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第20回特許制度小委員会 議事録

  1. 日時:平成17年11月28日(月曜日)16時00分から18時00分
  2. 場所:特許庁 特別会議室
  3. 出席委員:
    後藤委員長、中山部会長、秋元委員、井川委員、大野委員、大渕委員、澤井委員、志村委員、竹田委員、富崎委員、中村委員、前田委員、山口委員
  4. 議題:特許制度の在り方について
    • 先使用権制度の在り方について
    • 特許制度の利便性の向上について
    • 特許庁の判定制度とADR機関との適切な役割分担について

開会

委員長

それでは、ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会第20回特許制度小委員会を開催いたします。
今回は知的財産政策部会長にもご出席いただいておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
前回の第19回では特許制度の検討に当たり論点とされる事項のうち、補正・分割制度、一部継続出願制度、国内優先権制度、権利侵害行為への輸出譲渡等目的の所持の追加、罰則の強化についてご審議いただき、皆様からいろいろご意見をいただきました。本日は前回に引き続きまして、特許制度の在り方についてということで、知的財産推進計画2005でも要検討とされている3テーマについて審議していただきたいと思います。
具体的には第1番目が「先使用権制度の在り方について」、第2番目が「特許制度の利便性向上について」、第3番目が「特許庁の判定制度とADR機関との適切な役割分担について」、この3点であります。
それでは、事務局より配布資料の確認をお願いいたします。

事務局

それでは、配布資料の確認をさせていただきます。本日の配布資料は議事次第、配布資料一覧、委員名簿、資料1といたしまして、特許制度の在り方について、それから本日ご欠席の相澤委員からご提出をいただいております「先使用による通常実施権のあり方についてのメモ」、これを参考1として配布をいたしております。
以上でございます。

委員長

どうもありがとうございました。過不足等ないでしょうか。
それでは、早速議題に入らせていただきますが、まず、第一番目の本日は特許制度の在り方についてということで、取り扱う3テーマにつきまして、それぞれ時間をとってご審議をいただきたいと思います。まず、第1番目の「先使用権制度の在り方について」というテーマにつきまして、事務局の方から説明を行っていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

事務局

ご説明をさせていただきます。
早速でございますが、お手元の資料に基づきましてご説明いたします。
まず、「先使用権制度の在り方について」ということでございますが、1ページの中ほどのところに先使用権の制度趣旨を書かせていただいております。先使用権は、特許権者の発明の実施である事業を、その出願前から実施、あるいは準備をしている者(先使用者)に対し、一定の条件のもとで例外的な救済措置として与えられる法定の通常実施権でございまして、それにより事業の継続を認めるものです。
これは下の方に書かせていただいております最高裁、昭和61年のウォーキングビーム判決の抜粋にもありますように、特許権者と先使用権者の公平を図ることに主眼がある制度でございまして、特許法上は79条に、「特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、又は特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して、特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業を準備している者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許出願に係る特許権について通常実施権を有する」と規定されております。
次に、1ページの上の方の「検討の背景」に目を移していただきたいわけでございますけれども、このような制度の下、特許権者からの警告や侵害訴訟におきまして、先使用者側の抗弁として特許権が無効であるとか、あるいは実施にかかる発明が権利範囲外であるという抗弁等に加えて、仮に権利範囲に属するとしても、出願前から実施または実施の準備をしているということをもって、先使用権を有するという抗弁が実際に行われているわけでございます。
また、企業におきましては、ある発明について積極的に特許出願をせず、ノウハウとして企業内に秘匿するという選択がなされております。この場合、安定して、そのノウハウを継続的に実施したいという意思が当然ございますので、その時点ではわかりませんが、将来、あり得るかもしれません第三者の特許権の取得に備えて、保険的に先使用の立証のための準備を行う企業が増えているというように言われております。
しかしながら、このような状況下で先使用権による抗弁を行う際に、先使用権を立証することが容易でないとか、先使用権の内容が不明確である等、現行の制度が必ずしも利用しやすい制度になっていないというご指摘もありまして、特に将来に備え、保険的に先使用権の準備を行うということになりますと、将来、いつ発生するかもわからない特許権に対抗するものでありますので、立証のための準備が困難で負担が重いという意見も多く出されております。
ここでページを飛んでいただいて、7ページを開いていただきたいのですが、この先使用権問題につきましては、現在、財団法人知的財産研究所においても委員会を構成いただいて、本日の委員長にヘッドとなっていただき、その在り方論の御検討をいただいているところでございますが、その中で10月の末から11月上旬にかけまして、企業の方にアンケートを知財研の方からとっていただいた結果を、ここに抜粋して掲載してございます。
「先使用権確保に向けた事前対策について」ということで、予め証拠を残したことがあるかとの問いに、「はい」と答えた企業が131社、「いいえ」と答えた企業が59社ということで、「いいえ」の企業よりも2倍以上の企業が秘匿したノウハウについて予め何からの証拠を残すという動きをされていることがわかりました。
そして、証拠を確保するに当たって困難を感じるかという問に対して、「はい」が116社もございまして、9割近い企業がその証拠をいかに残すのかというところで困難性を感じているという結果が出ております。
どのような困難かという点につきましては、どの程度の技術変更、改良に対して証拠を残すべきか不明であるとか、何を証拠として残していいからわからなかったとか、あと保管スペースの問題とかが指摘されております。
このようなアンケート結果もご認識いただいた上で、再度本文の方に戻っていただきまして、2ページのところでございます。「問題の所在及び方向の検討」ということで、こういうアンケート結果も出ており、また先ほどご紹介いたしました知財研での委員会での検討、更に私どもの方から企業の方にヒアリング等を行った結果として、現行の条文解釈に当たりまして、以下のような不明確さが指摘されているというように考えております。
1点目でございますが、先使用権が認められた場合でございますが、第三者の特許権にかかる出願日以降、時代とともに実施形式の変更がなされるということが普通に行われると思うわけですが、そういうモデルチェンジ等、どの程度の実施形式の変更が可能であるかが不明瞭であるというご指摘がございます。
それから2点目でございますが、事業の進展に伴いまして、子会社とか、関連会社にその実施を依頼する場合があるが、どの程度までその権利の援用が認められるのかという点。
それから3点目といたしまして、特許法79条は、「特許出願の際現に」という規定になっているわけですけれども、それを厳格に解釈すると非常に立証が困難ではないかということでございまして、その出願の際の瞬間のタイミングで本当に実施が必要なのかどうかというところでございます。
それから4点目でございますが、実施の準備でもいいということになっているわけでございますが、どの程度の準備をもって実施の準備とされるのかという指摘でございます。
こういうご指摘があるわけでございますけれども、他方、それらについては、これまでの判例、通説等においても、その内容がかなり明らかになっているというように理解しております。
以下、ご参考に紹介するわけでございますけれども、例えば、1点目の実施形式の変更につきましては、先ほどご紹介いたしました昭和61年の最高裁でのウォーキングビーム判決がございまして、先使用権者が現に実施または準備をしていた実施形式だけではなく、これに具現された発明と同一性を失わない範囲内において変更した実施形式にも先使用権が及ぶということでございまして、それ以降の下級審判決においても、この考え方が採用されております。
2点目の「先使用権の援用の範囲について」でございますが、これは3ページのところの昭和44年の最高裁での地球儀型ラジオ意匠事件の判決の抜粋にありますように、先使用権者は、当然、自らその発明を実施し得るわけですけれども、第三者にその実施の事業をなさしめることも許容されるということでございまして、先使用権者の注文に基づき、もっぱら先使用権者のためにのみ「機関的な関係において」製造等を行う場合、すなわち、先使用権者の手足となっての実施というのは、先使用権の範囲に属するというように解されているわけでございます。
それから3点目の「特許出願の際現に」という点でございますけれども、これは、実施の事業または準備を特許出願の前から継続して行われているということを意図するものと考えられますが、ただ、事業の継続する意志、能力はあるけれども、何らかの事情で一時的に事業を中止している場合は問題ないというのが通説と考えられております。
実際の判決を見ましても、特許出願の前に実施またはその準備をしていて、特許出願の後にも実施またはその準備をしていることが明らかである場合に、その間にある「特許出願の際現に」やっているというように認められている状況にあると考えます。
それから、最後に実施の準備についてでございますが、これも先ほどご紹介いたしました昭和61年の最高裁判決でございますウォーキングビーム事件におきまして、事業の準備とは、即時実施の意図を有しており、かつその意図が客観的に認識される程度に表明されている旨、判示されているわけでございます。
この「即時実施の意図」という文言をそのままとりますと、かなり厳しいようにも感じられるわけですが、その後の実際の裁判例の傾向を一般化いたしますと、少なくとも試作品が完成しているとか、当該発明の実施に向けて特有の投資がなされている場合には、実施の準備があるというように認められております。
ただ、発明の完成していることが1つの要件になっていると思われますので、完成に向けた試行錯誤的な段階では準備には至っていないということが通説ではないかと考えます。
以上、このように79条の解釈に関しては、不明確との指摘がございますけれども、このように、最高裁判決とか、それ以降の下級審判決もございまして、要は各企業の個別具体的事例に適用した場合に、どのような判断になるのかという問題と整理されると考えます。
そこで、こういう最高裁判決等をもとに、条文を明確化するための法改正という手法も考えられるわけでございますが、最高裁判決と申しましても、個別の事例ということでございまして、その判断を一般化させるというのは、特許権者と先使用権者のバランスが変更されるおそれがあるという問題もあるわけでございまして、法改正をやるとすると、かなり慎重に行う必要があるというように考える次第です。
したがいまして、ここでとるべき手法としては、各企業が個別具体的事例において、先使用権が行使できる範囲等が容易に判断できますように、法曹界、産業界の方々の参画も得まして、ガイドライン(事例集)を整備していって、その明確化を図るというのがいいのではないかというふうに考えるわけでございます。
続きまして、2つ目の問題点のご指摘である、立証が困難という点でございますが、これは、どのような証拠をどのような程度に残せばいいのかが不明確であり、立証が困難で、その負担の問題があるというご指摘と理解しております。現状を見ますと、先使用権の確保のためには、予め先使用の証拠を積極的に残しておられて、特に簡易である公証人の方による確定日付を用いておられる方が多いというように思われます。確定日付と申しますのは、例えば、設計図とか、そういうものを封筒の中に入れて、密封をし、公証人の方にタイムスタンプを押していただくことで、その日付の日に、そういう資料があったということが証明される、ただ、その資料の内容が正しいかどうかまでの証明力はないというものでございます。
他方、公証人の方による事実実験公正証書というものもございます。これは実際に公証人の方が工場等に出向かれて、自分が感じた、知得したものを公正証書として書いていくというものでございますので、立証手段としては、より有効というように言われているわけでございますが、企業サイドの方のご意見としては、公証人の方に技術面の理解を得る負担とかが大きいという声もあるわけでございます。
あと、今回、アンケート、ヒアリング等を行った結果といたしましては、立証の困難性、負担をご指摘される方の中には、公証制度の利用等、既存の立証手法の活用の仕方について、十分な知識を有されない方も多かったというふうに感じております。
先ほどのアンケートの続きのところをご覧になっていただきますと、7ページの下の部分でございますが、先使用の立証に当たって第三者機関を利用したことがあるかどうかというところで、「ある」と答えられた企業の方が104社、「いいえ」という企業の方が58社ということで、2倍程度、「はい」という方が多いわけでございますが、どのような機関かというところで、圧倒的に多いのが公証人の方ということになっております。そして、次のページを見ていただきますと、公証制度の利用方法としては、先ほど紹介いたしました確定日付の付与というのが圧倒的に多いという状況でございます。それに対しまして、立証に有効と言われております事実実験公正証書を使われている企業の方というのは、公証制度を利用している企業の内の2割程度と少ないという状況でして、それは、負担の問題とか、あるいはこういう制度自体を知らなかったという理由から、こういう割合になっているというように思われます。
本文に戻っていただきまして、4ページのところでございますけれども、今回いろんな企業の方にお話を伺っている中でわかってまいったわけですが、一部の企業の方の中には、既に、例えば公証制度の活用におきまして、技術に詳しい弁護士さん、弁理士さんの協力を得ながらやっているとか、あと社内の技術者の方が、実施とか、実施の準備等の状況を定期的に映像に残して確定日付を得るといったような手法をとることで、保管スペースの問題とかも解消されているという企業さんも実際におられるということでございます。
そういう状況に鑑みますと、ここで立証の問題、困難性というところで指摘されている問題というのは、種々の立証手法が十分に知られていないということに起因することが大きいのではないかというように考えられるわけでございます。
したがいまして、判例、学説、企業における立証手法の実例等も参考にしながら、先ほど申しましたガイドライン(事例集)におきまして、立証手法を例示することによって、どのような証拠をどの程度、どのように残せばいいのかということを明確化するということで、制度の利用の円滑化が図れるのではないかというふうに考えるところでございます。
それから、次のページに移っていただきまして、3点目の問題のご指摘として、「制度調和」がございます。一部の国、例えば中国でございますけれども、先使用権制度はあるわけでございますが、例えば、製造規模の拡大が認められないとか、実施形式の変更が認められないというような状況にあるようでございます。企業の皆様からいたしますと、経済のグローバル化というところで各国に工場等を進出させるという状況にあるわけでございますので、先使用権制度が異なるというのは、安定した活動を阻害するという面からの問題のご指摘でございます。この点につきましては、当然、他国において、先使用権を有効に活用できるようにすることは非常に重要でありますので、種々のチャンネルを通じ、制度調和の観点から働きかけを行っていくことが必要と考えます。
なお、参考までに米国は先発明主義の国でありまして、そもそも先使用権という考え方がなかったわけでございますが、2000年の法改正におきまして、ビジネス方法の特許についてのみ先使用権制度を導入したという状況になっております。そして現在、先発明主義から先願主義に移行する法案が提出されておりまして、その中であわせて先使用権を全分野に拡大し、実施、または実施の準備を要件とする内容で、まさに日本の制度と同様の制度の導入を検討しているというところも、ここでご紹介をさせていただきたいと思います。
それから最後になりますが、「その他」のところでございます。ノウハウ秘匿の容易化等の観点から、先使用権の要件から「事業の実施、事業の準備」を外して、フランスと同様に発明の所有をもって法定の通常実施権を認めてはどうかという意見がございます。しかしながら、こういう制度を採用しますと、特許権の効力に大きな例外を設けることになりますし、特許権者と先使用権者のバランスを大きく変えるということになりますので、ユーザーサイドにも強い反対意見がございます。これも知財研がとったアンケートの結果でございますけれども、8ページのところを見ていただきますと、今回、積極的にコメントをいただいている中で、圧倒的に多かったのは、現行制度のもとで、すなわち特許権者と先使用権者のバランスを変えないという前提のもとで、制度の明確化を図ってほしいというコメントでして、基準緩和への反対のコメントも出されていまして、ユーザーの方々にもフランス的制度の導入というのは反対の声が強いというように判断いたします。
そもそもフランスの制度でございますが、1849年、フランスの最高裁の判決がございまして、どういう者に通常実施権を与えるかというところで「発明の所有」をもって、それを認めるという線引きをしたという経緯から、そのようになっているというように理解しております。
ただ、フランスは他の先進諸国と違いまして、発明がされたということでもって、それなりの権利を認める、いわゆる自然権説的な考え方をとっているというように解されておりますので、どちらかといえば、著作権的な取り扱いと申しますか、そういう取り扱いの国ということで、世界的に見ても、それ以外にはベルギーのみということになっております。他方、フランス法を母体といたしますスペインとか、ボルトガルとか、その他の国々においても先使用権制度がございまして、実施、または実施の準備を、その要件としているということから見ても、フランスの制度というのは世界的に特異な制度だということで、そういう制度の導入というのは、国際的な制度調和にも反するというように判断いたしますので、先使用権の要件から「事業実施、事業準備」を外すことは適切ではないという考え方になると思われます。
事務局からのご説明は以上ということでございます。

