ここから本文です。
土肥委員長 |
ちょうど時間がまいりましたので、ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会第5回商標制度小委員会を開催いたします。 |
木村審議室長 |
まず配布資料の確認をさせていただきたいと思います。本日の配布資料、クリップを外していただきますと、委員の皆様方の名簿がございまして、資料が2点、1つが「商標制度の枠組みの在り方について」というものでございまして、もう1点が「参考資料」、これは表紙を入れまして全部で3枚紙になっております。ご確認いただければと思います。 |
土肥委員長 |
ありがとうございました。 |
三宅委員 |
18ページに2つございまして、登録件数182万件とありますが、相対的拒絶理由の引用対象となるものは、登録商標のほかに先願商標もございます。それで、ひょっとしたらこの数字の中には、まだ登録になってないものですね、出願が年間12万件ぐらいとしますと、今FAが9ヵ月ですから約10万件ぐらいあるのですが、その数が入っているのかどうかというのが1つです。 |
土肥委員長 |
今のご質問なのですけれども、以前この点については、余り正確にはわからないというようなことだったと思うのですけれども、今回は数字として出していただいたのですが、2点、いかがでしょうか。先行願関係を含むかどうか、それから今の……。 |
小川商標制度企画室長 |
登録件数は182万件ですが、11号の引例の対象ということでは、このほかに、ご指摘のとおり出願件数がプラスアルファあるということになると思います。 |
三宅委員 |
これが登録されているものの件数ですので、これ以外に対象となるものは約10万件ぐらいはあるということですね。 |
小川商標制度企画室長 |
そういう理解でいいと思います。 |
山田商標課長 |
確かに1万9,000件というのは最終的に拒絶になった件数と思います。ですから、当然、拒絶理由がかかって、その後、補正等で登録になったのもありますので、そういうものも、少なくとも第1回目は拒絶理由がかかるわけですから、そういう意味で4条1項11号等の拒絶理由がかかる件数という意味では、ちょっと私もそこのところは疑問に思ったものですから、調べましたところ、3万3,000件ぐらいの件数になっています。 |
古関委員 |
細かい議論に入る前に1つお伺いしたいのは、先月、ヨーロッパの方に、この件に関してご出張に行かれたという話を聞いておるのですけれども、その行かれた国、官庁はどちらなのかをちょっとお教えいただきたいのが第1点です。 |
土肥委員長 |
前者についてはお答えいただきますけれども、後者については、そこを議論していただくのだろうと思っております。つまりあらかじめ領域を設定して本日議論していただくというよりも、広くそういうふうな意見、あるいは逆の意見、そこのところの制度の根幹にかかわるそこの在り方をお尋ねしたいということだと思います。 |
横島審議企画班長 |
10月の末に出張に行きました。直接出張に行ったところと質問者を送って紙面で答えてもらったところがあるのですけれども、紙面を送ったところは、イギリスの特許庁、それからドイツの特許庁です。あと直接行ったところはOHIMです。また、ドイツにおいて審査等は特許庁でやっているのですけれども、立法は司法省というところが別でやっているというので、司法省にも直接話を聞きに行きました。今回特に念頭に置いている制度というのは、CTMとドイツ商標法ということなので、そこを中心に行きました。それからアメリカについても、法律事務所を通じてですけれども、商標制度の対応について件数などは調査をしました。 |
田村委員 |
今の古関先生のご質問ともかかわるのですが、18ページの下の方の(イ)というところで、「現実の市場における混同のおそれを踏まえ、事後的にその瑕疵を除去する仕組みが整っていることをどう考えるか。」と書いてありまして、18ページの後ろから2行目には「現実の使用実態にかんがみ、無効審判によりその登録を取り消すことが可能である。」とあります。また、16ページに戻りますが、「判断の硬直性」ということが最初の段落に書いてありまして、その6行目には「個別具体的な市場の状況を踏まえると実際には混同を生じるおそれがない商標の間にも類似や混同のおそれがあると判断される可能性がある。」とあります。さらに次の段落に移りますが、「実際の使用状況に伴う変化の程度が大きいと審査で担保することには限界がある。また、ある特定の時点で職権によって審査するという制度の性質上、当該審査はある程度抽象的・画一的に行われるべきものであるとの考え方も成り立つ。個別具体的な市場の状況の判断には裁量的な要素が大きく、」云々とあります。現在の法制ですと、仮に無効審判でいったといたしましても、判断基準時点はあくまでも出願時と登録時だと思いますので、その点では、そうであるともそうでないとも読めます。もしかしたら私の理解が違うのかもしれませんが、ややもすると、無効審判だと事後的に登録後の混同のおそれなどを考慮できるかのように読まれかねないところがあるので、文章を直した方がよいのではないかと思います。 |
