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第18回特許制度小委員会 議事録

  • 日時:平成16年8月5日(木曜日)10時30分から12時30分
  • 場所:特許庁 特別会議室
  • 出席委員:
    後藤委員長、中山部会長、相澤委員、浅見委員、井川委員、大西委員、岡田委員、工藤委員、澤井委員、竹田委員、土田委員、西出委員、萩原委員、長谷川委員代理(大橋氏)、松尾委員、山本委員、渡部委員

開会

委員長

それでは、定刻になりましたので、ただいまから第18回特許制度小委員会を開催いたします。
本日は、御多用中のところ御出席いただきまして、どうもありがとうございます。本日は部会長にも御出席いただいております。

委員長

また、小川新長官には初めての御出席ですので、一言ごあいさつをお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

長官あいさつ

事務局

御紹介いただきました小川洋でございます。6月22日をもちまして、産業技術環境局長から特許庁の方に移ってまいりました。よろしくお願い申し上げます。
本日は、委員の皆様におかれましては暑い中、お忙しい中御出席いただきまして、ありがとうございました。一言ごあいさつさせていただきます。
前職は産業技術環境局ということで、後藤先生には産業技術の面で大変お世話になりまして、産業技術、技術開発政策と知財政策、技術開発の方から見させていただいておりました。それから、知財政策とのかかわりで申しますと、前々職は内閣官房で、内閣審議官をやっておりました。小泉総理が一昨年の2月に、施政方針演説で「知財立国を目指して」というものを出されて以降、知的財産戦略会議をはじめとして、お世話になりました先生方たくさんいらっしゃいますが、戦略大綱、基本法、基本法に基づきます本部の設置、本部によります計画の策定に携わってまいったわけでございます。
今政府全体の中で、知的財産政策はダイナミックに動いております。その中で、特許庁という中心的な役割を担う機関で仕事をさせていただくことは非常に光栄でございますし、一方で身の引き締まる思いでございます。先生方の御指導をいただきながら、微力でございますが全力を尽くしたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
この委員会におきましては、昨年の料金改定にかかる議論に続きまして、さきの国会で御審議いただきました、法律の改正事項の一つでございます職務発明制度のあり方についても御審議いただいたところでございます。法案の国会審議等踏まえまして、今般、新職務発明制度における手続き事例集をとりまとめるということで、委員の皆様方におかれまして活発な御議論を賜ってきたところでございます。
この職務発明制度につきましては、最近、非常に世の中の注目を集めているところでございまして、特許庁としては、本日御議論いただき、その御議論を踏まえた上でパブリックコメントに付したいと考えております。よろしくお願いしたいと思います。
さらに、関係者の間で新制度の趣旨がしっかり理解されるということ、それから、職務発明の対価を取り決める手続が今後関係者の間で適切に進められるということを考えまして、今後、手続事例集を使いながら、新職務発明制度についての説明会を全国各地で開催しまして、その周知に努めていきたいと考えております。その点につきましても、先生方の今後の御理解と御協力をお願いしたいと思っております。
簡単でございますが、あいさつとさせていただきます。今日はよろしくお願い申し上げます。