委員長

どうもありがとうございました。それでは以上の説明を踏まえまして、議論に移りたいと思いますが、その前に相澤委員が本日欠席されておりますけれども、先使用権在り方についてご意見をいただいておりますので、参考資料の1として配布しております。
それでは先使用権制度についてご自由にご意見をお願いいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。

委員

産業界からの意見ですけれども、基本的にはここの対応の方向性のとおり、法改正によるのではなく、ガイドラインの作成に留める形でいいんじゃないかというふうに考えています。特許制度は皆さんご承知のように、技術情報を公開する代償として、特許権を付与するということが根幹であって、先使用権はあくまでも、それに対応する例外的な救済措置として位置づけられていますので、今回の先使用権の話は、ノウハウの秘匿を積極的に推進するような形での先使用権制度にするのは、基本的にはちょっと適切じゃないんじゃないかなと。そこまで考えると法改正は必要ないでしょうと。
ただ、逆に立ったときでも、先ほど2ページの2のところにあるように、企業活動の実態に合わせて、どこまでなら先使用権の存在が認められるかというのが各企業さんちょっと迷っているところもあるでしょうから、先使用権の使いやすさを目安となるようなガイドラインをつくるような形で進めていただければなと思います。我々のところでも企業の業種、あるいは業態に全体的に特徴的に先使用権制度のノウハウを秘匿なんかに活用すべしとのまとまった積極的なニーズがあるのかなという話もしたんですけれども、特にそういう意味でのまとまりではないということです。
それから、あと先使用権のこの扱いを日本だけ突出してやっても制度調和という観点からも、直接は結びつかなくて、むしろ、さっき話に出た一部の国なんかの話として、先使用権制度云々よりももっと先に世界公知みたいなものを、そういうときに入れてもらって、日本の企業が動きやすいようにとか、もっと別の観点のウェートの高いものがあるんじゃないかなという意見もありましたので、最初に述べましたように、基本的に原案の対応の方向でガイドラインという形で収めるという形がいいんじゃないかなということです。

委員長

ありがとうございました。委員どうぞ。

委員

私も結論から申し上げますと、事務局からご説明いただいた原案に賛成です。
基本的に先使用制度をどう考えるべきかについては、委員が提出されたペーパーにも書かれているとおりでありますし、先使用権の裁判上の実務におきましては、先ほどご説明いただきました最高裁の昭和61年10月3日の判決を指導的判決として、それ以外にも幾つかの最高裁判決と、それを具体的に更に事案について適用した下級審判例がありまして、その点については、判例上の運用で極めて問題という点はないだろうと思っています。
判例の考え方、特に今言った最高裁判決に沿って、条文を具体化されるということも可能性はあろうかと思いますけれども、そうすることが具体的な事案の適用に必ずすべて適切かどうかという点も問題がありますし、判例をそのまま法律の条文にする必要性も現段階ではないと考えられますので、あとは運用で適切に解決していけば、できることではないかと思います。
ただ、企業のアンケートにも出ています、特に7ページの一番上の段を見ますと、いわゆる立証の確保のために、現在の制度ではどう対応することが一番適切かということがなかなかわかりにくい、それに対応しにくいという実態があるようですけれども、これは制度的に公証制度がございまして、公証制度については、前に知財研のライセンス契約の保護の関係をめぐりまして、私も少し具体的に調べてみたことがありますし、その内容については、知財協から出ている本にも書かれておりますけれども、その利用の仕方等について、十分なご理解をいただいてない。あるいはそういう機会が今までに得られなかったということが、このアンケート結果に出ているところに示されていると思いますので、それに対応するには、何が一番いいかというと、ガイドラインを作成して十分に周知徹底することがよろしいかと思います。
この点については、多分、公証人協会等も積極的に協力していただけると思いますし、ガイドラインを通じて、この制度を使いやすい方向に持っていくということで、この問題に対応するのが、委員も今おっしゃられましたけれども、世界的制度の観点から見ても、最もよろしいのではないかと思い原案に賛成する次第です。

