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第16回特許制度小委員会 議事録

  1. 日時 平成16年6月22日(火曜日)10時30分から12時30分
  2. 場所 特許庁 特別会議室
  3. 出席委員
    後藤委員長、相澤委員、浅見委員、井川委員、伊藤委員、大西委員、岡田委員、工藤委員、澤井委員、竹田委員、長岡委員、西出委員、萩原委員代理(一色氏)、長谷川委員、山本委員、渡部委員

開会

委員長

それでは、定刻になりましたので始めたいと思います。
ただいまから第16回の特許制度小委員会を開催いたします。
本日は、御多用中のところ御出席いただきまして、どうもありがとうございます。

委員紹介

委員長

この委員会は半年ぶりの開催になりますが、この間に委員等事務局の交代がありましたので、事務局より御紹介いただきたいと思います。よろしくお願いします。

事務局

それでは、私から、交代された委員を御紹介させていただきます。新たに就任された委員の方のみ名簿順に御紹介いたしますので、恐れ入りますが、一言ずつごあいさついただければと思います。
まず最初に、大学代表として、東北大学研究推進・知的財産本部副部長の伊藤弘昌委員でございます。

委員

伊藤弘昌です。どうぞよろしくお願いいたします。

事務局

続きまして、中小企業代表として日本商工会議所から御推薦をいただきました、工藤プラスチック工業株式会社会長の工藤民雄委員でございます。

委員

工藤です、よろしくどうぞお願いいたします。

事務局

続きまして、社団法人日本経済団体連合会を代表いたしまして、産業技術委員会知的財産部会部会長代行の澤井敬史委員でございます。

委員

澤井でございます。よろしくお願いします。

事務局

続きまして、日本労働組合連合会を代表して、経済政策局長 長谷川一博委員でございます。

委員

初めまして、長谷川でございます。よろしくお願いいたします。

事務局

それから、日本知的財産協会を代表して副理事長の萩原恒昭委員が就任されておりますが、本日は欠席されておりまして、代理で一色様が御出席でございます。

委員

萩原の代理の一色でございます。よろしくお願いいたします。

事務局

続きまして、本日付で事務局にも異動がございましたので、御紹介いたします。
本日欠席しておりますが、特許庁長官として小川洋、総務部長 渋谷隆、総務課長 豊永厚志、制度改正審議室長として花木出が、交代して新たに事務局になっております。
以上でございます。

委員長

どうもありがとうございました。
それでは、早速、本日の議事に入ります。
資料を用意していただいておりますので、事務局から資料の確認をお願いいたします。

事務局

本日の資料は7点ございます。まず、資料1が「議事次第・配布資料一覧」、資料2が「委員名簿」、資料3が「新職務発明制度における手続事例集について」、1枚紙でございます。資料4が、本日の本題でございます、この手続事例集の骨子案。資料5が、新35条の新旧対照表。資料6が、本日欠席されております「萩原委員からの意見」。それから、本日使用いたしませんが、参考資料として、先日成立いたしました特許審査迅速化法の説明会用資料でございます。
以上、過不足ございましたら事務局までお申し出いただきたいと思います。よろしいでしょうか。

委員長

どうもありがとうございました。

平成16年度特許審査の迅速化等のための特許法等の一部を改正する法律について

委員長

それでは、検討に入る前にもう1件だけですが、職務発明制度の改正を含む迅速化法が成立したという御報告がありますので、小野特許技監からごあいさつをお願いいたしたいと思います。よろしくお願いします。

事務局

特許技監の小野でございます。
職務発明制度の在り方につきましては、本委員会において長きにわたり、また大変活発に御議論をいただいたところであり、大変感謝しております。小委員会での御議論を踏まえて作成いたしました特許法第35条の改正案を含みます特許審査の迅速化等のための特許法等の一部を改正する法律、いわゆる特許審査迅速化法につきましては、2月10日に国会に提出させていただいたところですが、4月5日の国会審議を経て、先月末、5月28日に成立し、6月4日に公布されました。改めて御礼を述べさせていただきます。
後藤委員長を初め竹田委員、大西委員、さらに阿部前委員におかれましては、参考人として国会審議にも御参加いただき、小委員会での議論などの御紹介を通じて円滑な法案審議に御協力いただきました。重ねて御礼申し上げます。ありがとうございました。
今後は、新たな職務発明制度の趣旨を関係各方面に周知するとともに、「発明者の納得感を向上させる」と同時に、「企業の予測可能性を高める」という本改正のねらいが実現されるような、各企業における適正な職務発明制度の運営を促すべく、事例集の作成や説明会の開催などに努力してまいる所存です。
知的財産戦略本部において5月27日に取りまとめられた「知的財産戦略計画2004」においても、「法案が成立した場合には、速やかに各企業が発明者との間で相当の対価を取り決める手続を行う上で参考となるような事例集を作成する」と記載されたところです。特許庁といたしましては、まずは「新職務発明制度における手続事例集」を作成することが急務であります。
皆様におかれましては、今後とも御協力のほどよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

