土肥委員長
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ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会第13回商標制度小委員会を開催いたします。
今回、委員及び事務局に交代がございましたので、事務局よりご紹介をいただきたいと存じます。よろしくお願いします。
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田川審議室長
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私、新たに制度改正審議室長に着任をいたしました田川でございます。よろしくお願いいたします。
それでは、交代をされました委員の方々を御紹介させていただきます。
まず最初に、日本商工会議所常務理事の篠原委員。
続きまして、日本化粧品工業連合会商標委員会委員長、高澤委員。
続きまして、社団法人日本食品特許センター商標委員会委員長、根本委員。続きまして、事務局にも異動がございました。本日出席の新幹部でございますが、中嶋長官、野澤総務部長、特許審査第四部長の高倉部長、審判部長の篁部長が、それぞれ新たに着任をしております。高倉部長につきましては、後ほど参加をすることにいたしております。
以上でございます。
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土肥委員長
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ありがとうございました。皆様よろしくお願いをいたします。
それでは、商標制度小委員会の再開に当たりまして、今、御紹介のあった中嶋特許庁長官から一言御挨拶をちょうだいいたします。
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中嶋長官
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中嶋でございます。今日は御多忙中のところ、商標制度の小委員会に御出席いただきまして誠にありがとうございます。心から御礼を申し上げます。
この小委員会再開ということでございますので、御報告かたがた、一言御挨拶をさせていただきます。
まず、御報告でございますけれども、この小委員会でとりまとめをいただきました地域ブランドの保護に関する報告書でございますけれども、それに基づきまして、先の通常国会におきまして、いわゆる地域団体商標の導入を柱といたします「商標法の一部を改正する法律案」というのを提出いたしまして、6月に無事成立可決をいたしました。この場をおかりいたしまして、土肥委員長ほか委員の皆様方に心から御礼を申し上げます。
今後でございますけれども、特許庁としては来年の4月の施行を目指しまして、関係省庁とも十分緊密に連携をとりながら万全の準備を整えたいと思っております。今後とも引き続き委員の皆様方のお力をお貸しいただくようにお願いをしたい次第でございます。
さて、私事になりますけれども、私自身は、実はちょうど16年前になりますか、1989年ごろですが、当時、通商産業省の産業政策局に知的財産政策室というのをつくりまして、初代の室長を務めさせていただきました。それ以降、知的財産政策については、今や省内どこに行ってもというか、日本中どこに行ってもというか、世界中どこに行っても常にかかわりを持ち続けているわけでございます。ちなみに前職が貿易経済協力局というところだったんですが、これはまさに発展途上国にいろんな知的財産制度についての技術協力をしているわけですし、そのさらに前は製造産業局で、これはまさに模倣品対策を行っていましたし、そういう意味でこの16年間を振り返ってみまして、知的財産全般についていろんな議論が深まっているなと思います。
ちなみに16年前というのは、知的財産という言葉自体、大変目新しかったわけでございますけれども、それで今回は、商標制度の在り方について、昨今、企業活動全体がグローバルになっておりますので、一段とブランド戦略とか、あるいは模倣品対策とか、守るも攻めるもいろんな意味で知的財産、あるいは商標制度ということがますます重要になってきていると思います。そういう意味で21世紀にふさわしい商標制度に向けて、現在の制度運用の見直しを含めて活発な御審議を賜りたいと思います。
簡単でございますけれども、御挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
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土肥委員長
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どうもありがとうございました。知財と密接なご経歴をお持ちのようでございますので、今後ともよろしくお願いしたいと存じます。
さて本日は、商標制度全般の議題としまして「商標制度の在り方について」、具体的には「小売業等のサービスマークとしての保護」、「商標権の強化」の項目を前半に、後半には「著名商標の保護の在り方」、さらには「審査の在り方について」等の項目につき、ご審議をちょうだいしたいと思っております。
それでは、まず事務局から配布資料の確認をお願いいたします。
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田川審議室長
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配布資料の確認をさせていただきます。
本日の配布資料は、議事次第、配布資料一覧、委員名簿、資料1といたしまして「商標制度の在り方について(案)」、参考資料1といたしまして、「小売業商標に関する判決例」、参考資料2といたしまして「『輸出』に関する判決例」、参考資料3といたしまして、「『地域団体商標制度導入に伴う商標審査基準の改正(案)』に対する意見募集」、パブリックコメントでございます。過不足等ございますでしょうか。
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土肥委員長
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ありがとうございました。室内、若干暖かいかもしれませんので、適宜上着等はご調整ください。
それでは、本日の議題に入らせていただきます。「商標制度の在り方について」というテーマで事務局から説明がございます。よろしくお願いいたします。
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田川審議室長
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それでは、商標制度の在り方につきまして、その前半部分といたしまして、「小売業等のサービスマークとしての保護」、「商標権の強化」、この2項目について資料1に基づきましてご説明をいたします。
まず、「商標制度の現状と検討の背景」でございますが、2002年の知的財産戦略大綱の策定以来、我が国の国際的な産業競争力を高めて経済の活性化を図るということから、「知的財産立国」としての取組が各種行われているわけでございます。その中で商標制度は、企業におけるブランドの出所識別力、顧客の吸引力、あるいは情報発信力を具現化する重要な知的財産として位置づけられておりまして、「知的財産推進計画2005」におきましても、魅力あるブランドを活用して、より高い商品・サービスを提供する環境を整えるということから、必要な制度整備を行うものとされておるところでございます。
この小委員会でございますけれども、平成15年6月に開催をされまして以来、いろいろな商標制度にかかわる問題について多面的に御審議をいただいているところでございます。商標の重要性というものがますますは高まっているということでございまして、特許庁が行っております「発明の日」に「知的財産功労賞」というものを設けております。これにつきまして、2005年度から商標についても表彰されているということでございます。
商標制度に整備に当たりまして、幾つかの視点があると考えております。ブランド保護の強化、それの実効性を確保するための権利侵害への対応の強化、こういったところを幅広くご審議をいただき、制度の整備・強化を図る必要があるということでございます。
まず、ブランドの保護強化でございますけれども、ブランドというものが非常に重要な位置づけを持っているということでございます。商標制度もいろいろなブランドを形成するということにできるだけ幅広く柔軟に対応していこうということで、本委員会におききまして、地域ブランド、地域のブランド力というものを高めるという観点から地域ブランドの保護制度を策定をいたしまして、法制化を図ったところでございます。
今後につきまして、さらに御検討いただく課題といたしまして、小売り業等のサービスマークをどういうふうに考えるかというところがあるわけでございます。さらに権利侵害への対応、権利の強化という観点につきましては、特に模倣品対策の観点から商標法をどういうふうに整備・強化していくかという観点がございます。いろいろなブランドの構築のために、各事業者あるいは地域の方々が努力をしている。それに対して形成されたブランドにただ乗りをして悪用するということは、これは看過し得ない問題でございます。この委員会では、これまでにもインターネット取引の活発化により、問題が顕在化しておりました模倣品の個人輸入、あるいはインターネット取引における事例を整理いたしまして、どういうケースが商標権等の侵害行為になる可能性があるかといった事例集をまとめたところでございます。これらによりまして、個人の方、あるいは事業者の方に対しまして、いろいろな注意喚起、情報提供等を行ってきたところでございます。さらに模倣品対策が非常に国際的になっていき、模倣品の国際的な流通というものをどういうふうに防いでいくかということで、テーマといたしまして、権利侵害行為への輸出の検討でございますとか刑事罰の強化、そういったことが検討する課題としてあるのではないかと思っております。それに加えまして、商標制度そもそもの在り方、あるいはユーザーの方々の利便性の観点からも幅広く御議論いただきたいというふうに考えております。
これまでの検討成果は、先ほども申し上げましたとおり、まず第一に、地域ブランドにつきまして法制化を図るため、その御検討をいただいたということでございます。昨年10月から、この委員会におきまして4回にわたりまして審議を行っていただきました。その結果といたしまして、2月に保護の在り方について報告書がとりまとめられたところでございます。この報告書を踏まえて、「商標法の一部を改正する法律案」が先の通常国会で成立をいたしました。この法律でございますが、地域ブランドとして使われる例が多いものの、従来、商標法では原則として保護されなかった地域の名称と商品、あるいはサービスの名称等の組み合わせからなる商標、例えば、○○地方の○○ミカンであるとか、○○リンゴであるとか、そういった商標につきまして一定の範囲で周知になった場合、これを「地域団体商標」として登録を認めるということでございます。また、既にその商標を使用していた第三者の営業上の利益というものを保護し、支障のないようにするということで、効力範囲について一定の制限を設けております。いわゆる出願前に使用している場合には継続的な使用ができるという手当をしているところでございます。
模倣品、インターネット取引事例につきましては、先ほど簡単に触れたとおりでございます。
