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委員長 |
それでは、時間となりましたので、始めたいと思います。 |
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委員長 |
どうもありがとうございました。 |
委員長 |
それでは、早速議題に入らせていただきます。 |
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事務局 |
これまで弁理士の代表の方ということで、下坂委員に御参加をいただいておりましたけれども、4月1日、日本弁理士会の役員の異動がございまして、下坂委員は日本弁理士会の会長に御就任をされまして、その関係で委員についての御交代のお申し出がございました。このため、今回、下坂委員が御退任をされまして、新しく後任の委員として大西国際特許事務所の弁理士でいらっしゃいます大西正悟様に新しく委員としてお願いすることになりましたので、本日、御紹介をいたしたいと思います。 |
委員長 |
どうもありがとうございました。 |
大西委員 |
ただいま御紹介いただきました大西正悟です。 |
委員長 |
どうぞよろしくお願いいたします。 |
委員長 |
それでは、次に2つ目の議題、きょうの主要な議題であります「職務発明制度の在り方について」の検討に移りたいと思いますが、まず事務局から御説明いただきたいと思います。 |
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事務局 |
それでは、お手元の資料3、それから参考資料に基づいて、御説明させていただきます。 |
委員長 |
どうもありがとうございました。 |
委員 |
これを拝見させていただいて、非常に網羅的に問題点がよく整理されているとは思います。大体入っているのではないかと思いますが、ただ非常にあっさりと書き過ぎてしまっているところがあって、根拠を少し説明したらいいのではないかというようなところが2点ばかりございます。1つは6ページの考察のところ、「発明に係る権利の承継時に推定される額」とすべきではないかという意見についてでございます。これは、要するに会社の得た利益というものについて、それを必ず考慮しなければいけないというような点に、余りこだわることは得策ではないのではないかと思うのです。インセンティブという観点からこの制度はできているとすれば、やはり早い時期にインセンティブを与えるという方が効果的なわけでございますから、したがって、利益が顕在化するということを待たなければいけないというところには余り合理性はないのではないかという点が1つであります。 |
委員長 |
どうもありがとうございました。 |
事務局 |
最後の点ですけれども、労働組合がある層については、当然、労働協約というのはあり得ると思いますけれども、ない場合には、基本的には個別契約になるのではないかと思っております。管理職組合とか、そういったものがあれば当然そこということも考え得るとは思いますけれども、選択肢としてはどちらかということではなくて、個別契約なり、労働協約、そういったいずれにしても実質的な交渉を経て決める選択肢と言いますか、方法が望ましいのではないかという視点で書かさせていただいております。 |
委員 |
済みません、それについて。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
弊社の場合は従業員の過半数を占める労働組合というものが存在しないわけでして、したがって、時間外労働とか休日勤務について規則を定める場合には、いわゆる三六協定というのですか、労働基準法36条に基づく従業員代表を選出しております。そこで会社と従業員代表との間で実質的に交渉しているのかどうかよくわかりませんけれども、そういうプロセスを経て決めるということをやっています。この「相当の対価」を決めるについてもそういうイメージ、そういうプロセスを通じて行うというふうにお考えなのでしょうか、その辺のところのお考えをお聞かせいただければと思います。 |
事務局 |
先ほどご指摘頂いたときに御説明したとおり、組合がない場合でも同等の効果として、そういった手続を踏まれている場合にはそういったプロセス、あるいはアメリカで行われているようなそれぞれ従業者と使用者との間で契約を結んでいくようなやり方というのをイメージしております。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
