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第2回商標制度小委員会 議事録

  1. 日時:平成15年7月29日(火曜日)14時00分~16時00分
  2. 場所:特許庁 特別会議室
  3. 出席委員:土肥小委員長、大泉委員、古関委員、小塚委員、琴寄委員、髙部委員、竹田委員、田村委員、萬歳委員代理(白石)、松尾委員、三宅委員、山中委員
  4. 議題:「商標」及び標章の「使用」の定義の在り方について

開会

土肥委員長

定刻になりましたので、ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会第2回商標制度小委員会を開催いたします。
本日は、「商標」及び標章の「使用」の定義の在り方を中心に検討していただければと考えております。

委員御紹介

土肥委員長

議事に入ります前に、前回欠席でございました委員の御紹介を事務局からお願いいたします。

木村審議室長

御紹介いたします。社団法人日本食品特許センター商標委員長であられます大泉直人委員でございます。

大泉委員

よろしくお願いいたします。

「商標」及び標章の「使用」の定義の在り方について

土肥委員長

それでは、早速、議題に入らせていただきます。
資料を事務局で用意をしておりますので、説明をお願いいたします。

木村審議室長

それでは、まず配付資料の確認をさせていただきます。
本日の配付資料でございますけれども、資料1、「『商標』及び標章の『使用』の定義の在り方について」、資料2が「参考資料集」ということで、以上2点でございます。御確認いただければと思います。
それでは、資料1を中心に簡単に御説明をさせていただきたいと思います。
「『商標』及び標章の『使用』の定義の在り方」ということで、前回、全体的に商標制度を見直すに当たって、どのような切り口から検討するべきかということについて自由に御議論をいただいたわけでございます。前回の議論のまとめということで、必ずしも全体を網羅的にまとめたわけではございませんけれども、ブランドイメージの伝達ということに向けて、ブランドイメージの戦略的構築、事業者からの働きかけといった観点も交えながら、それを支えるために商標制度というのが適切に機能をしていく必要があるということ。そのためには、事業者が商標を効果的に用いることができるような制度的環境をきちんと整備をすべきこと。その前提といたしましては、やはり商標というのが動的なものである、識別性を発揮しているか否かというようなことにつきましては、実際の使用の状況によって変化をしていくという、そういう特性があるということも踏まえながら、制度の在り方について検討していくべきではないかというふうに考えておるわけでございます。もちろん、これに議論が尽きておるわけではございませんので、それはおいおい、また今後の議論の中で議論していただければというふうに思っております。
本日でございますけれども、1つは「商標」、「使用」の定義の在り方、商標制度を支えます一番根幹の入り口の部分でございますけれども、それについて御検討をいただければというふうに思っております。前回の議論では、登録主義と使用主義の関係の整理といったようなことにつきまして幅広く御意見をいただいたわけでございますけれども、今回、まず入り口のところから検討をしていこうということで議題を設定させていただいたということでございます。
2ページ以降に具体的な内容、私どもが現在考えております切り口について幾つか提示をさせていただいているということでございます。1つは定義、「商標」の定義の在り方でございます。2条1項に条文が置かれているということでございますけれども、まず、問題としてよく言われておりますのは、やはり現行法における「商標」の定義。「商標」というのは、本質が識別性にあるということであるにもかかわらず、それが要素であるということが明確に規定されていない。それから、その結果、社会通念で「商標」として認識されているものとの食い違いが起こっているということで、定義として適切でない。それは単に社会通念との食い違いというだけではなくて、やはり実務において何らかの支障を来しているのではないかという指摘もございまして、その見直しというのは実益があるんだという議論があろうかと思います。したがいまして、それについて考えてみたわけでございます。
まず、1で現行法における定義と問題点ということでございます。下に条文そのものを掲げておりますけれども、「商標」につきまして、まず「標章」という定義をして、これは「文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合」ということで定義をされておりまして、それにつきまして、「商標」が業として商品や役務の提供、そういうことをする者が使用する標章であるということで定義をしているということでございます。この定義では、具体的な識別性というのは何ら明らかになっていないということが言われてきているわけでございます。
これにつきましては、社会通念上の「商標」とは意味内容が異なっている、支障を来しているという指摘があるということで、下に書いてございますけれども、まず丸1で、識別性が商標法において守るべき要素として位置づけられていないということで、商標登録されているマークがその目的に沿った識別性を発揮していないような場面、例えば具体的に言いますと、純粋なデザインとして用いられているような場合とか、そういう場合でも商標権侵害と訴えられる、あるいは警告されるというような懸念があるということでございます。訴訟においては、侵害行為の認定が困難となる。実際の訴訟では、自他識別機能を果していないということで、「商標」として使用されているのではないという認定が行われているわけですけれども、必ずしもそれは定義から導き出されるものではないということになろうかと思います。
後ろの参考資料集を1枚めくっていただきますと、「商標」の定義についての著名な判例を、いずれも地裁レベルでございますけれども、4つ挙げておりまして、例えば「ポパイ事件」。これは、ポパイの図柄文字をアンダーシャツの胸部などに表示をするというのは、別にそれは意匠であって「商標」ではないということで、自他商品識別機能はないということでございますけれども、こういうことが実際争いになっているということでございます。
それから、丸2で書きましたのは、不使用取消し審判のような局面。これは使用されているかどうかということが問われるわけですけれども、必ずしも識別性を発揮しているかどうかよくわからない、そういう場面での使用の実態をもって不使用ではないという判断をせざるを得ないような、そういう場合もあり得るのではないか。例えばインターネットのホームページがあるんですよと、あるいはおはしの袋に商標が刷られているというような主張があって、使ってますねというようなことが本当に不使用としていいのかという議論というのは、従来から言われているところだろうと思っております。
この後に定義規定の変遷というのがずっとつけてございますけれども、明治32年法までさかのぼりますと、識別性というのは必ずしも明確にはされていなかったということで、大正10年法等におきましては「特別顕著ナルモノ」というような言いぶりで、これについては、自他商品の識別力というものがそれの内容をなすんだという解釈がなされていたということでございます。
現行法の制定のときに、ここについてはかなり議論があったということでございまして、やはり区別するためにというような主観的な要素、あるいは区別するために用いるという、区別することができるものというような客観的な要素、識別力が必要なのではないかというような議論があったわけでございますけれども、最終的には、そういうことは入れられずに現在の定義になっているということでございます。
それから、平成8年におきまして検討が幅広く項目についてなされておりますが、このときは定義規定について時間的な十分な余裕がなかったということなのかもしれませんけれども、本格的な議論には至らずに、理由が示されて引き続きの検討課題ということになったということでございます。
そのうちの1つが、商標的使用でないものを禁止するというのは判例学説上確立をしているということであれば、あえて直す実益がないんじゃないかというようなことだろうと思います。他方で、「商標」について社会通念と乖離しているという実態があるのに、商標的使用の趣旨というのを世の中に徹底させようとしても、それは無理だというような反批判が当然あり得るところだと思います。
丸2のところで、やはり「商標」の定義を変えるということになりますと、商標法全体について大きな改正をもたらすことになるので、それのありようについてはより慎重に検討すべきではないかというような議論があったんだろうと思っております。
4ページでございますけれども、それでは、諸外国の状況を若干見てみるということにいたしますと、まず米国、それから韓国においては主観的な要件、識別するためということで規定をしているということでございます。それからTRIPS協定、欧州の共同体商標規則、英国の商標法といったものにつきましては、識別することができるということで、客観的な要件として規定があるということでございます。
したがいまして、我が国におきましても、これだけ識別性というものが世の常識であり、かつ実態とも乖離をしているという批判がある中で、やはり識別性というのが「商標」の要素として盛り込まれていくべきではないかというのが一つの問題意識でございます。
他方、そのときに、実際問題として定義が非常に多岐にわたる関連性を持っているということでございますで、個々の条文のレベルでは十分慎重を期して規定をする必要があるのかなということでございます。
具体的な検討課題を幾つかここで例示をしております。1つは、標章・標識と商標の概念整理といいますか区別の問題。これ自身は、我が国の商標法のみならず多くの地域、国の商標法におきまして、商標の要素となる文字、図形、記号、立体的形状といったものは、「標章」または「標識」ということで定義をし、これらのうち、特定の目的ですとか機能を持って用いられるものを「商標」と定義するという二段構えになっているわけでございまして、これにつきましては、国際的にもそのような用いられ方というのは比較的一般的でございますので、これ自身はあえて変更する必要はないのではないかというのが一つの問題意識でございます。
それから、「標章」という言葉なんですけれども、ここでは「標識」という言葉を一つそれの代替的なものとして提示をしております。英語ですとマークというのが商標、サインというのが標識ということになるのかもしれませんが、両者の言葉は従来からずっと使われておりますけれども、必ずしも一般的な用語ではないということ。それから、やはり文字等視覚に訴えるものというようなイメージがどうしてもあるということになりますと、音ですとか、あるいは場合によってはにおいとか、そういうようなものにつきましても商標の要素として認められていくということに仮になれば、それは「標章」という言葉が狭いということは、場合によってはあり得るのかもしれないということでございます。
それから、第3番目の論点として、今ちょっと申し上げましたけれども、標章の範囲につきまして1つございます。現在は文字、数字、図形、色、そういったものの組み合わせというものが商標登録の対象となるものになるわけでございますけれども、必ずしもそれらに限定をせずに単色、1つの色、それから匂いですとか音ですとか、国によってはホログラムですとか動く標章とか、そういうようなものまで認めているような地域あるいは国というのがあるということでございます。
後ろに参考資料3というのをつけてございます。横長の表でございますが、資料2の参考資料3というものでございます。ここでは、アメリカ、OHIM、英、独、仏、韓国、中国、台湾といったところの事例が例として挙がっております。やはり音につきましては比較的商標登録として認めているところがあるし、香りについても、例えばアメリカですとかイギリスですとかでは認められているということでございます。色彩、単色というのは、やはり何らかのセカンダリーミーニングが必要で、単色そのもので、そのままずばりで登録されるということはないのかもしれませんけれども、それについても一定の要件を満たせば可能になるような国もあるようでございます。
こういう中で、我が国において、実際こういうニーズがあるのか。ある意味では色とかそういうものというのは希少な資源でもございますので、そういうものを果して「商標」として認めるということがいいのかどうか。それから、当然監視負担といったような問題もあると思いますので、そういうことも含めて、そういうことを対象にするということに仮になりますと、商標とか標章、それの範囲についてより柔軟に設定をしていかなきゃいけないということが起こってくるのかもしれないということでございます。
それから、(4)で主観的要件と客観的要件、いずれが適当かというような論点があろうかと思います。先ほど申し上げたように、識別性というのを何らかの形で規定をするということになりますと、米国、韓国型の主観的要件、それから欧州各国あるいはOHIMにおいて採用されております客観的要件、いずれがいいのかという問題があろうかと思います。実際問題、今、「商標」の定義が招いております混乱、支障ということを考えますと、やはり商標権の侵害行為が存在する、あるいは商標権者による登録商標の使用があったというようなことを裁判や審判・判定等において可能な限り明確に判断する、そういうための指標になるということが必要であろうということでございますので、どちらがいいかというと、例えば客観的な識別性というものを重視してはどうかというのがここでの問題意識でございます。
それから、(5)でございますが、「商標」の定義の中には、今「業として」という言葉があるわけなんですが、「業として」というのは反復継続してというような意味でとらえられておりますが、商標法はもちろん事業者法でございますので、そのこと自身、必ずしも不自然というわけではないのかもしれませんけれども、必ずしも「商標」の定義の中に「業として」というような概念が入り込む必要がどこまであるのか。特に、実際、反復継続性のようなものが問題になる局面といいますのは、侵害訴訟の場面あるいは不使用取消し審判の場面ということになるわけでございまして、そういうところでこれは論じればよいのではないかという気もいたしますので、ここではそれを挙げさせていただいております。
