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第3回特許制度小委員会 議事録

  1. 日時:平成14年11月15日 15時30分から17時30分
  2. 場所:特許庁庁舎16階特別会議室
  3. 出席委員:
    後藤委員長、相澤委員、浅見委員、阿部委員、市位委員、江崎委員、岡田委員、北村委員、志村委員、下坂委員、田中(信)委員、田中(道)委員、長岡委員、西出委員、松尾委員、渡部委員
開会

委員長

それでは、時間となりましたので、始めたいと思います。
ただいまから第3回特許制度小委員会を開会いたします。
本日は、制度的な課題の検討の第2回目としまして、これまでの委員会での指摘事項と対応の方向についてを重点的に検討したいというふうに考えております。
資料を事務局で用意していただいておりますので、事務局から、まず資料の確認をお願いいたします。

(事務局より,配布資料を確認)

(事務局より,配布資料を確認)

委員長

よろしいでしょうか。

日米審査協力について

委員長

それでは、議論に入ります前に、事務局から日米特許庁間の審査協力について、簡単に現状について御報告いただけますでしょうか。

事務局

それでは、資料3をごらんいただきたいと思います。
先週、ウィーンの方で三極の特許庁会合が開催されました。その際、日米間で別途会合が持たれております。本年6月に、皆さん御案内のように、日米特許庁間で合意されました先行技術調査結果等の共同プロジェクト、その具体的な内容について検討が進められました。そして、その骨子が決定しましたので、御紹介をさせていただきます。
まず、その背景でございますが、資料中の1の背景に記載されているとおり、グローバルな保護を求める場合は、出願人サイドにおいては複数の国に出願し、各国で権利を取得するために手続費用の負担が膨大なものになっております。一方、各国特許庁におきましては、重複した業務による負担が増大しております。その結果、権利取得が長期化しているという状況がございます。グローバルな保護を求めるものといいますと、例えばバイオとかIT等の先端技術分野で、内容が非常に高度化、複雑化しているものが多うございます。それで、そういうものが世界じゅうに出願されているというのが大きな理由でございます。
資料の2ページの参考1というのがございます。ここに米国、欧州の審査の状況が出ておりますが、御案内のように、米国、欧州も非常に国際出願の急増に直面しまして滞貨を抱えております。米国では、この図から御案内のように、わかりますように、昔のような早い審査というのはなかなか期待できずに、特にハイテク分野ではファーストアクションが2年を超えるような分野が出てきております。そして、今後もそれが長期化するという予想でございます。そのためには、米国は、御案内のように21世紀戦略プランというものをことしの6月3日に公表しておりますし、欧州特許庁も、マスタリング・ザ・ワークロードという処理プランを掲げて対策に取り組んでいるところでございます。
次に、参考2を、次のページでございますが、ちょっとごらんいただきたいと思います。これは、グローバルな保護を求めている出願の関連図でございます。このようなグローバルな保護を求めております基礎出願というものは、世界全体で約19万件と言われております。この日米欧の三極の特許庁に出願されている出願というのは、そのうちの約84%ぐらいを占めております。こうした基礎出願が国際的に出されているわけですけれども、この図からおわかりのように、日米間が最も多くなっております。
国際出願の方法というのは、国際出願であります、ここにもありますPCTルート、それから、各国行動に対するパリルートという2つの方法がございます。日米間で見ますと、正確なデータはございませんけれども、日本からアメリカにいっております6万3,000件のうち、約5万3,000件がパリルートを使っているのではないかというふうに推測されます。残りの約1万件がPCTを利用されているということでございます。PCTの場合ですと、いわゆるサーチレポートというものが第2庁、すなわち米国にいくときはついておりますし、それは事務局で英訳をされております。したがいまして、米国に入ったときはある程度日本のサーチ結果が利用できるという状況でございます。
ところがパリルートの場合ですと、日本が早期にサーチ結果、審査結果を出しませんと、米国はそれを利用しにくいという状況になっております。しかも従来、日本の審査請求制度は7年間ございました。今現在は3年でございますけれども、依然として出願人の審査請求時期が遅いということで、なかなか利用できないという状況がございました。しかしながら、先ほど御紹介しましたように、米国も審査のおくれがあって、どんどん滞貨がたまってきているという状況でございます。今後、タイミングが合っているということで、米国でもそういう日本の出願の結果を利用したいという要望が強まっております。
その理由を申し上げますと、米国の出願のうち約45%は外国からでございます。そのうち4割が日本からでございます。したがいまして、アメリカにおきましては、日本からの出願の処理というのが非常に困っているというのが実情でございます。これが日米共同プロジェクトを発足したという背景というふうに考えられます。
じゃ、具体的に今回どういうことが決まったかといいますと、資料の2ページ目のところの上の方に(参考)骨子というのがございます。今回、第1段階のプロジェクトとして、2003年1月より開始するというふうに書いてございます。これは、有効活用できる具体的な手法の確立が目的となっております。これは、双方合わせまして50件程度の具体的案件を使って試行を行ってみようということでございます。拒絶理由や引用文献を相互に提供して評価をしようということです。
それから、拒絶理由については庁の方で、実験でございますので翻訳をして提供します。その後、どのように処理をしたか、我々の結果がどのように利用されたか、また、アメリカの結果をどのように利用したかというのをフォローしようということでございます。それを来年の5月ぐらいに評価して、明らかになった問題点を抽出、検討して、第2段階に進んでいこうという流れになっております。
このような相互利用を実のあるものとするためには、信頼性の確立が重要です。パリルートの、相互利用においても、PCTガイドラインのような国際的に品質を保証するガイドラインに基づく質の高い審査が求められておりますし、それに従ってやろうということになっております。
こういうプロジェクトを進めることによって、お互いの制度運用の違いが明らかになってくることから、より一層、今進めております審査実務の調和というものの促進が期待されます。
それから、ここには書いてございませんけれども、アメリカとヨーロッパの間も同じような有効利用のプロジェクトを開始するということになっております。あと、日本と欧州でございますが、これも同様のプロジェクトを開始する方向でやろうという方向で今検討が始まっております。
この資料の一番最後にございます参考3というところをちょっとごらんいただきたいと思いますが、日本とヨーロッパ特許庁の間は、過去5年間にわたりまして、年間30名規模の審査官交流、トータル100名近くの審査官の交流を行ってきております。これは審査実務の相互理解や信頼性を深めるためにやっております。この実績をもとに、サーチ結果の相互利用プロジェクトを行うことを検討していく予定でございます。この過程で、相手の審査官のサーチ内容、考え方を理解することができ、現在、審査官同士の情報交換が始まっております。
この分野、ごらんいただければわかりますように、EPO側から出ております半導体とか電子写真というのは日本が非常に強い分野でございまして、日本から多くの出願がされておりますので、そういうところが集中的に対象となっております。
したがいまして、こういうプロジェクトを進めることによって、日本からの出願のEPOにおける審査処理の促進、ひいては日本の出願人のいわゆる保護につながるような方向で運用できないかという方向で今検討を進めております。
今回の三極会合では、きょう御紹介したような日米間の審査協力だけでなくて、PCTリフォームのように、国際的な権利取得にかかわる重要な問題についても話し合われました。こうした国際的な課題につきましては、我々の戦略計画をつくる上でも大きな要素でございますので、本件の進行状況を含め全体にわたりまして、後日、またこの場におきまして御紹介し、御議論いただければと思っております。
以上でございます。

委員長

ありがとうございました。

制度的な課題
これまでの委員会における指摘事項と対応の方向

委員長

それでは、早速議題に入らせていただきます。
本日は、これまでの委員会における指摘事項を御審議いただきますけれども、効率的に議論を進めるために、全体を審査制度に関連する動きと料金制度に関連する動きというふうに、半物ずつに分けて議論を進めたいと思っております。

審査制度関連

委員長

まず最初に、審査制度関連の方から議論をしたいと思いますけれども、その前に、事務局の方から審査制度関連の資料について御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

