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委員長 |
それでは、定刻になりましたので、ただいまから第18回特許制度小委員会を開催いたします。 |
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委員長 |
また、小川新長官には初めての御出席ですので、一言ごあいさつをお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。 |
事務局 |
御紹介いただきました小川洋でございます。6月22日をもちまして、産業技術環境局長から特許庁の方に移ってまいりました。よろしくお願い申し上げます。 |
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委員長 |
どうもありがとうございました。 |
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事務局 |
それでは、事務局の方からまず資料の確認をさせていただきます。資料は相当程度多うございますが、これが我々が想定しているセットバージョンということでございます。 |
委員長 |
どうもありがとうございました。 |
委員 |
今度つけ加えたとされた外国における特許を受ける権利の承継に関する40ページの部分です。問4の最後の2行で、判例や学説の見解が統一されていない現状では、事前に契約を締結しておくことが望ましいということの意味ですけれども、これは、個々の従業者と使用者との間で個別に契約を締結した方がよいという趣旨ですか。つまり、勤務規則によって、外国における特許を受ける権利についても、35条の規程に従って支払いをするというような規程を入れることとか、あるいは外国の特許を受ける権利に関して、規則内にその企業に適当したような規程を設けることとか、そういうことは含まない、あくまでも個別契約で事前に従業者との間で契約をしておくことが望ましいと言われる趣旨なのか、そこのところをちょっとお伺いしたいですが。 |
事務局 |
今の御指摘ですけれども、ここはあくまで安全サイドで考えた場合には、個別に契約をした方がより安全ではないかということで、個別契約を念頭に置いています。 |
委員 |
もう一度よろしいですか。これは全従業者、特に研究開発に携わっている者を中心に、事前に外国における特許を受ける権利について個別契約をするということは、企業にとっては大変なことだろうと思います。ただ、その場合にも、外国における特許を受ける権利については、例えば補償規程に準じて支払いを受けることに合意するというのも、個別契約のうちに含めてよろしいわけでしょうか。 |
事務局 |
それは結構です。 |
委員 |
ありがとうございました。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
今の点でございますけれども、委員がおっしゃるように企業の実務の実態としては、外国特許の出願についても、恐らく勤務規則か、あるいは職務発明等の規程等の中で、国内出願と同様に規程しているというのが、実際現行でもそうですし、多いと思われるんです。したがって、ここはいきなり契約というような形ではなくて、そういう勤務規則の中で定めるか、あるいは契約という形に落としていただければなというふうに思います。 |
事務局 |
その点につきましては、以前の報告書をとりまとめるときに議論もありましたけれども、外国法においては、必ずしも35条に基づく職務発明規程に基づいた承継契約が有効と判断されるかどうかというのが明確ではないということから、安全サイドで見れば個別の契約をすることが望ましいというふうになっています。ここで規程でもいいということが読めると若干誤解を生むかなということで、契約だけに絞って書かせていただいております。 |
委員 |
今私指摘させていただいた点は、ぜひ御検討いただければなと思います。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
この点は前回から議論になっていると思います。この部分はまだ係争中の案件も多いので、いろいろ書かない方がいいという御意見が前回出たと思いますが、私も同意見です。もし、書くならば、正確に書く必要があると思います。例えば40頁の3つ目のパラグラフの「一方」以下ですけれども、外国法が準拠法になったとしても、特別連結があるという説もあり得るのではないでしょうか。ここを説明するとすごく長くなってわかりにくくなるし、きちんと説明しようとすると、具体的な事件に影響を与えかねないので、この問いを入れるかどうかを含めて検討された方がいいのではないかと思います。 |
事務局 |
今のような御意見もあろうかと思いますので、取り扱いについては事務局に預からしていただきます。 |
委員長 |
ほかにいかがでしょうか。どうぞ。 |
委員 |