本日、御審議いただきたいと考えておりますテーマは、4ページ目からでございます。「小売業等のサービスマークとしての保護」でございます。4ページ目の「〈参考〉」ころにございますが、商標法の第2条に「商標」の定義というのがございます。「業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用するもの」、いわゆる商品商標と言われる類型が1つ、それから第2号といたしまして、「業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用するもの」、これがいわゆるサービスマーク、役務商標と言われるものでございます。小売業につきましては、現在は、「商品」を譲渡する者という整理を行っているところでございます。
問題の所在でございますが、現行の商標法において、役務、サービスというものは「他人のためにする労務又は便益であって独立して商取引の目的たりうべきもの」というふうに解釈されています。小売業者が商品の販売をするために付随的に適用するサービスについては商標上の「役務」ではないというふうに解されているところでございます。したがいまして、小売業に係る商標はサービスマークとして登録することは認められていないということでございますが、一方で小売業者は自らの事業の出所を表示するための商標の保護を得るために商品の譲渡、取り扱う多様な商品について商品の商標を登録する必要があるということで、商標管理上、多大なコストがかかるという指摘がございます。
この委員会での検討内容でございますが、小委員会では小売業の商標を役務商標として採用することにつきまして検討を行っていただきました。また、この際に役務商標としての小売業の商標とその他の今既にある商品商標との出所混同を避けるための審査、いろいろな類似関係をどういうふうに考えていくのか、あるいは小売業の登録の在り方でございますが、どういう範囲の業態を認めるのが適切であるかといったところについて検討を行っていただいたところでございます。
対応の方向でございますが、4ページから5ページに移っていただきまして、小売業のサービスマークの保護の必要性でございます。近年の流通産業の発展に伴いまして、商品の種類をいろいろな、具体的には例えば靴だとか、あるいは食料品とか、そういったカテゴリーを越えて多様な商品の品揃えをしたり、販売するための独自の販売形態によりまして、付加価値の高いサービスを提供するという小売業態が発展を遂げているところでございます。
例えば、百貨店におきましては、非常に多くの商品のカテゴリーを網羅的に扱うということによって、ワンストップショッピングが実現をされておりますし、あるいは通信販売等も非常に盛んになっているところでございます。こうした小売の業態につきましては、各種の商品の品揃え、またはこれを提供するサービス自体、これが一つの営業の実態というふうに考えるということでどうだろうか、そういうご指摘があるところでございます。ブランドとしての経済価値、顧客吸引力がそういうところに存在をするのではないかということで、小売業者が使用する商標、これをストレートにサービスマークとして保護すべきではないかという御指摘があるところでございます。
現行法における保護の限界といたしまして、商標法では、「役務」というものは「他人のためにする労務又は便益であって、独立して商取引の目的たりうべきもの」と解釈をされておるわけでございます。直接的には運送業者が行う運送であるとか、教育機関が行う教育、そういったものでございます。したがいまして、付随的に提供されるようなもの、例えば買い上げ商品の配送であるとか、ホテルのバスの送迎サービス、非常に単純な例でございますが、こういったものは商標上の「役務」には含まれないとなっております。
小売業者が商品の販売に伴って提供する様々なサービス、例えば広告であるとか、あるいはいろいろな品揃え、陳列等、これらについて現行法を前提にいたしますと、独立した商取引の対象となり得るものではないという裁判判決も出ているところでございます。したがいまして、現在、商標法では「役務」として認められていないということがございます。このために、小売業者の方々は自らの事業の出所を表示する商標について、「商品」の譲渡ということで商標として登録をされているというのが現状でございます。
しかしながら、役務と認められるサービスでございますが、商標に化体をされました事業者の信用を保護するという商標法の目的からいたしますと、多種多様な商品を扱う小売の業態というものを個別の「商品」の販売として位置づけて、複数の商品商標によって保護するということは、少し間接的過ぎるのではないかということが考えられるわけでございます。小売業者が市場において競業関係に立つというのは、特定の商品を販売する事業者ではなくて、同様の多様な商品を提供する事業者ではないかということからいたしますと、小売業の信用の保護という観点からは、様々な商品を集めて陳列する、あるいは品揃え、選別等をする場を提供するということをもって「役務」として保護することが必要ではないかということでございます。
また、現行法におきまして、ある商品の生産・販売を行う事業者が商品商標の登録をしている場合に、多様な商品を取り扱う小売業者、これは当該商標と同一又は類似の商標を登録することができない。非常に多くの分野にわたって横断的に自分の商標をとるというのも、これもなかなか難しいという制約もあるところでございます。
こうしたことから、多様な商品を扱う総合小売業者が提供する商品の選別、品揃え、陳列といったサービスにつきまして「役務」として捉えまして、これをサービスマークとして保護することが適切ではないかというふうに考えております。
もう一つ、論点としてございますのが、例えば特定の商品、靴であるとか食料品といったものを扱う小売業者についても豊富な品揃え、陳列といったところでは、同様に独立した「役務」として考える余地は当然あるわけでございます。しかしながら、特定の商品群を取り扱うそういった小売業につきましては、特定の商品、商品商標との出所の混同を生ずるおそれというのが、ある特定の商品を扱うことによりまして、商品とは少し離れ、関連が少し薄い、総合小売と比較してそこは強くなっているのではないかということがございます。
また、現行の枠組みにおきましても、こうした小売業者の使用する商標は、商品商標として既に適切な保護が図られており、かつ商標選択の自由度、これも総合小売業者に比較して少ないということから、特定の商品を扱う小売業者については、従来どおり商品商標として取り扱うということで適切ではないかと考えられるのではないかと思います。
国際的な動向を見てみますと、商標法における商品、サービスの区分を定めますニース協定というのがございます。これは1類から42類までございまして、その中でどの商品がどの区分に属するかという国際的な制度調和のために設けられております。この中で小売業の商標をサービスマークとして扱うということになっておりまして、小売業の商品の保護が国際的な趨勢になっております。
具体的に申しますと、ニース国際分類9版というものがございます。そのうちの35類に「他人の便宜のために各種商品を揃え、顧客がこれらの商品を見、かつ、購入のために便宜を図ること」。そういった類型がございまして、このサービスには小売店、卸売店、カタログ郵便による注文、ウェブサイトまたはテレビショッピング、こういったものがあるということになっております。この規定は平成19年1月より発効することとなっております。そのほか国際的に各個別の国を見てみましても、アメリカ、イギリス等多くの国におきまして、小売業の商標をサービスマークとして保護するということを認めているところでございます。
こうしたことから、国際的な制度調和の観点からも、総合小売業による購入の便宜の提供というものを独立した「役務」として考えまして、サービスマークとして保護を行うことが適切ではないかと考えております。
総合小売業に係る指定役務でございますが、商品及び役務の区分、これは現在35類に含まれるものと考えられておりますが、そのうちの「他人のための各種商品の品揃えその他購入の便宜の提供」を役務として認めてはどうかということでございます。
以下のようなものということで、幾つか例示をしておりますけれども、取り扱う商品を特定した場合には、これは役務として特定の商品であって、かつまた現在、商品商標として保護されているということもございますので、これは保護の対象にはしないということでございます。
3番目でございますが、審査における商品商標とサービスマークとの類否判断の是非でございます。総合小売業、これは繰り返しでございますけれども、多様な商品を取り扱っているということでございます。そのサービス、あるいは保護すべき営業の実態というものに着目をいたしまして登録をされるということでございます。このために、特定の商品との出所混同というもの、これが生ずるおそれは非常に小さいのではないかというふうに考えられるわけでございまして、総合小売業に係るサービスマークと商品商標との間の類否判断は行わないということでいいのではないかと考えております。ただし、当然でございますけれども、具体的な使用状況等によっては、これは侵害訴訟等によって類似と判断される可能性があるというのは、通常の役務商標等と同様でございます。
それから経過措置の問題でございます。8ページでございますが、総合小売業のサービスにつきまして、商標登録出願を認めたというときに、従来から小売関連のサービスを行っていた事業者と新規参入をする事業者、そういった方の出願が見込まれるわけでございます。これらの出願というものは、同一又は類似の商標であって、同日又は出願日を前後していろんな競合関係が生ずるということで、その調整について考える必要があるわけでございます。
私どもの暫定的な考えでございますが、このような場合に、まず新規参入者の間においては先後願の関係でよいのではないか。それから従来から小売関連役務を行っている者の間におきましては、実は相当程度周知性を持つのではないかということを実態上前提にいたしますと、商標法の第4条1項10号(未登録周知商標の保護)でありますとか、あるいは第15号の(著名商標との出所混同の防止)、又は第19号の(著名かつ不正目的出願の防止)、こういった既存の規定によりまして調整が図られるのではないか。それでも問題が解決しない場合には先後願に基づく調整が行われるという整理でどうだろうかと考えております。
しかしながら、これにつきましては、さらに検討していきたいと考えております。そのほか卸売業についても小売業と同様の整理を行うのが適切ではないかというふうに考えております。
それから9ページ目が商標権の強化の論点でございまして、権利侵害行為に「輸出」を追加するという考え方でございます。
問題の所在といたしましては、模倣品の流通が国際的になっているということで、例えば、国内でつくられた模倣品が海外に流出して、それがまためぐりめぐって日本に回ってくる、あるいは世界的に還流をしていくといった状況が懸念をされるところでございます。そのほか外国におきましても商標権の効力範囲、欧州でありますとか、韓国では、輸出をその効力範囲として規定をしている国が多いということから、模倣品の対策強化、外国の制度との整合性を図るという観点を考慮する必要があるのではないかということでございます。
なお、「知的財産推進基本計画2005」におきましても、各国が模倣品・海賊版の輸出・通過を規制するといった内容の「模倣品・海賊版拡散防止条約」を我が国は呼びかけをしておるところでございます。
本委員会でご検討いただいた内容でございますが、「輸出」を使用行為として追加するということにつきましては、日本だけでなく、国際的に確立をしているというものであるとこと、あるいは、そのほかの国においても輸出というものは侵害行為の一類型となっているということから、国際調和の観点からも含めてよいのではないかという御指摘がございました。
一方で属地主義との関係から、その必要性あるいは輸出を規制することによる実態的影響について検討する必要があるのではないかという御意見もあったところでございます。
私どもの現在の整理でございますが、現行法の考え方では学説等によると、「輸出」が商標の使用行為に該当するか否かという観点について整理をしております。
