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第22回特許制度小委員会 議事録

  1. 日時:平成17年12月27日(火曜日)10時30分から12時20分
  2. 場所:特許庁 特別会議室
  3. 出席委員:
    後藤委員長、中山部会長、相澤委員、秋元委員、井川委員、大野委員、大渕委員、笹瀬委員、澤井委員、志村委員、竹田委員、富崎委員、中村委員、長岡委員、前田委員、山口委員
  4. 議題:特許制度の在り方について(報告書案)

開会

委員長

それでは、ただいまから産業構造審議会知的財産政策部会第22回特許制度小委員会を開催いたします。
前回の第21回では特許制度の在り方について、論点整理としまして、権利侵害行為への輸出の追加、分割制度の見直しについて、特許庁の判定制度はADR機関との適切な役割分担について、この3点について再度ご検討いただくとともに、まだ本小委員会では扱っていませんでした損害賠償制度の在り方について、インターネットを通じた特許審査の手続書類の提供の2つのテーマについてご審議いただき、皆様からご意見をちょうだいしたところであります。
本日はこれまでの議論を踏まえまして、事務局にて作成しました報告書、特許制度の在り方について(案)についてご審議いただきたいと思っております。
それでは、事務局より配布資料の確認をお願いいたします。

事務局

それでは、配布資料の確認をさせていただきます。本日の配布資料は議事次第、配布資料一覧、委員名簿、資料1といたしまして、「産業構造審議会知的財産部会特許制度小委員会報告書『特許制度の在り方について』(案)」以上でございます。よろしゅうございますでしょうか。

委員長

それでは、早速議事に入らせていただきますが、先ほど申し上げましたように、本日は報告書特許制度の在り方についての案につきまして、全体をご審議いただきたいと思いますけれども、まず、議論の都合上、前半と後半と2つ分けて、それぞれ説明をいただいてご議論いただくというふうにしたいと思います。
まず、初めに前半部分について、事務局より説明を行っていただきます。よろしくお願いいたします。

事務局

「分割出願制度・補正制度の見直し」についてご説明させていただきたいと思います。
報告書案の5ページになります。まず、分割出願制度の見直しということで、ここでは時期的な緩和、濫用防止、内容制限の緩和という3つ論点がありまして、それぞれについてご説明いたします。
主に対応の方向性のところにポイントを置いてご説明する予定です。まず、Ⅰ-1「分割時期の緩和」というところです。現在の制度では分割できる時期というのは、明細書等について補正をすることができる期間に制限されているわけでございます。問題の所在としまして、特許請求の範囲の記載が十分でないまま特許になったり、拒絶になったりしたときに、出願を分割してより的確な特許請求の範囲での権利取得を目指すということができない状況になっておりまして、実効性のある多面的・網羅的な権利取得がしづらいため、特許査定あるいは拒絶査定の後の一定期間、分割を可能としてはどうかというご指摘があります。この点をご審議いただいたところですが、対応の方向としまして、8ページをごらんいただきたいと思います。
(1)の「特許査定後、拒絶査定後の分割可能化」ということで、査定後の一定期間につきましては、分割を可能にするという方向で考えております。
その具体的な期間でございますが、(2)に記載してございまして、第三者の監視負担の増加を抑えるとか、あるいは特許料納付期限や審判請求可能期間が30日になっているというところを考えまして、査定後に権利範囲をさらに見直すという期間、それから分割するかどうか判断する期間として30日あれば十分ではないかということで、分割可能期間を30日にするのが適当ではないかと考えております。
9ページに移りますが、拒絶理由応答期間終了後とか審決後の分割の取扱い、特に審決後のところでございますが、小委員会におきましても、審決後にも分割を認めるべきというご指摘がございました。ただし、審決後の分割を認めますと、分割時期、権利化時期を先延ばしする目的で審判を請求するといったような制度濫用のおそれもあります。このために、今回は審決後を分割時期に加えることは見送ることとしまして、今後、制度の利用状況を見ながら再度検討することが適当ではないかと考えております。
その他の事項としまして、①から⑤までの施策を考えております。①として、分割出願への新規事項付加の拒絶理由化、②としまして、変更箇所、分割をしたときのもとの出願からの変更箇所ですが、そこにアンダーラインを付けること、③として、分割出願に関する説明資料の提出要請、④として、もとの出願と分割出願の近接着手、⑤としまして、特許電子図書館における分割出願情報の充実といったところを考えております。
特に③のところで説明資料の提出要請というところがあります。ここにつきましては、こちらの審議会でもご指摘ありましたが、過度の負担とならない範囲で、出願人に対しまして、分割出願にかかる発明のもとの出願の明細書における記載箇所、あるいはもとの出願と分割出願が同一でない理由といった説明資料の提出を求めたいと考えております。
次に11ページに移ります。「分割出願制度の濫用防止」についての問題の所在としましては、今回時期的な緩和をするということにより濫用的な利用が助長されるのではないかということで、濫用防止策を講じることが必要との指摘があります。
この指摘に対しまして、2つ案を検討させていただいておりまして、1つは分割出願の補正制限、それからもう1点は長期にわたる分割出願の制限という2点をご審議いただいたわけです。
13ページの対応の方向というところになりますが、まず、分割出願の補正制限につきましては、分割したときに出願人がもとの出願の審査で通知された拒絶理由を十分に精査するような仕組みが必要ということで、例えば、分割出願がもとの出願の審査において通知された拒絶理由を解消していないような場合には、現行の最後の拒絶理由通知後と同様の補正制限を課してはどうかと考えております。
それから累次・長期にわたる分割出願の制限につきましては、前回ご審議いただいたところです。標準技術の関係を考えますと、分割世代を制限したり、期間を制限したりしてしまいますと、規格の策定時期をにらんだ柔軟な対応ができない可能性があるということで、方向性としましては、分割時期の緩和とか、補正制限の導入後の制度の利用状況を見ながら、分割世代数等の制限につきましては検討してはどうかと考えております。
それから、次の14ページの「分割の内容的制限の緩和」でございます。問題の所在としましては、分割出願にもとの出願の発明と同一の発明が含まれていても、そういう発明を権利化したいというようなニーズがございます。
こちらにつきましては、対応の方向というところにありますが、確かにダブルパテントを許容してほしいというニーズは存在するわけですが、逆に反対の意見も多いということと、制度の国際調和の議論ともダブルパテントは関係してまいりますので、そのあたりの議論を見ながら引き続き検討を続けていくというふうに考えております。分割関係については以上です。
次に15ページに移りますが、「一部継続出願制度、国内優先権制度」についてご説明します。問題の所在としましては、フロントランナー等による特許権の戦略的取得を可能にするために、米国の制度である一部継続出願制度(CIP制度)を導入すべき、あるいはCIPに類似した国内優先権制度というのがありますが、この国内優先権制度を改善すべきというようなご指摘がございます。
対応の方向としまして、17ページになりますが、まず国内優先権制度の優先期間を延長するかどうかにつきましては、延長したとしても延長できる期間は最大で半年程度、実際、公報の準備期間とかを考えますと、もっと短くなるということがございますし、我が国に第一国出願したもののみが優遇されるということになりますので、国内優先権制度の優先期間につきましては現状のとおりでいきたいと考えております。
それから、2点目の一部継続出願制度を日本に導入してはどうかというところでございますが、ユーザーニーズということでアンケートをとったところ、全体的に否定的な傾向となっています。かつ、中小企業にもヒアリングをしておりますが、やはり否定的な意見が多いという状況にございます。
また、一部継続出願制度を導入するに当たりましては、グレースピリオドの見直しも議論しなければいけないということになりますが、グレースピリオドにつきましては、ご承知のとおり、アメリカの法改正の状況もありますし、三極の中でも議論していかなければならないということで、我が国単独で見直すことは現時点では適切ではないと考えております。
そういったところから、一部継続出願制度につきましては、現時点では導入を見送り、国際的な制度調和の議論の中で検討するのが適当と考えております。
次に19ページの「補正制度の見直し」に移ります。こちらの問題の所在としましては、制度の国際調和であるとか、各出願の間の取り扱いの公平性というような観点から、シフト補正を制限すべきではないかというご指摘がございます。
こちらにつきましては、対応の方向としまして22ページになりますが、補正制度の国際調和を進め、かつ各出願の間の取り扱いの公平性を担保するために、シフト補正を禁止するのが適当だと考えております。具体的な制度設計を少しご紹介いたしますと、シフト補正の定義としましては、拒絶理由通知時の発明と補正された発明の間で単一性の要件を満たさない場合、これをシフト補正としております。
そして、シフト補正の禁止時期でございますが、審査を開始した後は一貫してシフト補正を禁止するということを考えています。また、シフト補正に違反した場合どう扱うかというところですが、シフト補正は拒絶理由にはなりますが、発明自体に実質的な瑕疵があるというわけではないため、無効理由とはしない扱いにしたいと思っています。
それから、運用の明確化という点についていろいろご意見がありましたが、必要以上に厳格に適用すべきでないというご指摘がありましたので、そのあたりを審査基準の策定のときに明確化していきたいと考えております。
私の方からは以上です。