委員長

ありがとうございました。委員どうぞ。

委員

私も今まで出されたご意見に基本的に全く賛成でありまして、そういう意味では、余りつけ加える点もありませんが、もともとこの先使用権制度というものは、要するに、発明に関して、特許出願を通じて保護を図っていくというルートと、ノウハウとして秘匿していくルートとの2つをどう調和させていくかという点を中心に微妙な利益のバランスを図りながら、現行法のようにできているわけでありまして、ノウハウの保護をより強調していくということは、ある意味では特許出願を通じての保護をその限りでは堀り崩すという面もございますので、その点では、先使用権の問題だけにとどまらない、特許制度全体の根幹にもかかわるような非常に理論的ないし哲学的な面もありますし、実務的にも非常に大きなインパクトがあるところかと思います。
このような意味でも、先ほど出ておりましたような利便性その他の観点からのガイドライン等での手当というのは、大いに支持し得るところだと思います。先ほど委員もおっしゃったとおりですが、条文の枠組というか、制度の枠組自体を大きく現行のものから変更するということはもちろん、明確化のために条文で規定するということも実際にやってみると大変難しいことであると思われます。判例法というのは基本的には各事例ごとに積み上がっているものでありますので、それを包括して完全に条文として明確化して書き切るというのは非常に大変な作業であり、それをするとまた、ほかで色々と不具合が起きるということにもなりかねませんし、そのような作業を行ったからといって、実際にわかりやすく、具体的な個別の事件への適用として現行法が明確化されるといえるのかという点では疑問な面もございます。さらには、我が国の法制を現行法制から余りに変更して、特殊な制度として、世界の法制の中で浮き上がらせてしまう可能性の点では、国際的な制度調和の観点からも好ましくないものと思います。したがいまして、現行法の枠組及び条文としては、このままにした上で、今後も判例、学説の進展を通じて、明確化されることを期待しつつ、ユーザーにとってわかりにくいといった点、ないしは必ずしも知られていないという点は、ガイドラインその他でまかなっていくということが、とるべき途だと考える次第であります。
以上です。

委員長

ありがとうございました。委員どうぞ。

委員

大学の知的財産本部、TLOの観点からも、皆さんと同じように制度の明確化をガイドライン等ではっきりさせていくべきで、範囲を広くするべきではないと思います。
大学の知的財産本部においては、特許の整備はここ数年でやっとよちよち歩きですが、活発化してきています。戦略ありきでいきましょう、とにかく、きちんと大学で戦略を立てて、出願していきましょうという話になっている時です。先使用権の範囲を広くして、もっと違う方法もあるのねという形がどんどん広まっていくことは、企業の方に使っていただきやすいような戦略を立てましょうという形になってきていることに、逆行するのではないかと思います。
私が昔、企業におりましたときにお付き合いのありました、塗料メーカーとか、メッキメーカーなどは、どちらかというと特許を出して権利を保護するだけではなく、、ノウハウで公開しない部分も持っている業界でした。このような業種においては、ガイドライン等できちんと保護をしていくことで、他の業種が突然、例えば大学が突然出してきたときに、今までと違って困らないように形になっていれば、特に広げるべきではないと思っています。

委員長

ありがとうございました。委員どうぞ。

委員

私もこれについては賛成だということで、要は特許権者、先使用権者とのバランス、あるいは制度調和ですね。この辺を考えた上で1つの解決策として、ガイドラインということで整備されていくという結論については、非常にいいことなんではないかなと思います。特に企業側は、この4ページにも書かれている、あるいはデータにもありますように、確定日付を用いる人が非常に多い。より有効だとされている事実実験公正証書、この活用が必ずしも十分ではないと。多分、企業側としては、そういう存在自体をなかなかわからないケースがあるのかなと思いますので、ぜひ、この辺可能であれば、ガイドラインに、そのことを記載の上、より多くの企業に周知されるよう、庁側としてもご協力いただければなと。これをちょっとお願いしたいなと思っております。
以上です。

委員長

委員どうぞ。

委員

日本弁理士会は皆さんと同じように、フランスのそのソロ-封筒制度をモデルとした先使用権制度については反対いたします。反対理由には皆さん言われた点については省略させていただきますけれども、この制度を導入するのに、もう1点あるんじゃないかと思います。
昨日のNHKテレビでもやっていましたけれども、わが国の技術流出制度、これを防ぐために、例えば、金型なんか代表的なものだと思うんですけれども、この制度を設けるできであるという意見があると思うんですけれども、私はこれについても、公証制度の運用の改善とか、先ほどまで出ていましたけれども、別な制度を施策でやるべきじゃないかと考えています。
あともう1点、ご存じだと思うんですけれども、技術流出というのは人が一番大きな要素ですから、日本の中高年に対する人事制度から、部品などの調達政策というか、施策というか、企業の特に大手さんの、その点の改善というのは考えなきゃいけないかなとは思いますけれども、この場で特許制度としてどうのこうのというのはないんじゃないかと思います。
以上です。

委員長

ありがとうございました。委員どうぞ。

委員

基本的には結構なんですけれども、条文もそうですけれども、最高裁の61年のケースもそうですが、実施形式とか発明という言葉が、いろいろなところに出てくるんですが、よっぽどの専門家でないといまいち理解出来ない、しにくいところがあると思います。やはり、立証した実施形式と、侵害と言われた実施形式の間のギャップですね。これはどの程度許されるかというのが明確にしてある必要性があると思うんです。ここがケース・バイ・ケースでいろいろ変わりますというガイドラインですと、予見性が無くなってしまいます。自分がやっている発明をノウハウとして長年使う訳ですが、長年使う中には、やはり条件の多少の変更は生ずる訳です。その変更の程度はどこまで許されるかというのは、ある程度予見可能であるようなガイドラインをつくっていただきたいと思うんです。
それからもう一つは、公証制度による立証の負荷なんですが、これはお金を持っている大企業は力で何とかやるんじゃないかと思うんですけれども、中小企業とか、ベンチャー企業、そういうところが実際に先使用権を使いたいというような話があった場合に、余りに金額的にも、量的にも負荷が多いと相当大変になるんじゃないかなと思います。その辺のところも立証の程度の軽減ということでガイドラインできちっと決めておいていただいた方がいいのかなという気がいたします。
それから、3点目は援用のところなんですけれども、特許法からいうとなかなか難しいということがあると思いますが、企業活動からいいますと、子会社にそれぞれやらせるということがございます。この場合に、必ずしも子会社が親会社に全部納めるというような話ではないわけでして、子会社も子会社として企業活動の範囲の中で自主独立的にやるということも企業活動の中では考えられるし、実際にそういうことをやらなくては発展がない。そこへの配慮は何かないのかなと思います。今ですと1機関というか、完全下請けでないと許されないようなことになっているんですけれども、そこはもう少し緩和していただけることも考えられないなのかなというふうに思っています。
以上です。

委員長

ありがとうございました。委員どうぞ。

委員

皆さんのご意見と同じように、先使用権の拡大には反対ですし、ガイドラインで対処すべきだと思います。皆さんがたからは特に話が出なかったんですが、医薬バイオ産業というのは、発明ができてから、医薬として許認可を受けるまで全然違う過程を通ります。恐らく、出願して特許になってから、十四、五年経って500億円ぐらいの金を使って初めて医薬品になる。そのときになって、先ほどから議論されているような先使用権があるよなんて言われたら、これはもうたまったもんじゃないということで、まず拡大には絶対に反対です。ただし、ガイドラインをつくるときに、ここに書いてあるように各産業の意見、これを十分聞いた上で、それに適したような、できれば木目の細かいガイドラインをつくってほしいというふうに思います。

委員長

どうもありがとうございました。ほかに。

部会長

私が言っていいかどうかわかりませんけれども、先使用権の問題というのは、問題の出方が極めて唐突でして、従来、学会で議論されたとか、実務界で非常に問題があるということで、これが問題になったわけではなくて、知的財産戦略本部のある会の専門調査会で突如これが出てきました。それが計画2005に入ってきて、それでこういう議論になったという次第でして、内在的な問題ではないような気がいたします。その意味で大方の委員のご意見がほぼ収束したということは非常に結構なことだと思っております。
それはそれとして、もう一つガイドライン、あるいは事例集に対する要求というのは非常に強いわけです。これはこの問題に限らず、各官庁のいろんな法律につき、ガイドラインをつくってくれという要求が出てくるわけです。特許庁の審査基準、あれもガイドラインですけれども、あれは特許庁が自らこうしますよということを述べているので、これは作るのが当然なんですけれども、先使用権の問題は裁判所が決める問題を特許庁がガイドラインでつくるということに、どれほど意味があるかという疑問があります。しかしはいっても要望が強いからつくった方がいいとは思うんですけれども、つくり方をよほど注意しませんと、書いたけれども、裁判所が違うことを言っているという、この場合は問題にならないと思いますけれども、極めて責任は大きいということになります。
そうなりますと、極めて安全なことしか書かないというガイドラインができ上がる可能性もあるわけです。したがって、リスクをとる、ビジネスはリスクをとらなきゃいけないことはいっぱいあるわけですけれども、リスクということを考えないガイドラインになってしまう。
あとガイドラインと同じ事例集ですけれども、先ほどの一番有名なウォーキングビーム事件というのは、あれは大型プラントの事件です。鉄鋼の圧延か何かのものすごい大きなプラントに応札をしたけれども外れちゃったという、それだけでも先使用権ありますかという極めて大きな事件。だけど、それ以外の判決を見てみますと、ブロックだとか、綿あめ製造機だとか、脱穀機だとか余り大した事件じゃないのが多い。そういうのを見ていますと、かなりの程度、もう実施に近いぐらいの準備をしていなければ実施じゃありませんよという判決が多いわけですね。恐らく、分野によっても電気の分野、科学の分野、あるいは機械の分野、恐らくいろんな違いがある。規模も違いがある。それを今、数少ない事例集でこうですよとやってしまうことは、極めて危険も大きいわけです。
したがって、そういう点を考えて事例集をつくってほしい。ただ、先ほど言いましたように、公証人はこういうふうに利用できますよとか、弁理士はこう利用できますよとか、確定日付は郵便でもいいですよとか、いろんなことがあり得ます。そういう事例なら、これはもちろん大いに結構ですけれども、判例を整理するときも、かなり注意をして整理をしたガイドラインというのをつくってもらいたいなという、それが私の希望でございます。

委員長

それでは一通りご意見を伺いまして、皆様のご意見としては、法律の改正までをすべき問題ではなくて、ガイドラインで対応すべきであるということであったと思いますので、ガイドラインの作成に当たっては、様々な注意すべき点を委員の皆様からご指摘いたしましたので、そういった点を考慮したような形でガイドラインをつくっていただくということで、法律の改正は必ずしも適切でないということで、この小委員会の意見というふうにしたいと思います。そういう方向で最終的に報告書をまとめていただくということにいたしたいと思いますが、それでよろしゅうございましょうか。
(「異議なし」の声あり)

