• 用語解説

ここから本文です。

第11回特許戦略計画関連問題ワーキンググループ 議事録

(本記事作成:特許庁総務部総務課制度改正審議室)

  • 日時:平成16年11月8日(月曜日)10時00分~11時30分
  • 場所:特許庁 特別会議室
  • 出席委員:長岡座長、後藤委員長、相澤委員、秋元委員、浅見委員、石田委員、江崎委員、大西委員、菊池委員、竹田委員、牧野委員、丸島委員、渡部委員

開会

長岡座長

まだお一人見えておりませんが、時間になりましたので始めたいと思います。
ただいまから、産業構造審議会特許制度小委員会第11回特許戦略計画関連問題ワーキンググループを開催いたします。御多用中のところ御出席いただきまして、大変ありがとうございます。
では、事務局で報告書案を用意しておりますので、まず、資料の確認をお願いいたします。

新井技術調査課長

それでは、事務局から資料の確認をさせていただきます。
資料1ということで右肩に付してございますが、議事次第、それから、配付資料一覧の紙がございます。それから、資料2として本ワーキンググループの委員名簿、それから、今回御審議いただきます資料3ということで、「特許発明の円滑な使用に係る諸問題について(案)」という資料を3点、お手元に御用意させていただいております。
過不足等ありましたら、御指摘いただければと思います。

特許発明の円滑な使用に係る諸問題について(報告書案)

長岡座長

ありがとうございました。
それでは、早速、御審議に入らせていただきたいと思います。これまで、このワーキンググループで数次にわたって議論してきました「特許発明の円滑な使用に係る諸問題について」ということで、議論を踏まえまして事務局の方で案を作成いたしましたので、まずは報告書案を事務局より御説明をお願いいたします。