土肥委員長 |
まず1点目、今の点はいかがですか。 |
木村審議室長 |
基本的に現在の無効審判の判断時点を変えるとか、そういうようなことをここで直ちに提案しているわけではございませんので、不正確なところがあるとすれば別途改めたいと思います。 |
田村委員 |
でしたら、それでいいのですけれども、例えばここに書いてあることが、仮に訴訟に行くと証拠が多くなって、いろいろな事情をくむことができるとか、あるいは間接的な事情だと思いますが、事後的な混同の判断が登録時の判断に影響するということはもちろんあると思うのですが、そういうことでしたら、拒絶査定につながる審決取消訴訟もあり得ることなので、そこは多分、無効審判だからこうとなるわけではないと思うのです。あと、それ以降の古関先生がどういうふうに立法論で考えているかというのは、もちろんいろいろとあると思いますが、現在の法制度は、多分一応11号で抽象的にある一定程度以上に近いものは抽象的にはねるということにしている。その最大の理由は、結局、登録時で今みたいに混同のおそれを判断いたしますので、10年、20年、30年経とうが何しようが、登録時のときに混同のおそれがないと両方とも併存してしまうという怖さが商標法にありますね。僕はニュートラルで、立法論ではどちらでもいいのですが、もしこうやって混同のおそれを判断するというのでしたら、もっと明確に事後的に、もし今回の立法論で、4条1項11号の判断を今までのような抽象的なものとしないというご判断をおとりになるのでしたら、混同のおそれというのは登録時点だけで調べていたら危ないことになりますから、もっと明確に事後的なものも調べるという形で大胆に法制度を変更すべきだと思います。ただ、どちらにするかは、選択肢は、私は特に決めているわけではありません。ちょっと長くなって失礼いたしました。 |
土肥委員長 |
多分そういうことは議論の中で論じていただくことになるのだろうと思うのですけれども、竹田委員、ご質問ございますでしょうか。 |
竹田委員 |
質問ですか。 |
土肥委員長 |
およそ質問を皆さんお出しいただいたということであれば……。 |
大泉委員 |
先ほど古関委員の最初の質問で、なぜこの問題を議論しなければいけないのかというお話がありました。私も、現行法のメリットと、今ご提案の異議待ちの審査制度を導入したときのデメリットと比べますと、現行のメリットの方が大きいように思えてならないのですね。なぜこういうご提案があるのかということに関係して、まず1つお聞きしたいのですが、今の審査の制度について、国際的に、あるいは国内から、今の制度がおかしいという批判というのは出ているのでしょうか。まず1点目、お願いいたします。 |
木村審議室長 |
国際的な批判があるかどうかというのは、特にないと思います。基本的に我々として別に提案というと非常に大それたもののように考えられるのですけれども、今回商標でわざわざこうやって審議会をつくって、それで商標制度について、定義も含めて大胆に直そうという中で、避けて通れないテーマではないかということでこれを議論しているのであって、別に結論を決めうちして、何が何でもそこに誘導するとか、そういうことを別に考えているわけでは毛頭ないので、その点はご安心いただければいいのかなと思うのですけれども。 |
土肥委員長 |
今のご質問については、私もそのように、議論をするということで承っておりますので、何か特に案があるということは承知しておりません。 |
竹田委員 |
まず私の意見の前に、先ほど田村委員がいわれた判断基準時ですけれども、これは4条3項の場合には出願時になりますが、それ以外の場合は査定系では審決時、当事者系では登録査定時というのが裁判所の一般的な取り扱い方だろうと思います。 |
土肥委員長 |
ありがとうございました。前半の部分はご質問にもなろうかと思いますけれども、竹田委員のお考えを前提にして、特に中間的な制度の在り方、周知・著名、そういったようなものについては従来どおりやるというようなこと、そういう点について何か試案がございましたら、これが第1点の質問だったと思いますけれども、それからお願いできますか。 |
木村審議室長 |
