• 用語解説

ここから本文です。

第17回商標制度小委員会 議事録

  1. 日時:平成18年1月31日(火曜日)15時00分~17時00分
  2. 場所:特許庁 特別会議室
  3. 出席委員:土肥委員長、琴寄委員、篠原委員、鈴木委員、高部委員、根本委員、萬歳委員代理(白石氏)、松尾委員、本宮委員
  4. 議題:商標制度の在り方について(報告書案)

開会

土肥委員長

時間でございますので、ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会第17回商標制度小委員会を開催いたします。
前回までは商標制度の在り方についての方向性をお示しいただくべくご審議をいただき、皆様からご意見を頂戴しておったところでございます。
本日は、これまでの議論を踏まえ、作成された報告書「商標制度の在り方について(案)」につきまして、事務局において、先週、1月27日までの約1か月の間実施されたパブリックコメントにおいて提出された主たる意見等についての考え方を整理するとともに、報告書「商標制度の在り方について」をとりまとめるべくご審議をいただきたいと思っております。
それでは、早速ですけれども、事務局から配布資料の確認をお願いいたします。

田川審議室長

それでは配布資料の確認をさせていただきます。本日の配布資料でございますが、1枚紙で議事次第、配布資料一覧、委員名簿、資料1といたしまして、この小委員会の報告書(案)でございますが、「商標制度の在り方について(案)」でございます。資料2といたしまして、「パブリックコメントに提出された主な意見に対する考え方」、資料3といたしまして、「パブリックコメント項目別の概要表」、パブリックコメントで出されました意見をまとめた表でございます。資料4といたしまして、「小売業等に係る役務商標の導入に伴う経過措置(案)の方向」でございます。これは今回の審議会でご審議をいただいております小売業の商標について、役務商標に導入の際の経過措置についての考え方をまとめたものでございます。それから資料5といたしまして、「団体商標の登録主体の拡大について」ということでございます。なお、委員の方々にはご参考といたしまして、パブリックコメントに寄せられました意見の全体版をお配りしております。
以上でございます。よろしゅうございますでしょうか。

土肥委員長

ありがとうございました。それでは、早速、議題に入らせていただきます。
本日は「商標制度の在り方について(報告書案)」ということで、最初にパブリックコメントで提出された主な意見のご紹介と、その主な意見に対する考え方の整理につきまして、そして次に若干修正させていただいた報告書案について、それぞれ時間をとりご審議をいただきたいと思っております。
その報告書のとりまとめが行われた後に、「小売業等に係る役務商標の導入に伴う経過措置(案)の方向」及び「団体商標の登録主体の拡大について」、この2つについて事務局より説明をいただき、ご審議をいただきたいと思っております。
したがいまして、まず最初に、パブリックコメントの意見とその考え方について、事務局からその内容について説明を行っていただきます。では、お願いします。

