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第15回商標制度小委員会 議事録

  1. 日時:平成17年12月 9日(金曜日)10時00分~11時30分
  2. 場所:特許庁 特別会議室
  3. 出席委員:土肥委員長、琴寄委員、篠原委員、鈴木委員、高部委員、竹田委員、田村委員、根本委員、萬歳委員代理(白石氏)、松尾委員、本宮委員
  4. 議題:商標制度の在り方(論点整理)について

開会

土肥委員長

皆さんおはようございます。ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会第15回商標制度小委員会を開催いたします。
前回は商標制度の在り方について、それまでの議論を踏まえ、論点整理を行うべくご審議をいただき、皆様からのご意見をちょうだいいたしました。
本日も引き続きまして商標制度の在り方の論点整理として、「小売業等のサービスマークとしての保護」、「権利侵害行為への『輸出』の追加」、「コンセント制度について」の3テーマについてご審議いただきたいと存じます。
それでは、事務局より配付資料の確認をお願いします。

田川審議室長

それでは、配布資料の確認をさせていただきます。本日の配布資料は、議事次第、配布資料一覧、委員名簿、資料1といたしまして、「商標制度の在り方(論点整理)」、それから参考資料1といたしまして、「各国の輸出関連規定」、以上でございます。不足等ございましたら、よろしくお願いいたします。

土肥委員長

ありがとうございました。それでは、早速ですけれども、議題に入らせていただきます。
「商標制度の在り方(論点整理)」についてということで取り扱う3テーマについて、それぞれ時間をとりまして審議をいただきたいと思っております。
まず最初に「小売業等のサービスマークとしての保護」について事務局から説明をお願いいたします。