新職務発明制度における手続事例集(案)について

委員長

どうもありがとうございました。
それでは、本日の議事に入ります。資料を用意しておりますので、事務局の方から資料の確認と説明をお願いいたします。

事務局

それでは、事務局の方からまず資料の確認をさせていただきます。資料は相当程度多うございますが、これが我々が想定しているセットバージョンということでございます。
まず、資料1として議事次第・配付資料一覧という一枚ものがございます。資料2として委員名簿、資料3-1、新職務発明制度における手続事例集(案)でございます。資料3-2として、(資料1)でございますが、先般御審議いただきました報告書の「職務発明規程の在り方について」ということで、これは本文編だけ載せてございまして、いわゆる参考資料としていろいろアンケート等がございましたが、そこは割愛したものを御案内させていただいております。
それから、資料3-3ということで、これは(資料2)でございますが、第159回通常国会議事録、職務発明に関する抜粋のものを用意させていただいております。資料3-4ということで、表題には(資料3)とございますが、先般の通常国会における衆参での国会の附帯決議を掲載しております。資料3-5ということで、表題としては、(参考)規程例と書いてございますが、これを御用意させていただいております。それから最後、先ほど長官からのあいさつにもありましたが、今後の説明会のスケジュールで、資料4の一枚ものを用意させていただいております。
過不足等ございましたらお願いいたします。
それでは、私の方から御説明させていただきます。資料3-1、新職務発明制度における手続事例集(案)というものについて御説明させていただきます。
先般、御審議いただいた内容でいろいろと御指摘をいただいたところを中心に簡便に御説明させていただきたいと思いますが、これは修正バージョンでございますので、先般ご指摘のところも口頭で申し上げつつ、なるべくわかりやすい形で御紹介させていただきます。
まず、「はじめに」というところで、2ページ目にございます。第1パラグラフのところでございますが、従前は、情報の質及び量などということで、上から3行目のところに書いてあったのですが、そこの言い回しを変えまして、「従業者等の立場の相違に起因して不合理な対価の決定がなされる」ということで、後ほどのQ&Aと平仄を合わせた形でもってここを修正してございます。
それから、下から第2パラグラフ、「また、本手続事例集は」と書いてございますが、実は先日のバージョンでございますと、「本手続事例集は」の次に、関係者が実際に手続を行うことで云々というところは、やや冗長的な文章が入っていたりしたものですから、ここを削除いたしまして、「本手続事例集は、法案提出者である特許庁が新職務発明制度の立法趣旨を明確にするとともに」ということで、立法趣旨を明確にするというところを明瞭にさせております。
同じパラグラフで、3行目から4行目にかけまして、「法的な拘束力」ということで今般修正させていただきますが、前回は、拘束力ではなくて効力という言葉を使っておりました。効力を拘束力に修正させていただいております。
次の3ページ目、目次でございます。基礎編、応用編、Q&Aの形で整理させていただいておりますが、若干その後においても整理させていただきまして、基礎編については73の問がございます。応用編については14、合わせて87のQ&Aということで用意させていただいております。基礎編、応用編の目次は前回と変更ございませんが、4ページ目のところに書いてございますが、先ほどちょっと資料を御紹介させていただいたとおりでございまして、報告書、議事録、国会の附帯決議を資料1、資料2、資料3という形で整理させていただきまして、最後に参考という形で、規程例を持ってきております
7ページの変更点ですが、用語の定義のところでございます。中段下の方にちょっと太字で書いてございますが、「不合理性を肯定する方向に働く」ということで、前回は「方向で考慮される」というふうになっていましたが、「方向に働く」ということで修正をさせていただいております。
それから、一番最後のパラグラフ、ただし書き以下ですが、従前ですとここは非常に簡単に書いていたわけですが、ここは幾つかの態様を書いてございます。総合的に行われるというところの態様を紹介してございまして、ちょっと読ませていただきますと、「・・総合的に行われます。一つの要素において不合理性を否定する方向に働いたからといって、そのことだけで総合判断として不合理性が否定されるわけではありません。」、もう一つの態様として、また以下ですが、「・・一つの要素において、不合理性をより否定する方向に働く場合、総合判断において他の要素における不合理性を肯定する方向に働く要因をうち消し、不合理性が否定される可能性も存在します。」ということで、いくつかの態様を付記してございます。
基礎編の中で9ページ目でございますが、問2、基本的な考え方は何ですかというところで、答えの3行目の、「また」以下から、ちょうど中段「されるべきだと考えます。」ということで、先般の言い回しを若干修正し記載場所を変えてここに持ってきております。要はお金だけではなくて、いろんな研究開発の内容、あるいは研究開発に関係する環境の充実度、自由度、そういうところも柔軟に反映されることは許容されるべきではないかというところで、ここを修正しております。
相当程度飛びまして、12ページ目でございます。問3のところですが、従前ですと第4項にいろいろな状況を個別に問いを起こしていたんですが、それらの問をここで集約しました。ある意味でわかりやすい形で、それぞれの状況についての答えを用意させていただいております。
同じページの問5でございます。先般御指摘いただきまして、答えの13ページ目のとのころ、ちょうど中ほどからですが、「一般に」という言葉で始まる文章がございます。「一般に、手続がそれ自体としては不合理とは認められない場合には、対価が低額であっても不合理であると評価される可能性は低いと考えられますが、最終的に算定された対価の額が過度に低額であるような場合には、総合的な判断において不合理であると評価される可能性があると考えられます。」ということで、従前ですと、手続が全く行われなくても、高額であればそれでいいんだというような趣旨の文章が入っていたわけですが、先般御指摘を受けまして、今申し上げたような形で修正させていただきました。
それから、従前ですと、今申し上げました「一般に」の前に、いろいろ手続要素、先ほど出ましたいろんな状況をつらつらと書いてあったわけですが、ほかの問の答えともやや重複しますので、その箇所は明瞭化を図るために割愛させていただいております。
飛びまして15ページ目でございます。労働法との関係でございます。問5でございますが、答えの冒頭、労働協約においてというくだりから、いろいろと4項を引用しておりまして、上から5行目ですか、「・・を考慮して総合的に行われます。」、こまでは変っておりませんが、次の「したがって」以下を付記してございます。「したがって、労働組合法第14条に規程する労働協約の効力発生要件(書面により作成し、両当事者が署名し、又は記名押印すること)が満たされていることをもってただちに不合理性が否定されるものではありません。」ということで、これは前回御指摘いただいたところを踏まえまして付記してございます。
問6でございますが、これは新しく問を起こさせていただきました。労働協約に関しての問があるものですから、就業規則における問いを新たに起こしております。
答えの方ですが、「労働基準法90条には」ということで、90条に関連する条文をここで記載しております。過半数代表等の条文でございますが、第2パラグラフ、「このため」というところですが、「このため、発明の対価の基準を含む就業規則が作成されている場合には、これら過半数代表者等の意見を聴いて「基準」が策定されているものと解されます。ただし、労働基準法90条に定める「意見を聴く」ことと「話し合いをする」ことは別のことですから、労働基準法90条にのっとって意見を聴いたということをもって、直ちに「協議の状況」としては不合理性を否定する方向に働くわけではありません。」ということで、職務発明制度における話し合い、これはいわゆる協議ということで、双方向で話し合いを行うという趣旨でございますので、こういう形でもって回答を用意させていただきました。
その他、幾つか若干の修正がございますが、代表的なところだけ紹介させていただきます。20ページでございますが、代表者と話し合いを行う場合の問4でございますが、内容を明確にさせていただいております。問のちょうど2行目から書いてございますが、これは代表者にかかるものですが、「代表者の選任に関わらなかった残りの」というところの文言を付記しまして、問の明確化を図っております。
この問全体を確認しますと、「過半数の従業者等を代表すべく選任された代表者と使用者等との間で話し合いを行うことは、代表者の選任に関わらなかった残りの従業者等との関係でも「協議」と評価されますか。」というところでございます。
答えの上2行は従前と変わりませんが、「したがって」というところで、ここは答えを追加させていただいております。「したがって、全ての従業者等との関係で、「協議」があったものと評価されるためには、過半数の従業者等以外の従業者等と使用者等との間においても、通常は別途実質的な協議が行われることが必要と考えます。」ということで、答えを付記しております。
同じページの問6でございます。問の中身は、「労働組合への加入権がある従業者等が100%加入している労働組合の代表者と使用者等との間の話し合いは、「協議」で評価されますか。」ということで、問自体は変わっておりませんが、答えのところでちょっと追加させていただきまして、明確化させていただいております。
答えの下から3行目のところですが、いわゆる役員等も協議をしなければいけないという趣旨で書いてありまして、「このため、役員等に対しても適用される基準を策定する場合に「協議」があったものと評価されるためには、当該役員等と使用者等との間においても、通常は別途実質的な協議が行われることが必要と考えられます。」ということで、答えを付記してございます。
次のページでございますが、問8のところでございます。問の中身は、「全従業者が加入しているわけではない労働組合の代表者と使用者等との間の話し合いは、「協議」と評価されますか。」というところですが、答えの中身を少し付記してございまして、答えの下から4行目、「このため」というところでございますが、「このため、組合員以外の従業者等に対しても適用される基準を策定する場合に「協議」があったものと評価されるためには、組合員以外の従業者等と使用者等との間においても、通常は別途実質的な協議が行われることが必要と考えます。」ということでございます。
また飛びまして23ページ目、問4のところでございますが、答えの中段から下のところに「第2に」というくだりがございまして、そこでポツが幾つか並んでございます。ここを先般御指摘いただいたとおり、使用者等における研究開発戦略というたぐいの、ややもするとなかなか現実的ではないような項目も入っていたものですから、ここはやや整理させていただいて、先ほど申しました開発戦略等については削除させていただいております。
また少し飛びまして、25ページ目でございます。対価の算定方式についてということでございますが、この問の順番を若干入れかえさせていただいております。まず、問1には実績報償に関する問、問2は期待利益、問3は上限額云々という問でございますが、問3については修正してございます。
問3の中身は、「対価の算定方式として、売上高又は利益という実績に比例して対価を支払うことを定めつつ上限額を定めることは、どのように評価されますか。」というところでございますが、従前の答えの一部を割愛してございまして、従前ですと一番最後のパラグラフに、一般的に上限額は定めない方が望ましいという趣旨の文言が入っていたわけですが、先般の御指摘も踏まえまして、そのくだりは削除ということで扱っております。
また少し飛びまして28ページ目、第5章、意見の聴取方法のところでございますが、問3でございます。これは新しく問を起こさせていただきました。
少し読ませていただきますと、「従業者等から「意見の聴取」を行うにあたり、従業者等から一々意見を求めることはしないかわりに、基準等により算定された対価の額について一定期間意見等を受け付ける制度を用意しておくことは「意見の聴取」に該当しますか。」という形で問を起こしていただいております。
答えの方でございますが、1行目の中ほどから、「従業者等から一々意見を求めることをしなくても、基準等により算定された対価の額について一定期間意見等を受け付ける制度が用意され、使用者等から従業者等に対して実質的に意見の聴取を求めたと評価できるようであれば、それは「意見の聴取」がなされたと評価されます。」、ただしということで、この制度が従業者等に周知されていることが前提になりますということを記載させていただいております。
また飛びまして、31ページ目でございます。意見の聴取の進め方についてでございます。問1、従前の問ですと、冒頭に「より不合理性を否定方向で考慮するためには」という枕詞が入っていたんですが、それを割愛させていただいております。
その答えについては、第2パラグラフ、今般「さらに」というところを下段に持ってきておりますが、従前ですと上段にありましたので、答えのストーリーからして、今回は下段に移動させていただいております。
問3でございますが、この問3も従前ですとややわかりにくかったので、問自体に枕詞をつけさせていただいております。「従業者等からの意見に回答する場合において」という言葉を付記させていただくとともに、答えの方も、先般御指摘を踏まえまして修正してございます。特に上から3行目の(ア)以下でございますが、「(ア)対価の算定について社内の諮問機関等の審査を求めたり、(イ)仲裁機関等の社外の機関を活用したりする道を開く制度を設けておくことは、不合理性をより否定する方向に働くものと考えられます。」ということで、答えの方も修正させていただいております。
32ページ目でございます。問5のところでございまして、答えの方に例1、例2と書いてございます。従前ですと例2が、いわゆる実績報償方式が例1となっていたんですが、順番を入れかえさせていただくとともに、例2の実績報償のポツが3つほど記載されておりますが、従前の例ですと、このポツが相当程度、ややもすると具体的になっておりまして、そこまで具体化する必要はないのではないかという御指摘も踏まえまして、そういう意味では例1のポツと平仄を合わせたような形で、そのポツのところを整理させていただいております。
34ページ目でございます。その他のところでございますが、問1、これは問自体は変えておりませんが、この問の中身は、基準を改定する際に、双方で協議を行うことが必要ですかという問なんですが、答えの方で、なお書きのところを答えとして付記させていただいております。「ケースバイケースで異なりますから、協議や意見の聴取を新しい基準の策定とすべて同じように行わない場合であっても、常に不合理性を肯定する方向に働くものではありません。」というところでございます。
それから、問2のところですが、これも問自体を修正させていただいております。これは「新職務発明制度の下で基準の改定前に承継した職務発明に改定した基準を適用することができますか。」というところでございますが、答えの方としては、第2パラグラフ、「また」以下を付記しております。「また、改定後の基準を改定前に承継した職務発明について適用することが従業者にとって不利益とならない限りは、改定前に承継した職務発明に係る対価について、改定後の基準を適用することは許容されるものと考えます。」というところでございます。
次の問3でございますが、これも答えの方に①から⑤まで幾つかの例示をさせていただいておりますが、先般、同業他社に関する基準の改定の状況というところも候補として挙げていたんですが、これは御指摘をうけまして割愛させていただいております。
38ページ目でございます。大学における取り扱いということで、問4、これは新しく問を起こさせていただいております。「大学の研究室に所属する学生がした発明に係る特許を受ける権利又は特許権を大学へ承継するためにはどうしたら良いですか。」というところです。先般の審議会でもいろいろ御意見があったところを踏まえて、新しく設けたところでございます。
答えの方でございますが、「大学と雇用関係にない学生は、特許法第35条第1項に定義する従業者等には該当しないと考えられます。したがって、一般的には学生がした発明については特許法第35条第2項は適用されないものと考えられます。
このため、学生がした発明に係る特許を受ける権利又は特許権を大学へ承継するためには、別途承継に係る契約を結ぶ必要があると考えられます。
なお、学生と教職員による共同発明に係る特許を受ける権利又は特許権を大学へ承継するためには、学生の持ち分については、上記契約を結ぶことが必要であり、教職員の持ち分については、特許法第35条第2項により、あらかじめ「契約、勤務規則その他の定め」において大学へ承継させる旨を定めることが可能であると考えられます。」ということで、問いと答えを新しく用意させていただいております。
39ページ目、4.その他のところでございます。
問1でございますが、問自体は変わっておりませんが、答えを少し変えさせていただいております。問としては、「基準が存在する場合であっても、その基準から導き出される金額とは異なる対価を個別に定めることはできますか。」というところですが、「使用者等と各従業者等との間で個別の合意を行い、かつ、その合意が民法の原則等に照らし有効である場合には」、このところを答えとして付記させていただいておりまして、「基準と異なる金額を個別に定めることができます。」というところに続くよう修正してあります。
それから、問3でございますが、これも問自体をわかりやすく変えさせていただいております。「対価についての基準を策定するところから最終的に対価を支払うまでの手続を十分に行い、必ずしも低額とは言えない対価を支払っていた場合であっても、使用者等が既に従業者等に支払っていた額以上の支払いが追加的に命じられることはありますか。」ということで、いわゆる債務不履行に関するところでございます。
答えとしては、少し追加しておりますが、第2パラグラフ、「このような場合については、対価を支払うことが不合理であるとして第35条第5項に基づく「相当の対価」の支払いを命じられることはありませんが」というところを付記させていただきまして、「契約、勤務規則その他の定めに基づいて本来支払われる額が支払われていない以上、債務の不履行として、実際に支払われていた額との差額の支払いが使用者等に命じられることとなります。」というところでございます。
問4、これは外国についてのところで、答えのところですが、一番最後のパラグラフ、ここではいろいろと判例、学説が統一されておりませんので、明確に次のように書いてございます。「このように、判例や学説における見解が統一されていない現状においては、事前に契約を締結しておくことが望ましいと考えられます。」ということでございます。
次のローマン数字のⅡ.応用編でございますが、これも応用編の中で、従業者等とかの用語を使っておりますが、混乱を招くのではないかということで、応用編では用語の定義を改めてさせていただきました。43ページ、想定事例ということで書いている中で、A社、B社、ここは変わりないんですが、アスタリクスがついているところ、「「応用編」においては、特許法第35条に規程する「従業者等」から取締役を徐いたものを「職員」と定義します。」ということで、以下、さらに具体的な応用事例があるわけですが、職員という形で文言を記載させていただいております。
あと若干、先般御指摘いただいた細かい修正等は反映させていただいているつもりでございます。
以上が、先般、手続事例集に関する御意見等を踏まえまして反映させていただいたところかと思います。
その他資料として先ほど申しました報告書、議事録、附帯決議、この辺のところはもうファクトでございますので、説明は省略させていただきますが、新たに今般、資料3-5ということで、参考という形で規程例を添付させていただいております。これも産業界の方から現行のものをいろいろと御協力いただきまして、それを我々なりに整理させていただいたものでございます。
2ページ目に、枠囲いでいろいろと書かせていただいておりますが、社内で職務発明の規程のたぐいがいろいろあろうかと思いますが、これから新しくつくる、あるいは整理するときに、今後いろんな事項が想定されるかと思いますが、そういうものを参考という形でここでは例示させていただいております。
ただし書きにもいろいろ書いてございますが、これはあくまでも参考ということで、ここで条項等を例示しております。その条項も幾つかのパターンを記載させていただいておりますが、今後整備していく上で、これらの条項が必ずしも盛り込まれていなければいけないとか、それ以外のものを盛り込んではいけないとか、そういう制限をしているわけではございませんという趣旨を書いてございます。
枠囲いの下2行に、「今後」というところで、これからいろいろと企業の方で整備されている過程でいろんな規程が蓄積、運用されていくかと思いますが、できる限り御協力いただいて、この規程例自体の見直しも行わせていただくということでございます。冒頭申しましたように、幾つかのバリエーション、規程を書いてございますが、あくまでもこれは参考という位置づけで、加えて今後見直しをしていくところでございます。
中身を簡単に御紹介しますと、まず、総則のところで一般的なパターンを書いてございますが、目的も幾つか例が書かれております。用語の定義とか、次の3ページに行きますと、今度は発明の届出、各企業によっていろいろとパターンがあるかと思いますが、幾つかの例を盛り込んでおります。
4ページ目ですが、権利の承継などということで、ここも幾つかのパターンを例として掲げております。
5ページ目、対価の決定というところで、対価の算定方法、支払い時期、意見の聴取、特に意見の聴取のところは今般新しいものかもしれませんが、そういうものも織り込んでございます。6ページ目に、発明者からの意見の聴取ということで例を掲げさせていただいております。
7ページ目ですが、発明委員会、8ページ目、雑則という形でもって、いろんな規程例を織り込みながら紹介させていただいております。
当然いろいろと業種、業態によって変わりますので、先ほど申しましたように、あくまでも参考ということでございます。
さらに12ページ目でございますが、表題に参考1と振ってございます。対価の算定方式の例というところでございます。これも産業界の方から御協力いただいたものを我々なりに整理させていただいたものです。これは実際の算定方式の例でございますが、先ほどの規程例の冒頭の枠組みと同じでございまして、これに必ずしもとらわれる必要はなくて、あくまでも参考という位置づけでございます。それから実際の算定方式、これからいろいろと蓄積されていこうかと思いますが、産業界の方の御協力が得られれば、随時見直しを図っていくというものでございます。
1.として出願時に対価を支払う場合、2.として登録時に対価を支払う場合、次の13ページでございますが、利益に応じた対価を支払う場合という形で、幾つかバリエーションを紹介させていただきます。
それから、最後のページでございますが、問いの中にもございますが、必ずしも中小企業等しっかりとした発明規程類をつくる必要がないというところもあろうかと思いますので、ここでは契約書の例ということで、参考に添付させていただいております。契約書の中身もいろいろあろうかと思いますので、例が織り込まれるものにつきましては、特に対価の支払いのところでございますが、例を4つほど参考までに御紹介させていただいております。
以上、非常に雑駁でございますが、事務局からの説明は以上でございます。