まず、「輸出」につきまして、商品の所有権の移転や占有の移転として捉えた場合、こうした行為が国内で行われる限りにおいては、「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡す行為」、その譲渡という行為に該当するのではないかという考え方もございます。一方で、外国で締結された譲渡契約に基づいて、商品を自動的に輸出業者に引き渡しし、かつ、そのことが輸出業者に知られているということであれば、その商標は出所識別機能という商標の機能を果たしていないということで商標の使用行為に該当しないという考え方もございます。
また、専ら輸出の目的の商品に商標を付す行為につきまして、これが使用に該当するかということが争われた裁判がございます。ここでは使用に該当する判断がなされておりまして、最高裁もこの判断を支持しているところでございます。
一方で「輸出」というものを、譲渡ではなくて、関税法に定義されておりますように、内国の貨物を外国に向けて送り出すといった事実行為として捉えた場合には、こうした搬出行為そのものは商標の使用には該当しない、つまり、輸出というのが入っていないので該当しないというふうに考えられるところでございます。その理由といたしまして、外国市場において取引されるためには、商品が国外へ搬出されたといたしましても、日本の商標法の関知するところはでないということでございまして、要は、輸出について統一的で、かつ整理された考え方がないということで、輸出が概念上入るか入らないかというところが学説上もきちんと整理をされていないという状況でございます。
私どもは「輸出」をきちんと商標上位置づけるべきではないかというふうに考えておりまして、その際の整理でございますけれども、11ページでございます。まず、必要性といたしまして、商標というものは、事業者の信用を保護するということで、我が国において商標の出所表示機能を害していくと、市場における出所の混同を生じさせるおそれがあるということから、適切に防止をする必要があるのではないかという観点が1点でございます。
「輸出」につきまして、商標を付した商品の所有権、あるいは占有が移転する行為として捉えた場合に、そうした行為が国内で実施されるという場合には、これは商標法上保護すべき法益が侵害されているのではないかということでございます。しかしながら、所有権の移転がクロスボーダーに行われているという場合には、その「譲渡」に該当するかどうか、これがはっきりしないということもありますので、そうした場合にきちんと商標法上、「輸出」というものが権利範囲に入るのだということをきちんと明記する必要があるのではないかと考えられるところでございます。その理由でございますけれども、繰り返しになりますが、非常に国際的な取引が盛んになっている中で、模倣品も国際的に流通をするということがございます。そういたしますと、これは一つの具体的な懸念でございますが、国内でつくられた模倣品を一旦国外に輸出をして、それをまた何らかの形で、例えば、個人輸入を擬装するような形で日本にまた還流するといったことも考えられるところでございますので、やはり「輸出」というものを商標法もカバーすることによりまして、きちんと我が国における商標の出所表示機能を守っていくということが必要ではないかということでございます。
属地主義でございますけれども、これは法律の適用範囲、あるいは効力範囲というものを一定の領域内について認めようということでございまして、慣習国際法上、各国家に認められている基本的な権利の一つである領土主権というものに基づいたものでございます。産業財産権法における属地主義の考え方につきましては、いろいろな解釈があるところでございますが、パリ条約の解釈などによりますと、一国の商標権の効力は海外に及ばないという趣旨に理解をされているところでございます。
しかしながら、輸出につきまして海外の状況は、13ページの下にございますように、法律上輸出を侵害行為として規定をしておりますのが、欧州、英国、ドイツ、韓国といった国々については既に認めているところでございますので、必ずしも属地主義の基本的な考え方を修正するものではないのではないかというふうに考えられるところでございます。なお、諸外国におきまして、水際措置等の運用を見てみましても、法律上規定していないところでも、そこは、米国では運用である程度の規制を行っておりますし、中国は、これは法律で輸出を止める行政上の措置というものを行っているところでございます。
論点といたしまして、「輸出」に関して「譲渡」、「引渡」といったものとの関係で現行法の適用範囲をどういうふうに考えていくかという論点が1点。それから商標の「使用」の概念に「輸出」を入れるとしたときに、もう一つ商標権の権利侵害類型としてありますのが、いわゆるみなし侵害という商標法37条のいろいろな規定がございます。こうしたところにも併せて「輸出」を追加する必要があるのではないかと考えております。
そのほか通過について、商標の「使用」の概念に「輸出」を規定する場合に、我が国を「通過」する。例えば、積み下ろし等で我が国を通過すると。これについてどう考えるかという論点があるかというふうに考えております。
以上です。
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土肥委員長
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どうもありがとうございました。以上のところまで、この商標制度の在り方についての案ですね。14ページまでのところについて説明をちょうだいしました。
「I 総論」としては、これは主として本小委員会においてこれまで検討をしてきたところのまとめというふうに思っております。全体もそうなんでしょうけれども、それを一応ここでまとめていただいた、これまでの成果等を中心にまとめていただいたというふうに思います。
IIのところで「小売業等のサービスマークとしての保護」、ここがございます。それと、今、輸出というものを中心に捉えたところの「商標権の強化」というタイトルの下での問題です。一応、これらは本小委員会において議論をいたしましたけれども、恐らく、委員のご意見としては濃淡はかなりあったんじゃないかなと思っております。
以上の説明に基づいて、ご質問とか、あるいは、これまでの経緯を踏まえてご意見等がございましたら、まずお出しいただければと思います。高部委員。
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高部委員
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輸出について質問です。「輸出」を使用行為として追加するかどうかを考えるに当たっては、現行法で使用行為と規定されているものがどういうものであって、この「輸出」というものを使用行為に追加したらどう変わるのかというところをしっかり押さえる必要があると思います。資料11ページと12ページにかかれている図を見ながら、もし仮に「輸出」というものを法律で規定したら何が加わるかについて考えて見たいと思います。11ページの上の図の場合は、乙の行為はAに対する引渡がございますので、現行法でも何らかの形で禁止されるということになるかと思います。仮に12ページの上の図のように、乙の行為を「輸出」と捉えたとしても、現行法でもAに対する引渡を止めることはできるわけですから、その先を「輸出」と考えても考えなくても余り変わらないように思います。
それに対して11頁の下の方の図を見ますと、甲からAにいって、Bを通って乙に行くという場合が想定されているわけですけれども、この場合は、甲の行為はもともと標章を付する行為ですので禁止されています。それが12ページに行ったときに、甲の行為が輸出行為だと捉えたとしても、11ページの図でも甲が標章を付する行為自体は止められるはずなので、そうすると、何が追加されるのかというのはいま一つわかりにくいところです。そこのあたりをご説明いただきたいと思います。
それから、今は商標権の議論ですけれども、不正競争防止法ですとか、種苗法に関しましては、輸出という行為が一定の実施行為又は利用行為として法定されておりますが、ほかの産業財産権には特に規定がない。そうすると、ほかの産業財産権についてはどのように考えているのか、そこのあたりをご説明いただければと思います。
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土肥委員長
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質問ですのでお願いいたします。
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貴田審議企画班長
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まずご質問の1点目なんですけれども、今回「輸出」を入れることでどういう部分が変わってくるかというご質問だと思いますけれども、例えば、引用されました11ページの図でいきますと、乙がAに引き渡したという場合は、現行法でも「引渡」で読めるんですけれども、例えば、乙がそのまま自分でX国の方に運んでいって輸送した場合とか、必ずしも引渡が絡むかどうかというところは定かではないところで、「輸出」を入れることによって、こういったものも対象になってくるというところで1点であります。
それから、そういう場合に「譲渡」で押さえられないかということなんですけれども、現行法上「譲渡」というところでクロスボーダーの取引が押さえられるかというのはケース・バイ・ケースで変わってくるのかなという理解をしておりまして、こういう場合につきましても、より包括的に押さえられるようになるのではないか。譲渡そのものではなくて、国内から外国に向けて送り出す行為というのを、そういう事実行為を押さえることで、より実効性が担保できるのではないか。あと、商標法の問題ではないですけれども、こういう規定を入れることによって、何らかの実効性担保措置が講じられた場合には、現行の引渡で押さえることが事実上は困難な、輸出業者への引き渡しについても、実効性を少しでも上げていくことができるのではないかと思っております。
それから2点目の他の産業財産権法の取り扱いということなんですけれども、意匠制度小委員会で既に「輸出」を実施行為の中に加えることについて検討を始めております。特許制度小委員会におきましても、同様に検討をしたいというふうに思っております。
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土肥委員長
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よろしいですか。ほかには。竹田委員。
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竹田委員
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質問と意見と両方ですが、まず、総合小売業のサービスマークの点についてですけれども、この制度を設けた場合に、規定ぶりはどういふうになるのかということをお聞きしたいのですが、先ほどの室長のご説明ですと、多様な商品を取り扱っているということですけれども、多様な商品を取り扱うのは地方の農村の小さな店だって、生活用品は何でもあることで、むしろ住民の便宜を図っているところがあると思うんですが、そういう意味で、この7ページの のところで「他人のための各種商品の品揃えその他購入の便宜の提供」をしていればということで登録の出願をすれば、当然、この要件に基づいて、審査することなしに登録されることになるのか、それとも、総合小売業というものについての何らかの定義を設けるとか、その辺の審査とも絡んでどうするのかというあたりをちょっとご説明いただきたいというのが1点です。
