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第6回商標制度小委員会 議事録

  1. 日時 平成16年5月25日(火曜日)10時00分~12時00分
  2. 場所 特許庁 特別会議室
  3. 出席委員 土肥委員長、大泉委員、古関委員、琴寄委員、高部委員、竹田委員、松尾委員、三宅委員、山中委員
  4. 議題 著名な商標の保護の在り方とこれまでの議論のまとめについて
議事録

土肥委員長

皆さん、おはようございます。
ちょうど定刻の10時ということでございますので、ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会第6回商標制度小委員会を開催したいと存じます。
本日の議題は、「著名な商標の保護の在り方」ということでございます。
まず資料の確認をしていただきたいと存じます。

木村審議室長

それでは、配布資料の確認をさせていただきます。
資料は大きく分けて3点でございまして、資料1が「著名な商標の保護の在り方とこれまでの議論のまとめについて」という紙でございます。
資料2が、「これまでの議論のまとめ」でございます。
それから、参考資料といたしまして、これは資料1にむしろ付属するものでございますけれども、各国の法令ですとか、我が国の不正競争防止法、参照条文等についてまとめた資料がついてございます。
不足等ございましたら、お申し出いただければと思います。

土肥委員長

よろしゅうございますか。
それでは、早速議題に入りたいと存じます。

事務局説明「著名な商標の保護の在り方」

土肥委員長

それでは、制度改正審議室長の方から説明をお願いいたします。

木村審議室長

それでは、御説明申し上げます。
この小委員会自身、開催するのが昨年12月以来ということで、すみません、すっかり忘れてしまったのではないかということで、そういうわけでは決してございませんで、我々、法案をここのところ毎年準備しておりますので、それの準備作業に事務局がちょっと手をとられておりまして、この時期にさせていただいたのですが、それが結果的には参議院の審議に重なってしまいまして、非常に皮肉な結果になってしまったのですけれども、今回は、積み残しになってございました「著名な商標の保護の在り方」についてまず御議論をいただいて、後半で、これまでの議論のまとめということで、簡単なストックテーキング、これから議論を深めていく上での整理を一度させていただきたいと考えております。
まず資料1でございますけれども、恒例によりまして、最初に前回の議論のまとめがついてございます。
前回は、いわゆる異議待ち審査制度、それから「不使用の抗弁」につきまして主として議論をいただいたわけでございます。
異議待ち審査制度につきましては、もう皆様、ここにいらっしゃる方は御存じのとおり、
かなり批判の声が多かったということだろうと思っております。現在の職権審査の判断手法というのは特に問題はないのではないか。それから、やはり安定した権利付与、安心した権利行使というのが重要だ。あるいは権利者の監視費用、あるいは異議ですとか審判等の事後的な負担が増加する。
それから、商標選択の自由といっても、これ自身抽象的だし、逆に不使用対策等には異議待ち審査制度は、それ自体としてはあんまり役に立たないのではないかというような御指摘があったと思います。
他方、考え方としてはわかるという肯定的なとらえ方の御意見もあったようですし、それから、部分的に少なくとも導入する、すべてをやるというのは難しければ部分的に導入していくということがあり得るのではないかという御意見もあったと思います。
それから、商標選択の自由云々というのは、商標法の目的から直ちに導き出せるものではないのではないかという御指摘もありました。
それから、コンセント制度についても、これも第3回にも議論したのですけれども、それについては、もちろん前向きな御意見がもともとこれには多いとは思いますが、やはり公衆、最終需要者の混同の防止等の観点から慎重であるべきではないかという御意見もあったというふうに思っております。
それから「不使用の抗弁」、いわゆる不使用対策につきましては、侵害訴訟、異議申し立てにおいて使用状況を問うていくということは必要だ、あるいは長期的には不使用商標を減らしていく効果があるのではないかという御指摘がありました一方で、やはり侵害訴訟等では権利濫用、あるいは損害が不発生であるという理論構成で解決もできるので、それほど実益がないのではないかという御意見もあったと思いますし、それから、登録査定後に使用証明を提出するまで設定登録をしないといった制度、それから、みなし放棄、それから、我が国の商法にも不使用に基づく商号のみなし廃止という制度がございますので、そういうものも参考になるのではないかという御指摘もあったと思います。
これはこれで1つの整理といたしまして、また、これまでの議論のまとめを後半部分で御議論いただくときに、併せて御指摘があればいただければ、と思っております。
今回の検討の焦点といたしましては、防護標章制度の在り方、著名商標の保護の在り方ということを中心に議論をしていただければというふうに思っております。
3ページでございます。
これは実は1回目の審議会で幅広く商標制度の保護目的ですとか、あるいは識別制度の関係とか、そういうことを幅広く御議論いただいたときに、実は多少議論になっておりまして、確かに余り使われていないし、使い勝手もいいとはいえないだろうということがベースにあるのだろうと思いますけれども、やはり権利が一定期間確保されているというのは安心だし、廃止するということになると、個別の行為にその都度対応していく必要があるのではないか。一定の抑止力というのでしょうか、そういうものはあるという評価もあったように思います。
それから、水際措置との関係も考えて、バランスのとれた議論をしていただきたいというような御指摘が、議事録等を振り返りますとございました。
今回、これについて本格的に議論をしたいということでまとめてございます。
概要と現状でございますが、これはもう皆様、よく御承知のとおりでございます。
制度の趣旨といたしましては、登録商標が広く認識をされている。非類似の商品、役務について使用する場合でも、混同の恐れがある場合に、同一の標章につきまして、使用を前提にせずに、防護のためのみに登録を認める。そういう制度だということでございまして、商標法64条に規定があるというわけでございます。
そのことによりまして、著名・周知な登録商標につきましては、他人が登録商標を受けることができない。後願が排除されるということでございますし、それからみなし侵害にもなるということでございます。
実際、登録されますと権利が10年間、存続するわけでございますし、使用を前提としておりませんので、不使用ほかの取り消し審判の適用対象にもなっておりません。
それから、やや手数料は高めになっておりまして、現在、1件について1万2,000円に、一区分について3万円を加えた額ということで法律に定まっております。ちょうどこれは通常の出願の倍ということになっております。
制度利用の現状というところで見ていただきまして、これは出願件数と登録件数の過去5年の推移が書いてございますが、通常の商標登録に比べますといかに少ないかということが、これでも使われているといえばもちろんそうなんですけれども、非常に少ないということは事実だろうということでございます。
そして、問題の所在というところでございます。当然、この制度そのものが存在しておりますし、使われているということなので、それはそれなりにメリットもあるのだろう。冒頭御紹介した御議論ですと、安定的にやはり10年間、権利が享受できるということもございますし、それから、同様の法律といたしまして不正競争防止法、これは後で御議論していただければと思いますけれども、不正競争防止法がございますが、やはりそれによるよりも、少なくとも同一の標章につきましては、証明の負担は格段に小さいというようなことがあるのだろうというふうに思っております。
ただ、やはり問題点もかなり顕在化しているのではないかということでございまして、まず商標というのは、保護しておりますのはやはり信用であるということであれば、それ自身非常に流動的、動態的に形成されるものだというのが、今回、我々が1つの柱として考えております考え方ということなのですが、やはり10年間、著名・周知性というものが変わらない、覆らないということを前提にした制度というものは、やはり硬直的なんではないかなということはいえるのだろうというふうに思っておりますし、それから、非常に出願件数そのものは少ないわけですが、事前にやはり著名・周知性を審査した上で登録するということで、審査の実務の負担、それから、当然そのためのいろいろなインフラも整備していかなければいけないということで、それほど実益と負担のバランスがとれているのかという問題はあるのだろうと思います。
それから、世界中で見ましても、非常に珍しい制度にいまやなっておりまして、オーストラリア、香港、マレーシア、パキスタン、ザンビア、コロンビアということで、6カ国・地域が日本以外に採用しているに過ぎないということでございます。
それから、保護対象につきましては、やはり同一の標章に限られておりますので、制度としてやはりいかにも利用がしづらいということで、混同を生ずるおそれがある行為を禁止するためには、同一標章の使用を禁止するだけでは十分ではないということでございます。これが多分遠因になっているのかもしれませんが、やはり権利が行使された実例というのがない。
それから、後願排除の理由として4条1項12号が使われるという例もほとんどないということだそうでございます。
続きまして、それで検討の方向について書かせていただいております。
ブランドは幾らそれが動態的に形成される変化するものであっても、やはり強い権利というものを認めていく必要はそもそもあるのだろうというふうには思っておりますので、非類似の商品(役務)であっても、やはり混同を生ずるおそれがあれば、それについて禁止的効力を認めていくということは重要ではないかというふうに考えております。
6ページでございますが、そこで、現在の防護標章のような制度というのも1つ
の在り方だろうというふうに思いますけれども、やはり実際には使われていないし、それから、
先ほど申し上げたような問題点を考えますと、行政が事前に審査をして、それを登録するというメカニズムによらなくても、特別の登録を経ることなく、1つの登録商標の効力範囲として、混同を生ずるおそれのある非類似の商品にまで禁止的効力を認めていくということも考えていいのではないか。
そもそも著名、あるいは周知な登録商標につきましては、本体の効力としてそこまで及ぼすということは考えられないかという趣旨でございます。
条文のイメージでもないのですけれども、下の注4というところで、例えば著名・周知な登録商標と同一の商標を使用することにより混同を生ずるおそれがある場合は、商標法第37条各号に規定するように、これ自身、どういうふうに整理するかというのはまた別途議論が必要ですけれども、当該商標権を「侵害するものとみなす」というような条文を置くというのも一案だろうというふうに考えております。
実際問題として、こういうことにしますと、著名性、周知性、あるいはそれをもとにした効力範囲というのが10年間固定されるというような、やや硬直した制度、あるいはその制度に内在する使い勝手の悪さというようなもの、あるいはそれに伴う行政負担といったものは相当程度削減されるといいますか、制度全体の効率性が向上するということにはなり得るのではないかと考えております。
それから、防護標章は、本来、これぐらい効力が認められてしかるべきだ。本来、著名な、あるいは周知な商標をお持ちで、それが登録されているということであれば、追加的なお金を払わなくても、それぐらいの効力を認めてしかるべきではないかという議論もあり得るのかなということでまとめてございます。
それで7ページにまたがるのですけれども、今回、そういうことであれば、防護標章の制度というのを思い切って廃止するということも一案として我々としては考えているわけでございます。
水際の規制の観点から存在意義があるということもいわれておりますけれども、実際、これで差し止め等が行われた例というのは全くないというのも事実でございますので、そういう意味でいうと、制度の実効性というのはかなり乏しいものになっていることは否定できないのではないかということでございます。
それから、他方、保護対象の拡大ということで議論をしておりまして、先ほどは防護の制度を廃止するかどうかということで論じておりましたので、原則、同一の商標については今の防護標章の制度から置きかわるということを前提に考えておりましたけれども、それとは別途の議論としてその効力の範囲をさらに広げる、禁止的効力を広げるということで、類似の商標につきましても、非類似商品(役務)について禁止的効力を認めるべきかどうかという議論があり得るだろうということでございます。
これは2つありまして、まず1つは防護標章の登録制度を維持しながらそういうことをやるという場合と、それを廃止した上で考えるという場合とがあると思います。
まず防護標章登録制度があるということを前提に保護対象を拡大するということは、要するに使い勝手が
悪いんだったら使い勝手をよくすればいいではないかという議論だと思うのですけれども、
それの方法論というのが複数あり得るということで、それでイとロということで2とおりに書き分けておりまして、1つめは、これはちょっと観念の産物かもしれませんけれども、登録商標と類似の標章についても防護標章として登録することを認める。入り口で幅広くするというようなことでしょうか。そういう制度です。
それから、ロで書きましたのが防護の標章登録、防護標章の登録は、それはそれで認めた上で、権利の効力範囲を登録防護標章と類似の商標にまで広げていくという、権利行使の側面に着目をするという考え方とが2つあると思います。
前者のイの方でございますけれども、これはそういうことができたということにしましても、混同のおそれのあるすべての類似標章について出願しなければならないということで、それ自身困難ですし、それからいたずらに出願を増加させることになり得るということで、必ずしもとれる考え方ではないのではないか。
それから、ロについていえば、では1個防護標章登録があれば、それに対して効力範囲として広げていけばいいではないかという考え方があるわけですけれども、ではそのときに、一体、何を、どういうふうに審査をしなければならないかということを考えなければなりません。その場合、同一の標章についてのみ混同のおそれというものを判断して、それで終わりということにしていいのかどうか。仮にそうだとしますと、同一の標章が使われたときに混同するかどうかということだけをあらかじめ判断するわけなんですけれども、そんな審査で、類似にまで広がるようなそういう広い効力範囲というのを認めていくということが果たして妥当なのかどうかという問題があると思いますし、逆に、では類似の標章が使われるという場合の混同のおそれまで事前に幅広く審査でみるということは、恐らく実務的には非常に困難でありまして、もちろんそれだけのハードルを超えた権利というのは極めて強力になり得るだろうというふうに思いますが、逆に言うと、多くの標章については登録が拒絶されてしまうということになって、かえって制度そのものの使い勝手が悪くなるのではないかというふうに私どもとしては考えておるわけでございます。
したがって、保護対象の拡大を考えますならば、そのときは、防護標章制度があるということを前提にせずに、むしろそれの本体的な効力、禁止権の及ぶ範囲として考えていくということの方がむしろ妥当なのではないかと考えたわけでございます。
それから、第3回の小委員会で議論したときに、「類似」と「混同」の議論をいたしまして、仮に登録商標について一般的にそれの本体の効力として「混同」を生ずるおそれというところにまで及ぶという幅広い権利としてよいということでありましたら、これは当然第三者との関係等よく慎重に吟味する必要がございますが、そこまでできるということであれば、もうある意味では防護標章制度そのものを完全にオーバーライドして、それを中身に取り込むようなものにはなり得るということだろうと思っております。
なお、仮に防護標章を廃止をいたしまして、少なくとも、著名、周知な商標についての禁止権の効力を拡大するということを考えました場合、不正競争防止法との関係というのはどうしても考えなければいけない。もちろん不正競争防止法は行為規制法でありますし、商標法は権利の保護の法律であるということで違いはあるわけですが、機能としては相当程度といいますか、ほとんど重複をしている面があるということでございます。
ここではいろいろ書いてございますけれども、9ページに移りますが、禁止的効力に抵触する行為について、例えば刑事罰が現在、不正競争防止法の2条1項2号の類型についてはかかっておりませんので、そういうようなものを、これは登録があるからということで、それを勘案、加味して刑事罰を科すというようなことが商標法の世界ではあり得るのかもしれないので、この辺に何らかの違いを求めていくということが1つの議論としてはあり得るのかなということで整理をいたしました。
それから、最後に稀釈と汚染についても合わせて議論をしていただければというふうに思っておりまして、こういう商標の有します名声ですとか、あるいは顧客吸引力自体の便乗行為、そういうものを商標法の体系の中できちんと整理をして取り扱うべきである。これは欧米の法制にはそういうものがあるわけでして、それを商標法の体系の中でも取り込んでいくことはどうかという問題意識でございます。
稀釈、あるいは汚染がどういうことかということは、先刻よく御承知のことばかりでございますので省略させていただきますが、これについても、やはり不正競争防止法との関係の整理というのが重要な問題にならざるを得ない。
11ページ、最後のページでございますけれども、不正競争防止法でやはり2条1項2号、
これは著名性のある商品等表示であれば、それについて差し止め請求、それから損害賠償請求が認められるわけでございまして、特に「混同」といった要件もないわけでございま
すので、これはまさに稀釈について、汚染については必ずしもそうではなかったのかもしれませんけれども、
他人の著名な商品表示へのただ乗りですとか、あるいは稀釈化の問題に対応するためにつくったという法制度の趣旨からしても、これは機能的には少なくとも重複関係にあるわけでございます。
したがって、商標法として追加的に、あるいは独自の体系の中でそれをきちっと保護していく必要性があるのかどうかにつきまして合わせて御議論をいただければありがたいというふうに思っております。
とりあえず前半の御説明は以上にさせていただきます。

