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第20回商標制度小委員会 議事録

  1. 日時 平成21年10月5日(月曜日)15時00分~17時00分
  2. 場所 特許庁特別会議室(特許庁庁舎16F北側)
  3. 出席委員 土肥委員長、阿部委員、遠藤委員、小塚委員、小山委員、鈴木委員、竹田委員、苗村委員、松尾委員、水野委員、宮城委員
  4. 議題
    • 開会
    • 商標行政を巡る最近の動向について
    • 新しいタイプの商標に関する検討ワーキンググループ報告書について
    • 歴史上の人物名からなる商標登録出願の取扱いについて
    • 「類似商品・役務審査基準」の見直しについて
    • 審査基準等の視覚化・構造化の推進(ハイパーテキスト化)について[報告]
    • 早期審査・早期審理の運用の見直しについて[報告]
    • 今後の検討課題について
    • 閉会

開会

土肥委員長

それでは、ちょうど時間でございますので、ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会第20回の商標制度小委員会を開催いたします。

本日は、御多忙のところお集まりいただきまして誠にありがとうございます。

それでは最初に、前回以降新たに本小委員会の委員になられた方々について、事務局から御紹介をお願いいたします。

鎌田審議室長

制度改正審議室長の鎌田でございます。よろしくお願いいたします。

それでは、交代されました委員の方々を御紹介いたします。

社団法人電子情報技術産業協会商標専門委員会委員長・三菱電機株式会社知的財産渉外部専任 苗村正一委員。

日本弁理士会副会長 水野勝文委員。

日本商工会議所常務理事 宮城勉委員。

以上のお三方でございます。

なお、北海道大学大学院法学研究科教授 田村善之委員でございますけれども、本日は所用のため御欠席でございます。

土肥委員長

ありがとうございました。

それでは、商標制度小委員会の開催に当たりまして、細野特許庁長官から一言御挨拶をちょうだいいたします。それではよろしくお願いします。

細野長官

特許庁の長官に7月拝命して着任いたしました細野でございます。よろしくお願いを申し上げます。

本日は、御多忙のところ御出席いただきまして誠にありがとうございます。私は今のお三方の御着任と同時期の着任でございますので、小委員会の開催に当たりまして、一言御挨拶をさせていただきます。

私はこちらに参る前に、経済産業省の製造産業局を担当しておりました。ものづくり一般を担当する局でございまして、目に見えるものは大体すべて所管するという局でございます。目に見えないサービスとか流通、電子、通信というのを除けば、姿形のあるものはほぼすべて所管するところにおりました。姿形のあるもので所管していないのは大体4つか5つしかない。船とか薬品とか食べ物、こういうのは大体ほかの役所でございます。あとのものは大体形あるものということで、ものづくりという観点から所管させていただきました。

3年間やりました。その3年間の間いろいろなことがございましたけれども、特許あるいは意匠はものづくりを支える重要な要素でございまして、技術流出をいかに防ぐか、いかにブランド力を高めるかということを、いわば知財の制度をユーザーとしてずっとフォローさせていただきました。あわせて、今日お願いを申し上げます商標についても大変有力な戦略の一環でございます。地域団体商標等々も含めて、商標についても随分地域の活性化であるとか、ものづくりの競争力強化の面で大変重要かつ大切なツールだなということを実感しておりました。

立場が変わり特許庁の方に参りまして、今度はユーザーの方に、どのようなインフラとして商標制度を御提供申し上げるかという立場になりました。立場は変わりましたけれども、是非そういう観点で日本の商標を、いかに重要な競争力の源にできるかということで努力したいと思います。

本日は、この商標の世界について、新しい切り口を御審議いただくということでお願いしていると理解しております。これまで商標は、125年になります商標の歴史の中で、大変累々としてたくさんの商標を世に出してまいりました。10年ごとに更新されることが原則ですが、開闢以来173万件の商標をこれまで御提供してきております。今度は少し、音であるとか新しい形での商標の範囲についても率直に御議論いただいて、日本のユーザーの皆様にとって有力な制度になるように是非御審議を賜ればと存じます。

開始に当たりまして、そういう趣旨と制度についてのお願いを申し上げまして、真摯な御議論をちょうだいできますことを重ねてお願い申し上げまして御挨拶に代えさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。

土肥委員長

細野長官、どうもありがとうございました。

それでは、次に本日の議題について御紹介させていただきたいと存じます。7つございます。「商標行政を巡る最近の動向について」、それから、「新しいタイプの商標に関する検討ワーキンググループ報告書について」、「歴史上の人物名からなる商標登録出願の取扱いについて」、「「類似商品・役務審査基準」の見直しについて」、「審査基準等の視覚化・構造化の推進(ハイパーテキスト化)について[報告]」、「早期審査・早期審理の運用の見直しについて[報告]」、そして「今後の検討課題について」、以上7つの議題でございます。

それでは、事務局から本日の配布資料の確認をお願いいたします。

鎌田審議室長

配布資料の確認をさせていただきます。

本日の配布資料は、座席表、議事次第・配布資料一覧、委員名簿のほか、資料1商標行政を巡る最近の動向について、資料2-1新しいタイプの商標に関する検討ワーキンググループ報告書、資料2-2同報告書の概要、資料3-1歴史上の人物名からなる商標登録出願の取扱いについて、資料3-2「歴史上の人物名等の商標審査の方向性について」に対する御意見の概要及び御意見に対する考え方(案)、資料3-3歴史上の人物名からなる商標登録出願の取扱いについて(案)、資料4-1「類似商品・役務審査基準」の見直しについて、資料4-2「類似商品・役務審査基準」の見直しの方向性について、資料5商標審査基準の視覚化・構造化(ハイパーテキスト化)について(報告)、資料6早期審査・早期審理の運用の見直しについて(報告)、資料7今後の検討課題について、参考資料1歴史上の人物名等の商標審査の方向性について、参考資料2商標制度の見直しに係る検討課題について、以上13点でございます。不足等ございませんでしょうか。

もう1点、お願いがございます。御発言をなさる際には、お手元のマイクのスイッチをお入れいただき、マイクを近づけて御発言いただくようお願いいたします。

土肥委員長

ありがとうございました。

商標行政を巡る最近の動向について

土肥委員長

それでは早速、議題に入らせていただきます。まず初めに、最初の議題であります「商標行政を巡る最近の動向について」、事務局より説明をお願いいたします。

水茎商標課長

では、私、水茎より御説明させていただきます。資料1の商標行政を巡る最近の動向についてでございます。

まず商標出願動向でございますが、2008年度のマドプロを含めた出願区分数は、グラフで言うとピンク色のグラフですが、対前年度比マイナス約10%になっております。マドプロに関して申し上げますと、5年間で2倍に増加している状況でございます。

次に2ページ、商標審査を巡る現状でございます。2008年度の実施庁目標に対する実績は、一次審査区分数、FA期間、早期審査のいずれも達成してございます。2009年度、今年度ですけれども、今年度はFA期間の目標を6カ月以内、早期審査は昨年度と同様全件申出から、3.5カ月以内ということでございまして、現在順調に処理しているところでございます。

次のページです。地域団体商標制度の現状でございます。御案内のとおり地域団体商標は、2006年4月1日に施行されております。それから4つ目の四角ですが、2009年6月、「地域団体商標2009」を発刊させていただきました。これは、今年の3月までに登録査定された案件すべてと、それから地域団体商標出願・活用戦略集を収載してございます。

その下に、出願の内訳、登録の内訳がございます。農産品からその他までございますが、この出願について申しますと、約7割が食品関係となっています。登録の方は、全体の5割ぐらいが食品関係の登録になっているということでございます。

次に4ページです。地域団体商標制度の現状で、これは9月30日までに設定登録された案件を地区別にあらわしたものでございます。御参考までに、京都府が一番多くて56件の登録を受けています。

次は国際関係の動きでございます。国際関係はいろいろございますが、まず商標三極会合です。2つ目の四角ですが、直近の会合は第7回三極会合を昨年の12月に、USPTOで開催されております。この中で三極のみの会合では、他の知財庁・国際機関との協力ということで、これについては中国への協力事項ということで、商標に関する出願プロセスシンポジウムをやろうという話でございます。

それから、②として三極が相互に受け入れられる商品・役務表示のリストの更なる活用。これは三極の商品・役務表示便覧プロジェクトと言われているものでございまして、この更なる活用というのは、三極以外の第四庁の当該プロジェクトに参加というところを議論しております。その他、意見交換を実施しております。