委員長

どうもありがとうございました。

新職務発明制度における手続事例集について

委員長

それでは、本日の主要な議題であります「新職務発明制度における手続事例集について」審議をしたいと思います。
まず、事務局の方から資料の説明をお願いいたします。

事務局

それでは、お手元の資料の資料3、4、5を用いまして、手続事例集の御説明をさせていただきたいと思います。
まず、資料3でございますが、ここで、新職務発明制度における手続事例集についての考え方と今後のスケジュールを御説明させていただきます。まず、新制度の概要といたしましては、皆さん御案内のとおり、まず基本として、使用者と従業者が自主的に取り決めた対価を相当の対価として裁判所でも尊重されるようにすると。ただし、自主的にその取り決めたところによる対価を支払うことが不合理であってはならないとしております。この不合理性の判断は、対価を取り決める際の手続面を重視して行うとしております。
2.として事例集の内容でございますけれども、各使用者と各従業者が自主的に対価を取り決める場合に、この具体的な手続を行うに際して生じるさまざまな疑問に対し参考としていただけるような事例集を作成するとしておりまして、その具体的な内容といたしましては、使用者と従業者の間で行われます協議の状況とか基準の開示の状況、意見の聴取の状況などさまざまな具体的なケースについて、それらが不合理な判断においてどのように評価されるのか、あるいは不合理と判断されないようにするためにはどうすることが望ましいのか、こういったものを事例集にまとめていきたいというふうに考えております。
それから、これは国会審議の中でも御指摘をいただいた点でありますが、これまで明文の職務発明規程を持っていなかった中小企業、大部分がそうだと思いますが、こういった中小企業において新たに職務発明規程を整備するに当たって参考となるような具体的な規定の条項の例もこの事例集の中に盛り込みたいというふうに考えております。
今後のスケジュールでございますが、本日第16回で、骨子案について御検討いただきまして、非常にスケジュールはタイトでございますが、7月の中旬に第17回、こちらで事例集の素案を御検討いただきまして、8月の上旬には事例集案について御検討いただき、8月中に事例集を公表したいというふうに考えております。それから、できました事例集につきましては、秋から冬にかけまして全国で説明会を開催いたしまして、周知を図って参りたいと考えております。そして、この事例集を参考に、各企業等で新たな手続にのっとった職務発明規程を整備していただいて、来年4月のこの改正法の施行に間に合わせていただくというスケジュールを考えております。
それでは、資料4、本日御用意しております手続事例集の骨子案について御説明をさせていただきたいと思います。
2ページ、目次がございます。ここで、ざっと構成を御説明させていただきますと、まず、Ⅰに基礎編とあります。ここで基本的な考え方、基本的な事例についての考え方を示したいと思っております。その中で、5章構成になっておりますが、第1章総論、ここは手続の事例というよりは新35条の条文解釈、このように解釈するということを記載させていただいております。それから、第2章以下で具体的な手続事例について、これはQ&A形式を考えておりますけれども、第2章が協議の状況についてのさまざまな事例、第3章が開示の状況についての事例、4章が意見の聴取の状況についての事例、5章がその他の事例という構成を考えております。
それからⅡで、ここは応用編とありますが、これは19ページをめくっていただきたいと思いますけれども、19ページに想定事例とあります。この応用編の中では、企業A社、B社の事例、大学の事例としてC大学というように、具体的なケースを想定して、それぞれの具体的なケースにおいてどのように手続が判断されるかというのを説明したいというふうに考えております。このⅡの中の第1章で協議の状況、第2章で開示の状況、第3章で意見の聴取の状況というふうに分けて説明をしていく予定にしております。目次の3ページ、Ⅲで規程編とあります。これは先ほど御説明した、これまで規程を持っていなかった中小企業などが規程を整備していくに当たって参考となるような規程例ということで、職務発明規程の中で盛り込まれることが想定される条項の例を、ここに事例として御紹介したいと思っています。具体的には、さまざまな企業から御協力をいただきまして、各企業の規程をいただいております。そういった中で、それぞれ主立ったものを具体的な事例としてここで御紹介をさせていただきたいというふうに考えています。最後は、今までこの小委員会で御議論いただいて取りまとめました報告書を、参考として添付したいというふうに考えております。
続きまして、4ページは関連条文ということで、29条、33条、新35条を御紹介させていただくとともに、施行時期等の規定がありますので、附則の第1条、2条をここで紹介をしております。
それから、いよいよ本論の5ページ以降でございますけれども、本日は、まず第1章の総論につきまして詳細に御説明をさせていただくとともに、第2章以下につきましては主な問いを御紹介させていただきまして、こういった視点の問いが必要ではないかとか、こういった問いは不要ではないかとか、そういったことについて後に御審議いただければと思います。
まず、第1章総論で、この新法についての考え方を御説明させていただきたいと思います。特にこの新35条におきましては、さまざまなところで誤解をした解釈もあちこちでなされているようでございまして、特許庁といたしましても、新35条の解釈は正しくはこのようにされるべきということを早目に発信していきたいという趣旨もありまして、とりあえずこの条文解釈の部分につきましては、答えも含めて今回御提示をさせていただいて、説明させていただきたいということでございます。
まず第1章、問1の新しい職務発明制度の基本的な考え方は何ですかということです。これにつきましては、今までこの特許制度小委員会で御議論いただいた中身をダイジェストにまとめたような内容になっております。まず、第1パラグラフにおきまして職務発明制度の目的、第2パラグラフでは、基本的には権利は発明者側にあるわけですので、それを使用者側が予約承継することを許容しながら、発明者側には相当の対価請求権が保障されているという内容を記載しております。
第3パラグラフにおきまして、職務発明に係る権利も、私人が有する譲渡可能な財産権ですと。このため、その権利の承継やその対価については、原則として私人の意思を尊重すべきという、広い意味での私的自治に委ねるのが適当だというのが基本的な考え方として述べてあります。したがって、対価については、原則として従業者と使用者の当事者間の自主的な取り決めを尊重することが適当だということを述べております。
下から2つ目のパラグラフに飛びますが、この審議会で議論させていただいたところでございますけれども、ただし、一般的・類型的には、使用者と従業者の間には情報の質及び量並びに交渉力の格差が存在するということで、職務発明に係る権利の承継の対価については、常に広い意味での私的自治に委ねることは妥当ではないと。したがって、この私的自治に委ねることができるような環境や条件が整備されていない場合には、その状況下で結ばれた契約や勤務規則その他の定めにおいて対価について定められたとしても、それを尊重することはしないというふうにしていますと。
6ページの上から2つ目の「なお」以下でございますけれども、なお、使用者と従業者の間の自主的な取り決めをできる限り尊重して、法が過剰に介入することを防止するという観点から、不合理と認められるか否かは、自主的な取り決めにより対価が決定されて支払われるまでの全過程のうちで、特に手続的な要素、具体的には協議の状況などを重視して判断することとしていますというのが、この改正法の趣旨、基本的な考え方でございます。
問2で、この新職務発明制度は、従来の制度とどの点で異なるかという問いを起こしています。これは、オリンパス判決で代表されますように、これまでの制度では、勤務規則において職務発明に係る対価が定められていたとしても、裁判所が最終的に4項に基づいて算定する対価の枠が相当の対価となりますと。これに対して新制度においては、契約等の定めにおいて対価を定める場合に、その定めたところにより対価を支払うことが不合理と認められない限りは、その対価がそのまま相当の対価として認められることになりますという点で大きく異なっているということでございます。
「また」以下では、仮に裁判所で相当の対価が算定されるような場合であっても、その考慮要素については、旧35条4項をより明確にしているということをここで述べております。
続きまして、7ページの問3でございますが、契約、勤務規則その他の定めにおいて職務発明の対価を定める場合の要件について説明をしてくださいということでございますけれども、条文のとおり、中ほどにありますが、その定めたところにより対価を支払うことが不合理と認められるものであってはならないということになります。この不合理と認められるものであるか否かの判断につきましては、条文上例示をされておりますが、協議の状況とか開示の状況とか意見の聴取の状況などを考慮して総合的に行われるということでございます。
それから、具体的な35条の条文解釈が問4以下でございますけれども、、新35条4項と35条5項の関係について説明をしてくださいと。この4項と5項の関係について非常に誤解が多いものですから、このような問いを起こさせていただいております。
まず、第4項につきましては、相当の対価を契約、勤務規則その他の定めにおいて定めることができることを明らかにしております。これは資料5の条文の新旧対照表を右に置いてごらんになっていただければと思いますけれども、上が現行法、下が改正法になっております。まず、改正法の4項の冒頭に、「契約、勤務規則その他の定めにおいて前項の対価について定める場合には」とあります。従来、契約、勤務規則その他の定めにおいて対価を定めるという文言は、35条にはどこにもありませんでした。今回、新たに契約、勤務規則その他の定めで対価について定めることができるという条文をこの4項で盛り込ませていただいているということです。
一方で、今度は第5項でございますけれども、これは第5項の冒頭、網かけがありますけれども、「前項の対価についての定めがない場合又はその定めたところにより対価を支払うことが同項の規定により不合理と認められる場合」に、以下の考慮要素に基づいて対価を算定するということでございますから、定めがない場合や不合理とされない限り、相当の対価は4項に従って算定されるということになります。
したがいまして、問4の①、②にありますように、特許法35条4項、これは新4項ですが、新4項の要件を満たす場合には、契約、勤務規則その他の定めにおいて定めたところによる対価が相当の対価となります。②は、この4項の要件を満たさない場合には、35条5項の規定により定められる対価が相当の対価になるということでございます。
それでは、続きまして8ページの問5でございますけれども、4項、5項に、「その定めたところにより対価を支払うこと」と規定されているが、これは具体的に何を指しているのかと。非常にわかりにくい記述でありますが、「その定めたところにより対価を支払うこと」というのは、対価として契約、勤務規則その他の定めによって支払われる金員の額が決定されて支払われるまでの全過程、全プロセスを意味するということでございます。例えば規程などをつくる場合、対価を決定するための基準を使って対価を支払う場合には、対価を決定するための基準を策定するところから、それに基づいて決定された対価を支払うまでの全過程を意味します。それから、個々の発明ごとに契約で支払うような場合には、その契約の締結手続から対価が支払われるまでの全プロセスがこの中に含まれるということでございます。
それから、この全過程の中には、どのような手続が行われたのかという意味の手続面の要素、基準の内容や最終的に決定された対価の額といった実体面の各要素の双方が含まれます。これは小委員会で議論されたとおりでございます。「その定めたところにより対価を支払うこと」についての判断については、当然ながら個々の職務発明ごとに行われることになります。
続きまして、問6でございますけれども、「その定めたところにより対価を支払うこと」が4項の規定により不合理と認められる場合という、この場合の不合理性の判断というのはどのように行われるかということです。まず、「その定めたところにより対価を支払うこと」というのは、先ほどの問いで御説明したとおり、すべてのプロセスが入るということでございますけれども、そのプロセスを総合的に判断して行われるということです。したがって、そのプロセスの中の一つの手続が不合理性を肯定する方向で考慮されたとしても、それが直ちに総合的な不合理性の判断の結論において不合理性を肯定することに直結するわけではないということです。もっとわかりやすく言えば、例えば先ほどの考慮要素の3つがありますが、どれか1つが不合理と判断されても、最終的に総合的に判断した場合、全プロセスが必ずしも不合理とされるわけではないということになります。
なお、総合的な判断においては、手続的な要素が当然重視して考慮されるということでございます。
続きまして、9ページの問7でございますが、例示している個々の要素についての説明が書いてあります。まず、協議の状況についてですけれども、これは対価を決定するための基準を策定する場合の基準の策定に関して、従業者と使用者との間で行われる話し合い全般を意味するということです。「協議の状況」とありますが、これは協議の有無、すなわち協議がなされたか否かという二者択一的な判断のみではなくて、どのような協議が行われたか、その協議が行われた場合における協議の状況全般までが考慮要素になるということでございます。
それから開示の状況、これも同様でございまして、その基準の適用対象となる職務発明を行う従業者に対してその基準を公表するということを指しておりまして、これも開示したか否かということではなくて、どのように提供しているのかという状況全般まで考慮要素になるということでございます。
