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第8回商標制度小委員会 議事録

  1. 日時:平成16年9月14日(火曜日)15時00分~17時10分
  2. 場所:特許庁 特別会議室
  3. 出席委員:土肥委員長、小塚委員、琴寄委員、鈴木委員、高部委員、竹田委員、田村委員、西野入委員、萬歳委員代理(白石氏)、松尾委員、本宮委員、山中委員
  4. 議題:模倣品の個人使用目的の輸入及び所持について、及び税関におけるマーク切除後の商品の輸入について

開会

土肥委員長

それでは、時計が定刻を示しておりますので、ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会第8回商標制度小委員会を開催いたします。
前回は、個人使用目的の模倣品の輸入及び所持についての検討と、ブランド戦略から見た商標制度の検討課題に関する関係団体の意見の発表を行っていただき、それぞれ御審議をいただき、さまざまな御意見をちょうだいしたところでございます。
本日は、まずフランス公益社団法人ユニオン・デ・ファブレカンより、「模倣品被害の現状」につきましてプレゼンテーションを行っていただき、その後、事務局より再度、「模倣品の個人使用目的の輸入及び所持」、「税関におけるマーク切除後の商品の輸入について」の説明をしていただいた上で、それぞれの検討課題につきまして議論を行っていただきたいと思います。
それではまず、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

花木審議室長

それでは、配付資料を確認させていただきます。お手元にクリップどめでとじてあると思うんですが、本日の議事次第と配付資料一覧の紙が表にございます。その次に委員名簿がございまして、その後ろに、資料1ということで本日の検討の素材が用意してございます。タイトルは「模倣品の個人使用目的の輸入及び所持について」と、それから「税関におけるマーク切除後の商品の輸入について」というこの2点でございます。
それから、次に資料2といたしまして、先ほど委員長の方からお話がございました、ユニオン・デ・ファブリカンの方からのプレゼンテーションの資料をお配りさせていただいております。
その後ろは参考資料でございまして、前回の資料の焼き直しといいますか、同じものでございますが、個人輸入について諸外国でどう対応しているかという状況が参考資料1、それから、参考資料2といたしまして、先日8月に内閣府の方で知的財産に関する特別世論調査が行われましたので、新聞等で報道されているかと思いますが、その結果をお配りさせていただいております。
それから、続きまして参考資料3ということで、模倣品の販売実態、こちらは警察庁の資料でございます。それから、参考資料4でございますが、これはあくまで参考ということですが、輸入の既遂時点について今回議論がございますので、その資料ということでございます。それから、参考資料5ということで、マーク切除に関する諸外国の法制度ということでございます。
以上が資料でございますが、もし不足等がございましたら事務局の方にお知らせいただければと思います。
それから、もう一点でございますが、前回の小委員会の際に、このマイクは感度が余りよくないものですから、大変恐縮なんですが、お手元のマイクのスイッチをお入れいただきまして、御発言のときにはマイクを近づけて御発言していただきますと多少なりとも聞こえがいいようでございますので、よろしくお願いいたします。
それでは、よろしくお願いいたします。

模倣品被害の現状について

土肥委員長

本日は、先ほど御案内させていただきましたように、ユニオン・デ・ファブリカンから、ローラン・デュボアさんと堤さんに参考人としておいでいただいております。御多忙の中どうもありがとうございます。
それでは、ただいま御紹介いたしましたように、ユニオン・デ・ファブリカンから、「模倣品被害の現状に関する関係団体の意見について」というテーマのもとで、「模倣品の被害の現状について」のプレゼンテーションを行っていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

ローラン・デュボア氏

ユニオン・デ・ファブリカンの代表のローラン・デュボアです。
本日、この件について一番詳しい者を連れてまいりましたので、私どもの堤が東京事務所の所長として本件についてこれから説明いたします。