委員長

どうもありがとうございました。
それでは、今御説明がありました手続事例集(案)につきまして、御質問、御意見等ございましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
どうぞ。

委員

今度つけ加えたとされた外国における特許を受ける権利の承継に関する40ページの部分です。問4の最後の2行で、判例や学説の見解が統一されていない現状では、事前に契約を締結しておくことが望ましいということの意味ですけれども、これは、個々の従業者と使用者との間で個別に契約を締結した方がよいという趣旨ですか。つまり、勤務規則によって、外国における特許を受ける権利についても、35条の規程に従って支払いをするというような規程を入れることとか、あるいは外国の特許を受ける権利に関して、規則内にその企業に適当したような規程を設けることとか、そういうことは含まない、あくまでも個別契約で事前に従業者との間で契約をしておくことが望ましいと言われる趣旨なのか、そこのところをちょっとお伺いしたいですが。

事務局

今の御指摘ですけれども、ここはあくまで安全サイドで考えた場合には、個別に契約をした方がより安全ではないかということで、個別契約を念頭に置いています。

委員

もう一度よろしいですか。これは全従業者、特に研究開発に携わっている者を中心に、事前に外国における特許を受ける権利について個別契約をするということは、企業にとっては大変なことだろうと思います。ただ、その場合にも、外国における特許を受ける権利については、例えば補償規程に準じて支払いを受けることに合意するというのも、個別契約のうちに含めてよろしいわけでしょうか。

事務局

それは結構です。

委員

ありがとうございました。

委員長

どうぞ。

委員

今の点でございますけれども、委員がおっしゃるように企業の実務の実態としては、外国特許の出願についても、恐らく勤務規則か、あるいは職務発明等の規程等の中で、国内出願と同様に規程しているというのが、実際現行でもそうですし、多いと思われるんです。したがって、ここはいきなり契約というような形ではなくて、そういう勤務規則の中で定めるか、あるいは契約という形に落としていただければなというふうに思います。

事務局

その点につきましては、以前の報告書をとりまとめるときに議論もありましたけれども、外国法においては、必ずしも35条に基づく職務発明規程に基づいた承継契約が有効と判断されるかどうかというのが明確ではないということから、安全サイドで見れば個別の契約をすることが望ましいというふうになっています。ここで規程でもいいということが読めると若干誤解を生むかなということで、契約だけに絞って書かせていただいております。

委員

今私指摘させていただいた点は、ぜひ御検討いただければなと思います。

委員長

どうぞ。

委員

この点は前回から議論になっていると思います。この部分はまだ係争中の案件も多いので、いろいろ書かない方がいいという御意見が前回出たと思いますが、私も同意見です。もし、書くならば、正確に書く必要があると思います。例えば40頁の3つ目のパラグラフの「一方」以下ですけれども、外国法が準拠法になったとしても、特別連結があるという説もあり得るのではないでしょうか。ここを説明するとすごく長くなってわかりにくくなるし、きちんと説明しようとすると、具体的な事件に影響を与えかねないので、この問いを入れるかどうかを含めて検討された方がいいのではないかと思います。

