土肥委員長
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それでは、早速でございますけれども、議題に入らせていただきます。
まず初めに、地域ブランドの保護につきまして、事務局から説明を行っていただきます。
よろしくお願いいたします。
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花木審議室長
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それでは、説明をさせていただきます。
資料1に基づきまして御説明をさせていただきたいと思います。
まず「地域ブランドの保護について」ということでございますが、本日の議論に入ります前に、前回の議論のまとめをしてございます。議事録は現在精査中でございまして、間もなくでき上がるかと思いますが、ごく簡略に前回の御議論のまとめをしてございます。
前回はフランス公益社団法人ユニオン・デ・ファブリカンからの説明及び意見聴取をしていただきまして、こちらを踏まえて、「個人使用目的の模倣品の輸入及び所持」、それから「税関におけるマーク切除後の商品の輸入」につきまして、検討を行っていただいたところかと思います。
このうちまず模倣品の個人使用目的の所持につきましては、こちらを商標法により規制することについては、個人の私的領域に立ち入るということで、慎重に議論すべきという意見が大勢であったかと思います。
2番目に、模倣品を模倣品であると知りながら、個人が輸入する行為、こちらにつきまして、商標法により規制することにつきましては、現行商標法の定義・効力・侵害といった各規定の大幅な改正が必要になるということでございまして、いずれにしても拙速な対応は避け、当委員会でまさにこうした定義・効力・侵害の規定の見直しをしている現状でございますので、こういう規定の見直しの結果を踏まえて検討する必要があるということが第1であったかと思います。
また、検討に当たりましては、実際の権利侵害の実態を精査し、侵害の実態が対処を必要とするものなのかどうかについて、産業政策的な観点から十分精査をした上で、みなし侵害規定への盛り込みを含めて検討すべきではないかという御議論であったかと思います。
また、商標法によらずに、他の知的財産保護法制での対処の可能性についても検討する必要があるということであったかと思います。
最後に、税関におけるマーク切除後の商品の輸入につきましてですが、TRIPS協定との関係に加えまして、現行通達に基づく運用の問題といいますか、運用の論点もあるということで、これらの点につきまして、事務局の方から関係省庁と相談・検討し、結果を報告すべきということでいただいていたかと思います。
続きまして2ページですが、今回の検討事項でございます。今回は先ほど委員長からお話のございましたとおり、地域ブランドの保護について検討をお願いしたいと思っております。本件に関連いたしまして、昨年10月に開催されました第4回小委員会において、団体商標制度の拡充という切り口で以下のとおりの議論をしていただいているところかと思います。
繰り返しになりますが、ざっと御説明いたしますと、これは第6回の小委員会の資料で取りまとめたものでございますが、まず背景といたしまして、地域の独自性を有する商品・サービスを振興するという観点から、産地表示と商品名等の結合からなる魅力的な標章を商標として保護する要請があるということを書いた上で、現行の団体商標制度は権利者の対象が限定されており、また、通常の商標と同一の登録要件となっているため、活用が困難という指摘があるということでございます。
それから、証明商標制度の導入を検討する必要があるのではないかという指摘があるということも書かれております。
これに対する論点といたしまして、現行の団体商標制度について、登録における識別性の判断基準を整備するとともに、公益法人等に限定されている権利主体を拡大するといった見直しをすることについてどう考えるかということが第1点。それから第2点といたしまして、特定の者が地域ブランドを不公正に独占することを排除するため、商標が付される商品やサービスの基準について権利者に登録させ、その基準を満たす第三者にも当該商標の使用を開放する制度を導入することについてどう考えるかという論点が挙げられたところでございます。
それについての御意見ということで3点書いてございまして、1つは、団体商標制度の拡充については、主体要件としては、法人に限定せず代表者や定款が定められているものにも拡大すべきであるという意見があったということでございます。2番目は、産地表示からなる商標については、現行商標法第3条第2項の識別性に関する運用を改善することで対応可能ではないかという御意見、それから制度の国際調和を目指すべきとする意見があったというふうに書いてございます。3番目に、一方、識別力を有する商標を保護するという商標法の目的や不正競争防止法等他法令による保護との関係を鑑みれば、慎重な検討が必要であるとする意見もあったということでございます。
非常に簡単なまとめでございますが、振り返らせていただきました。
本日の議論もこちらと似たような議論でございまして、若干切り口を変えて御説明させていただいておりますが、基本的に前回といいますか、昨年10月の論点とは継続しているものだというふうに認識しております。
本題でございますが、3ページ、「地域ブランドの保護について」ということで、根っこのところで、そもそも「地域ブランドとは」ということで整理させていただきました。十分な整理になっていない点もあるかと思いますが、説明をさせていただきます。
まず「地域ブランドとは」ということですが、「地域発の商品・サービスのブランド化を通じ、地域経済の活性化につなげようとする取り組み」と書かせていただいております。具体的には、地域の持つイメージ、自然とか歴史とか風土とか文化等ということで挙げさせていただいておりますが、それらと関連させながら、商品、サービスの開発や高付加価値化に取り組むことにより、差別化された価値を生み出し、その価値を広く認知させることによってさらに地域イメージを向上させていく一連の取り組みということでございます。
下のところに図が書いてございますが、一番最初に商品・サービス、そちらを開発して、高付加価値化する、それを地域イメージのブランドに結びつける。その地域イメージが上がっていくことによってまた高付加価値化された商品サービスを生み出していくということで、連鎖的に地域イメージを向上させていくということでございます。この中で、下のところで1つのサイクルを取り出して大きく書いてございますが、新たな商品、サービスを開発いたしまして、それを地域のイメージと結びつけていく。その中でまた地域と結びついた付加価値の向上を通じて新しい商品へ結びつけていくという連鎖的な取り組みということで書かせていただきました。
具体的な事例ということで4ページ以下、幾つかの事例を挙げさせていただいております。実際にヒアリングをしたとかそういうわけではございませんので、文献等の調査によるものにとどまっているわけですが、幾つか特徴的なものを御紹介させていただきたいと思います。
1つは、最初の4ページのところに書いてあります夕張メロンでございます。北海道夕張市における取り組みということなのですが、1888年以降、炭坑の町ということで夕張が発展してきたわけでございますが、近年に至りまして、次々に炭坑が閉山してきた。そういう中で、農業が町を救うということで、1960年に17軒の農家の方が集まって新種のメロンを交配によって誕生させたわけでございます。現在では約200軒の農家が夕張メロン組合に加入しておりまして、こちらは農協でございますが、JA夕張市が一代限りの種を管理し、組合員にのみ販売しているということでございます。販売も農協一元出荷として、農家での庭先販売も禁止するということで、値崩れや品質管理を徹底しているということでございます。
そういった取り組みの一環といたしまして、ブランドにつきましては、「夕張メロン」ブランドということで、JA夕張市がこれまでに200以上に上る商標を登録している。具体的なものの一例といたしましても、ここの下に書いてある幾つかの商標を挙げさせていただいておりますが、合計200以上取っておられる。それを使ってシールですとか箱といったものを組合員の方だけが使うようにしている。それから、部外者による不正な使用に対する裁判等に対しても、積極的に取り組んでおられるということでございます。その結果、現在、夕張と言えば「夕張メロン」と言われるほどのブランドに育っているという事例でございます。これは「夕張メロン」ということで、地名プラス商品名そのもので商標として取っている、特にこの平成5年10月29日登録の「夕張メロン」というのが後に申し上げます第3条2項に基づいて商標を登録されているということでございます。
それから2番目ですが、5ページの上のところでございます。こちらは平仮名で「ふらの」という文字でございますが、北海道富良野市の取り組みでございます。ラベンダー畑ですとか、テレビドラマの放映の影響で、非常に全国的に富良野に対するイメージが上がったということ、それから農業が、昼夜の寒暖の差が非常に大きいといった地域の特性を生かしまして、野菜について非常に評価が高いということで、以下のような取り組みをされているということでございます。
1つは、ラベンダーを中心とした観光ということ。それからワイン、「ふらのワイン」というものを市みずからが手がけている。それから地元産のチーズやバターを活用したお菓子を作っている。ワインやブドウ果汁につきまして、ここの下に挙げているような商標を富良野市、あるいは富良野振興公社、これは町が出資した第三セクターで株式会社ということですが、こちらで取得をされているということでございます。また、この商標を引用したマークを富良野産の野菜、この「ふらの」という筆で書いたような文字がありますが、この字体でシールを野菜ですとか、そういうものに使っているということでございます。
それから、次が5ページの下のところでございます。関西に飛びまして、東大阪ブランドで、大阪府東大阪市の取り組みでございます。東大阪市はその名のとおり大阪の東にあるわけでございますが、昔から生駒山の水力を活用いたしまして、鋳物ですとか河内木綿、それから簪用の鉄線といった産業が発達しておりました。現在では東京の大田区と並び称される全国有数の町工場密集地帯となっているわけでございます。可住面積1平方キロ当たり工場数では全国第一位ということでございます。また、単に中小企業が多いというだけではございませんで、下請けでなく自社ブランドでの製品を製造しているということでございまして、その中にはニッチ分野、非常に限定された分野において日本一、あるいは世界一といったシェアを持つ企業が多数存在するということでも知られております。
こういったことを受けまして、東大阪市役所、それから商工会議所、さらには地元の企業等が中心となりまして、平成14年末に東大阪ブランド推進機構というものを設立いたしまして、「物づくりの町」というイメージを明確にする取り組みを進めている。具体的には、「メードイン東大阪ブランドCI運動」といたしまして、東大阪市内において製造された、東大阪市内でコアの部品を製造している、あるいはオリジナルな部分を担っている製品につきまして、「ナンバーワン製品」、「オンリーワン製品」、「プラスアルファ製品」といったこの3種類の製品を認定して、認定されたものにつきまして、この東大阪ブランドマーク、ちょっと薄くなっているのですけれども、Hという字とOというこの輪、それからその真ん中に1という、ナンバーワン、オンリーワンの1という数字、その下にローマ字で「HIGASHIOSAKA」という商標を、これは東大阪市が取得いたしまして、張り付けを認めているということでございます。これは地名が入っておりますが、ローマ字であるということと、商標自体は図柄の部分がかなり大きいという特徴があるかと思います。
それから、6ページの下のところですが、今度は九州で大分県佐賀関町の関さば・関あじでございます。こちらもテレビ等で随分有名になっているかと思いますが、佐賀関町周辺の漁場は瀬戸内海と豊後水道の分岐点にあるということで、非常に潮の流れが速く、海底の地形が起伏に富んでいて餌が多い。また、海水の温度も夏と冬の差が大きいという特徴があるそうでございます。サバとかアジというのは通常は回遊魚なのだそうですが、佐賀関町周辺では回遊せずに1箇所にすみついているということで、適度に太って脂ののりがいいということで、刺身でも食べられるということでございます。JF、これは漁業協同組合ですね。佐賀関支店におきましては、こういったサバ・アジのブランド化に取り組んで、魚体を傷つけないで一本釣りで漁獲するとか、それから漁獲後、1日網生け簀に置いて、魚を落ち着かせた後に魚体に触れずに処理して出荷するということで、詳しくはわからないのですが、そういうものを「関あじ・関さば」と称して、商標登録された「関さば・関あじ」タッグシールを1匹、1匹に付して出荷しているということでございます。これによって、通常のサバ・アジの、高い場合は10倍程度の値段で出荷できているということです。それから、マスコミを通じた報道などによって観光客も増加し、物販、おみやげ物等も含めて、それから飲食、宿泊といった面での経済効果が非常に上がっているということでございます。7ページの上のところに「関あじ・関さば」という商標登録されているもの、それにこれをつけたイメージということでつけてございます。これは佐賀関というのが地名なのですが、具体的な商標では「関」という部分だけ入ってきているという事例かと思います。