事務局

続きまして「特許権侵害への対応の強化」につきましてご説明をいたします。
まず、権利侵害行為への「輸出」の追加でございます。これにつきましては、これまでの議論の中でもご説明をいたしておりますように、まず模倣品問題というものが国際的に非常に大きな問題になっているという観点がございます。我が国では模倣品・海賊版防止条約の実現を目指しているところでございます。
その際のポイントとなりますのが、輸出及び通過というものを各国が水際でどう規制をやっていくかというところでございます。我が国には輸出通過の規定につきまして、水際措置が現在ございませんで、現在、これにつきましては、財務省で検討がなされております。その前提といたしまして、実体法で権利侵害ということになるということが明確になることが、まず前提となるわけでございます。
こうしたことから、知的財産の保護を万全に図ろうという観点で我が国の政策も進めております。そういう観点で特許法につきましても、輸出というものを侵害行為に規定をするということが必要でございます。
現在の状況を見てみますと、輸出というものは侵害行為として規定をされていないということでございまして、侵害行為に当たる製造、譲渡といった段階で補足することができない場合であるとか、秘密裏に行われた場合に、こうした侵害物品が輸出されるという段階で発見されても差止めでできないという指摘もございます。また、通過の議論につきましては、侵害物品か輸出国から日本で積みかえられて第三国に輸出をされるという新たな偽装的な手段が発生しているという状況も踏まえて、こうしたものを取り締まる、そのための考え方を整理する必要があるということでございます。
現行法の状況につきましては、ご承知のとおりでございます。輸出につきまして、イギリス、ドイツ、米国の例を引いておりますが、明文上の規定はございませんが、それぞれ輸出というものが特許権侵害に該当するというふうな考え方を、それぞれ有しているところでございます。
審議会でご議論いただきました内容でございますけれども、大まかに言いまして、まず侵害物品の拡散を防止するということについて、その政策上の目的として発明の実施行為に「輸出」を追加するということについては、理解できるというご意見がございました。一方で、実施行為に「輸出」を追加した場合には、水際取締措置の濫用の懸念があるという、そういった危惧のご指摘もなされたところでございます。
対応の方向でございますけれども、まず、侵害行為に「輸出」を追加するということが適当であるというふうに考えるところでございます。この侵害物品を「輸出」する行為というものは、これは製造、譲渡と一連のものとして国内で行われるという行為でございますので、特許権者の独占的な経済的利益を適切に保護するというためには、「輸出」を侵害行為に追加することが必要であるということでございます。
また、水際措置との関係におきましても、この輸出をきちんと追加することが必要ということでございます。かつ輸出の位置づけでございますが、「譲渡等」あるいは「輸入」等と同列に考えることが適当であろうということでございますので、実施行為として「輸出」に追加するということが適当であるというふうに考えているところでございます。
続きまして「侵害とみなす行為」に「輸出を目的とする所持」を追加することにつきましては、「譲渡等を目的とした所持」というものを次のところでご紹介いたしますが、追加をするという議論をしております。その前段階でございます「輸出を目的とした所持」を侵害行為として位置づけるということが適当であるということでございます。
関連事項といたしまして、輸出の申し出につきましては、実態的に輸出のためのパンフレットの勧誘、輸出という輸送行為についての物品の展示、パンフレットの配布といったものは想定しづらいということから規定する必要性が低いというふうに考えております。
侵害とみなす行為、いわゆる間接侵害との関係につきまして、特に製造にのみ用いるもの、これを輸出するという場合でございますが、これにつきましては、侵害に当たらない海外での行為の予備行為ということでございますので、これは侵害行為としてとらえることは適当ではないというふうに考えるところでございます。
「通過」につきましては3つの類型がございまして、領域通過、それから日本を仕向地としない荷物、荷繰りの都合上日本に立ち寄る、そのまま同じ船と当初の仕向地に輸送される仮陸揚げの場合、それから3番目の類型といたしまして、我が国を仕向地としていったん保税倉庫に置かれたものが、必要に応じて改装、仕分けをされ、かつ我が国を積出国として外国に向けて送り出される行為、この3類型がございます。
特に3番目の類型につきましては、我が国から輸出される形となるということがございます。これが模倣品についての、例えば第三国における水際措置をすり抜けやすくなる、あるいは原産地のごまかしにつながり得るといったことから、取り締まる必要性が指摘をされているところでございます。
この3類型について考えますと、まず我が国のどの視点で輸入というふうになるかというところが一つ論点でございます。現在、特許法ではどの時点で輸入が既遂になるかということについて明確でございませんけれども、この際、陸揚げをされた段階で効力が及ぶ、領域内のあるものにつきましては、通関の前でも、これが特許権の効力が及び得るというふうに整理をしたいと考えております。それでいったん我が国に陸揚げされたもの、これは侵害物品であり、それを再度輸出をする行為、これが「通過」として規制の対象にし得るものであろうというふうに考えられるのではないかということでございます。
さらに実用新案につきましても、この特許と同じ考え方によりまして、侵害行為として輸出を追加するという同様の措置を講ずることが適当であると考えられるところでございます。
続きまして、28ページでございますが、「譲渡等を目的とした所持」の追加でございます。取引の最終局面である個々の譲渡の場面のみでは侵害行為を抑えきれないというところがございます。このため侵害行為として譲渡等を目的とした所持を追加する必要があるのではないかということでございます。諸外国におきましても譲渡等を目的にした所持について規制を置いているところが多いという状況がございます。
対応の方向といたしましては、侵害行為として譲渡等を目的とする所持、これを追加をすることが適当ではないかと考えております。これは侵害物品が広く市場に出回る前に、その前段階で未然に防止すべきであるということでございます。
その目的といたしましては、譲渡及び貸渡しを対象とし、さらに輸出について追加される場合には、同様の趣旨で輸出も加えることが適当ではないかということでございます。
その侵害行為としての位置づけでございますが、直接的な侵害行為であるものではないということでございますので、予備的行為として、商標法と同様の間接侵害として位置づけることが適当ではないかということでございます。なお、実用新案法についても同様の取り扱いをすることが適当であろうと考えております。
続きまして「刑事罰の強化」でございます。31ページからでございますが、知的財産の保護の万全を図るという観点からは、侵害の抑制のために刑事罰を強化するということが必要でございます。特許につきましても、これは民事でございますけれども、損害賠償額は非常に高いものになっております。こうしたことから抑止効果をより高めるために刑事罰を厳格化する必要があるのではないかということでございます。
対応の方向といたしまして、まず刑罰の引き上げの議論がございます。懲役刑の上限につきましては、他の知的財産法における刑罰、あるいは窃盗罪等の刑法における財産に対する罪と比較をいたしまして、量刑のバランスを考慮することが必要ということでございます。
特許権の侵害罪は5年と窃盗罪が10年ということになっております。窃盗罪につきましては、占有者の意思に反して、その財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すということでございますけれども、特許権侵害の場合には、それをそのままパラレルに考えることは若干難しいところもございます。窃盗の場合のように、直接的に他人の占有を奪うものではないということもございます。したがいまして、特許侵害と窃盗罪はともに財産罪ではございますけれども、その性質の違いについては、留意をする必要があろうということでございます。
かつ後で述べますように、併科の導入、または法人重課の引き上げによる刑罰の厳格化というものを考えておりますので、こうしたことによって、まずは抑止効果を高めることが適切であろうというふうに考えております。懲役刑の上限を10年に引き上げるということにつきましては、特許権侵害罪の取締の動向等を注視して、さらに慎重に検討することが適当であろうということでございます。