土肥委員長

ありがとうございました。

自由討議

土肥委員長

まず最初の議題としての著名な商標の保護の在り方ということでございますけれども、これは大きくいって3つございますが、1つは従来どおり、前回の議論のまとめということでございまして、これは積極、消極、肯定、否定的な双方の観点から並列的にまとめて記載しておるということでございまして、これは後半の部分で、これを含めた議論の機会があろうかと思いますので、ここのところは置かせていただきます。
それで、現在の防護標章制度の登録制度についてるる説明がございましたけれども、方向としては防護標章制度の廃止、そしてそれに代わり本体の商標権の禁止権の効力を拡大する制度をイメージしておられる、こういうことでございまして、これについての議論をしたいと思っております。
なお、で述べられている稀釈、汚染の防止との関係もございますので、これらは相互に密接な関係があろうかと思いますので、合わせて御議論いただいてよろしいのではないかと思います。
どうぞ。もしまず質問等ございましたら。

三宅委員

4ページの制度の利用の現状というところで質問させていただきます。これは利用率の話なんですけれども、この出願とか、登録とかという件数で見ますと1%以下ですから、ほとんど利用されてないというような印象を与えるので、その辺を懸念しましてちょっとお尋ねしたいのですが、AIPPIジャパンの出しております日本有名商標集、これの掲載件数、第3版ですと2,182件になっております。一方、特許庁のIPDLの中の日本国周知・著名商標検索、これを全件数ということで表示しますと現在854件出ます。この中には審判決で著名性を認められたものもありますので、防護標章登録だけではないとは思うのですが、先ほど申し上げました2,182件という数字と、この854件という数字からしますと、単純に割りますと、およそ39%、この39%という数字で見ますと、そこそこ利用されているのではないかなという印象も受けるのですけれども、こういった理解の仕方はどこか何か間違っておりますかどうか。
これはあくまでも念のためにする質問でございまして、だからどうということではございません。