それから、意見の聴取の状況ということですが、これは具体的に特定の職務発明に係る対価の額の算定を行う場合に、その算定に関して、職務発明の発明者である従業者から意見、不満を聞くことを意味しております。これも意見を聞いたか聞かなかったかだけではなくて、どのような意見の聞き方が行われたかとか、それに基づいてどのような説明がなされたかというような、広い意味での状況もこの中に含まれるということでございます。
最後の問10でございますけれども、条文4項には、協議の状況と3つの例示の最後に「等」という言葉があります。この「等」に含まれる事項とは何かということでございます。これは今まで御説明したとおり、基本的には、手続を重視して不合理性の判断がなされるというわけでございますけれども、ここの条文にあります「等」には、全プロセスのうちで不合理性を判断するために必要とされる手続面の要素であって、例示している3つ以外のものがあれば、そういったものもここで読み込まれますし、あるいは実体面の要素も補完的に考慮されるということでございます。具体的には、手続面の要素として、例えば対価の支払い方とか、対価が実際に決定されて支払われるまでの期間とか、対価について第三者的諮問機関や第三者的決定機関の存在の有無なども考えられます。それから実体面の要素としては、基準の内容とか対価の額そのものがこの「等」の中で読めるということでございます。ただ、この実体面の要素につきましては、今まで御説明したとおり、あくまで補完的に考慮されるというようなことでございます。
これが第1章の御説明でございます。
続きまして、第2章以下につきましては、まだ答えの方まではできておりませんので、とりあえず、今まで報告書をまとめるに当たって、あるいはこれから改正法をまとめるに当たってさまざまなところで説明会をさせていただきまして、その際に、産業界あるいは研究者の方々からかなりいろんな御質問をいただいておりまして、そういった御質問を踏まえて、皆様が疑問として感じる問いというのを想定してつくらせていただいた次第でございます。
では、問いについてざっと御説明させていただきます。まず、第2章、ここが協議の状況でございますが、この中を手続面と内容面に分けてつくっております。2-1の手続面について、まず基準の策定様式でございますけれども、幾つかありますが、例えば問4では、この基準というのは労働協約で定めることができますかとか、就業規則で定めることができますかとか、どのような形で策定すればよいのかという問いを起こしております。
それから、(2)の協議の相手方でございますけれども、協議とは、使用者とだれとの間で行うことが協議なのかという基本的な問いでございます。
(3)の協議の方法でございますけれども、これは、例えば集団的に話し合いを行うことも協議に含まれているのかどうかという問いを起こしております。続きまして問12で、従業者の代表者を通じて話し合うことも協議に含まれるのか、つまり代表者との協議でもいいのかというような問いでございます。
(4)は、代表者を選任する方法でございます。問14、その代表者がある従業者を正当に代表しているというのはどのような場合を言うのか。問15は、従業者が100%加入している労働組合がある場合に、その組合の代表者と話し合いをすれば協議と評価されるのかどうか。問16は、過半数の労働者が加入する労働組合の場合、その代表者との話し合いというのはどのように評価されるのか。飛びまして問19では、組合と関係なく全従業者を代表する代表者を選任して、その代表者と協議をした場合に、どのように評価されるのかというような問いを起こしています。
ちょっと飛びまして、13ページの問22でございますが、例えば過半数の従業者を代表する代表者を選任して協議した場合には、どのように評価されるのかというような問いもございます。
(5)が、不合理性の判断についての問いでございますけれども、問26は、ある従業者が他の従業者と一緒に話し合いを行うことを拒否して、使用者と個別に話し合いをしたいと。ただ、使用者側はその個別の話し合いを行わなかったというような場合に、不合理性の判断でどのように評価されるのかというようなケース。
問29は、基準について合意に至ることができなかった場合、その基準を適用する場合にどのように評価されるのか。
問30ですが、合意に至らない時点で使用者側が協議を打ち切ったようなケースについては、どのように評価をされるのか。
あと、問33は、協議の相手方とはなっていなかった従業者、例えば新入社員なんかもこれに含まれますが、そういった従業者に対して、既に在職している従業者との間で協議を行って策定された基準を適用する場合に、どのように評価されるのかということです。
それから、下の方の2-2が基準の内容面でございますけれども、例えば問3で、基準において現在幾つか訴訟の判決が出ておりますけれども、旧法下における職務発明に係る対価をめぐる訴訟の判例の基準を参考にして規程を策定する必要があるのかどうか。
あるいは問4で、他社と比較して低い対価の額が決定される内容の職務発明規程はどのように評価されるのかということです。
(2)、15ページでございますが、問5で、規程の具体的な内容で、実績報償規定がない、実績報償を行わない場合に、それは不合理と判断されるかという問い。
問6は、報償額に上限を定めることはどのように判断されるかということです。
あと、2-3は基準の改訂等についてということで、問1で、改訂前に承継した職務発明に新たな基準を適用することができるかどうかというような問いを起こしております。
16ページの第3章、ここは開示の状況でございますけれども、開示の仕方に制約があるかどうかというような問い。
それから、新入社員に対していつまでに基準を提供することが望ましいのかというような問いを起こしています。
続きまして、17ページ第4章でございます。これは意見の聴取の状況ですけれども、問1では、対価の算定について個別の従業者の意見を聴取しなければならないということでしょうかと。
問2は、一旦算定した対価を発明者に支払った後で、発明者から意見を求めるという方法は意見の聴取に当たりますかというような問いです。
問3につきましては、より不合理性を否定する方向で考慮されるためには、意見の聴取は従業者から要望があったら必ず行う方が望ましいのか、あるいは対価の算定時期とか対価の支払い時期が定められている場合には、その時点で意見の聴取や使用者の回答を行えば十分なのかどうかというような問いを起こしています。
続きまして、18ページ第5章でその他といたしまして、外国における特許を受ける権利の承継について35条は適用されるのかとか、あと、ノウハウについても対価を支払う必要があるのかどうかというようなことも触れております。
続きまして、19ページ以下が応用編でございますが、想定事例A社、B社、C大学というのを置きまして、それぞれの具体的なケースで問いをつくっております。
まず、20ページ第1章の協議の状況ということでございますけれども、B社のケース、これは取締役、研究を担当している取締役でございますけれども、研究開発・設計に従事する従業者・取締役に適用する基準をつくる上で、その基準の適用を受ける取締役がB社の代表者として話し合いをした場合、これは協議と評価されるのでしょうかとか、あと、大学の場合には、まず学科ごとに代表者を選定して、さらに各学科の学科代表者全員による選挙で総代表を選出して、その総代表が大学側と協議をするというようなことは協議と評価されるのかどうかというようなことです。
問3としては、これはA社のケースですが、労働組合が組合員から対価についてA社と話し合うことについての明確な委任を受けていなかったというようなケースで、組合の代表が協議を行った場合、これはどのように評価されるのかということです。
それから、問4としては、組合員1,040人中840人が労働組合を通じて協議を行うことを賛成してくれたと。残りの200名については、労働組合を通じて協議をすることに同意していないというようなケースについて、労働組合を通じた協議に賛成していた組合員と反対していた組合員のそれぞれの関係で、協議と評価されるのかどうかというようなケースです。
飛びまして21ページの問6ですけれども、従業者であります12名のうちで10人は、代表者を通じて話し合いをすることに同意している。ただ、残りの2名は個別に話し合いをしたいと言っていた場合、この10名の代表者と話し合いをすることは、この残りの2名の代表者との関係で、協議と評価されるのかどうかということです。
1-2の下の問1でございますけれども、研究職の組合員と非研究職の組合員との意見が全く違っていたため、労働組合の中でその両者の中間の意見を提示して行ったようなケースについて、そのような話し合いは、実際に基準が適用される研究者との関係で不合理性の判断としてどのように評価されるのかということです。
問2では、組合の中で非研究職の割合が非常に高いことから、研究者の意見が完全に埋没してしまっていたような場合、これについてどのように評価されるのかということです。
22ページに飛びまして、問4でございます。これは研究職100名の代表としてXが選出され、非研究職1,400名の代表としてYが選出されたと。このX、Yの意見が対立していたことから、使用者側は、より多くの従業者の代表であるYの意見を採用することにしたと。このようなケースにおいて、この話し合いについてはどのように評価されるのかというようなケースです。
またちょっと飛びまして、23ページの問10です。これはB社のケースで、各従業者と個別の話し合いを行っていたところ、全員が全く違うことを言っていて、話し合いが全然まとまらないような場合、どの程度まで協議を行えばいいのでしょうかというような問いでございます。
あと、24ページの問12でございますけれども、これは従業者との話し合いを行わないで、使用者側がつくった基準案を社内のイントラネットにのせて、それについて賛否を問うたということです。これに対して、例えば反対していた研究職の従業者に基準を適用する場合に、どのように評価されるのか。それから、賛成または無回答の研究者に適用する場合にはどのように評価されるのか。それから、無記名で賛否を問うた場合に、だれが賛成、反対、無回答であったかわからないようなケースでは、どのように評価されるのかというようなことを挙げています。
25ページに飛びまして、問14でございますけれども、使用者側が、とりあえず研究職のうちでも管理職にある人たちと十分話し合って原案をつくり、その原案に基づいて管理職以外の研究職と話し合いを行って基準を策定したところ、研究者以外の従業者・取締役とは最終的に全く話し合いをしていなかったという場合です。話し合いというか、単に提示して、質問があればこれに答える程度の手続を行っていた場合も含め、管理職の研究職、管理職以外の研究職、研究職以外の従業者・取締役、それらについて、不合理性の判断で協議の状況というのはどのように評価されるのでしょうかというような問いでございます。
その下の1-3の問2でございますけれども、これは15年前に基準を策定し、その際は、当時の従業者と十分に話し合ってつくった規程ですが、現在においては、当時と比べて6割の研究職が入れかわってしまっていると。そのような場合に、そのような規程を研究職に適用するということが不合理性の判断でどのように評価されるのでしょうかということです。
26ページの問6ですけれども、規程上は売り上げの1%を対価とするような規定であったにもかかわらず、誤って0.1%で計算をしてしまったと。このようなケースにおいても不合理と判断されてしまうのでしょうかというようなケースでございます。
それから、開示の状況でございますけれども、問1で、これは社内イントラネットで基準を従業者に開示をするというようなケースで、イントラネットに接続されたパソコンが与えられていない従業者について、開示の点についてどのように評価されるのでしょうかというようなことです。
それから、2-2の問2、一番下でございますけれども、これは策定された基準を従業者に回覧した場合について、この開示の状況はどのように評価されるのでしょうかということを述べています。
それから、飛びまして29ページ第3章でございますけれども、これは意見の聴取の状況です。問1でございますけれども、共同発明が行われた場合、共同発明のうちの一番上位の者を通じて、まとめて対価の算定についての意見を聞くことにしましたと。この場合、どのように評価されるでしょうかと。
3-2の問1でございますけれども、これは対価の算定根拠について、共同発明者のうちの1人から説明してほしいという要望があったということですが、これについての要望があったにもかかわらず説明をしない場合に、どのように評価されるのでしょうかということです。
問2のケースでは、共同発明者は、共同発明者間で意見をまとめて1つの意見にしないと意見の聴取はしないと仮に使用者側が言ってきた場合に、これはどのように評価されるのかということです。
30ページ、最後になりますが問6、これは、従業者側が代理人を立てるということについて認めなかったということについては、どのように評価されるでしょうかということでございます。
ここまでが応用編でございまして、次に、Ⅲが規程編ということで、ここでは主な項目だけとりあえず列挙しておりますが、総則におきまして、職務発明規程の目的とか用語の定義、権利の帰属、こういったものを規定するのが一般的であると。それから届け出についての規定。職務発明であるか否かの認定、それについての異議の申し立て手続の規定。それから、権利の承継、その処分と放棄の規定。それから対価の決定については、決定方法とか支払いの時期、意見の聴取、その発明者が退職、死亡した場合の取り扱いの規定。32ページ、これは一般的に評価委員会といいますか発明委員会を設けて評価するというのが多く行われているようですが、その発明委員会の設置とか、そこの委員会での審議事項の規定。その他雑則として、制限行為とか秘密保持規定、職務発明でない発明の取り扱い規定等々、複数の規定の項目を御紹介するということにしようと考えております。
長くなりましたけれども、この骨子案についての説明は以上でございます。