個別契約の方の話で伺いたいんですけれども、33ページの問1の答えのところで、一般的には、協議の結果として、使用者、従業者の間で合意に至っている場合には、協議の状況としては不合理性をより否定する方向に働くということなんですけれども、個人的には契約というのは個別契約であって、お互い合意すれば協議――協議という要件がわからないんですけれども、特に必要なくて、お互いに合意して、それが実質的に合意している、合意の内容が問題かもわかりませんけれども、合意していると考えられる場合においては、協議の結果というところまで問題にしなくてもいいような気がするんですけど、いかがでしょうか。 |
事務局 |
今の点ですが、問1と問2で書き分けておりまして、問1のところは、あくまで基準を契約によって定めるケースです。したがって、ここは包括的なというか、一般ルールを契約で定める場合ですので、これは新35条のいわゆる基準を定める場合の協議の状況はどうかということを、答えで書いております。 |
委員 |
わかりました。 |
事務局 |
言い回しにつきましては、検討させていただきます。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
今回の新たにつけ加わった参考の規程例でございますけれども、資料3-5でございますけれども、一番最後のページに、契約書の例という形で契約書が出ているんですけれども、これは使用者と従業者等の間で直接的に契約を結ぶ場合の契約書の例かなというふうにうかがえるんですが、それがこの規程の最後にくっついていると、なんか規程の中で契約書を締結する場合に、この契約書を使いなさいという誤解をされるんじゃないかなという気がするんです。したがった、恐らくこの契約書というのは、あくまでも個別契約の際の契約書という位置づけなんでしょうから、この中に一緒に含めてしまうのではなくて、別建てで設けるか何かした方が、より読者にとってやさしいのかなというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。 |
事務局 |
御指摘のとおりなので、ちょっと並べ方とか、参考のつけ方とか、誤解を生まないように直します。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
この規程例なんですが、今の点もそうだったんですが、全体として使うときにわかりやすいように説明していただいた方がいいと思うんです。例えば5ページに、4.対価の決定というのがありますね。1が対価の算定方法、2が対価の支払い時期、3にきて、発明者からの意見の聴取とありますけれども、対価の算定の仕方を決める場合にも、意見の聴取というのが本文の方にあるので、それとの関係がどうなるのか、疑問がでると思います。そういう意味では規程例全体と手続事例集との関係がわかりにくいんじゃないかなと思います。もう少し説明を加えて使う方が、どういうふうに使ったらいいかということがわかるようにした方がいいのではないかと思います。 |
事務局 |
多分一番誤解の生じやすいのは、今の御指摘の、意見の聴取のところだと思います。例えば事例集本体の方の問い番号なり引用して、そこで言っている意見の聴取について、ここで規程例を設けていますという形で御紹介することでよろしいでしょうか。 |
委員 |
お願いします。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
前回、労働法、とりわけ労働協約、就業規則との関係で質問してかなり整理されたところがあると思いますが、まだちょっと基本的に不十分なのかなという気がするものですから、意見を述べます。おそらくこの事例集の基本的な考えは、これは職務発明ですから、あくまで特許法独自の制度であるけれども、契約、勤務規則、その他の定め、あるいは意見聴取も含めて、労働法制上の制度で適用できるところは適用する、そういう考えだと思うのです。 |
委員長 |
どうもありがとうございました。 |
事務局 |
恐らく基本的な理解は我々と委員とは同じで、もう少し説明を尽くすべきではないかという御指摘だと思います。この点につきましては、この事例集については特許法35条から見た観点で、あくまで35条の不合理性の判断においてどう評価されるかという視点で、すべて書かせていただいております。御指摘のような点について、書く書かないについては、実は関係省庁とも協議をしながらやっているわけですけれども、我々の事例集の中では、35条の視点から書くことにとどめるべきだという指摘もありまして、ぎりぎりこういう記載にさせていただいているところでございます。 |
委員 |
労働法制は当然、霞が関では厚生労働省の所轄ですから、厚生労働省とも若干の協議をされていると思います。結局そこは、特許庁としてはぎりぎりここまでだという点は霞が関の論理としては理解できますが、でも、企業から見ていいのでしょうか。企業から見たら、結局労働協約で決めたら、あるいは就業規則で定めたら、それは特許法の問題であると同時に労働法の問題でもあり、労使関係の問題になるわけです。このままだと、先ほど私が出した例の点を含めて、企業は結局どうすればいいのかがわかりにくい。手続事例集と書いてあるけれども、一番肝心な手続について、どういう手続きをとれば従業者を拘束するのか、また使用者をどう拘束するのかというのが、必ずしも明確ではないというのが私の疑問です。 |
事務局 |