事務局

今のような御意見もあろうかと思いますので、取り扱いについては事務局に預からしていただきます。

委員長

ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

委員

個別契約の方の話で伺いたいんですけれども、33ページの問1の答えのところで、一般的には、協議の結果として、使用者、従業者の間で合意に至っている場合には、協議の状況としては不合理性をより否定する方向に働くということなんですけれども、個人的には契約というのは個別契約であって、お互い合意すれば協議――協議という要件がわからないんですけれども、特に必要なくて、お互いに合意して、それが実質的に合意している、合意の内容が問題かもわかりませんけれども、合意していると考えられる場合においては、協議の結果というところまで問題にしなくてもいいような気がするんですけど、いかがでしょうか。

事務局

今の点ですが、問1と問2で書き分けておりまして、問1のところは、あくまで基準を契約によって定めるケースです。したがって、ここは包括的なというか、一般ルールを契約で定める場合ですので、これは新35条のいわゆる基準を定める場合の協議の状況はどうかということを、答えで書いております。
おそらく委員のおっしゃっているのは問2の方で、実際の個別契約で対価を契約で決めるようなケース、それについては協議の状況云々というのは、御指摘のとおり関係ありませんので、答えにそのような文言は入れていません。

委員

わかりました。
もう一つだけよろしいですか。これはちょっと要望的なんですけれども、各問の最後の文章ですけれども、「不合理性を肯定する方向に働くこともあり得ます」と、「あり得ます」ということなんですけれど、このケースを考えますと、一方的に契約書面への押印を求めた場合、それから、自由意思に基づいたものではないような場合、これはどちらかというと不合理性を肯定する方向に働くと言い切ってもいいような気がするんです。例えば、働くと考えられるとか。あり得るんじゃなくて、ほとんどあるんじゃないかと思うんですけれど、いかがなものでしょうか。

事務局

言い回しにつきましては、検討させていただきます。

委員長

どうぞ。

委員

今回の新たにつけ加わった参考の規程例でございますけれども、資料3-5でございますけれども、一番最後のページに、契約書の例という形で契約書が出ているんですけれども、これは使用者と従業者等の間で直接的に契約を結ぶ場合の契約書の例かなというふうにうかがえるんですが、それがこの規程の最後にくっついていると、なんか規程の中で契約書を締結する場合に、この契約書を使いなさいという誤解をされるんじゃないかなという気がするんです。したがった、恐らくこの契約書というのは、あくまでも個別契約の際の契約書という位置づけなんでしょうから、この中に一緒に含めてしまうのではなくて、別建てで設けるか何かした方が、より読者にとってやさしいのかなというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

事務局

御指摘のとおりなので、ちょっと並べ方とか、参考のつけ方とか、誤解を生まないように直します。

委員長

どうぞ。

委員

この規程例なんですが、今の点もそうだったんですが、全体として使うときにわかりやすいように説明していただいた方がいいと思うんです。例えば5ページに、4.対価の決定というのがありますね。1が対価の算定方法、2が対価の支払い時期、3にきて、発明者からの意見の聴取とありますけれども、対価の算定の仕方を決める場合にも、意見の聴取というのが本文の方にあるので、それとの関係がどうなるのか、疑問がでると思います。そういう意味では規程例全体と手続事例集との関係がわかりにくいんじゃないかなと思います。もう少し説明を加えて使う方が、どういうふうに使ったらいいかということがわかるようにした方がいいのではないかと思います。
以上です。

事務局

多分一番誤解の生じやすいのは、今の御指摘の、意見の聴取のところだと思います。例えば事例集本体の方の問い番号なり引用して、そこで言っている意見の聴取について、ここで規程例を設けていますという形で御紹介することでよろしいでしょうか。

委員

お願いします。

委員長

どうぞ。

委員

前回、労働法、とりわけ労働協約、就業規則との関係で質問してかなり整理されたところがあると思いますが、まだちょっと基本的に不十分なのかなという気がするものですから、意見を述べます。おそらくこの事例集の基本的な考えは、これは職務発明ですから、あくまで特許法独自の制度であるけれども、契約、勤務規則、その他の定め、あるいは意見聴取も含めて、労働法制上の制度で適用できるところは適用する、そういう考えだと思うのです。
はっきりしていることは、したがって労働協約、就業規則で定めてもよいが、その労働協約や就業規則に関する労働法上の手続とか効力はそのまま入れないで、それは特許法上の独自のものを考えるということですね。その点は賛成で、そのとおりだと思います。
以前から、プロセス審査ということをずっと言っておりますけれども、それはあくまで労働法的な発想も含めればそういうことになるということで、これは労働法の問題ではないというのはそうなのですが、その点はいいとして、労働法上の手続や制度、効力との関係をもう少し整理しておかないと、結局現場、企業でいろんな混乱が生まれるのではないかということを前回から申し上げているわけです。
3つ例を挙げてもう一度言いますけれども、1つは20ページから21ページの問6から問8ですが、労働法上の手続や制度、効力との関係で言うと問題になってくるのは、では、労働組合との労働法上の協議ですね。労使協議や団体交渉を履行すれば、この問3、問4、問5に言う協議が履行されたことになるのか、ならないのか、これが1つの例です。
それから、第2の例としては、15ページに先ほど御説明のあった労働協約との関係が出てきますけれども、これを拝見すると問5では、総合的に行われると回答されています。したがって、労働組合法第14条に規程する労働協約の効力、これは規範的効力のことだと思いますが、この発生要件が満たされていることをもって不合理性が否定されるものではないということだと思います。つまり総合的に判断するわけで、規範的効力に直接結びつかないということになる趣旨だと思うんですが、では、一体ここで言う効力と規範的効力がどういう関係に立つのか。労働協約で締結すれば、規範的効力は労働法上は発生するわけですから、一方では規範的効力の問題になるわけです。では、両者は一体どういう関係なのかということを説明しないと、理論的にも実務的にも混乱が出てくるのではないか。
同じようなことで、39ページの問1ですが、先ほどの御説明では、答えの方が少し変わって、「その合意が民法の原則等に照らし有効である場合には」と、こういう追加があるということです。これも仮に規範的効力が生ずるとすれば、民法の原則等に照らして合意が有効であっても、規範的効力との関係では効力を否定されることになります。それが従業者にとって有利であろうと不利であろうと、否定される。しかし、最初にお尋ねした趣旨からすれば、それは特許法の制度だから、それはこれでいいんだという結論になると思うのです。しかし、そうすると労働協約制度との関係はどうなのかということは説明しないと、どっちなのかということになると思います。
最後の例ですけれども、就業規則については、15ページに先ほど説明が追加されたということがあって、この説明はこのとおりで、労働基準法90条の意見聴取では十分ではないということはそのとおりだと思います。ここは先ほどから私が言っている、整理がされていると思います。
しかし、そうすると92条の協約との関係、93条にある個別合意との関係、106条の周知義務との関係、これらはどうなるのか。例えば周知義務との関係は、後の方で出てくる開示と密接に関係してくるわけです。
今幾つか例を言いましたけれども、要するに、特許法独自の制度であるということから生ずる特許法上の手続や効力と、労働協約や就業規則に関する労働法プロパーの手続や効力との関係について、もう少し説明することが必要だと思います。
お願いしたいのは、まず総論のところで、本事例集は、特許法独自の考え方、観点からのものだということと、労働法上の制度との関係に関するという基本的な考え方を書いていただきたいということです。
それから、各論のところでも、今申し上げたような幾つかの例がありますけれども、できるだけ企業で、あるいは労使関係で混乱が生じないような形で、もう少し整理していただけないかというのが私の意見です。
以上です。

委員長

どうもありがとうございました。

事務局

恐らく基本的な理解は我々と委員とは同じで、もう少し説明を尽くすべきではないかという御指摘だと思います。この点につきましては、この事例集については特許法35条から見た観点で、あくまで35条の不合理性の判断においてどう評価されるかという視点で、すべて書かせていただいております。御指摘のような点について、書く書かないについては、実は関係省庁とも協議をしながらやっているわけですけれども、我々の事例集の中では、35条の視点から書くことにとどめるべきだという指摘もありまして、ぎりぎりこういう記載にさせていただいているところでございます。
そういう意味で必要最小限、労働関係法規との関係で、35条の職務発明の対価を実際に定める上でどのように評価されるかという、必要最小限の視点で想定のものを事例集に掲載させていただいているというところで御理解いただきたいと思います。

委員

労働法制は当然、霞が関では厚生労働省の所轄ですから、厚生労働省とも若干の協議をされていると思います。結局そこは、特許庁としてはぎりぎりここまでだという点は霞が関の論理としては理解できますが、でも、企業から見ていいのでしょうか。企業から見たら、結局労働協約で決めたら、あるいは就業規則で定めたら、それは特許法の問題であると同時に労働法の問題でもあり、労使関係の問題になるわけです。このままだと、先ほど私が出した例の点を含めて、企業は結局どうすればいいのかがわかりにくい。手続事例集と書いてあるけれども、一番肝心な手続について、どういう手続きをとれば従業者を拘束するのか、また使用者をどう拘束するのかというのが、必ずしも明確ではないというのが私の疑問です。

