委員長
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この委員会のもう一つ大きなテーマであります職務発明の問題であります。これに関しまして、議論の参考にするためにアンケート調査あるいはほかの国の実情といったことについて調査をいただいておりますので、そういったことについて御報告いただきまして、その後で御質問、御議論をいただきたいと思います。
では、よろしくお願いします。
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事務局
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職務発明について、私の方から御説明させていただきます。お手元の資料4と5に基づいて御説明させていただきます。資料、ちょっと大部でございますが、前回、お約束いたしました企業アンケートの結果について御説明したいと思います。
資料4-1から4-4までございます。4-1は前回、発明者アンケートの概要ということで御説明しましたので、詳細な説明は割愛させていただきます。後ほど企業アンケートとの対比で一部引用させていただきますので、お手元に置いておいていただければと思います。
資料4-2は前回、松尾委員から御指摘いただきましたアンケート調査票そのものでございます。前回、若干御懸念があったかと思いますけれども、資料4-2のアンケート調査票の最後をごらんになっていただければと思います。別添といたしまして、現行の特許法35条の概要と、オリンパス事件の判決の概要をまとめて、これを読んだ上でアンケートにお答えいただくということで答えていただいた結果が前回の内容でございます。
それから、企業アンケートのアンケート調査票そのものが資料4-4としてつけさせていただいております。これについては、後ほど御参照いただければと思います。
資料4-3に基づきまして、企業アンケートの調査結果を御説明させていただきたいと思います。
まず、1ページ目でございます。アンケート対象でございます。3.アンケート対象とあります。集合を二つ選んでおります。Aとして、知財協の正会員を選んでおります。全部で806社でございます。恐らくこの集合はほとんど大企業であろうということで、中小企業も選ぼうということで、Bの集合を選んでおります。これは、職務発明、研究開発と関係ある制度ということで、研究開発型中小企業を選ぼうということで、平成12年度、13年度、経済産業省で行っております研究開発の補助金の交付企業1,281社を対象としております。合わせて2,087社を対象としてアンケート調査を行いました。
結果でございますが、5.の有効回答率28.8%、601社の回答がございました。この回答企業をさらに分析したのが6.でございますけれども、この中で、実際に平成10年から13年の間に特許出願を行った企業が550社ございましたので、この550社についての分析を行っております。
下にマトリックスがございます。それぞれ知財協、補助金交付企業で、大企業、中小企業、内訳を書いております。大企業が合わせて363社、中小企業が187社でございます。後ほどの分析結果をごらんになっていただければおわかりかと思いますが、中小企業につきましては知財協加盟企業とそうでない企業でかなり傾向が異なる結果が出ている項目もございますので、そういう項目につきましては、中小企業をさらに分けて行った分析もつけております。
それでは、内容に入らせていただきます。2ページ以降、アンケート対象企業のプロファイルに関係する規模とか出願件数でございます。この内容については時間の関係で割愛をさせていただきます。
本論の職務発明に関連する問いでございますが、12ページをごらんになっていただければと思います。問2-4でございます。職務発明の権利の帰属に関しての社内の取り決めがどのようになっているかということで聞いております。左側が大企業、右側が中小企業でございます。大企業はほとんどすべて使用者に帰属ということになっております。中小企業につきましては、すべて使用者に帰属というのが多いわけでございますけれども、明文の規定がないというのも35%ございます。この棒グラフの中で知財協加盟企業とそうでない企業を色分けで分けさせていただいております。
その隣のページでございますけれども、その帰属先を決める決め方ですが、どのような形で決めているかということを聞いた問いでございます。大企業、中小企業ともに就業規則により決めているのが一番多いわけでございます。その次がその他の定め、個別契約というのがございます。ただ、中小企業につきましては、先ほどの内容とほぼ同じで、明文の規定はないが、慣行によって承継している、特に定まっていない、ケース・バイ・ケースで決めているという結果が出ております。
それから、少し飛びまして報奨制度についてですが、20ページをごらんください。問3-1でございます。発明の報告から、その後の経過の段階で、どの段階に報奨制度があるかということでございます。このページは大企業でございますけれども、特許出願時の報奨は大部分の企業が持っております。特許取得時、自社実施、順次下がってきているわけでございますが、国内他社へのライセンス、海外企業へのライセンスという順に下がっています。それから、他社へのクロスライセンス等については一段下がって、制度を持っている企業は少ないという結果になっております。次のページが中小企業のところでございます。出願時、特許取得時というのは大企業と同様に多いわけですが、ライセンスの関係については制度を持っていない中小企業の割合が多いという結果が出ております。
それから、外国出願の際の制度は、22ページの問3-2でございます。職務発明に関する外国出願の取り扱いを決めている企業は、まちまちですが、設けてない企業が、中ほど、3.でございますけれども、3分の1ほどございました。この傾向は中小企業もほぼ同様で、外国についての取り扱いは、まだ必ずしもきちっと制度化されていないというところが見てとれます。
続きまして、26ページの問3-6をごらんになっていただきます。実績報奨のある企業、実績報奨について聞いたところでございますけれども、その理由でございます。これは大企業、中小企業とも特許法35条、発明奨励のためということで理由があるわけでございますけれども、次のページをごらんになっていただきますと、この中小企業のうちで、知財協加盟企業とそうでない企業をさらに分けたものでございます。知財協非加盟の中小企業については35条の規定があるからというふうに答えた企業は全くないというところです。制度の理解は知財協加盟企業はかなり高いと考えられます。
それから、その次の問3-7、28ページでございます。実績報奨金の支払い方法でございます。これにつきましては、大企業、中小企業ともに、中ほど4.でございますけれども、一定期間ごとに売上等の収益に基づいて再計算を行って支払っているという企業が圧倒的に多いという結果になっております。
飛びまして、問3-10、ページが消えておりますが、31ページになります。これは報奨金額が大幅にふえた場合、どのような影響がありますかという問いでございます。ピークが左と右にございます。左はインセンティブが高まる、優秀な研究者がやる気が高まるというところでございます。右のピークは職場間、いろんなもので社内で不公平感が高まるというようなピークがございます。
これにつきましては、同様の質問を発明者にもしております。資料4-1の18ページをごらんになっていただければと思います。18ページの上、3-12、研究者というところを見ていただければと思います。右のピークは余りなくて、研究者は職場の不公平感を余り意識しない、やる気が出ますという答えになっています。
続きまして、また資料4-3に戻っていただきます。34ページでございますが、問3-13。前問の問3-12で職務発明制度がインセンティブになっていますかという問いに対して、余りなっていないと答えた企業に対する問いでございます。そのインセンティブを向上させない理由として、報奨金額が研究者の自己評価に比べて低いというのが一番でございます。
同様に、研究者にとって報奨金ではなくて昇給昇格などの処遇の向上の方がよいと思われる企業も同様にございます。これについて、中小企業については1.の傾向は低いわけでございますが、大企業はこの二つのピークがございます。これも資料4-1を見ていただくと、15ページでございますけれども、同様の問いでございます。使用者側と従業者側で回答の傾向が違いまして、研究者の方は一番左の研究者にとって昇給昇格の処遇の向上の方がよいというところは低くて、評価が低かったというところにピークが立っているという傾向がございます。
