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第15回特許制度小委員会 議事録

  • 日時:平成15年12月18日(木曜日)10時30分から12時00分
  • 場所:特許庁庁舎 特別会議室
  • 出席委員:
    後藤委員長、相澤委員、浅見委員、阿部委員、井川委員、市位委員、江崎委員、大西委員、岡田委員、志村委員、須賀委員、竹田委員、田中(道七)委員、長岡委員、西出委員、松尾委員、丸島委員、山本委員、渡部委員

開会

委員長

それでは、定刻になりましたので、ただいまから第15回の特許制度小委員会を開催いたします。
本日は、御多用中のところ御出席いただきまして、どうもありがとうございます。
本日の議題は3点ありますが、第1番目は、これまでずっと御審議いただきました職務発明制度の在り方につきましてパブリックコメントの結果がまとまりましたので、それを入れた上で報告書案を検討するというのが第1点であります。
そのほか、次の2つの議題は、この小委員会の下に設けられておりますワーキンググループでの検討結果を事務局から御報告させていただくということであります。
以上の順番で進めさせていただきたいと思いますが、まず、最初に配付資料の確認をお願いいたします。

事務局

それでは、事務局から資料の確認をさせていただきます。
きょうは資料が多うございますが、全部で9点ございます。資料1が議事次第、資料2が委員名簿、資料3が職務発明制度の在り方に関する報告書案でございます。
それから、資料4-1がパブリックコメントの概要表、4-2が、非常に分厚いものですけれども、パブリックコメント全件でございます。
それから、資料5が実用新案制度ワーキンググループ報告書についての概要、資料6が実用新案制度ワーキンググループ報告書(案)でございます。
それから、資料7が特許戦略計画関連問題ワーキンググループ中間取りまとめの概要の紙、資料8が特許戦略計画関連問題ワーキンググループ中間取りまとめの案。
以上、9点でございます。過不足ございませんでしょうか。

職務発明制度の在り方について(報告書案)

委員長

それでは、最初に「職務発明制度の在り方について」の報告書案について審議をいたしたいと思いますので、事務局から資料の御説明をお願いいたします。

事務局

それでは、資料3と4-1、4-2の3点使って御説明させていただきたいと思います。
順番が逆になりますけれども、資料4-2をまずごらんください。資料4-2の表紙にございますように、パブリックコメントの募集を10月24日から11月25日までの1か月強行いました。いただきました御意見が全部で74件ございます。団体からの御意見は、こちらにリストアップさせていただいているように、全部で15件、15団体からいただきました。それから、外国関連団体から4件、民間企業から14件、弁護士・弁理士の方からの意見が9件、その他個人の方からの御意見が32件となっております。
なお、このパブリックコメント全件につきましては、本日中に全件をホームページで公表することにしております。
それぞれ御説明すると、大変大部で時間もかかりますので、資料4-1で概要を簡単に御説明させていただきたいと思います。
まず冒頭に、パブリックコメントで出していただいたコメントの総論を簡単にまとめたものがございます。
まず、基本的に報告書案に「賛成」という御意見が10件ございました。
連合からは、従業者側の問題点を正しく認識しているもので、評価の納得感を高めて、研究開発意欲を促進させる方向が示されているということで、御賛同の御意見をいただいております。
それから日本製薬工業協会の方からも、個々の企業の事情に応じて柔軟に対応できる。使用者と従業者のバランスも勘案した合理的プロセスを重視したものだということで、基本的に賛同の御意見をいただいております。
同様の意見を、バイオインダストリー協会からもいただいております。
そのほか、日弁連、日本知的財産仲裁センター、個別企業2社、弁理士、個人の方、それぞれから御賛同の御意見をいただいております。
それから、こちらの方では「おおむね賛成」と整理をさせていただいておりますけれども、基本的にこの報告書の骨格自体に反対ではないが、これまでの審議会の中でも議論されておりますけれども、合理的なプロセスで決めたものについては、対価について裁判で争えないようにしてもらいたいというような御意見が17件ございました。これにつきましては、経団連、中部経済連合会、米国知的財産権法協会、知財協、電子情報技術産業協会、日機輸、日本自工会等々から同様の意見をいただいております。
それからもう一つ、「おおむね賛成」と整理させていただいている中で「ガイドラインの必要性についての御意見」というのが6件ございました。基準づくりの指針を示してもらいたいとか、モデル制度なり、制度決定プロセスの基準を示してもらいたい、合理性の判断基準を具体的に示してもらいたい等々、ガイドラインあるいは何らかの基準を示してもらいたいという御意見がございました。
そのほか、基本的には「おおむね賛成」という御意見を4件いただいております。
それから、3ページでございますけれども、「35条は廃止すべき」という御意見が7件ございました。これは、ビジネス機械・情報システム産業協会、知的財産国家戦略フォーラム、欧州製薬団体連合会、米国研究製薬工業協会等から、35条は廃止して従業者と使用者の契約に任せるべきというような御意見がございました。
それから、あと「35条1項、2項は残しつつ、3項、4項を廃止すべき」という御意見が2件ございます。
また、「35条は現状のまま維持すべき」という御意見が6件ございました。弁理士、個人の方が多いわけですが、こちらの意見は、基本的には、今出ている問題は企業側の努力で改善されるものだというような御意見が大多数でございます。
さらに、4ページ中ほどですが、「職務発明については使用者帰属とすべき」という御意見が4件ございました。日本ライセンス協会及び個人の方からの御意見でございます。
そのほか、必ずしも明確に分類できない御意見が18件ございました。
それから、6ページ以降が報告書案の各節にあわせて再分類をしたものでございます。
6ページが、まず第1節についての御意見ということで、これについて言及されたものが11件ございまして、そのうち9件は第1節の報告書案の結論に賛成ということでございます。
第2節につきましても、10件言及されたもののうち7件、御賛同の意見をいただいております。
それから、7ページ以降が3節についての意見、やはりここが一番多かったわけですが、「賛成、おおむね賛成」の御意見が10件、それから「合理性の判断基準について」の御意見が18件ございました。
それから、少し飛びまして11ページ、第4節についての御意見でございますが、これにつきましては「賛成、おおむね賛成」が8件、それから、「4項自体を削除すべき」という意見が2件、その他の御意見が5件でございます。
それから、また少し飛ばしまして、報告書案でいきますと第5節についての御意見が16ページにございます。5節についての意見もかなりございまして、全部で14件の御意見がございました。
報告書の結論に「賛成」という御意見が4件でございまして、そのほか「外国についても適用対象とすべき」、「外国は適用から外すべき」、あるいは「適用対象を明確化すべき」というような御意見が10件、合計14件いただいております。
それから、18ページ、第6節の短期消滅時効についての御意見が7件ございまして、これについては「賛成、おおむね賛成」の御意見が6件ございました。
それから、7節の職務創作、職務考案についての御意見7件のうち、賛成が5件となっております。
それから19ページ、これは報告書には書かれておりませんが、この小委員会の議論の中で遡及適用について議論があったわけですが、これについての御意見が8件ございました。基本的に遡及適用を要望する、あるいは何らかの契約手続によって、現行法下で権利承継したものについて、新法を適用することを排除すべきでないというような御意見が全部で8件ございました。
それから、20ページ、(12)のところでございますが、その他の意見として、報告書案の中でも言及されておりますけれども、「絶えず、この職務発明制度の見直しが必要」という御意見が3件、それから「職務発明の取扱いについて中小企業等は慣れていないので、教育の普及等が必要だ」という御意見が2件、それから、21ページの下の方ですが、「第三者紛争処理機関というようなものを設けるべき」という御意見が2件ございました。
今御紹介させてただいたパブリックコメント74件について事務局の方で検討させていただきました。まず「おおむね賛成」の中の御意見で、合理性の判断基準について、合理的な手続をした場合の対価については司法審査の対象外としてもらいたいというような御意見がございましたが、この点につきましては、この小委員会でも3回にわたって、かなり激論が交わされたわけですが、その結果として、この報告書案のようにまとめられたわけでございます。今回いただいた御意見の中で、その結論を変えるような新たな視点といいますか、そういったものが基本的にはなかったということで、事務局としては、意見はいただきましたけれども、この報告書案の結論は変えるべきではないと考えております。
それから、「おおむね賛成」の御意見の2点目の「ガイドラインの必要性」でございますけれども、これにつきまして幾つかの御意見もいただきました。また、これまでパブリックコメント募集中に各種の説明会において、個人の方や数の企業の方を対象に報告書案の説明をさせていただきましたところ、何らかの合理性、不合理性の基準について示していただきたいという御意見がかなりございました。したがいまして、この点につきましては報告書案の方に反映をさせていただきたいと思っております。
それから、いただいた御意見の中で、概要の1ページ目をごらんになっていただければと思いますが、下から6件目の個別企業とあるところで、「無償通常実施権に基づく自己実施による利益相当分は控除して補償金算定を行うことができることを明確化すべき」との御意見、それから、下から2件目の経団連からも同様の御意見をいただいております。これにつきまして、これまでの判例においてこのようなことは判示されて明確になっているとは思いますけれども、なかなか皆様が御存じないケースも多いということで、この点について、そのような考え方で相当の対価というのは計算されていますということを報告書案の中に盛り込みたいと考えております。
そういったことで、事務局の方で報告書案の修正版という案をつくらせていただきました。資料3でございます。
今申し上げました点でございますけれども、資料3のまず4ページでございます。中ほどから少し下の「なお」以下でございますが、「なお、特許法35条1項の規定により、使用者等は職務発明について無償の通常実施権を有するため、『その発明により使用者等が受けるべき利益の額』とは、単に発明を実施することによって使用者等が受けるべき利益の額ではなく、特許を受ける権利等を承継し、発明の実施を排他的に独占することによって受けるべき利益の額(増加額)であると解すべきであるし、実際に判例においてそのように解釈されている」ということを書かせていただき、下の脚注に、このような判断をされている判決を3件、例示させていただいております。
それから12ページの上の方でございます。これについては、この小委員会の中でも事務局の方で言及させていただいておりますけれども、何らかの事例集を作成するということで、「また、使用者等と従業者等との間での不合理な対価の決定を予防する観点から、特許庁において、明らかに対価の決定が不合理とされる事例等についての事例集を作成すべきである」という、この2文を追加いたしまして報告書案の修正とさせていただきたいと思っております。
これにつきまして、委員の皆様の御意見をいただければと思います。以上でございます。