事務局

恐らく幾つかの、例えば労働協約等で定める場合、労働組合法によって発生する効力というのはあるわけですが、それらの効力、例えば一般的効力と呼ばれるような効力が発生した場合であっても、あくまでこの事例集に従って判断した場合には、それが不合理として判断される場合があるということは、例えば問5の記載で読めるのではないかと我々は考えております。あくまで35条から見て、不合理性の判断がなされるんだというところは、すべて労働法制との関係でつくっております問いの中では、そこを明確に貫かせていただいているというふうに考えている次第でございます。

委員

今の点をもう少し具体的に聞かせていただきたいんですが、労働協約の場合で15ページの部分ですね。労働協約の中に、この対価の基準について定めを置いたと。労働協約自体としては、何の問題もなく手続にのっとってきちんと行われた。この場合に特許法の観点から、この定めについては考えるんだという御説明でしたけれども、この定めの効力というのは、労働組合に入っていない非組合員にも効力があるというふうにお考えなんでしようか。その点はどうお考えなんでしょうか。労働法の論理からいくとわかる面はあるんですが、それとは一応別に考えるということであった場合には、非組合員の効力はどう考えておられるか、質問させてください。

事務局

特許法から見た場合ですね、労働組合員との関係では効力がありますが、非組合員との関係で見た場合には、例えば協議が行われていないと判断されるということになるかと思います。

委員

多分そういうお答えだろうと思うんですけれども、その旨はこの事例集の中に明確に述べられていたんでしょうか。100%のところは書いてありましたけれども。労働協約の場合について書かれていたんですか。

事務局

例えば21ページの問8です。100%ではない労働組合のケースです。その中の第2パラグラフの「一方」ですけれども、「当該組合に加入していない従業者等の関係では、「協議」は行われていないこととなります。」ということを明確にさせていただいております。

委員

ただ、それが本当に明確かというのは問題で、労働協約で書いているというのは、労働法の論理からすると別の意味を持ってくるわけでして、もうそうお考えならば、少なくとも問5の中で書かないとわかりにくいんじゃないでしょうか。そして、そのお考えで本当にいいのかというのは次の問題としてあるんですけれども、もしそうであるならば、問5の中で書かないと少しわかりにくいのではないかと思います。労働法の世界で労働協約を見ている人間たちにとっては、やはり規範的効力というのを前提にして考えていきますので、違う趣旨だということであれば、明確にする必要があるのではないかと思います。
以上です。

委員長

どうぞ。

委員

今の点についての私の考えですけれども、労働協約や就業規則の労働法的効力という視点から見た場合には、従来の法規、あるいは判例、学説等で述べられているところの法的効力が生ずるのは当然としても、それが職務発明に関する特許法35条の適用をする限度において修正されることになると、手続事例集の立場だと基本的にそう考えるほかにないのではないかと思います。
これは最終的には特許庁のつくる事例集ですけれども、もし私の言っているような考え方であるとするならば、それは委員が言われたように、冒頭のところでもいいですけど、何か一言でも書いておかないと、確かにこれを実際につくって運用する企業の側にとっては、本来の労働協約の効力から見るとそこのところはどうなのという疑念が生じてくるかなという心配があります。私の言っている趣旨と特許庁の趣旨が同じであるならばそのように。また特許庁の考えがそれとは違う考えであれば違うように、触れておいた方が、これを使って運用する側にとっては使いやすいのではないかと思うので、その点は要望しておきます。

事務局

今の御指摘の点は、15ページの問5の、第1パラグラフ後段の「したがって」以下ですね。「労働組合法14条に規程する労働協約の効力発生要件が満たされることをもってただちに不合理性が否定されるものではありません。」ということで、あくまで労働法と特許法が重畳的に適用されるわけですが、特許法35条上の不合理性の判断においては、別途そこは特許法から見て判断されるんですよということを、この文章で明確にしているつもりなんです。

委員長

どうぞ。

委員

今、委員と委員のお話を聞いて、我々も企業の方から言うと今回の改正が手続重視ということでやられているんですが、それが先ほどらい出ている労働法との関係でどういうふうにやるかというのは一つの大きなポイントであると思うんです。今御指摘の15ページの問5のところで書いてあるというお話はわかるんですが、もう少しさっき委員がおっしゃったような意味合いも含めて、初めの総論のようなところに、その考え方がそこはかとなく出るようにしておいていただいた方がよいと思います。我々がこれを読むときには、各問いのところを読むよりも、初めにどういう考え方でこれが構築されているかというところを読んで、そこを理解した上で多分、各企業はそれぞれの運用を考えると思うんです。この各論のQ&Aの中で解説するよりも、やはりある程度応用動作ができるようなポイントを総論的なところに書いておいていただければありがたいなと思います。

事務局

恐らく労働協約なり就業規則は、35条で定めているところの手続をリセンする手段として利用されるわけですので、それぞれの手段のところで書いた方が明確ではないかというふうに考えています。なかなか総論の部分、以前御説明したとおりここは35条の逐条的なところで、ここに労働法制との関係を書くのは、正直言って生理的になじまない、生理学的になじまないなという気がしていまして、できればこのような整理で事例集はまとめさせていただきたいと考えております。

委員長

どうぞ。

委員

その他のところでそういう整理が困難だというのであれば、また各論の第2章以下のところできちんと書いてほしいんですよ。今の問5の説明も結局一方で、例えばきちんと協議して、何の問題もなく労働協約を結んだ。そうすると労働法の観点から見れば規範的効力が発生してしまう。しかし、特許法上は総合判断です。そうなると、協約の方式で対価の決定方法を定めたけれども、特許法上はそれでストレートに対価ということにならないケースが出てくるわけですね。それはそれでいいですけれども、規範的効力の本来のオーソドックスな考え方とは食い違ってくるわけです。もし総論で難しいのであれば、各論でそこを書く必要があると思います。
もう一つだけ例を言いますと、前回、特許庁が労組法17条のことを言われましたね。拡張適用を認めてしまうと、これは特許法改正の本来の筋と矛盾する、と。それも同意しますけれども、しかし労働法の方から見ると、規範的効力が発生して17条の要件を満たしてしまえば、拡張適用も自動的に発生してしまいます。それを否定するということがこの事例集の趣旨であるということであれば、そのことを書いておかないと、それは混乱を招くというだけではなくて、事例集を出す姿勢としては問題があるのではないか。

事務局

今の御指摘については、基本的にここの考え方は間違っていないけれども、これだけの記載では誤解を生む可能性があるので、もう少し明確にすべきという御指摘だと思います。この点については関係省庁もありますので、そちらと協議しながら検討させていただきたい、そこは事務局に預からせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

委員長

よろしゅうございますか。

委員

この協議ということについて、19頁の問2の答えが典型的なのですが、個別的に協議の機会が少なくとも必要だというように読めます。企業は労働組合と協議するのだろうと思います。労働組合と協議して、研究所の代表と話をするということが、想定されると思います。そこで、この労働組合と協議したからといって協議したことにはなるとは言えないとすると、従業員何万人という企業でどうやってオペレーションしたらいいのかということが、よくわからないと思います。
10人だったらば皆で話し合いましょうというのもいいのかもしれないけど、1万人について、黙示の委任でもいいけど、委任があった人と協議しなければいけないというのでは、仕組みとして成り立たないのではないかと思います。手続全体の公正さということを言えば、その人との関係では協議はなかったかもしれないけれども、労働組合ときちっと話をして、例えば協約まで結んでいれば協議は尽くされていると言えるのではないかと思います(規範的効力などの問題は別として)。

事務局

今の点ですけれども、労働組合とやったからといって協議にはならないというのは誤解で、当然労働組合と協議をする際に、明示、黙示の委任関係があれば、その従業者と協議を行ったことになる。これは特許法35条自体が使用者と従業者の個々の関係について規程している条文ですから、本人が知らないところでどこかで決めたら、それが従業者に適用されるような制度をとることは難しいと思っております。とは言っても、実際にオペレーティブにするためには、団体なり代表者の協議ということも認めなければいけないわけで、そのような中でどういう形をとれば実質的に使用者と従業者が個別に協議されたことになるかというのを、個々の代表者の話し合いとか個別の事例の中で解説させていただいている。そこは当然ながら、あくまで35条が今御説明したようなつくりになっていますから、繰り返しになりますが、明示、黙示の委任関係が必要になってくるということは当然だというふうに考えています。

委員

今のは前回のやりとりのところにあったことも関係してきて、労働組合に発明従業者が加入しているだけでは、まだ明示、黙示の委任関係は成り立たない。特許法上はそれとは別途、黙示でもいいけれども、何らかの委任関係が必要だ。それは労働組合の場合もそうだという趣旨の御説明だと思います。それは私もそれでいいと思います。書いてほしいのは、したがって労働組合に発明者が加入しているだけでは、明示、黙示の委任関係としては不十分だという一文が欲しいのです。そうすれば先ほどから言っている整理はつくわけです。それがないから、果たして組合への加入だけでいいのか、あるいは明示、黙示の委任というのは結局何を言っているのか、その疑問が出てくる。今おっしゃったようなことをもう少し幾つかの論点に即して書いていただきたいという希望なんです。