新井技術調査課長

それでは、お手元の資料3に沿いまして御紹介させていただきますが、今座長の方から紹介ございましたように、これまで数次にわたり検討させていただきましたので、これまでと特に異なる点、あるいは追加した点を中心に御紹介させていただきます。
まず、資料3の1ページ目を開けていただきますと、特許制度小委員会、それから、ワーキンググループの開催経緯というものを参考までに提示させていただいております。
それから、次をまためくっていただきますと、本ワーキンググループの委員名簿、それから、特許庁の関係者の氏名を列記してございます。
さらに次をめくっていただきますと、目次でございますが、ここで報告書の全体像を簡単に御紹介させていただきます。この報告書は、先般御紹介させていただきましたように、「試験、研究」の例外、それから、「裁定実施権の対応の可能性」という2つの大きなマターから構成されております。まず、この2つのマターを、全体を俯瞰するために、「検討の背景」ということで冒頭に持ってきております。それから、1章として「特許権の効力が及ばない『試験又は研究」の例外について」という大きな章がございます。それから、第2章ということで「裁定実施権による対応の可能性について」、こういう大きな章立てになっております。
「試験・研究」、それから、裁定実施権もそうなんですが、我が国の制度・運用を紹介し、その後でTRIPS協定との関係、あるいは諸外国等の調査結果を御紹介しまして、最後にまとめという感じでくくっております。
ちなみに、第2章の裁定実施権による対応の可能性についてというところなんですが、次のページの3.のところに、これまで従前御審議いただきました論点整理に沿ってまとめてございます。従前ですとややもするとちょっといろんな観点から冗長になっておりましたので、ここでは、リサーチツール等の上流技術、それから、技術標準の両方をテーマに共通する論点ということで、(1)総論というところでまとめさせていただきました。
それから、(2)で各論となっておりますが、リサーチツール、技術標準について、それぞれ特有の課題等ございますので、ここでそれぞれのテーマの観点から、課題等を御紹介させていただいております。
さらに、4として、まとめがございます。
それから、参考資料、これまでいろいろと御提示させていただいたわけなんですが、実は従前米国の研究製薬工業協会のワシントン本部から御意見を出させていただきたいという要望があったわけなんですが、つい最近、11月の4日付で出てまいりました。参考資料をずっと1から14まで振ってございますが、参考資料12-2というところに、「米国研究製薬工業協会・意見書」という形で添付させていただいております。内容につきましては、後で簡単に御紹介させていただきます。
こういう全体像の中で、次の1ページ目でございますが、ここでは先ほど申しましたように、上流技術に関する課題、それから技術標準に関する課題、そういうものが指摘されているということで、これは従前御紹介したとおりの内容でございます。
それから、次以降はずっと従前と変わりございません。
それで、16ページ目をちょっと開けていただきたいんですが、先般、相澤委員の方から、「試験・研究」については、TRIPS協定の観点もちょっと触れる必要があるんじゃないかという御指摘いただきました。実はこのくだりは、脚注に先般紹介してあったんですが、そこをもうちょっと強調するという趣旨で、本文の方に持ってきております。
ちょっと簡単に御紹介いたしますと、16ページの冒頭、「試験・研究」の例外に関する国際的な取り決めということで、TRIPS協定の第30条に定められているわけですが、その条文を御紹介するとともに、「試験・研究」の例外を認める際には、TRIPS協定第30条の制限を念頭に置く必要がある、というところをちょっと御紹介させていただいております。
実はこの関係で一つ事例がございます。カナダの医薬品の事例ということで争われた事例ですが、以前にも脚注でご紹介しておりますが、今回、本文で御紹介しております。簡単に申しますと、カナダの特許法の中では、特許権が切れるまでの間、第三者が薬に関する製造、貯蔵をしてもいい。特許権が切れたと同時にその準備段階を経てすぐ販売できるような、そういうことがカナダの特許法の中で定められていたわけなんですが、これに関してはECの方から指摘がございまして、TRIPS違反じゃないかということでパネルに上がりまして、結果として、カナダの国内法の改正を余儀なくされたという事例でございます。
それから、それ以降ずっと先般御紹介させていただいた内容を書いてございまして、ちょっと繰り返しになりますが、36ページ目になりますが、ここは我が国の「試験・研究」の例外、それから、諸外国、TRIPS等の国際動向を踏まえて、まとめというところでございます。
ここも先般御紹介しておりますので詳しい紹介は省略いたしますが、簡単にちょっと申し上げますと、まず、第1パラグラフでは、リサーチツールとか、あるいは研究等の制約という観点から、「試験・研究」について整理、検討したというくだりがございます。
それから、第2パラグラフ、これは日本の最高裁の判決があるわけなんですが、これはある意味で「試験・研究」をどう解釈するという判決の内容にはなっていませんので、そういう意味では、解釈については十分な判例の蓄積がないというところを御紹介しております。
それから、第3パラグラフ、「一方」とありますが、ここはいわゆる我が国で通説と言われているところを御紹介させていただいております。
それから、「他方」ということで次のパラグラフ以降は、諸外国の調査結果を御紹介しておりますが、我が国の「試験・研究」の例外の適用についてということで、諸外国と比較、検討しているわけですが、総じて我が国の適用が諸外国と比べて限定的であるものではないというところでございます。欧州主要国と比べましてもほぼ同じような状況でございますし、米国と比べますと、米国はもっと限定的な運用をしているというところがございます。
こういうことで、我が国の従来から言われております通説というものの考え方に、特段の問題はないのではないかというところでございます。
それから、36ページの下から第2パラグラフでありますが、「よって」とありますが、リサーチツール等の問題も指摘されているわけなんですが、通説等に従えば、やはり特許発明それ自体を研究対象とする場合を除いて、第69条第1項の適用は否定されると考えられるという、こういう結論に至っております。
それから、次は37ページ目ですが、こういう状況ですので、一番最後の行あたりにございますが、大学等研究機関におきましても、第69条第1、いわゆる「試験・研究」の例外規定につきましては、正しい認識が求められておりますというまとめになっております。
先般、たしか秋元委員の方からも、こういうとりまとめの結果、どういう形でもって大学等に周知せしめるんですかという御指摘をいただきました。その後、文部科学省さんともいろいろと、どういう形、どういう内容で、いつのタイミングで周知せしめたらよろしいでしょうかねという御相談をさせていただきました。
現在のところは特許庁の方で、周知せしめる「試験・研究」の例外の簡単な内容のものをつくりまして、文部科学省さんと調整させていただきました。文部科学省さんの方でもそれぞれのお立場からいろいろと御意見、あるいは案をいただきまして、大体こういう内容で大学等に周知せしめればいいんじゃないかというその内容につきましては、大体調整が済んだかなというところでございます。
これからは、デザインをどうするとかそういういろんな問題もあるんですが、いつごろのタイミングで、どういうルートでやったらいいかという、ある意味ではロジスティックスなところを文部科学省さんと詰めさせていただいた上で、遅くとも来年早々には、大学等研究機関にその簡単な内容をもって周知せしめる運びになろうかという状況でございます。
それから、次の裁定実施権制度の対応可能性というところで、38ページ目以降に書いてございます。38ページ目は、裁定実施権による対応の可能性ということで、第1パラグラフでは、従前御審議いただいているリサーチツールにおける課題等を紹介するとともに、第2パラグラフでは、技術標準についての課題を提示させていただいております。
それから、以降、我が国の裁定実施権制度の経緯とか、運用とか、この辺のところは従前御紹介した内容のとおりでございます。
諸外国のところも、46ページ以降紹介させていただいておりますが、TRIPS協定の関係とか、諸外国の制度を調査いたしましたが、ここはずっと変更ございません。