併科の導入につきましては、現在懲役刑が選択されると経済的な制裁である罰金がかからないということになっております。このため、著作権法あるいは不正競争防止法において、既に併科が導入されているということにも鑑みまして、特許権及び実用新案権の侵害罪について懲役刑と罰金刑の併科を設けることが適当であろうということでございます。
続きまして、法人重課につきましては、現在特許法では1億5,000万以下の罰金額、実用新案法においては、1億円以下の罰金額ということになっているところでございます。刑事罰の強化という観点からは、この侵害罪につきまして、特許権及び実用新案権の侵害の法人重課についても3億円以下の罰金に引き上げることが適当であろうというふうに考えております。なお、商標権につきましても同様に法人重課を引き上げるということで検討をしておるところでございます。
続きまして、実用新案の侵害罪でございますが、これにつきましては、現在、3年以下の懲役、300万以下の罰金というふうになっております。刑事罰の強化及び他の知財法との均衡という観点から、これにつきましても5年以下の懲役、500万以下の罰金に引き上げることが適当であろうというふうに考えているところでございます。
「侵害訴訟における立証負担の軽減」でございます。問題の所在といたしましては、侵害行為の立証あるいは損害額の立証が困難であるということで、権利者が十分に救済されていないのではないかということでございます。これまでこの立証負担の軽減のための法改正が行われておりますが、この法改正の効果について検討を行うということでございます。
まず、現行法でございますが、損害額の立証につきまして累次の改正が行われております。平成10年の改正におきましては、特許法102条1項が新設をされておりまして、特許権の侵害により生じた逸失利益の算定額について、侵害者が譲渡した数量に権利者の数量単位当たりの利益額を乗じた額を権利者の損害額とする算定方法を定めたところでございます。
特許法102条の2項につきましては、これは従前からの規定されているものでございます。
3番目の特許法第102条第3項につきましては、ライセンス料相当を損害額とする規定でございます。平成10年改正以前につきましては、その特許発明の実施に対し、通常受けるべき金銭の額に相当する額の金銭の賠償を請求することができるということになっておりました。この「通常」ということで業界の相場であるとか、国有特許の実施料に基づいて認容された例が多いと。必ずしも個別の事情というものが反映されないということで、「通常」という文言を削除したところでございます。
4番目でございますが、平成11年の法改正により、損害額を立証するために必要な事実を立証することが極めて困難である場合には、裁判所が相当な損害額を認定することができるということでございます。
侵害行為の立証につきましては、平成11年の改正によりまして、具体的対応の明示義務というのが特許法第104条の2で規定をされております。これは権利者が主張する相手方の行為の具体的対応を、相手方が否認をするという場合には、相手方はその自己の行為の具体的対応を明らかにしなければならないということを定めておりまして、権利者のみでなく、相手方も侵害行為の特定に参加させる仕組みを設けるということで、権利者の立証負担の軽減が図られたものでございます。
続きまして、文書提出命令につきましては、特許法105条に規定がございまして、特許権侵害訴訟における書類、あるいは検証物の提出義務について規定をしたものでございます。
その第1項でございますが、平成11年の法改正以前は、損害の計算を目的とする書類提出命令の申し立てのみということでございましたが、改正によりまして、侵害行為の立証を目的とする場合にも、書類提出命令の申し立てを行うということが可能になっております。
続きまして、(イ)でございますけれども、特許法第105条の2項でございます。これにつきましては、平成11年の法改正により制定をされておりまして、今ご説明をいたしました第1項の書類提出を拒む正当な理由があるか否かの判断につきまして、インカメラ手続というものを規定しております。
第3項でございますが、平成16年の改正によりまして、その正当な理由があるか否かについて、当事者等に書類を開示して意見を聞くことができるという規定を設けております。これによりまして、インカメラ手続による文書提出命令申立人の意見陳述の機会が与えれているということでございます。そのほか105条の4におきまして、秘密保持命令の規定が設けられたところでございます。
制度運用につきましては、まず損害額の認定の根拠条文につきまして事例調査を行いました。平成11年から17年の上期までの特許権または実用新案権の損害訴訟で損害賠償が認められた事例について調査をしたところでございます。なお、調査につきましては、特実意商四法全体について行っております。そのうち、特許・実用新案に関するものが下の表右側でございますが、新たに設けられた102条第1項を認定の根拠条文としたものが20%ということで、一定程度利用されているということでございます。
さらにアンケート調査でございますが、平成10年から17年の産業財産権の侵害訴訟で、損害賠償が認容されたケースで、その原告のうち、連絡先が判明した119社に対してアンケートを行いまして、回答数が低いのではないかというご指摘をいただいておりますけれども、29社から回答を得たというものでございます。
これについて、その評価は暫定的なものでございますけれども、まず102条の1項、これが新設をされたものでございますけれども、これが実際の損害額に見合っているとするものが56%で、もともとございました2項が21%ということで、この1項と2項を比較した場合には、1項というのが使いやすくなっているのではないかということでございます。
続きまして、特許法のライセンスの関係でございますが、第3項に基づく損害賠償請求につきまして、これについて裁判所が認定するライセンス料と一般のライセンス料を比較したものでございます。裁判所が認定するライセンス料の方が一般的なライセンス料よりも高い、または同程度であるというものを合わせまして76%で、裁判所が認定するライセンス料の方が高いとするのが32%ということでございます。まず、この改正の一つの動機といたしましては、ライセンス料、個別具体的な判断というものについて制約があるという観点からすると、一定の前進があるというふうに見受けられるところでございます。
侵害行為の立証につきましては、具体的対応の明示義務の導入によりまして、侵害者側からの具体的態様の明示が行われるようになったという意見が52%でございます。使いやすい点、立証負担が軽減されたというのが59%、使いづらい点としては、相手方の書類の特定が困難であるといったところが指摘をされているところでございます。
なお、文書提出命令の申し立てを行ったかということにつきましては、25%に留まっております。これにつきましては、裁判所の訴訟指揮によりまして、文書提出命令によらず、任意で文書が提出されている事例というのが多いためではないかというご指摘もございます。
検討の内容でございますけれども、このアンケートの結果というのは、概ね実態と合致しているのではないか。大まかな傾向としてはアンケートに反映されているのではないかというご指摘、あるいは近年の法改正、裁判所の適切な訴訟指揮によりまして、権利者の立証負担が軽減されているのではないかというご意見がありました。
一方でアンケートの回答者が少ないということから、これだけをもって判断するのは妥当ではないというご意見もあったところでございます。
今回の評価でございますが、アンケート調査に基づいて、この実情を評価するという観点では、データの制約に留意する必要があるということでございますが、全体的な傾向としては、累次の法改正、裁判所の適切な訴訟指揮という2つの要因によりまして、適切な救済、あるいは立証負担の軽減という観点からは改善が図られてきているということも伺えるところでございますが、一方で、相手方が所持している書類の特定が困難といった問題点も認められるところでございます。この点につきましては、今後とも実態の把握に努める必要があるということでございます。

委員長

ありがとうございました。前半についてご説明いただきましたけれども、以上のご説明を踏まえまして、ご意見をお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