田川審議室長

それでは、第1のテーマですございます「小売業等のサービスマークとしての保護」につきましてご説明をいたします。
まず、問題の所在でございますが、商標法においてご承知のとおり、「商品」というのは、「商取引の目的足りうべき物、特に動産をいう」とされておりまして、「役務」とは「他人のためにする労務又は便益であって独立して商取引の目的足りうべきもの」と解されて定着をしているところでございます。
小売業についての商標につきましては、従来、特定の商品を販売する商標として使用されているということになっておりまして、小売サービス自体については「独立して商取引の目的」とはなっていないということで、商標法上の役務とは認められていないということになっております。
このため、現行法では小売業者は特定の商標を選択をして、商標法上の保護を求めようという場合に、取り扱う商品のすべて、または必要なものを多数指定した上で商標権を取得する必要があるということでございます。この結果、他の産業の事業者と比較いたしまして、過大な商標管理のコスト負担、料金の問題、それから他人の出願動向の監視コストなどを強いられているというのが実態でございます。
また、小売業者が新たな商標の使用を開始するというときに、複数の区分にまたがるというケースでは、例えば、1つの区分で抵触するものがある場合には、その結果、その商標が登録できないということになり、結果として商標選択の自由度が制限されているというご指摘があるところでございます。
一方、国際的な動向について見ますと、商標法における商品及び役務の区分を定めております国際的な取り決め、ニース協定において、小売業・卸売業等に係る商標を役務として扱うということになっております。また、国際的に見ましても、小売業に係る商標を役務商標(サービスマーク)として保護するのが国際的な趨勢となっております。
これまでの小委員会での議論といたしましては、小売業についてのサービスマーク、役務商標を商標法上の役務として保護する場合に、前回、お示しをいたしましたが、総合小売、それからある特定のカテゴリーに属するものを大量に扱っているもの、または特定の商品を取り扱う小売業といった3類型に分けたところでございますが、これを切りわけるということは、事実上、困難ではないかというご意見ございました。
また、特定の商品の小売を役務商標として登録をする場合に、個別の商品と、その役務との間での類似もあり得るのではないかというご指摘もございました。一方で、その商品と小売に関する役務との類似関係というものがあると評価されるとしても、例えば、著名商標についての抵触などの要因がない以上は、一律に類似とすることは困難ではないかというご指摘があったところでございます。
対応の方向でございますが、まず、どの範囲の小売業を対象にするかということでございます。百貨店、コンビニエンスストアなどの各種商品を網羅的に取り扱う小売業におきましては、多様な商品の品揃えであるとか、陳列、接客等を通じて商品の購入に関する便宜を提供しているということでございます。その観点から、取り扱う商品の単なる譲渡を超えた役務というものを提供していると考えられます。
また、需要者の視点から見ても小売業者がどのような品揃えであるとか、あるいはいろいろな接客サービス、店舗形態、業態を行っているかによって、小売業者の選択を行っており、その際に小売業者の商標というのが一定の出所識別機能を果たしていると考えられるところでございます。
こうした観点から、まず前回もお示しをいたしました各種商品を網羅的に取り扱う小売業、例えば、百貨店、コンビニエンスストア等、それから一定のカテゴリーに属する各種の商品群を取り扱う小売業、例えば、家電量販店であるとか、ドラッグストアといったものについては、役務商標として保護を認めることが適切であろうと考えるところであります。
第3の類型である特定の商品を取り扱う小売業、例えば靴屋であるとか、眼鏡屋といったものについては、現在でも商品商標を取得するということによって、一定の保護が図られております。しかしながら、ニース協定、あるいは諸外国における取り扱いといったものを踏まえますと、こういったものも必要に応じてサービスマークとして登録できるような枠組にするということが適切ではないかと考えるところでございます。
また、卸売業についても小売業と同様に考えることで適切ではないかと考えられます。
各国の動向ですが、多くの国で小売業の商標をサービスマークとして保護をしております。アメリカにおきましては、業態または商品分野を特定した形態として、総合小売業であるとか、あるいは単品小売業に使用される商標について役務としての保護を認めております。デパート等の総合小売だけではなくて、特定の商品を扱う小売業も対象とされております。
イギリス、OHIMにつきましては、商品分野または商品の種別を特定した小売業に使用される商標について、役務としての保護を認めているところでございます。
論点といたしまして、まず小売業に係る役務商標と商品との関係というものがございます。前回も議論になったところでございますが、小売の役務と商品というものについて、その出所混同の可能性をどういうふうに考えるかという論点でございます。
まず、役務商標と商品商標の出所の表示ですが、まず、小売業における役務商標というのは、小売業者が他人の商品を含む多数の商品の品揃えや顧客に対する接客等のサービスにより、他の小売業者との差別化を図るということで、その役務の出所を表示する目的で使用している商標でございます。
一方で商品商標というのは、事業者が生産・販売する商品自体、それ自体との連携、特にその商品に付すというのが中心的な形態でございますが、その商品自体の出所を表示する目的で使用するということで、各々その使用の目的、あるいは対象としている客体が違うということでございます。
2点目といたしまして、第1点目との関連もございますが、使用の形態の差というものがございます。小売業における役務商標は品揃えや接客等の役務に係る出所を表示するということで、主として店舗名、看板等であるとか、広告、従業員の制服等に付されて使用されております。商品商標は具体的な商品との関係で製造、販売に係る出所を表示するもので、商品や商品の包装等に付されて使用されているというのが主要な形態であろうということでございます。
したがいまして、こうした使用形態によって商品と役務というものは使い分けることができるんではないかという指摘もいただいております。
こうした差異等を前提といたしまして、小売役務と商品の類似に関する考え方については、使用形態あるいは使用の目的のところでご説明しましたとおり、小売業に係る役務商標と商品商標はその使用の目的や使用態様が異なるということから、その限りにおいては出所の混同が生ずる可能性は低いと考えられるところですが、現行の商標法においては、生産に係る商品の出所を表示する場合以外の商品の販売の場合についても商品商標として取り扱っているということで、混同の生ずる可能性というものも、これも否定し得ないということではないかと思います。
他方で小売業に係る役務商標と個別の商品に付される商品商標というのを、これを一律に類似関係としてとらえた場合には、需要者に出所の混同を生じさせない場合というものまで、商品と役務との類似関係を審査するということで、必要以上に商品選択の幅を狭めかねないということもあるかと思います。
したがいまして、小売に係る役務商標と商品商標との間の類似というものが事後的に審判であるとか、あるいは訴訟において確定されるという場合もあり得ますけれども、事前の審査については、小売業の役務商標と商品商標というのを一律に類似としてとらえる必要はなく、その取引実態でございますとか、小売業の実態による特性、商品の著名性、周知性の有無などに照らして混同が生ずる蓋然性の有無を考慮し、その上で対応を検討すべきではないかと考えております。
具体的な対応の方向でございますが、まず小売業の役務商標と商品商標の間で、同一または類似の商標が使用されるという前提のもとで、その役務と商品との間で、これを類似として扱うべきか否かということについて、3つのカテゴリー、場合分けをしておりますが、これを最初の総合小売、各種の商品を網羅的に取り扱う小売業の取り扱いと、2、3、一定のカテゴリーに属する各種商品群を取り扱う小売業、または特定の商品を取り扱う小売業というものに場合分けをして検討をしております。
まず、各種商品を網羅的に取り扱う小売業、いわゆる総合小売につきましては、不特定多数の商品を取り扱っている蓋然性が高いということで、個別の商品との関係が特定できないということが一つ特徴であろうというふうに考えられるところでございます。
このような場合の商品との類似関係については、小売業において取り扱われる商品であったとしても、個別の商品との関連性は薄い、また小売業の役務の出所を表示される限りにおいては、商品商標とは、その使用形態を異にするということがあるかと思います。こうした観点から、この総合小売の役務商標と個別の商品との関係では、出所の混同が生ずるおそれというのは低く、類似すると考える必要はないのではないかと考えるところでございます。
なお、当然のことではございますけれども、小売業に係る役務商標の出願が、他人の著名商標との間で問題になっている場合、こういう場合には、誤認混同が生ずるおそれのある範囲で登録は当然されないということでございます。
それから、(イ)といたしまして、23のカテゴリーについてでございます。家電量販店等の小売業と、例えば靴屋であるとか、眼鏡屋といった小売業でございます。
まず、著名商標とバッティングする場合につきましては、今現在、この議論では商品商標との関係を言っておりますが、小売業に係る役務商標が、日本国内において広く知られております著名商標とバッティングするという場合には、商標法の4条1項15号により登録されないということになろうかと考えております。
それから、周知商標とのバッティングのケースにつきましては、一地方において知られている周知商標が存在する場合に、小売業の役務商標出願が、商品商標としての周知商標とバッティングする場合には、これが同一または類似と認められる範囲において、商標法の4条1項10号が適用されて登録されないことになると考えております。
それから、3番目の類型といたしまして、著名でも周知でもない、小売商標の役務商標と周知でも著名でもない商品についての登録商標との関係でございますけれども、この場合には、小売業の役務が取り扱う商品分野を考慮した上で、商標法4条1項11号、同一または類似の先登録に基づく拒絶の理由に基づいて商品と役務との間の類似関係をどう考えるかという観点についての検討が必要となるところでございます。
商品と役務との間の類似につきまして、これはウイルスバスター事件の判例でございますが、「当該役務と当該商品に同一又は類似の商標を使用した場合に、当該商品が当該役務を提供する事業者の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあることをいう」ということでございます。これは従来の商品の間の類似を踏襲した考え方かと考えられるところでございます。その商標が小売業の役務として出所を表示するために使用されているという限りにおいては、商品商標とは、その使用形態を異にするものであり、表示する出所というのが、役務か商品かという差異を有するものであるということもございます。したがいまして、小売業の役務の取り扱う商品商標との関係が著しく近似する場合でない限りにおいて、商品と役務との間での出所混同の蓋然性というのは、商品間の類似または役務間の類似に比べて、必ずしも高くないと考えられますが、類似関係がある場合には、必要な調整を行うことが必要なのではないかと考えられるところでございます。
なお、この際の留意点といたしまして、一律に小売と商品の類似関係を審査するということになりますと、全体において、必要以上に商標選択の幅が狭まるということもありますし、審査の遅延という点でも懸念されるところでございます。
続きまして、小売業同士の類否関係でございます。小売業の役務商標というのが、国際分類上35類に区分されることになっているということから、単一の区分の中で多様な小売業の商標が保護されるということになるわけでございます。多様な商品を取り扱う小売業の商標間において一律に類似する、小売業全般について一律に類似すると取り扱いますと、小売業の間での商標選択やすみ分けといったところが困難になるということもございます。
したがいまして、小売業の役務商標の中においても、取り扱う商品分野によっては、混同を生ずる蓋然性が低いと判断されるところもあると考えられるところでございます。こうしたところを考慮して、適切な審査・運用を行っていくべきではないかと考えております。
それから、経過措置でございますが、小売業の役務商標を新たに保護する、それに当たりましては、商品商標によって営業上の信頼を蓄積してきた実績や既存の取引秩序、こういったものにも配慮し、混乱を生じさせないという措置を講ずることが必要ではないかというふうに考えられるところでございます。
例えば、現在は先願主義をとっておりますので、サービスマーク登録制度を導入したときの参考にして、一定期間先願主義の例外を設けること、あるいは使用の実績に基づく調整を行うこと。法施行前に既に小売を行っているという場合には、継続的な使用権の設定を行うことなどもも念頭に置く必要があるのではないかと考えております。
以上でございます。

土肥委員長

ありがとうございました。それでは、ただいまの説明を踏まえまして議論に移りたいと存じます。前回の審議会における内容とは、かなり変わってきておるかなとは思いますけれども、いかがでございましょうか。どうぞご遠慮なく。田村委員お願いいたします。