それで、最後に論点のところを御紹介する前に、実はスイスの方で、現行でも司法による裁定実施権制度の運用が定められているわけなんですが、リサーチツール等も念頭に置いて、多少裁定実施権の範囲を広げるというような議論がなされております。現時点では、関係部署から意見をとっている状況で、日本で言うパブコメみたいなそういう大々的なものではなく、そこまでまだ至ってないような状況らしいんですが、リサーチツール等を念頭に置いて多少裁定の枠を広げるというような議論が進んでおりまして、それに向けての法案があるようでございます。現時点では、当然まだ関係者での議論、それから、当然議会にも上がっていない状況ですので、ここでは、スイスで多少そういう議論がなされているというところをちょっと口答で御紹介するにとどめさせていただきます。
それから、先ほどちょっと申し上げましたけれども、米国の研究製薬工業協会から意見が出されましたというところがございましたので、ちょっと簡単に論点整理の説明に入る前に御紹介させていただきます。
資料12-2ですか、ずっと後ろの方で恐縮ですが、参考資料13の一つ手前になります。ちょっと左側のページで恐縮ですが、これは米国の研究製薬工業協会の方から出されたものです。これは英語で出されたんですが、その仮訳が参考和訳ということで数枚後についておりますので、それをベースに御紹介させていただきます。
平成16年11月4日付ということで、参考和訳というのがあります。日本における医薬品リサーチツールというところです。研究製薬工業協会の在日の知的財産小委員会からも意見が出されておりますが、基本的にはそれに沿った意見の内容になっておりまして、結論的には、現在日本の裁定制度の運用緩和という議論に対しては、反対だというストーリーになっております。その幾つかの根拠らしきものが、その参考和訳のポツ以下幾つかあります。
1つ目のポツでは、リサーチツールと一口に言っても、その範囲が不明確ではないかというような御指摘とか、あるいはポツ2つ目では、特許権の本質は排他権であるので、その例外となる規定は限定されるべきものではないかという指摘ですとか、それから次のページに行きますと、次のページのポツ一つ目ですが、ここでは、特に対途上国対策という視点からして、やはり好ましくないのではないかという指摘がございます。
こういうことで、一番最後の下にちょっと結論めいたことが書いてございますが、強制実施権は制約は受けるべきではありませんというところで、結果として裁定実施権の運用緩和については反対だという趣旨の意見書と申しますか、コメントが11月4日付で我々事務局あてに提出されておりますので、御紹介させていただきました。
それで、きょうの議論の本筋、メインになろうかと思いますが、また戻っていただきまして86ページ目に、3.ということで「裁定実施権制度の改正又は運用の見直しにおける論点」として、論点をまとめさせていただきました。先ほど申しましたように、リサーチツール、技術標準、2つの観点から共通する事項については、(1)の総論という形でまとめております。
この(1)の総論の視点なんですが、従前ですと、TRIPS協定、それから諸外国の制度ということで2つに分けさせていただいたんですが、これはTRIPS協定、諸外国の制度、相互関係は密接にありますので、ここでは一つにくくって、国際的視点という観点から1ということでまとめさせていただいております。
それから、次の87ページ目でございますが、今度は2ということで、我が国の「知財立国」実現ということで、政策的観点という視点からまとめさせていただいておりまして、この政策観点も3つの視点から論じております。それぞれの観点は従前から御紹介させていただいている観点と変わりございませんが、多少その項目を整理させていただいたということで、まず一つは特許権の保護と制限のバランス、それから次のページですが、他産業への影響、3番目として途上国への影響という形でまとめさせていただいております。
それから、(2)各論ということで、ここではリサーチツール固有の課題、それから、技術標準固有の課題という観点で、やや掘り下げた形で整理させていただいております。
論点の全体像は以上ですが、やや詳し目に御紹介させていただきますと、86ページ目、また戻っていただいて恐縮でございますが、まず、総論に入る前の前書きのところを簡単に御紹介させていただきます。
まず、論点整理の第1パラグラフのところでございますが、ここでは、従前から御指摘いただいておりますリサーチツールを中心とした課題を掲げてございます。いろんな観点から検討する必要があるのではないかという御意見、指摘等を紹介させていただいております。
それから、第2パラグラフ、「一方」以下では、情報通信分野を初めとしたいろんな分野において、技術標準という課題があります。それに対するいろんな懸念がありますので、そこを御紹介させていただくとともに、第3パラグラフでは、リサーチツール、技術標準、こういう御指摘を受けまして、具体的に今般御提案をいただいております。前回御紹介させていただいたとおりですが、JBA、製薬協連名によります我が国の「裁定制度の運用要領」に関する提案がございましたので、その紹介をさせていただいております。
それから、最後のパラグラフですが、「そこで」以下ですか、ここでは、そういう提案に対し、関係団体から意見、コメントも寄せられておりましたので、そういうものも参考にしつつ、さまざまな論点から考察を行ったというところでございます。
それで(1)の総論ですが、まず、「1国際的な枠組みとの整合性及び諸外国の制度との比較」というところでございますが、第1パラグラフのところでは、これはTRIPS協定の関係を整理させていただいております。3行目あたりに書いてございますが、TRIPS協定との整合性は、当然のことながら考慮しなければいけないというところでございまして、そういう中で、TRIPS協定発効後は、多くの国においてTRIPS協定との整合を図るために、裁定実施権にかかわる制度運用につきましては、見直しが図られているというところです。「更に」というところで、たとえそのTRIPS協定の枠組み内であったとしても、我が国が裁定実施権の制度運用を多少拡大するというような段に及んだ場合には、諸外国から見れば国内産業の保護政策ととらえられかねず、ある意味で国際摩擦の要因として先進諸国を含む諸外国から非難されることにもなりかねないのではないかという点に留意する必要があるというところをつけ加えさせていただいております。
それから、「一方」ということで、これは諸外国との制度・運用との比較対照というところを書いてございまして、ちょうど3行目あたりから、公共の利益に関する裁定実施権については各国とも非常に限定的でありということで、我が国も諸外国と比較するところ、とりわけ運用を厳しく制限しているわけではない。「特に」ということで、今回提案いただいているリサーチツール、あるいは技術標準に関しては、諸外国においても裁定実施権が付与された事例は見当たらないというところでございます。
それから、「また」以下ですが、ここでは、リサーチツールに関しては秋元委員の方からもいろいろと口頭ではございますが、御紹介がございましたように国際的な議論がなされているというところでございます。しかし、先ほど御紹介しましたように、裁定実施権に関しては国内外からも反対がございますし、そういう意味では国内的も、国際的にも、コンセンサスが得られている状況にはないというところを御紹介させていただいております。
次の87ページ目でございますが、そういう意味で国内外ともに必ずしも十分な結論を出すに足る環境が達成されていないというところで、早急に結論を出すのではなく、慎重に対処すべきであるという整理をさせていただいております。
それから、2なんですが、これは、我が国の「知的財産立国」実現という視点、政策的な視点から整理させていただいております。さらに3つの視点からとりまとめさせていただいておりますが、ここも従前御紹介いたしましたが、簡単に改めて紹介させていただきますと、まず1つ目ですが、「特許権の保護と制限のバランス」というところでございます。1行目に書いてございますが、知的財産権の強化は必然である反面、権利の強化には弊害も伴います。我が国は「知的財産立国」を目指すわけなんですが、単に保護強化を押し進めるのみではなくて、弊害の除去にも適切な配慮を行って、保護と制限という視点からバランスのとれた適切な制度である必要があるという観点から整理させていただいております。
まず、特許権の保護という観点ですが、これはある意味で知財保護の強化という視点になろうかと思いますが、特許権、排他的独占権が付与されているということですので、ロイヤリティの要求、あるいはライセンスの拒否というのは、ある意味で特許権者としての権利行使の一環ではないかということです。
「また」というところですが、特許権者と一口に言っても、権利者の置かれた状況はさまざまあるわけでございますので、そういう状況にも十分配慮する必要があるということで、「例えば」ということで例を示させていただいておりますが、ロイヤリティの高額化についてもということで、その背景には、研究開発に相当程度の投資を要していたり、あるいはベンチャー企業ではありませんが、投資回収をライセンス収入のみに頼らざるを得ないという権利者の置かれた状況にも大きく関係いたしますので、裁定制度が特許権者による投資額の回収の機会を奪うものであってはならないというところを書いてございます。そういう意味で、権利者の置かれた状況にも十分配慮する必要があるというところを整理させていただいております。