以上が「商標」の定義でございます。
次に、「使用」の定義でございますが、現在、標章につきまして「使用」の定義というのが与えられておるということでございます。2条第3項ということで6ページから7ページにかけまして、かなりこれは精緻に書き分けられた定義があるということでございます。他方、現在、標章、商標それぞれについて、使用形態が非常に変容しているといいますか、やはり多様な使われ方というのが今後もあり得るという状況の中で、果してこういった精緻な「使用」の定義というのが、ある意味では望ましいのかどうか。かえってこれが柔軟な法解釈なり適用を妨げるような局面というのがあるのではないかという、そういう懸念があるのかなということでございます。
2条3項を改めて見ていただきますと、特に役務について非常に細かく規定があるということでございます。例えば3号は、役務の提供に当たって提供を受ける方の利用に供するものに標章を付する行為。その標章を付したものを用いて役務を提供する行為というのが4号になっている。典型的には、喫茶店のコップにマークをつけるのが3号で、マークをつけたコップでお茶を出すのが4号だと、そういうことなんだと思うんですけれども、これがずっと7号あたりまで細かく規定をされているということでございます。
これについて過去を振り返ってみますと、大正10年法におきまして、ここまでは標章の「使用」について定義というのは必ずしもなかったということでございますが、他方、刑事罰の構成要件としてこれに類する規定というのはあったということでございます。これもある意味では非常に細かく規定をされております。この場合、当然大正10年法ですから商品の商標しかなかった時代でございますけれども、刑事罰の対象としての「使用」というのは相当程度細かく規定をされている。これすべてが現在の「使用」という概念に包摂されているというわけではないと思いますけれども、相当程度細かく規定をされているということだろうと思います。
34年法におきまして、「使用」の定義というのを置くということになりまして、当時の条文は、役務がございませんのでかなり簡潔なもの、3号だけからなるものがあったということでございます。
8ページでございますけれども、平成3年改正でサービスマークが導入をされているということで、やはりサービスマークの使用というのは、商品の「使用」ほどある意味では単純ではないということで、権利の効力、あるいは権利侵害の成否、不使用取消し審判、どういう場合に請求できるのか。それから、使用証明ですとか先使用権といったすべての分野に影響があるということで、かなり事細かに定義が新設されるというようなことになったわけでございます。サービス自体には当然形はございませんので、サービスマークというのは、そのサービスの過程で登場する有体物に付されるということを前提に、有体物が商品なのかサービスに用いられるものかといったことで、商品商標とサービスマークの交錯が生じないように細かく規定をしたというふうに聞いております。
その後、平成14年改正で、必ずしも有体物に付されるだけではなくて、情報通信ネットワークを利用した商標の使用形態というものについても対象にするということで、現行の7号の規定が新設をされているということになると思います。このときに、実は新しく定義規定を常にふやしていくというよりも、これにつきましては包括的規定に全面的に改めてはどうかというような議論があったということでございまして、他方、包括的な使用概念を取り入れる場合には、いかなる行為が使用に該当するかやはり不明確になるんじゃないか、あるいは不使用取消し審判などにおいて「使用」に当たるか否か解釈上の疑義を拡大するのではないか、そういった理由があって、引き続き検討すべき課題であるということで、7号の規定の新設ということに結果的にはなっているという理解をしております。
諸外国の状況、これは後ろでまた出てまいりますので、そこで御説明するということにいたしまして、検討の方向性ということで、やはり包括的に定めた方が条文の理解のしやすさというのはむしろ向上するのではないかというような考え方もあるので、そこをどう考えるかということだろうと思っております。ただし、そのときに、当然これは刑事罰の対象行為にもなるわけでございますので、その構成要件として、罪刑法定主義の観点から十分明確なのかどうかというようなことについて当然検証が必要になりますし、「使用」という言葉そのものが商標法でかなりたくさん使われておりますので、それぞれの意味を十分吟味をしていって、統一的な定義を置く必要があるのかどうかということを含めて検討するということがいいのではないかと思っております。
まず、具体的検討ということで幾つか課題をここでも掲げさせていただいておりますが、
2条3項の定義は、「標章」について使用とはということで定義をしておりまして、これは恐らく「商標」の定義、2条1項の定義の中に「使用」という言葉を使っておりますので、そのままでは、「商標」の使用ということで3項を定義いたしますと、定義上トートロジーになってしまうというようなことが恐らく論理的には考えられたのではないかというふうに思うんですけれども、実際使用されるというものは「商標」であって、「標章」ということで使われているのはほとんどないということでございます。
それとあわせまして、「商標」について識別性というものを加味して考えていくということになっていきますと、ますます「使用」の概念というのは、外縁というのは個別の事例で適切に判断されるのではないかということも言えるので、必ずしも「標章」の使用ということでここで定義をする必要がないのではないかと。むしろ「商標」の使用ということで定義をしてはどうかということで一つの提案をしております。加えて申し上げますと、「商標」の定義の中に「使用」という概念をあえて書く必要があるのかどうかということもあるのかもしれません。こういうのがあるから、「標章」の使用ということで定義をしなければならなくなるということなのかもしれないなという気もいたします。
それから、「商標・標章の使用の定義として規定することの妥当性」と書いてございますけれども、そもそも何の意味があって「使用」がここで定義をされているのかということになると思います。イギリスの例えば商標法等におきましては、「使用」というのは必ずしも定義はされておりませんで、侵害行為に該当する行為として、商品またはその包装に標識を付す、あるいは当該標識のもとで商品を申し出、もしくは売りに出し、商品を市場に出し、これらの目的のために商品を保管し、といったようなことが具体的に限定列挙をされているということでございます。
よく考えてみますと、「使用」という言葉が意味を持つ局面といいますのは、やはり不使用の取消し審判、例えばそういう場面、侵害の場面、それから先使用権といった場面ということで、権利者が行う行為と第三者が行う行為というのは必ずしも同じではないわけでありまして、現在はこういう「使用」の定義というのを前提にした書き分けがそれぞれの法文においてなされているということですので、論理的に破綻をしているというようなことはもちろんないということだと思いますけれども、果してこういう具体的な局面局面で意味する内容が違ってくる、そういう「使用」という事柄、それについて統一的な定義を置くということがどこまで必要なのかということをあえて論じてみているわけでございます。それが(2)ということで御理解をいただければと思っております。
それから、(3)で「侵害規定の整理の必要性」ということで書いておりまして、みなし侵害の条文、これは37条という条文がございます。10ページから11ページの真ん中にかけて、これも各号で列記をされております。さっと見て、すぐそれぞれの違いがおわかりになる方というのはほとんどいらっしゃらないんじゃないかというふうに思うんですけれども、これも2条3項の規定の影響もあってかなり細分化された規定ぶりになっておりまして、これについても、「使用」の定義等とある意味ではセットで見直すということもあり得るのかもしれないなということでございます。ただし、これにつきましては当然侵害の有無というものを左右する、あるいは刑事罰との関係等も出てまいりますので、十分入念な調整というのが必要になるという気はいたしております。
それから、11ページでございますけれども、先ほど、新しい使用形態が登場するたびに定義を新設するというのでは非常に煩雑であるということを申し上げたわけでございますけれども、包括的に仮に定義を規定する場合、どういう類型に分けて考察するのがいいのかということでございます。これは一つの試論といいますか試みでございますけれども、まず1つの分類として、商品に関する行為、役務に関する行為、商品、役務共通の行為ということで、3つの行為にまず分けて、それぞれについて商標を付する行為か、商標が付されたものを製造、提供する行為か、あるいは広告等において表示する行為かということで、こっちも3つに分けてみたわけでございます。
日本の場合は、特に役務について付されたものについて製造したり提供したりというようなところが非常に複雑に規定をされているということでございます。11ページから12ページにかけて、ちょっとaとかxとかyとか使って、できるだけわかりやすく書こうとしたんですけれども、特に4号から7号にかけて、役務商標が提供されるというような局面が非常に多岐にわたって規定をされているというのが日本の特徴だろうと思っております。
それに対しまして米国型というのは、もちろん、やや単純化しているところはあると思いますけれども、役務についてはまとめて規定をしているというところが、ある意味ではシンプルになっているということだろうと思います。
ドイツにつきましても、ドイツは比較的多岐にわたっているようにも見えますが、やはり役務についてさほど細分化して規定をしていないということになろうかと思いますし、イギリスにつきましては、x、y、zといういわゆる行為類型の3パターンしかないわけでございますし、EUにつきましてもイギリス型と同じということでございます。ただし、ドイツ、イギリス、EUというのは、「使用」の定義そのものではなくて、禁止行為として規定をしたり侵害行為として規定をしたりしているというところに特徴があるということだろうと思います。それから、韓国でございますけれども、商品商標の中でどうも役務というものを含めて解釈しているということのようでして、行為類型に対応して3つしか定義は置かれていないということでございます。
これと比較して、日本がどうだから直ちにどうだというわけでもないとは思いますが、特に4号から7号にかけての規定というのが細かいということは否めないといたしますと、例えば役務に対します製造、提供する行為というものについて、何らかの一くくりの規定ぶりにまとめてしまうということができないかどうか。それから、米国におきまして例えば一部の規定に見られるわけでございますけれども、商品と役務というのを束ねて、そのままそれについて、それぞれの行為類型を枝分かれさせるというような考え方というのもあるのかもしれないということでございます。この辺につきましては、非常にある意味ではテクニカルな問題かもしれませんので、この場で事細かに御議論いただくことが果してふさわしいのかどうかということはございますけれども、一つの考え方として御提示申し上げているということで御理解をいただければありがたいと思っております。
最後に、輸出の取り扱いということでございますけれども、輸出は商標法の目的ですとか趣旨、属地主義というような観点から「使用」に当たらないというふうに考える考え方があり得る一方で、それにつきまして、判例では「使用」に当たるということで解釈をされているということでございます。これについてどうするのか、明確化するという趣旨も込めまして、あわせて検討してはどうかということでございます。
最後に、音声による使用ということで書かせていただいております。13ページから14ページにかけてでございますけれども、現行法では必ずしも、音声で表現しつつ例えば広告を行うという場合、それが「使用」に含まれるという解釈はとっていないわけでございます。判例上も、音声による標章の表現というのは「使用」に該当しないということを判断したものもあるということでございまして、過去の条文を見ましても、「使用」の概念の上で、明確に音声による「使用」というのが入っているということを裏づける、あるいは解釈上そういうことができるという保証はないわけでございます。
諸外国の例を見ますと、オーストラリアあるいはノルウェー等におきまして、口頭での「使用」というものも含むというような定義が置かれているということでございまして、実際、かなり音声による「使用」というのが行われているという実態を考えますと、これについては標章の「使用」に含まれるということを明確に規定してはどうかというふうに考えております。
その場合、使用概念が、今回仮に包括的に規定をするということになると、その中に包含されるようにするのか、あるいは解釈の変更が望ましいのか、その辺わかりませんけれども、関連条文を十分検証するということ。
それから、音声で表現される場合、具体的にどういうものが果して侵害になるのかということ。例えば日本語の場合、文字が異なるけれども称呼が同じであるというようなものについてはかなりあるわけでございまして、あるいは異なる図形とか色が組み合わされているけれども、称呼される文字と全く同じ標章が音声で表現される。例えば「太陽」と「大洋」ということで、読み方は同じなんだけれどもロゴが違うというような場合、そういう場合は、やはりそれは侵害ということになるのかどうかということもあろうかと思いますので、その辺の限界についてよく考えておく必要があるのではないかということでございます。
以上、御説明申し上げた諸点につきましては、必ずしも事務局の提案というようなものではございませんで、切り口を提示させていただいたものでございますけれども、これに限らず、あるいは2条の定義に限らず、関連する部分につきまして幅広く御意見を賜りたいという趣旨で資料を作成したわけでございます。いずれにしても入り口のところの検討でございますので、ずっとこの後、いろんな論点の検討が一巡したようなところで、また戻って整理をするということも考えてはどうかというふうに思っております。
資料についての御説明は以上でございます。

