割の可能期間については、それぞれ査定後一定期間と限られた期間というふうに短い期間に限定することが妥当であろうということにしております。
それから19ページ4.で、分割の際のいわゆるダブルパテントの容認についての検討でございますけれども、米国にありますようなターミナルディスクレーマーのような個別に権利移転することを禁止する等の条件が整うのであれば、ダブルパテントを許容する方向で検討を行ってはどうかという方向でまとめております。ただ、これについてもSPLT等の議論も考慮しながら検討する必要があるだろうということでございます。
ここは同一性の判断が日米欧で異なっているということもありますので、そのあたりも含めて、三極あるいは国際的な制度調和の動向も見きわめながら改正について検討をしていくというところでございます。
20ページの下段の「見直しの方向」ということでございますけれども、これまで特にダブルパテントを禁止するということによって大きな問題が生じた事例は余り見当たらないということではございますけれども、今後、先ほど御説明した分割の時期的要件の緩和、特に特許査定後の一定期間に限って分割を認めた場合には、例えば技術標準の必須特許取得を促進する観点から同一発明についての分割を認める必要性も増してくるだろうと考えております。ただ、やみくもにダブルパテントを認めては、いわゆる権利の水増し等の弊害も起きる可能性があることから、21ページの中段にございますけれども、米国のようなターミナルディスクレーマーの宣言によって、もとの出願の特許と分割出願の特許の権利移転や権利終期が一体的に取り扱われるような乱用防止策もあわせて検討することにしてはどうかということでございます。
22ページで分割出願に関してのその他の検討課題として3点挙げております。いずれも導入に向けてさらなる検討をしていく必要があるということでございますが、1番目は、分割の中にニューマターが入っていた場合、現在の法律では出願日を遡及させないということになっているわけですが、これによりますと権利が有効か無効かで出願日が行ったり戻ったりというような混乱が生じることから、新規事項の追加の点については、拒絶理由、無効理由としてはどうかということでございます。
2番目が、分割出願について、もとの明細書を援用することによって出願人あるいは特許庁の負担軽減を図る方向で検討すべきということでございます。それから、その際に変更部分について出願人側に一定の説明をしていただく制度を導入する方向で検討するという内容でございます。
3でございますけれども、これはもとの出願と同一の発明を分割するというようなケースを防止する観点から、もとの出願において通知した拒絶理由を同一の分割発明においても効力を有するような方向で検討してはどうかということでございます。これは後ろの方でアメリカに同様の制度がございます。24ページの2に紹介されております。
米国においてファーストアクションファイナルということで呼ばれておりますけれども、継続的出願であって、分割された出願のすべての請求項がもとの出願の請求項からそのまま継続されていて、仮にそれがもとの出願で審査が継続されていれば、先に打った拒絶理由でそのまま最終拒絶されるようなケースについては、継続的な出願であっても1回目のオフィスアクションで拒絶することができるということで、単純に同じ発明を分割するというような分割制度の乱用防止、歯止めの制度を設けてはどうかということでございます。
ただ、3につきましては、日本における行政手続法の観点で、行政処分については必ず1回相手方に意見を述べる機会を設けなければならないという国内法がございますので、これについてはそれとの整合性の観点も踏まえて検討していく必要があるということを述べております。
以上のことから、25ページの第3章で、報告書のまとめとして見直しの方向をまとめさせていただいています。
まず1点目が、シフト補正については今後のシフト補正の動向を見きわめつつ制限を行うべきである。2.は、特許査定後、拒絶査定後の一定期間に特許出願の分割を認めるべきである。3.は、手続の合理化の観点から、新規事項を含む分割出願取り扱いの変更。これは拒絶理由通知、拒絶理由なり無効理由にするという点、それから分割出願への元の出願の当初明細書の援用等を行うべきであるということについて改正の方向で検討していくということでございます。
その他の、追加手数料を払うことによってシフト補正を容認する制度とか、米国におけるCIP制度の導入、それからダブルパテント、同一発明についての出願分割の可能化についてはさらに慎重に検討を行っていくべきということをここで述べさせていただいております。
これらの見直し、改正の時期でございますけれども、今年の1月に発明の単一性の改正が行われました。補正に関しての審査基準も昨年末に改定しております。今年の4月から料金体系の変更が行われた等々かなり環境が変化していることから、これらの影響を見据えながら見直しのタイミングをはかることが適当ではないかということでございます。
もう一つの考慮要素としては、実体特許、SPLT等の国際的な議論の動向もあわせて考慮していくべきではないかということでございます。ただ、これもこのワーキンググループの中で何人かの委員の方から指摘を受けておりますけれども、実務に影響が大きくて、かつ密接に関連する制度の見直しは小出しではなくてまとめて一気に行うべきということもここでまとめております。
以上、これまでの議論を踏まえまして、このように報告書案をまとめさせていただきました。これにつきまして御意見を頂戴したいと思います。

長岡座長

ありがとうございました。
それでは、本報告書案について御意見や御質問がございましたら御自由にお願いいたします。
秋元委員お願いします。

秋元委員

13ページ、15ページにあります「CIP制度の導入」、等、これは「早急に結論を出すことなく引き続き慎重に検討を行うべきである」と記載されていますが、検討を行っていただくのはいいんですが、どこで検討を行うかということがわからないんです。また、「早急に結論を出すことなく」というところなんですが、産業界としては、私どもの場合にはこれはむしろ「早急に」と入れてもらいたい。
それに絡んで、非常に細かいことになるんですが、表現として、例えば14ページの下から2行目のところに、「期間を6月だけ延長することにほぼ等しいと考えられる」。「6月だけ」というのは否定的な表現なんですね。私どもは1日でも2日でも、これは非常に大事なことなので、要するにこういう否定的な言葉があるから早急に結論を出すべきではないというふうにつながってしまうように思います。特に私どもにとっては6か月も延びるということは非常に大事なことなので、ぜひその辺の表現もお考えいただきたいと思います。

南調整課長

まず、1点目のどこで検討していくのかということでございますけれども、当然ながら随時特許庁の中でも検討いたしますが、これらの見直し事項につきましては、我々もさらに詳細な勉強もしていかないといけないだろうということで、今年度、これからですけれども、知的財産研究所で、これらの事項をより深掘りするような検討を継続して行っていくつもりでございます。
それから、最後に御指摘いただいた14ページの「だけ」という記載ですが、ここは見直しをさせていただきます。

長岡座長

丸島委員どうぞ。

丸島委員

私も今のCIP制度の導入ということについてはぜひお願いしたいという立場でございます。前回からも申し上げておりますけれども、今までの特許法改正。最近のですね。審査を促進するとか、処理を早くするとかいう視点での改正が非常に多かったと思うんですが、推進計画に入っております、いわゆるフロントランナーを保護するという視点での特許法改正は今回が実質的な改正だろうと私は理解しているんです。そういう意味で、フロントランナーを救済するといいますか、要するに基本発明をいい特許として取るという仕組みの一番のもとはCIP制度の導入だと私は思っております。そういう意味で、ぜひ前向きな検討をお願いしたいという気持ちでございます。
もう一つ、結論のところで、内容的にはいいけれども時期を考えてというような表現がございますが、その中で例えば分割の時期の問題ですね。これはこのペーパーでも是認をしている。査定後の一定期間の分割を認めようと。これは国際調和の点でも支障はない。それからもう一つ、「同一発明についての出願分割の可能性」というところで、ここでは「ダブルパテント」とか「同一発明」という表現を使っておるんですが、これについて、実質同一ということであればやはり三極での相違はないということを考えますと、少なくとも分割の時期の変更、それから実質同一の分割の許容ということについては今でも法改正をすべきではないかと思っておるんです。
先ほど御説明がありました、こういう関連のものは一度に補正すべきだ。基本的には私もそうだと思います。ただ、そのために全体が引っ張られてなかなか改正されないということですとメリットを享受できませんので、私は、国際調和の立場から支障のない点、しかも日本の出願人にとって、先ほどのフロントランナーに効果があるという項目については早目の実行をお願いしたいと考えております。
以上であります。