一方で、独占の弊害の除去というところがございます。特許権の保護には十分な配慮がなされなければいけないものの、一方で、独占の弊害を除去するために、適切な対応が必要となる場合もありますということです。ある意味で、特許制度の趣旨を逸脱したり特許制度の目的に反するということで、次の88ページ目に続きますが、反競争的な行為と認められる場合には、独禁法の適用が適切な場合もありますというところです。
ここにつきましては、幾つか公正取引委員会の方からも報告書が出ておりまして、そこで幾つか具体的な事例が盛り込まれておりますので、ここでも、「具体的には」というところで該当するようなケースを列挙させていただいておりまして、かつ結論としては、独占禁止法に抵触する可能性がある場合もあるので、留意が必要だという整理をさせていただいております。
それから、2番目ですが、他産業への影響ということでございますが、ある特定産業の分野と申しますか、そういう視点から、裁定制度の運用緩和となりますと、他産業に与える影響もあるのではないかというところでございまして、特に、今回の提案は、1として学術及び研究活動に障害となる発明、2として広く利用される技術標準に障害となる発明ということで、非常に適用の範囲が広くなっているわけでございまして、そういう意味で、ある特定分野だけではなく、やはり他産業への影響もあるのではないかという懸念がありますので、その辺のところも視野に入れつつ、解決を図っていく必要があるというところでございます。
それから、3番目として途上国への影響、これはある意味で国際的な観点にも相通ずるものがあるんですが、ここでは、日本と対途上国との関係ということで、この政策的な視点に織り込んでございます。
2行目以下にちょっと書いてございますが、我が国がある意味で諸外国に突出した形でもって裁定実施権の制度・運用を緩和するということになりますと、途上国に対して知財保護の政策を弱めるという口実を与えることになりますし、これまで先進諸国の足並みをそろえて対途上国問題に対応してきたわけですが、そういう意味で我が国だけが、先進諸国の中でも突出した制度・運用をとることになりますと、国際的な問題にも発展しかねないというところがございます。そういう意味で途上国への影響という観点から、国際的な知財保護をめぐる動向にも配慮する必要があるということで、慎重な検討が必要であるという形でもって整理させていただいております。
以上が、ある意味でリサーチツール、それから技術標準、まあ共通的事項かなという判断のもとに、総論という形でもって論点を整理させていただいております。
それから、次の(2)ということで各論と書いてございますが、一つは代替性の低いリサーチツールをめぐる問題についてということで、リサーチツールという視点から整理をさせていただいております。
まず、第1パラグラフですが、ライフサイエンス分野においては、最終製品の開発に至るまでに多種多様なリサーチツールの利用が不可欠であるということで、こうした状況において、具体的にどのような場合に研究活動の障害となって、結果として産業の発展を阻害するのかという点が必ずしも十分に明らかにされているとは言えない状況にあります。
それから、特に、問題となる上流技術の範囲、あるいはその影響の程度については、産業界においてもいまだ十分に整理されていないのではないかという状況でございます。
「一方」ということで、特にリサーチツール特許というのは研究活動においてのみ実施されるために、権利者にとっては発見が困難であること、あるいはリサーチツールを用いた研究から生まれた研究成果には権利が及ばないこと等、いろいろ権利者の権利行使の機会が制限されている点についても勘案する必要があるというところでございます。
そういう意味で、「このように」というところを書いてございますが、リサーチツールの問題を整理・検討するに当たっては、産業界あるいは実はアカデミアの方からもきちっと意見を伺わなければいけないんじゃないか、専門家をもう少し交えて整理しなければいけないんじゃないかというところでございまして、89ページ目でございますが、今申し上げたようなところをちょっと整理させていただいております。
それで、「このように」というふうになっておりますが、リサーチツールという視点から、産業界あるいはアカデミアの視点からも、必ずしもまだ問題点の本質、あるいは見きわめが現時点においてははっきりとされていないという状況において、早急な結論を出すべきではないというような状況です。
加えて、国内外いろいろの御意見がありましたので、そういうところにも注視していく必要があるという視点からも、慎重に対処すべきだというところでございます。
それから、「また」以下ですが、裁定実施権という視点から検討してきたわけなんですが、それ以外にも、独占禁止法の適用とか、あるいはOECD等を初めとしてライセンス・ガイドラインの検討等が進んでおり、そういう意味でいろんな視点から検討がなされておりますので、そこら辺のところも十分に状況を見きわめる必要があるというところをちょっと追加的に書かせていただいております。
それから、2ですが、技術標準をめぐる問題についてということで、これについては前回のこの審議会でも丸島委員を初めとして御意見を承りまして、そこのところも加味して記載させていただいておりますが、技術標準を議論するに当たって、裁定実施権というピンポイントの視点から、果たして市場がこれだけグローバル化している現状において、実質的な問題解決になるのかという指摘がございました。そういうことで、やはり技術標準ということを検討するに当たっては、我が国の産業競争力を国際的に高めていくという視点からすると、国際標準化という視点からの検討が極めて重要ではないかということでございまして、そういう意味で我が国における裁定実施権のあり方、そういう一つの観点からのみ結論を出すというのはやはり問題ではないか、本質的な問題解決にはならないのではないかという御指摘もございまして、そういう意味で国際的な動向を勘案する必要があるということでございます。
「また」というところでございますが、往々にして技術標準の問題につきましては、アウトサイダーという問題点があるわけですが、技術標準を策定する標準化団体の立場とか、あるいはその必須特許を有するアウトサイダーの立場、それから技術標準を利用する立場と、それぞれの立場があるわけですので、三者三様それぞれの置かれた立場に配慮しつつ、総合的に検討しなければ、本質的な解決にはならないのではないかということです。
「これらの技術標準をめぐる問題について」ということですが、裁定実施権制度のみならずということで、いろいろな部署で現在検討が進められております。そういう意味で、多角的な視点から問題点を整理・分析した上で、適切な対応を検討する必要があるということで整理させていただいております。
このような論点整理に基づきまして、次の90ページ目でございますが、まとめということで、本ワーキンググループとしての結論めいたところを御紹介させていただいております。
まず、まとめの第1パラグラフ、第2パラグラフのところは、裁定実施権制度による対応可能性を検討したということと、「論点」でも御紹介しましたように、やはりこれらの問題は重要な問題でありまして、何らかの対応が必要であるという認識は得られたと思っております。
ただ、ということで裁定という視点から考えますと、先ほど申しましたようにTRIPS協定とか、それをベースとした諸外国との国際協調、あるいは我が国の知的財産保護政策という観点から、慎重に検討すべしというところでございますし、加えて、国内外の産業界、あるいはもう少しアカデミアという視点からも検討する必要があるのではないかということで、もう少し産業界、あるいは国内外の動向を見きわめて検討する必要があるのではないかという本ワーキンググループでの結論ということで、早急な結論は出すべきではないということでまとめさせていただいております。
そういう意味で、裁定という視点から見ますといろいろと御指摘があったわけですが、それ以外にも、リサーチツールにしても、それから技術標準にしても、裁定という視点からだけではまだ時期尚早ではないか、いろいろな視点からまだ検討すべき課題、それから検討途上というところもありますので、慎重な対応が必要だということでくくらせていただいております。
これまで御審議いただきましたので、前回の審議会から、新たにちょっと変わったというところを中心に御紹介させていただきました。非常に雑駁でございますが、私の方からは以上でございます。