委員長

どうもありがとうございました。
それでは、これからこの事例集につきまして御審議をお願いいたしたいと思いますけれども、まず最初に、本日欠席されております萩原委員から意見書が資料6として提出されておりますので、代理出席されています一色様から、資料6を用いて御説明をお願いいたしたいと思います。よろしくお願いします。

委員

委員長、ありがとうございます。私ども産業界といたしましては、来年4月の改正法施行の前に特に新4項対応を図る必要があるということでございますが、条文だけを見ましても、具体的に何をどうすればよいのか手がかりがほとんど与えられていないという中で、このような事例集が発行を前提に検討されているということは非常に喜ばしいことだと思いますし、また、私どももよりよい事例集ができますように、この委員会等を通じましてできるだけ意見を述べたいというふうに考えております。そういう中で、本日は骨子案だけが示されているわけでございますが、若干懸念されるところがございますので、以下、御説明を申し上げます。
まず第1に、最初の10個のQ&A以外につきましては、100個余りのQがあり、そのAが示されておりませんので、最終的にどのような事例集になるのかまだ必ずしもイメージがつかめていないところでございますけれども、そのQだけを拝見いたしますと、どうも安全サイドを考えまして、発明者寄りといいますか、発明者擁護の立場に立っAになるのではないかという点が懸念されるところでございます。産業界の実態としましては、使用者が研究投資を行い、研究環境を整備し、なおかつ失敗の場合のリスク負担も行いながら発明者が研究に邁進できる環境を整え、その結果できた優れた発明を事業に結びつけることによって産業競争力の強化を図るという、その双方向といいますか、ワーキングトゥゲザーの実態にあるわけでありますけれども、そこにくさびを打ち込むといいますか、対立構造を引き起こすということが懸念されるわけでございます。
2点目といたしましては、余りにも細かな事例集になりますと、ドイツのガイドラインほどではないにしましても、手続が非常に複雑、煩雑なものとなりまして、かえってその事例集に従っていないといったようなことを理由に、無用の紛争、裁判が引き起こされることも懸念されるわけでございます。そういう観点で、可能な限り使用者等と従業者等のバランスを十分に配慮した上でこの事例集が作成されるべきであるというふうに考えております。
もし委員長の御了解が得られましたら、引き続きまして基礎編第1章の総論に関しまして、幾つか意見を申し述べたいと思っております。
まず、問1でございます。これは5ページに書かれております。下から2番目のパラグラフ、「ただし」で始まるものでございますが、ここに「一般的・類型的に」の後に、情報の質及び量並びに交渉力の格差が存在することを理由に、「広い意味での私的自治に委ねることは妥当ではありません。」との記載がございます。これに対して、上から3番目のパラグラフを見ますと、最後のところですが、「広い意味での私的自治に委ねることが適当です。」とありまして、矛盾をしているというふうに思っております。したがいまして、この下から2番目のパラグラフは削除すべきであるというふうに考えております。
また、その下の最後のパラグラフでございますが、1行目の「私的自治に委ねることができるような環境や条件が整備されていない場合には、」という、一見わかりにくい表現が用いられておりまして、ユーザーの立場から見ますと、これは何であるかという混乱を生じかねないというふうに考えておりますので、ここのところに関しましては、「基準がない場合や手続面が不合理な場合には、」という文言に置きかえていただきたいということでございます。
続きまして、8ページの問5でございます。これは不合理性の判断に関する部分でございまして、一番最後の4行のところに、『「その定めたところにより対価を支払うこと」についての判断は、個々の職務発明毎に行われます。』とあり、ここについて異論があるわけではございませんが、その後の「このため」で始まる文章、この意味がよくわからないので、ユーザーに混乱を生じさせるのではないかと懸念をするところでございます。具体的に言いますと、読み方にもよるんだと思いますけれども、基準の策定に際して従業者等の代表と協議する一般的なケースを考えますと、すべての従業者等の同意が得られるとは限らないため、同意しなかった従業者等は基準の策定手続を問題とし得るようも読める。また、別の見方をしますと、基準の策定や基準の開示は会社内で一様に行われるということを前提に考えますならば、意見の聴取だけが問題となり得るように誤って読まれるおそれがあるということでございます。したがいまして、「このため」以下は削除をすべきであるというふうに考えております。
次に、9ページの問7、協議の状況に関する部分でございます。2番目のパラグラフに、「協議の状況全般まで考慮要素となる」と記載されておりますが、この記載では、何をどこまでやればよいのかが、悪く言いますと、ますますわからなくなってしまう。したがって、ここのところは端的に、少なくとも従業者等の代表と話し合いが持たれたことが重要視されることを明確にすべきであるというふうに考えております。話し合いが持たれるということは、その中で質疑応答はもちろんのこと、従業者等もいろいろ意見を申し述べる機会が与えられるということを考えると、この点が重要視されるということを強調すべきかと思っております。
次に、同じページの問8、これは若干マイナーな点でございますが、各論のQの個数が余り多く取り上げられておりませんし、ここにも「状況全般」という文言が使われているわけでございますが、その意味も明確ではないと。ここは端的に、従業者等が知り得る状態にすることで可であるということを明確にすべきであるというふうに考えております。
さらに、同じページの問9でございますが、これが最も問題かなと思っている点の一つでございます。ここに書いてあります、『「意見の聴取」とは』という後でございますが、「対価の額の算定を行う場合、その算定に関して……従業者等から意見・不満を聴くことを意味します。」と書いてあります。こういうふうに書いてしまいますと、個々の対価の額を算定する際に、従業者等の意見等を聞く必要があるというふうに読めることになります。ただ、そのようにすることは、事前に算定の段階で個々の従業者等の意見を聞くことは、産業界においては事実上不可能なことでございます。また、仮に算定の後、意見・不満等を聞くということであるとしましても、「Aさん、あなたはこれでいいですか」、「Bさん、不満はないですか」というふうに、積極的に聞いて回らなければならないというふうに読むことも可能な文章になっているわけであります。ここのところは、算定された対価の額について従業者等から意見・不満が出れば、それを聞くことを意味しますというふうにすべきであると考えております。事後的かつそういう意見・不満が出た場合に限って適切に対応すればよいのではないかということでございます。
最後に、問10でございます。10ページになりますが、最終パラグラフにおきまして、「……等を考慮して」の「等」の意味なんですが、実体面の要素のすべてが含まれると記載され、その後に「実体面の要素としては」、最終的には「対価の額そのものも考えられます。」と説明されているわけであります。この点は、改正法の考え方が手続を重視して、それに不合理性がなければ、その手続によって定められた対価の額は尊重されるというところに意味があることを考えますと、対価の額ということを明示すると、この法改正の趣旨に反するように思われます。最終的に対価の額が一切考慮されないということはないと思うのですが、このように明記することには問題があるというふうに考えております。
最後、若干小さい問題ではあるんですが、最終パラグラフの「第三者的諮問機関」、「第三者的決定機関」、「的」がついておりますので、この意味もちょっととりかねるところはあるんですが、社内の機関でも差し支えないということを明記していただければというふうに考えております。
以上、長くなりましたが意見を申し述べました。

委員長

どうもありがとうございました。
今御指摘いただいた点は、まだこの事例集が総論のところだけしか答えが書いてありませんので、2章以下の各論のところの答えが明らかになればもう少しクリアになるという問題点も幾つかあったかと思いますけれども、御指摘の点は今後検討していきたいというふうに思っております。
では、お願いします。

事務局

ここの基礎編第1章の総論につきましては、基本的には条文解釈といいますか、立法趣旨を述べているところでございますから、今の御指摘については事務局から御説明をさせていただきます。
まず、御指摘の(1)の問1の点でございますけれども、これは「私的自治に委ねることが」云々とありますが、これは、まさにこの特許制度小委員会で最終報告書をまとめるに当たって議論されていた内容をそのまま書かせていただいている内容だというふうに考えています。このようなことで、まず矛盾しているということにつきましては、前段のところでは、「原則として」ということで基本的な考え方を書かせていただいて、最後に「ただし」のところで、そうはいってもこういうことがあるので、今回、不合理な場合には最終的に裁判所が対価を算定するというような規定にさせていただいているということでございます。御指摘のように、「基準がない場合や手続面が不合理な場合」と変えてしまうと、なぜそのように規定したかという理由、根拠がわからなくなってしまうということで、その背景としてこの記述をさせていただいているということでございます。
それから、問5の点につきましては、正直、どのように解釈すればそのような誤解が生ずるのか私もよくわからないんですが、同意が得られるとは限らないとか同意しなかったというのは、少なくともここの説明では同意を求めているという記述は一つもありませんので、同意についての誤解を生じることはまずあり得ませんし、ここでは当然ながら個々の発明ごとに行われることになりますから、結果的に同じ規程を適用しても、その個々の発明に対してその規程に基づいて――当然個々の発明ごとに対価の算定というのは異なるわけですから、それぞれの事例で判断が異なるケースというのは十分あり得ると。それは、例えばA発明のときにはきちっと意見の聴取は行われたけれども、B発明では意見の聴取は行われなかったケースとか、同じ規程を適用しても運用上結果が異なるということもあり得ますから、それを記載しているということでございます。
それから、問7、問8で「状況全般」ということですが、これは条文上も、それぞれ開示の状況とか協議の状況とありますから、基本的にはそれ全体を含むんですよと。代表者と話し合いが持たれたことが重要視されるということになると、協議が行われたかどうかの有無にポイントを置くということで、むしろ条文から離れた解釈になってしまうのではないかと。どのような協議が行われたかというのが判断のポイントになるんですよということだと思います。これにつきましては、第2章以下のQ&Aの中でより明確になっていくと思います。
問8も同じです。ここで「従業者等が知り得る状態にすることで可とされる」というふうに書かれていますが、多分この「可とされる」というのは、不合理とされないということにするという意味にとれますけれども、知り得る状態にしただけで不合理とされないということを記述するには無理があると思います。どのような状態で知り得る状態になっているかというのが判断のポイントになるかと思いますので、これについても後のQ&Aの方で明確にしたいと思います。また、開示の状況についてのQ&Aが少ないと、16ページのQ&Aが少ないということであれば、今後こちらについても充実させていきたいと思っています。
問9につきましては、この点については、例えばそのような懸念もおありかということで、17ページに問2というQ&Aを起こさせていただいています。一旦払った後で意見を求めるという方法が意見の聴取に当たるかどうかということです。こういったQ&Aの中で、具体的にどういうものが許容されるのかということも明確にしていきたいと思っています。
それから、問10の「等」の議論、これもまさにこの特許制度小委員会で大きな議論のポイントになったところでございますけれども、「等」の中には対価の額、実体面が含まれるというのはこの小委員会でまとめた内容でございまして、これについてはこのとおりの答えではないかと思います。ただ、この答えにも書いてありますように、当然手続を尊重する、重視するというのがこの小委員会の方針でございましたから、あくまで実体面というのは「等」という中で読み込むということで、補完的な判断基準として考慮されるということをこの問10の答えの中で明確にしている次第でございます。
なお、問10の②の点につきましては、我々も社内の機関は含むという前提で書かせていただいていますが、そのような点が不明確ということであれば、後々これについては修正をさせていただきたいと思っています。
以上でございます。