南調整課長

改正のタイミングですけれども、まさに今、制度調和の議論とか、色々議論されておりまして、これも完全には無視できないと考えております。ただし、だからといって、その議論が延々と続くようであれば、我々もどこかで見切って、「見直しの方向」でまとめた点につきましては早急に改正の検討を行う、改正に踏み切るということは十分にあり得ると思っております。
ただ、見直しのタイミングについてなかなか見きわめがつけられないということで若干ペンディング状態にさせていただいておりますが、御懸念のように制度調和の議論によって延々と引き延ばされるようなことはないように我々もしたいと考えております。

長岡座長

菊池委員お願いします。

菊池委員

分割の話ですが、まとめの部分では「一定期間」。章中では一定期間の「短い期間」。さらに、その前段では、「多様性」という点を強調なさっている。一定期間の設定を行う際に、分野ごとに差異を作るという意味なのか、あるいは、極めて瞬時ということなのでしょうか。

南調整課長

「短い」というところについては特に他意はございません。

菊池委員

失礼いたしました。

長岡座長

大西委員お願いします。

大西委員

前回も、お願いといいますか、話をしたんですけれど、シフト補正のタイプ2の方なんですけれど、37条違反が入って発明A、Bがクレームになった場合に、37条違反で「Aについて審査」と書かれているんです。現行もそうなんですけれど、単一性を満たさない複数の発明が明細書に書いてある。その場合に審査官が往々にして最初のクレーム-クレーム群と言った方がいいんですか-を審査して、単一性要件違反プラス例えば29条違反という形で出されるんですけれど、出願人としては実はAでなくてBの方にウエートを置きたかったんだとか、そういうケースもあると思うんです。USなんかはリストリクションがかかりますし、一度どちらかを選択するということを行った後で実体的な29条とか新規性、進歩性の判断になると思うんです。その辺を若干考慮していただきたいと思っています。
あと、これは物すごく細かいかもわかりませんけれど、A、BがあってAだけ審査したときにBの審査請求料を返還されるのかどうか。その辺も若干あるのかなと思うんですけれど。
もう一つは大きいテーマなんですけれど、分割出願。USの場合は分割出願も含めて広義で継続出願、コンティネーションという表現がされていると思います。USの場合の継続出願は狭義の本当のファイルラッパー全体を継続する場合と一部を分割する分割出願ということであるんですけれど、今回のダブルパテントという意味を含めますと、USの狭義の方の継続出願的な分割出願も認めてもいいんじゃないかと思うんです。
具体的に言いますと、分割出願というのは、もとの出願があって、そこから違う出願を別に出願するということなんですけれど、もとの出願がなくなってしまって分割出願だけが生きるという形の分割出願というのがあればダブルパテント等も問題が起こらないし、そういうことは認められないのでしょうか。

南調整課長

今の御指摘の3点でございますけれども、今回このような方向性は出させていただきますけれども、具体的な制度設計をこれから検討していくことになるかと思いますので、その検討の過程で、御指摘の3点についても検討対象としてこれから勉強していきたいと思います。

長岡座長

他にいかがでしょうか。
相澤委員どうぞ。

相澤委員

「まとめ」の25ページの見直し時期についての読み方ですが、シフト補正の制限もそれ以外の補正、分割についてもまとめて行うというふうに読んでよろしいのでしょうか。確認ですが。

南調整課長

基本的には、あまり小出しの改正はよくないと思っておりますので、まとめて行うということで結構でございます。

長岡座長

江崎委員どうぞ。

江崎委員

私は個別の制度の問題はここで十分指摘されているとおりだと思います。もう少し大きな視点で言うと、全体の制度として見たときに、三極の制度の調和を早くやることが我々にとって非常に大きなメリットがあると思っております。
CIPがそういう制度の調和の中でどう位置づけられるのかということと、そのメリットをどうとらえるのかということを踏まえてこれを日本で導入することのメリットとデメリットをもう少し慎重に考えるべきでしょう。確かに権利を取りやすくなるという部分はあるのですが、所詮国内だけです。ワールドワイドに取っていくということが非常に重要な中で、局地的に便利になるということは、確かにメリットは一部あるとは思いますが、大きな制度の中での調和ということのメリットと比べた場合にどれほどの意味を持つのでしょうか。この点を踏まえて総合的に考えるべきではないかと考えます。

長岡座長

丸島委員どうぞ。

丸島委員

今の御意見は大義名分的には非常に通りやすいと思うんです。ただ、現実には、今、時事刻々競争状態を行っているわけですよ。それで産業競争力を高めようとして各国が政策的な制度を運用している中で、統一を理念として、そればっかりに頼って国内法を改正しないというのは、私はやっぱり間違いだと思うんですね。もちろん将来的にそういう方向に向かうというのは私も賛成ですけれども、いつそれが実態的に統一されるかわからない状態において、それまですべてやらないでおこうというのはどうかなと思います。
以上です。

南調整課長

今の御両名の御指摘につきましては、まさに今、日米欧三極で審査結果、サーチ結果の相互利用というのを推進してきて、かなり実務的にも詳細な検討の段階に入っている状況でございます。したがいまして、今後それぞれの三極の審査結果の相互利用の観点で、今回の例えば制度改正等がそれに支障があるのかないのか。そういった観点も制度改正を行うか行わないかの峻別の視点として検討していきたいとは思っております。

長岡座長

他に御質問とかいかがでしょうか。
参考資料によりますと、先発明主義の変更を条件としてグレースピリオドの導入が実体特許法条約の議論でされているようなんですけれど、そういう意味でグレースピリオドとかCIPの問題というのは国際的なインプリケーションが非常に大きいというふうに理解しておりますけれど、その辺はいかがでしょうか。

南調整課長

まさに委員長のおっしゃるとおりでございます。したがって、その点にかかわる問題についてはかなり慎重な検討が必要ということで結論をまとめさせていただいております。

長岡座長

他にコメントとか御質問はいかがでしょうか。
大体御意見も出尽くしたと思いますので、本日も若干追加的な御指摘もいただきましたので、必要な修文を加えた上で報告書とさせていただきたいと思います。
必要な修文につきましては座長である私に一任していただきたいと存じますけれども、御異論はございませんでしょうか。
〔「異議なし」の声あり〕

長岡座長

どうもありがとうございます。

特許発明の円滑な使用に係る諸問題について(報告書案)

