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第14回商標制度小委員会 議事録

  1. 日時:平成17年11月18日(金曜日)14時00分~16時00分
  2. 場所:特許庁 特別会議室
  3. 出席委員:土肥委員長、琴寄委員、篠原委員、鈴木委員、高澤委員、高部委員、竹田委員、田村委員、根本委員、萬歳委員代理(白石氏)、松尾委員、本宮委員
  4. 議題:商標制度の在り方(論点整理)について

開会

土肥委員長

それでは、ちょうど時間になりましたので、ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会第14回商標制度小委員会を開催いたします。
前回は商標制度の在り方についてということで、商標制度の検討に当たり論点とされ得ること全般についてご審議をいただき、皆様からのご意見をちょうだいしたところでございます。本日は商標制度の在り方の論点整理として、前回ご検討いただいた項目の中で、「小売業等のサービスマークとしての保護」、「権利侵害行為への『輸出』の追加」「コンセント制度について」の3テーマについてご審議いただきたいと存じます。
それでは、事務局より配付資料の確認をお願いします。

田川審議室長

それでは、配布資料の確認をさせていただきます。本日の配布資料は、3種類でございます。議事次第、配布資料一覧、委員名簿、「商標制度の在り方(論点整理)」、それから前回お配りをいたしました「商標制度の在り方について(案)」を再度ご参考までに配布をいたしております。
以上でございます。

土肥委員長

ありがとうございました。早速でございますけれども、議題に入らせていただきます。
先ほど申し上げましたように、商標制度の在り方についてということで3テーマ、それぞれ時間をとってご審議いただきたいと考えております。そこでまずは「小売業等のサービスマークとしての保護」について事務局から説明をお願いいたします。

田川審議室長

それでは、第1の議題でございます「小売業等のサービスマークとしての保護」につきましてご説明をいたします。
商標というものは、サービスを表示して、自己の商品、サービスを他人の商品又はサービスと識別するという標識でございます。
これに体化をされた信用を保護し、あわせて事業者の保護を図るということでございます。したがいまして、何が保護対象になるかということで、商品、役務をマークと一緒に指定をして、登録をされるということで、この商品、役務というのが一つ大きな要素となっております。現在の商標法におきましては、商品とは商取引の目的物たり得るもの、特に動産を言うと解釈をされております。また、役務につきましては、他人のためにする労務、または便益であって、独立して商取引の目的足り得るべきものというふうに解されているところでございます。
今回、ご議論をいただいております小売関連サービスにおける商標につきましては、商標法上、第2条の定義にございますように、特定の商品を販売する商標、譲渡する商標として使用されているというふうに整理をされております。したがいまして、
品揃え、陳列といった商品販売のための付随的なもの、これは独立して商取引の目的とはなっていないと現在整理をされているところでございます。
問題点でございますけれども、漏れのない商標登録によりまして、自らの商標の保護を望む小売関連の事業者にとりましては、取り扱う商品、これをすべてを指定をした上で商標登録をする必要がある。例えば、5個の商品を指定をするという場合ですと、1つでもその商標と既存の商標とバッティングするようなものについては、権利を取得することができないということで、結果として商標を選択する自由度というのが制限をされているということでございます。
これまでの審議会におきますご議論でございますが、この小売関連のサービスを商標法上、役務ととらえまして保護するに場合、その対象となる小売りサービスの範囲、あるいは類似に関する審査の在り方、または具体的な役務の特定ということで、指定役務の記載について検討すべきであるというご指摘があったところでございます。
また、経過措置につきまして、例えば、サービスマークを導入したときに措置された継続的な使用権、これは法律の施行前から使用されているサービスマークについて継続して使用するという、そういう措置がなされておりまして、そういったところを措置するべきではないかというご指摘をいただいたところでございます。
前回は総合小売りを中心としてご説明をしたところでございますが、今回は総合小売り、それから量販店等の特定のカテゴリーについての小売業、あるいはもっと狭い単品的な商品を扱う小売業という3つのカテゴリーに分けてまして、再度整理をしているところでございます。
対象となる小売業サービスにつきましては、まず第一の類型といたしましては、各種の商品を網羅的に取り扱う小売業でございます。商品の種別を超えて多様な商品の品揃えや独自の販売形態をする。こういった流通業が発展を遂げているということでございます。この際に使用される商標というのは、特定の商品群との関係で信用を蓄積するというよりも、むしろ、各種商品の品揃え、陳列といった消費者に対する購入の場の提供といった、そこに小売サービス自体の信用を蓄積しているものと考えられるところでございます。
このため、具体的取扱品目の特定が困難な程度の多様な商品を取り扱う小売り関連サービスにつきましては、商標法上における役務と認められる旨を定義し、サービスマークとして保護するのが適切ではないかというふうに考えられるところでございます。
具体的には各種商品を網羅的に扱う、例えば百貨店であるとか、コンビニエンスストア、あるいは総合スーパーといったもの、またはカタログ、インターネットを利用した多様な商品の品揃えを行う、そういった小売業を含むとしてはどうかということでございます。
2番目の類型といたしましては、例えば家電量販店、ドラッグストア、食品スーパーといった、ある一定のカテゴリーに属する中で、各種の商品群を網羅的に扱うものでございます。この場合に、各種商品の品揃え、陳列といった点において顧客のために独立した役務を提供しているという考え方も成り立つということで、サービスマークの対象としてはどうかという考え方が成り立つのではないかということでご議論いただければと思います。
3つ目のカテゴリーといたしまして、これは特定の商品、あるいはそれに付随する商品のみを取り扱うような小売業。例えば、靴屋さん、眼鏡店、そういったところを想定をしておりますけれども、こういったところにつきましては、特定の商品商標として、既に保護が図られ、かつ商標選択の自由度というものも前に上げました総合小売業と比較して少ないのではないかというふうに考えられるところでございます。このため、特定の商品、こういった類型に属する小売業につきましては、現行法と同様に商品にかかる商標として保護することが適切ではないかという考え方もあるわけでございます。
一方で、こうした小売業についても品揃え等のサービスを提供しているということもございますし、諸外国の例におきましても、特定の商品にかかる小売業までを含めてサービスとして保護されているということがございます。こうしたところから、この3つの類型について、どういうふうに保護対象を考えるかというのが、第1点目の議論でございます。
2番目の議論といたしまして、審査の在り方でございます。商品と小売業との類否関係がどこまで審査において考慮すべきであるかという観点でございます。まず、各種商品を網羅的に扱う百貨店等の小売業、それから一定のカテゴリーの商品群を扱う、例えば家電量販店のような小売業については、多岐にわたる商品を取り扱うということから、特定の商品との関連では出所混同が生ずるというおそれが低くなっていると考えられるところでございます。
このため、審査におきましては、小売業にかかる役務と商品、例えば、百貨店における各種商品の購入の便宜の提供、それから靴という商品、あるいは家電販売店のサービスとカメラ、こうしたものが類似関係にあるということで一律に判断する必要があるのかないか。必要はないのではないかとも考えられるところでございますが、この点ご議論をいただければというふうに思っております。
それから、3つ目のカテゴリーであります靴屋さんとか、あるいは眼鏡販売店、そういったところを保護対象とする場合には、取り扱う商品と商品の生産をする事業者との出所混同を生ずるおそれがあるわけでございます。ただし、どの範囲でサーチを行うべきか。こうしたことを一律に行うことが適切でない場合も存在するのではないかというふうに考えられるところでございます。
したがいまして、こうした眼鏡販売店と眼鏡用のレンズ、あるいは眼鏡、それに付随していろいろ取り揃えておられるメガネレンズだとか、あるいは洗浄剤、こういったものについての類似関係について、どういうふうに考えるかという論点でございます。
それから2としておりますけれども、役務にかかる商標との類否関係、これは今申し上げております総合小売、量販店、単品小売といった、こうした3つカテゴリーの間の類否関係をどう考えるかという論点でございます。
まず、各種商品を網羅的に取り扱う小売業、百貨店等と一定のカテゴリーの類似群を扱う小売業につきましては、比較的取り扱う商品の範囲も共通する可能性も高いということで、出所混同が生ずるおそれがあると考えられるのではないかということでございます。
また、特定の商品を取り扱う小売業を保護するとした場合に、総合的な小売業との関係で出所混同が生ずるという可能性は相対的に低いと考えられるところでございますが、顧客のための商品購入の便宜の提供という観点では共通性を有するということでございます。
こうしたことから、小売業同士の間での類似関係をどういうふうに考えるかというのが、次の議論でございます。
それから、3点目でございます。(5)にございますが、指定役務の記載につきまして、どのようにその小売サービスを特定をしていくのかという観点でございます。例えば、各種商品を網羅的に取り扱う小売業、あるいは一定のカテゴリーの商品群を取り扱う小売業につきましては、原則として商品にかかる商標とは類似しないというものとして取り扱うことが適切であると考えられるところですが、無効審判あるいは裁判におきまして、個別に出所混同を生ずるおそれを判断した結果として、商品にかかる商標と類似するということも想定をされるところでございます。
したがいまして、どのような業態の小売業にかかる商品であるか、予め一定程度限定をして登録を認めるということが適切ではないかというふうに考えられるところでございます。
このため、例えば、百貨店であるとか、コンビニエンスストアであるとか、あるいは量販店、ドラッグストアといったような、より具体的な指定役務の記載が必要ではないか。
特定の商品を扱う場合ですが、この場合に靴の購入の便宜の提供といった指定役務の記載も可能なわけでございますが、こうした業態におきましては、付随する商品を取り扱う場合も多いということで、個々の商品を列挙するというよりも、むしろ靴販売店であるとか、あるいは眼鏡販売店といった指定役務の記載が必要ではないかと考えられるところでございます。
経過措置の議論でありますが、これにつきましては、従来から小売業を行っていた事業者と新規参入の双方が想定をされるところでございます。これらの出願が競合した場合でございますが、原則として未登録周知商標の保護するための拒絶理由であります4条1項10号、あるいは著名商標との出所混同の防止についての4条1項15号、または19号著名かつ不正目的出願の防止といった規定によって、まず前段として整理ができるのではないかというのが、第1点でございます。
さらに現在、小売業を営む事業者が周知となっていない場合、現在の商標法上の先使用権というのは、これは周知を要件としているということでございますので、これにつきましては、従来から使用していた商標が使用できなくなるという弊害も懸念をされるところでございます。現に小売りにかかる商標として使用している場合には、周知性を要件としないという先使用権を認めることについて、どのように考えるかという論点かあるかと考えております。
それから、次の点でございますが、特定の商品を取り扱う、いわゆる単品小売りの場合の経過措置といたしまして、現在の商品商標の商標権者、それから新たに商品商標をとろうとする出願人、さらに新規の小売業にかかる役務商標の出願人の間において、これは通常の出願と同様に相互に類似するものとみて、通常の出願と同様に判断をするということが必要ではないかということでございます。
また、販売を役務として解釈するとした場合に、現在の商品商標を販売票として取得をして使用をしているという場合には、役務としての商標権への移行について措置をする必要があるかどうかという観点、このあたりご議論いただければと考えております。
以上でございます。