事務局

その点も先ほどの検討事項に含めて検討させていただきます。

委員

そこは、委員とは意見が異なります。労働組合に入っているだけでは、委任がないんだというのであれば、大企業ではオペレーティブではないのではないかと思います。つまり、協議というのは、あくまでも全体として公正に対価の算定方法を決めるために必要な手続だと思います。個別的な意見の聴取があれば、手続の公正さが高まると思いますが、それがないからといってゼロと見ることには異論があります。手続全体の公正さという観点から、大多数の従業員の意見を聞いているとか、労働組合の意見を聞いているというところがプラスファクターに働かないと、何万人の従業員を抱えているところで、機能しないのではないかと思います。組合さんに、全部の委任をとってください、そうしないと協議がなされたかどうか不安定ですというのでは、今まで我々が議論したところと違うのではないかという気がします。

事務局

とは言っても、35条が使用者と従業者1対1の関係で書かれているということは恐らく異論がないと思うんです。そうなると、それをどこまで集団協議の中に持ち込めるか、集団協議で足りるとすることができるかというと、この委任関係というのはどうしても考えざるを得ない事項になるというふうに考えております。

委員長

どうぞ。

委員

ちょっとよくわからなくなったんですが、企業のさっき委員がおっしゃったオペレーティブな権利だと、当然あるルールを決めます。それをこういう例で言うと労働組合なんかと決めました。そのルールは変える必要はなくて、ある程度運用していきます。それをどこかに明記しておきます。新しい人が入ってくるたびに、それは全然やってないから、再度それを全部労働組合を通して確認しろという意味なんですか。そんなばかなことはあり得ないと思うんです。

事務局

今の議論はそういうことではなくて、そこは新入社員のところで書かせていただいておりますが、まず職務発明規程を策定する際に、当然新入社員といいますか、次に入ってくる方は協議に参加できてないことは明らかですから、そういう意味ではその人との関係で協議を行ったかと言えば、確かに協議は行われていないことは事実です。だけど、その協議が行われなかった、行うことができなかったという事情は当然ながら考慮されるでしょう。
望むらくは、会社訪問とか入社前にその会社の職務発明規程なりを開示して――開示というのは情報上の開示ではないので、提示して、うちの会社はこういう規程になっていますよということを入社前に示しておけば、それは不合理性の判断では、より否定する方向に働くことになりますということを、新入社員のところでは書かせていただいております。改めて協議する必要は事実上あり得ないと思いますから。

委員長

どうぞ。

委員

ちょっと今との関係もあって気にしていたんですが、20ページの問4のところで、答えの一番最後から2番目のところに、「通常は別途実質的な協議が行われることが必要と考えます。」とありますね。この「通常は」というのは、どういうことなのかというのがちょっと気になりますので、御説明していただくか、逆にない方がいいのか、どういうことなんでしょうか。

事務局

おっしゃるとおり、「通常は」というところは意味ございませんので、我々の方の修正ミスでございます。

委員長

どうぞ。

委員

すみません、労働組合の立場からなんですけれども、委員がおっしゃるように、組合員の人数が多いときめ細かい対応はなかなか難しい部分もあるんですけれども、やはりその分組合の役員等が配置されているということからからすると、物理的には可能かなと思うところはあります。ただし、普通の労働条件の案件と特許の案件、多分進め方が特許法の規程の中で考えると、普通の例えば春闘で賃金交渉するとかというときの組合員への説明等とは全然違う流れになり、より研究職場の人間の意見を重視して考えていかなければいけないという点では、我々としてもオペレーションとしては、通常とは違うというところでは若干困難な面もあるかとは思います。よって、人数が多いというだけで、オペレーティブじゃないというところは組合としても努力は必要だと思いますが、対応は可能なのではないかと思うところです。

委員

確認なんですが、産業界も労働組合も、協議については、個別的な委任関係がいるというのがこの事例集の趣旨で、それで皆さんがよろしいというのであれば、それ以上は申し上げません。それで本当に大丈夫かということを心配しただけでございます。

委員長

どうぞ。

委員

今の点に関連してですけれども、私も委員のおっしゃっている趣旨は非常によくわかるので。ただ、この事例集がそこまで要求しているとまでは理解してなかったのです。つまり、労働組合と使用者が協議する。その場合に労働組合に加入している従業者との間では、正当な代表者と協議すれば協議したことになる。ただ、その協議の前提として、その労働組合の代表者が今委員が言われているような、組合との間で事前に十分な協議をして使用者との協議に臨むことが望ましいと言っている程度のことと私は理解していました。絶対に事前の委任が必要不可能で、そうでなかったら不合理を肯定する方向に働くと考えてこの事例集ができているとすると、それは企業側にとっても大変なことだと思います。
労働組合の代表者が企業側と補償規程についての協議をする場合に、事前に従業員との間でその点について協議して、使用者との協議に臨む、それが望ましいですよというのは大いに言ってもらう方がいいと思いますが、その前に委任が必要不可欠で、委任がなければ不合理と肯定する方向に働くとまでこの事例集は言っているのかどうか、そこを確認させてください。これは最終的には特許庁が責任で出すものだと思いますけれども、実際上はそこまで合理性の担保に必要だということになったら、企業の側としても、労働組合側としても、なかなかやり切れないという心配があるんですけれども。

事務局

基本的に委任関係は必要だと考えています。だからといって正当に代表しているかどうかという判断のところでは、明示的であれば理想的でありますが、黙示の委任関係、黙示的に委任しているという条件が認められれば、それでもいいというような記載をさせていただいています。その考え方は今委員が冒頭におっしゃったような、こういうことをやりますよということを組合に知らしめた上で協議に入るということも、ある意味で黙示的に委任させたということになるのではないかと考えております。

委員

多分今の点は、20ページから21ページにかけての問7に書かれている内容について御説明いただいたんだろうと思いますけれども、そのことを具体的なケースで考えてみますと、恐らくこういう課題というのは、労働組合と会社との間で労使委員会みたいなものを開催すると思うんです。これはほかの課題でも全く同じようにやっているわけで、それと同じようにやればこの問題は、すなわち正当に代表しているかどうかという問題はクリアされるというふうに我々は考えています。そういう意味でこの問7が書かれているというふうに理解しておりますので、その辺の確認をもう一度お願いしたいなというふうに思います。

事務局

35条の解釈からいけば、その労使委員会に職務発明規程の案件をかけますよということを労働組合が組合員に対して、事前にアナウンスをしておく必要があるかと思います。

委員

恐らくそれは通常、35条の問題をやりますよというふうにやりますから、それは通常のやり方なんだろうと思いますから、そういうふうにしておけばいいということですね。

事務局

はい。

委員長

どうぞ。

委員

今の説明でいくと、前回委員がおっしゃった、個人の権利をどこまで本当にコントロールできるかというところに突き当たるような感じがするんです。だから、委任の中身みたいなものがポイントになるような気がします。これは35条ですから、まさに個人が原始的に取得する権利を会社に譲り渡したときの対価の話ですよね。ある種のルール決めのところまではいいんですが、対価決定のところまで、すべて労働組合のところに委任できるかできないかというのは、根本の問題になるような感じがしますが、これはそこまでの委任じゃないと思っていいわけですね。

事務局

もう一度確認させていただくと、おっしゃっている、そこまでの委任ではないというそこまでというのは、どこまでですか。

委員

財産権の対価のある価格まで全部お願いしますよという意味ではないんでしょう。

事務局

基本的に協議の際の委任ですから、職務発明規程なり対価の決定のルールを策定する際に、その策定手続を委任しますというものです。

委員

今の点は、おっしゃったように原始的に帰属するものを譲り渡す対価である、通常の労働条件と違う。そうするとここで委任されているのは、いわば対価の決め方のルールは委任している。しかし、今の職務発明の対価という特質もあるからこそ、もう一度当てはめのところで意見聴取しなければいけない。そこはプラスアルファで加わっているわけです。その意味では、すべて委任しているわけではないというのは、そのとおりなのです。

委員

そうですね、たまたまある組織の中でいろんなことを決めようとしたときに、組合みたいなものがあります。そういうある種の今までやっているやり方を、特許法35条の対価のあるルールを決めていくときに、移植してみたらどうですかというのが、今回の事例集の解説だと理解しています。したがって、いわゆる労働法的ないろいろなハンドリングのやり方を35条の運用の一つとして持ってくるけれど、さっき委員がおっしゃったように、そこには35条の特殊性というのがあって、まさに産業立法ですから、産業の発展から見てある種の枠がはまって、その中だけでしか動けないということは明確に意識しておかないといけません。今回の事例集では、非常に労働法的なある手続論を持ってくるために、そこに引きずられるということは本来の趣旨を見失うことになると思うんです。
そこは、この事例集についていろいろな説明をやっていただくときに、きちんと説明し理解してもらわないと勘違いが起こるおそれがあります。企業サイドも事例集を持って来られて、そこの記載が何となく労働法的なんで全部そちらの考え方なんだと誤解して運用をやったときに、非常にデットロックに乗り上げてしまい、本来の趣旨が損なわれるのではないかというおそれがあるので、そういう意味でも、さっきの委員の話を明確にしておいた方が良いと思います。