田川審議室長

それではパブリックコメントに提出をいただきました主な意見及びそれに対する考え方につきましてご説明をいたします。
パブリックコメントでございますが、昨年の12月にとりまとめいただきました報告書の案につきまして、昨年12月27日から今月の27日までの1か月間をパブリックコメントの期間といたしましてご意見をいただいております。大体、20件程度ご意見をいただいております。
では、順次項目に従いまして、主な意見と、それに対する考え方をご説明いたしたいと思います。
小売業等の商標の保護の在り方ということで、小売業のサービスマークの保護の部分でございます。まず、意見の概要、第1の項目でございますが、小売業等のサービスマークの保護について、これを保護することにつきましては、小売店というのが仕入れ、陳列、販売に至るまで創意工夫に多大のコストを費やしている。それから、国際的な動向等を挙げて賛成をする意見が多数でございました。
一方、小売業者がその販売について使います商品、または商品の包装の付した商標、現在、小売業につきましては商品商標で保護される形態でございますが、これをサービスマークの使用としなければ、小売業者の負担を一層増加させるのではないかという意見、あるいは卸売りには品揃え、陳列等の小売とは異なった特徴があるとして、小売サービスに限定すべきではないかというご意見があったところでございます。
続きまして2点目で、具体的に小売業のサービスマーク登録制度を導入した場合に、具体的な指定役務の在り方でございますが、具体的にどのような表示にするかということでございます。
小売業等のサービスの具体的な表示につきましては、権利範囲の明確化及び諸外国の取り扱いを踏まえて検討するという考え方について大半が賛成でございました。
具体的な表示方法といたしましては、不使用対策を兼ねてできるだけ小さな区分を設けるべきという意見、それから網羅的に羅列するのではなくて、具体的で個別的な表示によって記載をさせるべきであるという意見がございました。また、グローバルな商取引に対応し得る合理的な表示、国際動向を見ながら、国際的にも整合性のとれるようなものにすべきという意見がございました。
一方で小売業の進化・発展を踏まえますと、その表示の細分化には反対であるという意見、または包括的に「小売業サービス業」の表示を認めるべきであるというご意見があったところでございます。
審査上の取り扱いでございますけれども、これは使用意思の確認を行うという商標法の3条1項柱書きの運用に関する考え方でございますけれども、この使用意思の確認の強化、運用の強化につきましては、小売業にかかる役務商標にとどまらず、それ以外の商品商標、または役務商標についても強化すべきであるというご意見がございました。
一方で、その意義を認めつつも審査の遅延になるのではないかという意見、あるいは小売サービスマーク以外の商品商標の取り扱いとの整合性をどういうふうに考えるかということで、慎重に検討をすべきであるというご意見があったところでございます。
また、先行登録商標との調整につきましては、具体的にはクロスサーチの問題でございますけれども、諸外国の取り扱いを踏まえて検討すべきであるといったご意見、それから、商品商標と小売サービスマークの間の関係、あるいは小売サービスマークの間の調整につきましては、4条1項15号により著名商標等を中心にして混同を生ずるおそれがあるものを排除する。そういった規定で調整すべきではというご意見があったところでございます。
続きまして経過措置につきましては、平成4年のサービスマーク登録制度導入時に経過措置を設けております。こうした経過措置を求める意見というのが多数でございました。あわせて、そのサービスマーク登録制度導入時の経過措置の問題点、あるいはインターネット取引の普及に伴う影響等も考慮して、改善の余地がないか十分に検討すべきであるというご意見があったところでございます。
まず、考え方でございますが、小売業等の商標をサービスマークとして保護するかどうかという観点につきましてでございます。これにつきましては、これまでもご議論いただきましたように、小売業というのがいろいろな利便性の高いシステムを通じることによって、消費者に対して便宜を提供しているという実態がございます。
そうしたサービスの質、あるいはいろいろな品揃えといったものを基準にして、消費者が選択を行っているということでございますので、小売業者の使用する商標、これはサービスの出所を表示するものというふうに考えられるところでございます。
この小売業のサービスというものは、商品の譲渡とは異なると理解できるものでございます。実際には、商品の譲渡に伴う顧客のための便宜の提供をあわせた総合的なサービス活動であるということでございまして、商品の譲渡とは異なるものでございます。
小売業者等が使用する一つの商標が商品の出所をあらわす場合、それからサービスの出所を表示する場合と双方の機能をすることがございますけれども、基本的には、サービスの出所を表示するという場合、例えば、店舗等に使われるようなケース、店舗のいろんな備品であるとか、あるいはユニフォームにつけられる、そういった場合には、小売業のサービスマークとして、その出所表示をするということでございますし、個別の商品の表示をする、具体的には、製造、小売をしている場合が典型でございましょうけれども、商品自体に直接付すような、そういうケースについては、商品商標として取り扱うということが適当であろうということでございます。
この際に包装紙等についての考え方を整理する必要がございますけれども、いろいろ商品に使用する汎用的な包装紙、紙袋、こういったものにつきましては、小売業の役務の提供にあたり、その提供を受ける消費者の利用の供するもの、これに表示をされる商標ということで、小売業等の商標に当たるというふうに考えられるのではないかと考えております。
それから、卸売りサービスにつきましては、基本的には卸売りと小売ということでは、顧客の層が最終消費者か、あるいは流通業者等の事業者であるかということで異なるところでございますが、卸売業者の使用する商標も小売業者の使用するものと同様にサービスの出所を表示するものというふうに認識をされるということでございます。
国際的な動向におきましても、ニース協定の国際分類につきまして、卸売店というものが、いわゆる他人の便宜のために各種商品をそろえ、顧客がこれらの商品を見、かつ購入するための便宜を図るということで、35類に位置づけられているところでございます。
また、海外の事例を見ましても、卸売サービスというのが実際に35類に登録をされているケースというのが非常に多いということでございます。したがいまして、小売サービスにつきましても、35類の役務サービスとして扱うのが適当であろうということでございます。
続きまして、具体的な指定役務の表示の方法でございます。これは権利範囲を定める基礎となるものでございますので、これをどれぐらいの区分で定めるかという問題でございます。これにつきまして、まず商品の譲渡という表示をするということになりますと、これは小売に伴う総合的なサービス活動をあらわすものではないかということで、むしろ、商品商標として理解されるおそれがあるということで、適当ではないというふうに考えております。また、指定役務の記載というのは、商標権の範囲を定めるものでございますので、権利範囲の把握が困難なものも適当ではないということでございます。
したがいまして、例えば非常に多品種の商品を取り扱う小売業者と特定の種類の商品を扱う小売業者が、これが同じ小売サービスとして表示をされるということになりますと、実際の事業範囲と商標法で保護される範囲の格差が非常に大きくなってしまうという、そういう懸念もございます。
したがいまして、国際的な各国の取り扱いを踏まえ、権利範囲を当事者、第三者等が把握できる、そういったことが可能となる合理的な指定役務の表示を検討するということで適当であろうということでございます。
続きまして、審査上の取り扱いでございます。これは使用意思の確認が主なテーマでございますが、現在のニース協定の国際分類におきましては、35類にこの小売役務というのが属するということになっております。そういたしますと、1区分の料金で複数の小売業というのを記載することができるということでございまして、出願人が使用意思のないものまで多数指定をして網羅的に他人の登録を排除することが可能になるということでございます。
この使用意思のない商品、役務の指定について、これは何も小売業の役務に関するだけでなく、すべての商品、役務に共通問題ではございますけれども、特に今申し上げたような理由に加えまして、料金面での抑止効果がないために、小売業の役務につきましては、他の商品、役務にも増して、使用意思のない役務の指定というものを排除する必要性が高いということでございます。
したがいまして、使用意思のない役務を多数指定をいたしまして、商標登録をするということを排除するために、この商標法3条1項柱書きについて、自ら使用するという商標について商標登録を受けることができるというこの規定の運用を強化して、その使用意思、あるいは使用実態の確認を行うことが適切であるということでございます。
また、あわせまして、商品あるいは小売業以外の役務につきましても、この運用の在り方をどうするかということについて検討を行っていくことが適切であろうということでございます。
続きまして、サーチの問題でございます。小売業のサービスマーク出願、それと先行の登録商標との調整につきましては、小売業者の取り扱う品目、あるいは商標の使用態様によりまして、商品と小売サービスとの関係、あるいは他の役務と小売サービスとの関係、または小売サービス同士の間で出所混同を生ずる場合も考えられるということでございます。これにつきましては、合理的な範囲において先行登録商標との関係で問題が生じないような枠組を検討するということでございます。
経過措置につきましては、新たに今回小売業のサービスマークを保護するということでございますので、商品商標によって、これまで信用を蓄積してきた事業者の実績、あるいは既存の取引秩序にも配慮をして混乱を生じさせないということが、まず大目的でございます。
こうした目的のために、平成4年のサービスマーク登録制度の導入時、この場合には、サービスマークの出願について、同日に出願されたものとみなすという出願日の特例、あるいは継続的使用権の設定といった経過措置が導入をされております。この措置を特に念頭に置いた上で、さらにその後の状況の変化といたしまして、平成9年に加盟をいたしました商標法条約、これで商標権の更新時の審査が禁止をされたということがございます。サービスマーク登録制度の導入時には、この更新時に重複登録されたものをできるだけ絞っていこうという考え方でございましたけれども、そうした考え方がとれないということがございます。
それからマドリッドプロトコルによりまして、18か月以内に審査をしなければならないということもございます。そのほか、小売業の役務商標と商品商標とが密接な関係にあるといったことを踏まえまして、全体でバランスのとれたものにしていくということでございます。ちなみに、現在の考え方につきましては、後ほどご説明をしたいと考えております。
続きまして、輸出の追加でございます。
まず、権利侵害行為への輸出の追加につきましては、輸出を権利侵害行為に追加するということについて、賛成意見が多数でございました。その中では商標法の一義的な目的というのが、国内の商標権者の利益保護にあるとしても、国際的に商標権の侵害、商品の流通、これが社会問題になっているということで、国際的に協調をした模倣品の水際措置を行っていくことが必要であるという意見、あるいは商標権者の譲渡等を独占的に行う利益の保護という観点からすれば賛成できるというご意見のほか、外国出願の際の使用日の認定の際に輸出というものが追加をされると、その認定が非常に利便性が向上するというようなご意見、それから国際出願を基礎とするマドリッド協定議定書の国際登録の地位の安定性という観点からも賛成するご意見があったところでございます。そのほか、国境を越えて市場が一元化しているという状況で、外国からの還流、あるいは来日した輸出国の国民の混同を防ぐためにも賛成するというご意見、各国の商標法との整合性が保たれるようにすべきというご意見があったところでございます。
また、商標権者が国内の製造行為を規制するということが困難であるということで、輸出の規制を行うのであれば、国内で輸出専用品であるということをもって例外扱いをすべきではないというご意見もあったところでございます。
その一方でございますけれども、模倣品・海賊版問題を念頭に置けば、輸出を追加するということについては賛成であるけれども、OEM生産をした輸出専用品が水際で差し押さえられるという問題点を指摘をして、政府部内での調整・連携によって制度の適切な運用が図られるべきであるというご意見、企業活動の妨げにならない何らかの仕組みを求めるご意見、あるいは慎重な検討を求めるご意見があったところでございます。
また、輸出専用品は国内で流通しないということから、現行法においても商標権侵害と評価することは困難であるというご意見でございますとか、属地主義を根拠にいたしまして、商標法の保護というのは国内に限られるということで、輸出を使用の定義規定に追加をする保護法益はないということで反対するご意見があったところでございます。
そのほか、商標のみなし侵害行為に輸出を目的とする所持の追加をするということ、そのほか輸出に関連した規定の改正については賛成するという意見があったところでございます。
続きまして「通過」につきましては、我が国を仕向地として保税地域に置かれた貨物、これが一旦仕分け等されて通関されずに我が国を積出国として外国に送り出される行為、特に我が国を積出国として再度送り出される行為というところがポイントでございますけれども、これを輸出として取り扱うべきであるというご意見があったところでございます。
一方で「通過」につきましては、国際物流のハブ機能を損なわないよう拙速な議論を避けて、国際的動向を慎重を見極めるべきであるというご意見があったところでございます。また、保税地域から通過をせずに直接送り出される場合、これは国内の商標権者の市場利益を侵害する契機が存在しないということで、輸出とは性格が明らかに異なるということで、なお検討を要するのではないかというご意見があったところでございます。
以上のご意見の対する考え方でございますが、まず、侵害行為の輸出の追加につきましては、商標法というのは商標権者に登録商標の独占的使用を認めて、その使用によって生ずべき利益の独占を保障しているものでございます。商標が付された商品、これを国内から国外に送り出すという輸出行為につきましても、通常は海外の譲渡行為と結びついて商標権者に利益をもたらされる行為であるということでございます。