長岡座長

では、次のトピック、特許発明の円滑な使用に係る諸問題に移りたいと思います。
特許法第69条の試験・研究の例外という論点と裁定実施権という二つの論点があります。第1の論点については既に報告書をまとめておるわけですけれども、追加的に調査をしていただいたこと、また、特許発明の円滑な使用という大きな目的の中で一貫した報告書の中に位置づけたいということで試験・研究例外もカバーしています。しかし、議論は裁定を中心にさせていただきたいと思います。
では、よろしくお願いいたします。

新井技術調査課長

それでは、事務局から簡単に御紹介させてもらいます。
まず、座長から御紹介がございましたように、報告書の体裁といたしましては、試験・研究の例外、裁定制度、これは共通の論点がございますので、そういう意味で「特許発明の円滑な使用に係る諸問題について」という表題にいたしまして、試験・研究、裁定、二つあわせた報告書という形で述べたいと思っております。
目次でございますが、まず、両課題についての検討の背景を簡単に御紹介させていただいています。
それから、第1章では「特許権の効力が及ばない『試験又は研究』の例外について」ということで述べておりますが、我が国の試験・研究の例外の状況ですとか、諸外国における試験・研究の例外についてということで、色々と調査させていただきましたので、そのところを御紹介させていただいて、最後に「まとめ」ということで括っております。
第2章は「裁定実施権による対応の可能性について」ということで、これにつきましては、まず、我が国における裁定制度について御紹介させていただくとともに、2.のところにございますが、「諸外国における強制実施権制度の概要」ということで、欧米、アジア等の調査結果を掲載させていただいております。3.でございますが、ここは前回のワーキンググループでも御案内させていただきましたけれども、幾つか検討するに当たっての論点がございます。前回御紹介した論点に沿ってここを書き下していきたいと思っております。最後に、ワーキンググループでの議論を踏まえまして、「今後の方向性」ということで、まとめに近いようなものを書き下していきたいと思っております。そして、その後に関連する資料を参考資料として添付するという体裁をとりたいと思っております。
それでは、次に内容についてですが、試験・研究の例外についてというところが始まる前に、資料の1ページ目に「検討の背景」ということで、ある意味で「はじめ」的なところの内容を入れております。
まず、「検討の背景」の第1パラグラフですが、発明の創造活動の活性化あるいは特許の有効活用という観点から、他人の特許発明の円滑な利用に関しては、以下のような問題点があるということで紹介しております。
次に、第2パラグラフ。「まず」で始まっていますが、ここでは69条関係、試験・研究の例外規定に関する検討の背景を紹介しております。
まず一つですが、大学・公的研究機関、大学等の研究活動について、他者の特許発明が円滑に使用できないと自由な研究活動を阻害するのではないかという懸念が一点。それから、「また」以降ですが、汎用性が高く代替性の低い上流技術について、特許が取得されて特許の利用が制限されますと、この分野における後続あるいは下流領域の研究開発活動に大きな影響を及ぼす可能性があるのではないかという懸念があります。こういう懸念を受けまして、今般、試験・研究の例外の範囲の明確化が求められているというところでございます。
次のパラグラフ、「さらに」というところですが、ここはいわゆる裁定に関する検討の背景を紹介しております。先ほどの上流技術については、69条とともに裁定実施権という観点からも対応可能性の検討が求められております。それから技術標準に資するパテントプールを支援する観点から色々と課題が出ておりますので、技術標準という視点からも裁定実施権による対応の検討が求められているというところを紹介しております。
最後のパラグラフですが、「上述のような指摘を受け」ということで、2003年に公表になりました推進計画での指摘の箇所を列挙してございますし、2ページ目でございますが、今年出ました2004年バージョンの推進計画でも引き続き検討を行うことが求められているということで、推進計画2004の御指摘のところを引用させていただいて御紹介させていただいております。
こういう検討の背景を受けて、第1章には、まず、試験・研究の例外についてということで、ページで申しますと5ページ目になります。ここは頭書き的なところがございますが、今触れたような内容を若干かみ砕いて書いてございます。「研究現場における知財意識の高まり等を背景といたしまして、大学等での研究活動における特許権等の権利関係が明確化されなければ、研究活動に大きな影響を及ぼすとの懸念が示されている」ということです。
「一方」ということで、先ほど申しました上流技術に関しても色々と懸念がなされているというところでございます。
このような指摘を踏まえまして、試験・研究の例外のところにつきましては、我が国における従来からの考え方を整理するとともに、海外の状況も考慮しながら、これらの「懸念に対する本規定による対応可能性について検討する」ということになります。
6ページ以降は、既に審議会のところで紹介して御議論いただいておるところでございます。ただ、今回新たに調査事項としてアジア諸国における試験・研究の例外ということで宿題をいただいておりましたので、それを御紹介させていただきたいと思います。
28ページ目にアジア諸国ということで台湾の例について書いてございます。台湾についての試験又は研究の例外ということですが、台湾におきましても現行の特許法の下で特許権の効力が及ばないということで、試験・研究の例外が規定されております。
「よって……」というところに書いてございますが、「『研究・教育又は実験の為にその発明を実施し、営利行為に属さない場合』には、特許権の効力が及ばない」というふうになっています。
また、この規定に関し、裁判関係で争われた事例はありません。
「後発医薬品の臨床の試験等と『試験又は研究』の例外」というところですが、これも裁判事例はございません。
3ですが、「大学等における……」というところで、紛争事例ですが、これもございません。
29ページ目からは「韓国」についてです。ここも例外規定がございまして、研究又は試験をするための特許発明の実施が特許権の効力が及ばない範囲として規定されております。台湾と同じように裁判で争われた事例はございません。
2の後発医薬品の関係ですが、ここでも裁判で争われた事例はございません。ただ、「学説においては……」というところですが、「特許期間満了前の臨床試験を非侵害と見なすのが通説である」ということで、これは言うなれば我が国の通説に似たような形になります。
3の大学等における紛争事例ですが、これもございません。
30ページからは中国についてでございます。中国におきましても試験又は研究の例外が規定されておりまして、「科学的な研究及び試験のために特に関係特許を使用する場合」が該当すると規定されております。
例外に関する裁判事例が2点ほどございまして、まず、30ページの中段にございますが、これはごみ処理技術に関する実用新案でございます。判決の内容は[判示事項]のところに書いてございますが、かいつまんで申しますと、これは特許侵害をしていた事例というところの判例でございます。
31ページにもう一つの事例がございます。この判決ですが、判決文自体は未公表ですが、事務局で色々と資料を集めましてまとめました。最終的には、和解してしまった事例でございます。
2の後発医薬品関係ですが、これについて特別の規定はございません。ただ、「他方」ということで、32ページに書いてございますが、かいつまんで申しますと、権利期間満了2年前以降におきましては、その間の臨床試験等につきましては侵害ではないというものでございます。
3ですが、大学等における紛争事例。これは裁判で争われた事例はございません。
33ページ目以降は、インドについてでございますが、ここでも特許法の中で決められておりまして、3行目に書いてありますが、「専ら研修生の教育活動を含む試験又は研究のためにのみ製造又は使用することができる」ということで規定がされております。裁判事例についてはございません。
2の後発医薬品等の関係ですが、ここでは規定がなされまして、枠囲いの上3行ですが、最近になって後発医薬品の販売承認取得を目的とした特許発明の利用が特許侵害とはならないことが規定により明確になりましたが、2002年の制定後、これまでこの規定に関した裁判事例はございません。
3ですが、大学等における紛争事例。これもございません。
34ページ目、シンガポールでございますが、シンガポールにおきましても1994年に規定がなされております。上から4行目ぐらいに(a)と(b)というふうになっておりますが、(a)は「私的にかつ非商業的目的でなされる場合」、(b)は「特許発明の主題に関し試験目的でなされる場合には」例外になることが規定されております。裁判事例はございません。
2の後発医薬品等の関係ですが、枠囲いの上3行目ぐらいですが、この件に関しまして、医薬品の販売許可申請のためにする場合についての条項が追加されたということでございます。裁判事例はございません。
3の「大学等における……」というところですが、これも裁判事例はございません。
このように、アジア諸国につきましても調査を行ったわけですが、中国で裁判事例が2例ほどあるものの、結果として、これまで御審議いただいた内容を変更するような状況には至っていないというところでございます。
それで、これまでのワーキンググループでの御審議を踏まえまして、最後に「まとめ」ということで35ページ目に、やや冗長な文章でございますが、まとめさせていただいております。
簡単に御紹介させていただきますと、「本章では……」というところがございますが、ここでは課題が二点ありますということで、一つは大学等での研究活動についての問題。もう一つはリサーチツール等についての問題。いわゆる上流技術に関する問題。この二つの観点から、69条について、諸外国も含め判例、学説等の事実関係を調査した結果を提示することにより、改めて整理・検討したというところでございます。
本規定の解釈に言及している我が国の判決としては、第2パラグラフにございますように、後発医薬品に関する最高裁の判決があるわけですが、これはある意味で特殊な事例ということで、従前御紹介したとおりでございますので、この判決によって69条1項の一般的な解釈が定まったものではないということで、一般的に試験・研究の例外をどう解釈するかについては十分な判例の蓄積がありませんということです。
「一方……」というところは通説を述べてございます。通説によれば、「試験又は研究」の範囲をその対象及び目的により区分し、対象については特許発明それ自体に限定するとともに、目的についても「技術の進歩」を目的とする行為という、このところに限定すべきとされています。これまでこの通説に対する特段の異論は唱えられておりませんし、他の色々な解説本等を拝見いたしますと、この通説を引用されているケースが一般的でございます。
「他方」ということで、ここでは、先ほどアジアのところでも御紹介いたしましたけれども、欧米、アジアを含めまして外国について調査したところを簡単にまとめてございます。簡単に言えば、諸外国におきましても、試験又は研究の例外の範囲についての解釈は我が国の解釈とほぼ同様だというところでございます。
下から第2パラグラフの「以上のような」ということでございますが、「第69条第1項に規定される特許権が及ばないとされる『試験又は研究』の範囲については」ということで、上記通説の考え方に特段の問題はないのではないかというところです。
結論めいたところですが、「したがって……」というところでございますが、これも審議会の中での議論をまとめただけでございますが、「我が国の特許法が営利又は非営利目的により他者の特許発明の実施に区別を設けていないことに鑑みると、実施者が企業(営利機関)か大学等(非営利機関)であるかの相違によって特許権の効力が及ぶ範囲が異なるものではない」というところでございます。
36ページ目にございますが、大学におきましても、今後産官学連携が活発化していく中で、場合によっては訴訟の当事者となる可能性もありますので、第69条第1項に関する正しい認識が求められるのではないかというところです。
リサーチツール等の問題につきましても、通説の解釈に従えば、特許発明それ自体を研究対象とする場合を除きまして第69条1項の適用は否定されると考えられますというところでございます。
試験・研究の例外につきましては、このような形で報告書の第1章という形でまとめたいと思っております。ここで一旦御説明を終わらせていただいて試験・研究についての御議論をいただいた方がよろしいかと思いますので、事務局からの説明はここで中断させていただきます。