それから輸出の関係については、9ページの(2)の「検討の内容」の「一方」というところで、慎重検討の意見に「属地主義の観点からの必要性」とありますけれども、これは言葉としては非常に不正確で、属地主義の観点からいって、法理的にこのような規定を設けることが問題だという観点と、それからもう一つ、それとは全く関係なしに、現在の使用の定義からいって、輸出の場合が漏れるということはほとんど考えられないので必要性がないという意見と、2つ観点があると思います。
第1の点については、これは属地主義の点から必ずしも各国が「輸出」を商標の使用に加えていないわけではないという説明がございまして、それは法律上の規定としてはそうなのかもしれませんけれども、本来、これは隣におられる田村委員が書いておられる、結局、輸出の場合について含まれないのは、国外へ搬出されたとしても、それは日本の商標法の関知するところではなくて、外国の商標法が記述すべきだというのは属地主義のことを言っておられると思いますけれども、その法理論というのは非常に重要なことであって、そのことから、やはり問題を慎重に検討した方がいいだろうと思うんです。
私も長いこと審議会に出ているので、いつごろだったか覚えていませんが、この審議会でこの輸出の問題を特許法に入れるかどうかについて大分議論をして、結局これを入れるのは見送られた経過もあります。その辺のところをもう一つよく検討した方がいいということと、必要性では先ほど高部委員からも説明がありましたけれども、ここで書かれているようなことでも、そのために使用に当たらないという考えに必ずしもいくかなという点は甚だ疑問でありまして、いずれも商標の使用として捉える余地は十分あるだろう。そういう意味で、果たして本当に必要性があるのだろうかというのが2つ目です。もう一つ私が懸念していることは、現実に輸出行為が行われる場合に、どのように実際に規制することができるのか。つまり関税法とか関税定率法等によって、「輸入」については規定ができておりますけれども、その貨物が日本国外に輸出される場合には、それを水際措置として止められるような実際の規定が現行法であるのかどうか。ないとすれば、どういう措置によって「輸出」を商標の使用に入れることによって実際の効果を上げるようなことを考えておられるのか。その辺についてお聞きしたいということ。
以上です。
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土肥委員長
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ご質問、ご意見、3点ぐらい出たんだろうと思いますけれども、まず、質問から。
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田川審議室長
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まず第1点目の総合小売をサービスマークとして認める場合にどういう法的な条文上手当をするかという観点でございますけれども、御指摘のとおり、私どもといたしましては、商標法の中に、ここで考えております購入の便宜の提供といったものを「役務」に含まれるという規定が必要ではないかと考えております。その際に、不特定多数ということで総合小売を切ることができるのか、あるいは何らかの縛りをどういうふうに入れるかというのは、今、検討しているところでございます。
それから2点目でございますが、「輸出」というものを属地主義との関係、あるいはそもそも現在の商標法の使用の中で読めるのではないかという点については、「輸出」をここで規定する必要性のところでございますが、ここにも書いておりますとおり、恐らくはいろいろな譲渡等を伴って基本的に読める実際の輸出行為、基本的に読める使用に当たると、現行法上も当たるケースというものは非常に多いのではないかというふうに思っております。ただし、そこを国内の商標権者の信用を維持するということから考えますと、そこに万全を期すということでございます。現在の考え方におきましても、輸出がきちんと入るかどうかというところがはっきりしないところもありますので、そこを手当したいと考えております。
それから、「輸出」を仮に入れた場合の実効性のところでございますが、これは現在、財務省等といろいろ議論をしておりまして、その中で実効性が担保されるように検討していきたいというふうに思っております。
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土肥委員長
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よろしゅうございますか。ほかにはございませんか。田村委員。
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田村委員
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輸出の点に関して一言ということになりますが、高部先生や竹田先生のお話ししたとおりでして、どのようなところに実益があるかを見極めようということになります。途中でお話があったように、この11ページから12ページに書かれているものに関しては、余り影響がないのかなという気がします。それよりは、途中でお話があったように、乙からA、Bの引渡を伴わずに直接X国に行くような場合ですね。乙から乙に行く。要するに搬出行為しかないとき、それも押さえることができるというのが多分実益なのだろうとおもいます。
その後、属地主義との関係ということでございますが、一般的にこういった事例で、日本の「輸出」についてこれから規定を置いたといたしましても、日本の商標法が適用されるには、それなりに何らかの関連性が日本国内となければいけないのではないかなという気が私はしております。
この11ページから12ページに掲げられているように、何か日本の国内で輸出行為自身ではなくても、輸出行為の前あたり、少し前でもいいのですが、輸出行為に関係して前の方で何か取引が行われていて、日本国内で出所の混同を起こし得るような出所識別機能を、逆に言えば商標が果たしているような行為が行われているときには日本の国内法が適用されるべきですし、そのような混同行為に起因する商品がこれ以上国外にまで流通するのを防ぐという意味でも、大変実効的な規定を設けるのに意味があるだろうというふうに思っております。
他方で、例えば、X国の会社が日本国内での現地法人に何かを生産させるとか、あるいはX国の会社が、現地法人でなくても日本の別会社に下請けとして何かを製造させて、いずれも専らX国にのみ輸出させる場合であるとか、あるいは、そもそも法人を異にする自身の自社工場が日本国内にあって、その工場で生産したものをX国に持っていく形で、一切市場に出ないままに、ただ搬出行為が国境をまたがる行為があるだけという場合には、恐らく私の理解では、今回、仮に「輸出」が規定されたとしても、それは日本の商標法の問題ではなくて、X国の商標法が規律する問題であって、そこでX国の商標権の方できちんと処理がされているのであれば、どこの国の商標法にも違反しないということになるのではないかというふうに私は理解して今回の提案を受けとめております。
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土肥委員長
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ありがとうございました。ほかにご意見ございませんでしょうか。ご質問でも構いませんが。鈴木委員。
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鈴木委員
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今の輸出の点に関しまして、知財協の中でも検討しています。まず模倣対策強化という大きな流れの中でのご提案なのだろうなと理解しておりまして、この点に関しては大賛成の立場をとっております。ただし、「輸出」という概念自体が広いということも懸念をしておりまして、模倣対策強化のために入れることによって、ひょっとして正当なビジネスも商標権侵害となってしまうことが起こり得るのではないかと、そういう懸念もしております。
具体的に申しますと、例えば、外国企業からのOEMで、日本のメーカーが依頼を受けてその商品を製造する。その場合に、その外国企業が指定した商標を日本の工場で付する。大手の会社さんであれば、その商標が日本国内で問題であるかどうかというような調査は行うのですが、これが体力のないところですと、そこまでできるのかどうかという懸念がございます。
また、調査を行ったとしても、これはもともとOEMを発注してきた方の商標ですから、勝手に日本で登録するわけにもいかない。調査した当時はよかったかもしれないけれども、その後、商標権侵害を構成するような場合もあり得ますので、「輸出」を商標の使用の定義に加えたり、侵害行為の一つとして位置づけるにしても、模倣の脱法行為として使われているようなものと、正当なビジネス、もしくは、そこまで言ってしまっては企業にとってかわいそうなのではないかという行為とは区別するような、そういう検討が必要なのではないかと考えております。
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土肥委員長
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非常に貴重なご意見だと思うんですけれども、今の場合は、日本国とX国において商標権者が同一の場合、別の場合、それぞれ検討された上でのOEMの場合ということですね。何かこれについてはございますか、今ここでおっしゃるようなことは。
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田川審議室長
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少し検討してみたいと思います。
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貴田審議企画班長
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OEMの場合に国内で付す行為というものが、既に商標法の中に侵害行為として規定されておりますので、これは「輸出」を入れる問題というよりは、そもそも現行法の解釈として、はっきりしないところだと思います。そういう理解でもし間違っていれば指摘をいただければと思います。
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土肥委員長
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今ですか。
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貴田審議企画班長
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後日。
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土肥委員長
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検討するということでよろしいわけですね。
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貴田審議企画班長
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はい。
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土肥委員長
