ここから本文です。
委員長 |
時間となりましたので始めたいと思います。 |
---|---|
委員長 |
どうもありがとうございました。 |
委員長 |
それでは早速議題に入らせていただきますが、その前に2月18日に開催された知的財産政策部会で了承いただきました新しい委員を御紹介させていただきたいと思います。事務局の方からよろしくお願いいたします。 |
---|---|
事務局 |
資料2を御覧いただければと思います。 |
委員 |
竹田でございます。よろしくお願いいたします。 |
事務局 |
引き続きまして、京都大学大学院法学研究科教授の山本委員でございます。 |
委員 |
山本と申します。よろしくお願いします。 |
事務局 |
なお、本日は御予定が合わず残念ながら御欠席でございますけれども、名簿にございますように、日本労働組合総連合会経済政策局長の須賀委員、同志社大学法学部法学研究科教授の土田委員、日本経済団体連合会の丸島委員、理化学研究所フロンティア研究センター長の丸山委員の4名の委員に御就任をいただいております。 |
委員長 |
ありがとうございました。 |
委員長 |
それでは、引き続きまして、本小委員会の中間取りまとめについて先日の知的財産政策部会において審議いただいておりますので、その模様について事務局から御報告をいただきます。どうぞよろしくお願いします。 |
---|---|
事務局 |
それでは、先日開催されました部会での審議の様子を御報告させていただきます。 |
委員長 |
どうもありがとうございました。 |
委員長 |
それでは、引き続きまして、ただいま御説明いただきました知的財産政策部会の動きなどを踏まえて今国会において法律改正が行われておりますが、その動向等、あるいは知的財産立国に向けた経済産業省の取り組み、特に特許料金関係について御説明いただきたいと思います。 |
---|---|
事務局 |
それでは、資料5-1及び5-2を使って御説明したいと思います。 |
委員長 |
どうもありがとうございました。 |
委員 |
料金改定について、一つだけ、お伺いします。 |
事務局 |
今後の出願審査請求件数の見通しと、審査請求機関を3年間にした後の4年間にわたってされる審査請求についての私どもの過去の経験、またこれまでの企業へのヒアリング調査等から、パターン化いたしましたところ、完全な予測というのは現実的になかなか難しいのですけれども、マクロベースでは改定特許料の先行引き下げによって特許庁の収入はそれほど増えない形になっております。確かに各個別の企業ベースによりますと出願戦略等によって相違が生じることがあると思いますけれども、特許庁と産業界間でのマクロベースでは、これまでとほぼ同額の負担をいただくことになると考えております。ですので、コンスタントに特許を出願しておられるような企業につきましては、予算上、それほど激しいものではないといいますか、現状にかなり近い負担の形になってくると理解をしております。 |
委員長 |
どうもありがとうございました。 |
委員 |
中小企業の減免措置の申請に当たって手続の簡素化ということが書かれていますが、以前に話が出ました宣誓供述書の提出ぐらいの簡素化が図れるのでしょうか。宣誓供述書の提出ですと日本の法律になじまないという御意見もありましたが,今回どの程度簡素化されるものなのでしょうか。 |
事務局 |
宣誓供述書の導入につきましては、この小委員会でも御議論していただきましたが、日本の法体系上の問題、またあとのサンクションの問題もあって、なかなか難しいのではないかという御意見があり、基本的には現状のまま、事前に適合性をチェックした上でその制度を御利用いただくという方向でございます。ですので、宣誓書で簡素化するという意味では、ございません。簡素化に関しては、現在、各地方の経済産業局を通じて具体的なユーザーの方々の経験、例えば「この手続きが非常に難しかった」とか、「この手続きがやや過剰ではないか」といった御意見をお聞きしております。こうした御意見を踏まえて、現在は毎年提出していただいている資料をある年にのみ提出していただければいいことにするべきではないか、あるいは登記関係の書類を出願ごとに一々提出しなくても、何か他の書類で代替できないかなど、簡素化に向けて具体的な措置を一つ一つ可能な範囲でどんどん検討し、進めていきたいと考えております。 |