恐らく幾つかの、例えば労働協約等で定める場合、労働組合法によって発生する効力というのはあるわけですが、それらの効力、例えば一般的効力と呼ばれるような効力が発生した場合であっても、あくまでこの事例集に従って判断した場合には、それが不合理として判断される場合があるということは、例えば問5の記載で読めるのではないかと我々は考えております。あくまで35条から見て、不合理性の判断がなされるんだというところは、すべて労働法制との関係でつくっております問いの中では、そこを明確に貫かせていただいているというふうに考えている次第でございます。 |
委員 |
今の点をもう少し具体的に聞かせていただきたいんですが、労働協約の場合で15ページの部分ですね。労働協約の中に、この対価の基準について定めを置いたと。労働協約自体としては、何の問題もなく手続にのっとってきちんと行われた。この場合に特許法の観点から、この定めについては考えるんだという御説明でしたけれども、この定めの効力というのは、労働組合に入っていない非組合員にも効力があるというふうにお考えなんでしようか。その点はどうお考えなんでしょうか。労働法の論理からいくとわかる面はあるんですが、それとは一応別に考えるということであった場合には、非組合員の効力はどう考えておられるか、質問させてください。 |
事務局 |
特許法から見た場合ですね、労働組合員との関係では効力がありますが、非組合員との関係で見た場合には、例えば協議が行われていないと判断されるということになるかと思います。 |
委員 |
多分そういうお答えだろうと思うんですけれども、その旨はこの事例集の中に明確に述べられていたんでしょうか。100%のところは書いてありましたけれども。労働協約の場合について書かれていたんですか。 |
事務局 |
例えば21ページの問8です。100%ではない労働組合のケースです。その中の第2パラグラフの「一方」ですけれども、「当該組合に加入していない従業者等の関係では、「協議」は行われていないこととなります。」ということを明確にさせていただいております。 |
委員 |
ただ、それが本当に明確かというのは問題で、労働協約で書いているというのは、労働法の論理からすると別の意味を持ってくるわけでして、もうそうお考えならば、少なくとも問5の中で書かないとわかりにくいんじゃないでしょうか。そして、そのお考えで本当にいいのかというのは次の問題としてあるんですけれども、もしそうであるならば、問5の中で書かないと少しわかりにくいのではないかと思います。労働法の世界で労働協約を見ている人間たちにとっては、やはり規範的効力というのを前提にして考えていきますので、違う趣旨だということであれば、明確にする必要があるのではないかと思います。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
今の点についての私の考えですけれども、労働協約や就業規則の労働法的効力という視点から見た場合には、従来の法規、あるいは判例、学説等で述べられているところの法的効力が生ずるのは当然としても、それが職務発明に関する特許法35条の適用をする限度において修正されることになると、手続事例集の立場だと基本的にそう考えるほかにないのではないかと思います。 |
事務局 |
今の御指摘の点は、15ページの問5の、第1パラグラフ後段の「したがって」以下ですね。「労働組合法14条に規程する労働協約の効力発生要件が満たされることをもってただちに不合理性が否定されるものではありません。」ということで、あくまで労働法と特許法が重畳的に適用されるわけですが、特許法35条上の不合理性の判断においては、別途そこは特許法から見て判断されるんですよということを、この文章で明確にしているつもりなんです。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
今、委員と委員のお話を聞いて、我々も企業の方から言うと今回の改正が手続重視ということでやられているんですが、それが先ほどらい出ている労働法との関係でどういうふうにやるかというのは一つの大きなポイントであると思うんです。今御指摘の15ページの問5のところで書いてあるというお話はわかるんですが、もう少しさっき委員がおっしゃったような意味合いも含めて、初めの総論のようなところに、その考え方がそこはかとなく出るようにしておいていただいた方がよいと思います。我々がこれを読むときには、各問いのところを読むよりも、初めにどういう考え方でこれが構築されているかというところを読んで、そこを理解した上で多分、各企業はそれぞれの運用を考えると思うんです。この各論のQ&Aの中で解説するよりも、やはりある程度応用動作ができるようなポイントを総論的なところに書いておいていただければありがたいなと思います。 |
事務局 |
恐らく労働協約なり就業規則は、35条で定めているところの手続をリセンする手段として利用されるわけですので、それぞれの手段のところで書いた方が明確ではないかというふうに考えています。なかなか総論の部分、以前御説明したとおりここは35条の逐条的なところで、ここに労働法制との関係を書くのは、正直言って生理的になじまない、生理学的になじまないなという気がしていまして、できればこのような整理で事例集はまとめさせていただきたいと考えております。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