委員

輸出の関する点と、特許法の105条について申し上げたいと思います。25ページの下から5行目に「特許法第101条第1項各号」とありますが、101条は項分けがないわけで、第1項という記載はおかしいと思います。それから、次に「各号は」とありますけれども、ここに記載があるのは1号だけですね。ですから、この記載から言えば、101条第1号となるわけですが、第1号のほかに第2号も特許が物の発明についてされている場合に該当するわけで、1号を書くのであれば、2号も併記しないと不正確なのではないかと思いますので、その点を指摘しておきます。
それから特許法105条の問題は現行の侵害訴訟に関する制度の運用等については、私もこの報告書の原案で全く依存はないところですが、一つ将来の検討課題という意味で申し上げておきますと、この規定は他の100条以下の規定とも横並びですけれども、特許権または専用実施権の侵害にかかる訴訟に限定しているわけですね。ただ、今訴訟の現状を見ますと、この書類の提出をめぐって、インカメラ手続とか秘密保持命令が一番必要だと思うのは、職務発明にかかる対価請求訴訟です。それはたくさん事例がありまして、その問題で常に訴訟の進行について原告側と被告側の意見が対立して、運用上非常に困難を極めることができていますので、これは将来の検討課題としては、ぜひとも105条、105条の4の秘密保持命令以下の規定、これを職務発明にかかる対価請求訴訟に適用することの是非について、検討課題としてお考えいただきたいと思います。
以上です。

委員長

ありがとうございました。最初の点は……。

事務局

最初の点はご指摘を踏まえて修正をいたします。

委員長

ほかにございますか。

委員

これは確認と要望なんですけど、22ページのシフト補正について若干の要望をしたいことがありますけれども、シフト補正の定義に「単一性の要件を満たさない場合をシフト補正とする」というふうに定義されていますけれども、通常の実務ではご承知のように、複数クレームがありまして、例えば第一、二項を削除という形になると思います。その後、補正するとなると、事実上、限定する補正しかできないんじゃないかと思われます。したがって、運用の仕方次第なんですけれども、大半の補正はできない。したがって、これを回避するには、一般的には分割出願になると思われます。こうなりますと、出願人及び審査負担も増えますので、お互いの効率的な運用という意味では、まずいんじゃないかと思われますので、その辺を今後のガイドライン、審査基準等で十分考慮をお願いしたい。
以上です。

委員長

ありがとうございました。

事務局

ご指摘の件、単一性とクレームの限定というのは必ずしも一致しないとは思いますが、いずれにしましても、審査基準の策定時にいろいろなケースを想定しながら検討していきたいと思います。

委員長

ほかに何かございますか。委員どうぞ。

委員

輸出の件で前回もちょっと言いましたけれども、確認的な意味も含めてもう一回お話ししておきたいと思います。産業界でいろいろ意見を聞いた結果、輸出において実害が発生しているという具体的な声はありませんし、特許製品の場合に、さっきもありましたけれども、製造あるいは譲渡という実施行為が輸出の前段階にあるのが通例なので、輸出を発明の実施行為に含めるべきであるという意味での積極的な必要性はほとんどないというのが共通認識です。むしろ、これまでとは異なって、輸出が発明の実施行為に含まれるということになると、国際間の実取引を故意に妨害するような嫌がらせに制度が濫用されるということを心配する声が多いです。
例えば、輸出の場合に、既に海外のお客様に対して、期日内に製品を納品することをお約束しているわけですから、税関で中身の吟味が不十分なままストップされた場合には、それ自体の納品ができないことに加えて、ビジネス上の国際的な信用を棄損し、将来の取引も失うことにもなりかねません。結果として、侵害していないと判明したとしても、輸出企業に回復しがたいダメージを与えるのではないかということを懸念する声が高いです。特に輸出主体の企業の方からは心配する声が多かったです。
実体法として特許法で実施行為にそれを含め、輸出差し止めに関して税関での水際措置でやることになるので、輸入に合わせて輸出時の手続の明確化を図るとの方針も聞いております。しかしながら、この委員会での審議がその手続の検討とは別に進められていること、及びその手続内容が本当の先ほどの懸念を払拭できるほどものであるのかということは不明であることなどの点があるので、特許法の中に輸出を含めることが日本の産業にとってよいとは、まだ確信を持って言える段階ではないというのが正直なところです。
模倣品の対策を条約などに絡めグローバルに構築していくとの総論については、異を唱えるものではありませんから、模倣品を特定しやすく、流通秩序の維持に最も効果的に機能する商標の使用に輸出を規定することを先行させることもあるのではないかと思います。
例えば、意匠も形態模倣などで有効に機能するでしょうから、そこまで含めて考えることも可能かと思います。今、言いました商標意匠の運用の実態などを踏まえて、かつ特許制度の改正については、侵害品の輸出の実情や他国の取組みなどもながめつつ、取り組むように二段階で制度改正を考えても決して遅くないとは感じております。
以上述べたのが、現時点で輸出に関して率直に我々産業界が感じている状況でございます。しかしながら、これまでの議論の進め方を拝見していると、諸般の事案を勘案して、トータルな政策判断として、同時に輸出を実施行為に含める法改正を進めることもあるのかもしれないと感じております。もし、そのような立場をとられるような場合には、実体法の改正責任を持つ主務官庁として省庁間の連携を強化することで、運用の細部と実際まで目配りをして、制度が濫用されて日本の産業界が困る事態に陥ることのないように、責任を持って対処してくださることを、この場をおかりして、ぜひお願いをしておきたいと思います。
以上です。

委員長

どうもありがとうございました。

事務局

ご懸念の点というのは、水際措置の具体的な運用、あるいは手続面に関することであるというふうに理解をいたします。
現在、財務省で輸出の水際措置についての議論というものがほぼ固まっておりまして、具体的にいろいろな担保措置というものも今回とられているところでございます。承知しておりますところでは、例えば、申し立てを受理する段階で有識者である専門委員の意見を聞くことができ、かつ当事者の意見を専門委員が聞くという措置、あるいは、実際に認定をされた段階におきましても、特許庁への意見照会に加えまして、専門委員に意見を聞く。かつその場においては、当事者からの意見も聴取することができるということで、関係者の意見をきちんと聞く仕組みというものを整えられるというふうに承知をしております。
さらに実際に認定を受ける場合には、申立人が担保をきちんと積まなければならないといった措置もあるということでございます。したがいまして、相当程度、この水際措置については前進をしているというふうに認識をしております。
一方、ご懸念の制度の濫用につきましては、私どもといたしましてもきちんと対応していきたいというふうに考えておりまして、産業界において制度の濫用の懸念があるということを踏まえまして、その手続、あるいは運用の細部について、政府部内で必要な調整をきちんともやっていく。それによって、水際取締が適切に実施をされるということが重要であるというふうに考えております。
なお、具体的にどういうケースが懸念に当たるのかといったところについては、産業界から我々にも、ぜひインプットをしていただければというふうに思います。よろしくお願いをいたします。

委員長

よろしゅうございますでしょうか。委員どうぞ。

委員

2点あります。1点はお願いというか、10ページのところに電子図書館における分割出願情報の充実、これは以前お願いしたかと思うんですが、「情報提供機能より充実させることが適当であると考えられる」ということで、これはぜひ具体的にできるだけ早く進めていただきたいということがございます。
それから2番目は、今輸出の問題が出ましたけれども、産業界としては日経連と私どもはほぼ同じ考えを持っております。そういうことで産業界としての懸念がまだ完全には払拭されていない。それから、今ご説明でいろいろ省庁間で検討されておられるということを聞きまして、若干安堵したんですが、そのことについて、やはり案のところでは、例えば25ページのところに、実際に輸出の侵害行為を追加することが必要であると考えられる、また、輸出を侵害行為とすることが適当であると考えられると書いてありますが、そういう懸念についてもきちっと対応されるということを、この案にぜひ明記していただけたらありがたいと思っております。
以上です。

委員長

ありがとうございました。

事務局

具体的な書きぶりについては、相談をしたいと思いますけれども、何らかの文言を盛り込みたいと思います。

委員長

委員。

委員

「分割出願への新規事項付加の拒絶理由化」について、現在、新規事項の追加の運用が非常に厳しいので、これが分割に及ぶということになると、適切な特許の取得ということの妨げになるのではないかということを懸念しています。同じことは13ページにあります分割出願の補正の制限ということでも感じています。適切な特許権の取得ということを妨げないような運用がなされることを期待したいと思います。
それから、先ほどの中で輸出のところにつきましては、報告書に、いろいろな議論があるということを盛り込んだ方がいいのではないかと思います。全員が一致して、これが絶対必要だという論調ではないので、ご指摘の懸念があるということをきちっと書いた方がいいと思います。
それから通過のところは、ちょっと整理をしておいていただきたいと思います。仮陸揚げのところは、どうなっているのかよくわからないので、仮陸揚げも日本の陸の上がってしまっているので、これを差止請求することはできるのではないかと思うのですがいかがでしょうか。水際措置だけの議論になっているのですけれども、差止めの問題もあるので、そこのところを明確にしていただいた方がいいと思います。
侵害訴訟における秘密保持命令につきましては、委員と同じ意見で、職務発明についても同じ問題が存在するということは了知の事実であります。この点については、遠い将来ということではなくて、近い将来にご検討をしていただければと思います。