それから、最後に7ページの下のところに黒壁、関西に戻りまして滋賀県長浜市でございますが、これも非常に有名になってきているかと思うのですけれども、明治時代に建設され、銀行として使用されていた歴史的建造物の解体を契機にということなのですが、実際には解体されずに保存されたわけですが、解体しようという話が上がったことを契機に、その建物、壁が黒いので「黒壁」というふうに呼ばれていたということですが、町が出資した第三セクターがその建物を購入して、その建物を活用してガラスの輸入販売等を始めたということでございます。
これは1企業の取り組みということではありませんで、計画に賛同する店舗が20強集まって、そのコンセプトに合致した外観、「黒壁」ということで黒い壁、その維持、それから内装の工夫等を行うとともに、地域の商店街とも共同して空き店舗の改装ですとか、共通の買い物券の発行といった形でまちづくりの取り組みを実施した。それから、商標といたしまして、こちらの下に書いてある「黒壁」という文字をブランドとして取得いたしまして、地域における集客等の取り組みをしている。また、最近では域外との取り組みも含めて、全国展開も行っているということだそうでございます。
こちらの最後の「黒壁」というのは若干地名とは外れたものでございますが、地域で「黒壁」と言えばあの建物だとわかっているけれども、いわゆる地名ではない、そういうものを使った地域ブランドの例ということでございます。
かなり詳しく説明してしまいましたが、こういった幾つかの例、全国でもっとたくさんあるかと思いますが、有名なものからそうではないものまで色々ございまして、以上、簡単に取りまとめると8ページの上のところですが、地域発の商品・サービスについて、いずれの場合も特定のブランドを設けている。いずれも商標登録をしているということでございます。それから、商品・サービスの高付加価値化、差別化を図っているということでございます。それから、他地域産の商品についてのブランドの使用を排除するということを行っている、それぞれ程度はあるわけですが、一体的、連続的に行っているということがおわかりいただけるかと思います。
また、こうしたブランドは地域の人のためということだけではなくて、需要者の側から見ても、特に農水産品ですとか食料品の場合は、安全・安心といったそういうイメージを保証する役割も同時に果たしているということでございます。
以上、ざっとまとめた図を8ページの下のところに描いてございます。
入口がちょっと長くなりましたが、9ページに移りまして検討の必要性ということで、地域ブランドの取り組みにおきましては、今申し上げましたように、それを指し示す名称を地域の中核的団体、市であったり、農協、漁協であったり、町が出資した第三セクターということが多いのですが、そういうところが管理し、その名称を品質基準等を満たした商品サービスに付すということが多く見られるところでございます。
この名称につきましては、図形と地名を組み合わせたもの、あるいは地名自体、若干入っていないようなものもございますが、そういったもの、あるいはズバリ地名プラス商品名という文字である標章もあるわけでございます。いずれにしろ、多くの場合は地名と商品名が入っているということでございます。
しかしながら、例えば地名と商品名のみからなる標章を見てみますと、現在の商標法においては商標登録を受けることが基本的には困難でございまして、1つは非常に生産販売が広まって、もはや広く一般に使用され、普通名称となってしまったもの、例えば非常に古いものですが、「さつまいも」とか「いよかん」というのは、誰も薩摩の芋だとか伊予の柑橘類であると、そこまで、誰もと言うとあれですが、なかなか思わない、どこで作っても「さつまいも」は「さつまいも」であるというようなところにまで至ったものについては普通名称とされて商標登録ができないわけでございます。
それから、普通名称に至っていないものにつきましても、単なる産地名と商品名のみを組み合わせた標章につきましては、識別力、さらには独占適用性がないということで、商標登録できないというのが原則というのが3条1項3号の規定でございます。
しかしながら、登録できないということに対しまして、先ほど申し上げました色々な取り組みの重要性が高まっているということで、何らかの検討ができないかという要請がございます。1つが、先ほど委員長からお話もございました知財推進計画でございます。3.の(4)の中で地域ブランドの保護制度を検討するということが書かれておりまして、「農林水産物等の地域ブランド保護制度の在り方について、産品・製品等の競争力の強化や地域の活性化、消費者保護等の観点から、名称が一般化している、あるいは他地域での使用が既に定着している産品・製品等への影響等に配慮しつつ、2004年度に検討を行う」というふうになっております。
こちらは農林水産省と経済産業省に対して、そういうことが言われているわけでございます。
なお、農林水産省におきましては、この指摘を受けて、「食品等の地理的表示の保護に関する専門家会合」というのを9月29日に発足させて検討を開始されたというふうに聞いております。
また、経済産業省の中でございますが、経済財政諮問会議にも報告してございます新産業創造戦略の中で、10ページの上のところですが、重点政策の1つとして第3章の4.というところで、「地域ブランドの確立支援のための制度を整備する」ということが書かれております。同じように、「特色ある地域づくりの一環として、地域の特産品に係る「地域ブランド」の確立を支援するため、地域ブランドを保護する制度の整備を検討する」ということが書かれております。
あとは補足ですが、経済産業省の予算要求項目でも地域ブランド関係の色々な事業を要求している。それから、自治体においても先行的にここに書きましたような様々な地域ブランドの保護、主として認定制度なのですけれども、認定制度を随分設けているということでございます。
それから、この資料には書いていないのですが、知的財産戦略推進本部におきましても、早ければ10月の末から専門のワーキンググループで検討するというような動きもあるようでございます。
そういった動きを受けまして、あらかじめ、本日は商標制度小委員会にお諮りしているわけでございますが、商標法上の扱いはまずどうなっているかということでございます。
11ページですが、地域ブランドについて商標登録を受けることができれば商標権者以外の者による、要すれば地域ブランドについて商標登録を受けられれば商標として保護が図られるということでございます。しかしながら、まず第1の類型ですが、商標が産地名と商品名のみからなる場合を取り上げてみますと、例えば「東京納豆」というふうに書いてありますけれども、先ほどの例で言うと「夕張メロン」がこれに当たるかと思いますが、そういうものについては、商品の産地とか販売地といったものを普通に用いる方法で表示する標章のみからなる商標ということで、こちらに書いてございます3条1項第3号によって商標登録ができないということでございます。この規定の趣旨は、下のところに逐条解説も書いてございますけれども、一言で言えば識別力、さらには独占適用性がないということかということでございます。ここに書いてあります「何人も使用する必要がある」、それから「何人も使用を欲するものである」ということで、一私人に独占を認めるのが妥当ではないということかと思います。また、解説書の中では、早い者勝ちで認めるという一般的な商標の原則で保護するには、やはり十分ではないということですね。何らかの特殊性を認めている、一般的には識別力の問題、それから独占適用性の問題というこの2つを挙げられることが多いようでございます。
このように産地名と商品名からなる商標については原則として商品登録ができないわけですが、例外といたしまして、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品または役務であることを認識することができるものについては、登録が受けられるということになっております。これが3条2項の規定でございます。
この規定の趣旨も念のために書いてございますが、基本的に特定の者が長年使用するということによって、その商標とその商品または役務とが密接に結びついた結果、出所表示機能を持つに至るということがある。このような場合は、特別顕著性があるということで認めることができるという考え方でございます。
具体的な認定の基準ですが、以下に御説明いたしますけれども、一言で言えば、具体的な取引の実情を参酌して、ケース・バイ・ケースでやっているということでございます。
まず3条2項、そういたしますと、登録されるためには3条2項に当たらないといけないということですが、3条2項の判断基準・判断方法はどうなっているかということでございます。こちらにつきましては、全国的な知名度が必要ということで運用しているということでございます。また、具体的に全国的な知名度があるかどうかというのはケース・バイ・ケースで総合的に判断するということでございます。
参考資料1の方に具体的な運用ということで書いてございます。参考資料1を見ていただけますでしょうか。
まず のところですが、1つは、例えば毛筆体の商標であれば、実際に使用されたものも毛筆体でなければいけないとか、縦書きと横書き、平仮名と片仮名、そういうものについても同じでないといけないということでございます。下の注1のところで、網野先生の教科書ではもう少し柔軟に解してもいいのではないかという見解を引用させていただいておりますが、実際の運用としてはこういう形で厳格にやっているということでございます。
そのように対象をまず厳格に特定した上で、識別力があるかどうかということについては総合判断ということなのですが、例えばということで、実際に使用している商標と商品との関係、使用開始の時期、使用の期間、使用地域、それからここに書いてある生産、証明もしくは譲渡の数量または営業の規模、広告宣伝の方法、回数及び内容といったようなものを一例として審査基準上挙げているということでございます。
ただ、これも使用開始時期が短いから絶対にだめだということではなくて、いずれにしろ総合的に勘案してやっているということでございます。
また、周知のレベルですが、2ページの上のところですが、全国的な範囲の需要者に対して周知であるということが必要という運用をしているということでございます。
審査基準上、こうした周知性を証明するための証拠として次のようなものが例示されておりまして、物自体は非常に単純なものなのですけれども、仕切伝票等、各種伝票、帳票類、それから広告宣伝等が掲載された印刷物、商品の写真、それから広告業者、出版業者等の証明書、農業組合等の証明書、商品または役務の取引先の証明書、需要者の証明書、さらに公的機関の証明書ということで書いてあるわけでございます。
この証明書も、これがあれば必ず認めるといったものではありませんで、あくまでも参考の一例ということで書いてあるということです。また、需要者にどの程度に認知されているかということを示すアンケート調査の結果なども出願人から提出されることがございまして、こういった結果も適宜斟酌しているということでございます。
また、以上のような運用ですが、 のところは、全国レベルといっても、全国津々浦々に知られていなくても、例えば3ページの上のところにあるように、その商品の性質上、非常に需要者自身がそもそも偏在しているような場合、例えば(イ)の場合が非常にわかりやすいかと思うのですが、降雪シャベルというのは沖縄とか鹿児島では全く商品として意味がないわけでございますので、そういうものについては降雪地域だけ見ればいいとか、そういった例外的な運用も当然あるというように考えられているわけでございます。
また は、ちょっと細かくなるのですけれども、その識別力の判断に当たっては、現在の運用においては、例えばパイナップルであれば沖縄が産地ということですので、「沖縄パイナップル」というのは他の人も使いたいであろう。ただ、それに対して「北海道パイナップル」というのは通例的には余り存在しないような商品であれば、そういうものは他の人が使いたがるかどうかという点では「沖縄パイナップル」とは違うだろうということで運用されているということです。
それから の(イ)のところなのですが、その出願のあった名称について、他に使っている人がいるかどうかということについても1つの重要な要素として判断されているということでございます。全く使っていなければ非常に識別力があるという可能性が高いわけですし、たくさん使っている人がいれば普通名称化している可能性が高いというようなそういう判断かと思います。
以上でございまして、また最後の3ページの ですが、なお、3条2項の運用につきましては、御承知のとおり、団体商標としての出願であるか、通常商標としての出願であるかどうかというのは、考慮はされていないということでございます。
もとの資料の12ページに戻りまして、以上のような基準、方法によって3条2項を適用しておりまして、したがいまして、全国的な知名度ということは非常に限定されております。地域ブランドとしてはいわば評価が確立したもののみがこちらの制度を使えるという整理になるかと思います。
実際に登録されているものは参考資料2で現物がございますので、参照していただきながら見ていただきたいと思いますけれども、まず「前沢牛」、こちらはゴシック体でございまして、一般的な文字と非常に近いもの、それから「夕張メロン」、「三輪素麺」、「佐賀海苔」等々書いてございます。若干、字体に特徴のあるものもございますが、3条2項で登録されているということでこちらに書かせていただきました。このうち3つ、「信州味噌」は大正時代の登録ということですので、後に団体商標に移管したものですが、「宇都宮餃子」と「笹野彫」、「笹野一刀彫」については、団体商標として3条2項で登録されているということでございます。