また4-3に戻っていただきまして、39ページでございます。研究開発活動へのインセンティブとなると思うものは何かというところでございます。大企業では社内における地位、処遇の向上という答えが一番高いわけですが、中小企業については、ほぼ同様に会社の業績アップというのも高くなっております。確かに、中小企業では会社の業績が重要かなというところでございます。
下に知財協加盟企業、補助金対象企業とありますが、中小企業でも知財協加盟企業は比較的規模が大きい方で、補助金交付企業は小さい方でございますので、小さい方はより一層業績アップというところが顕著に出ているというところでございます。これについても資料4-1を見ていただきますと、7ページ、問2-1をごらんください。これを見ますと、問2-1、左側のグラフを見ていただきますと、研究者の方は、処遇だけではなくて会社の業績アップも同等にピークが立っているというところで、研究者は企業が思っている以上に会社のことも考えているという傾向かなと。
また資料4-3、43ページでございます。ここから職務発明の改正に関する質問を聞いております。35条の改正という議論がありますが、どう思っているかというところを答えていただいたところでございます。大企業につきましては、企業の定める一定水準の報奨制度が妥当とする法解釈が定着すれば改正の必要がないという意見、それから、関係団体からも意見が出ておりますけれども、現行の35条3項、4項を削除して新しい3項を設けるべきと、この二つがピークになっております。
これに対しまして、発明者側のアンケート結果でございますが、25ページをごらんください。これについては、同じ問いではないので比較するのが適当かどうかというのはございますけれども、発明者側としては、相当の対価を企業が自由に設定できるようにすべきということに対しての反対が約3割ありますというところでございます。
続きまして、資料4-3の46ページをごらんください。発明者の決定に関する質問でございます。職務発明規定がいろいろ議論されるに伴いまして、だれが発明者かによって報奨金を受けられる、受けられないという境目になるわけで、この発明者の決定がだんだん議論になってきつつあるところでございます。この発明者の決定を企業の中でどのように行われているかというのを聞いた問でございます。
大体3分の1は会社規定、手引き書、ガイドライン等に従って発明者を決定しています。残る3分の1が慣行による決定ですね。それから、特に決っていないというのが3分の1でございます。ただ、中小企業については特に定まっていないというのが5分の3、6割ございました。
なお、この発明者の決定については現在、調査を行っておりまして、アメリカの判例を中心に調査を行っております。この結果につきましては次回、その調査結果を御報告する予定にしております。
それから、この発明者の決定に関して、引き続き51ページでございます。問7-6でございます。これについて、発明者の決定に関して社内で争いがあったかどうかということでございます。8割は特にないと。逆にあるケースは2割ぐらいあるということでございます。右のページの問7-7でございますが、その争いがあった事例の案件がどういう事例かというところでございます。これについては、圧倒的に2.の上司など発明完成に寄与していない人が発明者に名を連ねていると。その点が争いになった割合が非常に高いということでございます。
企業向けのアンケートの御説明はとりあえず以上にいたしまして、後ほどの議論、引き続き海外調査の結果も御参考に議論していただいた方がよろしいかと思いますので、資料5について引き続き御説明をさせていただきます。もう少し御辛抱いただければと思います。
資料5は全部で5-1から5-5までございますが、5-2については米国の制度について、5-3はドイツ、5-4はフランス、5-5はイギリスということで、それぞれ調査をしております。それぞれ説明すると時間かかりますので、主な項目を取りまとめたものが表の5-1でございますので、これに沿って御説明をいたします。必要に応じて後ろの資料を参考にしていただければと思います。
まず、A3の紙の一番上でございますが、権利の帰属についての各国の考え方でございます。アメリカにつきましては、特許法の原則で発明は発明者に原始帰属しているということでございます。ドイツにつきましても同様でございます。フランス、英国ですが、特許法では、一応発明は発明者に帰属でございますが、それぞれ特許法の中に例外規定がございまして、職務発明は使用者に原始帰属ということで、基本的に職務発明は使用者側に帰属するということになっています。フランス、英国それぞれ同じでございます。その他の職務発明以外は従業者に原始帰属ということになっております。
それから、職務発明に関する法律関係でございます。アメリカにおきましては、特に関連する法律はございませんで、判例に基づいて判断が行われているということでございます。ドイツにつきましては、特許法と別にドイツ従業者発明法が1957年に制定されまして、これに基づいて判断されております。また、これに基づいたガイドラインがまとめられておりまして、これに基づいて各社運用がされているというところでございますが、このガイドラインにつきましては法的拘束力はございません。フランスにつきましては、フランス知的財産法にその規定がございます。イギリスにつきましても、1977年の特許法で、この職務発明制度が導入されております。
一つ飛びまして、従業者発明の分類でございます。アメリカにつきましては、今御説明したように、判例法でございますが、その判例を主に整理しますと、この三つに分けられるかと思います。
まずaでございます。従業者から使用者への譲渡義務が発生する発明ということで、これは発明任務のために雇用された従業者の職務に関連する発明でございます。もっぱら発明するために雇われた研究者については、その発明は会社側に譲渡義務が発生するということでございます。b、使用者にshop rightが与えられる発明。shop rightというのは無償の通常実施権ということでございます。これについては次の二つの条件で判断されております。一つは従業者の職務または使用者の業務に関係している発明かどうか、もう一つは使用者の設備等の資源を使用してなされた発明かどうかということでございます。この①②がandかorかというのは判例によってまちまちで、個別ケースで判断されているようでございます。cの自由発明は、このa、b以外のものということでございます。
続きまして、ドイツでございます。ドイツは2分されております。職務発明の定義は、雇用期間中の発明で職務から生じた発明または会社での経験や労働に決定的に起因する発明を職務発明としております。その他が自由発明でございます。
それから、フランスでございます。まず職務発明aでございますが、従業者の実際の職務に対応する発明任務を含む労働契約または明示的に委託された研究及び調査の遂行中になされた発明については職務発明でございます。それから、bでございます。職務外かつ使用者に承継可能な発明というカテゴリーがございまして、aの職務発明以外の発明で、従業者としての業務中になされた発明で、使用者の業務領域に属する発明または使用者の資源の使用を起因とする発明ということでございます。アメリカのshop rightに近い概念ではないかと思います。その他が自由発明という、この三つにカテゴライズされております。
それから、イギリスでございます。イギリスは職務発明として1または2に該当するものということで、まず1として、従業者の通常の業務において、または業務外で特別の任務遂行の過程においてなされた発明で、該発明の成立が合理的に期待される場合と、②は従業者の業務遂行の過程においてなされ、従業者が使用者の企業の利益を増進する特別の義務を負っていた場合ということでございます。その他が職務発明以外ということでございます。
各国の法律の適用範囲でございますけれども、アメリカは法律がないので割愛して、ドイツでございます。まず、ドイツ従業者発明法の適用は、ドイツの法律に従って設立された私企業の従業者、ドイツ公共サービス機関の従業者、ドイツ公務員、ドイツ軍の構成員によってなされた発明及び技術的改良提案について適用されます。それから、外国資産の取り扱いでございますが、これはがガイドラインにおいて、外国における発明利用も補償額算定の対象となる旨の規定がございます。
それから、フランスでございます。フランスについてはフランス法に基づく雇用契約下に置かれる従業者に適用されるということになっております。それから、これは明文の規定はございませんが、判例で外国特許に基づくロイヤリティも考慮したものがございます。