それから、最後の四角ですけれども、次回第8回の会合は、OHIMがホストということで、12月にスペインのアリカンテで開催の予定でございます。

次は日中商標長官級会合でございます。これは、今年の1月に第7回会合を北京で開催しておりまして、この中で、日本の地名等が中国で第三者により商標登録・出願されている問題について意見交換を実施しております。ここでは日本より、適正な審査を要望しております。

次のページで、WIPOでの議論でございます。まずマドリッド協定議定書ですが、一番下の四角を説明します。直近の2009年7月に開催された第7回作業部会では、出願言語の追加に関するもの、それから「国際登録の分割」に関する調査研究について検討しました。出願言語の追加と申しますのは、今、3言語ございますが、それに新たな出願言語を追加しようというお話でございます。これは他言語の翻訳等の運用コストのワークロードの問題とメリットのバランスが問題ということで、それを検証するために、希望国によるパイロットプロジェクトを行うということで検討されております。

次にニース協定でございます。ニース協定は、2012年の第10版発効に向けて準備作業部会でいろいろ議論しております。

次の28回準備作業部会及び第3回アドホックWGは、今年の11月に開催予定ということになっております。

最後にSCTでございますが、直近の2009年6月に開催された会合では、あらゆるタイプの商標に関する拒絶の理由とか、証明・団体商標の登録に関する技術的・手続的側面の話とか、パリ条約第6条の3(国の紋章等の保護)、それの保護範囲を拡大して、国名にも拡大しようという提案がされております。こういった議論が行われました。

次回22回会合は、今年の11月に開催される予定でございます。

簡単ですが、以上でございます。

土肥委員長

ありがとうございました。

それでは、ただいまの説明につきまして、御質問、御意見等ございましたらお願いいたします。

特によろしゅうございますか。

ありがとうございます。それでは御報告を承ったということにいたします。

新しいタイプの商標に関する検討ワーキンググループ報告書について

土肥委員長

それでは、第2の議題でございます「新しいタイプの商標に関する検討ワーキンググループ報告書について」、これも事務局より説明をお願いいたします。

鎌田審議室長

御説明いたします。お手元の資料の資料2-1と2-2が関係の資料でございます。資料2-1がワーキンググループの報告書本体でございます。本報告書についてはワーキンググループにおける5回の議論を経て取りまとめられたものでございます。以下、資料2-1をベースにして御説明させていただきたいと思います。

1枚めくっていただいて目次でございますが、全体3部構成にしておりまして、Iが検討の背景、IIが検討に当たっての基本的な考え方、最後が具体的な制度設計という形にしております。

1枚めくって1ページでございます。まず検討の背景ですが、ここでは大きく3つのことが書かれております。1つ目は、近年のインターネットの急速な普及等により、商品・役務の販売戦略が多様化したことに伴い、文字や図形等からなる伝統的な商標だけではなく、動きや音等からなる新しいタイプの商標が用いられるようになってきている。

2つ目、これは海外の関係ですが、諸外国においてはこうした新しいタイプの商標を保護する動きが広がりつつある。また、WIPOの商標・意匠・地理的表示の法律に関する常設委員会(SCT)においては、新しいタイプの商標の特定方法について、各国に共通する考え方が取りまとめられるなど、新しいタイプの商標の保護は国際的な趨勢となっている。

3つ目、これに対して、我が国の商標法は、商標の定義において「文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩の結合」と規定しており、動きや音等からなる新しいタイプの商標は保護の対象としていない。

このような国内外の状況を踏まえ、新しいタイプの商標についての制度整備に取り組むことが必要となっているとしております。

次に、新しいタイプの商標の類型として、国際的に保護されている新しいタイプの商標のうち主なものとして、幾つかのものを確認しております。資料2-2の2ページ目に具体的な例がありますが、動きの商標、ホログラムの商標、輪郭のない色彩の商標、位置商標、音の商標、香り・においの商標、触感の商標、味の商標、トレードドレス、こういったものについて新しいタイプの商標として検討対象にしているわけでございます。

次に2ページの下の方ですが、諸外国等における新しいタイプの商標の保護状況を整理しております。

まず①の欧州ですが、欧州では、商標の構成要素について、写実的に表現できる標識と規定しており、動き、ホログラム、輪郭のない色彩、位置、音等の商標が広く保護され得る規定となっております。

3ページですが、具体的な条文とか欧州司法裁判所の判断例等を載せております。

3ページの下の方で、②米国の例でございます。米国では、商標の構成要素について、言語、名称、シンボル若しくは図形又はその組み合わせと規定しており、動き、ホログラム、輪郭のない色彩、位置、香り・におい等の商標が極めて広く保護され得る規定となっております。

4ページには、その具体的な条文を載せております。

更に、韓国、台湾、中国ですが、韓国では、視認できるタイプの商標が保護され得る規定となっており、動き、ホログラム、色彩等が例示されております。また、台湾ですが、色彩と音について保護され得る規定となっております。更に、中国ですが、視認できるタイプの商標が保護され得る規定となっており、色彩の組み合わせ等が例示されている。こういった状況になっております。

以上が諸外国における保護の対象でございますが、次に(2)として諸外国における出願・登録件数でございます。2行目ですが、米国、欧州、英国、フランス、ドイツ、豪州において1994年から2006年の期間で約3,700件の新しいタイプの商標の出願があり、2,200件の登録があります。

1枚めくりますとその詳細が出ております。上段が出願の件数、中段が登録の件数になります。

次に5ページの下の方ですが、3.国際的な枠組みの状況を整理しております。TRIPS協定とか、1枚めくりまして、商標法条約、商標法に関するシンガポール条約、これらについて整理しております。

更に、7ページの(4)でございますが、SCTの状況について整理しております。ここは新しい動きがあったところでございます。各国における新しいタイプの商標の制度整備に資するため、SCTでは、2006年11月から新しいタイプの商標の特定方法について、WIPO加盟国の事例の中で共通する考え方を整理する作業が進められてきた。その結果、2008年12月に新しいタイプの商標のうち、立体商標、動き、ホログラム、輪郭のない色彩、位置、音、ジェスチャー――このジェスチャーというのは、脚注にも書いてございますが、「動きの商標又は図形商標として取扱うこととされた。」ということですが、これらの特定方法について、各国に共通する考え方が取りまとめられたということでございます。

次に、4.で新しいタイプの商標に対する保護のニーズを整理しております。

2枚めくっていただいて9ページに進ませていただきます。ここまでが検討の背景だったわけですが、次に検討に当たっての基本的な考え方を整理しております。新しいタイプの商標の保護の在り方を検討するに際しての、権利範囲の特定方法、識別力、類似の範囲に関する基本的な考え方を整理しております。

第1が権利範囲の特定方法ですが、商標権は、指定商品・役務又は類似の商品・役務において、他人による登録商標と同一又は類似の商標の使用を排除することができる強い権利である。したがって、新しいタイプの商標を保護するに当たっては、その権利範囲を明確に特定するため、①需要者等が商標の構成及び態様を明確かつ正確に認識することができるように特定できるか、②特許庁における商標の保存、公開等が技術上可能か、こういった点に留意する必要があるとしております。

下の方に行きまして、2つ目の基本的な考え方として、識別力でございます。現行では、出願された商標のうち識別力を有するものに限って商標登録が認められている。新しいタイプの商標についても、識別力を有するものに限って登録を認めることが適切と考えられる。また、使用により識別力を獲得したものについても登録を認めることが適切と考えられる。なお、新しいタイプの商標については、全体として第3条第2項(使用による識別力の獲得)に該当しない限り識別力が認められないものが多くなると予想される、としております。

1枚めくっていただいて、基本的な考え方の最後ですが、類似の範囲に関する基本的な考え方でございます。現行では、商標の類似の範囲について、商標の外観、観念、称呼等によって需要者等に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察することとされておりますが、新しいタイプの商標の類否判断については、上記の考え方を踏まえ、タイプごとの特性を考慮しつつ判断することが適切と考えられるとしております。また、離隔的観察、全体観察と要部観察等の手法も、タイプごとの特性を考慮しつつ用いることが適切と考えられる。

また、現行ではタイプが異なる商標同士の類否判断も行っていることから、新しいタイプの商標についても、同じようにタイプ横断的に類否判断することが適切と考えられる、としております。