長岡座長

どうもありがとうございました。
本報告書案につきましては、できれば本日のワーキンググループでとりまとめをしたいと思っておりまして、そういう観点から御意見をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
竹田委員、お願いします。

竹田委員

86ページの真ん中よりちょっと下の方ですが、TRIPS協定発効後、多くの国においてTRIPS協定との整合を図るため、裁定実施権の付与を制限する方向で国内の制度改正が行われているというふうに書いてあるのですが、知財協の意見書にもありましたが、フランスではむしろとりやすくするために、ということは具体的には公衆衛生上必要な場合に、対外の診断方法について範囲を拡大している。それから、インドは、国内で特許発明が実施されていない場合について裁定の対象に加えている。同じようなことはブラジルでも改正が行われているというふうに聞いておりますが、そういうふうに確かに裁定実施権を許諾しない方向で厳しくしている国もあることは、カナダがそうじゃないかと思いますけど、そういう国もありますけど、そうでない国も幾つかあるわけで、こういう言い方は問題があるんじゃないか。
それともう一つ、例のドーハ宣言の第6項問題がありまして、これは明らかにTRIPS協定の31条(f)に反することを各国が協議した結果、フレキシブルな解釈をして決着をしたわけで、そういう意味ではドーハの宣言というのは、強制実施権、裁定実施権についての大きな変革だと思うんですね。あれについてアメリカは依然として、反対というか不満のようでありますけど、そういう意味でこの辺の記述は少し不十分ではないかと思うので、御検討願いたいと思います。
以上です。

新井技術調査課長

今御指摘のところは先ほどちょっと、前回もフランスのところ、それからスイスも先ほど口頭で御紹介させていただきました。ただ、フランスについては既に制度改正がなされたところなんですが、そのほかについてはまだ検討途上、スイスなんかはそうですし、そういうところもちょっとあったものですから、「多くの国において」ということで書かせていただいたんですが、その辺の書きぶりが今御指摘のように、ややもすると誤解を招くということであれば、言い回しにつきましては事務局の方で検討させていただきます。

長岡座長

ほかにいかがでしょうか。丸島委員、お願いします。

丸島委員

方向性としては納得いくような方向にまとまってきたと思うんですが、ひとつお願いを加えさせていただきたいと思うんですが、89ページ、2の技術標準をめぐる問題についての項でございます。まず、第1パラグラフの最終のところなんですが、「国際的な動向を勘案する必要がある」と言って、傍観的な感じに受けるんですね。ここをもうちょっと積極的に、国際的にそういう情勢にしていこうというような前向きの表現をしていただくと大変ありがたいと思うんです。
それから、最後、その次のパラグラフですが、やはり「適切な対応策を検討する必要がある」というんですが、時間軸がないんですね。これもやはり、早急にとか、何かこう早めにやることの必要性を表現していただけたらありがたいと思います。
以上でございます。

新井技術調査課長

今御指摘のところは、ちょっとまた検討させていただきます。ありがとうございました。

長岡座長

「試験・研究」のところも含めてこれが報告書になりますので、ぜひ忌憚なく御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
秋元委員、お願いします。

秋元委員

丸島さんの御意見とかなり似てくるんですが、これは先ほど言われたように89ページのところであると、「試験・研究」のところだったら、「問題点を十分に把握した上で、適切な対応策について検討する必要がある」、それから、技術標準についても同じような、「分析した上で」と書いてございます。
まとめのところは、これは多分このワーキンググループの限界かと思いますが、最後に、「本ワーキンググループでは早急に結論を出すべきではないとの結論に至った」と記載されています。これは確かにワーキンググループでは結論を出せないのかもしれませんけれども、今はもう10年一昔ではなくて、3年あるいは5年たったらものすごく技術が変わってくる。吉藤先生が想定されていたような「試験・研究」、リサーチツールという問題は当時はなかったわけですね。そういうふうに非常に世の中が変わってくる。フランス、スイスその他等もそうでございますが、そういうところは率先して、何らかの対策を検討しているわけですね。
だから、慎重にかつ早急にという表現がいいのかどうかわかりませんが、本グループではそれは限界があるからできないのかもしれないですが、やはりまとめのところに、いろんな議論を闘わし、コンセンサスを得ることは大事ですが、問題解決を早急にやらないと日本の産業力は大きなマイナスの影響を受けてくるのではないかと思います。対応が必要だということは御認識いただいて非常にありがたいんですけれども、慎重にあるいは早急に結論を出すべきではないという表現が、どうしてもワーキンググループの限界みたいに感じられるんですが、その辺の表現のところを何とかお考えいただけたらありがたいと思うんですが。

新井技術調査課長

先ほどの丸島委員の御趣旨と多分同じだと思いますね。言いわけではないんですが、先ほど申しましたように、いろんな観点から、特許庁だけがひとり相撲を先にとれないという状況もありましたので、こういう言い回しになりましたが、さはさりながら国という大きな視点からすれば、今の御指摘のところはある意味で御趣旨はわかりますので、言いぶりはちょっと御検討させていただきます。