その他のところでそういう整理が困難だというのであれば、また各論の第2章以下のところできちんと書いてほしいんですよ。今の問5の説明も結局一方で、例えばきちんと協議して、何の問題もなく労働協約を結んだ。そうすると労働法の観点から見れば規範的効力が発生してしまう。しかし、特許法上は総合判断です。そうなると、協約の方式で対価の決定方法を定めたけれども、特許法上はそれでストレートに対価ということにならないケースが出てくるわけですね。それはそれでいいですけれども、規範的効力の本来のオーソドックスな考え方とは食い違ってくるわけです。もし総論で難しいのであれば、各論でそこを書く必要があると思います。 |
事務局 |
今の御指摘については、基本的にここの考え方は間違っていないけれども、これだけの記載では誤解を生む可能性があるので、もう少し明確にすべきという御指摘だと思います。この点については関係省庁もありますので、そちらと協議しながら検討させていただきたい、そこは事務局に預からせていただきたいと思います。よろしくお願いします。 |
委員長 |
よろしゅうございますか。 |
委員 |
この協議ということについて、19頁の問2の答えが典型的なのですが、個別的に協議の機会が少なくとも必要だというように読めます。企業は労働組合と協議するのだろうと思います。労働組合と協議して、研究所の代表と話をするということが、想定されると思います。そこで、この労働組合と協議したからといって協議したことにはなるとは言えないとすると、従業員何万人という企業でどうやってオペレーションしたらいいのかということが、よくわからないと思います。 |
事務局 |
今の点ですけれども、労働組合とやったからといって協議にはならないというのは誤解で、当然労働組合と協議をする際に、明示、黙示の委任関係があれば、その従業者と協議を行ったことになる。これは特許法35条自体が使用者と従業者の個々の関係について規程している条文ですから、本人が知らないところでどこかで決めたら、それが従業者に適用されるような制度をとることは難しいと思っております。とは言っても、実際にオペレーティブにするためには、団体なり代表者の協議ということも認めなければいけないわけで、そのような中でどういう形をとれば実質的に使用者と従業者が個別に協議されたことになるかというのを、個々の代表者の話し合いとか個別の事例の中で解説させていただいている。そこは当然ながら、あくまで35条が今御説明したようなつくりになっていますから、繰り返しになりますが、明示、黙示の委任関係が必要になってくるということは当然だというふうに考えています。 |
委員 |
今のは前回のやりとりのところにあったことも関係してきて、労働組合に発明従業者が加入しているだけでは、まだ明示、黙示の委任関係は成り立たない。特許法上はそれとは別途、黙示でもいいけれども、何らかの委任関係が必要だ。それは労働組合の場合もそうだという趣旨の御説明だと思います。それは私もそれでいいと思います。書いてほしいのは、したがって労働組合に発明者が加入しているだけでは、明示、黙示の委任関係としては不十分だという一文が欲しいのです。そうすれば先ほどから言っている整理はつくわけです。それがないから、果たして組合への加入だけでいいのか、あるいは明示、黙示の委任というのは結局何を言っているのか、その疑問が出てくる。今おっしゃったようなことをもう少し幾つかの論点に即して書いていただきたいという希望なんです。 |
事務局 |
その点も先ほどの検討事項に含めて検討させていただきます。 |
委員 |
そこは、委員とは意見が異なります。労働組合に入っているだけでは、委任がないんだというのであれば、大企業ではオペレーティブではないのではないかと思います。つまり、協議というのは、あくまでも全体として公正に対価の算定方法を決めるために必要な手続だと思います。個別的な意見の聴取があれば、手続の公正さが高まると思いますが、それがないからといってゼロと見ることには異論があります。手続全体の公正さという観点から、大多数の従業員の意見を聞いているとか、労働組合の意見を聞いているというところがプラスファクターに働かないと、何万人の従業員を抱えているところで、機能しないのではないかと思います。組合さんに、全部の委任をとってください、そうしないと協議がなされたかどうか不安定ですというのでは、今まで我々が議論したところと違うのではないかという気がします。 |
事務局 |
とは言っても、35条が使用者と従業者1対1の関係で書かれているということは恐らく異論がないと思うんです。そうなると、それをどこまで集団協議の中に持ち込めるか、集団協議で足りるとすることができるかというと、この委任関係というのはどうしても考えざるを得ない事項になるというふうに考えております。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