以上が基本的な考え方でございます。1枚めくっていただきまして、11ページ以降が具体的な制度設計でございます。

まず商標法の保護対象に追加する商標のタイプでございます。

初めに、(1)各タイプの商標の権利範囲の特定可能性について整理しております。

新しいタイプの商標のうち、商標法による保護対象に追加する商標のタイプについては、基本的な考え方のところに書いてあるとおり、その権利範囲を明確に特定し得るものに限る必要がある、とした上で、以下タイプごとに特定可能性を検討しております。

結論としては、電子ファイルによる特定可能性も含めて検討した結果として、①動き、ホログラムの商標、②輪郭のない色彩の商標、③位置商標、④音の商標、これらについては権利範囲を特定することができるとしております。

1枚めくっていただきまして、⑤の香り・におい、触感、味の商標、⑥のトレードドレス、これらについては電子ファイルを使った場合であったとしても、権利範囲を明確に特定することが困難であるとされております。

次に国際的な状況として、(2)でSCTによる取りまとめに言及しております。これは先ほど御説明した取りまとめの繰り返しですので省略しますが、結論から言えば、「具体的には」というところですが、動き、ホログラム、輪郭のない色彩、位置、音については特定方法を取りまとめられたけれども、それ以外は、取りまとめられなかったということでございます。

以上を踏まえて、対応の方向ですけれども、3行目のところですが、動き、ホログラム、輪郭のない色彩、位置、音、これらを新たに商標法の保護対象に追加することが適切であるというふうにしております。

以上が、保護対象に追加する商標のタイプについてでございます。

1枚めくっていただいて13ページ、2.商標の定義の見直しについてでございます。初めに現行制度の概要について(1)で確認した後に、(2)で対応の方向について整理しております。

新しいタイプの商標を商標法の保護対象に追加する場合、商標の権利範囲を明確に特定できるタイプの商標に限定するため、標章の構成要素を特定する必要があるとしております。

なお、標章の構成要素を特定せずに包括的に規定するという考え方もあるわけですが、包括的に規定することとした場合、香り・におい等のように商標の権利範囲の特定が困難なものが条文上広く含まれてしまうことになりますので、出願人等にとって商標制度への予見性が低下するおそれがあるとしております。

したがって、新しいタイプの商標のうち、商標の権利範囲を明確に特定することができると考えられる動き、ホログラム、輪郭のない色彩、位置、音について、以下の考え方を踏まえて商標の定義を見直す必要があるとしております。

以下、タイプごとに整理しております。①動き、ホログラムの商標については、現行の「標章」の形状等が変化するものであることを踏まえて、例えば「標章」の定義に標章の形状等が変化するものが含まれることを条文上明確化することが適切とされております。

②の輪郭のない色彩、音の商標ですが、これらについては、現行の「標章」の定義に含まれていないため、これらを「標章」の定義に含めることが適切であるとされております。

1枚めくっていただきまして、③位置商標でございます。位置商標については、商品等に付す図形や色彩等は現行の「標章」の概念に含まれているため、現行の商標の定義規定が適用されることとなると考えられる。ただ、位置については、標章とは別の概念であって、しかし標章と相まって商標の権利範囲を特定するものとして扱うことが適切であるとされております。

以上が、定義に関するタイプごとの検討でございます。

このほか、ここでは一商標一出願の取扱いとか、商標登録表示、虚偽表示とか、不競法における商標・標章の取扱い等について整理しております。

そして、14ページの一番下の⑦ですが、商標の定義に識別性の要件を追加することについて整理しております。

現行の制度においては、識別性を第3条の商標の登録要件として定めており、第2条の商標の定義の要件とはしていない。したがって、これに対して社会通念上の商標の意味に合わせるために識別性の要件を商標の定義に追加すべきではないかとの指摘をいただいているところでございます。

しかし、商標の定義規定に識別性の要件を追加することとした場合、現行の商標についてこれまで積み重ねられてきた「商標としての使用」に関する裁判例との齟齬が生じないよう担保する必要があるほか、商標の使用の定義の在り方とも整合性を確保する必要等がある。したがって、商標の定義規定に識別性の要件を追加することについては、新しいタイプの商標の導入状況も踏まえつつ、商標法全体の問題として、慎重な検討が必要であると考えられる、とされております。

以上が、商標の定義の見直しについてでございます。

次に、3.商標の使用の定義の見直しについてでございます。

初めに現行制度の概要について確認しております。ここは商標が視覚的に認識できることを念頭に規定されていることを確認しております。

これを踏まえて、15ページの下の方、(2)の対応の方法でございます。新しいタイプの商標を保護対象に追加する場合は、次のページになりますが、③の音の商標について、規定の整備が必要であるとされております。具体的には、現行の「標章を付する」という使用の定義規定では音の商標の使用に対応できないということで、ここの手当てが必要ということでございます。

以上が、商標の使用の定義の見直しについてでございます。

次に、4.商標の登録要件の見直しでございます。

(1)現行制度の概要について確認した後、次の17ページに進みまして、(2)の対応の方向でございます。新しいタイプの商標についても、識別力がないものや、公益上の理由等から独占が適当でないものは登録を認めないようにする必要がある。また、識別力のないものであっても、使用された結果、識別力が認められるに至ったものについては、その登録が認められるようにする必要がある、としております。

具体的には、①識別性の要件ですが、輪郭のない色彩の商標について、本来、色彩は商品等の美観を高めるためなどに使用されるものであり、輪郭のない色彩の商標を指定商品・役務において普通に用いられる方法で使用する場合には識別力がないと考えられる。このため、識別力の要件に関する第3条の規定を整備することが適切と考えられるとしております。

なお、輪郭のない色彩については、複数の色彩を組み合わせたものもありますし、単一の色彩によるものもございます。このうち、特に単一の色彩によるものについては、第3条第2項(使用による識別力の獲得)に該当しない限り識別力が認められないものが多くなると予想される、とされております。

次に位置商標でございますが、標章がそれ自体では識別力を発揮しない場合であっても、当該標章を商品等の特定の位置に付すことで識別力を獲得する場合があるというのが位置商標の考え方でございますが、この観点から、識別力の要件に関する第3条の規定を整備する必要があるとしております。

また、これは第3条第2項関係でございますが、識別力のない標章であって、位置によっても識別力が認められない場合においても、商品等の特定の位置に使用をされた結果識別力が認められるものについては、登録が認められるようあわせて規定を整備することが適切と考えられるとされております。

更に、音の商標については、当該商品・役務から普通に生ずる音響は、識別力がないという形で第3条の規定を整備することが適切とされております。

また、公益的な音、例えば緊急用のサイレンや国歌については、独占を許すことは適当ではない。

③の機能性ですが、現行の立体商標の規定と同じように、新しいタイプの商標のうち、商品等の機能を確保するために不可欠なもののみからなる商標は、登録を認めないという形で規定を整備することが必要であるとされております。

以上が登録要件の見直しでございます。

次が、5.権利範囲の特定方法の見直しでございます。

現行制度の概要の後、1枚めくっていただいて19ページ、(2)対応の方向を整理しております。まず出願時における商標の権利範囲の特定方法ですが、権利範囲を明確に特定し、第三者や特許庁が当該商標の構成及び態様を明確かつ正確に認識する必要がある。こういった問題意識から、1ページめくっていただきまして、20ページの上の表のような形で特定することが適切だとされております。

具体的には、動き、ホログラムについては、商標見本と説明文で特定するか、もしくは電子ファイル、これは動画ですが、これで特定するということでございます。なお、ホログラムの電子ファイルとは、下の方に書いてありますが、ホログラムを傾けた際の実際の見え方を記録した電子ファイルを想定しているということでございます。

更に、輪郭のない色彩については、商標見本と説明文。

位置商標については、商標見本と位置に関する事項で特定するとしております。この位置に関する事項でございますが、21ページの(c)位置商標の2つ目のパラグラフですが、位置商標に関する商標見本及び位置に関する事項の記載としては、願書に特定の位置に付す図形等の標章を記載し、当該標章が付される商品等の形態を破線で示すとともに、位置について文章で補足し位置を特定することで、権利範囲を明確に特定することが適切とされております。

20ページに戻りまして、音でございますが、これは電子ファイルで特定する。これは音声ファイルのことを念頭に置いております。

この表のすぐ下のところに書いていますが、電子ファイルによって特定した場合には、第三者による商標の確認とか先行調査の負担軽減等の観点から、電子ファイルの内容の要約を提出することをあわせて書いておりまして、ホログラムとか動きの場合には、この要約は静止画像、音の場合には楽譜とか説明文を書いていただくということがここで書かれております。

