第7回特許制度小委員会 議事要旨
平成15年3月19日
経済産業省特許庁
3月18日標記委員会(委員長:後藤晃東大教授)が開催されたところ、概要は以下のとおり。
1.新委員の紹介
今回初めて出席した委員について、紹介。
2.特許戦略計画(仮称)の基本的考え方について
知的財産戦略大綱において策定することとされている2005年度までの審査計画(「特許戦略計画(仮称)」)について、事務局より基本的考え方について紹介。各委員より、以下の意見等が表明された。
内国出願人による特許出願見通し
- 研究者一人当たりの出願件数の国際比較に関して、研究者の定義は国により同じか。(別の委員より、研究者の定義は国際的に統一しているが、各国での具体的運用は異なっている可能性はある旨の指摘あり。)
- 企業として有用な発明の事業化を進めるには、特許になる出願をある程度の量で行う必要がある。特許になる出願件数は減少しないのではないか。(事務局より、ヒアリング等を通じて企業の出願・審査請求行動をよく議論して、今後見極めたい旨、回答。)
- 欧米諸国の研究者一人当たりの出願件数については、米国においては(1)先発明主義により必要なものだけを厳選しうる(2)出願を担う弁護士が研究現場に入らない、といった理由から研究者からの出願件数が少なくなっている可能性がある。また、ドイツにおいては職務発明の問題から出願件数が少なくなっている可能性がある。(一方、日本の出願に関する推移を予測する上では、国際比較を詳細に検討するよりも、我が国の将来的なトレンドを議論がすることが重要との意見あり。)
- 研究者が盛んに出願することは、日本の強み・良さである。
- 大学発の出願は、そもそも割合が低いため、増加しても日本の出願件数全体にインパクトがあるほどにはならないのではないか。研究者の意識などを含めてよく調査した上で、大学等からの出願行動を推測することが必要。(事務局より、先端分野のPCT出願において大学等からの出願の割合が多く、我が国における出願として今後注目すべき点である旨、補足説明。)
- 国立大学については、法人化後に出願等の費用を確保できるよう、予算面での手当が講じられることが当面の間、重要である。
- 統計の提示などに当たっては、その位置付けを誤解されないよう留意すべき。
- 各産業分野ごとの出願の推移について資料を示してほしい(事務局において、次回以降、回答することとなった。)
外国人による特許出願の見通し
- PCT出願に関しては、国内段階に移行前の30ヶ月の間に出願を精査しており、PCT出願件数の増加が直接に国内段階の件数の増加につながらない。また、外国人は、投資を行うに魅力ある国に特許出願も併せて行うもの。外国人による特許出願が現状と同程度の伸びを維持するか疑問がある。
- 引用文献に対する機械翻訳精度を上げることを期待。
- 「知財立国」の趣旨からは、外国人による出願比率が高まることに疑問。
特許審査請求の見通し
- いわゆる「コブ」の大きさについての、事務局の予測は適切。ただ景気の状況により上下するのではないか。
- 審査請求が一時期に集中しないよう、企業においても審査請求を前倒ししているところもある。審査請求料も重要だが、それ以上に代理人費用の方が大きい。
今後、事務局において、委員からの意見を踏まえ、企業の出願・審査請求行動の調査を進め、ユーザー等の意見を幅広く聴いた上で、特許戦略計画(仮称)を策定する予定。
3.職務発明制度の在り方に関する論点整理
職務発明制度のあり方にに関す論点整理について、事務局より紹介。続いて土田委員より職務発明と労働法の関係について説明。その後、各委員より以下の意見等が表明された。
論点の追加
- 今の職務発明規定(特許法35条)を維持することが、従業者にとって利益となるのか、また産業競争力の観点から望ましいのかを論点に追加すべき。
- 相当の対価が法律によって定められることは、企業にとってリスク要因。企業の国際競争力を高めるにはどうすればよいかという点も論点に追加すべき。
- 職務発明規定(特許法35条)の法改正をする場合、そのメッセージ効果により場合によっては従業者のインセンティブ低下が生じる可能性があるという点も論点に追加すべき。
総論
- 企業による安定的な権利承継及び従業者の発明へのインセンティブの確保が重要。
- 裁判所が職務発明規程の合理性についての検討を加えていないことは問題であるとの議論もあるが、特定の事案につき被告企業の職務発明規程は検討するに値しないと判断したと解釈すれば、必ずしも問題とはいえない。
- 裁判において、最初に検討されるべき職務発明規程の合理性について何ら判断が示されていないことは、やはり問題。
- 特許法35条を削除すれば、職務発明に係る権利の承継等に関する契約の有効性については民法が適用されるが、その場合、より概括的である公序良俗の観点から有効性の判断がなされるためルールの不透明性は増大する。
- 日本企業が支払っている発明報償金は欧米と比較して高いという点は、正しく認識されていないのではないか。
- 報償が高額の場合、「なぜ彼だけが」といった感情的しこり等の悪影響が出かねないことにも留意すべき。
相当の対価の決定について
- 相当の対価の解釈にあたっては個々の企業の実態が考慮されるべきである。
- 相当の対価の決定においては、対価の額そのものより、どのようなプロセスを踏んだかを重視すべき。
- 従業者にとっては、対価決定ルールの透明性が担保され、また対価に不満が生じた場合にそれを解決するシステムが整備されるという二面性が確保されていれば、問題はない。
- プロセスの合理性を条件とすればよいとの意見があるが、「合理性」の判断基準について相変わらず曖昧さが残り、現行規定の問題点は解決しない。これをどうすれば解決できるかという観点で議論することが必要。
- 相当の対価の幅がどこまで認められるのか把握できないことが問題であり、特許法35条の法解釈も含め、詳細に検討する必要がある。
外国特許の取扱いについて
現行法下における外国特許の取扱いについて、民法の下で契約で扱えばよいという意見があるが、具体的にどのような契約を行えばよいかという指摘もなく、依然として不透明である。
4.今後のスケジュールについて
次回の日程については、後日連絡することになった。
次回以降は、職務発明制度や、「特許戦略計画(仮称)」において更なる検討課題とした点について、議論する予定。
[更新日 2003年3月24日]
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