事務局

それでは、資料4に基づき御説明致します。これまで、この委員会における委員の方々からの御意見に対して、余りこちらの方から御意見を言うことはございませんでしたので、その御説明をしたいと思います。
横長の資料、1枚おめくりいただきますと、これまでさまざまな御意見、あるいは重複した御意見をいただいた場合もございますが、私どもでまとめております。審査制度関係で幾つかの御指摘をいただきました。それから、先行技術調査の奨励・支援の関係、それから料金関連問題、その他という形でいただいた御意見を区分してございます。これにつきまして簡単に私どもの意見・整理を御紹介し、さらに必要なものは詳細な資料に基づき後ほど御説明をしたいと思います。
最初に、審査制度関連でございます。2ページでございますが、補正基準に関する議論を複数の委員からも御指摘をいただいております。基本的には補正基準が欧米に比べて厳し過ぎるということで、なかなか特許になりにくい面があるのではないかという御指摘であったかといます。これにつきまして、別途資料で御紹介いたしますが、基本的方向としては、国際的な観点から、少し我が国の補正基準につきまして見直しをするということを検討したいと思っておりまして、詳細は別途御説明をいたします。
それから、次のページでございます。先願主義につきまとう開示不足、つまりとりあえず出願をせざるを得ないという状況が考えられるんか、出願後、不十分であった事項の追加のために米国制度等を踏まえながら新たな制度を導入する必要があるのではないかという議論でございます。
この点につきましては、先願主義と先発明主義の問題等ございますし、あるいは公開後の場合にどれほど新規事項の追加が意味を持ってくるかという点に考慮も必要でございまして、今回の御指摘を踏まえまして、国内優先出願期間の延長の問題等含め、やはりユーザーの方々のもう少し広い意見を聞いて、少し事務局として検討してみたいと思っております。今日はまだ結論を持っておりませんが、少し検討作業をお許しいただきたいと思います。
それから、単一性の見直しの問題が4ページにございます。1つの出願でどういうものを特許として認めてくるかということでございますけれども、この点につきましても、国際的なハーモナイゼーションの関係から、日本の単一性要件について少し修正の余地があるのではないかという御指摘もいただいております。これも後ほど御説明しますが、私どもといたしましては、少し前向きに見直しをする方向で検討を進めたいと思います。
次のページの「記載要件の明確化」に関してでございますが、、詳細は後ほど御説明いたしますが、これにつきましても私どもといたしましては、いろいろ産業界からの御要望もあり、国際的なハーモナイゼーションも考えながら、今回の機会に、前向きに検討したいと思っております。
それから、早期審査制度との関係で、同一出願人の出願について、審査順を自由に入れかえるということを認めるべきではないかという御指摘をいただいております。
現在、審査につきましては審査請求順という原則ですが、その例外として早期審査、優先審査というものがございます。このため早期審査につきましては公平性・透明性が求められており、一定の基準に合致するものだけを早期に優先的に審査することを要する、早期審査の活用についても、その公平性・透明性を確保しつつ行うことを考えております。同一出願人の出願について前後を入れかえるということにつきましては、他者の関係では、どういうふうに他の出願人に影響があるのかと、そことの関係で不公平感が出ないかという議論がございます。この場合、どのようにすれば、あるいはどのような場合にそういう問題がないのかということにつきまして、具体的な産業界の要望を踏まえて、事また例を踏まえて、検討をさせていただきたいというふうに考えております。
それから、7ページでございますが、早期審査制度の運用の公平性・透明性の確保についてですが、先ほどお話ししましたように、ある程度審査請求順に審査をするという基本ルールから外れるものでございますので、早期審査制度の運用の公平性・透明性ということは私ども大事だと思っております。現在は、あまり知られてないという意味において、利用状況が少のうございますが、さらに利用を拡大するに当たっては、制度の公平性・透明性に十分配慮しながら進めるべきではないかということです。これも詳細につきましては、別途資料で御説明いたします。
引き続きまして、2つ目の大きい議題でございます先行技術調査の関係でございます。前回、先行技術調査あるいは審査請求制度との関係で、先行技術調査の環境整備の問題につきまして多方面から御意見をいただきました。
最初に、特許庁のデータベースの開放あるいは審査ノウハウの公開によって、出願人による先行技術調査の環境を整備するべきではないかという御指摘がございました。
詳細な説明は省きますが、この資料4の一番後ろに、今、特許庁がどういうふうに外部に保有データを提供しているかという参考資料を付してございます。後ほど御覧いただければと思いますが、基本的には特許庁のデータベース、審査官がサーチに使うデータにつきましては、著作権等の制約で外部に提供できないもの以外のものにつきましては、媒体にかかる実費のみで、CD-ROMの形で民間あるいは出願人の方々に提供するということをしております。
それから、基本的なサービスということで、ややプロ向け仕様ではございませんが、大学の方々あるいは中小企業の方々など一般の方々の御利用を念頭に、特許電子図書館いわゆるIPDLにおける情報提供も行っております。
それから、審査官の先行技術調査の情報やノウハウの提供につきましては、なかなかノウハウを文書に書き示すということは非常に難しい部分がございますが、今は審査官同士の引き継ぎ資料というイメージのものでございますけれども、技術分野ごとに「サーチ戦略ファイル」というファイルを作成しておりまして、これはどのように審査をしていくかという内容のものですが、、これを情報公開制度に基づく請求への公開という形ですでに公開をしております。まだ全体的なものえもなく、完全な形ではございませんので、IPDLのような情報提供はしておらず、必要に応じて請求に基づき提供していくということでございます。そういう意味では、こういった外部に提供できるものはなるべく提供していくこととしたいと思っております。
次に、10ページでございます。調査機関の不足解消等、調査環境の整備をどうしていくのかということですが、民間の出願人の方々に先行技術調査をよりしっかりということをお願いしておりますけれども、そのツールとしての調査機関が不足している状況をどうするかという問題でございます。
今特許庁としては、さきほどお話ししましたように、保有データを実費で提供するということにより、基本的なデータをより安く外部に提供するという形で、いろいろな調査機関が活動する上での環境面の整備というのはやっておるつもりでございますけれども、直接的に調査機関の育成という形でこれまで取り組んでいるというわけではございませんでした。
したがいまして、今回の御指摘を踏まえまして、今後、民間技術調査機関の活動実態ですとか、出願人の方々からの具体的な調査ニーズの把握を行いまして、どのように特許庁としてそういった調査環境のサポートができるのかということについては、検討していきたいというふうに思っております。
次に、11ページでございますが、特許庁において、行政サービスとして先行技術調査を行うべきではないかという御議論がございました。
私どもといたしましては、先行技術調査サービスというものを、行政部門がある程度体制を強化しながら担っていくのか、あるいは、むしろ民間の機関の育成により担っていく方向にするかという、日本全体としてのあり方論の整理というのも、この前提として要るのではないかと考えております。仮に行政部門、特に特許庁が体制を強化するということを考えた場合には、もともと特許庁の審査官が先行技術調査をしていたわけでございますけれども、現在、IPCCを活用しているということから、さらに特許庁職員が行うというのは現実的には困難ではないかということで、IPCCについての活用ということが考えられるわけですが、他の委員からも御指摘ございましたように、特許庁の審査官、IPCCを含めて処理に余裕がない状態の中で、さらに特許庁の職務を増やすというのは、審査の方に相当支障が出るのではないかというのを、私どもとしては懸念をしております。
次の12ページでございますけれども、行政サービスという形ではなくて、調査請求制度という形で調査請求を一度制度的に設け、その結果を踏まえて審査請求に進むという二段構えの制度というのもあり得るのではないかという御指摘がございました。
欧州特許庁では、出願全件につきまして調査報告書を作成しているという例もございまして、そういった形での制度設計というものもあり得るのでないかとは考えております。
ただ、その点につきまして、今の日本のシステムの中で新たにそういう義務を全員に課することの是非、あるいはそれからのメリットの比較考量かと思います。
先ほど申しましたような調査をし、さらに審査という二重の仕事をするところの行政側の対応の、今やや不足感があることがまずございます。
それから、出願人におきまして、行政サイドにすべてゆだねるうな形になるとすると、みずから先行技術調査をするインセンティブが低下してしまうのではないかという懸念がございます。
それから、先ほど申しましたIPCC等のものを活用するにしましても、審査の方との能力の配分の問題から、やや審査の方に悪影響が出るのではないかということがございます。
それから、欧州特許庁におきましても、今調査部門と審査部門が分かれておりますけれども、効率性の観点からむしろ一緒にしていこうという動きがございます。以上のようなところとの比較考量など、色々な点をさらに検討する必要があろうかと考えております。
次の13ページでございますけれども、民間調査機関の先行技術調査が行われた場合に、審査請求料を減免するということによってインセンティブを与える制度を創設してはいかがかという議論がございました。
私どもといたしましては、審査請求料の減額をある程度制度化するというためには、おそらくその調査機関が作成する調査報告書の水準の問題が公平性の観点からも生じる可能性があるということで、ある程度特許庁が関与しながら一定の担保をする仕組みが必要ではないかと考えておりまして、そういう仕組みの実現につきまして、水準をどのように担保していくか、あるいは行政コストをどのようにかけていくのか、あるいは出願人の方々の利便性や、国際的なハーモの観点からも、利害得失を検討する必要があるのではないかと思っております。
ただ、委員からの御指摘ですと、民間技術調査機関が現在、質・量面で十分な調査能力を持っているとは考えにくい状況でございますので、ただちにこの制度を運用する場合には、やや現状は不十分ではないかという感じもございまして、先ほど申しました民間調査機関の育成に対する施策を当面は講じて、その育成状況を見ながら検討する方が適切ではないかと思っております。
なお、PCTの国際調査報告書が添付されている場合には、ある程度料金を割引く制度を導入してはどうかという御意見もございまして、この辺につきましては、検討する必要があるのではないかというふうに考えてございます。
それから、料金関係についてでございます。料金の基本的なシミュレーション等は後ほど御説明いたしますが、料金に関係して幾つかの御指摘がございました。こちらについても、後ほど料金についてまとめて御説明させていただきまして、順番は飛びますが、23ページを御覧いただければと思います。
私どもで、「その他」として分類させていただいておりますが、まず、大学からの出願・請求の見通しについてでございます。非常に特許庁にとっても大事な問題でございますけれども、この点についての御指摘がございまして、文部科学省にも問い合わせをいたしましたが、まだ十分データを持っていないということでした。今、大学に関しては、知的財産本部の整備や機関帰属の原則化の議論とか、いろいろ今動いているところでございまして、そういった中で、どのようにこれから出願・請求が増えていくのか。私どもといたしましても、状況の把握に引き続き努めたいと思っておりますが、ちょっと現状ではデータがないというのが正直なところでございます。
それから、産学共同研究のガイドラインの作成についてです。私どもとしても非常に大事な問題だと思っておりますが、ちょうど今、総合科学技術会議の連携プロジェクトチームにおいてこれが進められておりまして、大変関心を持って情報を把握していきたいと思っております。
制度に関係して,概略として以上の御報告をいたしましたが、引き続きもう少し詳細な御説明を、別途資料を用いまして、調整課長から御説明をしたいと思います。