21ページの「(4) その他」というところで書いておりまして、この辺についてはさまざまなバリエーションがあると思っております。どちらの制度で絶対になければならないということを我々として申し上げているわけでもないですし、間をとって幾つかさまざまなバリエーションがあるだろうと思います。今、竹田委員がおまとめいただいたような考え方を我々としても、ある程度もっているということだとしますと、それについて、とるべき処方箋というのが何も1つだけではないだろうということで、当然複数の解といいますか、方策というのはあり得るということは考えております。ただ、それについて具体的に、例えば4条の各号のどれをみて、どれをみないというようなことまで、現在そこまで具体的に彫琢した提案が我々サイドにあるわけではないので、現在はものの考え方といいますか、そういうものを整理していただいて、我々が今後進むべき方向性ということについてご示唆をいただければありがたいかなと思っておるわけでございます。 |
土肥委員長 |
もう一つあったのですけれども、2つ目は……。 |
木村審議室長 |
2番目は、まだちょっと、そこまで……。 |
土肥委員長 |
しかし、そこのところは、いわゆるコンセントにもつながる話になるわけですね。つまり出願人の方で混同のおそれのないことを示せば、ということになるわけですから、コンセント制度との関係もあるのではないかと思うのですけれども、またこれは……。 |
木村審議室長 |
2番目にいただいたご指摘につきましても、まさに21ページの「その他」というところで考えられるさまざまなバリエーションのうちの一つだろうと思いますし、それを我々として現時点で排除するとか、それを採用するとかいうことを断定するつもりはございません。 |
田村委員 |
今の竹田先生のおっしゃった周知・著名なものについては別扱いというのもあり得るのではないかということで、ちょっと私も付言いたしますが、現行法でも、例えば47条の無効審判の除斥期間のところで、10号と11号、あるいは15号では、扱いを異にしておりますね。結局、10号でありますとか15号については、不正競争の目的、あるいは不正の目的がある場合には除斥期間にかからないという形で、明らかに11号と区別していまして、同じような今日お話になった相対的な拒絶理由というものの中でも、その中でも特に、それでもやや公益的なものというものがあると思いますし、その意味では、10号と15号というのはどうしても混同が生じますので、別扱いするとすれば、ここが一つの境目になるかなという気がいたします。 |
土肥委員長 |
ありがとうございました。今おっしゃった7号の問題と19号、あるいは7号と11号だってぶつかるところがあるのだろうと思うのですけれども、そういう細かいところはまだまだ詰めたところではありませんで、非常に大きな枠組みの議論をしていただきたいということでございます。今のところは我々の方でテークノートしておくということでございます。 |
古関委員 |
私、竹田委員ともともとの発想点が違っておりまして、抽象的な判断手法というのが悪いと思っておりません。むしろ抽象的な判断手法からはみ出た審査があることが問題なのであって、そこを私、問題にしているだけなのです。これは、なぜそういう理由が起きているのかという理由の一つとしては、審査結果というのが、例えば拒絶査定と、査定確定後1年を経過すると廃棄されてしまう。審査の積み重ねがない、審査官にとってみれない、そういう状況にあるのは、一つ最大の要因ではないかと思っています。当然抽象的な判断をされていた中に、取引の実情を考慮した判断というのも審査官レベルでも当然今でもありますし、全くないわけではない。むしろそういうような従来の抽象的な判断からはみ出た審査がある現状が問題なのではないかと理解しています。 |
土肥委員長 |
今の、私に難しくてよくわからなかったのですけれども……。 |
木村審議室長 |
取引の実情を審査官が裁量的にというのも変ですけれども、できる場合はやって、できない場合はやらないというような運用というのは妥当ではないのではないかというご指摘と承ってよろしいですか。 |
古関委員 |
現行でも実際にそういう判断はされているというふうに認識しています。 |
土肥委員長 |
判決等でもそれを求めてますね。ということは、抽象的な判断で終始しているのが問題ということにはならないのですか、それはならない……。 |
古関委員 |
審査基準でも総合的な判断されるというのは、審査基準上にもあらわれてますし、そういう判断が実際の審査レベルでもあるというように認識しているということです。だから全くないわけではない。 |
土肥委員長 |
そうでしょうね。そういう前提に立って審査の在り方といいますか、今回提案のあった相対的拒絶事由、それから絶対的拒絶事由、こういったようなものの制度設計についてのご意見はございますでしょうか。 |
古関委員 |