この輸出を通じて商標侵害者が得る利益というのは、これは国内において商標の経済的価値を利用したことから生ずるものであるということで、本来であれば、商標権者が独占すべき利益に当たるというふうに考えられるところでございます。
現行、商標法において輸出は使用として規定をされていないということでございますので、商標の使用に該当いたします商標を付する行為、または譲渡する行為として、その侵害行為をとらえることができない場合、あるいはそうした侵害行為が秘密裏に行われている場合に、その侵害物品が輸出される段階で発見されても、これを差し止めることができないということでございます。
こうした場合に、国内における侵害行為を抑止し、水際において侵害品の取り締まりを一方的に行う必要があると考えられるところでございます。
したがいまして、商標を附した商品を輸出する行為、あるいは輸出のために所持する行為、これについて商標の使用の定義に規定する、これをもちまして侵害行為とするというのが適当であるというふうに考えられるところでございます。
輸出専用品につきましては、そもそも我が国で製造または引渡が行われるということで、現行法においても商標の使用の定義に規定される行為が行われているということでございます。また、国内への流出などによって、商標権者の利益を害する蓋然性も高いということでございますので、輸出専用品であるということだけをもって、侵害行為に該当しないとすることは適切ではないと考えられるところであります。
この輸出につきましては、水際措置が今回関税法等の改正によって導入されるという議論が進んでおりますけれども、輸出を水際で取り締まる場合につきましては、制度の濫用等の弊害の防止を含めまして、その手続運用については、政府部内でのきちんとした調整・連携を図っていくということで、制度の適切な運用を図ることが重要であるというふうに考えられるところでございます。
通過につきましては、我が国を積出国として外国に送り出す行為につきましては、輸出国、これを日本というふうに原産地を偽装するといったような新たな偽装、模倣品の流通手口が発生しているということもございます。したがいまして、こうした侵害物品の通過というものを水際で取り締まる必要性が指摘をされているところでございます。
こうした形態につきましては、侵害物品の通関は行われていないということでございますが、一旦、我が国を仕向地として陸揚げをされているということでございまして、商標権の効力は及び得るというふうに考えられるところであります。また、この一旦陸揚げされた貨物、これは保税地域の中において譲渡等を行うことも可能であるということでございますので、国内において製造された侵害物品と同様に権利者の利益を害する蓋然性が高いと考えられるところでございます。
したがいまして、一旦我が国に輸入されまして、通関をせず、再度我が国を積出国として外国に送り出される行為、これは輸出に該当する行為と考えていくことが適当であるというふうに考えられるところでございます。
続きまして、刑事罰の強化でございますが、これにつきましてはブランドの保護強化につながるという観点、あるいは模倣品対策の視点から賛成する意見が多数でございました。これにつきましては、現在、考えております懲役刑と刑事罰の併科、または法人重課の罰金刑の引き上げを行うことが適切であるというふうに考えられるところでございます。
続きまして著名商標の保護の在り方でございます。まず、ご意見の概要でございますが、商標権の効力の拡大につきましては、著名商標に対するフリーライドによる侵害行為を防止するという観点から、非類似の商品または役務に対しても禁止権を拡大すべきというご意見がございました。
一方で著名商標の保護の拡大については、積極的に求めながらも希釈化のような出所混同を生ずるおそれの有無にかかわらず、非類似の商品にまで商標権の禁止的効力を拡大することについては、慎重に検討を進めるべきというご意見がございました。
著名商標の希釈化・汚染につきましては、不正競争防止法による規制が可能であるということで、商標権の禁止権の及ぶ範囲を拡大して規制する必要性は認められないというご意見もございました。防護標章制度の在り方につきましては、登録によって、その権利の存在が明確になって、取引の安全に資するという利点の指摘、あるいは一定のニーズがあるということで、その件数の多少によって存在意義が問われるべきではないというご意見、あるいは追加的に登録可能な新しい形態の防護標章登録制度の提言などがあったところでございます。
一方、商標権の保護範囲の十分な強化を図った上で、防護標章制度を発展的に廃止する方向で検討がなされるべきであるというご意見がございました。それから、審査基準の不明確さ、防護標章制度の審査基準の不明確さ、あるいは審査の不統一、利用の低さから廃止すべきというご意見、あるいは防護標章制度が過大に評価されているというご意見がございました。
著名商標の保護についての考え方でございますが、商標権の効力につきまして、ご承知のとおり、登録商標と同一または類似の商標について、その指定商品または役務の同一または類似の範囲に及ぶということで、一定の範囲が画されているところでございます。周知・著名な商標につきましては、非類似であっても他人が使用することによって混同が生じる場合がございますけれども、この場合には、商標法の類似の範囲を越えた侵害行為に対処する必要があるということで、防護標章制度が設けられているところでございます。
この防護標章制度でございますけれども、需要者の間に広く認識されている著名なマーク、これについて出所混同を生ずるおそれのある商品の範囲で防護標章登録を認め、それによって差止請求等ができるという制度でございます。
また、同じく著名商標の保護につきましては、不正競争防止法の体系もございます。需要者の間に広く認識をされている他人の商品等表示と同一または類似のものを使用するということによって、混同を生じさせる行為、または著名な他人の商品等表示と同一または類似のものを使用する行為、これを不正競争行為として差止請求等を認めているところでございます。
商標権の禁止的効力、これを混同を生ずる非類似の商品まで拡大する、あるいは混同を生ずるおそれの有無にかかわらず、希釈化や汚染の防止のために禁止権を拡大をするということにつきましては、これは事業者の信用の保護に資するものであるということで、商標法の目的に沿うものというふうに考えられるところでございます。
一方で商標権というものが登録によって、予見性の高い一定の範囲内において安定的な権利というものを担保するという商標法の特質でございますとか、あるいは禁止権の拡大に伴います第三者の監視コストの増大でありますとか、不正競争防止法との重複保護の問題、こうしたものを踏まえまして、さらに検討を行うことが適切であるというふうに考えられるところでございます。
防護標章登録制度につきましては、出願件数が少ない、あるいは商標権、この防護標章による商標権の効力の範囲が固定的に画されるという問題点が指摘をされているところでございます。一方で登録によって権利が付与され、公示されるということで第三者が権利の存在を確認できるということ。それから不使用取消審判の対象とならないということで、権利を安定的に管理できるといったことがございまして、現在でも登録・更新が継続的に行われるところでございます。したがいまして、防護標章登録制度については引き続き維持をするということとし、商標権の効力の拡大にかかる検討も踏まえて、その必要性について検討を行うことが適切であるというふうに考えられるところであります。
続きまして、審査の在り方でございますが、まず、コンセント制度につきましては、ご意見といたしまして、コンセント制度の導入に向けた検討を行うべきというご意見がございました。その中にはコンセント制度というのは出所の混同のおそれがないとの判断で登録が認められるものであるということで、コンセント制度の導入を取引の実情の参酌資料として用いるという考え方には反対であるというご意見、それからコンセントがあれば、出所の混同を理由に拒絶されないという、いわゆる完全型のコンセント制度、英国型の完全型コンセント制度の導入を求めるご意見がございました。
一方で混同を生ずる商標というのが複数登録された場合には、法目的の一つでございます「需要者の利益の保護」に問題が生ずるというご指摘があったところであります。
続きまして、類似商標・役務審査基準の見直しにつきましては、時代に合わせて商品、あるいは市場も変わっていくということを踏まえまして、その類似商品・役務審査基準の見直しを求めるという意見が多数ございました。あわせまして、その基準の中で類似群というのが設定をされておりますが、どういう商品を指しているのか示してほしいというご意見、あるいは審決取消訴訟や侵害訴訟における判決で示された判断基準に基づいて判断するのが妥当であるというご意見、基準の見直しをニース協定の第9版の発効、または小売業等についてのサービスマークの保護のための政省令別表の改正にあわせて行うのがよいとするご意見があったところでございます。
審査事項と手続につきましては、いわゆる異議待ち審査制度、相対的拒絶理由については、第三者の異議を待って審査をするという制度でございますけれども、これにつきましては、権利の安定性・信頼性が損なわれるということ、ユーザーにとって負担増になるということで、反対する意見が多数ございました。
一方で審査の効率化を図るという観点から、相対的拒絶理由を異議待ち審査制度にすべきであるというご意見もあったところでございます。
考え方でございますが、コンセント制度につきましては、まず商標法というのが業務上の信用の維持を目的としているということから、商標権者、あるいは出願人の利便性を向上するという観点で、取引の実情を踏まえた適切な審査を行うという観点からは、一定の意義があるというふうに考えられるところでございます。
一方で商標法というのは需要者の保護をも目的としているということがございます。
消費者にとって出所の混同を防止するということを通して、公正な競業秩序を形成・維持するというものでございます。
したがいまして、我が国におきましては、審査を通じて混同を生ずるおそれの蓋然性の高い同一または類似の商標が併存するということを防止しているところでありまして、当事者の同意によって混同を生ずる可能性がある複数の商標を登録するということになるコンセント制度について、これにつきましては、需要者の保護をどのように担保するかという観点から、さらに検討を行うことが必要であるということでございまして、これを直ちに導入することは適切ではないというふうに考えられるところでございます。
一方、コンセント制度の必要性が指摘される背景といたしまして、類似商品・役務審査基準が実情に合っていないのではないかというご指摘があるところでございます。このため類似商品・役務審査基準の見直しを行うということでございます。さらに引用商標権者の説明書によりまして、取引の実態と乖離している場合には、これを参酌して類否判断を行うという仕組みについて検討することが適切であると考えられるところであります。
続きまして、類似商品・役務審査基準につきましては、これは取引の実情に合わせてより適切な類否判断を確保し得るように、今後、取引の実情に合致させるための必要な見直しを行うということでございます。その際には、あわせまして、引用商標権者の説明書を参酌することを可能にする運用についても検討することが適当であるということでございます。なお、この基準につきましては、ニース協定の9版の発効を踏まえて順次見直しを図ることが適切であると考えております。
相対的拒絶理由についてのいわゆる異議待ち審査につきましては、市場における出所混同のおそれの回避、あるいは商標選択の自由、コスト負担、権利の安定性の観点を踏まえて、その必要性についてさらに検討を行うことが適切であるというふうに考えられるところであります。
続きまして、商標の定義につきましては、世界的な商標の定義、特に識別性というものを盛り込んでいるケースが多いという、そういった世界的な定義規定ぶりとの乖離、あるいは判例の解釈によらなければ商標法自体を解釈できないという、そういった問題、新しい分野の商標に対処できないということを指摘するご意見がございます。そのほか、社会通念上の商標との相違、識別性の要件の必要性を指摘するご意見、さらに、引き続き検討する必要性を主張するご意見がございました。また、識別性の要素を明記しても、社会通念自体は変化しないということから、現行法のままで問題はないとするご意見、あるいは匂いや音などの保護については反対するご意見があったところでございます。
考え方につきましては、商標法の定義規定というものは、保護対象を定める重要な概念でございます。定義規定を見直す際には、標章の使用の定義、あるいは商標権の効力、侵害とみなす行為との規定への波及について広く検討を行うことが必要であるということでございます。
識別性の要件につきましては、既に商標が使用される場合には、識別性を有していることが必須の要件であるということで裁判例等において確立をしており、商標の定義に規定することでより明確化するという意義があると考えられるところでございます。
一方で既存の裁判例との齟齬が生じないよう担保する必要があるということでございますし、また使用の定義の在り方との整合性も確保する必要があるということで、さらに検討を行うことが必要であるということにしております。
匂い、音からなります新しい形態の商標、これを商標法で保護することにつきましては、実体的な要請、これがまだ不明確な点がございます。必要性についてさらに検討を行う必要があると考えられるところでございます。
商標の使用の定義につきましては、現実の商取引での使用形態が多様化している、あるいは現行の使用規定に該当しない使用形態が存在をするということで、包括的な規定とすべきという意見や具体的な行為は侵害行為として規定すべきという意見、あるいは引き続き検討を求める意見があったところでございます。
一方で常識の範囲内であれば、現在でも特段問題はないというご意見でございますとか、音声での使用を標章の使用の定義に追加することに反対するご意見、それから包括的な規定としたとしても、結局、審査基準で具体的な行為を特定するということになるため、変更の必要性はないのではないかというご意見があったところであります。
考え方といたしましては、具体的な使用行為を細分化して規定をしているということで、侵害行為が明確になるという利点がございますけれども、新しい使用形態の柔軟な対応ができないといった問題もございます。現在では、個別に改正をしており、不合理な状況は生じていないというふうに考えられるところでございますが、包括的な規定とした場合の使用行為の範囲と従来の使用行為との相違点、あるいは罪刑法定主義との関係から侵害行為との整合性も踏まえて、さらに検討を行う必要があるということでございます。
以上でございます。