委員長

どうもありがとうございました。
それでは、ただいま事務局から説明がありましたこの報告書案を御審議いただきたいと思いますけれども、何か、御質問、御意見等ございましたらお願いいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。
どうぞ。

委員

4ページの方でつけ加えていただいたところですけれども、この判例は前も読んだことがあるんですが、具体的に、独占することによって得られる増加額というのがどういうふうに考えたらいいのか、非常にわかりにくいんですね。だから、これを何か、もうちょっとわかりやすく、報告書に載せなくてもいいんですけれども、解説があると非常に助かると思うんですが。

事務局

御意見の趣旨、よくわかります。判例を3つ例示させていただいたのは、裁判所の考え方は無償の通常実施権分を控除するという基本原則に則っていると思いますが、その無償の通常実施権分の算定についてはいろいろなやり方があるようでございます。
一つは利益の2分の1とか3分の1を控除するという考え方、それから、もう一つの考え方として、通常実施権分を超えて専用実施権の設定や権利の承継による独占の効果に基づく利益を、仮に他者にライセンスした場合に得られる利益と考え、その利益を基に「相当の対価」を算定するというものがございます。裁判所によっていろいろな算定の仕方がありまして、必ずしも一義的には決められないけれども、裁判所が、こういう考え方をとって無償実施権分を控除していますという、あくまでも事例を紹介させていただいているということでございます。これについてどういう算定方法がいいかというのは、ケース・バイ・ケースだと思いますので……。

委員

もう一つだけ加えさせていただきますと、私どもの一番の関心は、自社実施分については通常実施権の範囲なんじゃないかと。だから、その分については補償金の対象にしなくてもいいんじゃないかという意見が結構強くて、本当にそれでいいのかどうかというところが、若干紛らわしいというか、どうしていいかわからないという面がございます。その手がかりは、この判例だったんですね。

事務局

はい。

委員

ちょっと、そういう意味で非常に関心のあるところでございます。

委員長

どうぞ。

委員

先ほどの御説明でパブリックコメントの結果を見た上でも、対価そのものを独立して審査の対象にするということについては変える必要はないという御説明があったと思うんですが、全体のパブリックコメントを見てみますと、ここに直接触れてはいないものの、産業界の多くの意見は、企業と発明者の間で取り決めたものを尊重して、それでやってほしいという、いわゆる予見性をすごく求めていると思うんですね。そういうことがほかに、この報告書全体を見て入っておりませんので、この対価を個別審査の対象にするんだというところを、この委員会の結論だということを余り強調しないでいただきたいと思うんです。
しかも、「一部の委員より」と書いてあって、何か、本当にマイナーな意見のように書かれているんですが、実際、職務発明を扱う企業の立場からすると、大多数の方が自分たちの取り決めでやってほしいという意見がパブリックコメントで出ているわけですね。そういうことを反映していただきたいと思うんです。
要は、申し上げたいのは、予見性を高める方向でやっていただきたいということです。
それに関連して、具体的な例で御質問したいのですが、これは、経団連の方としては「おおむね賛成」というふうにまとめられておりますけれども、確かに、項目的にいえば賛成した項目も多いんですが、肝心な「対価の決定」というところについては賛成の意は表しておりませんので、このまとめ方については、多少誤解を招くようなところもありますので、以降は、おおむね賛成のジャンルに入っているようなまとめ方はしていただかないようにお願いしたいと思います。
それで質問ですが、使用者と従業者の双方の意思を反映した契約書があった場合、この場合は司法判断が介入しないということで理解してよろしゅうございましょうか。

事務局

介入しないという御趣旨のとらえ方が難しいのですけれども、基本的に、両当事者の意思が真に反映された契約があれば、それが尊重されるという御理解で結構だと思います。

委員

尊重されるということは……。

事務局

裁判所によって尊重されるだろうということです。

委員

司法判断とか、強行規定の方へ行かないという保証はないということですか。

事務局

保証があるかどうかというのは――だから、裁判の対象にはなる。ただ、真に意思が反映された契約について、請求が認容されることはないだろうということを申し上げております。
契約がきちんとあるわけですね。契約がきちんとあって、それが双方のきちんとした意思に基づく契約であるというような場合に、それが、裁判所で「いや、これは公序良俗で無効です」といったことで、従業者側の相当対価という意味においての請求がそのまま容認されるというようなことはないだろうということです。

委員

今おっしゃっている「認められない場合」というのは、公序良俗という場合と見てよろしいのですか。

事務局

この報告書の中には、具体的な契約なり勤務規則の、特に手順を重視して、お互いの立場の相違というものをきちんと埋められるような、そういう手続がなされることがまず必要ですよということは書いてあるわけです。
それがきちっとなされた上で策定されたようなものであれば、それは裁判所によって尊重されるであろうということを申し上げているわけです。
公序良俗という言葉は、余り適切じゃなかったのかもしれませんけれども、基本的に承継を有効にしながら、対価のところで調整しようということを35条というのは目指しているわけなので、そこで、対価についての取り決めということについて、所要の手続なりを踏んでいただいて合理的にやっていただくということであれば、その結論が尊重されるだろうということを申し上げているわけです。報告書の結論ではそれはそうなると思いますし、そうなるように制度的には設計したいと思っております。

委員

なぜ、こういう質問をしているかというと、パブリックコメントの中でも、特に外国の企業からも、はっきりしないのが非常に困るという感じの意見が出ていると思うんですね。それで、日本の企業側も多分同じだと思うんですが、日米間あるいは日欧間の共同作業をやったときの成果に対して、はっきりと予見できないような仕組みで運用ができないんじゃないかと思うんです。それで裁判所に頼らないと、その結果を待たないと先に行けないというのでは、私は、これは産業競争力の強化というよりは、むしろ減退だと思っているんですね。ですから、何かこういうことをやれば大丈夫ですよというのがはっきりするようなものが欲しいと思うんです。
外国の権利がはずれていますし、企業にとったら外国権利の承継というものも、やはり重要ですから、それも含めると、発明者との契約というものがベースとしてはやりやすいんじゃないかと思うんですね。そういうことをやれば、少なくとも大丈夫ですよということをはっきりしてほしいなと思うんですが、それは無理でしょうか。