更に進みまして21ページでございます。②電子ファイルに関する時間的制限等でございます。電子ファイルが長時間にわたるものとか、極めて多数の図によって特定されるものについては、第三者による先行調査負担が大きくなりますし、特許庁の審査にも時間がかかるということで時間的制限や枚数制限を設けることが適切であるとされております。

以下、少々細かくなりますので説明を省略させていただきまして、23ページに進ませていただきます。23ページの6.で商標の類似の範囲、他の権利との調整について整理しております。

現行制度の概要の後に、24ページで対応の方向ですが、①の商標の類似の範囲でございます。類似する商標ということで、3行目の後段でございますが、現行制度と同様、新しいタイプの商標も含めタイプ横断的に商標の類否を判断することが適切としております。

更に具体的な論点として、(i)文字商標の音声的使用ですが、3行目の最後からですが、商標の定義に音を含める場合、これまで可能であった上記の音声的使用が音タイプの商標の使用となり、商標権の侵害に当たることとなる。このため、既に使用されている音声的使用に限り、継続的使用権を認めるよう法律上の手当てが適切であるとされております。

(ii)位置商標の類似については、商標の類否判断を行う際、位置の要素も含めて類否判断を行うよう規定を整備することが必要だとされております。

このほか、25ページですが、侵害とみなす行為、色彩のみが異なる商標、商標権の効力の制限、こういった点について所要の手当てが必要と整理しております。

また、25ページの一番最後ですが、特許権、実用新案権等の調整ですが、これについてはこれまでと同様に、その抵触する部分について当該登録商標の使用を制限することが適切であるという整理をしております。

最後に26ページでございますが、その他として、新しいタイプの商標を保護対象に追加する場合、制度の利便性の向上や円滑な導入を図る観点から、マドリッド協定の議定書に基づく特例等の扱いや経過措置を導入するに当たっての留意事項、こういったものについて整理しております。

長くなりましたが、以上でございます。

土肥委員長

ありがとうございました。

それでは、御質問、御意見を賜りますけれども、ただいまの御説明があった報告書でございますが、これは私が座長としてこの取りまとめに加わった経緯もございますので、一言述べさせていただきたいと存じます。

御説明のとおり、本報告書は、新しいタイプの商標に関する検討ワーキンググループにおける合計5回にわたる審議を経て取りまとめられました。内容については、冒頭ございましたように、諸外国の制度整備の進展及び近年、動きや音等からなる新しいタイプの商標が用いられるようになっていることなどを踏まえまして、我が国の商標法において、これら新しいタイプの商標を導入する際の制度の基本的な方向性について取りまとめたものでございます。

これは当然ながら、今後更に制度の詳細について検討してまいる必要がございます。したがいまして、これから1年程度の間、本小委員会においてさまざまな議論をちょうだいする中で、この新しいタイプの商標についても、次回以降皆様に改めて御議論をちょうだいしたいと考えております。そういう意味で、皆様の御意見をちょうだいするのはこれから1年程度の間、十分ございますけれども、本日、現時点において特段御質問、御意見がございましたならば、お願いしたいと存じます。

どうぞ小山委員。

小山委員

日本知的財産協会の小山です。

この報告書を見させていただきましたけれども、これは引用の資料ですので、このワーキンググループとは直接関係ないかと思いますが、引用という形で書かれているので、1点確認させていただきたいと思います。

5ページ、7ページで、知的財産研究所の方で調査された報告書の内容が引用されております。5ページでは、諸外国6の国・エリアで過去12年間、この新しいタイプが出願されたものの件数、登録されたものの件数と書かれております。先ほど御説明の方で、12年間この6エリアで、約3,000強の出願があったという御説明があったと思います。

私どもユーザーとしては、必ずしもこういった登録に対するニーズが高いとは理解しておりませんが、この資料を見ても、12年間かけてわずか3,000件の出願しかない。国ごとに割るとわずか600件、それを12年間で割ると極めて少ない数ということで、私どもユーザーとしては、今までの導入された諸外国の制度を見ても、それほど多くないというデータが引用されております。

あと7ページにおいて、これは報告書に書く際にもう少しわかりやすく書いていただきたいのですが、下の黒枠で囲ってあるもの、新しいタイプの商標のうちいずれかを国内で事実上使用している企業の割合は、アンケート結果「60%」、権利化を希望する企業は「82%」と書いてあります。極めて明確に書かれていますが、私どもユーザーとしては、この報告書が発行されてひとり歩きされてしまうと困ります。私どもユーザーの立場としては、それほど高いニーズがあるとは思っておりません。

よくよく見ますと下の方で、知的財産研究所で調べた結果、3,100の企業に対してアンケートを送ったが、回答を得られたのは500社。その500社に対するこの結果というふうに理解してよろしいでしょうか。この結果ですと、極めて3,100社のうちの、アンケートですから全件回答があるとは思いませんが、60%、82%のユーザーが希望しているかのように誤解を与えるといけないと思いますので、もし引用される場合はもう少し明確に、何の何%なのかということを明記していただきたいと思います。

土肥委員長

小山委員の御意見、御要望、ここでは承りたいと存じます。おっしゃっておられるように1年間の検討調査してまいりましたときに、知的財産研究所の方で独自に調査機関を使って調べたものが5ページのデータでございまして、私が直接やったものではないものですから、これを多いと見るか小さいと見るかについては、小山委員のいろいろな御意見もあると思います。この中では淡々と事実をそのまま出しておりますので、多いとも評価しておりませんし、少ないとも評価していません。

それから、7ページの方についてはおっしゃるとおりでございまして、11の脚注にまさにおっしゃったことを示しておりますが、これ以上に例えば何か御要望等が、つまりこの調査結果に基づいて60%、82%については、このようなアンケートの結果があった。これもそのまま出しておるわけでございますが、これについて何かもう少し工夫したらどうかということでしょうか。

小山委員

これは私ども1年間小委員会でタッチしていないで、ワーキンググループの報告書ということになっております。ここの引用は、具体的にワーキングの中で、このユーザーのニーズ等が具体的に書かれていればわかりますが、ほかのニーズ等は特に書かれないで、この知的財産研究所のやられた過去の統計データのみが書かれておりますので、これを読まれた皆さんが、あたかもこんなにユーザーの希望があるかのような誤解を与えてしまうのかなというところで、本来的にはこの報告書の中で、他の機関がやった、あるいはもし御議論されていないのでしたら、ここにこういうふうに書かれると何か誤解を与えるのではないかと理解しております。

土肥委員長

ありがとうございました。

年度は少し失念しておりますが、2007年以前に知的財産研究所で調査したことがあります。そのときは非常に少ない、同じような調査なんですけれども、数値だったんです。それに比べると2007年の知的財産研究所のこの調査では、数値が非常に大きな数字として上がってきている、そういう印象を私は持ちました。

小山委員の御意見について、工夫をするといってもここのところが難しいのですけれども、我々としてはワーキンググループのときの取りまとめとして、こういう形でワーキンググループにおける報告書の中で、知的財産研究所において行った1つ貴重な実際の調査がございましたので、その比較対象という意味で出しているものでございます。

竹田委員。

竹田委員

まずワーキンググループにおきまして、長時間にわたって議論されて、方向性のはっきりした報告書をつくっていただいたことに感謝申し上げます。

ただいま御指摘があったような点はあるいはあろうかと思いますけれども、ワーキンググループの報告書としてはでき上がっているものですから、これから我々がこの問題について議論するときに、そういうことも1つ頭に置いて考えていくことだろうと思います。各論的なことはこれから何回にもわたって議論されるでしょうからさて置きまして、総論的なことで一言だけ申し上げますと、私は知的財産研究所の調査研究委員会からこの新しい商標の問題にかかわりましたが、いろいろなアンケートを通じても、この新しい商標を是非ともという要望がかなり強いということはないという点は、私も小山委員と同じような認識を持っていました。

それから、現にこの報告書の4ページの欧米等における実績を見ても、商標制度の改正で出ました地域団体商標等のニーズ等と比べても、それほど現段階では高いということはないのではないか。