質疑応答

委員長

それでは、これから残りの時間でこの事例集につきまして御審議いただきたいと思いますが、先ほどの事務局の御説明にもありましたように、きょうも含めまして3回これは審議することになっておりまして、8月の上旬には完成版をつくって公表したいという計画になっております。きょうのところは、ごらんになっておわかりのように、第1章の総論のところしか回答が入っておりませんので、第2章以降について回答が入ったものにつきましては、次回のこの委員会で御提示して、また御審議いただくということになろうかと思います。
そこで、きょうはこの総論のところと第2章以下の問い、この手続集全体のストラクチャー、そういったことについて御審議いただければというふうに思います。どういった点からでも結構ですので、よろしくお願いいたします。

委員

2点質問と、2つ目については、質問に関連して意見を若干申し述べたいのですが、まず基本的に、特許制度小委員会がこの手続事例集にどういう立場でかかわるのかということを確認しておきたいんです。産業界は改正法については、補障規程はどのような手続でどのような内容を定めれば合理性の要件を満たすのかということについては重大関心事ですし、衆議院の経済産業委員会の附帯決議でも、事例集の作成などによって企業における職務発明規程の整備を促進することとありますから、所管行政庁である特許庁が特許行政を行うについて、それに注力してやるということは当然のことだと思うのですが、私が聞きたいのは、それにこの特許制度小委員会がどうかかわるのかということです。つまり、事例集の表紙を見ましても、これは特許庁となっておりますから、特許庁の作成する事例集だと思いますが、特許庁がこういう事例集をつくることについて、特許制度小委員会に参考的な意見を聞きたいという趣旨なのか、それとも、さらに制度改正にかかわった小委員会として、特許庁がこういう事例集を作成して周知徹底することについて、この委員会が承認をするのか、さらには、それ以上に何らかの法的なかかわり合いをするのか、その線がどうなのかということがはっきり私はわからないまま、その点については説明もないままここに来ていますので、その点をまず明らかにしていただきたいということが1つです。
もう1つは、実際に訴訟になった場合に、一番この改正法で問題になるのは、だれがどんな証明責任を負うのかという問題で、具体的に言えば、企業側は規程を定めましたと言えば、それで証明責任を尽くすことになり、不合理であるということについては、どこがどのような理由で不合理なのかは従業者側の証明責任なのか。また、逆に企業側が合理性のある規程を作成した、つまり合理性の要件を満たす規定が設けられているから、この規定に基づいて対価を支払えばよいということの証明責任を負うのか。それに対して、従業者側は単なるそれは不合理だというのが積極否認になるのか、あるいはその不合理の内容によっては、従業者側がさらに抗弁として主張しなければならないことになるのかというのが非常に大きいことだと思いますし、私も衆議院の経済産業委員会に参考人として出頭した際には、その点について詳細な質問を受けたわけです。御承知のとおり証明責任の分配は、基本的には公平の理念によって定まるわけですが、この規定ぶりから必ずすぐに結論が出てくる問題でないと思います。
この基礎編の5ページを見ますと、『その定めたところによる対価を「相当の対価」とすることを原則とします。』とありまして、5ページの終わりから6ページにかけて、「その取り決めたところにより対価を支払うことが、不合理と認められる場合には、従来の職務発明制度と同様に、」とありますから、この考え方でいきますと、企業は規定を設けたことだけを証明責任を負い、それが不合理であることについては従業者側が証明責任を負うようにも読めますけど、次の問4の7ページのところに行って①と②を見ますと、「35条第4項の要件を満たす場合(契約、勤務規則その他定めにおいて定めたところにより対価を支払うことが不合理と認められない場合)には」とあって、②のところでは、同じような書き方がありますので、そこのところが不明確だと思います。これは明確にした方がいいのかどうかというのはまた一つの問題でありまして、先ほどの私が確認したいと申し上げたことと関連するんですが、これは立法趣旨を明らかにするということであるとすると、ただ実際にこういう問題が起きて、企業の定めた保障規程が合理性を担保しているものかどうかということを判断するのは裁判所なわけですね。裁判所は、立法趣旨は尊重しますけれども、それには拘束されないわけで、拘束されないからこそ私は現在のような問題が発生しているんだと理解しておりますけど、その点を踏まえて規定を作成するとなると、なかなか配慮が難しいところがあるんじゃないかということを感じます。
先ほど委員の方が、詳しい事例集ができると、事例集に従わなかったということで従業者側から争われることになるのではないかという懸念がありましたけれども、逆に、事例集に従ったけれども、裁判所はそれを合理性があると認めなかった場合も生じ得るわけで、その辺のところを考えて事例集を決めませんと、これは最終的に、先ほど言いましたように特許庁が特許行政を行う上で責任を持って遂行するということであれば、委員会としては、それについていろいろ参考意見を述べて、あとは特許行政でやってくださいということになるのかもしれませんけれども、その辺とのかかわりがどうかということを、2つ関連していると思いますので、その点についてお聞きしたいんです。

事務局

まず、第1点につきましては、非常に的確で重要な御質問だと思っています。その点について説明不足だったことをお詫びいたします。
まず、どういう立場で皆様にここに御参加いただいているかということでございますが、これはまさに委員の御指摘のとおり、今回の手続事例集の骨子案の表紙は、特許庁という名前でつくっております。これは、あくまで立法責任者であります特許庁が、この新しい35条を運用するに当たってこういう趣旨で行うべきと、こういう考え方でこの35条は立法しているんですよということを明確にするという意味で、これは特許庁が発行する事例集として作成することにしております。これは審議会の報告書でも、特許庁は事例集を作成すべきとされておりますし、国会答弁でも、特許庁が作成すると答弁させていただいているところでございます。
したがいまして、この特許制度小委員会におきましては、実際にこの35条を今後運用するに当たって、それぞれ当事者になる可能性のある皆様方に有意義な御意見をいただいて、それを反映させて、より使いやすいといいますか、実際に役立つような事例集を作成したいということで、皆様からの意見を求めるための場ということになるかと思います。
それから、2点目の証明責任の点でございますけれども、この点につきましては、我々としては、不合理性を証明することによって利益を得られるのは従業者だということでございますから、従業者に証明責任があるという解釈をとっております。ただし、実際の訴訟においては、恐らく裁判所の訴訟指揮のもとで使用者側に何らかの証明を求めるということも十分あるかと考えられますが、立法の趣旨としては、従業者側が不合理性を証明する責任があるというふうに考えております。
それから、補足でありますが、先ほど委員からも話がありましたが、この手続事例集というのは、委員のおっしゃるとおり、拘束力のあるものではありません。ドイツのガイドラインのように、手続をがちがちと規定しているものではありません。ただ、さまざまな事例を通して、この新35条の改正趣旨といいますか、それが明確になるようにすることによって、できれば裁判所の運用についてもこの趣旨にのっとってやっていただきたいということも込めて事例集というのを作成する次第でございます。

委員長

この事例集に関しまして、当委員会がどのようにかかわるかということと、この手続集の性格というものについて確認するということで、非常に大事な御質問をいただいて、どうもありがとうございました。
それでは、次に、委員どうぞ。

委員

事例集は法的拘束力がないわけなので、この点をはっきりして書いておかないと、かえって混乱を招くのではないかと思います。
対価を決定する手続というのは、ここでも議論あったように全体として評価されるということです。つまり、協議がどうあったか、開示がどうあったか、聴取がどうあったか、具体的に対価はどう決まっているか、そういうことが全体として考慮されるので、こういうふうに部分的に切って、これでいいか、これでいいか、これでいいかと言われると、判断が難しいと思います。全体として合理的であるかどうかということになるので、例えば協議の状況としては不十分だけれども、意見を聴取した結果、ちゃんと適正な額が払われているというのであれば問題ないわけです。そもそも手続をばらばらにして議論するということが難しいのではないかと思います。
それから、質問をさっと拝見したのですけれども、非常に詳細な質問が多くて、委員間でも意見が分かれるような問いが幾つもあるのではないかと思います。そうすると、裁判所へいっても、この程度やっておけばいいでしょうぐらいな、安全サイドに書かなければならなくなるのではないでしょうか。あるいは、事例集と、この会議の議事録を読むと余計わからなくなるということになるかもしれないと思います。