委員長

どうもありがとうございました。今の仮陸揚げについては。

事務局

仮陸揚げにつきましては、確かに概念上はいったん輸入をするということになります。そのあたりについて考え方をきちんと明確にしたいというふうに考えております。

委員長

ほかにございませんか。よろしいですか。それでは、前半のところにつきましては、輸出のところで日本の産業が侵害によって深刻な被害を受けているということは事実でありますので、日本政府が積極的な対策をとっていくということの方向性については、皆さん異存ないというところだと思いますが、弊害についてご懸念がまだ皆さんお持ちだということですので、この委員会もそういう懸念が適切に反映をされるような形で文言を少し追加したり、修正したりということを行いたいというふうに思いますが、それでよろしゅうございますか。
それでは、引き続き後半の説明に移りまして、また何かご意見がおありでしたら、後でお伺いしたいと思いますので、ざっと最後までご説明をしていただきたいと思います。
では、後半部分ですけれども、「先使用権制度の在り方」、「特許制度の利便性の向上」、「特許庁の判定制度とADR機関との適切な役割分担」、この3項目についての議論に移りたいと思いますので、まず事務局よりご説明をお願いいたします。

事務局

まず最初に「先使用権制度の在り方」につきまして、ご説明させていただきます。
お手元の資料の40ページでございますが、本件につきましては、11月28日第20回の特許制度小委員会の場でご審議をいただきました。論点は4つあったわけでございます。まず、先使用権制度そのものが不明確ではないかという点、次に、先使用の立証が困難であるという点、それから国際的な制度調和の問題、さらにはフランス的制度の導入についての問題という4つの論点についてご議論いただきまして、一定の方向性を出していただいたものと理解をいたしております。本報告書案は、その場のご議論を踏まえさせていただき、とりまとめをさせていただいている次第でございます。
時間の関係もございますので、1ページめくっていただきまして、41ページのところでございます。「先使用権制度の明確化」という点につきましては、ここにもありますように、実施形式はどの程度変更できるのか、権利の援用の範囲はどうか、あるいは「出願の際現に」の解釈、それから実施の準備というのは、どの程度で準備と認められるのかといったようなところが不明確であるというご指摘でございます。それに対し、まず、79条に関する裁判例を調べてみた結果を中ほどに載せてございます。昭和61年にウォーキングビーム最高裁判決がございまして、それ以降、特許権、実用新案権、意匠権にかかる侵害訴訟判決が1,282件ございます。そして、その中で先使用権の抗弁があった件数というのは105件ございまして、先使用権が争点となった件数が68件で、先使用権を認定した件数が41件ということで、最高裁判決以降、かなりの下級審判決も出ておりまして、不明確とご指摘のある点についても、かなりのところ明らかになってきているという現状がございます。
そういう状況を踏まえ、対応の方向でございますが、43ページに進んでいただきたいと思います。不明確なところをどういうふうにして明確化していくのかということで、一つの方法としては、最高裁判決等をもとに条文を明確化する法改正ということも考えられるわけですが、この場のご審議でも、むしろ法改正をすることによって、特許権者と先使用権者のバランスを崩すおそれがあるのではないか、予期せぬ問題が発生するのではないか、さらに法改正をしても一義的に容易に判断できる程度にはならないのではないかというご懸念をいただきました。他方、ガイドラインという形で、最高裁判決、下級審判決、さらに通説等を分析して、その解説を行うことによって、そういう不明確な点についての予見性を高めていくという手段もあり、また、それを望む声が産業界には多いというようなご議論をいただいた次第です。したがいまして、現状におきましては、法改正ではなく、特許権者と先使用権者のバランスを変えることなく、ガイドライン(事例集)の作成で制度の明確化を図ることが適切と考えられます。
ただし、ガイドラインは、法解釈を明確化するためのものであるわけですけれども、司法を拘束するものではございませんので、内容作成手順については十分注意して進めることが必要であると考えられます。また、ガイドライン作成後には、その周知徹底を図りまして、その後生じた課題や判決を注視し、特許制度の下、先使用権が有効に活用されるように努めていくということが重要であると考えられます。これが1点目でございます。
2点目の課題でございます立証の容易化でございますが、これにつきましては、どのような証拠をどの程度残せばいいのかというところで、負担が重い等のご意見があるわけでございます。しかしながら、例えば、既に一部の企業では、公証制度の活用において、技術に詳しい弁護士・弁理士の協力を得ているとか、あるいは映像を使った手法を用いる等、立証の容易化に向けた工夫を凝らしている実態があることに鑑みますと、この課題は、世の中にいろいろある立証手法自身が広く理解、認知されていないことに起因することが大きいのではないかということでございました。したがいまして、結論といたしましては、先ほどのガイドライン(事例集)の中で、公証制度の活用も含め、種々の立証手法を例示することにより、どのような証拠をどの程度、どのように残せばよいのかを明確化して先使用権制度の利用の円滑化を図ることが適切であると考えられるということでございます。
それから、3点目の国際調和のところでございますが、前回もご紹介いたしましたように、一部の国、例えば中国でございますけれども、製造規模の拡大が認められない等の問題があって、日本企業のグローバル活動を阻害する面があるということでございました。したがいまして、これは当然のことでございますけれども、種々のチャンネルを通じて、国際的な制度調和を図っていく、他国に働きかけを行っていくという対応を行っていくことが重要と考えられます。
なお、米国におきましては、現行、先発明主義のもとでビジネス方法の特許以外については、先使用権制度はないわけですけれども、今般、先願主義移行の法案が提出されており、その中で、先使用権制度を全分野に拡大し、かつ実施、実施の準備を要件とする法改正の動きがあるわけでございます。これは、まさに日本と同様の先使用権制度が導入されていくという動きであり、この動向にも注視していく必要があると考えられます。
最後の論点は、フランスと同様の、発明の所有をもって通常実施権を認めればどうかという声があるということに対するものでございます。これは、すなわち、実施、実施の準備を要件から外すということになるわけですので、特許権の効力に大きな例外を設けることになり、特許権者と先使用権者のバランスを大きく崩すということから、ユーザーの皆様にも強い反対意見がございます。また、世界的に見てもフランス、ベルギーのみの特異な制度であるということでございまして、制度調和にも反するということから、この場でも、こういうフランス的制度の導入というのは適切ではないというご意見をいただいた次第でございます。したがいまして、本報告書案も、そういうとりまとめとさせていただいております。先使用権制度については以上でございます。