しかしながら、まず冒頭にも書かれているように、新しいタイプの商標を商標制度に取り組んでいくことは、1つの国際的な趨勢であるという意味では、国際的ハーモナイゼーションを考えていかなければならないと思います。何分成文法というものは非常に固定して動かしがたいものですから、ある程度先を見通して議論していかないと、常に制度改正が社会の時代の動きを後追いすると。私も十数年制度改正にかかわってきましたが、つくづくそれを感じております。新しい商標については先ほど審議室長からも御指摘になったように、いろいろな問題点もあろうかと思いますし、私自身も考えなければならないと思っているところはたくさんあります。そういう意味では前向きに取り組んでいく価値のある問題だと思いますので、各委員からも是非忌憚のない意見を交換して、よりよい新しい商標制度をつくるようにこの委員会で検討していけたらと思っておりますので、冒頭に一言だけ。

土肥委員長

どうもありがとうございました。ほかに。苗村委員どうぞ。

苗村委員

本日は、この席にお招きいただきましてありがとうございます。詳細については、これから1年ぐらいかけて順次、御検討いただけるということで理解しますが、当協会には商標委員会というのがありまして、その中でも話題に出たことを先に御紹介させていただきたいと思います。

新しい商標といいましても、真に自他商品識別機能を有するような新しい商標のみを、できるだけそのような方向で登録するような制度設計をしていただきたいと思います。例えば世の中で、音に関してはサウンドロゴと呼ばれているものの一部とか、映画会社が流すような冒頭のオープニングの動画とか、そういったものはもしかすると自他商品識別標識として消費者等にも認識されているケースもあろうかと思います。

例えば色でしたら、コーポレートカラーといっても実は色だけではなくて、色が付されている文字とか図形を混然一体として自他商品識別機能を果たしているのであって、その中から色のみを取り出して、なお自他商品識別機能を果たしているケースは、実はそれほど多くないのではないかということです。音にしても、企業が日常流すような、数カ月とか1~2年で終了するようなコマーシャルソングが、果たして商標的なものとして世の中から見られているのだろうかという疑問もあります。

それから、商品等の使用時に発生する音、例えば携帯電話の音、パソコンの起動時の音、そういったものが果たしてこれまた実際、自他商品識別機能たるものとして一般消費者に認識されているのか、その辺も疑問があるところがありまして、そういったところも含めてこれから議論を積み重ねていただければと思います。そこがあいまいになっていると企業側から見ると、何でもそういう動きとか音が商標になるのではないかというちょっとした脅威感を持ってしまって、萎縮効果というものを発生して、そういうコマーシャルをやる場合でも、何でも事前に調査が必要なのかとかそういったことから、ややもすると事業の遅れにつながりかねないことがございます。

本当にあるかどうかは、これまで3,000件ぐらいしか世界でも出願されていないことから、それほどの影響はもしかしたらないかもしれませんが、そのような懸念も多少はあろうかと思います。そのようなことから、本当に実際に商標として認知されているものを厳選して登録するような制度設計をお願いしたく、これから法第3条とか第4条第1項第18号とかの検討をお願いしたいと思います。

更に権利化後の話ですが、どういうものが商標権侵害になるか、どういったものが商標的な使用になるのか、この辺も何せ全く新しいカテゴリーの商標ですので、このあたりも裁判の結果を待つというふうにするとかなり不安もあります。もちろん最終的にはそうかと思いますが、ある程度こんな感じで考えられるのではないかというところを、これからも検討いただければ幸いに存じます。

ちょっと長くなってしまいましたが、以上です。

土肥委員長

ありがとうございました。

苗村委員が御指摘いただいたところは、例えば識別力があった上でも、なおそういった一定の新しいタイプの商標について、商標登録を認めるべきではないのではないかという音の問題、色彩の問題をおっしゃっていただいたと思います。ワーキンググループのこの報告書でも、機能性商標という観点でそういった御指摘は一端としては織り込んでおりますので、今後の議論の経過の中で更に貴重な御意見を賜ればと思っております。ありがとうございます。

ほかに。松尾委員お願いします。

松尾委員

今、苗村委員が自他商品識別力ということを言われましたので、それに誘発されてその辺について発言したいと思います。

私は確かに利用度がそれ程高いわけではありませんけれども、世界的な動きを見まして、この新しいタイプの商標を採用することには賛成したいと思います。ところで、いろいろとほかの国の例が、先ほどから御指摘のあるように4ページ、5ページに書いてあります。また、3ページのところに欧州共同体商標理事会規則というのがあります。このただし書きになりますが、今言われた自他商品、あるいは自他サービスの識別ができる標章ということが書いてあります。私は念のために、5ページあたりに挙がっている国についてももう一度法律を確認しましたけれども、まずすべて、ほかの商品あるいは役務と識別できるものというのが商標の定義に入っています。

それにもかかわらず、なぜ日本でほかの国のことを見ながら、この商標の定義について規定しようとしないのかというのが、私はどうしても理解できないでおります。そのことが14ページに、商標の定義に識別性の要件を追加することについてとあり、したがって、検討はしましたということです。私は商標の定義だけにこだわらないで、いろいろな解決の方法、法律のつくり方があると思っております。定義に入れることだけを一辺倒に考えているわけではありません。

ただし、ここで気になりますのは、14ページの下から3行目の「しかし」以下のところです。初めの段落のところにあります、「裁判例との齟齬を生じないよう担保する必要がある」とする点ですが、判例で言われていたのは、立法技術上の商標と社会通念上の商標とは違っているということであり、初めにポパイ判決などで言われたことだったんですね。その後ずっとどういうふうに判例が動いてきたかというと、ここには「商標としての使用」に関する裁判例ということを書いてありますが、これだけではなくて、今のような「社会的意味の商標」とか、それから「商標の機能」は何かということが大体議論されているのです。このようなところを検討する必要があります。

それから、識別力に関する商標法の中の第3条、第4条、さらに第26条というような規定も1つの足かがりとして、自他商品サービスの識別力がないものは商標ではないとか、それ以外の目的で使ってもそれは商標権の侵害にならないという議論がされてきたわけです。

ここでそういう積み重ねがいろいろある、現在もそうなのですけれども、「裁判例との齟齬が生じないよう担保する必要がある」ということは、そのとおりですが、現実に何を考えてこれは書かれているのか。これからの議論に是非こういうところも十分検討していただきたいと思います。

15ページにありますように私は慎重な検討が当然必要だと思います。慎重に検討して、どこに問題があるかを見ていく必要があろうかと思います。この議論というのは、先ほどの音の例でも挙げられましたが、結局商標とは何か、どうやって商標というものをとらえるかという問題につながりますし、またこの報告書の中には第3条に関する識別力のことがいろいろと書かれています。この第3条の中に今の第4条第1項第18号にある機能性論も入っていますが、そういうものをただ並べるのではなく、やはり理論的に整理する必要があると思います。

この第3条を整理すると、当然商標権の効力について(25ページであっさりと「商標権の効力の制限」というふうに書かれていますが)、第26条あたりをどういうふうに見るかにつながってくると思います。そういうわけで、是非これからの検討の中で細かく具体的に慎重にこういう問題を見ていくように、そういう検討上の組み合わせをつくっていただきたいと思います。

以上です。

土肥委員長

松尾委員おっしゃっておられる商標の定義の問題でございますが、ワーキンググループは新しいタイプの商標のところにフォーカスを当てて検討しました。委員おっしゃるところの定義の問題は商標全体にかかわる問題ですので、ここでというか、ワーキンググループの後の小委員会で議論すべきではないかというのが基本的なスタンスだったのです。したがいまして、今後の議論において是非とも松尾委員、この点についての御意見を賜ればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

済みません、今4時でございますので、もしよろしければ、恐らくまだこの点について議論も尽きないのではないかと思いますが、本日、委員の先生方からちょうだいしました御意見を踏まえまして、更に制度の詳細について本小委員会において議論を尽くしていきたいと思っております。その際には委員の皆様から、更に忌憚のない御意見をちょうだいしたいと思います。本日、御指摘いただいたところについては今後の議論に反映させていただきますとともに、最終的にはこのたたき台を踏まえて、本小委員会の報告書の一部として取りまとめていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

それでは、次の議題に入らせていただいてよろしゅうございますか。

つまりこのワーキンググループ報告書の取扱いについては、今後1年間議論していく、このワーキンググループの成果を踏まえて議論していくという方向性について御了解いただいたというふうに扱わせていただきたいと思います。