堤氏

堤と申します。よろしくお願いいたします。
発表の機会をいただきましたことに、まず御礼申し上げます。よろしくお願いいたします。座って失礼いたします。
本題に入ります前に、私どもユニオン・デ・ファブリカンがどのような組織であるのか非常に簡単に説明させていただいた上で、現在の日本の偽造品の現状についての説明に移らせていただきたいと思います。
今出ておりますのは、ユニオン・デ・ファブリカン本部の概略でございます。1872年に設立されておりまして、1877年より公益社団法人として認められております。ただいま約400社の会員がおります。薬であるとか、飛行機であるとか、ブランド品に限らず、製造を行う会社が多く参入しております。活動の目的詳しいところはは、時間の関係もございますのでスクリーンをごらんいただいて、要するに知的財産権の保護、メンバーの情報交換、取り締まり機関、そのほかとの連絡、市場の監視ということを行っております。
事務所は、ほかに北京事務所がございまして、1998年に設立されております。ただいま会員数が約35社でございまして、活動はパリ本部と同じようなものでございます。
今ごらんいただいているのが、日本局・東京事務所の会員リストでございます。1980年より日本で活動しておりまして、現在、約70社のブランドが加盟しております。ここに挙げましたのは、スペースの関係上アトランダムに選んだブランドでございますけれども、よく耳にいたしますご質問は、フランスの団体でございますので、フランス企業しか入ってないんじゃないかというものです。日本国内でブランドの偽造品排除のための活動を専門的にやっているのが私どもだけということで、非常に多国籍になっております。ちなみに、赤文字になっているところがフランスの企業でございまして、黒文字はそれ以外の国のブランドでございます。
日本における活動は、フランスと重なり合いますこともありますけれども、再度御説明申し上げます。偽造品の流通情報の収集、取り締り当局への対応、権利者の弁護士と連携した形での排除活動ということを行っております。もちろん、消費者に対する啓発活動も行っております。
蛇足ですけれども、日本国内で扱われております商標法被疑事件の70%以上のものに、直接、間接的に我々の方で関与させていただいております。直接、間接的というのは妙な言い方ですけれども、ブランド側がやっておる場合と我々がやる場合がございますので、両方合わせるとかなりの確率で商標法被疑事件にかかわり合いを持っているという意味であることを御理解いただければと思います。
現状の御説明に移りたいと思います。現状の御説明に移る前に、前提として御理解いただきたいのが、現在、日本で流通している偽造品が、大きく分けて2種類あるという前提のもとに話を進めたいと思います。申し訳ありませんが、「前提」という文字が多くなりますけ。一つ目の種類の偽造品というのは、「消費者が偽造品と認識していることが前提で取引されているもの」、もう一つの種類が、「消費者が本物と認識していて、偽造品であることが前提とされずに取引されているもの」の2種類に分けて考えた方が偽造品対策がやりやすいという意味で、御説明もしやすいということで、このように分けさせていただきます。
前者のもの、偽造品だと消費者が知っているものを「前提偽造品」、それから後者のもの、消費者が本物だと思って信じて偽造品を買ってしまっているもの、こういうたぐいのものを「非前提偽造品」というふうに分けます。
前提偽造品の方は、よく道端で外国人が、「偽造品だ、コピーだ」と言って売っているものであります。それから、インターネットのオークションなんかでも販売されております。これらのものの偽造品で多いのは、ルイ・ヴィトンであるとか、ロレックスというものであります。
それから、非前提偽造品、消費者が本物と思って買っている方ですけれども、チェーン店とか並行輸入品販売店とか、そういうところで取り扱われております。あと、インターネット、パチンコ屋というところでも、これは本物として販売されております。グッチであるとか、コーチであるとか、ラルフ・ローレンであるとか、そういうようなブランドが多うございます。
これらの偽造品が入ってくる先でございますけれども、前提偽造品の方は、韓国、中国、香港、タイなどから入ってまいります。非前提偽造品の方は、これは袋物、バック、財布類はイタリアから、もしくは中国から、衣料品は中国を含む、妙な言い方で大変恐縮ですけれども、中国を含む東南アジア全域から入ってまいります。
これらの偽造品がどのようなところで流通しているかということです。これは前提偽造品も非前提偽造品も両方含みますけれども、インターネット、催事場での販売、雑誌媒体を通じての販売、パチンコ屋で景品としての販売、それから、並行市場の中で真正品であると称して入って売られている偽造品販売、それから露天で販売されるもの、それから個人輸入で販売されるもの、国内持ち込み。ちょっと言い方が妙なんですけれども、実態を聞いていただけると、個人輸入での販売という意味も御理解いいただけるというふうに思います。
我々はできる限りやっているんですけれども、これらの問題の中で、法的な規制がなくては解決できないと日々感じざるを得ないものを4つ挙げてみました。ともかく、流通量が多くてどうにも対応が不十分になってしまうインターネット。それから、偽造品と知りつつ販売していましたということの立証が難しくて、排除がしずらい並行輸入市場での偽造品。それから、水際で差し止めがされていない状態であるところのマーク外し・国内組み立ての問題。それから、法律を悪用した形での個人輸入ということに分けて考えます。この4つについて詳しく掘り下げてみたいと思います。
インターネットでの販売から参ります。インターネットでは2種類の偽造品、前提偽造品と非前提偽造品の両方が出回っております。この2つが多く出回っているインターネットでの場所はどこですかということになりますと、主要サイトのオークション、ここの部分では非前提と前提の両方のものが売られております。それから、主要サイトのモール、これは現実社会で言うショッピングモールみたいなものがインターネット上にも存在し、店の看板を掲げた形でショッピングモールを組んでいるという意味のモールでございます。それから、自社独立サイトというものが挙げられます。ごらんいただいているページの下の方の主要サイトのモール、自社サイトの方は、非前提偽造品が流通しております。すなわち消費者は本物だと思って、こちらの方では買っているということになります。
済みません、このように数が非常に細かくなってしまうと思わなくて資料を作ってしまいました。平成14年3月から平成15年12月、約1年半で20万3163件、この件数を主要オークションに対して、「偽造品であるから削除してくれ」という依頼をしております。
平成16年に入ってからの削除以来件数は、毎月1万5000件やっております。この数自体で実際の削除件数全部カバーしているのかということですけれども、実際問題としては、サイト側も自主的にやりますので、大体この倍ぐらいの数が削られておるという現状がございます。
もう一つ御注目いただきたいのは、全部買って偽造品と認めた上で削ってくれという作業はできませんので、画面上で見て偽造品とわかるものを削っております。したがって、主要オークションで今削られている偽造品の量というのは毎月3万件程度のものであって、それも明らかに偽造品、消費者の人も偽造品だとわかるものが主体で削られているというふうに御理解いただければよろしいかと思います。
これで削ってみてどうなるかということでございます。特許庁さんと、某サイトさんの方で協同で偽造品撲滅キャンペーンをやっていただいたりとか、身元の確認の強化、これはサイトの方で行ってくださったりしております。さらに、先ほど申し上げた削除依頼をしておりますけれども、平成16年7月1日で64.3%の偽造品の汚染率であるというふうに数えております。これの数え方としては、どこかのブランドの特定アイテムを選び、ボストンバックならボストンバック、どこかのブランドのこの柄のやつと選びます。1000個商品があって500個が偽造品だったら、偽造品汚染率は50%という出し方をします。
一つ御注意願いたいのは、本物か偽物かわからないものは本物に数えておりますので、明らかに偽造品と断定できるものが64.3%存在する。それから、身元確認が強化された以降の平成16年8月19日で、出品数623点のうち266点、すなわち42.7%が偽造品であり、ひどい状態が変わっておりません。驚くような偽造品量があるということを御理解いただければと思います。
それから、先ほどお話しましたサイトの方のモールに出ている偽造品の割合、これはどの程度かという個数が数えられませんが、出店する際においてサイト側では、普通の経済的な社会常識に考えられるところの出店を許可するかどうかの裁定をいたしますが、それに加えて偽造品を売る危険性がないか、ということについての判断をいたします。
我々の方で守秘義務の許す限り、すなわち例えば新聞に、ここが偽造品を売ったとか、載っているとかというのを集めて、ここは偽造品を前売ったことがありますよとか、というような情報で法に触れない限り、守秘義務の許す限りお教えするという形で対応しておりますが、平成15年の7月から1年間で、全部のサイトを合わせると744件の問い合わせが来ております。うち110件についてネガティブな答えをしております。すなわち、かなりの危険性がある、偽造品を売られることについて存在するということを御理解いただければと思います。
次に、並行市場での偽造品の問題であります。この場合、真正品と称して偽造品が流通しております。この場合、特徴的なことで御理解いただきたいのは、一般消費者もだまされておりますので、明らかに一般消費者も被害者であるということです。この手の偽造品が多いということはマスコミにも取り上げられておりますので、一般消費者の方も承知しておられ、毎日我々の方に電話をかけてきて、偽造品を買わされたのではないかとか、そういうお問い合わせをよく受けます。かなり流通不安は増加しているなという実感を我々の方でも持っております。
それから、例えばパチンコ屋さん、これはセカンドライン物を除く欧米の高級ブランドとなっておりますが、要するに低価格用につくっているラインを除いて高級ブランド品というもので置かれているものは、かなりの確率で偽造品であると申し上げられます。今、かなりと申し上げましたのは、本物を探すのが困難なほどという意味で捉えていただければいいと思います。
それから、過去に、某テレビ局がアパレルの某ブランドの、・・・・申しわけございません、具体的に申し上げられないんですが、・・・・偽造品の汚染率、先ほど計算したのと同じように、物を買ってきてどのぐらい偽造品だったかということをテレビ局がブランドに鑑定委託をして行ったことがございますが、当然デパートとか直営店を除いて並行市場と言われるところで買ってきたときの偽造品率が、そのとき95%以上であるという数値を出しております。
並行市場における問題でありますが、当然のことと言えば当然でございますが、販売者が偽造品と承知して販売していたとのことが立証ができない限りは、刑事摘発は当然不可能であると言うことです。特にパチンコ屋さんというのは、委託販売の形式をとっておりますから、預かっている商品であって、警察が強制捜索に来たとしても、所有者はパチンコ屋さんではない。この場合、販売目的所持ということが成立しませんので、刑事事件にできるとすると、前に景品として販売したときの立証できている1個しかできないとか、こういうことになります。
民事的に偽造品と知っていて売っていただろうという証拠を刑事事件のためにつくろうといたしますけれども、当然偽造品を売る方はなれておりまして、内容証明が来ても開封しないとか、読んでも権利者側が偽造品ということは信じられなかったという言い分けが横行しておりまして、なかなか立証が難しゅうございます。
結果ですけれども、2003年度の非前提偽造品にかかわる事件の刑事摘発というのは、私どもの事務所が知る限りでは2件、警察庁さんの発表によりますと、平成15年度の摘発数は全体は159件ですから、1.2%。すなわち刑事事件で摘発されているものは、ほとんど前提偽造品のものであるということを御理解いただければと思います。
次に、今日も議題に上っておりますマーク外しのことです。この図を見ていただければわかると思いますが、偽造品として完成されたものを、関係する標章、商標だけを外して日本国内に入れて、再度プレートとか織りネームとかを他から持ってきてくっつけるという形で、偽造品を再度販売するというやり方です。
具体的な例がないかということですので、一つの事例をお見せいたします。この例は非常に近過去的な話でございまして、現在この問題が起きていると思っていただいて結構です。
左側が本物のドルチェ・アンド・ガッバーナのTシャツでございまして、右側が偽造品でございます。このGとDの製品正面につけられております、デザインとおとりになるか、標章とおとりになるかは別として、これは登録されておりません。したがって、税関さんも苦肉の策だと思いますけれども、ドルチェ・アンド・ガッバーナの織りネームとタグを外したら、輸入していいということににてしまいました。結果として、この1件で約800万円の被害が権利者側に発生しております。大体こういう問題が起きるブランドというのは、プレートにブランドのネームを入れている、織りネームのみに入れているところが多うございます。
もう一つは、商標法の中の「みなし規定」が十分に利用されていない部分もありますので、金属プレートとか織りネームだけを輸入して日本国内で組み立てるというのは、意外に簡単にできることでございまして、その意味で言いますと、みなし規定をうまく準用していただくか、この問題について何らかの方策を講じていただく必要性があるかと思量しております。
次に、個人輸入の被害の問題です。個人輸入の被害というものは統計で出されておりません。ここに実際に私どもが試し買いをしてみました個人輸入の品物がございますので、見ていただくためにお回しいたします。なぜデータがないかといいますと、非常に単純でございまして、違法なことではございませんから、当然、取り締まっておりませんので、関税局の方でもデータをお持ちではないということです。
しかしながら、とられているデータからも、荷物が小口化しているというのは確認できると思います。本当に申しわけございません。こんなにスクリーンに映すと小さくなるとは予測しておりませんで、資料をつくってしまいましたけれども、お手元の資料の方では読み取れると思います。平成5年からバックと時計の2品目についての1個当たりの個数を、平成15年まで比較しております。バックと時計をなぜ選んだのかと言いますと、個人輸入で入ってくる偽造品というのは、ほとんど前提偽造品であるからです。したがって、それが多く出るところ、多く出る品物ということでこの二を選択してみました。
平成5年では1件当たりの個数が1079点ということになっております。ところが平成15年になりますと、1口当たりの数量が28点というふうに下がってきております。このデータは関税局の方で発表されたデータに基づいて計算しております。
次に、前提偽造品が出てくる国ですけれども、韓国、香港、中国というふうに分けられますので、この3国から出てきている1口当たりの数を数えてみますと、1331点から103点まで下がってきております。
これがグラフ化したものです。この小口化が進んでいる原因ですが、大概の場合におきまして、リスクが分散できるとか、それから――ちょっとお待ちください。私何か間違えているみたいです。済みません、申しわけございません。もう一つ、小口化の前に御説明しなければいけないことを忘れておりました。手元が暗くて見えないかもしれませんが、資料の中に実際のインターネットで売られている形態の資料がございます。ちょっとライトよろしいですか。私どもの資料のパワーポイントの資料が終わったところです。ここに実際のインターネットで売られているもののコピーをおつけしております。
矢印の部分を見ていただければ特徴的なものはおわかりになると思います。大体書いてありますのが、海外よりEMSで発送しますとか、複数の御注文でも一つずつ送りしますとか、なぜか知りませんけれども、福岡、鹿児島、大分等8県にお住まいの方は御遠慮ください、というふうに書かれております。これは多分そちらの方面の税関さんが、何らか理由をつけてはとめてくださる努力をかなりしてくださっている結果だと思いますけれども、偽造品を売る方は除けているようです。
EMSを利用しての販売の実態はどの程度かということを調べてみましたら、Aオークションの場合、266個の偽造品のうち、約19個がEMSで発送されている。それから、Bオークションの場合、1127個偽造品がございましたけれども、EMS発送をしているのが約80%となっております。
これは信頼できるブランド側に聞きましたところ、少なくとも偽造品の半分ぐらいは個人輸入にかかわるものであるというふうに言っております。これは1個ずつ明確に送ってくるものと、3つ4つ程度で送ってきて、それでもすり抜けさせようとするものも個人輸入として数えておりますので、この程度の数になります。
話を元に戻し、これらが何で存在するかということですけれども、偽造品の販売は非常に利幅が大きいものですから、EMSの送料程度のことはどうということがなくて、1個ずつ発送してもペイするということです。それから、小口化によってリスクの分散が図れる。それから、関係者の対応能力、簡単に言いますと税関さんの対応能力以上の偽造品件数を発生させれば通関できる。それから、エンドユーザーに1個ずつ送るということは、現行商標法上違法性はないということで、唯一、安全に偽造品が売れるという方法であるということです。
ともかく、このような形で売られているものですが、前提偽造品の件を警察が摘発する際に非常に多く立証されますけれども、暴力団の資金源になっているということも申し上げたいと思っております。
これらに対して我々の方でできる範囲で対応してきたんですが、実際問題として海外で発送した人間を特定することは民間では不可能でございますし、水際では止まらないということや、それから啓発活動でも、内閣府等のアンケートの結果などを見ていただければわかると思うんですが、買うこと自体が違法であるという根底的なものがないと非常に説得力が薄くて、効果が得られないということがございます。できたら法的根拠、さらにはそれを得た取り締り当局の参入がないと、民間にはどうにもならない状態になっているということを申し上げます。
これは我々のあくまでも望みでありますが、「業として」という「業要件」をはずしていただく改正、もしくは他の法律。どうでも、どうにか、どういう方法でもと言った方がいいと思うんですが、ともかく、これがいかんという形にしていただけると非常に助かります。ただ、どのような対応策をお採りになる場合でも、税関等で偽造品の没収が行えるようなことを考えていただければというふうに思います。
それから、政治的・啓発的な意味でどういう方法をとられても、我々の方では効果があるものだというふうに思っております。それができましたところで、できましたら官民合同での啓発活動、消費者に対するものを行っていただければありがたいと思っております。
最後にフランス知的財産法(ロンゲ法)を抜粋してみました。あくまでも御参考までということで、これを御説明するつもりはございません。ともかく、日本が知的財産立国というものを世界にアピールしていくという政治的な意味でも、それから、偽造品が「悪」であるということを消費者に明白に知らしめるという意味でも、個人所有等の規制というものは何らか考えていただければ非常に有効なものだというふうに思っておりますので、この点について、できましたら方策を講じていただければというふうに我々の方では思っております。
済みません、時間が5分ほど過ぎてしまいました。これで終わります。ありがとうございました。

土肥委員長

どうもありがとうございました。
ただいまのユニオン・デ・ファブリカンのお話、この内容につきまして御質問等ございましたらどうぞよろしくお願いいたします。
被害の実態からしますと、インターネットを通じて個人の販売によって入ってくるものと、それから個人が旅行等で外国から国内に持ち込む、そういう被害の額といいますか、大きさからすると、どちらが大きいんでしょうか。

堤氏

今のところ、インターネットの方がどちらかというと多いというふうに理解しております。個人で偽造品を買って旅行者の方が携帯で持ってくるという方式は昔からございましたけれども、税関で没収されますよというのはかなり書かれておりますので、悪化の兆候が今現在見られるということはございません。インターネットの方は明らかに、これは違法ではないということをくぐり抜けておりますので、増加の一方でございますし、各税関の方に権利者の方が検査に行っている数量からいっても、かなり拮抗するか追い越しているという状態に今なりつつあるし、またそれは増大する一方であるというふうに理解しております。

土肥委員長

ありがとうございました。
竹田委員、お願いいたします。

竹田委員

インターネットのオークションで、いわゆる業者ではない個人がオークションにかけるという場合に、ある個人は1個だけオークションにかけているのか、数個かけているのかということをお聞きしたいんです。それから、1個であっても、その人に継続的にそういうことをやろうとする意思があってやっているのかどうかという問題もあると思います。つまり個人でやっていれば、すべて「業要件」を満たさないんじゃなくて、個人であっても複数の販売をして利益を上げようと思えば「業要件」は満たすわけです。後で必要があればお話しようと思いますが、関税定率法でのいわゆる認定手続でもそういうふうに行われていると思いますので、その点ははっきりと言えるのかどうか、実態はどうなのかについてお答えいただきたいと思います。