田村委員

小売業等に係る役務商標が3つに分類されていて、12の取り扱いはおっしゃるとおりかなという気もしないでもないですが、3の特定の商品を取り扱う小売業と商品商標との関係が、疑問がないわけではございません。
例えば、靴に係る小売業と靴の商品商標との間で柔軟に考えるということなのかもしれませんが、よくわからないところがあります。類似を審査しない場合もあるということが、必ずしも得心がいかないところがございまして、それは既に一定の配慮はされているのですけれども、詳しくは述べる必要はありませんが、やはり、商品商標でも販売票というのはとれるわけですから、それと小売業とは区別がつかないだろうということでございます。
私はただの学者ですから、審査遅延等を言われますと何も言えなくなりますので、強く申し上げはいたしませんが、もし審査遅延のおそれがあるということが理由であるとすると、理由付けの点で少し気をつけていただきたいなという点がございます。
それは、類似でないから審査しないという言い方をする場合と、もう一つは類似かどうかわからないけれども、審査をしないと言う場合と2つに微妙に揺れています。特に、前者の方の類似としてとらえる必要はない、類似ではないから審査をしないという言い方をいたしますと、例えば、3ページの(c)の3段落目で、「事後的に審判や訴訟において確定される場合もあり得るが、事前審査については」というふうに留保されている点が気になります。
つまり、事後的に無効審判等で登録の可否が争われたときには類似とすることもあり得るけれども、事前のときには、そうしないという趣旨だと思うのですが、ただ、ここで事前審査についてなぜ審査をしないのかという理由を、類似しないからというふうに言いますと、無効審判でも両方重複登録が可能なのだろうと、普通は考えると思います。そもそも商標要件に過誤はなかったということになるから、そういうことになってしまうのではないかという気がいたします。
もしそうなってしまいますと、そのおつもりはないのでしょうが、もし仮に無効でも争えないということになりますと、問題があると思います。4ページの(1)、(2)、(3)を見ますと、結局、4条1項10号のような周知という表現をなさっていますが、周知でない限りは両方が併存する、逆に周知になると後願でも周知の方が優先になるということになるでしょうから、そうすると、先願主義ではなくて先周知主義になってしまいます。
ですから、基本的には類似性を審査した方がいいと思いますが、私は学者なので強くは言えません。もし、審査しないというのであれば、正しい理由付けを考えた方がよろしいのではないでしょうか。つまり、類似するかどうかわからないけれども、運用上、審査しないという程度にとどめた方がいいんじゃないかと思います。
それから、線引き問題でして、こういう理由付けでしたら、事後的な無効審判だけではなくて、付与後に異議が来たときにも、いろいろと異議が出るぐらいですから、それなりに真剣に取り扱った方がいいと思うのですが、そのときは審査をきちんとなさった方がよろしいのではないかと思います。審査とは言わないかもしれませんが、きちんと取り扱った方がいいと思います。この審判の中に、どこまで入るのかということも、もう少し明らかにしていただけたらなという気がいたします。

土肥委員長

ありがとうございました。今、おっしゃったところの10号の先周知主義という言葉を出されたと思うんですけれども、これは4条1項10号というのは、商品商標が周知である場合に、小売のサービスマークがついていたときに、それは当然規定上はねますよという趣旨で、先周知という意味ではないんだろうと思うんですけれども。

田村委員

10号はそうではないのですけれども、結局、11号のところで審査せずに、鞄あるいは靴でしたか、そういうものについて、同じ商品について小売業で出す場合と商品商標で出す場合とで、どちらが登録されるかは、この4ページの取り扱いですと、もしこれが無効審判までかかるということになりますと、結局、先に10号に到達した、周知性に到達した者が勝つということになると思います。ここでは明確ではないところがあって、細かなことばかり申し上げて恐縮ですが、片方が商品商標で、そちらが10号にかかる場合、多分、役務商標の方が先に願書が出ているときにも、このような扱いがあるのではないかなという気がします。
ともあれ、仮に先願後2つの商標があるときも、先願が優先するのではなくて、10号の周知性を先に満たした方が登録される、満たしていない方は、相手方が満たされると、先願であっても登録されないということが書いてあるわけですから、これが異議申立あるいは無効の方まで貫くとなると、結局、そこでは先周知主義になるだろうということでございます。

土肥委員長

今の商品商標でもそういうことですよね。

田村委員

なりません。4条1項11号で蹴られていますから。

土肥委員長

いや、10号で先に蹴るということじゃないですか。つまり、未登録の周知の商標が存在する場合に、後願で出ていった場合。

田村委員

先後願両方とも登録されることは現在あり得ないですから、そういう問題が起きないわけです。同じ鞄の中で2つの商標が出てきたら、ちゃんと11号で蹴られるのですから、そういう問題が起きないだけで、今のこの提案を商品商標の中で同じような状態で実現しようとすると、現在の取り扱いに反して11号の中身を見ないで、10号だけで審査するということを考えれば、先に願書を出した方ではなくて、後願であっても、あるいは後願でなくてもいいのですけれども、先に願書を出そうが後に願書を出そうが、とにかく、周知でないものと周知であるものがあった場合は、周知でないものの方は登録されず、周知であるものは登録されることになるので、結局、先周知主義になると思います。それは、11号の中で、仮に類似の審査をしない場合、あるいは無効要件にしないとそうなるということです。今は、そうしないので問題はないので、問題がない取扱いを、商品商標でも役務商標でもやりましょうということです。
私の早口の説明の後半のところは余りお気になさらなくていいので、役務商標と商品商標とで、永遠に無効まで含めて調べないと、結局、現出するのは後願であっても周知である方だけが登録されるという事態であることは、多分、土肥先生もそのとおりだと思っていらっしゃるでしょうから、それだけ理解していただいた上でお話を進めていただければ、私は満足です。

土肥委員長

ほかの委員の方ご意見ありますか。竹田委員。

竹田委員

私の理解がこれで正しいのかということを確認したいので、その点についてご説明いただければと思います。ここで書かれていることを全体として理解すると、小売業に係る役務商標について4条の審査はするけれども、例えば、11号について言えば、小売業にかかわる商品と役務との間で出所の混同の蓋然性が低いと考えられるので、その点については、審査運用基準において配慮をして実務を行う。こういう趣旨であると理解してよろしいでしょうか。それであれば、私は異存がないですけれども。

土肥委員長

いかがですか。

田川審議室長

審査基準でという趣旨は、どのように考えればよろしいでしょうか。

竹田委員

通常は商標の審査は、4条の審査基準とか、運用上の取り扱いの基準とかで扱っていると思いますけれども、小売業に係る役務商標は、こういうほかの一般的な商品、役務との類似とは、ちょっと違った面を持っていますよということを、ここで説明されていると思いますので、それならば、そういう方向に沿ったような運用ができるようにしていきますという趣旨であって、全体として小売業に係る役務商標であるからといって、4条の審査はしないという趣旨ではないと。そう理解してよろしいか。そういう理解がよろしければ、私は異存がないと申し上げているわけです。

土肥委員長

そういうことですよね。

田川審議室長

おっしゃるとおりでございます。

土肥委員長

田村委員。

田村委員

私の質問についてもご回答をお願いしたいと思います。つまり、線引きのところで、結局、竹田先生の質問とほぼ同じことを聞いているつもりですけれども、無効審判には影響ないと3ページでおっしゃっているのだから影響はないのでしょうし、あとは付与後異議について、どうお考えなのかということをお聞きしたいということです。