委員長

ありがとうございました。
これは、おっしゃるように特許庁の解釈を示したもので法的拘束力はないということは、どこかで明記した方がいいかもわかりませんね。
それから、内容が詳し過ぎて議論を招くという点につきましては、ほかの皆様の御意見も伺いたいところですけど、できるだけ丁寧にいろいろな疑問に答えた方がいいという要請が一方であって、他方で、余り詳しいと議論を呼ぶし、読むのも大変だという問題もあると思いますので、ちょっと悩ましいところではあると思いますが、そこら辺につきましても、全体のトーンをどの程度のものにしたらいいかというようなことも含めて、御意見を伺えればと思います、ほかの点でも結構ですが。
委員、どうぞ。

委員

先ほど事務局がおっしゃったように、今回のこの事例集というのは、前回の審議会で議論された報告書をベースにして法改正がされて、それを具体的な事例でというお話だったんですけど、特に今の委員長のおっしゃったように、あるものを考えていくときに、基本がどこにあるかというのがちゃんとこの総論の中で見えていてほしいなというのが、我々産業界としても非常に意味があるところなんです。例えばこの1章の(1)の問1を見ると、これはどちらかと言うと発明者サイドというか、そちらの方に立っていて、我々審議会のレポートを拝見したときに非常にありがたいなと思ったのは、企業が要するに資金面とかもろもろのリスクをとって、企業の意思でやっていますというのがまず原則にあって、その中の構成員として研究者がやっているんですと、だからこそバランスさせますという話になっていたと思うんですよね。
ところが、この問1を見ると、そこの企業のある種のリスクを全部とっていますというものがないので、そうすると、この後、事例集の個々のいろんなQ&Aを考えていくときの基準点がよく見えないなというのが一番大きなところだと思うんですよね。
それから、先ほど来出ている、この報告書にもたしかありましたけれども、企業が経済活動をやっている中での自分たちの需要に応じて研究開発投資をやりたい、あるいはそのために人を集めるという意味での自由度をもっと持たせたような形になってほしいという、たしか文案がどっかにあったと思うんですけど、そういう意味では、それぞれの企業がみずからフレキシビリティーを持ってこの規程を決めるような形の考え方が出ている方がいいと思うんです。そこら辺は全体のトーンとして工夫してほしいなという気がします。
それから、それとの関係でやや気になったのは、最後の規程で、これは目次だけなのでわからないんですけれども、それから、さっきの幾つかの応用編のところの事例も、多分挙げているのは、現状の職務発明をこういうふうにある程度ハンドリングしていますという前提でいろんな物事が書かれていると思うんですよね。そこのところは、それだからこうですということをやらないで、今回の35条はこういう趣旨ですというところで、もっと積極的に、こういう規定ぶりにした方がいいよというふうなことまで踏み込んでやってほしいなと。多分今やっている職務発明の報償規程でも、お金は払っているんですけど、お金が35条の対価なのか、企業の内部のインセンティブとしてのお金を与えているというのが結構混在して入っているところがあると思うので、そこら辺は、現状の規定ぶりがこうだからというのに余り引っ張られないようにぜひ考えていただきたいなというふうに思います。

事務局

まず、問1についての御指摘ですけれども、大部の報告書をここにダイジェストにしたので、御指摘の点が落ちているという点も確かにあるかと思います。できましたら、その問1の前段の部分も、ちょっと前置きが長くなりますが、そういった面も、使用者と従業者についてそれぞれの立場をもう少し説明した上で、下の考え方につながるというような形に修正をさせていただきたいと思います。
それから、規程編についての御指摘ですけれども、まず、ここでは冒頭に申し上げたとおり、そもそも何も規程がない中小企業で、単に対価の規定だけではなくて、ほかにもいろいろ規定しなきゃいけない条項も多々ありますから、そういった条項の例を網羅的に載せているということと、それから、新法対応で項目でいきますと、例えば31ページの中で4.の対価の決定の(3)のところに、発明者からの意見の聴取という規定ですね。恐らく今実際に企業でお持ちの職務発明規程では、多分この規定があるところというのは数少ないと思うんですけれども、この新法に対応して意見の聴取を今度しないといけないですから、それをどのように規定したらいいかというような項目も新たに設けています。
それから、具体的な対価の計算方法については、それぞれの使用者、従業者の間で話し合って取り決めていただくことでございますから、あえてこちらでひな形を提示することはしないというふうに考えています。ただ、例えば実績補償をするに当たって、どういう規定の仕方があるかとか、そういうことについての例としては、付録として例を幾つか、具体的な数字を抜いた形で紹介し、これからゼロからスタートする企業のために載せたいとは考えています。

委員

多分そういうことになってくるんだろうなと思うんですけど、今の31ページのところを見ても、ちょっと気になるのは、例えば3の(3)、権利の放棄とかありますよね。普通、企業で言えば、要するに譲り受けをして、あとは企業のものなわけですから、基本的に自由に処分ができるはずなんですよね。だから、そういうところの考え方がこういうところにどういうふうな規定ぶりで出てくるのかというのは、ちょっと気になるんですよね。
それから、今のお話でも、例えば実施の実績だとおっしゃるんですが、実施の実績を見て払うお金が本当に対価だという位置づけで見るのか、あるいはそれは実績が出ているんだから、それは報償としてやっていますと。譲渡の対価というのは、どっかのある時点、例えば譲り受け時点とか登録時点で払い切りですということだってあるわけですよね。そこら辺をよく考えてやらないと、多分今の各企業が持っている規程はかなりばらばらで、それに引きずられてつくることのある種の危険性があるので、そこら辺はよくぜひ考えて見せていただきたいなという感じがしています。
それから、1の(1)の問1のところは、さっき事務局がおっしゃったように、前
段で入れていただくのもそうなんですけれども、第3パラグラフのところがちょっとひっかかったんですよね、ぱっと読んだときに。私人が有する譲渡可能な財産権です、だからこうこうこうですよという書きっぷりになっている。例えば具体的に言うと、ここの「しかし」のところの前段が、ところで、職務発明や資金面やもろもろのリスクを負担している使用者の意思のもとになされる発明である一方、職務発明に係る権利は従業者が原始的に有する譲渡可能な財産ですと。このため、原則として、例えば両当事者間の自主的な取り決めに委ねることがいいですとか、何かそういうことの含みで全体の考え方を出していただければと思います。

委員長

どうぞ、委員。

委員

初めて参加させてもらいますので、わからない用語についての質問も含めて発言させてもらいたいと思います。骨子案の中で「私的自治」という言葉が何度か使われています。労働組合ですので、労使自治ということならわかるのですが、「私的自治」という場合、労使自治とどう違うのか、その概念について教えて下さい。
それから、これは要望ですが、先般メールで本日の骨子案を送ってもらいましたが、読むのは大変難しい、というのが率直な感想です。現場の労働組合で実際に執行委員をやっている人がはたして読みこなせるでしょうか。それこそ研究職やりながら週2回ぐらい、夜だけ組合活動をやっていることもあるわけですが、そうすると、職場で今度こういう発明か何かのインセンティブやアイディアをもっている人がいるとかの情報交換はやっていると思います。そういう人たちが本当に参考にできる事例集にしてもらいたいのですが、余りにも内容が詳しく丁寧に書き込まれ、中身も豊富化されることはすごくいいわけなんですけれども、宝の持ち腐れになるのではないかと懸念されます。事例集は、大変かと思いますが、コンパクトに、そして重複している部分がないようにまとめてもらえればと思っております。

委員長

どうぞ。

事務局

まず、私的自治の点ですけれども、職務発明規程では使用者と従業者、特に従業者については、通常で言う労使の労に限らず、当然役員とか管理職も含めて、発明に従事する従業員すべて含まれるということなので、労使という言葉はこの中では基本的には使わないということで、使用者と従業者のそれぞれの自治に任せるという趣旨で、ここは私的自治という言葉を使わせていただいています。
あと、全体的に読みにくいという御指摘、確かにそうかもしれません。以前まとめました報告書よりは随分読みやすくしたつもりではあるのですが、それでもまだ、正直なところ、いろんな事例を想定して書いていくと、だんだんまた抽象的になってきてしまうということで、多分読みにくいのではないかと思います。これからこれをブラッシュアップしていく際に、なるべく皆様にも、特に研究者側が読みやすくなるように、ちょっと文章も配慮してつくっていきたいと思います。

委員長

委員、どうぞ。

委員

ちょっと要望的になるんですけれど、このQ&Aを見ますと、どちらかと言うと勤務規則、労働規則というんですか、そういうところにウエートを置いたような書き方なんですけれど、個別契約をやった場合は、使用者と従業者との間でお互いにその時点で合意されていると。となると、開示の状況、協議の状況等を含めて、すべて従業者の方が納得した上でサインしているというような考え方ができると思うんですけれど、そういった場合に、個別契約でサインすることによって合理的という判断ができるのかどうか、その辺、Q&Aにぜひ。
もう1つなんですけど、同じような絡みでして、協議した規則、例えば勤務規則があって、それを各個々人がそれぞれサインすると、そういう場合はどうなるのかとか、そういうQを入れてほしいなと思うんですけれども。

事務局

まず、1点目ですけれども、35条では契約も含んでおりまして、御指摘のとおり、契約の場合には契約する行為の中で協議、開示、個別の発明での個別契約ですと意見の聴取まで全部行われるということになると思いますが、それについて確かに問いが抜けていますので、当然契約を行った場合のケースも想定してこの中に盛り込みたいと思います。
それから、2点目の御質問の個々にサインをするというケースは、具体的には規程づくりを行って、それは集団で……

委員

そうですね、一応正式に協議等を行って規則ができたと。その協議の中で賛成する人、しない人がいたとしても、その結果を規則で決めていると。それを個々人がサインした場合、その個人にとって合理的かどうか、そういう問い方があるかなと思うんですけれども。

事務局

わかりました。そういう事例も加えたいと思います。

委員

済みません、今の質問は、ある程度こうやって賛成の人も反対の人もいますと、だけど規則を決めましたと。個人的にそれが反対だったら争えるという答えを期待してのQですか。何かそういうことをやっていると、協議を全体でやることの意味がもともとなくなっちゃうような感じがするんですけどね。