その意味で、現行の11号に対する考え方というのは、私は残すべきであろうと思いますし、仮に今も不要になっていますけれども、そういう段階での画一的な中に、さらにそこに具体的な取引実情を踏まえた判断というのは継続されるべきであろうと思っています。逆に、第3回の議論を聞いていると、そういう形式的な判断は抜きにして、具体的な取引実情を中心に考えようというような見方があったかのように、私はその印象を受けたのですけれども、かえってそうした場合のデメリットといいますか、個別具体に出所の混同が生ずるか否かということをメルクマールとする商標制度が本当に妥当なのかどうかという点に関しては非常に疑問をもっているというのが感想です。 |
土肥委員長 |
個別具体的な混同のおそれを排除することが疑問ということですか。 |
古関委員 |
もう一つつけ加えますと、確かに不使用の抗弁を入れた場合だとしても、異議申立人の側としては実際に使用している事実は出さなくてはならない。ところが、出願商標はあくまでも使用意思に基づく出願を許すわけですから、具体的な取引実情というのはあり得ないわけですね。そうするとあくまでも一般的な出所混同のおそれで議論せざるを得ないわけですから、そこは現行でも何ら変わらないということなのではないかなと理解しているのですけれども。 |
土肥委員長 |
今回の議論の前提になっているのは、もっと根本的なところを問うているのではないかと思っているのです。つまり前提として現在ある使用意思に基づく出願とか、それはいかがなんですか。そもそもそこから問おうということだと思うのですけれども、違うのでしょうか。 |
木村審議室長 |
使用意思を問うか問わないか、ちょっとそれは違う問題のような気もするのですけれども、確かに根本的な議論もさることながら、相対的な拒絶理由についていかなる審査を特許庁がすれば一番、それは個々の出願人といいますか、出願人の総体といいますか、そういう全体の中で最も安定的で、かつある意味では不公平のない、そういう運用ができるのかということがあります。そして、当然それは訴訟になると事後的に混同のおそれがあったかなかったかということについて、事後の実態をみながら、これは審査当時の判断としても混同のおそれはあったのだというように恐らく判断をされているのではないか。ある意味では事後の証拠によって当時にさかのぼって判断をするということなのだろうと思うのですけれども、そういうことは、ある意味では当たり前のようになっている――ちょっと言い方は悪いのかもしれませんけれども、そういうことだとすると、それをあくまでも登録の時点でみなければいけないということの限界といいますか、そういうものをどういうふうに認識するべきなのか。 |
田村委員 |
特に古関先生が問題になさった具体的な出所の混同を考えるのか、抽象的に考えるのかということですが、私自身は、ある程度抽象的に考えた方がいい事例があると思います。それは、またいつも恐縮ですが、私の「商標解説」第2版の119ページに詳細は譲りますけれども、東京高裁の平成8年4月17日のSPAという事件があります。これは、出願商標がSPA、図形もついているのですが、結合商標です。それに対して引用された既登録商標がSPARです。それからスパーという片仮名文字の2段書きのようです。 |
土肥委員長 |
そもそも現在の11号において抽象的な混同のおそれ、あるいは具体的な混同のおそれ、どちらの判断をするべきかというよりも前に問題になっているのは、11号のようなそういう相対的な拒絶理由については判断をしないという提案になっているわけですね。これは商標制度全体としての効率とかコストとか、そういうものを全体的にみられた上での議論のたたき台として出ているわけですが、そもそもここはいかがなんでしょうか。 |
古関委員 |
登録になる前までは審査は確かにされないかもしれませんけれども、結局は、異議を待ってそこで審査されるわけですね。その審理結果というか、結果としては、今の11号の判断と同じことをおやりになろうとしているのではないのですか。 |
土肥委員長 |
仮にそうだとしても、大きく違うのは、制度を維持する上で全部についてやるのか、出てきたものについてやるのか、こういうことですね。そういう意味での資源の有効的な活用ということなのですけれども、全部やるわけではないわけで……。 |
古関委員 |
わかります。もう一つは、話はちょっと横道にそれてしまうかもしれませんが、先ほど47条の除斥期間の話が出ましたので、先ほど判断時期を柔軟に解すべきではないかというご意見が出ましたけれども、もしそうであるならば、出所混同の議論よりも、3条の判断時期を、いわゆる47条で3条の判断時期は査定登録時となってますけれども、判断は硬直性という点では、3条は全然ここでは触れられておりませんけれども、むしろ3条の方が柔軟に、その時々に応じた識別性を判断するような必要性があるような気が、私はしておりますので、47条を法改正されるときは、3条の見直しもぜひしていただきたいと思っております。 |
