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委員長 |
では、時間となりましたので、始めたいと思います。 |
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事務局 |
お手元の資料でございますが、資料1の議事次第の後に、念のための委員名簿がございまして、資料3として、先ほど委員長からお話がございました「外国特許権等の取扱い」というところの資料がございます。資料4が遡及効の関係の資料でございます。その後に、参考資料ということで、「日経エレクトロニクス」の技術者の関係の資料がございます。その後に、資料5として、医療関連行為のワーキンググループのとりまとめ案がございます。その後に、資料6ということで、ワーキンググループに対しての意見、パブリックコメントの概要がございます。それから、別とじで、非常に厚うございますけれども、「知的財産戦略本部会合」ということで、新聞紙上にもいろいろ出ておりましたが、非常に網羅的にいろいろな議論が出ておりますので、ご参考までにということもございまして、本部の第3回の会合の資料を用意してございます。 |
委員長 |
よろしいでしょうか。 |
事務局 |
それでは、私からご説明させていただきます。 |
事務局 |
全然違うテーマになるわけですけれども、補足させていただきたいと思います。 |
委員長 |
どうもありがとうございました。 |
委員 |
実は我々の雑誌は、アメリカのCMPという出版社のEETimesという雑誌と一緒になって、毎年、夏ぐらいから1カ月ぐらいかけて、年ごとにテーマが違うのですけれども、日本のエンジニアとアメリカのエンジニアに対して同じような質問を投げかけて、それぞれのエンジニアでどれぐらい問題意識の違いがあるかということを調査しています。 |
委員長 |
大変興味深いお話、どうもありがとうございました。本来ならば、コピーではなくて、雑誌を買って配るべきだったかもしれません。どうも失礼いたしました。 |
委員 |
その前に1つお聞きしたいのですけれども、手元に知財戦略本部の「推進計画」が配られておりまして、その中で「特許法の職務発明規定を廃止又は改正する」と書かれていまして、こちらの方は来月中に完成されて、意見が出てしまうと聞いているのですが、こちらの委員会で議論していることと知財戦略本部で議論していることとの間でどのように調整をとっておられるのか、戦略本部の方で先に意見が出てしまったら、我々はそれに従うことになるのかということについてお聞きしたいのです。 |
事務局 |
私、本部の方、それこそ荒井事務局長としょっちゅういろいろと議論しておりますので、今のご質問にお答えいたします。 |
委員長 |
今の委員のご質問は、知財戦略本部の検討状況が新聞にぽんぽん出たりしていまして、皆さん、気になっておられると思いますので、後ほど議題4でもう少しご説明したいと思っておりますが、それでよろしいでしょうか。 |
委員 |
はい。 |
委員 |
資料4のご説明に対する質問ですけれども、先ほどの遡及は、現在の35条の取り決めをご説明されたと思うのですが、前の外国の件については、今、35条に入っていない。もしこれを35条に入れたとした場合、遡及は可能なのでしょうか。 |
事務局 |
今の35条で外国の特許権が果たしてどこまでカバーされているのかというのは、これからご議論いただくと思うのですけれども、恐らく余り定かでないところがあると思うのです。実際問題、35条を何らかの形で手直しすることになりますと、旧法のもとで発生した対価請求権についても、何らかの解釈上の影響を及ぼすことはあると思うのですけれども、現に発生している対価請求権が仮にあるとして、それを遡及的に制限することは難しいのではないかと申し上げているので、それに該当するかどうかというのは、個々のケースをみてみないとわからないかなということです。 |
委員 |
資料3の外国特許のお話ですが、そもそも特許法35条の趣旨をどう考えるかということが議論される必要があるのではなかろうかと思います。この規定は労働法の一部であるかのような議論もありますが、特許法の一部として考えるべきであろうと思います。雇用関係がある場合にインセンティヴをどうするかという規定であり、特許法の調整規定と考えるべきだろうと思います。最高裁判所の判例で、成立移転というのには、属地主義で、登録法国という考え方が示されているわけでございまして、それも尊重すべきだろうと思います。 |