堤氏

実態としてどう起きているのかということ以外は考えずにお答えするものですが、個人が「ちょっと偽造品があるからインターネットで売ってみよう」というものは割合と少ないと判断しております。大概の場合は、業者が大量に売っているというふうに物を削除しても残ってしまっておりますし、ほとんどの場合はそうでございます。
比率等を具体的にと言われると困ってしまうんですが、個人の方がちょこっと売ってみようかなと出しても、削られてしまって、IDを削られてしまって、もう次に出すのは大変だということになりますので、しつこく出てきて居残っているのは、かなり儲けてそれで生活を成立させるような人たちが残ってしまってきているという実態の方がオークションの場合においては多いと理解しております。

竹田委員

もう一度今の点、よろしいでしょうか。そうであるとすれば、先ほどおっしゃっている「業要件」をはずして個人の輸入も水際措置で禁制品にして、そして取り締まらなければならないという必要性を余り今のお答えから感じないんですが、いかがですか。むしろそういうふうに専門的に個人であっても、実際上はそういう模造品を買って利益を上げることによって利益を図っているという人たちが主体だということならば、個人の輸入を差し止めるという問題とは筋が違うというふうに思いますが、いかがでしょうか。

堤氏

わかりました、おっしゃっている意味が。要するに買い取っている方は個人なのか業者なのかということでしたら、買い取っているのは全員と言っていいほど個人です。すなわち、業者が例えば、個人輸入の問題についてのみ限定して申し上げますけど、オークションで売っている場合、もしくは、自立のサイトを持っている場合でもいいんですが、完全に業者として海外におりまして、偽造品販売をすることで完全に「業として」やっている。それを個人の方が1個、2個と購入するという形で買い入れます。その個人購入したものが税関を通り抜けてくるときには、個人所持もしくは個人輸入であるということで、とめる手だてがない。
もう一つは、売っている業者の方、海外の方になりますが、これを捕まえに行く手段があるのかというと、国内でそれをやっている人間は「業として」やっているわけですから、商標法による摘発は可能ですが、国外の場合ですとこれを捕まえに行く方法がない。海外の方にこれを摘発してくれということを言えばよさそうなものですが、海外に対してそのようなことを要請する手法もございません。
もう一つは、属地主義に基づいて、海外の方で行われることは海外でという発想もあると思うんですが、知的財産権、無体財産権でいう無断使用等は有体財産権で言うと泥棒というか、当然窃盗に遭っているという、表現は悪いかもしれませんがそういう現状にあるわけです、属地主義というのはそういう状態だったら成立すると思いますが、事態は変化して、技術の発展によって市場が1つになってしまって、窃盗と言うより、火事が起きているという表現が正しく、対岸で隣の国で火事が起きておって、こっちに延焼しかねないという状況でございます。すなわち、海外の方では偽造品をつくりたい放題、日本では個人輸入はとめられないということで、これだったらどんどん入れられるぞという状態です。
それから、今オークションのことばかり話がいっておりますが、近過去的な話ですが、日比谷のど真ん中にお店を出している十数店舗のチェーン店を持つ並行輸入店が、社員にEMSで1個ずつ海外から偽造品を送って、それを日比谷のど真ん中の店に並べて売っていった。店員たちに向っては、お前たちの家に品物は行くから、家族の名前も全部使ってやればだいじょうぶだと・・・。どれが偽造品か本物かというのも区別した上で販売しておったというようなことがございます。
すなわち、この抜け道に気がつかれなければよかったんですけれども、気がつかれてしまったので、それをうまいぐあいに市場を広げられているというのが現状で、その件について御検討願いたいというふうにお願いしております。ただし、偽造品の問題はそれが100%あって、個人輸入の問題が100%問題なのかということを言いたいのかと言われましたら、そういう意味で申し上げているのではございません。他にも問題はあるが、個人輸入の問題については法的根拠がなくて、それから司法力が及ばなくて、何にもできない状況に陥っているということを申し上げております。

土肥委員長

高部委員、お願いいたします。

高部委員

先ほど属地主義とおっしゃったのですが、インターネットのオークションで考えてみますと、海外からオークションに出している人は、製造とか販売という物理的な行為は海外でやっているかもしれませんが、インターネットで日本からもアクセスできる画面に広告を出しているわけですね。そうするとそれは日本の商標法でも取り締まれるのではないかということを指摘したいと思います。
それから、先ほど御紹介のあったユニオン・デ・ファブリカンに加盟しておられる会社を見ますと、世界的に著名なブランドが多いですね。このようなブランドは日本に限らず相当多数の世界の国々で商標登録をされていると思うんですが、海外での商標法に基づく取り締まり状況はいかがなのかという点を伺いたいと思います。

堤氏

私の立場はあくまでも東京事務所長でございますので、海外での活動について、それもデータももたないであやふやなお答えはできないんですが、海外からの報告であるとか摘発のあれを見ていますと、ともかく日本でこういう偽造品を送ってきた人がいるから、こういう人を捕まえてくださいという形で、持ち込む先というのはほとんど存在してない。それから、経済面問題でも量の面問題でも全く追いつかない状態でございます。例えば主要オークションにおいて偽造品を売っている人間を削除してくれということはできるんですけれども、大概の場合またすぐ出てきて、更に削っても、主要サイトから逃げ出し、それから自立サイトでやっているという状態でございまして、この状態になって自立サイトの本拠地の特定も、どこかのホテルでやっているとか言う場合もあり、一応我々できる範囲やってみるんですが、海外の場合でも取り締まり当局の方が動かないとどうにもならない、実態としてはそういう状態でございます。
要するに、海外でもできるところにはお願いするが、できないところにやってくれと言ってもむだである、これを承知の上で、一応、海外でもやるべき事はやっているし、現状の法律体制のなかで、日本の方でどうにかこれをとめる方法がないか可能な限り、例えば、日本にかかわっている会社が運営しているところで主要サイトに出品しているなら削るなり何なりできるんですが、インターネットで完全に独立されておって、中国のどこかのホテルの持っているサーバーの中に自社サイトを日本向けに設けられてしまうと、もう手の出しようがないという状況になっているというのが現状でございます。

土肥委員長

よろしゅうございますか。

高部委員

もう一点、刑事の問題と民事の問題と両方あると思うんですけれども、どちらがより有効なんでしょうか。

堤氏

何についてでしょう。

高部委員

例えば並行輸入のところで、並行市場における問題(2)のところでは、民事でもなかなか立証がしにくいということをおっしゃったんですけれども、少なくとも差止請求とか廃棄請求というレベルで言いますと、故意、過失は要らないわけですね。損害賠償は別なんですけれども。そうしますと民事で立証が難しいとおっしゃったのですが、必ずしもそうではないんじゃないか、損害賠償だけのレベルの話なのかという感じがいたしました。

堤氏

済みません、説明不足で、私の説明で誤解が発生しておりまして申しわけございません。この部分は、刑事での摘発がしずらい状況にあるということを御説明するためのものでございます。権利者は、刑事事件のために犯意の立証、すなわち知情性を立証するためにいろんな方法を使います。我々のできる方法の一つとしては、予め偽造品の販売者に通告状を送って偽造品だということを言ってるのに、まだ売っていますよということを刑事の方に通知する方式をとりますけれども、こういう風にしても、権利者側が偽造品と言っても、権利者は真正品の流通阻害をするために言っているんだと思って信じませんでしたという言いわけをされてしまったりして、うまくいかないという意味で、民事的なサポートをしても刑事でうまく利用してもらえないという意味でお話しいたしました。
民事でやっていくことは、確かに先生のおっしゃるとおり可能でございまして、我々が民事的に努力すればかなりの数がこなせます。ただ、刑事力の後ろ盾がないとなかなか、言い方は悪いんですが、なめられてしまって、偽造品販売をする方々がやめてくれないという現状が続いてしまっております。特に、うまい言いわけが流行しておりまして、どいつがどういう言いわけで逃れたというのをみんな知っておりますので、非常に対処しにくい状況ができてきているんだということを申し上げたかったんです。

土肥委員長

よろしゅうございますか。恐らくもっともっとお尋ねになりたいことはあろうと思いますけれども、予定の時間もございますので、今後もしこの点に関しましてユニオン・デ・ファブリカンにその質問等がある場合、この後も引き続きおいでになるということでございますで、またその状況のところでお尋ねすることも可能でございます。一応ここでは、質疑の時間は閉じさせていただきたいと思います。

模倣品の個人使用目的の輸入及び所持について、及び税関におけるマーク切除後の商品の輸入について

土肥委員長

それでは次の、「模倣品の個人使用目的の輸入及び所持」、及び「税関におけるマーク切除後の商品の輸入」、この問題につきまして議論を行いたいと思います。
まず最初に、事務局から説明をこの点についてお願いします。