歴史上の人物名からなる商標登録出願の取扱いについて

土肥委員長

それでは、次の議題でございます「歴史上の人物名からなる商標登録出願の取扱いについて」、事務局から説明をお願いします。

今田商標審査基準室長

商標審査基準室長の今田と申します。どうぞよろしくお願いします。

お手元の資料3に関して説明させていただきます。この資料3に係る項目自体、歴史上の人物名からなる商標登録出願の取扱いについてでございますが、この歴史上の人物名に関する取扱いについては、前回第19回の小委員会において一度御検討いただきまして、その取扱い案をパブリックコメントにかけてさせていただいております。これに関し団体及び個人の方からさまざまな意見をいただきました。その意見の内容も、この提示した歴史上の人物名に関する取扱いに関して賛成するという意見、あるいは歴史上の人物名自体もともと登録すべきではないとする意見、提示の案には反対であるという意見、あるいは第4条第1項第7号の適用は慎重にすべきというように、さまざまな意見をいただいております。

2ページ目の下の枠になりますが、これがパブリックコメントに提示した取扱いに関する骨子(案)でございまして、実際にパブリックコメントにかけた内容は、お配りした資料7の後ろに参考資料として付けさせていただいておりますが、その参考資料1が、昨年パブリックコメントにかけさせていただいた内容となっております。

このパブリックコメントで提出された意見及びその意見に関する考え方については、資料3-2の表にまとめております。その意見について簡単に御紹介させていただきますと、先ほど申しましたようにさまざまな意見をいただいております。そして、その意見の理由のところを見ますと、歴史上の人物名自体公益財産であってこれを一私人が登録することは許されるべきではないとするもの、あるいは登録された場合には、ゆかりの地などにおける地域産業等に悪影響を及ぼすという理由に基づく意見、また遺族との関係についても、取引上問題がなければ、遺族の承諾があれば登録を許してもいいのではないかという意見もございました。歴史上の人物名は既に公共財ということで、遺族との関係は考慮する必要はないのではないかという意見もそれぞれ出されておりました。

また、反対、慎重にすべきとの意見の理由についても、第4条第1項第7号を適用するのは公益を害する場合に限られるものであるという理由であるとか、第4条第1項第7号の適用ではなく他の規定の適用や新たな規定の検討が必要ではないかとか、それぞれの理由に基づいて意見をいただいております。

そこで、これらさまざまな意見ではありますが、これについて検討させていただきまして、更に近時の判決等も参考とさせていただきまして、今回改めて歴史上の人物名の商標登録出願の具体的な取扱いをまとめるために、今度は形式としては商標審査便覧(案)という形でまとめさせていただいております。

資料3-3がお手元にあるかと思いますが、これが商標審査便覧(案)としてまとめた資料でございます。1ページ目に四角い枠で提示している部分がその取扱いの骨子部分になっておりまして、その中でまず1.として、もともと第4条第1項第7号、公序良俗の規定の基準として既に公開させていただいております。構成自体がそうでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するような場合も含まれるものがありまして、この基準に相当する場合を前提につくっております。

その歴史上の人物名について、このような場合に当たるかどうかということを判断するに当たっては、ここで(1)から(6)という具体的な各項目について総合的に勘案して判断するべきということで示しております。

また2.としては、これらの各項目を勘案したときに、判決を参考にした場合、その歴史上の人物名を使用した公益的な施策に便乗して、その遂行を阻害し、公共的利益を損なう結果に至ることを知りながら、利益の独占を図る意図をもってしたというふうに判断されるものであれば、まさに第7号に該当するものとして取り扱うという形で、この枠内、骨子内容をまとめさせていただいております。

この取扱いは、すべてが初めから第7号の適用が優先というものではなく、他の規定が適用できるのであれば、当然その規定を適用すべきであると考えておりますし、この取扱いはあくまでも、他の規定によっては適用が困難な場合の取扱いである。そして対象となる歴史上の人物名についても、どういったものがこの対象になるのか。更に先ほどの(1)から(6)の勘案する各項目について、どのような意味の情報として重要であるか等を、この便覧(案)の中で説明として審査の状況、近時の判決等の動向、それから具体的な運用方針という形で具体的に審査に取り入れて運用できるようにということで、審査便覧(案)という形でまとめさせていただいております。

簡単でありますが、資料3については説明を以上とさせていただきます。よろしくお願いいたします。

土肥委員長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの説明につきまして、御質問、御意見等がございましたらお願いいたします。

これは特によろしゅうございますか。

それでは、本議題「歴史上の人物名からなる商標登録出願の取扱いについて」の方向性は、ただいま説明がございましたように資料3-3にあるような取扱いとする、この方向性について御了解いただいたと考えてよろしゅうございますか。

それでは、御了解いただいたことにさせていただきたいと存じます。

「類似商品・役務審査基準」の見直しについて

土肥委員長

それでは、次の議題でございます「類似商品・役務審査基準」の見直しについて、これも事務局から説明をお願いいたします。

今田商標審査基準室長

続きまして、資料4について説明させていただきたいと思います。「類似商品・役務審査基準」の見直しについてということでございまして、これも先ほどと同様に、前回第19回の小委員会において見直しの全体のスケジュールについて御承認いただき、昨年度、この見直しを行った場合に生ずることが予想されるいろいろな問題について、どのような方向で対応すべきかということの調査研究をさせていただいております。

現状としては、この調査研究の結果を参考にこれまで各方面からいただいた意見をもとに、具体的な改正案について現在検討させていただいている状況であります。なお、この見直しの作業については、類似関係を決めるだけではなく、これまでの登録されている多くの既登録の商標を審査の中で検索が可能になるようにということで、データの整備等も必要であるということがあります。この作業も今後相当の期間が必要であろうと現在考えております。

そこで今回、今後の進め方でございますが、今般の委員会においては、見直しに係る基本的な方向性について御審議いただき、その方向性に沿った具体的改正案をパブリックコメントにかけさせていただいて類似関係を決定させていただきたいと考えております。そして、今後必要な作業に取り組んでまいりたいと考えております。

資料4-1の下の方に(1)から(3)で基本的な方針を提示させていただいております。まず(1)ですが、いわゆる「他類間類似」と言っておりますが、類の分け方と類似の考え方が国際的な分類を採用している現在では必ずしも一致するものではありませんので、複数の類にまたがった類似関係が現実に存在しております。このため、場合によっては異なる業種の第三者が、他の類で広めに指定した場合など、メインとなる類でその影響を受けて、そこを中心とする出願人が登録できないという状況も中にはございます。

そこで、複数の類に及ぶ類似関係については、特に取引の現状において関連性が大きいとは言いがたいようなものがあった場合には、メインとなる類でその登録を受けやすくなるという方法も考え、そういう他類にわたるような類似間での関係を縮小する方向で見直すこととしております。

次に(2)ですが、これはいわゆる「けり合い」と申しておりますが、それまで類似しないものとして審査では扱っていたものが、それぞれに他人が同じような商標を登録している場合がございます。それを見直しによって類似の商品として審査した場合に、後から例えばマイナーチェンジ的に変更を加えた商標を登録しようとしても、類似の商品とされたものに登録されている他人の商標と類似と判断される場合には、今後登録できなくなる事態が生じることとなります。このような状況が多く生じると、企業のブランド展開というか、ブランド戦略に支障が生ずると考えられますので、まさに類似の関係とすべきものまで否定することはできませんけれども、このようにいわゆる「けり合い」となるような見直しについては、必要最小限にとどめる方向で行うこととしたいというのが(2)でございます。

次に(3)ですが、これは見直し後の類似基準の導入方法についてでございます。資料4-2の6ページを御覧いただきたいと思います。導入方法としては、一定の出願日を基準として新たな類似基準を適用する出願日を基準とするもの、あるいは査定日を境として適用する査定日を基準とするということが考えられます。ただ、それぞれのメリット、デメリット等を考えた場合、公開されている類似基準の存在価値とでもいいましょうか、ユーザーにとって出願前から、自分の出願がこの類似関係から登録できるかどうかという予見性が確保されていることが類似基準のユーザーからの必要性に直結していると考えておりますところ、これを確保できるというのが出願日、出願人が選択できる出願の日を基準とすることが一番のメリットと考えられます。

これに対しまして、査定日を基準とした場合、査定日は出願人あるいは審査官も含めてその日を特定するといいますか、初めから予定することができませんので、出願時点では予期しなかった拒絶の理由が発生することもあるでしょうし、それにかかった拒絶の理由が査定時の基準に照らせば拒絶の理由に該当せず、必要のなかった減縮補正を行っていたということにもなりかねないという事態も考えられます。

これらの状況を考えた場合に、まずユーザー、出願人の予見可能性を確保することを重要視しまして、あとその類似基準がもともと法的強制力を持つものではなく推定するものだということを前提にしまして、まずは原則として出願日を、一定の出願の日を基準として新たな類似基準を適用できるように考えております。