長岡座長

相澤委員、お願いします。

相澤委員

90ページのパラグラフで。何らかの対応が必要であるという了解が得られたのかどうかという答えについては、反対に疑問があります。検討が必要だというところの認識は得られていると思いますが、何らかの対応がすぐに必要であるという認識が得られているかどうかについては、疑問があります。
ドーハの例は、TRIPS協定の例外をつくっているので、これは現行協定の解釈の枠内の問題ではありません。なおかつ、これは世界的に広範な影響がある特定の疾病体策のための例外であり、公衆衛生という大きな目的があるわけですから、この例外で全体の議論をするのは適切ではないと思います。
それから、国際動向について、全体の状況が不明確な中で、日本が率先してこの問題を、国内産業にとって必要だという議論でこれを持ち出すこと自体が、日本が国際的に置かれている立場に悪影響を与えます。現在発展途上国に対して、知的財産の保護を強化しろという主張をしている一方で、国内産業の保護のための知的財産権の制限ということを言いだすとは矛盾した主張であり、国際的な信頼を損ねることになると思います。

長岡座長

どうぞ、竹田委員お願いします。

竹田委員

今の御指摘に関連してですけど、ちょっと遅くなったきらいはあると思うのですが、この検討がJBAの提案に乗っかって、それで検討されているわけですね。ですから、提案が、学術及び研究活動に障害になる発明とか、それから広く利用される技術標準に障害となる発明とか、非常に漠としているわけですね。これだとアメリカの製薬業界などが批判するように、やはり発展途上国に対する影響であるとか、あるいは日本が特許を少し弱める方向に行っているんじゃないかというふうに懸念されてもいたし方ないような面があると思うんです。ですから、むしろこれは秋元さんにお聞きした方がいいのかもしれませんけど、ボールを一回JBAの方に投げて、例えばバイオの方について言えば、リサーチツールというのは大体概念は固まっているわけですから、それに限定した提案にしていただかないと内外に誤解を与えるのではないかというふうに心配するわけです。リサーチツールについては、御承知のようにアメリカのNIHで、それについてはみんながもう共有財産にしようということで意識ができているわけですから、そういうことを踏まえて表現していただかないと、何かこれがこのまま出ちゃうと、日本の企業はえらく、広く裁定に持って行こうとしているというふうに誤解を受けるのはまずいんじゃないかと思うんです。以上です。

長岡座長

どうぞ、丸島委員。

丸島委員

相澤先生の御意見に対してちょっと私の感じているところを申し上げたいんですが、御指摘のあった90ページは、何らかの対応が必要であるとの認識を得られたという、これは国際標準におけるいろんな問題点があって、これを解決しなければいかんということは御認識いただいたと理解しておるんですが、これもわからんとおっしゃっているんでしょうか。

相澤委員

何らかの対応ということは、法制度的な対応を検討することにつながります。技術標準をつくるときに、交渉することについて、何ら言及しているわけではありません。法制度的な対応が必要かどうかということについては、コンセンサスはないのではないと思います。

長岡座長

この検討は、86ページからは特許法だけではなくて、このワーキンググループは特許法について基本的に検討しないといけないわけなんですけれども、先ほど例えばリサーチツールについて言えば、NIHのガイドラインとか、それから独禁法との関係もありますので、ここのまとめというのは、そういう意味で総合的な対応といいますか、検討が必要だと、対応が必要だというふうに解釈できるのではないかと思います。ですから、特許法の改正とか、あるいは裁定制度の運用をしなくちゃいけないということではないというふうに理解できると思います。
どうぞ。

秋元委員

ちょっとつけ加えさせていただくと、先ほど相澤委員からもちょっと意見が出ましたけれども、保護を弱めるとか制限する、こういうのは発展途上国にとってもよろしくないんじゃないかということなんですが、この部分ですが、これは先ほど言ったスイスにしろ、フランスにして、どこにしろ、いわゆるプロダクト、このものの保護を弱めろなんてだれも言ってないんですね。やはりリサーチツールという製品の生産にかかわらないところ、この部分についてやはり何らかの、いわゆる学問の発達とか、産業の発展とか、そういうために何とかしなければいけないと言っていることであって。その辺がうまく伝わってないのかもしれないので、何もかにも保護を弱めろという意味ではないというふうに私は思っております。

長岡座長

報告書は一応、リサーチツールというふうにはっきり書いておりますので、そういう意味で、知財保護を一般的に弱めるというふうには書いてなんいんですけどね。リサーチツールと技術標準について書いているということですので。
それから、先ほどの提案については、もしかしたら現時点では新しいのが出てくるかもしれませんが、一応バイオインダストリー協会から正式に出されたものについて、それをリファーしながら議論していますが、しかし、リサーチツールについて述べているという理解に立つことはできるんじゃないかと思います。それでよろしいでしょうか。
どうぞ、渡部委員。

渡部委員

全体、やむを得ないところなんですが、最後の90ページの先ほど相澤委員等の御指摘のあったまとめのところなんですが、ここでこういう格好で、何らかの対応が必要であると認識が得られた、得られないというパラグラフが出てくるので、多少むしろ混乱するんじゃないかなと。ここをもし書かれるのであれば、先ほどのように、少なくとも裁定実施権を適用することというような限定をするか、そもそも重要な問題でなければこんな議論はしないわけですから、全体的には学術政策上、「試験・研究」の重要な問題、標準化にかかわる、技術標準にかかわる問題についての重要性は極めて重要だから、この問題はスタートしたわけです。そこは前のところで議論されていますので、中途半端に書かない方がかえっていいのかもしれないなと思いました。少なくとも誤解がないような形で整理していただければと思います。

長岡座長

どうもありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

渡部委員

学術政策上というところが、産業政策の一環としての位置づけというような形で標記されているんですけれども、当然その産業政策上に包含されない概念での科学技術、学術政策というところの観点も当然あると思いますので、ちょっとそこも書きぶりだけの問題ですけれども。

長岡座長

どうぞ。

丸島委員

今渡部委員のおっしゃったことについてちょっと賛成しがたいんですが、問題が重要だから検討したんでというのと、結論としては何らかの対応が必要であるとの認識を得たというのとは、必ずしも同じではないと思うんです。ですから、この表現はやはり残していただきたいと私は思います。非常に重要なポイントだと私は思っているので。これがぼけたら、何のために検討したかわからないと私は思っております。