花木審議室長

それでは、前回も取り上げた論点と重なっておりますので、簡単に説明させていただきます。資料1でございます。
まず、前回の議論のまとめということでごく簡単にまとめさせていただきました。特に前回は、個人使用目的の模倣品の輸入及び所持ということについて御議論いただいたんですが、3通りの御意見があったというふうに整理させていただいております。1つが、商標法で対応することには疑問がある。商標法については基本的に「業として」の行為を規制するものであるという御意見かと思います。2番目に、政策的判断によるべきではないかということで、そこは被害の実態を十分踏まえて、必要であれば政策的判断もあり得るのではないかという御意見かと思います。3番目に、商標法、必要があるにしても、商標法以外の法律でやるべきではないかという御意見かと思います。
それぞれ、実際には重なっていたりするので、3つに分けることはかなり乱暴かと思いますが、乱暴を承知でやや定型化して整理させていただきました。
今回は、先ほどの実態の説明を踏まえまして、1つは個人輸入、模倣品であることを承知しての個人輸入、それから個人所持について御検討いただきまして、本件に関する一定の結論をお願いしたいと思っております。それから、もう一つは先ほども説明の中でございましたが、マーク切除の議論ということでございます。
中身ですが、まず3ページをごらんいただきたいと思います。模倣品の個人使用目的の輸入及び所持についてということですが、現行法の扱い、1行で書いてございますが、個人輸入・個人所持については、現行法上は商標権侵害とはならないということでございます。
下の※印のところですが、米国及びEUにつきましては、こちらも模倣品の個人輸入・個人所持は、後ほど述べますように商標権侵害とならないと、フランスを除いてならないということですが、理由が日本法と若干違いまして、日本法の場合は商標の定義に当たらないということで、商標でないからということになっております。米国及びEUの場合は、商標ではあるけれども、侵害行為に「業として」といいますか、取引上使用されるものが侵害ということで、ちょっと理由づけが違うということがございます。
それから、3ページの下のところですが、背景ということで、これは前回のときも御紹介した、知財推進計画の中で検討し結論を得ると、商標法等の改正を行うなど制度整備を行うということで、特に商標法等ということで記載されているところでございます。
それから、めくっていただきまして4ページでございますが、むしろ実態面の話でございますけれども、商標権者、主な商標権者の方が現実に個人輸入・個人所持によって、1個の輸入によって相当大きな被害を受けている。その被害の量は「業として」の偽造品輸入とほぼ同規模ではないかという御指摘があったところでございます。
4ページの下のところでございます。ここからが内容に入るわけでございますが、1つは今回検討いただきたい論点ということで、規制する必要があるかどうか、それが法的な保護が必要な被害なのかどうか、それから、規制する場合は商標法において規制する必要があるのかどうかというのが主な論点でございます。
このような先ほどの説明で十分説明があったと思いますが、主としてインターネット、それから、小口の国際貨物郵便というのが非常に発達してきている。これが昭和34年に現在の商標法ができたときに、こういう環境変化が想定されていなかった環境変化なのかどうかということでございます。
論点として、①でございますが、商標法ではなくて、関税定率法等ほかの法律で対応することについてはどうかということが1つ論点としてあるかと思います。
5ページの上のところでございますが、1つは知財推進計画では商標法がノミネートされているということ。それから、この2番目のパラグラフでございますが、事務局の方で財務省の方に確認しましたところ、関税定率法において輸入禁制品とするためには、商標法上、まず「商標権侵害行為を組成した物」というふうに位置づけていかないと無理であるということでございます。
ちなみに、米国においては、EUにおいては、一言で申しますと、アメリカもEUも個人輸入については商標法侵害、商標権侵害にはなっていない。ただし、税関の扱いとして、例えば米国の場合は1人につき1個までは可能ということで、逆に2個以上であれば、個人輸入目的であっても、個人使用目的であっても、それはだめだよということで規制しているということ。EUについては、そこははっきりした基準はございませんで、ここは商業的輸送の一部である兆候があるかどうかという判断でやっているというふうに理解しております。
それから、5ページの②でございますが、ちょっとタイトルはあれですが、水際措置の合理性。先ほどの「域外適用」の議論で、本来であれば海外で「業として」売るという行為があるわけでございますから、そちらで抑えたらどうかということでございます。そこが先ほどのインターネットの特殊性ということで、事実上抑えにくい。国内に入ってくるところでは個人輸入となっていて、抑えられないということで、事実上手が出させないということでございます。
それから、3番目、めくっていただきまして6ページでございますが、それではということでやっと商標法の議論に入ってくるにしても、商標法の法目的との関係がどうなのかという大きな議論があるかと思います。こちらの方につきましては、今御説明のありました「業として」ではない輸入によって、現に商標権者の方が被害を受けており、その被害のレベルが放置できないレベルだとすれば、商標権者の財産権としての商標権、財産権的な側面が害されているのではないかという議論があるかと思います。
これは、物が売れなかったという直接的な部分から、あるいは、本来ブランド側が想定していなかった消費者に物が持たれることによるダイリューションの問題、希釈化、汚染の問題ですね、こちらも含めて、あり得るのではないかという議論があるのかどうか。
それから、混同機能ということで、自他商品識別機能ということを考えたときに、先ほどおっしゃった前提偽造品の場合は、偽造品であることを知って購入した場合にはどうなのかということがあるんですが、こちらについて購入後の混同ということが言えるかどうかということでございます。
一方、仮にこうした被害があったとしても、やはり「業として」ではない行為というのに禁止的効力を及ぼすことが産業の発展に寄与するという、そもそもの商標法の目的に照らして乗り越えられないことなのかどうかという点が一つ論点かと思います。
事務局において、最初の※印ですが、どうして商標法の規制対象が「業として」なのかということについていろいろ資料を調べたんですが、はっきりした資料は発見できませんでした。ただし、特許法につきましては、ここに書きましたように、特許権の効力を家庭的・個人的実施にまで及ぼすのは行き過ぎであると、そういう趣旨であると。
下の注4を見ていただきたいんですが、こちらに書いてございまして、旧特許法においては、特許権の効力というのは「業として」でない行為について、すなわち個人的・家庭的な実施についても及ぶこととされていた。しかしながら、改正の際に、このような面にまで特許権の効力を及ぼすことが行き過ぎであるということで、改められたという経緯があるということでございます。恐らく商標法についても、同じ理由ではないかというふうに推測いたします。
それから、特許法の関係では、平成13年にネットワークの普及に際して、インターネットの関係だと思うんですが、個人ユーザーの端末がネットワークに結合されているときに、「業」要件というのをはずさないと問題があるんじゃないかという議論を一度した経緯がございまして、次の7ページのところですが、平成13年12月に、特許法については、「業」要件についてこういう整理をしている。
真ん中の2番目の黒丸でございますが、「業」要件の廃止につきましては、やはり強力な独占権であるということで、慎重に対処すべきだ。ただ、そこについては意見が分かれたということでございまして、このネットワークの場合は、クレームの書き方によって工夫できるから、あえて「業」要件をはずさなくてもいいのではないかという議論があったということでございます。
それから、7ページ、4番目の論点でございますが、他の産業財産権法との関係でございます。まず、「業として」ではない行為を規制することが、そのバランスの問題があるかどうかという論点かと思います。知的財産権のうち産業財産権、いわゆる工業所有権の場合は、御承知のように「業として」ではない行為については侵害とはならないということで整理が統一されております。
産業財産権でない知的財産権と、はっきり言い切れるかどうかあれですが、著作権法の場合は若干毛色が異なりまして、こちらは頒布目的の輸入行為を規制しているということで、若干踏み込んでいるわけでございます。ただ、個人輸入一般を規制することはしておりませんので、いわゆる海賊版のCD、DVD等については、現在も個人使用目的での輸入は違法ではない。こちらについては平成15年に、著作権文化審議会の方で一度議論いたしまして、この括弧書きの中でございますが、頒布目的というのを削除して、個人輸入一般を著作権法上、禁止してはどうかという議論がなされたことがございます。
このときは結局見送られたわけですが、見送った理由としては、著作権法については、特許や商標のように登録を必要としないからということで見送っているということでございます。逆に解すれば、登録を必要とする商標については見送る理由はないという議論が成り立つのかどうかということかと思います。
それから、若干脱線気味でございますが、7ページの下のところで、知的財産権以外の法律により創設された物権的な財産権というところまで広げて言いますと、工業法とか漁業法、いわゆる漁業権、工業権といったものもあるんですが、漁業の場合、内水面漁業で「業として」行う漁業権者の効力が、釣り人、遊漁人に対しても及ぶという規定があるわけでございます。ただ、これも漁業権者に対して自由に認められているわけではありませんで、あくまでも漁業権者に対して、増殖義務があるというその反射的効果として釣り人に対して効果が及ぶということで、非常に抑制的な構成になっているということで、こういった義務が法律上は課されていない商標権者と同列に議論できるかどうかということはあるかということでございます。
最後に8ページでございますが、国際的整合性ということで、先ほどロンゲ法では書いてあるという御説明があったかと思います。フランス知的所有権法におきましては、こちらに書いてある参考資料1のところで後ろに添付しておりますが、規定、効力が及ぶということになっておりますが、他の欧米主要国においては、そういうことはないということをどう評価するかということかと思います。
さらに進みまして、仮に商標法で規制する場合にはどうするかということでございますが、1つの論点として、個人輸入と個人所持を区別して議論するかどうかということでございます。前回の第7回の委員会では、ここを区別して、個人輸入を禁止するということで、個人所持までは踏み込まないという議論があり得るかどうかという議論もあったところでございます。
9ページでございますが、仮に個人輸入のみを規制するとした場合には、例えば個人が模倣品を所持している場合に、それが国内で露天商等から買った場合は、何ら侵害行為にはならない。一方で、個人輸入でインターネットサイトから買った場合は、輸入が違法ということで商標権侵害となり罰則が科せられるということで、こういうアンバランスが生じるということが問題ないかどうか。
日本法においては、現在、猥褻物においてそのような例があるわけでございまして、猥褻物は個人使用目的での所持あるいは購入というのは特段刑罰の対象となっていないわけですが、輸入が禁止されていることとの関係で、同じ猥褻物でも、輸入したものについては輸入について刑罰が科せられる。国内で買った場合は、違法の問題は生じないということでございます。同じような考え方がこの模倣品、偽ブランド商品についても成り立つと言えるかどうかということでございます。
それから、9ページでございますが、②のところでございます。故意の立証ということで、実務上の問題として個人輸入を規制する、水際でとめるということでございますが、なかなか故意の立証が難しい場合が多いのではないか。税関職員から面と向かって指摘されたにもかかわらず輸入したとか、あるいは模倣品の購入店や代金を示す資料がきちんと残っているような場合はともかくとして、そうじゃないものについて国内で輸入した後に検挙するということについて、仮に法律上禁止するとしても、それが実効性があるものなのかどうかという議論でございます。
特に10ページでございますが、並行輸入を中心として、「業として」の輸入であっても、それが正規品なのかどうかという点については非常に判断が難しい場合もあるということかと思いますので、それと同様のことが個人輸入について生じるのではないかという論点でございます。
それから、10ページの3番目の論点でございますが、罰則の問題。現在は商標権侵害行為については、一律に「5年以下の懲役又は500万円以下の罰金」ということでございますが、こちらを個人輸入について、そのまま適用してもいいのかどうかという点が議論になるかと思います。
ほかの選択肢として、一般の商標権侵害より軽い罰則としたり、あるいは罰則を科さないという選択肢があるかどうか。ただ、そうした場合には関税定率法上の輸入禁制品にすることが非常に重要だという先ほどのプレゼンテーションがございましたので、こちらが軽い刑罰になったときに関税定率法上、担保していただけるかどうかというのが論点かと思います。
これに付随する論点といたしまして、著作権侵害に対して最近、「懲役刑」と「罰金刑」を併科できるという改正がなされておりますので、商標権侵害についても、同じような手当が必要ではないかという論点が派生的な論点としてあるかと思います。
最後に、長くなりましたが、仮に商標法で規制する場合のイメージとしまして、最低限以下のようなということで、商標の定義につきまして、先ほどの御要望にもございました業要件を抜くということでございます。
1つの規定例として、11ページでございますが、この法律で、「商標とは」ということで、「業」という言葉をここには書かない。かわりにその「業」の部分は、25条の商標権の効力のところに、「業として」というのを加えるという形かなというふうに思っております。
それから、侵害とみなす行為につきまして、輸入について仮に個人輸入を規制するのであれば、ここに「業として」というのを書かない、輸入する行為というのを侵害行為として書くというのが骨格的なイメージになるのではないかということでございます。
もう一目見ておわかりのとおり、定義から、効力から、商標法の現在の体系を大きく立て直すことになりますので、個人輸入を規制するということになりますと、商標法上の大改正が必要だということでございます。
以上でございます。
なお、いずれにしろこの定義の部分につきましては、第2回の審議会におきましても議論いただいておりまして、「業」要件というのは、何らかの形で定義に入れるのはちょっとおかしいのではないかという議論があったかと思いますので、今回の個人輸入の議論にかかわらず見直しが必要ではないかという点はあるかと思います。
それから、続きまして、簡単に税関におけるマーク切除後の商品の輸入でございます。12ページですが、現行法上の扱いということで1行で書いておりますが、マークがない商品というのは商標権侵害に該当しませんので、マークを切除した後は輸入できるということでございます。
下の方ですが、通関時におけるマーク切除ですが、税関実務においては、通関時にマーク切除を認めているということでございます。具体的には13ページのところでございますが、税関における手続といたしまして、最初の丸で、まず偽ブランド商品を発見した場合、それが商標権を侵害する物品かどうか判断がはっきりできない場合は、認定の手続がとられる。その認定手続において、輸入者はマーク切除を行うことができる。具体的には、関税定率法の基本通達21-11-1(2)の下線を引いた部分でございますが、自発的処理を行う旨の申し出があった場合は、認めるということで、下の絵のところでございますが、こういう商標がついている商品があった場合に、商標を切除して、商標を除いた部分だけを輸入する、そういう自発的処理が認められているということでございます。
ちなみに、切り取った商標自体は輸入しないということで、そこが通達上、書かれているということでございます。
14ページですが、検討の背景でございますが、先ほどプレゼンテーションがございましたように、そういう被害の実態があるということで、知財推進計画2004にこちらの方も載っております。ただ、こちらは商標法とはっきり、ずばりと書かれているというよりは、商標法、不正競争防止法、関税定率法等ということで、若干緩い形で書いていただいているということでございます。特に、ここにございますように「TRIPS協定46条の規定の趣旨に則り」ということで、TRIPS協定との整合性というのが一つあるということかと思います。
事業者の被害の実態につきましては、先ほどのプレゼンテーションのとおりでございます。
論点ですが、まず、そもそもの必要性について御議論いただきたいということが先ほどと同じでございます。
15ページでございますが、一番大きな論点として、TRIPS協定との整合性、現在の税関におけるマーク切除を認める運用、あるいはそれをはっきり通達に書いているということがTRIPS協定に適合しているかどうかということでございます。
TRIPS協定の原文は、下の注14に書いてございますので適宜御参照いただきたいんですが、丸の最初の部分、第46条ですが、司法当局(裁判所)は、「不正商標商品については、例外的な場合を除くほか、違法に付された商標の単なる除去により流通経路への商品の流入を認めることはできない。」というふうに書いてございます。
御承知のように、昭和57年にカルチェ事件というのがございまして、こちらで商標の除去だけで十分であるという判決があったかと思います。こちらと46条との関係というのも議論になり得るのかなというふうに思います。
これは司法当局なんですが、行政当局につきましては、59条でございまして、2行目のところですが、「権限のある当局は、この46条の原則に従って、侵害物品の廃棄又は処分を命ずる権限を有する」ということでございます。こういうことで規定されているんですが、権限ある当局である税関においては、個々の原則を踏まえてやっているということが言えるかどうかということが一つ論点としてあるのかと思います。
それから、2番目でございますが、商標法の輸入時点との関係でございます。税関における運用の背景として、商標法上の輸入というのは、「通関時」と解しているということ。したがって、通関の段階でマークがとれていれば大丈夫だということかと思いますが、むしろそれより早い陸揚げ時又は荷揚げの段階で既に商標法が適用されていて、違法になっているのではないかという考え方もあり得るのではないかと思います。
16ページでございますが、しかしながらというところでございますが、商標法上「輸入」につきましては、御承知のとおり明確な定義はありませんが、基本的には通関に先立つ段階と指すことが適当ではないかと考えております。
一つの理由として、仮に通関前に商標権侵害が成立していないとした場合には、保税地域内にある侵害疑義物品等に対して、差止請求権が及ぶかどうかについて非常に疑義が生じるのではないか。
それから、2番目に、不正競争防止法においては、輸入を「陸揚げ時又は荷揚げ時」と解する説がかなり有力というふうに理解しているためでございます。
このため、商標法において輸入時の時点が、陸揚げ時又は荷揚げ時であるということを明確にすることも、先ほどの税関の通達の見直しに関して必要なのかどうかということでございます。
それから、3番目に、商標法37条8号の解釈の論点があるかと思います。先ほどのプレゼンテーションの中でもございましたが、この「みなし侵害」の規定が非常に使いにくいということでございました。現在37条8号は、商標を表示するものを製造するためにのみ用いるものの「業として」の輸入を禁止しているわけでございます。こちらは一般的に、ラベルとかそういったものを印刷する機械というふうに解されているかと思いますが、こちらの解釈次第で、現在でも商標を表示するものとは、再度マークを付して製品化されたものであると、それを製造するためにのみ一旦マークを取った商品を入れるということが、この8号に当たるということが明確になれば、それは問題が解決するということではないかと思います。このような解釈ができるのかどうかということについて、ひとつ明確にするという考えもあるかと思います。
最後に17ページですが、国際的整合性につきましては、参考資料を適宜参照いただきたいと思いますが、明確にマーク切除行為について法律上の規定を持っている国は、我々が調べた限りは、なかったということでございます。
仮に商標法で対応するとした場合でございますが、1つが解釈による場合。先ほどの輸入の解釈、あるいは8号のみなし侵害の解釈を明確化するということがあるのかどうかということでございます。
2番目に法律上措置する場合ですが、いろいろなパターンが頭の中では考えられるということで、一つはマークの切除自体を侵害と位置づけるという考え方があるかどうかということでございます。
18ページでございますが、真正商品については、商標を流通過程で抹消する行為についても、商標権侵害になるという説もございます。したがいまして、偽ブランド商品についても、商標の除去というのは、これは直ちに除去自体が侵害であるということを整理する考え方もあるかと思います。
それから、2番目に、マークを切除した後の商品の輸入につきまして、その商品に再度マークを付する目的で輸入する場合は、みなし侵害とするということで規定するという考え方があるかどうかということでございます。
この1、2両案とっても、最初にマークを切除した行為は、こういう法律改正を仮にすれば規制できるわけでございますが、次回以降、一旦そういうことをわかった事業者が、最初からマークを付さないで入れた場合は、規制が及ばなくなるという点が難点かと思います。
したがいまして、仮にこのような行為についても禁止を及ぼすということだとすると、3番目のいわゆるマークを付する目的で商品を入れるという行為を規制する。これは先ほどに戻りまして、8号の「みなし侵害」の部分を、より立法によって明確化するということかと思います。こちらが必要なのか、適切なのかについて御議論いただければと思います。
駆け足でございますが、論点だけ整理させていただきました。

