第10回特許制度小委員会 議事要旨
平成15年6月18日
経済産業省
特許庁
6月17日標記委員会(委員長:後藤 晃東大教授)が開催されたところ、概要は以下のとおり。
1.推進計画案の検討状況について
知的財産戦略本部における「知的財産推進計画(仮称)(案)」の検討状況について、これまでの小委員会での議論に関連する事項について骨子を元に事務局から説明。各委員からのコメントは以下のとおり。
- 知財の情報開示については、米国での判例にみられる”Inequitable Conduct”(非衡平的行為:衡平上の観点から救済を認めるべきでない行為)に抵触するような内容にすべきではない。そうした海外にも影響を及ぼす内容も含まれており、英語訳を公開すべき。
- 標準化活動における特許権の開示については、守秘義務が無限にかかっている等の標準化団体の規約も考慮に入れて検討すべき。
- 標準化活動については、RAND(妥当かつ非排他的な(reasonable and nondiscriminatory))ライセンス付きの特許技術なら標準に採用するか否か議論が出ている中で、特許法第99条第1項の通常実施権の規定は厳しすぎるのではないか。
- 「証拠収集手続を拡充する」に関して、弁護士・弁理士の守秘特権も内容に含まれるのか。
- 推進計画の実施にあたっての配慮事項として中小企業支援が挙げられているが具体的内容は何か。
- 「技術的保護手段の回避に係る罰則行為の対象を拡大する」とあるが、回避のレベルを下げると単なるコンピュータでも対象となってしまうのではないか。
- 大学関連の知財関連機関が色々とある中で、先日開催された第2回産学官連携会議において、関係機関の連携・協力が必要である旨の提言がなされており、推進計画に同様の内容を盛り込むべき。
- 実用新案制度の見直しについては、むしろ特許審査迅速化に位置づけるべきではないか。
2.特許戦略計画(案)について
特許戦略計画(案)について事務局より紹介。各委員からのコメントは以下のとおり。
総論
- 特許庁が目標とする「世界最高水準の迅速・的確な特許審査」の内容が不明。一般人に理解できるよう、世界最高水準とは何かについて具体化・明確化が必要。
- プロパテント時代においては、安定的な権利付与の実現が重要。この点、単に審査の迅速化のみを追うのではなく、的確性確保にも十分に配慮した今回の計画案は評価できる。
産業競争力強化に向けた審査体制・制度の整備
- 関連出願連携審査の実施は効率性の観点から評価できる。併せて、面接審査の実施も拡充し更なる効率化を実現すべき。
- 外国特許庁で作成された先行技術調査・審査結果の活用を進めるべき。
- 補正制限に係る審査基準については、単に欧米の制度との調和を目指すのではなく、欧米の制度全体との相違を踏まえ、検討を進めるべき。
- 外国関連出願の明細書の記載不備については、翻訳だけではなく、原文自体が不明確な場合が多く、明細書の方式的要件に関する各国制度の違いも一因ではないか。
- 担当弁理士の明確化については、前向きに対応するとの指摘がある一方で、弁理士数が少ない現状では、弁理士への再説明等の企業負担が重くなるとの懸念あり。
- 一定要件を満たした先行技術調査結果を添付して審査請求を行った場合に審査請求料を減額する制度の導入に関して、現在の早期審査制度においても出願人は先行技術調査結果を開示しており、同じく審査請求料の減額制度の導入を検討すべき。
- 早期審査制度の拡充は審査全体の遅延の原因になりかねないため、早期審査の申請に際し急行料金を課すことも検討すべき。
- 特許審査は早ければいいというものではなく、出願人のニーズに対応した柔軟な審査が行われることが重要。特に、標準技術や実施化に時間がかかる技術については、出願人のニーズに応じて、審査着手時期を遅らすことができる制度の導入を検討すべき。
- また、審査の繰り延べを認める制度は本来的には望ましい制度ではないが、審査期間の長期化が予想される現状では導入もやむをえないとの意見あり。検討にあたっては、第三者の監視負担との公平性に配慮すべき。他方、第三者の負担より出願人の利益を優先すべきとの意見あり。
実用新案制度の見直し
- 実用新案制度が使いにくい理由は、権利の存続期間が6年と短い点。この点、権利期間の延長、特許への移行は出願人のニーズに合致する。
- 補正や訂正のあり方について検討を行うにあたっては、第三者の監視負担との公平性に配慮すべき。
- 権利期間の延長にあたっては、無審査であることを踏まえ、権利行使に一定程度の制限を課すことも同時に検討すべき。
- 実用新案制度を見直した場合、不安定な権利が増加すると懸念。戦略計画の目標である国際競争力の強化との関係が不明。
今後の見通しについて
- 知財意識が高まってきている中で、内国人による出願件数が横這いとの特許庁の見通しは楽観的ではないか。
- 出願件数を絞ったものの、登録率が変わらなかったという企業もある。量から質への転換は容易ではない。
- 最終審査請求率が49%程度との特許庁の予測はかなり楽観的ではないか。むしろ。現在の対応策だけで特許庁の見通しが実現できるのであれば、実用新案制度の見直し等を今後検討する必要がないということになるのではないか。今後検討する諸施策を勘案した上での見通しと位置付けたい。
増員の必要性
- 審査の迅速化のためには審査官の増員が不可欠。知財戦略本部に働きかけ、定員法の枠を超えた増員を実現して欲しい。
- 体制整備は重要であり、そのためにももっと悲観的な出願件数等の見通しとすべきではないか。
委員からの指摘については、戦略ワーキンググループ及び実用新案制度ワーキンググループにおいて検討されることになった。
3.今後のスケジュールについて
次回以降の小委員会においては、再び職務発明制度の在り方について議論を行う予定。第11回小委員会は7月8日(火曜日)、第12回小委員会は8月1日(金曜日)を予定。
以上
[更新日 2003年6月20日]
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