委員長 |
どうもありがとうございました。 |
事務局 |
今のご意見でございますけれども、それはそれで一つの解釈ではあると思っております。ただ、今までのような解釈をしていくと、外国との関係で、先ほどご説明したとおり、幾つか矛盾点で出てくるという問題がありますねと。外国が雇用地主義をとっているのであれば、我が国も雇用地主義をとった方がある意味ですっきりするのかなという整理でございます。 |
委員長 |
よろしいでしょうか。 |
委員 |
ちょっと質問させていただきます。私、専門が民法ですので、国際私法は不案内なので、ちょっと聞かせていただきたいのですが、今日のお話と国際私法との関係はどのように整理されておられるのでしょうか。ちょっとご説明いただければと思います。 |
事務局 |
私ども、もちろん、国際私法を専門的に勉強したわけではないのですけれども、一般的に、特許法は属地主義ということはいわれておりまして、ほかの一般の条文の体系は、基本的に行政と出願人等の在り方を規律をしているものですから、公法的な色彩が非常に強いということがその背景にあるのだろうと思います。 |
委員 |
私も学生時代に国際私法を勉強していないので、極めてプリミティブなことしかいえないのですけれども、国際私法の問題は、問題が生じたとき、どこの国の法律を適用するかという問題で、何らかの基準をもとにして、どこかの国の法律を適用する。ある国の法律、例えば日本の法律を適用するとなった場合に、日本法自体、どこまでの事柄についてまで適用すると定めているのか。つまり、外国で生じた問題についてまで日本法が適用されると定めているのか。こういう2段構えになっていると思うのですね。今のご説明は、何か両方がかなりまじったようなご説明で、特許法35条自身が、第1段階の問題である国際私法に関するルールまで定めている、また、国内法たる特許法35条の適用範囲も同時に決めていると。もう少し整理があった方がよろしいのではないかなという気がいたします。 |
委員長 |
よろしいでしょうか。 |
委員 |
私は、これは準拠法を労務供給地法にする趣旨だと読んだのですが。特許法を改正するのか、法例を改正するのかという問題は別として、そういう趣旨だと理解していたのですが、それはどっちなのでしょうか。 |
事務局 |
管轄の問題や準拠法の問題は、特許法はある意味で何の定めもしておりませんが、私が申し上げたのは、35条については、基本的に、当事者の契約なり、私的自治の世界に対する特則のようなものであろうと。したがって、それについては、国際私法上のルールが適用されるだろう。ただ、これについては、労働契約という、ある意味で特殊性があるので、一方的な準拠法の指定は、まあ、無効ということがあるのかどうかわかりませんけれども、基本的には雇用地法によるべきではないか。まあ、それが単純だということかもしれませんけれども、そういう考え方です。 |
委員 |
今の点は、知的所有権とパリ条約との関係で、属地主義とか内国民待遇、保護国主義とかいろいろ議論されておりますが、国際私法の方からしますと、基本的には、特許の有効性と権利の存続・効力は属地主義だけれども、その属地主義がパリ条約のどこから出てくるのかという問題とか、その属地主義はどこまで及ぶのかということが議論されていて、特に権利の譲渡・移転と属地主義の関係では、属地主義がどこまでカバーするのだろうかということが議論されていると思います。国際私法の中でも、まあ、私、たくさんの論文を知りませんが、例えば木棚教授の論文ですと、職務発明の問題についても、そういう関係で、属地主義がどこまで及ぶかということが論じられております。 |
委員長 |
ありがとうございました。 |
委員 |
先程発言されたご質問と関連しますけれども、職務発明を雇用関係という点からみた場合に、労働契約と国際私法の関係がどうなっているか、現在、どう理解されているかということをご参考までにお話しして、議論に供すればと思います。 |
委員長 |
ありがとうございました。 |
事務局 |
はい。 |
委員 |