土肥委員長

ありがとうございました。

自由討議

土肥委員長

それでは、議論に移りたいと思いますけれども、最初に、ただいまございました説明、この点に関する質問がございましたら、その質問からまずお出しいただければと、その後で御意見を承りたい、こういうふうに思います。御質問ございますでしょうか。
髙部委員、お願いいたします。

髙部委員

2ページで、現在の「商標」の定義が、社会通念上の「商標」と意味が異なるという御指摘があるんですけれども、社会通念上の「商標」というのをどのようにとらえておられるのかというのが第1点です。
第2点は、4ページ以下で、アメリカや韓国では識別について主観的要件が必要だというふうに書かれているんですけれども、これは英文を訳した場合に主観的要件というふうに読むのか、客観的要件とも読めるのではないかというふうにも思うんですけれども、そのあたりを教えていただきたいと思います。
第3点は、11ページから後で、第2分類でyというのが出てくるんですけれども、これは製造を提供するというふうに書いてあるんですが、譲渡・提供の誤りではないかというふうに思うのですけれども。
それから、4つ目は13ページで、輸出の取扱いということが書かれておりますけれども、この高裁判決を確認してこなかったんですけれども、これは輸出という行為が「使用」に当たると言ったんでしょうか。それとも、輸出目的の商品に商標を付することを「使用」と言ったのでしょうか、そこのあたりを確認させていただきたいと思います。

木村審議室長

私どもとしては、通常「商標」というのは識別性を持つ、自他識別という、「ための」と言うと、それは主観的ということになるのかもしれませんけど、そういうものとして通常使われているというふうに認識をされているということであれば、それと乖離しているのではないかと。現在の定義が、条文上の定義が少なくとも文理的にそうなっているということを申し上げているだけであって、判例等において自他識別機能ということで商標的使用、それで補われているということは当然でございますので、これはあくまでも現在の条文が世の中の「商標」のいわば常識と乖離をしているのじゃないかということを申し上げているだけでございます。
それから、アメリカと韓国の例なんですけれども、後ろの参考資料2を見ていただくと、「to identify and distinguish his or her goods」というような表現がありまして、これが目的的に理解をされる。その者の商品を他人が製造する、または販売するものから特定し識別するためという言い方で、主観的というような言い方をしているんですけれども、確かに米国においても、当然審査においては客観的な審査がなされているということもありますので、そういう意味で言うと、実際問題これは主観的で、まさに出願人の意思といいますか、そういうものだけをとらえてこういう表現をしているというふうに私どもとしても断定をする意図ではなかったということで御理解いただければありがたいと思います。
それから、yですけど、それは譲渡ということで御理解いただければ。
それから、基本的に争われているのは付した行為ということで。ただ、輸出がないので、輸出専用品に付した行為というものをそのまま除いているということだそうであります。

髙部委員

要するに「商標を付する行為」のところで読むことは可能なんですね。

小川商標制度企画室長

輸出のところの東京高裁の判断ですけれども、「輸出」の1つ手前の段階の「付する」というところで読めるということで、1号を適用して「使用」だと認めたものでございます。

土肥委員長

よろしゅうございますでしょうか。
ほかに質問ございましたら。
松尾委員、お願いいたします。

松尾委員

音とも関係しますけれども、英国の商標法、参考資料2の3ページにありますね、この3行目にgraphicallyってありますが、私はこのgraphicallyというのがどうもよくわからない。ここのところには「視覚媒体により表現することができる」ってありますね。後で音のところで、参考資料3で、イギリスの場合には、これは音の登録もあると思うんですが、視覚認識可能に表現できて識別力を有する場合には登録に値する」と。私は、音というのは耳から聞こえるものですけれども、視覚的に表示できますね、音譜にしても、音以外、そういう記録できる――記録というか、表現できるものなので、このgraphicallyという言葉の中に入るからここでとらえられるのかどうなのかというのがちょっとわからないんですね。
それで、フランスの知的所有権法というのが次の4ページにあります。これ、ちょっと原文が出てないのであれなんですが、ここでは(b)で聴覚的標識、(c)の形象的標識ってありますね。これだと、はっきり聴覚的というところが音だということはわかるんですが、イギリスの方がどうなのかなと。graphicallyというのは非常に広いんじゃないかなという感じを持っているんですが、そこはいかがなんでしょうか。

木村審議室長

済みません、ちょっと今すぐわかりませんので、後で改めて調査をいたします。

土肥委員長

それでは、少し具体的な中身にも議論としては入っておるわけでございますけれども、大きな柱としましては、全体的には「商標的使用」という問題だと思うのですけれども、「商標」の問題と「使用」の問題、2つに分けられようかと思います。それで、半分半分ぐらいの議論で、「商標」について半分ぐらい、「使用」について半分ぐらい、それをおおよその目安にして議論をいただければと思っております。
まず、順番からいたしますと「商標」の定義の問題ということになろうかと思います。現行のように標章の「使用」というところで「商標」を定義して、その「商標」について使用行為があると、そういう構成を問題とすることだろうと思うんですけれども、そういう校正に関する問題の提起がひとつ、それから識別性の問題ですね。識別性を商標の定義に入れてないということなんですけれども、そこをどうするか。それから、第三に「商標」の定義の中に「業として」というのがそこに入っておるわけですけれども、そこに置くのか、あるいは特許法型のように別のところに置くのか、そういうことだろうと思います。かなり細かな議論で恐縮ですけれども、あるいは終わりの方にあった音声の問題も、音の問題も、場合によってはここで議論が可能かなと思いますけれども、いかがでございましょうか。どのあたりからでも構いません、御意見、あるいは、先ほど高部委員がおっしゃったんですけれども、社会通念として現行の規定が、「商標」の定義からすると、商品を業として生産等する者が商品について使用しているあらゆる文字、この印籠水の容器に書かれているあらゆる文字がすべて一応「商標」になってしまうということがございますね。こういうことから、例えば裁判の場であるいは紛争の場で、あるいは実務の場で何か問題があるという、そういう実態のあたりから御意見を聞かせていただいてもよろしいかなと思いますけれども。
三宅委員、お願いいたします。

三宅委員

その議論に入る前に、ただ今、本日は「商標」の定義と「使用」の定義を半々にというふうにおっしゃったんですが、「輸出」であるとか「音声」まで含め、また定義自体が商標全体に及ぼす影響等も考えますと、とても1回では議論できない内容だろうと思います。今、半々とおっしゃいましたのは、今日だけでそれを半々の時間でやろうと、そういうことなんでしょうか。私としては、最低でも2回ぐらいに分けてやっていただきたいと思っているんですが。

土肥委員長

先ほど終わりの方で説明ございましたように、最初に議論をしておきまして、具体的な各論の話がございますよね、取消審判の問題もございましょう、侵害の問題もございましょう、そういうところを回ってきて、またもう1回やろうという、そういう提案だったわけです。ですから、きょうは前半のところで1度この議論をして、その前半のところの議論を半分ずつに分けようと、こういうことです。だから、きょうのところは各論での議論はまだできていないけれども、その前に、少し皆さんの意見をいただいておきたいということでございます。