御説明いただいて、よくまとめられているとは思うのですけれども、問題が現行35条のままだと、企業が国際活動をする上で非常に支障がある。特に産業競争力上、支障があるというところから問題が発生していると思うのですね。それで、きょうのように各4点からの考察という見方をしていきますと、個々の問題で議論はいろいろあるかと思うのですが、大きな点で、産業界が一番望んでいるのは、裁判で対価を決めるというのをやめてほしい。企業に決めさせていただきたいという点が基本だと思うのですね。ですから、そこを認めていただけるのかどうかという点をまず議論していただいて、そのためにどういう取り決めなら認められるのかというふうに進行していただくと、焦点がはっきりするのではないかと思うのです。今のように労働協約があった場合とか、ないとかというのは個別の議論だと私は思いますので、もう少し裁判で対価を決めるのをやめていただきたい、企業の自主的な取り決めに任せていただきたいという点をどうするのかということについて御議論いただいたらありがたいと思うのですが、いかがでございましょうか。 |
事務局 |
前回、こういった観点で検討すべきというような御意見もいただいて、こういう4つの観点で整理をさせていただいているのですけれども、基本的には従業者と使用者との間で実質的な交渉を経てまとめられたものについては、それを尊重するということがずっと書かれていることでございます。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
基本的には「合意」という言葉を使われているのですが、ある瞬間における合意というのは可能だと思うのですが、企業の場合、毎年、毎年新しい人が入ってくるわけですね。そういう人は決められた規則に従って選択して入ってくるしかないと思うのですね。そういう意味からすると、すべて合意、合意と言っても、新しく入ってくる人にすべて合意をとるというのは事実上不可能だと思うのです。ですから、私は「合意」という言葉よりも、企業が自由競争で自分なりの競争力を高めるためにインセンティブを与えようという姿勢を尊重していただいて、プロセスは大事にしなければいけないと思うのですが、すべて合意、合意ということを条件づけるのはどうかというふうに私は思います。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
前回この委員会で私が申し上げたことと、その後の最高裁判決が出たという状況を踏まえて意見を申し上げます。 |
委員長 |
ありがとうございました。 |
委員 |
この「意見」という枠の中で、現行法の枠組みに従った中での解決という意見もあったと思うのですが、その点がもう一つよく反映されてはいないのではないかという感じがいたします。現行法の枠組みをどうするかということで、どうも枠組みを、合意を基準に変えるという趣旨に読めます。そうすると、35条全面削除論というのがなぜか参考資料ではないのですけれども、考え方からすれば、35条全面削除論というのは契約自由で、合意を尊重するから35条は要らないという考え方で、賛成、反対は別にして、1つの考え方を示しているとは思います。 |
委員長 |
どうもありがとうございました。 |
事務局 |
今回のこの議題の中心が「相当の対価」のところですので、必ずしも全体の全面削除論について特に議論しているわけではないのですが、1つ問いかけをさせていただいておりまして、そこは4ページのところで、4ページの一番上、(3)の前でございますけれども、基本的には合意をすればいいのではないかといったときに、仮にその合意が無効になったとき、つまり裁判所が、合意が無効なり、その合意の内容が不当であったりといいますか、契約内容に問題があると判断する場合に、裁判所が「相当の対価」を算定するに当たって斟酌できるような規定という、例えば今の4項のような規定ですけれども、そういったものを残す必要はないですかという問いかけをさせていただいております。 |
委員長 |
今、委員がおっしゃったことで、研究者の給与が外国の方が高いというのは、ちょっと私の実感と言いますか、私も外国の企業の研究所とか随分見ていますけれども、ちょっと違うような気もしますが、まあ、日本のだれと外国のだれを比べるかということもあると思うのですけれども。 |
委員 |
外国の場合には上と下の差が激しいと思いますから、多分、非常に優秀な人は非常に高いものをもらうと思います。そういう意味で言うと、日本だとまだそういう賃金体系になっていないのではないかと思います。 |
委員長 |
何かそういうことについてデータがおありですか。もし可能であれば次回ぐらいまでに。 |
事務局 |
以前に、委員の方から御紹介いただきました日米の研究者の給与比較というものをいただいておりますので、御了解いただければ、次回にその資料を配付させていただきたいと思います。 |
委員 |
ぜひともお使いください。またことしの夏もアメリカの出版社と一緒に調査をするのですけれども、1つ言えることは、アメリカのマネージャークラスが持っている給与は大体今日本の円換算をすると1,500万円ぐらいから、大きいプロジェクトになると2,000万円ぐらいもらうリーダーもたくさんいます。20人ぐらいの設計開発チームを率いる人たちはそれぐらい持っています。ところが、実際にやれと言われたことをテストするだけの人、上司から言われたことをフォーマットに従ってプログラミングするだけの人というのは400万円とか、500万円とか、ものすごい開きがあります。多分、次のときにその数値を。 |