土肥委員長

ありがとうございました。前回は質問もちょうだいいたしましたので、本日は早速ではございますけれども、議論に移りたいと存じます。ご意見をいただければというふうに思っております。
今、ご紹介ございましたように、論点としては幾つかの部分ございます。どこで線を引くかという問題、小売りの範囲の問題が1つ。それから、審査をするかどうかという問題ですね。クロスサーチの問題でございます。それから、類似の範囲をどう見るか、これは3つ目ぐらいだろうと思います。それから、かなり実務的かもしれませんけれども、指定役務の記載の仕方はどうすべきか。それから、最後に経過規定、こういうことかと思いますが、最初のところなんですが、どこで線を引くかという問題でございます。総合小売り、あるいは電気製品のようなああいう量販店、あるいは靴とか、パンとかのような単品小売り、ここまで小売りにおける品揃えはあろうかと思いますけれども、この点についてご意見をいただければと存じます。
この話は裏から言うと、どこまで審査をするかというところもつながっておりますので、特許庁におかれまして、審査については、もう全く異論はないと。何でもやるとこういうことかもしれませんけれども、どうですか、本宮委員。

本宮委員

今のどこまでということですけれども、総合小売りと単品小売り、この線引きはかなり難しいように思います。あと、2ページ目の3のところ、これは単品小売りのことだと思うのですけれども、この中ほどに「諸外国においても、こうした特定の商品に係る小売業まで含めてサービスとして保護している」という国があるということで、この国の方が多いのかなという気もするのですが、ニース協定の第9版との兼ね合いで、小売りを入れていくという形で考えるのであれば、やはり諸外国とのハーモナイゼーション、特にマドプロ出願で日本に来る場合なり、日本からマドプロ出願で外に出す場合、その辺を考えたときには、ある程度調和が図れていないといけないのではないか。それで狭い方から広い方に行くのは難しいけれども、広い方から狭める方はある程度可能なのかなと。日本は狭い方は認めないで、広い方だけ認めるというスタンスをとると、諸外国から来たときに、諸外国が狭い方で来たのを広げるという形は多分難しいように思うのです。そういう意味では、諸外国なり、マドプロ出願なり、その辺を考慮した上で、やはり検討しなければいけないのではないかというように思います。

土肥委員長

ありがとうございました。そういうマドプロとの関係も考慮すべきであると、こういうご意見かと存じますけれども、ほかにいかがでございましょうか。松尾委員。

松尾委員

目安として、この3つ分けて考察されること自体は結構だと思います。しかし、例えば12とどういうふうに違うのかなと考えますと、現実に家電販売店といっても家電以外のものもいろいろ売っている。食品スーパーでも食品のほかにいろいろ売っているということもありますので、まず、12というのは、区別は非常に難しいなと思います。それなら、3はどうなのかなといいますと、3でも眼鏡店で、これは特定の商品ということになりますけれども、ほかの審査の在り方のところで読んで考えますと、非常に大きな眼鏡店になりますと、そこに置かれている、取り扱われている眼鏡の販売というのは、百貨店などの眼鏡の販売よりもはるかに規模が大きいということもあります。そういうわけで、取り扱い商品の方から3だけを外すというのは非常に難しいと思います。政策的に見て特定の商品のものは扱わないとかというような、政策的なことはあり得るかもしれませんけれども、理論的に言うと1から3まですべて認めないわけにはいかないだろうというふうに考えます。
以上です。

土肥委員長

ありがとうございました。恐らく、12の間の線というのは、ないんだろうと思うんですけれども、23との間は従来からの議論からすればあると。しかし、今のご意見からすると、3の下に線を引くべきであるということであろうと思いますが、ほかにご意見はございませんでしょうか。

萬歳委員代理(白石氏)

今の議論のご支援といいましょうか。この小売りサービスのマークが認められる具体的利点ということのお話をしてみたいと思うんです。
例えば、既存のイトーヨーカ堂さんであるとか、イオンさん、売場面積1万平方メートルを超えるというような事業を現に展開されている。その事業体が売場面積1,500平方メートルぐらいのミニスーパーないしは、スーパーレットと言われる店舗を開設したいといったときに、この1の業務を行っている会社が2の業務を行うという場合ですね。例えば、店舗名称をクイックマートみたいな、そういった形の採用するネーミング採択の幅を広がるということがある。ここが私ども業界の一番、このサービスマークの登録が認められることによる利点というふうに考えております。
ですから、12で厳密にというふうに分けるというのもございますけれども、相互の新しい事業コンセプトに基づいて、多様なものに展開していくということが考えられるわけです。ですから、どうぞ、その点をひとつご考慮いただければというふうに思っております。

土肥委員長

ありがとうございました。12との間の線というものが理論的にはあるけれども、実態的にはないものとして、こういうご意見かと思いますけれども、ほかにはございませんか。田村委員。

田村委員

1つだけよくわからないところがあります。12の区別はもちろんないと思いますが、3の取り扱いは、もう少し慎重なところもあってしかるべきかなと思います。
それはもともとの今までの商標法の定義にも、普通の商品商標の定義の方で、商品の小売りが、販売が入っているわけですから、それと並列して認めることになる意味ですよね。その意味が本当にあるのかどうか。今までの委員の方のご意見は、例えば、2との区別が難しいからということだったんですけれども、あえて、だからといって明示的に3を設ける必要があるのかどうか、私は少し疑問でして、もし設けるのならば、4ページの一番下に書いてあるような移行措置みたいな、類が2つできてしまうことになりますから、そういうのが必要になってくるのかなという気がしますが、そこまでする意味があるのかどうか。2までで十分じゃないかなという気はしております。私はただの学者ですので、実務の方のご意見がそうであれば、こだわりはしません。

土肥委員長

ありがとうございました。鈴木委員。

鈴木委員

小売業商標の登録制度を設けることの意義というのは、商品分類を片っ端から登録をとらなくてはいけないという実情があって、それを1つの分類で権利をとればカバーできるということと理解しています。そういった制度ができることというのは、恐らく出願人側にとっての最大のメリットだと考えております。そうだとすると、12のカテゴリーに属する方たちというのは、そういう利益を享受できるということが言えると思うのですが、3のカテゴリーに属する方、この辺の線引きは確かに難しいのですが、余りメリットがないのではないのかなと思っております。
ここに資料で例として挙げられているのは、靴屋さんとか、眼鏡屋さんというようなお話になっているんですけれども、逆にメーカーの立場として考えますと、靴の分類で商標登録をとらなければいけないし、防衛的に靴の販売にかかる小売りにかかる商標登録もとらなければいけないというような発想が生れてきてしまうので、二度手間になってしまうんではないかという懸念も持っております。したがいまして、3がニーズの点で出願人側にとってどれほどメリットがあるのかなという点で疑問を感じております。

土肥委員長

貴重なご意見をありがとうございました。松尾委員。

松尾委員

今の点ですけれども、私は商標が消費にかかるものと、サービスにかかるものとあるというふうに考えます。そうすると、例えば特定の商品、眼鏡であっても、眼鏡という商品に商標を付けているならば、それは商品商標ということであって、そういうふうに商標を使う方であれば、商品商標をとればいいわけです。しかし、いろいろなメーカーの眼鏡を扱っていて、それぞれの商品には商品商標は使わない。だけど、自分がいろいろなものを品揃えして、お客さんにその特徴を伝えて、その販売をしている。だから、その商品には、例えばメガネドラッグというのは商品の眼鏡には付いていないと思います。店のサービスには付いているわけです。それはその性質からいって、サービスマーク、商品商標ではなく、役務商標であると、そういうふうに商標をどういうふうに使っているかによって、小売サービス業の商標になったり、商品商標になったりするのであって、それは使う人がどういう使い方をするかというところから考えていったらいいだろうと思います。