三宅委員

わかりました。
それでは、まず「商標」の定義のところで意見を言わせていただきたいんですが、先ほどの事務局の説明では、「商標」とは「業として商品や役務の提供等をする者が使用する標章」と、こういうふうに簡単におっしゃったんですが、現行規定をよく分析してみますと、いわゆる構成要件として、文字、図形、記号、立体形状という物理的要件が1つあります。それから、「業として」云々という、いわばだれが使うかという部分の主体的要件。それから、何に対して使うのかという客体的な要件もあると思います。今回の議論はそれにプラスして識別性ということです。識別性については機能的要件と言ってもいいと思うんですが、そういうものも追加するかどうかという議論になると思います。ですから、議論にあたってはこれらすべてを含めて必要なのかどうか、総合的に検討する必要があると思っています。

土肥委員長

そうですね、もちろん総合的に議論いただいて構わないのですけれども、いかがでしょう、実務的には、例えばですけれども、現行の2条1項型の行為規定で業務上不都合とお感じになられているということはございませんでしょうか。

三宅委員

それはあります。と申しますのは、2条1項に「商標」の定義規定があるんですが、その中に「標章の使用」、端的に言いますと、「いわゆる事業をする者が、その商品あるいは役務について使用する標章が商標だ」という規定になっていまして、では「標章の使用」とは何かというと、その次の2条3項にある。だから一旦2条3項にいき、また2条1項に戻って「商標」というものを画定しなくてはならない。次に、侵害はどうなのかというときには、当然、「商標の使用」ということが問題になってくるわけですけれども、それは何かをさらに検討しなくてはいけないというように複雑な規定になっています。またご承知のように、識別要件のところは3条その他から解釈的に導き出すというような形になっていますので、ますます複雑になっている。こうしたことを考えますと、やはり2条1項の定義のところは、「商標」というものがそこだけで画定できるよう客観的に定義した上で、なおかつそこで画定した「商標」について、「使用」とはどういうことを言うのかを、その行為に着目して2条3項で規定するという形の方が、実務的にはわかりやすいと感じています。

土肥委員長

ほかに、実務的な観点から。例えば特許庁に出願する段階で、ある商標を「商標」として使用するのかどうか。使用の意思は昔は柱書きにあったと思うのですけれども、今はそこはないですけれども、しかし、やはり「商標」として使用するというものでないと出願をしないわけでしょうから、出願人を代理なさっておられる方からはいかがでしょうか。

古関委員

出願の代理というよりは、今の定義規定で、これが「商標」に該当するのかどうかというのが一番わかりやすい例というのは、話題になっている「阪神優勝」という言葉だろうと思うんですね。この言葉というのは、出願するサイドの問題というよりは、阪神球団が「阪神優勝」という言葉が何で使えないのかということが非常に問題になっていますけれども、この規定ぶりからすると、まさにあれは「商標」なんだから使えないんだろうという形になってしまう。だけれども、あれはあくまでも阪神が優勝した事実を表示する言葉、側面的には商標的な側面という場合もあるでしょうけれども、すべてが使えないというわけではないんだろうと思うんですね。こういうことが明確になってない規定ぶりなのではないんだろうかという感じは持っています。

土肥委員長

ありがとうございました。
竹田委員、お願いいたします。

竹田委員

私は出願する立場でなく、東京高裁で15年間審決取り消し訴訟をやってきたときの経験から申し上げますと、確かに2条の1項の柱書きでは識別性ということは書いてありませんけど、実際上は、すべて3条で識別性の点は判断されるわけですね。だからその意味では、別に2条に識別性についての言葉が入らなくても、実務上支障はなかったし、そのために非常に困ったとか判断に迷うとかいうようなことは、経験としてはありませんでした。
そういう意味では、別に現在の規定の立て方でも支障はないのかと思いますけれども、「商標」は、そもそも本質が自他識別機能にあるのだから、「商標」の定義としてしっかり入れておこう、その方が商標法の規定のあり方として好ましいという議論になれば、そういうことは言えると思いますけれども。

土肥委員長

ありがとうございました。
髙部委員、お願いします。

髙部委員

竹田委員のお話は、登録を認めるかどうか、あるいは無効審決を出すかどうかといった場面やその審決取消訴訟においては、おそらく3条から識別要件が出てきて、余り困らないというのはおっしゃるとおりだろうと思いますけれども、やっぱり侵害訴訟で「商標としての使用」かどうかということが問題になる場合には、いったん登録された「商標」について第三者が使用している行為のことを言うものですから、そうすると、被告の行為のところで識別性というふうなことはなかなか出てこないように思います。今まで、そういう意味で裁判例が苦労して、識別力のあるような形での使用ではないとして侵害を否定はしているわけですけれども、できればそこのところは定義規定に入れていただくか、あるいは前回申し上げましたように、1条で一体何を保護するのが商標法の目的かというところ、いずれかのところで何らかの形で入れていただく方が明確ではないかというふうに思います。

土肥委員長

ありがとうございました。
そうすると、先ほどのポパイのようなケースであれば、「商標」ではないという言い方になるということになりますかね、この参考資料1のケースでは。

髙部委員

その場合に、また「使用」のところの定義がどうなるかともリンクしてくるように思います。

土肥委員長

田村さん、いかがですか。

田村委員

ポパイのケースとか「清水次郎長」とかいろいろと挙がっていますけど、特にポパイのケースは、皆さん御存じのようにポパイの著作権者ではない方が、冒用みたいな形で、商標登録されたものに対して権利行使を制限するという事例でありますし、また、「清水次郎長」のケースも、「通行手形」のケースもそうですけど、言葉から推定されますように、いわば商品の機能みたいなことにかかわる言葉について、何とか侵害を否定しようと努力なさった事例でありまして、ただ大きく書かれているからセーフになったとか、そういう問題じゃないと思うんですよね。だから、ちょっとこれらの例を指導的なケースとして掲げるというのは、やや疑問があるかと思います。ただ全般的には、僕は竹田先生の意見と似たような感想を持っておりまして、実務経験もないただの人間でございますが、余り困ってはいないような気はします。ただ、本質的なところに入れるというのであれば、それはそれでよいのではないかと思っております。

土肥委員長

どうぞ。

大泉委員

出願する立場というか、食品会社の業界からという立場でちょっと発言させていただきたいんですが、識別力のことについてなんですが、食品の業界では、識別性に関係して商標的使用というのはどういうことなんだろうかということと、それから、識別力がないものが登録になるのはおかしいというような話題がよく出ます。食品の包装容器やパンフレットには本当にいろいろなことを書くんですね、社名からペットネーム、そして単なるキャッチコピー的なことまでいろんなことを書いて、そして「商標」の担当者は不安だから全部調べて、パッケージに書くようなことは全部出願するというようなことまでやっているんですね。
実際には、争い事というのは食感、食べたときの感触だとか、外国産の食品用の素材、単なるキャッチフレーズ的なものが登録になって、それについての争いというのは本当にたくさんあります。識別性のないものは本来登録性がなくて、万が一登録になっても、それは権利乱用はできないんだよというようなことが業界全体で定着してほしいという願いは非常に強いんですね。ですから、識別性が重要なんだということはどこかに書いてあった方が、こういう争い事を少しでも抑えることになるかと思いますので、「識別性」という言葉がどこかに入っていると非常にいいんじゃないかなという意見がたくさん出ております。

土肥委員長

ありがとうございました。
松尾委員、お願いいたします。

松尾委員

私も全く同意見で、これからますます知財をする人間はふえてくると思います。判例などを全部読んでかかるわけではなくて、私、今若い弁護士などのいろいろ教育をしていますと、今言われたように1つの商標でも、例えば商品がついている容器から説明文とかいろいろ同じ言葉が使われているわけですね。それが、どれが商標で、どれが単なる説明文かというような判断が、若い人には書いてないとできないんですね。だんだんわかってくると、2条の定義にはそんなこと書いてありませんねということになります。私、裁判官に申しわけないけど、このごろ知財専門の裁判官の中に、私は商標には素人ですなんて言う方がいらっしゃって、そのときに説明するのに、やはり条文には書いてないんですね。私は、やはり条文にはっきりと書いていただかないと、これから知財人口がふえますと問題が起きてくるんじゃなかろうかなと思っております。

土肥委員長

ありがとうございました。
竹田委員、お願いいたします。

竹田委員

商標登録の要件の中での3条が識別を中心に書いていると思うんですけれども、そこで登録された商標の、今度は権利行使になった場合に商標的使用に当たるかどうかが問題になるのは、もちろんそのとおりだと思うんですけど、それは「商標」の定義の問題でなくて、識別力を表示する形で「商標」として使われているかどうかということの問題じゃないんですかね。そちらの問題というのは、むしろ商標の「使用」の方について、そういう「使用」の方をしているかどうかの問題ではないか。定義の問題とはちょっと違うんじゃないかと私は思うんですけれども。先ほど言いましたように、そこは明確化するために「識別力のある」と入れることについて、あえて異論があるわけではありませんけれども、商標的使用に当たるかどうかというのは、商標自体が識別力があるかどうかの問題でなくて、識別のある商標を識別のために使っているかどうかの問題じゃないかというふうに思います。

土肥委員長

その問題はもちろん後で扱わせていただきますけれども、今、竹田委員おっしゃった識別力の問題なんですが、説明の中で、主観的にというのと客観的にという、識別するためにというところですね、あるいは「主観的」、「客観的」という、そういう言葉で説明があったかと思いますけれども、識別力を定義する場合に、どちらの方が適切であるべきか、そういう御意見ございますでしょうか。
髙部委員、お願いいたします。