土肥委員長

おっしゃったAIPPIとか、特許庁の検索で出てくるのはトータルでの数字ではないのですか。

三宅委員

AIPPIの日本有名商標集は、ブランドオーナーがみずから有名だと思って申告して認めてもらって掲載するものです。ですから見方によっては、これがいわゆる日本で有名な商標であり、本来であれば防護標章登録されるべき母数という考え方もできるかなと思ったものですから。

土肥委員長

ここを見ると、1年ごとに出願数と登録数が出ていますので、これを合わせていくと、そういう数字になるということでは理解できないのでしょうか。

三宅委員

というふうには見えないのですけれども。特許庁のIPDLを見ますと、防護標章登録のされているものと、プラス審判決で著名性が認められたものというふうに書いてありまして、全件数表示が854件になっているということです。

木村審議室長

どれぐらい使われているか。確かにみずからこれは著名な標章であるというふうにおっしゃっておられるのが2,182件あって、そのうち著名標章にIPDL上該当している。それがすべて防護として使われているのかどうか、すみません、定かでありませんけれども、それが3分の1ぐらいだということであれば、それはかなり使われているという見方も可能だとは思います。
それはどれぐらいこれが使われているのか、使われていないのかというのは若干やや水かけ論みたいなところがありまして、それはまさに需要家サイドの感覚として、これは非常に使い勝手がいいから云々ということであれば、それはそういうふうにむしろおっしゃっていただければ、我々としてもその制度を考えていく上で参考にはさせていただきたいということでございます。

竹田委員

ただいまの報告に対する質問ですけれども、防護標章制度を廃止して商標の禁止権の範囲を拡大するという方向性が1つ提示されていると思うのですが、著名・周知標章の保護は一方で不競法の2条1項1号、2号で達成されるのではないか。つまり不競法の2条1項1号、2号の規定があっても、なおかつ商標権の禁止権の範囲を拡大しなければならない必要性がどういう場合、それだけでは漏れてしまう、保護として足りないというのはどういう場合が想定されるのですか。

木村審議室長

これは言うと笑われるのかもしれませんけれども、先ほどちょっと申し上げたことですが、刑事罰のところというのはやはり両方の考え方が違う可能性はある。
あとは機能の面においては、確かにさほど違わない。かなり重複しているというふうには思います。
ですから、逆に言うと、あえてそこまで禁止権を広げないことをしても、それは不正競争防止法があるから十分だということであれば、それはそれでそれも1つの解決の方法なのではないかというふうに思っております。
だからなにがなんでも、例えば防護標章制度は絶対廃止したいとか、あるいは逆に禁止権を広げたいということに我々として固執しているわけではなくて、それはいろんな可能性があって、どれが一番使い勝手がよくて、なおかつ整理もできるかということで考えたいということでございます。

土肥委員長

竹田委員、よろしゅうございますか。
ほかにございますでしょうか。

琴寄委員

5ページの③のところで、世界的な流れとして防護標章制度が廃止されているという形で書かれているのですけれども、私どもの理解のためにちょっとお伺いするのですけれども、廃止された諸国においては、具体的には著名商標の保護に関して、どのような制度に移行されているかというのがおわかりであれば教えていただきたいのですけれども。

木村審議室長

完全に詳細について我々としてもわかっておりませんし、当然それぞれの商標制度が異なっておりますので、必ずしも完全に同一に論じられるというわけではないと思うのですけれども、ちなみに英国では、EC域内の商標法の調和を図るということで、一定期間、不使用の商標というものは例外なく取り消しの対象にすべきだということとされていたということのようですけれども、それに伴いまして、EC指令を遵守するために英国では防護商標制度が廃止されたということのようです。
それから、台湾ですけれども、これは稀釈の防止の規定を設けることによって防護を廃止したということでございまして、それから、ニュージランド、インド等でも廃止をされるということですけれども、これは多分英連邦の英国法の影響が強いということだろうと思います。基本的には英国で廃止をされたということに伴いまして、同じように廃止をされているということのようです。
ただし、防護標章制度は、もともとあまりユニバーサルな制度ではないということはいえると思うのです。

松尾委員

今のところですけれども、結局英国はディレクティブに基づいて防護標章制度を廃止しましたけれども、他方で商標権の効力というところで著名商標の保護や名声の
保護ということが規定されていましたので、そこで補われているのではないかと思います。

土肥委員長

ありがとうございます。
今、松尾委員がおっしゃったのは、資料についておりますけれども、参考資料の一番上に、欧州共同体商標規則のところで、共同体商標に与えられる権利としての1項、これは(c)というのですか、この点の御指摘ということでよろしゅうございますね。

松尾委員

そうです。

土肥委員長

ほかにございますでしょうか。
もし、御質問がないようでありましたら議論に入りたいと存じますけれども。

大泉委員

防護標章制度のメリットとして自分の著名商標が他人に登録されるということを出願時というか、審査時に防ぐことができるというメリットがあると思うのですが、防護標章制度の見直し、廃止をした場合に、そのような他人による自分の著名・商標の登録をされてしまうということを防ぐという効果が、審査時の効果がなくなってしまうと思うのですが、そこを補完するような、具体的な制度上の方策ということについて検討されていたら教えていただきたいのですが、お願いいたします。

小川商標制度企画室長

著名商標を他人が登録を取ることを事前に防ぐという意味では、
防護標章制度がなくてもという言い方はおかしいですが、現行でも4条1項15号できちっと対応できているのかなとは思いますが。

土肥委員長

よろしゅうございますか。

大泉委員

はい。

竹田委員

意見として申し上げます。
結論的なことは、もう少し産業界の防護標章制度の必要性等についての意見や実情をお聞きしないと言えないことだと思いますけれども、現在までの防護標章の使用の状況とその他を勘案してみると、先ほど質問のときに申し上げた防護標章制度を廃止して禁止権の範囲を拡大するという方向で対応するのがいいのではないかと思います。
その理由のまず第1は、先ほどの報告にありましたように、権利の実効性に乏しいということですね。出願登録商標は極めて少ないですし、私が15年、東京高裁でこの種の事件を扱っていたときも、たしか防護商標の事件というのは審決取り消し訴訟が1件あったかというぐらいか記憶にないわけです。
また、この防護標章の本来の趣旨に沿ったような権利行使が侵害訴訟等において発生したという例もほとんど聞かないと思うのです。
それから、先ほど御報告がありましたように、世界的に見ても、この制度を設けている国は例外的であるという点と。
それから、実質的には、この著名・周知標章の保護というのは不競法の2条の1項1号、
2号で足りると思いますが、先ほどの質問したことと関連すると、制度的な違いということが理由になるわけですけれども、実質的にはこの不競法の規定で保護としては足りるのではないかと思いますが、法律制度から見ますと、不競法というのは、これは公正な競争秩序の維持を目的とした法律であり、一方、商標法は、これは排他的な支配権としての知的財産権の1つである商標権の保護の問題ですから、そこは制度的にはかなりの部分で重複することがあっても、制度として設ける趣旨は違うので、37条というのは、後でも出てくるように、いろいろな整理すべき問題点も含んでいるのではないかと思いますが、そこに合わせて禁止権の範囲の拡大という方向でこの問題を織り込んで考えるというのは1つの方向ではないかというふうに思います。
以上です。

土肥委員長

ありがとうございます。
今、竹田委員の御意見の中にもございましたように、まず産業界の実情、意見、声、こういったものはまず十分精査する必要があるけれども、こういう御指摘があったわけですけれども、この機会に、産業界の方がお考えになって、防護標章というものの必要性、10年間も区切って、ある意味では著名性を認めてもらえるという意味では、先行者にとってはかなり都合のいい制度だろうと思うのですけれども、後から参入しようとする者にとっては非常に硬直的、説明の中ではそういう言葉があったかと思いますけれども、ある時点で切った著名性がそのまま続いていくということで、場合によっては障害もあるのかなと思うのですけれども、特に産業界のお立場からして、この防護標章というものの特質と申
しましょうか、どちらかというと今、ネガティブなところがいわれておるのですけれども、
プラスの点で何かございますか、この際、おっしゃっていただくようなことが。

三宅委員

正直申しまして、現在の防護標章制度というのは、御存じのように同一の部分にしか、後願排除にしましても侵害場面においても働きませんので、その点で非常に使い勝手が悪いというのが本音でございます。
したがいまして、私どもの立場から言いますと、現実には恐らく「混同」が起きている、
あるいは「混同」の生じるおそれがあると思われる非類似の商品における、著名ブランドと類似の商標の部分、ここのところを何とか保護できるような形をとれないかというふうな方向での要請が大半でございます。
もちろん現行の防護標章制度も、先ほどちょっと利用率を言いましたけれども、一定の範囲で利用されている以上、残すべきではないか。あるいは、仮に37条のみなし侵害規定に入れて保護するような形をとるにしても、いきなり廃止するのではなくて、相応の経過措置をとってもらいたいというような意見もございます。
それからもう1つは、37条の各号、これは1号と2号以下とちょっと違うわけでございまして、25条の権利と合わせて37条1号を直接侵害にするというようなお話も以前ございましたので、仮にその37条の2号以下等に入れるにしましても、そういった将来的な動き、考え方も踏まえて、いわゆる直接侵害的な扱いをするのか、それとも間接侵害的な扱いをするのか、その辺も含めて総合的に検討してもらいたいというのが意見でございます。