土肥委員長

ありがとうございました。
それでは、以上の説明を踏まえまして議論に移りたいと存じます。まず御質問がありましたら最初にお出しいただければと思いますが、いかがでございましょうか。よろしいですか。
それでは、資料に基づきまして、前回の議論のまとめということでは特によろしいですね。もし何かありましたら、また事務局の方に御連絡いただければと思いますけれども、資料の1ページ、2ページでございます。
いよいよ本論でございますけれども、模倣品の個人使用目的の輸入及び所持の2つの行為、この前段のところの議論をまずやりたいと思います。広く。竹田委員、お願いいたします。

竹田委員

個人による模造品の輸入を水際措置によって差し止める、それによって模造品が国内に流通することを防ぐという目的を達成するために、商標法の改正を行うとすれば、「業」要件を除いて、個人の輸入、さらには所持まで入れるということはちょっと考えられないと思いますが、仮にそれを入れるとしても、これらの行為について刑事罰を科する必要が出てきます。刑事罰を科かないと関税定率法上の禁制品に入れることはできません。なぜかというと、それは関税定率法では、先ほど審議室長から報告がありましたように刑事罰が科せられているわけで、それが国内での輸入の処理等が刑事罰を科せられないということになると、現行の輸入禁制品とのバランスを失するからです。
したがって、どうしてもそれを一気通貫で実現するには、今言った「業」要件をはずすこと、刑事罰を科すること、そして関税定率法に禁制品として入れることが必要であり、かつ、関税定率法の罰則と商標法上の罰則が違っていいかという問題も残ることになります。私は、そのような一連の改正は、はっきり言って反対です。
誤解のないように申し上げておきますと、模造品対策が現在のままでいいと言っているわけではないし、法的にさらに検討すべき必要な措置も講ずることができるかもしれません。その点は今後も検討していかなければならないことだと思いますが、それを商標法の改正によって行うということは、制度の趣旨から言っても、それから、この個人輸入の問題、模造品の個人輸入の問題だけで、制度のいわば大原則を曲げることにすることについても賛成できないからです。
商標法の場合は、商標法の定義の中に「業」要件が入っている点でちょっと特殊なところがありますが、すべての知財4法には「業」要件は入っているわけであり、「業」要件がなぜ入っているかというと、すべて特許法にしても商標法にしても、産業の発達というその制度の大原則から出ているわけです。だから、個人の行為はそこまで規制しない。ましてや刑事罰を科するというようなことは考えないのが知財制度の大原則であろうと私は考えます。そういう点から言いますと、この問題のために「業」要件をはずすという法改正をすることは、知財制度全体のバランスを失することにもなるし、賛成することはできないわけです。
それから、取り締まりの実態の点から言うと、個人が継続的な意思を持って、あるいは複数個販売する場合においては、それは「業」要件を満たすことになる。ただ、インターネットのオークションに出すものを一つ一つ商標権侵害で取り締まることは困難だということはあるかもしれませんが、それは取り締まりをいかにして適正に行うかの問題であって、法改正の問題ではないというふうに思います。
それから、日弁連の知的財産政策推進本部で先日、関税局の職員の方々を呼んで実態についての説明を受けましたが、現在、輸入代行業者による場合はもちろんのこと、個人であっても複数個の輸入をする場合には、関税定率法21条4項の認定手続で通知手続をとっており、それによって複数個の模造品の輸入行為というのはかなりの程度で阻止できていると思いますし、それでまだ足りないところがあるとすれば、それは関税行政のあり方として、さらに一層促進するように努めるべきだということになるのではないかと思います。いずれの点から見ましても、ここで「業」要件をこの問題のためにはずすということは、やはり慎重に対応すべきだと思います。
なお、最後に一言つけ加えておきますと、この問題が検討されたのも、知的財産戦略本部が知財推進計画にこれが含まれていることによりますが、私は知的財産戦略本部組織基盤委員会のメンバーの一人でもありますが、これは制度として、できることはやるべきだというのはもちろんであるし、そこで手を抜くことはできないと思いますけれども、推進計画に乗った問題であっても、必ずそれは商標法、あるいは関税定率法の改正によって制度整備を行うとなっているからと言って、商標法を改正しなければならないことになるとは考えませんので、その点はそれだけの理由が十分にあれば、それでいいのだと思います。
以上です。

土肥委員長

どうもありがとうございました。
竹田委員がおっしゃった点でございますけれども、「業」要件の問題、商標の定義規定の問題はそもそも、いわゆる個人輸入問題、個人所持の問題が出てくるより前から、商標の主体によって例えば流通の段階で商標になってみたり、ならなくなってみたり、それはおかしいのではないか。つまり、というようなこともあり商標の定義規定については、2条1項については全体的な観点から見直そうというふうになっているところでございますので、特にこの問題との関係で、「業」要件をはずすということではないわけでございます。
それから、もう一点ですが、仮にこういう個人輸入の問題を例えば今のような案にありましたが、37条のどこかにみなし侵害として置いた場合、それは所有権侵害罪、だから犯罪事実の認識があれば、それは刑事罰を科せられるという、そういう認識ではいけませんでしょうか。

竹田委員

ちょっとよく趣旨がわからなかったのですが。

土肥委員長

つまり、今事務局が少し紹介しましたけれども、37条のどこかに、今の間接侵害、みなし侵害のところにちょっと紹介されましたよね。11ページで、少し一つの仮にの考え方として、37条のところに仮に追加するということになりますと、それは商標権侵害と擬制されるわけでございますから、現行法で言うと78条で犯罪事実の認識さえあれば、それは刑事罰が科せられるということになりますね。

竹田委員

そういう趣旨であるとすると、政策的にそういう立法も可能かということになれば可能かとは思いますが、本来の37条の侵害をみなす行為の類型とは、かなり違ったものをそこに盛り込むことになるのではないでしょうか。それはそれで問題があると思います。