以上でございまして、3条2項の登録の効果としては、地域ブランドの保護として必要な他人に対する差し止め請求、損害賠償請求というはっきりとした私権として保護されるという強い効果がございます。また、3条2項によって登録された商品、商標については、これと同一の産地名プラス商品名等に識別力のある図形を加えて商標が後願で出てまいりましても、こちらは既登録商標の排除ということで、4条1項11号によって排除されるということでございます。また、3条2項により登録されるレベルの識別力を持つ商標については、周知商標ですとか、混同を生ずる恐れがある商標という、そういった条件も満たすものと思われるということで、非常に強い効果があるということでございます。
それともう一つのパターンですが、今のような文字だけのもの以外に、先ほどの例で言いますと「ふらのワイン」ですとか、あるいは「HIGASHIOSAKA」といったようなもの、「関さば・関あじ」といったような図形と一緒に産地名が用いられている場合もかなり多いわけでございます。
こちらの方を説明いたします。消費者による識別を容易にするため、デザインされた図形など識別力のあるものと商品を生産している産地を併記している商標というものがあるわけですが、こちらにつきましては、当該商標中の識別力のある部分、すなわち図柄の部分、こちらに着目して商標全体としての識別力を認めて商標登録をなされることも多いわけでございます。一方、同じようなものであっても、注8のところですが、要部である図柄等の部分に識別力がない場合、単純な図柄である場合とか、その肝心の要部が既登録商標に類似している場合は登録できないわけでございます。こちらは参考資料3の方で具体的な事例を取り上げてございます。こちらは見ていただいたとおりでございますが、まず市町村等が権利者となっているものとして、こちらに書いてあります「松阪牛」、それから秋田県の「比内地鶏」、鹿児島県の「かごしま黒豚」といったようなものがございます。
続きまして、組合、いわゆる農協等が権利者となっているものといたしまして、新撰組で有名な壬生の「壬生菜」、それから同じく京都の「伏見とうがらし」、「小田原蒲鉾」、「浜名湖うなぎ」、先ほどの「関あじ・関さば」といったようなもの、こういう主として農村品等が多いわけでございますが、後ろの方には「草加せんべい」とか、これは農産品というか、食品ではありますが、そういったものがあるということでございます。
ただ、これは別に組合とか県とか、そういったところしか取れないかというとそういうわけではございませんで、参考資料3の5ページのところですが、私人で取っている場合もあります。「純系名古屋コーチン」というのは名古屋の方、それから「仙台長なす漬」というのはある企業ですね。それから「稲庭うどん」というもの、これは実は非常にたくさんの方が取っておられまして、1つの例ということですが、ある方が取っておられるということでございます。
なお、「稲庭うどん」のような場合は非常にたくさんの方が取っておられまして、「稲庭」というのは秋田県稲川町字稲庭という地区だということなのですが、秋田県外の方、例えば福島県とか東京都の方も取っておられるということでございます。商標としては特段そういう内容の審査はしない、誤認、混同が生じる恐れがあれば別ですが、そうでなければ地域外の方でも商標が取れるということでございます。
14ページに戻りまして、本文の のところですが、登録の効果ということで、産地名プラス商品名がいずれの商標においても入っているわけですが、そこの部分はそれだけでは識別力のある要部とは認められないということで、図形と一体となって初めて識別力を有するという判断をしております。したがいまして、権利範囲は限定的とならざるを得ない。また、産地名プラス商品名に相当する部分であっても要部が異なれば、他の商標も登録できるということでございます。現実に「稲庭うどん」の例を申し上げましたが、たくさんの方が色々な図柄で取っておられるということでございます。したがいまして、第三者が産地名プラス商品名部分が同一の商標を使用しても、図柄が違っていれば差し止め等の請求はなかなか困難であるということです。
商標のところでちょっと長くなりましたが、15ページでございます。続きまして、商標法以外の扱いでございますが、地域ブランドといったときに、商標法以外も当然関連してきまして、1つは不正競争防止法でございます。不正競争防止法、地域ブランドが特定の製品に対する産地をあらわす文字を用いることが多いわけですが、これを産地と見たときに、その産地でない方が使われたような場合には、この不正競争防止法の問題になることがあり得るということです。1つのパターンとして、2条1項13号の原産地等誤認表示に当たり得るということで、「京の柿茶」事件というのを書かせていただいております。「京の柿茶」の場合、京都で産出もしておらず、また京都で製造、加工もされていない柿の葉茶に対して「京の柿茶」という標章を付して商品を販売したケースでございますが、こちらについては不正競争行為、現行13号に該当するとした事案がございます。また、その他のパターンとして、不正競争防止法の2条1項1号の周知表示混同惹起行為ということで、著名なものであれば混同惹起行為ということで対象になる可能性もあるということでございます。
例えばということで、2パラグラフ目に、例えば「三輪素麺」ということでつけてございますが、「三輪」というのは奈良県三輪地方でございますが、「三輪の素麺」というふうに受け取られるものに対して、例えば三輪産でない、実際には長崎の方ですか、島原半島でかなり作っているというふうにも聞いておりますけれども、そういうところの産地の商品に対して「三輪素麺」という言葉を使う行為が問題になったケースがございます。16ページの下の注13のところで、最近の判例ということで、奈良地方裁判所でそうした判決がございまして、この工業協同組合に対して、不正競争防止法に基づいて、損害賠償請求を認めてございます。
その他の法律ですが、17ページに入りまして、いわゆる景表法の問題にもなり得るということでございます。景表法も同様に産地に関する表示、本来の産地が示す、その産地が特定の優良な商品であるというイメージを持つ場合に、実際にはその産地産ではないのにその産地産と名乗る場合には、景表法の違反にもなり得る。
それから、製品は農産物資、食品である場合が多いわけですが、こちらにつきましてはJAS法の問題にもなり得るということでございます。ただ、JAS法は消費者保護ということですので、基本的に産地が正しければそれ以上はなかなか品質等に対して入っていくということはないということでございます。
JAS法の場合は、これは私人が申し出て、先ほどの景表法等もそうなのですけれども、私人が申し出てどうこうというよりは、これは行政の規制として、不正な表示をすることに対して規制がかかってくるということでございます。ただ、先ほどの「三輪素麺」の事例でも、長崎県産などの素麺に対して「三輪素麺」ということで使っていたということに対しまして、18ページの注17ですが、JAS法に基づく会社名の公表、それから改善の指示、商品の回収ということを行ったというのが裁判の中で出てきております。
以上、ちょっと長くなりましたが、現行の商標法の扱い、それから商標法以外の扱いについて説明させていただきました。
この後、具体的に、では我が国の商標法でなかなか取りにくい、あるいは取っても保護が難しいという中でどういう部分まで保護していくかという議論に移るわけですが、その前に、諸外国の状況とTRIPS協定につきまして若干説明をさせていただきたいと思います。
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貴田審議企画班長
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引き続き御説明させていただきます。
まず諸外国における地域ブランドの保護ということで、まず我が国を含めて多くの国が加入しておりますTRIPS協定の中でどういった保護がされているかというところをまず全体的な枠組みとして御説明させていただきます。
TRIPS協定は地理的表示に関しまして、大きく分けて2つの保護制度を準備しております。まず第1ですけれども、地理的表示に関して、すべての商品を対象にしたものというのがございます。これは公衆を誤認・混同させるような表示を地理的表示に関して使用することを禁止するということでございまして、具体的にはこうした表示につきまして、利害関係人が第三者の使用に対して法的措置をとることができる。あるいは、第三者の商標登録、誤認・混同を生じさせるような表示を含みます商標登録を禁止するということを加盟各国に求めているものでございます。こういった点はウルグアイラウンドの交渉の当時におきましても、すでに各加盟国ともに商標法、あるいは不正競争防止法などによって整備をもうすでに済ませておるところが多ございましたので、交渉においても特段異論なく合意をされております。
それから、第2段階の保護といたしまして、これは産品が限定されまして、ワイン及びスピリッツに関してのみ適用されるものでございますけれども、こういった分野に関しましては、公衆の誤認・混同の有無というものに関わらず、地理的表示を他産地の商品に使用することを禁止している。
具体例で申し上げますと、ワインで「ブルゴーニュ」というのがございますけれども、仮にこれが地理的表示として保護されていということでございましたならば、秩父ワインに「秩父産ワイン・ブルゴーニュ風」というふうに表示すること、これは消費者の観点から見ると誤認・混同を招く表示とはなかなかとらえにくいと思うのですけれども、「ブルゴーニュ」という地理的表示を使用している、その使用しているという一点をもってTRIPS協定違反だということになるわけでございますので、いわゆる絶対的保護と言われる非常に強い保護を一部の産品についてのみ認めているというのがTRIPS協定でございます。
こういった絶対的保護に関しましては、ヨーロッパの強い主張によって入ったものでございました。当初、民事的な私権、訴える権利を私人に対しても与えるべきだというような議論がございましたけれども、ここは我が国とかアメリカの反対、ちょっと強過ぎるのかというような反対がございまして、ワイン・スピリッツの保護に関しては民事上の措置ではなくて、行政上の措置によって対応することも可能であるというような脚注が交渉の中で盛り込まれたという経緯がございます。こういったこともございまして、現在、我が国におきましてはワイン及びスピリッツの保護ということで、財務省の方で管轄をしております酒団法の中で行政的な規制を行ってTRIPS協定の義務に対応しているということでございます。
TRIPS協定に関しましては、その協定の中に、引き続き幾つかの項目について加盟国間で協議を行うという条項がございまして、現在、ビルトインアジェンダと言われている項目についてWTOで協議が行われております。基本的な構造といたしましては、地理的表示のワイン・スピリッツに見られますような絶対的な保護というのを他の産品にも拡大をしたいというのがEUあるいはヨーロッパ諸国の基本的なスタンスでございまして、これに対してアメリカなどを中心とする新大陸系の国々が反対をしているというような状況になってございます。
それから20ページでございますけれども、各国の法制度の中で地域ブランドがどのように保護されているかということで、(2)のまずEUで、次に米国ということで、2つの典型的なケースを簡単に御説明をさせていただきたいと思います。
まずEUなのですけれども、商標法という枠組みで見ますと、EU全体で適用される共同体商標という制度がございます。この中に共同体団体商標という規定が入ってございまして、この中で地域ブランドが一定の保護をされる仕組みとなっております。簡単に申し上げますと、原産地表示のみからなる商標であっても、共同体団体商標として登録することが可能であるというふうに正面から登録を認めているわけでございます。ただし、出願人は商標の使用条件等を明記した管理規則を提出しなければならない。あるいは、出願が拒絶されるべきであるという特段の理由があるというふうにだれかが考えた場合は、これを拒絶すべきであるという意見を何人も提出することができるということで、原産地表示を団体に認めることとのバランスを図っているということでございます。
もう一つそのバランスという意味で申し上げますと、次のポツでございますけれども、登録をされた共同体団体商標でございましても、第三者が商業上の誠実な慣行に従って使用している場合、こういった場合には当該産地表示の使用を権利者は禁止することはできないということでございます。さらに、団体が規則に反する商標の使用というのが巷で横行しているような場合に、これを阻止する合理的な措置をとらないといった場合には、その団体商標自体の取り消し事由となるということで、比較的自由に共同体団体商標を団体に認めるということのかわりに、幾つかの規制をかけているという状況でございます。
それで、商標権の侵害に対しましては、団体または使用権者が差止請求、あるいは損害賠償請求を行うことができるということでございますけれども、加えて、団体が使用権者にかわって損害賠償請求を行うことも可能であるというような制度をつくって、団体商標のメリットを生かしているということでございます。