土肥委員長

ありがとうございました。それでは、以上の説明を踏まえまして、ご意見をいただきたいと存じます。どうぞご自由にご意見をお願いいたします。
小売の部分、輸出の部分、それからコンセント、その前に著名商標がありましたか。著名商標、刑事罰、審査の在り方としてのコンセント、その他ということでしょうか。いかがでございましょうか。
ちょっと審議のつなぎになるんですが、コンセントに関しては、今回の書きぶりと去年来、この委員会でやってきておりますコンセントに対する、この委員会での議論というのがありますね、それからすると、今回の書きぶりはかなり抑制的な感じがするんだけれども、それは変わっていないということですか、それともコンセントについては直ちに導入することは適切ではないと考えられる、これが8ページの下から8行目ぐらいですか、あるわけですし、それから下から3行目あたりのところにあるように、説明書によって取引の実態と乖離している場合、これを参酌して類否判断の資料に行おうとなっている。こういうところは一緒なんでしょうか。

田川審議室長

コンセントの方針につきましては、報告書の案、例えば、さらに検討を行うことが必要であると考えられることから、これを直ちに導入することは適切ではないとの考え方については、報告書の27ページ、対応の具体的な方向性をそのまま踏襲をいたしております。
それから、商標権者からの意見書の取り扱いにつきましても、同様の報告書の記載の欄を踏襲してまとめております。

土肥委員長

そのようなことのようですけれども、高部委員。

高部委員

この「パブリックコメントに提出された主な意見に対する考え方」というペーパーはどういう位置づけになるんでしょうか。つまり、誰の考え方なのかということをお聞かせ願います。

田川審議室長

パブリックコメントをいただいて、これについて事務局で、この報告書、これまでの議論をもとに考え方を整理したものでございます。

高部委員

つまり小委員会としての考え方という位置づけではととらえてよろしゅうございますか。

田川審議室長

事務局で作成をして、これについての考え方について、小委員会としてご承認をいただければというふうに考えております。

土肥委員長

恐らく、本日の皆様のご議論といいますか、ご検討は、今まさにご指摘のあった考え方の部分が、本委員会として了承できるものであるということが必要なんだろうと思います。恐らくこれは報告書と一体になってまとまるということなんですね。
小売については特にご議論、ご異論、ご意見ございませんか。これに関して本小委員会においては、全体的な方向性として、積極的に小売についてサービスマーク制度としてやっていくと、こういう大枠のところを考えておけば、基本的にそこから詰めに関しては、これからの話になるんだろうと思うんですけれども、一応、これからの詰めについても、この考え方の中には幾つか方向性としては出ておりますので、それでよろしければ、そういうことを前提に今後詰めていただくということになろうと思います。
特に小売に関してはよろしゅうございますかね。よろしいですか。なければ4ページ以降の輸出の追加のところ、使用行為に輸出を追加するということですけれども、この点いかがでございましょうか。鈴木委員、よろしいですかね。この辺のまとめ方は。

鈴木委員

こちらの考え方は、これで良いのかなと思っております。但し報告書の案の方で少し意見があります。

土肥委員長

わかりました。このまとめ方はこれでよろしいということですね。ほかの委員の方よろしゅうございますね。今の鈴木委員のように、後の報告書のところで少し発言があると、こういう場合もございましょうから、もしよろしければ、後で出していただいても構いません。そういたしますと、刑事罰の強化、6ページ……。

高部委員

輸出について、よろしいでしょうか。

土肥委員長

どうぞ、高部委員。

高部委員

5ページの下から6行目ぐらいのところですけれども、「『輸出』を水際で取り締まる場合には、制度の濫用による弊害の防止を含め、その手続、運用に関する政府部内での調整・連携により」云々とありますけれども、具体的にはどういうことを想定しているのか、差し支えなければ教えてください。

田川審議室長

ここは具体的に、例えば水際で、これは税関が取り締まるわけでございますけれども、例えば、制度の濫用、今の輸出水際制度でもいろんな濫用の防止策というのはいろいろとられておりますけれども、例えば、産業界からいろいろな、さらに制度の濫用等についての懸念があれば、そういうものを受けて政府部内、経済産業省と税関との間で手続面、運用面でどういうことができるかといったところを調整をしていこうという趣旨でございます。

高部委員

それは輸出専用品の場合を念頭に置いた話なんでしょうか。

田川審議室長

これは一般論としてでございます。特に輸出専用品についてということではございません。

土肥委員長

よろしいですか。よろしければ、次にいきたいと思いますけれども、まだありましたら、後でお出しください。
6ページの刑事罰のところはこれでよろしいですね。同じページの「著名商標の保護の在り方」ですけれども、これは本委員会では既に何年か前のところで議論をしたところでございまして、過去1年ぐらいの時期に議論したというわけではないんですが、こういうふうにまとめたということでございます。これはこれでよろしいですかね。本委員会としては、次の7ページの審査の在り方のところのコンセントの部分、ここについては、かなり議論はあったんだろうと思いますけれども、9ページぐらいまでかけて、これについてご意見ございますか。
こだわるようなんですけれども、コンセントをもうやらないということなのか、説明書でいわゆるコンセントを産業界がお求めになっている、そういうニーズにある程度対応するということなのか、これはどっちなんですか。

田川審議室長

説明書の参酌につきましては、コンセント制度ではございません。これは審査の一環で、類否判断について取引の実情について、審査をする際の参考資料として位置づけるということでございますので、そういう観点からいたしますと、例えば、完全型や留保型のコンセントとは、その位置づけは異なるものということでございます。