土肥委員長

ありがとうございます。おっしゃるとおりなんですけれども、問題は次にありまして、審査のところなんですけれども、そうすると、商品商標と、つまり販売票と今度の小売役務商標との間の審査を当然するということになるんでしょうか。

松尾委員

私はむしろサービスマークということである以上、ほかの今のサービスマーク制度と同じように、商品との関係の審査は要らないと思っています。もちろん、11号では要らないわけですけれども、著名表示とかというのが出てくれば、これは全然話は別です。
それから、そこのところで商標取得のときに審査がないにしても、例えば、侵害事件が起きたときには、商品と役務の間には類似関係が発生しますので、そこの点の類似によって、侵害ということがあり得ると思います。そうでなくて、通常の普通の商標があれば、私は交互の審査は不要だと思っています。

土肥委員長

高部委員お願いします。

高部委員

仮に3の類型が入るとしますと、当然,この場合には役務とその商品の間の類似関係を審査していただく必要があるのではないでしょうか。

土肥委員長

ありがとうございます。ほかにご意見ございますでしょうか。確認のためにお尋ねするんですけれども、仮に12という場合に、ここの部分のサービスマーク、品揃えという部分で見たときのサーチなんですけれども、販売票との関係でクロスサーチをする必要があるのかどうか。この点についてご意見をいただけますか。鈴木委員お願いします。

鈴木委員

今の問いかけは、商品商標との間のクロスサーチの要否ということですね。私どもでは、まず1については、原則としてクロスサーチは不要であろうということを考えております。2は今まで実は想定はしていなかったんですけれども、1に準じて原則不要ということでよいのではないかと考えております。先ほど松尾委員がおっしゃったように、4条1項11号との関係においてということでありますが。

土肥委員長

ありがとうございます。本宮委員。

本宮委員

今の類否の4条1項11号との関係でいいますと、12については、11号は要らないのではないか。3についても、基本的には要らないのではないか。著名性との問題が出てくれば、4条1項15号等で考えればいいことで、また、異議なり、無効審判で考えればいいのかなと思います。それと、今小売りを問題にしていますけれども、例えば、サービスのところで飲食物の提供というサービスがございます。商品として、いろいろ食べ物がございます。これに関しては、そのお店で飲食物を提供している。例えば、おそばを提供している。そのお店でおそばを売っている。そういう状況があるにもかかわらず、今、基本的にはクロスサーチはしていない。そういうのも考えれば、小売りに関しても同じようなことがひょっとしたら言えるのではないかなというように思います。

土肥委員長

高部委員。

高部委員

3の類型の特定の小売り、単品の小売りをする場合に、11号との関係で商品商標等の審査が要らないという理由がよくわかりません。要らないという理由について,本宮委員はどのようにお考えなんでしょうか。

本宮委員

要らないといいますか、厳密には本来は要るようにも思うのですが、実際それができるかどうかという問題。例えば、今の飲食物の問題に関しても、本来は要るのかもしれませんが、それを特許庁サイドで、どの辺までやれるのかという問題との兼ね合いもあるかと思います。

土肥委員長

高部委員。

高部委員

現実に審査がどこまでできるかどうかは別として、その審査が要らないとは法律上は読めないのではないかと思います。「商品もしくは役務」というような規定のし方がしてあって、しかも2条5項では商品の類似の範囲に役務が含まれることがあり,逆もあると明文で規定されていますから、3の類型に関しては、入れるのであれば、やはり審査をしていただくのが筋ではないかと思います。極端なことを言えば、2の場合であっても、例えば家電販売店でいろいろなものを売っているわけですけれども、電気製品を中心にして売っているということになると、「家電販売店における各種商品の購入の便宜の提供」という役務に対しても、家電製品にかかる商品商標との類否は全く無視していいというのは法律上は問題があるのではないかという感じがしています。
1に関しては、やったらキリがないのでやむを得ないかとは思いますけれども、2についてもクロスサーチが必要だという考え方は当然あり得るように思います。

土肥委員長

ありがとうございました。甲論乙論双方ございますけれども、また、そのところは審議室も十分受けとめて、聞かせていただいております。それで時間の関係であと2点ちょっとお尋ねをしたいんですけれども、少し実務的になるんですが、この資料で言うと、指定役務の記載のところですね。ここについて、これは恐らく、こういう場よりももっと別の場がいいのかもしれませんが、何かこの点についてご意見ございますか。例えば、丸々における丸々、こういう役務の記載の仕方というのが出ておるところでございますけれども、つまり、百貨店における品揃えとか、そういう例がここに出ておるんですけれども、これは恐らく、利用者、ユーザーの方の問題になってくるんではないかなと思いますので、ユーザーの方、あるいは代理人の方からご所見いただければと思いますけれども、特にございませんか。
もう1点は経過規定との関係でございます。どちらでも、経過規定での関係、それから今申し上げた指定役務の記載の仕方、この点についても、ぜひご意見をいただければと思っております。

鈴木委員

それでは指定役務の方ですけれども、先ほどのクロスサーチの有無にも関係してくると考えております。と申しますのも指定役務のところで単品なのか、総合なのかというところがある程度わかりやすくなっていないと、クロスサーチのしようがないのかなと考えています。また、ウォッチングをするという企業の立場からしても、中身がわからないというようなことにもなります。この点、4ページ目のコンビニエンスストアにおける云々、ドラッグストアにおける云々というような書き方で、うまくいくのかなという疑問もありまして、定義があれば、良いのだとは思うのですけれども、こういう多様なカテゴリーの商品を扱っている事業者が、コンビニエンスストアとか、ドラッグストアという言葉で、すべて適切にあらわされているのかなという不安がございます。
それと最後に、私ども知財協ではメーカーが多いのですが、メーカーの場合、小売りとの関係においては、ネットで自社商品だけではなくて、他社さんの商品も取り揃えて提供するというような場合がありまして、そういう場合には、どういう記載の仕方をするのかというのも、正直わからないところがあります。恐らく、ネットワークを介した顧客のための各種商品の購入の便宜の提供となってしまうのかなと思っているのですけれども、そうだとすると、資料1の1、2頁123のカテゴリーとの関係で、どうやって整理がされるのかという、実務上の細かな点で疑問というのを持っております。

土肥委員長

今の点についてだけなんですけれども、お答えいただけますか。

田川審議室長

インターネットを介したという点については、諸外国でももともとニース協定の国際分類でも、そういうものがサービスに含まれるということは第9版の中に書いてございますので、書き方の問題については、いろいろ議論があろうかと思いますけれども、インターネットを通じたというような書き方で、何か工夫ができるんじゃないかというふうに思います。

土肥委員長

竹田委員お願いします。

竹田委員

今の点にも関連しますが、先ほどのところに戻って結論だけ申し上げると、田村委員や鈴木委員や高部委員が言われたように、3については、やはり入れることには慎重であった方がいいということと、その場合に審査なしに登録を認めるわけにはいかないと思います。今の問題で言いますと、ネットを通じての商品販売も、ここに言う小売業として認められるということになると、その規模など全くわからない状態で、何種類かの商品を売っていれば、この要件を満たすということになってしまいます。百貨店とか、コンビニとか、家電販売店ということであれば、割合そこのところが明確で、これは審査なしに登録を認めるということも納得はできますが、インターネットによる商品の販売で、何種類か売っていても、それもOKということになると、それで本当にいいのかということが疑問になってきます。そういう意味では、何々におけるということの「何々」ということについて、全くこの点も審査なしでいいのかなという点は疑問であるということを申し上げておきます。

土肥委員長

ありがとうございました。ほかにご意見いただけますでしょうか。松尾委員。

松尾委員

この場所で決めていくというのは、余り意味がないんじゃないかと思います。私、知りませんが、むしろ、これを読みながらお聞きしたいと思ったんですが、コンビニエンスストアというのは、こういう定義であるとか、それからドラッグストアはこういうのをいうとか、家電販売店というのは、こういうものをいうとかいう定義があって、そして、その定義に外れていたらば、命令でも出して行政的に変えさせるとか、そういうような制度があるならば、こういう決め方をしてもいいんですけれども、そうじゃなければ、誰かが書けば当たってしまう、1になったり、2になったり、3でも2になるとか、そういうことでは余り意味がないので、場所的な記載の仕方をするのは問題であると思います。
それからもう一つ言いたいのは、商標の使用というところにちょっとこだわっているんですけれども、さっきの3のカテゴリーなんですが、あの場合に、何が商標の使用になるのかなと。そういうところを考えていきますと、商標の使用に当たって、例えば、店の名前とか、看板とか、そういう表示だけに使っているようなときに、広告物ということで2条でいくと、1項の8号になるんですね。そうすると、ほかの3号とか、4号、5号、6号に入らないで、結局、どうやって使っているかなというと8号になっちゃう。そういうわからないものが8号にいくというので、商標の使用というふうに考えていいのかなというところに疑問を持っているわけです。もう少し商標の使用というのをきちんと考えるのならば、特定の商品を扱っていても、役務について商標を使っているんだということで、いきなり8号に、ここで救いを求めるようなことがなくて済むと思うんです。私が一番問題に思っていましたのが、初めに問題の所在というところにいろいろ書いてありますが、これ自体いいと思うんですけれども、外国なんかで行っているサービス業が日本に入ってこようとすると、みんなマークはとられていると。それで入れないという問題があるんですね。そういうときに、どうやって入っていくかというところで、商品があって、店の名前なんかに使う場合に、一般的に使うときにだって、いきなり8号だけじゃいけないんですね。そういう問題もあって、一体商標の使用とは何かというところに問題点を持っていきますと、そうすると、3の形でだっていいんじゃないかとか、私は3をぜひ入れるべきと言っているんじゃないんです。理論的にどうやって区別するんですかという、商標の使用というところから考えて、商標とは何かということを考えると、どうして3が外れるんですかという質問があるわけです。