土肥委員長

おっしゃるとおりだと思うのですけれども、よろしいですね、今の。

木村審議室長

はい。

土肥委員長

ほかにございますか。

古関委員

最初に、今回の議論は、防護標章登録制度を廃止するかどうかというとっかかりのように見えるのですけれども、著名商標の保護の在り方として、何がベストであるのかという見方から出発をすべきではないか。
すべて防護標章を廃止して、効力範囲を非類似範囲まで広げるという拡大をする方向にまず理論があって、一番著名商標の保護の在り方として何がベストなのかという視点がちょっと抜けているような気がします。
逆に言うと、今の防護標章登録制度をもっと改善する余地はないのかという見地はないのか。1つあったのは、類似範囲まで広げる、登録の幅を広げる、あるいは効力範囲を広げるという話がありましたが、類似という話についても、第3回のところで議論したように、ここは何を類似というのかすら決まっていない状態である。逆にいえば、今、それよりはもう少し緩和したというのでしょうか。50条のような社会通念上の同一性の範囲まで広げるとか、そういうふうにした場合どうかという問題点の切り口もあるのだろうと思います。
それともう1点、水際の話ですが、これは利用されたことがないというふうな形で書かれておりますけれども、例えば実際、認定手続に入ったのはないのかもしれませんけれども、積み戻しということはないのでしょうか。例えば認定手続に入る前に、結局入ったけれども戻してしまったというような事例というのは、防護があったことによって、そういう効果がなかったのかどうか、この辺の確認をされておられるのかどうか。
それとヨーロッパ各国において、いわゆる非類似範囲まで拡大をしたことによって水際対策がどうなっているのかはどの程度お調べになっておられるのか。
ちょっと質問もありますが、お伺いしたいと思っています。
以上です。

木村審議室長

欧州等の制度については、ちょっと調べれば多分わかると思うので、これは調べます。
積み戻しは、今まで調べた限りにおいては、積み戻しも含めて、そういうことはない。という報告です。
防護標章制度は、そのものずばりのものに対して威力を発揮する制度だから、なかなか、もちろんその存在自身が抑止力になっている
ということなのかもしれませんけれども、なかなかそうしたそのもずばりの事例はないということなのかもしれませんです。

土肥委員長

お尋ねしますけれども、前段の部分、本来、議論のスタートとしては、著名商標をどのように保護するかというところからの議論からスタートすべきではないかという点があるのですけれども、一応ここでの本日の提案の中では、「混同」のおそれのある範囲について議論していますね。そして「混同」のおそれはないけれども、のところで稀釈、汚染のところの話も出てくる、このように一応押さえてあるわけです。ですから、議論の前提としては、著名商標の保護の在り方も、恐らく検討しているのだろうというふうに私は思っているのですけれども。
一応それでほかの方の質問を受けさせていただいてよろしいですか。

古関委員

はい。

土肥委員長

松尾委員、お願いします。

松尾委員

業界の方が手を挙げていらっしゃるのではないでしょうか。

土肥委員長

では大泉委員、先にお願いします。

大泉委員

古関委員がおっしゃるとおり、著名商標の保護というのを第1の目的に考えていただきたいというのがございます。
それで今の防護標章制度のメリットというのは、先ほど申し上げましたように、他人によって自己の著名商標が登録されることを防ぐということがあると思います。
そして標章登録として制度上、存在していることがはっきりしますので、それによって審査等がスムーズに進みまして、他人による登録が排除されるというメリットがあると思うのです。
その防護の制度を廃止することによって、今度は、先ほど4条以降15号で対応可能というお話でしたけれども、これはそうしますと、はっきりした資料がなくて、ではどれが登録されるのかされないのかというようなことがだんだんブラックボックス化してくるのです。はっきりしないということがありますので、出願人としては不安であるということがあります。
ですから、はっきり制度として登録する制度があるということによって安心できるということです。
ですから、それを今の防護登録に変わったとしても、同じ効力、それから同じ安心感がある制度でなければ、そういう制度提案がなければ、これは防護を維持してくれという意見が当然出てくると思うのです。
1つは他人による登録を防ぎたいということ。それから、もう1つは、商標出願人が自分の商品について商標を出願した際に、4条1項15号等で拒絶されてしまうというのも困る。これは自分が商標出願をした場合です。ですから、ほかの商品での著名商標を事前に十分調査して、その上で商標出願するというのはなかなか難しいということがあります。もし防護標章の登録があれば、それは商標の調査の段階ですぐ見つけることができますので。そういう意味でも、防護の登録があるということのメリットというのは、そういう点でも、自分が出願人になった際にもあると考えています。
そういうことで、防護を廃止するときに、著名商標の保護の効力が下がるというか、制度が変わってもしっかりと保護されるんだよという制度の提案がない限り非常に不安を感じるという状況がございます。
以上です。

土肥委員長

もちろん今回の提案は、恐らく仮に防護標章を廃止しても、今、おっしゃったような審査の段階、あるいは侵害の段階でも、著名商標の保護がきちんとできるということの、そういう文脈の中での提案だと思うのですけれども、具体的にどういうイメージになっていくかというのは、今、説明のあったところしかないのですけれども、ですから、大泉委員としても、そういうよりよい制度であれば、それは問題ないという理解でよろしいですね。

大泉委員

はい。

土肥委員長

お待たせいたしました。松尾委員、お願いいたします。

松尾委員

今、大泉さんのご意見をお聞きしていて、私は防護標章制度を廃止すべきであるという気持ちをもっと強くいたしました。
といいますのは、著名商標の保護が基本にあることは間違いない、ここから出発しているわけですけれども、この防護標章制度になりますと、著名性というのは10年間、固定されるわけです。ここに私は理論的に非常に大きな問題があると思います。
商標というのは使用することによって成長もし、使用しなければ、またたく間に信用を失うという場合もあるわけですから、そういうことを考えまして、商標は生き物であるという前提に立ってものごとを考えなければいけないと思います。著名性の範囲とか、程度というのも10年間、固定しているはずはないのだろうと思います。
他方、著名商標を保護しなければいけないことは間違いないので、著名商標を保護する方法を具体的に別途考えればいいと思います。
それから、実効性の問題ですけれども、私も40年以上弁護士をしておりますけれども、防護標章制度というのを訴訟の中で使ったことというのは、事実上ありません。ソニーは防護標章をたくさん持っているということで、並べて訴状を書いた記憶があります。そのとき裁判長は、その防護標章制度をもってくるまでもなく、これは極めて明白な著名商標ですねと言われた記憶があります。それぐらいで、本当に現実にどこで使うかということだと思いますが、前にやはり商標法の改正のときに、この防護標章制度をどうしようかという議論を一度したことがあります。何年か前です。
そのときに、業界の方が一番言われたのは、水際措置のときに、これは権利があるので利用できるということだったのです。しかし、いろいろ税関から出す資料を見ていましても、防護標章だからというような、それは区別しているのかしてないのかちょっとわかり
ませんけれども、そういうことを強調している記事というのは読んだことがありませんし、
先ほどのお話ですと、水際でも使われていない。積み戻しでも使ってないのだろうと思います。それは人のことだから別としますが。
それから、今の防護標章制度は同一だけで類似の方がないから使い勝手が悪いということですが、逆に類似というのが現実には混同まで広げて考えられているわけですから、10年間で固定する防護標章制度を拡大するということは、私としては危険が大きいだろうと思います。
そこで結局どうやって著名商標の保護の方策を考えるかということですが、不正競争防止法と、先ほどから出ている商標法と2つあると思います。考え方としては、不正競争防止法、競争秩序の維持ですけれども、2条1項の1号、2号でいいと思いますが、あすこで例えばここに出ています広く知られたというところを登録ということに置きかえて考えればいいので、やはり「混同」という問題をもってくる。あるいは今の不正競争防止法の2号の方の著名商品表示の保護については、要件がはっきりしないといういろいろな批判もありますので、これはできるならば、商標権としての著名商標、登録商標の著名商標の保護ということで、要件を考え直した方がいいと思います。
そこで、その場合には、今の商標法の37条の1号を、不正競争防止法の2条1項の1号と並べて考えて、「混同」ということで捉えるようにする。
それから、2号の方の37条の2項以下は、非常に混乱している規定なので、使用との関係ではずす、別のところへもっていく。ここの後に稀釈化とか汚染行為、あるいはフリーライドを考えたもう1つの規定を置く。そういうふうにして37条でまとめて整理するというような方向で考えたらいいと思います。
それから、刑事罰ですが、刑事罰は確かに商標法と不正競争防止法とは違います。商標法の方には、不正の目的というのがないということなんですけれども、刑事罰で使う、当然故意があるわけで、その故意というのは何かということになりますと、不正競争の目的化、あるいは不正の目的、どっちかであるはずで、その点では、主観的要件が
ある、ないということは大きな問題ではないと思います。しかし、5年と500万でしたか、
商標権の方が重くなっておりますが、登録という公知手段があるので重くてもいいというふうに見るのが1つの方法。
それから、かねて37条で間接侵害が一般に広く刑事罰を認めていることについて問題があるという議論もあります。したがいまして、そこを考えて、今の3年300万という不正競争防止法と同じように下げるということも考えられるかと思います。
以上です。