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先ほど室長が刑事罰の強化についても少し時間がほしいということをおっしゃっていたんですけれども、この文脈の中でですね。
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田川審議室長
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説明漏れがございました。15ページから刑事罰の強化を取り扱っております。問題の所在といたしましては、御承知のとおり知的財産の侵害の被害というものが拡大をしているということでございます。15ページ、下の〈参考〉の表にございますように、商標権につきましては、高水準で、件数では大体400件から500件で推移をしております。また、被害額につきましては、下の〈参考〉にございます。一つの目安でございますが、平均して大体2,000万円ぐらいという被害でございます。他方、そのほかの知的財産関係の法令の罰則につきましての動きでございますが、不正競争防止法、著作権法におきましては、懲役刑と刑事罰の併科の導入、法人重科の罰金額の引き上げを行っております。
こうした状況を踏まえますと、現在の商標権侵害行為に対する懲役刑と、罰金刑は、現在は併科になっておりません。それを併科にするというのが一つあるのではないか。それから両罰規定につきましても、不正競争防止法、著作権法との整合性をとる必要があるのではないかということでございます。
16ページでございますが、対応の方向といたしまして、現在、商標法の刑事罰につきましては、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金となっております。これを併科にしてはどうか。それから法人重科につきましても、不正競争防止法に合わせまして、3億円以下の罰金ということでよいのではないかというふうに考えているところでございます。
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土肥委員長
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ありがとうございました。商標権の強化との関係では、この刑事罰というものも視野に入っているようでございます。この点を含めてご意見をちょうだいできればというふうに思います。
これは、今日ここで出てきたものが、今日の委員会が終わったら、すぐ行くというわけではないんですね。
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田川審議室長
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はい。
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土肥委員長
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少しここでの議論があると。
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田川審議室長
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はい。
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土肥委員長
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今日ご紹介があった点は、すべて、なお今後議論があるということでございますので、本日全部議論をし尽くすという必要性はないようでございますが、論点の頭出しは、ぜひ今日やっておいていただければというふうに思っております。
特にこの点についてはよろしいですか。高部委員。
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高部委員
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先ほど問題の所在として、模倣品対策ですとか、あるいは輸出の関係で一旦模倣品が海外に流出したときに、また我が国に還流することは防止したいということをご説明があったわけですけれども、本当に模倣品対策といったような意味で商標権を強化しようと思えば、矢印が外側に向いている「輸出」という行為ではなくて、中に向いてくる、すなわち日本の方に矢印が向いてくる「輸入」の方をきちんと押さえる必要があると思います。
その関係でいいますと、先ほどの資料12ページの図で仮に矢印が逆向きについていた場合でいいますと、例えば、X国の丙ですとか、Bとかというような人たちの行為が、Aとか乙の輸入行為を幇助するような関係になるわけでして、そういった国外から我が国の輸入行為を助けたり、あるいは積極的に引き起こしたりするような行為を取り締まる方が、むしろ模倣品対策には実効性があるのではないかと思いますけれども、そこのあたりの議論というのは、論点として浮上しないのでしょうか。
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土肥委員長
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まさにそういうことなんですね。だから、そこを踏まえての今回の提案ではないかと思うんですけれども、つまり、他国から見て輸出させないというところがあるんだろうと思いますけれども、今の模倣品対策の強化として、日本から見れば輸入の問題なんですが、これについて、何か今この段階でおっしゃっておくことがありますか。松尾委員。
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松尾委員
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今の高部委員が申されたことは、そのとおりだと思います。先ほど、輸出の問題で模倣対策のことを言われました。模倣対策のために、特に今問題になっている条約の締結のためには「輸出」というのを捉えて、矢印はBからAのものだと思いますけれども、そのために、政策的に「輸出」を加えた方がいいということは、そのとおりだろうと思います。
それからもう一つ、「輸出」というものの概念をはっきりさせて、「輸出」をなぜ入れるかということを考えるべきだと思います。13ページの真ん中のちょっと下に、「『輸出』とは、国外に向けた商品の搬送として国内で行われる行為」というのがありますが、この点に権利者を保護するという一つの面があるのだと思います。こういう保護法益というのをきちんと捉えた方がいずれにしてもいいのだろうと考えます。「譲渡」の中に入るという、漠然とした広げた解釈を税関のところで認めることを許すことなく、きちんと概念を捉えて判断した方がいいと思います。
その関係では、参考資料2のところに、一番初めに挙がっている判決なんですが、こういうのがあいまいにあるということが問題だろうと思います。これは双眼鏡の商標の事件で、専らサウジアラビアに被告の方は輸出していたという事案です。判決で非常にわかりにくいのは、「輸出」は「譲渡」には含まれないと。それから「被告が右輸出に伴って日本国内において被告製品の「譲渡」をしたことを認めるに足りる的確な証拠はない」と、こういうふうにしているんです。それにもかかわらず、被告の態度は不誠実だったからということで、将来の譲渡のおそれがあるという理由で、被告に対する差し止めを認め、かつ損害賠償も認めているわけです。特許の間接侵害の事件で幾つか輸出が問題になっているのがありますけれども、その場合には、専ら輸出する場合については、損害賠償について輸出の部分は控除しているんですね。
それやこれや見ますと、「輸出」というものがどういうものかということをはっきりさせるということが必要であり、特に模倣対策といいましても、税関で必要に応じた広い解釈を許すようなことはしないで、きちんと「譲渡」、「輸出」、「所持」とかというのを明確に法律で設けて、必要であれば「輸出」は加えるという方向でいった方がいいだろうと思っています。これは実は、日弁連でも議論しましたけれども、明確に入れるべきだというのが、現在の意見ではあります。
以上です。
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土肥委員長
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どうも貴重なご意見ありがとうございました。
それでは、また後でご意見を伺う機会もございましょうから、先ほどの「商標制度の在り方について」の後半部分について、ご説明をちょうだいしたいと思っております。
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田川審議室長
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それでは、資料の19ページ以降を順次ご説明をいたします。
まず、「著名商標の保護の在り方」でございます。現在、商標法の中では、著名商標につきまして、防護標章登録制度というのがございます。これは自分が使用するものではないものについて、需要者に広く認識をされている著名な登録商標について、商標権者のその混同の生ずるおそれのある非類似の商品又はサービスについて、登録商標と同一のマークを防護標章として登録を受けることに認める。それによって禁止的効力を生じさせるという制度でございます。
防護標章登録制度につきましては、現在出願数が全体から見ますと少なく、効力範囲が固定されるといった問題がございます。ちなみに防護標章登録制度、これは商標全体の出願、そのうち、著名商標というものであれば、ある程度小さくなるのが当然ではございますけれども、大体0.7%、1%弱ということでございます。
この審議会の議論の中では、直接的に特別の登録を経ることなく、一つの登録商標の効力して類似を超えて禁止効力を認めるのが適当ではないかというご議論があったところでございます。
20ページでございますが、いろいろ御議論をいただいたところをまとめますと、小委員会におきましては、著名商標の保護のために、現在の防護標章登録制度を廃止して、新たな登録商標の効力範囲として混同を生ずるおそれのある非類似の商品又は役務まで禁止効力を認めることについて検討を行っていだいたところでございます。また、登録商標の禁止効力を拡大するという場合には、防護標章制度と同様に登録商標と同一の商標に限って禁止の効力を認めるだけではなくて、登録商標、マーク等が類似するもの、そこまで広げるべきか、あるいは登録商標と混同を生ずるおそれがない場合でも、希釈化、要するに著名商標の信用等を害するような場合、そういったものについても必要な禁止的な効力を認めるべきかについて御議論をいただいたところでございます。
小委員会での御議論ですが、防護標章登録の利用は、絶対数は必ずしも多くないけれども、著名商標に占める割合で見ると少ないとは言えないのではないかという御意見や、一旦、登録をされるというと一定期間その権利が確保されるということから安心できるのではないかという御意見があったところでございます。
一方で、問題といたしまして、著名性というのが10年間固定される。もう少し著名性というのは変化があるものではないかという御意見、あるいは水際措置で利用されていない。産業界のニーズを踏まえて特に必要ということでなければ、防護標章登録制度は廃止してもよいのではないかという御意見があったところでございます。