委員

済みません、余り深い意味はなかったんですけど、個別契約に類するような形でサインするというのがあり得るのかなと思ったんです。

委員

それは我々のところも今、最初に御質問あったように、やっぱり契約でちゃんと十分話し合いになっていれば、それでいいですねという形のQは入れていただいた方がいいねという話をしたんです。

委員長

委員、どうぞ。

委員

要望というか、大学の関係なんですけれども、全体で見て、応用編の中でほとんど50項目ぐらいA社、A社、A社で、C大学が1個だけあるんですけど、出願の比率から見ればそんなものかもしれないですけど、状況が大学の場合非常に特殊な環境があって、雇用者の形態の多様性とか流動性の問題とか、経営の状況の違いとか、特に非常に大きいのは非実施機関であるというようなことで、特にそこの取り扱いについては、よく企業の方からもロイヤリティーレートの発明者への還元が、大学の場合は当然非実施機関だから高いわけですけれども、高いと企業の側の保障の方にも影響するんじゃないかみたいな話もあったりして、そこはどこで分けるかわかりませんが、基礎編のあたりから少し大学という部分は分けて、特殊事情みたいなことで分けて考えていっていただきたいなというのが1つです。
それから、先ほどの応用編、これはQ&Aの項目として、ほとんど企業の意見聴取からやられたんだと思いますけれども、大学も同じぐらいの項目数はすぐ出てくると思います。ただ、それを実際アンサーが書けるかどうかは、先ほど言われたように、法律家の先生が迷うことが――実際は、職務発明の定義は改正法の問題ではなくて、それ以前の状況でもわからないことが非常に多いので、書けるかどうかはちょっと別として、ただ意見、こういうことについてクェスチョンがあるということは聴取をぜひ集めていただいて、それをもとにして、どういうふうな取り扱いをするかを考えていただきたいというのがお願いです。

委員長

ありがとうございました。

委員

少し戻るんですが、先ほど来出ていました問題について2点ばかりメンションさせていただければと思いますが、1点は、私的自治とか今契約で出ていた事柄でして、私は専門が民法ですので、「私的自治」という言葉は民法の領域で、というよりは、法全体で使われる言葉であり、とりわけ民法でよく使われる言葉なんですが、問1の上から3段目に、「広い意味での私的自治」というのが出てまいりますけど、私的自治の意味として我々の世界でよく使われますのは、契約とか遺言とか、あるいは法人の設立等々といったような法的に意味のある行為というのは、各人の意思によって形成するのだと。それを指して私的自治という言葉を使うわけでして、「広い意味での私的自治」と書いてありますが、これは、むしろ狭い意味での私的自治ですね。こういう法的な意味のある行為は意思によって行うのだと。「広い意味」というときには、さらにたばこを吸うとか、あるいは猫を飼うとか、そういったような日常的な、法的に直ちに意味があるとは思えないような事柄についても各人の意思を尊重しましょうというようなとき、「広い意味での私的自治」というのを使ったりしますので、「広い意味での」ではなくて、まさに私的自治そのものの話をここでされているのかなという気がいたします。
そして、ここから後はその下の段で、先ほど冒頭でも出ていました問題ですけれども、私的自治に委ねるというのが民法あるいは法の大原則ではあるんですけれども、私的自治に委ねて何の問題もないのは、対等な力の平等なものの間でそれぞれの意思によって契約をする場合だと。ところが、その前提が崩れている場合には、私的自治に委ねてしまうと力の強い側の私人の方が勝ってしまうと。ですので、私的自治に委ねていいのは、前提が備わっている場合であって、その前提が欠けている場合には、法による介入というのが避けられないというのが今の日本の法体制の基本的な考え方でして、消費者契約法等々最近できていますのも、こういう考え方でできていると。
ですので、先ほど契約についての御質問が出ていましたけど、前の審議会でも何度も出たことではありますけれども、契約をしたというのであれば、直ちにそのとおり必ず有効だというふうに考えているのではなくて、やはりその前提が備わっていないような契約もあると。例えば消費者契約で消費者契約法が制定されているというのも、契約なんだけれども、その前提が備わっていないような場合について、内容的に不当な条項が、強い言い方をすると押しつけられているというような場合には、その条項というのは無効とせざるを得ないと。そういうような思想でできていますので、そういった事柄を書こうとされてこの真ん中から下の段が書かれているのではないかなということで、このような事柄というのは、前の審議会の折にもずっと議論して出ていたことで、それを確認されているのかなと思います。それが第1点。
第2点が、まさにそれを踏まえてなんですが、特許庁がお書きになるということで、全くそのとおりだろうと思いますし、そしてまた、この委員会で意見を聞かれるという場合でも、やはりスタートラインになるのは、前の委員会でつくりました報告書がスタートラインになるのでないかなと思います。この委員会で議論するならば、当然それがスタートラインになるでしょうし、そしてまた、特許庁もそれから自由にというわけにはなかなかいかないでしょうから、やはりそれがスタートラインになるのではないかなと思います。
そうしますときに、報告書を見ますと、前半の方で委員がおっしゃった点とかかわるんですけれども、手続面及び内容面、何々等という中でそういったものがすべて含まれていて、そういったものを考慮して不合理かどうかというのを判断するのだとあるのですけれども、ただ、その後のクェスチョンを見ますと、こうならざるを得ないという面はあるんですけれども、それぞれの要素ごとに分断して、これは合理的、不合理にならないというような書き方をされておられるので、避けられない面はあるんですけれども、そうだと。しかも問1で、まさに5ページの一番最後ですけれども、私的自治に委ねることができるような環境とか条件が整備されていない場合、されていればそのとおりだし、されていなければ――これ、多分手続面を主として念頭に置かれているんだろうと思いますけど、手続面で非常に不当だという場合には内容審査に入るんだというような、ちょっと分断的なとらえ方をされているのかなという気がいたしました。
ところが、前の報告書を見ますと、たまたま持っているんですが、14ページから15ページあたりを見ますと、不合理性の判断に当たっては、まさしく手続面と内容面を含む対価の決定全体を総合的に評価することが肝要なのだと。あるいは手続面は重視するんだけれども、しかし最終的には対価というのが当事者の紛争であるし、そしてまた、手続の履践にも実体上は程度の差があって、その合理性は対価との相関において判断される面があるんだということが明言されておりまして、この相関という面が、きょうのお話でも、そしてまたこの後のクェスチョンでも、ごっそり落ちているのではないかなという気がいたします。つまり、手続面でちょっと問題があるなというときでも、内容で比較的問題がなければ、別にそれでそのまま通るような性格のものですし、内容にちょっと問題があるなという程度であっても、手続で非常に問題があるというときには、やっぱり不合理だというふうにされる可能性がある。そういうような議論を前回の委員会でも非常にしたと思うんですけれども、その点がちょっと落ちているのではないか。
それを問1でも、そしてまたそれ以降、総論で言いますと問10あたりなんでしょうか、対価の要素は補完的にという、その補完的も非常にあいまいにお書きになっておられるんですけど、やはり相関的に判断するのだという側面を、手続に重点を置きながら、しかし相関的に判断するのだという面を、前の報告書を参考にしながらうまくお書きいただいて、あとお考えいただければいいのではないかなと思います。この点は異論の余地があるところで、かつ私もちょっと違うような意見を個人的には持っていたりするんですけれども、一応そういう方向で意見がまとまったというような報告書では書き方をされておりますので、やっぱりそれが出発点になるのではないかなと思います。
以上です。長々申しわけありませんでした。

委員長

お願いします。

事務局

今の委員の御指摘はまさにそのとおりで、ただ、基本的にはすべてのケースについて総合的に判断するということであるのですけれども、実際、この事例集を使ってそれぞれの企業で手続を行うに当たって、やはりどうしてもそれぞれの要素ごとに多分判断されるであろうということで、あえて分けてそれぞれ書いているというところで、そこは我々も非常に苦労しているところです。理想的には、それぞれの協議の状況とか開示の状況等のQ&Aの最後に、「とはいっても、最終的には実体面も含めて総合的に判断されるんですよ」ということをすべてのアンサーについて書いていけば間違いないんですけれども、それもかなり冗長的なので、できればこの最初の総論のところにその点をきっちりと書いていきたいと。例えば問3のところでも「総合的に行われますとか。」、ここで書いている意味は、まさに報告書にあるような、今の委員が御指摘のような内容なんですけれども、ちょっとあっさり書き過ぎていて、なかなかそこまでこれを読んで考えが及ばないかもしれませんので、そこはもう少し詳し目にこの総論のところで書いて、あとは、それぞれのエレメントについて見解をそれぞれ書いていくということにしたいと思います。

委員

ほんの一言よろしいですか。

委員長

どうぞ。

委員

そのとおりで結構だと思うんですけど、そして、各論で一々書いていくというのはばかばかしいことですので、総論でお書きいただければ十分だろうと思うんですけれども、「総合的」という言葉が非常にあいまいでして、何を言っているのかよくわからないし、何でも読み込めるというのはあるんですけど、相関的というのは、どうするのかなというのがもう少しは特定されますので、「総合的」という言葉はもとの報告書には出ておりますけれども、「相関的」という言葉も出ておりますし、そのあたり、きっちり書き切れない問題ではあるんですけれども、しかしできる限り指針を与えるような形でお書きいただければと思います。
以上です。