事務局

それでは、私の方から特許制度の利便性向上についてご説明したいと思います。
報告書案の49ページになります。この利便性向上の中では5つのテーマが含まれていますので、それぞれ簡単にご説明したいと思います。
まず1点目の「外国語書面出願の翻訳文提出期間」についてご説明します。
この制度は、外国語書面、具体的には英語でございますが、英語で特許出願をすることを認めるが、出願の日から2月以内に翻訳文を提出することを義務づける制度となっておるわけでございます。外国語書面出願制度の問題の所在ですが、パリ優先権主張を伴って我が国に外国語書面出願を行った場合につきましては、そもそもパリ優先権の1年の優先期間がありまして、さらに2月の翻訳期間が可能ということで、最大1年2月を翻訳文作成の期間として充てることができるわけです。しかしながら、我が国に最初に外国語書面出願を行った場合につきましては、翻訳の作成期間といいますのは2か月しかないということになります。この2か月しかないという期間がベンチャー企業等にとっては負担が大きいのではないかということです。翻訳文提出期間を延長すべきでないかというご指摘があるところが問題の所在になっております。
対応の方向としまして、50ページになりますが、今申し上げました2つのケース、すなわち、我が国に第二国出願として出願を行う場合と、第一国出願を行う場合との2つケースのうち対応が必要となるのは、我が国に第一国出願を行ったケースであるという点がまず前提として考えられます。
この翻訳文提出期間を延長するときに考慮しなければいけない事項としまして、1つは公開の準備作業があります。ご承知のとおり、出願から、あるいは優先日から1年6月で出願公開されるわけですが、分類を付与するとか、公報を発行する準備のために4か月程度の期間が必要になります。このため、外国語書面出願について公開公報を適切に発行しようとしますと、翻訳文は、遅くとも優先日から1年2月以内には提出されなければいけないという点がございます。
もう1つの考慮事項として、外国語書面出願に基づいて国内優先権主張した場合、現行では少し不都合がございまして、これも結論的には優先日から1年2月以内にすることで適切に対応できることになります。これについては後でご説明します。
こういった事情を踏まえまして、外国語書面出願の翻訳文提出期間につきましては、今は出願日ベースで考えておりますが、これを優先日から1年2月以内にしてはどうかと考えております。具体的には、日本に第一国出願した場合につきましては、日本の出願日から1年2月以内にするということです。パリ優先権を伴って日本に第二国出願した場合には、第一国出願の日から1年2月と考えております。
先ほど国内優先についての説明を省略しましたが、52ページの方を見ていただきますと簡単にわかる図面がございます。外国語書面出願をもとにして国内優先権主張をした場合、現行制度でいきますと、外国語書面出願してから2月で翻訳文を出すことになります。これは、もとの出願について翻訳文を提出し、国内優先権を主張して外国語書面をさらに提出した場合には、もう一度2月以内に翻訳文を提出する必要があるということになり、二度手間になってしまうような状況になるわけです。翻訳文提出期間を優先日から1年2月とすれば、もとの外国語書面出願については翻訳文を提出するまでもなく、あとの出願についてのみ翻訳文を提出すればよいことになります。こういった扱い方もできるということが提出期間を1年2月とする1つの理由になっております。
次のテーマでございます。53ページの「拒絶理由通知の応答期間」になります。これ以降4テーマございますが、こちらは運用レベルの見直し、対応になります。
まず、拒絶理由の応答期間の問題の所在といたしましては、ライフサイエンス分野におきましては、拒絶理由が通知された後、それに応答するために実験データが必要になるという場合がございます。その実験データを作成する期間として、現行の60日、これが拒絶理由通知に対する応答期間になっておりますが、この60日では不十分であるという指摘がございます。指定期間とは別に、さらに指定期間の延長ということも考えられるわけですが、現行では、在外者につきましては3か月の指定期間、プラス3か月の延長が認められていますが、国内居住者につきましては、60日の指定期間だけで延長は認められていません。このように、在外者、国内居住者の間で差ができておりまして、逆差別ではないかという指摘もございます。
これに対しまして、検討の方向性でございますが、54ページになります。まず1つ目、特許審査迅速化との関係を少し考えておかないといけないということで、ご承知のとおり、現在、特許審査迅速化に向けて総力を挙げた取組みをしているというところでございますので、拒絶理由の応答期間を一律延長してしまうという点につきましては、現時点では妥当ではないと考えております。
具体的にどうするかというところが(2)になりますが、国内居住者、在外者に対する期間延長の考え方としては、国内居住者に対して応答期間の延長を認めるような合理的な理由がある場合、1月程度の延長を認めることにしてはどうかと考えております。すなわち、指定期間の60日プラス延長1月ということになります。
在外者につきましては、逆差別を解消するという観点もありまして、在外者に対しても延長を認める合理的な理由を求めることとし、1回の請求の延長期間を1月にしまして、それを3回、すなわち最大3月程度まで延長できるようにしてはどうかと考えております。この合理的な理由につきましては、現時点で考えているところは、拒絶理由通知で示された引用文献に記載された発明との対比実験データを得るためという理由、あるいは審査手続書類の翻訳のためという理由、これは在外者のみの理由になるわけですが、この1、2といったような限定的な理由で延長するということを考えております。
(3)のところでございますが、今、国内居住者に対しても期間の延長をすることを考えておりますので、現行において拒絶理由で通知された引用文献の複写請求を行った場合には、応答期間を23日延長するという運用は必要なくなるのではないかということで廃止の方向で考えております。
以上のように応答期間の延長を考えておるわけですが、現実的には、その運用をうまく行っていくためには、コンピュータシステムの改変が必要になりますので、実際の運用はシステムの開発完了後に開始したいと考えております。それまでは審査官と出願人とが意思疎通を図りつつ対応していきたいと考えております。
次のテーマは、55ページの「新規性喪失の例外規定の証明手続」になります。新規性喪失例外の規定はいわゆる先願主義での例外というような位置づけになるわけですが、その適用を受けるためには、所定の要件を満たさなければいけない、具体的には、証明する書面というものを出願から30日以内に提出しなければいけないということになっております。
証明する書面として、例えば、外国語で論文発表したような場合にはその論文の全文翻訳を求めております。それから、どこかの研究集会で発表したような場合にはその研究集会の主催者による証明書を求めております。また、例えば、論文を発表した人が願書上の発明者と一致しないような場合につきましては、宣誓書を求めているといった運用をしております。こうした書面の作成とか提出に時間がかかって、期間に対応できないといった問題点が指摘されているわけでございます。
この問題に対応しまして、56ページの対応の方向でございますが、2つの方向性が考えられるわけです。1つは証明書面の簡素化ということで、運用レベルで書面の内容を簡素化する、もう一つは証明書の提出期限、こちらは法律で規定されている期限になりますが、これを延長したらどうかという2つの方向があるわけです。まず、証明書面の簡素化につきまして、負担が大きいと言われている主催者による証明とか、刊行物が外国語の場合の全文翻訳文であるとか、先ほどの宣誓書を、あくまでも証明力が維持できる範囲内で、できる限り簡素化していきたいと考えております。
一方、証明書面の提出期限の延長ですが、この期限につきましては、証明書面の提出に要する負担とのバランスで考えるべきという点をご指摘いただいております。今回、証明書面を簡素化することによりまして負担の軽減が可能になると思われますので、提出期限の延長につきましては、今後の運用状況を踏まえつつ、さらに検討していきたいと考えております。
次のテーマは57ページの「インターネットを通じた特許審査の手続書類等の情報提供」になります。特許審査の手続書類、例えば、願書であるとか、その他、いわゆる包袋に入っている書類につきましては、現行では手数料を支払えば閲覧することができるという状況になっております。
ところで、特許電子図書館で無料提供されている公報情報とか、経過情報があるわけですが、そういった公報情報であるとか経過情報と同じように、特許審査の手続書類自体についても、インターネットで無料提供できないかという声が出ております。
こちらにつきましては、対応の方向ということで、まず2006年度初頭の時点で、特許審査の手続書類のうち2003年7月以降に特許庁から出願人等に発送されたもの、具体的には拒絶査定であるとか、拒絶理由通知といった情報をインターネットで試行的に無料提供するということを予定しております。
さらにそれ以降につきましては、その試行の拡大であるとか、制度及び運用の整備等を引き続き行っていきたいと考えております。
それから最後のテーマ、59ページになりますが、「カラー図面の取扱い」についてご説明いたします。現行では、願書に添付する図面は黒色で書かなければいけないとなっております。例外的に白黒写真も認められています。ライフサイエンスの分野におきましては、カラー図面を用いることによって遺伝子の発現がうまく説明できるという事情がございまして、カラー図面へのニーズが高く、特許出願へのカラー図面の添付を許容すべきではないかという指摘がございます。
こちらにつきましては、まず具体的なニーズというものを調査しながら、その上で、審査実務とか、システムの影響、あるいは国際的な制度調和という観点から検討していきたいと考えております。
以上でございます。