学問的な説明は全くわかりませんけれども、結論として、35条を改正して、外国も含めると決めた場合、これは今の国際私法上の問題と何か関連が生ずるのでしょうか。現行の職務発明、35条の規定が国際私法上どうかという議論、今のお話は確かに関係すると思うのですが、35条を改正して、35条の中に外国も含めるかどうかという議論をした場合――先ほどのご説明で、外国ではそうなっていると。外国の特許も職務発明の中に含めているという現実がもしあるとすれば、そういう規定を置くこと自体、既に各国でやられているということであれば、日本でもそういう規定を設けること自体は問題ないのではないかと私は思うのですが、それは国際私法との関係があるのでしょうか。 |
委員 |
35条を、国際私法の準拠法を含まないと改正すると、日本法が準拠法にならない場合は適用されなくなってしまうわけですよね。論理の整理としては、多分そういう整理になるのだろうと思いますが。 |
委員 |
まさにその点が最初いいたかったところでして、35条が外国の、例えば雇用地の特許についてまで適用されると書くだけではだめで、国際私法上のルールも定めるということであれば、35条がというのではなくて、職務発明ないしはその承継については雇用地法を適用するというルールを定めないとだめなのですね。35条がというのではなくて、こういう問題についてはどこそこの法律を適用しますということを書く必要がある。それは特許法に書くのがいいのか、それとも本来は国際私法に関する法例に書く方がいいのかという場所の問題はもちろんあって、これは所轄の問題もあってややこしいかもしれませんが、いずれにせよ、職務発明の承継については雇用地法を適用するというルールを定める必要があるということですね。 |
委員 |
基本的な質問になると思うのですが、このタイトルをみますと、「外国特許権等の取扱い」ということで、特許権の定義なのですね。今回議論する対象の扱いかと思うのですけれども、例えば、先ほどおっしゃられたようなイギリスで発明者が発明した。それを日本に特許出願した場合の特許権の扱いなのか。それとも、日本で特許をとった場合、外国出願して、外国、例えばアメリカで特許をとる。その特許権に対して35条を扱うのか。区別できればしてほしいのです。 |
委員長 |
私は、基本的に後者だと理解しております。 |
事務局 |
今の点は後者ですね。後者を念頭に置いて整理しております。 |
委員 |
では、外国から入ってくるのは入っていないと。 |
事務局 |
入っていません。それは外国の、例えばイギリス法で規律されているという整理でございます。 |
委員 |
今まで議論されたことについて、私の意見を述べさせてもらいますが、まず最初に、先ほど委員から、35条は労働法ではないという発言があって、これは多分、私が前回、35条は労働法的性質をもっているといったことについての反論も意味すると思いますので、その点について、私の意見を若干述べておきますと、35条は、1項、2項を中心に、つまり職務発明については、基本的には法人発明を認めないで、従業者の特許権、あるいは特許を受ける権利となり、それについて、使用者が通常実施権をもつ。特別の定めをしなければそれだけにとどまるという点と、職務発明については、承継はできるけれども、相当の対価を払わなければならないという点と、自由発明については、当然使用者に帰属するとする定めは無効であるということを定めている点においては、労働者保護法的な性質をもつことは否定できないだろう。そういう意味で申し上げているので、もちろんこれは、特許法に規定された使用者と従業者との間の発明の関係について規定した特許法の規定であることはそのとおりだけれども、この法律の改正、あるいは廃止等を議論するに当たっては、そういう要素を考慮に入れて議論すべきであるという意味で申し上げているということをいっておきたいと思います。 |
委員長 |
ありがとうございました。 |
委員 |
私は、外国の特許についても、日本の特許と同様の取り扱いをしてほしいと思います。そういうことをよく説明するためにというか、国際私法上、あるいは法例7条に照らして、どう説明するかはよく考えてほしいと思います。 |
委員長 |
大きな差が出てくるのでしょうかというのは、外国特許に関してという意味ですか。それとも全体……。 |
委員 |
外国特許に関して。 |
委員長 |
いかがですか。 |
事務局 |