ちょっとよくわからなくなったんですが、企業のさっき委員がおっしゃったオペレーティブな権利だと、当然あるルールを決めます。それをこういう例で言うと労働組合なんかと決めました。そのルールは変える必要はなくて、ある程度運用していきます。それをどこかに明記しておきます。新しい人が入ってくるたびに、それは全然やってないから、再度それを全部労働組合を通して確認しろという意味なんですか。そんなばかなことはあり得ないと思うんです。 |
事務局 |
今の議論はそういうことではなくて、そこは新入社員のところで書かせていただいておりますが、まず職務発明規程を策定する際に、当然新入社員といいますか、次に入ってくる方は協議に参加できてないことは明らかですから、そういう意味ではその人との関係で協議を行ったかと言えば、確かに協議は行われていないことは事実です。だけど、その協議が行われなかった、行うことができなかったという事情は当然ながら考慮されるでしょう。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
ちょっと今との関係もあって気にしていたんですが、20ページの問4のところで、答えの一番最後から2番目のところに、「通常は別途実質的な協議が行われることが必要と考えます。」とありますね。この「通常は」というのは、どういうことなのかというのがちょっと気になりますので、御説明していただくか、逆にない方がいいのか、どういうことなんでしょうか。 |
事務局 |
おっしゃるとおり、「通常は」というところは意味ございませんので、我々の方の修正ミスでございます。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
すみません、労働組合の立場からなんですけれども、委員がおっしゃるように、組合員の人数が多いときめ細かい対応はなかなか難しい部分もあるんですけれども、やはりその分組合の役員等が配置されているということからからすると、物理的には可能かなと思うところはあります。ただし、普通の労働条件の案件と特許の案件、多分進め方が特許法の規程の中で考えると、普通の例えば春闘で賃金交渉するとかというときの組合員への説明等とは全然違う流れになり、より研究職場の人間の意見を重視して考えていかなければいけないという点では、我々としてもオペレーションとしては、通常とは違うというところでは若干困難な面もあるかとは思います。よって、人数が多いというだけで、オペレーティブじゃないというところは組合としても努力は必要だと思いますが、対応は可能なのではないかと思うところです。 |
委員 |
確認なんですが、産業界も労働組合も、協議については、個別的な委任関係がいるというのがこの事例集の趣旨で、それで皆さんがよろしいというのであれば、それ以上は申し上げません。それで本当に大丈夫かということを心配しただけでございます。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
今の点に関連してですけれども、私も委員のおっしゃっている趣旨は非常によくわかるので。ただ、この事例集がそこまで要求しているとまでは理解してなかったのです。つまり、労働組合と使用者が協議する。その場合に労働組合に加入している従業者との間では、正当な代表者と協議すれば協議したことになる。ただ、その協議の前提として、その労働組合の代表者が今委員が言われているような、組合との間で事前に十分な協議をして使用者との協議に臨むことが望ましいと言っている程度のことと私は理解していました。絶対に事前の委任が必要不可能で、そうでなかったら不合理を肯定する方向に働くと考えてこの事例集ができているとすると、それは企業側にとっても大変なことだと思います。 |
事務局 |
基本的に委任関係は必要だと考えています。だからといって正当に代表しているかどうかという判断のところでは、明示的であれば理想的でありますが、黙示の委任関係、黙示的に委任しているという条件が認められれば、それでもいいというような記載をさせていただいています。その考え方は今委員が冒頭におっしゃったような、こういうことをやりますよということを組合に知らしめた上で協議に入るということも、ある意味で黙示的に委任させたということになるのではないかと考えております。 |
委員 |
多分今の点は、20ページから21ページにかけての問7に書かれている内容について御説明いただいたんだろうと思いますけれども、そのことを具体的なケースで考えてみますと、恐らくこういう課題というのは、労働組合と会社との間で労使委員会みたいなものを開催すると思うんです。これはほかの課題でも全く同じようにやっているわけで、それと同じようにやればこの問題は、すなわち正当に代表しているかどうかという問題はクリアされるというふうに我々は考えています。そういう意味でこの問7が書かれているというふうに理解しておりますので、その辺の確認をもう一度お願いしたいなというふうに思います。 |
事務局 |
35条の解釈からいけば、その労使委員会に職務発明規程の案件をかけますよということを労働組合が組合員に対して、事前にアナウンスをしておく必要があるかと思います。 |
委員 |
恐らくそれは通常、35条の問題をやりますよというふうにやりますから、それは通常のやり方なんだろうと思いますから、そういうふうにしておけばいいということですね。 |
事務局 |