委員長 |
よろしくお願いします。 |
委員 |
「優秀なエンジニア」という定義が大変難しいのですけれども、特許の件数で優秀なエンジニアかどうかを決めるのでしたら、これは総じて日本の研究者は大変優秀になってしまうわけです。件数だけで見て、アメリカの方と比較していかがなものかということになると……。 |
委員 |
もちろん件数の話をしているわけではありません。 |
委員 |
ええ、ですけれども、これはあくまで特許法ですから、発明が何ぼあっての物種で、ない以上は、必ずしもそういう能力だけを比較しているだけではないのではないかという気がしているのですけれども。 |
委員 |
ちょっとよろしいですか。 |
委員長 |
今の件に関係しますか。 |
委員 |
関係します。 |
委員長 |
では、どうぞ。 |
委員 |
済みません、どうもありがとうございます。 |
事務局 |
今の御質問なのですけれども、そういう意味では我々はとりあえず現行35条の枠組みを大きく超えてはいないということになるかと思います。それは3項の考え方ですけれども、これはあくまで発明を使用者側に承継譲渡した場合の対価として「相当の対価」というのがあるという枠組みは変えていないものですから、そういう意味では、個別の評価と給与とはそもそも違うのではないかというような整理になっているということでございます。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
何点かコメントしたいと思いますけれども、今の給与と「相当の対価」の関係ですけれども、これは理論上は今おっしゃったように研究者に対する給与として、対価を含ませることは可能だと思うのですね。ただ、ここでは日本の賃金体系というものを考える必要があると思うのです。まず、給与、賃金は性格としてはやはり労働なり仕事への対価という性格があるわけですから、その給与、賃金を決めるときにどういう成果を上げたか、発明をしたかということだけで給与を決めることはできないわけです。そうすると、今の日本の賃金体系を前提にしますと、発明者、研究者の給与は抑制される結果になりかねない。そこがアメリカと恐らく違うところだと思うのですけれども、その場合、給料の決め方としては、それは公正な給与の決め方とは言えないという問題点が出てくると思うのです。 |
委員長 |
どうもありがとうございました。 |
委員 |
まず制度をつくる際には、当然ながら労働組合なり、組合がなければその代表でもいいですし、あるいは発明者の代表でもいいと思うのですが、とにかく何らかの形でこういう制度にしますよという設計をする。そのときに協議をするということになると思います。具体的に、個別の発明についての当てはめに際しては、現在の制度を説明した上で、そしてあなたの発明についてはこういう形で当てはめるという情報提供をする。その上で、合意をとる。ただし、最終的には合意をとれなくてもいいと思うのですけれども、苦情処理といいますか、そういうチャンネルは用意しておく必要があると思います。その結果、従業者が合意しなくても、それはそれで交渉をきちんとしたということで、プロセスの要素というのは認められるのではないかと思います。 |
委員長 |
どうもありがとうございました。 |
委員 |
私も合意は必要ですが、個々の発明に対して合意をとる必要はないのではないかと思っています。と言いますのは、ここで利益というのが基本になっていますけれども、利益というのは特許から出た利益ではなくて、あくまでも、会社からすると製品から出た利益なのですね。ある製品に関してどのぐらいの利益を得たというのはわかりますけれども、ある特許からどのぐらいの利益を得たというのは非常に算定が、従来から議論があるように複雑で難しくて、多分不可能だと思うのですね。ですから、やはりある製品に関してその利益の額というのは確定できる。そして、それに対する例えば複数の特許が関連していて、非常に膨大な人が関係していますから、それの分配の問題だと思うのです。ですから、それは個々の人が合意をとろうとしても1人はいいと言っても1人は嫌だと言う、そういうふうに、必ずしも全員のコンセンサスが得られるとは限らないので、やはりこれは包括的に、組合でも何でもいいですけれども、そのプロセスについて合意をとる必要があるのではないか、そういうふうに思いますけれども。 |
委員長 |
どうもありがとうございました。 |
委員 |
ちょっと質問してもいいですか。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
今のお2人の御意見、よくわかったのですが、その場合には35条は廃止するという前提なのでしょうか。裁判所に行くのではなくて、別の苦情処理機関と言いますか、そういうものを設けるという、そういう新しい御提案なのかどうなのかを教えていただきたいと思います。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