35条をすべて撤廃するということになりますと、基本的に、使用者の側としては、通常実施権の保障もなくなって、かつ、勤務規則での承継も難しくなるのではないかなと思うのですね。そういう意味でいうと、3項、4項を残すということとはかなり大きな差があると私どもは理解しております。 |
委員 |
もうちょっとわかりやすくいうと、35条を全部撤廃したときと一部を残したときで、日本の特許についても外国の特許についても同じような扱いをするということに何か違いが出てきてしまうのでしょうかという意味です。 |
事務局 |
私の理解が間違っているかもしれませんが、35条を全部撤廃すると私的自治だけとなり、内外含めて、もう特許法は当てにしないで勝手にやっていただきたいという形になると思います。 |
委員 |
そうしますと、我々は、私的自治に任せてほしいというのが本音でございますので、それを貫徹しようとすれば、35条はやめてほしいといった方が非常にやりやすいし、説明もしやすいと考えておいてよろしいということでしょうか。 |
事務局 |
いろいろ議論されていくと、そういう案もあると思うのですけれども、そこで逆に確認させていただきたいのは、35条を撤廃したときに、我々、問題点といいますか、検討課題として、大きく2点あると思っていまして、まず1点は、前回ご質問したとおり、現在、1項で規定されている通常実施権の保障がなくなってしまうという問題ですね。 |
委員 |
前回、外国は今回やるからということで発言の対象から外れたのですけれども、今おっしゃった、全廃か、35条3項、4項の改正かという問題は、安定性ということを考えておりますから、私は、1項、2項は残した方がいいと思っているのですね。 |
委員 |
これは揚げ足をとるつもりでいうわけではないのですが、先ほどの説明の中に、皆さんにとって幸せになれるようにと。その「皆さん」には労働者の立場も入っている。先ほど委員がおっしゃった、35条の色合いをどう解釈するかというのは学者先生が解釈すればいい話で、私どもにとっては、どちらであろうと構わないのですが、これは一定程度労働者を保護するための目的が入っているのだと解釈しています。その意味からすると、産業界の方がたくさん発言されますけれども、私は1人ですから、「皆さん」といったときに、その「皆さん」には労働者の方も当然入っているという解釈をさせてもらってよろしいのかどうかを確認しておきたいと思います。 |
事務局 |
そのような解釈で結構です。もともと35条は、何度もご説明したとおり、ある意味で使用者と従業者の権利調整規定ですから、今、仮に契約に基づいて決めれば、基本的には35条は適用されないという方向の改正で前回もご議論が収束しているのではないかと思いますけれども、とはいいつつ、今、実際、強行規定を使って対価請求をされている方はごく一握りの方でして、そういう意味では、使用者と従業者の合意のもとで、お互い満足できる形で対価をとれるような形に調整することが、使用者にとっても従業者にとっても好ましい改正の方向ではないかということを我々も当然考えております。 |
委員 |
確認ですけれども、今おっしゃった改正の方向というのは、基本的に前回のペーパーの方向ですか。つまり、合意によって契約が結ばれた場合には、35条の強行法規が働かないという方向……。 |
事務局 |
ええ。前回の議論で、特にご異論はなかったかと我々は……。 |
委員 |
いや、私は十分異論をいったと思うのですけれども、それでいくと、これはどうなりますか。つまり、仮に当事者の契約ないし合意で、という場合に強行法規性が働かないということになると、外国の特許については、恐らくは専ら法例7条が問題になりますね。つまり準拠法指定の問題になってきて、当事者自治でいける。したがって、この最後にある、雇用地法である35条によって解決されるということにならないですよね。つまり、特許法35条を適用するときには1つ手順があって、準拠法指定を排斥するというプロセス、段階が入らなければいけないですよね。そこをしないで今の改正案でいってしまうと、当事者自治を排斥するためには、さっきいったように、国際私法上の強行法規だといわなければいけないのですけれども、恐らくそういえなくなりますよね。そこのところの整合性はどうお考えになりますか。 |
事務局 |