対応の方向といたしまして、著名商標につきましては、通常の商標登録、防護標章登録、不正競争防止法による保護が行われてきたところでございます。不正競争防止法との関係をきちんと整理する必要がございますが、平成17年の改正によりまして、不正競争防止法による著名商標の保護は強化をされております。周知商品等表示の使用によりまして、誤認混同が生ずるような場合、あるいは著名商標を勝手に使う場合、これにはそれぞれ不正競争の目的や不正の利益、あるいは信用を阻害する場合、そういった場合には刑事罰が導入をされておりますし、関税定率法による水際措置の対象ともなっているところでございます。
こうしたことから、商標法において改正後の不正競争防止法との関係、これが実際に著名商標の保護として十分かどうか、そういったところをさらに検討することが必要ではないか考えられるところでございます。
仮に商標権の効力範囲を拡大しないということを前提にした場合には、防護標章制度、これの廃止というのは、商標法における保護の引き下げになるということがございます。こういったところをどう考えるかという観点も必要かというふうに考えております。そういったところから、防護標章登録制度につきましては、商標権の効力の拡大と併せて措置をすべきものであるというふうに考えております。
論点といたしまして、不正競争防止法との関係等を踏まえて、きちんと対応していきたいと考えております。
続きまして、V番目の項目として審査の在り方でございます。これは審査事項、手続の在り方といたしまして、現在、商標登録出願の審査におきましては、例えば、国旗だとか、公序良俗に反するようなものである絶対的拒絶理由と相対的拒絶理由の双方について職権審査を行うということでございます。これについて、実際の使用の局面においては、本来ならば混同が生じないようなものまで拒絶されているのではないかといった問題があるわけでございます。こうしたことにつきまして、委員会で御検討をいただいたところでございます。
小委員会では、諸外国における審査制度を参考にいたしまして、相対的拒絶理由の判断、これをどういうふうにするかということで検討をいただいたところでございます。現行の職権審査、これは一般的・抽象的な混同を生ずるおそれというものを判断する手法について特に問題はないという御意見、それから大企業、中小企業にかかわらず企業の規模とは無関係に一定の水準の審査というものを経て安定した権利が付与されるといった現行制度の維持を望む意見があったところでございます。一方で相対的拒絶理由につきましては、一律に職権審査を行うのではなく、EU型の異議申立に基づく審査について御議論いただいたところでございますが、ユーザーの監視負担、事後的な負担を増大するのではないかという御懸念、あるいは無効な権利が登録をされることによる混乱について御意見があったところでございます。
対応の方向といたしまして、相対的拒絶理由、つまり、類似の問題について異議申立により審査を行う制度というものは、出所混同のおそれの回避、あるいはコスト負担、商標選択の自由、権利の安定性等を踏まえまして、さらに検討を行うことが適切ではないかというふうに考えております。
それから24ページ目でございますが、コンセント制度でございます。これは1の問題とも関連をいたしますが、相対的拒絶理由について、一般的・抽象的な混同をもって判断をしているということでございまして、具体的な使用状況、取引状況、こういったもの、そこから判断すれば、混同のおそれがない場合でも、出願商標が先行の登録商標と類似するものとして登録されないというケースも発生しているといったことがございます。このため、海外で行われておりますようなコンセント制度、先行登録商標の権利者が出願商標の登録に合意したときにはその登録を認めるというものでございます。このコンセント制度も類型が幾つかございますけれども、これらについて検討すべきではないかという御指摘があるところでございます。
小委員会におきましては、職権審査において、出願商標が先行する登録商標に類似すると判断された場合であっても、先行の登録商標の権利者が合意をすればいいというコンセント制度について検討をいただいたところでございます。これにつきましては、コンセント制度に対して肯定的に評価をされる御意見、一方で、商標法の目的である需要者の利益の保護といった観点から御意見があったところでございます。
対応の方向でございますが、数字を調べてみますと、まず、審査につきましては、安定しているのではないかということで、2004年の商標登録出願件数が大体12万6,000件でございます。そのうち、拒絶査定不服審判、一旦拒絶された後に不服を申し立てて審判を行う、そういうケースが2,300件。さらに拒絶査定不服審判に対する審決取消訴訟22件ということでございまして、拒絶査定不服審判は大体2%ということでございますので、概ね安定した判断がなされているのではないかということがございます。
また、一方で実務におきましては、出願商標が先行する前の登録商標と類似する場合に、類似と判断された出願を一旦前の商標権者がこれに譲渡して、それが当人同士であれば、それは問題ないということで登録をされる仕組みになっております。その登録を受けた後にそれが譲渡されるといったケースがあるわけでございますが、これにつきまして、数字を調べましたところ、平成9年4月から16年、この譲渡が可能になった平成9年4月から最近までの数字を見ますと、7年5か月で100件程度ということですので、ニーズとして一般的にあるのではないかということも考えられるところでございます。
コンセント制度の在り方につきましては、2つ類型がございます。1つは、コンセントがあれば無条件で審査官の判断を拘束してすべてを登録するという、いわゆる完全型コンセントでございます。参考にございますように、イギリス、台湾、香港、デンマーク等で採用されております。イギリスの例でございますと、さきの商標権者が同意をした旨を証明すれば、その前に商標登録があって、それに抵触するものも登録をするという制度でございます。
もう一つの類型が留保型コンセントと呼ばれるものでございます。これはアメリカ、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、インドそのほかの国で行われておりますが、商標権者の同意がある場合には、審査官を審査を全く行わないということではなく、同意があることを参酌して「混同を生ずるおそれ」の有無などを審査する。審査の参考とする、そういう制度でございます。
我が国の商標法におきましては、出願されたものと、それに抵触をすると考えられる先行登録商標との類否関係を判断するとされております。これは商品又はサービスの出所の混同防止というものを旨にしておりまして、これは法目的でございます「商標を保護することにより、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発展に寄与し、あわせて需要者の利益を保護する」ということから、需要者の利益を含めた公益が法律上も意識をされているところでございます。
こうした観点からは、完全に当人同士が抵触するものでも登録していいという完全タイプのコンセントというのは、これはなかなか我が国の趣旨になじまないということが考えられるところでございます。
一方で留保型としておりますが、第2のタイプのコンセントにつきましては、アメリカの制度など諸外国の制度をもう少しきちんと把握をいたしまして、検討するということが必要ではないかというふうに考えられるところであります。
我が国の現行法における類似の概念というのは、これはいわゆる「正宗裁判」でございますけれども、「商品が通常同一営業主により製造販売されている等の事情により、それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認される虞があると認められる関係にある場合には、たとえ商品自体」、この争われたケースはお酒と焼酎でございますが、「互いに誤認混同を生ずる虞がないものであっても、それらの商標は商標法でいう類似の商品にあたる」というふうに解釈をされておりまして、「類似」と「混同を生ずるおそれ」というのは同一の概念として捉えられているということでございます。こうしたことから、類似の概念、これを基礎としながら、「誤認混同を生ずるおそれ」の有無を判断する一つの材料としてコンセントというのが一つ考えられるのではないかというふうに考えられます。
いずれにいたしましても、審査のいろいろな運用でございますとか、あるいは諸外国の動向、需要者の保護といった、そういった観点から、もう少しこの点については検討をしていきたいというふうに考えております。
最後でございますが、商標の定義でございます。現在の商標の定義は、27ページ下にございますように、「この法律で『商標』とは、文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩の結合であって、次に掲げるものをいう」というふうに規定をされているところでございます。したがいまして、現在の商標法の定義におきましては、まず第1の問題として、商標というものは、「識別力」を持つものであるということが明確に規定をされていないという観点がございます。
この小委員会で「商標」の定義について、識別性を商標の要素として規定するということについて検討をいただいたところでございます。この際に「商標」の定義がいろいろな条文に関連すること、それから定義規定の変更がそのほかの条文との整合性を保つよう配慮すべきこと、あるいは臭いであるとか、音等にからなる商標も定義に含めるかどうかといったことについて検討をいただいたところでございます。
対応の方向でございますが、この商標について「識別力」というものを、これは現在判例でも確立をしているところで、必須の要件でございますので、現行の規定で特段実務上の支障というのはないのではないかと考えられるところでございます。また、定義を見直すということになりますと、これまでのいろいろな判例等との整合性、あるいは実務への影響というものもございますので、この商標の定義については、さらに検討を行うことが必要ではないかというふうに考えておるところでございます。
それから、商標の「使用」の定義でございます。29ページの上段に8つの類型がございます。もともと昭和34年法、さらにサービスマークを導入時、あるいはインターネット等情報化に対応するための商標法の改正の際に類似追加をされてきた規定でございます。非常に細かく規定をされているということで柔軟性がないのではないかという問題があるわけでございます。
小委員会では、標章の定義につきまして、より包括的に規定するということについて検討をいただいたわけでございますが、罪刑法定主義の観点から、ある程度の明確性が必要であろうということ、それから商標の定義とも関連いたしますが、「使用」の定義がいろいろな条文、全体の体系に及ぶのではないか、そういったところについて検討いただいたところでございます。
対応の方向でございますが、「使用」の規定は、この規定自体は随時改正が行われているということでございまして、特段実務上の支障は生じていないのではないかということでございます。また、「使用」を包括的に規定した場合には、従来の「使用」の概念、あるいは刑事罰又は侵害行為との整合性の観点から影響が大きいのではないかということで、さらに検討する必要があるのではないかというふうに考えられるところでございます。
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土肥委員長
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どうもありがとうございました。それでは以上、後半の部分の説明を踏まえまして、議論を続けたいと存じます。どうぞ後半の部分、ご自由にご意見を、あるいは質問がございましたら質問を出していただいても構いませんけれども、ちょうだいしたいと存じます。本宮委員。
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本宮委員