長岡座長

どうもありがとうございました。
基本的には調査結果を追加していただいただけだと認識しておりますが、その点も含めて、御意見や御質問がございましたら、よろしくお願いいたします。
相澤委員どうぞ。

相澤委員

外国を紹介いただいてあれなんですけれども、これは多分特許の制限の問題になるので条約上の問題があるんですが、この点について言及がなされていないのは何か理由があるのでしょうか。

新井技術調査課長

条約上のところまで踏み込まなくても、欧米あるいはアジアのところを調査すれば、それで事足りるのではないかということで、ここではあえて言及はしてございません。

相澤委員

補足いいですか。

長岡座長

どうぞ。

相澤委員

といいますのは、現行規定をもし修正するとすれば当然条約上の問題を検討しなければなりません。現状のままでいいという趣旨のまとめなので、検討する必要は無いということも言えますが、修正した方がいいという意見がないわけではないので、それ修正には、条約上の制限があるということを明確にしておいた方がいいのではないかと思います。

新井技術調査課長

わかりました。御指摘の点、検討させていただきます。

長岡座長

秋元委員お願いします。

秋元委員

知的財産推進計画の中では、こういう創造分野で大学等の知的財産の使用を円滑化すると記載されています。最後のところは「円滑化するための措置を講ずる」という文章にたしかなっているかと思います。それで担当省庁は総合科学技術会議、文科省、経産省というか特許庁ということになっております。最後のまとめのところで、調査研究、検討はいいんですが、「措置を講ずる」ところはこの委員会でなくて別のところでやるのかどうかという問題が……。要するに、どういう措置を講ずるかというのはどこでやるのかというのが不明です。これはこのワーキンググループではないということなのか私にはよくわからないのですが。

長岡座長

ありがとうございました。
事務局如何でしょうか。

新井技術調査課長

措置につきましては色々なやり方はあろうかと思います。この審議会でもたしか御紹介があったかと思うのですが、ここでの試験・研究の例外に関する報告書を取りまとめて、関係する省庁、具体的には文部科学省ですが、そういうところを通じてこの考え方を周知徹底するというのが措置の一つとして考えられるかと思います。

秋元委員

文科省等に措置を講じてもらいたいということがあるのですが、ここに「大学等」と書いてあるのは、「等」の中に、企業の上流というか、基礎的な研究も含まれているというところで「等」が入っているんですが、文科省だけでやるとなかなか難しいだろうと思います。もう一つ、こういう調査研究というか報告書を出されて、現実には69条の試験・研究の解釈については3月3日に結論が出ておりますが、それ以降文科省が動いていないというふうに聞いております。そうしますと、これを出したままで動かないということになると、片手落ちというか、もともとの推進計画に沿っていかないと思いますので、この辺についてはぜひ、どういう形で措置を講ずる方に持っていくかということを考えていただきたいと思います。

新井技術調査課長

御指摘の「大学等」に含まれるところとしましては、産総研等の色々な公的研究機関等がございます。そういうところに対してもこの考え方を周知徹底していく必要があるのではないかと考えております。
文部科学省との関係につきましては、我々もこれまで何回か御相談させていただいているのですが、今の御指摘もありますので、近々、たしか今週だったと思いますが、また本件につきまして御相談させていただく運びになっております。