長岡座長

どうぞ。

渡部委員

逆にここのまとめで書くのであれば、もう一回、その前提は確認できたということで考えるのか、ともかく先ほどのように、どこまでの議論をこの中でしたのかと。議論していない部分は、当然先ほどのソフトソリューションでガイドライン等の問題はここではやっていないわけですから、それを含めて当然やる必要があるということは書かれているべきだと思うんです。ただ、ちょっとそれを区別しないといけないだろうと思うんです。

長岡座長

では、いずれにしても政策的な対応も含めて、特許法によらない対応も含めて、何らかの対応が必要な重要な問題であるという認識がワーキンググループであったと。しかし特許法をどうするかについては、基本的には裁定実施権制度の観点で分析しましたので、それについては最後のパラグラフを生かす形で書く。書きぶりはなかなか難しいところがありますが、ちょっとそこは工夫させていただきたいと思います。
どうぞ。

相澤委員

NIH等の対応というのは、多分法制度的な対応ではなくて、皆さんの共通認識でうまく対応するということなのではないかと思います。ここは法制度を議論している場なので、対応するというのは問題ではないかと思います。技術標準も含めてみんなの間でうまくコンセンサスができて、法制度をいじらないでいいという対応は、法制度的な対応とは異なります。

長岡座長

ほかにいかがでしょうか。事務局の方、いかがですか。

新井技術調査課長

今までいろいろと御意見をいただきましたけれども、報告書の方にできる限り反映させていただくように検討させていただきます。

長岡座長

どうぞ。

丸島委員

今相澤先生のおっしゃったのは、しつこいですけど、法制度は直さないということを明確に入れる必要もないと思うんです。問題点があるんですから、検討した結果、法制度を変える場合だってあり得ると思うので。そういうことも含んで。法制度は変えないことがみんなのコンセンサスだというのは、ちょっと言い過ぎのように逆に私は思いますけれども、いかがでしょうか。

相澤委員

私は法制度を変えないことがコンセンサスだというわけではなくて、法制度的対応をするというコンセンサスがあるかと言えば、そこはないのではないですか、と申し上げています。だから、法制度を、変えないというコンセンサスはもちろんないけれども、変えるというコンセンサスもないということではないでしょうか。

丸島委員

ここでは、法制度的対応とは特に限定的に表現されてないと私は理解しているんですね。ですから、先生がこれを法制度対応だと決めつけているのが、ちょっと解釈が偏っているんじゃないでしょうか、と私は思いますが。

長岡座長

ちょっとこの書き方が、第2パラグラフが、「重要な問題であり、何らかの対応が必要であるとの認識が得られた」と書いているために、何らかのアクションを今後政府がしなければいけないというふうに読む人もいるということだと思いますので、これは一つの案ですけど、何らかの対応が必要である重要な問題であるとの認識が得られた、というふうにするのはどうでしょうね。つまり重要な問題の認識があるというところが共通なわけですから、政策対応が必要かどうかというのを最後に書きますと、おっしゃるように、相澤さんが心配していらっしゃるような。ただ、いずれにしても最後のパラグラフが、3番目と4番目がこのワーキンググループのコンクルージョンですので、全体をきちんと踏めば誤解はないんじゃないかと思うんですけれども。

相澤委員

文案については、委員長に一任いたします。

長岡座長

すみません、ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。
どうぞ、竹田委員お願いします。

竹田委員

ちょっと専門外なのでよくわからないんですが、89ページのところに、技術標準の問題は、アウトサイダーの問題という一視点でとらえるべきではなくというふうに書いてあるんですけど、今問題になっている、特にここで取り上げなければいけない問題は、アウトサイダーの問題に尽きるんじゃないでしょうか。どうも私はこれがよくわからないのです。むしろ今の議論されている対象が、技術標準一般で議論しているからなかなかコンセンサスが得られないのであって、例えば技術標準の制定がある程度完了した段階で、標準に必須の特許を持っているアウトサイダーが出てきて、権利侵害であるとか、あるいは今までと違った著しく高額のロイヤルティを要求するというところが問題になっているんじゃないでしょうか。
先々月の「知財管理」に、キャノンの田中さんですか、お書きになっていましたけど、そういうことが頻繁に起きるというのを何とかしなければいかんということを言っておられるわけですね。そうすると、その辺に絞って技術標準の問題を裁定に乗せるかどうかという議論をすべきであって、アウトサイダーの問題以外を余り考えては、やはり特許制度の弱体化というふうに非難されるんじゃないかと思うんですけど、いかがですか。

丸島委員

ちょっとよろしいでしょうか。私の考えているのは今竹田委員のおっしゃったのと全く逆なんですね。この議論は、アウトサイダーが許諾しないから、それを強制実施権で標準化団体の恩恵のためにという視点で検討しているわけですね。そうすると標準化団体のメリットばかりをここで主張することになるんですよ。標準化団体というのは何しているんですかという、その問題が何にも解決されないんですね。要するに標準化団体はライセンスする義務は持っていますけれども、その条件というのは、各人がリーズナブルというだけで、何も決まってないんですね。そうすると現実にはグループで一つの技術を開発しますから、ライセンシーからしてみれば、相当高額な実施料を払わないとその分野に参入できないんですよ。これは何にも手をつけないと一種の標準化団体の寡占状態もできるわけですね。それを手をつけないで、自分たちが困ったときだけ、アウトサイダーの権利を裁定実施権でよこしなさいというのは余りにも一方的すぎませんか、と。ですから、皆産業界の人は。

竹田委員

それでは、技術標準なんて要らないということになってしまうでしょう。

丸島委員

違いますよ、それは。それは違いますよ。

竹田委員

違いますか。

長岡座長

問題としては一応38ページに書いてあると思うんですけど、技術標準にかかわる必須特許はたくさんあって、それぞれ権利行使することでライセンス、ロイヤリティが重畳化してしまって新しい技術が広まらない。それを解決するために、アウトサイダーに譲歩してもらうところもあるでしょうけれども、今丸島委員がおっしゃいましたように、標準化機関はもう少しランド条件をはっきりさせるとか、そういった対応も必要でしょうし、それから、サブマリン的なものについては独禁法の対応も必要でしょうし、そういう意味では総合的な対応が必要じゃないかと思いますので、アウトサイダーの問題というのはちょっと絞りすぎかなというふうに私も思います。