イギリスは従業者がその発明をした当時、①として、主として連合王国で雇用されていたこと、あるいは使用者が当該従業者を所属させた事業所を連合王国内に有していた場合に適用されるということになっております。それから、特許法の明文規定で、英国法、外国国内法または条約に基づく特許すべてを対象とするということで、外国資産も対象となっております。
少し飛びまして、報償(補償)の規定でございます。アメリカにつきましては、基本的に使用者と従業者間の契約に基づくということでございます。
ドイツでございますけれども、具体的な算定については、先ほど御紹介したガイドラインによって算定をされるということになっております。このガイドラインについては後ほど詳細に御説明をさせていただきます。
それから、フランスでございます。従業者は職務発明に関し追加の補償を受ける権利を有するとございます。この追加の補償というのは、フランスでは職務発明に対する対価というのは給与の一部と、給与的な性格を持つものという整理がなされているようでございまして、給与のほかに追加の補償を与えるという意味で、追加の補償という言葉が使われております。
この追加の報償とございますが、追加の補償でございます。追加の補償は団体協約、社内合意及び個々の雇用契約によって定められるということになっております。労使間の合意があれば、追加の補償はなしという企業も実際にございます。したがって、これはある意味で義務規定ではなくて、両者の合意に基づくということになっております。
それから、先ほど職務発明のカテゴリーで御紹介したbについてのものでございますけれども、先ほど御紹介した任務外かつ使用者に承継可能な発明を使用者に承継した場合、公正な補償を受る権利があるということで、これについても、ある程度補償額を求める権利が従業者側にあるということが規定されております。
それから、イギリスでございます。従業者は①または②に該当する場合に補償を受ける権利があるということで、まず①でございます。職務発明に対し従業者が職務発明をなし、当該発明に係る特許が使用者に著しい利益をもたらしている場合、補償額の算定に当たっては従業者の業務の性質や従業者の努力の度合い、他者の寄与度、使用者の貢献度等を考慮するということになっております。それから、職務発明以外のものにつきましては、その額が不適当である場合につきましては裁定を求める権利があるということになっております。
それから、補償額請求権の事項、一番下でございます。ドイツでございますが、遅くとも雇用関係終了後6カ月以内に書面によって申し立て、主張をしないといけないということになっております。
フランスにつきましては、給料の支払いと同様に、使用者による商業的利用を知った日から5年という規定になっております。
イギリスにつきましては、関係する特許が付与されたときから、当該特許の失効後1年以内に行わなければならないという規定になっております。
続きまして、2枚目をごらんになっていただければと思います。職務発明制度について、使用者側と従業者側で争いがあった場合、仲裁機関があるかどうかということでございます。ドイツとフランスにつきましては、それぞれ特許庁内に設置されております。ドイツにつきましては、裁判所に行く前に、必ずこの調停委員会にかけなければいけないという規定になっております。フランスにつきましては、調停委員会は決定を出さないで、調停案を単に示すだけということでございまして、1カ月以内に裁判所に出訴しない場合には、これで合意が形成されたものとみなすということになっております。
それから、この調停委員会あるいは裁判の結果でございますけれども、ドイツにつきまして、詳細な資料の5-3のドイツ編を見ていただければと思います。これの4ページをごらんください。ドイツ特許庁の年報からの抜粋でございますけれども、91年から98年に調停委員会にかかりました案件の平均の1発明1年間当たりの補償金額の統計でございます。これはマルクを円換算しておりますけれども、一番のピークが中ほどにございますが、1発明1年当たり6万円から12万円というのが一番多ございます。最高額は200万円強というものがございます。基本的に、調停委員会にかかりますのは、いわゆる実績補償分でございますので、この金額が数年にわたってあらわれるということになります。
フランスにつきましては、資料5-4をごらんになっていただければと思います。資料5-4の8ページをごらんください。8ページの下半分に表が出ております。追加の補償額の調停事例ということで、事案が少ないんですが、全部で15事例しかございません。94年、72万円、もう一つの事案は2発明に対してあわせて72万円と、こういうものでございます。最高額につきましては、98年のトップになりますが、1発明について1,080万円というのがトップでございます。それから、97年、一番右側に1,440万円とございます。これは8発明に対しての合計額ということでございます。その下の公正な補償額というのは、先ほど御紹介した公正補償額について調停を求めた場合の結果でございます。
それから、イギリスでございます。これは裁判所等でございますが、具体的に職能発明で裁定が下された事例はないということでございます。
次の欄でございますが、企業における実態ということでございます。これにつきましては、我々の調査と企業のヒアリング等を行ったわけでございます。まず米国でございます。米国は制度がないのでなかなか実態が把握しにくいのでございますけれども、資料5-2です。
米国調査の5ページ、6ページでございます。まずアメリカのルーセント・テクノロジー社の補償額でございます。出願時に12万円、登録時に24万円という制度でございます。次のページでございますが、HP社でございます。報告時に12万円、出願時に21万円という額が支払われております。これはインセンティブプログラムとして、補償額というか、報奨金の額でございますけれども、そのほか実際にアメリカは雇用契約でそれぞれの研究者等に対しての年俸が決められていると思いますが、その年俸額、契約については我々把握することができませんでしたので、その点については年俸で実際にどのぐらい払われるのかということについては不明でございます。
それから、外国企業に対するヒアリングということも難しいということで、日本企業の中でアメリカに研究所を持っている企業4社に対してヒアリングをさせていただきました。それがこの資料5-2の8ページ以降に書かれております。A社、B社、C社、D社という形でまとめさせていただいております。
全般的にまとめさせていただきますと、日本企業の研究所であっても、基本的には日本と異なるアメリカの制度といいますか、実態に合ったような報償制度を採用しているという企業が3社ございました。1社については、特にアメリカについて、まだ制度を設けていないということでございます。
ということでございますと、先ほど御紹介した実際の例をごらんになっていただければおわかりかと思いますが、出願時、登録時の補償額が通常の日本の企業よりも非常に高いということでございます。ただ、実績補償がほとんどないので、実績補償の面ではアメリカ企業は日本よりも低いということでございます。これも給与額、給与でどれだけ面倒を見ているかというところがわからないので、必ずしも正確な分析ではございません。
それから、アメリカの採用者については雇用の流動性が高いということで、短期間の評価を求める傾向にあるということでございます。特に顕著だったのがデザイナーでございます。工業デザインといいますか、製品のデザインをする方については職能発明制度がない。すぐに変わっていってしまうので、ほとんど年俸と処遇で対処しているという状況だということでございます。
それから、現地採用者でございますけれども、日本からの出向者と比べて、これも意外だったんですが、特許に対する意識は非常に低くて、むしろ現地採用者について知財協力を新たに行っているという例も多々あるということでございます。
アメリカについては、金銭だけではなくて、それ以外の表彰とか、経営者との会食を設けるとか、そういったインセンティブプログラムも非常に有効だと聞いております。
それから、ドイツでございます。ドイツは、後ほど御紹介しますが、現在、ガイドラインに従って計算されておりますので、それについて後ほど御紹介をさせていただきます。
それから、フランスでございます。フランスは、我々の調査で2社わかりまして、PEUGEOT-CITROEN社でございます。これについては、出願時補償が5万4,000円、外国登録時に9万円、欧州特許登録かつ実施時に21万円という制度でございます。
それから、フランスIBMでございます。こちらはポイント制を採用しているということで、各発明について出願ごとにそのポイントをカウントする。1特許出願あたり3ポイントというような、こういったポイント制を取っているということでございます。年間12ポイントになると、表彰なり賞与の対象になるということでございます。賞与については、第1特許については17万5,000円、第2特許については14万円と、こういった累退式のボーナスが与えられるということになっております。これについても、それぞれ研究者にどの程度の給与が払われているかというのを把握できなかったので、不明でございます。