土肥委員長

わかりました。
ほかにも竹田委員たくさんおっしゃいましたけれども、今の2点は確認させていただいたんですが、ほかに。松尾委員お願いします。

松尾委員

商標法一般について抜本的改正をしようという議論がありまして、そのときに、どこに「業として」というのを置くかということで議論されたことは間違いないと思います。私は今特に水際措置との関係で、もう一度全部を考え直してみたわけです。そのときに思いますには、特許や実用新案、あるいは意匠法につきましては、定義のところに「業」要件を持ってくる余地がないんですね。発明とか物品の意匠というものについては。
しかし、商標法については、立法の当初からのものについてさかのぼってみてみました。そうしますと、この「業として」というのは明治42年の法律のときから入っているんですね。それはなぜかというと、ここでは商品というのが商標の場合には出てきます。かつての1条ですけれども、このときには「業として」という要件ではなくて、営業にかかる商品ということで、製造とか、加工とか、選択、証明、そういうものが業務にかかるという意味において、「業として」の要件が入っていたわけです。
それで、かの有名な厚い三宅発士郎さんの「商標」という本を見ましても、やはり商標というのは商品について使われる。そして商品というのは、営業上使われるということで、「業」という要件が入っていたんですね。商標法における「業」は、それなりの理由がそういう意味ではあるだろうと思います。
アメリカやイギリスにおいては、もともと商標は使用主義に基づいていますから、日本のような形の定義ではなかったんだろうと思います。日本の明治42年法のときには、ドイツ法が参考にされておりまして、そこには今のような形での「業」の要件が入っているわけです。
私は前に、権利侵害の規定に関し、使用の定義にしても頭の方ではなく、侵害との関係で設けるべきだろうと思いましたし、そういう点では全部の構成を変えるときには、「業として」というのを後ろの方に、商標の効力といいますか、36条、37条のどこかに持ってくるということは考えられると思います。

土肥委員長

25条はどうですか。

松尾委員

25条のところ、26条は「業」要件の効力なんですね。だから、そこに置くのはやはり問題が、おかしいんじゃないかなと思います。置くとすれば侵害のところだと思います。しかし個人輸入との関係で、今短い時間に次の通常国会に間に合うような形で「業として」というのをはずすと、非常に危険だろうと思います。ほかの方に影響してきます。もちろん商標権者だけではなくて専用使用権者、これはみんな「業として」になります。
これで見てきますと、37条の場合も、37条のそれぞれについて「業として」の要件があって、個人輸入のところだけ「業として」がはずれると、そういう形になると思います。そういう形で全部の商標法の整理ができればいいんですけど、何かやはり目の前の問題のために改正をしますと、そこで落ちこぼれが出てくるんじゃないかと私は大変恐れます。そういうわけで、今は定義のところの2条の「業として」というのをそのままにしても、もし政策的に個人輸入についてぜひ問題にしたければ、37条の見直し規定で、個人輸入については「業」でなくてもいいんだという規定を設ければいいだけのことだろうと思います。
それが一つなんですが、私はそのために商標法をほかの法律と別個に扱うのではなくて、この前も申し上げましたように、別の法律でぜひ対処するように考えていただきたいと思います。先ほど猥褻罪のところで、刑法について、まずその前に財務省で、商標法で対処するようにと財務省の声があったということと、それからもう一つは猥褻物については、刑法ではなくて輸入禁止は関税定率法でやっているけれども、しかし所管する財務省としては、その可能性を否定しているので、仮に措置をすれば商標法にということは9ページに書いてありますね。だけど私は、今水際措置が問題になっているんですから、財務省の方、関税定率法で商標だけではなく、デザインとかすべてのもの、模倣品を統一的に扱って模倣品の取り締まりに関する法律というものをつくっていただいて、そこで個人輸入の問題も扱うようにすればそれで足りるんだろうと思います。この個人輸入一つの問題のために、竹田委員も言われましたように、商標法の体系を知的財産法のほかの体系と異なるように個人輸入、個人の問題をとらえるのはおかしいんじゃないかと思います。
前に私が軽犯罪法と申し上げて、その後、軽犯罪法は自然犯だけではなかろうかというお話が出ましたけれども、私が軽犯罪法を、余り本はないんですけど、調べた限りは自然犯に限るものではなく、内閣でやった世論調査がありますね、そういうところを見ますと、模倣品を悪だとする一般の感覚ができ上がりつつあるんですね。そういう社会的な倫理性といいますか、そういうところから見ますと、資料の幾つでしたか、あの初めのところを見ますと、私は軽犯罪法でやっていただいてもいいんじゃないかと思います。
それから、先ほどのユニオン・デ・ファブリカンのお話を聞いていまして、商標権者が民事的な救済だけで、この問題を処理するのは不可能だと思いました。先ほど言われました官民ですか、民官ですか、やはり官権の協力を得ないとだめだろうと思います。特にインターネットのオークション等は、日本の法律で何とかできるとしても、それは理論上の問題であって、どうにも個人ではならないんですね。そういうわけで国の方で、官権と言わず官の方で、国の方で対処していただかなければ、どうにもこれは防げない問題だろうと思います。そういう点では、模倣品をどういうふうに扱うかという国の基本的な方針を立てていただいて、商標法以外のところで、模倣品一般として扱っていただいたらいいと思います。
それからもう一つ、ちょっと長くなりますがつけ加えますと、擬制侵害の37条なんですが、先ほどのラベルですか、マークの切り取りなんですが、これは私はマーク切除は8号の問題ではなくて7号の問題だと考えていたんですが、7号じゃないでしょうか。

土肥委員長

それは、あそこに書いてある、事務局の紹介があったのは、マークの方ではなくて、マークを切った後の例えばシャツとかそのことを言っているものですから。どうもそういうことのようでございます。

松尾委員

そうですか、それ一般を意匠にかかる物品なんかも含めてね。

土肥委員長

そういうことです。

松尾委員

私はマークの方を考えたので、7号じゃないかなと。あそこら辺は解釈で今のところはできるし、明確にする必要があれば、それはやってもいいんじゃないかと思っておりました。
以上です。

土肥委員長

ありがとうございました。
その「業」要件、あるいは商標の定義規定のところを、あくまでもこれだけのために変えるということはもちろんないわけでありまして、慎重にほかのところとの、50条の問題もそうですし、37条の問題もそうですし、さまざまなところとの関係で過不足がないように、もちろん見直さないといけないということでありまして、きょう紹介はなかったんですけれども、そのためだけに拙速な改正は恐らく考えていないと思います。
それで、インターネットの問題はおっしゃるように日本がというよりも、むしろ日本だけでもだめな問題でして。ただ、おっしゃったところの中の商標権侵害物品、あるいは不正競争侵害物品を束ねるような、束ね委員会検討会のような御提案があったと思うんですが、これはどちらに答えていただいた方がよろしいんでしょうか。つまり、本委員会は商標委員会なものですから難しいですか。今の束ね検討ですね、束ね検討委員会。

松尾委員

つまり、不正競争防止法の改正の点でも、あれはワーキンググループですけど、あそこでも検討されていますよね。やはり同じように進んでいかないと、何か商標法だけ改正というのはおかしいと思います。

土肥委員長

原産地表示のところもあるんです。つまり、団体商標とか原産地表示をどうするかというときに、農水省的なそういうアプローチとこの商標のアプローチとありますので、それはそれぞればらばらにすると大変なことが当然起こりますので、束ねるということになるんだろうと思うんです。それと同じように不正商品もあり得る話だと思いますので、少し意見を。

花木審議室長

束ねるということは一つの考え方だと思うんですが、今具体的にそういう動きはございません。商標についてはむしろそういう形で、模倣品という形で束ねる束ね方よりも、今委員長がおっしゃったように商標の定義とかそういうところにかかわるのであれば、むしろ商標法の大きな見直しの中で商標法としてやった方がより抜け落ちがないのではないかという考え方で現段階では整理しております。

土肥委員長

高部委員、お願いいたします。

高部委員

きょう配られた参考資料2の消費者の意識というペーパーなんですが、この数字を見たときに、国民の意識といいますか、個人輸入を取り締まるかどうかということについての国民の意識がこの程度で、かなり高まっていると言えるのでしょうか。そのことと、もう一つは外国とのバランスということもございます。フランス以外はまだ個人輸入について取り締まっていないというような現状での外国とのバランスということもございまして、個人所持や個人輸入を商標法で取り締まるかどうかについては、本当はもう少し議論が必要なのではないかと思います。
ブランドの保護が必要であるということは当然のことで、そのこと自体には大賛成ですが、個人所持や個人輸入という行為を取り締まらなければいけないのかと。ましてやそれを先ほどのような形で商標権侵害とみなしてしまいますと、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金という形で、かなり重い刑罰とセットになってしまうという状況で考える必要があるのではないかと思います。
この委員会では、模倣品イコール偽ブランド商品といいますか、商標権侵害品というふうに言いかえて議論しているんですが、著作権侵害品である海賊版のCDですとか、違法なソフトの個人輸入はどうするのか、あるいは意匠権の侵害をした模倣品、あるいは不正競争防止法違反のような侵害品の個人輸入をどう考えるのかということを考えてみますと、やはり一人商標法だけの問題ではなくて、もう少し全体をまとめて考えた方がいいのではないかなと思っております。
次に、先ほど松尾委員から、商標権の「業として」の規定のところで少し御指摘があったんですけれども、私自身は今の2条1項の定義規定から「業」をはずして、25条の方に「業として」という形で加えるというのは、ほかの工業所有権法と整合的でして、松尾先生のおっしゃるような36条ではなく、やはりこれは入れるとすれば25条の方だと思います。25条に「業として」を入れるかどうかという問題と、37条に新たな項目を入れて個人輸入をみなす行為という形にするかどうかは、また全然別な話だろうと思っています。
今、模倣品を製造している外国にはなかなか言いにくいというお話があったんですけれども、特に例えば中国なんかですと、今現在はなかなか言っても効果がないというところはあるのかもしれないんですが、10年後を考えてみたら、中国もきっとすごく変わっているんじゃないかと思いまして、全世界的にも対策を練るべきであろうと思いました。
以上です。

土肥委員長

ありがとうございました。
今の高部委員の。

花木審議室長

意識のところについては、これをどう読むのかということかと思います。確かに先生おっしゃるように、必ずしも高くないという見方もあるかと思いますし、一方で個人輸入の取り締まりも有効な方策として、この多くの選択肢の中でこれは複数回答であると思いますが、かなり高い順位で出てきているということをどう評価するかということで御議論いただければと思います。
それから、ほかの法令の関係ですが、模倣品一括ということですが、著作権関係については文化庁に再度事務局で今回確認して、公式見解ではないんですが、もう、一度審議会で議論して整理済みであって、それは登録がないということなので、登録がないものについて個人の輸入を規制することが問題だというのが文化庁の整理であると。したがって、商標権は登録がある以上は、そこはどうするかは商標権の所管官庁で検討されたらいかがでしょうかという考え方になっているということでございます。
それから、意匠とかそういうのはどうするのかということでございますが、おっしゃるように、論理的な整理としてはおっしゃるとおりだと思うんですが、現実に水際での通関でとめているものはほとんどが商標権でございまして、そういう規制の実効性ということでいくのか、あるいはそこは法律改正するときに、ほかの法令は定義等には「業」として要件はないわけですから、侵害行為に入れるということで一律に入れていくのか、もしそういうことが必要だということであれば、そういうことも考える必要があるのかなと思います。

土肥委員長

基本的には恐らく個人輸入のところのお話をベースにおいて、基本に置いてお話になっているのかもしれませんけれども、ましてということなのかもしれませんが、「まして個人所持」に関して御意見ございませんでしょうか。
田村委員、お願いいたします。