ただし、もともと、この判断は査定時とすべきであるというものが本来であることから、出願日としては新たな類似基準の適用前の出願であったとしても、例えば出願人等から審査の過程で取引の事情について主張、立証された場合には、その実情も考慮した上で類否判断を行うものとしたいというのが、(3)の基本的な導入方法の方針になります。

以上の3点が、見直しの基本的な方向として御承認いただきたい事項でありまして、これらに関して承認いただけましたら、これからその方向に沿いまして、早々に具体的な類似関係の見直し案をまとめ、パブリックコメントを行い、その内容を決定した上で改正に向けて作業を進めてまいりたいと考えております。

簡単でありますが、以上が資料4に関する説明とさせていただきます。

土肥委員長

ありがとうございました。

それでは、ただいまの説明につきまして御質問、御意見等ございましたらお願いいたします。

松尾委員。

松尾委員

1つ疑問があります。それは、今後の進め方の(3)のところです。先ほどおっしゃった資料4-2の6ページでしたか、今の対応の方向性のところで、新類似基準ができてからは、原則として出願日を基準に適用しつつとありますね。場合によって証拠などが出たならば、取引実情を参考にしてとあります。商標法第4条第3項というのは、一定のもの以外は査定時というふうにみな理解していますね。だから、何か私はこの「原則として」というと、ちょっとこの条文の規定に違反しているなと感じます。それで、変わったということをよほどきちんとみんなに知らしめないと、我々はこの条文によって基準が違うなと思ったわけですから、混乱するのではないかと思います。しかもユーザーニーズというところを見ますと、本当に43.1%と42.9%で、ユーザーの方も圧倒的に何とかというのではなくて、ほぼ半々なんですね。そういうことを考えますと、「原則として」というのはちょっとひどいのではないかと思います。

以上です。

土肥委員長

今の点について何かありますか。

今田商標審査基準室長

原則としてということで、まさに第4条第1項第11号の適用自体、本来であれば査定日を基準とすべきということは当然考えております。ただ、類似基準自体が法的強制力を持つものではないということもあります。また、ユーザーからの利便性、この類似基準の必要性ということで考えた場合に、これから出願するに当たって、その出願の登録できるかどうかの予見可能性のところが非常に重要視されているのであろうというふうに、昨年度の調査研究の中でも類似商品、役務審査基準の必要性の項目についても調査させていただいておりますけれども、その点を重要視して新たな類似基準をスムーズに導入しようと考えた場合、やはり出願日、出願人が唯一日にちとして選択できる日にちを重要視した形でまずは取り入れ、そこに齟齬があれば当然、先ほどのただし書きの後にあります出願人等の主張、立証に基づいて、商品間の類似関係については総合的に勘案して審査を進めたいということで、そのただし書きの部分を含めて運用を導入したいと考えまして、今回このような資料とさせていただいております。

土肥委員長

どうぞ。

松尾委員

私、予見可能性が重要だということはわかりますが、結局はそんなに2年も3年も4年も査定までかかるわけではないですよね。ある程度の判断というのは業界の人が自分の責任においてやるべきで、余り甘やかす必要はないのではないかと思います。

土肥委員長

ほかに御意見ございますでしょうか。竹田委員。

竹田委員

私は松尾委員とはちょっと意見が違うのですが、審査基準は法律そのものではありませんけれども、やはり審査基準は、一定の審査官に対する事実上の拘束力は持つでしょうし、それに従って審査が行われているということになると、法の不遡及と同じように出願時を基準にする方が、審査基準の効力の発生時期の問題としては、一般的に適正ではないかと前々から思っているということ。そうでないと予測可能性の問題が、こういう基準や法規に準ずるようなものにおいては大事であって、そこのところを不公平なしに実施するには、審査の査定のときを基準にして、日にちが審査期間等によってぶれるよりは、出願日にぴしっと決めた方がいいのではないかと思います。

土肥委員長

ありがとうございます。

ほかに御意見ございますか。

松尾委員

法律をきちんと変更しておやりになることは、私は別に何とも言いません。ただ、いいかげんに法律は法律にしておいたまま、審査基準の方でいじっていくのは賛成できません。

土肥委員長

今回の方向性について3点あったと思いますが、他類間類似は縮小する方向で、それから、けり合いはできるだけ抑える形でというこの2点については、本委員会の委員の方々の御了解を得られたということでよろしゅうございますか。

問題は3点目なんですけれども、これは実際には3年先ということになるわけですね。

今田商標審査基準室長

平成24年の1月を今のところ考えております。

土肥委員長

要するに本日の段階で方向性として、どちらかを示してパブリックコメントにかけて、それでいったんユーザーの考え方を聞いてみるということも考えられますね。

今田商標審査基準室長

パブリックコメントの中におきましても、この点をちゃんと提示した上でやりたいと考えております。

土肥委員長

ですから、そこでユーザーの意見を見ることは可能になるわけですね。

松尾委員、そうすると一応この方向で出させていただいて、松尾委員のような御指摘の考え方の方が圧倒的に多いとこれは特許庁もさすがに考え直すのではないかと思いますが、一応この3点の方向性をもって進めさせていただいて、ユーザーの意見を特にこの1点については見ることにさせていただいてもよろしいですか。

では、そのようにさせていただきますので、そういうことで御了解いただいたということでよろしゅうございますね。

ありがとうございます。

審査基準等の視覚化・構造化の推進(ハイパーテキスト化)について[報告]

土肥委員長

それでは、次に「審査基準等の視覚化・構造化の推進(ハイパーテキスト化)について」、事務局から説明をお願いします。

今田商標審査基準室長

引き続きまして、資料5について説明させていただきます。

この審査基準の視覚化・構造化については、昨年第19回の小委員会で、審査基準についてわかりやすく、見やすくするようにという御意見をいただきまして、その後作業を進めていたものでございます。今般、本年8月に、これらの意見を踏まえた形で、特許庁ホームページ上でも審査基準の更新をすることができております。これに関する報告事項になります。具体的には資料5の下のところに、簡単に審査基準を中心に法令データ提供システム、あるいは商標審査便覧といったところとリンクし、更に審判決をまとめたものの一覧を目次的にした上で、その要約文に飛んで、それぞれを一元的に確認することができるという形で、今年8月に更新させていただきましたので、まだ御利用いただいたことのない方がいらっしゃった場合には、一度実際に御覧いただければと考えております。

以上、報告とさせていただきます。

土肥委員長

ありがとうございました。

既にこれは今年の8月にスタートしているということでございますので、御覧いただければと思います。これは報告ということで扱わせていただきます。御質問等ありましたらもちろん構いませんけれども、よろしゅうございますね。

早期審査・早期審理の運用の見通しについて[報告]

土肥委員長

それでは、次の「早期審査・早期審理の運用の見通しについて」、これも事務局から説明をお願いします。

林商標制度企画室長

商標制度企画室長の林でございます。よろしくお願いいたします。

早期審査・早期審理の運用の見直しでございますが、前回第19回の小委員会において御審議いただいて、その後パブリックコメントの手続を経て、本年の2月から既に実施させていただいております。具体的な内容について、一度前回のおさらいの意味で、別添2の横長の資料を見ていただいて、具体的な内容を説明させて頂きたいと思います。

従来より早期審査・早期審理の対象にしていた案件と申しますのは、対象の1と書いてございますが、出願商標を指定商品(指定役務)に既に使用している又は使用の準備を相当程度進めていて、かつ、権利化について緊急性を要するということで、例えば、第三者が似たような商標を既に使っているので警告を発したいとか、逆に第三者から商標の使用について警告を受けているとか、更には第三者からライセンスの申入れや何かを受けているといったような緊急性を要する状態、この双方が満たされている場合に、他の案件の順番より先に審査を始めるという形にさせていただいていました。ですが、対象の2ということで、対象1に加えて、出願商標を既に使用している商品・役務又は使用の準備を相当程度進めている商品・役務のみを指定している出願案件についても、早期審査・早期審理の対象にしたいというのが今般の見直しの内容でございました。

したがって、対象の1と違うところは、緊急性の要件の必要がない。そのかわり、使っている商品・役務なり、使用準備をしている商品・役務だけが指定されているような案件を対象とするということでございます。

これについてパブリックコメントを実施させていただいたところ、一番最初に戻りますが、5件ほど御意見をいただきました。その御意見の内容については、別添1の表にまとめさせていただいておりますが、5件とも基本的な方向性については、賛成だということで御意見をいただいております。