合意と申し上げたのは、以前、委員の方にプレゼンテーションしていただいた実質的交渉プロセスも当然、私どもとしては、十分考慮した上で考えていったらいいのではないかと思っています。前回、契約と勤務規則ということを割と単純に分けて議論したのですけれども、それにはいろいろな形態があると思います。 |
委員 |
今の事務局のコメントで、私は前回から、35条の1項、2項はそのまま残して、3項、4項を改正して、特に、最高裁判決がもっている問題点を解消するためには、企業の定めた報酬規定が著しく合理性を欠く場合のみ、裁判所が相当の対価を判断できるようにするべきではないかということを申し上げているのですが、その考えの中には、著しく合理性を欠くときには、それは無効になるというのは、その意味ではやはり強行法規である。ただ、頭から民法の90条をもってくるのではなくて、まず、35条の規定の中で合理性の問題の判断がなされているという点で違うのではないかと、私としては基本的には考えています。その上で、先ほども丸島委員から出た、契約自由にしてほしいと。外国特許についても、雇用地における従業員と使用者との間で定めた契約に従って、すべて処理できるようにしてほしいという意味ですよね。 |
委員 |
契約とはいっていないのですが。 |
委員 |
契約でなくて、何です? |
委員 |
いや、35条といいますか、日本の発明と同じように認めてほしいということです。 |
委員 |
そうすると、私がいったような意見も含まれての上なのですか。 |
委員 |
含まれているのですが、先ほどの委員がおっしゃった合意というのは、今のご説明で随分トーンダウンしているのですが、前回の委員会での合意というのは、私、すごいシビアな合意のような印象を受けていたのです。そういう意味では、合意というのは少し厳しいかなと思っていますね。それよりは、今、おっしゃっているような内容合理的といった方がまだ受け入れやすいなと。ただ、私、前回申し上げたのですが、内容合理的といったときに、だれが合理的を判断するのですか、やはり裁判所でしょうと。それは今と余り変わらないのではないのかな。立証責任が転換されるのかどうかというのはあるかもしれませんけれども、それよりは、私は、プロセス合理的といっていただいたらいいなと。今日ご説明の、どういう過程を踏んで取り組みをしたかということが大事だ。ただ、1回取り決めても、次から次へと新しい人が入ってくる。そういう人たちができ上がったものを選択するかどうかの問題だと理解しているのですね。ですから、選択できるような機会を与えることがプロセス合理的だろう。新しい人に内容合理的といったって従わざるを得ないと思うのですね。そういう意味で、私は、実質的には、内容合理的イコールプロセス合理的ということでいいのではないのかなと。そういう意味で申し上げているのですが、ただ、前回のトーンのような合意を条件とするというのは、私もちょっときつ過ぎるのではないかと思っています。 |
委員 |
35条をどう改正するかというのは、今日の本来のテーマではないと思うので、これだけにしますけれども、先ほど委員がおっしゃったのは、企業で定めた規定が著しく合理性を欠く場合には、原則、これは無効とするという意味で強行法規だと。おっしゃるとおり、きょうの議論との関係では、そういう強行法規という要素を1つ入れることで、特許についての35条の適用というところにもっていけるはずなのですよ。そうではなくて、ご提案のとおり、合意があれば35条が働かない、あるいは後退させるという言い方をしてしまうと、国際私法との関係では、先ほどいったとおり、法例7条1項の問題になりますから、そうなってしまう。 |
委員長 |
今のご意見で、先ほど委員がいわれた、内容の合理性を残すと、そこで解釈の余地が出てきて、今のような問題がまだ残るのではないかということについてはどのように考えたらよろしいのでしょうか。 |
委員 |
ですから、そこは、前回いいましたけれども、まず、内容に合理性が著しくないかどうか。すなわち、これは実態的な判断だと思うのですね。そこで特段の著しい不合理性がなければ、それはもういいと。しかし、一方でプロセスの審査はある。どっちが先になってもいいのですが、プロセスがきちんとされていれば、対価の内容に著しく不合理な点がなければ、それは相当の対価として認めるべきだというのが先ほどの趣旨です。したがって、プロセス、交渉がきちんとされていても、客観的にみて非常にひどい場合にのみ、裁判所の介入があるのではないかということです。 |