田川審議室長

付与後異議についてもできれば、商品と役務について類似関係が争われる場合は、そこはきちんと見る方向で考えたいというふうに思っております。

土肥委員長

高部委員。

高部委員

先ほどの2の類型と3の類型についての4ページの(III)について、もう一度確認したいと思います。周知・著名商標でない場合の審査の仕方についてです。全部について、一律には類似関係の審査はしないけれども、小売に係るサービスで取り扱う商品と、商品の商標との関係で、著しく近似する場合があるということは前提とされているわけですね。そうすると、そういった場合については、4条1項11号についての審査をすると伺ってよろしいんでしょうか。

土肥委員長

これはそういうことですよね。

田川審議室長

どのような合理的な審査の仕組みに、具体的なものにするかというのはいろいろ議論しているところですが、非常に類似の関係にあり得るようなケースについては、そこは審査の余地をきちんと残しておこうというふうに思っております。

高部委員

特に3の類型の場合は、商品商標との関係が著しく近似する場合も結構あるのではないかと思いますので、そこのあたりは留意していただきたいと思います。
次に、4ページ一番下の小売業同士の場合についてです。これも5ページの3行目のところで、「混同を生ずる蓋然性の低い分野もあることを考慮した上で」という記載になっていますけれども、逆に、混同を生ずる蓋然性がある場合もあることが前提になっているという理解でよろしいでしょうか。その場合は、審査を行うということでよろしいのですか。

田川審議室長

ここは具体的に小売業をどのように指定するかという指定の仕方にも、依存する問題かと思いますが、そこでどのような類似関係をつくっていくかというのは、少しきめ細かく見ていくことになると思います。

土肥委員長

類似関係について見ていくのもそのとおりなんだけれども、見ていくという基本的なところはご質問のとおりですよね。

田川審議室長

そのとおりでございます。

土肥委員長

私が誤解をしておれば、また話は別なんですけれども、通常の商品商標同士の出願と同様に、4条1項15号の要件があれば、当然、それは見る。4条1項10号の要件があれば当然見る。それから、類似関係に当たれば11号で必ず見る。類似関係に当たるかどうかということについては、商品と役務の場合については、ウイルスバスター判決とか、あるいは商品同士の「橘焼酎」とか、ああいう観点を原則にして、商品と役務についても類似、混同のおそれがあると認められる場合については見るということですね。そこは正しいんですね。

田村委員

今の土肥先生の説明ですと、実態関係として類似しているかどうかが、ファースト・アクションの基準となるように聞こえます。その解釈はとらない方がいいというのが、私の先ほどの意見です。実態関係として、仮に類似しているかどうかはわからないけれども、ファースト・アクションでそれをやるのは大変だから、それはしないというふうに言っておけば、例えば異議申立があったときに、真剣に見て類似しているとわかった場合には蹴ることができます。ところが土肥先生のような説明をしますと、その説明はときどきこの文章にも入っているのですが、そうすると、異議申立になろうが、無効審判になろうが、時点はあくまでも商標の登録時ですから、登録時の時点で類似しないという説明になっていますから、そうすると永遠に見ることができません。そういう趣旨ではないというふうに理解しています。
ですから、類似化するかどうかという区別の基準とファースト・アクションのときに、ちゃんと見るかどうかの基準を分けているというのが、今回の趣旨だということで、それで竹田先生も運用ですねというふうに確認しておられると思っています。

土肥委員長

そうなんだけれども、「運用ですね」というのは、そうなんですけれども、基本的なところなんですよね。姿勢の問題なんですけれども、それはどちらになるんですか。竹田委員。

竹田委員

私がこう実務をやるだろうと推測してもしようがないかもしれませんけれども、ファーストアクションという意味では田村委員が言われるところで、全くそれは見ませんよというのではないとは思うんですよね。

田村委員

ええ、そうは言っていません。

竹田委員

やはり、ファーストアクションだって、もう見ただけで、これは近似するなと思ったら審査するのですから、その点では、土肥委員長が言っておられることと、田村委員の言っておられることに根本的な違いがあるわけじゃなくて、その辺は多分、審査運用できちっとした基準を定めていっていただければ、実務上は解決できる問題じゃないかなとは思います。

野澤総務部長

要するに、類似関係にあるかどうかということは、本来見なければいけないと思うんです。だから、類似関係ということはあり得るということと、では事前に登録の前の段階において、サーチということにおいて、どこまでやるということで責任が保てるんでしょうか。また、あるいはこの商標制度というものがうまく現実的に回っていくんでしょうか。そこの2つのバランスというのを考えなきゃいけないんだと思うんです。
今、田村委員かおっしゃっていることというのは、実はそういう考え方を我々は持って、これを書いているんです。そうすると当然そこには、それならば登録した時点で発生する権利というものが、どう考えるのかということがあるんだと思います。
非常に強い権利であって、その後において、いろんな異議申立が出てきても、もう一回登録してあるんだからというようなことで、皆の理解が進んでいってしまってというような制度と思われても困るというところもあります。我々は、そこは一つのバランスを持って、登録前において行政として審査すべき範囲というのは、こういうことなんでしょうと申し上げているんです。
だけど、それだからといって、登録されたものが完璧にそうなんですということは思っていません。世の中、社会は複雑ですから。それは当然、事後的に問題が起こってくることがあるでしょう。そこにおいて、もう一回権利の確定について争いがあってもしかるべきでしょうと。そこはそういったことに委ねた方がいいんじゃないでしょうか。いやいや、そうではなくて、最初からきっちり全部サーチをやれと、類否の混同までやってしまえといったら、それは莫大なコストがかかって、それはできません。役務商標というものを入れてくるという新しい転換をすることに当たっては、それ自体できなくなることがありますよと。さて、そういう意味でのバランスというのをどう考えるかということを議論していただきたいと。
ただ、我々の方は今申し上げたような判断に立って、こういうものが書かれている。言葉の部分で足りない部分とか、稚拙な表現がありますが、思想はそういう思想であるということなんです。

土肥委員長

ありがとうございました。そのとおりだろうと思うんですけれども、田村委員、それでよろしいですか。

田村委員

はい。

土肥委員長

松尾委員。

松尾委員

私は基本的に今おっしゃったような考え方で記載されている以上、異存ありません。ただ、ちょっと理由付けにときどきどういうふうに考えるべきか、わからないところが出てきます。
例えば、2ページの一番下の段落の(b)というのがありますね。ここでは役務商標を入れてくる基本的な理由にもあたるような商標の使用態様が記載されており、これは結構だと思います。
ところが、その次の3ページの(c)のところで一番初めの段落の混同の生ずる可能性も否定し得ませんよというところで、「生産に係る商品の出所」、それから「商品の販売に係る出所」と2つ出てきます。私は、ここは、先にあげた(b)とここのところと、ちょっと矛盾しているというか、ぴったりいかないような気がします。商品の販売に係る出所を表示するというのは、商品商標であることに間違いありません。これが日本では商品商標の使用だけれども、アメリカでは、当該商品を取り扱っている人の使用にはならないです。この例というのは、役務商標がこういう形で使用されることもあるから混同を生ずると、こういう結論になっているわけです。そうすると、さっきの(b)のところとかみ合わないなというのが、私の一つの疑問に思う点です。
それから、「出所」ですけれども、販売に係る出所を表示するというのは、どういう意味で使っているのか明確でありません。生産に係る商品の出所というときと、「出所」という意味が違うと思います。日本の商標法の商標の定義、あるいは使用の定義のところには、出所という言葉はないです。それを出所表示として、一般に商標の機能としていわれているところをただここに持ってきちゃっているので、そこで混乱が生じた一つの原因があるのではないかなと思います。
そういうことで、この理由付けのところについては、先ほどのご説明に合うように、十分にお考えいただきたいと思います。