土肥委員長

説明書の中に同意書がついているんですよね。その場合でもそういうことですか。これは従来の説明とは少し違うような気がするんですけれども。

芦葉商標制度企画室長

従来からも説明書というのを意見書の中に出していただければ、それを参酌して審査を行うということでございます。

土肥委員長

そのようなことのようでございます。よろしいですかね、ここは。よろしゅうございますね。それでは、あと9ページ、10ページ、ここはこの1年ぐらいの間に議論しているということではないんですけれども、商標の定義規定のところ、使用の定義規定のところ、基本的にさらに検討を行う必要があると、そういうことですね。検討を先に送っている。そういう形になっております。
全体と言いますのは、このパブリックコメントに提出された主な意見に対する考え方の全11ページのこの資料につきまして、ご意見ございません場合には、この11ページについて御了承をいただくということになりますけれども、このパブリックコメントに提出された主な意見に対する考え方として、事務局で用意されたこの内容について、ご承認いただいたというふうに考えさせていただいてよろしゅうございますか。
それではご了承いただいたというふうに扱わさせていただきます。
それでは、先ほど鈴木委員がちょっとおっしゃったような在り方についての関係というのは、もちろん留保されるんですけれども、それもございますので、そちらを説明してください。

田川審議室長

それでは、この小委員会の報告書といたしまして、「商標制度の在り方について(案)」というものを事務局の方でまとめております。基本的な内容につきましては、これまでの内容と変わっておりません。パブリックコメントに付しましたものと変わっておりません。若干微修正をいたしましたところから、ちょっとご説明をいたしますと、13ページでございますが、「2.」の(2)のところで現行の商標法による輸出の考え方で、こうした行為が譲渡に該当するか否かについては、裁判所による明確な判断は示されていない。もとの案では学説等が分かれているというふうにしていたところでございますが、学説自体もきちんとはっきり明確なものはございませんので、ここは「裁判所による明確な判断は示されていない」というふうに留めたいというふうに考えます。
それから、16ページでございますが、16ページの輸出専用品の取り扱いのところでございます。(5)のところでございますが、最初のパラグラフは、これは変更ございません。2つ目のパラグラフにつきましては、少し変更しておりまして、また商標権侵害事件においても不使用の登録商標に基づき周知商標の使用を禁止した件、著名な漫画の著作者の許諾のもとでキャラクター名称を付した商品を販売する者に対し、登録商標に基づき使用差止め及び損害賠償を請求した件等のように、商標権に基づく差止請求権の行使を権利濫用としては認めていない事例も見られることから、個別具体的な事例に基づいて、適切な解決が図られるものと考えられるということにしております。
ここは前の書きぶりが輸出専用品についてというのを少し強調しておりましたが、一般論として、商標権侵害においても個別具体的な事例に基づいて、適切な解決が図られるものと考えられるという書きぶりに改めております。修正の部分は以上でございます。
個別具体的な項目につきましては、先ほどのパブリックコメントでのご議論と重複いたしますが、確認のためのご説明をいたしますと、まず小売サービス業の個々につきましては、対応の方向として10ページでございますが、小売等の商標をサービスマークとして保護をするということ、これが適切であるということでございます。
具体的な表示につきましては、海外の取り扱いを踏まえた上で権利範囲を把握することが可能となる合理的な指定役務の表示等を検討するというものでございます。
使用意思の確認につきましても、小売業等にかかるサービスマーク出願については、3条1項柱書きの運用を強化し、その使用の意思の確認を行うことが適切であるということでございます。
そのほか、11ページにつきましては、著名商標との調整、周知商標との調整、それから商品・役務間の先行登録商標との調整についてでございますが、まず著名商標との調整を行う。そして周知商標との調整も行うということでございます。それから、商品・役務間の先行登録商標との調整につきましては、特定の商品商標との間で出所混同が生ずるおそれがあると考えられる場合には、合理的な範囲内で問題が生じないように、審査の枠組を検討するということでございます。
役務間の類否関係につきましても同様でございます。
経過措置につきましては、後ほどご説明をすることにいたしたいと考えております。
輸出につきましては、13ページ以降でございますが、侵害行為への輸出の追加、これを使用の定義に追加をするということで、侵害行為にするということでございます。2点目といたしましては、輸出を目的とする所持を追加をするということでございます。
それから、続きまして17ページ、刑事罰につきましては、商標権侵害罪について併科を導入する。それから、法人重課の引き上げを行うということで、現在、1億5,000万円以下の罰金を、これを3億円以下の罰金に引き上げるということが適切であるということでございます。著名商標以降の項目につきましては、さらに検討するということで、先ほどのパブリックコメントでの議論の考え方と同様でございます。

土肥委員長

どうもありがとうございました。今ご説明いただいたこの案で、前回の委員会よりも少し変わったところがあることをご紹介いただきましたけれども、その部分も含めてパブコメには出ているということですか。

田川審議室長

その部分は今回修正したものです。

土肥委員長

それはパブコメの後に直されたということですね。

田川審議室長

はい。

土肥委員長

パブコメをした後、今ご紹介があった部分については、報告書に修正を入れたということでございます。それでは、これは全体を通じて、つまり、この報告書の全体と、それからパブリックコメントとの関係、それを受けて、どちらでもご質問をいただければと思いますが、鈴木委員、どうですか。

鈴木委員

16ページの輸出専用品等の取り扱いの最後の尚書きでありますが、これがもしも私ども知財協からいろいろ意見をさせていただいたことへのご配慮として入った記載であれば、私どもとしても、不正な目的を持ってこうした行為を行う場合まで侵害とするなということは申し上げていないので、必ず侵害とならないこととすべきとは考えておりません。もし、私ども以外にこういう意見をおっしゃった方がおられないのであれば、最後のところは「侵害にならない場合もあるのではないかとの意見もあった」というのが、より私どもの主張に近いと考えております。

土肥委員長

この3行については、おっしゃったように、前回の報告書にはない部分でして、先ほどご紹介は外れているんですけれども、パブコメよりも前に入っている部分です。だから、パブコメにはこの部分は、この3行は出ているはずなんですね。どうしてこの3行が入っているかというと、OEMとか、輸出専用品に関して慎重な取り扱いをという委員からご発言がこの中でございましたので、委員長一任ということでもございましたから、ここは入れさせていただいたところなんです。
鈴木委員のご発言からすると、侵害にならない場合もあるという意見があったという、これは過去の意見ですから、そこまですべきですか。

鈴木委員

この表記は「意見もあった」という事実の表記ですので、もし私ども以外からこういうご意見があったとすれば、それは事実なので書いていただいても構わないと思ってはいるんですが……。

土肥委員長

そうしたら構わないと思います。そういうふうに意見を申し上げたというものはおりますので。

鈴木委員

なるほどわかりました。私どもの発言にご配慮いただいて、こういう表記が入ったのかと思ったもので。

土肥委員長

もちろん、そういう配慮もいたしましたし、個人的にそういうふうに考えるところもありましたので、盛り込んだということです。

鈴木委員

わかりました。

土肥委員長

松尾委員どうぞ。

松尾委員

つまらないことですけれども、読んでいて気になったもので。今の16ページの下から5の権利濫用のところです。差止請求権の行使を権利濫用として認めていない。この「として」というのは、どこにかかるのか、明確ではありません。そこで、例えば「権利濫用を理由に」と修正していただいたら非常にはっきりしてくると思います。

土肥委員長

ありがとうございました。ほかに、本宮委員。

本宮委員

小売のところなんですけれども。

土肥委員長

何ページですか。

本宮委員

10ページと11ページ、10ページの「3.」の(2)で小売業等に係る役務商標の役務の具体的表示、ここで最後の行に「合理的な指定役務の表示を検討する」、それと11ページの(c)のところで、これは商品・役務間の調整だと思うんですけれども、ここでもこのパラグラフの下から3行目に「合理的な範囲内でそれを検討する」というように、2か所「合理的な云々」と使われているわけですが、これに関して具体的に今考えているところがあるのかという点と、これは、その後の今日、配られています経過措置との関係にも影響してくるのではないかと思いますので、今、どのような形か、ある程度想定されているのがあれば、教えていただきたいと思います。

土肥委員長

何かかなり詰まっている検討内容があれば、この委員会でご紹介いただきたいと、こういうことですけれども。

芦葉商標制度企画室長

ただいまご指摘の点につきまして、まさに検討しているところでございます。例えば、10ページの具体的な表示の仕方なんですけれども、これは例えば、便宜の提供ということでまとめるのか、もっと端的に、例えば小売店で行っているサービスであるので、小売店サービスとした方がより適切な表現になるのかというところも含めて検討を行っております。
それから、11ページのところの特定の商品商標との間、これは小売と商品商標の間の類否関係のところですけれども、基本的には個別具体的な商品を表示した小売業の業態の表示があった場合には、その個別具体的な商品商標とのクロスサーチを行うということを念頭におきまして検討しております。