委員長 |
ありがとうございました。 |
委員 |
取り下げ返還制度についてです。2分の1返還する方向でということは非常に結構ですけれども、審査に着手される時期が出願人にとって非常に読みにくいものですから、例えば特許庁さん側からの出願人への通知とか、そういうことは困難ということで考えておられるのでしょうか。その点だけ、お聞きしたいと思います。 |
事務局 |
具体的な条文にする際には、現在の補正の期間に関する規定と同じような書き方になろうかと思います。この点に関しては、この審議会でも御議論いただきましたが、通知システムの問題のほかに、実際に取り下げをされる方がどのぐらいおられるかということが考慮すべき問題だと思います。私どもが幾つかの企業にヒアリングをいたしましたところ、平均すると1割とか2割の審査請求について使用する、あるいは全然使わないというお考えの企業もありました。相当多くのケースでは、使わない可能性があるところ、すべての審査請求に関して通知を出すと、そのコストをまた料金に上乗せなければいけませんので、多分返還する金額が下がってしまうという問題が起こります。ホームページ上で各分野の審査待ち期間が公開されますので、今はそれを見て補正をかけるタイミングを図っておられると思いますけれども、それと同じ作業の中で取り下げ、返還請求のタイミングもお考えいただくことを想定しております。各企業におかれては、今、申しましたとおり、補正のタイミングと同じタイミングでの作業でございますので、それである程度御対応いただけるものと考えております。つまり、特許庁から最初の拒絶通知等が出るまでは返還ができることとし、かえって全体の簡素化が図れなくなりそうな「通知」はしない方向で思っておりますので、各分野での審査の情報をなるべくきちっと特許庁から公開していくということで御判断いただきたいと思います。もちろん各弁理士事務所の方に特許庁とが日ごろから連携を密にしていただいて、審査状況の情報はユーザの皆様に入れていっていただくということが主なパターンになるのではないかと思っております。 |
委員 |
わかりました。 |
委員 |
三つのラインの一番下で、出願・審査請求が改定施行日の前である場合には旧特許料を適用するとあります。しかし、新しく改定した後ですから、改定特許料にしてしまえば、下の表の2番目と3番目が全く同じになって、その方が矛盾がないような気が致します。わざわざここだけ旧特許料を適用しなければいけない理由はあまりないように思いますが、いかがですか。 |
事務局 |
先ほど御説明した料金の見直しに伴う負担の増減の相殺関係に関する問題でございますが、一番下の既出願の特許料をすべてを下げますと特許庁で大幅に歳入減が出まして、その分、新特許料金を上げなければいけないという構造になります。今回の制度改正の趣旨である、審査請求に適切なインセンティブを効かすという意味においては、御指摘のような扱いとすると一般均衡は可能ですけれども、今後の特許料が上がっていってしまい、趣旨を損ないかねないと思われます。ここの方々は、現行のまま安い審査請求料しか払っておりませんので、このようになります。もちろん、私どもとしては、施行日以前に審査請求をされるものも含めて、審査請求の適正化はお願いしていきますけれども、経済的インセンティブとしてはあまり強い効果がございませんので、従来どおりの審査請求行動がされる可能性が高いとすると、ここだけを安くする理屈がないという考えでございます。もちろん真ん中の線も理屈としては、厳しいところがありますけれども、先ほど申しました全体の収支の均衡化ということから、収支相償でこのパターンが必要だといえるところでございます。 |
委員 |
一つ質問でございます。審査請求の返還については、(別紙1)の図では一番下の線の適用になるのでしょうか。それとも真ん中の線だけになるのでしょうか。 |
事務局 |
取り下げは一番下の線から全部適用いたします。 |
委員 |
真ん中の出願ですと、駆け込み出願的といいますか、施行前に出しておこうという出願が一斉に出て審査請求の方に影響するような気がいたすのでございますが、いかがでございましょうか。 |