土肥委員長

ありがとうございました。ほかにご意見ございますか。鈴木委員。

鈴木委員

これは企業側からの要望という意味なのですけれども、4条1項10号や15号の審査をきちんと行っていただくというのは、ぜひお願いしたいところですけれども、それだけではなくて、3条関係の審査というのも、この機会にぜひ見直しいただきたいなと思っております。一般名称や普通名称と見紛うような商標が多く登録されているのではないかという声を委員から聞いておりますので、この機会に審査の適正化という観点から、見直しをしていただければと思っております。

土肥委員長

特にこの場合というよりも一般的にですね、ご意見としては。

鈴木委員

はい。

土肥委員長

ほかにございますか。本宮委員。

本宮委員

今いろいろお話を聞いて、基本的にこのスタンスでいいのではないかというように思っています。
ただ、4ページのところの周知商標の場合の扱いの中で、周知商標に関しては、類似ということを判断していくわけですが、周知だから類似を判断するという形なのか、それとも、ここで類似の判断が出てきたときには、それ以後は、その商品と役務間は類似するというような形まで考えているのか。15号の適用はわかります。10号の適用のところの類似を判断するという点がどうなのかなと。11号のときには、運用上、そこまでは見ていかないという形をとるのであれば、周知の場合には見ていくという、そのようなスタンスをとるという理解でよろしいですか。

田川審議室長

周知の場合には、商品と役務について、その審査を行うということでございます。

本宮委員

それは事前に行うということですね。事後的な異議とか、審判とかでなく行うということですね。

田川審議室長

できれば、事前に行いたいと思っております。

土肥委員長

それは事前しかないですね。ほかにございますか。基本的に前回の考え方の論点整理のところでは、単品小売についてはしないという考え方だったんだろうと思うんですけれども、ここではちゃんとサービスマーク、小売の対象として入れること。それから、もちろん実際にどの範囲についてやるかは、これは運用の問題になってくるわけですけれども、いわゆる、混同のおそれが生ずるような場合については、きちんと運用で間違いがないような形をして、そこは審査をするということだろうと思いますので、皆さん、この考え方でよろしゅうございますでしょうか。よろしければ、基本的にこういうやり方をもって、今後運用を詰めていただくということでまとめさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。ご異議ございませんね。
(「異議なし」の声あり)

土肥委員長

それでは、そのようにさせていただきます。経過措置等についても遺漏がないようにお願いいたします。
それでは、次のテーマに入りたいと思いますが、これは権利侵害行為の輸出の使用行為の追加という問題だろうと思いますが、事務局よりまず説明を行っていただきます。

田川審議室長

では、2点目の「権利侵害行為への『輸出』の追加について」ご説明をいたします。
問題の所在につきましては、繰り返しになりますが、まず経済のグローバル化によりまして、経済活動が国際化しており、その中で商標権の侵害物品も国際的に流通をしているという状況でございます。こうした侵害物品、模倣品あるいは海賊版が世界中に拡散しており、これが犯罪組織等の資金源になったり、消費者の健康、安全、商標だけを似せて非常に品質の悪いもの、あるいは事故の可能性のあるような商品が販売される問題があるわけでございます。
こうした状況に鑑みまして、各国が模倣品・海賊版の輸出、通過というものを規制する、「模倣品・海賊版拡散防止条約」というものについて、我が国がその実現を目指して取り組んでいるところでございます。翻って、現在の商標法についてみますと、商標を付す行為、あるいは商標を付した商品を譲渡するといった行為は、商標の使用行為とされておりますが、「輸出」というものが明確に規定されていないということで、侵害物品の輸出に対して、確実な差し止め等が行われていないため、これらの行為を看過せざるを得ないという場合があるという指摘がございます。
また、現行法において商標を付す行為、あるいは商標を付した模倣品の譲渡を捕捉することができない場合、あるいはこうした行為が秘密裏に行われる場合につきましては、商標権の侵害を模倣品が輸出される段階で発見されても差し止め等を行うことができないため、国内における侵害行為を抑止することができないという問題もございます。
さらに模倣品が製造国から日本において積みかえられた上に、日本から第三国に輸出されるといった新たな手口が発生しているという状況もございまして、税関が水際でこうした行為について取締りを行う必要性が指摘されております。
前回の議論でございますが、国内商標権者の利益保護、あるいは政策的な観点から輸出を規定するということにつきまして、肯定的なご意見をいただいたところでございます。しかし、輸出を規定する目的等についての整理が必要ではないかというご意見をいただいております。
対応の方向といたしまして、権利侵害行為への「輸出」を追加をするということでございまして、模倣品を国内から海外に送り出す「輸出」という行為は、模倣品に商標を付す行為、あるいは商標を付した商品を譲渡する行為と一連で行われるものでございます。
商標権者が登録商標を独占的に使用するという利益を適切に保護するためには、「輸出」を侵害行為に追加することが必要であるということでございます。さらに水際において模倣品の取締を実効的に行うという観点からも、現在、明確になっていない「輸出」を、侵害行為に追加をして、国内における使用行為を抑制するということが必要であるということでございます。
2といたしまして、侵害とみなす行為への「輸出目的の所持」の追加という論点がございます。これにつきましては、「輸出」を侵害行為として追加するということで、現在、譲渡につきまして、譲渡目的の所持というものが、商標上規定をされております。それとの横並びで輸出目的で侵害品を所持する行為についても、商標権侵害行為として追加するという方向でよろしいのではないかと考えております。
次の論点でございますが、「通過」でございます。「通過」につきましては、3つの類型がございます。
まず第1に領域の通過といたしまして、外国から到着した荷物が単に我が国の領域を通過する場合、それから2番目のケースといたしまして、日本を仕向地としない貨物が荷繰りの都合上、いったん我が国で陸揚げをされて、通関をせずに、当初の仕向地に向けて輸送される場合でございます。これは最初の輸出国からそのまま船荷証券上も第三国に対して輸出をされるということでございます。
3番目のケースといたしまして、日本を仕向地として、保税地域に置かれた貨物が必要に応じて、改装、仕分けが行われた後に、通関することなく、日本を積出国として外国に向けて送り出される場合、この3つが主要なケースでございます。
特に3番目については、いったん日本に入って、その後、第三国に輸出する場合には、日本からの輸出ということになり、模倣品の流通という観点からすると、例えば第三国でのチェックが甘くなるとか、あるいは日本発ということで、模倣品の信頼性を高めてしまうということも考えられるところでございます。
商標法におきまして、この通過を検討するという際に問題になりますのが、まず、どの時点で輸入が既遂となるかという問題でございます。つまり、通関という行為、税関を基準にいたしますと、その前の段階、すなわち、我が国の流域内に輸入された段階で輸入が既遂となるか、あるいは通関をされた後かということでございます。
これにつきましては、国内の商標権というのは我が国の領域に及ぶということでございますので、通関前に保税地域に置かれている場合であっても、それは我が国の領域に輸入されたものとして、国内の商標権を侵害するという考え方をとることが適切ではないかと考えられるところでございます。
このような考え方をとりますと、通過として考えられる行為のうち、日本を仕向地として保税地域に置かれた貨物を通関することなく、海外に送り出す3のような行為につきましては、今回追加をいたします輸出に該当するということで規制が可能になるのではないかということでございます。
特許侵害物品の通過につきましては、特許法の69条第2項第1号におきまして、「船舶若しくは航空機又はこれらに使用する機械、器具、装置、その他の物」ということで、これらに及ばないとされております。これらはパリ条約によりまして、国際交通の便宜を考慮して規定をされたということで、貨物というものは、この中に含まれないと解されておりますので、通過を侵害行為にするということについてのパリ条約上の制約はないというふうに考えております。
通過に関する諸外国の考え方につきましては、これを明文で規定しているところはございません。ただし、イギリスにおきましては、国外から船舶によって持ち込まれた商標権侵害物品がイギリスに陸揚げをされて、それが第三国に送り出された、そういう事件がございまして、これは英国登録商標の侵害であるとした判例がございます。
また、ドイツにつきましては、これは特許法の事例でございますが、いったん陸揚げされて通関手続を経ずに再度船で輸出される場合、これが侵害であるというふうにされておるところでございます。
以上でございます。