事務局

わかりました。

委員長

どうもありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
どうぞ。

委員

別の質問なんですけれども、証明責任のお話を委員がおっしゃっていまして、これ、決定的に重要な問題の一つだろうと思うんですけれども、従業者側が不合理であるということの証明責任を負うと。訴訟の構造でいきますと、恐らくお考えになっているのは、従業者が実際には幾ら幾らの対価を企業から支払われたというケースで、しかし相当な対価は本当はこれだけの額であって、今の訴訟なんかで問題になっているようなやつですね、客観的にいくとこれだけの対価のはずであって、これを払えという請求を多分していくんだろうと思うんですね。ですから、まずは従業者の側で、客観的に見れば相当の対価というのはこれだけだという、5項に従って算定したようなのを請求していって、それに対して企業側が――企業に限りませんが、使用者側が、こういう定めがあるんだと、職務発明の対価についてはこういう定めがあるんだということのみを言えばいい。それに対して従業者側が、確かに定めがあるかもしれないけれども、その定めは不合理であるということを言うと、5項に戻って、5項によって算定された相当の対価の支払い請求ができる、こういう構造でお考えなんだろうと思いますね。
ただ問題は、この職務発明のこの35条のこの規定の書きぶりから、その考え方がどのようにして導かれるのかという御説明をちょっとしていただけないかなと思うんですね。これ、非常にあいまいに書かれていて、証明責任がどうなっているのかわからない。もっとクリアな書き方があったにもかかわらず、4項と5項を切り離すような形で書かれたために、ちょっとわかりにくくなっているところがあるんですね。その考え方をもう少し説明いただけないでしょうか。そして、この今つくろうとされているものの中に証明責任の所在をもし書くならば、考え方をやはり書かざるを得ないと思いますので、お考えになっているところを御説明いただければと思います。

事務局

今、委員から冒頭に言われたような事例は、まさに我々想定していまして、当然訴訟で争おうとする原告、従業者・発明者は、裁判所に本来の相当の対価の算定を求めるような訴訟を起こすわけで、その5項に基づいて訴訟を起こす以上は、その5項の前段に書かれています、定めがない場合、あるいは定めが不合理だから裁判所にその相当の対価の算定を求めるんだというような訴訟になるのではないかと思っています。
その不合理性を証明することによって相当の対価の算定を求めるわけですから、したがって、その利益を得る従業者といいますか、原告側が、発明者がその不合理性について証明する責任を負うということに我々は考えているということです。

委員

今の点についてよろしいでしょうか。

委員長

どうぞ。

委員

先ほど私は個人的な意見を申し上げなかったので、ここで申し上げておきますけれども、今委員も言われたように、規定から、当然に企業側は規定の存在を証明すれば足りるというふうには読み切れないと思うんですね。証明責任の問題というのは、いろんな考え方がありますけど、基本にはやはり公平の理念があるわけで、それを考えてみれば、長年裁判官をやった私の感じから言うと、手続をつくりました、その手続は、少なくとも手続的な合理性は担保されていますと。これは企業側の証明責任で、いや、そうだからといって内容が著しく不当じゃないかというのは、従業者側に証明責任を負わせるぐらいが一番バランスがいいと思うんですね。この規定からそこまで読み取れるのかどうかということは一つの問題点ですけれども、そうでないと、私は先ほど事務局、明確に規定の存在だけで不合理性の証明責任は従業者にと言い切られましたけれども、果たして裁判所でその考え方が正当な考え方として支持されるほどの十分な法的根拠を持っていると言えるのかということに、いささか懸念があるわけです。

事務局

我々は証明責任については、この条文上、従業者側が負うという規定になっているというふうに理解していますが、実際上、訴訟になった場合には、当然そのようなお考えのもとに、裁判官がみずからの訴訟指揮のもとに使用者側に合理性の証明を求めたりとかということは十分あり得ると思いますし、現実の例えば対価請求の訴訟においても、使用者側が何らかの証明を求められているということも事実だと思います。
したがって、訴訟になったときには必ず従業者が不合理性を証明できなければいけないかということについては、実際の訴訟においては必ずしもそういうことにはならないことも十分あり得るというふうには考えています。ただ、35条の4項、5項、特に5項の構成上は、従業者側が不合理性の証明責任を負うと解釈するのが妥当だろうというふうに考えています。

委員長

どうぞ。

委員

実は私も答えがわからないまま、この規定は本当にわからないですね、わからないまま、ただ考え方のみ、ちょっと整理にもならないかもしれないけど、お話だけしておきますと、やっぱり35条の目的をどう考えるかというのが、委員が先ほどおっしゃった公平に影響を与えるだろうと思うんですね。そのときに、35条の目的は、本来はこの5項に従って算定される相当の対価というのを請求する財産権が本来あるんだと。ただ、本来はそうなんだけれども、そういった財産権があるんだけれども、契約その他の勤務規則によって、それを修正することを可能にしたのが35条の趣旨だというふうに考えますと、それによって利益を得る――この特約というか契約その他の勤務規則によって利益を受けるのは使用者側だということになりますので、使用者側がこの証明責任を、そういう特約があるということと同時に、かつ、この4項の書き方が、その特約は不合理と認められるものであってはならないという非常に強い命令をしていますので、そうすると、使用者側が不合理でもないんだということを主張、立証するという必要が出てくる可能性がある。これが一つの考え方ですね。この考え方は、4項の書きっぷりからすると、そうおかしくもない読み方ではあるんですね。
もう1つは、35条の趣旨はそうじゃないんだと。職務発明の対価については原則として私的自治に委ねると、先ほどの私的自治に委ねるんだと。その私的自治に委ねて、それで問題がある場合に初めてこの5項の相当の対価というのが認められるという、そういう趣旨の規定になったんだと、新しくつくることによって。そうしますと、私的自治を尊重するということがありますので、企業側としては、こういう特約があると、定めがあるということのみを言えば足りると。その私的自治を崩す、その原則を崩すことが必要になってくるのは、それを否定する側、つまり従業者側だということになる。
ですので、この35条の趣旨の考え方をどう書くかというのが、やはり証明責任の分配にも影響を及ぼしてくるというところですね。ですので、問1の書き方というのがやはり重要になってくるんじゃないかなと。ただ、35条の書きっぷりからすると、ちょっとどちらとも読めるし、どちらとも読めないというような印象がどうしても残りますので、難しいなというだけです。済みません。

委員長

委員、どうぞ。

委員

ちょっと難しい議論はさておいて、基本的な質問ですが、この手続事例集の想定する読者はだれなのかについて疑問があります。多分、知財部の方は、端から端まで読むと思います。現場のエンジニアの方がこれを読むかというと、それは難しいのではないでしょうか。というのは、全体が構造化されていません。起こっていることを説明しようとボトムアップな書き方になっています。
ですから、これはこれで意味はありますが、これをもとにエンジニアの理解を深めるために、何か別途違うものを用意する必要があるかもしれません。総論が精神論になっています。エンジニアにわかりやすくするように、あと一工夫必要かと思います。

委員長

ありがとうございました。
ほかに何かありますでしょうか。よろしいでしょうか。
委員、どうぞ。

委員

非常に具体的なところで1点質問をしたいんですけれども、基礎編の2-2の対価を決定するための基準の内容というところがありますけれども、企業としましては、ここに書かれてないんですが、基準を定めるに当たっては、むしろ35条の5項の使用者等の負担だとか、貢献だとか、従業者等の処遇、その他の事情と35条5項にありますけれども、そういうふうなものも、もちろんそれだけじゃないんですけど、そういうものも一緒に考慮して基準を定めていくと思うんですね、実際の企業としましては。そういうのを前提にしますと、例えば負担だとか貢献だとか処遇というようなものは、具体的に例えばどういうものがそれに当たるのかというような事例を入れるということはできないんでしょうか。そこが質問です。

事務局

まず、各企業における使用者と従業者の話し合いで定める規程の中で、どのような項目に基づいて対価を決定するかというのは、それはまさに私的自治に委ねられた各企業が任意に定めればいいことであって、義務ではないということになるかと思います。したがって、基準の中身をどう定めればいいかということを細かく規定してくださいということになれば、多分今のような答えになるのではないかと思います。
それから、我々は5項を明確化することで今回改正したわけですが、そこで想定している項目としてどのようなものが想定されますかということについてもう少し明確化が必要であれば、それはそれで問い起こしてもいいですが、多分それは手続事例集とは離れていることになる。裁判所で何が考慮されるようになるんですかというか、何が明確にされるんですかという問いですから、基準の策定なり、企業において対価を決定するための手続事例集とはまた異なる内容になってしまうのではないかと思うんですね。
いずれにしても、今の問に対する答えの方で、今御説明したような中身をもう少し明確に書いていきたいとは思っています。

委員長

それでは、予定の時間になりましたので、きょうの委員会はこれで終わりにしたいと思いますが、きょういただいた意見の中で大きな意見は、総合的、相関的に判断するという法律の基本的な精神と、こういう項目ごとに書き下してわかりやすく書くということの間の折り合いをどういうふうにつけていくかということをもう少し工夫する必要があるという御指摘を皆さんからいただいたと思います。それから、もう1つ大きな問題は証明責任の問題であったと思います。こういう点につきまして、次回まで少し考え方を整理して、最終的な事例集の素案というものをおまとめいただきたいと思います。そのほかにも貴重な御意見をたくさんいただきましたので、テイクノートして素案の作成の段階で反映させていただきたいというふうに思っております。

委員長

では、今後のスケジュールにつきまして、事務局の方から御説明ください。

事務局

それでは、本日は有意義な御意見をいただきまして、ありがとうございます。それらを反映させて、次回、素案を提示させていただきたいと思います。次回につきましては、7月の12日、月曜日、14時から16時の開催を予定しております。場所は、今日と同じこの特別会議室を予定しております。
それから、その次の次々回でございますけれども、できましたら8月の最初の週か第2週のあたり、非常にタイトでありますが、8月中の公表を考えますと、そのあたりにしたいと思いますので、これはまた改めて事務局の方からスケジュールを各委員にお伺いいたしますので、よろしくお願いいたします。

委員長

それでは、以上をもちまして第16回の特許制度小委員会を閉会させていただきます。どうもありがとうございました。

閉会

[更新日 2004年7月23日]

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