事務局 |
先ほど申しましたように統計的な出願件数をもとにした見込みですけれども、過去に値上げをした際の状況をおって調べてみますと、出願については先願の地位を得る関係で、若干の特許料の問題だけで出願を後にするというケースはこれまであまりおられず、つまり出願については値上げに関係なくコンスタントにずっと伸びております。唯一ありうるケースについて言えば、審査請求をさらに遅らせるために審査請求を3年の範囲内で後ろに倒す方がおられるかもしれないということですけれども、普通はあまり起こらないのではないかと考えております。基本的には前へ倒すことは幾らでもあり得ても、後ろへ下げられることは起きにくいと予想しております。もちろんたとえば3月にするはずの審査請求を4月にするといったマージナルな後ろ倒しのケースは起きうるとは思われますが、もともと適正な審査請求時期があれば、10万円が15万円から16万円になるわけですけれども、特許の権利期間を削ってまで審査請求が大幅に後ろへ倒れる可能性は、あまりないと思っております。 |
委員 |
ありがとうございました。 |
委員 |
同じ表で確認です。国際出願の場合は国際出願日ということでよろしいでしょうか。それが一点。それから、中間取りまとめで明細書の裏づけ要件という話も出ていましたけれども、それは法改正の方には反映されないということでしょうか。 |
事務局 |
国際出願も同じ扱いでございます。 |
委員 |
料金体系の見直しがあまりドラスティックでない形で行われたわけですけれども、審査請求の取り下げが今は1割から2割程度ということですが、審査遅延の対策として、大丈夫なのでしょうか。一番聞いてはいけない質問かもしれないのですが。 |
事務局 |
今回、戦略計画の議論を一回延ばさせていただいたのも、具体的な料金が決まらないとその効果の試算が難しいということにあり、このほかいろいろな考慮すべき過程、問題がございまして、お持ちするには少し時間がかかったこともございます。これから今後の審査に関する計画の詳細な議論を進めてまいりたいと思っています。 |
委員 |
料金改定が行われましたら、私ども企業の立場から言いますと、さらに適格な審査をやっていただきたい。 |
事務局 |
そこは肝に銘じて対応してまいりたいと思います。 |
委員長 |
2人の委員からだめ押しの御質問が出て御回答もいただきましたので、前半の議題は一応ここで終わりということにさせていただきまして、そろそろ後半の方へ移りたいと思います。 |
委員長 |
後半の議題は、先ほども申し上げましたように職務発明の問題でありますけれども、まず最初に当小委員会での検討スケジュールについて御説明をいただきまして、引き続き職務発明制度の問題の一つのポイントになります発明者の決定についての日米の制度について御説明をいただき、その後で御議論いただきたいと思います。 |
事務局 |
お手元の資料6に基づきまして、今後の職務発明に関連する検討スケジュールを御紹介したいと思います。資料6につきましては先日の部会でも報告させていただいたスケジュールでございます。 |
事務局 |
引き続き、宿題として残っておりました発明者の決定についての調査結果を御説明させていただきたいと思います。資料7-1が日本における発明者の決定について、7-2が米国でございます。 |
---|---|
委員長 |
どうもありがとうございました。 |
委員 |
ちょっと教えていただきたいのです。2ページの例4)に「提供した着想が新しい場合は、着想者は発明者である。」とありますね。その後、ほかの人が公表したときには「着想者が着想を具体化することなく、」と書いてあります。だから、具体的な着想ともうちょっと抽象的な着想のようなものがあるように思うのです。 |
事務局 |
2ページの例4)と後ろの判例ですが、これについては整合性がとれているのではないかと思います。新しい着想をした人が発明者だというのが基本的考え方ですが、それについては、ただし書きにもありますが、「具体化することなく、」というのは、例えば当業者が容易に実施可能な程度に具体的なものにしないと、その着想は発明としては認められないという趣旨ですので、例4)の後段にありますように、このケースでは、上位のアイディアを実際に具体化した人が発明者になりますよと。 |