髙部委員

事務局案でもおそらく客観要件説だろうと思いますけれども、やはり第三者が判断するには、客観的要件の形で規定するしかないんじゃないでしょうか。

土肥委員長

侵害を想定してお考えなのではないかなと思うのですけれども……

髙部委員

それは登録の場合も当然同じだと思います。

土肥委員長

古関委員、お願いします。

古関委員

この辺、弁理士会の商標委員会でも検討しておる最中なんですけれども、今のところ主観説、客観説が拮抗しております。というのは、いわゆる社会通念上の商標と言った場合には、使用する側が識別するために使うという、これが商標に内在する概念なのではないかという観点からすると、主観説が妥当であろうという説があります。
もう一方、やはり商標というのは需要者が識別できるものだと、識別機能というのはそういう点でとらえるべきじゃないかという観点からすると、やはり客観説でいくべきだろうという点が分かれています。
今、この資料の中で、アメリカ、韓国が主観説で、TRIPSも客観説をとっていたと思うんですけれども、この辺が、なぜそういうような経緯で、それぞれそういう主観説、客観説をとるに至ったのかというところの検証がどの程度なされているのかという点を、今すぐというわけではありませんが、お教えいただければなと思っています。
もう少しよろしいですか。

土肥委員長

はい。

古関委員

主観説の問題点というのは、いろいろこれは手法があると思いますけれども、例えば侵害を識別するためにというところの立証責任というのは、多分現状の観点から言うと、商標権者側にあるのではないかという点。それと、あるいは登録要件として見た場合にも、識別するためにということを審査できるのかどうかという問題。そういう点からすると、客観説の方が理論上とか技術的にはまさっているのかなという感じはしております。
さらに、先ほどから竹田委員もおっしゃられていましたけれども、ただ単に侵害の問題から考えると、「商標」の定義だけでは落ちつかないだろうと。やはり「使用」との関連であったりとか、あるいは混同の概念の問題であったりとか、この辺もトータルに考えるべきだという意見もあります。

土肥委員長

1つ確認させていただいてよろしいでしょうか。今、商標的な使用の問題の立証責任は権利者にあるとおっしゃいましたけれども、それでよろしいのですか。むしろ商標的使用ではないという抗弁を……

古関委員

抗弁の場合はそうですが、ただし識別するためにと言った場合には、立証責任は原告側にあるんじゃないかと。いかがでしょうか。

土肥委員長

これはいかがでしょうかね。権利侵害の話ですよね。商標が無断で使用されている。

古関委員

抗弁の問題として考えればよろしいんですか。

土肥委員長

商品について使用されていると、こういうことですよね。

古関委員

識別するために使用しているという事実は、立証責任はどちらなんですか。

土肥委員長

これ、いかがでしょうか。
竹田委員、お願いいたします。

竹田委員

私の理解が正しいかどうかわかりませんけれども、商標を商品に付しているとか商品の包装に使っている、要するに2条3項の「使用」の定義に当たる形で使っているけれども、それは商標として使っているのではないということですから、権利者側としては、この要件を形式的に満たしていれば、それで立証責任は尽くされているので、それが形式的に満たされていても実質は商標として使っているのでない。つまり自他識別機能を有する形で使用してないというのは、抗弁と思ったが、いかがですか。

髙部委員

現行法の解釈はそれでいいんですけれども、今、主観的要件説として識別性を規定したときどうなるかというお話なので、非常に困難だろうと思うんですね。

土肥委員長

難しくなりましたけれども、どなたか。
三宅委員、お願いいたします。

三宅委員

2条に識別性を入れるということになると、恐らく今の3条1項各号というのはなくなると思いますが、そうなってきますと、一方で侵害局面の問題はあるとしても、他方、特許庁の方での審査もあります。そして審査の場合、それは抽象的、画一的にやらなくてはいけないだろうと思います。そうしますと、いわゆる出願人の意図とか目的といった主観的なところは審査のしようもないわけで、特許庁としては見本だけを見て審査しなくてはいけない。そういう意味では客観的な定義の方がいいのではないかと思います。

土肥委員長

3条については何かありますか、お考えが。

木村審議室長

3条ないし4条も含めて、あと類似とか混同とかそういう概念も含めて、改めてまた回を移して御議論いただければいいと思っているんですけれども。ただ、2条にそういう識別性の定義を置いたから、直ちに3条は要らなくなるというふうには考えてはいないんですけれども。
いずれにしても、出願するときの、これは商標登録の要件ということで書いております。もちろん3条の第1項第6号というのは、まさに「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」という規定があるので、これが自他識別性をまさに示す一種のバスケットクローズじゃないかという議論はあるとは思うんですけれども、ただ、定義に書いたから要件として規定する必要はないというふうには必ずしも思っておりませんけれども。

土肥委員長

それから、古関委員が先ほどおっしゃった話なんですけれども、商標使用者が自分の意思で選択をして使用している、それが商標だというアプローチは、前回の総論的な説明になったブランド価値とかブランド戦略の議論にも多分つながるんだろうと思うんですね。つまり、商標というものを完全なプロパティーライトというふうにして見ていくのであれば、それは自分の意思で商標を選択する、そして、それについて識別力をより高めて著名性を育ててと、そういうような文脈につながるのだろうと思うのですけれども、そこのところはちょっと今回のところは切れておりますので。しかし、それを別にしても、そういう今おっしゃったような内容の意見がかなり強かったと、こういうことですね。
それでは、「商標」について、もちろんまだ議論していただいて構わないのですけれども、その「商標」のことも含めながら「使用」について、あるいは商標的な「使用」について全体的に議論していただいても構いませんけれども、もし「商標」について、もう一言おっしゃりたい委員の方がおいでになりましたら。
はい。

古関委員

今、直接、客観説と主観説の話に入ってしまいましたけれども、その前提としまして、この具体的検討の2とか3とかで書いてあるところなんですが、今の標識性の問題として、ここの議論がちょっと今議論としては欠けているのかなという感じなので、そこのところについてちょっと触れさせていただきたいんですけれども、確かに前回の知財研の議論のところでも、社会的なニーズというのは、音響マークであるとかにおいのマークであるとか、ここのところについては社会的なニーズはさほど高くないというような議論があったと記憶しています。ただ、実際に社会的ニーズというよりは具体的な場面を考えた場合に、例えばマドリッドプロトコルによる出願が外国から日本に入ってくる、あるいは日本から外国に出すといったときに、こういう制度がないということは、外国であれば、日本においてその権利化ができないという不都合もありますし、あるいは日本から外国に出す場合にも、それを基礎にできないという点もありますので、ここは保護範囲としては、保護対象としてはそれは入れておくべきではないかというふうに思います。
ただ、そこが登録要件として技術的な問題があるとすれば、それは登録要件の問題として片づけるべきことであって、保護対象としては、そこは広くしておくべきであろうというふうに考えています。
それと、標識のところに関連して、TRIPSの15条のところで、色の組み合わせというのが登録できるという形になっているかと思うんですけれども、現行法上、色彩の結合というのは書いてありますけれども、ここは現行法の2条の定義で色の組み合わせという言葉はカバーできるというふうに今お考えなのかどうか、その辺をちょっと確認をさせていただきたい点が2点目です。
それと3点目として、「業として」というところなんですが、これを削除した場合、どこに入れるおつもりなのか、あるいは全くこの「業として」というのを入れないおつもりなのかというところ。もしどこにも入れないという形にした場合には、個人的な「使用」というところがかなり商標法の中に入ってくるのではないかというふうに思いますので、その辺のところについてちょっとお聞かせを願いたいと思います。

土肥委員長

それでは、色の組み合わせの点が1つと、それから、「業として」を仮に完全に外すのか、あるいはそうではないのか。多分そうではないのだと思うのですけれども、そのあたり、説明をお願いできますか。

小川商標制度企画室長

色の組合せの話ですけれども、TRIPS協定に書いてある「色の組合せ」のところは、現行法で今現実に出願をするときに、例えば2色を商標見本に具体的に表すという形で認めておりますけれども、あの種のものも「色の組合せ」の中で読めるということで了解されています。ですから、我が国は色の組合せはTRIPS協定を履行しているという整理になっております。

木村審議室長

「業として」ということなんですけれども、私どもが申し上げているのは、2条1項の定義の中に、「商標」の定義として「業として」という言葉が必要かどうかということを申し上げているのであって、別に、商標法の例えば目的において、業務上の信用の維持のために法律があるとか、そういうある意味では根本的な体系を崩すつもりはないというふうに思っております。ただ、例えば現在、個人輸入のようなものが取り締まりといいますか侵害になるのかどうかとかいうような議論というのはあると思うんですけれども、それがある意味では2条の定義が事業性、「業として」ということがあって、一種のミラーイメージのようなものとして、侵害の局面においても「業として」の侵害というようなことで理解をされているとするならば、それはむしろこういうところに「業として」という言葉があること、これは2条においては必ずしも不可欠な言葉ではないと思いますので、それは取り去るというのも一つの案かなというふうには思います。ただ、それについて、また改めて議論する機会があろうかなというふうに思っております。

土肥委員長

よろしゅうございますか。
松尾委員、お願いいたします。

松尾委員

今、個人輸入の問題は改めてとおっしゃいましたけれども、実は私もそれを考えて、定義から外した方がいいんじゃないかなと思っていたわけです。個人輸入の問題について、仮に特別法をフランスとかドイツのようにつくるとしても、商標と真っ正面から衝突するような別の法律をつくるわけにいかないので、そういう戦略的な考え方から、いろいろ個人輸入も商標だけじゃなくて含めて考えるとすれば、やはり定義の方に設けないで、権利侵害の方で工夫して設けるようにした方がいいんじゃないかと思っております。

土肥委員長

ありがとうございました。
髙部委員、お願いいたします。

髙部委員

教えていただきたいんですけれども、特許法ですとか意匠法のような形で、権利の効力のところで「業として」何々する権利を専有するという形を書かないで、商標法だけ25条には書いてなくて、2条に「業として」が書いてあるというのは、どういう由来なんでしょうか。

小川商標制度企画室長

あくまで想像ですけれども、「商標」の本質として、「業として」使わないものは「商標」ではないという整理をしたんだろうと思います。

土肥委員長

多分それはおかしいのだろうと思うのですけれども、そういう理解をしたということはありましょうね……

小川商標制度企画室長

まさに個人が個人的に使用するというものは排除する、それは「商標」ではないという整理をしているんだろうと私どもは理解しています。

土肥委員長

よろしゅうございますか。
それでは、先ほど申し上げましたように、広く「使用」あるいは商標的な「使用」、このあたりの議論をしていただければと思います。
田村委員、お願いいたします。