はい。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
今の説明でいくと、前回委員がおっしゃった、個人の権利をどこまで本当にコントロールできるかというところに突き当たるような感じがするんです。だから、委任の中身みたいなものがポイントになるような気がします。これは35条ですから、まさに個人が原始的に取得する権利を会社に譲り渡したときの対価の話ですよね。ある種のルール決めのところまではいいんですが、対価決定のところまで、すべて労働組合のところに委任できるかできないかというのは、根本の問題になるような感じがしますが、これはそこまでの委任じゃないと思っていいわけですね。 |
事務局 |
もう一度確認させていただくと、おっしゃっている、そこまでの委任ではないというそこまでというのは、どこまでですか。 |
委員 |
財産権の対価のある価格まで全部お願いしますよという意味ではないんでしょう。 |
事務局 |
基本的に協議の際の委任ですから、職務発明規程なり対価の決定のルールを策定する際に、その策定手続を委任しますというものです。 |
委員 |
今の点は、おっしゃったように原始的に帰属するものを譲り渡す対価である、通常の労働条件と違う。そうするとここで委任されているのは、いわば対価の決め方のルールは委任している。しかし、今の職務発明の対価という特質もあるからこそ、もう一度当てはめのところで意見聴取しなければいけない。そこはプラスアルファで加わっているわけです。その意味では、すべて委任しているわけではないというのは、そのとおりなのです。 |
委員 |
そうですね、たまたまある組織の中でいろんなことを決めようとしたときに、組合みたいなものがあります。そういうある種の今までやっているやり方を、特許法35条の対価のあるルールを決めていくときに、移植してみたらどうですかというのが、今回の事例集の解説だと理解しています。したがって、いわゆる労働法的ないろいろなハンドリングのやり方を35条の運用の一つとして持ってくるけれど、さっき委員がおっしゃったように、そこには35条の特殊性というのがあって、まさに産業立法ですから、産業の発展から見てある種の枠がはまって、その中だけでしか動けないということは明確に意識しておかないといけません。今回の事例集では、非常に労働法的なある手続論を持ってくるために、そこに引きずられるということは本来の趣旨を見失うことになると思うんです。 |
事務局 |
今の点ですけれども、労働法制との関係のQ&Aについては、すべて不合理性の判断については、あくまで35条の視点から行いますよということをすべて記載させていただいています。したがって、その点については誤解のないようにしたいと思います。今後改めて説明会等を行う際には、その点についてもきちっと説明していきたいと思っております。 |
委員 |
もう一度よろしいですか。そうすると今の問題は、実際の手続の流れに当てはめて考えると、使用者側が補償規程案をつくるわけですね。こういう案でいきたいと思うけれども、従業者と協議したい。そうすると労働組合があれば、労働組合の代表者と話し合って決めれば、労働組合の加入者については協議は済んで、残りの加入していない人たちと、個別的に、全員を網羅するように手続をするということですけれども、その場合に使用者側としては、労働組合の代表者と補償規程の協議に入った際には、まず労働組合の代表者側に、全組合員から委任を受けたかどうか、委任の証明をしてもらわないととても協議に入れないことになりますね。だから、そこまで要求するのかということが私としては疑問なのですが、そこはどうなんでしょうか。そうしないと危なくて、とても協議できないなということになってしまうと思います。 |
事務局 |
企業サイドから考えれば、当然そういう確認をとって安全を確認すると言いますか、その協議自体が確実なものになるかどうかという確認をとるという行動をとるというのは確かにわかります。別途、労働組合の方からすれば、そこで協議していく以上、当然労働組合の中では、そのような明示、黙示の委任をとるような手続を我々はされると考えていますし、今後、労働組合団体さんの方にもこの制度を御説明する機会があるかと思いますけれども、改めてその点については周知させていただきたいと考えています。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
委員、黙示の委任というのはどういうようなものが想定されるんでしょうか。 |
委員 |