委員 |
そうすると、このケースでは、「着想が新しい場合は、着想者は発明者である。」と書いてあるけれども、まだ具体化していないアイディアだけでは発明者ではありませんという趣旨ですね。 |
事務局 |
はい。ただし書き以降はそういう意味にとっていただければと思います。 |
委員 |
そうすると、後の方と関連する。わかりました。 |
委員 |
すごく素朴な疑問です。発明者が誰かというのが決まるか決まらないかということが、今、日本における中でいろいろな新しい技術革新を生む問題になっているという意識があるのかなと思っています。今日は企業の方々もいらっしゃいますが、これは会社の中の問題のことが比較的多いような気がしまして、会社の中で出願するときに、何もしない上司を載せたりするのはどうかとか、そういうレベルかなという感じがするので、本質的に、日本の産業力を強くするかどうかというときの原点として、これが大きな問題になるような感じがしないのですが、いかがなものですか。 |
事務局 |
今回発明者の決定を調査して御報告させていただいた経緯をまず御紹介しますと、さかのぼれば、知財戦略会議で大綱をつくるに当たって、当然、職務発明そのものの議論が活発に行われたわけでございますけれども、その過程で、相当の対価といいますか、補償金の額がこれだけ高騰してくると、発明者に名を連ねたか連ねないかで結構争いが出てくる。そこを厳格に運用しないと争いの種になるので、そのあたりも調べた方がいいのではないかということでやることになったというのが経緯でございます。そういう意味では、確かに職務発明制度そのものをどうするかという本質的な議論とはちょっと違って、それに派生する関連のものだという御理解でよろしいのではないかと思います。 |
委員 |
関連して、もしおわかりでしたらということですが、企業の発明の中にはいわゆる冒認発明がかなり含まれているだろうと。そういう調査データがあるのか、あるいは今そういうことが事例として相当量含まれていると考えられているのか、その辺はいかがでしょうか。 |
事務局 |
その種の統計なりデータはとったことがございません。 |
委員 |
難しいと思うんです。 |
事務局 |
具体的な事件で争われたことは幾つかの判例でもありますが、統計的なものはとっておりません。 |
委員 |
これは意味があるのかどうか、わからないのですが、単純に、共同発明者の数は日本の場合と米国の場合等々で差があったりするのでしょうか。著しく多いとか。バイオの発明なんかで非常に大勢の発明者を連ねているケースが時々ありますけれども、そういうのは差があるのでしょうか。 |
事務局 |
そういった統計について私は存じ上げないのですが、もしわかれば次回にでもお知らせしたいと思います。 |
委員 |
今の統計のことは私もお答えできませんけれども、発明者が誰かという問題は、先ほど事務局から説明があったように、今、職務発明の問題が非常にクローズアップされておりますし、先ほど御説明いただいた判決の中にも平成10年来の判決が幾つもあるわけです。それが最近非常に多くなってきているのは、結局、職務発明における相当な対価の請求権という問題が常に問題になってくるために、企業でチームをつくって研究開発を行うというのが通常の形態でしょうけれども、その場合に誰が発明者になっているかということが非常に大きな問題になってきているのではないかと思います。 |
委員 |
発明者の特定は、今、委員が言われましたように、私ども企業にとりましても非常に難しい問題を含んでおります。ただ、我が社の場合はアメリカに大量の特許を出願していますので、発明者の特定は非常に慎重に行っています。ですから、先ほど御紹介いただきましたような事例についても研究して、研究開発者にきちっと教育をする。そして発明者とは何ぞやということをきちっと守ってもらっています。 |
委員 |