土肥委員長

ありがとうございました。それでは、この部分は前回と基本的に全く変わっていないんだろうと思いますけれども、高部委員。

高部委員

輸出について、3点質問があります。
一つ目は、輸出の定義についてです。6ページの下のあたりでは、「模倣品を国内から海外に送り出す『輸出』行為」と記載されているわけですが、商品を日本の国内から海外に送り出す事実的な行為をいうと理解してよろしいかどうか。そして、この輸出についての解釈は、同じような議論がされている特許法とか、意匠法など、ほかの法律でも同じに考えるのかという点が第1点目でございます。
2つ目は、模倣品のことばかり書いてありますけれども、輸出が使用に当たるということになりますと、適法に輸出するには、どうしたらいいのかということも、考えなければならないわけです。適法に輸出するためには、商標権者の許諾が必要であって、輸出業者が自ら許諾を得るか、あるいはその前の段階で許諾が得られているということを調査、確認をする必要が出てくると思いますけれども、そのあたりは、特に輸出業者の行う行為として、取引上、問題がないかどうかという点です。許諾を得たり、輸出の許諾があることを確認することが大変なことであって、到底できないというようなことがないのかどうかという点の確認でございます。
3つ目は、仮に輸出行為が使用行為に当たるということになりますと、将来的には侵害訴訟で、輸出したとことをもって差止めや、損害賠償を請求するということが出てくるわけですけれども、輸出による損害というものをどのようにとらえたらよろしいのかということでございます。輸出による損害は、海外におけるものを考えるわけにはいかないので、国内における損害であるべきです。その場合に、商標法38条の各項の適用関係がどうなるのか、その点について教えていただきたいと思います。

土肥委員長

ありがとうございました。2番目のご質問のところは、いわゆる不正商品の場合と不正商品でない場合と両方?

高部委員

いいえ、適法に輸出をしようと思えば許諾が必要ですから、侵害行為をしないために、輸出業者に課せられる義務といいますか、そういった点について産業界で問題となっていないかどうかという、そこの確認です。

土肥委員長

お願いいたします。

貴田審議企画班長

まず、輸出の定義につきましては、ご指摘のとおり、国内から国外に送り出す事実的な行為ということで考えております。また、他の法律でも輸出について検討中でございますけれども、同じ定義というふうに考えております。
それから、国内から適法に輸出するために、どういった手続が必要になるかということですが、当然、使用行為に入りますと権利者の許諾が必要ということになってこようかと思います。これによる影響につきましては、基本的に生産等の際に一括してライセンスをとるというようなことが行われるのではないかと思いますけれども、これによる弊害というものは今のところ聞いてはおりません。ただ、ここは産業界と今後も意見交換をしていきたいというふうに思います。
それから、損害のところなんですけれども、38条の解釈ということで、まず1項のところですけれども、1項につきましては、文言上、譲渡というふうになってございまして、可能な場合には、その他の行為にも類推適用が可能だという理解でございますけれども、輸出という事実行為について、この1項のような規定を類推するのは、難しいのではないかと思っております。
それから、2項のところで侵害の行為により利益を受けた場合に、その額を損害額と推定するということなんでございますけれども、これも国内で行われる輸出という事実行為によって、利益が発生するというのは、なかなか難しいのではないかと考えられますので、形式的に適用の可能性はあると思いますが、実際上、ここで得られるものは余りないということだと思います。
それから、3項としてライセンス額ということなんですけれども、これは許諾が必要ですので、それに対応するライセンス料というのは、発生をする可能性はあるというふうに思います。

土肥委員長

よろしゅうございますか。松尾委員。

松尾委員

私も模倣品じゃない商品の輸出について、何も書いていないのに疑問を持っていたわけです。私が輸出を追加することに賛成した一つの理由に、いろいろ判例を見てみますと、特に特許関係なんですけれども、商標の場合にも、特許の場合にも、今、生産の基地を日本の国内ではなくて、近隣のアジア諸国に移している例が多いです。100%日本からコントロールしている場合に、国外で行われているから、日本と全然関係がないといっていいのだろうか。やはり、日本ですべてコントロールしている場合には、その輸出について、日本における輸出市場に係る商標権者の利益保護ということが考えられなければいけないのではないかというのが、私の輸出について追加を賛成する一つの大きな理由だったわけです。
そういうふうに生産活動がグローバル化していますので、やはり、ここで模倣品だけではない、生産活動の対応の変化に基づいて外国における行為が一部行われているということも考えて、そこまで入るように、それを考慮したものを記載していただきたいと思います。
そういうふうに考えてきますと、先ほどの損害賠償のところも、今のものの否定の仕方というのは、確かに国内の市場を中心に考えておりますけれども、日本の商標権者が輸出する利益、それがどうなるのか。そういうところで、これはちょっと難しい問題なので、この報告書などに書けるような問題ではないと思いますけれども、そこに、私がずっと気にしていた保護利益、法益との関係が出てきます。場合によっては、輸出の国内市場というような考え方もとり得るかもしれないので、そういうところも幅広く考えていただきたいものだと思います。