土肥委員長

いろいろご意見をちょうだいしておりますが、もちろん3が外れるというのは、ほかの委員の方も外すべきであるとおっしゃっているわけではなくて、そのときにはきちんとサーチをしていただきたい。こういうことなんです。だから、そこのところは外れないんだろうと思うんですけれども、そのあとは特許庁の覚悟の問題のような気がするんですけれども、ほかにご意見ございませんでしょうか。根本委員。

根本委員

12の中でも少し区分けが出てくるのかなと思っております。というのは、総合スーパーですと、例えば野菜だとか、果物、飲み物、食べ物、衣服と、それぞれ商品分類上全く違うものがありますので、これは多岐にわたる商品を扱うことにより、特定の商品を生産する事業者との出所の混同を生ずるおそれは少ないと思います。ただ、2の中にありますドラッグストアだとか、家電販売ということで言いますと、これはやはり商品を生産する家電生産者、それからドラッグメーカーだとかというところとの混同を生ずるおそれが低くなるということはないんじゃないのかと。混同のおそれは少し心配かなと思っております。

土肥委員長

ありがとうございました。ほかによろしゅうございますか。
一応、本日ただいまいただきました意見を踏まえて、全体のところでまたご意見をちょうだいする機会はあると、こういうことのようでございますので、全体で取りまとめの案は出てくるんですね。

田川審議室長

はい。

土肥委員長

わかりました。その際にまた議論をいただく。もし、本日最後の方で議論の時間がありましたら、またしていただきたいというふうに思っています。
本日はまだ、ほかにも論点がございまして、輸出の問題がありますね。使用との関係で、松尾委員のおっしゃった使用の概念との関係にもなるわけでございますので、ちょうどいいのかなと思いますが、それでは、次に輸出についての議論に移りたいと存じます。事務局から、この点についての説明をお願いいたします。

田川審議室長

それでは、第2のテーマでございます権利侵害行為への「輸出」の追加につきましてご説明をいたします。
前回にもご説明をいたしましたとおり、模倣品対策というのが非常に重要になっているところでございます。かつ、その模倣品の流通というものが組織化、国際化をしているということで、模倣品の国際的な循環、これを未然に防止するということが重要でございます。我が国といたしましても、各国が模倣品、海賊版の輸出・通過を規制するということを内容にいたします。模倣品・海賊版拡散防止条約、この実現を目指しているところでございます。
本年7月のサミットにおきましても、小泉総理から知的財産権侵害の拡散防止に向けた国際的な約束をまとめていくべきという提唱をしているところでございます。また、諸外国におきましても、商法権の効力範囲を「輸出」を規定する国が非常にということでございます。そうした模倣品対策の強化、かつ、それと関連をいたしますが、諸外国との制度調和の視点から、この問題を考えるべきではないかということでございます。
前回の審議会では、この点につきまして、模倣品対策の強化の観点、あるいは商標権侵害行為の明確化という観点から「輸出」を規定するということについて肯定的な意見をいただいたところでございます。
一方で商標権の侵害行為として、「輸出」を規定した場合の実際的な効果、水際措置との関係、あるいは属地主義との関係でさらに検討が必要ではないかというご意見もあったところでございます。
また、OEM生産等の取り扱いについての配慮、あるいは水際措置の実効性についての検討の必要性といったところ、さらには、模倣品対策の観点からいいますと、我が国への模倣品の輸入効果の幇助、あるいは積極的な誘因を取り締まるということが効果的ではないかというご意見をいただいております。
まず、私ども「輸出」を侵害行為として規定することが必要だという観点でございますけれども、その必要性につきまして、模倣品対策の強化、それから輸出の取り扱いを商標法上きちんと明確化をする。それから、国内の商標権者の利益の保護という3つの観点から整理をいたしております。
まず、模倣品対策の強化につきましては、これは先ほども申し上げましたとおり、模倣品の国際的な流通というものを防止するということが一義的に必要だということでございます。現在の商標法におきましても、この「輸出」のところがきちんと手当てができるかどうかというところで、前回国内にいろいろな形態によって環流し得る状況があり得ると、そういったところをご説明をしたところでございますけれども、我が国から海外に流出する模倣品、これがさらに環流をしてくると、これによる信用の棄損防止をするという観点から、商標法に基づいて、確実に差し止めることが可能な手段を手当てすることが必要であるということでございます。
また、関連いたしまして、我が国から輸出された模倣品が海外で流通をしたという場合には、我が国の製品でありますとか、企業の信用や信頼を害するということが明らかであるということで、我が国の経済全体にとっても悪影響を及ぼすということでございます。このため、国内で行われる行為としての「輸出」を規定するということで、国際的な模倣品の環流を防止するということが必要であるということでございます。
また、我が国が模倣品対策を国際的に取り組もうということでリーダーシップをとっていろいろな努力をしているところでございます。そうした観点からもきちんと対応すべきではないかという点でございます。
続きまして、現在の商標法上の「輸出」の取り扱いでございますが、これは商標を附した商品の譲渡、引き渡しといった行為が使用行為とされておりまして、第三者が許諾なく模倣品の譲渡等を行った場合には、これは侵害行為というふうになるわけでございます。「輸出」につきましては、明確に実施行為というふうに規定をされていないということで、譲渡や引き渡しといった現行法の解釈によっては、その輸出をする行為が差止請求等の対象にならないという可能性もあるところでございます。したがいまして、現行法で対応することが不可能な場合もあるのではないかということから、輸出を商標法の使用行為というふうにきちんと位置づけるということで模倣品を国内から海外へ送り出す行為を確実に差し止めることを明確にするということは非常に重要ではないかということでございます。
それから、3点目に国内の商標権者の利益の保護でございます。商標法の目的は、そもそも商標に化体をした事業者の信用を保護すること。それを併せて需要者の保護を図るということでございます。我が国における事業者の信用が害された場合には、これを適切に防止をするということが必要でございます。その商標に化体をされた信用というものは、これは財産的価値を有するものであるということでございますので、商標法による保護というものは、不正な競業者が自己の商標と紛らわしい商標を使用する場合には、これをきちんと排除するということによって、競業秩序を維持することを可能とするということでございます。
こうした観点から競業業者による模倣品の輸出というものは、これは本来の商標権者が輸出によって得られた利益を害するという行為であるというふうに考えられるものでございます。したがいまして、商標権による保護を及ぼすことが適切ではないかということでございます。したがいまして、模倣品の輸出を商標権の侵害行為というふうに位置づけるべきであるということでございます。
また、以下ご説明をいたしますが、国際的な制度調和の観点から、諸外国の例もいろいろと調べてみましたところ、模倣品の輸出によりまして、商標権者の信用の失墜等が行われ、それを防止するという観点から、輸出を侵害行為としているというところが非常に多いというふうに考えております。
その海外の状況でございますが、まず国際的な制度調和の観点で、英国の事例でございますが、英国におきましては、旧法(1938年の商標法)でございますが、輸出に用いられる商標の保護が38年に導入をされております。
この保護対象につきましては、英国国内の競業者間の輸出市場での混同を防止するということでございます。ただし、海外における市場の混同においては、これは英国商標法の関与するものではないとされております。
また、現行の英国商標法では制度調和のための欧州指令に基づいてされたものでございまして、輸出を侵害行為としております。この場合に旧法と同様に英国内での競業者間の輸出市場における商標の使用、これが対象とされているところでございまして、輸出行為を侵害行為に該当すると位置づけられております。
続きまして、アメリカにつきましては、アメリカの商標の規制をいたしますランハム法では、輸出について明確に侵害行為であると規定をしておりませんけれども、解釈において輸出というのは取引上の使用の範囲に入るとされているところでございます。
また、裁判管轄の問題といたしまして、米国通商への実質的な影響がなければ、連邦法による判断を行えないというのが原則でございますが、判例におきましては、米国内から海外に商標を附した模倣品を輸出する行為というのは、海外の消費者にのみ混同が生じる場合であっても、米国内で製造・包装・輸送が行われているということから、米国でそれを裁くことができる。米国に事物管轄権があるとされているということでございます。
また、ランハム法の域外適用に関しまして、商標権は海外での販売機会を失うだけではなく、海外からの旅行者あるいはアメリカの旅行者に対して米国内における潜在的な信用の棄損であるとか、あるいは販売機会の喪失といった危険が生じるといった見解もあるところでございます。
続きましてドイツにつきましては、これも輸出を権利侵害行為と規定をいたしております。輸出することにより商標権者の地位が危険にさらされる。商標の価値が下がるおそれがあるということが考えられる以上、輸出は商標権者にとって輸入や販売等の行為と同様の影響があるということから、輸出が侵害行為とされているところでございます。
また、EUの共同体商標規則におきまして、商標権侵害となる商標を輸出のみに使用するという場合には、域内市場に影響を与えないという考え方もあるわけでございますが、域内に模倣品を製造・輸出する事業者がいる場合には、製造を輸出する事業者の輸出量が減少することを防止するという発想に基づいて輸出をこの権利侵害行為といたしております。
続きまして、輸出を実施行為とした場合の間接侵害、侵害とみなす行為、予備的な行為につきましては、まず第1点が「輸出」を目的とした所持でございます。現行法の「譲渡等を目的とした所持」というのが商標法で規定をされておりますが、譲渡等の使用行為が行われる直前の予備行為というふうに位置づけられているものでございます。未だ使用行為が行われている段階であっても侵害という結果が生ずる蓋然性が高いということで間接侵害として規定をしているところでございます。
輸出を目的とした商標権侵害商品の所持につきましては、引渡しのための所持と重複する場面も考えられるところでございますが、輸出を目的とした所持を侵害行為として規定しない場合には、いろいろな脱法行為が発生するということも想定されるところでございます。また輸出のために、船舶等に持ち込む行為については、「譲渡等」の「等」に入っております「引渡し」では解釈が難しいというところもあるのではないかということで、これは商標権侵害であることを明確にすることが必要ではないかと考えております。
それから役務提供の予備的行為でございますが、役務における侵害の予備行為として、国内において役務を提供する又はさせるために役務に用いる物品を海外に送付するということは、これは想定が難しいのではないかということで、特段の手当てを行う必要はないのでないかと考えております。
それから、商標表示物、これはラベルでありますとか、包装紙の取り扱いでございますが、この商標表示物に係る侵害の予備行為として、国内において侵害行為を行うために商標表示物を海外に送付する。これも同じように余り想定ができないのではないだろうかということでございます。また、海外で既遂されるような場合における予備行為、これを商標法で規制をするということ、これも適切ではないのではないかということで、これも特段の手当てを行う必要はないのではないかと考えられるところでございます。
続きまして、次の4にございます商標表示物の製造のみに使われるもの、これも海外における既遂が前提となった予備行為でございまして、特段の手当てを行う必要はないのではないかと考えられるところでございます。
その他の論点といたしまして、損害賠償額の推定等の関係、積極的誘因行為、模倣品の「通過」の観点でございますが、まず、損害賠償額の推定等との関係、これは商標法上38条で、現在、損害賠償請求において損害額を推定する規定があるところでございます。この場合の輸出を追加した場合に、それを手当てをする必要があるかどうかという観点でございます。商標法38条第1項におきましては、商標権侵害物品の譲渡による損害額について、物品の数量と単位数量あたりの利益額を掛け算したもの、その積を損害額とする推定する旨を規定いたしております。侵害物品が「譲渡」だけでなく、「引渡し」等の場合につきましても、本条の算定ルールが妥当する場合には、この考え方を参考にして、損害額の算定が可能というふうに考えられるところでございます。
輸出についてみますと、第三者が商標権者の許諾なく模倣品を海外に輸出した場合に損害額の算定ルール、これを新たに手当てをするかどうかという点が問題となり得るわけでございます。
例えば、商標権者から商品を輸出していたにもかかわらず、第三者が海外に模倣品を輸出するということで、本来、輸出によって得られたはずの逸失利益というものが生じた場合に、これは損害賠償請求は可能であると考えられるところでございますが、一方で属地主義の考え方からは海外において生じた損害額について、これを商標法の中で算定するということについて、適切ではないかという考え方もあり得るのではないか。両論の考え方があるのではないかというふうに考えるところでございます。
この点につきましては、諸外国の商標法における取り扱いといったものも踏まえまして、さらにどちらの考え方がより合理的であるかということを検討していきたいと考えております。
それから積極的誘因行為につきましては、模倣品対策の観点からは、我が国において輸出する行為を商標権侵害として規定するというのではなく、我が国に対する模倣品の輸入を幇助する行為、あるいは積極的に誘因する行為を侵害行為とした方が効率的ではないかというご指摘があったところでございます。
この点につきまして、「輸出」を商標法における侵害行為とするということにつきましては、我が国おける模倣品対策の観点に加えまして、国際的な模倣品の環流や拡散を防止するという観点も踏まえたものでございます。
また、そうした我が国に対する模倣品の輸入を幇助する行為又は積極的に誘因する行為するというものにつきましては、我が国の領域外で行われる行為も含むということから、この点につきましては、さらに慎重な検討が必要ではないかというふうに考えられるところでございます。
続きまして、模倣品の通過でございますが、アメリカにおきましては、通関前に積み荷を置くための日本の保税地域に相当いたします「US foreign trade zone」に置かれたものについて、商標法でございますランハム法が適用されるところでございます。陸揚げされない状態で寄港したような場合であっても、米国領域内であれば、米国法の適用対象になるということから、ランハム法が適用される可能性はあるところでございますが、米国通商に影響があるかどうか、この点を考慮する必要があるのではないかという見解があるところでございます。
なお、イギリスにおきましては、英国以外の国における国際物流の中で、英国において通関手続を経ることなく、一時的に陸揚げされた場合については、商標権侵害評価する判例があるということでございます。仮に陸揚げがない場合は、判断が難しいが商標権侵害とも評価され得る。これは英国特許庁の見解でございますけれども、こうした海外の事例でございますと、こういう評価でございます。こうした諸外国の取り扱いを踏まえて、さらに検討が必要であるというふうに考えられるところでございます。
以上です。