先ほどの発言との関連でありますが、大学からの出願については、指導教授の先生が本当に発明にタッチしたかしないか、それが常につきまとう問題であります。どうしてかといいますと、私どものTLOでオプション契約等で数千万円の収入があった場合、必要経費を除いて3分の1が還元されるわけでありますから、既に数百万円の還元を受けている先生がいらっしゃるわけです。そうしますと発明者に入っているか入っていないかで大変な差ができることになります。 |
事務局 |
今の御発言について補足させていただきます。 |
委員 |
今、調査中なのかもしれませんけれども、こういう問題をめぐって、大学なら大学レベルでも結構ですけれども、ルール化することが可能なものなのか。そういう実施例といいますか、悩みはよその国も似たようなものだと思いますけれども、ガイドラインのようなものをつくった事例はおありなのでしょうか。 |
事務局 |
大学の取り扱いについては、別途、文部科学省さんの方でいろいろ調査をされているように聞いておりますけれども、アメリカの例でいくと、各大学がそれぞれ自分のパテント・ポリシーをつくって、補償の仕方についてはそれぞれの大学独自に決めているというのが実態のようですし、当然我が国においても大学によって補償の額なり比率は異なっております。 |
委員 |
先ほど企業と大学の違いのお話がありましたが、そもそも株式会社の場合は営利を目的としていて、企業が営利を目的としないで行動するということは、取締役の義務違反ということにもなりかねません。大学はお金儲けを目的とするところではないわけでありますから、そもそも存在意義が違います。ですから、大学における今の分け方がいいかどうかということは別問題として、そもそもその理念が違うと思いますので、ここは同一に議論しない方がいいのではないかと思います。 |
委員 |
発明者のこちらの議論ではなくて、職務発明制度についてもよろしいですね。 |
委員長 |
はい。 |
委員 |
大分勉強させてきていただいたのですけれども、この問題を考えるときには、研究者に対してどういう報酬を出すのが効率的なのかという観点から考えることが非常に重要ではないかと思います。 |
委員長 |
どうもありがとうございました。 |
委員 |
今回新しく委員に加わってくださった方は、特に労使・民法・労働法というところで取り上げられているわけですが、私が知っている限りでは、発明者に対する対価が労働に対する対価と考えるべきかどうかというようなところで労働法関係が出てくるのかなと思いますが、私がわからないのは労使・民法ではなくて労働法関係がどのようにこの問題の点から考えなければいけないのかというところなので、その点、労働法の御専門の方からぜひ御説明いただきたいと思います。 |
委員長 |
御専門の委員が今日は残念ながら御欠席なので、次回にでもぜひお話を伺いたいと思います。そこは非常に大事なところだと思っておりますので。 |
委員 |
そうですね。今日はいらっしゃいませんね。 |
委員長 |
ほかに。 |
委員 |
前回、各国における法律、職務発明に対しての取り扱いについて説明いただいたわけですけれども、各国によって法律もいろいろ異なっている。確かに、これは各国における雇用関係、あるいは慣習等、いろいろなものに影響を受けた結果として法律が制定されていると理解しております。 |
委員 |
今後、職務発明についての議論がされるだろうと期待しているわけですけれども、二つの視点がございます。一つは、日本の企業は報償金の対価が欧米の企業に比べて極めて少なくて、搾取しているのではないかという現状認識が皆さんにおありなのか、マスコミにおありなのか、よくわかりませんけれども、実態としてどうなっているのかということをちゃんと調べておかなければいけないのではないか。 |
委員 |
今、委員が言われたことに関連しますが、私は今回から入ったので、これまでの議論を知りませんけれども、先ほどのスケジュールによりますと、これから短い期間で職務発明問題に対して結論を出そうということですね。各国で職務発明制度が違っているということは皆さん御存じのことでしょうし、我が国の35条の1項は契約法的、2項は労働法的な規定だということも前々から言われているわけです。そういう意味で、単に特許法の問題だけとして考えるのでは、この問題をどうすべきか、簡単に結論が出ないということは私も重々わかるのですけれども、そういう総合的な視点でこの問題を見ていくことでこの委員会を運営するのであれば、限られた何回かのスケジュールで、そういう問題をどうやって位置づけて結論まで持っていこうとされているのか。そんなことは私から見ると至難なことです。 |