土肥委員長

ありがとうございました。篠原委員。

篠原委員

これまで商標法に輸出の規定がないこと自身が国際グローバルスタンダードに遅れているというふうに、私自身は理解していますけれども、我々は今アジア諸国だけじゃなくて、各国とFTA、EPA、自由貿易協定のいろいろ議論を進めておりまして、私自身、ちょっと関与した件で申し上げますと、日本とメキシコのFTAが今年の4月から実施に入っております。
私ども商工会議所は原産地証明にかかわる分で交渉に参加をいたしました。最終的には、日本とメキシコのFTA協定の中で、政府が条約上は原産地証明を発給をいたしますという建前になっていますけれども、日本政府は商工会議所に、この事務を委託することができるということで、実質的には、私ども商工会議所が原産地証明を発給をいたしております。この交渉過程でメキシコ側が、最大限、日本の原産地証明発給を厳しくやれといった背景は、中国製品がいったん日本に入って、メイド・イン・ジャパンというお化粧をして、中国製品が実質的に日本を経由して、尻抜けで関税0でFTA協定の中でメキシコに入ってくるというのを危惧したわけでございます。
現在、各国とFTAの協定が進行中で大詰めに入っておりますけれども、今、実施していますのは、シンガポールとメキシコだけでございますけれども、これからは、FTA協定という観点から見ても、原産地証明だとか、模倣品でないと、日本の商標法に違反していないと、それは海外から入ってきた、積みかえあるいは一部手直しをしたというものについても、日本の商標法に違反するものではないという証をちゃんと見せると、法律上、こういう規制があってやっておりますと、問題があれば税関でとめていますということは、今、必要な時代になっているというふうに思っています。
それから、一つ確認でございますけれども、不勉強で申し訳ないんですけれども、通過のところの3、これは輸出に当たるので、規制ができるんだということ、結論はこれで結構なんですけれども、この立論は輸出という概念が3に当たるというのは、商標上の輸出の定義からくるのか、あるいは商標法じゃない関税法とか、いろいろな他の法令の体系の中の輸出という定義からくるのか、いずれでございましょうか。これは確認でございます。

土肥委員長

お願いします。

貴田審議企画班長

商標法上の輸出の規定からです。

篠原委員

わかりました。ありがとうございました。

土肥委員長

ほかにはいかがでございましょうか。鈴木委員。

鈴木委員

特に私どもが興味のあるところというのは、適法に業務を行う人たちに対する配慮をいただきたいというところでございまして、その意味で漏れ聞いているところでは、経産省等のいろんなルートを通じて、輸出についての実態をヒアリングされているということで、これは非常によい試みだと思っておりますので、ぜひ、そういった適法に活動する業者さんへの配慮というのをお願いしたいと思います。
それともう一つは実務上の心配というのもございまして、例えば、輸出するような場合に、すべて商標の登録証を出さなければいけないというような事態になったりですとか、通常使用権であっても、すべて契約を登録しなければいけない。さらに、その証書も出さなくてはいけないというようなことになりますと、現在の業務と比較して、大幅な負担増となってしまうので、そういった実務面への配慮ということにつき、今後細かいところというのは検討されると思うんですが、ぜひ考えていただきたいと思っております。

土肥委員長

鈴木委員は前にはOEMについてもおっしゃっておられましたね。そういう点についても、ほかの委員もご指摘があったと思いますけれども、この中で触れておいていただいて、模倣品ばかりでなくて、よろしくお願いします。
ほかにご意見ございますか。よろしいですか。よろしければ、この2番目の輸出を追加するということにつきましても、ここに書いてあるような方向で、次回の取りまとめの中に盛り込んでいただくということになろうと思います。そのように取り扱わさせていただきます。
それでは3番目ですけれども、今度はコンセント制度についての議論に移りたいと存じます。まず、事務局から同様に説明をお願いいたします。

田川審議室長

第3点目のコンセント制度についてご説明いたします。問題の所在ですが、商標の類否判断につきましては、職権主義のもとに行われる審査官の審査を補完し、取引の実情に合わせて、より適切な判断を確保するため、出願された商標に類似する先行商標登録があっても、その先行登録商標の権利者が、その登録に同意したときは登録を認める、いわゆる、「コンセント制度」を導入すべきであるという御指摘があるところでございます。
なお、現在の制度のもとでも、先行登録商標と類似するということで、いったん拒絶をされたものにつきまして、実務上は引用商標権者にいったん譲渡して、商標権を取得した上で、再譲渡、分離、移転を行うという手続が利用されております。コンセント制度と同じような効果があるわけですが、こうした手続は迂遠ではないかというご指摘がございます。
現行法の枠組でコンセントがあれば類否判断を覆すという運用を行うことについては、問題ではないかというご指摘があったところでございます。
一方、コンセント制度としてではなく、コンセント的な意見書を類否判断の参考にするという制度であれば、賛成するご意見、あるいはコンセントの余地を減らす施策、すなわち、類否判断の適正化等をとるべきではないかというご指摘があったところでございます。
まず、対応の方向でございますが、コンセント制度はご承知のとおり、二通りに分かれ、審査官の判断を拘束する完全コンセント制度、類否判断に当たって、そのコンセント、意見書を参酌する留保型コンセントの2つのケースがございます。
まず、完全型コンセント制度につきましては、これは先行に登録商標の商標権者が同意したという旨を署名があれば、後に出願と先行登録商標の混同を生ずるおそれがある、つまり類似の先行登録商標があるという理由では、拒絶をしないという制度でございます。これはイギリス等において採用されているところでございます。
こうした制度につきましては、当事者間で紛争が生じていないということで、出所混同を生ずるおそれがなく、需要者の利益も保護されているということを前提にするものでございますが、当事者が問題としない限り、混同を生ずるおそれのある複数の商標が併存し得るということになるわけでございます。
我が国では、この先行商標との類否関係を職権で審査をすることにしておりまして、混同を生ずるおそれのある複数の登録商標が併存する可能性のあるコンセント制度につきましては、これは混同防止措置、あるいは需要者保護の観点から慎重な検討が必要であろうと考えられるところでございます。
それから、次の類型でございます留保型コンセントにつきましては、先行商標の商標権者が同意した場合に、類似関係の判断において、同意があることを参酌して、その混同の生ずるおそれの有無について審査を行う制度でございます。これはアメリカ等において採用されているところでございます。
我が国では類似概念によって、出所混同を生ずるおそれの有無というものを審査をしておりますので、留保型コンセント制度を新たに商標法において規定する場合というのは、この考え方との整合性に配慮することが必要であります。
また、留保型コンセント制度を採用しておりますアメリカでは、使用主義が採用されております。一方、我が国は登録主義であるということでございまして、この使用主義と登録主義の制度の違いといったところも慎重に検討が必要ではないかと考えております。
2点目でございますが、コンセント制度が必要であるという一つの根っこでございます「類似商品・役務審査基準」の問題でございます。
現在の審査におきましては、この類否判断というものは「類似商品・役務審査基準」に沿って行われているということで、この基準に定められます商品と役務の類似範囲に含まれるものは、原則として類似商品、または類似役務であると推定をされております。
したがいまして、審査官の審査を補完をする、あるいは取引の実情に合わせて、より適切な類否判断を確保するためには、こうした基準を経済の実体に合致したものにすることが必要であろうということでございまして、今後必要な見直しを行う方向で検討すべきであると考えるところでございます。
また、「類似商品・審査役務基準」は、これは商品または役務の類似を判断する場合の指針として位置づけられており、運用の透明性と法的安定性の観点から個別の判断において、取引の実情を斟酌して判断を覆すということは通常は行われておりません。
しかしながら、商品または役務の類似について、本来取引の実情に即して判断を行うということが望ましいため、通常の意見書に加えまして、取引の実情を知る引用商標権者、先の商標登録権者の説明書があわせて提出された場合には、類否判断における判断材料の一つとして、その説明書を参酌すべきであると考えられるところでございます。こうした説明書の提出を可能とする運用についても検討する必要があるのではないかと考えております。
こうしたことから、コンセント制度の導入につきましては、さらに慎重に検討すべきものであると考えられるところでございます。
一方でコンセント制度の必要性が指摘される背景として、商品役務の類否判断というものが、この「類似商品・役務審査基準」に沿って行われているということで、必ずしも取引の実情を十分に反映していない場合があることも一因となっているのではないかということでございます。
こうしたことから、「類似商品・役務審査基準」の見直しを行うとともに、取引の実情を知る当事者の意見を踏まえた類否判断を行う仕組みについて、検討することが適切ではないかと考えております。
以上でございます。