土肥委員長

どうもありがとうございました。それでは、以上の説明を踏まえまして議論に移りたいと存じます。これもまた同様に、自由にご意見をいただきたいと、こう考えております。いかがでございましょうか。

高部委員

国際的な制度調和ということで、イギリスやアメリカ、ドイツといったところの紹介がございましたけれども、輸出を規定する立法趣旨との関係で,アジアの諸国の商標法がどうなっているのかという点に関心がございますので、お教えいただければと思います。

田川審議室長

アジア各国につきましてでございますけれども、資料をもとに調べたところでは、対象といたしまして、中国、韓国、台湾、香港、ASEANのシンガポール、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、こういった国を調べましたところ、商標法上、「輸出」を侵害行為と規定しておりますのが韓国、台湾、香港、シンガポール、マレーシア、この5か国でございます。また輸出の水際措置をとっておりますのが中国、韓国、台湾、香港、タイとなっております。

高部委員

ありがとうございました。先ほど「輸出」を追加する場合の立法趣旨、必要性として模倣品対策とか、我が国に商標権侵害品が環流してくることによる信用の棄損といったことが挙げられたわけですけれども、環流ということが現実に危惧されているのでしょうか。この点は、政策的な問題だと思いますので、輸出を入れるか入れないかはその必要性いかんにかかわってくると思います。アジアの諸国つまり模倣品対策で問題となっているような国々に対して、輸出を侵害行為として規制してほしいということを要求していくのについて、日本はどうなのかと聞かれたときに、私のところはありませんというのでは非常に話がしにくいから、その場合には日本も入れた方がいいというのはよくわかる議論だと思います。
今のお話ですと、模倣品の問題を生じている国のうち、中国は輸出の規定を持っていないということでしょうか。輸出は侵害行為ではないけれども、水際だけは可能というのは、自分のところには輸出をさせないということでしょうか。その趣旨をもう少しご説明いただければと思います。

田川審議室長

中国の場合には、商標法上、明確に輸出を侵害行為としてはおりませんが、輸出の時点で侵害物品の取り締まりをやっております。

高部委員

輸入ではなくて、輸出の時点での取り締まりですか。

田川審議室長

はい、そうです。

高部委員

それは中国における商標権の侵害品ということですね。

田川審議室長

さようです。

高部委員

他国の商標権ではなく、あくまでも中国に登録された商標権の侵害品を外に出さないということですか。

田川審議室長

そういうことです。

高部委員

ありがとうございます。

土肥委員長

ほかにいかがでございましょうか。
今回の審議室の提案からしますと、「輸出」を使用行為に追加をすると。それからさらに所持、その部分についても考えてはどうかということであったかなと思います。輸出を目的とした所持の部分、そのような部分については、まだ慎重に考えると、こういうことでしたね。ですから、輸出の使用行為についての追加とともに、間接侵害、みなし侵害というんですか、その部分で所持も入ると、こういうことのようでございますけれども、妙に全体に詳しいところもあるし、実施行為との関係の議論もあるのですけれども、特実の議論がそのままこっちに来ているということですか。これこれについては関係がないとかというようなところは、従来の説明とするとかなりニュアンスが違うので、その他の特実意匠あたりとの議論との平仄ということもあるんですか。