土肥委員長

ありがとうございました。きょうは高部委員が最初の御発言なものですから、順番が若干おくれたのですけれども、高部委員、お願いいたします。

高部委員

防護標章につきましては、訴訟で余り経験はしないのですけれども、不競法2条1項2号の事件では、著名性を立証するための証拠として出てきております。ただ、先ほど松尾委員がおっしゃったように、それだけで決まるわけではないし、むしろ著名性の判断の基準時などを考えますと、それも1つの間接的な事実に過ぎないということで、防護標章を登録しているという証拠が出たからといって、それで著名性が決まるわけではありません。もっとも、それによって希釈化防止のために商標権者が一定の努力をしてブランドを維持しているということは窺えるわけです。
それから、4条1項15号で登録を排除できるかどうかという場面で、もし著名な商標が防護標章として登録されていれば、それが拒絶で使われるとおっしゃった委員がありましたが、これは著名なものであれば、登録されていようといまいと、恐らく15号での判断基準の1つになっていると思いますので、それも絶対的なものとはいえないでしょう。
そうしますと、防護標章制度の存在意義というのは、非常に乏しいと思いますし、逆にあらゆる商品分野で防護標章を登録するということになれば、商標権者の方の負担も、経済的なものも含めて大きくなるといった心配もあるのではないかと思います。
そのような商標権者の方の利害得失と、それから行政効率ということは考えなければいけないと思います。
ですから、産業界でどうしてもということでなければ、私自身は、これは廃止をされても余りに大きな痛手にはならないと思います。
著名商標の保護の在り方として、今、禁止権の範囲を広げるというお話がございました。それ自体には私、特に異論はないのですけれども、やはり不正競争防止法とのすみ分けがどうなるのか、著名な登録商標については、すべて二重に、不正競争防止法でも、かつ商標法でも二重に保護されるという形になるのかというところの整理が必要なのではないかと思います。
とりあえず以上です。

土肥委員長

ありがとうございました。
松尾委員もおっしゃったし、高部委員もおっしゃったのですけれども、不競法と著名商標の商標法による保護との関係があるのですけれども、古関委員はその点をおっしゃりたいということですか、その点ではないのですか。

古関委員

違います。

土肥委員長

もし松尾委員、高部委員のおっしゃった不競法、商標法との関係ということになりますと、これはのところの議論にもつながる話になるのです。それで少しそこの点について御意見をいただきたいと思うのですけれども、竹田委員もおっしゃったと思いますけれども、商標制度というのは信用の維持である。不競法というのは競争秩序の維持であるというようにおっしゃっておられますし、恐らく商標というのは、商標に期待された信用、そこを保護するということだろうと思うのですけれども、不競法はどちらかといえば行為規制ですから、行為者の行為に悪性なり不正があるかないかという点が問題になる。だからそれはそれぞれの法律は、それぞれ謙抑性を持つべきだろうと思いますので、行為規正法としての不競法がどこまでできるか。それから信用を保護する商標制度がどこまで著名商標の信用を保護できるかという観点で併存はできるのではないかと思うのですけれども、この点いかがでございましょうか。

竹田委員

今の点に関連して、さっき、水際措置の問題が出たのでちょっと意見を述べておきますと、現行の関税定率法では、輸入禁制品に商標権侵害品は入っていますけれども、不正競争行為に該当する物品というのはないわけです。ですから、今度、知財戦略本部の組織基盤専門調査会で報告書を出しますけれども、その中では、不正競争行為を輸入禁制品にすべきだという意見もあるのですが、不正競争行為と知的財産権の侵害とは制度的に違うのだという意識が非常に強くて、簡単にそこにはいかないだろうと思います。そういうところを具体的に見ていけば、先ほど高部委員が言われたような、不競法にあって、なおかつ商標法にもそれが37条の拡大によって著名・周知商標の保護を入れるということの必要性というのは、ほかの部分でも出てくるのではないかと感じましたので、その点をちょっとつけ加えておきます。

土肥委員長

ありがとうございました。
ほかにございませんでしょうか。

三宅委員

大筋、今、おっしゃったような方向なんですが、やはり私どもとしましては、
商標を使用するものの信用を、これを正面から保護しようとする商標法の中で、今回のこの小委員会の立ち上げの趣旨に適った、競争力のあるブランドをいかに保護するかという視点で、もちろん余り権利を強くするのも問題だということは認識しておりますが、ぜひその方向で正面から保護を手厚くしていただきたいと思います。
不正競争防止法は、あくまでもおっしゃいましたような趣旨でございますし、保護の対象としましても、商標はいろいろある中の1つに過ぎないわけですから、どちらかというと、そちらに任せるということではなく、本質を正面からとらえて、商標法の中で可能な限り保護を手厚くするというような方向で議論していただければと思っています。

土肥委員長

私もそういう趣旨で話させていただいたわけです。信用を保護するというのであれば、それは商標法できちんと書くべきだというふうに思っておりまして、それは同じ意見でございます。
ほかにございますでしょうか。

古関委員

話を戻してよろしいですか。水際でしつこくで申しわけありません。水際についてもうちょっと話をさせてください。
なぜ水際で防護が使われていないのかという理由です。これはいわゆる使用していない商品についてまで商標登録を持っている。それによって差し止めができるから防護は使われていないのです。つまり不使用商標を奨励するのと同じような状態が今、継続している状態にあるということを認識していただきたい。逆にいえば、著名商標をもとにして、非類似商品にまで差し止めができるような制度があれば、これはそれで、その方が商標としては有効な制度といえるのではないでしょうか。多分お調べになっていただければわかるとおり、使っていない商標登録に基づいて差し止め請求をしているのがほとんどなはずです。
それともう1点、松尾委員から期間の問題を10年間、固定化されるのはいかがなものかという話がありました。私も同感です。これは10年間、固定化されるのではなく、常にどの範囲で著名性について、いつでも争えるような状況にしておけばいいという考えは持っています。
その2点だけです。

土肥委員長

防護標章の中でも。

古関委員

はい。

土肥委員長

わかりました。
それでは、よろしゅうございますか。

事務局説明「これまでの議論のまとめ」

土肥委員長

実はこの後、もう1つ議題がございまして、何かといいますと、資料2の方で、これまでの議論のまとめというのがあると思いますけれども、これについても、一応ステージが1回、回っており、1回、議論が一巡しておりますので、事務局でこれまでの議論をまとめたものでございます。
これに関しまして、残りの時間で確認をさせていただくといいますか、方向性を確認させていただければと思っております。
それでは、お願いいたします。