土肥委員長

ありがとうございました。それでは、以上の説明を踏まえてご意見をいただければと思います。前回とかなり書きぶりが変わってきておりまして、多分、庁としては従来からこういうことを言っていたと思うんですけれども、表現ぶりは相当変わっておりますが、いかがでございましょう。竹田委員。

竹田委員

前回の私も含めて各委員の意見等を参酌して書きぶりを変えていただけたと思いまして、その点は非常に適正な表現になったと思っております。特に取引の実情を見て類否判断をすべきだということは、判例等で前から言っていることで、そこと審査の実務との間の乖離ということは、前から指摘されていたところですから、その点を考えて取引の実情の一つとして、こういう意見書等を参酌していくというのであれば、それは適正を運用だろうと思います。ただ、あとコンセント制度そのものがどうかということは、将来の宿題としては、やはり残ると思いますので、これは商標の4条の規定自体が公益性というものを持っておりますから、その点と当事者の間で処分していいこととの制度的な整合性というのを考えながら、将来的には考えていくべき課題ではないかと思います。
以上です。

土肥委員長

ありがとうございました。ほかにございますか。このまとめ方になりますと、従来から言っておられたと思うんですけれども、この「類似商品・役務審査基準」、こういったようなものの迅速な見直しといいますか、適切な見直しということが求められるわけですけれども、何か所見はございますか。ないですか。もう既に始まっておるということですか。

田川審議室長

これからでございます。

土肥委員長

もし、この点についてご意見がなければ、このコンセントといいましょうか、何というんでしょうか。「3.コンセント制度について」という、このタイトルのもとでの書きぶりを前提にして、次回のまとめというものにつないでいきたいと、こういうふうに思いますけれども、そのような取り扱いでよろしゅうございますか。
ご異存がないというふうに思いますので、そのようにさせていただきます。予定しております議題というのは、以上でございますけれども、全体を通じて、何かこの際ご意見をいただく、あるいは意見を述べておきたい。こういうことがございましたら、この際ですからお出しいただければと思いますが、本宮委員。

本宮委員

今、コンセントのところの最後で委員長の方から「類似商品・役務審査基準」の話が出ましたけれども、恐らく、小売が入るときに「類似商品・役務審査基準」も当然、35類を含めた形で見直しが入ると思います。その意味では、そしてまたニース協定の第9版の発効が再来年の1月1日というのがありますので、それを目安として、早急に今の商品の基準を見直し、これもその時期を合わせる形で進めるのがベストではないかなというように思います。

土肥委員長

そうですね。それが多分いいんだろうと思いますけれども、そういうご意見でございます。よろしくお願いいたします。何かありますか。

 田代商標課長

ご指摘のとおり、「類似商品・役務審査基準」の見直しにつきましては、検討したいというふうに思っております。ただ、これまでも改定に当たりましては、ユーザーの方々のご意見を伺いまして、慎重に検討をしてまいりました。ニース協定の国際分類が2007年1月に施行ということで期限を決められておりますので、それに向けてということですけれども、審査基準を変えるに当たりましては、ユーザーの方々のご意見をいただいた上で、今後の調整ということにさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

土肥委員長

琴寄委員。

琴寄委員

今のコンセント制度のお話なんですけれども、私どもとしましても、「類似商品・役務審査基準」の改定の適正化ということについては、非常に望ましいことだというふうに理解しておりますし、その方向性で進むことについては、大変歓迎いたしております。
とりあえず、今、委員長がおっしゃった形で、この方向性で進むということになった場合に、これは先ほどの竹田委員のおっしゃった内容と重なったところもあるんですけれども、今後のロードマップとして、実質的なコンセント制度ということについて、棚上げという形ではなくて、次の課題として継続的に審議していただきたいというふうに切望いたしております。
あともう1点、これは細かい話で恐縮なんですけれども、通常の意見書に加えて、取引の実情を知る引用商標権者の説明書、この提出ということが実務的に方向性として要請されることになるかと思うんですけれども、まだアイディアは持っていらっしゃらないのかもしれませんですけれども、具体的な説明書の書きぶりというのは、どういうような内容を想定していらっしゃるのかというのを、もし方向性がわかれば教えていただきたいなと思っております。
具体的に商品が異なるとか、そういうことの内容を説明すればよろしいのかどうか。実はこの質問をした趣旨といいますのは、商標を私ども採択する場合に、具体的な指定商品等を想定して、当然、商標出願ということをする場合があるんですけれども、採択の幅を広げるといいますか、極力権利を広げた形で上位概念の出願をとることもありまして、その場合に、指定商品の特定という形がなかなかしづらい場面も実務上ある可能性も出てくるかと思いますので、そういう場合も踏まえて、どういうような運用上、想定されているのかということもお伺いしたいという趣旨でございます。

土肥委員長

何かこの点について、この段階で説明できる点があればお願いします。

芦葉商標制度企画室長

具体的には今後の検討をさせていただきたいというところでございますけれども、意見書の内容ですので、特にこれといった規定はございません。自由に意見は述べていただければと思います。

土肥委員長

これは結局、先行の商標権者から、そこの部分については使っていませんのでというような文脈のものが出てくるということを想定されるんですよね。

芦葉商標制度企画室長

はい。大体そういうことが出るのではないかというふうに想定をしております。

土肥委員長

ほかにございますか。よろしゅうございますか。もしよろしいようでございましたら、時間としてはまだ少し早いんですけれども、恐らく早い方がいいだろうと思いますので、本日の小委員会は、このぐらいにしたいというふうに思っております。スケジュールについては、何か事務局からご連絡ございますか。

田川審議室長

それでは今後のスケジュールでございますが、次回第16回小委員会につきましては、12月22日木曜日16時から開催を予定をいたしております。12月22日木曜日16時からでございます。それ以降の日程につきましては、決まり次第ご連絡をさせていただきたいと思います。よろしくお願いをいたします。

土肥委員長

次回は師走も押し迫って22日ということでございますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
以上をもちまして、産業構造審議会知的財産政策部会第15回商標制度小委員会を閉会させていただきます。本日はどうもありがとうございました。


閉会

[更新日 2006年1月24日]

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