事務局

資料5に基づきまして、簡単に御説明をさせていただきます。
資料5は、補正の範囲の適正化でございます。補正については、先願主義のもとで明細書が最初から完璧につくれない、そこをどこまで直せるかという問題がございますが、現行の特許法は平成5年に改正をされておりまして、そのときに欧米と同じように、明細書には新規事項を加えてはいけませんという規定を入れております。それが、2ページ目の特許法17条の2というところに抜粋で書いてございます。下線を引いてありますが、願書に最初に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内において補正はしなければならないと、これが補正の基本規定でございます。ここをもちまして、新たな事項の追加はだめですという形になっているわけです。
この補正の審査基準としまして、2ページの(2)に書いてありますように、許されるものはどういうものかという規定をしています。それは、最初の明細書に記載していたものそのものかどうか、あるいは直接かつ一義的に導き出せるものかどうかという基準を設けまして、補正の追加ができるかどうかという判断基準にしておったわけでございます。この新しい法律は平成6年から施行しておりまして、9年の運用実績があるわけですが、最近になりまして、この新規事項の追加という判断基準が、ややもすれば欧州に比べて硬直的になっているのではないかという御批判をいただいておるところでございます。
また、補正の許される範囲につきまして、3.の(2)に書いてありますように、特許庁から事例集というものを出しているわけでございますが、その事例の判断基準が、明示的に書いてあったかどうかとか、それから、先ほど申しました直接かつ一義的に導き出せるかどうかという判断基準の原則を余り強調し過ぎて、厳格になり過ぎているのではないかという御指摘もございます。
もう一つ、補正をするときには補正書だけが出されて、出願人の方の御意見、どうして補正するのかというようなことが出されていないものですから、出願人と審査官の間の意思疎通もなかなか図れてないのかなという御指摘もございます。
そういうこともありまして、3ページの4.に、先ほど概略申し上げましたように、補正の範囲につきまして、もう少し弾力的な運用を目指していくべきではないかということで、現行の審査基準の見直しを図っていくことがいいのではないか。そして、その啓発をしていこうということでございます。
3番目に、出願人の方に、補正をするときには、こういう理由で補正が必要ですというようなことを御説明いただくというような手続を入れさせていただくと、もう少しその補正がしやすくなりますというか、意思疎通がよくなるのではないかということでございます。
そしてまた、分割出願の関係につきましても、同じ基準を適用したらどうかということでございます。
以上が補正の関係の方向性でございます。
続きまして、資料6でございますが、こちらは出願の単一性の問題です。単一性と申しますのは、一つの出願に含み得る発明の範囲といいますか、関連している発明をどこまで含めることができるかということでございます。この点につきまして、日本の今の法律と、PCTや国際的にヨーロッパ等で使われている基準と少し違った規定ぶりになっています。1ページの下の方に枠囲いが書いてありますが、37条、これが日本の特許法でして、特許の請求の範囲に書く発明を、どれか1つを特定発明と決めまして、それと一定の関係にある類型ごとに許されるものを列挙しています。発明の課題が同一であるとか、発明のポイントの主要部が同一でありますとか、物とその物を製造する方法、物と装置の関係とか、そういったような発明類型で連関をさせているわけです。
一方、2ページを開いていただきますと、PCTとかヨーロッパの規定は、単一の一般的発明概念を形成していればよいということになっています。具体的には、括弧書きで書いてありますが、「特別な技術的特徴」が共通あるいは対応しておれば、一つの発明概念として、出願に含めていいんですというような規定ぶりになっています。少し規定が異なっております。他方、2ページの下以下、現行の我が国の運用のところは、少し規定を運用するときにあいまいなところがございます。PCTの規定等におきましては、特別な技術的特徴というのが、新規な発明のポイントを見ていくというようになっていますけれども、日本の場合は、明示的に発明のポイントということが規定されていないものですから、どちらかと言えば出願人の方も審査官の方も少し運用があいまいになっていて、ばらつきが出ているというのが(1)の記載です。
3ページでございます。単一性の判断の仕方。これは審査官の問題ですが、請求項数が、最近、一出願での数が増えてきまして、先ほど申しました類型がどういう関係にあるのかということを見ていくとき、非常に時間がかかるようになっていまして、現実的な対応が困難になっているということでございます。
そういった点もありますし、(3)に記載していますように、日本の規定ぶりが類型になっていますので、これから新しく出てくる発明になかなか対応できない問題もはらんでいるのではないかというような問題もございます。
それから、他に幾つかありますが、時間の関係で一部説明を省略させていただきます。もう一つの大きな点は(5)でございます。4ページのところです。日本の単一性の規定とヨーロッパ等の規定が違うものですから、海外に出願をするときには明細書のつくり直しをしなきゃいけないというような問題もありまして、そのまま日本の書類を持っていくと、向こうの方で分割出願をすることになる場合があります。分割出願をすると、2つの出願ができますから、その関係がうまくいかないとヨーロッパでは特許にならなかったりするという、問題が出願人のサイドに起こっているという問題がありますので、今後の方向としましては、PCT準拠、国際スタンダードに合わせた単一性の規定にしたらどうかということが、方向として考えられるということでございます。
それから、資料7でございますが、こちらは記載要件について、特許請求の範囲の明確化ということです。わかりにくく難しい問題でございますけれども、時間の関係で説明を短くするために、2ページのところをあけてください。発明について特許を取っていただく出願の際には、特許を受ける発明の定義をする特許請求の範囲というものがあります。それから、特許を受けようとする発明を詳しく説明してくださいという発明の詳細な説明のところがございます。その発明の詳細な説明の開示を超えるような定義を特許請求の範囲にした場合の問題でございます。
その例が、ここに書いてありますように、発明の詳細な説明では音声認識自動翻訳の装置のはずが、特許請求の範囲の記載はワープロをも包含し得るものになっているというものです。この例示でございますが、解説のところに書いてありますように、出願人の方は、音声認識機能付きの自動翻訳装置を発明したということで、マイク等による音声認識、息つぎのところを検出する検出器とか、翻訳の指示手段というようなことを発明の詳細な説明に書いているわけですが、特許請求の範囲を見ますと、そういったマイクとか音声とかいう言葉ではなくて、情報を入力する入力手段でありますとか、情報を認識する認識手段、情報処理手段、処理実行指示手段というような、非常に機能的な手段で書かれていますので、非常に広い範囲になっているということでございます。
こういうのは、発明の開示に比べて特許の権利を取る範囲が非常に広がりますので、問題があるわけでございますが、この問題を是正するアプローチとして2つのアプローチが考えられます。その一つのアプローチは、もう一枚めくっていただきますと、3ページの(2)のところに欧米の対応と法文上の相違というふうに書いてございます。PCTとかにおきましては、明細書の開示によって特許請求の範囲が裏づけられていなきゃいけませんと。裏づけ要件と我々呼んでございますが、そういったものを持っていかなきゃいけませんということでございまして、こういった一つのアプローチとしては、今のような事例のときには、裏づけがなくて広過ぎますというような指摘の仕方が一つあります。
もう一つの指摘の仕方、問題の是正のアプローチは、我が方がとっているものでございます。特許請求の範囲が広いものですから、この発明の中に入る先行技術を一生懸命探すということで、先行技術を見つけて、あなたの提起しているものは、先行技術を含む広いものですからだめですというアプローチをするというのが我々のアプローチでございます。そうしますと、ここの下の方に書いてございますように、2ページの下でございますが、広い範囲の先行技術を探しに行かなきゃいけない、ものすごく時間がかかってきますということでございます。それから今の例ですと、実は特許請求の範囲にはワードプロセッサーも含むような定義になってございますので、審査官はワードプロセッサーの引用例を拒絶理由に使うというようなことになりますと、出願人との間の意思疎通が欠けるというようなことがございます。そういったことを是正するために、サポート要件というものを日本もきちっと入れたらどうかということでございます。そういったことで、日本のやり方も欧州に合わせましてサポート要件を明確にして、こういったものは広過ぎるというような指摘ができるような形にしていったらどうかというのが、ここの方向性でございます。
それから、資料8ですが、こちらは早期審査制度でございます。早期審査制度は、1986年に運用ベースで実行させていただいているものでございます。こちらは、発明を実施しているので早く権利が取りたいという方々のために始まったわけでございますが、その後、審査の国際協力でありますとか、中小・ベンチャーの方々の競争力を早く確立しなきゃいけない、それから大学等の発明の社会への還元を促すという形で、この枠囲いに書いてございますア、イ、ウ、エというような出願を対象にしまして、その先行技術文献と、自分の発明の対比説明をして事前に提出していただくという条件つきで、要請によりまして早く審査をするという運用をしております。
現在、3,000件ぐらいの利用があるわけでございまして、平均3.2カ月で審査をしているわけですが、最近どんどんふえてきてますが、まだ3,000件の程度ということでございます。今後、審査請求件数も増加をしてまいりますので、審査待ち期間の長期化が懸念されるところでございますが、事業化のタイミングに合わせて権利を取っていただくというような形で、今後とも、この早期審査制度を拡充していくことが必要ではないかということでございまして、そのために、2ページの具体的対応というところに書いてありますように、積極的な制度の普及ということで活用を図っていくべきではないかということと、もう一つ、透明性と客観性を持たせて、この制度を出願人の方の要請に沿って運営をしていくべきではないかということで、方向性を示させていただきました。
以上、早口で恐縮でありますが、説明をさせていただきました。

委員長

どうもありがとうございました。
それでは、審査制度関連の議論に移りたいと思いますが、その前に、委員の方からペーパーを提出されておりますので、議論の口火を切る意味もありますので、最初に御説明いただきたいと思います。どうぞお願いします。

委員

ありがとうございます。留保事項への御配慮をいただきましたことにつきまして、委員長初め御関係の皆様方に対し感謝申し上げます。
前回留保させていただきました事項に関しまして、本日、参考資料としてつけさせていただいております。11月12日付提出文書でございます。簡単に御説明させていただきますけど、その前にまず最初に、私は、このたび本小委員会で審議されております方向性に関する議題が、知財大綱の実現の一環として極めて重要なものであり、その根本となる権利の創設、保護に不可欠な審査の促進が的確に行われることの重要性、また、そのことを通じて日本の知財国策を実りあるものにするという目的につきましては、御出席の全委員の先生方とその思いは全く同じでございます。そしてまた、万人に何らの痛みも伴わない改革などというものは決してあり得ないことも十分承知しております。
私の先回会議における留保理由は、審査の迅速性・的確性の担保そのものに反対しているというものではなくて、適正な審査請求行動を促す方向性として、あたかもそれによってすべてが解決するかのように現行料金体系のコスト面のみが強調され、審議され、方向性として縛られてしまうことは問題であり、反対であるという点にありました。それは、あたかも高速道路の料金のみを改正して現状の渋滞をなくそうというのに似ておりまして、渋滞原因を一観点からのみとらえて、ロールスロイスという高級車だけを走らせようとしているとの印象を強く持ったからであります。
知財サイクル道路における迅速・的確・快適を走行を目的とするのであれば、排気ガスをぷんぷんとまき散らす個々人の車の整備はもとよりのこと、曲がりくねることなくスムーズな走行を可能にする道路設計や、傷んだ道路の補修等々がともに検討され、ともに解決されなければならないと考えております。知財制度の改革という面から、最適な特許審査に向けた適正な審査請求行動を促す方策を検討するに当たりましては、これを審査請求料の値上げのみによって行う方向性にとどまることなく、他のさまざまな手法に関する検討を幅広く総体的に行っていただきたいと考えております。これがペーパー1に書きました反対の理由でございます。
そして、提出書面の2ページ以降に、それでは、車の整備や曲がりくねることなくスムーズな走行を可能にする道路設計、傷んだ道路の補修等々の項目に該当すると思われる具体的事項についての提案と提言をさせていただいております。
この私からの提案は8項目ございまして、審査官の増員、サーチの実効性の確保、ベンチャー、中小企業への影響に対する配慮、民間調査機関の育成、補正の運用の緩和、審査請求の取り下げ、審査請求前に先行資料が得られる制度の採用、それから、もう一つ添付書類、添付されている書類にあります、本年5月31日付の日本弁理士会の提言事項というのがございます。
本日提出され、そして御説明を受けました書類によりますと、既にこの中の多くのものが検討されるべく提出されておりますので、かなり私の方の提案がこれで少なくなっておりまして、また、今回の小委員会で無理でございましたら、知財政策計画の方などで、また引き続き御検討いただければということを念願いたしております。
どうも特別の御配慮をいただきましたことに関しまして、再度厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

委員長

どうもありがとうございました。
総合的に対応すべきだという立場で、私も同じ意見でありますので、今後もいろんな形で検討を続けていきたいと思います。
今から議論をお願いしたいと思いますけれども、料金につきましては、先ほど申し上げましたように、後でまた御説明の上、御議論いただきますので、今御説明いただきました審査制度関連につきまして、御意見、御質問等がおありでしたらお願いいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。
どうぞ。

委員

補正の問題については、ここのペーパーに書いてあるとおりのことだろうと思います。ただ、ちょっと気になりますのは、技術分野によって事情が少し異なるんじゃないかなという気がしています。例えば私どもの鉄鋼のように非常に成熟した分野は、特許が物すごく込んでおりまして、例えばメッキのようなところの技術の特許については、ちょっと外れたら必ず次のほかの特許にぶち当たるという状況でございますので、そういうあたりは、余り補正を認めると、予測可能性という面でちょっと困る状態が起きるんじゃないかということを若干心配しております。