事務局

「裁判所に行かなくて済む」というのは、多分、言葉のあやのようなところがあるとは思うんですけれども、きちっと手続を踏んでいれば――訴える、訴えないというのは、ある意味で相手方の自由みたいなところがありますし、また裁判を受ける権利というのは皆さん持っておられるので、それは、訴えられるということ自体が不合理だというふうに御主張されても、ある意味では、それをとめる手立てはないということだと思うんです。
そこで使用者側が、今であれば既に支払った対価が相当の対価でないというふうに認定されれば直ちに敗訴して、それで差額分が容認されるということになるわけですが、そうではなくて、請求が棄却される。だから、そういう意味において、きちんとした手続をやりさえすれば、基本的にそこで定められた対価というのは、ほぼ間違いなく、それが裁判所でも貫徹できるという意味で、予見可能性というのは、はるかに高まるだろうというふうに我々は確信をしているということです。
それから、これさえやれば絶対大丈夫だということでお求めなんですけれども、余りそれを追求し過ぎると、かえって、裏を返せば、それは非常にハードルが高くなる。例えば「これは絶対やってくださいね」というようなことを法律に幾つも書かなければいけなくなるということにもなってきかねない。それで本当にいいのか。それは、逆に言うと、企業の方と従業者の間の自由な――ある意味では、それぞれの慣行も違うでしょうし、企業の戦略も違う、あるいは従業者の置かれている状況も違うという中で、ある程度、自主性に委ねるべき問題なんじゃないかというふうにも考えておりますし、逆に、すべてこれをやれというようなことを、余り法が強制することは妥当ではないだろうし……。
極端なことを言えば、使用者が果たすべき義務を明記したとしても、それをやらなかったらどうなるのか。それは使用者にとって、ちょっと言い方は悪いのかもしれませんけれども、ある種の不法行為の責任が生じてくるというようなことにもなりかねない。そういうことも考えると、それは、やはりお互いの取り決めによって妥当なところを目指していただくというのがいいんじゃないかと思っています。
ただ、もちろん、先ほど事務局からも御紹介申し上げたように、例えば不合理な場合、あるいはこういうことをやれば、おおむね合理的なんじゃないかというような、基準というのはおこがましいんですけれども、何らかの事例を御紹介するとか、そういうことによって、できるだけ法的安定性を目指すような工夫はしていきたいと思っております。

委員

続けてすみません。ほぼ大丈夫だろうとおっしゃいましたけれども、だめだと思われるのはどれぐらいですか。

事務局

だめだというのは……。

委員

今、そういう取り決めをしてあった場合、訴えることは避けられないと、それは十分承知しております。ただ、裁判所で本当に取り上げられるというんでしょうか、そういう可能性もあるようにおっしゃったと思うんですが、そういう場合というのはどういう場合なんでしょうか。

事務局

そこの分水嶺を完全に明確にするのは非常に難しいと思っています。それで、前々回ぐらいの委員会にかけさせていただいた原案に、これは明らかに不合理じゃないかということを幾つか実例でお示ししたんですけれども、それは、むしろ産業界代表の委員の方の猛反対で削除した経緯があるわけですね。ですから、それをここで明確にせよというのは難しいので、それは追って別途の場合を通じて、どういう場合はそれに該当する、該当しないということのある程度の目安のようなものをつくる、そういう作業はしたいと思います。
ただ、もちろんそれが法そのものではありませんので、それは、ある意味では運用上の指針になるということになると思います。

委員

すみません。先ほどの表現の方は修正していただけますでしょうか。

委員長

もう一度、何ページのどこか……。

委員

11ページでございます。

事務局

11ページの下の「この点に関し」の3行下ですね。「意見が一部の委員より」というところですね。

委員

そうです。これ、パブリックコメントをずっと見ますと、産業界は、ほとんどこういう意見を持っているように私は理解したんですね。ですから、こんなに対価を独立で審査の対象にするというようなことは求めていないんじゃないかと思うんです。

事務局

そういう御趣旨であれば、例えば「意見が産業界の委員より提出された」とするのはいかがでしょうか。

委員

先ほど、パブリックコメントの結果として2カ所修正されましたね。あれはパブリックコメントを反映したと私は理解したんですが、そうじゃないんですか。

事務局

そうです。

委員

ということになると、この表現もパブリックコメントを反映してもいいんじゃないかと思って申し上げたんです。ですから、一部の委員というより、多くの産業界が求めているということだろうと私は理解したんですが。

事務局

わかりました。「意見が多くの産業界より提出された」という形で修文させていただくことについて、ほかの委員の方々の御意見はいかがでしょうか。

委員長

多くの産業界というのは、ちょっと変ですね。多少、表現は検討させていただきまして……。
どうぞ。

委員

今の点について、この委員会においては司法審査の対象から除外すべきであるという主張の趣旨は明らかだったんですけれども、パブリックコメントは司法審査の対象から除外するというような趣旨なのでしょうか。

委員

よろしゅうございますか、今の点で。

委員長

どうぞ。

委員

私が理解しましたのは、確かに、こういう組み立てでそれぞれ御意見は全部出ているとは思わないんですが、言っている背景を見れば、取り決めですべて任してほしいというのがほとんどなんですね。ですから、対価を別の切り口で見ますよということは含んでいないと思うんですよ、意見の中では。それは当然、取り決めの中に入っているから、それで任してほしいという趣旨でコメントが出ていると私は理解します。

事務局

先ほどの御質問ですけれども、必ずしも司法審査の対象から外してもらいたいということを明確に書いている意見がすべてではありませんけれども、具体的に言いますと、先ほどの分厚い資料4-2の3枚目の裏側です。電子情報技術産業協会からのご意見の一番下の部分に、「対価の額そのものについては司法審査の対象としないこととしてもらいたい」とございます。それ以外にも、基本的に合理的な手続をすれば、対価については考慮の対象から除外してもらいたいという御意見も、最終的には同趣旨に近いものだと我々は理解をしています。

委員

なぜ申し上げたかというと、「司法審査の対象からはずす」という表現自体が法律的な表現として穏当かどうか疑問があります。裁判所はすべての問題について判断をすることができるというのは法治国家で当然なことです。司法審査の対象からはずすというと表現は、統治行為論などでは使われるワーディングだと思いますが。