長岡座長

では、時間も余りありませんので、試験・研究の例外を含めて全体の報告書は次回議論できると思いますので、次の裁定実施権の方に移りたいと思います。

新井技術調査課長

それでは、引き続きまして、同じ資料でございますが、37ページ目でございます。
第2章というくだりでございます。裁定実施権による対応の可能性というところでございますが、ここも報告書の体裁をとるということで前書きのところがございます。幾つか、課題と申しますか、問題と申しますか、そういうものを指摘させていただいておりまして、第1パラグラフでは、いわゆる上流技術に関する懸念を紹介してございまして、第2パラグラフ、「また」以下のところでございますが、ここでは標準技術に関する問題点があるのではないかというところを紹介させていただいております。こういう二つの御指摘がございますので、本章では、海外の状況も踏まえつつ、裁定実施権制度による対応の可能性を検討するというところでございます。
諸外国における強制実施権制度の概要は既に御報告させていただいておりますが、その後若干新たな進展や書き加えたところがございますので、そこを御紹介させていただきます。
まず、60ページ目に「フランスにおける強制実施権制度の概要」とございます。フランスの強制実施権に関しては、司法機関によるものと行政機関によるもの、二つあるわけですが、60ページ目の下の方、「(c)行政機関による裁定実施権の付与」とありまして、現行では、「『公衆衛生上必要な場合』とは」ということで、医薬品、医薬品を取得する方法、当該医薬品を取得するのに必要な製品または当該製品の製造方法ということで、現行と申しますか、旧法ではこうなっているわけですが、フランスでは最近法律改正がなされまして、その部分のところを紹介したところが今回新たなところでございます。
64ページ目でございます。4に「法改正の動向」と書いてございますが、2001年11月にクローン技術に関する生命倫理法の改正が議会に上程されまして、今年の8月に成立さして、8月7日に官報告示されたところでございます。この改正案の一部で公衆衛生上必要な場合の裁定実施権について、その対象を体外で行う診断方法等に拡大する改正が提案されたということで、枠囲いの中に書いてございますが、枠囲いの上段のL613-15条。ここは利用関係でさほど関係はないですが、その下のところでございます。16条のところです。ここに書いてございますが、「公衆衛生の観点から必要な場合には、かつ特許の権利者と交渉による合意が成立しない場合には」ということで、「以下の特許のすべてについて……強制実施権制度下におくことができる」ということで、(a)、(b)、(c)となっております。この原文はフランス語なんですが、さらにそれを英訳したものが下段にございます。その英訳をベースに日本語に仮訳したものが、(a)、(b)、(c)となっております。
旧法に比べてやや対象が広がっております。例えば(a)で申しますと試験管内の診断のための医療機器ですとか、(c)生体外で行う診断方法。こういうところが旧法に比べて若干対象は広がっているところでございます。ただ、その下に色々くだりが書いてございますが、適用するに当たってはそれなりの制限の下で適用するということになっております。
あと進展があったのは71ページ目でございます。これは台湾における強制実施権に関するものですが、下の方です。前回これは追加していなかったのですが、新聞でも報道されておりましたので御承知おきの案件かと思いますが、CD-R関連技術に関し、強制実施権が付与された事例でございます。72ページ目に簡単に書いてございます。決定事項については枠囲いの中に書いてございますが、「CD-R一枚当たりの出荷価格が大幅に下落したにもかかわらず、実施料の算定は固定的な価格を基に算定されており、明らかに不合理である」と判断されましたが、反競争的ということで強制実施権の付与を認める一つの事例として新たに追加してございます。
もう一つ文章を修文したところですが、77ページ目でございます。中国のところでございますが、中国におきましても強制実施権に係る規定はございます。ただ、「概要」のぽつ二つ目ですが、強制実施権の請求及び審査の具体的方法が明らかにされておりませんでして、運用上の問題が指摘されておりました。それで、こういう法律あるいは規則を円滑に進めるという趣旨で、ぽつ二つ目の下から2行目ですが、「更に詳細な手続を規定した」ということで、国家知識産権局局長令として、特許権の強制実施権に関する弁法が7月15日に施行されております。この弁法内容をやや具体的に今般補足させていただいておりますが、内容的には強制実施権の範囲を拡大するものではなくて、言うなれば運用要領、いわゆる手続要領みたいなものを制定したというものでございます。
以上が諸外国における修正箇所です。85ページ目には裁定実施権制度又はその運用見直しにおける論点ということで、非常に簡略化して列挙してございます。今回別途御提案がありましたので、ここでは書き下しておりませんが、各項目については、御提案の審議を踏まえて詳細に書き下す予定です。報告書の体裁としては、先般御紹介させていただいた論点に沿って整理し、さらに4.として「今後の方向性」、「今後の方向性」という表題がいいかどうかわかりませんが、まとめ的なところを書き下していきたいと思っております。
裁定に関しましては、このような報告書の体裁を整えて検討していきたいと思っております。
以上です。

長岡座長

ありがとうございました。
本件に関しましては、資料5にありますように、製薬協とJBAから本ワーキンググループに対しまして裁定制度の運用改正提案書が出されております。これについて秋元委員から御説明をいただけますでしょうか。それで一緒にまとめて議論をしていきたいと思います。

秋元委員

前回のときにポンチ絵で1枚物で出しておりますけれども、それで御理解いただいているかと思いますが、今回それを文章にしたのが資料5でございます。
要望というか提案というのは、学術及び研究活動に障害となる発明、あるいは広く利用されるような技術標準に障害になるような発明、こういうものは93条の公共の立場から適用を広げていただいて、法改正するのではなくて、運用という考え方でやっていただけないかというのが趣旨でございます。
もう一度簡単に説明させていただきますと、特に遺伝子に代表されるようなもの。先ほどのフランスも遺伝子診断というのが出てきましたし、アメリカの場合、これは廃案になりましたが、リバースサンの法案というので遺伝子は自由にせいというのがあって、これは通らなかったんですけれども、遺伝子というのはもともと代替性がない。前回丸島委員から顕微鏡という話がありましたけれども、顕微鏡を売ってもらえない、使わせてもらえない。顕微鏡で何か探そうと思ってもそういう手段、ツールが使えないということで、そういうことになりますと、もともとの特許法の精神に言う広く公開して産業の発展に寄与するということがなかなかできなくなるのではないか。特に製品を保護するということでなくて、ツールが使えないということになると、先ほどの議論にも出ましたように、アカデミアによせ、産業界のものを出そうという上流のところも非常に阻害されてしまう。それは結局は国民の不利益につながるのではないか。そういう形で、これを何とか93条の運用ということで解決していただけないかということでございます。
この問題につきましては色々な意見があるのでしょうけれども、今回色々な意見が出ているのは、すべて産業界というところから6-1以下出ておりますけれども、アカデミアということも含めて、重点的に、かつ早く議論していただかないと、日進月歩の科学技術の進歩が行われているわけですから、先ほど言いましたように重点的かつ早く、慎重にということでなくて、早く何らかの方向性というものを、この委員会で検討するのかどうかも別として、そういうものを日本として早く検討していただきたい。
そのとき特にお願いしたいのは、日本は科学創造立国としてこれから行こうというときに、さっきのCIPではございませんけれども、各国のことを見てゆっくりやるということでなくて、この文書の中にも何度も出てきますが、フロントランナーとして日本がやろうとしているときに、権利を取るということも大事ですが、それをいかに円滑に活用するか、これも非常に大事だと思います。そういう意味で、93条は私どもの提案でございますが、それも含めて、ぜひ早急に検討していただきたいということでございます。
以上でございます。