委員 |
内容が非常に合理的でない場合、入社しますかね。そこが問題なので、嫌だったら入社しない選択権があるのではないか。私は、それがプロセス合理的だと思うのですよ。内容がそんなに不合理なものについて、現在の人たちとプロセスをとって取り決めをしようとしたって取り決められないのではないかと思うのですね。だから、なぜ内容合理性ということをそんなに強調されるのかというのがわからない。私のいっているプロセス合理性は、中をみて嫌だったら入らなければいいではないですかというのを含んでいるわけです。入ってからみせられたのでは、これは選択権がない。ほかの規定もみんなそうだと思うのですが、なぜ35条だけ、企業が内容の合理的まで拘束を受けなければいかんのですか。選択権を与えるということで立場は同じではないのですか。こんなことをいうと、企業は低くすることばかり考えているとおっしゃるかもしれませんが、前提は逆ですよ。競争力を高めるためには内容を充実したいという前提で申し上げているので、これは誤解されてはいかん。これも両者のハッピーのためと絶対なっていると私は思うのですよ。そういう前提で、プロセス合理的といえば、企業に任せてくださいということでいいのではないかと思っているのです。 |
委員 |
今のご意見に、私、2つだけお答えしたいと思うのです。 |
委員 |
これは前回も申し上げたのですけれども、先ほど委員がおっしゃっているような立派な企業はいいと思うのです。正当な就業規則があるところに入る、入らないという問題ではなくて、例えばそういう規則も一切ない中小企業に入った後に、従業者発明を無償でよこせ、嫌ならやめろという条件になった場合には、やはり救済は必要だと思うのです。そういう意味から、合理性がない場合には残しておいた方がいいのではないかという意味でいっただけで、規則があって、入って認められれば、それは合理性があるということで通ると思うのですけれども、ただ、ない場合の救済ということです。 |
委員 |
私の表現の中には、ない企業を救済してください、ない企業もそれで認めてくださいということは入っていないのですね。プロセス合理的な規定をもっている会社に対していっているのであって、中小企業の方で、そういう規定すら設けないというなら、規定を設けるようにしていただいたらいいのではないでしょうかね。規定のない会社まで救済してくださいと申し上げているのではないのですよ。 |
委員 |
弁理士会は、基本的に、救済しないとだめ、規定を設けないとだめだという場合は、ほうっておいていいかというスタンスで、そういう規定を残しておいた方がいいのではないかという主張をしているだけで、現行の規定が、対価請求権は全部契約でいいとなった場合に、そういう救済措置がとれなくなるのではないか。そこが問題かと思っているのです。 |
委員 |
委員に質問なのですが、プロセスの合理性と内容の合理性と分けて話されたのですが、例えばオリンパスの場合には、利益の5%になっていますね。日立の場合には利益の20%。利益の5と20とでは4倍の差があるわけですけれども、これはプロセスの合理性に係るのでしょうか、それとも内容の合理性に係るのでしょうか。 |
委員 |
裁判所の判断ですからわかりませんけれども、そのくらいばらつく判断が出るから問題だと思っているですね。私は、議論するのだったら内容の合理性の方に入ると思うのですね。ですから、5%と決めたらいいのか、20%と決めたらいいのかという議論が当然残ってしまう。これは前回もちょっと申し上げたのですが、企業、産業、業界によって、それぞれ発明の活用の仕方、発明の種類、事業に対する発明の貢献度は物すごく違いますよね。だから、一律的に、これが合理的な規定であるとか絶対いえないはずだと思うのです。その企業にとってどうかということまで考えない限り、合理的ということはいえないわけですね。それを、合理的であったらということで裁判所が判断するとしても、まず難しいだろうと私は思うのです。 |
委員 |