田村委員

皆さん、多分前提になさっていたということだと思いますが、一応、コメントします。事務局のおつくりいただいたペーパーによりますと、個人所持と個人輸入を区別する理由があるかどうかというところを議論なさっているようですが、余り必要性の高くないところで個人所持までを商標権侵害、さらに刑事罰で規制することはいかがかと私は思っています。
理由として、個人所持と個人輸入について述べます。私自身は個人輸入については刑事罰までいくのはやや躊躇を感じますが、いずれにせよ何かの侵害とする可能性はあり得ると思っています。なぜこの2つを区別するかということですが、基本的にこれは規制の実効性の問題だろうと思います。これは前回も申し上げたことなので簡単に申し上げますが、個人所持の場合には、むしろ国内で製造されているのであれば、その製造業者あるいは販売業者をたたけばよいということでありまして、そちらで規制するのが本来の筋だろう。それに対して、何度もいろいろと状況を御指摘いただいたところでありますが、個人輸入の場合には国外にいるということで、法律的には私も髙部先生と同じように、ここで属地主義を余り貫徹する場面が多いんじゃないかと思っておりますが、ともあれ規制の実効性の問題はあるということでございますので、水際でとめたいというのは規制の実効性を確保するためだ。そういう要請があるから、単なる個人所持と区別して個人輸入に関しては、何らかの方策を講じようということだと私は理解していますので、少なくとも個人所持については、やや疑問を感じるところであります。
以上です。

土肥委員長

ありがとうございました。
まさに国民の私的な領域に入るわけですから、所持そのものを抑えるということは、さまざまな理由が当然あろうと思います。私が発言するとあれなので、皆さんの御意見を待ちたいと思いますけれども、小塚委員、お願いいたします。

小塚委員

私も今の田村先生の御意見に基本的に同感ですけれども、これが商標法の理論の根本にかかわる問題として提起されるとしますと、なぜ輸入と所持を分けて、輸入だけをという疑問が出てくるというのは、ある意味でよくわかるところでありまして、逆にそういう商標の根本の理論にかかわるところではなく、一種の政策的な対応といいますか、現状とそれからそれに対する有効な手段の範囲の中で、この種の偽ブランド商品を減らしていくために最も有効な手段は何かということで考えたときに、個人輸入について何かすることは比較的効果が大きく、個人所持というのはそれに比して生活に対する侵害の程度が大きい、こう整理すれば区別はできるのであろうと思います。
ついでに、ちょっと個人輸入問題について感じていることですが、一面では確かに例えば37条に置かれた、他のみなし侵害規定と非常に性質の違うものを持ち込む、そのことに対する違和感のようなものは私も強く感じております。通常の商標権侵害にいわば準ずる行為、それを「類似」の範囲まで広げたという既存の37条の規定に対して、大きく質の異なるものを持ってくるということは事実であり、同列には論じ得ない。
ただ、他方で政策目的ということで言いますと、こういう個人輸入行為があって、それがある種偽ブランド製造者といいますか、そういうブラックマーケットのようなところを助長している面はあるのではないだろうかと思うわけです。その点がまたちょっと他の産業財産権と違うところでして、特許をはじめとする他の産業財産権は言ってみれば川上段階のもの、権利であって、したがって個人が消費する、個人が輸入するということが端的にそこへつながってこないのに対して、商標というのは、これは商標の機能の理解の仕方にもかかわりますが、単なる川上、物の商品の構成要素の一つというだけではなくて、商標自身、ブランド自身がある種消費の対象になっている、そういう特殊性があるであろうと思います。
そういう意味で言いますと、やはり商標において特に個人による輸入行為というものがブラックマーケットを助長するという側面はあるのではないか。そこの政策目的ということを考えて、かつ先ほどの理論的整合性についてやや疑問があるといいますか、戸惑いがあるということまで考えますと、例えば別個の条文を立てるとか、もっと言えばある特別法を入れて、質的に違うということを明らかにした上で対処するという形もあり得るのではないか、そういうふうに感じています。

土肥委員長

ありがとうございました。
竹田委員、お願いいしたします。

竹田委員

商標法の改正に反対して、何も施策はないのかと言われそうですので、その点について申し上げますと、本来的には松尾委員や高部委員が言われたように、模造品全体についての対策措置を講ずる法律があった方がいいと思いますが、ここは商標制度小委員会でいわば縦割りの枠があるとすれば、一つ考えられるのは、模造品の個人の輸入所持に関する法律をつくって、そしてまず第1条で、これは精神規定ですけれども、模造品の定義が必要だと思いますが、個人は、模造品を輸入し所持してはならないという精神規定と、それから2番目に、個人が模造品であることを知って輸入、所持している場合に、行政庁の手続によって例えば没収することができるという規定を置いて、次にその没収については訴訟上の救済措置をとることができるというような法律をつくれば、模造品を持つということは大変なことだということの抑止効果にもなりますし、行政庁によって没収されるのではなしに、司法的にも救済措置も講じ、そして刑事罰等は一切設けないということにすれば、何かバランスがとれるのでないかと思っておりますので、そういうことも御検討いただければという意味で申し上げました。

土肥委員長

ありがとうございました。
今竹田委員のおっしゃったこと、それから、その前に松尾委員おっしゃいましたし、ほかの委員もおっしゃったんですが、商標法だけの問題というよりも、もうちょっと広がる、つまりデザインの問題、不正競争の問題、そういう物品が水際を越えてくる、そういう意識を持った上で何か考えるという御指摘を確認させていただきますけれども、さらに切除の問題がございまして。

松尾委員

すみません、切除に行く前に、今竹田委員が言われた没収ということなんですが、私が軽犯罪法というのを考えたのは実はそういうところです。先ほど所持と輸入を変えるとすれば、それは救済の効果が違うのではなかろうかと言われたんですが、それはそうだと思うんですが、例えば輸入にしても、どういう救済を商標法で与えるのか。差し止め損害賠償と言うと、個人個人についてどれだけ商標権者が差止めを請求して効果を上げられるのかということを考えますと、何度も繰り返している人だったら、今度は「業として」になるんですね。そうすると個人輸入の本質的効果というのは、一番いいのは没収だと思うんです。そうすると商標法ではなく、ほかの法律でやるのが一番適切であろうと、こういうところに私の考えがつながってくるんです。そういうわけで、竹田委員のおっしゃるようなやり方とか、軽犯罪法とかそういうようなことを考えていただきたいと思います。

土肥委員長

ということで、商標の切除なんですが、商標の切除について御意見をいただけますでしょうか。
商標が切除できる物品といいますか、商品というのは、普通常識的に考えればこういうタグを切るということなんだろうと思いますので、衣類ということに限定されるんでしょうか。限定はされないにしても、メーンはそういうところなのかもしれませんね。つまりタグを切ると。例えばバッグのようなものだと、恐らくバッグそのものについていますから、それはとれないでしょうからね。

松尾委員

バックについていますね。

土肥委員長

いや、ついていますけれども、要するに商品価値がまだ残ると、衣類としての価値がまだ残るという状態のものでないと意味がないんだろうと思うんです。それがまた入ってきてつけるということなのか。あれは何と言うんですか、真正品でもタグを切って売られたりすることはありますよね。真正品でもタグを切って。いや、真正品でもありますよ。余り詳しくないものですからあれなんですが。

山中委員

現実にございまして、特にブランド製品で、例えばアウトレット商品を売るようなときに、通常ルートではないということを証明するために、タグを切ってしまうというのは結構見られるケースだと思います。つまり、正規のルートを通っていないという意味で。

土肥委員長

だから、そういうものがあるから、不正商品も入ってくるということはないんですか。つまり、タグを切ったいわゆる真正品とは別ルートの通常のルートでないものが、アウトレット製品として販売されているという状態があるから、不正商品のタグを切ったものが入ってくるということはないんですか。そういうファッションの世界は余り詳しくないものですから、お尋ねなの。タグを切ったものがまた国内に入ってきて、販売されるときに、単なるシャツとして販売されたのでは、普通のただのシャツですよね。それが真正品と同様な、言ってみればアウトレット商品と同じぐらいの価格でもって売れるから、それが意味を持ってくるということはないのですか。

堤氏

タグが切られてというふうにおっしゃっていたのは、今御説明があったようにアウトレット商品ということで、正規のB級品という言い方を一般にするみたいですけれども、正規流通品の商品と違うということを示すため商標権者その者が切るとか、襟ネームに金色のマジックをつけて区別できるようにするという方式でやってくるということがございます。この問題はブランド側が自身でやっている話でございまして、商標権上の議論というのは発生しないと思います。
今の具体的なブランド名を言いかばんの方でどこのメーカーというと僕もお叱りを被るので言えませんけれども、CとCの文字を組み合わせたマークの金属部品をバックに付けているようなところですと、金属部品の取附方法としては、本物でございますと、例えば、カシメとかそういうものでビシッととめてあって裏地をちゃんと当ててという形になりますが、偽造品でございますと、2本足ピンで2本のピンを刺して広げてという形でとめてということをいたします。そうしますと、本体としてマークを取り除きますと、ここがちょっと境目だと思いますが、税関さんでは、商標法上で言うところの商標権侵害物品しか関税定率法上とめていただけませんけれども、我々権利者からすると、違法ではないと残った本体に特徴があり不正競争防止法で言うところの偽造品じゃないかという思いが残ってしまうんです。
さっきのTシャツの例でも同じで、織りネームをはずしました。残ったD、Gのマークは果たして商標なのかデザインなのか、不正競争防止法でいうところの偽造品なのかというものが残ります。同じようにかばんの場合でも、金属部品をはずした後に残ったものは、不正競争防止法で言うところの偽造品が残ってしまう場合もあります。
これが日本国内に入りますと、それをやった人間がどう考えるのかといったら、部品は税関さんで取り上げられた。しょうがない、じゃあ別便でちょっと送ってこいやと。ここでまたお叱りを被るかもしれませんが、税関さんの検査率ということで、おおむね2パッケージはずされた、例えば400個の品物の部品をはずされたら、400個の小口の小包みを2つ送っておけば、まず1個は通るというのが実際だと思います。部品が手に届きましたところでもう一度、穴がもう既にあいてありますから、そこにあわせて差し込んで広げて、約1000円の品物がそのマークをつけることによって8000円、1万円で売れる。部品代は1個大体20円ぐらいと、これは非常に採算が合うと、こういう方式で展開しております。もう一歩進みますと、今度は部品だけ分裂して入れてきて、日本国内で組み立てて売るという考え方に発展してまいります。

土肥委員長

そうなんだけれども、要するに切除の話ですから、通関のところまでは商標がついているんだけれども、それを水際で当局に侵害品であるというふうになると、そこを切除すれば入れられるというそこが問題なんですよね、おっしゃっているのは。

堤氏

そうです。削除すれば入ってしまう、簡単に言うとここは感覚の問題ですけど、削除しても、明確に言うと不正競争防止法上で言うところの偽造品が残って、それが通関されてしまうというのが、権利者側にとってみると非常に口惜しいのと、もう一つ何かつければすぐ復活できる状態で入ってしまうのが嫌だと、こういうことでございます。