田村委員

ちょっと確認なんですが、整理の仕方というのがたしか12ページの最後の段ぐらいから13ページにかけてありまして、丸1丸2と2つの案があって、基本的にまとめてしまおうと。特に13ページの丸2だとかなりまとまるんですが、これでちょっと。特に定見があるわけじゃないんですが、現行法と内容を変える趣旨があるかどうかでちょっと確認したいところがありまして、それは8ページに条文がありますが、私も自分の本を読みながら、ようやく久々に理解している状況でございますが、この条分、役務のところが特に複雑になっている理由は、3号で、標章を付する行為については「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」、例えばレストランの食器とかですよね、直接利用者が利用するもの、それについては標章を付しただけで「使用」と認めてあげて、不使用取り消しを免れると。
それに対してそれ以外のものですね、5号、「役務の提供の用に供する物」、これは広い概念だと思いますから、例えば今のレストランの例ですと、レストランの業務用で連絡用か何かの自動車みたいなものがあると思いますけれども、それに標章を付した場合は3号では読まない、5号で読む。そのときには、その商標を付したものを、例えば役務の提供のために展示する行為、店の前で飾ったりとか、あるいはショーウインドーなんかも3号に当たりませんから、多分5号で、展示したら「使用」になるという形で、段階を分けているんだと思います。
大変考え抜かれた規定で、逆に考え抜かれているところを読むのが大変なんですけど、その上で今度侵害の場面のですと、じゃ業務用の連絡用の自動車に付した標章についてどうなるのかというと、これもよくできているなと思っているんですけど、11ページにありますね。11ページで5号から7号が当たるわけですけど、これは侵害の方の場面なんですが、例えば5号でいきますと、こういったこれこれの「商標の使用」。この「使用」の定義はさっきの項ですよね、「使用をするために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を所持する行為」となっていまして、結局、使用するためという目的要件を満たして初めて連絡用の自動車みたいな、役務の提供の利用者の直接の用に供しないけど、役務の提供の用には供するものですね。そういうものについては、本当に使用するの、使用する気があるんだったら侵害の方にはしてあげますよと、そういう形で規定していまして、結局まとめますと、ある意味では考え抜かれていて、不使用取り消しを免れるためには、そういう何にでも使えるようなものに、要するに連絡用の自動車ですと、レストランに使うのか何に使うかわからないわけですね。それだけではまだ取り消しの対象ですよと。ちゃんと利用者の提供に供するものに3号で標章を付してくださいねと。そのかわり侵害の方では、そういう形で実際の使用に供する気があるんだったら、商標を付したものは、とにかく目的があるのであれば全部侵害にしますよと。
そういう構造が非常に考え抜かれていて、逆にこういう考え抜かれたために大変難しくなってて、私もようやくそういうことだったのかなと今思い出した状況なんですが、これを、常識的にはそうなるよねという形で規定に書かないで済ませてしまうことになるのか、あるいは規定を書くとなるとやっぱりこうなっちゃうのかなとか、いろいろと思っていまして、とにかくこの現行の考え抜かれた規定に対してどういうお立場なのかということがわからなかったので、質問です。

土肥委員長

お願いできますか。

木村審議室長

解釈でおのずとそうなるというところは、少なくとも束ねてもいいんじゃないかというふうには考えているんです。ただ、今、現に確かに凹凸。確かにおっしゃるように、不使用取消し審判の局面と侵害の局面で、それぞれの構成要件というんでしょうか、それが微妙に違うということはおっしゃるとおりだと思うし、だから、それぞれについては、例えば2条の3項で統一的な使用の定義というものを必ずしも置かなくても、それをもちろん決めてかかっているわけでは全くありませんが、別に置かなくても、それぞれの局面において必要な行為というのをファインチューニングできるようになっていればいいのかなというふうにも思っております。もっとも、個別に、この号は要る、この号は要らないとかいうような意味で、現在、私どもとして何がしかの検討をしたり意思決定をしたりしているということはないということなんですけれども。

土肥委員長

髙部委員、お願いいたします。

髙部委員

現行法よりも広くなるんでしょうか。つまり包括的に規定しておけば、態様が異なって、新たな態様で何かが起きてきても、それも「使用」だと言えるじゃないかと、こういうふうな考え方だろうと思うんですけれども、それは現行法に書いてないものも含めるために、現行法よりも広い形で規定したいという趣旨なんでしょうか。

木村審議室長

例えばどういうものがあるのかわかりませんけれども、この後、新しい使用概念のようなものが登場したときに、やはり2条の3項で逐一新しい条を起こすということはできれば避けたいとは思っております。ただし、そのことによってかえって、特に刑罰法規にも至るような構成要件が不明確になるとかいうようなことになりますと、それは本末転倒ということなので、その辺の瀬踏みを、今後、我々も議論を通じてしていきたいなということなんです。

土肥委員長

小塚委員、お願いいたします。

小塚委員

今の点に関連して意見があるのですが、その前に一言お願いをしたい点がございまして、きょう、ずっと議論を聞いておりまして、ロジックの問題とユーリスティックの問題といいますか、実質を変えていこうという御提案の部分と、規定の整理として、ここにあるものは適当でないが、全体としては別のところに書くという問題。少なくとも私の理解がなかなかついていかない点がありますので、御説明あるいは資料等をおつくりになるときに、そこをはっきりしていただけるように、まずお願いをできますでしょうか。これはお願いでございます。
その上で意見でございますが、実は田村委員が御指摘のような問題は、私は商品商標についてもちょっと似たような問題で悩んだことがありまして、それはどういうことかと言いますと、例えばこういう例がわかりやすいと思うのですが、駅のキヨスク等に、飲み物を売るときに、クーラーといいますか冷蔵庫がございますね。そうしますと、中に入っている飲み物の標識とは別に、冷蔵庫自体に商標、営業標等がついているという場合がございます。それが、中の商品について商標を使用していることになるのかどうかと悩んだことがございまして、よくわからなかったという記憶があるわけです。
ですから、実はサービスマークを入れたときには非常に考え抜いて規定をおつくりになったのではないかという御指摘なのですが、商品商標にも同じような問題が潜在していたのではないか。そちらの方は、むしろ規定をそこまでつくり込まずに運用してこられたというのが現状ではないかと私は感じているわけです。
そこで、提案ですが、各号に出てくる何々に標章を付する行為という、この「付する」という言葉が、日本語の語感としてちょっと狭いのではないかと思うのですね。ですから、そこをやや検討していただくと、かなり窮屈さは改善されるのではないか。そのことによって、余り細かく規定しなくとも、融通のきく規定になるのではないかという考えを持っております。

土肥委員長

ありがとうございました。
さきの商標法の改正のときに、商標の使用概念の整理については、商標協会を中心に相当議論があったかというふうに伺っておりますけれども、松尾委員、このあたりの御説明いただけますでしょうか。古関委員の方がよろしいですか。

松尾委員

いろいろみんなで検討したところ……

土肥委員長

どちらがよろしいですか。

松尾委員

どらちでもいいですよ、一緒に行ったから。私の方がたくさんしゃべっているから、古関さんどうぞ。(笑声)

土肥委員長

かなり議論あったわけですよね、前回。

古関委員

私は、実は産構審のメンバーではなくてオブザーバーとして1度出席をさせていただいただけですし、あの場では多分松尾先生が大分お話を、私どもの意見を代弁するわけでもなかったんでしょうけれども、お話しいただいたというふうに記憶しています。ただ、私がオブザーバーとして出席をさせていただいたときの議論というのは、時間切れという形で、たしか相沢委員だったと思いますが、踊り場的な議論ですねという形で先送りをされてしまったという感じで、ここはやはり包括的な規定にいずれはしなくちゃいけないんだろうという、そういう認識は皆さんお持ちだったのではないかというふうに私は理解しています。
これも、まさに今事務局の方でおつくりいただいているのも、多分その方向に行くんだろうなということで、実は私はそれを期待しているんですけれども、実際に今の「使用」の規定のところで、具体的な侵害事件でも、判事の方が何号に該当するかというのを、当てはめをきちんとなさらないで、何号または何号に該当するというような判決も実際にございますし、非常に区分けははっきりされておられるけれども、実務的には、ちょっとそこのどれに該当するかというのは明確じゃないという部分がありはしないかと。とするならば、もう少し包括的な規定でもいいんじゃないかというような議論があったと記憶しています。

土肥委員長

その後に、今、裁判の話が出ましたので髙部委員にも伺いたいと思うんですけれども、松尾委員、先ほど古関委員のおっしゃったことについて、つけ足していただくようなことございますでしょうか。

松尾委員

いろいろ議論している中で、今のは余りにも細かくてなかなか理解できないと、確信を持ってこの例はこれだと言えないものもあるので、やはりある程度包括的にすべきだという意見がかなりあったわけです。ところがそれに対して、いや、今は検討時間が少な過ぎる、前に役務商標が入ったときに、その当時の商標の関係者も考え抜いてつくったはずなので、この短い時間で我々は結論を出すのは適当じゃない、やはり考え抜いたものがちゃんとおさまるような形で包括的規定を置く必要があるということで、これは本当は言わないことにしてあのときあったと思うんですが、手を挙げさせたんですね。そしたら、初めは包括的規定という方はかなり私は多かったと思うんですが、やはり慎重派の人も結構いらっしゃいました。そういうことで、包括的な規定にする方がいいにしても議論が足りないと、そういうことでした。

土肥委員長

ありがとうございました。
裁判との関係でも少し今お話があったものですから、髙部委員あるいは竹田委員、どちらでも構わないのですけれども、御意見ちょうだいできますでしょうか。つまり、個々の具体的な号というのは余りこだわらないような、そういう裁判の実態があるのかどうか。

髙部委員

こだわらないということはないと思いますけれども、私は陪席の裁判官などには、訴状請求の趣旨に、被告は何々をしてはならないというふうに書いてあるわけですが、これは一体商標法2条3項のどの規定から導かれるのか、あるいは37条のどの号から導かれるのかということを必ず検討するようにということを指導しております。
そうしますと、訴状を幾ら読んでも、どこからも導かれないような請求の趣旨を書いてくる訴状がかなり見受けられますし、どの号に当たるのかということを明らかにしないで訴えを起こしている方はかなりおられるんじゃないかと思います。ですから、そういう状況で訴訟が提起されますと、釈明をしても、答えられない場合もあるわけですよね。確かに非常に細かく規定されているので、被告の行為が一体どれに当たるのかということが分かりにくくなっています。今の田村先生の説明を聞きますと、もしかしたら37条でも3号と5号はそんなに違うのかということを思ったんですけれども、確かにかなり細かい切り分けにはなっているように思います。ただ、それを、どれでもいいからごまかして侵害と認定するということは決してございませんので(笑声)、そこのところは申し上げておきます。