一言だけですが、プロセス合理性があれば、内容については当事者が納得しているのだから、それでいいではないかと主張する学者、その他の方々はいっぱいいると思います。私も、どちらかといえば、それにやや近い方なのですが、問題は、日本の法体制自身がそういう考え方でできているかということでして、労働法制はいうまでもありませんし、最近できました消費者契約法、あるいは金融商品販売法等々をみましても、プロセスの合理性さえあれば、内容についてはどんなものでもいいという考え方はとっていないですね。日本の法体制自身、しかも最近の法制ですらそういう考え方をとらずに、当事者間で、情報力、交渉力の不均衡があることを考慮して、一定の内容規制は置いていくという立場をとっているわけでして、むしろ、なぜこの問題についてだけ、それと違う立場をとらないといけないのかという説明が求められてしまう。立法は、そういう法体制の中での整合性を抜きにしてできないのではないかという非常に保守的な意見を申し上げて申しわけないのですが、立法するからには、当然外せないポイントだろうと思います。 |
委員 |
一言だけ。今日のテーマに戻るのですが、御指摘があったように、この整理の仕方は、準拠法の問題と実質法の問題がごっちゃになっているので、この2つの論点を整理しておいていただきたいと思います。 |
委員 |
先ほど発言された委員とは、プロセス合理性という点でかなり一致していると思っていたのですが、今の話は全然違うので、会社に入ったとき、当初、規定をつくったときはいいけれども、後から入ってくる人がそれを判断するのだから、それはプロセスだというのは、私にいわせれば、それはプロセスではないですよ。前回のペーパーにもありましたけれども、新たに入ってきた人であろうが、新たに発明した人であろうが、そこでその人と、その制度とその当てはめについて、ちゃんと交渉するのがプロセスで、企業としては、そのときにきちんとした情報提供もしなければいけないし、交渉もしなければいけない。それがプロセスの合理性だと私は思います。今のお話のようなプロセスであれば、それはプロセスとは呼ばない。それは企業の実態には合っているかもしれませんけれども、雇用の実態なり雇用のあり方としてはおかしいのではないか。そのような意味でのプロセスを経た上であれば、相当の対価ということはいってもいいと思うけれども、余りに不合理な場合には、さらに内容の合理性も問われるのではないかと私は思うのです。 |
委員 |
言葉のあやだと思うのですが、今、委員がおっしゃった交渉というのは何なのでしょうか。新しい人と交渉するというのは社内規定で存在するわけですね。それを前提にしておいて、新しい人と交渉というのは何なのでしょうか。規定を変えるということですか。 |
委員 |
いやいや、そうではない。 |
委員 |
変えないのですね。 |
委員 |
ええ。 |
委員 |
変えないのに交渉というのは、委員がおっしゃるように、プロセス合理性ではないのではないですかね。そうすると、規定をみせて、嫌いだったら入らないというのと結論は同じではないでしょうか。交渉というのは、妥協余地で、内容を変化させるということだと私は思うのですよ。ですから、言葉のお遊びでして、内容は余り変わっていないと私は思っているのですよ。私の交渉というのは、妥協、内容を変えることだと思うので、押しつけは交渉ではないと思うのです。みせて内容を認識していただくのが、委員のおっしゃる交渉だと思うのですね。 |
委員 |
今おっしゃっているのは、制度についての交渉であって、私がいったのは、制度を具体的な発明に適用する際の交渉の話。レベルが違うのです。 |
委員長 |
職務発明について、今後も議論を続けていきますけれども、話が煮詰まったといっていいのか、煮詰まらないといっていいのかわかりませんが、きょうの職務発明に関する議論はこれぐらいで、次の議題に移りたいと思います。きょう、特にこれだけはいっておきたいということがあればお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。 |
事務局 |
それでは、ご説明申し上げます。資料5と6でございますけれども、資料5は、「医療関連行為に関する特許法上の取扱いについて(案)」というタイトルがついております。これは、「知的財産戦略大綱」におきまして、1.に書いてございますとおり、再生医療、遺伝子治療関連技術等を念頭に、特許法における取り扱いを明確化すべく、2002年度中に法改正及び審査基準改訂の必要性について検討し、結論を得ることが求められていた関係で、昨年の10月に、特許制度小委員会のもとにワーキンググループを設置していただきまして、委員の方にに座長をお引き受けいただいて、そこで審議してまいったところでございます。 |