それから、イギリスでございます。これは個別の業種、企業によってさまざまだということのようでございます。詳細は把握ができませんでした。
次の欄でございますけども、これは公務員、大学職員に対する職能発明制度でございます。アメリカにつきましては、連邦公務員については商務省経済庁規則というのがなされております。三つございますが、最初のポツでございますが、勤務中になされた発明、政府の資源等の助成を受けた発明、公務と直接関係する発明または公務の結果なされた発明に対する全権利は政府が取得するということになっておりまして、連邦公務員につきましては、すべての権利が政府に譲渡されるということになります。
その中で、政府の貢献が少ないと、あるいは政府に発明に対する全権利を与えることが不公平な場合、または政府が全権利取得をしても十分な利益を見込めない場合、政府の特許委員会委員長の承認によって、発明者に権利を留保させる、とどめさせるというケースがございます。ただ、このケースについても政府は政府のあらゆる目的のため、非排他的、撤回不能な、無償ライセンスを持つという規定になっております。
それから、連邦政府従業者のための1886年の技術移転法というのがございますが、これについては政府によって得られたロイヤリティの、または収入の最低15%が従業者に与えられるということになっております。
それから、ドイツでございます。大学における発明に対する特別規則が昨年1月に改正されております。新法の内容でございますが、一番下のポツでございますが、大学は雇用する従業者による発明を商業的に利用する権利を有しということで、基本的に機関帰属になっております。かわりに従業者は発明から生じた全収入の30%をうける権利を持つということで、ロイヤリティ等の収入の30%が発明者、大学の研究者等に還元されるという規定になっております。
フランスについては、大学教員を含む公務員、これは公務員全般にかかる規定でございますけれども、知財法の中に規定がございます。これについては通常の従業者発明と同様に、まず政府側に報告する義務があるということ、その追加の補償を年1回受ける権利があるということでございます。この追加の補償額の算定でございますが、ロイヤリティ等の収入から必要経費を控除した後、控除した額を基礎額として、この50%を従業者側に還元する。ただし、制限がございまして、補償算定額が年間総給与等の一定額を超える場合には、その超える部分については基礎額の25%という規定になっております。
イギリスにつきましては、特に大学云々ではなくて、他の一般ルールが適用されるということでございまして、多くの大学で大学の規則において機関帰属、大学帰属が規定されております。それから、大学に雇用されている者以外、契約職員とか教員、学生でございますが、これについても大学の規則においてあらかじめ取り扱いを規定しておくことは可能だということでございます。
それから、最後の欄でございますけれども、各国の過去の職能発明制度の取り組みでございます。アメリカにつきましては、1963年以降、関連する職能発明制度を設けようという法案が5本出ております。
最初のBrown法案は、雇用契約での特許譲渡を禁止しようということでございます。発明ごとに個別契約なり、そういった雇用契約でそもそも定めてはいけないというものでございます。次のMoss法案は、ドイツの従業者発明法に比較的近い制度でございます。次のHart-Owens法案は、企業の得た利益の2%を発明者に還元すべきというものでございます。次のKastenmeier法案の1本目でございますけれども、これは連邦公務員以外の職能発明制度に対する改正法でございます。職能発明以外の予約承継は禁止すべきという法案でございます。次の第2法案でございますが、これは連邦公務員も含め、すべてのものに対して適用すべきというものでございます。この改正の議論につきましては、資料5-2の6ページ、7ページに紹介をさせていただいております。
資料5-2の6ページの6.改正及び改正の試みということでございます。こういう改正法案が出た背景としては、Aにございますが、不公平な分配になる可能性があるということと、発明からの利益の可能性がなければ画期的な提案が減るのではないかというような危機感、それから、諸外国では職能発明制度をちゃんと実定法で定めているのに、アメリカは判例法だというふうなこと、こういった議論から出されたものでございますが、いずれの法案も産業界の反対で否決をされております。
続きまして、ドイツでございます。ドイツは資料5-3をごらんになっていただければと思います。5-3の5ページ以降でございます。
申しわけございません。その前に、なぜこういう改正法が出てくるかということで、現行のガイドラインについて御紹介させていただきます。別とじで5-3の後ろについているかと思いますが、補償金額の算定方法(現行法)というものがA4、2枚とA3、1枚、ホッチキスどめされたものがお手元にあるかと思います。補償金額の算定方法(現行法)と、これが現行のドイツ従業者発明法の算定の方法でございます。
まず、一番上に補償金額はどのような算式で計算されるかということが規定されておりまして、発明の価値掛ける従業者の貢献度になっております。この発明の価値はどのように決めるのかということについては、下にあります三つ方法がございます。類似の実施ライセンス、実施許諾から判断する方法、もう一つは企業の収益を基準に、それによって収益がどれだけ上がったかという方法、それから、このいずれもなかなか難しいので、類似の許諾例というのがない場合ですが、見積りによって算定する方法。このいずれかの方法で発明の価値を求めるというものでございます。
それから、従業者の貢献度につきましては、その下でございますけれども、これについてもパラメータが三つございます。課題の設定についての貢献度、課題の解決に対しての貢献度、企業における従業者の任務と地位に関しての評価点、この三つございまして、それぞれポイント制になっております。下にございますけれども、貢献度は、評価点が全部で20点満点になるかと思いますが、この合計点がXに入ります。そのXに該当するAの値がこの貢献度になりまして、その数値が上の従業者の貢献度にはまるということでございます。
あわせまして、現行の従業者発明法では、一番後ろについていますA3の紙を開いていただければと思います。左側をごらんになっていただければと思います。これは現行のフローチャートでございます。手続が非常に厳密に規定されております。従業者が職能発明を完成した時点で、遅滞なく書面によって使用者に報告をしないといけないということがございます。その内容に不備がある場合、何回かやりとりをいたしまして、最終的に使用者側が従業者発明について権利を請求するかどうかを決めて求めます。
従業者側の権利の請求には二通りございまして、無制限権利請求は、すべての権利を使用者側が取得することになります。制限的権利請求は、通常実施権を取得するというものでございます。ドイツの場合は、通常実施権についても有償になっております。このどちらを取るかというのを企業側は従業者に通知するということになっております。
それから、企業側は従業者から取得をした場合には、使用者は国内出願をする義務を負うということになっております。それから、国内出願またはこの特許を放棄する場合には従業者側に通知を行って、従業者側は所定の期間中に、譲り渡すような譲渡を要求することができます。
外国出願につきましては、使用者側は無制限権利請求を行った場合には外国で出願する権利を持つということでございますが、出願しない国については、従業者に外国出願をする権利を譲渡することも可能でございます。
こういった手続の後に補償金を決定いたしまして、通知をするということでございますが、この額に不服がある場合には、先ほど御紹介した調停委員会に申し立てをすることになっています。
こういった意味で、手続が煩雑だということと、先ほどの評価のところでございますけれども、特に従業者の貢献度のところで、当然ながら、Xのポイントが従業者側と使用者側で、「私はもっと貢献していた」「そうでもないんじゃないか」という見解の相違もございまして、手続が煩雑だということと、なかなか合意しないということで、調停に至るような紛争が多いということでございます。
調停につきましては、資料5-3の3ページを御覧になっていただければと思います。実際のドイツの調停委員会における事案の件数でございます。毎年、平均して90件前後、調停委員会に上がっているという状況でございます。