21ページに参ります。EUの制度は共同体団体商標だけではございませんで、とりわけ食品、農産物に関しましては、地理的表示/原産地呼称を保護するための特別な制度というのを設けてございます。この制度におきましては、まず出願人が地理的表示を使用するためのその産品の規格、あるいは品質、使用条件、製法等々を添付いたしまして、各加盟国の受理機関に申請をいたします。加盟国の受理機関というのは、通常、農務省でありますとか農水省というところが多ございますけれども、ドイツのように特許商標庁というところが受理機関になっているところもございます。加盟国内でいったん地理的表示の使用の詳細、あるいはどういった地域で使用されるべきかという地域的な範囲などを審査いたしまして、これが保護に値するというふうに判断いたしました場合には、これを欧州委員会の方に回します。欧州委員会の方でまた同じような審査をいたしまして、最終的に登録をされるということでございます。下の方に詳細は書いてございますけれども、こういった登録に関しましては、各加盟国が登録の公告があった後、一定期間のうちは異議を申し立てることができるというような制度も整備をされてございます。
こういった登録をされた効果でございますけれども、登録されました場合には、保護される地理的表示の名声を利用した類似の表示を使用すること、あるいは公衆を誤認・混同させるあらゆる表示の使用が禁止されております。また、その誤認を生じない場合でありましても、地理的表示のあらゆる不正使用・模倣が禁止されるということで、先ほどのTRIPSでワイン・スピリッツに関する絶対的保護ということを申し上げましたけれども、これと類似のレベルの保護がされているということでございます。
最後に、こうした制度の下で地理的表示がこうした規則に違反して使用された場合でございますけれども、これに対しては民事上、または行政上の措置により対応しているということでございます。行政上の措置というのは具体的に申し上げますと、各加盟国に検査機関、多くの場合は公的機関が担っているわけですけれども、というものが設置されております。こうした検査機関が規定された条件と一致しない製品が使用されていないかどうかということを常に監視をしているということでございまして、もし発見した場合には検査機構はこれを排除するような義務を負っているということでございます。
22ページの方に移ります。次はもう一つ、世界の中で代表的と申しますか、1つの典型的なパターン、モデルとしてありますのが米国の制度でございます。米国は証明商標という制度を持っております。証明商標というものの中で地域的な原産地表示であっても特定の地理的出所を証明する商標として保護が可能であるというふうな制度になっております。下の方に若干書いてございますけれども、こうした証明商標制度というのは米国法におきましては、商標上の出所を表示したり、自他識別性を有するということではございませんで、購買者に対してある者の商品またはサービスに特定の特徴があること、または他者が確立したある標準を満たしているということを消費者に対して知らせるものであるという、そういう機能を果たすものであるというふうに理解されております。簡単に申し上げますと、その証明を受けた商標が何らかのチェックを受けましたということを示しているものということでございます。
上の太字のところに戻りまして、出願人は証明商標としてとれる証明機関でございますけれども、こうした出願人は原則として、文理上は限定されていませんけれども、実際は政府あるいは公的機関に限定をされております。加えまして、証明という業務の性質上、証明商標自体を出願人が自身で使用することは禁止されております。それから、第三者の商品が証明商標によって証明されている基準、あるいは条件、こういうものを満たしていれば証明商標が取れますよという条件を満たしているにもかかわらず、証明機関が差別的に証明を拒絶する場合、その他にも色々事由はございますけれども、こういった場合には利害関係人の請求によって取り消され得るということで、詳細は下の方に書いてございますけれども、幾つかの取り消し事由というものを定めておるところでございます。
登録された証明商標の効果といたしましては、通常の商標権と同様の効果を有しているということでございます。
23ページの方に参りまして、アメリカの場合は証明商標だけではなくて、団体商標というのもございますけれども、これにつきましては、我が国とある意味似通っているところがございまして、地理的に記述的な表示も登録可能でありますけれども、その場合には使用による派生的な意味ということで、Secondary meaningが必要とされるということでございます。
残り、欧州各国について簡単に申し上げますと、まずフランスは、そもそもEUにおける地理的表示の保護、欧州理事会規則による保護の提案国でございまして、これと類似のスキーム、これのモデルとなったようなスキームとしましてAOCという登録制度を持っております。別途、商標のスキームという観点で見ますと、団体商標ということで一定の保護ができることになっておりますけれども、フランスの場合はやはり使用による識別性が必要だということを規定してございます。ドイツの場合ですけれども、フランスのように包括的な農産品に関する登録制度というものは整備をしてございません。必要に応じて個別法で担保しているということでございますけれども、加えまして、商標法におきまして、これはどちらかというとEUの共同体団体商標に近いような形で、地理的表示の保護を団体商標の中で認めるという方向の制度を有しているのがドイツでございます。
イギリスにつきましても同じように団体商標で原産地表示の保護がなされていますが、イギリスにつきましては、これに加えまして証明商標制度ということで、ある意味、米国の制度に近いような証明商標制度を整備しているところでございます。
それから韓国につきましては、最近の動きといたしまして、地理的表示を団体商標制度の中で保護しようということが今後検討されるというふうに承知しております。
以上です。
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花木審議室長
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説明が随分長くなっているのですが、最後に今までのまとめで、24ページでございます。
商標法による保護というのが知財推進計画等における課題ということでございますので、こちらにつきまして、今までのプレゼンテーションをもとに整理をすると、こうではないかということを書かせていただきました。
(1)でございますが、まず現状におきましても、地域ブランドとされるものの多くが商標登録されている、特に図形と一緒に商標登録されている。また、使用の許諾ですとか、適正でない使用に対する警告、裁判といった形で使用されている。また、文字商標についても、現実には可能、少数ではございますけれども、可能でございまして、こういう形で登録された事例も少数ではあるが、存在すると言えるかと思います。
そういたしますと、商標法と地域ブランドとの関係ですが、一定の役割を果たしているということが言えるのではないか。ただ、さらに一層的確な保護を図るためにということで言いますと、やはり課題になってくるのが先ほど申し上げました3条2項の適用ということになるかと思います。こちらにつきまして、第4回の議論の中で、現行の運用の整理というのが1つ課題になっていたかと思いますので、こちらの運用方法の明確化等ということが1つ重要な課題ではないかということかと思います。
さらに法律の仕組み自体ということまで含めて議論した場合、以下の点が課題となり得るのではないかということで2つ書かせていただいておりまして、まず文字としての商標登録につきましては、3条2項によって識別力が確立したとは言えない段階にあるものについて、これは運用の問題と密接に関連しているのかもしれませんけれども、なかなかどこからより上が3条2項というのはなかなかわかりにくいという点もあるかと思うのですが、いずれにしろ、そこより下というのはあり得るわけでございまして、そちらについては文字としての商標登録ができない。それから2番目に、図形入りのものにつきましては、ここは図形さえ異なっていればといいますか、識別力があれば登録できるわけですが、逆にどういう方でも登録できるということ、さらに図形部分が違えば権利行使ができないということでございます。
本日の検討でございますが、制度検討の方向ということで2つ、この 、 のうち、 については先ほどのEU等の例も踏まえて、こういう方向が考えられるのではないかということを事務局の方から書かせていただいております。 につきましては、要すれば、図形入りのものにつきましては、なかなかこれは文字部分単独に対する効果というものがないということでございますので、効力は限定的ということは基本的にはやむを得ないのではないかということで、 の部分だけ書いてございます。
第1に、やはりこれも第4回の御議論の中で制度の国際調和ということを1つ大きく書かれておりますので、団体商標としてEUにおける2つ、理事会規則と共同体団体商標と2つございましたが、EUの商標法に基づく「共同体団体商標」的な制度というのが考えられないか。具体的にはということで、簡単に書いてございますが、組合等の団体であれば登録できるというのが一言でございます。25ページですけれども、登録に際して、その使用を管理する規則等を提出する。そこに団体の構成員資格等を記載するということでございます。第三者については、登録後、異議を申し立てることが可能ということでございます。先ほどの説明にもありましたように、団体が規則違反に対する使用に対して合理的な措置をとらない、いわゆる権利の上に眠るような状態になった場合、あるいは法定要件を満たさなくなった場合等においては、その商標は取り消され得るということでございます。また、アウトサイダーの問題ですが、団体には属しないけれども、規則に定められた使用条件を満たしていれば、その第三者は使用することができるということでございます。
メリットにつきましては、国際的に整合的な制度であるということ、少なくともEUと同じ制度ということですが、もう一つは登録審査も通常の商標と同様に早い者勝ちで処理できるということかと思います。
ただ、課題といたしまして、1つは、組合であれば登録できるということなのですが、なぜ登録できるかというところの説明がなかなか難しいということがあるのかどうかということ。特に、識別力との関係の議論というのがあるかどうかという点が1つ大きな論点かと思います。また、地域内に同一商品を生産する団体が複数ある場合に、早い者勝ち、これは一般の商標もそうなのですけれども、そういう形になりますので、そこのところが、こういうある意味で公的な商標に対して早い者勝ちということで本当にいいのかどうかという議論はあり得るのかなと思っております。
でございますが、EUの団体商標をベースに若干制約を加えた形ということで、特定の団体のみ登録できるというパターンを提案させていただいております。基本的に上記 と同じなのですが、出願できる団体について早い者勝ちにならないように、一定の制約を設ける。制約の仕方として、地域内においてその商品を生産している者の多数を代表する団体であるなど、何らかの正当性を有する団体ということで限定する。これは早い者勝ちの問題と、もう一つは識別力との関係で、こういう正当な団体が作ったものであれば、消費者の方からその名前を聞いたときのイメージ、それと合致するということをもって識別力があると判断できるのではないか。したがって、地域で単に生産している団体というよりは、識別力の説明がしやすいと言えるのではないだろうかということで提案させていただいている次第でございます。
なお、正当性の判断ですが、原則として当該産地名のあらわす地域においてその商品を生産する人の多数、生産者として多数であり、生産量としても多数というふうにすれば絶対的な多数者ということで、その方以外の団体があったとしても、常に生産量、生産者とも多いわけですから、早い者勝ちの問題というのは基本的に生じないのではないか。そういう内容は出願人に書類をもって挙証していただく。現在、3条2項の適用を受けたい場合に識別力があるということを挙証していただいているのと同じように整理できないか。また、事後的にそういった正当性が失われた場合には取り消しの理由になるということでございます。
この方法のメリットといたしまして、26ページの上のところですが、どのような組合でもいいということではないという意味で、生産を代表する者ということで、需要者から見た期待、あるいは識別性というものが説明しやすいかどうか。それから、正当性の主張については、当事者の立証に委ねることによっていわゆる早い者勝ち、本家、元祖争いといったことに特許庁の実務が巻き込まれないという言い方をするとあれですけれども、そういうことに対する支障が余りないのではないかということでございます。
課題といたしましては、やはり識別性ということが商標の根本を貫く概念かと思いますが、それが産地・商品の生産者として正当であるということをもってそういう期待に対する合致、識別力という説明ができるかどうかということ、それから特許庁の側の問題として、正当性の審査を的確に実施できるかどうかという問題があるかと思います。
いずれの、 、 の場合におきましても、EUの場合には第三者の使用は認めているということなのですが、いわゆるアウトサイダーをどうするかという整理が必要かと思います。アウトサイダーの方に対して商標としての使用を認めなくても、当該産地で生産された商品という意味で普通に使用する場合には、現行の商標法26条1項2号で商標権の効力は及ばないというふうに書かれておりますので、それで問題はないと言えるかどうか。それで不十分である場合には、やはりそれを確認するための何らかの規定が必要かどうかということでございます。