事務局

それでは、次に「特許庁の判定制度とADR機関との適切な役割分担」について説明いたします。
まず、問題の所在ですが、「知財推進計画2005」におきまして、「特許庁の判定制度とADR機関との適切な役割分担についても司法制度改革におけるADRの在り方の検討を踏まえて、2005年度も引き続き検討を行い、必要に応じ制度を整備する」とされておりまして、これを踏まえまして、前回と前々回2回にわたりまして審議をいただいたところでございます。
現行における判定制度につきましては、特許庁とそれから民間における判定制度の2つがございますが、特許庁における判定制度につきましては、権利の属否についての公的意見の表明でございまして、最終的な紛争解決機能を有していないわけでございます。特許庁の判定制度につきましては、請求人、被請求人の双方の意見を踏まえた判断を行うということで、両当事者の参加のもとで大半の判定を行っております。
判定につきましては、年間100件程度が請求されております。この結果につきましては、税関での模倣品の輸入差止めの際の疎明する資料、あるいはその結果が途上国の裁判所での鑑定結果にも用いられた例がございます。
一方、民間機関でございます日本知的財産仲裁センターにおきましては、判定だけではなく、仲裁あるいは調停を取り扱うことができますので、総合的に知的財産についての紛争を行うということができるわけでございます。そのセンターの判定は両当事者合意のもとで行われます「双方判定」、あるいは合意を得ない「単独判定」がございまして、その審議の内容及び結果につきましては非公開とされております。
権利の有効・無効を含め、総合的な判断が行われるという特許庁にはない機能を備えるものでございます。両者の利用状況及び機能について、その表にまとめたところでございます。このような利用状況を踏まえ、本委員会におきまして、特許庁の判定制度の廃止、制度整備、あるいは存続という3つの選択肢をもって検討を行ったところでございます。その結果、特許庁の判定制度は意匠分野に加え、個人・中小企業を中心に強いニーズがあり、判定結果と訴訟の判断結果がほぼ一致すること、審判部の審理負担が1%に満たないこと。民間型ADR機関とは別の機能を備えること及び紛争解決手段として、多様な選択肢が好ましいことなどの理由から、特許庁の判定制度は当面存続すべきとの意見が複数の委員から出されました。
一方で民間型ADR機関の利用を活性化させるためには、特許庁の判定制度は将来的には廃止すべきとの指摘もございました。
このほかに今後民間型ADR機関の機能面での充実が必要である。特許庁の判定制度とセンターの判定におきましては、総費用の比較がなされていない状況のもとでは、特許庁の判定がユーザーにとって費用面で有利としては判断できない。また、民間型ADR機関が1つでは競争原理が働かず、真の民営化とは言えない。また、民間同士の紛争において、特許庁との判定結果が悪用される場合などの判定制度の問題点につきましても検討が必要という意見がございました。
さらに特許庁の判定制度は関税定率法21条4に規定する特許庁長官に対する意見照会制度の適正運用に寄与するという側面もあるという意見もございました。
このような意見を踏まえ、対応の方向ですが、現状におきまして、特許庁の判定とセンター判定では、その機能、役割が異なります。また、利用者のニーズも相違していることから、紛争解決手段の多様な選択肢を提供する観点からも、特許庁の判定制度を廃止することにつきましては慎重な検討が必要であり、現段階で廃止することが適当でないと考えられます。ただし、特許庁の判定制度は適正に運用されるように、引き続き検討を行うことは重要と考えられます。
一方、民間型ADR機関の活性化は多様な紛争解決手段を提供する上で望ましいことであります。このため、行政としては民間型ADR機関の活性化を可能な限り支援するとともに、権利義務関係の直接の変更を伴わない民間の紛争処理への関与を最小限の範囲のものとする考え方を基本に、民間型ADR機関の定着状況を見極めた上で、それと特許庁による判定制度の関係につきまして、判定制度の存廃を含めて改めて検討することは適当と考えられます。
以上です。

委員長

どうもありがとうございました。後半部分についてご説明いただきましたので、これにつきましてご意見をお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

委員

2点ありまして、1点目は46ページの対応の方向という先使用権制度のところなんですけれども、この対応の方向の「2.」の二段目というのは要るのかなというのが素朴な疑問でして、僕は専門じゃないんですけれども、見ていると先使用権を行使するというか、特許を使わないで発明していて、守りたい人は別のその方法を選択されればいいので、別に推奨するとか、推奨しないの問題じゃないし、そもそもそういうことをやるのは、先に制度がありきで、そういうことをやることがけしからんみたいな書きぶりになっていて非常に偉そうなんですよね。
特許制度の本来の趣旨から言うと、確かに公開することによって進歩を促す。でも、公開することが先にありきじゃなくて進歩を促すことで、これは論理的にもおかしな書きぶりな気がしまして、もちろん先使用権という制度を使って、最後に保護されたいと思うことには一定の制限は要ることは異論はないのですが、これはとても偉そうな感じがして、なおかつ、特許制度において、完璧に公開したことによって守られるのかというと、まさに守られない例外があるから、こういう特許制度小委員会があって、いろいろごにょごにょ議論をされているんでしょうから、公開することがすべて善かどうかというのは企業戦略にもよるんだろうし、こういう書きぶりというのがすごく嫌らしいなという感じがしたということが1点で、ここはなくても別に趣旨には何の関係もないので要らないのではないかと思った次第です。
それともう1点は、60ページにある、私はカラー図面というのはとっとやればいいと思っているのですが、特許庁さんはいろんなことがあって嫌がっているような気配があるわけですけれども、60ページのところに具体的なニーズについて十分な調査を行うことが必要であるというところでひとつお願いとして、どうも特許庁さんはやりたくないときの世論調査というか、アンケートのとり方として、全体の数をとって少ないやつが言っているだけなのでやめようということになるのかもしれないんですが、でも、少ないやつに非常なニーズがあって、それが大きなインパクトを持つ特許で、なおかつ、そういうことをやれば儲かるというケースももちろんあるわけで、できれば、そのニーズというものの少ない数の要望かもしれないけれども、カラーとかいろんなことをやることによって、大きなインパクトを持ち得るということも考慮できるような調査の仕方にしていただいて、ぜひ後ろ向きじゃないような調査の方法をやっていただければと思います。
以上です。

委員長

どうもありがとうございました。2点ですね。

事務局

1点目のご指摘の点でございますけれども、第20回の委員会の場で出していただいたご意見を総合致しまして、この文章を入れたわけでございますが、その趣旨は、秘匿が悪いとか、そういうところにあるのではなくて、特許権者と先使用権者のバランスというのは非常に大事ですというところにありまして、先使用権が認められる範囲を拡大していくということは、特許権が弱くなっていくということになるわけですので、そういうふうにしてまで秘匿を推奨するということには、慎重な議論が必要ではないかという姿勢を書かせていただいたわけでございます。この点につきましては、他の委員の方々から、もしご意見がありましたらいただいた上で、このところの文書表現をどうすべきかということを検討させていただければというように思いますが、いかがでしょうか。

委員長

委員どうぞ。

委員

そもそも特許と営業秘密の保護というのは、トレードオフという関係に立つわけでありまして、営業秘密の保護を強くしますと、これは保護期間がないので、技術全体の促進に対する阻害要因となるということは、特許と営業秘密に関する基本的関係であると思います。そういう点から、先使用権制度を拡充して、営業秘密を秘匿しておくことを有利にするということは、特許制度による技術全体の促進ということから問題があると考えております。

委員

私が申し上げたいのも、今、委員が言われたところと基本的には同様であり、繰り返しのようになる面もありますが、ここの46ページの2.の第2パラグラフの趣旨は、先ほど事務局の方からご説明があったような、一般的な話としての特許とノウハウないし営業秘密とのバランス、つまり、先使用権を拡大するということは、反面として特許権による保護を弱めることになるため、その両者のバランスをいかに図るかということに帰するので、そのバランスを考えていくに当たっては、先ほどの点を十分慎重に検討しなければならないという、ある意味では当然のことが書いてあるだけではないかという気がしております。法律家以外の人が読んだときにどう思うかというような意味での表現という点はともかく、中身としては、今申し上げたような点が書かれているだけではないかという気がいたします。