こういったことから、非常に手続が煩雑だということ、それから、こういった事務手続を管理する企業側の負担もばかにならないということ、ある企業によっては管理コストの方が報償金で支払う額よりも多いと、倍ぐらいコストをかけるという高コスト構造になっているということもあって、これを何とか見直さないかという機運が出てきております。
それで、5-3の5ページ、6.からでございますけれども、2001年に改正素案が司法省によって策定されております。基本的には、手続を簡素化するということでございます。その具体的な内容でございますが、先ほどの別紙の2枚目をごらんになっていただければよろしいかと思います。補償金額の算定方法改正提案でございます。金額については、下のフローチャートを見ていただきますと、使用者が権利請求をしたとき、これは一律9万円を支払うということでございます。それから、その権利を実施すると、実施した場合、左側の第2の補償でございますけれども、利用の開始から3年6カ月後に24万円を支払うということになっています。もう一つ、第2の補償でございますけれども、企業側が権利を取得したにもかかわらず実施をしていない場合、ただ実施していなく、長期で持っている場合については、中ほどの第2の補償でございますけれども、6万円を支払うということになっております。
それから、実績補償でございますが、これは追加の補償ということで、中ほどにございますテーブルに基づいて算定されるということになっております。その発明が利用開始されて8年間の総売上額あるいは収入増加額に基づいて補償金が一律に決まるということでございます。
ちなみに、表の一番下でいきますと、5億ユーロ、約600億円の売上の場合に720万円の補償金が与えられるということになっております。なお、これよりも売上等が多くなった場合でございますけども、5億ユーロあるいは1,250万ユーロの収入増については、その都度2.5万ユーロ、補償金が増額されるという制度になっております。
それから、フローチャートにつきましても、先ほどA3の右側にございますが、かなり簡素化されておりまして、従業者から使用者側に発明したという報告があった場合に、4カ月以内に返すと、従業者側が返すと言わない限り、自動的に使用者側が権利を持つということになっております。それから、国内、外国出願の取り扱いでございますが、これについては出願義務がなくなっております。いろんな事務の簡素化が行われているわけでございます。
これにつきまして、産業界、労働界からさまざまな意見が出されております。現在、まだ立法化のめどが立っていないわけでございますけれども、今回、我々の調査で関係団体何社かに聞いた結果でいきますと、7ページでございますけれども、1番の争点は、第1の補償額が低すぎるのでもっと上げろと、使用者側はこれ以上上げたらこの案は飲めないというような、このあたりの綱引きになっているようでございます。ただ、このあたり、うまく折り合いがつけば、今年度中に立法作業に入る可能性も残されているという状況でございます。
ドイツについては以上でございます。
フランスについては改正の動きは特にございません。
あと、イギリスでございますけども、資料5-5の7ページ、8ページ目をこらんになっていただければと思います。7ページ、改正の試みというのがございます。一番初めが1983年の知的財産とイノベーションに関するグリーンペーパーというのが出されておりまして、ドイツ式にもっと従業者の保護を強化すべきではないかという意見が出されております。続きまして、86年にホワイトペーパーが出ているわけでございますけれども、これではドイツの手続は煩雑だとか、コストがかかるということで非常に評判が悪いという結果でございまして、特に改正に結びついておりません。
最近でございますが、そのページの一番下にございますが、昨年、英国特許庁がコンサルテーションペーパーを出しております。貿易産業省と共同でございますが、この中に、ここには幾つかの特許法改正等々幾つかのコンサルテーションが記載されているわけでございますが、そのうちの一文、パラグラフ73以降、これはイギリス特許庁のホームページからもダウンロードできますが、そこに職能発明についての記載がございます。以下はその抜粋でございます。
具体的な改正の方向性が書かれているわけではなくて、幾つか現行のイギリスの職能発明制度に対する問題点、問題提起がなされているというところでございます。特にこの中で注目すべきは、③にございますが、初めの方で御紹介しましたが、著しい利益を上げたものについては従業者に相当の対価を……、相当の対価といいますか、補償金を与えるという規定なんですが、実際にはこれが支払われた事例がないということでございまして、これは何らかの制度に問題があるのではないかという問題提起がなされております。
現在、このコンサルテーションペーパーについては、ことしの2月21日までパブリックコメント募集中でございまして、それ終了後、何らかの動きになる可能性があるということでございます。
非常に長時間にわたって恐縮でございますが、調査結果について御説明をさせていただきました。今後の議論の参考にさせていただければと思います。ありがとうございました。
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委員長
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どうもありがとうございました。
今、職務発明に関します国内でのアンケートの集計結果と各国の従業者発明制度について大変詳しく御説明いただきまして、私も大変勉強になりました。これは次回も引き続き議論する予定でありますけれども、あと残された時間で、今の御説明に対する質問あるいは御意見等、自由にお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。
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委員
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今の二つ、日本でのアンケート結果と海外の様子を聞いていて、難しいなと思ったのが一点あります。
日本で職務発明制度を手厚くしていくと、職場における不公平感が出るという懸念があるという意見がたくさん出ていました。これが多分アメリカと日本の技術屋さんに対する意識の大きな違いかなというふうに思っています。
アメリカ、ドイツ、フランス、イギリスと、いろんな国の状況を教えていただきましたけれども、ある意味、アメリカは国としての制度も余りない、すべて個人と会社の契約によって決ってくるところが多いと。我々の雑誌もアメリカの出版社と協力して毎年1年に1回、技術者のサラリー調査をやっているんですね。日本のエンジニアの給与がどれくらい上がっているかとか、どんなことに不満を持っているか、アメリカにイータイムズという技術屋さん向けの雑誌があって、そこも同じような調査をしていて、アメリカのエンジニアの給与はどうか。
決定的に日本とアメリカで違うのは、日本はすごくなだらかな給与の曲線を描いて、平均値のところに非常に多いようなところを描くんですね。もちろん年齢が上がれば日本は給与上がるんですけれども、アメリカのエンジニアにいろんな調査をやると、ものすごいドラスチックで、ダイナミックレンジが広いんですね。
具体的には、各プロジェクトのリーダーになると、日本でいうと、1,000万円から1,500万円くらいは必ず取るんですね。そのかわり、技術屋さんというのもいろんな人がいて、テストをしたりとか、バックエンドでいろんなサポートをする人たちの給与は物すごく安いんですね。4万ドルとか、5万ドルとか、普通のエントリーレベルの給与しかないんですね。
そういった意味で、アメリカは、不公平感と関係なく職制によって高い給与を取る人たちは、コンペティターに対して自分たちのテクノロジーは何が強いかとか、知財はどうすればいいのかとか、値段を下げにはどうすればいいのかとか、特許だけではなくて、会社にとっての強い技術は何かというのを決めていく人たちは非常に高いサラリーを取る。
ところが、日本みたいに、ある意味で発明をする人たちにいい給料を与えるということは、ほかへの不公平感があるというような……。単一的な給与体系みたいなことを考えていると、この問題は解けないのかなという気がします。
というのは、中村修二さんのケースもそうですし、日立の発明者のケースもそうですし、いろんなケースで個別に取材して聞いていると、皆さん、発明をする段階で日本の職務発明制度に対する不満があって、何かいい発明ができなかったということは全然なくて、発明をしているときは、技術者なのですごく新しいことに挑戦する気持ちがあって、発明をした結果として、その後、みんなマネージャークラスになったときに、会社とごたごたが生じて嫌になってやめちゃって、何か会社を訴える手段がないのかなというのが多くのケースだと思うんですね。