長岡座長

どうもありがとうございました。
裁定実施権の問題につきましては、冒頭に特許庁の事務局から御紹介がありましたように関係団体からも意見が寄せられております。これについて事務局から御紹介いただけますか。

新井技術調査課長

関係団体から幾つか御意見あるいはコメント等いただいておりますので、事務局から御紹介させていただくところでございます。五つの団体から御意見をいただいております。
まず、資料6-1ですが、経団連さんから御意見をいただいております。内容をさっと紹介しますと、1.に「意見の状況」と書いてございますが、色々な立場から賛否両論、意見がございますという中で、2.の「今後の検討にあたっての考え方」というところでございますが、下の方から、「裁定実施権制度についても、問題の大きさを踏まえつつ、本当に対象とすべき分野は何か、諸外国との整合性の確保を図るためには何が必要か、諸外国での不当な権利制限を防ぐためには何をすべき」なのかといった様々な問題がありまして、さらなる検討が必要ではないかということです。
それから最後の段落ですが、「裁定実施権制度についても、早急に結論を出すというより、関係する様々な課題について検討を進め、問題の解決を目指していくことが重要である」というところが意見として出されております。
資料6-2といたしまして、日本知的財産協会さんからいただいておりますが、ここではもうちょっと具体的なコメントをいただいておりまして、裁定実施権に関してはリサーチツールと技術標準、二つありますので、二つに分けて御意見が寄せられております。
まず、1.の「リサーチツール」というところでございます。結構文章が長いのですが、リサーチツールに関する定義づけのようなところを御説明しておりまして、やや結論めいたところは次のページでございますが、最後の3、4行目ぐらいに、「そこで、国民の生命・健康に直結するライフサイエンス分野における研究を目的とする代替性のない特許発明の実施が」裁定の「適用対象であることを運用上明確にすることによって特許権によってかかる研究が阻害され、ひいては国民の生命・健康が損なわれないよう、整備されることが望まれる」ということです。
2.として「標準化技術」というふうに書いてございますが、ここでも幾つか問題点が指摘されております。特に第2パラグラフのところで、標準化技術と一口に申しましても、標準化技術を策定する者ですとか、必須特許を有する者、あるいは標準化技術を利用する者、それぞれの立場で色々な考え方があるでしょうということです。次のページでございますが、それぞれのお立場があるので、「以上」というところがありますが、「標準化技術に関わる者の意見が揃うものではない」ということで、そのパラグラフの下の方に「しかし」と書いてございますが、「裁定実施権以外にも、標準化策定団体による特許調査・特許回避の効率的な実施や、パテントプール運営者によるライセンサー拡大の努力、及びそれらに対する国の支援など、検討すべき課題は多い」ということで、いずれにしても幾つかの課題がありますという指摘でございます。
リサーチツール、標準化技術についてそういう要望、御意見があるわけですが、3.として、そうはいってもというところで、「国際的枠組みとの整合性の観点」というところでございますが、先ほどのフランスの特許法の改正ですとか、中国ですとか、幾つか挙げてございまして、さらに「従って」というところで、「各分野について、裁定実施権に限定することなく、諸外国の動向に合わせて慎重に議論されることが望まれる。その他、TRIPS協定との整合性の点など、『裁定実施権についての論点整理』」に記載されているとおり。前回御紹介したところの論点整理でやる必要があるのではないかということが書かれております。
「4.まとめ」でございますが、リサーチツールにしても、あるいは技術標準にしても、裁定実施権というのは特許権という私権を制限するものでありますので、その発動には最大限慎重になるべきでありまして、最後の行にありますが、「慎重な対応を希望するものである」ということです。
資料6-3は、PhRMA、米国研究製薬工業会というところがございまして意見書を出されたわけです。これはそのPhRMAの在日の知的財産小委員会による見解ということです。製薬関係ということでリサーチツールに視点を置いた意見ですが、ここははっきりして、「提案の内容には同意できない」ということが書いてございます。理由が幾つか書いてございますが、仮にリサーチツールに限定されたとしても依然としてその範囲が不明確であるということで、場合によるとそれらを超えて適用範囲が拡大する危険性があるのではないかということです。
2.ですが、そもそもこういう措置は行政の裁定という制度に本来的にはなじまないのではないかというところが挙がっています。
次のページに色々書いてございますが、要は開発途上国に対する影響と申しますか、知的財産保護の強化を求める我が国としては、ある意味で開発途上国に対して骨抜きになってしまうのではないかという指摘がございます。
最後、6.のところですが、リサーチツールの特許による最終製品の差し止めいう事態は可能性が低い状況においては、高額なリーチスルーロイヤルティーの算定、こういうものがなくなればかなりの問題点が改善するのではないかという指摘です。
資料6-4といたしまして、これは英語ですが、日本語の方で紹介させていただきます。EFPIAというヨーロッパの製薬関係の団体でございますが、日本語がついております。
冒頭幾つか書いてございますが、中ほどから、EFPIAとして以下の点を強調したいと考えておりますということで、まず、ぽつ一つ目でございますが、多くの企業は商業的に公正な条件でリサーチツール特許の使用許諾を自発的に行っておりまして、多くの場合、リサーチツール自体は通常の商慣行の過程において利用することはできます。
日本の強制実施権システムにも触れておりまして、TRIPS協定に沿ったものでして、限定された場合のみ適用されるのではないかということです。
最後のぽつでは、法的及び経済的な面での不確実性が増して国内及び国際的企業が革新的な活動に取り組む動機が損なわれて、日本における研究に基づく製薬及び生命科学テクノロジー産業が脅かされることになるのではないかという懸念があります。
これがヨーロッパの団体からのものです。
最後に資料6-5は、電子情報技術産業協会の特許専門委員会から出されている意見でして、結論めいたところは3.に書いてございます。枠囲いに書いてございますが、技術標準に関しましては、運用要領をこのような形で一文を入れることによって見直してくれないかという提案でございます。ただ、枠囲いの下に書いてございますが、この適用についても相当程度弊害が認められる場合のみということで、制限的に裁定が認めるべきではないかというところでございます。
2ページ目に、実際の適用するケースとして二つ書いてございますが、一つ目は実施許諾を拒否された場合。2として法外なライセンス料を求められた場合というふうに、対象となる事例を二つ書いてございます。
最後の4.ですが、このように提案をしているものの、先ほどの特に「法外な実施料の支払いを求めている場合」というところを想定して提案されているようですが、一方で、「その他」のところに書いてございますが、裁定制度の趣旨に合わないのではないかという意見もあったというところが申し添えられております。
関係する団体からこのような意見も寄せられておりますので、先ほどの秋元委員の御提案とあわせて御審議いただけたらと思っております。
以上です。

長岡座長

どうもありがとうございました。
そういうことで、やや相反する意見も出されているところですけれども、質問も含めまして御意見を御自由にいただけたらと思います。よろしくお願いします。
菊池委員お願いします。

菊池委員

裁定実施権に関しては、運用面での具体的なスキーム等を今後検討していくという文面をぜひ入れていただきたいと思っております。特に知財に関するADR等(利害関係者の仲裁・調停等を含む裁判外の調整方式)のスキームをもっと積極的にお使いになるような何か新しい仕組みを考えられてはいかがでしょうか。色々な団体の利害関係があるという点を含め、単なる独占禁止法的な議論を超えて、仲裁・調停スキームを考えられてはいかがかと思います。