委員長

どうぞ。

委員

先ほどの御意見と関連して申し上げますと、ここで言われている司法審査というのは、内容審査に立ち入らないという程度の意味ではないかと思います。要するに、契約が行われていれば、それ以上、内容についての当不当というのは立ち入らない。そういう意味での内容審査に立ち入らないというワーディングにすれば、我々も非常にすっと理解できるものだろうと思います。
それとの関係で、きょうになってお聞きすることではないのかもしれませんが、先ほどのやりとりの中で確認する必要があるかなと思ったことを1点だけお聞きしたいと思います。これは特許法35条を改正して、これが、今後裁判規範になるという観点から重要な点だと思いますが、契約をした場合に、先ほど、公序良俗という言葉が少し出ておりましたけれども、公序良俗に反するようなものは無効だというのは民法に書いてありまして、そうでない限りは有効なのだというようなニュアンスがやや見えたかなと思うんです。
ここから先がちょっと問題なんですが、契約であっても、勤務規則であっても、今後も民法ではなくて特許法35条によって審査されるということは、私の理解ではそうなんですが、やはりちょっと確認しておく必要があるのではないかなと。契約ですと、何か、民法の90条というのではなくて、いわば民法90条の特別法というような形で特許法35条がつくられている。ですから、今後は――今までもなんですが、今後も、この特許法35条の新しいルールによって、勤務規則はもちろんのこと、契約についても審査されると。
そうしますと、契約については、どういう条文になるかというのは、ちょっとわかりませんけれども、ここでおまとめになっているところによりますと、手続面と内容面を含む決定全体を総合的に評価する。その際に、使用者と従業者との間での決定の自主性を尊重するというような観点が出ておりますので、契約というのは、普通のイメージですと、まさに従業者個人が関与して、その取り決めをしているわけですから、そういう意味での自主性が高い。したがって、手続面の要請を満たしている程度が高いので、内容の当不当にはほとんど入らないことになるであろうというような御趣旨だったかと思います。そういう理解でよろしいかというのがまず1点。
そしてもう1点は、行為規範としては、ちゃんと従業者と個別に契約しなさいよということなんですが、多くの紛争は後になって、ちゃんとやっていたかどうかというのが問題になるわけだと思います。そして、契約という場合に問題になるのは、口約束では、通常、余り問題にならなくて、恐らく、この発明についてはこれこれの対価で承継いたします、譲渡いたしますというような書面があって、それに従業者の判こも押してある。署名があり、判こも押してあるというのが出てきて、はい、契約ですよということになって問題になるのだろうと思うんですね。
ですから、それは契約であることは間違いなかろうと思いますけれども、この特許法35条の趣旨からしますと、契約ですというので、かなりポイントは高いんですが、しかし、やはり手続面、内容面の適正さというんでしょうか、そういったものがかかってきますので、契約と言っているけれども、本当にちゃんと契約したんでしょうねということは、やはり問題になるのではなかろうかと思います。
例えば、一律に発明者たちに書面を配って、いついつまでに判こを押して提出せよというだけで、何もそれ以上していないらしいというようなことは、やはりマイナス評価の対象にはなるのではないかなというふうに、私自身はずっと理解しておりましたが、それでよろしいのかどうか、ちょっと聞かせていただければと思います。

委員長

まず最初に11ページの、先ほど御提案のあった表現の変更のところですけれども、「内容審査には立ち入らないという意見が産業界から広く寄せられた」というような形に修文するということでよろしいでしょうか。

委員

そういう意味でございます。
報告書に司法審査と書いてあったので、それを使わせていただいたので、そのことがもし間違っていると、一部の委員が言ったことがとんでもないことを言ったという記録になっているので……。私は、そういう意味で申し上げたことは1回もございません。

委員長

それでは、そういうように「内部審査には立ち入らないという意見が産業界から広く寄せられた」という形に、表現はもう少しきちんと整理しますけれども、そういった内容に修文したいと思います。
次に、先ほど委員から2点、確認といいますか御質問がありましたけれども、それはいかがでしょうか。

事務局

委員のおっしゃるとおりでございます。特許法35条の体系の中できちっと整理をしたいということと、それから、契約においても実質面が尊重されるべきであるということでございます。単に、外形的に契約という形をとっていさえすれば、それでいいんだということではないということでございます。

委員長

ほかに、いかがでしょうか。

委員

今、委員がおっしゃったことは、私どもが申し上げたいことを言っていただいたように思うんです、内容的に。それで、単なる形式的にサインしなさいとか判こを押しなさいというのではなくて、通常のプロセスを踏んで契約をしたような場合は、それは100%認められると認識していてよろしいんでしょうか。実際の運用上、それを確認したいのですが。

事務局

100%完全なプロセスを踏んだかどうかということの確認はだれがするのか、それは、やはり裁判所だろうということを申し上げているわけです。

委員

理屈から言うと、おっしゃっていることはわかるんですが、企業の運用上、これならいいだろうと判断できるとおっしゃっていただければそれで済むんですが、裁判所で、裁判所でと言われると不安を感ずるだけなんですよ。ですから、そうやっていれば大丈夫ですと言っていただければ安心して実行するんですが、それだけの問題だと思っているんですね。
実際、すべて裁判所へ行かないとわからないんですよということで結論づけられていると、心配で運用できないんじゃないかと思いますね。

委員長

どうぞ。

委員

基本的な考えは、私も委員や事務局の考えと同じですけれども、確かに、企業の側から見て不安なのは、合理性が欠けるときには、その勤務規則や契約によらないというとき、何が合理性が欠けることの判断基準になるのかということについて、ある程度具体性を示してもらわないと、非常にやりにくいということはあると思うんですね。私もそこは同感ですが、どこまで具体的に書くかということはあると思います。
私の個人的意見としてですけれども、規定としてどう書くかというところはよく検討していただきたいということと、個人的な契約で締結する場合と、規則で決める場合とでは、どういう場合に合理性を欠くかということを具体的に書けば書くほど、違ってくると思うんですね。
例えば勤務規則であれば、事前に従業員の意見を十分聴取することとか、その決められたことを従業員に周知徹底することとか、あるいは、不服があるときの企業内の審査機関は必要だろうかと思うんですが、そういうことは契約関係には適用されない使用者と従業者が、十分に契約内容となっている相当の対価の決め方等について具体的に話し合って、納得の上で成立しているかどうかということが問題になるので、同じ規定ぶりで1本にまとめるのは、なかなか難しいことかなとは思います。その辺は企業側の要望ももっともなところがあると思いますから、立法に当たっては配慮していただければいいのではないかと思います。
それから、もう一つは先ほど委員が言われたことについては、法は不遡及ですから、遡及させるのは無理だと思うんですけれども、それじゃ、従業員との契約で、過去の分についても新法によることについて異存がありませんというような契約をする、あるいは、相当な対価についてはこれを裁判所で争わない、手続的な合意性は別として、中身について争わないような合意をするということが、契約上は可能なんですけれども、その法的効力は、かなり問題のあるところだと思うんですね。
ただ、法改正の問題を審議する審議会で、そこまで立ち入って、それはどうだというのは、まさに司法的判断のところに入っていくことにもなるので、なかなか難しいところだとは思いますけれども、そういう場合も個人の契約だから有効ですよ、大丈夫ですよとは言えないということは、やはり考えておくべきでないか。それは司法的判断で結論が出ることだろうと、私はそう思っています。

事務局

今の御意見に対してのお答えですけれども、まず1点目ですが、恐らく、法文上にそこまで明記するということは難しいと思いますので、12ページの修文にございますように、われわれの方でも事例集をつくりたいと考えております。私も、先ほど御説明したとおり、説明会等の現場において、産業界だけではなく、従業者側にも、御不安があるということをいろいろお聞きしております。したがいまして、この点については、各産業界あるいは従業者、弁護士といった実際に規則をつくる方々の実態なり契約実務も踏まえてどこまで書けるかというのを、一つだけではなくて幾つかの事例、パターンを分けたりして、事例集というような形で皆さんにお示しをさせていただきたいと思っております。
それから、2点目の点でございますが、まさに、委員のご発言のとおり、先ほどもパブコメのご紹介の中で御説明しましたように、法律的には遡及させるような法制をとることはできない。これは過去、小委員会で御説明したとおりです。
それから契約については、どういう契約が適法かどうかというのは、まさに裁判所が判断することですから、むしろ、ここで我々が一定の判断を示すということは得策ではないというふうに考えております。したがって、その点については、一切我々は言及すべきではないと思っておりますので、あくまで法律的な遡及は難しいという、過去、小委員会でお示した資料だけとさせていただきたいと思っております。

委員

今のお話ですが、随分先々まで読まれて、いろいろなものを含めておっしゃられるので感心しているんですが、一面驚いているんです。私が申し上げたのは、あくまでも対価のところだけで契約と申し上げているので、それ以外の要素を全部契約の中に含めたら――それを全部、有効としてくださいということを申し上げているのではないことだけははっきりさせていただきたいと思います。

委員長

ほかに、いかがでしょうか。
よろしゅうございますか。
それでは、いろいろと御意見をいただきましたけれども、大体、御意見は出尽くしたかと思いますので、11ページのところの「この点に関し」以下の文章を、先ほど確認したような形で修文するということを前提といたしまして、この報告書の案を小委員会の報告書としてよろしいかどうかお伺いいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。
よろしゅうございますか。
〔「異議なし」の声あり〕