委員長

それでは、そういうふうにさせていただきます。
もう一つ、2番目のテーマに移らさせていただきますが、「特許制度の利便性向上について」ということであります。事務局よりご説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

事務局

「特許制度の利便性向上について」ということで、具体的には4つの独立したテーマについてご説明したいと思います。
最初の3つは推進計画2005の関係のテーマになっております。資料の方、9ページになりますが、まず、一つ目「外国語書面出願の翻訳文提出期間」についてご説明します。こちらは外国語書面出願制度、すなわち、日本に対して外国語、具体的には英語でも出願することができる制度に関するものです。多くの場合、外国で第1国出願し、それから優先権を主張して日本に第2国出願をするという場合に利用されると思いますが、中には我が国に直接英語で第1国出願をしてくるというケースもございます。このようなケースでは、外国語の出願をしまして、その出願の日から2か月のうちに日本語の翻訳文を出す必要があります。これは、特許法の36条の2で規定されておりまして、翻訳文を提出しなければいけないとなっています。第1国出願を外国で行い、第2国出願を日本に出す場合につきましては、この翻訳文の提出期間を含めますと、1年2月の間で翻訳文をつくればいいということになりますが、第1国出願を直接日本にした場合、翻訳期間というのは2か月になります。そういう状況がございますので、ベンチャー企業等にとっては負担が大きいのではないかというような指摘が推進計画でもされているという背景がございます。
この制度の利用状況でございますが、10ページの方をご覧いただきたいと思います。10ページの真ん中あたりの②で「利用状況」というのがございまして、例えば、平成16年を見ていただきますと、全体の利用件数は約3,500件、そのうち内国人が211件というような内訳になっております。
その内国人の利用状況というのを少し細かく見てみますと、まず、海外の研究施設で外国人の発明者が我が国に第2国出願するようなケースもありますし、あるいは日本人の発明者が英語で論文を書いて、それをもとに外国語の書面で出願してくるというようなケースが存在していると考えられます。
それで11ページの方を見ていただきたいのですが、欧米ではどうなっているかといいますと、まずアメリカでは、日本語を含む外国語による出願が可能です。その翻訳文の提出期間につきましては、2月であり、さらに5か月の延長可能ということで翻訳期間が設けられています。
それから欧州特許庁では、締約国以外の国の言語では出願は受け付けられていないという状況にございます。
それで「対応の方向」でございますが、11ページの図面を見ながらご説明したいと思います。最初に上の図面のように我が国に第2国出願を行う場合は、例えば米国に第1国出願して、それから1年でパリ条約の優先権で日本に入ってくるとしますと、2か月の翻訳文提出期間が得られます。この場合は、優先期間と翻訳文提出期間を合わせてトータル1年2か月のうちに翻訳文ができていればいいという状況にあります。
ここで注意していただきたいのは、公開制度により1年6月で出願が公開されるわけですが、公開の準備としまして、例えば、分類付与をする、あるいは公報の発行準備をするといった準備が必要なために、4か月ほどの期間が設けられているという点でございます。
今度は下の図になりますが、我が国に第1国出願を行うケース、この場合は日本に出願しまして、2か月の翻訳文提出期間があるという状況で、上の場合と比べますと、期間的には短くなっています。
これにつきまして、どう対応するかというところでございますが、12ページの方になります。先ほど申しましたように、公開という作業を考えますと、1年2月までに公開のための書類はそろっていなければいけないため、例えば、外国語書面出願の翻訳文提出期間を延長する場合、1つの考え方としては、出願日からではなくて優先日から1年2か月以内とする案があります。具体的には、日本に第1国出願をした場合には出願日から1年2か月、パリ優先権を伴って日本に出願した場合には優先日から1年2か月を翻訳文提出期間とすることが考えられます。ただ、具体的に提出期間を設定するに当たりましては、ほかの法定期間とのバランスを考慮して検討してはいかがというふうに考えております。
以上が翻訳文提出の提出期間についてのご説明でございます。
次に、2点目、13ページになりますが、「カラー図面等の取扱い」についてご説明します。検討の背景といたしまして、ライフサイエンス分野、例えば遺伝子の分野になりますが、遺伝子を分析あるいは解析しようとしたときに、遺伝子の一つ一つに発色をさせながら解析をしていくということが行われていまして、実際に遺伝子発現に関する効果がカラー図面を用いると非常にわかりやすいということがございます。そういったニーズも踏まえまして、推進計画ではこのテーマが上がっております。
「現行制度」でございますが、現在、願書に添付する図面は黒色で書き、着色してはならないということが施行規則で決まっております。
例外としまして、例えば、顕微鏡写真のようなもの、これは非常に微細でございますので、そういった場合には白黒写真でも可能となっております。ただし、カラー写真につきましては、審査の参考資料として提出できるに過ぎないとなっています。あと意匠出願、商標出願ではカラー図面は可能となっております。
欧米の制度、あるいはPCTについてみますと、アメリカでは、カラー図面は例外的に提出できるとなっています。このときには、なぜカラー図面が要るのかという理由が必要になりますし、電子出願では提出できません。また、公報にはカラー図面が出ないというような制約もあるということです。それから欧州特許庁とPCTでは、いずれもカラー図面は認められておりません。
「対応の方向」でございますが、まずは具体的なニーズというのを調査したいと考えています。それに応じまして、審査実務であるとか、コンピュータのシステムといった観点、あるいは国際調和の観点といったところから検討を進めていきたいというふうに考えております。
具体的には、14ページにありますが、カラー図面のニーズが高い分野でどの程度の画質のもの、解像度が必要かによって、システムの設計が変わってくるわけです。それから、実際カラー図面の公報化の必要性があるのかといったようなニーズも十分に調査する必要があります。
他に考慮すべき事項として、例えば、国際調和の観点があります。欧米では一般的にはカラー図面は受けられていないということですので、例えば、公報のデータを電子的に交換するというような場合に、日本から送っても他庁で利用できないということにならないように検討する必要があると思います。
それから「実体審査実務への影響」につきましては、例えば、検索システムでスクリーニングし、公報を電子的に見ていくときに、スピードが遅くなるということも考えないといけないというふうに考えております。
2点目は以上でございます。
次に3点目としまして、15 ページの方になりますが、「拒絶理由の応答期間」についてご説明します。こちらも「推進計画2005」で拒絶理由通知の応答期間の延長について検討するようにという課題が挙がっております。
それで「現行制度」をご説明させていただきます。まず、拒絶理由通知の応答期間についての根拠でございますが、これは特許法50条に基づき、審査官により指定される指定期間となっておりまして、この指定期間というのは、請求または職権で延長可能ということになっております。
実際、指定期間、具体的に何日にするかというところは、例えば、『方式審査便覧』等で運用上は決まっています。
その指定期間の実際の期間ですが、国内の居住者に対しては60日となっており、拒絶理由を通知してから意見書、補正書を出す期間として60日が指定されております。在外者については、3か月という指定期間が設けられています。例外的に小笠原諸島のような地域に対しては、この指定期間が60日ではなくて75日となりますし、在外者の場合でも翻訳の不備程度のものであれば、3か月の指定期間ではなくて、60日という場合も例外的にはあります。
以上が、指定期間の設定についてですが、今度は、指定期間を延長するという点について見てみます。まず、1つの延長のやり方としては、国内、在外者いずれについても、例えば、拒絶理由の引用文献を通知し、その謄本が必要だということになりますと、23日延長をしております。
もう一つ、在外者については、出願人から請求があった場合に、手数料を納付していただいて、指定期間を3か月延長しております。要するに、3か月の指定期間プラス延長の3か月という形で運用が行われております。
海外の状況全体を見ますと、16ページの上の表にありますように、日本は今申し上げました国内に対しては60日、在外者に対しては3か月という拒絶理由通知に対する応答期間が設けられておりまして、延長につきましては、在外者の3か月ということになっております。
これに対しましては、アメリカは応答期間として3か月が設けられており、更に延長として3か月、最大6か月までとなっています。延長には、1か月ごとに累加額を払う必要があるという制度になっております。
それからヨーロッパ、EPCですが、こちらは応答期間として4か月ございまして、延長が2か月となっています。これも1か月ごとに累加額がかかるという制度になってございます。
あと韓国、中国、それぞれそこに記載されているとおりでございます。
それで「問題の所在」でございますが、2つ挙げておりまして、1つは在外者と国内居住者の応答期間の相違という点でございます。先ほど申し上げましたように、国内の居住者には60日という指定期間のみで延長は実質認めていないため、在外者と国内居住者の差が大きい。最近、通信手段であるとか、翻訳がコンピュータ化されているという状況では、逆差別ではないかというような指摘もあるということです。
もう一つの問題としては、応答に実験等が必要なため、応答時間が長く必要だという場合の取り扱いになります。例えば、ライフサイエンス分野については、拒絶理由に対して、実験データの提出が必要になる場合があるわけですが、一般的に、実験データを得るためにはこの60日の応答期間では不十分だというような指摘がございます。
そういった問題がございますが、対応を考える前に1つ前提として考えておかなければいけないのが、この特許審査を取り巻く状況というところになります。
ご承知のとおり、特許庁としては推進計画の中長期計画、あるいは世界最速の審査順番待ち期間というのを目指し、迅速化を進めている状況にございます。17ページになりますが、実際に審査の状況を見てみますと、一次審査期間の待ち期間が平均26か月であり、最終審査期間までは平均32か月となっています。すなわち、拒絶理由を通知して、それから最終処分までは6か月ということになります。この6か月の間に拒絶理由の応答を待って審査をしますので、現実的には4か月ぐらいで審査官は最終審査を行っています。要するに、出願人からの応答が戻ってきて、まだ記憶が新しいうちに審査をやっているという現状がございます。
そういった状況も踏まえまして、「検討の方向性」のところでございますが、今、審査の迅速化というのを取り組んでいるところでございますので、そういった迅速化に逆行するという制度は慎重に検討する必要があります。具体的には、拒絶理由の応答期間を一律に延長することは、現時点では妥当ではないと考えられます。
とはいいましても、先ほどの実験データにつきましては、実験データの取得に時間がかかるということで、応答期間の延長のニーズはございますし、きちんとしたデータが出れば、当然、迅速、的確な審査にも資すると言えます。
そういった状況を踏まえまして、延長期間につきましては、まず、国内の居住者に対しては1月の延長を認めてはどうか。それから、先ほどの逆差別を解消するということもございますが、在外者については、1回の請求で1か月程度延長し、最大で3か月程度まで延長できる運用としてはどうかということです。
ただ、行政の効率であるとか、濫用防止とか、そういった観点も必要になりますので、何らかの合理的な理由、例えば、実験データに時間がかかるというような理由がある出願について延長を許可していくという形で考えているところでございます。
国内の人に対しては、1か月の延長を認めることとしますので、先ほど拒絶理由の引用文献の謄本を請求した場合に23日延長するという運用は廃止してはどうかということを考えております。
これが方向性ではございますが、「当面の運用」ということが少し記載してございまして、延長するにしましても、コンピュータのシステム対応が必要になりますので、運用を円滑にしていくというために、そのシステム開発が完了した後で、実際に「対応の方向性」にあるような運用をしたらどうかというふうに考えております。それまではといいますと、出願人と審査官の意思疎通を図りつつ、合理的な理由などを考えながら柔軟に対応していく、具体的には、上申書とかで書類を提出できるようにするとしてはどうかと考えております。
3点目は以上でございます。最後の4点目、18ページになります。新規性喪失の例外規定の証明手続についてご説明します。最近、大学の研究機関で研究成果が特許として適切に保護される、あるいは活用されるための環境整備が求められているわけです。そもそも特許出願というのは、最初にしなければいけないものですが、現実には学会発表であるとか、あるいは論文で発表といったところが優先されるというのが現実ではないかと思われます。そういった場合に、大学等につきましては、新規性喪失の例外規定、特許法30条になりますが、これが重要な規定になっています。
「現行制度」でございますが、新規性喪失の例外規定というのは、刊行物へ発表したとか、あるいは試験を行ったとかといったように、自分で自分の発明を発表してしまい、それから特許出願をした場合であっても、自分の発表によって発明の新規性は失われないという規定になっているわけです。ただ、これはあくまでも先願主義のもとでの例外ということになりますので、所定の要件が定められております。
そこの要件というのが、18ページの下の方に(a)、(b)、(c)として書いてございます。(a)として、自らの発明を公開したときから6月以内に出願をする。(b)として、特許出願時に新規性喪失の例外の規定の適用を受けようとする旨の主張を行う。(c)として、出願の日から30日以内にこの30条の規定する発明であることを証明する書面というのを提出する。今回、このテーマで議論になるところは、出願の日から30日という所定の期間内に証明する書面を提出しなければいけない点です。
実際の「利用状況」が、その下の表に書いてございます。2004年を例にとってみますと、申請件数全体が約2,700件、そのうちに大学は600件ぐらいあるわけです。大学の方の統計値を見ていただきますと、最近、確かに申請件数が増えている状況が見られると思います。
19ページの方にまいりますが、問題の所在としまして、新規性喪失の例外に関する証明書を特許出願の日から30日以内に提出できなかったという案件も、数は少ないのですが見られますので、証明書の提出期限を延長すべきではないかという指摘がございます。そういう期限の話と、もう一つは証明する書面についての指摘があります。例えば、外国語で発表したといったときには、その外国語の文献の翻訳を求めております。それから、そもそも30条の規定は特許を受ける権利を有する者が発表しなければいけないということになっておりますので、例えば、発明者と発表者が一致しないようなときには、何らかの2人の関係を示すような宣誓書というものを求めているのが現状でございまして、それが出願人に過度な負担ではないかという指摘もございます。
「対応の方向性」といたしまして、1つは証明書の提出期限の延長につきまして、現在、30日以内に提出するという期限を延長してはどうかと考えています。この検討にあたっては、ほかの法定期間であるとか、業務フローであるとか、あるいは内容的な要件の簡素化とのバランスを考えつつ、この期限について検討したいと考えています。
もう一つ、(イ)の方の証明書面の内容的要件の緩和につきましては、例えば、先ほど申し上げました外国語で発表したときの翻訳文を不要にするであるとか、あるいは発明者と発表者が一致しない場合の関係を説明する書面を簡素化するというようなことを検討してはどうかと考えております。
私の方から以上でございます。