ですから、ここにいらゃっしゃるアイ・ビー・エムさんやトヨタさんとか、キヤノンさんとか、そのケースではほとんどそういう事例が出てこないのは多分、発明表彰制度云々が発明のインセンティブになっているか云々というよりも、会社の不満によるところがすごく大きいのであって、国としての制度の問題というよりは、各メーカーがこれをどういうふうに現場のエンジニアのモチベーションを高めるために使っていくかという戦略によるところが多いような気がして、制度、制度でこうすべきというのとはちょっと違うのかなというのをきょう、全体的なお話を伺っていて感じたまでです。
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委員長
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ありがとうございました。
制度論としてというよりも、経営の問題だというお話かと……
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委員
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と私は思います。
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委員長
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今おっしゃったように、不満を持っている人が、この制度を使って不満を払すといいますか、そういう形で使われているとしたら、制度としても問題があるということ……
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委員
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のような気がして、よく聞かれるのは相当の対価という非常にあいまいな表現で、相当が何を意味するかわからないので、その解釈をめぐってトラブルが起こっているということを強く感じるんですね。
それは、会社側の方を取材しても、エンジニアを取材しても、非常にわかりにくい言葉だという言い方をしているので、制度としてうまく機能していないような……。会社に恨みを晴らすときに、逆手に取るための道具立てとしか役に立っていない感じを私は受けてしまう部分があります。
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委員
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今の御意見、もっともだというふうに思うんですけど、それを考えていくと、35条における補償金というものが給与の一部なのか、そうじゃないのかという議論になってくると思うんです。この35条の議論は給料外の話として全部動いていますので、いろんな制度上の問題が出てきているのかなというふうに感じております。
特殊な人に極めて手厚くできるような雇用体系が取れる方がいいのか、そうじゃなくて平均的にチームワークによって開発をしていった方がよりいいのか、これは技術によっても違うでしょうし、対象製品によっても違うと思います。将来の研究開発の方向性を含めて、どちらがいいのかというのは、企業において考えていかなければいけない話ではないかなと思っています。
もう一つは、特許だけすごく議論されていますけれども、意匠法にも同じように入っているわけです。デザイナーはどうするのということを考えますと、デザイナーではほとんど問題になってきてないわけです。なぜかというと、流動性は結構高いですし、海外のデザイナーを使ったりして、すぐれたデザイナーのいる拠点に人を持っていったりしているわけです。そこで雇用している。
そういう意味では、特許よりも一歩進んで、日本の企業も雇用形態を持ってきているということで、これをあわせて直すとすれば、その部分も考えていただかないと、制度上の大きな矛盾が出てくるのかなというふうに感じております。
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委員長
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どうもありがとうございました。
どうぞ。
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委員
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これは質問なんですけれども、アメリカの過去、現在、今後の改正の試みというところで、1963年から82年までの間に5件法案が出されて、みんなつぶれたという御紹介でしたが、それ以後はないというふうに理解してよろしゅうございましょうか。
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事務局
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我々の調査では、これしか把握しておりません。
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委員
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すごくおもしろいと思ったのは、アメリカでプロパテント政策が1980年ぐらいから盛んになったというか、それ以前は、特許というのは非常に冷遇されていたと聞いています。
したがって、特許が冷遇されたときに、こういう動きがたくさんあって、特許が非常によく使われるというか、利用されると、余りそういうところは起きないということでありますね。ということは、日本の状況をどう理解していいかというのが一つ非常に興味あるポイントだなと思いました。
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委員
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恨みを晴らすのに裁判所に行く以外ないのか、あるいは裁判所に行く前に、この調停委員会式のものですね、そういうものについて日本の発明者、従業者はどういうふうに考えているのかなとか、外国において調停委員会の構成をどうするかとか、そういう議論は行われているのかどうか、お聞きしたいと思います。
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事務局
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とりあえず、調停委員会の構成については議論されていないと理解しています。ドイツにつきましては、技術者2名と、もう一人が裁判官で構成されて、場合によって、従業者側、使用者側がそれに参加するということはできます。これについて、特に議論はないと理解しております。
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委員
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今のに関連してですけど、日本ではアンケートで、どうしたらいいかというところまでは調査されてないということでしょうか。
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事務局
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申しわけありません。そこまで踏み込んだ調査はしておりません。
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委員長
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ほかに何かございませんか。
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委員
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この問題は、先ほどから御指摘のように、非常に複雑な問題が絡んでおります。例えば制度比較をしましても、各国において労働環境が違います。先ほど委員御指摘のように、日本とアメリカでは契約の体系が違うとかいう問題がありまして、アメリカでやっている制度をそのまま日本に持ってきたらうまくいくかどうか、という問題があります。