長岡座長

渡部委員お願いします。

渡部委員

裁定実施の要領の話ですけれど、海外から慎重にという意見が出るのは当然として、国内でも割れているということを見ますとなかなか難しいのかなという結論も予想されるわけです。そうしますと、もともとこの議論の発端となっている大学等の学術研究の円滑な実施の問題、あるいは標準技術の問題等について、文科省とかいうような話もあるかもしれませんが、なかなか有効な手がないということになってしまうかもしれない。引き続き問題が存在するということがどう扱われるかということが1点と、もう一つ、大学関係、学術研究に関しては、問題の深刻さの程度の見積もりがまだついていない段階にあるのではないか。そこの認識について配慮をしておかないといけないのではないかということです。
大学関係について、学術研究に関しては、前回もちょっと申し上げたのですが、私の認識としましては、先ほども御説明いただいた試験・研究の範囲について。これは整理をして、69条第1項についての正しい認識ということで周知をするという形になっています。秋元委員が先ほどおっしゃったように、文科省がまだ余りやっていないというのは、私は文科省ではないんですけれども、やむを得ない事情もあると思います。現場の状況からすれば、まず、権利化というところで一生懸命今そこを立ち上げている段階で、侵害というところまで概念を持ち込むというのに、やっぱりかなりギャップがある。どのような形でこれを周知すればいいかということを今検討しているというふうに聞いていますし、そこの部分についての時間も必要かと思います。
そういう状況の中で、一つは、これも前回申し上げましたが、大学関係あるいは公的研究機関の公的な研究資金が入ったものについて、国内問題として、お互いに研究の差し止め請求や何かが起き得るという状況に対してどういうふうに考えていくかということ。これは総合学術会議の専門委員会等で議論されるということも聞いていますが、これもまだこれからです。
さらに、これを議論したとしても、例えば公的資金に関してはバイドール条項の中に、せっかく民間に活用を任せたのに、また制約的な要件を入れるというようなことも議論になってくるのかもしれませんし、そこの行き先もよく見えないということで、現場で制度的にどういうリスクがあるのか、あるいは実態的にどういうことが起きてくるのかということが、今はまだ問題の程度の見積もりができないということがあると思います。
したがって、先ほど、まとめの裁定実施権制度。これは裁定実施権制度だけではないんですけれども、運用の見直しにおける論点という中で(1)、(2)、(3)と書いてある政策的観点。これはプロパテント政策として途上国への影響という、そこの観点もありますが、もう一つ、科学技術、学術政策としての観点として、今の状況及び今後その部分、ちょっと不透明な部分になるということを配慮するということをやっぱり残しておく必要があるのではないかということを意見として申し上げさせていただきます。そういう意味においては先ほどの経団連さんの意見書に近いことでありまして、関係する問題についてもう少し検討をしていくことが適切なのではないかと思います。以上です。

長岡座長

ありがとうございました。
竹田委員お願いします。

竹田委員

アメリカの製薬業界からえらいきつい反対意見が出てきたみたいですけれど、この背景を理解する必要があるのではないか。というのは、リサーチツール特許はアメリカでは、私は正確な統計は知りませんけれど、半分ぐらいは大学とアメリカ政府が所有しています。特にDNA関係では。御承知のようにハーバード大学のマウス特許が問題になりましたけれど、あれはハーバード大学がデュポンにだけライセンスしてエクスクルーシブだったものですから、色々なところから問題になって、NIH、米国立衛生研究所があっせんに乗り出して、他の会社にも使わせろということで解決しているわけですね。
そういうことで、公的資金を使ったアメリカの上流特許というのは、NIHがあっせんをしたり、御承知のようにバイドール法によって、203条だったですか、マーチ・イン・ライトが認められたから、政府がそれに口を出してみんなが使えるようにするということはできているわけですね。したがって日本とは全く事情が違うわけで、そういう点を考慮してこの意見書を読む必要があるのではないか。
アメリカはもともとコンパルソリーライセンスは嫌いな国ですから、こういう意見が出てくるのも当然なんですけれど、日本とは置かれた状況がかなり違うということを考えて検討すべきではないか。したがって、技術標準については業界の意見が割れているというのではどうしようもありませんけれど、リサーチツールの特許については業界の意見はそんなに割れていないと思うので、これはひとつポジティブな方向で御検討願いたいと思います。

長岡座長

丸島委員お願いします。

丸島委員

リサーチツールはコメントを差し控えさせていただきますけれど、標準の方についての裁定について、これは御理解いただきたいと思うのですが、この場で技術標準に関する特許について裁定を適用するかどうかという議論をすると、どうしても標準化団体の立場で困ることを救済するという視点だけなんですね。
前回の場でも申し上げたと思うのですが、標準と特許の問題というのは三者が関係しているんですね。三者と申しますのは、標準化団体、その結果をライセンスを受ける実施者、それとは全く関係ない特許だけ持っている人を含めて三者ですよね。この三者の関係を一緒に考慮して議論しませんと、権利者団体のために裁定実施権を与えるといったら権利者団体のエゴにとれてしまうんですね。その見方によって業界が分かれているという印象を持っているだけであって、検討する視点が一方に偏っているからだと私は思うんです。ですから、標準化の問題というのは非常に大事な問題だと思いますので、三者一緒にして検討できるような場をぜひ設けてほしい。
これは言ってみれば、国際標準から始まってコンソーシアムの標準とかデファクト標準。標準といっても色々あるわけですから、標準化技術に対して裁定なり、そういう実施権を与えるための標準とは何なんだろうか。そこから始まると思うんです。
国際標準にしても標準化のパテントポリシーというのは明確ではないんですね。ただリーズナブルに無差別に出しなさいと、これは権利者単位で言っているだけなんです。これをまず改正することが最初だと思うんですね。ですから標準化技術というのはリサーチツールと違う意味合いを持っていて、これは国際的にある程度コンセンサスを得られませんと本当の実効はないと思いますので、まずは標準化団体のポリシーを明確にさせる。リーズナブルって何なんだろうか。これが権利者単位でリーズナブルでは権利者団体ばかりメリットを得て、それの欠点である第三者の特許をただ裁定実施権で使えるんだといったのでは、これは全くエゴに聞こえてしまうんですね。
では、権利者団体がどういう痛みを分かち合うのか。そうすると、普及させるためにトータルでリーズナブルな実施料で提供するという痛みを伴うんだろうと思うんですね。そういう前提において第三者の権利を使わなければならなかったときにどうするかというセットで見るべきだと私は思うんです。
ですから、この結論だけで業界が割れているとかなんとかいうことでなくて、業界は本当は割れていないんです。みんな同じ考えなんです。ただ、検討する視点が偏っているからこうなってしまうんですね。この視点から見て出すべきだという人は誰もいないと思います、はっきり言いまして。だって、権利者団体がどうするか何も触れていないんですから。ですからセットで物を見てぜひ御検討いただきたいと思います。
それから、なぜ大事だというのは、私は、今、知財立国の改革をやっていますけれども、最後は国際競争力を強めなければいかん。そのとき、国産技術-あえて国産技術と言いますけれども、日本の得意な技術を国際標準でできなかったら国際競争の場で競争力が得られませんよね。これはTBT協定で国内基準より国際標準を優先するという規定がありますから、各国の国内政策によって自国の技術を有利に展開しようとする突破口になるのが私は国際標準だと思っているんです。
そういう意味で、日本の知財立国実現のためには国際標準が非常に大事だということを御理解いただいて、当然御認識いただいていると思いますけれども、標準と特許の問題というのはトータルで検討する場をぜひ設けていただいて、これこそ早急に御検討いただきたい。お願いします。
以上です。