木村審議室長

では資料2をごらんいただけますでしょうか。
これまでの議論のまとめということで、とりまとめとか、そういうことではございませんが、とりあえず、まず第1ステージと申しますか、そういう議論が一巡したということで、これまでのいただいた議論というものをまとめてストックテークをしておきたいというふうに考えております。
幾つかの論点を分けて記載しておりますけれども、まず順番に申しますと、第2回の小委員会で御議論になりました商標の定義でございます。これについては、識別性が商標の要素であるので、それを明確に規定すべきではないかという、そういう方向からの議論。
それから音、匂い、単色のような標識も対象から排除しないことについてどうかということが主な議論のテーマだったと思います。そして、識別性を明確に規定するということについては大方の御賛同が得られた。もちろん、ご意見の中には、ぜひ、というお立場、それから、困ってないけれども、書くならばその方がベターだというような、温度差はあるのだろうと思いますけれども、大方の御賛同が得られていると承知をしております。
そういう識別性を考えつつも、匂いですとか、音ですとか単色、こういうものも、国内には余りニーズはないけれども、マドプロ等のことも考えると、それの平仄をとる意味でやはり、少なくとも制度的には排除しない仕組みをつくったどうかというような御指摘があったと思いますので、(2)にそういう趣旨でまとめております。
それから、できるだけ簡潔に御説明をしたいのですけれども、商標の使用の定義について第2回でやはり行いまして、問題意識といたしましては、使用の定義が非常に詳細、余りにも細かくて理解ができない。あるいは確信を持ってこれにあたっているということがなかなかいえないというような、そういう御批判があるわけでございますし、それから、権利者の行為と侵害者の行為というのは、同じ使用でも違う使用なんではないかというようなことだろうと思います。
それで2ページでございますが、論点といたしましては、総則で今、統一的に定義しておりますけれども、それをやめるかどうか。それから、行為内容をより包括的に規定するか。それから、音声の表現というものが使用に該当してないのですけれども、それを含めるかどうかといった御議論がございましたので、これについては、少なくとも、もちろん包括的な規定ぶりにすることによって広がり過ぎるのもまた問題だけれども、やはり検討はする価値が十分あるのではないかということだったと思いますし、それから、使用の定義としてではなく、侵害行為として規定する方が適切ではないかという御意見もいただいております。
それから、少なくとも音声の使用というのは、使用の範囲に入れるべきということについて、これについては御異論はなかったように承知をしております。
それから小売業・卸売業のサービスマークとしての保護の問題、これは第4回の小委員会で取り扱いましたけれども、ここでは要は、ブランドとして定着をしており、かつ接客ですとか、陳列ですとか、品揃えですとか、こうしたことは主として小売に該当するのかもしれませんが、そういうものについて信用が蓄積しているので、それをそういうものとして残してほしいという御要望が一番、ここの主たるテーマでございますが、これにつきましては、認めること自体につきまして、まずどう考えるか。認めるとした場合に、実際問題、具体的内容、あるいは審査、審判の在り方、サーチの在り方、そういうものについてどうするかということで御議論をいただきまして、基本的な方向性については恐らく御異論はなかろうということでございます。
ただ、具体的な実施にあたっては、例えば単品だけを扱う小売の方、あるいは総合小売、どういうふうに区別すべきなのか。あるいは一緒にすべきかということで議論がございましたし、それから具体的な審査の在り方、クロス・サーチを行うのかどうか。その辺のこと。
それから、法改正をせずに運用でやるということについては、単なる運用の問題ではないだろうということで御指摘もございましたので、こういった諸点については、引き続き検討を深めていく必要があるのではないかというふうに理解をしております。
それから、3ページでございますが、侵害行為の範囲でございますが、これはやはり条文として非常に複雑であるということ、それから、やはり行為を包括的に規定すべきではないかという問題意識、それから輸出を加えてはどうかというような議論があったと思います。
それで使用との関係で、ここも議論をされたわけでございますが、小委員会における御意見としては、使用の定義、あるいはみなし侵害の規定というのは、一応整理学としてはそれなりに考え抜かれたものになってきているので、その経緯を踏まえる必要があるけれども、検討はするのはいいのではないかということだろうと思います。ただ、包括的な規定ぶりになりますと、やはり過度に対象が広くなり過ぎる。あるいは、漏れがあってはいかんというようなことで、なかなかその辺、難しいのではないかというような御指摘もあったと思います。
それから、輸出についても賛否が分かれたように記憶をしておりまして、これによって商標の本質が変わってしまうのではないか。あるいは海外にOEMで出すような場合に、相手先ブランドをつけるというようなことが、例えば日本の商標法に抵触してしまうというようなことでは、それが商標法本来の趣旨なのかというような御議論もあった反面、ボーダレス社会の中で、やはり輸出行為というのも市場はグローバルなのだから、そういうものを規制の対象にするのは妥当なのではないかという御意見もあったと思います。
それから、4ページでございますが、「類似」と「混同を生ずるおそれ」、今回の議論にもからみますが、やはり商標が商品、役務の出所表示機能を有するものであるということと、それから商標の動態的な変化の特徴にかんがみますと、類似という概念よりも、実際、裁判例等を見ましても、「混同を生ずるおそれ」があるかどうかということが判断の中心になっているというような分析のもとに、「混同を生ずるおそれ」という概念をむしろ中心に規定するということがあり得るのではないかということで検討したわけでございます。
審査の場面、それから、侵害の場面、これが中心になるということで、論点にはそういうことで分けて書いてございますが、小委員会におきましては、類似は確かに混同を生ずるおそれというのが前提になっているのではないかということ。それから、侵害の場面では、「混同」または「混同を生ずるおそれ」があるかどうかで判断をすべきではないかという御意見がありましたし、他方で、やはり類似の概念は登録主義の観点から必要だし、現在の審査がそれほどおかしいものだとも思えないというような御指摘もあったと思います。
それから、著名商標の保護、これは第1回小委員会であった議論をここには書いてございます。これはきょう、まさに御議論いただいたポイントでございますので、大筋は省略させていただきますけれども、第1回の小委員会で出た御意見がここには意見としてまとめてございますけれども、本日の意見も踏まえまして、もちろん引き続き検討していくということになると思います。
それから、6ページでございますが、商標制度の枠組みといたしまして、1つは拒絶理由の概念整理、3条と4条の書き分けが必ずしもうまく整理されていないのではないか。絶対的拒絶理由と相対的拒絶理由の規定ぶりが今、混在しているので、その辺の整理が必要かどうかというような議論でございまして、それはそうするなら、それはそれでいいのではないかということと、ただ、一部にはどちらかに属するのかはっきりしないものもあるねというような御意見もあったと思います。
それから、審査の在り方でございますけれども、これは冒頭で申し上げたところにおおむね尽きておりますので詳細は省略いたしますが、いずれにしても異議待ち審査につきましては、かなり強い御批判があったということと、もちろんそれは評価できるという御意見、それから部分的にそれを導入をするという考え方もあり得るのではないかという御紹介等もあったというふうに理解をしております。
それから、コンセント制度でございますが、これは当然異議待ち審査にするかしないかということと大きく関わるわけでございますけれども、これについても、完全コンセントとするのか、あるいはそうでないのか、導入するにしても、幾つかの選択肢があるわけでございますけれども、この委員会における御意見としては、やはり現在の手段、そもそも移転そのものはできるわけだから、当然コンセントがあれば、もういろんなことをやってないで正面から認めるべきだという御意見がまずあって、その場合には、一切審査をしない。たしか異議とか無効審判まで排除するというような御意見もあったと思いますけれども、結局困るのは事業者なんだから、事業者に任せておいて大丈夫だというお考えの御意見が強く出された一方で、これにつきましては、やはり最終需要者の「混同のおそれ」というものを全くみないというのはやはりいかがなものかということで慎重論が出されたように記憶をしております。
それから、不使用商標対策でございますけれども、これは異議待ち審査とややセットで議論されておりますが、これも冒頭、御説明を申し上げたことでございますので詳細を省略させていただきますけれども、やはり使用商標の対策としては、それはやはり効果があり得る、それから、実際問題として使用商標対策に取り組んでいく必要があるんだということについてはおおむね御理解は得られているというふうに思います。
ただ、実際問題として、侵害訴訟の場面では、余り実益がないという、むしろ別の理論構成で同じことがやれるのではないかというような御意見がありましたし、それから、これも冒頭申し上げましたけれども、みなし放棄でございますとか、使用証明でございますとか、そういう御指摘もあったわけでございまして、この辺も今後、検討の素材になり得るというふうに思っております。
それから、団体商標でございますけれども、これは第4回でございますが、いわゆる地域ブランドなどをどういうふうに保護していくかということで、現在の団体商標制度は、権利者の対象が限定されておりますし、通常の商標と同じ審査基準になっているということで必ずしも使い勝手がこれもよくないということでございます。
したがって、権利主体の拡大、それから、第三者に商標の使用を開放するというような制度につきましてどうかということでございます。主体的要件については、現在、公益法人に限定しているので、これを拡大するということはいいでしょうという御意見だったと思います。法人に限定しないというところまでいくかどうかというのは、これはやはり権利能力の主体ということで難しいというような議論もございましたけれども、御意見としてはあったということでございますし。
それから商標法3条2項の識別性に関する運用を改善することで対応が可能だとする御意見、それから、やはり制度の国際調和を目指していくべきであるということで、前向きな御意見ということだと思いますけれども、そういう御意見もございました。
それから、やはり慎重な検討といいますか、実際問題、識別力を有する商標を保護するという商標法の目的、あるいは不正競争防止法等も勘案するならば、今すぐここまでやる必要があるのかという御意見もあったわけでございます。
以上がこれまでの行ってまいりました議論のまとめでございまして、もちろんこれに御指摘は尽きないわけでございますけれども、大きなところを大づかみでまとめさせていただくとこういうことだろうと考えています。
今後はこれをさらに個々のテーマごとに順次深掘りをしていって、最終的には制度論に落とし込んでいくという作業が必要になるわけでございます。
ちなみに10ページ以降に4つ項目が出ておりまして、これは今まで議題としてテーマにあげなかったわけなんですけれども、各方面から、以下に掲げる事項については検討すべきだという御指摘をいただいている項目でございます。これを加えるかどうかをお諮り申し上げたいということでございます。
1つは個人輸入の規制をやるべしという御意見が、各方面から指摘としてはあるということでございまして、商標法は、個人による「業として」の輸入と認められる行為というのは、商標の使用に該当しないということで、侵害行為にはあたらないというふうにされております。これについて模倣品対策をとにかく今、国をあげて強化しなければいけないということになっておりますので、個人による輸入は「業として」の輸入とは認められないが、そういう行為であっても、何らかの規制を講じるべきではないかという考え方でございまして、これを商標法で手当をするということになりますと、かなり大きな話になり得るわけなんですけれども、そもそもそういうものを権利侵害行為とするべきなのかどうか。少なくとも商標法の世界でそういうことが妥当なのかどうかという問題。
それから、そういう輸入行為があった場合に、それは模倣品を没収するということになり得るわけでございますけれども、それについてどう考えるかというようなことでございます。
これは商標法の体系そのものに影響を及ぼす可能性もございますので、その辺も含めて
御議論を今後していただくということについていかがでしょうかということでございます。
それから2で「直接侵害行為」と「侵害とみなす行為」の整理というのがございます。きょうもまさに御議論を席上でもいただいたわけでございます。使用の定義、あるいは侵害行為の範囲といったものともリンクをしておりますけれども、現在の37条の規定ぶりがやはり必ずしも十分妥当なものではないのではないかという考え方に立ちまして、25条と37条を全体をきれいにするといいますか、そういうことについて議論を合わせてしてはいかがでしょうかということでございます。
11ページでございますが、商標登録無効審判につきましては、現在、5年の除斥期間が置かれているということでございまして、それにつきまして、やはり不適切な商標登録を排除するためには、除斥期間というのは妥当でない。そういうものは取り除くべきだという御指摘があり得るわけでございます。したがいまして、これにつきましても、商標登録無効審判の除斥期間を廃止することについてそもそもどう考えるか。
それから、現在、審査の当時におきまして、普通名称ですが、品質表示である商標を誤って登録した場合、あるいは登録後にそういうものになったような場合は、権利行使が26条で制限をされているわけですけれども、それに満足するのか、あるいはそういうものにつきましては、取り消しができるような審判制度というものを導入するというのも一案だろうということで、この辺を論点としては掲げさせていただいて、検討の是非についてお伺いをしたいというふうに考えております。
それから、権利不要求制度、ディスクレイマーというのがございます。これは単なる品質の表示と識別力のあるハウスマークを結合させたような、そういう商標で、識別力のある部分とない部分が合体をしているわけでございます。この場合に、識別力のない部分につきましては、権利の主張ができない。独占権を主張しないということを前提に、それを条件に商標登録をお認めするというような制度があり得るわけでございまして、これにつきましては、当然、どこが識別力があって、どこが識別力がないというようなことを個別にすべて判断するということになりますと、審査の実務に対する影響というのはかなり深刻なものが実はあるのだろうと思うのですけれども、こういうものが本当に必要なのかどうかということについて、外からの御指摘もございますので、検討の素材としてはあり得るということで、ここでは書かせていただいております。
御説明としては以上でございます。