土肥委員長

高部委員。

高部委員

マーク切除の問題で法律的に一番重要なのは、輸入をどこでたらえるのかということだろうと思うんです。参考資料の4をいただいておりますけれども、「輸入」ということばが出てくる法律というのは非常にたくさんあると思うんですが、輸入というのをどこでとらえるのかというのは、立法目的によって法律ごとに違ってくる可能性はあると思います。
この参考資料の4によりますと、通関説を支持する見解は、関税法の定義規定によっているんだということなんですが、例えば覚せい剤ですとか、薬物関係の輸入というのは、最高裁の判決で陸揚げ説をとっております。最近は領海説もあるらしいんですが、もう陸揚げ説でかなり薬物に関しては徹底しているということもあって、最近の判例でも陸揚げ説が確認されております。
水際を扱ってる税関にとってみると、関税法あるいは関税定率法の定義規定によるということになるのかもしれないんですが、商標法独自で考えたときには、通関説というのは余り合理的ではないように思います。私は陸揚げ説、あるいは領海説というのも十分成り立ち得ると考えます。
そういうふうに考えますと、今現在、税関の方でとっている通達の考え方というのは妥当なのかどうなのか、特にTRIPS協定との関係もございますし、ちょっと問題があるのではないかなと思っています。後でまたそのマークを別途輸入してきてそれをくっつけるというのであれば、それはその段階で再度商標権侵害行為を構成しますので、そこで規制すれば足りるのかもしれませんが、通関のときに、マークを取りさえすればそれでどうぞ輸入してくださいというのは、それで本当にいいのかなというふうに私は思います。

土肥委員長

ありがとうございました。
先ほど挙手なさいました田村委員、お願いします。

田村委員

よろしいんですか。

土肥委員長

いや、部委員のご発言はそのとおりだろうと思ったものですから。
今の部委員の御意見になにかおっしゃることがありますか。

花木審議室長

特にコメントはありません。

田村委員

どうもありがとうございます。ちょっと今の点でわからないところが実は発生していまして、先ほど発言しようと思っていたことと違うことですが、これは陸揚げ時または荷揚げ時説をとるとしますと、その後に、この解釈をとったからすべて解決するということがよくわからないところなのです。そこで、輸入禁制品があるということですが、その後マークをはずせば侵害品ではなくなっているのではないですか。そこで、通関を認めざるを得ないのではないかという気もするのです。したがって、輸入の解釈を早めに、陸揚げ時または荷揚げ時説をとったところで、その後マークがはずされてしまえば、はずした時点では、つまり通関前では、もう将来商標権侵害になるものではなくなっているので、結局通関を認めざるを得なくなるのではないかと思います。その点はいかがでしょうか。

高部委員

商標権侵害を構成していますよね。

田村委員

1回はですね。

高部委員

輸入の時点を陸揚げ説とか領海説によりますと、この輸入の時点で侵害行為を行っていますので、その商品は侵害品そのもので、民事で言えば廃棄の対象になります。

田村委員

なるのですが、結局、普通の通関が絡まない廃棄請求のときも、普通に商標権侵害のものがありますよね。そのときに自主的に侵害者の方がタグをはずしてしまったら、普通の解釈ですと、もうそれは廃棄請求の対象になりませんよね。

竹田委員

しかし、商標権侵害になった以上は、もうそれはそういうのは認めないと思います。

高部委員

認めないと思いますよ。

田村委員

わかりました。先生方と私の見解が違うということでございますね。私はそういうふうに思っておりませんが、ともあれ私の方の疑問はよく理解しました。私の見解はどうもこの中では少数のようですね。

土肥委員長

36条2項の、その他侵害の予防に必要な行為というそこのところですよね。つまり、侵害の行為を組成した物の廃棄等々、その他侵害の予防に必要なことを請求することができれば、これに当たれば廃棄の対象になるんだろうけど、田村説だと、侵害の予防という観点からすれば。でも、話だと、向こうはつけると言っているわけですから。

高部委員

侵害の行為を組成していますよね。だから、商標法36条2項の「侵害の行為を組成したもの」として廃棄するんですよ。

田村委員

いろいろな意見があるのですね。

高部委員

36条2項の「その他の侵害の予防に必要な行為」ではなく、侵害組成物の廃棄とみるのです。

土肥委員長

前の侵害組成物の廃棄のところで見るというのが裁判所のようでございますので。

田村委員

では、そこは意見が違うということも確認できましたので、次の同じ16ページの下の方で、商標法37条8号の解釈というところですが、これは恐らく現行法のままの解釈では無理だろうと思います。「商標を表示する物を製造するためにのみ用いる物」という言葉がありますので。もちろん、そのマークをつけざるを得ないような形であれば別論ですが、もし何も違う、マークもつけられるという中性の状態になってしまいましたら、この37条8号に当たらないのだろうと思います。ですから、これを規制するとすれば、明確化というよりはむしろ創設的な立法をするということになるのだと思います。
そのときにちょっと留意しなければいけない事項は、基本的に商標権侵害ではない、要するに類似商標ではない中性のマークが付されているもの、あるいはノーマークのものの商品の製造販売というのは、適法に行えるということですね。したがって、一般的に、「にのみ」の要件をはずしたときに、将来この商標権侵害に用いるためにというような形の主観的要件もなく、ただ普通の中性品を商標権侵害とみなすような規定を置くのは少し無理があるだろうと思います。
それで、18ページの②の御提案で「しかしながら」というところで、「目的があるかどうかの認定が可能かどうか」という疑問がついておられますが、少なくとも可能かどうかという問題はもちろんあるかもしれませんが、だからといって目的要件をはずした立法をしてよいということでは多分ならないと思いますし、恐らく事務局もその趣旨ではないのだと思いますので、それを確認したいだけであります。
あとは、基本的にこれはTRIPSの条文との整合性の問題だということになりますと、18ページの②の案あたりが現実的なのかと思いますが、一歩踏み込んでTRIPSの要求を超えますが、③というのも確かにあり得るところだと思っております。

土肥委員長

それでは、お願いします。

花木審議室長

先生おっしゃるとおりでございまして、目的が必要であるというふうに、仮に規制する場合は、目的が必要であるというふうに考えております。

土肥委員長

山中委員、お願いいたします。

山中委員

今、田村先生の御指摘のあった18ページの③の部分なんですが、要は陸揚げ時にしても通関時にしても、そのマークをはずすことによって、それは商標権の侵害を免れる、すなわち輸入できるという状況が今あるということなんですが、ごく一般的な感覚から申し上げると、そもそも輸入の動機は、その商標を付して、なおかつその商標によって、その商品に化体された信用とともに輸入して販売をするという意図があって輸入しているというのが、ごく一般的な解釈として成り立つんじゃないかと思うんです。そうであれば、そのマークをはずして輸入したものを基本的にはそのままの状態で売るということは、輸入の動機から見て考えられない。当然、つけかえて再販売をするという状況から見ると、マークははずせば入るという解釈自体がそもそもは不自然なのではないかという気がするんですが、そのあたりについてはいかがなんでしょうか。

土肥委員長

一つの問題は、輸入をどこで見るかということで、いわゆる通関当局の運用の問題があるんだろうと思うんです。そこの問題はいわば商標法の話ではないものですから、恐らくきょうは関係各省庁の方々がおいでになっておりますので、恐らく今おっしゃっていただいたようなことは財務省関係の方にも聞いていただいていると思いますので、恐らくそれは持って帰っていただいて検討いただくことになるんだろうと思います。つまり先ほどのお話ですと、そもそもそこで侵害で、侵害を構成しているんだということですので。そういうことですね、高部委員。

高部委員

そうです。

土肥委員長

ですから、そこのところは、おっしゃっているところは、現在の運用をきちんとしていただくということになろうと思います。
時間もまだあればさらにいろんな議論ができると思います。思いますが、きょう皆さんの御議論をちょうだいしておりまして、個人輸入・個人所持の問題につきまして、非常に多方面からの御議論をちょうだいしたことをまず感謝申し上げます。ただ、個人所持に関しては、ここについて将来何か規制するということになりますと、私的な個人的な領域について大きく踏み込むことになりますので、これについてはかなり慎重にやっていただかなければならない、こういうことだろうと思います。個人輸入に関しては政策的な考慮だけでなく、もちろん全員が一致であるということではないんですが、慎重に実態を十分見て、つまりどういうところが例えば侵害の実態として最もゆゆしき問題になっているのかどうか、さまざまな状況をきちんと精査した上で、今後また個人輸入の問題については検討させていただければというふうに思っております。
きょうの議論の特徴としては、商標法だけでこの問題について対応するというよりも、もっと商標法を超えた他の法域、あるいはこのデザイン、あるいは不正競争なんかを含めてそういう束ねた、あるいは単独のそういう法制も検討してほしい、そういう御意見があったことを記録させていただきたいと思います。
それから、そういう意味で個人輸入・個人所持に関しては、広く高い観点から、一番高い観点から検討させていただければというふうに思います。これは事務局の宿題にもなりますが、きょうの議論を踏まえた上で精査していただければと思います。
それから、マーク切除に関しては、きょうの御議論をちょうだいした限りでは、もっと現行法のもとで十分対応ができる、つまり通関当局の運用上の問題もあるように伺えるところでございますので、このあたりは本日おいでになっております関係部局の方にぜひ持ち帰っていただいて議論を深めていただきたい。もし可能性があれば、機会があれば、将来もう一度この委員会の中でその後の検討の経過を御報告いただければというふうに思っております。
全体を通じて申し上げたいことは、この問題だけを特化して、バタバタと拙速にやるということでは決してございませんで、当初からこの委員会が立ち上がったときからのお約束ですけれども、商標法全体を見るということでやるという思いでおりますので、誤解がないようにお願いしたいと思います。
それでは、済みません、時間もかなり過ぎてしまいましたけれども、最後に何か特に御発言がございましたら。本宮委員お願いします。

本宮委員

弁理士会の方でもいろいろ検討いたしました。今、土肥委員長がまとめられた形で大体議論は進んだのですけれども、それ以外に、要は小学生から中学生、高校生、そしてその後の社会教育に至るまで、その啓蒙活動をもっと強化して、模倣品は社会悪なのだというようなことを小さいころから植えつけていく。個人輸入・個人所持が今問題となっておりますが、これを長い目で見ていったときには、そういうような教育なりが必要なのではないか。それがあって、その先の10年、20年後、こういう問題がなくなっていくのではないかというような意見も出ておりましたので、この点も何らかの形で強化等していただければと思っております。

土肥委員長

ありがとうございました。
ほかにございませんでしょうか。
それでは、もしよろしければ本日の委員会を閉じさせていただきたいと思いますけれども、今後の審議の進め方について何か事務局からございますでしょうか。

花木審議室長

それでは、次回でございますが、既に御案内が行っているかと思いますが、10月5日の10時半から開催させていただきます。また、なるべく前倒しで日程を決めるようにという指示をいただいておりまして、その次、第10回は11月2日、同じく10時半からこちらの場所で予定しております。
次回の検討項目でございますが、商標法の本来の見直しの議論に若干割り込む形で今回個人輸入もお願いしておるんですが、同じく地域ブランドの保護について、農林水産省における法律の検討状況もございますので、割り込む形で一度御議論をお願いしたいと思っております。また、それ以降の日程につきましては、現在事務局の方から日程をお伺いしておりますので、お忙しい先生方のことでございますので、なるべく早め早めに日程を決めていきたいと思っている次第です。よろしくお願いいたします。

土肥委員長

以上をもちまして、産業構造審議会知的財産政策部会第8回商標制度小委員会を閉会させていただきます。
本日は、参考人としてユニオン・デ・ファブリカンからおいでになりましたデュボアさんと堤さん、どうもありがとうございました。
皆さん、どうもありがとうございました。

閉会

[更新日 2004年10月13日]

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