委員長

ありがとうございました。
どうぞ。

委員

たくさん御説明になったので、簡単に意見を申し上げます。
補正については、現行制度になって、新規事項の追加を禁止する場合に非常に厳格な運用しました。、これがかえって権利の適切な保護のためにぐあいが悪いということは、前から指摘されてたとおりでございまして、私はそのとおりであろうと思います。
請求の範囲の記載要件を明確化するということにつきまして、平成6年の改正、あるいはそれ以前の運用から広いクレームを認めるようになってきたわけでありまして、裏づけ要件を課すということは、適切でありますけれども、かえって、例えば実施例が少ないということによって、パイオニア発明のクレームの範囲を狭くさせる、というふうな運用にならないようにという留意が必要ではないかと思います。
それから、ユーザーニーズに対応した優先的な審査につきましては、いわば審査の滞貨が非常に進んでいて、これからさらに進むという状態の中で、そういうものをどうするのかということも含めて考えていただきたいと思います。
と申しますのは、いわばエクスプレスレーンをつくるということは、渋滞中の道路の混雑をますます激しくするわけでございますので、これを拡大する必要があるのかどうかということは、十分な検討が必要であると思います。特に早期審査ガイドラインにおきまして、アの実施が早期に必要であるということについては合理的な理由があるわけですが、イ、ウ、エにつきましては、ユーザーニーズに対応した優先的な審査の部分でありますが、優先的な審査について、実施の時期からの合理性というものもないこともございますので、その点については御配慮いただいた方がいいのではないかと思います。
それから、データベースの話でございますが、IPDLについてはいろいろ議論がありますが、これは特許庁が得た情報、公の情報は、広くできるだけ多くの人に使ってもらうというのが原則ではないだろうかと思います。IPDLを拡張することに対して反対の動きもあるようでございますけれども、現在、IPDLがなかなかうまくアクセスできないという状況もあるようでございまして、これはぜひ拡張していただきたいと思います。
それから、著作権処理の関連でデータベースか公開できない範囲があります。これは、一番はCSDBにつきまして、どこまで公開できるかということを検討すると、グレーの部分が出ます。著作権を全部やめてしまうということはできないでしょうが、グレーの部分についても、明確にする形ができるのであれば、もう少しCSDBを外へ出して、使いやすくしてあげた方がいいのではないかなと思います。
それから、調査機関が足りない点は、もし今度審査請求料を上げることになれば、そこにマーケットが出てくると思います。審査請求料が安ければ、そこにはマーケットがないわけですが、上がれば、審査請求の前に調査をするというインセンティブが働くのではないかなと思います。
それから、審査請求制度前置につきましては、これはヨーロッパはヨーロッパ特許条約をつくったときの国際的な事情、つまりハーグの国際調査機関とドイツにおける審査制度という特殊事情でできたものでありまして、ヨーロッパがこうであるということは必ずしも妥当しないと思います。それから、調査を前置するということは、現在のキャパシティーにおいて無理であると思います。
なお、民間につきましては、質を担保する方法ということを考えますと、例えば民間の調査請求をつけたときに、審査を簡単にするということができるというのはリライアブルであるかどうかが問題になります。それをやるから、例えば先ほど料金をまけるというのがありましたが、もし料金をまけるなら、その調査報告にうそが入ってたら、無効理由になるとか、そういう何かサンクションをつけてやらないと、いいかげんなものが出てきて、それに審査官が依存して審査をするというのは難しいのではないかなと。
済みません、非常にたくさんの事項について意見を申し上げましたが、以上でございます。

委員長

ありがとうございました。
ほかに。
どうぞ。

委員

とりあえず、審査制度関連についてのみ申し上げたいと思います。
今回御提案いただいた特に資料5から6、7のこの3点でございます。私ども出願人の立場では、一部は厳しくなり一部は優しくなりと、両面があろうかと思います。全体では大変ありがたい考えております。
と申しますのは、私どもは大事なものについては外国に出願することを前提に仕事をしておりまして、各国ごとに単一性であるとか補正の状況とかが異なっていますとそれぞれの国用の明細書を作成しなければなりません。したがって、そのコストあるいは負荷というのは結構大きなものになってきます。三極の動きもありますが、世界特許という大きな方向性を考えますと、それらが調和したものであるということが極めて大切だというのが前提になろうかと思います。
そういう点から見ますと、この5番、6番、7番については、まさしくその方向性を向いておりまして、私は、ぜひこれを早期に実現していただければというふうに考えています。
以上です。

委員長

ありがとうございました。
ほかに。
どうぞ。

委員

幾つかありますけれども、補正の適正化についてです。私も知的財産戦略専門調査会の中でも発言したわけですが、基本的に、日本では原理特許が非常に少ない。産業競争力上やはり多数の原理特許をきちっと取っていくべきであるという議論がなされたわけです。ところが日本の場合には、一方で補正がどんどん厳しくなって、極論を言えば、「てにをは」さえも直せないような状況というのがあります。ところがアメリカの場合には、その辺がフレキシブルに対応できる。従いまして、アメリカにおいて原理特許の成立というのは、比較的容易じゃないかという側面があるわけです。
したがいまして、私は補正をきちっとできるようにするという視点も一つありますけれども、もう一つは、やはり国際的なハーモナイゼーションというのを明確にしていくべきであると思います。きちっとした公平性が担保されれば、各企業とも全世界において戦う場合に、同じ土俵に立てるということになります。ですから、それも留意しながら、ぜひこの補正の点については御検討いただきたいというふうに思います。
それから、早期審査についてです。早期審査の件数は今3,000件ぐらいと聞いています。年に審査請求される件数は20万件少し、24万件から25万件だと思いますが、では、早期審査を奨励して1万件になればいいのか、あるいは2万件になればいいのか。そうすると、5%から10%の比率で早期審査制度を利用した審査請求が申請される。それが最優先的にもし審査されるということであれば、全体的な審査の運用がおかしくなると思います。やはり公平性・透明性というのを、どういう形で確保していくかというのを、きちっと明示しておかないとまずいだろうという感じがいたします。
私どもの企業の実情から言えば、私が一つ提案させていただいたのは、自分のいすが幾つかありますと、そのいすを交代させるのは、これは特に理由もなく許していただきたいとの提案です。いすの非常に少ない人、例えばこの文章の中では中小企業等と比較すると公平性が保てないのではないかと、懸念されるわけですけれども、それはそれで早期審査ということをきちっと運用上やっていただければ、全体の公平性というのは損なわれないというふうに思います。
もう一つは、中小企業等という表現がされておりますけれども、日本の産業競争力からいきますと、やはりベンチャー企業をいかに育てていくかというのが一番大きな視点だと思います。中小企業というのは、資本金1億円以下の企業全般を言います。中小企業の中にもきちっとした事業運営をしているところも、立派な企業もたくさんあるわけでございますが、やはり優遇されます。早期審査、あるいは場合によったら、後ほど料金体系も出てくると思いますけれども、料金優遇もするという視点というのは、やはりベンチャー企業の新しい事業を立ち上げるときにきちっとバックアップするという意味で、これは誰にとっても納得できることだと思います。ただ、中小企業という書き方が本当に妥当なのかどうかというのに対して、私はちょっと疑問に感じております。
もう一点、ちょっと長くなって申しわけないのですが、先行技術調査についてです。ども比較的大きな企業にとりましては、自社でデータベースを構築し、要員を確保して、先行技術調査を現実的にもやっております。ただ、特許文献についてはできるわけですけれども、私どももやはりきちっとできない部分というのは一般文献です。特許文献以外のもの。これについて、どういう仕組みにして皆が活用していくかというのは非常に大きな問題だと思います。著作権等も絡みますし。その辺をぜひ御検討いただきたいというふうに思います。
ちょっと長くなりましたけど、以上でございます。

委員長

どうもありがとうございました。
どうぞ。

委員

出願人の立場からちょっと言わさせていただきたいんですけれども、優先的な審査と補正の範囲の適正化、これは本当に大歓迎の気持ちを持っております。それと、あと出願の単一性と記載要件の明確化、これも先ほどお話ありましたように、国際的なハーモナイゼーションという観点からすると、出願人としても非常に歓迎できる内容になっていると思います。
ただ、ちょっと1点だけ、出願の単一性についてちょっとお願いしておきたいのは、これは運用が余り厳しくなりますと、また出願件数がふえるような方向になりますので、この辺、ちょっと運用面の御留意をぜひいただければなと思います。
それと、あと記載要件の明確化についても1点言わさせていただきますと、これも過度にやっぱり厳格になり過ぎますと、クレームの範囲といいますか権利が減縮してきますので、これもぜひ運用面でひとつよろしくお願いしたいなと思います。
以上でございます。

委員長

ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
どうぞ。

委員

私も、出願人の立場から一言申し上げさせていただきたいと思います。私どもの企業では、先ほどもちょっと話が出ておりましたけれども、全出願中、例えば100件あるとしますと、その70件ぐらいは外国へ出願しているというような状況でございまして、そういうことで、外国出願というものを常に念頭に置いて仕事をしているというのがまず1点でございます。
それから、これは私どもの企業の多分特徴的なあれかもしれませんけれども、そういう重要な出願といいますか、外国出願を考えているものについては、第一国出願をそもそも日本ではなくて外国にしているという事情がございまして、第二国出願の時点で、それを翻訳したような形で日本に出願するというようなシステムをとっておりまして、そういう意味で、第一国出願の時点から外国の制度に合わせた明細書づくりをしているわけです。そういう意味で、今回こういう形で単一性とか補正とかクレームのサポートとか、この今提案されていることは、すべて外国の制度に合わせるような形に持っていこうという御提案でございますので、私どもとしては非常に歓迎したいというふうに思っております。
それと、その中の何点かにつきまして、2点ほどですけれども、先ほどちょっと意見出ましたけれども、早期審査につきまして、イの外国出願しているというものについて、ちょっと問題があるんではないかなという発言があったかと思いますけれども、今の私どもの実情からいたしまして、イの外国出願対応というのは非常に使い勝手がいい早期審査の制度でございますので、ちょっとその点を1点申し上げたいと思います。
もう一点だけ、補正の問題でございますけれども、これも先ほどちょっと逆の意見が出たかと思いますが、私どもの分野では、最初にすべての明細書を完全にして出願するということは、特に先端技術の分野ではなかなか難しくなってきておりますので、補正の今回の方向というのは、私どもにとっては非常にいいのではないかなと思っております。
以上です。

委員長

どうぞ。

委員

1点、特許請求の範囲の記載要件の明確化について申し上げたいと思います。請求範囲を記載するときに、明細書に十分に裏づけられているという文言、そういう形を、追加といいますか明確にしたいというお話ですが、私が見ますと、今までの4項、「発明の詳細な説明」には、その発明の属する技術の分野、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであること、というのがあって、そして今度、6項の方に、特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければいけないということで、今の「発明の詳細な説明」に記載したものであることとか、発明が明確であり、かつ記載が簡潔であるということが書いてあります。
それに対して、さらに請求の範囲は明細書に十分な裏づけがなければならないというのを加えることが、どれだけの意味があるのか疑問です。こういうのは、こういうことを書いたから、それで問題が解決するわけではないし、明細書を書く者の立場からあるいは発明者の方から見ますと、十分じゃないと言われるその十分さというのはどういうことかなと、非常に問題に感ずると思います。明確ではない条件を加えると、かえって何か拒絶理由が追加されるような、余計なものがつけ加えられるような気がします。私は、今までの4項とか6項の記載の仕方で、十分じゃないかと思います。
それで、こういう広過ぎて審査も大変だと、わからなくなると、何か非常にここに、大変な審査を強いられるようなことが書いてありましたけれども、また最後の検討課題のところにありますような、もちろん内容は国際調和であるべきだと思いますけれども、一番重要なのは、出願人と審査官の円滑な意思の疎通であるということであって、インタビューをお互いに気軽にやるとか、何かそういうところの方の運用の仕方で解決すべきであって、記載が十分に明確とかいうことでは、結局は問題は解決しないのではないか。要件を多くすることは、拒絶理由通知の理由を多くすることで、私はどうもこれには納得いかないように思います。