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確認なのですけれども、24ページから25ページにかけて、いろいろ数字が出てまいります。この数字に関して、24ページから25ページの最初の方に拒絶査定不服の審判に行くのは2%ぐらいという形で書いてあり、審査の適正の方にもっていっているわけですが、考え方としては、問題なく登録査定になる部分があるので、そこを除いた形での拒絶の方向で行ったときに、どれぐらい判断が間違っていたかどうかという、そこに持っていくわけだとしたときには、登録の部分を除いた形でパーセンテージは出すべきではないのかなというのが1点です。
それと、その次に譲渡してもう一回戻してもらうというのが、100件ぐらいということですけれども、この数字が果たして本当にこのぐらいなのかという点。それとその次、コンセントの在り方でイギリスとアメリカが出ていますけれども、この辺の数字の点に関しても確認させていただければと思います。
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土肥委員長
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私もすぐ計算してみたんですけれども、今の3点の数字ですね。2%から始まって、これは登録の数も入っているんじゃないかということなんですが、そこはどうですか。つまり、これは全体について2%ということですよね。
まず第1点については確認させていただいて、次回にでもということになりますね。
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田川審議室長
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数字はちょっと精査をして、またご報告をさせていただきます。
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土肥委員長
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それから例の100件という数字なんですが、これはどういうことでわかったんですか。
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貴田審議企画班長
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これは、登録簿等からここに書いていますようなケースに該当するものをシステマティックに引っ張ってきた数字でありまして、ちょっと詳しい条件等はまた後日ご報告させていただきますけれども、そういう意味で試算でありまして、これで全数が把握できているというふうには我々も思っておりませんので、ご理解をいただければと思います。
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土肥委員長
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わかりました。これについてはまた後日ご報告があるということで、今の3点についてのご質問は、精査させていただいた上でご報告をさせていただきます。ほかにいかがでございましょうか。
この小委員会は丸2年前から始まっておりまして、その間、室長も三代お代わりになりまして、継続性の観点からすると、それぞれのその時代その時代のご認識が少しずつずれていくのだろうと思うんですけれども、著名商標の保護なんかはまさにその一つの典型的なところなのだと思うんですけどね。しかし現在のもとでは、詳細な検討は先に譲るとしても、事務局としては大体こういう認識でおるということでございます。
ほかに何かございませんかね。よろしゅうございますか。
本日の本小委員会においては、こういう議論を前提として、こういう基本的な立場に立って今後検討を進めていくということでよろしいんですね。松尾委員。
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松尾委員
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21ページのところですが、著名商標の保護との関係で不正競争防止法と商標法の関係が書かれています。幾つか質問させていただきたいのは、1つは、前に防護標章をこのまま置いておくべきかどうかというところで、必要であるというのは主として企業側から出されて関税定率法による水際措置の場合、防護標章は権利だから水際措置で利用できるということ。だけれども、現実に利用したことはないと、例はないというようなことが言われていたと思います。また、新しく不正競争防止法で著名商標について水際で利用できることになりました。その二つの点からここに記載されていることはどうなのかなというのが第1の質問です。
それから2番目に、防護標章制度を廃止すると、商標権の効力を減殺させるようなことになりかねないということが書かれておりますけれども、そうすると、一体商標法と不正競争防止法の存在意義というのがどうなのかなというのが次の疑問です。
それからもう一つの疑問は「防護標章登録制度は権利の安定性や予見可能性という観点から一定の役割を果たしうるとも考えられる」と、これは本当にそうなのかなと疑問をもちます。どういうところからこういうふうに判断されたのか、根拠はどこにあるのかなというのをお聞きしたいと思います。
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土肥委員長
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松尾委員でしたら、不正競争防止法に関しては、むしろ我々よりもお詳しいと思いますので、もちろん、ご質問だとは思うんですけれども、この機会に、この関係についてご意見をお持ちでしたら、ぜひご紹介いただければと思います。
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松尾委員
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私はこれからまだ考えたいと思いますが、少なくとも、防護標章登録制度が権利の安定性や予見可能性というものに今まで役割を果たしていたのかなという点について、水際措置で利用されるということであったのかなと前に思ったことがあります。水際措置で利用されていないと、前回そういうふうに特許庁側からおっしゃったように記憶しております。何か判例で出たとか、こういうふうに利用されたというようなことが、資料として提供されないと、にわかに肯定できません。
それから商標権の方に希釈化・汚染防止というのが入っている国というのは、不正競争防止法を持っていない国に多いわけなので、これを入れるとしても、他方、防護標章制度というのは、商品や役務については登録商標の権利が拡大されるとしても、利用されるのは同一商標だけなんです。それにもかかわらず、本当に希釈化防止等の問題と防護商標制度の問題を併せて考えなければいけないものかどうか。併せて考えなければいけないとすれば、ちょっと方向が見えているように思われますので、この結論もおかしいのではないかなと思います。
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土肥委員長
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わかりました。今の点お答えいただけますか。
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田川審議室長
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まず防護標章制度の評価について、安定性に寄与しているのではないかというところでございますが、ここは観念上、ある種の公示効果もあると。登録にかからしめてというところから安定しているのではないかというところでございます。これをさらにサポートするような判例等があれば、少し調べてみたいというふうに思います。
それから不競法との関係でございますが、ここにつきましては、論点にもありますように、我々としてももう少し整理をしていきたいというふうに思っております。
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土肥委員長
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よろしいですか。この点についての根拠といいましょうか、考え方については、不競法と商標法を含めてどういう関係性があるのか、位置づけにしておくのかということは本委員会でも議論をいただきたいと思いますけれども、また次回にでも出せるところは出していきたいというふうに思っております。鈴木委員どうぞ。
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鈴木委員
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防護の話で企業側がどのような使い方をしているのかというのは、一つのポイントだと思います。余り目に見えてこないのかもしれないですけれど、例えば、周知著名性を立証するときに防護標章登録を得ておりますよという使い方をすることは結構ございます。そして、これは統計をとっているわけではないのですけれども、防護標章登録があるときに、周知著名性が認められやすいということは、経験的に私どもが感じているところです。
著名性の立証は、通常は当事者が一方的に立証するので、そこで特許庁の登録という第三者が評価したというような事実は、企業側にとって利用価値があるものと考えております。また、防護標章登録をされているものというのはそれなりに著名なものだということで、後から参入してくる人は気をつけるというような、そういう抑止的な効果というのもあると思っております。
ただ、一方で防護標章登録の場合には全く同一のものしかカバーされないので、実際の侵害排除の場面で、必ずしも使い勝手のいい制度ではないということも感じています。また、水際措置のお話もありますので、企業側としても防護標章登録制度は、絶対存続をしてもらわないと困るよというような話ではなくなってきていまして、著名商標の保護制度が新しく検討され、その中で防護標章登録制度の存続も見直ししていただいても、それは構わないことだと考えています。著名商標保護のレベルというのを下げないのであれば、発展的解消というような選択肢もあり得るのではないかと考えております。
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土肥委員長
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ありがとうございました。2条1項2号で水際規制の申し立てをやるというときに、自分の商品等表示が著名である立証を申し立てるときに、防護標章をとっておくというのは考えられるということですね。その意味ではそういうところが新しく増えましたので、場合によっては、そういう使い方をされる方も出てくるということかもしれません。
ほかにいかがでしょうか。全体を通じでも構いません。本日のところ、前半、後半両方通しましてご意見を賜ればというふうに思っております。本宮委員。
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本宮委員
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前半の方に戻らせていただいて、小売の点ですけれども、7ページです。7ページの で「他人のための各種商品の品揃えその他の購入の便宜の提供」を役務として認めるとあるのですが、この記載をすればいいよ、という意味か、それとも、この記載で出願されたときには、審査の際に各種商品を集めて品揃えしているかどうか、そこまでチェックする、というところまで考えていらっしゃるのでしょうか。