土肥委員長

挙げない場合もあるんですか、個別具体的な小売商標と商品商標とのサーチを。

芦葉商標制度企画室長

包括的な表示で、例えば、日本標準産業分類ですと、各種商品小売業など商品を特定しない小売の業態がありますので、この場合は、特定の商品商標との類否関係を見るというわけにもいきませんので、包括的なところで、商品が特定できないものはクロスサーチができないというふうに考えてございます。

土肥委員長

そういう表記も認めるということですか。

芦葉商標制度企画室長

業態によりましては、総合スーパーであるとか、例えば、具体的にまだどこまでというのは検討しているところですけれども、百貨店における何々とか、こういった場合には、特定の商品と離れて役務性が非常に強くなってくるという部分がありますので、そういった場合には、商品商標とのクロスサーチは必要ないというふうに考えております。

土肥委員長

そうでしょうね。本宮委員いかがでございましょうか。

本宮委員

わかりました。いずれにしても、それとの兼ね合いで、その権利範囲が定まってくるわけで、定まれば、逆に継続的使用権が認められるところとも関連してくるわけですので、資料4がございますけれども、やはりリンクさせながら、十分検討をしていただきたいというように思います。

土肥委員長

資料4ですか。経過措置のところの話ですね。これはこの後、まず説明がございまして、意見をいただくところもございましょう。そこにいく前のところは、もうよろしいですね。松尾委員どうぞ。

松尾委員

前から気になっておりましたが、今回、パブコメのときも何度か読んで首を傾げておりました。それは7ページのところに「問題の所在」というのがありまして、そこに参考として商標法第2条商標の定義があります。ここに「小売業は『商品』を譲渡する者」とされているとありますが、2号の方は、「業として役務を提供し」ということです。小売業というのは商品の販売だけでは従来取り上げられた「小売業」にすぎません。しかし、商標の定義がおかしいというところから問題を見ていきますと、2号の方で業として役務を提供するというところに、小売りサービス業、が入るのではないのかなという疑問が持たれます。そこで、わざわざ商標法第2条をここに書いていただかなくてもいいのではないか、記載があると、却ってわからなくなるのではないかと思います。

土肥委員長

今のご意見としては、むしろ紛れを除く意味で参考として挙げられている5行ほどが、かえって参考にならないと。かえって混乱という趣旨ですよね。これはこの報告書の一つの提案になるわけですけれども、いかがでごさいましょうかね。むしろ、これがあることによって、わかりにくくなる、混乱する可能性があるので、むしろここは参考ということにならないので、ここを落としたらどうかという一つのご提案なんですけれども、委員の皆様におかれまして、ご異論がなければ、そのようにさせていただきますし、さりながら、これはこれでということになりますと、それはまた別なんでしょうけれども、いかがでございますか。本来、参考ですから、特に必要ではないはず、本体の方からすれば、必要ではないところではあろうと思いますけれども、ご意見ございませんか。お一人ぐらいご発言いただくと、私も後々やりやすいんですけれども、高部委員お願いします。

高部委員

そうしたら、2条だけ書いていただいて、「小売業は『商品』を譲渡する者」とされている部分を削ればよろしいんじゃないでしょうか。要するに、最終的には、2条の定義に何らかの形で小売を入れるべく、今度法改正をされるという方向でしょうから、現行法ではこうなっているということが参考として上がっていても、それ自体はおかしくないわけです。ただ、小売業が現行法でどういう位置づけになっているかを、ここで書く必要はないということは、松尾先生のおっしゃるとおりだと思います。ですから、第2号の次を削って、最後の行に続けていただく、「第2号」の次を「とされている」とするということでいかがでしょうか。

土肥委員長

今のご提案は、まさに参考資料として規定をそのまま挙げるということですけれども、それでよろしゅうございますか。松尾委員もご了承いただいておりますので、それでは「第2号」、その後に「とされている」ふうにして、「小売業は『商品』を譲渡するもの」、そこまで落としましょうね。
ほかに何かご意見ございませんか。なければ、もちろんなければですけれども、本報告書及びパブリックコメントを受けた後の意見に対する考え方、これは一体として綴じられることになりますよね。それは綴じない?

田川審議室長

別ですね。

土肥委員長

別になるんですか。そうですか。わかりました。

田川審議室長

公表はいたします。

土肥委員長

もちろん。一体にはならないということですね。わかりました。それでは、本報告書の案がついておりますけれども、2か所、1つは先ほどの参考とあった部分について1つ、それから権利濫用としてという部分ですね。そこに修文を入れますけれども、入れまして、それ以外のところは本商標制度小委員会の報告書としてご了承いただけますでしょうか。
ありがとうございました。ご了承いただいたというふうに進めさせていただきます。では、次にいきましょう。
本日の最後のテーマになるわけですけれども、先ほどご発言が出ておりましたが、「小売業等に係る役務商標の導入に伴う経過措置(案)の方向」という部分ですね。それと「団体商標の登録主体の拡大について」、この2点につきまして、事務局から説明をお願いいたします。

田川審議室長

まず、小売業等のサービスマーク登録制度導入に伴う経過装置の方向についてご説明をいたします。
まず、1点目が継続的使用権でございます。改正法の施行前から既に使用されて、需要者の信用が蓄積をされている商標を保護し、かつ既存の取引秩序を維持するということからは、施行前から使用されている商標について、施行後においても継続的に使用できるように使用権の確保をすることが必要であるということでございます。
ただし、小売役務につきましては、商品の小売等に伴って提供されるということで、商品の譲渡と密接な関係を有する上に、小売業者等も商品にかかる業務を行っているということで、施行前から商品の出願をすることができるということでございます。
このため、商品にかかる商標権、または専用使用権に対しても継続的使用権を行使し得るといたしますと、施行前には商標権の侵害行為であった商標の使用が、この施行によりまして侵害行為でなくなってしまうという、そういうおそれもあるということもございます。
そこで施行前から小売役務について使用している商標については、以下の内容でございますけれども、以下の内容の継続的使用権を有するということにしたいということでございまして、まず4点ございます。
まず1点目が施行前から不正競争の目的でなく、小売役務について使用されている商標については、その小売役務に類似する役務を指定する商標権があっても、その役務を行っている範囲内において、継続して使用できる権利を認めるということでございます。
この業務を行っている範囲内においてということにつきましては、サービスマーク登録制度導入時等の継続的使用権と同様の考え方でございまして、業務範囲、業務地域等が限られる可能性があるということでございます。
それから2点目が周知な場合でございます。改正法の施行の際に、その商標が自己の業務にかかる小売役務を表示するものとして、周知になっているとき、このときは業務を行っている範囲内に制限されることなく、その商標を継続して使用することができるということでございます。
商品との関係につきましては、商品にかかる商標権に基づく差止請求等の行使は可能とするという考えでございます。この場合の混同防止措置といたしましては、継続的使用権を有する者に対しまして、商標権者または専用使用権者は混同を防ぐのに適当な表示をすべきことを請求することができるというふうな方向でございます。
それから2点目が施行後3月間にした役務にかかる商標登録出願についての先願の特例でございます。これはサービスマーク登録制度のときにも一定期間、サービスマーク出願については同日に出願をされたものというふうに取り扱った例にならったものでございます。
改正法の施行日後に小売のサービスマーク出願を受け付けるというときに、先願主義に基づく調整を行いますと、施行日に大量の出願が集中をするということでございます。そういたしますと、出願人の方の出願手続にも支障を及ぼすということもございますし、また小売役務がこれまで長年にわたって商標法上の役務として認められていなかったと、あるいは出願人の利益を勘案して、一定期間先願主義の例外として扱うということでございます。
一方で、小売役務は商品の小売等に伴って提供され、商標の譲渡と密接な関係があり、かつ小売業者は改正法の施行前においても自己の業務にかかる商品について、商標登録を受けることができたということでございまして、小売役務についても既存の商標登録、あるいは商標出願のもとで取引秩序が形成されていたというふうに考えられるところでございます。
一方で小売役務以外の役務との関係でございますが、小売役務と商品の間のように、密接な関係があるということは考え難いということ。また小売役務以外の役務、これは小売業者の自己の業務ではないということで、こうした小売以外の役務について、商標登録を受ける者ではなかったということでございますので、これを施行当初から先後願の審査を行うということにいたしますと、小売業者がその概念上、類似をいたします小売以外のサービスとの関係で劣後される状態になるということでございます。
したがいまして、施行後一定期間にした小売役務についての商標登録出願との関係では、先後願の審査をし、それ以外の役務との関係では先後願を審査をしないという整理にしたいと考えております。一定期間につきましては、3か月というものを想定をいたしているところでございます。
この結果、四角のところでございますが、まずまとめといたしまして、小売役務にかかる商標登録出願との間では、先願主義の例外として、小売同士については、同日に出願されたものとして取り扱うということでございます。
「3.」でご説明いたします「使用に基づく特例の適用」というのを考えておりますが、通常の出願と変わらないものにつきましては、これは未使用のものが競合したという場合には、協議及びくじによって出願を定めるということでございます。商品との間では実際の出願日を基準にして、先後願の審査を行う。小売以外のサービスの間では、先後願の審査をしないという整理をしたいと考えております。
それから使用に基づく特例の適用につきましては、この3か月間の間になされたサービスマーク出願について、改正法の施行前から使用しているという場合には、次のように取り扱いたいと考えておりまして、
まず、3ページ目でございますが、商標登録出願にかかる商標が改正法の施行前から不正競争の目的でなく、小売役務に使用されているという場合には、まず使用に基づく特例の適用を主張することができるといたします。
この使用に基づく特例の適用の主張の手続でございますが、これは先願の特例によりまして、具体的な手続といたしましては、この商標法条約で出願当初に、その使用の証明書を求めることができないということがございまして、複数の出願が競合した場合に協議命令を行う。その際に使用している旨を証明する書類を提出していただくということでございます。
使用に基づく特例の適用を主張した出願については、まず使用していないものに優先して商標登録を受けることができる。使用しているもの同士が複数あって、かつ周知・著名等の抵触等によって拒絶理由を有する場合を除いて、いろいろなハードルを越えて、最終的に複数の出願が残った場合、こういう場合には重複して登録を認めるということでございます。
この考え方につきましては、サービスマーク登録制度を導入したとき等の重複登録の考え方と同じでございます。
重複された場合の混同防止、誤認混同を防止するための措置でございますけれども、まず一方の商標権者の使用によって他方の業務上の利益が害されるおそれがある場合には、これは混同防止表示の請求を認めるというのが1点でございます。
それから取消審判の特例といたしまして、重複登録の商標を不正競争の目的で使用をいたしまして、混同を生じた場合、これは取消審判の請求ができるということを考えているところでございます。