事務局 |
ただ今の委員の御指摘ですけれども、それはまさにどういう観点で論点整理するかということにかかっていると思いますので、今日も含めて皆さんのいろいろな御意見をいただいた上で、論点整理のまとめ方を庁内で議論させていただいて、次回、提示させていただきたいと思います。 |
委員長 |
ほかに何かありますか。 |
委員 |
委員の皆さんからいろいろな御意見がありました。先ほど委員が御指摘のようにアメリカでは実績補償が少ないという話がありました。私は実績補償をすることが即インセンティブを強くすることだという議論をするつもりはないんですけれども、難しいのは、今委員の御指摘のように各国の雇用環境が違うわけです。労働者と労働契約のあり方も違うし、労働市場の流動性も違います。そういうところでこの制度を考えていかなければいけないというところが難しい問題ではないかと思います。先ほど委員から研究環境として何がいいのだろうという御指摘もあったわけですが、各国の研究者の流動性も国によって違いますし、そういうところも難しいのではないかと思います。 |
委員長 |
ありがとうございました。 |
委員 |
冒認出願の件ですが、冒認出願というのは同じ企業内で従業員同士の間では少ないのではないかと思います。また、大企業間での共同研究の中でも多分少ないだろうと思います。問題は、ちょっと言いにくい点もありますが、大企業と個人、あるいは大企業と中小企業間での研究において、この冒認が起こっているのではないかと思います。仮にそういうことが起こったとしても、親会社や取引先を相手に訴えるわけにいきませんので、表面に出てくるのは少ないのではないでしょうか。 |
委員長 |
どうもありがとうございました。 |
委員 |
発明者の決定についてです。私もずっと現場にいまして発明者の認定は随分長くやってきましたが、研究開発部門同士の中でもめたという経験は一回もないんです。要するに、知財部門が行って何か裁定しなければならないという経験はほとんどなくて、研究者の方も、一定のルールだけ説明すると、権利意識なり発明者の名誉を自分たちの肌として感じることができるんです。つい最近、発明者間の持ち分を決めて、この発明についてA発明者は80%、Bさんは20%というふうに発明者の持ち分も申請させるようにしたのですけれども、それについてもあまりもめない。研究者は研究者なりのルールがあるのかなという感じがします。また、共同出願について他の企業さんなり国の研究者の方とそのルールを適用しても、あまりもめたことがないケースからいくと、重要な観点ではあるのですが、研究者同士のルール、人義みたいなものがあって、その辺はもめないのかなという感じがします。 |
委員 |
細かいことですので言う必要もないかなと思ったんですけれども、やはり指摘させていただきたいと思ったことは、発明者の決定について日本と米国の事情を報告いただいて非常に勉強させていただいたわけですけれども、先ほど来出てくることの関係ですけれども、誰と誰との間でどのような紛争が起こったときにこういう判断が下されているのかということをもう少し整理していただいた方がよいのではないか。さっと見ていますと、特許の無効が問題になったケースも若干あるようですし、あるいは特許を受ける権利の確認を求めたケースもある。それに対して対価の請求をしているケース、これは紛争類型が相当に異なりますので、このあたりを整理していただくとアメリカとの対比もより一層はっきりしてくるのではないかと思います。現実に社内ではあまり問題が起こらないのだということとの兼ね合いもありますし、どういう紛争が起こり得るのかということを念頭に置いて発明者の決定の基準なりを考えるのが合理的かなと思った次第です。 |
委員長 |
貴重なアドバイス、どうもありがとうございました。 |
委員 |