そういう問題がありますので、他の制度調和と違って、外国に合わせればいいというものではないという難しさがあります。
それから、先ほど委員御指摘のように、労働環境が少しずつ変わってきています。その中で、法改正をするというのはなかなか難しい問題であります。どう動くかわからないところで制度をいじるということは非常に難しい問題であると思います。
それから、先ほどの調査結果にありますように、インセンティブについても、使用者側、発明者側に、いろいろな受け取り方の違いなどもあります。知的財産に関する全体的な状況の中で、発明者に対するインセンティブをどう考えるかという問題もあるのではないかと思います。そういうところで対処する必要がありますので、これについては慎重な検討が必要ではないかという感じがいたします。
さらに、こういう権利の承継に関する問題でありますから、法改正をしたとしても、法施行前、つまり現在に起きている事態に対して対処することはできません。既に権利承継が終わっていないもの、これからの出願に対するものについてしか改正法が適用できないということになると思います。財産権の移転に関するものを変えれば、既に出願してしまったものの対価については現行35条に規定があるわけですから、これをひっくり返すということは、法改正では難しいと考えられます。そういうこともあり、慎重に検討すべき問題ではないかと思います。
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委員長
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どうもありがとうございました。
どうぞ。
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委員
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少し質問なんですが、大きなA3の米国の公務員、大学職員等による発明の場合。読んでみますと、公務員に対することだけであって、アメリカの大学で国立というのはないわけですから、いわゆる例のバイ・ドール法との関係なんかどうなっているのか、御説明いただきたいと思います。
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事務局
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今、御指摘のとおり、連邦大学というのはないので、基本的に、この規定は大学関係者に適用されることはございません。したがって、あとは各大学が学内規定によって、研究者に対してロイヤリティのどれだけの対価を支払うかというのを各大学のパテントポリシーをつくって決めているというのが実情でございます。
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委員
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わかりました。
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委員
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私、先ほど委員の言われた慎重にというのは非常によくわかるんですけれども、私ども弁護士から見ますと、今、裁判所に何件か継続しておりますけれども、裁判官だけが……。一つの裁判官で一つの部に3人ぐらいしか裁判官いませんね。そういうところで一体どういうものを基準にして何を考えて判断してくださるのか、すごい恐ろしいので、この問題は早急にみんなで取り組まなちゃいけない。
今どうするかという問題、継続しているものは、やはり方向性がないと、本当に企業の人も弁護士も非常に不安で、何とかしなければと思っております。そういう点で集中的に早く検討していただきたいと思います。
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委員
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適用範囲で外国の特許について補償の関係はどうだろうかという話で、この表を見ますと、ドイツと英国ではガイドラインとか、そういう法律とかがあるみたいですが、フランスではそういう判例があるという話ですね。
アメリカでは、補償の問題が裁判で争われた事例はあると思いますけれども、その場合に、どういうふうになったか、何か例はあるんでしょうか。
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事務局
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アメリカについては、補償のところに書いてあるように、基本的に使用者と従業者の契約なので、契約で外国分についても、規定されていれば、それでカバーされるということになります。
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委員
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裁判で争われた例は……。
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事務局
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契約があれば、契約の有効、無効の議論はあるにせよ、有効であれば、外国分について補償するとあれば、補償することになります。
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委員長
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実際にそういうケースがあったかどうかということは……。
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事務局
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済みません、それ自体はまだ把握していません。
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部会長
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この問題は、昨年7月に出されました知的財産戦略大綱の中でも重要であるということで明記してございますけれども、戦略大綱は2005年までのアクションプランを決めてあります。2005年までに各官庁では法改正等の行為をせよと書いてあります。職務発明の問題は勿論記載されていますけれども、検討項目となっております。霞が関用語では、「検討」というのは何もしないという意味もあるやに聞いておりますけれども、この大綱では、重要項目であるから慎重にかつ十分に検討するという意味での検討です。
なぜ具体的にこれをやるということを書いてないかといいますと、先ほど委員がおっしゃったように、これは労使関係に密接に関係しておりまして、現在の流動化している労使関係が一体どうなるのか、あるいはどういうふうに持っていくべきかということにつきまして戦略会議では詰め切れなかったということです。この問題はたまたま特許法の中に規定ありますが、実は特許法だけの問題ではなくて、労働法を含んだいろんな複雑な問題を含んでおりますので、これは慎重に検討していただきたい。
一回決めますと、よくも悪くも10年やそこらはそれでゆくことになります。しかも、先ほど委員がおっしゃいましたけども、これから何か決めても、当分の間、10年、20年間は過去の事件が訴訟になってきます。今、裁判であらわれている事件は大体20年前ぐらいの事件ですから、これから20年ぐらいは現行法を適用する事件が続くでしょう。
したがって、十分検討をして、将来に禍根を残さないような制度をつくってもらいたい。もちろん余り遅くやっていいというわけではありません。一生懸命やっていただきたいのですが、十分な検討をしていただきたいということが私の希望でございます。
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事務局