委員長

それでは、御了承いただいたということで、どうもありがとうございます。
これまで、大分長い期間にわたって非常に熱心に、この問題について御議論いただきましたけれども、我が国の産業競争力を強化するために、職務発明制度の見直しがどうしても必要だということで、長期間、非常に、こういう審議会としては異例の密度で御議論いただきまして、おかげさまで、ようやくこういう形でまとめることができました。委員長といたしまして、委員の皆様及び事務局の皆様の御協力に深く感謝いたしたいと思います。
どうもありがとうございました。

実用新案制度ワーキンググループ報告書(案)について

委員長

それでは、まだ議題が、あと2つ残っておりますので、次の議題へ移らせていただきますが、次は「実用新案制度ワーキンググループ報告書(案)について」の報告をしていただきたいと思いますので、事務局から資料の御説明をお願いいたしたいと思います。
よろしくお願いします。

事務局

それでは、資料5をごらんいただけますでしょうか。実用新案ワーキンググループ、5月ごろだったと思いますけれども、この小委員会で設置の方向について御説明を申し上げて御了解をいただいたと理解をしております。
それで、7月以来5回にわたりまして実用新案制度ワーキンググループを開催させていただきまして、そこで議論をした結果、先だって12月2日のワーキンググループで取りまとめに至ったものでございます。簡単に、その経緯、内容につきまして御報告をさせていただきたいと思います。
まず、経緯というところでございますけれども、実用新案制度、御承知のように、平成5年に大改正を行いまして、当時、改正の背景といたしましては、やはり審査の請求から審査結果の確定まで非常に時間がかかっているということで、当時は、特許制度、実用新案制度双方とも審査主義をとっておったわけでございますけれども、早期の権利保護のためには、やはり無審査の制度にする、かつ自己責任原則に基づいた上で権利行使もしていただくということが前提となる制度にした方がいいのではないかということで、そういう大きな改正を行ったわけでございます。爾来、10年が経過したわけでございます。
平成5年当時は、実用新案の出願件数は、大体7.7万件ぐらいあったということでございますけれども、平成14年には年間8000件強ということで、漸減してきているということでございます。
こういう状況を踏まえまして、改めて実用新案制度の意義ですとか、在り方、すなわち、ユーザニーズにしっかり対応し切れているのかどうかということを改めて検証する必要があるだろうということ。それから、昨今、特に強い御指摘をいただいております審査待ちの期間が長期化している、そういう状況に対してどう対処するのかという場合の、対応策の一つにもこれがなり得るのではないかということで、仮に実用新案制度が魅力を向上するということになりますと、ひいては特許審査の負担の軽減・迅速化にも寄与するのではないかということで検討を進めてまいったわけでございます。
今回、実用新案制度の改正の方向性について報告書の中で取りまとめております。その中身でございますけれども、一つは実用新案制度の在り方ということで、実際、使われております件数が年間1万件を切っているという状況なので、もはや実用新案制度というのは、時代の流れに、ある意味では取り残されているというような指摘もあり得るところではございますが、やはり現在でもニーズのある制度であるということ、有効として、引き続きこれを利用したいという要望は非常に強いものがございまして、実用新案制度を維持するか、廃止するかという点につきましては、存続をするということでまとまっております。
他方、現行の実用新案制度が、やはり使いづらいものになっているという批判にかんがみまして、その魅力を向上させるための改正を行うということでございます。
大きなポイントとしては4つございますけれども、まず第1点目が権利付与対象の問題でございます。現在、実用新案制度での権利付与対象は「物品の形状、構造または組み合わせに係る考案」ということに限られておりまして、特許のように方法もございません。あるいは物一般について認められるということもないということでございます。
これにつきましては、やはりプログラムですとか物質というものにつきましても保護すべきだという意見もございましたが、やはり、特にプログラムや物質といったものを権利付与対象とすると、第三者の監視負担が非常に膨大になるというような弊害面の強い懸念が示されましたので、これにつきましては現行の要件を維持するということでまとめさせていただいております。
それから、存続期間でございますが、現在、これは6年ということになっております。製品のライフサイクルが幾ら短いとはいっても、やはり6年というのは短か過ぎるのではないか。あるいは国際調和の観点、ドイツですとかEUの指令案、あるいは韓国・中国といった近隣諸国におきましても、いずれも10年という存続期間が認められておりますので、これにつきましては6年を10年に延ばすという方向でまとめさせていただいております。
それから、特許制度の調整が3点目でございます。実用新案が簡易・迅速な保護だということでございますので、まず実用で登録あるいは保護した上で、その後、じっくりと特許に移行することも考えたいというニーズがあるわけでございます。技術動向の変化ですとか、企業の戦略に変化によりまして、やはりより強い、あるいは存続期間の長い特許に移行したいというニーズというのはあるだろうと思います。
しかし、現在の制度ですと、実用新案登録出願は平均5カ月弱で登録になってしまいますので、継続期間中しか特許出願への変更ができません。したがいまして、5カ月で登録後は特許出願に行くことができないということで、これにつきましては、確かに、権利が登録された後、新たな特許出願を継続するということになりますので、これが第三者の監視負担との関係で、やや問題があるのではないかという御意見もあるところではありますが、やはり特許出願に移行したいという御要請に配慮して、既に実用新案が登録された後であっても、それを基礎として、新たに特許出願ができるような仕組みをつくることが適当ではないかということになっております。
ただ、その際に幾つか要件がございまして、①は、ダブルパテントなることは、やはり避けなければならない。制度を簡明なものにする必要があるということで、基礎とした実用新案権は、特許出願をされると同時に放棄していただくということを条件としたいと考えております。
それから、2点目でございますが、現在、特許の審査請求期間は3年ということになっておりますので、この趣旨が潜脱されることのないように、実用新案登録出願から3年以内ということで特許に移行できる期間というのは時期を制限させていただくということでございます。
それから、3点目でございますが、評価請求をした上で――実用新案制度を権利行使しようとすると評価書を請求する必要がございますが、評価請求をされた上で、なおかつ特許に移行して審査もするということになりますと、同一の技術につきまして2回審査を行うことに事実上なってしまうということで、そういう審査負担の増大の問題もございますし、それから、評価書をおとりになるということは、実用新案として権利行使をされるということが前提になるということも考えられますので、そのような特許出願は評価請求をされる前に限定させていただく。他方で評価請求が他人からなされる場合、あるいは無効審判請求がなされたような場合は、これは本人の意思でなされているわけではございませんので、一定期間内は特許出願を可能とする。そういう技術的な改正もあわせて行いたいと考えております。
それから3ページ、改正の大きな項目の4点目でございますが、権利範囲の訂正というものがございます。現行制度では、実用新案は特に審査をしておりませんので、権利範囲の訂正は請求項の削除のみ認められておりまして、減縮等については認められておりません。出願人の御要望、やはり権利の許容範囲、訂正の許容範囲について拡大をしてほしいという御要請が強いわけでございます。
他方、無審査登録でございますので、事後的にどんどん権利が変わってしまうということですと、第三者の監視負担は大きなものになってしまうという懸念もございますので、これにつきましては、時期、回数について制限をした上で、減縮等についても認めようということでございます。具体的には、評価書を請求したとき、あるいは無効審判を請求されたときから一定期間、経過後までに限定をさせていただいて、かつ全期間を通じて1回だけやっていただけるという制度がいいのではないかという結論になっております。
それから、以下(6)で料金改定、仮に10年に存続権を延長するということになりますと、7年目か10年目の登録料の規定が必要になります。それによって、出願時に御納付いただいております第1年から第3年の登録料を、それにあわせて軽減するような配慮をしたいということでございます。全体の料金としては中立になるように設計をしたいと思います。
それから、その他というところでございますが、情報提供制度につきまして、現在、刊行物公知以外の情報提供というのはできない仕組みになっておりますけれども、これは、それ以外の無効理由についても第三者からの情報提供ができるようにしようということでございます。
それから、そもそもが評価書の的確性、わかりやすさにつきましては、やはり先行技術調査についてしっかりやる。それから、請求人の御意見というものを評価請求に当たって付記するようにする。それから、評価書におきましてはロジックも記載をするようにするといった所要の改善を施したいと考えております。
それから、無審査登録制度でありますし、今回の改正の趣旨も含めまして、実用新案制度の内容について、より周知を図るべきだという御意見がございましたので、それについても書いてございます。
私からの御報告は以上でございます。