土肥委員長

正確に理解をさせていただきます。
田村委員がおっしゃったように、3号、4号と5号、6号というのが対不使用取消審判用の規定、それから侵害訴訟用の規定になる、そういう議論というのはこれでよろしいんですか、サービスマークが入ったときに。結果としてそういう整理がされたとのことですか。

田村委員

一応私が物の本を読んで勉強した結果を先ほど申し上げたので。特許庁編のサービスマークの解説等には、いろいろと書いてあるようです。例えば37条でいくと、目的規定が3号にはなくて5号には入っているとか、そういうのもすべて、とにかく考え抜かれてつくられたみたいだと思います。とりあえず私の本で言えば146から147とか、もっとありますね、150ページぐらいまで読まないと。そこにちょっと特許庁のものも一応引いて、網野先生のも引いて。だって、書いてあるのが特許庁の御本か網野先生か私かくらいしかありませんから、いろいろな意見があるかもしれません。

土肥委員長

ありがとうございました。
いわゆるここでの話というのは、間接侵害、みなし侵害の話もつながっているところなのだろうと思います。1つにおいては規定を単純にする、できるだけ読みやすくする、そういう要請は社会的に当然あるのだろうと思うのですけれども、一方で侵害の責めを問われる可能性とかそういうことがありますと、商標の使用者としては少し注意をしないといけないといいますか、従来自分のやっていることは、これはここに書いてあるからいいのだというふうに思えてたところが、場合によってはそうでもないというような要素が出てくるというのは、ユーザーとしてはお困りになるのではないかと思うのですけれども、ユーザーとしてのお立場からなにか……
大泉さん、お願いいたします。

大泉委員

今回、商標の「使用」の定義について検討しますよという話を団体の中でしたときに意見が幾つか出まして、それは「商標」の定義を明確にしていただきたいという意見だったんです。明確にというのは、例えば2条3項にどんどん加えていくということなのか、その定義をはっきり言葉を加えるのか、包括的な表現でもいいのか、どちらなのかということは確認していなかったんですけれども、今、「商標」として使用しているのかなという行為がすごくたくさんあるんですね。例えばスーパーの店頭で……

土肥委員長

小塚さんがおっしゃったような話もそうですよね。

大泉委員

ええ。ラジカセみたいなもので、音声で何か連呼する、それから販促グッズ、パンフレット等にいろんなことを書くというようなことで、これは一体「商標」の使用なのかというようなことを非常に悩んでいるんですね。だから、はっきりしてもらいたい。そして、例えば今の音声でやるというようなことは、じゃ何条の何項なのかというようなことはだれもわからないんですね。ですから、定義をはっきりしてもらいたいという要望があるということはちょっと御紹介したいと思います。
そして、それは漠然とした言葉にすればどこかには入るだろうというようなこともあるんですけれども、また持ち帰って皆さんに聞いてみたいと思うんですね。どんどん具体的に、じゃ音声で「商標」を呼ぶということが「使用」だと入れてほしいのかもしれないんですね。

土肥委員長

つまり、ユーザーとしても攻撃を仕掛ける場合と受ける場合とやっぱり立場が違いますから、できれば攻撃をかける方は、こういうような態様についても、現行の規定では読めにくそうであっても侵害だと言いたい場合もあるのだろうと思うのですね。そういうようなことは特に今ございますでしょうか。それはございませんか、もしありましたら。

大泉委員

ちょっとまた帰りまして。

土肥委員長

わかりました。よろしくお願いします。
では、竹田委員お願いいたします。

竹田委員

私も弁護士としては、権利行使する側も権利行使を受ける側も代理するわけですけれども、この「使用」の規定をもう少し包括的にして整理するという方向性はわからないわけでないが、一方で、「使用」の範囲が広がるというのもまた問題があるわけですね。今出たように商標的使用の問題というのは、私が先ほど言いましたように「使用」の形態の問題なので、むしろ「識別力のある」ということを入れるとしたらば、私は3項の頭のところだと思うんですね。例えば、「この法律で商標について『使用』とは、次に掲げる行為をいう。」となっていますけれども、ここを「この法律で商標について『使用』とは、識別力のある形態で次に掲げる行為をすることをいう。」ということにすれば、それは商標的使用でないものとそうであるものと区別することが、規定上そこだけで一発でできるんじゃないか、と思います。
だから、そういう「識別力のある形態で」とか、あるいは言葉はもっと違う表現でも適切なのがあるかもしれませんが、あった方が、「商標」の定義に「識別力がある」と入れるよりは、私はよっぽど実効性があると思っています。

土肥委員長

ありがとうございました。
三宅委員、お願いいたします。

三宅委員

ユーザー団体の立場で一言お願いしたいんですが、「使用」の包括定義につきましては、少なくとも現行規定にあるものはすべてが明確に入るような包括規定にしてもらいたいというのと、漠然と範囲が広がるような、そういう不安が残るようなものにはしてもらいたくないというのがあります。
それともう1点は、現行法はあくまでも「商標について使用とは」ではなく、「標章について使用」とはというふうになっていまして、商標の定義規定の方にくっついています。そういう形ではなくて、はっきり「商標の使用」とはという形にしてもらいたい。この3点がございます。

土肥委員長

ありがとうございました。
琴寄委員、お願いいたします。

琴寄委員

必ずしも今までの話の流れに沿っているとは言えませんけれども、私ども非常にブランドマネジメントに力を入れておりまして、いろんな商標を出願して権利化して、それぞれの商標に関して、例えば使用方法等を社内で決めまして、それを守って商売、ビジネスをやって、グッドウィルを化体していくと。そういうような流れをとっているんですけれども、一番その中で対外的に気になっておりますのは、「使用」の一態様なのかもしれませんけれども、普通名称化、一般名称的に商標を使われる場合がかなり社外的にありまして、その対応について、明確に対応できるような商標法の規定が見当たらないというところが気になっております。例えば欧州共同体商標の10条の規定で、図書等の雑誌社に対する対応等がとれるような規定等を入れていただくとか、そういうあたりを検討していただければと思っております。

土肥委員長

ありがとうございました。
今のご指摘は、現行26条のような、ああいう普通名詞の取り扱いというのではだめだということになりますか。

琴寄委員

できれば、例えば36条の差し止めまで、いきづらいところがあるのかもしれませんけれども、そこまで視野に入れた形で考えていただきたいなとは思っております。

土肥委員長

ほかに。
松尾委員、お願いします。

松尾委員

例えば今の問題などは、ヨーロッパのディレクティブとかアメリカ法などにもそういう関係の普通名称としての使用というのはありますが、私は一般的に、改正する場合には竹田委員の言われるような方向よりも、ほかの国で、ヨーロッパ等でどういうふうに商標法の中に規定を置いているかと、「商標」についても「使用」についても。そういうところを見て、やはり国際的に根拠を言えるような形にして、根拠というか理論的に説明できるような規定にした方がいいと思います。
その関係で9ページに、商標の「使用」のところで、「使用」に関係するものとして25条、26条、32条、37条、50条、78条と挙がっていますね、これはまさに「使用」に関係するところなんですね。ヨーロッパでは、例えば商標の「使用」なんていうのは、効力の方あるいは侵害の方に置いていると。こういうのがいいと思うんですけれども、私、もう一つどういうふうに整理していいかわからないでおりますのは、次の10ページのところの説明のところに、権利者が使用するのと第三者が侵害行為として行う場合の行為は全く一致するわけではないと。これ、そのとおりだと思うんですが、例えばという例で、「登録商標に類似した標章を付した商品を販売する行為や登録商標を指定した商品ではなく類似の商品に付して販売する行為を権利者が行うことは通常ない」と、こう書いてあるんですね。私は、そんなことないと思うんですよ。商標を登録して、これは更新できますから、10年以上、著名であればあるほど続けて使用していると思いますが、そのとき変わっていくんですね。モダンになって変わっていく。そのときに、変わっていくものを全部登録していくかというと、必ずしもそうじゃない。
というわけで、そこら辺で私はちょっと今わからなくなっているんですが、ここら辺の問題は「商標」の定義もそうだし、「使用」の問題も問題ありますけれども、もう1つこの権利の効力との関係で、先ほどの9ページの全部の条項と関係するところは、登録された「商標」の範囲をどういうふうに考えるかということにかかってくると思うんです。例えば擬制侵害の37条の1項の1号、これはまさに類似だけの問題なんですね。だから、これはわざわざ擬制侵害と言うのかどうかなというのも、ちょっと私は理論的に疑問があると思いますが、例えば50条の不使用取り消しのところでは、この前、改正が入っているわけですね。それで、社会通念上同種と認められる商標を含むと。この同種と認められる商標を含むというのは、必ずしも不使用取り消しだけのときに問題になるだけではなくて、商標というのはこういうものだから、商標の「使用」というところに社会通念上同一のものも入るって、これが何か非常に自然のことじゃないかなと。
そういうふうに思ってきますと、先使用について広く知られたというところは、登録要件と違って少し緩く解釈するというのが今裁判所の立場ですけれども、先使用の場合も社会通念上同一であればいいんじゃないかなというのが私の考えているところですが、こういうのがみんな関係してくるんですね。それは、「商標」の定義でもないし「使用」でもないけど、みんな関係しているところで、どういうふうに整理していいのか私自身わからないので、半分御質問兼ねてなんですが、何かここら辺にも一つの問題があるように思います。

土肥委員長

ありがとうございました。
今の点、何かお答えいただける委員おいでになりますでしょうか。
髙部委員。

髙部委員

少なくとも侵害に関しては、社会通念上同一と認められるものについては37条の類似にいかないで、通常の使用する行為、つまり25条と2条3項の方に戻って考えていると思いますけれども。

松尾委員

それでいいはずなんですね。

髙部委員

それでいいんですけど、それは別にどこにも、同一のものについて同一の商標を使用するとはか、こういうものも含むとは書いてないんですけれども、同一って、やっぱり実質的同一のものは当然入れてますよね。