その他細かいところについて言うと、別添1の資料の2.以降に、例えば早期審査の対象を拡大することによって、全体の進捗が逆に遅くなったりということがないように、そういう影響や弊害等がないようにちゃんとチェックしなさいという御意見等をいただきました。

そういう状況にかんがみて、本年の2月から実施させていただいたという状況でございますが、2ページ目に2月以降の実施状況ということで、その推移を簡単に書かせていただいております。

まず早期審査の申出件数ですが、今年の1月から8月までの申出件数が726件となっておりまして、昨年の同時期に比べると3倍強になっている状況にございます。その中でも、2月に早期審査の見直しを実施した後をみますと、2月以降の申し出のうち、6割が新しく追加した案件だということで、見直した結果、ユーザーの方に広く御利用いただいているのではないかというふうに考えているところです。

ちなみに先ほどのパブコメの意見の中で、全体の進捗が遅れないのかという御指摘もいただいたと申し上げたのですが、基本的には早期審査については、冒頭の商標行政の最近の動向の中にも出てきましたが、実施庁目標としては今年度3.5カ月という目標を掲げさせていただいておりますが、最新では平均1.4月ぐらいで処理を進めさせていただいているということで、今のところ全体を遅くするような影響等も含めて、弊害が出ない形で実施させていただいているのではないかと考えております。

以上でございます。

土肥委員長

ありがとうございました。

ただいまの御説明につきまして、何か御質問等ございましたら。非常にうまくいっている施策のようでございますので、是非御利用いただければと思います。

これはよろしゅうございますか。

ありがとうございました。

今後の検討課題について

土肥委員長

それでは、最後になると思いますけれども、「今後の検討課題について」、事務局から説明をお願いいたします。

鎌田審議室長

御説明いたします。資料7「今後の検討課題について」という資料がございます。前回の小委員会において、今後検討すべき課題とされたものがこの資料7に書かれているものでございます。次回以降順次御議論いただくことをお願いしたいと思っております。

ちなみに、参考資料2として「商標制度の見直しに係る検討課題について」という資料を配布させていただいております。これが前回の小委員会において配布された資料でございまして、資料7はこれを形式的に抜粋させていただいたものでございます。

以下、順に項目について確認させていただきます。

まず初めに、新しいタイプの商標の導入です。これは先ほどワーキンググループの報告書を御説明させていただきましたけれども、それをベースとしまして、更に小委員会において御議論いただければと考えております。松尾委員の方から先ほど御指摘がございましたが、商標の定義については、報告書の中では新商標に限られる論点ではないということで書かれたわけですが、この点を新商標に限らない広がりのある論点として、小委員会では御議論いただければと考えております。更に苗村委員から御指摘がございましたように、具体的にどういうものを認めていくのかというところについても、小委員会で更に踏み込んで御議論いただくことを考えている次第でございます。

2つ目が、著名商標の保護のあり方でございます。これは2つのことが書かれていますが、1つは混同を生ずるおそれのある非類似の商品・役務まで禁止的効力を拡大するかどうかという点。もう1つは、混同の有無に関係なく著名商標が希釈化される場合に禁止的効力を認めるかどうかという点について、主に不競法との関係が非常に大きな論点になると思いますが、こういった論点です。日本の現行の防護標章制度の見直しが必要かどうかという点とあわせて御議論いただければと考えております。

3つ目が、登録後に普通名称となった商標の取消制度等の創設でございます。登録後に事後的に普通名称として需要者に認識されるようになった登録商標について、効力制限については既に日本の商標法でも手当てされているわけでございますが、取消制度については、海外ではそういった制度が比較的あるようでございますが、我が国においてどう考えるのかという論点について御議論いただくことを考えております。

4つ目が、国内外の周知な地名の不登録事由への追加でございます。本来的に出所表示機能が弱い地名が商標として登録されることを排除するため、不登録事由として追加することについて御議論いただきたいということでございます。

5つ目が、登録異議申立制度の見直しでございます。これについては、平成15年の法改正によって、特許制度の場合は異議申立制度を無効審判制度に吸収統合したという経緯があるわけです。当時、商標法については、特許法の運用状況を把握した上で引き続き検討することになっていたわけですが、この点について、商標制度における両制度の役割分担・機能を整理し、両制度の統合整理、無効審判制度の請求人適格拡大等についてどうするかを御議論いただくという点でございます。

最後が、6.商標権消滅後1年間の他人の商標登録排除規定の見直しでございます。商標の場合は需要者保護の視点もございますので、先行する既登録商標の商標権が消滅した場合でも、その権利消滅後1年間は、後願商標の審査を待たなければならない規定が今あるわけですが、これについてどう考えるかという点でございます。

以上の点については、前回の小委員会において、今後検討する課題として委員の皆様に御了解いただいているところでございます。今日は非常に議題が多うございましたので、次回以降順次御議論をお願いしたいと考えております。

以上でございます。

土肥委員長

ありがとうございました。

ただいまの説明にございましたように、これらの論点については次回以降の本委員会において順次議論していきたいと思っております。新しいタイプの商標に加えて、こうした論点を審議していくのはかなり大変でありまして、ボリュームも相当ありますが、次回以降の検討に先立ちまして、本日の段階で特段の御意見、御質問等ございましたら、お出しいただければと考えます。どうぞ御遠慮なく。

小山委員。

小山委員

新しいタイプの商標の導入について、ユーザー側から1点意見を申し上げたいと思います。

地域団体商標等においては、私ども日本知的財産協会のユーザーの業種から若干離れるところがございますが、新しいタイプの商標になりますと、企業活動において宣伝等で非常に背中合わせの関係になります。特許庁さんの方では、これから議論されてこの制度をいろいろ考えていかれると思いますが、企業のユーザーサイドでやっている仕事の中で、皆さん御存じのようにクリアランスということで、その名前とか新たなタイプの商標を使っていいかどうか、登録性があるかどうかという調査を企業の知財部ではやっております。

そういった中で当然特許庁と同じような判断基準で、これは使っていいのかどうか、調べたらこれが既に先登録があるのかないのか、これは全然使って問題ないということが調べられるように整備されないと、万が一こういった制度が導入された場合、企業の活動において混乱が起きてしまいます。特に今回の場合は音とか、においとか、動きとかということで、通常のテキストのものではなくてそういったものがございます。そういったものがユーザーから、今の文字商標と同じような形でIPDLから常に見れる。登録性のないものが分かるように整備されている。そういったインフラ整備も、今後1年間の議論の中で、企業活動に支障がないように先行調査のインフラ整備についても、この小委員会でいろいろと御議論させていただくとありがたいと思います。今日はありがとうございました。

土肥委員長

その際是非よろしくお願いいたします。

ほかにいかがでございましょうか。松尾委員。

松尾委員

資料なんですけれども、例えば参考資料2の14ページに、普通名称化した登録商標への対応ということで、参考資料5というのがありますね。今日いただいた中に参考資料5はないように思います。

鎌田審議室長

本日の参考資料2は前回の小委員会の資料を再度配付したものであり、その14ページに記載のある参考資料5は、前回の小委員会の参考資料5でございます。今回は、余りにも大部になるものですから、配布を省略させていただきました。恐縮ですが、前回のものを御参照ください。

土肥委員長

ありがとうございました。

ほかにいかがでございましょうか。本日御発言いただいていない委員の方におかれましても、何かございましたら。今からスタートして、実質本小委員会の議論が始まっていくわけでございますので、もしございましたらどうぞ御遠慮なく。

よろしゅうございますか。

それでは、本日いただきました御意見を踏まえまして、私と事務局で、今後議論、検討していく論点を整理しまして、効率的な今後の議論に資したいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

それでは、今後のスケジュールについて事務局から説明をいただきます。

鎌田審議室長

今後のスケジュールとしましては、今日の議論のうち、新商標を初めとしたさまざま検討課題、具体的には資料7の今後の検討課題でございますが、これらについてこれから1年程度かけて御審議をお願いしたいと存じます。具体的な進め方につきましては委員長と相談の上、追って御連絡させていただきたいと思います。

以上でございます。

土肥委員長

ありがとうございました。

それでは、以上をもちまして産業構造審議会知的財産政策部会第20回商標制度小委員会を閉会いたします。本日は長時間、御熱心な議論をちょうだいいたしまして本当にありがとうございました。

閉会

[更新日 2009年11月11日]

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