余り答えたくないところではあるんですけれど、通常の委任契約と考えていますのは、例えば契約なら契約、どんな契約でもいいわけですけれども、法的に意味のあるような行為を他の信頼できる人に委ねてやってもらうということを内容としていますので、基本的には明示的に行われるというのを想定して考えていますので、黙示の委任というのに何か特殊な問題があるかというと必ずしもそうではなくて、要するに黙示的に契約が行われているのはどういう場合か。その場の状況から見て、一定の行為を相手方にやってもらうというのを委ねていると見られても仕方のない状況下で、本人自身何も反対しないで、むしろそれを認めているかのような行為がある、見られる。そういう場合に黙示に契約しているというふうに解釈される。あくまでも個別的な状況下での、普通の人ならばその行動をどう見るかによって判断するとしか言いようがないですね。ですので、労働組合に加盟している労働組合員が、そして労働組合が一定の行為を職務発明の対価の基準を定めることを使用者と交渉しようとしているということが、労働組合の組合員全員にわかっていて、しかし特別なプロテストをしないというのは、少なくとも労働組合がそのような基準についての交渉を行うということについて承認しているというふうに見られても仕方がない、そういう意味での黙示の委任と言えば委任、契約があると見られても仕方がないのかなと。普通の黙示の契約についての考え方からすると、そうだということですね。 |
事務局 |
そのとおりでございます。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
法律学者同士で余り議論しても仕方ないかもしれませんが、今委員が言われたのは協議のレベル、つまり基準とか方法の決定限りで言えば、これは20ページから21ページにあるような形で、黙示の委任を受けて労働組合があと交渉すれば、それはきちんと交渉してさえすれば労働法上は問題ないのです。委任を受けて交渉したことになる。その結果、交渉や協議そのものをいいかげんにやっていれば、これは委任による義務を果たしたことにならないでしょうけれども、その交渉とか協議を誠実に行い、公正な利益代表を尽くしていれば、労働法は問題ありません。 |
委員長 |
ありがとうございました。 |
委員 |
今回、事例集ということで、私は最初ガイドラインという言葉を使っていたら、事例集だということで、一番その観点で考えているんですけれども、今回の規程は事例であって、どうも見ているとかなり安全サイドといいますか、問題のない範囲で言っている。そうするとこの規程に書いてあることを守らなければ合理性がないんだとかそういうことでなくて、安全性を見た上で、ここまでやれば一番好ましいんだという考えでいいかと思うんです。そうすると黙示の委任、明示の委任とかいろいろあるんですが、ここまでやればまずほとんど大丈夫でしょう。だけど黙示の委任がない場合は、ないといいますか、もう少し緩やかな規程を、協議をやった場合に、本当に合理性が否定されるかどうか、その辺はもう少し緩やかに考えて個別にやってもいんじゃないかという理解なんです。だから、これはガイドライン、いわゆるここまで守らないとだめですよということではなくて、一つの好ましい事例だという解釈でよろしいんでしょうか。 |
事務局 |
これはあくまで好ましい事例ではありません。ごらんになったとおり、こうすればいいですよという記載は一つもありません。ですから、ある手続について、どうすれば不合理性を肯定する方向に判断されるのか、あるいは否定する方向に判断されるのかという色々なケースバイケースの考え方を幾つも例示して、それらを参考にしていただいて、自分たちがやろうとする手続が果たしてどう判断されるのかという評価の基準に使っていただきたいということです。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
この規程例の一番最後のページに契約書の例というのがございます。中小企業においては、発明というのはそんなにちょいちょい起きることではなくて、多分何十年に一遍とかそういう例も普通ではないかと思っております。そういう中で今まで討議されてきたことよりも、そういう意味での契約書というものがつけられたのではないかと思うんですが、これはどうなんでしょう、発明があったときだけこういう契約をやった方がいいのか、それとも例えば就業規則などにこういうふうなものをつけた方がいいのか、それはどうなんでしょう。 |
事務局 |
多分今のお話のようなめったに発明が起きないようなケースであれば、発明が起きた都度、個別に契約されることが一番望ましいかと思います。例えば今おっしゃった就業規則ですけれども、就業規則の中にこういう契約事例を入れたとしても、就業規則自体は特許法で言う規則といいますか、その定めに入りますけれども、それ自体は使用者と従業者が協議をして定めたものでは通常ありませんから、そういう意味では就業規則に定めたからといって、その手続が不合理ではないとされるわけではありません。したがって、基本的にはそういうケースであれば我々は、個別に発明が生まれた都度、個別の契約を結ばれることをお勧めします。 |
委員 |
わかりました。 |
委員 |
1点だけ質問をさせていただきたいんですが、先ほど少し出ました新入社員の取り扱いで、事例集で言うと36ページですが、問1、問2、問3とありまして、新入社員に関しては、入社前に策定済みの基準を適用するときには、策定時には新入社員はいなかったわけですから、手続上いろんな問題があるので、問1、問2、問3でその点を説明する。これを見ますと、どうも新入社員に対して、個別的に基準を示してあらかじめ話し合いをするというのが問2ですし、問3は策定された基準を提示する、開示なんでしょうか、開示する。こういうことは、既に入っている社員については、先ほどの明示または黙示の委任だったのが、新入社員については個別に行われるということを前提にしておられるようなんですが、そうしますとこの書き方を見ても、これはあくまでも個別に行われても、やはり勤務規則の適用なのだという理解なんでしょうか、それとも何か契約をしたというような理解をされているんでしょうか。 |
