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第5回商標制度小委員会 議事要旨

平成15年12月2日
特許庁

12月1日(月曜日)15時00分~17時00分に、産業構造審議会 知的財産政策部会 第5回商標制度小委員会(委員長:土肥一史 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授)が開催された。

1.審議内容

事務局から資料1(商標制度の枠組みの在り方について)に沿って説明した後、自由討議を行ったところ、委員からの意見の概要は以下のとおり。

(1)相対的拒絶理由に関する異議待ち審査制度について

  • 現行の職権審査制度のメリットと異議待ち審査制度のデメリットを比較すると、現行制度のメリットの方が大きいと思われる。
  • 現行の職権審査の抽象的な判断手法は特に問題はなく、職権審査は残すべきである。審査の積み重ねがなく審査内容にばらつきがあることが問題。個別具体的に混同のおそれを判断する異議待ち審査制度が妥当なのか疑問である。
  • 企業規模とは無関係に、審査主義による安定した権利付与と、安心した権利行使ができることを希望する。これは、現行制度で相当程度実現されている。ユーザーは、異議待ち審査となれば、ハウスマーク以外のマークについての監視費用や、異議・審判等の事後的負担も増加する。審査主義を変更するのはデメリットが多く、反対である。
  • ユーザーとしては、使用開始時点で安定した権利が必要である。異議待ち審査では、見落としにより、意図的に使用開始時に異議を申し立てられる可能性がある。「商標選択の自由」を増やすのであれば、無駄な出願を減らし、登録時不要な商品・役務を減縮補正するよう促すべき。異議待ち審査では不使用商標対策につながらない。
  • 商標権を10年間以上メンテナンスするのはユーザーであり、維持が負担とならない制度を希望する。日本の異議申立率は0.92%だが、欧州並に18.16%の異議申立てがなされるとなると、非常に高い。。
  • 相対的拒絶理由の審査は、出所の混同を生ずるものの登録を許さないために行われるべきであり、出願件数が多い等の事情により形式的な審査となっている。本来あるべき制度と言えるのか。相対的拒絶理由を異議待ち審査制度にするのも一つの選択肢である。ただし、周知・著名商標のただ乗りについては懸念があり、これについては職権審査としたらどうか。また、現行制度のように形式的な審査をし、意見書で混同のおそれがないことを立証した場合には、審査官は判断しないという方法も考えられる。
  • 相対的拒絶理由については、当事者同士が取引の実情を一番良く知っているため、異議待ち審査の方がいいのではないか。ただし、市場に混同を生じさせる周知商標や同一商標の存在の有無は職権審査で対応してもいいのではないか。
  • 具体的に審査が行われるか又は抽象的に審査が行われるべきかが問題である。職権審査において、抽象的に類似であると認められても、使用態様を考慮して、類似性を否定するのは行き過ぎである。事後的に使用態様を変更した場合は、それに応じて登録を取り消す制度を導入することも考えられる。
  • 相対的拒絶理由と絶対的拒絶理由を明確に分けることは難しいが、第4条第1項第10号及び第15号は、公益的と考えられる。実質的に第4条第1項第7号と第19号の区別は困難ではないか。異議待ち審査制度を導入するならば、不使用商標の商標権の濫用のことも考えるべきであり、無効審判の除斥期間をなくすべき。
  • 商標選択の自由が商標法の目的から直ちに導き出せるのか疑問である。コンセント制度の導入も同様の理由により慎重であるべきと考える。

(2)「不使用の抗弁」制度の導入について

  • 侵害、異議において、使用義務を強化する対策は必要である。審査において、登録査定はするが、使用証明を出すまでは設定登録しないという方法もある。不使用商標が多い状態で異議待ち審査となれば、さらに類似の登録が増えて混乱が生じるのではないか。
  • 「不使用の抗弁」制度において、先行登録商標が不使用と認められた場合、権利を存続させるべきか検討すべき。登録が存続すると混乱が生じないか。
  • 「キルビー特許」判決と同様に考えれば、不使用取消で取り消されない限り存続させてもいいのではないか。侵害訴訟においては、丸1不使用商標であれば権利濫用となる、または丸2使用していなければ損害が発生していないという法理もあり、「不使用の抗弁」を条文上明記する必要については検討が必要。
  • 「不使用の抗弁」を導入するなら、不使用状態が3年間の継続していることを要件とすべき。
  • 「不使用の抗弁」を入れても実質的には混乱は生じないのではないか。不使用商標には不使用にしていた理由があり、権利を失わないように「不使用の抗弁」をされてから使い出すことは不当。長期的には不使用商標を減らす上で効用があると考えられる。
  • 米国には不使用であれば商標の「放棄」とみなす制度がある。商法にも、商号について2年間の不使用によって放棄とみなす規定がある。

2.今後の審議スケジュール

第6回商標制度小委員会は、2月以降に開催する予定。

以上

[更新日 2003年12月4日]

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