今おっしゃった2人の委員の意見について私の感想を述べますと、確かに終身雇用制がしっかりしていた今までの日本の社会においては、研究者と経営者の間の関係も、おっしゃったようなことで、ほとんど問題は出てこなかったと思います。今、現実に職務発明に対する相当の対価の請求で問題になってくるのは、現在企業に雇用されている人の間で起きることは極めて例外的、ほとんどないだろうと思います。ほとんどの場合がやめてから後の問題になってくるわけです。 |
委員 |
質問です。教えてください。 |
部会長 |
要するに、3名で発明したけれども、1名抜けていて2名に対価を払ってしまった。その1名が後から自分も欲しいと請求した場合ですね。これは対価を支払われなかった従業員は、当然会社を相手に訴訟を起こします。仮に会社が2名に払い過ぎたとすれば、今度は会社が払い過ぎていた従業員を相手に返還請求を起こす。事実上、そのような請求はしないでしょうが、勝手に払い過ぎてしまったというだけのことだと思うのです。 |
委員 |
理屈として、そうなるわけですか。 |
部会長 |
実際問題として払ってしまった従業員に「おまえ、返せ」というのは難しいとは思いますが、理屈としてはそうなるだろうと思います。 |
委員長 |
今の関連で初歩的な質問ですが、最初の特許のところに発明者として名前が出ていない人であっても、後から職務発明の対価を請求するような裁判を起こすことは可能なわけですね。 |
部会長 |
それは可能でして、発明者のところに名前が入っているかどうかは特許になってしまった後は関係ないのであって、職務発明の規定が会社にあって、会社に発明と同時に権利が移るということになっていれば移るのであり、会社はその権利を既に取得しています。たまたま発明者の欄に発明者として記載されていなくても、それは関係ない。 |
委員長 |
そうすると、最初の特許のところに発明者の名前がきちんと書かれていなかったことによる特許の有効性云々という問題は、日本では全然問題にならないんですか。 |
部会長 |
特許になってしまった後はないです。途中ですと、先ほど誰かがおっしゃいました補正とか、そういう問題があるかもしれませんけれども、特許になった後は、発明者名誉権の侵害による名誉権侵害の不法行為ということは理屈としてはあり得るけれども、例は聞いたことがありません。そこが著作権との最大の違いです。 |
委員長 |
ありがとうございました。 |
委員 |
先ほど委員が質問されたことは、私、すごくよくわかるんです。それと、本来は3人の発明者がいたときに2人しか出てこなかったと。知財部門は発明者から発明の提案書という形で受け付けるんです。時たま変なケースもあるので内容を聞きに行くときもありますけれども、さっきのケースでいくと、2人の発明者が意図的に1人の発明者を落としたということになりますか。 |
部会長 |
理屈としては今みたいなことでやらざるを得ないと思うのです。発明者として実際に発明したのに、権利がたまたま会社の方が名前を落としてしまったから権利が一切なくなるという解釈は35条からは出てこないだろうと思います。 |
委員 |
業務逸失的なものはわかります。出願のときに発明者の名前を落としてしまったということはわかりますけれども、発明者と認定して研究開発部門から上がってくるものが初めから2人だったのが実は3人だったということに対して、会社がその裁判を受けてしまうということ自体、私は理解が……。 |
委員 |
35条は、あくまでも使用者と従業者との関係で、従業者は使用者に対して対価の支払いを求める権利があります。それが支払われていない以上、それが知財部のミスであろうと研究所のミスであろうと、それは相手方の対価を払っていない従業者ではなくて、会社の管理の問題になりますから、現行法上、支払われていない対価は使用者に支払う義務があるということでになります。 |
委員 |
それは理解しています。 |
委員 |
ほかの解釈は無理ではないですか。 |
委員 |
時効は何年ですか。 |
委員 |
10年ですか。 |
部会長 |
時効はもちろんありますけれども、時効はいつから走るかとか、いろいろ問題がありますので、それはまた別の問題で、置いておきますが、解釈としてはやむを得ない。しかし問題は、誰が発明者かということがもとになりますので、戦略会議でもそこをちゃんとしてもらわなければ今言ったような企業の心配はいつまでも残る。それで、こういう議論をしてほしいと、こういう流れになっていると思います。 |