土肥委員長

ありがとうございました。
これまでの議論のまとめとして、前半の部分、9ページまで、これはここでの議論を論点、それから意見、それを並べておるものでございます。
10ページのところはその他ということで4つあるのですけれども、これも全くこの委員会の中で出なかったものもあるのですけれども、除斥期間の話とか、侵害行為に関する規定の在り方あたり、これは出たような気もするのですけれども、除斥期間なんかはおっしゃっておられますね。ですから、少しこの4つの点についていろいろ従来の議論の経過の中に出たようなものもあり、そうでないものもある。こういうことでございます。
これは取り扱いとしては、どういうことになりましょうか。これはこのまま議論のまとめとしてとっておいて、例えば中間報告とか、あるいは特許庁のホームページに出るようなものではないということですか。

木村審議室長

審議会における資料の一部としては当然公開はいたしますが、これが何らかのいわゆる報告めいた、「とりまとめ」というような性質のものではございません。
したがって、ある意味では、これまでの議論というものを一たん整理をして、これをもとに、さらにどのように、今後、具体的な制度設計なり、当然コンセンサスがまだ得られていないところがかなりございますので、そこについては議論を深めていくのか、そうした作業をする1つの手がかりとして位置づけたものでございます。

土肥委員長

10ページ、11ページも含めて。

木村審議室長

10ページ、11ページにつきましては、これまで少なくとも正面からは議論をしていない論点でございますので、本審議会の最終的なとりまとめがいつになるのか、
ことしの末か来年になると思いますけれども、そういう時期にとりまとめるまでに、これらについても合わせて御検討いただいて、最終報告の中には盛り込むということについて、どのようにお考えでしょうかということでございます。

自由討議

土肥委員長

2つあって、今、おっしゃった後の方の10ページ、11ページについて、我々、今後、議論の対象にしてよろしいかどうかお諮りをしたいと思うのですけれども、これ、御意見ございますか。

竹田委員

先ほど申しました知財戦略本部の専門調査会でも、この10ページの個人輸入の規制のところでの模倣品の輸入を「業として」なさない場合でも、これを規制の対象とするための立法措置を講ずることを検討すべきであるということで報告書は出ると思うのですが、その関連でいえば、商標法の改正か、関税定率法の改正かという問題になるのですけれども、そこで10ページの論点1について質問したいのですが、この1の方は、「業として」行ってない場合でも権利侵害行為とすることをどう考えるか、これはまさに商標法の改正の問題ですね。2の方で、個人による「業として」行っているとは認められない模倣品の輸入があった場合、これを権利侵害行為とするのでなく、模倣品を没収するとなっていますけれども、これはどういう趣旨なんでしょうか。商標法でそういうことを規定することは可能と考えての論点なのか。それともそれは1を問わないのであれば、関税定率法の改正によるべきであるということの意見になるのでしょうか。そこをちょっと質問したいのですけれども。

木村審議室長

商標法の体系に(2)のようなものがなじむかどうかというのがちょっと正直申し上げて自信はないし、やや違和感があるということだろうとは思います。それでただ、この場でぜひ御議論、もしこれがテーマとしてふさわしいということであれば御議論いただきたいのは、少なくとも商標法の体系で仮に措置するとしたらどのようなやり方があって、やはりそれはやるべきなのか、やるべきでないのか。ただ、その場合は、やるとしたら体系上、こういう位置づけにすべきではないかというようなことについては御議論をいただきたいと思っております。
それはやはり商標法の体系を大きく崩すことになるので妥当でないということであれば、
そういう結論が最終的に政府として受入れ可能なものかどうかというのはちょっとまた別なところもあるんですけれども、そういう議論になればなったで、それはそれで1つの貴重な御意見として考えていきたいというふうには思います。
商標法ではなくむしろ関税定率法でやるべきというようなことをここで審議し、かつ決をとるというのが妥当かどうか、すみません、よくわからないところです。

土肥委員長

いずれにしても、竹田委員が言われたように、戦略本部、そういうようなところで検討するようにと求めてこられておりますので、かかる場合に、検討しないとはいえないことだと思います。

木村審議室長

全くやらないということは申し上げられないということです。

土肥委員長

わかりました。

松尾委員

私は今の点でちょっと質問したいのですが、個人輸入を止めたい、違法にしたいというねらいは何かなというのが実は考えるとよくわからないのです。個人でもとにかくいいんだと思っていたら違法行為が止まらないんだから、個人でもだめだよというところまでするのか。だから全体の水際措置というか、模倣品対策の一環としてやる。それにしてはちょっとみみっちいな、商標法の体系をいじるまでやる必要があるのかな。そこら辺の根拠がわからないので、それをちょっと竹田委員から教えていただきたいと思います。

土肥委員長

では竹田委員、お願いいたします。

竹田委員

私が答弁できるかどうかはなはだ心もとないのですけれども、産業界からは非常な強い要望があって、結局輸入仲介業者が入っているような場合でも、個人の名前で全部輸入されたりすると、個人としてなされている以上、「業として」でないから商標権侵害行為に当たらない。そういうものがみんなスルーパスしてしまう。その辺を何とかしないと、模倣品対策が不十分になって、結局は我が国に模倣品が氾濫することのもとになるんだ。そういう強い認識が産業界にあって、そういう要請が出ていることは事実です。
それと先ほどの専門調査会の報告書は、多分過失行為まで含めていいのかということは非常に大きな商標法の問題としては、業要件の問題のほかにも、過失の場合に、個人が模倣品を真正品だと思って買ったような場合まで規制するのは、これはまた大問題ということで、模倣品であることを知って個人がこういう行為をした場合ということについて立法的措置を講ずべきかどうかを検討すべきであるという形になっていると思います。

松尾委員

そうだったら私は必要ないと思います。
つまり3個もってきたか、50個もってきたかで「業として」、これは法律の解釈の問題で解決すればいいのではないかと思います。

土肥委員長

一応そういう御意見があったということで。
高部委員、今、御発言あろうと思いますけれども。

高部委員

模倣品といいますと、別に商標法に限らないと思うのですけれども、他の知
的財産権の関係では何か別途の検討が行われているのでしょうか。

土肥委員長

また、竹田委員、お願いいたします。

竹田委員

それこそ私は答える資格がないように思いますけれども、ともかく、知財戦略本部での意見としては、商標法か関税定率法ということで、関税定率法で商標権侵害行為でないものについてまで含めるのは非常に反対が強くて、反対が強いというのは、財務省当局の御意見は、そういう方向での関税定率法の改正というのははなはだ困難であるという意見ですので、結局は商標法でできなければ、この問題は解決できないというか、結局個人の名前で行われる模倣品の輸入については、対策が具体的に講じられないことになる、そういう意味での立法措置の検討ということだろうと思いますけれども。