事務局 |
多分、合意という言葉でそのような誤解を生むんだと思うんですけれども、実質その基準を承認した上で入社していると判断される可能性がありますよということを書いているので、必ずしも契約ではないんです。 |
委員 |
あくまでも勤務規則であって、その勤務規則が適用されるための手続要件をここで書いているという趣旨なんでしょうか。 |
事務局 |
はい。 |
委員 |
ならば、「合意」という言葉は避けるべきだろうと思いますね。 |
事務局 |
そうですね。 |
委員 |
そして、開示については問3で書かれていまして、「権利の承継時までになされていることが望ましいと考えられます。」という「望ましい」というのは、権利の承継時までに開示されてなくても不合理とされない場合があるという御趣旨なんでしょうか。 |
事務局 |
そこは、新入社員については物理的に協議ができないケースですから、その状況をどのように判断されるかというところが、我々もまだはっきりしないところがあって、事前に見せておけばより確実だろう、望ましいだろうということで、このような記載にしております。 |
委員 |
ただ、これは民法の一般的な問題で言いますと、約款の問題がそうですし、民法の問題にとっても問題ではあるんですけど、約款と言いますと、保険に関する問題については保険業法等もありまして、事前の開示というのをむしろ義務づけている。不動産の取引なんかでも、重要事項の説明というのは契約締結前に必ず行わなければいけないということで、開示というのは望ましいというものというよりは、契約時、少なくとも権利の承継時までには必ず行われていないといけないんじゃないかと私はずっと思ってきたんですけれども。 |
事務局 |
我々もそのように考えているんですけれども、それとの不整合があるようですので、ちょっと検討させてください。 |
委員長 |
ほかにいかがですか。 |
委員 |
34頁の問2で新旧の話なんですが、これは旧法が適用される場合には、新法に従った手続の法的意味が違います。そこをはっきり書く必要があるのではないかと思います。つまり旧法下で移転が生じた部分については、その対価は、改正前35条が適用されて決定されるということで、改正前35条の基準に従って、新しい改定された基準に従って支払うことが相当の対価と認められるかどうかということをきちっと書いた方がいいのではないかと思います。 |
事務局 |
この点については前回も御指摘がありまして、問の方の前提として、「新職務発明制度の下で」というのを入れさせていただいております。あくまでこれは、新制度のもとで改定前のものと改定後のものとの間での適用関係を聞いている問ということ、問の方で明確にさせていただいたんですけれども。 |
委員 |
これはあくまでも新制度のことだけに言及しているということですか。 |
事務局 |
はい。 |
委員 |
了解しました。 |
委員長 |
どうぞ。 |
委員 |
全般的なことなんですけど、きょうの一番最後の資料に、今後の広報活動が計画されているようですが、先ほどらい議論が出ているように、特許法の基本である産業の発展ということを念頭に置いた説明を徹底していただきたいと思います。職務発明は我々会社から見ますと、基本的に会社の意思とリスクの負担で生まれる発明です。にもかかわらず、特許法が建前として発明者主義をとっているため、その個人の権利的側面のみが顔をのぞかせています。今般の改正で、手続重視の改正で、個人の権利に関することについても団体が交渉するような側面も顕在化しています。そのため、先ほどらいのいろいろな議論は、その3つのものがまざり合って議論が出ていると思います。 |
委員長 |
ほかに御意見ございませんか。よろしいですか。 |
部会長 |
貴重な御意見をありがとうございました。ただ、1点注意していただきたいのは、この事例集の最初のページに書いてありますとおり、この事例集には法的拘束力がないので、ここで何を決めようとも、裁判所で違う結論を出す可能性があるという点です。各委員の35条の解釈論を非常に詳細に展開していただきましたけれども、それを明確にして具体化すればするほど、書けば書くほど、裁判所との間に齟齬が出てくる可能性があるわけです。 |
委員長 |
それでは、今後のスケジュールなどにつきまして事務局の方からお願いいたします。 |
事務局 |
いろいろとありがとうございました。今部会長の方からも御紹介がありましたが、ただいまいろいろと御意見いただいたところにつきましては、事務局の方でちょっと踏まえまして、必要なものについては反映させていただくというところで、我々とすれば早急にパブリックコメントの運びにさせていただけたらというふうに思っております。 |
委員長 |
では、以上をもちまして第18回の特許制度小委員会を閉会いたします。ありがとうございました。 |
[更新日 2004年9月10日]
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