事務局

今の点ですけれども、労働法制との関係のQ&Aについては、すべて不合理性の判断については、あくまで35条の視点から行いますよということをすべて記載させていただいています。したがって、その点については誤解のないようにしたいと思います。今後改めて説明会等を行う際には、その点についてもきちっと説明していきたいと思っております。

委員

もう一度よろしいですか。そうすると今の問題は、実際の手続の流れに当てはめて考えると、使用者側が補償規程案をつくるわけですね。こういう案でいきたいと思うけれども、従業者と協議したい。そうすると労働組合があれば、労働組合の代表者と話し合って決めれば、労働組合の加入者については協議は済んで、残りの加入していない人たちと、個別的に、全員を網羅するように手続をするということですけれども、その場合に使用者側としては、労働組合の代表者と補償規程の協議に入った際には、まず労働組合の代表者側に、全組合員から委任を受けたかどうか、委任の証明をしてもらわないととても協議に入れないことになりますね。だから、そこまで要求するのかということが私としては疑問なのですが、そこはどうなんでしょうか。そうしないと危なくて、とても協議できないなということになってしまうと思います。

事務局

企業サイドから考えれば、当然そういう確認をとって安全を確認すると言いますか、その協議自体が確実なものになるかどうかという確認をとるという行動をとるというのは確かにわかります。別途、労働組合の方からすれば、そこで協議していく以上、当然労働組合の中では、そのような明示、黙示の委任をとるような手続を我々はされると考えていますし、今後、労働組合団体さんの方にもこの制度を御説明する機会があるかと思いますけれども、改めてその点については周知させていただきたいと考えています。

委員長

どうぞ。

委員

委員、黙示の委任というのはどういうようなものが想定されるんでしょうか。

委員

余り答えたくないところではあるんですけれど、通常の委任契約と考えていますのは、例えば契約なら契約、どんな契約でもいいわけですけれども、法的に意味のあるような行為を他の信頼できる人に委ねてやってもらうということを内容としていますので、基本的には明示的に行われるというのを想定して考えていますので、黙示の委任というのに何か特殊な問題があるかというと必ずしもそうではなくて、要するに黙示的に契約が行われているのはどういう場合か。その場の状況から見て、一定の行為を相手方にやってもらうというのを委ねていると見られても仕方のない状況下で、本人自身何も反対しないで、むしろそれを認めているかのような行為がある、見られる。そういう場合に黙示に契約しているというふうに解釈される。あくまでも個別的な状況下での、普通の人ならばその行動をどう見るかによって判断するとしか言いようがないですね。ですので、労働組合に加盟している労働組合員が、そして労働組合が一定の行為を職務発明の対価の基準を定めることを使用者と交渉しようとしているということが、労働組合の組合員全員にわかっていて、しかし特別なプロテストをしないというのは、少なくとも労働組合がそのような基準についての交渉を行うということについて承認しているというふうに見られても仕方がない、そういう意味での黙示の委任と言えば委任、契約があると見られても仕方がないのかなと。普通の黙示の契約についての考え方からすると、そうだということですね。
ただ、1つだけちょっと、先ほどどこまで委任しているのかというのは実は問題になる点でして、そしてトラブルになるのは通常その範囲が争われる場合でして、何が問題かと言いますと、労働組合に基本的にはちゃんとやってくれるだろうと思って特段反対しなかった。ところが労働組合の方がいろんな考慮から、少なくともその個人が思いもよらないような妥協なら妥協をして、その一定の基準を定めた。こんな基準を定めることまでは委任していないというようなプロテストが後で出てくるというのが多かろうと思います。
その場合にどう判断するかというのは、特許法の問題というよりは、それこそ民法の問題なのかもしれませんけれども、こういった点についても、労働組合がどれほど各組合員、あるいは従業者を代表しているかという判断で、相互考慮されるというのが恐らく特許庁の答えなのかなと思って、きっとそうだろうと思って黙って聞いていただけなんですが、よろしいんでしょうか。

事務局

そのとおりでございます。

委員長

どうぞ。

委員

法律学者同士で余り議論しても仕方ないかもしれませんが、今委員が言われたのは協議のレベル、つまり基準とか方法の決定限りで言えば、これは20ページから21ページにあるような形で、黙示の委任を受けて労働組合があと交渉すれば、それはきちんと交渉してさえすれば労働法上は問題ないのです。委任を受けて交渉したことになる。その結果、交渉や協議そのものをいいかげんにやっていれば、これは委任による義務を果たしたことにならないでしょうけれども、その交渉とか協議を誠実に行い、公正な利益代表を尽くしていれば、労働法は問題ありません。
特許法上の発想は、しかし、今の問題もあり得るし、あるいは職務発明の対価というのは通常の労働条件と違うから、基準の当てはめの段階があって、そこでもう一回検証するということになると思うのです。それは考え方としてはよくわかる、つじつまが合うと思うのですが、繰り返しになるから最後ですけれども、それが労働法上の制度とどう関係するのかというところをきめ細かく書いてほしいというのが私の希望です。

委員長

ありがとうございました。
ほかに。どうぞ。

委員

今回、事例集ということで、私は最初ガイドラインという言葉を使っていたら、事例集だということで、一番その観点で考えているんですけれども、今回の規程は事例であって、どうも見ているとかなり安全サイドといいますか、問題のない範囲で言っている。そうするとこの規程に書いてあることを守らなければ合理性がないんだとかそういうことでなくて、安全性を見た上で、ここまでやれば一番好ましいんだという考えでいいかと思うんです。そうすると黙示の委任、明示の委任とかいろいろあるんですが、ここまでやればまずほとんど大丈夫でしょう。だけど黙示の委任がない場合は、ないといいますか、もう少し緩やかな規程を、協議をやった場合に、本当に合理性が否定されるかどうか、その辺はもう少し緩やかに考えて個別にやってもいんじゃないかという理解なんです。だから、これはガイドライン、いわゆるここまで守らないとだめですよということではなくて、一つの好ましい事例だという解釈でよろしいんでしょうか。
そうしますと、例えば21ページの問8のところに、上から2行目から書いてあるんですが、全組合員を正当に代表している場合においては、その代表者と使用者との話し合いは、「協議」と評価されますということで、ここは特に委任どうこうを書いてないんですけれども、これくらい緩やかでも合理性はあるんだとか、そういう考え方が出てくるんじゃないかと思うんですけど、そういう理解でよろしいですか。

事務局

これはあくまで好ましい事例ではありません。ごらんになったとおり、こうすればいいですよという記載は一つもありません。ですから、ある手続について、どうすれば不合理性を肯定する方向に判断されるのか、あるいは否定する方向に判断されるのかという色々なケースバイケースの考え方を幾つも例示して、それらを参考にしていただいて、自分たちがやろうとする手続が果たしてどう判断されるのかという評価の基準に使っていただきたいということです。
今の問8の記載ですが、その前の問7に、正当に代表しているのはどういう場合を言いますかという問いを起こしていますから、それを踏まえて問8がありますので、すべてにこの答えを書くと冗長になりますから、そういう整理をしています。

委員長

どうぞ。

委員

この規程例の一番最後のページに契約書の例というのがございます。中小企業においては、発明というのはそんなにちょいちょい起きることではなくて、多分何十年に一遍とかそういう例も普通ではないかと思っております。そういう中で今まで討議されてきたことよりも、そういう意味での契約書というものがつけられたのではないかと思うんですが、これはどうなんでしょう、発明があったときだけこういう契約をやった方がいいのか、それとも例えば就業規則などにこういうふうなものをつけた方がいいのか、それはどうなんでしょう。

事務局

多分今のお話のようなめったに発明が起きないようなケースであれば、発明が起きた都度、個別に契約されることが一番望ましいかと思います。例えば今おっしゃった就業規則ですけれども、就業規則の中にこういう契約事例を入れたとしても、就業規則自体は特許法で言う規則といいますか、その定めに入りますけれども、それ自体は使用者と従業者が協議をして定めたものでは通常ありませんから、そういう意味では就業規則に定めたからといって、その手続が不合理ではないとされるわけではありません。したがって、基本的にはそういうケースであれば我々は、個別に発明が生まれた都度、個別の契約を結ばれることをお勧めします。
ただ、1点だけ参考として申し上げるとすれば、発明者から会社側は承継を受けない限り基本的にはその権利はまだ発明者に残っていますから、職務発明規程を設ければ、それによって特許法35条に従って自動的に会社側に承継ができるというメリットがあります。したがって、そのメリットと、こういった手続を踏んで職務発明規程を定める場合の手間と、勘案されるたびに個別契約をとるか、あるいは規則をあらかじめ定めておくかという判断をされるのがいいかと思います。