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大綱の規定の内容について、もう少し正確に御説明させていただきます。我々の宿題としては、改正の是非及び改正する場合にはその方向性について検討を行い、2003年度中に結論を得るということになっておりますので、改正する、しないについて来年度中に結論を出さないといけないということになっておりますので、よろしくお願いいたします。
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委員
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一つ質問があります。ドイツの雇用関係との補完性があると思いますので、そういう意味で、総合的な検討が必要だという議論もわかるんです。
ただ、今の制度の御紹介を受けますと、ドイツだけが非常に例外的な制度を持っているというふうにも見受けられるんです。つまり、労働市場のあり方は例えばフランス、ドイツとそんなに違うのかどうか。
ドイツと似たような労働システムを持っているところでも、ドイツの従業者発明法を適用しない国が多数あります。むしろ、ドイツだけが例外的感じがしまして、ドイツをどう評価するかというところについてはいかがなんでしょうか。
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事務局
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ドイツの雇用関係についても、我々はまだ完全に把握していないので、それについてなかなかコメントはできないんですが、少なくとも現行のドイツ従業者発明法については、先ほど御説明したとおりの問題点が労使ともに挙がっていて、これを簡素化する動きがあるという事実だけ、とりあえず我々は把握しているということでございます。
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部会長
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ドイツに関しましては、非常に長い歴史がありまして、第1次世界大戦よりも前から、労働組合がこの問題を扱ってきました。したがって、元来は、むしろ労働法に近い労働協約等の問題として扱われてきた。現在のドイツは労使関係は非常に特殊です。委員がおっしゃるとおり、この問題はドイツの特殊な問題だろうと思います。特殊という意味ではアメリカも極めて特殊でして、労使関係は関係なく契約だけで処理をしています。
恐らく日本も特殊なんであろうという気はいたします。特許と違いまして、ハーモナイズする必要がありませんから、世界じゅう、労使関係というのはその国の歴史により異なっており、特殊なものが多いだろうと思います。それだけに、外国のことはもちろん参考になりますけれども、十分日本のことは把握して研究をしていただきたい。こういう趣旨で申し上げたわけです。
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委員
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先ほど委員から御質問のあった件ですけども、法律の成り立ちはともかく、私どもヨーロッパとかドイツの自動車メーカーといろんな情報交換をやっております。その中で、ドイツの自動車メーカーが総じて言うのは、一つは実に大変な制度で大きな争いを抱えておりますということと、先ほど南課長からも御紹介あったんですけれども、これに対するコストは報償金全体の金額の倍ぐらいかけてやっているんですということで、何とかやめられないかというのが彼らの本音でした。
ところが、もう一つ、最近、日本の企業を含めて分析を彼らもし始めまして、特許の出願件数が日本は非常に多いと、もうちょっといい言い方をすると、彼らは「日本は戦略的である」という言い方をしておりました。そのようにしたいんだけども、この制度が厳格なために余り特許は出せないんだというものが一つ大きな弊害になっているということでございます。
フランスの自動車メーカーはもともと特許の制度に対する理解が極めて低いところですので、件数は極めて少ない。アメリカもそれほど多くないということで、一つ言えるのは、日本ほど特許の理解度が末端まで浸透し、これだけの件数を抱えているところは、最も潜在的に大きなトラブルを、このまま進むと抱いてしまう危険があるということだと思います。そういう意味では、企業にとっては極めて重要な問題だと認識しております。
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委員長
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時間が大体尽きましたけれども、何か特に御発言がおありでしたら、最後にしたいと思いますが、ありませんでしょうか。
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委員
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アンケート結果として、研究者側のアンケート、企業側のアンケートってあるんですけどね、企業といっても、研究者以外に経理だ、人事だ、いろんな方がいると思うんです。その方たちが今のこういういろんな課題をどう見ているかというのが非常に重要なことなんですね、企業の立場からすると。企業のアンケートがその辺、代表してくれているのかなという感じもするんです。
私、ほかの部門でいろいろ聞くと、何で研究者だけがいろんな面で考慮されるんだという話は、あっちこっちから、ほかの部署から聞こえてくるわけです。その辺もバランスよく考えていくべきかなと。
先ほどお話あったように、企業側としては今後、いろんな面でこの問題がずうっと放置されていくと、リスクをずうっと抱えていくわけですね。それに対する方向性は示していただきたいなという気はいたします。
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委員長
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どうもありがとうございました。
きょうはいろいろな論点を出していただきましたけれども、次回から少し論点を整理して議論を集約する方向へ向かっていきたいと思っております。活発な御意見をいろいろといただきましてありがとうございました。
最後に、今後のスケジュールについて事務局から御説明いただきたいと思います。
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事務局
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今後の小委員会のスケジュールについて御説明をさせていただきたいと思います。
次回、第6回の小委員会を2月21日の金曜日、第7回の小委員会を3月18日の火曜日、いずれも15時から17時ということで御連絡を差し上げております。検討内容につきましては、職務発明の問題、またワーキンググループでの検討が進んでおりますけれども医療行為の問題についてもこれらに関する議論をお願いしたいと存じます。それから、9月の時点で少しお示しし、議論がとまっている実用新案の問題につきましても、その後の動きがございますので、それも含めまして検討させていただきたいと思います。あわせて、先ほど長官からも申し上げましたとおり、年度末に特許戦略計画という特許の審査関係の全体の計画がございまして、これについての取りまとめもございますので、これについても少し御報告をしていきたいと思っております。
また、この小委員会の親部会である産業構造審議会知的財産政策部会が2月18日の火曜日に開催される予定でございます。現在、四つの小委員会において御審議頂いておりますけれども、その活動状況の報告と中間取りまとめ等の報告をするということになってございます。本委員会からは後藤先生に御出席いただきまして、報告、コメントをいただきたいと思っております。以上のスケジュールでお願いしたいと思っております。
以上でございます。
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委員長
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以上をもちまして、第5回の特許制度小委員会を閉会いたします。長時間、どうもありがとうございました。
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