委員長

どうもありがとうございました。利便性の向上ということで、4点検討課題をご説明いただきましたけれども、順番にご意見をお伺いしたいと思いますが、まず第1点目は、外国語書面出願の翻訳の提出期間ということでありますが、この点についてはいかがでしょうか。

委員

大学の場合、論文をそのまま特許出願するときの資料にすることが見受けられるようですが、本質的には論文を、そのまま特許にしても、クレームの範囲は狭いままです。企業の方に使っていただくときには、先生方の一番良いデータをそのまま出すのではなく、少しでもクレームの範囲を広げる工夫をして特許出願しております。ですから、特許を最初に出すときに、論文そのままではなく一工夫をしなければいけませんので、最初のときにきちんと考察し、その後翻訳を出すという過程を踏んだと考えれば、大学側としては2か月でそれほど不便をしていないのではないのかと個人的には思っております。期間を長くしていただいたとしても、最初に出した論文から、後で翻訳をするときに範囲が広げられるわけではありませんので。ただし、外国とそろえて1年2か月にしていただいても特に不都合はないと思います。

委員長

ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。委員どうぞ。

委員

2か月でよいと思います。

委員長

何か2か月でいいという理由は。

委員

余り長くしていろいろ変化が起きる方が、我々出す側にとってみると不利かなと。延ばしていいことは何もないというふうに感じます。

委員長

ありがとうございました。ほかにございませんか。これは余り特に必要性がないのではないか、あるいは長くする必要はないのではないかというご意見がお二人からあったということでよろしいでしょうか。
2番目のカラー図面についてはいかがでしょうか。委員どうぞ。

委員

ライフサイエンス分野はカラーで提出した方が見やすいですし、パワーポイント等カラーで刷った方が判りやすいのは確かです。ただ現在、大学の特許は昨年度5,000件が国内出願されたにもかかわらず、外国出願はその中でごくわずかです。外国出願をせずに国内だけどんどん特許を出して、1年半経ったら公開されるという状況は、大学の核となる特許が海外にどんどん技術流出していくのではと懸念しています。ですから、審査官の方へ、参考資料としてわかりやすいカラー図面を出すこと、受け取っていただくことはとても重要だと思いますが、公開資料の中にカラーがそのまま出なくもいいのではないかと個人的には思っております。

委員長

どうもありがとうございました。ほかにご意見ありませんか。よろしいですか。委員どうぞ。

委員

当社はよく光学系の特許を出すことが多いんですが、カラーで書くと非常にわかりやすいように思えるんですけれども、最終的には、その光跡が、その色の表現が非常に曖昧になっていて、むしろそれがコピーをとっても右も左もわからなくなるような、すべてカラーでその情報が全部に行き渡るのなら、わかりやすいかもしれませんけれども、特に光跡を交えたような特許に関しましては、非常にわかりづらくなる。そういった危険性がありますので、そういった限られた分野からいきますと、カラーというのは余り好ましくないと考えております。

委員長

ありがとうございました。委員どうぞ。

委員

基本的にはそういう点もあると思いますけれども、やはり時代はカラー化だと思うんです。ワールドワイドに2番目の国際調和の観点の話になりますけれども、ああいうカラー化というのを進めるというか、加速する方向で調和を図っていただく方がいいんじゃないのかと思います。どうも先ほどの翻訳の方もそうなんですが、理由が公開の準備のために特許庁は4か月必要だから、2か月とか、その後実体調査実務で新規事項判断の影響とか、検索システムのスクリーニングがそこで遅れるよという、特許庁の都合での理由が強そうなので、もし、この要求を出したところの人たちに納得性を持たせるには、その辺はちょっと理由が弱いのかなと思います。いずれにしても、カラー化については、カラーの方が見やすい、わかりやすい、理解しやすいということがありますので、時代の趨勢から言ってもカラー化は国際的にハーモナイズするように加速していただきたいと思います。

委員長

ありがとうございました。ほかにございませんか。よろしいですか。これは特に意見を集約することも必要ないと思いますので、3番目の「拒絶理由の応答期間」についてはいかがでしょうか。

委員

これは質問ですけれども、16ページの(3)の②で応答に実験が必要で、応答時間を要する場合の扱いという部分がありますけれども、この11月11日に知財高裁大合議部がパラメーター特許についての判決を出しまして、その中で特許出願後に実験データ等によって、補充して、特許性を認めることはできないという判断を示しています。この判決の射程範囲がどの程度かは検討する必要性があろうかと思いますけれども、この判決の趣旨からすると、出願時に既に実験データがあって、それを提出することは何の問題もないと思います。しかし、それであれば延長する必要性はないわけで、ここで書かれているのは、拒絶理由通知が来たので、急いで実験して、そのデータを提出して、特許性を認めてもらおうということだろうと思いますが、そういうことは審査の段階では全く問題がなしにできることになっているんでしょうか。知財高裁大合議部判決との関係をどうご理解になっているのか、ご説明いただけたらと思います。

委員長

よろしくお願いします。

事務局

パラメーター判決は承知しておりますが、ここではあくまでも今まで周知のレベルの実験を追加して補足説明とするという程度のもので、新しく実施例を加えるとかいうことでは考えておりません。

委員長

よろしいですか。委員どうぞ。

委員

ちょっと補足しますと、実務レベルから言うと、先行技術との対比をさせられる場合に、先行技術の方が効果的に本願との関係ではっきりしないような場合があります。そういう場合に、先行技術自体を実験して、自分の特許性を立証するというようなやり方はよく使われることなので、多分、そちらの方だと思います。自らの実施例に対してのことじゃないと思います。

委員

そうであるならば、そうであるように、限定的にお書きになった方がよろしいと思います。

委員長

ありがとうございます。ほかに。

委員

やはりライフサイエンス分野は実験に時間がかかるというのは確かだと思います。60日では短く、在外者と同じように3か月あったらいいのかなという思いはしております。ただ、一律に延ばして、満期終了まで待ってから審査が行われると、審査の迅速化の観点からいいますと逆行すると思います。待たずに速やかに審査が行えて、分野によっては、申請をしたことによって、延長も可能であるような制度になっていると助かると思います。