委員

わかりました。

委員

1点だけ質問をさせていただきたいんですが、先ほど少し出ました新入社員の取り扱いで、事例集で言うと36ページですが、問1、問2、問3とありまして、新入社員に関しては、入社前に策定済みの基準を適用するときには、策定時には新入社員はいなかったわけですから、手続上いろんな問題があるので、問1、問2、問3でその点を説明する。これを見ますと、どうも新入社員に対して、個別的に基準を示してあらかじめ話し合いをするというのが問2ですし、問3は策定された基準を提示する、開示なんでしょうか、開示する。こういうことは、既に入っている社員については、先ほどの明示または黙示の委任だったのが、新入社員については個別に行われるということを前提にしておられるようなんですが、そうしますとこの書き方を見ても、これはあくまでも個別に行われても、やはり勤務規則の適用なのだという理解なんでしょうか、それとも何か契約をしたというような理解をされているんでしょうか。
最後の問3の下から2行目、「合意しているのと同様に」という表現もありまして、これはどう理解しておられるのかというのを質問させていただきたいんですが、よろしいでしょうか。契約したことになってしまうのかということですね。

事務局

多分、合意という言葉でそのような誤解を生むんだと思うんですけれども、実質その基準を承認した上で入社していると判断される可能性がありますよということを書いているので、必ずしも契約ではないんです。

委員

あくまでも勤務規則であって、その勤務規則が適用されるための手続要件をここで書いているという趣旨なんでしょうか。

事務局

はい。

委員

ならば、「合意」という言葉は避けるべきだろうと思いますね。

事務局

そうですね。

委員

そして、開示については問3で書かれていまして、「権利の承継時までになされていることが望ましいと考えられます。」という「望ましい」というのは、権利の承継時までに開示されてなくても不合理とされない場合があるという御趣旨なんでしょうか。

事務局

そこは、新入社員については物理的に協議ができないケースですから、その状況をどのように判断されるかというところが、我々もまだはっきりしないところがあって、事前に見せておけばより確実だろう、望ましいだろうということで、このような記載にしております。

委員

ただ、これは民法の一般的な問題で言いますと、約款の問題がそうですし、民法の問題にとっても問題ではあるんですけど、約款と言いますと、保険に関する問題については保険業法等もありまして、事前の開示というのをむしろ義務づけている。不動産の取引なんかでも、重要事項の説明というのは契約締結前に必ず行わなければいけないということで、開示というのは望ましいというものというよりは、契約時、少なくとも権利の承継時までには必ず行われていないといけないんじゃないかと私はずっと思ってきたんですけれども。
つまり、契約するまでに知りもしない、およそ存在自体知らなかったようなものが突然、契約した後にこんなものがありますよというので、それに拘束されるというのはちょっと説明がつかない。やはり契約するまでに、見ようと思えば見られる状態にあったと少なくとも言える必要がある。そういう意味では開示というのが不可欠の要件だというのが、少なくとも今の民法学界では一般的な考え方で、そして先ほどの保険、あるいは不動産取引等々においても、かなり浸透してきているのではないかと思っているんです。
そういう意味では、「望ましい」という表現が私にはちょっと弱いような気がして、開示がやはり事前に必要なのではないか。少なくとも見ようと思えばいつでも見られる状態にあったと。個別に手渡す必要はないと思いますが、見ようと思えばいつでも見られる状態にあったという意味での開示は必ず必要ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

事務局

我々もそのように考えているんですけれども、それとの不整合があるようですので、ちょっと検討させてください。

委員長

ほかにいかがですか。

委員

34頁の問2で新旧の話なんですが、これは旧法が適用される場合には、新法に従った手続の法的意味が違います。そこをはっきり書く必要があるのではないかと思います。つまり旧法下で移転が生じた部分については、その対価は、改正前35条が適用されて決定されるということで、改正前35条の基準に従って、新しい改定された基準に従って支払うことが相当の対価と認められるかどうかということをきちっと書いた方がいいのではないかと思います。

事務局

この点については前回も御指摘がありまして、問の方の前提として、「新職務発明制度の下で」というのを入れさせていただいております。あくまでこれは、新制度のもとで改定前のものと改定後のものとの間での適用関係を聞いている問ということ、問の方で明確にさせていただいたんですけれども。

委員

これはあくまでも新制度のことだけに言及しているということですか。

事務局

はい。

委員

了解しました。

委員長

どうぞ。

委員

全般的なことなんですけど、きょうの一番最後の資料に、今後の広報活動が計画されているようですが、先ほどらい議論が出ているように、特許法の基本である産業の発展ということを念頭に置いた説明を徹底していただきたいと思います。職務発明は我々会社から見ますと、基本的に会社の意思とリスクの負担で生まれる発明です。にもかかわらず、特許法が建前として発明者主義をとっているため、その個人の権利的側面のみが顔をのぞかせています。今般の改正で、手続重視の改正で、個人の権利に関することについても団体が交渉するような側面も顕在化しています。そのため、先ほどらいのいろいろな議論は、その3つのものがまざり合って議論が出ていると思います。
ただ、職務発明制度そのものは、使用者と従業者の対立構造ではなくて、両者が協調関係に立たない限り全然意味がなくなりますので、そこのところの精神をよくわかっていただくようにということと、今回の事例集の参考条文に特許法第1条が書かれているのも多分その意味だと思いますので、ぜひそこのところはよろしくお願いしたいというのが第1点です。
それから、先ほど説明がありましたように、この手続集は多分そのための一つの指針に過ぎなくて、法的拘束力はない。しっかりそれは認識してもらって、各企業がそれぞれの実態に応じて知恵を絞って、実質的な取り決めをするというのが大切でありますよということを、ぜひ説明会の場ではいろいろやって理解させていただきたいなと思います。これが、第2点目です。
あと1点だけ、記述上のミスの指摘です。これは私勘違いじゃないかと思うんですが、(参考)規程類の4ページの3の権利承継の(2)の権利処分の5項のところの表現が、ちょっと間違っていると思います。1行目の終わりのところで「特許を受ける権利を取得し」とあるんですけど、これは多分こうではなくて、「職務発明について、特許を受ける権利又は特許権を維持する必要がないと認めたとき、当該特許を受ける権利若しくは当該特許権を放棄し、又は当該特許出願を…」という意味じゃないかなと思うので、後でこれは御検討いただいた方がいいと思います。
以上です。

委員長

ほかに御意見ございませんか。よろしいですか。
それでは、いろいろと御意見をいただきましたが、特に労働法とのかかわりのところでたくさん意見をいただいたと思いますが、今回の改正では労働法のプロセスの考え方をかりながら、しかし基本的な判断は特許法の概念、フレームワークで行うということになっておりまして、そこでいろいろと難しい問題が出てくると思いますけれども、今の基本的な考え方については合意されていると思いますが、オペレーショナルなレベルでそれが何を意味するのかということについて、もう一つクリアでないというような御意見をいろいろといただいたと思いますので、手続事例集のユーザーが的確な判断をできるように、もう少しその点を中心に工夫していただきたいというふうに思っております。
最後に、部会長から何かございますか。

部会長

貴重な御意見をありがとうございました。ただ、1点注意していただきたいのは、この事例集の最初のページに書いてありますとおり、この事例集には法的拘束力がないので、ここで何を決めようとも、裁判所で違う結論を出す可能性があるという点です。各委員の35条の解釈論を非常に詳細に展開していただきましたけれども、それを明確にして具体化すればするほど、書けば書くほど、裁判所との間に齟齬が出てくる可能性があるわけです。
我々学者が論文を書くときは、結論を明確に書き、あとは裁判所が採用してくれなくてもしてくれてもどっちでもいいんですけれども、役所の書くものになりますとそうはいかないので、ここで書いたけれども、裁判所は全然逆の判決を出したというのもなかなか難しい。ということは、どうしても先ほど闘わされた議論と比べると、この文章は曖昧なものにならざるを得ないのではないかということです。したがって、これを具体化してこれを守れば絶対安全というような文章はちょっと書けないのではないかという気がいたします。それを前提として事務局の方で修正していただければと思います。

委員長

それでは、今後のスケジュールなどにつきまして事務局の方からお願いいたします。

事務局

いろいろとありがとうございました。今部会長の方からも御紹介がありましたが、ただいまいろいろと御意見いただいたところにつきましては、事務局の方でちょっと踏まえまして、必要なものについては反映させていただくというところで、我々とすれば早急にパブリックコメントの運びにさせていただけたらというふうに思っております。
パブリックコメントでいろいろとまた意見が出てくる可能性がありますので、必要に応じて修正を加えて、我々とすれば9月上旬ぐらいに、今のセットバージョンをきちっとした冊子の形にしてとりまとめまして、一番最後の一枚ものの資料がありますが、9月22日から、全国行脚して説明会をさせていただきたいと思っております。総勢今の予定ですと大体6000人ぐらい、それ以外にもいろいろと説明を予定しております。我々この手続事例集の中でなかなか書き下せないようなところも、説明会を通じてきちっと御理解いただけるようにしていきたいと思っております。
以上でございます。

委員長

では、以上をもちまして第18回の特許制度小委員会を閉会いたします。ありがとうございました。

閉会

[更新日 2004年9月10日]

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