ただし、このパターンだけ特殊な効力の例外を認めた場合には、外部から見た場合に、例えば同じような産地名プラス商品名からなる商品であっても、それが3条2項で登録されたものなのか、この新しいパターンで登録されたものなのかによって効力が異なるということになってきますと、若干予見可能性という面で複雑な事態にならないかどうかという点もあるかと思います。
もう一つ確認でございますが、 、 のいずれのパターンにおいても、その商品の品質については特許庁としての審査はしないということが基本ではないかということを書かせていただきました。
それから3番目にアメリカ型のスキームということで、証明商標ということも考えられるかと思うのですが、この場合にどういうパターンかということで書かせていただいております。
証明機関等の団体が証明商標として登録いたしまして、その団体がその使用基準等についての規則を提出して、その規則には団体が証明する内容等を記載するということでございます。団体の出願があった場合には、特許庁におきまして様式を形式的に審査して登録するということで、あとは団体が証明をする。団体は証明を拒絶してはならないということでございます。団体が適当な者以外に対してその証明を行ったり、あるいは適当な者に対して証明を行わないなど不適当な運用がある場合には証明商標の登録が取り消されるというパターンが考えられるかと思います。こちらも と同じでございまして、特別な判断を要しない形でできるわけでございますが、課題といたしまして、そもそも日本法におきまして、証明商標がもちろん定義上は書いてあるわけでございますが、実態として通常の商標とさほど異なった運用をしていない中で、1つの明確なパターンをつくる必要があるわけでございます。さらに、この団体の主体制限を設けない場合、どんな団体であっても証明できるということですが、どんな団体であってもこの産地名と商品名からなる標章を証明していいのかどうかということはあるかと思います。また、証明機関みずからが証明商標を使用できるのかどうか、日本で考えた場合には農業協同組合とか、そういったところが証明する場合が多いかと思いますが、組合自体が出荷しているような場合も非常に多いと聞いておりますので、そういった場合の扱い、みずからの商品に対して証明を行うということはできるのかどうかといった点についてどう考えるかということが論点になるかと思います。
本日はちょっと説明が長くなってしまったのですが、地域ブランドとの関係で、1つは現在の運用について、それから2番目が海外の状況について、3番目は日本法において地域ブランドをどう保護するのか、立法措置が適当なのかどうか、適当、あるいは可能だとした場合にどういうパターンがあり得るのかというこの3つの点について主に御議論をお願いしたいと思って、ちょっと長くなりました。
最後に、27ページの(3)ですが、農林水産省におきましても、先ほど申し上げましたように9月29日から検討を開始されているということでございます。したがいまして、その中で仮に法律に関する議論というのが出てきた場合には、調整規定の必要性も含めて今後検討する必要があるという点を一応資料上、テイクノートさせていただいております。
以上です。大変長くなりまして、失礼いたしました。
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土肥委員長
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どうもありがとうございました。
かなり詳細に説明を頂戴いたしました。ただいまの説明につきまして御質問等がございましたら、それらからまず御願いします。
竹田委員。
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竹田委員
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これは確認ですけれども、24ページ以下の、最後に審議室長が商標法による保護についてということで御説明になったことからすると、本日、この審議会で議論すべきことは、いわゆる地域ブランドとされるものについて商標出願があった場合に、(1)の 、 をあわせて読みますと、その商標登録出願は使用による識別力が確立したと言えないものであること。それからもう一つは、いわゆる図形商標との結合商標ではなくて、産地名プラス商品名という文字商標だけで構成されている場合に、そういう商標を商標法の改正によって、登録することを認め、現行よりさらに保護を拡張する必要があるかどうかということである。それはそれでいいですか。
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花木審議室長
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はい、そういうことでございます。
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竹田委員
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その上で、今度は(2)のところで提案として、ECにおける共同体団体商標のような制度を設けるということと、特定の団体のみの商標とするということと、証明商標とすることと3つの提案がなされているわけですが、そうすると、先ほどの課題のために商標法を改正するとしても、現行の商標法3条2項を改正することはない。商標法3条2項の運用によって、特許庁の審査、審判の運用によって地域ブランドのそういう文字標章の登録範囲を拡張する方向で検討するということもないという前提でよろしいのですか。
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花木審議室長
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結論を決め打っているつもりはございませんで、要すれば、知財本部等との関係で、今、竹田委員が冒頭おっしゃったような形の商標の保護についても、現在保護されていないものについて保護すべきではないかという議論がある。その場合に、法律によってやる場合に、3条2項自体を変えてしまうのだという議論もあるのかもしれません。ただ、我々の中で、事務局の中で議論した中では、それは3条2項をそもそも変えてしまうというのはなかなか難しいのではないかという前提があった上で、新しいパターンとして3条2項に達しないものについても、何らかの形で認められないかということで提案させていただいているものでございます。また、3条2項の運用については、今、最初の長々とした説明の中で申し上げまして、さらに6.の(1)の中でも書いてありますように、運用の整理というのが1つ課題だというふうに思っておりまして、ここのところについても御意見を頂戴できれば大変ありがたいと思っております。
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土肥委員長
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どうぞ。
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竹田委員
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今の趣旨は了解しました。私も3条2項を改正すべきだとは全く思っておりませんけれども、ただ、運用については、先ほど運用基準も御説明いただきましたけれども、それによって解決できることもあり得るのではないかということがあるので、その点も含んで議論した方がいいのではないかと思ったわけです。あとは御説明の趣旨は全部了承しました。
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土肥委員長
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他には、山中委員、どうぞ。
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山中委員
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24ページの制度検討の方向というところに幾つかオプションをピックアップしていただいているのですけれども、基本的には地域ブランドを検討するという前提に鑑みて、個人もしくは私企業には認めないというところから出発してよろしいのでしょうか。資料3の最後のところには一部、個人、私企業で地域ブランドを登録されているケースがあるのですが、今後の検討は基本的には地域というとらえ方をした場合に、個人、私企業は除外するというところから出発してよろしいのでしょうか。
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花木審議室長
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その点も御意見をいただきたいと思うのですが、現在の案は団体商標を前提に考えてございますので、特に 、 についてはですね。こちらは団体商標の主体をどうするかという議論は1つあるかと思うのですけれども、ある程度公的なものという考え方で紙は書かせていただいております。その点、はっきり書いていないのですが。
3番目の証明商標につきましては必ずしも、アメリカなどでもいわゆるULとかそういう民間の機関がある。そういうところでやっているわけですので、そういうものが成り立ち得るとは思うのですけれども、日本の場合はそういう業としての実態がアメリカ等に比べると比較的確立していないかと思いますので、その辺も含めて御意見をいただければと思っております。
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土肥委員長
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どうぞ、本宮委員。
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本宮委員
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今の件に関連して、この地域ブランドという場合、地方自治体もかなり参画していると思うのですけれども、地方自治体に関してはどう考えて、例えば今のアメリカですと証明商標だと地方自治体も権利者になれるような形だと思うのですけれども、その辺はどのような形で理解すればよろしいでしょうか。
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花木審議室長
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団体商標といったときに地方自治体の場合はかなり難しくなってくるのではないかというふうに思います。その辺については具体的な提案を今持っているわけではありませんが、とりあえず団体商標という打ち出しですので、構成員のあり得るものというか、そういうパターンになってくるかと思います。自治体についてはそういう整理をした場合はなかなか難しくなってくるのではないかなというふうには思いますが。
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土肥委員長
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どうぞ。
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本宮委員
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地方自治体に関して、ニーズといいますか、団体商標の主体的要件を緩和して、自分たちもオーナーになれるような、そういうようなニーズというものは今どう把握されておりますでしょうか。
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花木審議室長
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ニーズにつきましては、最初に申し上げた幾つかの事例を中心に把握しておりまして、あの中でも市が直接商標を持っているような場合も、東大阪とか富良野とか、そういうところがございますが、多くの場合は農業協同組合等の事業者組合、あるいは町が出資した第三セクターというのが多いというふうに理解しております。
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土肥委員長
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よろしゅうございますか……。
それでは、議論に入ってまいりたいと存じます。主として議論の対象になりますのは24ページのところ以降ということになろうかと存じます。それで、竹田委員が冒頭で確認なさいましたように、使用による識別力が確立したとは言えない段階にある。つまり、3条2項の適用がない段階にある、そういうブランドというのでしょうか、これを保護していく。その標章は産地名プラス商品名、そういう標章ですけれども、そういうものを商標法制度の中で保護していくということについての御意見をいただければと思います。