田川審議室長

特実意匠との関連もございますし、あとは具体的に法律として書くときの論点として考えられるところを挙げたところでございます。

土肥委員長

特にございませんでしょうか。竹田委員。

竹田委員

私が「輸出」を商標の使用に含めることについての問題点としているところは、前回申し上げたとおりですから、ここで繰り返すつもりはありません。あとは政策的な問題と思いますので、その点は政策遂行上、特に知財戦略との関係で必要だということであれば、あえて異を唱えるつもりはありませんが、それにしても、この特許庁のペーパーを見ていても、至るところに属地主義との関係が、関係がないと言いつつ、関係があることが触れられているので、そのことはちょっと気がかりです。
具体的に間接侵害として取り扱うということになれば、1の「『輸出』を目的とした所持」の点で述べられているような行為を規制することで、足りるのではないかと思います。損害賠償額の推定はちょっと難しい問題で、果たしてこれで「輸出」が商標の使用に当たるとして商標権侵害とされた場合、果たして損害額の認定ができるのかというのは、かなり困難な問題であると思っています。
以上です。

土肥委員長

ありがとうございました。鈴木委員。

鈴木委員

私どもも前回、知財協としての意見を申し述べましたので、その点に関して繰り返すことは致しませんが、この「輸出」を追加しようというお考えは、「模倣品・海賊版拡散防止条約」を日本が主導的に推進をしていくと。その中で日本が最先端といいますか、模倣対策について最も厳しい国であるという位置づけでないと、それが実現できない、ということが第一の理由だということでよろしいですか。

土肥委員長

では、お願いします。

田川審議室長

政策的にはおっしゃられたとおり、我が国が模倣品対策をきちんとやっていくということが海外に対して模倣品対策を進めるという上では必要なことだというふうに考えております。

土肥委員長

そうすると、先ほど少し質問として出たと思うんですけれども、還流の実態というのは、正確に補足された上で、由々しき問題であるというところは確かなことなのですか。つまり比較生産コストを考えても、一々日本でつくって、また向こうに持っていって、また持ってくるという、そういうコストをかけて、さらに捕捉される危険性もあるのに、そういう実態が相当あるという、この文章は書いてありますよね。それはどうなんですか。

田川審議室長

環流につきましては、これはある意味で現行法を前提としたときに、ある種考えられ得るケースとしては環流というのがあるのではないかということでございますが、例えば、誰がつくったかはわからないけれども、侵害物品が輸出をされるといったような実態があるときに、それを差し止めることができないということはやはり問題ではないかということでございます。環流のところは、ある意味、法律上の整理として、こういう類型があり得るのではないかという整理でございます。

土肥委員長

インターネットと書いてあったから、文章ではそうなっていたと思うんですけれども、そういうきちんとした指摘があるのかなということだったのですけれども。もし他に何かあれば、よろしいですか。松尾委員。

松尾委員

私、「輸出」を加えることについて、いろいろな理由から、それは賛成してもいいと思っているのですけれども、しかし、今の模倣品対策というのが表面に出てくるというのは、それも目的であるということで、基本的には商標法の話ですから、輸出の市場というのは、輸出されるべき商品が日本においてつくられる。その競業者間で公正な利益を保護するための輸出も規制する、商標権者の利益が国内でもあるという保護法益をきちんと書かないと、政策的なことが先に出るのはちょっと疑問に思います。また何かあるとまた変えるということにもなりかねないと思います。

田川審議室長

今のご指摘についてお答えしたいと思います。模倣品の議論についてもあるわけでございますけれども、諸外国が商標権者の法律上の利益として第三者が無権原者が輸出をした場合の信用の失墜であるとか、そういったところを保護法益として考えているという観点は、日本も同様に考えるべき点であるというふうに思っております。そういう観点では、少し説明ぶりをきちんと整理をしたいというふうに思います。

土肥委員長

高部委員。

高部委員

輸出による信用の失墜というのは,どこの国における信用の失墜でしょうか。

田川審議室長

それはまず日本国内での信用失墜というのは当然あり得ると思います。例えば、海外に模倣品が出されることによって、当然、日本にもいろいろな反射的に影響があり得ることだというふうに思っております。

土肥委員長

篠原委員どうぞ。

篠原委員

ちょっと法律の名前はもう忘れてしまったのですけれども、戦後、日本は輸出で外貨を稼ぐという時代に、例えばカメラだとか、精密機械だとか日本の得意産品の品質を確保する、あるいは粗悪品を海外に輸出して、日本の信用を失墜させないという趣旨から、輸出について検査をし、一定のグレードでないと輸出を認めないという法律があったと思います。この保護法益たしか、国内の産品を海外で信用を維持するというか、信用を落とさないという保護法益だったとは思うんですけれども、今回このご提案は両面あって、1つは著作権者の保護法益を守るということと、海賊品みたいなものを輸出するような国で、日本は信頼できないというようなことにならないような保護法益と両面あるんだとは思うんです。
もう既に廃止しました戦後のあの法律は、品質だけだったのか、模造品だとか、海賊品だとかというのも法律の対象だったのか、どうだったんでしたかね、ちょっと忘れてしまったのだけれども。

田川審議室長

デザインを中心にしておりましたけれども、対象につきましては確認をしたいと思います。

松尾委員

それは相手の国との関係で商品を通産大臣が特定して、そういうものについて輸出を禁止していたと思います。輸出貿易管理令かなんかそんなものですね。今はそれは使われていないけれども、やはり法律としては残っています。水際で使うときには、そういうのが必要だと思うんです。しかし、財務省の方で実体法で違法じゃないものまで違法とするような解釈するのではなくて、その前提としては、やはり実体法できちんと輸出を定めると、規定すると。そしてその上でほかの国との関係で一般的にするのか、特定するのか、その後に考えるべきであろうと。その法律との関係ではそう思っています。

土肥委員長

ありがとうございます。ほかにはいかがでございましょうか。高部委員。

高部委員

あと、今日のペーパーの9ページの一番下のところで、通過の問題が出てきているんですけれども、例えば、特許法の69条でしたか、特許権の効力が単に日本国内を通過するにすぎない何々には及ばないと、そういった規定があるのですけれども、そういった規定とこの通過の問題というのはどういうふうにかかわってくるのか、ちょっと趣旨がよくわからないので、もう少しご説明いただければと思いますが。

土肥委員長

どうぞ。

貴田審議企画班長

特許法で規定をしております通過の問題につきましては、船舶や航空機などが領域内を通過していくことを想定しておりまして、模倣品が船で日本に来て、それを通関あるいは輸入目的ではなくて保税地域に置いて、さらに第三国に送り出していくようなケースとは少し規定の性質が違ってくるのではないかなと思っております。特許法のこういう規定が入った背景につきましては、さらに調査をして検討したいというふうに思います。

土肥委員長

よろしいですか。

高部委員

はい。

土肥委員長

この通過というのは、商標の場合も、FTAにおいて、こういうところを書き込んだりしますよね。そういう議論との関係もあるのかな。つまり、東南アジアのどこかの国に侵害品を一回置いておいて、そこでパッケージもかえて、その上でまた仕向国に出すようなことがあったりして、その国は通過するだけだけれども、そこでの侵害もキチンと見ろというふうによく先進国は途上国に求めたりしますけれども、そういう議論かなと思って拝見をしたのですが。
ほかにはございますか。この輸出の問題はよろしいですか。基本的に使用行為の中に、もちろん、今ご指摘のあったような趣旨、背景、そういったことは整理し、理由はきちんと示していただくということになるわけですけれども、使用に追加する方向でまとめをつくる。それからその場合、輸出を目的とした所持、こういったものについても考えていくという全体的な流れはよろしいですか。
では、これはそういうことにさせていただきますので。
次の点にいきましょうか。次に、コンセント制度についての議論がございます。これもまず事務局から説明をお願いします。