35条3項は廃止を前提にしているわけではないです。つまり、35条3項の「相当の対価」を前提に、プロセスがきちんと整備されて、かつ、著しく不合理な点がないという点が確認されれば「相当の対価」を認めてもよいのではないかという提案です。ですから、そこの相関関係ということになりますね。 |
委員 |
そういう意味で、裁判所でいいわけですね。 |
委員 |
裁判所でいいです。 |
委員 |
わかりました。 |
委員長 |
ほかにいかがでしょうか。 |
委員 |
今の条文とは直接関係ないのですが、いろいろな委員の方から発明について、先ほどの「利益」という言葉も出ているのですが、実態をちょっと御理解いただいていた方がいい点があるのではないかと思うのですね。ここの中でも表現がラフでちゃんと書いていないのでわかりづらいのですが、実際は、企業は成功した開発と失敗した開発がいっぱいあるわけですね。今、35条というのは成功例だけでもって分配を考えている。失敗したケースについては、企業の場合、成功例で失敗を補わない限り再開発投資をできないわけですね。そういうこともありますから、儲かったら分配しなさいという考えも、それぞれの企業で違ってくると思うのですね。業種によっても違うし、最先端の研究をやっていればやっているほどリスクが高いと思うのですね。 |
委員長 |
ありがとうございました。 |
委員 |
弁理士会の方としてもいろいろ提言しているのですけれども、基本的にはやはり合意、契約に基づくべきではないかという提言をしております。それは私は個人的にも賛成なのです。というのは、今、委員がおっしゃったように、対価の額を決めるとか、発明者の貢献度というのは難しいと思うのです。ただし、発明者にインセンティブを与えるということを重視する会社はすごくいい会社だと思うのです。だけれども、日本の中には会社は山ほどありまして、その会社すべてがそう発明者を優遇する、いい発明をしたらそれに対して報いるという考えを持っているばかりではないと思うのです。そういった意味で35条の立法趣旨というのですか、最初に35条を設定したのは、使用者と従業者との力関係、どっちが強いという、そこの問題があったから35条が出てきた。そこの精神的なというのですか、基本的な理念は残した上で合意、もしくは契約に委ねるべきだということがいいかと思うのです。35条を全廃するということには、弁理士会の見解もそうなのですけれども、反対しているという立場です。 |
委員長 |
ありがとうございました。 |
委員 |
先ほど発言された委員の35条が産業競争力を阻害するという意見は、35条をどけてしまった方がよいというお考えだと理解してよろしいのでしょうか。 |
委員長 |
35条と競争力との関係については企業の方など、いかがでしょうか。後でもし御意見があったらお伺いしたいと思います。 |
委員 |
今、委員からお尋ねになられましたので、撤廃しろとか言っているわけではなくて、現行の法律の運用そのものが今どういう状況にあるのかという認識で申し上げて、今の運用、最高裁の判決も含めた形で言えば問題があろうというふうに申し上げました。 |
委員 |
私が法人発明を主張しているのではないかと指摘されましたが、そうは思っておりません。ただ、実態をよく御理解いただきたいという気持ちは非常に強いのです。今、産業競争力を高めるのに創造性の高い発明者を優遇しようという、これは多分すごい大きな目標で各企業も賛同していると思うのですね。ただ、そういう発明だけで産業競争力が高まるかと言ったら決してそうではない。先ほども申し上げたように、発明者が必ずしも実施化に努力するとは限らない。産業競争力は実施して、事業をやって初めて産業競争力は高まるのだと私は思っています。そういう人も大事にしなければいかんと、両面あると思うのですね。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
まず、御発言にあった「契約」と「合意」といううちの「合意」というのはどういう「合意」を言うのかよくわかりませんでしたけれども、35条を巡る、特に廃止論はどういう視点からなされているかを見てきますと、1つは、産業界に多いわけですが、これは35条があるために「相当の対価」が特に非常に高額になって、それによって産業競争力が阻害されるという視点から、むしろ基本的に契約に委ねた方がいいという考え方があって、一方では知財戦略フォーラムのように、今の状態でいると、優秀な技術者が十分な待遇を受けられないために海外に流出してしまって、日本の産業競争力は著しく低下する、それは困るから35条は廃止した方がいいと、いわば両極端から35条廃止論が出ているのではないかと見てきているのです。