竹田委員 |
議論の方向が、審議室の方で提起したこととずれていると思うのですね。その方向の議論をしないで、ぜひとも産業界の方、ユーザーの方がたくさんいらっしゃるので、先ほど提案されたような相対的な拒絶理由については、最初の段階の審査をしない、形式審査的なものにしてしまう。その後の付与異議とか無効審判制度で対応するという提案がなされているので、それについてユーザーの側からどう考えているのかを、私も関心があるので、聞かせていただきたいと思うのです。 |
土肥委員長 |
第3回にかなりご意見はちょうだいしたところなのですけれども、ユーザー、つまり利用者が恐らく2種類あって、たくさん出願をなさって、たくさん権利をおもちの方、つまりサーチ等にコストをかけたり、あるいは独自にサーチができるような立場のユーザーの方と、割合個別的な中小企業というのでしょうか、独自にサーチをする体制をおもちでなかったり、あるいは外部の企業等にそういうサーチを依頼される場合とあるのだろうと思うのですけれども、どちらの立場でも結構ですが、ユーザーで、大泉委員、お願いいたします。 |
大泉委員 |
企業の規模と余り関係なしにいえることもあるかと思います。現行の審査主義で安定した権利を付与してもらいたい。それから安心して権利行使、あるいは商標を自分で使用したいというのが基本的な要望だと思います。それは、今の制度でかなり実現されていると考えてよろしいかと思います。異議待ち審査制度を導入することによってのデメリットというのが最も心配されることでして、幾つか考えられると思います。それは、ウォッチングの負担増加ということがあります。これは、出願時には他人の先行権利の存在を調査し、それの使用の有無まで調査しなければいけなくなる。自分が権利者になった場合には、後発の出願に対してのウォッチングを今まで以上に強化しなければいけない、これは間違いないと思います。 |
土肥委員長 |
そこはもちろん、疑問をお持ちだというのはわかるのですけれども、仮に入れるとしたらという仮の話なのですね。ですから、そこで議論をしていただきたいということなのです。 |
大泉委員 |
仮にもデメリットがたくさん感じられるので、その制度は、導入は困るという意見がほとんどすべてです。 |
三宅委員 |
コストの点につきましては、今、大泉委員がおっしゃいましたので省きますけれども、やはり企業としましては、使用開始時点で完全とはいわなくても、比較的安定した権利をいただきたいというのがございます。仮に異議待ち審査制度を導入しますと、付与後異議であれ、付与前異議であれ、少なくとも見落とし等で通過してしまうものもございますし、あるいは中には意図的に異議を申し立てずに、使用開始時点で侵害を問うとか、そういうことも可能なわけで、企業としましては、その点非常に不安が大きいと思います。今回の提案の理由の中に一つ、商標の選択の自由の拡大というのがございます。これ自体は、当然ユーザーとしても望むところでございますけれども、それをねらうとすれば、出願時点においては無用な出願をしない、登録時点においては、ライフサイクルの短いものは、せっかく分割の制度がございますので、それを利用するとか、あるいは登録料納付時には、多区分出願のものは本当に必要なものだけに絞って、1区分だけ登録料を納めるとか、あるいは使ってない商標は更新登録しないとか、そういう行動につながるところにスポットを当てていかないと、不使用商標対策にはならないと思います。 |
髙部委員 |
考慮すべき要素として4つ挙がっているのですけれども、この4つの要素には、かなり軽重があるのではないかと感じております。市場における混同の回避、商標選択の自由、コストの負担、権利の安定性、この4つなのですけれども、私どもの立場からいうと、市場における混同の回避ですとか権利の安定性というのは非常に重要だと思っております。それに比べますと、商標選択の自由というのが、商標法のどこから出てくるのかというのがよくわからないのです。もちろん自由というのはあるのかもしれないのですけれども、商標法が目的とするところからストレートには出てこないように思うのです。最も重要だと思われる市場における混同の回避についても、事業者同士が混同しないと判断すれば、その場合は異議もないし、あるいは異議をいわなければ、それで、仮に客観的にみて混同のおそれがあったとしても、登録されるというのは、いろんな意味で法的安定性を害するのではないかという気がしております。これはコンセント制度にもつながる問題なのですけれども、何を保護するのか、混同とは一体だれのレベルの混同なのか、そういった問題と絡み合ってくるように思います。 |
土肥委員長 |