松尾委員

入れていると思うんですよね。だけど、25条、27条の規定からそういうふうに解釈していいのかなというと、ちょっとやっぱり疑問に思うんですね。

土肥委員長

ありがとうございました。
それで、松尾先生がそうおっしゃるのですからもちろんそうなのですけれども(笑声)、時間の関係もありまして、ちょっと一言お尋ねをしたいのは、音声の問題がありましたですよね。それから、普通名詞として記述的に使用しているというような議論もございましたけれども、音声による商標使用を認めた場合について、例えば店頭で、ある商品を音声で出して店員さんがおっしゃっている、あるいは、A社とB社の商品はここがこう違うとか商品説明をやっている場合、そうした場合もかなり問題が出てくるんじゃないかなとも思えるのですけれども。まず音声による商標の「使用」というものは、現在、「商標」に入っていないし商標権の侵害にもならない、そういう原則でのお話であり、説明だったと思うのですけれども、それでよろしいでしょうか。
三宅委員。

三宅委員

それはちょっと違うと思います。特許庁のお話ですと、いわゆる商標の物理的構成要素として音声が入っていないのだから、2条3項の標章の「使用」には当然当たらないはずだと。だから侵害も構成しないという論理構成だと思うのですけれど、「商標」を構成する物理的要素の問題と、それを取引者、需要者にどう伝えて識別させるかという問題とはちょっと違うと思います。矛盾すると思うのは、「商標」の類似判断で称呼、これは電話取引を想定したものだと思うんですけれども、称呼による類似判断をされているんですね。ですから、例えば電話で、「今テレビで話題の何々という商品がありますけれども、いかがですか」と言って、そこで取引が成立したときには、その相手方は、言われた商標を識別して取引を成立させているんですよね。それが「使用」でなくて何なんだろうと、私は素直に思いますけれども。

土肥委員長

実態的にというか、社会通念としてそういう考え方は当然あるのだと思うのですけれども、商標法でもやっぱりそのことが読めると、こういう御意見でしょうか。それとも、それは読めないということになりますか。
はい。

竹田委員

私の記憶では、審決取消訴訟で「商標」の類似判断をするとき、称呼の問題がありますよね。そういうときに、称呼が類似するかしないかの判断に隔地者間取引、電話取引などで称呼を言ったらば、それは類似の範囲内に属するとか、そういう言い方は判決でも幾つかあると思いますね。特に図形商標と文字商標の組み合わせの場合には、それを入れるか入れないかで随分違ってくると思うんですね。その組み合わせ商標の場合に、外観や何かは非常に大きく違いますけれども、電話の隔地者間取引みたいなものにおける取引に商標のあれを称呼するというのも、称呼としての判断対象になるかならないかで随分違ってくると思うので、私はそれは入るんだということで、今まで判決が幾つか出されていると思います。必要があったら、また調べてみますけれども。自分でもそういう判決を書いた記憶があります。

土肥委員長

田村委員。

田村委員

14ページにも紹介がありますように、理由は不明確なんですけれども、特許庁さんの逐条解説が、「使用」には当たらないけど、36条で差し止めることができる。条文上かなり読みにくいんですよね、音声だけの「使用」を当てるというのは。私、昔の本では、しようがないから「不競法」でいけって書いていたんですけど、今は変えて、理由が余りないと思うんだけど、一応音声も侵害にはしていいんじゃないかと。小野先生もそういうお立場で、網野先生が、いや条文に書いてないよと。そういう意味で特許庁のを見ると、3対1で多数説は「侵害」ではないかと。だけど、皆さん条文上苦しいことは認めている。多分登録するとかなんとかになりますと大変なコストになるかもしれませんが、侵害のところに条文を入れる分にはそれほどじゃないのじゃないか。もちろん例にもあるように、「態様」とか言われるときに一体何を指しているかということがあると思いますけど、それは多分、使用の場所で漢字があった場合はどうするかとか、あるいは有名な商品だったら、その分野で「態様」と言ったらこうだろうとか、そういった形で何とか判断できるんじゃないかなと思っていますので、これはむしろ条文があった方がよろしいんじゃないか、侵害の場面では、と思っております。

土肥委員長

ありがとうございました。
あと、もう1点議論していただいてない点は、輸出の問題がありますよね。この問題について、御意見ちょうだいできますでしょうか。輸出行為、「使用」と輸出の関係。最初に質問もあった点なのですけれども。
田村委員。

田村委員

輸出なんですけれども、例えば輸出先の外国では何ら侵害ではないという場合がありますよね。国内で一切、本当に取引もしてないで、ただ物を移すだけでしたら、私は侵害にしなくてよいのじゃないかという気がしておりますし、また、先ほどもいろいろと御議論があったこの高裁判決も、基本的には商標を付する行為のところでとめているので、ちょっと私は、これはむしろ慎重の立場でいますけれども。

土肥委員長

はい。

髙部委員

外国の立法例、これは参考資料を見ますと、輸出と輸入を両方書いている法令がかなりあるように思うんですが。

土肥委員長

何ページになりますか。

髙部委員

7ページです。アメリカ法では輸出については読めないんですけれども、英国も輸出と輸入ですし、英国は(c)項ですよね。それから、EUの方も2項の(c)、それからドイツも4号で認めていて、韓国もロというところで認めているということで、比較法的に見ると認めている方が多いわけでしょうか。

土肥委員長

これ、いかがですか。

木村審議室長

もうちょっとよく調べる必要があると思いますけれども、基本的にはそういう理解でよろしいと思うんですけれども。

土肥委員長

古関委員。

古関委員

この問題は、今、比較法は私も検討中なんですけれども、多分これはEU固有の問題といいますか、そこは当然輸出というのは、国単位で見れば、相互に輸出、輸入すること自体は、自由にここは広域使用ということの観点から入っているんだろうと思います。むしろこれは、輸出を何かこの規定、定義の中に入れるということは、すごく日本の「商標」の本質が変わってしまうのではないかという、非常に私も懸念をする立場です。まさに先ほど竹田委員がおっしゃられたように、アメリカでつくって、それをOEMで日本でやって、それを例えば韓国に流すといった場合に、日本では全然流通しない状態のものを、それを何で日本の法律で規定しなくちゃいけないのかという点では非常に疑問が残ると思うんですけれども。逆に、それでもなおかつ輸出ということを定義に入れるということは、必要性がどこにあるのかというところを明確にしていただきたいというふうに思います。

土肥委員長

ありがとうございました。
山中委員、お願いいたします。

山中委員

実は私どもは製造業であって、昨今のコストダウンのために、海外生産をして国内で販売をする、あるいは海外生産をして第三国で販売をするという事例に今現在直面しているんですが、実際には生産候補国の商標法で、セリング・オワ・プロデュースングというのが、商法の「使用」に当たるという規定がございまして、その国で類似商標の商標権者がいるがために、そこで生産して、日本にもあるいはその他の第三国にも輸出できないという状況にあるわけですね。
今御議論いただくのは、もちろん日本国内の商標法をどうするかということなので、その逆のことを考えると、海外に出すべき、例えばOEM生産で海外供給する、相手先ブランドを商品に付す行為が直ちに日本の商標法に抵触するという形になると、先ほど田村先生がおっしゃったように、ちょっと本来の趣旨とは違うのではないかと。最も大切な産業振興の部分を抑えつけてしまう可能性があるのではないかということで、私どもが現在直面している、海外の比較的コストの安い国でつくって自国に持ってこようということが法律上できないという事例からいって、日本はその道を歩むべきではないのではないかというふうに個人的には感じておりますけれども。

土肥委員長

ありがとうございました。
はい。

松尾委員

今の田村委員の言われたことですが、前に商標法の改正で防護標章をどうしようかというときに、やっぱり問題になりましたね。それでOEMの話が出て、そのときに、OEMと一口に言ってもいろんな態様があるんじゃなかろうかと、もう少し事例をちゃんと検討してからにしようということで、そのときは先送りになったんだと記憶していますが。それで結構だと思うんですね、今の山中委員からのお話もあってね。だけど、もう少しやはりこれも検討した方がいいと思います。

土肥委員長

わかりました。
三宅委員、どうぞ。

三宅委員

反対意見が多いようなので、賛成意見もあるという御紹介をさせていただきたいんですが、今みたいに商品がボーダーレスで世界中を流通する、しかもブランドというものを考えたときには、それは日本だけで確立しているということではなく、国際的に確立していることもあります。また、韓国商標法というのは日本の商標法とうり二つなんですが、あえて輸入のほかに輸出を入れております。それから台湾も、形は違いますけれども輸出を入れています。
そういう観点で考えますと、確かに商標法の趣旨とか目的あるいは属地主義の考え方から言うと、少し変な感じはしますけれども、対外的な面、国際協調の面、そういったことを踏まえると、政策的に入れてもおかしくないのではないかという意見もございます。

土肥委員長

最後の輸出のところで非常に議論が盛り上がったんですけれども、その点につきましては、その点を含めて勉強をさせていただくということにさせていただきます。
時間がちょうど3時59分でございますので、そろそろ時間が来ております。それで、よろしければでございますけれども、本日の委員会はこのくらいにさせていただければと思いますが、最後に、小塚委員どうぞ。

小塚委員

済みません、今後の進行について一言、これも提案といいますかお願いでございます。簡単に申し上げます。
前回、多分松尾先生だったと思いますが、商号との関係について問題提起があったのではないかと思います。商号は特許庁の所管でないことは十分承知しておりますが、今、法制審議会の会社法現代化の関係の部会で、商号についても議論が行われているやに仄聞しておりますので、適宜、情報提供をこの場でいただけますでしょうかということのお願いでございます。

木村審議室長

ちょっと法務省にその点は確認をした上で、何らかの情報提供はさせていただきたいと思います。

土肥委員長

では、そのようにさせていただくということで。
それでは、本日の委員会はこのくらいにさせていただきたいと思います。活発な御議論をいただきまして、ありがとうございました。
最後になりましたけれども、次回の小委員会についての紹介をいただけますか。

木村審議室長

既に御案内をしているかもしれませんけれども、次回の商標制度小委員会は9月11日木曜日、午後3時からの開催ということで、場所等、それから議題につきましては、後日改めて御連絡をさせていただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

土肥委員長

以上をもちまして、産業構造審議会知的財産政策部会第2回商標制度小委員会を閉会させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

閉会

-了-

[更新日 2003年9月8日]

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