田川審議室長

それでは、第3点のコンセント制度についてご説明をいたします。
商標の類否判断につきましては、職権主義のもとで行われる審査官の審査を補完して、取引の実情に合わせてより適切な判断を確保するために、出願された商標に類似する先行商標があっても、その先行商標の権利者が同意をした場合には、その登録を認めるというコンセント制度を導入すべきではないかというご指摘があるところでございます。
現在の商標法のもとにおきまして、例えば、先行登録商標と類似するということで拒絶になった商標登録出願、これについて、実務上その出願の権利、地位を先行の登録商標の商標権者に一旦譲渡して、商標登録をした上でさらに再度譲渡をすると、そういった手続があって、これが迂遠ではないかというご指摘があるところでございます。
コンセント制度につきましては、2つの類型がございます。審査官の判断を拘束する完全コンセント制度、つまり同意があった場合には、これは仮に類似なり、混同なりが生じるとしても、その当事者間の判断を優先するという完全コンセント制度、それから留保型コンセント制度といたしまして、審査官の類否判断に当たって参酌をされるという2つの形態がございます。
完全コンセント制度につきましては、商標権者が同意をしたという証明があれば、その前にもともと登録をされているものと混同を生ずるおそれがある、類似するという理由では拒絶をしないという制度でございまして、イギリス等で採用されております。
また、留保型コンセントにつきましては、商標権者が同意をした場合であっても、後で出願されたものと、その先行の登録商標との混同を生ずるおそれの判断について同意があると、当事者間が混同しないという同意があることを参酌して、審査官が混同を生ずるおそれの有無を審査するという制度でございまして、アメリカ等で採用されているところでございます。
これを検討するに当たっての我が国の商標法の考え方でございますけれども、職権による審査を前提として、先行登録商標と、後の商標登録の出願について類否判断を行うということになっておりますが、これは商標の出所の混同防止を行うという趣旨であるということでございます。こうしたことから、出所混同のおそれの有無にかかわらず、コンセントがあれば登録を認めるという完全コンセント制度については、需要者保護の観点等から慎重な検討が必要ではないかというふうに考えられるところでございます。
我が国で考えられるコンセント制度でございますが、まず、商品の類似の概念につきましては、これは判例でございますけれども、商品が通常同一営業主により製造販売されている等の事情により、その商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造販売に係る商標と誤認されるおそれがあると認められる関係にある場合には、その商品自体が互いに誤認混同が生ずるおそれがないものであっても類似の商品に当たる。このケースはお酒と焼酎のケースでございますけれども、お酒と焼酎というのか相互に類似をしないとしても、出所混同のおそれがあるという場合には類似の商品に当たるというふうに解釈をされております。
また、商標の「類似」概念につきまして、もう一つ判例がございまして、商標の類否につきまして、対比される2つの商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるか否か決すべきであると、その場合には、まず商標が外観、観念、称呼によって取引者に与える印象、記憶、連想を総合して判断をすると。しかも商品の取引実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断をするということになっているところでございます。
こうした考え方に基づきますと、取引の実情を示す資料として、出願商標と先行商標との類否判断を行うという場合に、同意書をその類否判断を行う資料として位置づけることが可能ではないだろうかというふうに考えられるところでございます。特に先行登録商標と後の商標登録出願との類否関係について、例えば、新しい商品同士で審査において明確な心証を形成できないようなケース、そういう場合に参考とすると。それによって先行商標登録の商標権者の同意がある場合には、その事実が両商標を非類似と判断する方向に参酌することが可能ではないかということでございます。
なお、仮に同意書が提出されたケースであっても当然でございますが、審査を行った結果、類似と判断される場合には後の商標出願の登録は認められないということでございます。
またもう一つ論点といたしまして、現在、類似判断をする基礎となっております「類似商品・役務審査基準」、これにどの商品が類似をするかといったことが定められているところでございますけれども、こうした類似商品・役務審査基準、これにつきましては、取引の実情に合わせて、より適切な類否判断を確保するという観点からは、経済のより実態に合わせたものにするということが必要であるということで、今後必要な見直しを行う方向で検討すべきではないかというふうに考えるところでございます。
以上です。

土肥委員長

どうもありがとうございました。それでは、同様に以上の説明を踏まえまして議論に移りたいと存じます。ご自由にご意見をちょうだいしたいと存じます。琴寄委員、お願いします。

琴寄委員

今のご説明をお伺いしまして、以前の審議会で私の方で実際にコンセント制度の導入ということについてはニーズがあるということを申し上げたことがあるのですけれども、今のご説明で私の方で理解しておりますのは、現行の審査制度の中で、審査基準を改定してより的確な類否判断ができるようにして、特に4条1項11号の類否判断を審査官の方がされる場合にはコンセントを提出すれば、審査官が合理的な判断をもって非類似と判断する方向で参酌するという形で、どちらかというと、法改正を伴わない形の導入という形で理解しております。法改正云々というところにこだわるわけでは全くないのですけれども、自然に考えますと、非類似という考え方というよりは、むしろ、コンセントを導入する際には、類似であるけれども、混同のおそれがないという考え方をとることが自然のような気もしておりまして、これはおそらく4条1項11号の法改正という形にもつながるような話なのかもしれませんけれども、現行制度の中でのこういう形での導入ということの背景としては、恐らく、私どもの方で法改正にするにはかなりの時間が要するということで、早期導入ということも考えると、こういう現行の範囲内で処理できるやり方も可能ではないかという問題提起のように思いますけれども、そのあたり、事務局の方としてはどのようにお考えなのかというのをちょっとお伺いしたいと思います。

土肥委員長

では、お願いします。

田川審議室長

まず、おっしゃられるとおり、もしこれを法律上類似と混同を生ずるおそれという整理と、これを使用といたしますと、なかなか難しい問題点というのはございます。かつ我が国において、例えば、完全コンセント制度のようなものは、事業者の保護の観点から適切ではないと。そういたしますと、審査の段階、運用の段階でコンセント制度的なもの、先の商標権者の同意があった場合に、類否の判断において、その同意というものを参酌するという運用が考えられるのではないかというご提案でございます。

土肥委員長

竹田委員。

竹田委員

これは現行法に基づいて法改正を行わないで、同意する意見書があった場合に、それを参酌して類否判断を実質的には行わない。すなわち、同意があれば、11号はクリアできる運用にするというのであれば、これは非常に重要な問題です。現行法の解釈で、例えば審査基準を変えることによって、そういう制度を導入するというのであれば、私は反対せざるを得ないと思うんですけれども、今の審議室長の答えがそういう趣旨なのかどうかちょっと不明確なのですが、そこのところをもう少しはっきり説明していただけませんか。

田川審議室長

同意書があった場合に、自動的に類否判断を非類似とするということではなくて、これはあくまでも類否判断の一つの材料として同意書というのを位置づけることによって、類否判断の一つの参考資料として扱うことができるのではないかという趣旨でございます。したがって、運用において、ある種完全コンセント制度的なものを導入しようという趣旨ではございません。

土肥委員長

どうぞ。

竹田委員

それはやはり問題だと思います。11号の類否判断は、先行商標の商標権者が同意書を出せば、それでいいというものではありません。これは我が国の経済社会における商標の流通の問題ですから、それを参酌するというのは、今のような形でやって問題はないと本当に思っておられるのか、もう一度確認したいと思います。

田川審議室長

当然、審査の結果、類似するというふうに判断する場合には、当然、後の商標出願は登録になるものではございません。したがいまして、その点、私どもとしては問題ないのではないかというふうに考えております。

土肥委員長

ですから、多分、ここでこういうことを言っていいのかどうかわかりませんけれども、コンセントをしないということを言っているのだと思うんですよ。

田村委員

土肥委員長のまとめであれば別に問題ないのですけれども、留保型コンセントと書いてありますので、やはり、ほかの同意がなかった場合に比べて、例えば商品類否、商標類否が多少は狭まることはさすがに前提となさっているのだろうと思います。確認が必要だと思いますが、もしそうでなければ、導入する意味は多分ないんですよね。幾つか問題点がありまして、狭い感じのコンセント制度のようなのですけれども、それだとすると、企業のニーズには完全には対応していないと思うのです。恐らく一番ニーズがあるのは、関連会社等で別々に商標権を保持したいときだと思うのですが、そうすると、例えば1つの制度、枠組みとしては、出所の混同が起きない範囲であれば、コンセントで認めるというようなタイプの制度などがあるのかなと思いますが、そういうわけでもないということなので、ニーズにそれほど対応していなくて、かえって疑義がたくさん生じるのであれば、これはやらない方がよろしいのではないでしょうか。土肥先生が、これはコンセント制度否定だというご趣旨であれば、やらなければいいのではないかなと思うのです。

土肥委員長

多分、今でもこういうことはできるのだろうと思う、そういう意味のコンセントなんですよ。意見書の態様の一つとしてコンセントをみるという説明ですから。高部委員どうぞ。

高部委員

類否の判断とか、出所の混同のおそれというのは、客観的なものであるべきであって、主観的に先行商標の商標権者が同意するかしないか。しかも先行商標の方だって、もしかしたら移転する可能性もあるわけでして、そういったことを考えますと、現行の法律のもとでいくのであれば、あくまでも客観的な類否判断と客観的な混同のおそれの判断をするべきではないかなと思います。そうでないと、審査のところで仮にクリアしたとしても、取り消し訴訟までいったときに、それがどのように斟酌されるのかという保証は一切ないわけで、かえって市場に混乱をもたらしてしまうように思います。

土肥委員長

田村委員どうぞ。

田村委員

ひとつ気になるのですが、現行法だと、コンセント制度ではもちろんありませんけれども、実際に登録を得た後での譲渡はできるわけです。その譲渡のときに混同が起きた場合の取り消しの審判の制度があるのですが、あれとの関係がよくわからないのですけれども、おそらく、あそこで適用されるよりは、ここでセーフになる範囲はもちろん狭いというお考えなのですよね。

土肥委員長

今のご質問は譲渡のときの、権利譲渡の場合の混同についての担保措置との関係ですね。それとの関係はどうかと。

貴田審議企画班長

ちょっと質問のご趣旨を確認したいのですけれども、譲渡のとき混同が起きて取り消しの請求の対象になるということと、それと今回のコンセントが意見書として出てきて、登録が認められたときに、その扱いがどうなるかということであれば、今提案させていただいているものに基づきますと、類否判断の一つの参考資料ということですので、コンセントのあるなしにかかわらず、非類似だということであれば、無効審判あるいは異議申立て等において非類似だという判断がされますし、そういう無効審判等の中で、そういう意見書に対して重きを置いた評価というのが正しかったかどうかということをきちんと判断をし直すということになるかと思います。