委員

私は法律家以外ですが、「特許制度の原則は」と書いてあるわけですけれども、技術の公開による技術進歩の促進ということをはっきり書かれれば、公開のための公開ではないわけですから、技術進歩を促進する、効率的に促進するということが目的ですので、それを書かれることで公開のために公開をやっているわけではないということがはっきりするのではないかなというふうに思います。
それから、ノウハウと特許権はもちろん補完的なところも非常にあるといいますか、発明になるまでは秘密なわけですから、そういう意味では、やはりそういう関係もあります。それから、基本的ここで書かれている趣旨はフランスとか、ベルギーの制度をどう考えるかというところだと思うんですけれども、フランスとか、ベルギーで特許制度が非常にうまくいっているという実証的な研究もないというふうに思いますので、トーンとしては、こういうことでいいのではないかなというふうに思います。

委員長

どうもありがとうございました。

委員

再反論して申し訳ないんですけれども、この報告書の全体のトーンがそうなんですけれども、これについても、何か喧嘩を売ったみたいでよくないんですけれども、特許制度自体は、もちろん先ほどの輸出のところもそうですが、大企業の方々、あるいは大きな産業の日本をリードする産業の方々が一番使いやすいようにするという趣旨がにおうわけです。それはそれで全然問題はないと思うんです。もちろん、どんどん儲けていただいて、税金を増やしていただいて、それはとてもいいことだと。それはいいんだけれども、特許制度の今回の一連の改正の中では、小さくても意外な発想をしてくれる人をいかに救うか、あるいはそういうことをしていただくかということが、やはり日本の長期的な活性化を見ると、そういう部分を残していかなきゃいけないんだろう。もちろん、バランスの問題ですけれども、それをどこまでくみ取れるかというのが、多分、これから日本の発展を考える上では、大きな流れとしては重要なんじゃないかと思っているわけです。
その中で、ここに書いてある書きぶりが間違ったメッセージを発する可能性があるんじゃないかということを感じるわけです。輸出のところもそうですけれども、真っ当にやられている方には、あんなものはなくても普通に大丈夫だということもあるんでしょうし、大体文句を言ってくるのは外れものの小さな変なところが言ってくるんじゃないかというから、濫用のおそれを随分警戒されているんだろうけれども、小さなところからすれば、もし真っ当なことをやれないところ、大きな弁護士もついていない、資金力もないところにとってみれば、闘うといったら、ああいう小さな条項に引っかけてやるしかない。これは正当なものかどうかというのは、最終的には問題はいろいろあるんだろうけれども、闘うときには、こういう小さなところに引っかけてやるしかない場合が結構あって、それに対して、これはもう頭から否定したいというふうに読み取れちゃうんですね。
例えば、推奨することになるというのは、別になくたって拡大することには慎重であるべきであると考えられるだけで十分であって、別の推奨するとか何とかという問題ではないような気もするんですね。しかも先使用権が、その前に公開の観点から何たらかんたらというのも、これも本当に要るのか。ここの前段の議論で出ているわけですから、僕としては最大、ここで言うべき要素は、先使用権が認められる範囲を拡大することには慎重であるべきと考えられるで、十分意は尽くせているのではないかと、そういうことを言いたいわけです。

委員長

技術の秘匿を推奨するというのは、これは先使用権を表に出していくということはバランスを変えるので、技術の秘匿を推奨する方向へと議論が、制度が振れるわけです。それを客観的に説明しているだけだと思いますけれども、何か特におっしゃったような、これがベンチャービジネスに対してマイナスのインパクトを持つというふうには考えられないんですけれども、どうしてそういう……。

委員

「技術の秘匿を推奨することには慎重であるべき」というのは、悪意に読めば、技術は秘匿しちゃだめだよと言っているかのごとくにとれるということです。ただ、別に技術を秘匿しようが、しまいが、そこはその考えようによるので、これはあえているのかということを言いたい。ここが一番引っかかるんですけどね。推奨とか云々というものの言い方をすべきなのかということが引っかかっているということです。

委員長

バランスをそちらの方へ変えるということだと思うんですけれども、事務局いかがでしょうか。

事務局

繰り返しになりますけれども、「先使用権が認められる範囲を拡大することをもって」というところに主眼が実はあったわけでございまして、そういうことでございましたら、例えば「先使用権の権利範囲を拡大することには慎重であるべきである」といったような表現にするという案もあり得るかとは思います。

委員

それだったらいいです。

委員長

では、それでよろしければ、そういうことで……。

委員

これ以上、委員と議論をするつもりはございませんけれども、先使用権を拡大することは、技術の秘匿を推奨することになるという論理的なつながりを説明しているだけなので、委員長の言われるとおりだと思います。ここは文脈から見れば、先使用権を広げることは技術の秘匿を推奨することになるといっているだけの話でありまして、誤解の余地はないと思います。これ以上の議論は控えます。

委員

時間もあるようなので、ほんのちょっとすみません。これは別に、まさに今、委員がおっしゃったとおりなんですけれども、この全体のその前の文脈から見ると、先使用権の使いやすさというのを全体としては論じておって、範囲を拡大するという観点以外にも、使いやすさであるとか、まさにその前段でガイドラインを示すとか何ならかんたらと言っているわけで、それはまさに使い勝手を変えるという観点、あるいは現状の範囲において円滑に紛争が起きないように一つ一つするということまで含めて論じておって、その文脈で全体で読んでいくと、こんなものというふうに最後に、これは要するに、ここの部分の推奨することに慎重であるべきというふうに書くと、これは特許庁としては推奨できないぞという強いメッセージに受け取れるという誤解をおそれているという趣旨でございます。

委員長

わかりました。ご趣旨はよくわかりましたので少し検討させていただきますが、表現の問題で余り、ここはそもそも論あるいは原則論を述べているところですので、それほど問題はないかと、大きな内容の実態的にかかわる議論ではないかと思いますので、少し表現で何か対応できることがあるかどうかということも含めて検討するということにさせていただきたいと思いますが、ほかに何か、これ以外の論点でご意見ございませんでしょうか。

委員

先ほどの拒絶理由通知の応答期間ですが、ここの表を見ますと、日本だけがなぜか内外逆差別になっていて、長期的にこういう在り方でいいかということを考えていただきたいと思います。現在のように情報通信が発達した時代に、昔みたいに通信手段が十分ではないことを前提としている感じで疑問があります。外国を見てもどうも一緒みたいなので、長期的には、検討していただきたいと思います。

事務局

今回は審査の迅速化の観点から、応答期間60日と延長1か月ということで進めてまいりますが、国際的な状況もありますので、これから運用を見つつ検討させていただければと思います。

委員長

ほかにございませんか。よろしいですか。では、特にご意見がございませんようでしたら、前半の方も含めまして、全体的に見て何かご意見がおありでしたらお伺いしたいと思いますが、いかがですか。
特にご意見がございませんようでしたら、今日いろいろといただいたご意見を踏まえまして、今後事務局にて必要な修文を加えた上で報告書案として各方面からの意見募集の手続を行っていくということにしたいと思います。必要な修文につきましては、輸出のところと幾つかご指摘いただきましたので、事務局と私の方で適切な対応をしたいと思いますが、それでよろしゅうございますか。
どうもありがとうございました。それでは、本報告書案に必要な修文を加えさせていただきまして、手続を今後進めていただきたいというふうに思います。
最後の今後のスケジュールにつきまして、事務局の方からご説明をお願いいたします。

事務局

今後のスケジュールでございますが、事務局では本日のご審議におきまして、ご指摘いただいた点を踏まえまして、報告書案について必要な修文を加えた上で、パブリックコメントの手続を行わせていただきたいというふうに存じます。
次回243回の本小委員会の開催につきましては、2月2日木曜日の10時半からを予定をいたしております。パブリックコメント手続で寄せられた意見も参考にし、再度ご審議をいただき、最終的な報告書としてとりまとめていただきたいというふうに考えております。
以上でございます。

委員長

それでは、以上をもちまして産業構造審議会知的財産政策部会第22回特許制度小委員会を閉会させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

閉会

[更新日 2006年3月7日]

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