ありがとうございました。今おっしゃった商標選択の自由に関しては、実際に182万件の登録商標が存在して、委員の方々のご意見は出なかったのですけれども、現実には商標登録をしようとしても、出願をしても恐らくぶつかるという、恐らく使われない商標が本当に登録されていて、競争阻害的になっており、いわば商標法1条でいうところの産業の発達にもつながるような問題だ、そういう認識で出ているのだろうと思うのですけれども、三宅委員もちょっとおっしゃいましたけれども、不使用の問題を別に扱えというようなご提案かなと思ったのですが、今39分になっておりまして、不使用の抗弁という問題をぜひとも扱わせていただきたいのですけれども、これは非常に思い切った興味のある提案ではないかなと思うのですが、これはいかがでしょう、この点について、三宅委員、先ほどちょっとおっしゃいましたけれども、こういうご説と、これに対する一つの提案として、不使用商標問題について、こういう抗弁を考えるということではいかがなのでしょうか。 |
三宅委員 |
侵害の場面とか異議申立の場面等で、不使用の抗弁といった形で、ある程度使用義務を強化するような方向での対策というのは必要かと思いますが、権利者側としては、当面出願に対して異議を申し立てないというやり方はあると思うのです、使ってないからという理由で。そうなると根本的な解決にはちょっとならないので、もし不使用対策をやるのであれば、例えば、これも検討しなくてはいけないとは思うのですけれども、登録査定は出すけれども、使用証明が出されるまでは登録はしませんとか、そういうやり方もあると思うのです。 |
土肥委員長 |
後願の出願人が出願をして、仮に現行法のもとで11号に当たるという場合に、不使用の抗弁を出す、使ってないという抗弁は、査定の段階で出せるのですね。 |
三宅委員 |
出せるのですけれども、異議待ち審査の場合は、異議申立てそのものをしないときには、そのまま通過してしまうわけです。 |
土肥委員長 |
登録されることになるわけです。 |
三宅委員 |
登録されますね。登録されるということになると、従来の不使用商標がいっぱいある中で、さらに類似の登録がどんどん増えていく、そうするとますます混乱するのではないかと私は思うのです。 |
土肥委員長 |
不使用の抗弁が出ても、先行の商標登録が存在する事態は変わらないのであるから、混乱するおそれがあるのではないか、こういうことなのですけれども、例えば、そういうことに対する手当ては何か考えられますか。 |
髙部委員 |
諸外国で不使用の抗弁を入れている国が幾つもあるということのようなのですけれども、そのときの効力としては、どういう形になっているのでしょうか。つまり先行の商標権者が、後発の出願に対して異議とか無効審判を起こすわけですね、それに対して、先行の商標権者は使用していないでしょうというのが不使用の抗弁だと思うのですけれども、それが先行者側で使用が立証できないときには、後行のものが登録された状態で併存してしまうことになるですね。それが自動的取消しになるとか、登録が抹消されてしまうというような制度をとっている国もあるのでしょうか。 |
土肥委員長 |
いかがでしょうか。 |
木村審議室長 |
それは、調べた限りではないと思います。 |
髙部委員 |
そうすると、それを併存させないためには、不使用の先行の登録を何らかの形で、不使用取消のような形で別途取り消す手続が必要だということになりますでしょうか。 |
木村審議室長 |
基本的にたしか併存すると思うのですが、ある意味では全く権利行使のできない権利をいつまでももっている必要はないだろう。だから、例えば更新のときに次の10年分の更新手数料は支払わない。そうして権利が放棄されることによって、実際に使用するものだけに徐々に収れんしていくのではないかと思うのです。直ちにそれを職権で、例えば取消しとか、あるいは一種対世効のようなものを与えるとかいうようなことは、そこまでいきなりする必要はないのではないかなと思うのです。 |
竹田委員 |
今のお話を聞いていると、ちょうどキルビー特許判決のときと同じような感じになると思うのですね。当該商標の先行の商標権者が、後願で類似範囲に入る商標について登録されたといって無効審判請求を起こすわけですね。それに対しは抗弁として、使ってないから登録が併存していてもいいのだというわけですね。その限りでは併存するけれども、その権利は使ってない権利ですから、今度は、別にそれが不使用取消でなくならない限りは、権利として存在はしているのですけれども、多分その権利を今度は侵害訴訟で使おうとすれば、それは前にもこういう判断が出ているということで使えないことになる、というような関係になりますね。そういう制度はあってもいいと思うし、使用主義を徹底するのには、そういう制度は、考えられると思うのです。 |
土肥委員長 |