木村審議室長

関税定率法でできなくて、だから商標法でというのは理屈のある話なのかどうかはわかりませんが、ただ、いずれにしても、球が投げられれば、委員の皆様には申しわけないのですけれども、やはり検討すらしないというのは恐らくちょっと難しいというように思うし、それから、実際問題、今、竹田委員のおっしゃったように、産業界からのやはり強い御要望があるということであれば、そこは何がしかの検討をした上で、どこまでならできる、何ができないというようなことについての意見の整理ということをしていくのは、もちろんこの場でコンセンサスができるようなテーマかどうかわかりませんけれども、それは我々の希望としては、議論はさせていただければありがたい。
若干結論めいたものが既に述べられているようなところがございますけれども、検討は全くしないというわけにもなかなかいかないというのも正直なところ、我々の実情としてはございますので、その辺、ちょっとよろしく御賢察いただければありがたいと思います。

高部委員

検討すること自体はよろしいのではないですか。

土肥委員長

わかりました。
その他のところの1.2.3.4.の4つの点について、今後、時期をみて検討するという方向でよろしいですね。
わかりました。

松尾委員

10ページの2.のところなんですけれども、「直接侵害行為」と「侵害とみなす行為」の整理、これは大いに賛成なんですが、25条を直接侵害行為というふうに読むことについては私はちょっと疑問を持っています。これは商標権の効力の規定で、周りに商標権の効力が及ばない範囲とか、移転とか、使用権とか、そういうのがありますので、(これは私も25条をどうしたらいいかと考えていましたけれども、)やはりこういう規定は必要は必要なんですね。それよりも37条か36条、36条の方が、今の25条を受けて直接侵害になって、37条がみなし侵害です。ここの36と37の整理、それから37条の2号以下の整理、そういうのが必要ではないかなと思います。
それからもう1つ、除斥期間の関係なんですが、これは確かに議論はあったかもしれませんが、これが除斥期間がきいているところときいてないところと、条文によって、何でこれはこっちの方がきかないのかなというバランスがとれてないように思いますので、そこら辺はよく検討していただきたいと思います。
それから、ディスクレイマーですが、これはいつも弁理士さんたちがおっしゃるのですね。私は外国出願なんかちょっとやっておりますと、国によって、この文字をディスクレイムしろというところが違ってくるのですね。そういうことでディスクレイマーというのはいいようでありながら、権利放棄のところをどういうふうにとらえるかということで非常に議論が多いなというふうに感じております。
以上です。

土肥委員長

この最後のディスクレイマーに関して大泉委員、何かありますか。

大泉委員

食品の業界ですと、特にこの話題がよく出まして、登録商標が時間の経過によって識別性がなくなってしまうこともありますし、審査時にその関係資料が入手困難であるために識別性のないような商標が登録になってしまうこともございます。
ですから、そういう問題を解決する手段の1つとして、ディスクレイマーについてあった方がいいのではないかという意見があります。これについて検討することについては非常にいいことだと思うのですけれども、この制度の導入だけではなくて、無効審判、それから26条の商標権の及ばない範囲の点、ほかの部分でも識別性のない商標について対応することが可能な条項があると思いますので、その制度導入しない場合でも、ほかの部分の検討もしていただいて、この識別性のない商標についての対応策というのを検討していただきたいと思います。
以上です。

土肥委員長

わかりました。
そういうことで、その他の部分については、今後、時期を見て検討をするということでまとめさせていただきます。
それでは、その前の方、これまでの議論をまとめておるわけですけれども、ここの部分で何か御意見ございますでしょうか。
基本的には積極、消極、広く取り入れて書いてあるのだろうと思うのですけれども、もう昔の話で、こんなことあったかなというようなこともあるのですけれども、どうぞ御意見がありましたらおっしゃっていただければと思います。

松尾委員

意見ではないのですが、ちょっと自分で勉強していますと、地理的表示の保護というのと、この団体商標制度、あるいは証明商標制度と密接な関係があるのだと思いますが、そこら辺がまだ余り十分検討してないように思いますので、今後、ぜひお願いしたいと思います。

土肥委員長

おっしゃるように、団体商標はほとんど時間をかけて議論しておりませんので、そのように今後させていただきます。
ほかにございますでしょうか。

古関委員

4ページ目の著名商標の、きょうの議論ともからむのですけれども、これは弁理士会の商標委員会の中で出た議論なんですが、ただ、この委員会でも多分意見が一部出ていたように記憶しているのですが、普通名称化防止策、辞書等への要求というのでしょうか、ヨーロッパ商標規則の10条だったと思いますが、ああいうような規定を盛り込むことも1つ議論にあったと思いますし、今後、もし議論するのであれば、議論の余地があるのかどうかわかりませんが、入れていただきたいと思います。

土肥委員長

よろしいですね、今後の話ですね。これまでのとりまとめに関してはよろしいということですね。
第1回の著名商標の保護及び、きょうの議論はこの上に入ってくることになりますけれども。
大体この委員会は時間までぎりぎりいっぱいやっているのですけれども、もしないようであれば、閉じさせていただきますけれども。

松尾委員

今後どうなるのですか。

土肥委員長

もちろんそれは申し上げますけれども、もし実質的な審議の方についてはよろしいですか。
それでは、今後、どうなるのかということに入ってよろしゅうございますか。
今後のことについて申し上げますけれども、本日の著名商標の討議までで本小委員会設立の当初に検討すべきこととされた議題についてはひととおり議論が行われたことになります。その中には大体の方向性が得られたのもありましたし、そうでなくて、もっと引き続き基本的な検討を求められたものもそれぞれあったわけでございます。
今後は二巡目の議論に入るということになりますので、今後の議論の進め方につきまして、事務局から説明をしていただきたいと思います。

木村審議室長

御説明といってもそれほど具体的なものがまだないのですけれども、今後、もう基本的にはテーマごとに順次深掘りをしていく検討作業を続けていきたいと思います。まさに委員長がおっしゃられたように、二巡目の検討ということでございます。
そこではできるだけ、前回だったと思いますけれども、たしか条文のイメージみたいなものも含めて、もちろん条文そのものについて、こうだということまでお示しするというのはなかなか難しいのかもしれませんけれども、その制度の具体的な在り方についても具体的な素材として御提供申し上げて、その上でコンセンサスがないところについてはコンセンサスをとっていく。具体的な制度設計に入れるところはそれに入っていただくということで御審議をいただければありがたいというふうに思っておりまして、それを恐らくテーマごとに幾つか当然切り出していかなければいけないと思いますので、それを順次ローリングさせていくような形でやらせていただければと思っております。
次回の日程でございますけれども、ちょうど時期があれなんですけれども、もし早ければ来月末あたりに一度開催をさせていただく方向で、また日程の調整は別途させていただければと思っています。

土肥委員長

それで松尾委員の御質問にあるのは、要するに二巡目の検討をするんだけれども、本来、この委員会が立ち上がったのは、戦略大綱とか推進計画で、2005年度末までに検討をして結論を得るとか、そういうようなところから始まっているわけですね。そうすると今2004年ですから、2005年というのはもう1年先があるわけですね。そうすると二巡目が終わって三巡目があるということもあり得るのでしょうか。

木村審議室長

それは確かに絶対に否定することはできないと思うのですけれども、ただ、検討そのものとしてはおおむね2年間、やっていただければ、もうそれでかなり格好はつくのではないか。少なくともそれぐらいで格好をつけるぐらいの形ではやりたいと思います。
したがって、ちょっと終期をいつにするかということを予測するのはなかなか難しいのですけれども、例えば通常の審議会等のペースでいきますと、ことしの末ですとか来年の早いタイミングというような形で最終とりまとめをしていただいて、ただ、その結果相当規模の改正等につながるということでございますと、その後、改正作業に着手をして、さらに次の通常国会に恐らくなると思うのですけれども、それに提出することを目指すというのが我々の今、考えている、非常に雑駁ですけれども、青写真でございます。

土肥委員長

松尾委員、よろしゅうございますか。

松尾委員

はい。

土肥委員長

他の委員の方で、今後の進め方について何か質問、御意見等ございましたらこの際、お出しいただければと思いますが。

三宅委員

今の委員の任期は辞令上、6月24日までとなっていると思うのですが。

木村審議室長

延長させていただきます。御異存がなければぜひ延長させていただきたいと思うのですけれども、それぞれ個別の御事情等ございましたら、それは個別にお伺いさせていただきます。

土肥委員長

ぜひよろしくお願いいたします。
よろしゅうございますか。
それでは、11時46分でございますけれども、はじめてでございますが、時間前に閉じさせていただきます。
どうもありがとうございました。
以上をもちまして産業構造審議会知的財産政策部会第6回商標制度小委員会を閉会させていただきます。
本日はどうもありがとうございました。

閉会

[更新日 2004年6月18日]

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