新井技術調査課長

竹田委員、丸島委員の御指摘のところはよく理解しているつもりです。この問題に関して、裁定という切り口からだけではなくて、色々な問題点が絡んでいるので、もうちょっと上位に立った視点から検討する必要があるのではないかという御指摘かと思います。
そういう中で我々特許庁としては、今回の提案にもございますが、どうしても裁定という切り口で検討せざるを得ませんので、報告書のまとめ方としては、先ほどの論点に沿ったような形で、今の御意見をどのような形で反映させていただくか検討させていただきますが、先ほどの裁定という切り口、先ほどの論点ですね。そういう観点から報告書という形でまとめさせていただけたらと思います。
それから、冒頭申し上げました、もうちょっと上位の観点からの御指摘がございましたけれども、そこは私ども特許庁の一存で決められませんので、場合によっては関係するところに御意見をお伝えして問題点を投げかけるというようなところもやらせていただければと思います。

長岡座長

相澤委員お願いします。

相澤委員

裁定の要領というのは、あくまでも現行法の枠内の運用の問題であります。法律の枠を越えたことを裁定要領でやるということになると違法になるので、要領で何とかしようというときには一つの問題になります。
法律について言えば、条約の枠内におさまるように法律を作っているわけで、その点の検討も必要だろうと思います。
それから現在の裁定要領は、行政庁が法の要件を満たす場合でも裁量で裁定実施権を付与するという裁量説によっているものであると思いますので、その点を明確にして議論する必要があるかもしれません。
裁定実施権を拡大することの問題点は、政策的な問題もあります。今、海外に対しても、模倣品対策を初め、東南アジア諸国に対して知的財産権の保護を強く求めています。これが推進計画の一つの柱になっているわけです。これに対して、今、日本の国内の業界が一致してこういう意見だから政策を実行してほしいと主張して、それを運用で行うということは、海外から見ると内国産業の保護のために法律の運用をやっているというふうに映ります。この点は海外からの意見の中にもあったわけですが、海外に与える影響というものを政策として考えるべきだと思います。
それから、日米合意は利用発明のところだけありますが、これはそのときにそこが問題になったから合意されたというだけであって、新たな裁定を広げるということになると当然日米関係の問題も出てくると思います。
裁量を行う政策的判断にあっても、多角的な視点を考慮していただきたいと思います。

長岡座長

いかがでしょうか。
竹田委員の先ほどの御説明に一つ質問がございまして、米国は、おっしゃいますように、公的資金を出している研究に関してNIHがガイドラインを出しているわけですけれども、それとの関係で、日本の企業がライセンスを受ける場合、もちろん日本の特許がベースになると思うんですが、これはNIHのガイドラインの適用の外になっているので日本企業がライセンスをする場合には高くなるという認識を持っていらっしゃるんでしょうか。

竹田委員

そうじゃないかと思うんですけれどね。

長岡座長

それで高いと。

竹田委員

違いますか。

長岡座長

いや、むしろ私がお聞きしている立場なんですけれども。つまり、日本の医薬企業がライセンスを受ける場合と米国企業がライセンスを受ける場合、NIHファンドによる特許が日本特許と米国特許で、差別的な待遇があるということが前提になっているお話かなと思ったので、それを確認させていただいたんです。

竹田委員

私も正確に知りませんけれど、NIHは権利者に対し米国国内のNIHのファンドを受領している研究者に対して無償使用を認めよとは言うけれど、海外までは言わないんじゃないでしょうかね。そういうふうに思っていたんですけれど。

秋元委員

二つあると思います、今のお話の中で。バイドールからいった場合、国内の産業には出せということは言いますけれども、海外については特に何も言いません。ただ、国内に出せば海外に出してもいいということは可能です。
それから、ロイヤルティーが内外でどう違うかという一般論ですけれども、これは基本的に変わりません。今はもうほとんどIPについては経済についてと同様に国境はありませんから、ほぼ同じです。ただ、特殊な関係があれば別になります。むしろ知り合いというか、自分たちの関連する方がロイヤルティーは高いかもしれません。(笑声)

長岡座長

他にいかがでしょうか。御意見とか、御質問でも結構ですけれども。
丸島委員。

丸島委員

先ほど申し上げた技術の標準化に関する件ですが、この報告書で、もし全体のことを触れないで裁定の点からだけ結論づけられるとすごく誤解されると思いますので、報告書を書かれるときは、ぜひ前に述べた三者の関連性を含めた検討の必要性をうたっていただきたいと思います。決して業界は割れておりませんので、念のため申し上げます。

長岡座長

秋元委員どうぞ。

秋元委員

もう一つこの議論のところに書いていただきたいのは、裁定なり運用ということを考えたときに、先ほど丸島委員も言われましたけれど、使う方もそれ相当の痛みを払うというか、リーズナブルなロイヤルティーは払うという前提の話だというふうに御理解ください。

長岡座長

江崎委員どうぞ。

江崎委員

秋元委員に質問ですが、よくわからないのは、今回欧米の製薬業界からこういう反論が来た中で、実際に困っていないということを言っておられますよね。先ほどの御回答の中で、NIHのようなところの特許について、リサーチツールについては特別にハンディーがあるわけではないという理由がよくわからないのですが。

秋元委員

PhRMAやEFPIAからの意見について、確かに団体としてその様な意見が出ていることは確かですが、欧米の製薬企業でも個々の会社の見解は必ずしも今回出されたような意見で一致しているわけではないと思います。
ヨーロッパではスイスとかドイツとか、あるいは今のフランスも含めて、ある限定された範囲内で裁定実施権というか、金を払うにしてもそういう制度で運用しようかという提案もありますし、リーズナブルなロイヤルティーであってもインジャンクションはやめようという提案等もあります。

長岡座長

他にいかがでしょうか。
では、御意見は大体出尽くしたと思いますけれども、もちろんまだ対立した見解が残っているわけですが、各団体からの提案書や意見書も参考にさせていただいて、裁定実施権について、広い観点も含めて、どのように報告を書くか、事務局で作業をしていただいて、それを次回もう一度検討させていただきたいと思います。
では、事務局から今後のスケジュールについてお願いいたします。

その他

新井技術調査課長

今後のスケジュールでございますが、最初の補正制度及び分割出願制度の見直しの方向性につきましては、若干の意見、座長預かりということになっておりますので、これは次回御審議は不要かと思っています。
特許発明の円滑な使用に係る諸問題につきまして、今般色々と御意見が出ましたので、その御意見を踏まえまして次回御審議させていただきたいと思いますが、スケジュールにつきましては、事務局としては10月下旬あるいは11月初めぐらい、ほぼ1か月後ぐらいを想定させていただいております。個別に各委員さんの御都合を伺わせていただきまして、日時等決まりましたら御連絡させていただきたいと思っております。
以上です。

長岡座長

では、以上をもちまして第10回のワーキンググループを閉会させていただきます。
どうもありがとうございました。

閉会

[更新日 2004年10月25日]

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