先ほど竹田委員の発言の中に出たのですけれども、先行の不使用の商標権者がいて、後行の商標権者が無効審判で争いになるのだけれども、不使用の抗弁が出て、権利の濫用にしても何にしても、先行の権利者の商標権の行使は認められないということになるのだが、逆に、先行の商標権者が使用を始めたときには侵害になるというお話だったと思いますけれども、それは侵害になるという理解ですか。先行の商標権者が使用を開始したら、後行の商標権者の商標権の侵害になるのでしょうか? |
木村審議室長 |
それはなるんじゃないでしょうか。基本的には3年間不使用の状態が継続していて、なおかつ侵害の議論の時点で使用してないということが要件になる……。 |
土肥委員長 |
使用開始したときに後行の商標権の侵害になるのかどうか。 |
田村委員 |
それは、多分規定の仕方によると思いますね。もし何も規定をしないときには、もしかすると先使用の要件と反対解釈されて、今の例ですと、先行だろうが後行だろうが、どちらの出願時にも使用していませんから、逆に侵害になるのだというふうに理解される可能性もありますし、あるいはもしかすると、商標権の権利行使だということになって、逆に今度は、少なくとも先行の商標権の場合は使えるという議論もあり得ると思いますので、これはどちらも取り得ると思うのです。だから、どちらにするかを立法で決めなければいけない問題じゃないかなという気がしております。もしそうするのでしたら、僕自身は、ついでにいわせてもらえば……、いわない方がいいかな。 |
土肥委員長 |
どうぞ、お願いいたします。 |
田村委員 |
僕自身は、むしろ登録が併存するということの方が怖いですね、そういう意味で。使用主義がバラ色では決してありませんし、登録主義のよさというのもあります。最後、24ページにいろんなバリエーションを書いていただいているので、それはこれからということなのでしょうけれども、3年間は、現在でも使用していなくても取り消されない制度ですから、その間はその人だけが使用するかどうかをみきわめてあげる。そのかわりほかの人には登録を許さないという立場はもちろんあり得ると思います。逆に、侵害訴訟で不使用の抗弁というのは、むしろこれは有望だという気がいたします。登録は併存しないわけですし、侵害訴訟の不使用の抗弁も、僕は3年の猶予は認めるべきだと思いますけれども、3年もたってまだ使ってないのに権利行使するとは何事だということはいえると思うのです。ただ、そのときも、一旦不使用で請求棄却になった後に商標権者が使用開始した場合に、その後どうなるかとか、あるいは被告の方が不正競争防止法上の周知性・著名性を備えたときに、両者の関係はどうなるかとか、これはいろいろと後で考えなければいけない問題だとは思います。 |
髙部委員 |
やはり不使用の抗弁を認めても登録が併存する限りは、いろんな意味で混乱が生じるおそれがあるように思います。不使用の抗弁を受けて、その段階で気がついて、先行の商標権者が使用し始めれば、当該後行者との関係では負けるかもしれませんけれども、第三者との関係では勝てるわけですね。登録はあるわけですから、商標権を使用しているということになるわけで、そうすると、そこのあたりの調整というのは非常に難しい問題がたくさん出てきそうな気がいたします。問題点を整理しておく必要があるように思います。 |
小塚委員 |
私は、高部先生とか田村先生とちょっと感じ方が違いまして、確かに制度の表面をみますと、登録が併存して非常に混乱が生ずるように感じられるのですが、実質的にはそんなに問題は生じてこないのではないかという印象を受けたのです。それはなぜかといいますと、先行商標が不使用であるというのは理由があるわけですね。本来使うべきところを使っていないということはそうそうないわけでして、使っていないというのは、基本的に使う必要がないから使っていないわけですね。それを、不使用の抗弁が出されたから急に使い出すというのは、つまり権利を失わないがために使い出す。そうすると、しょせん先行商標権者の本来のニーズにマッチしない形で使う。そういうことは、長期的には維持できないであろう。こういうことが、不使用の抗弁を入れるという制度的なご提案の前提にはあるのだと思います。そうしますと、もちろん田村先生がいわれるような制度のつくり方の問題はありますけれども、上手につくりますと、結局、使う必要のない人は自然に商標権を使わなくなり、やがて消えていく、こういう制度が仕組めるのではないかと思いますので、実質的にはそんなに問題が生じないのではないかという印象をもちます。 |
松尾委員 |