委員 |
検討の回数がそれほどもないこともあって、ややぶしつけですが、発明者の決定とか、こういうことについて何をなさろうとしているのか。議論して、まとまったものを何かやるのか、将来的に別の検討の機会を設けてガイドライン的なものをおつくりしようという含みがあるのか。その辺のところを言っていただいた方が議論上もいいのではないかと思います。 |
事務局 |
正直なところ、発明者の決定について役所からガイドラインのようなものを出すのは難しいかなと思っています。あり得るとすれば、こういう判例を幾つか紹介して事例集的なものをまとめて出すことは可能かもしれませんので、やるとしても、そのぐらいかなというところでございます。 |
部会長 |
これは裁判所が決める問題であって、経済産業省が決めても、それは裁判所を拘束しませんから、経済産業省がこうであると言っても、裁判所が違うと言ったときは困ってしまうわけです。特許の審査基準のように特許庁が自らやることを自らのガイドラインを出すことはできるのですけれども、裁判所でやることに対してはなかなか難しい。ですから、判例整理をして、その中からおのずと基準のようなものを見つけ出す程度のことしか、実際問題としてはできないのではないかと思います。 |
委員長 |
そういうことだそうですが、最後に特にこの場で発言をしておきたいことがおありでしたら、お伺いしたいと思います。 |
委員 |
部会長が言われましたように、職務発明問題は非常に多岐の問題にわたっていて、非常に難しいと思うのです。しかし、各企業の置かれた状況は知財部門を含めて日々苦しんでいる状況になっています。裁判の中で各企業が定めた規則はよろしくないというような表現も一部でされております。しかし、業界によって条件等は違っていると思いますが、いずれの企業とも研究開発者を大切にしない企業はないと思うのです。悪い規則をつくれば当然発明者、研究開発者は逃げていくわけでございますから、使用者対従業員ということで、虐げられし民族ではありませんけれども、強さが全く違うという議論も確かにありますけれども、雇用規則の中できちっとした契約を交してやっていくことが大切と考えています。各企業で定めるいろいろな規則において、例えば最低限、いくつかの点については遵守していれば、特に問題ないでしょうとかそういう具体的な指針をある程度示していかないと、いくら議論をしても無駄かなという感じを持っております。各企業の置かれた状況や、実情を含めて、議論がきちっとできればいいなと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。 |
委員長 |
今、委員がおっしゃったように、私も技術開発を通じて日本の産業の競争力を回復していくというのは急を要する問題であると思いますので、大事な問題だからというので結論を先延ばしするのではなくて、大事な問題であるからこそ徹底的に議論して、必要であれば合宿でも何でもやって、必ず方向性は示したいと思っております。 |
委員長 |
最後に今後のスケジュールについて事務局から説明していただけますでしょうか。 |
---|---|
事務局 |
今後のスケジュールでございますが、本年度の最終回、次回が3月18日(火曜日)の3時から5時ということで御連絡を差し上げております。審議会は新年度に改まっても、引き続き議論は連続いたしまして、次回は職務発明につきまして、どういう論点、切り口で議論をしていくかというところの御説明、あるいは今回延ばしました特許戦略計画に関しても方向性等について少し御紹介をして、御議論いただきたいと思います。それから、来年度に向けまして、職務発明以外にも、民間調整機関の育成の問題、先行技術調査の問題、あるいは実用新案等、幾つかの課題がございますので、これらの議論の進め方について少しお示しさせていただきたいと思っております。 |
委員長 |
では、以上をもちまして第6回特許制度小委員会を閉会いたします。 |
――了――
[更新日 2003年4月17日]
お問い合わせ |
特許庁総務部企画調査課 |