土肥委員長

ありがとうございました。それでは、この経過措置というんですかね。小売業等にかかる役務商標の導入に伴う経過措置の方向性についてご説明をいただきました。この点についてご意見がございますか。
サービスマークをかつて入れたときと比べて、大きく違う点、経過措置をあのときも入れたわけですけれども、大きく違う点というのが、使用のチェックを10年経ってからやるわけではなくて、前倒しで全部やってしまうというところになるわけですか。

田川審議室長

サービスマーク登録制度導入時も使用に基づく特例というものが多うございまして、そういう観点では同じでございます。

土肥委員長

やったということですね。ただ、あのときと違う点は、1回だけはできたわけですよね。

田川審議室長

あのときと違うのは、サービスマークについては商標法条約の制約がありますけれども、1回できるということになっております。更新時に再度絞るために、例えば一方が非常に著名になっていて、一方が周知に留まるなどの格差が生じる場合には、一方の更新を認めないということに考え方をとっていたわけでございますが、今回は、その更新時に絞り込むという考え方はとることができないということです。

土肥委員長

それで前のところでやるということですよね。ご意見ございませんか。鈴木委員。

鈴木委員

質問なのですが、3ページの枠囲みの2のところにあります使用している旨を証明するための書類等とあるのですけれども、サービスマーク登録制度導入時には、例えば商工会議所からの使用証明書をとるということがで運用が行われていたと思うのですが、ここで言う証明書というのは、もう既に具体的にこういうものというのが決まっていたら教えてください。

土肥委員長

これは決まっていますか。

芦葉商標制度企画室長

具体的に何と何というのは、まだ決まってございませんが、サービスマーク導入時と同様のものを想定しております。

土肥委員長

ということのようですけれども、よろしいですか。

鈴木委員

もう1点。重複登録をされる場合に、原簿や公報にその旨は記載されるという理解でよろしいでしょうか。

土肥委員長

これは。

芦葉商標制度企画室長

原簿にも公報にも記載する方向で検討しております。

土肥委員長

この点については、ご質問もどうぞ。基本的には前回の報告書でも経過規定についてはやりますということは出させていただいたんですけれども、遺漏ない形でやりますということだけは出させていただいておったわけですが、今回は具体的にこういう形でやるんだという方向性が示されております。本委員会としては遺漏なくしていただきたいと、こういう注文を出す程度になるんだろうと思います。現在は、こういうことを事務局として検討を進めていただいておるということでございます。よろしゅうございますか。これはご説明を伺ったという扱いにいたします。
それではもう1点あるわけですね。お願いします。

田川審議室長

続きまして、団体商標の登録主体の拡大についてご説明をいたします。団体商標につきましては、この委員会でも一度ご議論をいただいております。まず、今回の背景、それから必要性についてご説明をいたします。
ご承知のとおり、団体商標制度というものは、平成8年に導入をされた制度でございまして、団体が構成員に使用させる団体商標を新たに制度化したものでございます。これは海外が団体商標制度というものを有しているということ。それから地域ブランドの育成に資するものであるということから、平成8年に導入をされております。
団体商標の登録主体といたしましては、まず団体が構成員を有すること、それから権利義務の帰属主体となるため、法人格を有することが不可欠となっているところでございます。団体商標の主体といたしまして、この構成員を有するということ、それから法人格を有するというものを満たすものといたしまして、かつ団体商標、構成員にある商標を使わせるということが想定されるものといたしまして、社団法人、それから事業協同組合、その他の特別の法律により設立された法人格ある組合というふうに定めているところでございます。
今回の改正でございますが、まず契機といたしまして、公益法人制度改革におきまして、その社団法人というものが一般社団法人へ移行するということが予定をされております。これは従来の社団法人に加えまして、業界団体あるいは同好会といった中間法人についても一般社団法人として認められる方向でございます。
そういたしますと、例えば中間法人である業界団体であるとか、同好会といったものが登録主体となり得るという一方で、商工会議所、NPO法人といったところについては、同様の構成員を有する法人格のある団体でございますけれども、現行法上、仮に社団法人が一般社団法人に移行したとしても認められないということになるわけでございます。
こうしたバランスを考慮いたしまして、この際、商工会議所・NPO法人等構成員を有する団体について、広く団体商標として追加をすることが必要であるということでございます。
具体的な対応でございますが、社団法人については、一般社団法人というふうに移行をいたします。これは公益法人改革に伴う公益法人の整理法によって手当をされる予定でございます。その他の構成員を有する法人格のある団体につきましては、例えば、会社のように株主があるマークを使うということは想定し難いという場合もございますので、そういったものを除きまして、社団については登録商標の主体として幅広く追加をする方向で考えたいというふうに考えております。
具体的には1枚おめくりをいただきまして、現在は社団法人とそれから事業協同組合、一番上の部分と、それから一番下の事業協同組合、農業協同組合、これが対象となっているところでございます。今回一般社団法人となりますと、中間法人が加わるということになりますので、それに合わせまして全体社団であって法人格を有するもので、かつ団体商標を使うことが想定されるような、そういったものについて商標法上の団体商標の登録主体として範囲を広げようということでございます。

土肥委員長

どうもありがとうございました。団体商標の主体の拡大につきましては、3年前ぐらいには一度出たことがあるわけですけれども、そのときは、そんなに深くは議論しておりませんが、今回の場合は、他の法制度の改正に伴って、こういうふうにしてみたいというご提案ということでございます。
何かご意見ございますでしょうか。表でいくと、線が引いてあるところが広がるということですよね。中間法人及び商工会議所、NPO、商工会議所については、従来から団体商標を認める必要があるのではないかという意見は、かなりいろんな方面で指摘があったのではないかなというふうに思いますので、そこはいい結果になるのではないかというふうに思います。篠原委員どうぞ。

篠原委員

ぜひ商工会議所、NPO法人等を追加していただければありがたいと思っておりますが、逆になぜ平成8年の改正のときに組合に限ったんでしょうか。

土肥委員長

これは経緯について、民法の43条でしたっけ、その社団法人はOKなわけですから。

篠原委員

民法の社団法人はわかるんですけれども、事業協同組合、その他の特別な法律により設立された法人格のある組合と、ここで絞り込んでいるんですよね。ここで法人と書いておれば、商工会議所は当然入っていたんですけれども、なぜ組合に限ったのか、当時。

