第10回商標制度小委員会 議事要旨
平成16年12月6日
特許庁
12月2日(木曜日)14時00分~16時15分に、産業構造審議会 知的財産政策部会 第10回商標制度小委員会(委員長:土肥一史 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授)が開催された。
1.審議内容
財団法人伝統的工芸品産業振興協会から伝統的工芸品に係る商標登録のニーズについてのプレゼンテーションを行った後、事務局から資料1及び資料2(報告書(案)「地域ブランドの保護について」)に沿って説明し、自由討議を行った。文章表現等について何点かの指摘があったが、報告書(案)の内容については了承された。委員からの意見の概要は以下のとおり。
(1)ニーズについて
工芸品・農産物を中心にかなりのニーズが存するものと推認され、地域ブランドに商品としての自他識別性がある場合、当該登録主体の識別機能を表示するものとまでいえない場合であっても、これを保護する必要性は存在する。
(2)主体の要件について
- 主体の要件については、参考資料5(竹田委員意見書)の趣旨に賛同する。「数量的要件」では分母をとらえることは難しく、売上げ等裁量的すぎるため、紛争が増えるのではないか。また、「数量的要件」であれば、一定の生産者が集まったら権利が取得できることとなり、先願主義の弊害となるのではないか。第3条第2項の特別顕著性までは要件としないまでも、「周知性」を要件とする方がよいのではないか。地域ブランドとして確立していることが必要ではないか。
- 「数量的要件」として証拠を提出するのであれば認定はできるだろう。相当な要件を満たしていることを前提とすれば、商標の周知性も当然満たすものになるのではないか。その場合、第3条第2項とどのように区別するのか。
- 「正当に代表する団体」と要件を規定して、「数量的要件」と「周知性の要件」の両方のオプションを残したらどうか。
- 要件としては、人数や数量ではなく、品質の管理がされている団体であることを考慮すべきではないか。
- 数量的要件は地域内の生産者の数量の認定に困難が生じ、証明の容易性を担保しない。むしろ、商標法3条2項の趣旨に沿って、周知性(識別力が高いこと)の要件を検討してはどうか。少数でも識別性(名声)が認められる場合がある。
(3)主体の拡大について
- 商工会議所、地方公共団体にも地域ブランドに関するニーズがあるため、対象とすべきではないか。法律上は「政令で定める団体」のように柔軟性を持たせたらどうか。
- 主体を地方公共団体や株式会社に広げるのであれば、「団体商標」を使用する構成員が誰なのか分からなくなるため、「特別な団体商標」という整理になるのではないか。
- 主体は特定の者のみにせず、広げたらどうか。
- その他の法人・権利能力のない社団であることを主体の要件としてはどうか。
(4)対象となる商品(役務)の要件及び効力について
- 使用される商品(役務)の品質等の基準の位置づけがよく分からない。特許庁に提出させても、審査しないこととすると、特定のアウトサイダー排除のために恣意的に基準が作られたり、運用で基準を守らない例が想定される。正当な第三者が自由に使用できるのであれば、基準の審査をすべきではないか。更新の際に使用実態と基準との整合性を再審査することも考えられる。
- 正当に使用するアウトサイダーには、効力が及ばないとする点に賛成する。また、地域ブランド商標を登録しようとする者は、一定の品質を持つ商品の生産を目指しているのだから、品質についての基準を求めるのは当然ではないか。アウトサイダーが違う品質のものを作ると、末端の消費者は混乱すると考えられ、同一地域内から価値をおとしめられるというのは問題である。
- 業界の自主基準である公正競争規約でさえ、基準策定の際には、いろいろな立場の声を聞く必要もあり、公正取引委員会の了承も必要である。団体内部で作られた基準が拘束力を持つことになるのであれば、当然「正当な使用」をする第三者にも効力を及ばせるのは問題である。「正当な使用」は産地以外の者もできると考えて良いか。業界としては、JAS法、景表法、不競法等による規制に商標法による規制が加えられるとの印象が強く、二重、三重の規制となる。
- 基準が効力に影響するのであれば、当然公表させるべきだろう。
- 「地域ブランド商標を正当に使用する第三者には、商標権の効力が及ばない」とする提案に賛成する。
- 地域ブランド制度も団体商標と同様、商品の出所を示す制度であり、品質の保証は団体商標と同様のものであり、それを越えて品質の保証を行う制度ではないことを確認する必要があるのではないか。
(5)その他
- 通常商標と比較して、今回の団体商標は効力が弱いものであるならば、登録後に第3条第2項に該当するに至った際には、通常商標に変更を認める制度として欲しい。
- 通常商標と比較して効力が弱いものであるならば、第三者から見て明確であるために表示させることにしてはどうか。
- 地域ブランド商標を法改正により認めた場合、その運用が適正に行われることが必要であり、要件の認定には審査能力が問われる。これまでの審査基準の運用実績からみても、運用上十分な配慮がなされることを希望する。
注:本日欠席された竹田委員から提出された意見書(参考資料5)の内容を上記に加えている。
2.意見発表
参考資料4(意見書)に沿って、社団法人日本食品特許センターから意見発表を行った。
3.今後の審議スケジュール
本日の指摘を踏まえ、事務局で報告書(案)を微修正し各委員に確認の上、速やかに特許庁のホームページ等を通じて公表し、一般からの意見(パブリックコメント)を募集する。
第11回商標制度小委員会は、平成17年1月14日(金曜日)14時00分~16時00分に開催する予定。
[更新日 2004年12月7日]
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