委員長

ありがとうございました。委員どうぞ。

委員

この17ページの(5)の「検討の方向性」のところの確認なんですけれども、括弧書きで書いてあるような「指定期間の60日に加え1月の延長を」したらどうかというのが考え方の基本だと思ってよろしいんですかね。方向性のところがちょっと……。

事務局

委員のとおり、指定期間60日に加えて、プラス1か月の延長ができるようにするものです。このプラス1か月を延長するときには、手数料を納入していただいてくことになります。同じシステムが在外者適用されて、1か月ごとに手数料を払いつつ延長するということを考えております。

委員

多分、そうなったときに、その下の「その際、行政効率の観点、濫用防止の観点から……、合理的な理由が存在する出願に限定して延長を許容する」という、こういうケースだったらいいよというのは、どこかに示されるというふうに理解しておいた方がよろしいんですか。ちょっとそこら辺のところが……。

事務局

例えば、合理的な理由というのは、実験データとかというのがあるとは思いますが、具体的にどういう形で合理的な理由を設定するかは検討していきたいと思っています。

委員

現状でもたしか上申書の対応で実験データとか、いろいろあれば、対応していただけるようになっていたと思うんですけれども、それとの差というのは、どういうことになんでしょうか。

事務局

現実に国内の出願人の方には60日の指定期間があるだけで、延長が実際は認められないため、そこを認める形をとっておかなければまずいだろうということで、制度として受けられるようにすることを考えております。

委員

現場の担当から言えば、こういう拒絶理由の対応というのは、長ければ長いほど精神的に安定しているのかもしれませんけれども、とは言いながら、現状2か月というのは、ある意味では現場から言えば余裕のある期間だろうと思うんです。だから、何でもかんでも認めるというのはいかがなものなのかなという感じがしますね。今、言いましたように、実験データだとか、いろいろ個別な事由があるときのみ、これにも書かれてあるように、その際に認めていっていただければいいのかなという気がいたしております。

委員長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
最後の4点目で「新規性喪失の例外規定の証明手続」ということですが、これは書類の提出を30日というのが少し短過ぎるのではないかということなんですけれども、これはいかがでしょうか。

委員

恐らくTLOとか、知財本部、大学の私たちが一番使うことが多いのではないかと思いますが、私は特に改善をする必要がないと思っております。本来、30条適用というのは、やむなきに至ったときにしか使わないので、ライセンスするときに非常に不利です。企業の方に30条適用の特許を使ってもらった例というのは、ほとんどないです。基本的には、30条適用しなくてもいいように特許は出していかなければならないわけです。簡単にすればするだけ、先生方から「こんな簡単にできるのだから出して。」と必ずいわれます。今でも、30条適用にならずに、その前に出すように促すことが大変な状況ですから、面倒くさいほど、先生が大変になりますので、二度とやらなくなります。ですから、私個人的には、これは簡素化するべきではないと思っています。

委員

私は独り言のコメントを今言おう思っていたんですけれども、企業の中でも当然、30条は基本的に使わないという形でやらないと、もうマネジメントできなくなっちゃうんですよね。そういう意味で大学さんが産学連携でいろんなことをやろうとしているときに、30条がありきだという方向に流れないかなとちょっと危惧しますね。若干、緩めるのはいいんでしょうけれども、この理由が大学からこういう要請があるから、例外適用をもっと使ったらどうだというニュアンスにとらえられるのは、全体の流れとしてはよくないんじゃないのかなという、そういうコメントです。

委員長

ありがとうございました。委員どうぞ。

委員

今のお二方と全く反対なんですけれども、私立とかの研究機関がやっているものならいざ知らず、国立大学では時に社会的影響の大きな病気とか、いろんな問題でそういった研究をやっていることがあって、私ども新聞記者をやっていてお話なんかを伺いに行くと、公的に必要なデータにもかかわらず、特許をとっていないので出せないというようなことがしょっちゅう起きるわけです。特許はもちろん重要で、いろんな公的な資金も含めて使った研究の成果というものが、知的な財産を保護するということはもちろん重要なんですけれども、公的なバランスということもときに起きるものがあるわけです。病気だって、例えば緊急に公開してもらって、情報交換した方がいいような、例えばウイルスの遺伝子配列、DNA配列みたいなものも含めて、ものによってはありまして、こういったものを一律に後ろに持っていくという考え方が広まるというのは、今でも、現状でもいささか疑問に思っていますので、これはやはり延長して使いやすくして、場合によっては、こういうことも使って、国民なり、一般に必要な研究というのは早めにオープンにしてもらった方がいいケースもあるものですから、これはやってもらった方がいいなと思う次第です。

委員

私もそう思います。というのは、発明として完成している、していないというのがあると思うんです。ただ、データそのものは発明として完成しない前も、社会的に非常に重要なデータがあるはずなんです。それを小刻みに発表するということはあるわけですけれども、それをまとめたときに一つの出願にしたいということがあります。そういうときに30条が適用されませんと、自ら自分の小刻みにした発表でつぶれていく。そうしますと発明が完成されて、それらに特許性が出るようなところまでやらないと公に発表しないということになって、確かに今みたいなバイオとか、医療とか、そういうところに関しての社会に対する影響というのは非常に大きくなるんじゃないかなと思います。

委員長

書類の提出の30日は……。

委員

30日は別に短い長いという話がありますけれども、ここで翻訳文なんかを出さなくていいとか、宣誓書は簡便にするとか。そういうところの関係だと思うんです。だから、それとのバランスで30日がいいのか、40日がいいのかというのは決めればいいのであって、一概に現行制度でいいよというのは、ちょっと言い過ぎではないかなと思います。

委員長

ありがとうございました。

委員

30条は公知になったものの例外ですから、基本的にはこれを拡張すべきではないという意味では、委員が言われた方向が正しいと思いますが、ただ、運用面では、まだ考える余地があるのではないかなという感じがします。特に証明文書として、どういう文書を要求するかということの点については、ここで発表文とか、発表者の宣誓証書とかがありますが、大学の学長の証明文書とか、そういうようなものとか、いろいろ必要だという実務上の問題もあるので、その運用面を改善し、証明がしやすくなる方向に持っていく。これは法律改正問題でなしに対応できることであると思いますので、その辺について、まず工夫をしていただくことが先決と思います。

委員長

ありがとうございました。よろしゅうございますか。どうぞ。

委員

当社も発明品をよく展示会に出すことが起きるんですが、その証明をするに当たり、先ほど委員言われている手続の簡素化を急いでほしいなと。なかなかそれが出ないために展示できないということも起きますので、その手続の簡素化をできるだけ早くしていただきたいというのが切なる願いであります。

委員長

ありがとうございました。委員どうぞ。

委員

ちょっと細かい話で恐縮なんですけれども、ここに書いてあるように、発表者の宣誓証書というのは、ほかの手続は部門である意味でスムーズにとれていくケースがあるんですけれども、ここは発表者がそれなりの人数がいると、印鑑をとったりなんかするのに結構手間がかかるケースが多いので、この辺なんかは30日以内の必要性が必ずしもないんではないのかなという感じがしております。ある意味で先ほどご意見があったように、運用というところ、その辺でぜひ対応していただければなと思っております。

委員長

ありがとうございました。ほかにございませんか。

委員

やはりここに書いてある延長すべきということを書いてある方向でやっていただけるのかどうかというのだけ、ちょっと確認したいんですけれども。

委員長

手続とのバランスということも書いてありますので、その手続とのバランスでどう考えるかということだろうと思いますけれども。

事務局

先ほどご意見もありましたように、内容的な要件の簡素化とそれに応じてどれぐらいの期間が必要かということを検討する必要があると思いますので、そのバランスで考えていきたいと思います。

委員長

それでは利便性に関しては、これでよろしいでしょうか。利便性の向上に関して4点検討課題がありましたけれども、ユーザーの方から実務的な観点から、いろいろ貴重なご意見を伺いましたし、そのほかいろいろな貴重なご意見、コメントをいただきましたので、事務局の方でそれを整理して次回にご提案いただきたいと思います。
もう一つ、議題が残っておりますので、3番目のテーマに移らさせていただきたいと思いますが、最後のテーマは「特許庁の判定制度とADR機関との適切な役割分担について」ということであります。これについても事務局よりご説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