基本的に考えてみると、35条の規定は先ほど言いましたように、1項は民法の契約法的な考えで、2項はいわば労働者保護的な、労働法的な視点でつくられているという意味では、特許法の中では非常に特殊な規定なのかもしれませんけれども、全体的にはその辺を考えてバランスよく調整が本来できる規定と私は思ってきているわけですが、先ほど言いましたような状況にある以上は、企業が、従業者がした職務発明と使用者の関係を考えていく上には、どうしても今までの、きょうの議論でも出てきておりますように、ただ個別の1つ1つの特許と使用者との関係だけを考えていったのでは、合理的な解決が得られません。そういう意味で、やはり企業がきちっとした相当な対価に関する報奨規定を設けて、それを基本に運営をされるというのが望ましいとは思うのですけれども、企業にはいろいろな企業がありまして、契約の自由に任せておいたら、それこそ従業者の立場が完全に無視されるようなことも起きてくるでしょうし、一方で、報奨規定はつくれば何でもそれでOKだよ、裁判所が干渉することではないよと言っていては、その報奨規定自体が今言ったような35条の本来の趣旨のバランスのとれた使用者と労働者との間の権利関係の調整ということを欠くことになってしまうわけで、その意味では、報奨規定についての裁判所の審査は当然及ばなければならないし、そういう意味でその報奨規定が合理性を持つというのは強行規定であるべきだと私は思います。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
同じことを繰り返すかもしれませんけれども、産業界側は35条の廃止を要求しているのかということに対しては一応答えなければいけないので、ここで言っておきますけれども、やはりいい発明を生ませようというインセンティブを与えなければいけないという、国としてはそういう思想を表明するということは非常に重要なことでありますから、それを国の施策の一環として法律を定めるということ自体は非常にいいことだと思っております。 |
委員長 |
できるだけ広く御意見を伺いたいと思います。大学とかベンチャービジネスの方にも。どうぞ。 |
委員 |
私も法律論は詳しくないのですが、発明や特許にはTLOの関係でいろいろとタッチしております。先ほどからの御意見をお聞きし、この文書を拝見しておりますと、非常に困難な点の1つは、発明の対価、あるいは報奨の額が決められないということにあろうかと思うのです。今の委員の意見だと不可能だということですね。しかし、私共のTLOでは、それが妥当かどうかはともかくとして、とにかく特許のライセンシングによって商売をやっているわけですから、ある発明や特許について、これは幾らですよ、これは幾らであなたは契約しますか、さらにはロイヤリティはどうしますかということをやっているわけです。将来、私はそうなっていくだろうと思うのです。したがいまして、ここにもありますように、ライセンシングをする場合には、対価というものをある意味では強引にでも決めていかないとこれはできないわけです。このように対価がきまってきますと、得られた利益をどう分配するかについてかなり明確な議論ができる筈です。現状の議論を聞いていますと、私はそこまでの経験がまだ積み上げられていないのではないかと思います。したがいまして、右の議論や左の議論等が、たくさん出て、皆さんのおっしゃることは、それぞれに妥当だとも思うのでありますが、そういう議論をもとにして、現在の35条を根本的に改正するかとなると、ちょっと不可能だなというのが私の感じです。ですから、当面はその運用面を考えることによって、合意形成をはかりながら、できるだけ各企業の内部でおやりになるということだと思います。この35条があるからインセンティブが出ないとか、そういうことにはならないのではないかというのが私の考えでありまして、もう少し経験を積んだ上で、最高裁の判例も含めて、抜本的に考えるべきで、現在のところは35条はまだ生かしておいた方がよいというのが私の考えです。 |
委員長 |
どうもありがとうございました。 |
委員 |
ちょっとよろしいですか。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
経験がないと言われて、私のことをおっしゃられたのかどうかわかりませんけれども、私が申し上げたかったのは、この書面にも出ておりますけれども、契約が、これは分野によって大分違うのですが、情報産業の分野ですと、パッケージライセンスがほとんどなのですね。許諾製品は特定されていますけれども、許諾特許というのは番号すら書いていない契約がほとんどなのです。実施料が入っても、それはどの特許を使ったから実施料が入ってきたというのは契約上、わからないのです。何でそんな乱暴な契約をしているのかと法律家の方はお考えでしょうけれども、これが今、世の中、国際的に通用している契約のパターンなのです。そうしますと、1つの契約で何千件という特許が対象になっているわけです。ロイヤリティが幾ら入ってきました。これを発明単位、発明者単位に分配しましょうと言っても不可能です。ですから、私が申し上げたように何か別の形で分配方法を考えなければいけないと思うのですね。例えば、その許諾製品に関連する技術に関わった発明者とか、何かそれぞれの企業で考えることはあり得たとしても、法律の言うように、発明単位、発明者単位で相当な対価を決めろと言われると、私は非常に難しい、不可能に近いと、そういう運用をされてしまっているということなのですね、現実に。 |
