第8回商標制度小委員会 議事要旨
平成16年9月17日
特許庁
9月14日(火曜日)15時00分~17時10分に、産業構造審議会 知的財産政策部会 第8回商標制度小委員会(委員長:土肥一史 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授)が開催された。
1.審議内容
フランス公益社団法人ユニオン・デ・ファブリカンから資料2(模倣品被害の現状について)に沿って、発表を行った後、事務局から資料1(「模倣品の個人使用目的の輸入及び所持について」、「税関におけるマーク切除後の商品の輸入について」)に沿って説明し、自由討議を行ったところ、委員からの意見の概要は以下のとおり。
(1)個人輸入・個人所持について
- 個人輸入を規制するためには、商標法の業要件をはずし、刑事罰を科さないと、関税定率法の輸入禁制品に入れることができない。また、個人輸入を規制することは、TRIPS協定の趣旨にも反するのではないか。個人輸入のためだけに、商標法の大原則を曲げる訳にはいかない。知的財産権法全体のバランスも失することとなる。商標法改正で対応する必要はないと考える。
- 以前、抜本的な商標法改正の観点から、定義の「業として」について議論している。明治42年商標法にも、定義に「営業ニ係ル商品」とあり、定義から「業として」を削除することは、影響が大きい。目の前の整理(個人輸入の規制)だけのために、商標法全部を整理するような改正をすることを懸念する。水際における取締りが問題になっているのであるから、商標、デザイン、著作権等も含めた模倣品一般に関する取締りの法律を作ればよいのではないか。また、社会の倫理性から考えると、軽犯罪法も適当ではないか。
- 海外も絡むインターネットでの模造品の販売は官民合同で対処しないとならないのではないか。
- 個人輸入について規制している国はフランスだけであり、他国との関係でバランスが悪いので、もう少し議論が必要ではないか。意匠権侵害物品の個人輸入なども含め、知的財産権法全体として個人輸入を考えた方が良いのではないか。
- 個人輸入と個人所持を規制の実効性の観点から区別して考えることができる。個人輸入の場合には侵害者が海外にいることから、取締りにくいため、何らかの方策が必要ではないか。個人所持の取締りは国民の私的な領域に踏み込む問題であるため、疑問がある。
- 個人輸入と個人所持を分けるのは一種の政策ではないか。個人所持は個人輸入と比して、生活に対する侵害が大きい。通常の第37条に質の異なるものを入れることになる。個人輸入は偽ブランドブラックマーケットを助長している。特許法は個人にはほとんど関係のない川上の権利であるものの、商標法はそうではない。消費の対象となっているものが、対象になっている。模倣品対策は質的に特別法で対応することも考えられる。
- 本来的には模倣品全体の問題として考えるべき。商標法とは別に、
個人で模倣品を輸入を輸入し、所持してはならない(精神規定)、
模倣品であることを知っている場合手続を踏んだ上で没収する(没収規定)、
訴訟上の救済措置を設ける(救済規定)という、模倣品の個人による輸入及び所持に関する法律(特別法)が考えられる。
- 個人輸入の場合には、差し止め・損害賠償は効果がない。効果があるのは没収のみであるので、商標法ではなく別の法律が良い。
(2)マーク切除後の商品の輸入について
- マーク切除については、輸入の既遂時点をどこで見るのかの問題である。最高裁の判例では、薬物は陸揚げ説を採っている。商標法上考えると、陸揚げ説又は領海説が適当と考えている。陸揚げ又は領海説であれば、商標権者は侵害を組成した物の廃棄を求めることができることとなる。
- 第38条第8号を明確にして、現行のまま適用することは無理だろう。創設的な規定とする必要があるのではないか。マーク切除後の商品が、ノーマークで中性品であれば、主観的要件もなく侵害とするのは無理ではないか。
- マーク切除後の商品をそのままのものとして再販売することは不自然であり、あり得ないのではないか。だとすれば、再度マークを付すことが予想されながら通関させることは問題があるのではないか。
(3)その他
模倣品の対策として、小・中・高校生の啓発活動を強化する必要がある。教育が必要である。
(4)まとめ
- 個人所持は個人の私的領域に立ち入ることとなるため、慎重に議論すべきである。
- 個人輸入は、産業政策的にも検討する必要がある。権利侵害実態を把握し、現行法の枠組みがその侵害実態に対処できないものかどうかを十分精査して、擬制侵害への盛り込みを含め、今後も継続的に検討を進める必要がある。その際、商標法だけではなく、他の知的財産保護法制も含めて考えるべきである。
- マーク切除の輸入はTRIPS協定との関係に加え、運用の問題もあると思われる。現在の運用の適切性について、事務局において財務省とも相談して検討していただき、結果を小委員会に報告をいただきたい。
2.今後の審議スケジュール
第9回商標制度小委員会は、10月5日(火曜日)10時30分~12時30分、第10回商標制度小委員会は、11月2日(火曜日)10時30分~12時30分に開催する予定。
[更新日 2004年9月22日]
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