委員長

ほかに、何かございますか。
どうぞ。

委員

分割出願について意見があります。日本の場合ですと、分割出願の機会がかなり制限されております。拒絶された時などに、分割出願できるわけですが、すんなり登録だれたりしますと分割出願の機会が無くなり、それで終わりです。アメリカの場合ですと、登録料を支払うときに分割出願することが出来ますので、状況を見ながら分割出願を行うことが出来ます。、先ほど、日本では原理特許に基づくものが少ないというお話がありましたが、私どもの会社としては、間違いあるかも知れませんが、3件から5件ぐらい原理に基づいた特許を出願し、登録されていると思っております。原理に基づく特許ですからかなり図も多いし、明細書の内容も豊富です。アメリカ出願の場合ですと、基本となる1件の特許が許可され登録料を支払います。その際に分割出願をします。内容的には、下位の概念に基づいて分割出願を繰り返していきます。多いものですと、分割を10回ぐらい繰り返して、細部に渡り権利を持っているものもあります。ところが、同じ特許でも日本で出願した場合、先行技術の無いはじめての特許ですと先行技術がほとんどありませんので、そのまま拒絶されること無しに通ってしまいます。そうしますと、後に先行技術が見つかる可能性もありますので、原理特許ですら1件の特許で終わってしまい、弱さを含む特許になってしまいますこんな広い範囲でクレームすれば許可にならないであろうという判断で出願しても(笑声)、拒絶無しに許可されますと、原理特許ですら1件の特許で終わってしまいます。アメリカの場合ですと、状況を見ながら分割出願を繰り返し行えますので、非常に強い特許体制を作り挙げることが出来ます。日本の場合ではそれが出来ませんので、分割出願の機会をもう少し増やして頂きたいと思います。

委員長

ありがとうございました。
どうぞ。

委員

前回、海外出張で欠席してたので、少し議論があれかもしれませんが、大学の産学連携をやっておりますので、その立場でということで発言させていただきます。
私ども大学発明で、ほとんどは原理的なパイオニア特許を希求してやっているいるわけですが、先ほど、文科省でも特許の見通し等のデータがないということでありますけれども、一応研究者の3分の1は大学におりまして、その人たちの発明というのは--米国は今、個人と大学の発明が全体の大体20%ぐらいですので、そのぐらいになるつもりでいろんな要求をしているということで、特許制度上、大学関係の発明というのが商品的にはインパクトを持つという前提でちょっとお聞きいただくということでございますが、ともかく出願者は、非常に論文の発表等の競争でラフな形で出願せざるを得ないというようなことがあって、そこから先、優先権等で整理をしていくわけですけれども、やはり原理特許的なもの、特に最近、原理と性質を合わせて何とか特許に持っていこうと、ライフサイエンスなんかはそういう傾向があるんですが、そういうものに関しては、やはり補正のところが非常にひっかかってきてしまって、いいものが最終的にできないというのが多うございます。
そういう意味で、今回御提案の補正の範囲の適正化は、そういう意味では海外、国際的に同じような基準でという趣旨でいけば、非常にありがたい。ただ特許出願数に関しては、平成5年の補正の改正のときに、原理的な特許については、むしろこれがひっかかる可能性があるので数をふやしたということも経験をしていますので、そういう意味では、数は厳選される方向だということになると思います。
それから、先ほど御指摘あった意見、ちょっと気になったのは、早期審査請求でたくさん数を持っている、また、自分のいすについては変えてもいいんじゃないかという話がございましたが、これは、たとえベンチャーや何かに関して、あるいは大学発明に関しては別だということにしたとしても、1,000件持っているところと100件持ってるところと非常にいろいろなバラエティーがあって、特許制度というのはやはり公平でなくちゃいけなくて、たくさん持ってるということが、資本力のあらわれが有利不利につながってはいけないと思いますので、その辺は慎重にお考えいただいた方がいいのではないかと思います。
以上です。

委員長

どうぞ。

委員

私も、今の渡部委員の後半は賛成でございまして、大きいたくさんの企業の場合にはそういうことをお考えなのかもしれないんですが、少しずつ出している会社にとりましては、ちょっと不公平感が強いという気がいたします。
それから、先日来、この委員会始まって以来、戻し拒絶20%というのがございまして、急に心配になりまして事務所の方をちょっと調べてみましたら、何件かございます。その理由をちょっと問いただしていったんですが、例えば明細書がありまして、拒絶理由が最初のが出ます。それに補正書を出します。最初の例えばクレームがA+Bで、補正書でA+B+Cということで提出をいたしましたら、Cはニューマターであるということで、最後の拒絶理由通知という、最後がついた拒絶理由通知が参ります。拒絶理由通知ではありますけど、この段階では、これをB,というものに変更できないので、そのままになって、結局ほったらかすんだと。それで、また新しく考えて出し直すんだというんですが、なぜかと言いますと、最初の拒絶通知のときに、補正書でA+B+Cとしたものが、補正の却下という手続がございませんものですから、そのままずっと残ってしまうと。そうすると、最後の拒絶理由通知が来たときに、その対象となるものはA+B+Cであって、A+B,というようなものに変更ができないということがあるんだということを聞きましたので、今、却下処分というのはないんでございましょうか。ちょっと私、きょう条文を見てこなったんですが、何か手続上はないと聞いておりますが。

事務局

今の補正の却下ですが、審査の段階のニューマターの追加というのは拒絶理由というふうに、この前の平成5年の改正で変えております。ただ、最後の拒絶理由の後で補正をして、新しい事項を入れたとかそういった場合には、補正却下という手続がございます。補正不備についての扱いは2種類ございます。時期によって、その却下をする手続が入ってございます。

委員

どうもありがとうございます。もう一度検討してみます。

委員長

どうぞ。

委員

先ほどから同一出願人の入れかえという話が大分出ておりますが、今特許庁の方でテーマ審査といいますか1つのテーマをまとめて審査するということを行っておられるかと思います。このような場合、入れかえるというよりは、今後1つの技術をまとめて審査していくということは非常に審査の質を上げることにもつながりますし、ある意味での効率性も確保されると思います。
時々基本的な特許やその他の出願が審査請求の同じ時期から落ちている場合があります。しかし決して審査を遅らせるという意味ではありません。まとめて審査するメリットが大きいわけですので、テーマ審査を前提にした動きを行っていただければ非常によいと考えます。

委員長

どうぞ。

委員

先ほどから、自分の椅子の順番を入れかえるというのに対していろいろ反対意見が出されていますが、非常に大きな問題は、早く審査するという要求というのは非常に強いんですけれども、ただ企業の実態から見ますと、すべての特許を早く審査してもらいたいということではありません。必要なものが的確な時期に権利化されるということが、企業活動の場合非常に大事なポイントでございます。的確な次期に権利化されるということが、どういう形で担保されていくかという議論になるかと思います。
早期審査制度というのは、活用すればするほど、どんどん平均的に遅くなるわけでございまして、もしそうなった場合には、みんな海外出願しているからということで、早期審査がさらに利用されることになります。例えばキヤノンの場合でも、かなりの数を海外出願しておりますので、それを理由に早期審査制度を利用し始めますと、とんでもない数になっていく。そうすると、平均的にみんな遅れてしまって、制度を利用しない人は、何らかの歯止めが無い限り、何年も待たされるというとんでもない状況が、絶対に出てきてしまいます。
ですから、このような弊害を逆に防ぐためには、自分自身のいすの順番を入れかえる。これは他の出願人の方々に一切迷惑をかけるということはないわけでございまして、現状の早期審査制度も考慮して透明性と公平性を担保したらどうかなという、一つの提案でございます。

委員長

入れかえの問題につきましては、賛否両論、基本的なポイントをお伺いしたと思いますので、ちょっと次回までに事務局の方で議論を整理していただいて、また次回に必要であればお答えしたいと思いますが、ここで、今までいただいたコメント、御質問に対して、特許庁の方で何かお答えになることがあれば、まとめてお答えいただきたいと思いますが、いかがですか。

事務局

補正の適正化につきまして、沢山の御意見をいただきました。補正の今後の運用につきましては、欧州で行われている運用、あるいはPCTに準拠した形で、どういったものが許されていくのかということを、分野の特殊性も考慮しながら審査基準を見直していきたいというふうに思ってございます。
それから、サポート要件でございますが、御指摘の、余り強くすると厳格になり過ぎてクレームが狭くなるのではないかということでございますけれども、我々もよく承知しておりまして、ヨーロッパ特許庁の運用等も非常に注意深く運用基準を書いてございますので、私どものところも、実施例に限定をするという過去の運用の反省の上に立って平成6年法ができてございますので、逆戻りしない形での運用ということを心がけていきたいというふうに思っております。
それから、先ほど委員の方から御指摘のありましたところでございますが、ちょっと私の説明をはしょった関係もあり、御指摘の36条第6項1号のところに、サポート要件として書いてあるのではないかという点ですが、そもそもそこがサポート要件として読めるのではないかということで我々も議論をしておるわけでございます。ただ、今の運用では、欧州と同じような形にはなっておりません。それで、御指摘のそういうものがないから、かえって、先ほどの事例で申し上げましたように、音声認識自動翻訳装置のところにワードプロセッサーの引用例が提示されると、それこそ出願人の方との間の意思疎通が欠けておるのではないかということでございまして、私どもサポート要件のところで、これこれこういう理由で広過ぎますよというような拒絶理由を書かせていただきますと、委員の御指摘のように、スムーズな出願人との間のコミュニケーションができていくんじゃないかなということでございます。今後、法律的に改正をしなきゃいけないのか、今のままで運用でできるのか、そういうことも含めて検討課題にさせていただくというふうに受け取らさせていただきたいと思っております。

委員長

それでは、時間の都合もありますので、審査制度関連の議論については以上にしたいと思いますが、特に何か最後に、まだ審査制度について御意見おありでしたらお伺いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
料金制度関連