土肥委員長

組合はもちろん認められるんですけれども、一方で公益社団法人に限ったということでしょうね。

篠原委員

そうすると、組合に限ったわけですね。

土肥委員長

もちろん、それも入るんですが、商工会議所は社団ですよね。

篠原委員

商工会議所は特別の法律により設立された法人格のある法人なんです。

土肥委員長

社団か組合かということでいけば。

篠原委員

社団性のある特別法人です。社団性ですけれども、法人格は商工会議所法という法律に基づいて法人格を与えられているものですね。だから、その他の特別の法律により設立された法人格のある、なぜ組合に限ったのか、「限った」というのは固い言い方なんですけれども、もう昔の故事来歴の話になりますから、わかれば、わからなければ結構です。

田川審議室長

当時の資料、実は今回の過程でも少し調べたところでございますが、ちょっと明確な理由というのは残っていないんですけれども、当時資料によりますと、その当時の考え方では非常に厳しく解釈をして、団体の構成員に共通の性格を持つものを認めようということで、そういたしますと、やはりまず想定されるのは、どうしても同業者的なものがまず想定をされたということでございます。若干、不明確なところがございますが、そういう整理をしていたようでございます。

土肥委員長

ほかに高部委員。

高部委員

7条では「これらに相当する外国の法人」と規定されておりますけれども、本体の方を広げるということは、外国の法人の方も広がると考えてよろしいんでしょうか。

土肥委員長

どうですか。

田川審議室長

お答えをいたします。外国法人についての扱いは、そういうことになります。そうした今回対象になるものに相当するもの、対象を拡大することによって、相当するものも拡大をするということになると思います。

土肥委員長

そういうことでしょうね。本宮委員。

本宮委員

団体商標の登録の主体拡大という点は、その方向でいろいろ議論していたわけですから、これはこれでいいと思います。これは7条の団体商標であって、地域ブランドの7条の2は事業協同組合となっているので、かぶってこないと思うんですけれども、地域団体商標に関しても商工会議所等が権利の主体になれないのはなぜだ、というようなことも出てきているようにも思います。そういう意味で、団体商標の主体が拡大した段階で、地域団体商標との間での混乱が生じないよう、周知徹底を図り、その違いを明確にできるような形をとっていただければというように思います。

土肥委員長

具体的にはどういうことをお考えになっているのでしょうか。

本宮委員

今日見たばかりですので、具体的なところまでは。

土肥委員長

何かありますか。

田川審議室長

ご指摘の点を踏まえて、制度の違いと、それから登録主体の違いというところは、きちんとご説明をするようにしていきたいと思っています。

土肥委員長

ほかには。よろしゅうございますか。くどいようですけれども、団体商標の拡大に関しましては、これはご了解いただく必要があるということですか。

田川審議室長

この方向でやっております。

土肥委員長

委員会で。ご了解いただくということで。この方向で詰めさせていただいておるということのようでございますので、本委員会において、そういう案の提示があった場合に、本委員会としては了承をしたという扱いをさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。では、そのようにしかるべく。
本日用意しております議題としては以上でございます。先ほどの次第からいたしますと第17回の小委員会を開いております。それで最終的にこういう形で商標制度の在り方についての案がまとまりましたことについて、非常に私もうれしく思いますけれども、恐らく特許庁におかれましてもお喜びいただけるのではないかなと思っております。本報告書のとりまとめに当たって、特許庁中嶋長官から、この件についてのごあいさつを頂戴できればと思います。

中嶋長官

中嶋でございます。一昨年からでございますけれども、大変長い間委員の皆様お忙しい中、時間的にも多大の拘束をいたしまして、本当にありがとうございます。心から御礼を申し上げます。
特に昨年の春、地域団体商標づくりで一時期そちらに特化いたしまして、そういう意味では今回、かねてからの点も含めて、あるいは先ほどの団体商標の点も含めて、とりあえず、全体をまとめることができたことは大変ありがたいと思っております。
もともと今回、商標に限らず意匠・特許の制度についての見直しを行っているんですけれども、ざっくり言うと、多分2つの観点がありまして、一つはいずれも、こういった産業財産権というんでしょうか。日本企業が、あるいは日本の産業がこれから中国とか、東南アジアに伍して、さらに発展していく際に、やはり一つの攻めのツールといいますか、付加価値を高めて差別化をしていくという意味で、こういった知的財産権の制度が使いやすいようにと。もちろん、当の知的財産なり、知的財産権を生み出す活動は、当の企業なり、あるいは大学なり、研究所なり、そういうところでされるわけですけれども、それを受ける制度として、日本の国内の制度ができるだけ使いやすいようにという点と、それからもう一つは実態として、いろいろアジアを中心に模倣品の問題が依然として横行しているものですから、そういう意味で、それに対しても有効な手立てがとれるようにという視点があると思います。
商標について言えば、第1点目が使い勝手といいますか、例えばサービスマークに小売、あるいは卸売りといいますか、そういうところを組み入れていくといったような方向性、あるいは模倣品対策の点につきましては、輸出という行為も侵害行為の対象に加えるとか、あるいは刑事罰についても、より重くする方向でそろえるとか、幾つか重要な方向性を出していただきましてありがとうございます。
特にサービスマークの点は、実は個人的には思い出として、十数年前に当時の通産省に知的財産政策室をつくったときに、課題として書いた紙の中にサービスマーク制度の導入というのを書いていた覚えがあるんですが、それはさっきのお話を聞いていると、平成の4年ごろに確かに導入されておったんですが、私も今回初めて改めて勉強したんですが、そのときの導入の、もちろんその時点ではそういう導入の仕方で一つの合理性があったんでしょうけれども、その後、いろんな国際的な動向も踏まえて、今回、もう一度その位置づけを見直したということかと思いまして、大変感慨深いものがありました。
ちなみに、今、こういった議論というのは、政府全体の例の小泉総理を本部長とする知的財産戦略本部ですか。その中の推進計画の中にも入っている項目なんですが、別途経済産業省的な言い方をしますと、同じ産業構造審議会で、つい先だって検討を開始したものに、新経済成長戦略というのがあります。これは春ごろに一旦中間的にまとめて、6月ごろまでにまとめようというものなのですが、これも一口に言うと、いろいろ構造改革というのは、いいんだけれども、そういう中で具体的に日本がどうやって新しい成長の道をたどっていくんだと。もちろん一方で実質経済成長率が2%とか、名目成長は3か、4か、5かとか、いろいろそういう話題にありますけれども、そういうことだけやるのが、もちろん経済産業省の務めではございませんで、むしろ中身として、どういったような産業の活動とか、あるいはそれを支える制度が必要であるかという点が、むしろ大事でございまして、そういう意味では、今よく言われるのは、5つの要素、人材と資金とモノというか、設備ですね。それから技術とか、ここで言っている知的財産的な話、それから最後に全体を束ねる智恵といいますか、経営力といいますか、ですから、こういった知的財産も最近の言葉で言えば、知的資産経営と言うんでしょうか。そういうものの中核として、新経済成長戦略の中にも位置づけられると思っております。
ただ、率直に言って、今回のお話を聞いて、私も改めて思ったんですけれども、まださらに検討を引き続き要する課題が残っているのも事実でございまして、そういう意味では、これからもぜひ諸先生方には引き続き折に触れてご指導、ご教示をいただきたいと思います。
そういう中で、私はこれからもいろんな制度を整備していく際に、大事な点は多分3つあると思っているんです。1つは余り観念論で考えるんじゃなくて、あくまでも産業界なり、実務の現場からの需要といいますか、実需といいますか、もちろん、今現に行われている慣行とか、それがすべて正しいという意味ではもちろんないんですけれども、具体的にどういうような経済活動の実体があって、どういう知的財産制度についての需要があるのか、その実需の点と、それから2番目は世界的な国際的な動向はどうなっているか、それに反することは、やはり知財立国を標榜する日本としては、とるべきではないと思いますし、むしろ、日本が全体の方向を引っ張っていくぐらいのことをしたい、それから3番目にそうは言っても、現実の実務で、それが特許庁の審査官にしろ、弁理士さんにしろ、企業の担当者の方にしろ、あるいは裁判の実務にしろ、現実の実務でちゃんと適応することが、円滑にできるような制度じゃないといけない。これは当たり前といえば、当たり前ですけれども、ですから、そういうような点を念頭に引き続き日本の知的財産の制度を常に時代に応じて、整備していきたいと思いますので、どうぞこれからもよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

土肥委員長

どうもありがとうございました。それでは、産業構造審議会知的財産政策部会商標制度小委員会第17回の委員会を閉会させていただきます。本日までの委員のご議論、ご検討に厚くお礼感謝申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。

閉会

[更新日 2006年3月14日]

お問い合わせ

特許庁総務部総務課制度改正審議室
電話:03-3581-1101 内線2118
FAX:03-3501-0624
E-mail:PA0A00@jpo.go.jp