医療WG座長 |
若干ご説明申し上げます。 |
委員長 |
どうもありがとうございました。 |
委員 |
7ページに「安全性の担保」というのが書いてあって、安全性の担保を特許性の条件とする議論を是認するように書いてあるのですけれども、そういう趣旨なのでしょうか。最高裁の判決で、原子力の発明は特許性が否定されたというのがあると承知しているのですけれども、あらゆる発明に関して、特許性の条件として、特許庁が安全性について責任をもたせるようにも読めるのですね。そのように解釈していいのか、どのように……。 |
委員長 |
ここの書きぶりが、一番頭に「以下の通り様々な意見が出されており」ということで……。 |
委員 |
それだけの話ですね。 |
委員長 |
ええ。 |
委員 |
これを是認したというわけではない。わかりました。 |
委員長 |
こういう意見の方がいらっしゃったということだと思います。 |
委員 |
半年間、ワーキンググループでいろいろ議論されてきたということで、私どももその内容を十分承知しておりますので、この結論自体について異論を申し上げるわけではございませんけれども、我々としては以前から、医療行為全般につきまして特許化を認めてほしいというスタンスで来ておりますので、その点については今後も要望を申し上げていくことになると思います。よろしくお願いいたします。 |
委員長 |
ありがとうございました。 |
委員 |
医療機器については賛同が得られているのでしょうか。機器は特許の対象になっているとここにも書いてあるのですけれども、条件、記載の方法によっては特許性を外されているのもあると思うのですね。人体にかかわりがあったとしても、機器ということであれば、医療の方々の同意を得られているのでしょうか。 |
事務局 |
機器につきましては、特許、また、製造の方法の特許についてももちろん認められているわけでございますけれども、現在、動作方法の特許だけ認めていないと承知しておりまして、その部分については、あわせて基準の改訂を行うと承知しております。したがいまして、機器に関して、事実上、特許が認められないことはもうないとご理解いただければと思うのです。 |
委員 |
現段階では理解できますが、大学からの特許の中で、日本で医療関係の特許が認められないから、直接海外に出願するというケースがもう出てきています。そのときにPCTを使うために、とにかく国内でも出願するけれども、最初から認められることを前提にしていないという非常に矛盾したような行為が起こっております。まだ数は少ないのですが、将来、そういう点も含めて、外国でどういう医療行為が認められているのかについてもご検討いただきたいと思います。 |
委員長 |
ありがとうございました。 |
事務局 |
先ほどちょっとご議論のございました本部との関係で少しご説明とお諮りしたい点がございます。 |
委員長 |
ご多忙のところ、追加の委員会をお願いして大変恐縮ですが、この「推進計画」は、我が国の知財戦略の当面のアクションプランとして非常に重要なものですので、ぜひともご都合をつけてご出席していただいて、いろいろなご意見を伺いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 |
委員 |
6月17日ですか。 |
事務局 |
はい、そうでございます。今月の17日でございます。 |
委員 |
午後ですか。 |
事務局 |
今、午後の3時からを予定しております。 |
委員長 |
6月17日の3時から5時ということで、場所はここで……。 |
事務局 |
はい、そうです。17日の火曜日でございます。 |
委員長 |
それでは、よろしくお願いいたします。 |
事務局 |
今、追加で、6月17日の火曜日ということでお願いいたしましたけれども、その後、職務発明の関係を中心とした議論として、前からお願いしております7月8日の火曜日、8月1日の金曜日、いずれも3時から5時ということで開催したいと思っておりますので、何とぞよろしくお願いいたします。 |
委員長 |
それでは、第9回の特許制度小委員会を閉会いたします。長時間、どうもありがとうございました。 |
――了――
[更新日 2003年8月18日]
お問い合わせ |
特許庁総務部企画調査課 |