新井技術調査課長

そういう意味で、今の御指摘のところの書きぶりですね、ちょっとここは誤解を招くかもしれませんので、もうちょっと書きぶりは工夫させていただきます。アウトサイダーだけの問題に集約しないような感じで。

竹田委員

国際的に通用する技術標準がある程度制定された場合は、それは一種の公共財産というふうに考えるんじゃないでしょうか。そしてアウトサイダーに対してどういう裁定ができるかというふうに考えてみるべきなので、どうも丸島さんがおっしゃっているのはよくわからない。まあ専門家がそう言われるんだからしょうがないですけど。よくわからないですね。

丸島委員

もしそのようにお考えいただくと、非常に標準化団体は喜ぶと思いますけれども。

竹田委員

ユーザーは、やはり統一された方をみんな望んでいるんですよ。あっちでもこっちもいろんなものができて、コンパチブルでないところがあるのでは困る。

丸島委員

統一そのものは好ましいと思うんですが、普及できない状態の統一というのはよくないでしょうと。

竹田委員

普及できないような標準は、そもそも広く利用されている技術標準じゃないんですよ。

丸島委員

いやいや。

竹田委員

相当程度国際的に確立されたものを対象にして議論しているわけですから。

丸島委員

いや、国際標準の機関でも、さっき委員長がおっしゃったようなRAND条件は確定してないんですね。ですから推進計画でも、特許のプール制を応援するという形でたしか表現されていましたけど、これは技術全体でリーズナブルにしようという動きなんですね。

竹田委員

それは技術標準の規格作りそれ自体の問題であって、この裁定実施権の問題とは関係ない問題でしょう。

丸島委員

いや、だから、裁定実施権だけで標準を議論するのは一方的過ぎませんかと言っているんです。

竹田委員

標準の制定の段階なら当然そうですけど。

丸島委員

それを今逆のことをおっしゃったじゃないですか。

竹田委員

裁定実施権と、技術標準の制定の問題というのは全然別個の問題でしょう。

丸島委員

まあ、別なところでやりましょう。(笑声)

長岡座長

大西委員、お願いします。

大西委員

私個人的に今のアウトサイダーの問題というところを読みますと、技術標準団体から見たアウトサイダーの問題というふうにとらえて、その後ろに技術標準を策定する標準化団体の立場、それからアウトサイダーの立場、利用する立場という三者から見るとということで、この文自体はそんなに変ではないんじゃないかと思いました。
もう一つなんですけれども、弁理士として中小企業等の特許相談も受けます。その場合に標準化技術を、どちらかというと策定する側ではなくて、標準化に入ってなくて、使いたいと。ところが、ごく当たり前のものを標準化しているので、製品化しようとしても逃げられないと。となるとロイヤリティをどうしても払う。そのロイヤリティを払ってうまく使えればいいんですけれども、なかなかそこのところは問題があるというケースがあります。そこも一つの問題かなと思います。

長岡座長

どうもありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
大体かなり議論をいただきましたので、しかし、修文で対応ができるところで何とかなるんじゃないかと思っておりますが、先ほど委員長に任せていただけるという話もありましたので、本日、各委員よりいただいた御指摘を踏まえ、必要な修文を加えた上で報告書とさせていただきたいと思います。必要な修文につきましては座長である私に一任していただきたいと存じますが、御異論はないでしょうか。
〔「異議なし」の声あり〕

長岡座長

どうもありがとうございます。
では、必要な修文を加えた上で、本ワーキンググループの報告書とさせていただきます。どうもありがとうございます。
では、今後のスケジュールについて事務局の方からお願いいたします。

新井技術調査課長

どうもいろいろとありがとうございました。今の御指摘を踏まえまして、座長とも御相談させていただきながら、報告書につきまして必要な箇所については修文させていただきます。今回で報告書案ということで案がとれたわけでございますが、ホームページ等で御紹介するとともに、それに先立ちまして、案がとれたものにつきましては、委員さんをはじめ関係者に配信させていただきたいと思います。
それで、これについての取り扱いですが、特許制度小委員会は今のところいつ開催されるかわかりませんが、開催された暁には、これについては御報告させていただきたいと思っております。
事務局は以上でございます。

長岡座長

ということで、どうもありがとうございます。それで、きょうこのワーキンググループは、昨年の9月からずっと重要な課題を次々と検討してきていただいておりまして、私は非常に力量がなかったわけですけれども、活発な議論に参加していただいて報告書をきちんと出すことができたと思います。

特許技監あいさつ

長岡座長

それで、最後に特許庁を代表して、小野特許技監からごあいさつをいただきたいと思います。よろしくお願いします。

小野特許技監

前回のワーキンググループにおいてとりまとめていただきました「補正制度及び分割出願制度の見直しの方向について」の報告書に続きまして、本日、「特許発明の円滑な使用に係る諸問題について」の報告書もとりまとめていただき、長岡座長初め委員の皆様方に本当に感謝しているところでございます。
前回及び今回の報告書にもありますように、いずれの問題についても、国際的な議論の動向などを踏まえつつ、今後も検討を続けていかなければならない重要な課題であると考えております。また、これらの問題に限らず、我が国が「知財立国」を実現するためには、まだまだ解決していかなければならない課題が山積していると思います。特許庁といたしましては、これからも努力していかなければならないところでございます。
今後の御支援、御鞭撻をお願いするとともに、これまでの御議論の御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。

長岡座長

では、以上をもちまして、第11回特許戦略ワーキンググループを閉会させていただきます。どうも活発な議論をいただきまして、ありがとうございました。

閉会

[更新日 2004年12月9日]

お問い合わせ

特許庁総務部企画調査課
電話:03-3581-1101 内線2154
FAX:03-3580-5741
E-mail:PA0920@jpo.go.jp