委員長

どうもありがとうございました。
ただいま事務局から説明がありましたこの報告書案につきまして、御質問、御意見等がございましたらお願いいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。
どうぞ。

委員

権利付与の対象、1ページの(2)ですが、私は、特許と同じ対象の方がいいんじゃないかと思っているんです。ソフトウエアと物質についてははずそうという御意見もわからないわけではないんですが、それ以外は全部含むと理解してよろしいんでしょうか。現行のままというのではなくて、方法とか、そういうものは実用新案の保護対象になるというふうに理解してよろしいんでしょうか。

事務局

基本的に、権利付与対象については改正しないという結論になっておりますので、現行のままになってしまいます。

委員

それでは、お願いとして、ソフトウエアと物質は除いても、それ以外は特許と同じような範囲にしていただきたいと私は思います。

事務局

方法でございますか。

委員

そうです。

事務局

方法についても、議論はして、実用新案制度のワーキンググループでも賛成論と反対論に分かれましたが、やはり、例えばビジネスモデルのようなものが無審査のまま登場するということについての強い懸念というのがあって、それについてはワーキンググループでのコンセンサスを得るにはどうしても至らなかったというのが実態でございますので、そこは御理解をいただければなというふうに思っております。

委員

そもそも、今なぜ実用新案を改正するのだという、いろいろな理由はあるかと思うんですが、私は、審査促進という視点と、それから出願人からして、3年で審査請求をするかしないかという判断の難しさ、そういったことを総合的に考えて管理しやすいようにする、その実用新案が一つの手助けになるんじゃないかと思っているんですね。
そういう視点からすれば、従来の考え方のように、実用新案というのはこの範囲でいいんだとか、そういう考えをちょっと改めて、今の時点で見直して、やはり両方活用しながら企業が活動できるような視点で考えるべきじゃないかなと思うんですね。
そういう意味からすると、保護の対象は、できるだけ特許と実用新案をあわせていただきたいなと。ただ、ソフトウエアとか物質という特殊の分野で都合が悪いという御意見が多いんでしたら、それだけははずしたとしても、それ以外の方法は含めていただきたいなと。
というのは、特許で方法と物というのは表裏一体になって考えられることが多いものですから、方法はだめ、物だけというのも、ちょっと不便かなと思うんですね。そういう意味でお願いしたいと思います。

委員長

わかりました。
ほかに、どうぞ。

委員

既にこういう結論が出たので、それについては、別に反対するものではありません。しかしながら、実用新案法の改正が、特許審査の負担軽減に伴う特許審査全体の迅速化の一つの方法であるという議論の持ち出し方とすると、極めて不完全なものと言わざるを得ないのではないかと思います。
特許出願をするかわりに実用新案の出願をしてもらって、とりあえず出願件数を減らしてもらうということを考えると、かなり多くの出願が実用新案に流れ込むような仕組みをつくらなければ、迅速化のための出願軽減には余り役に立たないと思います。数万件というベースにならなければ役に立たないと思います。そうすると、保護対象の問題もそうでありますし、特許制度からの乗りかえの問題についても、例えば期間が3年というのでは、余り期待ができないのではないかと思います。この期間を延ばせば、いささかの寄与をするかもしれないとは思えるのですが。
法律的にいろいろ詰めていくと、そういう議論になるということについては十分理解をいたしますが、全体としての迅速化、特許出願の軽減ということについては、余り寄与をしないのではないかというような危惧を持っております。

委員長

どうもありがとうございました。
どうぞ。

委員

この実用新案制度、平成5年に大改正をして、今、なぜこのような中途半端な改正が必要なのかなというのが、私はどうもよくわからないでおります。
後ろの厚い方の報告書案を見ますと、11ページにアンケート調査をされたということが出ておりますが、このアンケート調査の結果を踏まえて、この程度の修正をされようと思われたのだと思うんですね。それで、ここに回答率と書いてありまして、大企業、中小企業、個人もやったとありますが、大体、今1万件を割っているような出願の状況で、どういうところにどれくらいの数の調査をして、それでこういう結論を得られたのか説明していただきたいと思います。

委員長

それでは、説明をお願いいたします。

事務局

アンケート調査につきましては、調査対象の件数ですけれども、発送したのは3039件、回答数は777件でした。それで、お送りさせていただいたのは、大企業、それから、当然、実用新案でございますので、中小企業、主たるユーザーと考えられる個人の方もできるだけ含むようにということで、まず知的財産協会さんに御依頼を申し上げたのと、それから、さまざまな中小企業向けの研究開発の補助金とか、そういうものの受け取り手になっておられるような中小企業は、特にこういう問題意識といいますか、利用度が高いというふうにも思いましたので、そういうところにお送りをさせていただいたのと、あとは婦人発明家協会さんにも御依頼をして送らせていただきましたが、やはり大企業の方からの回収率が非常に高い。知財部の組織なども非常に充実しておりますので、御回答もしていただきやすかったということはあるだろうと思っております。
それで、アンケート結果で、個々のこまかい項目につきましては、ちょっと御紹介する時間もないんですけれども、そもそも実用新案制度というものが引き続き必要なのかどうかというところが一番大前提、入り口のところになるような話だろうと思うんですけれども、例えば大企業の方ですと、75%が特許のみで十分であるという御回答になっている。
他方、中小企業あるいは個人であれば、中小の59%、あるいは個人の方ですと71%が特許・実用の並存が望ましいというようなお答えになっておりまして、全体を一つで見ても、それは余り意味がないのかもしれないので、そこは大・中・小ということで、おおざっぱに区分をして、我々としても分析をさせていただいたということでございます。
権利付与対象のところはワーキンググループの場でも非常に議論になりましたし、アンケート調査によりましても、広げてほしいというような御意見は確かにあるんですけれども、やはり実際、制度のユーザのみではなくて、それを権利行使される側、要するに第三者の側、特に大企業の方などは、75%は、やはり実用をお使いにはならないという御回答だと思いますので、そうだとすると、そちらのことも考えなければいけないし、それから実用新案の魅力を向上させる――一番魅力を向上させるためには、多分、審査をするということなのかもしれませんけれども、それはおよそできない相談だということもあるので、そこは、確かに中途半端だというそしりは甘んじて受けたいと思いますが、それは制度のユーザ、権利行使される潜在的な第三者になられる方、それから、やはり特許庁の審査全体のマンパワーというようなこともすべて勘案して、一番、現段階でできるベストのところは模索させていただいたというふうに御理解いただきたいと思っております。

委員

それで、将来の見通しとして、例えば5年、10年、どういう動きがあるだろうというふうに計算されていたのでしょうか、そこをお願いします。

事務局

直ちに、これだけ流れてくるというのは、先ほど御指摘もあったように、なかなか見通すことは難しいと思っております。
ただ、ややミクロの分析に過ぎないんですけれども、例えば100件の特許が実用新案に移行するということになりますと、そのうち大体36%相当の省力化効果はあるだろう、すなわち迅速化効果はあるだろうというふうに見込んではおります。当然、実用新案になっても評価書は作成しなければなりません。ただ、評価請求の率というのは特許の審査請求の率よりも全然少ないので、それを織り込んで、なおかつ実用新案の評価書を作成する手間の差と特許の審査を行う手間、それをすべて勘案すると、3分の1程度の省力化係数といいますか、それくらいにはなるだろうという理解です。

委員長

どうぞ。

委員

先ほどの方法云々という話なんですけれども、私は、権利付与の対象を方法にまで拡大することには反対です。
理由は、当然、御意見がワーキンググループでも出ていると思うんですけれども、先ほど一言述べられましたが、監視負担ということもさることながら、それ以上に、やはり無審査で登録になりますので権利行使される可能性が高い、それに対して企業としては対応しないといけないということで、そこのところが一番懸念されるところであります。そのことだけ、一言申し上げたいと思います。