地域ブランドを保護するということになると、これを保護する、これを認めざるを得ないですよね。
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花木審議室長
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はい。
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土肥委員長
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恐らく、これを認めざるを得ないのだろうと思います。だから、その3条2項がある限り、それは不可能ということになりましょうから、3条3項を作るとか、何かそういうことになるのではないかと思うのですけれども、どうぞ御意見をいただければと思いますが。
西野入委員、お願いいたします。
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西野入委員
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食品の業界としてもやはり地域の名称を使いたいというのはかなり高いと思っております。その中で、今回ですと地域の団体の方をどうも優先的に議論されているようですので、企業としても企業努力等によってかなり地域の名称を使ったとか、さらに産地とは切り離れて企業ブランドとして確立しておるものもあると思いますので、その点の御配慮もしていただきたいなと思っております。
それと地理的名称の保護に関しては、特に消費者保護の場合ですが、我々としては不正競争防止法やその他のJAS法や景品表示法等でかなり保護されているのではないかという考えは持っています。
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土肥委員長
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ありがとうございました。
竹田委員。
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竹田委員
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今の点から言えば、確かに御発言になったように、地域ブランドの多くは農水産物なのですね。そうすると、そういう農水産物についてはJAS法という法律があるわけですし、現に農林水産省でもこの視点からの問題についての検討は行われていると聞いておりますし、それから不競法や景表法で保護される場合もある。そういうことになると、企業の長年蓄積してブランド化したものは、現行の3条2項をクリアすれば登録すればいいので、それ以外に何らかの規定を設けなければならないとしたら、もっと幅広く、いわば地域の経済の活性化のために役に立つような形での商標ということになると思うのですね。それが今言ったようなJAS法とか周辺法の方で足りると言えるのかどうかということは、私ももう一つわかりませんけれども、地域経済の活性化のために地域ブランドを認めていく方向で行ってほしいというのが今の産業界の要望で、それを受けて立つべきだというのであれば、団体標章による保護、それも具体的に言うとまた難しい点があると思うのですが、それはまた必要があったら後で言うことにして、そちらの方向に行かざるを得ないだろうと私は考えますが。
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土肥委員長
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ありがとうございます。
他にはいかがでしょうか……。
つまり、団体商標として認めていくということになると、他の法制と違うのは、私権として構成しますね。つまり、主体的にブランドの育成はできるということにはなりましょう。
どうですか、いかがでしょうか。どうぞ、どちらからでも構わないのですけれども、識別力の点からいかがですか。つまり、産地名プラス商品名という、そういうブランドを認めていくということになりますと、識別力の点から何か御意見はございませんでしょうか。つまり、唯一、使用による周知性のみかどうか。
本宮委員、どうぞ。
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本宮委員
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今の産地名プラス商品名ということで、それを認める形をとるということは、今までの商標法の体系の中の識別性に大きく影響を与えてくるという状況があると思いますので、そこはある意味では慎重に考えないといけない問題ではないかなというように思っております。
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土肥委員長
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はい。鈴木委員。
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鈴木委員
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知財協でこの問題を検討したときも、商標の基本的な要素である自他識別機能を持っていない商標登録をどんどん認めてしまうというのは、現行の商標法の枠組みを崩してしまうことになるのではないかという懸念が多く出されております。それで私どもが余りよくわからないのですが、識別力が確立したとは言えない段階にあるような商標で、しかも産地名プラス商品名をどうしても商標法の枠組みの中で保護しなければいけないというニーズはかなり切実なものとしてたくさん挙げられてきているということなのでしょうか。
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土肥委員長
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どうぞ。
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花木審議室長
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そうですね。実際に詳細なヒアリング調査はしておりませんが、我々、経済産業省の製造産業局あたりから聞いてみても、地域における取り組みというのは最近非常に増えてきておりまして、そういう中で文字による商標を取りたいというニーズはかなりあると。ただ、なかなかできないので図形と一緒に取ったりとか、そういう形でやっている。ただ、図形ですと誰が取るかわかりませんので、ちょっと違った図形でまた域外の方とかそういう方が使ってしまうので、何とかならないかという声はあるというふうに聞いております。したがって、この知財推進計画とか、そういう中にも載っているのだというふうに理解しております。
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土肥委員長
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その識別力の点で問題があるという御意見だったわけですけれども、いわゆる自他商品ということになったらそうなのかもしれませんが、その単位を地域に限れば、それは識別力はあるのではないですか。そういうことはありませんか。そういう話ではありませんか。
田村委員、どうぞ。
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田村委員
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そういう話なのだと思います。私はあまり先ほどから意見を申し上げておりませんが、基本的には竹田先生と同趣旨の意見で、あるいは他の方からも色々とありましたが、本当にニーズがあるかどうかをちょっと確認したいということです。それで、不正競争防止法、その他のJAS法等で十分であるならば、それ以上あまり無理をする必要はない。逆に、もしニーズがあるのであれば、それはもちろんニーズにこたえなければいけないと思います。こたえる場合には、今、土肥先生もおっしゃったような形で、商標法にそれを接合させるためには、どこかでやはり識別力の手がかりを見つけなければいけないとすると、地域というもので見つけるのだろう。そうすると、個人ではなくて地域ということになりますと、地域に複数の業者がいますから、それをまとめるものとしてはやはり団体商標が適切になってくる、そういう整理なのだと思います。
だから、もしニーズがあってこたえるのであれば、この制度検討の方向の中では識別力、3条2項よりも落とすけれども、それにかわるような要件を入れることができる、25ページの が最もよろしくて、かつそのときに26条、私は特別法を設ける必要があるかどうか、ちょっとにわかにわからないところがありますが、例えば26条1項2号で対処するか、明確化のために何か規定を設けて、第三者の正当な使用はセーフにする、そんな形になるのではないかと思うのですが、ひとまずは、まずはニーズのところの確認、それから最後の、やはり大事なのは27ページの農林水産省における検討がどうなるかということも非常に重要かと思います。
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土肥委員長
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ありがとうございました。
高部委員、どうぞ。
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高部委員
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まず、識別力がまだ確立したとは言えない段階でも、保護をしてほしいという要請は理論的にはあり得るのではないかと思います。つまり、これから大々的に使用して識別力を高めようとしようとしている段階で、商標登録出願をするということも理論的には考えられます。ただ、それが現場で実際にどのようなニーズがあるのかということについては、さらに調査をしていただきたいと思います。
次に、今回の資料で3つのメニューを挙げていただいておりますけれども、日本の制度では証明商標は、余り馴染まないように思います。そうすると、ヨーロッパ型といいますか、 か ということになるわけですけれども、 というのは非常に難しそうで、その修正案というのが多分 だろうと思いますけれども、 の課題となっている部分をある程度解決できるのが のスキームなのかなと思います。
そのときの例外規定を設ける、すなわち、効力の及ばない範囲を設けるということが、現行の26条でいけるかどうかという問題はあると思いますけれども、26条でカバーできるのではないかと思います。
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土肥委員長
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どうもありがとうございました。
複数の委員から実態的なニーズの確認という要請がございましたので、事務局におかれましては、その点について調査をしていただきたいということがございます。
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花木審議室長
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わかりました。
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土肥委員長
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それから、お二方、今おっしゃったわけですけれども、仮に というそういう考え方で行くと、ここで難しいのは主体をどう見つけるかということだと思うのですね、主体を。ここについて、何か御意見はございませんでしょうか。
高部委員。
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高部委員
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資料には、今までの3条2項の証明とほとんど同じだと書かれているのですけれども、3条2項の場合に出してくる資料だけでは、仮に団体が2つ以上あるときに判断するのは難しいのではないかと思います。そういう意味では、立証は出願する側にとってみるとかなり厳しいと思います。地域に団体が例えば2つ以上あるときに、2つの団体が共同で出願して共有するということは不可能ではないわけですよね。そうすると、難しい場合はそういった方策というのもあり得るのではないかと思います。
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花木審議室長