田村委員

現行法ですと、結局、混同と不正競争の目的ということで、それなりの縛りがあって、コンセントがないですから、一たん登録した後、類似の範囲で譲渡しようとすると、一応そういう縛りでずっとかけているわけですね。それに対して今回の運用次第なのですけれども、もし留保型コンセントというのが、今まで類似判断していたものを幅広く除くという趣旨ですと、先ほど高部委員がちょっとご示唆なさったように、取消審判の制度にかからない野放しの商標権が2つ登録されて並立するわけですね。そうすると、今まででしたら、後から一応、法としては取消審判で縛っていたのが全く類似しないという判断でどう譲渡してもいいという、大変、緩やかなものができてしまうということになるので、それくらいドラスティックな差異があるにもかかわらず、グレーのときにコンセントを見るという非常に曖昧な基準でそこが尻抜けになるのが非常に心配です。全くドラスティックなことばかり申し上げていますけれども、例えばそういうグレーな形ではなくて、現在の取消審判の方の要件にあるものを登録時点に持ってきた制度であるとか、そういった形で明確に正面から認めるか認めないかということをむしろ議論した方がよろしいのではないかと思います。高部委員もおっしゃっていたように、この改正ではないですね。審査基準の改正だと、後で知財高裁のところで大問題になるのではないかという気が私はいたしますけれども。

土肥委員長

竹田委員どうぞ。

竹田委員

重ねて申し上げますけれども、コンセント制度を立法政策上、必要かどうかということで正面から取り上げて法改正が必要だという意見が審議会で多数を占めるのであれば、それはそれで私としてはいろいろ意見がありますけれども、一つの方向だとは思います。しかし、現行法のまま、こういう運用をすることは現行法の制度と相入れない、それは田村委員と高部委員がおっしゃったとおりで、そういうことを運用で解決するというのは一番いけないことだと思うんですね。これはぜひ削除していただきたいと思います。

土肥委員長

このテーマについては、どういうわけか、学者、弁護士、裁判官のいわゆるユーザーとか、代理人の方のご発言がないのですけれども、恐らくそこのところ、根本委員、ではお願いします。

根本委員

企業としては、今、魅力ある商標を採択して、それから他人との商標権とのかかわり、もしくは不正競争とのかかわりをクリアして、実際に使用できるというところに至るまでなかなか難しく非常に小さい確率になっています。ですから、企業としては、どういう形であれ、商標の採択の幅が広がるという意味では、まずうれしいということがあるのですが、ここでいうと、同意書を提出した後にまた審査を行って、類似の判断というのが出てくるのですが、この類似の判断の基準が曖昧でちょっとわかりづらい、もしくは企業としてなかなか判断、予測がしづらいということであると、若干企業が名称、商標を採択するという点で二の足を踏んでしまう場合もあるかもしれないということをちょっと申し上げたいと思います。

土肥委員長

そこのところは、他の委員もおっしゃっておられるところで非常に重要なところなんですけれども、若干認識のずれがそこはあるのだろうと思うんですね。全く同一というのと、極めて酷似するようなものが外れるのかなというふうに思っていたのですけれども、説明だと類似の範囲まで外れるということのようですね。松尾委員も手を挙げられたと思いましたけれども。

松尾委員

私は、新しい制度を導入するような書き方になっていますが、現実に考えていらっしゃるところがちょっとわからないでおります。結局、ここに(4)に類似商品役務審査基準の改正ということが書いてありますけれども、的確に時代に対応した審査基準を常に持つということは、私は実際不可能だと思います。この類似というものについて、ユーザーの方が問題になっている役務や商品について十分な知識を持っておりますので、はっきりと類似しているというようなものは別ですけれども、特許庁の方でも、審査官がいろいろと判断に困られることがあると思うんです。
そういうときに、今まででも、コンセント制度というのはありませんけれども、非常にうまく相手方の引用になっている商標の所有者から同意書に似ているような、登録してもいいというような趣旨の手紙をもらったときには、それを特許庁に出しています。それが認められたのか、認められないのか今までわかりませんけれども、しかし、そういういい資料が出ると、判断の中で参考にしてくださっているのだろうなと期待しております。私は基準の的確性というものを補正する意味においても、あるいは補充する意味においても、もっと難しい、何とか制度というのではなくて、コンセントを導入していただくと、コンセントというのか知りませんが、当事者の関係者の意見というのを、こういう形で導入していただけると、ユーザーとしては非常にありがたいだろうと思います。

土肥委員長

今、こういう形でおっしゃったのは、意見書に添付する資料、そういう意味ですね。

松尾委員

そうです。一緒に出すという感じですね。

土肥委員長

そういう話だと思うんですけれども、篠原委員。

篠原委員

ここに書いてあることと、ご説明を伺っている範囲内では、何行目ですか、参酌する留保型コンセントを導入する、参酌するということと、留保型コンセントを引っつけているから、ものすごく混同があるのではないかと思います。ご説明を聞くと、留保型コンセントの導入ではないんですね。要は、ご説明は同意書を参考にしますというだけの話なんですよね。書いてあることは、参酌するだけならいいのだけれども、留保型コンセントを導入するということで引っつけているから、何か訳がわからなくなっちゃったのではないですか。私の理解は、要するに同意書を判断の参考にすると、ワン・ノブ・ゼムと、判断のすべてではないというふうに理解したので、それで運用できるのではないかということに賛成なのですが、それで理解間違っていないのかどうか。

田川審議室長

おっしゃられるとおり、参酌をするということでございまして、そこは次回提出する資料ではきちんと整理をしたいと思います。

土肥委員長

鈴木委員どうぞ。

鈴木委員

ニーズのお話で、私ども知財協の意見も申し述べた方がいいのかなと思っております。コンセント制度自体をそのほかの問題を全く取り払って考えると、完全型がいいというのは、民間ではほぼ100%の意見だと思います。苦労してとったコンセントが認められる。そして自分たち当事者はそれが正しい判断だと思っているシチュエーションにおいては完全型が一番自然な姿で、それを行う場合に法改正が必要だろうと考えています。
ただし、民間としましても、すべて自分たちの判断が正しいかというつもりもないですし、商標法の精神から考えると完全型を余り強く言うのも、そこまでは言い過ぎではないかというような議論も当然ありまして、知財協の中では、多数の会社は制度に取り込んで頂くのは留保型までなのかなということを考えております。
それで審査において、例えばコンセントを出して認められないような場合があったとしても、最大限尊重していただければ、それはそれで実効があるのではないかと。また、その後の裁判でコンセントがひっくり返ったような場合があったとしても、実は企業サイドにとってみれば、裁判にまで行く案件というのは氷山の一角ということもあります。そこに至るまでで済んでいるような案件というのは非常に多いということを考えると、ゼロイチの判断ではなくて、どちらが得かという比較判断において留保型というのもよいのではないかと考えています。
そしてもう一つ、もともと審査制度の補完という意味合いでコンセントと制度を導入してくださいという要望をしておりまして、今までの仕組みですと、拒絶理由を受けた側の意見しか審査には反映されていなかったという実態があると思います。それがコンセント制度があることによって商標権者側の意見も入ってくるということなので、より審査制度が本来あるべき姿に近づくような助けになるのではないかと考えております。

土肥委員長

貴重なご意見ありがとうございました。本宮委員、この点はご意見があるんじゃないですか。

本宮委員

やはりニーズはあるのだと思います。ただ、この形でコンセントが入ったというと、本来諸外国で考えているコンセントと違うものであり、コンセント本来の機能というのでしょうか、それは果たせないのではないか。このような形であるのであれば、やはり見送って類似と混同の議論をするときに、正面から考えていかなければいけないのではないかと思います。
今ここで類似商品役務の基準の話も少し書いてありますが、この基準について、先ほども松尾委員は非常に難しいという話をしましたけれども、やれる範囲で早い段階でこの見直しを図っていくということは、やはり必要なことと思います。それによって、本当にコンセントが必要な部分と、コンセントがなくても、非類似の商品という部分と、そういうすみ分けができれば、コンセントにかわる手段というか、必要なところだけコンセントを考え、それ以外、コンセントの余地がある部分をなるべく減らすような方策、それは現段階から、とっていくべきではないかなと思っております。

土肥委員長

私、詳しくは知りませんけれども、おっしゃるように一番最後の「類似商品・役務審査基準」、これは独自にやれる話ですから、こういう形で庁がお出しになったものであれば、これは既に始まっているのではないか。だから、期待はできるだろうというふうに思っております。よろしくお願いいたします。
本日の議論全体を通じてで結構ですけれども、最後のコンセント、その前の輸出、それから最初の小売の問題、全体を通してご発言をまだなさっていないところがございましたら、最後のところですけれども、どうぞご自由にお出しください。
よろしゅうございますか。この後はまとめが出るというのが先ほどの説明だったわけですけれども、かなり意見に幅がございます。コンセントなんかはまさにユーザーの意見が非常に重要になるのではないかなと思うんですけれども、あんまりそれと外れところをやっても意味がないような気もするんですが、よく受けとめていただいてまとめを出していただくということになりますので、よろしくお願いします。
それでは、時間もあと3分ということになりましたので、もしご意見がなければ、事務局から今後のスケジュールを含めて説明をお願いしようかと思いますが、よろしいですか。

田川審議室長

今後のスケジュールでございますが、次回の小委員会につきましては、12月9日金曜日10時から開催を予定しております。それ以降の日程につきましては、再度皆様方のご都合をお伺いして調整したいというふうに考えております。

土肥委員長

12月9日ですね。10時から、はい、わかりました。
それでは、以上をもちまして、産業構造審議会知的財産政策部会第14回の商標制度小委員会を閉会させていただきます。本日はありがとうございました。

閉会

[更新日 2006年1月16日]

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