委員長

ありがとうございました。
ほかに、何かございませんか。
どうぞ。

委員

先ほどビジネス方法の話が出たんですが、一つ教えてほしいんですけれども、ビジネス方法の発明はデータ処理システムというような形で、一応、物の請求項を書くことができるわけですけれども、それは物品の形状、構造または組み合わせとして、実用新案の登録出願した場合に認められているんですか。

事務局

お答えします。
まず特許の方ですが、ビジネス方法の関連する特許というのは物としての特許ではなくて、IT技術あるいは通信技術を利用した技術的思想の創作、すなわち方法の発明のカテゴリーとして特許の対象となる場合がある。もちろん、純粋にビジネスの方法だけを、例えば金融の商品のようなものを純粋に方法の出願としてきた場合には、技術的思想の創作としてそもそも扱われませんので特許の対象とはなりませんが、技術的な手段を使うことによって、ソフトウエア的なものを使うことによって方法の発明として保護される。
実用新案の方は、そもそも方法のカテゴリーが考案として保護されておりませんので、ビジネス方法の発明は、特許で保護されることはあっても実用新案では保護されない。
もちろん、プログラムを利用してある種の玩具をつくったというような場合には、考案として保護される可能性はあるということでございます。

委員長

よろしゅうございますか。
どうぞ。

委員

今度の全体の大きな流れというのは、国際産業競争力をいかに高めるかという視点にあるかと思うんですね。
それで、実用新案のように内国のみに登録をさせて、それが国の力になるのかと言われれば、弊害にこそなれ、余り得にはならない。それから、データの6ページを見ていると、やたらと実用新案については外国人がふえてきているということは、逆に阻害する方向にしか働かないのではないかと思うわけです。
唯一あるとすれば、特許ですと審査期間が長いのですが、これが短くなることによって競争力がつくということだろうと思うんです。そうすると、これがどれだけ短くなるのかなと考えますと、中小、個人主体に使っている制度を大企業が大幅に使うことになれば短くなるんでしょうけれども、アンケートの結果はよくわかりませんが、ほとんど、私の感じでは使う可能性はないんじゃないか、実用新案へシフトしていかないんじゃないかと思います。従来から使っている方々が少し使われるということになると、全体として国際産業競争力という視点では、余りプラスにはならずにマイナスになるのかなと感じます。

事務局

競争力というのを、確かに実用新案の制度だけでとらえて理解すると、これが国際競争力に直結するということは、なかなか申し上げにくいとは思います。
ただ、ある意味では特許と実用新案というのは、一つの発明考案というものを支える一体の仕組みなわけで、それは特許制度と実用新案制度の全体を通じて、やはり一定の迅速化効果があれば、それが産業競争力に、結果的にはひいては反映されるだろうというふうには私どもとしては考えている。
それから、やはり特許も実用も、先ほどはそういう趣旨でおっしゃっているわけではないと思うんですけれども、確かに、実用新案制度は外国人の出願が多いとは思いますが、だからといって制度をやめるというようなことには、多分、論理的にはならない。それは特許も実用新案も、国際競争力のためにあるべきだというのは非常にわかるんですけれども、やはり制度としては中立的に設計をせざるを得ないという面は当然あるので、外国人の利用が多いからやめてしまおうというようなことは、恐らく、理屈としてはなかなか――心情的にはそうなのかもしれませんけれども、なかなか通用しないところはあるのかなと思っております。

委員長

どうぞ。

委員

なぜ、今改正するのかという御疑問を持たれる方も多いと思うんですけれども、一つは、審査請求期間が7年から3年になったということが原因していると私は思います。もう一つは、世の中の状況がものすごく変化しているということです。そのために実用新案制度を見直す必要があるのだろうと私自身は考えております。
まず、なぜあった方がいいかという企業の知財の責任者の立場から考えると、3年で審査請求するか、しないか機械的に判断するのはものすごく難しいんですね。よく、いつも私は申し上げているんですが、結果から見て、これはむだだったんじゃないかとか、そういうデータでよくおっしゃられるんですが、流れているときに判断する苦労というのは相当あるんですね。それの緩和のためなんです。グレーゾーンに入ったものを全部特許に出願する、それを避けるためには実用新案に持っていく効果はすごくあるんですね。その後、判断してどうするかということを考えればいい。このとき、どのくらい実用新案を持っていって効果があるかというのは、これは実用新案制度の改正の魅力によると私は思っているんですよ。
ですから、今のような改正ですと、保護対象も、方法はまずいとおっしゃったけれども、恐らく、物を生産する方法のことをおっしゃった、物質の製造方法をおっしゃっているのかもしれませんけれども、ふだん、機械産業の分野で、情報産業の分野もそうですが、物を表現するのに方法あるいは装置と表現するのはいっぱいあるんですね。そういうものをなぜはずす必要があるのだろうか。方法だと訴訟を起こされたら困るんだと、これもわからないですね。
それで、魅力あるようにしてくれれば、恐らく管理者が3年で判断するときに非常に容易になる。言ってみれば、本当に審査するものだけ特許に出して、グレーなものはこっちを利用しようかという発想も出ると思うんですよ。その効果は、私は大きいんじゃないかと思っております。それが第1点。
それからもう一つは、実用新案を利用して早く模倣品対策をしたい。模倣品に対する活用という点で、権利は広くなくてもいい、物に合わせればいいという観点からすれば実用新案で十分だろう。同じようなことを本当に思想で取りたいなら特許でやればいいじゃないか。そういう意味で、先ほど実用新案と特許が出たら、2つはだめよとおっしゃったけれども、これが不便かなと感じておるんです。ですから、従来でしたら、私も実用新案制度廃止論を言っていた方の1人ですから、今さら何だと言われるかもしれませんが、それだけ状況が変わっているということで見直す必要があるんじゃないかということを申し上げたいんです。
以上です。

委員長

よろしゅうございますか。
それでは、たくさん貴重な御意見をいただきましたので、この報告書案についてはパブリックコメントを募集しておりますので、今後の法案の作成のスケジュールということから見て日程は苦しくなっておりますので、今いただいた御意見をワーキンググループの大渕座長にもお伝えしまして、パブリックコメント及びきょういただいた御意見をもう一度御検討いただいた上で、大渕座長に報告書案の最終案を確定していただくという形にさせていただきたいと思いますが、それでよろしゅうございますか。
〔「異議なし」の声あり〕

委員長

それでは、そういうふうにさせていただきます。どうもありがとうございました。

特許戦略計画関連問題ワーキンググループ中間取りまとめ(案)について

委員長

それでは、きょう最後の議題ですが、特許戦略計画関連問題ワーキンググループ中間取りまとめ(案)について御検討いただきたいと思いますが、事務局の方から、まず資料の御説明をお願いいたします。