委員長

それでは、次の2番目の議題であります料金制度関連の問題について議論を移したいと思いますが、まず最初に、事務局から資料について御説明いただきたいと思います。

事務局

それでは、資料4の「小委員会における指摘事項と対応の方向」中の料金関係について扱っている14ページ以降から御説明をさせていただきたいと思います。
料金関係につきましては、今回御提案している料金体系の見直し以外にも、制度面でのいろいろな工夫というものも視野に入れて議論すべきとしていろいろ御指摘をいただいております。15ページでございますけれども、審査につきましては、すべての方が早い審査を望むわけではなくて、一方で遅い審査を御希望される方もおられることを踏まえ、これらについて料金面で差別化を図るべきではないかという御指摘がございました。
欧米においても、審査順序について別途料金を設けている事例はございます。我が国におきましても、早期審査に関して議論した際に、料金面での対応をすべきといった議論もございましたけれども、当時の議論としては、順番の入れ替えという面はあるにせよ基本的には審査を受けるという行政サービスは同じであり、また、現行法上優先審査制度においても改正当時の議論では料金面の差異は設けないこととしていたことから、これらを踏まえ、料金面での差異は設けないという考え方が、現在の早期審査についても該当するという整理になってございます。
この点につきまして、料金で早さを買うとすべきか、料金で遅さを買うとすべきか、いずれとするにせよ、私どもでは、引き続き、オープンに御意見をお聞きしつつも、現時点では料金面での制度的対応は、過去の法律改正の議論などを踏まえてやや消極的ということでございます。今後、またニーズや諸外国の動きももう一度勉強しまして、対応を考えたいと思います。
それから、16ページでございますが、請求料を着手時払いとして、今の先払いをやめ、払うまでは審査着手を審査がとめるべきといった議論がございました。
未払いに対して審査の着手を保留することにより、出願人がある程度着手時を決めることができる制度になりますと、実質的には審査請求期間の延長になる効果が生じることになると考えられます。もちろん御提案の方は、むしろそれによって審査請求を後ろ倒ししたらどうかという、そういう御趣旨があるのかとは思いますけれども、私どもといたしましては、審査請求の短縮により、第三者の監視負担の軽減という、全体の利益を考慮して採り入れた制度でございますので、実質的に審査請求期間の延長を図るような制度については、やや困難ではないかというふうに考えてございます。
それから、17ページでございますが、出願の取り下げについて返納制度を設けるべきかという御議論についてでございます。現在も出願の取り下げはできますが、料金は返らない形になってございますが、審査請求を行った後に事業性の判断や他の技術進歩等により、審査待ちの期間において、審査が不用となるというものも現にあるように伺っております。そういう意味では、こういったものにつきましての出願取り下げということは、余計なものの審査をしないという意味において審査負担の軽減にもなりますし、出願人には取り下げを行うメリットが生じることになりますので、、私どもといたしましては、今回は導入を少し検討する方向で、前向きに考えたいと思っております。
それから、中小企業への影響ということへの措置が必要ではないかという御議論がございます。これは審査請求料の引き上げとか今回の料金体系の見直しをある程度踏まえた御意見だと思います。今回の料金体系の見直しについては、後ほどシミュレーションを御説明いたしますが、比較的精査して審査請求をしている中小企業の方は、、基本的には、長期的にはメリットを受けるような形にはなると思いますが、確かに短期的な資金繰りから、審査請求料の負担増大ということは懸念されるところです。
現在、特許法における資力の乏しい中小企業、これは5年未満の創業型の中小企業を基本的には念頭に置いておりますが、このほかに産業技術力強化法の研究開発型ベンチャー型の中小企業の料金減免がございます。ただ、現実にはやや利用実績が少ないということがございまして、これらの利用拡大や対象の拡大などについて方策を検討していきたいというふうに思っております。
また、出願人が先行技術調査を行う場合に適切ながいないというような場合が地方などでございます。中小企業への措置として、政策的にこうした支援も検討したいと考えております。
それから、審査の回数制限すべきである、あるいはそれ以上の審査を望む場合の料金の徴収制度を創出すべきという御提案もございました。現実に今、「最初」と「最後」の拒絶理由により、既に事実上審査の回数が制限されており、私どもといたしましては、まだ出願人の方々の御意見をすべて伺っているわけではございませんが、さらなる追加料金の創出については、まだコンセンサスがないのではないかと思っておりまして、これも引き続きの検討課題とさせていただきたいと思います。
それから、特許収支全体の問題かと思いますけれども、今まで非常に遅くに権利を取得していた関係ため、20年の壁で特許権をある程度そこであきらめざるを得ないという問題が起こっていたが、それが審査請求期間の短縮化によりまして、権利維持期間が延びるのではないかという御指摘がございました。
確かに現在の審査請求期間は3年であり、従来7年まで待っていたものが最大3年で審査請求を行うことになったため、その差のである4年間、権利を長く維持できるようになる可能性はございます。現在、全体の特許料収入の中で出願から20年目、要は20年の壁で特許権がそこで失われるものは、全体の2%から3%ということでございます。今後、確かに請求期間短縮に伴って特許期間が全体に延びる傾向が出ることは想定されますが、まだ少しどうなるか。これから相当先の話になりますので、現時点ではやや予測が困難でございます。したがって、今回の検討において具体的な影響を織り込むのは難しいのでございますけれども、影響がある程度生じる可能性があると思っておりますので、それは念頭に置いて、今後収支の見通し等は考えていきたいというふうに思います。
それから、料金体系全般のシミュレーションはどうなっているかということで、これからあとは別添の資料により簡単に試案について御説明をしたいと思います。資料9をお開きいただければと思います。
まず資料9、2ページでございますけれども、前回までの御議論で大体御説明をしたところのレビューでございます、今回の料金の見直しについての基本的考え方につきましては、コスト負担の不均衡の是正、審査請求行動の適正化、さらに出願の奨励が目的にあり、これらの観点からの審査請求料の引き下げ、特許料の引き下げによるバランスの見直し、出願料の引き下げ、さらに留意事項として、移行期における影響緩和策、こういった形で具体的な対策を打つことを基本的考え方としています。これらを原則として、16年度以降になるかと思いますけど、改定後の料金は施行日以降の出願に適用していく、こういった発想のもとで見直しを考えたいというふうに考えております。
それで、基本的な考え方ということでございますが、次のページでございますけれども、前回も御説明いたしましたとおり、出願料、審査請求料につきましては、対価性というのがもちろんございますけれども、特許料も含めて全体としては政策料金であり、あくまでも全体の料金体系を考える際には、政策的判断ということで水準を決めていくという基本的な考え方かと思います。その中で、実費については、勘案すべき諸般の事情の一つということで、今回の見直しの際に考慮していくべきではないかというふうに考えております。
4ページ目は、前回も御説明をしました、各料金の法令上の規定ぶりの差についてございますので、省略をいたします。
5ページ目でございますけれども、これも、前回御説明いたしました朝日監査法人による私どもの実費推定の資料の再掲でございまして、今回の議論のもととなるために、再度載せてございます。
現在の出願料は2万1,000円ですが、長期的には1万7,000円から1万6,000円のレベルに下がるのではないかとしております。審査請求料につきましては、現行、平均的に10万円弱御負担いただいておりますものを、実際には25万から30万のレベルになるのではないか、これが基本的なコストと実際の料金の差の部分でございます。
次のページ、6ページでございますけれども、まず出願料についてです。私どもの議論のたたき台としての御提案でございますけれども、出願につきましては、何人かの委員からも御指摘ございましたように、先願主義の下では、出願日は非常に大事であるということから、出願は速やかに行われる必要があると考えられます。特に技術内容の公開により、いろいろ社会的な外部経済、外部的に非常に便益もあるということから、出願奨励をすることが適切ではないかと思われます。これらを踏まえて容易に出願できる水準にしたいということでございまして、コストを上回る現在の水準というのは、やはり少しそれから見ると適切ではなかろうということで、長期的な見通しを踏まえまして、例えば1万6,000円というコスト程度、あるいはちょっとそれを下回るぐらいでございますけど、例えばそういう水準というのが考えられないかというのが御提案でございます。
それから、審査請求料につきまして7ページに考え方が書いてございます。審査請求料につきましては、その性格上、出願をした発明の特許性について、本当に審査を求めるかということを、一度立ちどまって考え直すという性格のものでございますけれども、今回25万から30万という実費が試算されています。仮に、かなりそれに近いところまで引き上げてしまいますと、私どもとしては、出願人の負担感が非常に大きくなって、特許性の見込まれる出願までも審査請求を控えるということが起こってしまうのではないかという、やや懸念を持っております。
また、コスト負担の均衡是正に観点から、実費との乖離をある程度小さくして、特許権者との負担関係の不均衡是正をしようという議論がございますが、請求料を20万円程度以上まで引き上げれば、これに応じて特許料を引き下げるという前提でいきますと、権利付与前と付与後の負担関係がほぼ1:1ということになります。今1:3ということでございますけれども、ある程度手続的な面で1を負担し、特許権者が残りの1を負担して、内部補助をしていくということが一つの均衡ということではどうかということで、そういたしますと、20万円から25万円というところが、一つの不均衡是正から見るバランスのとれた在り方ではないかというのが一つのたたき台でございます。
審査請求料につきましては、8ページにございますとおり、料金構造につきましては、現行の基本料と請求項数による変動分というものをある程度維持をしていくということでございます。また、先ほど料金制度のところで少し御説明しましたが、審査請求後に、かつ一次審査に着手する前の出願取り下げがあった場合には、審査請求料の一部を返還する制度というのをある程度組み込むという形で料金制度としては組んでいってはいかがかということでございます。
9ページに絵がかいてございますけれども、簡単な絵でございますので省略をいたしますが、基本的には、私どもの拒絶理由通知、または特許査定前まで取り下げが可能であるということであり、その際にはお金が返納されるということでございます。
それから、10ページに特許料について記載してあります。特許料は全体の収支を償うための水準で定めるということでございますけれども、基本的には、現行の請求項、基本部分と請求項、しかも累進制を持って、やや特許についての公開を促すという形での構造を維持すると。累進の程度につきましては、委員から御指摘ございましたけど、なるべく引き下げ効果を大きくするため、早期の部分での特許料の引き下げ率を大きくすると。累進率は高くなると思いますけれども、そういうことも検討してはどうかと思っております。
11ページでございますけれども、今現在、特許がどういうふうに実際に現存しておるかといいますと、左から右下に下がっているラインが特許全体の現存率でございます。これは出願請求期間を考えておりませんので、特許が登録されてからということでございますけれども、1、2、3年の間は通常そのまま維持され、その後、徐々に見直しの中で特許がなくなっていくと。特許料金が左から四角のラインで入っておりますけど、特許料がちょっと上がる節目の年の前にストンと落ちるという形で、料金がコストとして、企業として痛みがあるので、そのように見直しをしながら特許の精査をしておられると、こういう形で現存率がずっと減っていくという状況が見えます。他方、特許料金につきましては累進がかかっておりますので、この棒グラフのような形で実際の特許庁の特許料収入が入っている、こういう構造になってございます。
それで、今後特許の料金設定をする際に、水準を考えていく際には,全体の出願・審査請求、それから、どのぐらいの特許が取られていくか、これらによって全体の収支をちょうどミートするような形で設計をするわけでございますけれども、これまでお話ししておりますように、全査定のうちの約2割が戻し拒絶ということでありかなりまだ、色々な先行技術調査により縮小する余地があろうということが考えられます。これについて、ある程度織り込んだ形で新しい料金体系を設計してはどうかということで、ここでは2割すべてを料金改定による効果から減少を図るということではなく、いろいろな他の企業啓発等の対策も含め、この縮減を何とかしていきたいと思っておりますけれども、この料金改定では約半分の1割ぐらいを目指してはどうかということでございます。現在の特許率57%から58%程度でございますけれども、1割の戻し拒絶型の審査請求が縮減されますと、全体の比率としては63%ぐらいの特許率になると。そういう形で全体の設計をしてはどうかということです。特許率63%というところが、各企業において現行料金と新料金の中でライフサイクル全体のの将来的なコストについて、損益が出るか出ないかとする料金水準を設定することが適切ではないかということでございます。63%より良い特許率の方はやや得が生じる、悪い方は少し全体で支出が多くなる、こういう形の設計でいかがかということでございます。
料金水準のモデル、ここは私どもの試算で、皆様の御検討のたたき台ということで幾つかのモデルを示しております。まず前提として、一応出願件数が40万件、ある程度こういう水準が維持されるとしております。請求件数が24万件ということで、審査請求率は少しふえ、6割に上がっていくということを考え、その中で特許率も上がっていくということで、非常に筋肉質の出願と請求の形になって、いい形になることを一応前提として料金設計をしております。現存率は一応13年実績により、請求項8年、平均維持期間9年というモデルで、特許が維持されていくという前提でございます。
料金水準のモデルとしては、出願料は1万6,000円、請求料は20万あるいは25万という2つのケースを仮置きし、特許料の請求料の引き上げ分をどういう形で特許料に反映するかという形で4つのパターンをつくっておりまして、次ページ以降にございます。
最初のページは、20年間の特許料の引き下げで、平均的に審査請求料による特許会計の増益分に対応する場合というパターンで、それぞれ現在の形が等率縮小で基本料金と請求項という形で入ってまいります。20万円の審査請求料の引き上げの場合、左下の方に表がございますが、「差分」というところが一番右側にございますけど、特許会計全体としては、20万の場合240億円ぐらいの増収になるということで、一方、出願料の引き下げが20億円ぐらいになりますので、トータル220億円ぐらいを、特許料からの収入を少なくするように設定すると。25万の場合には、これが360億と340億の関係になるものでございます。
今御説明した20年間での引き下げのパターンすると、非常に長く特許をお持ちにならないと審査請求の引き上げ分を返してもらえないという形になりますので、これに対して少し前に倒すというものをドラスチックにやったのが15ページでございまして、江崎委員から御指摘ございましたけど、そうしますと特許料がゼロになるということになりまして、0:0というのが立つということで、すべてお戻しする形で、20万ですと1年から3年はゼロ、25万円ですと1年から6年がゼロということで、基本的にはしばらく何も払わずにお持ちいただくということです。ただ先ほどお話したとおり、特許を見直しながらいくということからすると、ややいかがかなという感じでございますけど、試算すると、こういう形になるということでございます。
16ページは、特許の平均的な維持期間が9年ということで、そこで引き下げる案を考えてみております。仮に定率で引き下げるとすると、こういう形になりまして、10年目以降の特許料をそのままにしておりますので、かなり累進制が厳しい、絶壁型でバッと特許料が上がるという状況にはなります。ただ、多くの方が9年間維持されており、そういう意味では審査料の引き上げ分はカバーしておりますので、審査請求料の引き上げ分が十分戻った上での10年目以降の特許料の設定ということでございます。
さらに、9年間の定率での引き下げを少しまた前傾させて、最初の数年の料金をゼロにしない範囲内で切り込んだのが例4でございまして、累進の形が先ほどよりも少しなだらかになるということです。
以上、色々な案を御提案しましたけど、私どもとしてもまだ模索中でございます。議論のたたき台ということで、こういうパターンでビジョンをお示ししたということでございます。
あと、18ページに検討に際しての留意事項ということで、この前もお話をしておりますが、移行期の影響緩和ということが、仮に今回の見直しをした場合には要るではないかということを考えておりまして、あわせて御検討いただければと思います。例えば返納制度を新しい新料金からやろうと思っておりますけれども、それを暫定的に現行料金のものにも前倒しで実施するという形でやる、あるいは現行の特許料を一部引き下げる形で、ある程度産業界、出願人の方々への審査料引き上げによる影響を緩和するということが考えられると思います。
また、中小企業、大学等への減免措置につきましても、審査請求料引き上げの影響は非常に大きいということで、拡充等の措置が必要ではないかということでございます。
以上でございます。