委員 |
反論ではありませんが、おっしゃることはよくわかるし、現在のところはそれが実状だろうと思います。にもかかわらず、私はそれぞれの発明についての対価というものはつけられて行くと考えています。現在コンサルティングをやる人とか、ライセンシングを専門にやる企業がどんどん出てきておりますから、そういうところではノウハウを含めた突っ込みのこともあるでしょうけれども、それぞれの対価をできるだけ明かにしようということがやられておりますから。私が経験が不足だと言うのは、そういう点での経験がまだ十分積み上げられていないということを申し上げているわけです。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
私どもの会社は特許収入で会社を運営しております。特許というのは非常に重要なわけです。自分の周りの企業、同じようなベンチャー企業を見回しましても、これは私ども会社も同じですが、経営者が発明者になる場合が多いと思います。私どもの会社も特許をかなりの件数を出願しておりますが、ほとんど私の発明によるものです。35条というのはもう全然関係ないというのが現状です。報酬は自分で決めればいい、もうかっていればどんどん自分の給料を上げればいいし、もうかっていなければ上げられない、無報酬のときもあるだろうというふうに思っております。ベンチャー企業や小さい企業の場合ですと経営者が発明家になる場合が多いと思いますので、余り35条というのは意識したことがなかったというのが現状ではないでしょうか?きょう皆さんの建設的な意見、いろいろな意見を拝聴させていただいて、ああそういう問題もあったのかということを改めて勉強させていただいております。 |
委員長 |
どうもありがとうございました。 |
委員 |
発明者の立場というか、私自身は、前職は企業に勤めていまして、事業部長みたいなこともやったし、ベンチャー会社の社長みたいなこともやったわけですけれども、その中で、発明者の立場として少しお話をしたいのですが、前職の企業におりましたときに、発明したものに関して、今、随分ロイヤリティが入って、数億ぐらい毎年入っているようなことになっています。当時、私は中間管理職ぐらいの、もう少し前でしたか、それで発明をいたしまして、まあやめましたのであれなのですけれども、「相当の対価」に相当するものは一応いただいているわけですけれども、恐らく裁判所で決めてもらうと大分高くなりそうな感じがするのです、ここだけの話ですが。(笑声)しかしながら、最近、そういうようなこともあって、いろいろな方から、何であなたは訴えないのかとか、訴権を売ってくれと、これはできるのかどうか法的にはわかりませんが、いろいろな話が来るのですね。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
私、これは非常に難しくて、これがいいという結論はどうしてもまだ持てないのですけれども、少なくとも今、これを読みながら考えていますのは、「相当の対価」というのを金銭によってのみ把握するのが妥当かどうかというところに1つ疑問を感じています。それから、現実を見ますと、発明が1つの「相当の対価」というのを個別的に計算することは非常に難しくなっていると思います。しかし、請求してくる方は個別的に訴えてくるわけですから、やはり個別的に判断せざるを得ないという状況にあると思います。そうなりますと、結局基本的には私も契約規則、会社、当事者同士のものを尊重すべきだと思うのですけれども、それが合理的かどうかということで、その合理性について先ほどからどういう意味だろうかと問題になるわけです。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
先ほど委員がおっしゃっていた話なのですけれども、私、これは前回もお話をしたと思うのですけれども、今委員が先ほどからおっしゃっている企業実態という話なのですけれども、やはり我々、使用報奨みたいなものを考えるときに、やはり1年間に1ヶ月ぐらいつぶしているのですね、仕事をとめて。だから、先ほど委員がおっしゃるように、例えばライセンスであって、全部判断しろと言うのであれば、できなくはないと私は思うのですね。ところが、その判断にどのぐらい時間をとられてしまうかということなのだろうと思うのです。例えば、DVDなどは皆さん御存じだと思いますけれども、あの辺の商品などというと使用報奨だけで部分からソフト等含めて500件から600件ぐらいの特許が生じてくるわけですね。そうしたら、これも500件、600件の特許をランクづけしろと言えばできなくはないと思うのですよ。でも、それをやるのにどのぐらい時間がかかるかというのを御理解いただきたいと思うのです。そのライセンスだけであれば、ある程度の金額的効果というのははかれると思うのですけれども、片やもう一つは、35条の話というのは、自社における使用報酬の概念というのが、自社における製品に対する利用ということが入り込んでいるわけですね。だから、それが先ほどから委員の方が言っているように、そういうことを考えてください、企業実態を見てくださいという意見だろうと私は思うのですね。 |