事務局

資料の7と資料の8であります。この小委員会の下にもう一つのワーキンググループが設置されておりました。特許戦略計画関連問題ワーキンググループということであります。
9月の初め以来、5回にわたる議論を経まして、一昨日、12月16日に中間取りまとめ(案)がまとまりまして、今後、パブリックコメントに付すという状況でありますので、この委員会の場をかりて御報告申し上げたいと思います。
資料8の方が、実は詳しい資料でありますが、時間も限られているようでございますので、重点項目を中心に資料7に沿って御説明をしていきたいと思っております。
このワーキンググループ、戦略ワーキンググループと略称しますが、一つの議題は審査のスピードアップをすることが我が国の産業競争力にとって、どのような意義を持っているのかということを御検討いただくいう点が1点。それから2点目として、ことし7月に発表されました知的財産推進本部の、いわゆる知的財産推進計画、あるいは経済産業省として取りまとめました特許戦略計画、こういった計画の中で、今後の課題として上げられた部分を中心に集中的な議論を行ってまいりました。
そのほか、ことしの春の国会で附帯決議として我々に宿題として課せられた事項もあわせて検討してまいりました。
その結果でございますが、2.中間取りまとめ(案)の概要とありますように、まず審査のスピードアップに関する目標設定、最終的には滞貨の一掃、すなわち請求があったら遅滞なく審査を着手するという環境を整えることが、研究開発の効率的な推進の上でも、研究開発の実用化の点でも、あるいは審査結果の国際的な相互交換という点でも重要ではなかろうかという結論でありました。もちろん、そのことによって審査の質といいますか、安定性等をないがしろにするようなことがあってはならないというのは当然の前提として、他の条件が同じであれば、それは審査のスピードはできるだけ速い方がいいというところが、このワーキンググループの全体的な総意でありまして、今後、特許庁としても、最終的には滞貨を一掃することを目指して、増員等必要な措置を講じつつ、中長期、例えば5年後、10年後にこうふうにしたいというビジョンを明確に定めるべきであろうという提言をいただいております。
そのために、具体的にどのようなことをやっていくかというのが要約の2ページ以降でございますが、総合施策は3つに分かれておりまして、一つは処理能力、いわゆるアウトプットの増大、二つ目がインプット、請求等の適正化、3番目が関連するインフラ整備ということであります。
まず、第1の審査処理促進に向けた取り組みにつきましては4項目ほどの提言がありまして、一つは通常の審査官に加えて、滞貨一掃のためには、一時的、臨時的な措置として、任期が限られた審査官を集中的に採用するというのが、さまざまな点でいいのではないかという御意見をいただいております。特許庁として、今後5年間、100名程度の審査官を採用していきたいと思っております。任期は、原則5年間でありますけれども、状況によって、さらに延長ということで、今後500名程度の採用を5年間続け、できれば10年間、その雇用を一人一人続けていきたいと思っております。
それから2点目、特許庁は審査効率化のために審査の下調べ、先行技術調査というものを外注しております。現在、実態的には公益法人であるIPCC、工業所有権協力センターというところだけに発注をしておりますが、公益法人改革の議論の中でも、なるべく複数化を図り、競争的な環境をつくった方がいいのではないかという御意見もいただいておりまして、この点、審議をしていただいた結果、現在の法律で「サーチ外注の受注機関は公益法人に限る」となっている部分を削除し、公益法人でないところ、具体的には株式会社のような組織であっても、中立性、秘密保持性等、情報管理が徹底しているという実質的な要件を満たすのであれば、そういったところも対象として、視野に入れることによって今後の候補の裾野を拡大していったらどうかというところであります。
それから、3番目は審査基準、さまざまな改訂が今般行われておりまして、この中には、審査の迅速化に寄与する基準もありますので、その基準の一層の周知徹底を図るべく、弁理士会等との協力も得つつ、その周知徹底を図っていくべきであるという点であります。
それから、4番目として弁理士の役割というところについても幾つかの提言をいただいております。
二つ目の柱でありますが、出願・請求の適正化ということでありまして、この点については4項目の提言がありまして、一つは、既に終わった法改正ではありますが、料金体系の見直し、審査請求料を上げ、出願料・特許料を下げるという料金体系の見直しを行いました。このことによって、料金のインセンティブがうまく機能し、真に権利化が必要な重要な発明に絞って請求をしていただきたい。あわせて、既に請求済みのものも、その後の事業展開の変化によって審査の請求を取り下げるような場合には料金を半額返しますという法改正も既になされております。あるいは中小企業の負担軽減の観点から、一部料金を減免するという制度もありますので、こういった制度を大いに活用していただくべくPRをし、出願の適正化、あるいは出願請求の適正化ということを進めていくべきであろうということが第1点目。
それから2点目として、こういった制度の運用も含めて、ぜひ各企業の経営者層にも理解を深めていただきたいということであります。
3点目として、先ほどの指定調査機関の複数化とも絡むんですが、先ほどの点は、あくまで特許庁の審査の下調べとしての先行技術調査を受け付ける、いわば官需の話であったわけでありますが、他方で、そういった指定調査機関を民間のニーズにもこたえるようにしたらどうかということであります。もともとこの話は、出願人が事前に先行技術調査を十分にした場合には、料金の減免をしたらどうかということも考えるべしということで、国会附帯決議等でいただいていたわけでありますが、出願人自身が、「自分でこういう調査をやりました。しかし、特に文献はありませんでした。」といったようなケースも含めて一律に料金を引き下げてしまうというのは、なかなか調査の客観性が担保されていない状況では難しいのではないか。
そこで、差し当たり調査の品質がある程度担保されている指定調査機関、この指定調査機関を出願人が審査請求時に利用し、サーチレポートをつくってもらい、その結果を特許庁に審査請求時に添付して出すような場合、これは、いわば特許庁のサーチ外注の先取りに相当するようなことでありますので、料金減免をしても特許会計に大きな影響を与えない等々のところから考えてみたらどうかなというところであります。
それから、出願の適正化等あるいは特許戦略の指導等についての弁理士の貢献というところも、ひとつ今後の提言として上がっております。
それから、3番目の柱でありますが、人材に関するインフラ整備、それから、情報システムに関するインフラ整備、この2点についても提言をいただいております。
それから、今後の検討課題として、実は、このテーマも戦略ワーキンググループで取り上げたんですが、分割の時期の緩和ですね。現在、分割することのできる時期は、かなり限られているわけでありますが、フロントランナーをより有利にといいますか、フロントランナーの戦略的な特許取得を可能とするために、市場の動向を見た上で、あるいは標準化の動向を見た上で自分の権利範囲を確定したいというニーズもありますので、分割の時期を、例えば特許を登録された直後も含めて分割ができるような制度にしたらどうかという提案をさせていただいております。それから、補正の制限に関する問題、国際的な調和の観点から、我が国の補正に関する制度も一層見直しをしていく必要があるのではないかという観点で議論を始めたわけでありますが、やや事前に準備をしなければいけないところもありますので、これは、来年早々再開される戦略ワーキンググループで集中的な議論をし、できれば年度末までに結論を出したいということで今後の検討課題といたしております。
今後、一昨日の最後の委員会でいろいろ御意見をいただきましたので、現在、修正作業をしておりまして、すべての委員にもう一度修正案を見ていただいた上でパブリックコメントに付しまして、1月の中旬か下旬ぐらいには、パブリックコメントの結果を見て最終的に案をとるような作業に入っていきたいと思っております。
以上であります。

委員長

どうもありがとうございました。
それでは、この中間取りまとめ(案)につきまして、御意見、御質問等おありでしたらお願いいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。
どうぞ。

委員

機械翻訳のことに言及されておられますけれども、主に日本語と英語の間でしょうけれども、日英、英日両方向をお考えなんでしょうか。

事務局

そうです。

委員長

ほかに、ございませんか。
特に御意見がないようでしたら、――これは、かなり小委員会とワーキンググループとメンバーも重なって、そちらで御議論いただいているということもあるかと思いますが――特段の御意見がございませんようでしたら、今もお話がありましたように、今後、パブリックコメントを募集する予定になっておりますので、その結果を反映させた形で最終的な中間取りまとめ(案)を確定させたいと思いますけれども、その確定の採用は、ここにいらっしゃいます長岡委員が座長でありますので、長岡座長に一任したいと思いますが、それでよろしゅうございますか。
〔「異議なし」の声あり〕

委員長

それでは、よろしくお願いいたします。

特許技監御挨拶

委員長

以上で本日の議題はすべて終了いたしましたけれども、最後に、小野特許官から御挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

小野特許技監

本小委員会におきまして、これまで職務発明制度のあり方について、さまざまな観点から御議論をいただきました。非常に難しい問題であったにもかかわらず、こういう形で報告書を取りまとめていただき、委員長を初め委員の皆様に、本当に感謝しているところでございます。
今回の報告書に沿った形で職務発明制度の改正が行われれば、必ずや我が国の国際競争力の強化に資するものと確信しております。
今後は、いただいた提言の内容を速やかに法案化し、来年春の通常国会に提出する作業にかかりたいと思っております。
さらに、我が国が知財立国を実現するためには、まだまだ解決していかなければならない課題が山積していると思います。特許庁といたしましては、これからも努力していかなくてはならないところでございます。今後の御支援、御鞭撻をお願いするとともに、これまでの御議論の御礼を申し上げます。
どうもありがとうございました。

委員長

それでは、以上をもちまして、第15回の特許制度小委員会を閉会いたします。
どうもありがとうございました。

――了――

[更新日 2004年2月24日]

お問い合わせ

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