委員長

ありがとうございました。
それでは、議論に移りたいと思いますが、ただいま御説明のありました特許関係の料金体系についての考え方(試案)というものについて、御意見、御質問等がおありでしたらお願いいたします。
いかがでしょうか。
どうぞ。

委員

資料4、13ページに「PCTの国際調査報告が添付されている場合」の割引制度を検討すると書いてありますが、資料9の方にはそのようになっていません。三極でその方向性はあることは事務局から先ほどお話があったと思います。

事務局

今回の場合は、資料9のシミュレーションは皆さんに相当共通する事項を載せた関係で、御指摘の点は基本設計にはちょっと掲載してございません。別途検討ということで考えております。

委員

外国出願について、日本は国内出願が多くて外国への出願比率が少ないという御指摘が、特許庁から企業側、産業界に随分出てきていますが、このようにすると逆に奨励という形にもなりますので、特許庁の施策とも合致しているのではないかと理解しています。

委員長

ほかにいかがでしょうか。
どうぞ。

委員

ちょっと質問でもあるんですけれども、例えば20万のときには、請求項ごとに4,000って、こうありますね。9の15ページですが。私の疑問は、ほかの国にこういうのがあるのかどうか知らないのでお聞きしたいんですが、例えば請求項、1項から5項までは4,000円、6項から15項になるとそれを高くする。要するに今非常に請求項が多いのがありますよね。多いと、それだけ大変ですよね、いろいろな点で。それで、請求項が多くなると、初めに出発したのが例えば4,000円だったら、1,000円ずつどっかの枠で上げていくとか、そういう考え方はないんでしょうか。

事務局

今の御指摘の点でございますけれども、項数ではなく頁数ですがPCTで一定の数、たしか30頁ぐらいだと思いますが、それ以上になると、頁ごとに比例的に増加します。実はバイオ等の分野で何万ページ、何十万ページというのがございますので、それは実務上はPCTの場合は今紙でございますので、事務、審査負担が大変になるのでその辺でそういう体系が入っているということでございます。項数に関しても同様の考え方を、アメリカは戦略プラン等で提出はしております。米国バイオ・インダストリー協会、いわゆるバイオの産業界と米国特許との間でからのその辺の今調整をしているということでございます。一定数を越えると、負担が増えるので、ページ数、それから項数に応じて比例的に増加させるという議論がされていると聞いています。

委員

わかりました。

委員長

どうぞ。

委員

先ほど請求料着手時払いとするというのは、平成11年改正からいうとちょっと言いにくいかなという話について、いずれにせよ、今回のこの問題は、7年を3年にしたときのの算段が。だれの責任というわけではなくて、やっぱりうまくいかなかったということになります。うまくいかなかったから直すわけでありまして、一部返納だって、そういってみれば同じようなことであります。今さらそこを言ってみても、うまくいかないものは変えて流すようにするよりか仕方がないわけで、従来1回やった改正がうまくいかなかったから、ちょっとそこは恥ずかしいけれども、改めるしかないと思います。ガイドラインの改正でも、何年かたったら前のガイドラインの反対のことを言ってるという例もあるわけで、余りそこは気にしなくてもいいのではないかと思います。
審査請求料を先にもらうと、値上げすると過払いになるという問題があります。最初にすごく大きな額が出るという問題が出てたわけです。その問題を解決するためには、繰り延べして、実質的に審査請求期間を延長することがよいのではないかと思います。これは多分返納制度の場合も、審査開始の通知か何かするようにしないと、取り下げの時期の規定が置けないので、多分そういうことになるんでしょうからつくり方の問題ということで、先に入った金額をどうするかという問題ではなかろうかと思います。
先ほどのシミュレーションで、余り極端な累進制というのは、どう見てもバランスが悪いと思います。これは問題があるんではないかなという感じがいたしました。
あとは、余り短期に利益が出てしまうと、この制度の改正がまずいという意見がありますので、そこはいずれかの形で短期的に調整をする必要があると思います。既存出願には対応しないというのは、これは額を上げると駆け込みが起きるわけです。どうしてグラデーションをつけるかを考える必要があると思います。細かい制度ですけれども、1年ごとに少しずつ上がっていくという、ことをやらない限り、既存の出願にはできないということになるのではないかなと思います。ですから、そこの点はいろいろ検討していただきたいと思います。
先ほど委員からのお話がありましたが、今回の改正は別に料金だけで何とかするという問題ではなくて、今御提案のありました返納制度を含めて多様な政策の中で、どうやって出願を効率的に審査するかということであります。そのためには、現在の審査請求料が実際にかかる費用より安いということの問題点を含めて是正をするということであります。
なお、先ほどありましたが、委員の提案のうち審査官の増員というのは、これは多分できないし間に合わないと思います。審査官の養成期間は5年ないし6年ですか、、多分間に合わないと思います。しかも定員法の問題があるということでありますので、現実的な策としては、こういう政策のコンビネーション以外にないのではないかなと思います。
済みません、ちょっと長くなりました。

委員長

ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
どうぞ。

委員

9ページにあります特許料の審査請求料の一部返還に関してですが、この特許出願料の一部返還制度は、私どもにも、非常にありがたい制度だと思います。しかし冷静に考えてみますと、この特許出願が節税の手段に使われる可能性もあると思います。もうかっているときはたくさん特許を出願し、もうからなくなったらそれを取り下げる。(笑声)特許を多く出す企業には変換制度が節税の手段として使われ可能性があると思います。一部の返還ということですので、その一部がどの程度の割合になるかが重要になるかと思います。、この点については少し検討していただいた方がよいのではないでしょうか。

委員長

気がつきませんでした(笑声)。
ほかに、いかがでしょうか。
どうぞ。

委員

全然理論的根拠なくていいんですけれども、今の世の中で、こんなに倍ぐらい手数料が上がるというと、非常にみんなショックを受けるんじゃないかと思うんですけれども、大丈夫なんでしょうか。

事務局

おっしゃること、趣旨はよくわかります。ただ、本当に迅速的確な審査をやっていきたいということが、我々のまさに使命だと思っております。そのためには、先ほどから御議論いただいているように、本当にあらゆる手段を総動員しなくちゃいかぬと。そういうときに、仮に上げさせていただいて効き目がないというと、これは何やってるかわからないわけですね。ただ、先ほど事務局側が申し上げましたように、余りに上げた場合には、特許になり得るようなものまでも申請者請求されないということも、これも困るというところで、それをどういう水準に決めるかということは、またこれからの制度設計だと思いますが、確かに余り、これだけ仮に20万とか25万円になった場合には、恐らく余りないでしょうね、最近そういうのは、と思います。ただ、逆に言えば、特許料を下げ、出願料も下げると、そういう中でより適正な請求行動をされる方は、少なくとも中長期的にはプラスになるわけですから、そこはぜひとも御理解はいただきたいと。ただ、最初の時期に負担がかなりふえるというところは、これはやっぱり何か緩和策というか、さっきの取り下げも含めて考えなくちゃいけない。要すればオーバーオールな形でやっていく。
そのほかに審査官の増員というので、先ほど委員から厳しい御指摘をいただいたんですけど、我々、来年42名要求しています。これは経済産業省の要求の半分近くを要求している。どれだけつくかわかりません。経済産業省全体では定員が全体としては減っている中で、多少でも特許庁の定員はふえているわけですね。そういう努力はですね。なかなかそれですべては解決できませんけれども、やっていきたいと。アウトソーシングの徹底等も含めてですね。要すれば、あらゆる手段を総動員するということで努力していきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

委員長

どうぞ。

委員

2点ですけど、1つは、やっぱり一番効率的なのは、つまり、今後審査が渋滞していく危険性をできるだけ小さくするという観点からしますと、前回も申し上げたんですけど、急いでない人には、審査請求をできるだけおくらせてもらうというのが一番効果的じゃないかと思うんですね。そうしますと、先ほどちょっと委員の方もおっしゃったんですけど、非常に難しい面もあるようですけど、この1番、2番といいますか、やはりおくれてもいい人には料金を負けてあげるというのを、もう少し積極的に考えていただくのがいいんじゃないかなということと、やっぱり2番目の着手時払いというのもまじめに考える、もう少し検討してみる価値があるんじゃないかなというのがコメントです。
確かに審査サービス自体は同じ行政サービスですけれども、最初におっしゃったように、やっぱり政策的な料金でもありますので、そういう面を考えると、非常に渋滞しているところに必要もないのに入ってくるということについて、あるいは避けてもらえる人には安くするというのは、政策的な料金としては非常に意味があるんじゃないかなというふうに思います。それが1点です。
2点目は、シミュレーションなんですけれども、料金値上げをしても請求件数はほとんど変わらないという前提になっているんですけれども、ここはかなりアンノウンがあるんじゃないかなというふうに思うんですね。実際、民間調査会社に委託するかわりに特許庁に審査をしてもらうという人は、明らかに上げれば要求してこないわけですから、ここは、やっぱりかなりセンシビティックが必要ではないかなというふうにちょっと思いました。ですから、恐らく請求率は少し減る可能性が高いし、逆に特許率は高まるというのがもっと現実的な過程ではないかなと。
それから、ロバストネスといいますか、いろんなコンティンジェンスを少し考えておかないと。というのは、これだけ大きな変化、何が起きるかというのは必ずしも十分わからないところがありますので、その辺に対するコンテンジェンシー・プランも必要ではないかというふうに、ちょっとシミュレーションを拝見して思いました。
以上です。