事務局 |
よろしいですか。 |
委員長 |
はい。 |
事務局 |
今の点、少し言葉が足りなかったので補足させていただきますと、6ページの方でまず書かせていただいているのは、今、必ずしも判決の中で検討されてないような項目についても、きちっと4項に書くべきではないかということを指摘させていただいて、4項はそれと同等の項目は残しておかないといけないのではないでしょうかということを書いています。4ページ・丸3の最後の2行のガイドライン云々については、これはまた全く別の議論で、それ以上にもっとドイツのような細かいガイドラインというのを入れるという、これは予測性を高めようと思えばより細かく決めるという議論も一方でありますけれども、そこまでするということについては一体どうでしょうかという問いかけでございます。したがって、必ずしも矛盾しているわけではなくて、そういう考えのもとに書かせていただいているというところでございます。 |
委員長 |
そろそろ予定の時間も過ぎて、次回も議論するということになっておりますので、次の議題に移りたいと思いますが、その前にどうしても御発言をしておきたいという方がおられましたら、今手を挙げていただければ。 |
委員 |
まず、ガイドラインを細かくするということについては反対です。細かくしても計算し切れないと思います。実際上、無理だと思います。ドイツの方も簡略化して、ガイドライン自体すら廃止するということも少し聞いていますので、それは世界の潮流、ドイツ等の関係から見ても逆行することではないかと思っています。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
結局、35条を改正するかという問題と、それから内容をどうするのかという問題と2つあると思うのですけれども、内容の方ですが、先ほど言ったことと関連しますが、合意への移行という点はぜひ慎重に考えていただきたいと思います。例えば、合意の内容として、「労働協約」や「個別契約」と並列して書かれていますけれども、労働協約は、従業者集団との集団的な合意ですね。このときに必ず出てくる問題は、集団的合意が個別合意に代わり得るのかという問題です。個別合意と集団的合意の関係をどうとらえるのかというのは、これは実は大問題で、労働法の方では非常に大きな問題なのですね。色々なところで、労働協約や従業員集団との合意がなされた場合に、その拘束力が問題になってきます。ですから、これは並列がそもそも少し問題で、誰との間の、何についての合意なのかというところから突っ込んで議論しないと難しい面があると思います。個別の発明ならば個別従業員なのかもしれませんし、制度設計だったら、それは協約でいいかもしれません。しかし、個別発明について労働組合なり労働協約がかかわってくると、これは大問題になりますので、合意とは何かということについては、ぜひ慎重に考えていただきたいと思います。 |
委員長 |
どうもありがとうございました。 |
委員長 |
それでは、次の議題に移らせていただきますが、「特許戦略計画(仮称)と今後の検討体制について」、事務局の方から御説明いただけますでしょうか。 |
---|---|
事務局 |
簡単に御報告したいと思います。 |
委員長 |
今、事務局から御説明がありましたように、この小委員会では職務発明の議論に少し集中的に時間を使って、それと同時に、それ以外の重要な問題については2つワーキンググループを設置して、そちらで検討したいということですが、そういう進め方でよろしいでしょうか。 |
事務局 |
今後のスケジュールでございますけれども、今後の予定としては、第9回、10回、11回の開催を具体的に予定しております。第9回の小委員会は6月3日の火曜日、これは3時から5時でございます。第10回の小委員会につきましては、7月8日の火曜日、これも同じく3時から5時でございます。それから、第11回の小委員会、夏季に入ってございますけれども、8月1日の金曜日の、これもまた3時から5時でございますけれども、この会議室で開催するということで予定しております。 |
委員長 |
それでは、以上で第8回の特許制度小委員会を閉会させていただきます。 |
――了――
[更新日 2003年7月17日]
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特許庁総務部企画調査課 |