先ほどから皆さんの意見を伺ってますと、今与えられる権利は、非常に安定した権利行使のできるいい権利であるというふうに思っていらっしゃるので、私はちょっと意外だったのですね。一番初めに問題になったときには、特許庁と裁判所で判断が違うこともある。侵害にいってから、また判断が違う。そういうことで問題があるのではなかろうかというようなところが一つの問題点だったと思うのです。相対的拒絶理由、そういうものについては当事者同士が一番よく知っているということで、市場をよく知っている当事者による後からの異議を待っての審査でいいのではないか、そういうところが一つポイントだったと思うのです。私は、今でも、実はその方がいいのではないか。だけれども、当然、市場に混同が生ずるような権利は、やはり与えては困るということで、先ほど21ページでしたか、出ていましたような周知・著名商標は例外であるとか、同一商標については特許庁でも容易に判断できるので、そういうものは相対的ではあっても、やはり審査をして、同じものは拒絶するというような運営をしたらいいのではないか。 |
土肥委員長 |
ありがとうございました。今の点、米国の今ご指摘のあった放棄とみなすという点、それから一定期間経過後につきましては登録されておっても放棄とみなす、そういうような研究とか、そういうことをひとつやっていただいて、また検討させていただきたいと思います。 |
大泉委員 |
異議待ち審査制度についてのユーザーの負担という点でいつも考えているのですけれども、実際、各企業の商標担当というのは1名か2名、兼務の場合は0.5名というような感じで、非常に人間的にも予算的にも厳しい状況にあります。これ以上、これからの改正で人的にも金銭的にも負担がふえるようでは、ちょっと賛成をしかねるという状態であることをご理解いただきたいと思います。 |
土肥委員長 |
182万件の20%というのは、ちょっと考えられないのだろうと思うのですけれども……。 |
大泉委員 |
公告されたものに対して20%近くの異議申立てがあるという資料がございましたね、欧州の場合。 |
木村審議室長 |
21ページにOHIMでは異議申立率が18.16%、無効審判請求が1.91%という数字があるということです。ただ、先ほど申し上げた5.2%というのは、それがすべて異議に回るということではなくて、要は、後願の商標があらわれる確率というのは、例えば100件もっていれば5.2件についてはあり得るという話をしていて、確かにおっしゃるとおり、仮に異議待ち審査制度を導入するということにしますと、その率というのは上がるかもしれない。ただ、それはすべてその率で異議がなされるというわけではないということだろうと思います。それから当然使用対策を別途考えるということになりますと、それによってある程度絞り込む、実際に本当に意味のあるものだけに絞り込もうというインセンティブが働くという可能性もあるので、みかけほど増えるというようには私どもとしては予測はしてないのですけれども、ご懸念についてはテークノートしたいと思います。 |
山中委員 |
大泉委員と基本的には同じ立場の企業サイドということで1件申し上げたいのですけれども、今回の改定については、昭和34年法に基づいて運用されている制度そのものが実情に合わなくなった、あるいは制度疲労を起こしているというようなことも当然勘案して制度の改定をお考えになっているのだと思うのですけれども、基本的には我々サイドからお話しさせていただくと、改定に際してはユーザーフレンドリーなものをつくっていただきたいと考えております。基本的には商標権という権利そのものは付与されるものでありますけれども、その後、原則として10年間、権利期間中は、それをメンテナンスするのは企業側になってくるといいますか、商標権者側になってくるわけですので、そのメンテナンスが、どちらかというと企業の活動に負担にならないような方向で考えていただきたいと思います。負担にならないというのは、労力の面からいっても、費用の面からいってもということですね。 |
土肥委員長 |
ありがとうございました。もしよろしければ、時間もちょうど5時を若干超えたところでございますので、よろしければ、これで本日の委員会はこれぐらいにさせていただければと思います。 |
木村審議室長 |
次回の小委員会でございますけれども、まだ日程は未定なのですが、来年2月以降の開催ということで、改めてご都合をお伺いした上で、事務局で調整してご連絡をいたしたいと思います。一通り個別の論点については議論をしたと思うのですけれども、今後、具体的な制度の在り方について検討していかないといけませんので、本日、あるいは前回までにいただいたご議論を十分そしゃくをいたしまして、あと必要な調査等も進めて審議を改めてしていただければと思っております。以上でございます。 |
土肥委員長 |
後ろの肩をもつようなことはないのですけれども、防護標章がまだございますので、その点もひとつよろしくお願いいたします。 |
――了――
[更新日 2004年1月20日]
お問い合わせ |
特許庁総務部総務課制度改正審議室 |