委員長

どうぞ。

委員

少し別の観点からですが、今いろいろと議論がなされてまして、かなり突っ込んだ議論もございます。それで改正をしたと致しまして、その改正の結果が将来5年ぐらいたったときにうまくいってるかどうか、これはわからないわけですね。それで、私共の大学でもそうなんですが、大きな改定をしようと致しますとその点で皆がシュリンクするというか慎重になって、議論がある点でとまってしまうようなところがあります。そういうときに、5年たったら見直しますよという前提をおきますと議論がやりやすくなるわけです。しかし、これを余りやりますと、そんな5年たって変えるような頼りない改定なのかという議論と、非常にダイナミックでよろしいという両論が出てまいります。
しかし、現在のように、時代が動いておるときには、やっぱり私は、不都合がでると変えますよという態度でやっていただくと、非常に議論が前向きになり、多少大胆なことでもやろうということになると思います。そうでありませんと、改革が小幅小幅になって、何のために改革したのかわからないということになりますから。その点で、特許庁だけではなしに中央としてどういうふうなお考えなのか、それをお聞かせいただければありがたいと思います。

事務局

恐らく最近の法律はすべてそうなんですけど、3年ないし5年で、制度を変えた場合にきちんと見直すということが、法律の中で書かれてるものもありますし、附帯決議できちんと指摘されているものがあります。いずれにしても、今委員のおっしゃるとおりだと思います。我々も、なるべく今の時点で将来の見通しができればいいんですけれども、そこは100%できないのも当たり前で。でありますので、やはり一部歩きながら考えるというところが必要かと思います。
ただ、やはり何もしなければ、手をこまねいていればさらに事態は悪化するということは明らかなものですから、それは先ほど申しましたように、何か料金値上げばっかりが強調されてるわけですが、料金も上げるところは上げ、下げるところは下げる、総合的な対策をやっていくということで私どもは進めたいと思っておりますが、当然のことながら、また2年先か3年先か、こういう小委員会で、あのときどうだったか(笑声)という議論が行われないとも、それは私も保証はできないというので、そういうことのないように、今の時点で、知恵はできる限り絞ってやりたいということでございます。

委員長

どうぞ。

委員

請求料返納制度という新しい制度を導入するということと、先ほど委員の言っておられた着手時払いと、基本的に何が違うかというと、実質的に審査請求期間をどれだけ延ばせるかということになると思います。それで、請求料返納制度という場合には、平均審査待ち期間が今22カ月、約2年あるわけですから、審査請求期間が5年になったのと同じです。相澤先生の言っておられる着手時払いあるいは保留制度というのは、それをさらに空洞化させるという違いをただ意味しているだけだという感じがいたします。
いずれにしましても、実質的に必要なものをきちっと審査していくという考え方に立てば、どの辺に落ちつかせるのが妥当か、という議論に結局なってしまうと私は思います。
もう一点は、企業の場合には、限られた予算で活動しているわけでございますから、今年に対して来年一気に予算がポンと上がるということだけは、制度設計上ぜひ避けて頂きたいというところでございます。その辺のバランスをとりながら料金を改定していくというふうにしていただければと思います。
以上でございます。よろしくお願いします。

委員長

どうぞ。

委員

先ほどから先払いと後払いの議論が大分ございます。ただ、私は考え方としては先払いの場合は特許庁ぼ審査が遅れたペナルティーとして返すという考え方に立っておりまして、後払いというのはこれは必ずしも特許庁の審査が早くなることを望んでないということをあらわしておりまして、大分違うように思います。そういう意味では、特許庁が早く審査すれば返さなくていいという制度の方が、庁に対するインセンティブとしてもいいのではないかと感じております。
それから確認ですが第1回のときのデータとして大手10社の登録率の方が全体平均よりも低いというようなデータがあったと思います。そうしますと、今回のこのシミュレーションの1から4について申しますと逆に言うと中小企業に有利になって、大手10社には不利になるという料金体系だと考えていいのでしょうか。

事務局

先ほど事務局側が御説明しました63%を境として、それ以下の方には不利になると、以上の方は得になると。それ以下の方で大手10社の方は、かなりおられるということは間違いないわけです。その方々は、やはり努力はしていただきたいと。私も、ほとんど10社の方のトップにお会いしました。全部そういうお話はしてまいりました。御理解はいただいていると思っております。

委員長

時間も大分なくなりましたけど、何か特に。
どうぞ。

委員

1つだけ、ちょっと質問と意見なんでございますけど。よく物価を値上げいたしますときに、赤札堂の98円とか、20万というよりもちょっと10何万という方が(笑声)心理的にいいというようなところがございますですね。人間の心理の問題ですが。そうしますと、3年ぐらいかけまして審査請求料と特許料を順番に、このあたりでこうやっていくと、それを3年かけて。そういうお考えは、今のところはございませんですか。提案してみます。

事務局

赤札堂にならうというお話過かと思うのですけれども、今回まさしく20万と25万という一つのラインで、しかも、これで産業界、出願人の方々、いろいろ御検討いただいて、またその意見も少し集めた中で、今の委員からも御指摘がございましたように、各社のいろんな予算への影響の問題がございます。全く影響がないということであると、何のための制度改正かわかりませんので、その辺も検討する必要がございます。今お話があったところは確定的ではなく、これから実際の影響を見ながら、具体的な数字については事務的に作業をすることをしないといけないんじゃないかと思います。
それから、他方で段階的な移行に関する措置についてでございますけれども、料金制度の見直しにより、特許料の違う色々な出願等がいっぱい流通し始めるということが起こってまいります。今回の見直しは、特許料に影響するものですから、そうしますと、将来、特許流通がいろいろ盛んになると、先ほど経過措置に関して附則をいっぱい設ければ良いという相澤先生のお話でございましたけれども、料金A型、B型、C型、D型、E型が混在しながら世の中に存在することになるということになりますが、この点については一方で産業界の方から、余り複雑な制度はいかがかという議論もあるところです。そういう意味では私どもとしては、、見直しは1回で措置し、そのかわり影響緩和策でむしろ調整して、各社の予算にむちゃくちゃな打撃が生じないようにという方向、制度を簡素化にしながら適切な影響をとろうという方向、そういった手法を考えております。段階的に料金を変更すれば、影響緩和策もまた段階的になりますので、そこが非常に複雑になるのではないか、と制度の簡素化もあわせて考えております。
あと、先ほど先取り、後取りの話がございましたけれども、実は審査料のときに定常的な固定費コストがありまして、審査請求をされる方にやっぱりある程度、税金的じゃないんですけれども負担いただきたいところがあります。審査費用は変動費だけで動いてないものですから、そういう意味では着手時払いですと回収漏れが出てくるということになりまして、実際上、返納する際も全額を返納することには多分ならないとわけです。また、固定的な審査請求体制を維持するためのコストは、審査請求人全員からいただくということになりますので、着手時払いのときも全額着手時払いですと、ほかの審査請求人の方はすごく負担をしなければいけない形になりますので、この点については、先ほど委員がおっしゃったような、私どもへの圧力というのとは別論として、会計上もそういった議論があることを御理解いただければと存じます。

委員

ちょっと着手時払いの議論だけします。
着手時払いの最大の利点は、早期に導入できるということです。私の議論のねらいは、途中で返すのでは、導入時期を早めることが難しいと思います。着手時払いだったらすぐに導入できると思います。これは現在あるの3年のものについても導入できると思います。したがって、累積の渋滞に対して対策になるんではないかと思います。少なくとも導入時期を考えた制度です。
それから、私はいろいろ経過措置を考えたのは、先に払った場合のことを考えたわけでありまして、年金でバリエーションつけるということを余り想定してたわけではございません。

委員長

どうもありがとうございました。
どうぞ。

委員

早期審査制度にしても今回の料金改定にしても、実質的にはコストに見合いという面もありますけれども、いわゆる審査期間が非常におくれてきてしまっているというのに対しての言いわけ的な回避策かなとも思えます。つまり、早期審査制度もありますよ、それを利用すれば早く権利化できますよと。それから料金改定にしても、やはり数を減らしたいという、ちょっと本質的なところじゃないところでの発想も少し見え隠れする。やはり料金改定ということであれば、先ほど事務局側もコメントしておられましたけれども、審査官を増員する、それに対する手当てもすると。つまり、サービスも向上させるという前向きな議論で進めた方がいいのかなという感じがいたします。よろしくお願いしたいと思います。

委員長

ありがとうございました。
時間も超過しておりますので。
では。

委員

料金のシミュレーションを提示していただきまして、我々も帰ってから早速我々の方の予算がどうなるのかシミュレーションをしてみないといけないなと思っているんですが、幾つか割引制度等もあるということですので、その割合が一体どれぐらいのディスカウントをしていただけるのか、ぜひ具体的な、また何%とかというようなことも情報をいただけると、我々の方でもまたシミュレーションをより現実的なものにできますので、そこをよろしくお願いしたいと思います。

事務局

先ほど委員が言われた、まさに審査官もそういう総定員法の枠の中で我々最大限確保に努力しているというのは、先ほど申し上げたとおりです。それから、やはり知財戦略大綱、出願請求行動を変えていくと、企業啓発も含めてですね、これも我々宿題をいただいておりまして、角をためて牛を殺すようなつもりは全くありません。やはりジャンク的なそういう請求は、これは国全体のためにならないわけですから、そこはぜひとも企業の方の御理解もいただきたいし、制度の中でやっぱり解決できるところはしていきたいというのが私どもの偽らざる気持ちでございますので、よろしく御理解いただきたいと思います。

委員長

それでは、本日の委員会は大分時間も過ぎておりますので、これで終わりにしたいと思いますけれども、きょうの議論では、我々が目指しております迅速かつ的確な特許審査ということを実現するために、総合的な対策を構ずることが必要であるということで、補正の見直しとか料金体系の見直し、早期審査制度等々につきましていろいろと貴重な御意見をいただきましたので、今後、事務局の方で関係方面と具体的な議論をしていただきまして、次回までに迅速かつ的確な特許審査を実現する方策につきまして、できるだけ総合的な対策を作成していただいて、次回の委員会で、委員会としての中間報告を取りまとめるということにしたいと考えております。
それでは、最後になりましたけれども、次回以降の委員会の日程につきまして、事務局より連絡をいただきます。

事務局

次回第4回目の委員会でございますが、12月12日の木曜日でございます。本日と同じく3時半からこの会場で開催をしたいと思っておりまして、今委員長から御指摘のとおり、次回、中間取りまとめということで、少しこれまでの議論を整理した形でのまとめをさせていただければと思います。それ以降につきまして、早目に皆様とまた調整をさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いをいたします。

委員長

では、以上をもちまして第3回の特許制度小委員会を閉会させていただきます。どうも長時間ありがとうございました。

閉会

――了――

[更新日 2003年3月31日]

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