事務局

特許庁の判定制度とADR機関との適切な役割分担についてご説明いたします。
まず、特許庁の判定制度の概要でございますけれども、24ページをお開きください。判定制度と申しますのは、当事者の請求に基づきまして、被審物、すなわち、侵害が疑われるものが特許、登録実用新案、登録意匠、または登録商標の権利範囲に属するか否か。これにつきまして特許庁が判定する制度をいいます。
産業財産権の争いというのは、被審物が権利範囲に属するか否かが主要な争点となります。その判断を当事者同士が行うのはかなり難しいということでございまして、判定制度は昭和34年に創設されるものでございます。
昭和34年以前につきましては、権利確認審判という法的な拘束力を持つ制度が存在いたしましたけれども、現行制度のもとでは、判定の法的性質というのは、特許庁の意見表明でございまして法的拘束力はございません。したがいまして、判定結果に対する不服申し立て、すなわち、裁判所への公訴というのは認められておりません。また、訴えの利益、これは民事訴訟法上の原則は適用されませんので、判定の申し立ては利害関係は要求されません。また、被請求人が判定の利用に対して、同意しているという必要もございません。したがいまして、実際に被請求人のイ号物件でなく、請求人が一方的に申し立てました仮想事件につきましても判定することは可能でございます。
最近は平成11年に法改正がございまして、公正かつ迅速な審理判断を担保するため、従来政令で定められておりました手続を法律に規定いたしまして、ほかの審判とほぼ同様の手続で審理できる体制が整備されてきました。
この判定制度、平成9年ぐらいまでは年間20件ぐらいと非常に利用が少なかったわけでございますが、その後、審理期間の短縮、あるいは運用改善のキャンペーンを行いまして、平成11年の法改正をピークにいたしまして、急激に増加いたしました。そこの表に載っておりますとおり、近年は大体100件前後の請求がございます。
この平成12年から16年間の5年間の判定の請求事件につきまして、中を見てみますと、大企業が34%、中小企業が52%、個人12%、その他2%ということで、中小、個人の利用する比率が60%と非常に高いことが伺われます。
また、一方、特許庁の判定ではなくて、民間の類似制度ということで、そこの四角囲いの中に「日本知的財産仲裁センター」の「センター判定」についての説明がございます。このセンター判定は平成16年、昨年の3月から開始された業務でございまして、ADRの持ち味でございます非公開の下、登録された特許等の技術的範囲の判断等を行っております。また、権利の有効性につきましても同時に請求できるという、特許庁の判定とは、やや異なった特色を持つものでございます。その機能をちょっとまとめたのが次のページにございます。
さて、20ページに戻っていただきまして、今般、検討をお願いしております、その背景でございますが、特許庁の判定の在り方につきましては、平成14年度に産業構造審議会の知的財産政策部会、紛争処理小委員会で検討がされまして、そこでの結論は更に検討するということで、現状維持という結論を得たところでございます。そして、知財推進計画2005におきましては、特許庁の判定制度とADR機関との適切な役割分担につきましても、地方制度改革におけるADRの在り方の検討を踏まえて、2005年度も引き続き検討を行い、必要に応じ制度を整備することとされました。
そこで現在の判定制度の分析をいたしましたのでご説明いたします。その際、1998年から2004年の間に判定を利用された方にアンケート、あるいはヒアリング等を行った結果を踏まえて分析しております。
まず、1つ目の視点でございますが、機能的側面ということで、特許庁の判定制度は最終的な紛争解決機能というのは持っておらず、その前提となる事実判断に、すなわち権利範囲の属否、これについて意見を表明しているということに過ぎませんので、完全なADRとは言えない。
一方、知的財産の紛争解決を専門に扱います、先ほど紹介いたしました日本知的財産仲裁センターのセンター判定は、仲裁調停等も一緒に扱うことはできますので、トータルパッケージで知的財産について紛争解決を行うことができます。
今般、先ほど申し上げましたアンケート、ヒアリング等におきまして、特許庁の判定を選択した理由というものがございます。それは27ページにアンケートの集計結果が出ておりますが、左上の「特許庁の判定を選択した理由」を見ていただきますと、真ん中辺に「公的機関である特許庁が行うものであるから」という、この回答が一番多くなっております。
また、続きましては、審理が公正、公平、あるいは費用が安い、あるいは決定までの期間が短いというのが続いておりまして、また、特許庁の判定は公正、公平な判断を安価に、迅速に提供する機能を備えるものでありまして、中小企業個人を中心に利用が高いということが言えると思います。
また、特許庁の判定結果というのは、税関での模倣品の輸入差し止めの際の侵害事実を疎明する根証や途上国での裁判所の鑑定結果として用いられた例もございます。
このような結果からいたしますと、特許庁の判定結果の公開を前提として、請求人と被請求人の参加のもとで、公的機関による公平・公正な判断を求めるものとしてとらえられます。
一方、民間のADR機関のセンター判定というのは、非公開を前提に当事者の参加の下で権利の有効・無効を含め判断を求めるものであるということで、両者の機能面及びニーズ面での相違というのがあると思います。そういう背景に特許庁の利用は100件ぐらいございますが、センター判定につきましては、年間数件ぐらいでございます。
次に費用面の側面でございます。特許庁の判定の手数料は4万円でございます。民間型のADR機関のセンター判定の手数料は30万ぐらいでございまして、非常に特許庁の判定制度というのは安く設定されております。しかしながら、これもやはりアンケートを見ていただきますと、判定に要した費用ということで、30万円以下のものは11%ということで30万以上、あるいは数十万以上使ったものがかなりの部分を占めております。
こういうことからいたしますと、手数料自体の占める割合というのは、総費用の割合からすると小さいものということが言えると思います。
それから、3つ目の視点でございます。行政リソースの側面でございます。審判の迅速・的確な審理が求められている現在、特許庁の有限な行政リソースというのは、本来の審査審判に振り向けるべきでございまして、民間で賄うことも可能と考えられます判定業務を、特許庁が行う必要はないという意見がございます。
現状の判定に要するに行政リソースは、大体年間審査官2人ないし3人分ぐらいでございます。ちなみに審判官総定員は400人弱でございます。これを仮にファーストアクションに振り向けるとすると、2日程度短縮になるわけでございます。
一方、国際的な側面で見てみますと、判定制度というのは、アメリカやヨーロッパあるいはドイツ、中国には民間からの要請に応じて、特許庁が不審物の権利範囲の属否について判断するという制度は存在いたしません。他方、オーストリアあるいは英国では「権利の確認申請」、あるいは特許庁に権利侵害の有無についての見解を求める制度が導入されております。日本の特許庁の判定制度は、国際的に特異だというところまでは言えないと思います。
このように分析いたしまして、対応の方向でございますが、1つは、特許庁の判定制度を廃止したらいかがかと。民間型ADR機関設立の知的財産をめぐる紛争解決機構が、知財高裁を初め、民間ADR機関が整備されておりますので、行政が知的な紛争処理に積極に関与すべき状況ではないという観点から、特許庁の判定制度を廃止してはどうかと。
これに対して問題点というのが、2つばかりあると思います。
1つは先ほどご覧になったとおり、判定のユーザーは個人、中小企業が非常に多くございますので、やはり、このアンケートによれば、特許庁の判定がない場合の紛争解決手段はどうするかというアンケートに対しては、訴訟を行うというのが一番多い回答でございました。その次のものは弁理士、あるいは弁護士の鑑定を利用するというふうな結果が出ております。そうしますと、中小・個人の判定を廃止した場合は、中小・個人の負担が増加するものと予想されております。
2つ目の問題点は、意匠でございまして、意匠というのは権利の意匠と非審物である意匠、デザインをただ単に比較すればよいのではなくて、もともと権利の範囲を決めるためには、出願された当時の書籍、雑誌、カタログ、パンフレット等を参考に権利範囲を決めて被審物が意匠権に属するかどうかを正確に判断するというものでございます。
したがいまして、なかなか特許庁のデータベースが利用できない民間の判定というのは、非常に困難であるということが指摘されております。
また、11月に開催されました産業構造審議会の意匠制度小委員会でも国内において流通する模倣品対策として、特許庁の判定制度の活用が検討されているところでございます。この意匠権の問題、それから中小企業の問題というのがございます。
それから、2つ目の方向ということで、「特許庁判定制度の整備」ということで、真に行政ニーズの高い分野に特化したらいかがということで、例えば税関での模倣品の輸入申し立ての際の侵害事実を疎明する証拠として利用する場合だけに、そういうような形で制度設計をしたらどうかという対応が考えられます。
そして最後に、「現行の特許庁判定制度を維持」するという対応でございます。これは特許庁の判定制度、今、積極的に廃止すべきという声が出ていないということで、現状も特許庁の判定は民間のADRと異なる機能・役割を備えたものでございますので、特許庁の判定制度は当面維持すべきではないか。この3点の対応が考えられると思います。
以上でございます。

委員長

どうもありがとうございました。それでは、判定制度とADR機関の適切な役割分担についてというので、検討の視点と可能な対応の方向、3つの方向性、廃止、限定的に利用するようにする、当面維持するということについてご説明いただきましたけれども、これについてご意見をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。委員どうぞ。

委員

私は結論として当面判定制度は維持すべきであるという意見に賛成します。ただいま事務局のご説明をお聞きしましても、私の個人的な知見からしても、判定制度が極めて有意義で存在意義が高いとまでは、言えないだろうと思います。しかし、中小企業を中心に一定のニーズがあるわけですし、紛争解決の手段は、多様であることがより望ましいことだと思います。また、この判定制度があることで、現在の利用状況を前提にして考えると、特許庁の審判官に対する負担がさほど大きいとも言えないと思います。そういう意味では、平成14年の紛争処理小委員会でも、私は参加して議論しましたけれども、そのときの状況と大きく変わっているところはないと。当面は、この制度を維持しながら、これからの紛争解決の制度は、将来どうあるべきかを見ていくのがよろしいと思います。

委員長

わかりました。委員どうぞ。

委員

日本弁理士会でこの判定制度の存否について検討させていただきました。結論から申しまして、判定制度に対してお手元の資料の29ページに書かれていますように、意匠委員会、この委員会は意匠を中心にいろんな問題を検討している委員会なんですけれども、この委員会は存続すべきという積極的な意見でございます。
それから、特許委員会、これは載っておりませんけれども、特許委員会等については、積極的に存続を求める、または廃止を求めるという意見、どちらも意見はございません。ただし、ADR推進機構、これは先ほどちょっとご紹介いただいたんですけれども、弁護士連合会と私ども日本弁理士会で仲裁センターというのを共同で運営していますけれども、そこの仲裁センターを推進する弁理士会側の委員会がここに書かれていますADR推進機構でございます。このADR推進機構の委員会の意見は、どちらかというと、ここのニュアンスは廃止して、私どもに任せてほしいと。ただし、積極的にぜひ廃止しなきゃいけないという意見じゃございません。
その背景を簡単に説明させていただきますと、26ページにございますように、これは内部的な話で恐縮なんですけれども、センター判定で請求件数が16年度が載っていますけれども、私どもの仲裁センターは6件しか受任がないということです。活動は極めて一生懸命やっているんですけれども、なかなか申請が増えないということで、日弁連、私ども日本弁理士会も含めて何とか活性化しようということで、いろいろ努力しているんですけれども、今のところまだ数字的にあらわれていないという状況でございます。
そういう背景がございまして、ADR推進機構及び先ほども申しました日本知的財産仲裁センター、これは30ページにございますね、特許庁判定の存続を積極的に望む意見、及び特許庁判定が廃止されて困るとの意見はございませんでした。資料の表現でははっきりしないんですけれども、要するに、そういう背景でございまして、できれば私どもにやらせてほしいと、こういう主張でございます。よろしくお願いします。

委員長

ありがとうございました。委員どうぞ。

委員

先ほどの委員と同じように③でいいんじゃないかなという意見が、我々の方で多かったです。先ほど委員がおっしゃったように、紛争解決のためのいろんな検討のための手法としてのオプションが多く存在しているという意味で、まずいいですねということと、実際に業種によっては積極的に使っていますという声がありました。
それからもう一つは、判定結果と同じ結果が訴訟でも出ており、判定の内容が企業としても使えるので存在意義があるという意味で、ここで今、積極的に廃止すべきというところまでいかないので、③でいいんじゃないかという意見です。
以上です。