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土肥委員長
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お願いします。
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田川審議室長
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ここでは具体的な業態については余り議論をしておりませんが、まず概念的に「他人のための各種商品の品揃えその他の購入の便宜の提供」というのを、法律上きちんと商標法の対象になるというところをまず整理をしたい。その後どのような記載によってサービスを特定するかというのは、もう少しいろんなご意見をいただきながら検討すべき課題かと思っております。
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土肥委員長
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審査基準との関係まで踏み込んで考えているわけじゃないでしょう。
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田川審議室長
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ええ、ここはまだ前段の段階でございます。
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土肥委員長
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もう一度どうぞ。
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本宮委員
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続けて今の小売との関係なのですけれども、ここで出てくる「他人のための各種商品の品揃え」というのは、これはニース分類から引っ張ってきた形だと思うのですけれども、マドプロ出願で日本が指定国になっている場合、同じような表現で我が国で登録を認めているのもあると思います。新たに今回入れるということであれば、その点の整合性の問題と、あとこれを導入したときに、経過措置に関して、先後願で判断若しくは4条関係の10号とか15号とか19号とか、ここで判断するというのがあるのですけれども、今回の地域団体商標のときに、継続的使用権が入りましたが、使用権を認めて担保するというような、その辺はどうなのでしょうか。
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田川審議室長
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2点目の方からでございますけれども、経過措置について、一応出願の整理として、今の規定で大丈夫ではないかと思っておるんですが、まだ若干我々もどういうケースが本当に想定されるかというのを今検討しておりまして、必要なものはきちんと手当をしていきたいと思います。
それから継続的出願については、今もある意味では小売業というのは商品商標で保護されているという実益があって、今回はその整理、区分の整理というふうに考えた場合には、継続的使用権のようなものをは要らないとも考えられると思っております。ただし、そこは実態をきちんと踏まえて、さらにご議論いただきたいと思っております。
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土肥委員長
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マドプロとの関係ですね。
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芦葉商標制度企画室長
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現在マドプロで採用されていますので、アルファベチカリストの注釈の表示のような形でも採用している部分がありますけれども、現在、我が国においては小売サービスそのものを認めるという運用はやっておりませんので、あくまでもここの「他人のための」という他人を、例えば提供するお店に対するレイアウト業者の役務という部分で捉えて採用している部分がございます。
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土肥委員長
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ということは、整合性は問題ないということになりますか。
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芦葉商標制度企画室長
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小売業商標についての表示につきましては、今後、検討ということになっておりますので、概念として、このような表示のものを盛り込むということで、今検討していただいているところでございます。
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土肥委員長
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よろしいですか。ほかにはご意見ございませんでしょうか。
特に本小委員会において、こういう方向性で今後議論をしていくということについては、ぜひご確認をいただきたいと思っておりますけれども。琴寄委員。
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琴寄委員
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全体を通じての話なんですけれども、本委員会での幾つか今回論点として挙げられておりますけれども、今後の進め方という意味で、先ほど来、前半と後半という形で分かれておりますけれども、後半部分の方での各論点のまとめについては、さらに検討が必要という形で締めているように理解しておりまして、進め方として、さらに検討という部分については、時間的な制約とかも当然ありますでしょうし、今回の審議会でさらに深く検討を行うということはでないという理解でよろしいでしょうか。
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土肥委員長
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今の点はどうですか。
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田川審議室長
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お答えいたします。確かに、今後の方向性について強い方向を出しているものと、それから今後検討としているものがございます。強い方向を出しているサービスマーク、それから輸出、罰則については、ある程度この方向性でご指示をいただければと思っております。そのほかのものにつきましても、今日もいろいろご意見をいただいておりますし、そういったご意見を踏まえて、もう少し何ができるかといったところも、この一連の委員会の中でご議論をいただくようにしていきたいと思っておりますが、ご承知のとおり、時間的な制約だとかというところはございますが、さらに私ども事務局の方でも整理をしていきたいと思っております。
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土肥委員長
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今のご質問というのは、恐らく、読んだみなさんもそういう印象をお持ちになったんだろうと思いますけれども、検討の順番として、今後出てくるのではないかと思っております。もちろん、委員会の委員の皆さんのご意見、そういったものがまた別途あれば別なんですけれども、一応そういう進め方でさせていただきたいというふうに思っております。
よろしゅうございますか。ほかになければ商標制度の在り方について、過去2年余りの議論を踏まえた上での一応のとりまとめという受けとめ方をさせていただきまして今後につなげていきたいというふうに思っております。
最後に、昨年ご審議いただきました地域団体商標、去年から今年にかけて議論いただいたものでございますけれども、その導入に伴う商標審査基準の改正案について、現在、特許庁において検討いただいておるようでございます。この点について事務局からご紹介をいただきたいと存じます。
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田川審議室長
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お手元の参考資料3としてお配りしておりますのが、「地域団体商標制度導入に伴う商標審査基準の改正」ということで、地域ブランドの導入に伴う審査基準の改定でございます。現在、この内容につきましては、地域ブランドに関連いたします関係省庁の連絡会議を開催いたしましてとりまとめた内容でございまして、パブリックコメントの手続によりましてご意見を募集しているところでございます。この内容につきまして、いろいろご指摘等ございましたら、後日また特許庁宛にご連絡をいただければというふうに思っております。よろしくお願いいたします。
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土肥委員長
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これはこれで、審査基準に関しては別途ということになりますね。もしご意見があれば、パブコメの手続の中で回答するということですか。わかりました。ありがとうございました。
それでは、時間も若干はございますけれども、皆さんのご了解が得られれば、本日の小委員会はこれくらいにしたいと考えております。
最後になりましたけれども、今後のスケジュールについて事務局から説明をお願いいたします。
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田川審議室長
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今後のスケジュールにつきましてご説明をいたします。
次回14回の小委員会につきましては、11月18日金曜日の2時から開催を予定いたしております。それ以降の日程につきましては、決まり次第また追ってご連絡をさせていただきます。よろしくお願いをいたします。
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土肥委員長
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以上をもちまして、産業構造審議会知的財産政策部会第13回商標制度小委員会を閉会させていただきます。本日はありがとうございました。
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