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今の高部先生の御指摘は25ページの下のところかと思いますが、3条2項と同じ資料でというつもりではございませんで、正当性の判断につきましては、これは仮に法律を書き起こして、3条2項に追加する形で3条3項のようなイメージで何らか書くイメージになるかと思うのですけれども、その場合は、例えばここに書いてありますように、1つの大きなメルクマールというのが当該商品のあらわす製品を生産等する者の多数であるというのが1つのメルクマールになるのではないかというふうに思っております。それを証明してもらうということですね。それが統計が何らかあるのかどうか、あるいは地域において、公的機関において何らかの証明をしてもらうのかどうかとか、そういうものを1つもらうということがあれば、識別、そういう正当な団体であるという1つの証明になるという運用ができないかどうかということを考えているところです。
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土肥委員長
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他に、竹田委員、どうぞ。
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竹田委員
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田村委員と高部委員が言われたニーズの関係、あるいは農水省における検討との関連、さらには26条の問題等も踏まえて、なおかつ改正をするのであればこの の方であろうという点には私も全く賛成なのですが、一番懸念するのは、特許庁の商標審査の段階でこれだけのきちっとした審査ができるだろうかという点です。というのは、現在の商標の審査基準でも、例えば4条1項の11号とか15号で「取引の実情ということも考慮して」となっていると思うのですが、実際には、審判段階では別として、審査段階ではその点を審査をするということはやられていないのが実情だと思うのです。そういう状況で、さらに高度な要件の審査が必要になるのではないかと思います。その点について、今の商標審査の実情も踏まえながら、きちっと審査ができるような規定づくりと制度づくりというか、その運用も含めて実施できる体制もつくっていくということが非常に大事で、そうでないと、まさに法律改正ができても実際の運用がそれに向かって動かないという事態が起きてくると思いますので、その点については特に御留意していただきたい。
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土肥委員長
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その点、何かありますか、運用上の問題について、特に今はありませんか。
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小川商標制度企画室長
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ありません。
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土肥委員長
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よろしいですか。
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花木審議室長
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はい。
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土肥委員長
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承っておくということのようでございます。
高部委員、どうぞ。
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高部委員
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先ほど「三輪素麺」の事件の話が出ました。この事件は3条2項で権利を取っているということなので、少なくとも審査段階では、「三輪素麺」が原告となった商標権者の出所をあらわすものとして周知になっていたと認定されたと思うのですけれども、侵害訴訟ではその団体だけではなく、三輪地方で作っている業者全員ですということになってしまったのです。3条2項について、今回仮に の選択肢をとるとすると、主体の点が問題になりますので、「三輪素麺」の事件を見ると非常に難しいなということがよくわかるわけです。
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土肥委員長
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ありがとうございます。
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花木審議室長
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この認定が難しいのではないかという御指摘ですね。ここは我々もそういうふうに、実は難しいだろうということを思っておりまして、したがって、論点に挙げさせていただいております。この点も含めてまだ整理を要する点がこの案の であっても、まさに案の についてはそこのところが非常に問題になり得るかと思いますので、よく中でもさらに検討をしてまた御報告させていただきたいと思っております。
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土肥委員長
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はい。
それでは、そこのところは事務局が宿題として持ち帰るということのようでございますので、もう一点御指摘があったのですけれども、アウトサイダー問題、26条の話として現行法のままでよろしいのか、あるいはアウトサイダーについて何か格別の手当をしておく必要があるのか、この点について御意見はございませんでしょうか。
田村委員、どうぞ。
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田村委員
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先ほど、現行法のままでもいいのではないかと思うけれども、疑義があるのであれば明確化のためにと申しましたが、1つやはり考えなければならないのは、この26ページでもすでに指摘されておりますように、もし特別に条文をつくってしまいますと、この特別の商標に限ってだけ、特別の何か適用除外条項といいますか、権利制限事由があることになる。そうすると、その商標が後々にものすごく立派になってきて、現行法のままでも3条2項で登録し得るような商標になりかわったときに、その特別な条文が邪魔になるという問題がございます。
そのように考えると、私は先ほどちょっと言葉足らずだったので補足したいのですが、基本的には26条1項2号だけで普通の商標の適用除外というか、権利制限事由と同じ条文だけを設けておく。あとはその解釈で、まだ将来的にどんどんこの特別顕著性が高まってくれば26条1項2号から外れる、そういった形で運用するのがよろしいのではないかと思います。もしそうではなくて、特別条文を設けるということになりますと、どこかで何かまた再度、普通の商標登録への登録変更の道を開くとか、何か複雑な制度を組まなければいけなくなる必要があるかなという気がいたします。
以上です。
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土肥委員長
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ありがとうございました。
高部委員も同じような、そうですね。
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高部委員
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私も賛成です。
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土肥委員長
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はい。
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高部委員
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一般的に地域ブランドを保護しようとする場合に、前提としては、商標権の効力を特別の形にしようとは思っていないわけですね。
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土肥委員長
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どうぞ。
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花木審議室長
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はい。なるべくそうすべきではないと思うのですが、ただ、平成8年の団体商標の議論をしていただいたときに、今日は資料を載せていないのですが、このアウトサイダーの問題というのは1つ大きな論点になったという経緯もございますので、その点で論点に挙げさせていただいている次第です。
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土肥委員長
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効力ですか。
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花木審議室長
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効力は基本的に同じ方がいいのではないかというふうに思っております。
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土肥委員長
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他にはございませんか。
小塚委員、お願いいたします。
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小塚委員
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田村先生、高部先生が言われたことに基本的に賛成ですが、26条2号があるにしても、こういう制度を仮に入れた場合に、やはりこの団体が不当に、加入あるいはその使用を、その地域の他の事業者に拒絶してはならないという、何かそのあたりが適格性の条件として必要なような気がするということが1つです。
それから2つ目に、これは1つ前のステージで申し上げるべきだったかもしれませんが、団体の部分、「組合等の団体」という微妙な書き方をしておられるのですが、この団体の器ですね。最近は色々なものができてきておりまして、NPOとか中間法人とかできてきていますが、そういうものをどう考えていくか。私はこの器自体は必ずしも限定しない方がいいのではないかと思いまして、極端なことを言えば、株式会社でもいいのではないかと思っていますが、ただむしろ内部の要件といいますか、例えばそのメンバーがすべてその地域の事業者であることとか、何かそちらの要件で絞った方がいい、器自体は余り制約しない方がよいのではないかというふうに考えております。
それから3点目、最後ですが、今お話に出ました効力に関係してですが、こういうものを認めた場合の商標の使用という概念をどうするのか、ちょっと私もよくわからないところがあるのですけれども、具体的に使用するのは個々のメンバーになる事業者ということになるのか、団体自身が使用するということになるのか、どういう形態の行為が当該商標の地域ブランドの使用ということになるのか、ちょっと私自身よく見えないところがあるのですが、何かお考えがありましたら伺えましたらと思います。
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土肥委員長
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どうぞ。
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花木審議室長
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色々御指摘ありがとうございます。