委員長

委員どうぞ。

委員

知財協としても現行の判定制度維持ということでよろしいんではないかと思います。意見としては29ページにちょっと書いてありますように、3つほどあるんですけれども、やはり中小・個人中心に希望があるという点、それとあとは先ほどご説明いただいたように、特許庁判定に要する行政リソースが人数的に見ても400人のうち、二、三人で済むということであれば、わずか1%ぐらいであれば、その辺のご説明からしても積極的に廃止する理由には当たらないのかなという気がいたしております。
以上です。

委員長

ありがとうございました。委員どうぞ。

委員

製薬協の方では、この判定制度を実際には使っていないんですが、やはり、今、委員等が言われましたように、産業界としてのニーズがあるのであれば、これはむしろ残しておくべきだろうということで③でございます。
民間のADRは特許庁の判定制度とは違った別な機能も持っておりますから、それはそれで必要に応じてやはり使っていくべきではないかというふうに思っております。

委員長

ありがとうございました。ほかにございませんか。委員どうぞ。

委員

業界のことはよくわからないんですが、まず、1点質問だけさせていただきたいんですが、事前のときにはなかったんで、特許庁の判定手数料4万円ですごい安いということになっているんですが、この新たなに出てきた別添2を見ると判定に要した総費用というのは、すさまじく高くなっているんですけれども、これは特許庁が後で懐に入れているわけではないでしょうけれども、何でこんな差額があるのかというのは……。

事務局

これは弁理士とか、弁護士とか、その他、判定をやるに当たって総費用がこれだけかかったというアンケートの結果です。

委員

そうすると、先ほど中小企業にはいいとおっしゃっていましたけれども、一慨に、このセンター判定というのと、実質大きな金額になれば、難しい事案になったり、長期にわたるものであるとすると、ほとんど差はないわけですね。4万円と30万というのを最初に見たとき、10倍の差があるのであれば、相当な特許庁における判定というものの価値というのは、あるのかなと思ったんだけれども、このアンケート結果を見る限りは、この値段の差を打ち消されるぐらいの差があるのであれば、皆さんが③の判定でいいとおっしゃったんだけれども、最初は、事前の説明を伺ったときは③でいいと思っていたんだけれども、だんだん不安になってきたということで、まず意見を申し上げさせていただいて、③じゃなくて、この中に入っていないことの意見にすべきだろうということを言いたいなと。
1点、まずこれは特許庁の判定制度というのはなくす方向で当然考えるべきで、民業圧迫をやっているんだろうと思われます。先ほど弁理士連合会の方がおっしゃったとおりで、これがあるから民間の方が育たないのであって、むしろ多様な紛争解決の手段があった方がいいというのであれば、むしろ特許庁は引いていく方向であるべきだと。もちろん、ここに先ほど来特許庁の都合で書いているという感じがいっぱいあるわけですけれども、別に22ページの視点3の下の書いてある二、三人なんて大したことないとか、これは特許庁が言っているだけの話で、これは外部の人を育てるという意味が書いてもらわないと、これは本当は行政リソースという意味では、無駄なことを行政がやるというのは基本的に今の流れから、小さな政府の中から言うと反しているということ。
それから23ページの中で中小企業の負担は増加すると予想されるというのは、今の御質問の御回答でインチキだということが判明しちゃった、ごめんなさい。
それから、その下の(イ)のところについては、判断の困難化という制約があるのであれば、これは特許庁が意匠公報以外の資料について、情報提供するという形で紛争解決すればいいだけで、それから、もう一つだけ言えば、上の中小企業の負担が増加して、いきなり訴訟に持っていくということが多いのであれば、それがかえって逆に不幸な結果を生むということがあれば、民間等々、中小企業を扱う場合に、公的な補助金制度をつくるとかすればいいだけの話であって、やはり、多様な紛争解決の手段があれば、逆に言えば、ここに現状、特許庁の判定により100件、それから侵害訴訟654件になっているかもしれないけれども、逆に特許庁が引いていって、民間の仲裁システムというものの多様なものが確立できれば、この654件はもっと減るかもしれない。その意味では、むしろよりよいものにしていく努力は必要じゃないかという、今日のご説明を聞いて、ちょっと意見を変えてしまったのですが、そう思いました。

委員長

費用の点はいかがですか。

事務局

費用につきましては、先ほど申し上げましたように、これは総費用でございます。それからなぜ判定をやめると、中小企業・個人に負担がかかるかというと、このアンケートにございますように、判定制度がない場合は訴訟に向かうと。訴訟の方が費用が多分、10倍ぐらいかかるだろうというふうに聞いておりますので、そういう面で負担が増すというふうに判断したわけでございます。
また、判定を選択した理由について、やはりアンケート結果が左上に載っておりますが、安いから使ったと、もちろんそういう意見もございます。しかし、一番大きなものは公的機関がある特許庁が行うものだからという、これが審理が公平かつ公正に行われるからというものが多いからであって、安いから使ったというものももちろんございますが、それは少数といいますか、大多数の意見ではないというふうに判断しております。

委員長

特許庁の判定制度とセンターの判定と全体的なコストを比較した場合には、必ずしも特許庁の方が安くないということでよろしいんですか。

事務局

そこまでははっきりはわかりませんが、特許庁の手数料につきましては、それほど大きなウェートではないという意味でございます。

委員

今のは手数料ですよね。

事務局

はい、そうです。

委員

例えば、特許庁の判定なんかもこれを準備するために弁護士、弁理士の費用がかかるわけでしょう。センター判定もそうですよね。そうすると、同じものだったら、同じ負荷なんじゃないですか、コスト的負荷は。手数料が4万と31万5,000円で、それを誤解されちゃうといけないんで、彼なんか一番それを誤解しちゃっているじゃないですか。

委員長

センター判定もこれにプラスして、弁理士、弁護士費用がかかるということでしょう。

委員

両方ともここに資料を準備したり何かするために、弁理士、弁護士費用は共通で同じなんです。それに手数料がこれだけの差があるんですと。

委員長

委員どうぞ。

委員

ただ今のお答えでよいと思いますが、要するに、判定の費用は個人でも企業でも弁理士、弁護士なしにすべてやれば、4万と31万5,000円ですが、弁護士、弁理士に代理を頼んだり、その準備をしたりすれば、判定に要した費用はそれだけ上がるのであって、センター判定を申立た場合もそれと同じような比率で増えるわけですから、その意味では、弁護士、弁理士を頼まないでやれるような制度になっていればよろしいですけれども、実際上は、センター判定もそうはいかないというところがありますので、その点では費用は、ほぼ同じ比率で増えていくだろうということを、誤解のないように申し上げておきます。

委員長

そうすると、全体のコストで比べても特許庁の判定の方が安いということですね。

委員

私が言っていることが誤解されているというので、いつの間にか、また特許庁の判定を堅持するという方向に流れると嫌なので申し上げさせていただきますけれども、そんなことはわかっているので、おっしゃっているご説明はわざわざ誤解だとご指摘いただかなくても、そんなことは最初からわかっていて、ここに書いてあるとおり、100万以上とか、500万以上とか、相当の高額にわたっている部分が紛争の最終結果にあるわけですね。そうするとパーセンテージで見れば、特許庁によるものと、センター判定によるものの差は、かなり薄いということを申し上げた次第で、そうであるならば、この差が大きな魅力になるかというと、それほどの大きな魅力はなくて、むしろ民間がいろんな多様な紛争解決の手段が育てるという方向にいくことを阻害するようなほど、大きな差があるとは思えないということを申し上げた次第です。

委員長

わかりました。委員どうぞ。

委員

その関連で正確な情報を申し上げておかなければいけないんですけれども、私どもの仲裁センターの運営金、日本弁理士会、弁護士連合会約1,000万円近い金を拠出しております。それ以外の人件費はプラスアルファですね。それとほとんどの方はボランティアに近い形で活動されています。それだけは一応申し添えておきます。

委員長

わかりました。ほかにご意見ありませんか。

部会長

この結論についての賛否という話ではないんですけれども、委員のおっしゃったことと似ているんですけれども、これを考える上で、どうしても重要なことは、現在において民と民の争いに官がどのぐらい関与すべきかという、そこらの哲学が抜けているのが一つと。
それから、今、どうしたって官に対する信頼の方が圧倒的に強いですから、アンケートをとれば、しかも特許庁が安くやってくれれば、特許庁にやるに決まっているんですね。やらない場合はどうしますか。裁判所に行くと決まっているんですけれども、しかしながら、司法制度改革推進本部なんかを見ておりますと、ADRはこれから非常に大事だと。発達させなければいけないということは出している。しかし、知財に限らず、余り利用されていないんですね。みんないろんなことを言っているけれども、なぜかよくわかりませんけれども、しかしながら、官がやれば、民が減るのは当たり前なので、そこら辺のことも全部考慮して、ユーザーは大体安くやってほしいと言うに決まっているんですけれども、ユーザーの意向も総合的に判断をして決めていくべきじゃないかという、先ほどの民と民の争いを官がどうするかという、そこの辺もちょっと考えてみた方がいいんじゃないかなという気はいたします。

委員長

ありがとうございました。ほかにご意見ありませんか。よろしいですか。これにつきましては、産業界からは存続してほしいというご意見が多かったかと思いますけれども、他方で官が本来やるべき仕事なのかどうか、民業と官業の仕分けをどうすべきかということについて、もはや官がこういうことをやる必要はなくて、民業に任せたらどうかという非常に強いご意見もあったということで、次回までにこれも持ち越して、少し整理していただきたいと思います。
ほかに何かご意見ありませんか。よろしいですか。この最後の特許庁の判定制度についての検討は、これで終わりにいたしたいと思いますけれども、これ以外に最初から振り返りまして、今日全体の議論の中で、何か特に言い残したとか、ぜひ発言しておきたいということがおありでしたらお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。特にございませんか。
それでは時間も少し超過してしまいましたので、本日の小委員会はこれぐらいにいしたいと思います。最後に次回以降のスケジュールについて、事務局の方から説明をお願いいたしたいと思います。

事務局

今後のスケジュールについてご説明をいたします。次回、第21回は12月16日金曜日16時からの開催を予定をしております。それ以降の日程につきましては、決まり次第調整の上、追ってご連絡をしたいと考えておりますので、よろしくお願いをいたします。

委員長

以上をもちまして、産業構造審議会知的財産政策部会第20回特許制度小委員会を閉会いたします。本日は長時間ありがとうございました。

閉会

[更新日 2006年1月17日]

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