団体の器につきましては、まだ我々の中でもきっちりした議論はしておりませんので、また事務局案を御相談させていただきたいと思います。ただ、第4回の小委員会では団体商標自体についてはかなり幅広く主体を認めてもいいのではないかという御議論をいただきました。今回のこの地域ブランドの団体商標が同じように認めていいものなのかどうか、あるいは先ほどおっしゃいましたように株式会社であっても出資者が地域の方でないといけないとか、何らかの規定を入れるのかどうかと、その辺につきましては色々な議論があり得るかと思いますので、あとNPOとか中間法人という御指摘もいただきましたので、ちょっと整理をして、再度御議論させていただきたいと思います。今、念頭に置いているのは、現在の団体商標の対象になっているのはいわゆる公益法人、事業協同組合、それから株式会社は今は全くなってないのですが、先ほど申し上げましたようなまちづくりのための第三セクターのような場合というのがあり得るかと思いますので、この辺は各先生の御指摘のあったニーズの議論ともかなり結びついてくると思いますので、よく調べたいと思っております。
それから使用についてはまだはっきりした議論をしていないのですが、色々なパターンがあり得て、団体だけが使うような場合、例えば夕張メロンのようなところはもう完全に出荷自体は組合しかやっていないということでございますし、そういう場合でも不使用にならないという、あるいは団体が一切出荷をしないでメンバーだけに使わせているような場合というのがあるのかどうかちょっと確認をして、そういう場合であれば、現在の団体商標のように、団体自体が使っていなくても取り消されないような何らかの仕組みが必要ではないかというふうに思います。
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土肥委員長
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はい、どうもありがとうございました。
他にございますでしょうか。
山中委員。
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山中委員
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基本的には団体商標ということで認めていく方向になるかと思いますし、今の地域おこし、村おこしというこういう時代で行けば、商標法の趣旨からいってもこれは認めていくべきだというふうに感じるのですが、先ほど竹田委員がおっしゃいましたように、かなりの主流は農水産物というお話がございましたけれども、農水産物の場合は、これは収穫地、もしくは漁獲地がある程度特定できるというところで運用が比較的明快だと思うのですが、一方で、例えば伝承技術などの場合に、仮にそういう事例があったとして、例えば新潟県の村上で堆朱をつくっている。そこで技術を伝承した人が東京に出てきて、同じ技法で物をつくって村上堆朱というような形で販売するような事例は、その方は当然アウトサイダーでございますので、その団体としてはそういう技術を持って別の場所へ行ってそれを業として使っていくという事例についてはどういう運用にするのかといったようなところが、ちょっと視点を変えて検討しておく必要があるのではないかというふうに感じますが。
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土肥委員長
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はい。
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花木審議室長
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おっしゃいましたような色々なパターンが、特に工芸品の場合にあり得るかと思いますので、こちらもニーズとあわせて整理して、色々なパターンを念頭に置いて再度詳しく御相談させていただければと思っております。
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土肥委員長
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今、山中委員の御発言にもございましたけれども、農産品のもの、これがかなり地域ブランドの場合にも入ってくるであろうということ、これにつきましては、再度、最後に事務局から紹介がありましたけれども、農林水産省における検討があるやに聞いております。そこの制度がどのようになるのかということにつきましてはまだその緒についたところでございまして、まだ形ははっきりしてはいないようでございます。しかし、農水省との関係で言えば、種苗法との関係もございまして、かつての関係のように、表示に関する保護制度が2つできるということも考えられるわけでございます。もちろん、こちらがどういうふうになるか、あちらがどういうふうになるかわからないところで御意見を頂戴するというのも難しいのかもしれませんけれども、例えば酒団法のような形で行政規制だけで終わるのかもしれませんし、私権構成をするかもしれません。しかし、例えば最近の食の安全とかトレーサビリティとか、こういうふうなことが世論で非常に強く言われているところからいたしますと、恐らくきちんとしたものをお考えになるのではないかと思います、この中にもおいでになるのかもしれませんけれども。
その農水省における制度とこの我々が今検討しておる制度について、この段階で何か御意見を頂戴できるということはございますでしょうか。
田村委員。
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田村委員
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皆目情報がないところで勝手な推測になりますけれども、例えば現在でも似たような重複の規定というのは、例えば不正競争防止法の品質誤認表示の規制というものがございます。もし農林水産省の方における検討が、この不正競争防止法2条1項13号の品質誤認表示の規制を私人が行使しやすくするような形の民事規制的なもの、それに例えば登録が介在する程度のものでしたら、それはむしろ特に調整規定を設けなくてもよいのではないかと思います。それはどういうことかというと、そういう規制される行為は本来商標権者もしっかり規制しなければならないものでありまして、それを仮に商標権者以外の者が農水省の方の権利者といいますか、登録者になったとしても、それは特に、本来その表示が付されるべきではない商品の禁圧が進むだけですので、不競法の2条1項13号で特別な調整規定を置いていないのと同じような形で野放しでも構わないのではないかと思うのです。ただ、今、土肥先生から御紹介がありましたように、もし先方の方の検討がより私権的なもの、例えば譲渡もできないものになっているなどということになりますと、これは実質二重譲渡みたいなことが起こり得るわけですから、権利者が違ったときにどうするのか、あるいはそもそも違わないように仕組むべきなのか等の大変な調整規定が必要になってくるのではないかと思っております。
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土肥委員長
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おっしゃるとおりではないかと思うのですけれども、私権構成のものがもし2つできればまさにそういうことになりましょうし、あるいは今の酒団法のような形だけの問題であれば、4条あたりのところだけの調整で済むのかもしれません。これはこちらがはっきりしないし、向こうもはっきりしませんので、事務局におかれましては、農水省の議論の経過も今後この小委員会の中に御報告いただければというふうに思います。
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花木審議室長
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承知いたしました。
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土肥委員長
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それで、時間もあと5分ぐらいになってきたところでございますけれども、全体を通して何か御発言、鈴木委員、どうぞ。
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鈴木委員
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これは運用の話になってしまうのかもしれないのですが、先ほど商標権の効力についてこの地域ブランドであっても変わらないというお話があったと思うのですが、これは例えば4条1項11号の適用を考えてみたときに、商標自体が類似の場合ですとか、指定商品が類似の場合の後願を排除できるかどうかという問題があると思います。識別力の弱い登録商標について、通常の審査のように類似商標ですとか類似商品まで広げて後願を削除してしまうと行き過ぎになる場合というのも出てくるのではないかという懸念がございまして、私も類似商品・役務審査基準の類似群をすべて把握しているわけではないので、この点、慎重な御検討をお願いできればと思っております。
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土肥委員長
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今の要望、よろしいですか。
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花木審議室長
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はい、わかりました。
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土肥委員長
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他に。
高部委員。
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高部委員
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今の点については、例えば4条1項15号についていいますと、独創性が高いかどうか、あるいは出所表示機能が高いかどうかということで随分違ってきます。さきほど、私が効力が同じかどうかという点を確認したのは、侵害行為を差し止める場合の効力という意味で申し上げたわけで、登録段階の、あるいは出願段階での話をしたわけではないのです。仮に4条1項の各号について問題があるとすれば、識別力の弱いものは当然そういうものとして処理されると思います。
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土肥委員長
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はい。
他にはございませんでしょうか……。
よろしければ、大体時間も近づいてきておりますので、この委員会も閉じさせていただきたいと思っておるわけでございますけれども、大体今日の御議論を頂戴してお聞きしておりますと、仮に団体商標で対応するという、商標法でこの地域ブランド問題に対応するとするのであれば、 の団体商標、こういう制度の枠組みの中で検討するようにと、そういう方向性であったかと存じます。
ただ、主体の問題とか、その方向で行くにしても、考えなければならない点というものが幾つか出されまして、これを事務局において再度十分検討するということであったかと存じます。そういう方向が本日の方向であろうかと思っております。
最後になりましたけれども、今後の審議会の進め方につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
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花木審議室長
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それでは、次回は第10回になりまして、11月2日10時半からこの場所でお時間をいただいております。また、その次、第11回につきましても、12月2日午後2時からということでお時間をいただいておりますので、よろしくお願いいたします。
次回でございますが、本日色々御意見をいただきまして、ニーズの問題を第一にということ、それからまた審査できるかどうかとか、アウトサイダーとか、今委員長にまとめていただいたような論点がございますので、その辺につきまして可能な限りで整理をいたしまして、また農林水産省さんの検討状況についても何らかその時点で報告できるものがあればさせいただきたいというふうに思っておりますが、具体的にはまだ1ヶ月程度先のことでもありますので、状況を見て、再度御案内をさせていただけたらと思っております。
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土肥委員長
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それでは、ちょうど時間になりましたので、以上をもちまして、産業構造審議会知的財産政策部会第9回商標制度小委員会を閉会させていただきます。
本日はどうもありがとうございました。
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